JP2004281183A - 有機エレクトロルミネッセンス表示装置およびその製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】電圧印加時間の経過に伴って生じる表示特性の変化を抑制することにより、焼きつき現象の発生が抑制された有機EL表示装置およびその簡便な製造方法を提供する。
【解決手段】有機エレクトロルミネッセンス表示装置は、基板1と、基板1の上に形成されたスイッチング素子102と、スイッチング素子102を覆う有機絶縁層であって、その下地の表面を露出する開口部を有する有機絶縁層7と、基板1の上に形成された画素電極であって、スイッチング素子102と電気的に接続された画素電極8と、上部電極11と、画素電極8と上部電極11とに挟まれた有機材料を含む有機EL層10とを備える。有機EL層10は有機絶縁層7の開口部内に形成されている。
【選択図】 図3
【解決手段】有機エレクトロルミネッセンス表示装置は、基板1と、基板1の上に形成されたスイッチング素子102と、スイッチング素子102を覆う有機絶縁層であって、その下地の表面を露出する開口部を有する有機絶縁層7と、基板1の上に形成された画素電極であって、スイッチング素子102と電気的に接続された画素電極8と、上部電極11と、画素電極8と上部電極11とに挟まれた有機材料を含む有機EL層10とを備える。有機EL層10は有機絶縁層7の開口部内に形成されている。
【選択図】 図3
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は,有機エレクトロルミネッセンス(以下、「EL」と略すことがある)表示装置に関し、より詳細には、薄膜トランジスタ(以下、「TFT」と略すことがある)などのアクティブ素子を備えたアクティブマトリックス駆動有機EL表示装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
携帯電話や携帯情報端末に用いられる表示装置には、表示の画質を高めることや、消費電力を低減させることなどが要求されている。これらの要求に応え得る表示装置として、液晶表示装置に代わって、有機EL表示装置が有望視されている。有機EL表示装置には、パッシブ駆動法およびアクティブ駆動法の2種類の駆動法がある。パッシブ駆動法では、TFTなどのアクティブ素子を備える必要がないため、製造コストが低いという利点がある。しかし、ある特定の画素に着目した場合、選択期間((選択期間)=(フレーム周期)/(走査ライン数))内でのみ点灯させるために、瞬間的に高輝度で発光させる必要がある。従って、パッシブ駆動有機EL表示装置の有機EL層は劣化しやすく、その結果、表示の高輝度化と有機EL層の長寿命化との両立は非常に困難である。一方、アクティブ駆動法では、TFTなどのアクティブ素子を形成する必要があるため、製造コストは高くなる。しかし、TFTの構成によって、フレーム期間中に常に有機EL層に電流を供給することが可能になる。これにより、電流のピーク値を低減できるので、有機EL層の長寿命化を図ることができる。
【0003】
アクティブ駆動有機EL表示装置におけるアクティブ素子としては、一般的には、電荷のドリフト移動度が高く、かつ有機EL層への電流供給が容易であることから、多結晶シリコンTFTが用いられる。
【0004】
図1に、アクティブ駆動有機EL装置における1つの画素についての等価回路を示す。ここでは、説明を簡略化するために、1画素につき2個のTFTを用いている。このような装置の構成は、例えば特許文献1に開示されている。図1に示される2個の薄膜トランジスタ51および52のうち、薄膜トランジスタ51は「スイッチングTFT」と呼ばれ、画素の選択/非選択を決定するトランジスタである。薄膜トランジスタ52は、「駆動TFT」と呼ばれ、電流を有機EL層53に一定期間供給する役割を担うトランジスタである。走査ライン54に信号が加わると薄膜トランジスタ51はオン状態となる。このオン状態の間に、表示する階調レベルに対応した信号がデータライン55に入力されると、薄膜トランジスタ52のゲート(−ソース間)容量に電荷が蓄積される。このゲート容量に蓄積された電荷量に応じて、薄膜トランジスタ52のチャネル抵抗が変化する。電源ライン56から一定電圧(または一定電流)が供給されると、薄膜トランジスタ52のチャネル部の抵抗に応じて、有機EL層53の輝度(階調)が決定される。データライン55から入力されて薄膜トランジスタ52のゲート容量に蓄えられた電荷は、フレーム期間を通して保持される必要があるので、必要に応じて補助容量を付加することも可能である。
【0005】
このような構成を有するTFT駆動有機EL表示装置において、薄膜トランジスタ(スイッチングTFT)51がn型、薄膜トランジスタ(駆動TFT)52がp型の場合、例えば走査ライン(ゲートライン)54に+15V、データライン(ソースライン)55に±0V、電源ライン56に+8Vを印加すると、有機EL層3に電荷が供給されることにより、有機EL層3が点灯する。
【0006】
図1に示すようなTFTなどのアクティブ素子を備えたアクティブ駆動有機EL表示装置には、以下のような問題がある。
【0007】
図2は、上記有機EL表示装置の有機EL層に一定電圧を印加した場合の時間と輝度の関係を示す図である。以下の例では電源ラインに定電圧を印加するが、代わりに定電流を流しても本質的に同様の結果が得られる。図2では、電圧印加時間は任意単位である。例えば1任意単位は10分〜1時間程度であり、有機EL層の寿命に比べて極めて短い時間である。電圧印加時間を任意単位としているのは、有機EL層の材料や膜厚、正孔輸送層、電子輸送層の構成などによって、駆動を行う最適電圧の絶対値や得られる輝度の値及び経時変化の様子が異なるからである。また、輝度の値(規格化輝度)は、初期値を1として規格化した値である。図2から、電圧印加から1任意単位の時間が経過すると、規格化輝度は1から1.5へ、1.5倍に増大していることがわかる。
【0008】
なお、上記では輝度の上昇について説明したが、表示装置の有機EL層や正孔輸送層に用いる材料が異なると、電圧印加から1任意単位の時間が経過すると輝度が低下する現象もみられることがわかっている。
【0009】
このように、発光輝度が時間経過によって急激に上昇または低下すると、全表示領域のうち、ある特定のパターンを表示させた領域のみの輝度が上昇または低下するので、焼きつき現象を引き起こす可能性がある。
【0010】
図2に示すような輝度の上昇または低下(以下、「表示特性の変化」ということがある)は、様々な要因が複合されて生じると考えられている。主な要因の一つに、有機EL層の劣化(有機EL層に含まれる高分子材料の構造変化など)による、有機EL層の電圧−輝度特性(または電流−輝度特性)の変化が挙げられる。このような有機EL層の劣化は、例えば、有機EL層の発光に伴う熱によって引き起こされる。
【0011】
一般的な蛍光性発光材料を用いて有機EL層を形成した場合、有機EL層で生成される励起子のうち発光に寄与する励起子の割合は25%程度と言われている。残りの75%の励起子のうちの大部分は熱失活するため、有機EL層における発熱量は大きい。また、発熱が有機EL層の電圧−輝度特性に与える影響は、輝度が高くなるほど大きくなる。
【0012】
従って、このような表示特性の変化を防ぐためには、有機EL表示装置は、有機EL層で生じた熱を効率良く逃がすことができる、すなわち放熱特性が高い装置構成を有する必要がある。
【0013】
これに対し、従来のアクティブ駆動有機EL表示装置では、以下の理由から、放熱特性を向上させるのは困難であった。従来のアクティブ駆動有機EL表示装置では、基板の上に、無機材料を用いて層間絶縁膜(以下、「第1の層間絶縁膜」という)が形成され、この上に別の層間絶縁膜(以下、「第2の層間絶縁膜」という)が形成されている。第2の層間絶縁膜の上には、画素電極を隔てて有機EL層が形成されている。このような表示装置において、第2の層間絶縁膜は典型的には有機材料を用いて形成されているので、一般的に熱伝導率が小さい。従って、有機EL層で生じた熱は下方から放出されにくいため、装置内部に篭りやすい。
【0014】
上記第2の層間絶縁膜が典型的に有機材料を用いて形成されているのは、以下のような利点があるからである。
【0015】
画素電極は、第2の層間絶縁膜およびそのコンタクト部の上に導電膜を設けた後、その導電膜をエッチングでパターニングすることによって形成される。第2の層間絶縁膜が有機材料からなる膜(有機膜)であれば、導電膜をエッチングするときに、第2の層間絶縁膜の下にあるソース電極などをエッチングしてしまうことを防止できる。また、画素電極とドレイン電極との接続部近傍における絶縁耐圧を向上できるので、リーク電流を充分に防止できる。さらに、有機材料は無機材料よりも誘電率が低いので、第2の層間絶縁膜における寄生容量を低減できる。
【0016】
そこで、例えば特許文献2には、上記の利点を維持しながら放熱特性を向上させることができる表示装置の構成が開示されている。この装置では、第2の層間絶縁膜の上方に、熱伝導率が高い無機膜が設けられている。この無機膜によって、有機EL層で生じた熱を発散させることができるので、有機EL層の熱による劣化を防止できる。このような構成の有機EL表示装置を用いれば、有機EL層の膜面と平行な方向に熱が逃げるため、前述したような輝度が上昇または低下する現象を抑制できると考えられる。
【0017】
【特許文献1】
特開平5−107561号公報
【特許文献2】
特開2001−52873号公報
【0018】
【発明が解決しようとする課題】
特許文献2に開示される有機EL表示装置では、有機EL層で生じた熱を従来より効率良く逃がすことができるので、有機EL層の劣化を抑制できる。しかしながら、有機EL層の下に無機膜を形成するための新たな成膜プロセス(真空プロセス)およびパターニングプロセスが必要となる。その結果、表示装置の製造コストが増大する。さらに、この装置では、有機EL層で発生した光は、第2の層間絶縁膜の中を通過する。この通過の際、第2の層間絶縁膜によって光の一部が吸収されるので、発光効率(外部取り出し効率)が低下するという問題もある。特に、第2の層間絶縁膜の透過率が小さいと、発光効率の低下が大きくなる。
【0019】
一方、第2の層間絶縁膜を無機材料を用いて形成することも考えられる。例えば、特許文献2には、TFTによる段差の平坦化が可能ならば、無機膜を第2の層間絶縁膜として用いても良い、との記載がある。しかし、第2の層間絶縁膜を無機材料を用いて形成すると、有機材料を用いることによる前述したような利点が得られなくなる。
【0020】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、その主な目的は、電圧印加時間の経過に伴って生じる表示特性の変化(発光輝度が上昇または低下する現象)を抑制することにより、焼きつき現象の発生が抑制された有機EL表示装置を提供することである。また、そのような表示装置を、製造コストを増大させたり、製造プロセスを複雑にしたりすることなく、簡便に製造できる方法を提供することである。
【0021】
【課題を解決するための手段】
本発明の有機エレクトロルミネッセンス表示装置は、基板と、前記基板の上に形成されたスイッチング素子と、前記スイッチング素子を覆う有機絶縁層であって、その下地の表面を露出する開口部を有する有機絶縁層と、前記基板の上に形成された画素電極であって、前記スイッチング素子と電気的に接続された画素電極と、上部電極と、前記画素電極と前記上部電極とに挟まれた有機材料を含む有機EL層とを備え、前記有機EL層が前記開口部内に形成されていることを特徴とし、そのことにより上記目的が達成される。
【0022】
ある好ましい実施形態において、前記有機絶縁層の上に形成されたバンクをさらに備え、前記バンクは前記有機EL層の前記開口部内に、前記下地の表面を露出する開口領域を形成し、前記有機EL層は前記開口領域内に形成されている。
【0023】
ある好ましい実施形態において、前記画素電極と前記基板との間に無機絶縁層をさらに有し、前記下地の表面は前記無機絶縁層の表面である。
【0024】
前記無機絶縁層は窒化アルミニウムを含んでもよい。前記無機絶縁層は酸化アルミニウムを含んでもよい。前記無機絶縁層は窒化シリコンを含んでもよい。また、前記無機絶縁層は酸化シリコンを含んでもよい。
【0025】
本発明の有機エレクトロルミネッセンス表示装置の製造方法は、基板の上にスイッチング素子を形成する工程と、前記スイッチング素子を覆う有機絶縁層を設ける工程と、前記有機絶縁層に、その下地の表面を露出する開口部を形成する工程と、前記基板の上に、前記スイッチング素子と電気的に接続される画素電極を形成する工程と、前記開口部内における前記画素電極の上に有機材料を含む有機EL層を形成する工程と、前記有機EL層の上に上部電極を設ける工程とを包含することを特徴とし、そのことにより上記目的が達成される。
【0026】
ある好ましい実施形態において、前記有機EL層を形成する工程の前に、前記有機絶縁層の上にバンクを形成する工程をさらに包含し、前記バンクは前記有機絶縁層の前記下地の表面を露出する開口領域を形成し、前記有機EL層を形成する工程において、前記開口領域に前記有機EL層を形成する。
【0027】
【発明の実施の形態】
本発明者は、表示装置に新たな膜を付加することなく、上記課題を解決する手段を模索し、その結果、有機材料を用いて形成された第2の層間絶縁膜のパターンを変更することによって、輝度の経時変化(輝度の上昇または低下)を飛躍的に抑制できることを見出した。具体的には、有機EL表示装置において、有機EL層の下の第2の層間絶縁膜を除去することにより、有機EL層で発生した熱を、第2の層間絶縁膜の熱伝導率よりも高い熱伝導率を有する第1の層間絶縁膜へ直接移動させることができる。
【0028】
以下、図を参照しながら、本発明による有機EL表示装置の実施形態を説明する。
【0029】
図3(a)は、本実施形態の有機EL表示装置の平面図であり、図3(b)および図3(c)は、図3(a)に示す有機EL表示装置のA−A線における断面を模式的に示す図である。ここでは、低温多結晶シリコンを有するTFTをスイッチング素子として備えるアクティブマトリクス型の有機EL表示装置を例に説明するが、本発明はこれに限定されない。
【0030】
図3(a)に示すように、本実施形態の有機EL表示装置は、画素ごとに、半導体層2aを含む薄膜トランジスタ(スイッチングTFT)101と、半導体層2bを含む薄膜トランジスタ(駆動TFT)102とを有している。薄膜トランジスタ101のゲート電極は走査ライン4aと接続され、薄膜トランジスタ101のソース電極はデータライン6aと接続されている。また、薄膜トランジスタ101のドレイン電極6bは、薄膜トランジスタ102のゲート電極4bと接続されている。薄膜トランジスタ102のソース電極は電源ライン6cと接続されている。典型的には、ソース電極6c、ドレイン電極6d、データライン6aおよび薄膜トランジスタ101のドレイン電極6dは、同一の導電(積層)膜から形成される。
【0031】
薄膜トランジスタ102は、図3(b)に示すように、ガラス基板1上に、多結晶シリコンなどの半導体層2b、ゲート絶縁膜3、ゲート電極4bおよびゲート配線4a、第1の層間絶縁膜5、ソース電極6cおよびドレイン電極6dが順次形成された構造を有している。
【0032】
第1の層間絶縁膜5の上には、第1の層間絶縁膜5のうち薄膜トランジスタ102が形成された領域を覆うように第2の層間絶縁膜7が形成されている。第2の層間絶縁膜7は、その下地となる表面(ここでは、第1の層間絶縁膜5)を露出する開口部を有している。第2の層間絶縁膜7の開口部内と、開口部周辺の第2の層間絶縁膜7の一部とを覆うように、画素電極8が形成されている。画素電極8は、第2の層間絶縁膜7に設けられたコンタクト部を介して、薄膜トランジスタ102のドレイン電極6dと接続されている。第2の層間絶縁膜7を覆うように、この画素における有機EL層10が形成される領域を規定するためのバンク9が形成されている。第2の層間絶縁膜7の開口部内の画素電極8上には、有機EL層10が形成されている。バンク9および有機EL層10の上には、上部電極11が設けられている。すなわち、第2の層間絶縁膜7に形成された開口部内に画素電極8、有機EL層10および上部電極11がこの順に積層された有機EL素子部が形成されており、画素電極8はその下地である第1の層間絶縁膜5に接触している。
【0033】
図3(c)に示すように、第1の層間絶縁膜5と第2の層間絶縁膜7との間に、窒化シリコンなどの無機材料を用いて形成された第3の層間絶縁膜12を設けてもよい。この場合は、画素電極8は、第3の層間絶縁膜12と接するように形成される。第3の層間絶縁膜12を設けると、画素電極8と駆動TFTのドレイン電極6dとの接続部における絶縁耐圧を向上させたり、層間絶縁膜における寄生容量を低減させたりすることができる。
【0034】
本実施形態の表示装置では、各画素につき2個のTFTを用いているが、各画素につき2〜4個のTFTを用いてもよい。各画素につき4個のTFTを用いると、TFTの閾値電圧や移動度の面内バラ付きを補償することが可能になる。
【0035】
なお、上記のように画素電極8の直下から有機絶縁層である第2の層間絶縁膜12を除去すると、画素電極8表面の平坦性が悪化するために表示装置の特性が劣化してしまうのではないかという懸念があった。それは画素電極8表面の状態がキャリア注入効率において重要だとの観点からである。しかし、その不安は杞憂であり有機絶縁層が無くても特性上全く問題ないという結論に達している。
【0036】
このように、本実施形態の有機EL表示装置では、薄膜トランジスタ102と、そのドレイン電極6dと画素電極8との接続部とが、有機絶縁層(第2の層間絶縁膜7)によって覆われている。そのため、前述したような第2の層間絶縁膜を有機材料で形成することの利点を維持できる。また、有機EL層10の下部には、第2の層間絶縁膜7が存在せず、従って画素電極8が無機絶縁層(第1の層間絶縁膜5または第3の層間絶縁膜12)と直接接触している。そのため、本実施形態の有機EL表示装置は、従来の表示装置と比べて高い放熱特性を有するので、熱による有機EL層10の劣化を抑えることができる。なお、本明細書において、「有機絶縁層」とは、有機材料を用いて形成された層を意味し、単層であっても多層構造を有していてもよい。同様に、「無機絶縁層」とは、無機材料を用いて形成された層を意味し、単層であっても多層構造を有していてもよい。
【0037】
また、特許文献2に開示された表示装置では、有機EL層からの光は、第2の層間絶縁膜を通過するときに第2の層間絶縁膜に吸収されるので、発光効率(外部取り出し効率)が低下するという問題があった。これに対し、本実施形態の有機EL表示装置では、有機EL層からの光は第2の層間絶縁膜7を通過せずに基板1の背面から出射されるので、上記のような問題はない。
【0038】
次に、図4を参照しながら、上記の有機EL表示装置の製造方法を説明する。図4(a)〜(f)は、図3(a)のA−A線における断面工程図である。
【0039】
まず、基板1の上に、公知の方法により薄膜トランジスタ102を形成する。基板1の上に、例えば多結晶シリコンなどの半導体膜2dを形成する。多結晶シリコンの形成は、一般的には、プラズマCVD(Chemical VaporDeposition)法や熱CVD法を用いてアモルファスシリコン膜を成膜した後、レーザーアニール法や固相成長法などによりアモルファスシリコン膜を結晶化させことによって行う。次いで、半導体膜2dを覆うゲート絶縁膜3を形成する。ゲート絶縁膜3の材料は、例えば酸化シリコンや窒化シリコンなどの無機材料である。この後、ゲート電極4bおよび走査ライン4aを、例えばタングステンやタンタルなどの高融点金属を用いて形成された膜をパターニングすることによって形成する。ゲート絶縁膜3の形成後またはゲート電極4bの形成後に、半導体膜2bにリンまたはホウ素をイオンドーピングすることによって、薄膜トランジスタ102をnチャネルとするか、pチャネルとするかを決定する。次いで、ゲート電極4bおよび走査ライン4aを覆う第1の層間絶縁膜5を形成する。第1の層間絶縁膜5の材料は、典型的には酸化シリコンや窒化シリコンなどの無機材料である。第1の層間絶縁膜5の上に導電膜を形成し、この導電膜から、ソース電極6cおよびドレイン電極6dを形成する。なお、この導電膜から、データライン6aおよびスイッチングTFTのドレイン電極6bも同時に形成できる。導電膜は、例えばアルミニウムなどの低抵抗金属膜または低抵抗金属膜を含む積層膜である。
【0040】
次に、図4(b)に示すように、第2の層間絶縁膜7を形成する。第2の層間絶縁膜7の材料として、例えばアクリル樹脂、ノボラック樹脂、ポリイミド樹脂などの有機系樹脂を用いることができる。なお、第2の層間絶縁膜7の材料は、次に行われる画素電極8を形成する工程において、画素電極8の材料(画素電極材料)を基板上に堆積させる時の基板の温度(例えば150℃)や、堆積させた画素電極材料をエッチングするプロセスに耐える材料であることが望ましい。また、アクリル樹脂などの感光性樹脂を用いると、プロセスを簡略できるので有利である。
【0041】
第2の層間絶縁膜7の形成は例えば以下のようにして行う。まず、感光性を有するアクリル樹脂を第1の層間絶縁膜5の上にスピンコート法で塗布する。次に、塗布されたアクリル樹脂を、第2の層間絶縁膜7は、画素電極8とドレイン電極6dとの接続部を設けるためのスルーホールと、第1の層間絶縁膜5のうち有機EL層10が形成される領域を露出する開口部とを有するようにパターニングする。パターニングは、塗布されたアクリル樹脂のプリベーク、フォトマスクを用いた露光、現像、ポストベークという一連のフォトリソグラフィープロセスにより行う。第2の層間絶縁層7の厚さは、好ましくは0.3μm以上である。
【0042】
0.3μm以上であれば、画素電極8とドレイン電極6dとの接続部において充分な絶縁耐圧が得られる。一方、第2の層間絶縁膜7の厚さは、3μm以下であることが好ましい。第2の層間絶縁膜7の材料にも依存するが、3μm以下であれば、十分な光透過率を確保することができるからである。
【0043】
次いで、図4(c)に示すように、ITO(Indium tin oxide)などの透明導電性材料を用いて画素電極8を形成する。本実施形態では、有機EL表示装置は、基板1の薄膜トランジスタ102などの回路素子が形成された面と反対側の面から光を取り出す、いわゆるボトムエミッション型である。従って、画素電極8は透明電極であり、陽極としての役割を担う。画素電極8の材料として、酸化インジウム錫(ITO)、酸化インジウム亜鉛(IZO)などを用いることができる。
【0044】
代わりに、基板1に設けられた上部電極11側から光を取り出すトップエミッション型有機EL表示装置であってもよい。この場合、画素電極8は反射電極であり、陰極としての役割を担う。画素電極8の材料として、金、白金などを用いることができる。
【0045】
画素電極8の形成は、例えば以下のようにして行う。まず、第2の層間絶縁膜7の表面および第1の層間絶縁膜5の表面(第2の層間絶縁膜7の開口部)に、例えば100nmの膜厚でITOを堆積する。この後、公知のフォトリソプロセスを用いてITOをパターニングすることにより、画素電極8を得る。画素電極8は、少なくとも第2の層間絶縁膜7の開口部に位置する第1の層間絶縁膜5の表面と、第2の層間絶縁膜7に設けられたスルーホール内部およびスルーホール上とを覆うように形成する。なお、ここでは、ITOのエッチングは塩化鉄(III)塩酸溶液を用いたウェットプロセスにより行う。
【0046】
この後、図4(d)に示すように、各画素における有機EL層10を形成する領域を規定するためのバンクを形成する。バンクは、耐熱性に優れ、かつ後の有機EL層を形成する工程において変化を起こさない材料を用いて形成されることが望ましい。典型的には、第2の層間絶縁膜7と同様の有機材料、例えばアクリル樹脂、ノボラック樹脂、ポリイミド樹脂などを用いることができる。第2の層間絶縁膜7と同様に、アクリル樹脂などの感光性樹脂の方がプロセス簡略化の観点から都合がよい。バンクの形成は、例えば以下のようにして行う。まず、アクリル樹脂をスピンコート法で塗布する。塗布されたアクリル樹脂は、プリベーク、露光、現像、ポストベークという一連のフォトリソプロセスによって、各画素において画素電極8の一部を露出する開口領域を形成するようにパターニングされる。これにより、バンク9が得られる。パターニング後、バンク9の表面に撥水性または撥油性を付与してもよい。撥水性または撥油性を付与すると、後の有機EL層を形成する工程において、例えば有機EL層の材料(以下、「有機EL材料」という)をインクジェット吐出したときに、その材料の液滴をバンク9の表面ではじくことにより、有機EL材料をバンク9によって形成された開口領域のみに付寄するためである。従って、バンク9の表面には、有機EL材料の種類に応じて、撥水性または撥油性を付与するとよい。撥水性または撥油性を付与するために、例えばバンク9の表面に四フッ化炭素ガスを用いてプラズマ処理を施すことにより、バンク9の表面をフッ素化する。または、バンク9の材料として、ポストベーク後に撥水性を示す樹脂を用いると、プラズマ処理などの撥水性を付与する工程を省略できる。
【0047】
バンク9を設けることにより、有機EL層10が第2の層間絶縁膜7の開口部内に形成されることが確実となる。そのため、有機EL層10で生じた熱を効率よく逃がすことができる。また、本実施形態の有機EL表示装置をフルカラー有機EL表示装置に適用する場合、バンク9があると、各RGB(赤、緑、青)画素用の有機EL材料が混ざらないので有利である。好ましくはバンク9の厚さは0.5μm以上である。0.5μm以上であれば、有機EL層10をより確実に第2の層間絶縁膜7の開口部に形成できる。一方、好ましくはバンク9の厚さは5μm以下である。5μmを超えると、パターン精度が悪化し高精細化が困難になるからである。
【0048】
次いで、図4(e)に示すように、各画素におけるバンク9によって形成された開口領域に有機EL層10を形成する。有機EL層10の形成方法として、低分子系の有機EL材料を用いる場合は蒸着法、高分子系の有機EL材料を用いる場合はスピンコート法やインクジェット法などが挙げられる。ここでは、高分子系の有機EL材料を用いて、高精細な形成が可能であり、かつRGBの塗り分けが可能なインクジェット法によって有機EL層10を形成する例について説明する。
【0049】
まず、高分子材料であるポリフルオレン誘導体を0.5wt%の濃度で有機溶剤(例えばテトラリン(テトラヒドロナフタレン))に溶解させることにより、インクを作製する。なお、高分子材料は、ポリスピロ誘導体、ポリパラフェニレンビニレン誘導体、ポリアリーレン、ポリビニルカルバゾールなどでもよい。また、高分子材料の濃度は、0.5wt%に限定されず、0.1wt%〜数wt%の範囲内で最適な濃度を選択すればよい。有機溶剤は、テトラリンに限定されず、インクジェット吐出工程時にノズルの目詰まりを生じにくく、かつ基板上に滴下されて即座に乾燥してしまわないような高沸点溶媒であればよい。有機溶剤として、例えば1,2,3,4−テトラメチルベンゼン、1,2,4−トリメチルベンゼン、1,3,5−トリメチルベンゼン、p−シメン、ドデシルベンゼンなども用いることができる。上記のインクをインクジェット塗布すると、塗布されたインクは、撥インク性の表面を有するバンク9によって、第2の層間絶縁膜7の開口部内に収められる。この後、塗布されたインクを100℃以上200℃以下の温度で1時間程度乾燥させる。この乾燥により、塗布されたインクが膜化し、例えば膜厚が70nm程度の有機EL層(発光層)10が得られる。ここで例示した有機EL材料を用いると、単層で有機EL層10を構成できるが、有機EL層10は、一般に多層構造(正孔輸送層/発光層/電子輸送層)を有する。多層構造を有する有機EL層10の厚さは、50nm以上であれば、電気的リークを抑制できるため好ましい。一方、有機EL層10の厚さは200nm以下が好ましい。厚さが200nmを超えると、駆動電圧の上昇を招くおそれがあるからである。
【0050】
有機EL層10の発光効率および輝度を向上させるために、有機EL層10は多層構造を有することが好ましい。例えば、上記の有機EL層(発光層)10を形成する前に、正孔輸送層を形成することが好ましい。正孔輸送層は、ポリエチレンジオキシチオフェン(REDOD)−ポリスチレンサルフォネート(PSS)やポリアニリンなどを用いて形成された膜である。まず、例えばPEDOTとPSSとを含む水溶液を、基板1の上にインクジェット法にて吐出する。この後、吐出された水溶液を200℃で乾燥・焼成することによって、厚さが例えば80nm程度の正孔輸送層を形成する。正孔輸送層の膜厚が、50nm以上であれば、画素電極8の表面に絶縁破壊を引き起こす原因となりうる凹凸(スパイク)がある場合であっても、正孔輸送層は略平坦な表面を有する、言い換えれば正孔輸送層がバッファ層としての役割を果たすので好ましい。一方、正孔輸送層の膜厚は、駆動電圧低減のため200nm以下であることが好ましい。
【0051】
次いで、図4(f)に示すように、上部電極11を例えば抵抗加熱蒸着法により形成する。上部電極11に用いる電極材料として、効率良く電子を注入できる低仕事関数金属を選択するとよい。低仕事関数金属として、リチウムなどのアルカリ金属、カルシウムやバリウムなどのアルカリ土類金属、それらと他の金属との合金、またはそれらのフッ化物や酸化物を広く用いることができる。このような低仕事関数金属は、化学的に活性であるものが多いので、酸素や水と接触すると変化を起こしやすく、その結果、表示特性を劣化させる可能性がある。そこで、上部電極11は、上記低仕事関数金属を用いた層と、その層を保護するためのキャップ電極層との2層構造とするのが好ましい。キャップ電極層の材料は、ボトムエミッション型有機EL表示装置の場合、例えばアルミニウムや銀である。また、トップエミッション型有機EL表示装置の場合、キャップ電極層はITO、IZOなどを用いて形成される。
【0052】
本実施形態では、有機EL表示装置はボトムエミッション型であるので、上部電極11は陰極として機能する。アクティブ駆動の場合、陰極は表示部の全面に形成すればよいので、上部電極11は細かなパターニングを行う必要はない。上部電極11は、例えば膜厚300nmのアルミニウム膜と膜厚5nmのカルシウム膜とを含む積層膜である。この積層膜を用いると、仕事関数が低いカルシウム膜を有機EL層10と直接コンタクトさせることにより、電子の注入効率を向上できる。また、アルミニウム膜を上面に設けると、アルミニウム膜は水や酸素を遮断するキャップ電極としての役割を果たすために、水や酸素の進入によるカルシウム膜の劣化を抑制できるので表示装置の信頼性が向上する。
【0053】
最後に、図4(f)の基板1と、UV硬化シール樹脂ディスペンス、ガラスからなる対向基板とを貼合せる。これにより、例えばITO(画素電極8=陽極)/PEDOT(正孔輸送層)/ポリフルオレン誘導体(有機EL層10)/カルシウム(上部電極11の下層=陰極)/アルミニウム(上部電極11の上層=キャップ電極)という積層体を外気から遮断するために封止することができる。このようにして、有機EL表示装置が得られる。
【0054】
図3(c)に示すように、本実施形態では、有機EL表示装置は第1の層間絶縁膜5と第2の層間絶縁膜7との間に第3の層間絶縁膜12を有していてもよい。第3の層間絶縁膜12は、例えば以下の方法で形成することができる。第3の層間絶縁膜12の形成は、上述した方法において、第1の層間絶縁膜5を形成した後、第2の層間絶縁膜を形成する前に行う。まず、第1の層間絶縁膜5の上に、CVD法やスパッタ法などの真空成膜プロセスを用いて無機材料を堆積させることにより、膜を形成する。無機材料として、酸化シリコン、窒化シリコン、酸化アルミニウムおよび窒化アルミニウムのうちの1種類、またはこのうちの複数種類を組み合わせて用いることができる。上記の材料のうち複数種類を含む膜には、1種類の材料のみを含む膜と比べて、ピンホールなどの欠陥が生じにくい。膜の厚さは150nm以上300nm以下であることが好ましい。この膜を形成した後、フォトレジストの塗布、プリベーク、露光、現像、ポストベーク、エッチング、レジスト剥離という公知の一連のフォトリソプロセスにより、膜のパターニングを行う。これにより、第3の層間絶縁膜12が得られる。エッチングには、例えばドライプロセスであるRIE(Reactive Ion Etching)を用いる。この後、図4を参照して前述した工程と同様の工程を行い、図3(c)に示すような有機EL表示装置が得られる。
【0055】
本実施形態では、上述したようなプロセスによって有機EL表示装置が製造されるので、従来の有機EL表示装置のプロセスに新規プロセスを追加する必要がない。従来のプロセスとの変更点は、第2の層間絶縁膜7をエッチングするときに用いるフォトマスクのパターンのみである。従って、製造コストを増大させることなく、信頼性の高い有機EL表示装置を製造することができる。
【0056】
次に、本実施形態の有機EL表示装置と比較するために、参考例として、有機EL層10の下に有機絶縁層が存在する有機EL表示装置を作製した。以下に、図を参照しながら、参考例の有機EL表示装置の構成および製造方法を説明する。
【0057】
図5(a)は、参考例の有機EL表示装置の平面図であり、図5(b)および図5(c)は、図5(a)に示す有機EL表示装置のA−A線における断面を模式的に示す図である。図5および図6では、図3および図4と実質的に同様の要素に図3および図4と同じ参照符号を付している。
【0058】
図5(b)および(c)から明らかなように、参考例の有機EL表示装置では、有機EL層10の下に画素電極8を隔てて第2の層間絶縁膜7が形成されている。また、参考例および上記実施形態におけるバンク9の上面と有機EL層10の上面との高さの差は同じであるため、参考例におけるバンク9は、上記実施形態におけるバンク9と比べて第2の層間絶縁膜7の厚さの分だけ高い。その他の構成は、基本的に図3(b)および(c)に示す上記実施形態の表示装置と実質的に同様である。
【0059】
図6(a)〜(f)に、参考例の有機EL表示装置の製造方法を説明する断面模式図を示す。参考例では、図6(b)に示すように、第2の層間絶縁膜7に図4(b)に示すような開口部を設けない。すなわち、上記実施形態とは、第2の層間絶縁膜7のパターニングの際に用いるフォトマスクの形状が異なる。また、参考例の表示装置では、第2の層間絶縁膜7の厚さの分だけ、バンク9を高く形成する。これらの点以外は、参考例の有機EL表示装置は、図4(a)〜(f)に示す上記実施形態の製造方法と実質的に同様の方法で製造される。
【0060】
図5(b)に示す参考例の有機EL表示装置と、図3(b)に示す上記実施形態の有機EL表示装置とについて、以下のように表示特性の比較・検討を行ったので、その結果を説明する。ここでは、参考例の有機EL表示装置は、例えば酸化シリコンを用いて形成した第1の層間絶縁膜5を有する。また、上記実施形態の有機EL表示装置として、それぞれ酸化シリコン、窒化シリコン、酸化アルミニウム及び窒化アルミニウムを用いて形成した第1の層間絶縁膜を有する4種類のサンプル(表示装置A、B、C及びDとする)を用いる。なお、いずれの表示装置(参考例および上記実施形態)も、第2の層間絶縁膜7はポリフルオレン誘導体を用いて形成する。
【0061】
図7は、参考例および上記実施形態の有機EL表示装置を、電源ラインへ印加する電圧が一定の状態で駆動させた場合の、電圧印加時間(経過時間)と表示の輝度との関係を比較したグラフである。図7では、電圧印加時間は任意単位であり、1任意単位は10分〜1時間程度である。また、輝度の値(規格化輝度)は、初期値を1としたときの規格化した値である。
【0062】
図7から明らかなように、参考例の有機EL表示装置では、電圧印加から1任意単位の時間が経過すると、規格化輝度は1から1.5へ、1.5倍に増大することがわかる。前述したように、このような輝度上昇は焼きつき現象を引き起こす可能性がある。
【0063】
これと比べて、有機EL層10の下部から有機絶縁層である第2の層間絶縁膜を取り除き、かつ第1の層間絶縁膜を無機材料を用いて形成した本実施形態の有機EL表示装置はいずれも、規格化輝度の変化(上昇)が小さく抑えられている。これは、有機EL層10で生じた熱を効率良く逃がすことができるので、熱による有機EL層10の劣化が抑制されたためと考えられる。従って、本実施形態の有機EL表示装置の構成は、表示特性の安定化に大きく寄与することが明らかになった。
【0064】
次に、本実施形態の有機EL表示装置において、有機EL層10で生じた熱をより効率良く逃がすことにより、表示特性をより安定化させるためには、第1の層間絶縁膜5(または第3の層間絶縁膜12)の材料として何を用いたら良いかを検討したので、その結果を説明する。
【0065】
表示装置A〜Dの輝度の変化を比較すると、表示装置A(第1の層間絶縁膜5の材料:酸化シリコン)の輝度は、1任意単位の時間経過後には電圧印加時の輝度の約1.2倍に上昇している。表示装置B(第1の層間絶縁膜5の材料:窒化シリコン)の1任意単位時間後の輝度は、電圧印加時の輝度の約1.1倍であり、輝度の変化は表示装置Aよりも小さく抑えられている。表示装置C(第1の層間絶縁膜5の材料:窒化アルミニウム)の1任意単位時間後の輝度は電圧印加時からほとんど上昇しておらず(電圧印加時の輝度の約1.05倍以下)、安定した表示特性が得られている。図示していないが、第1の層間絶縁膜5の材料として酸化アルミニウムを用いると、輝度の経時変化は表示装置Bの輝度の経時変化とほぼ同等であった。
【0066】
なお、第3の層間絶縁膜12を有する表示装置(図3(c))の場合は、第3の層間絶縁膜12の材料として酸化シリコン、窒化シリコン、窒化アルミニウムを用いた表示装置はそれぞれ、上記の表示装置A、B、Cと略同様の輝度の変化を示す。
【0067】
熱による有機EL層10の劣化に起因する表示特性の変化は、図7に示すような10分以上1時間以内(1任意単位の時間)という比較的短い時間内に生じる発光輝度の上昇に限定されない。表示装置の有機EL層や正孔輸送層に用いる材料が異なると、発光輝度が低下する表示装置や、数百〜数千時間の長時間に亘って表示特性が変化する表示装置も存在することも確認されている。これらの表示特性の変化は何れも、有機EL層10の下部に位置する第2の層間絶縁膜を取り除くことによって小さく抑えることができる。
【0068】
上述したように、本発明の有機EL表示装置では、有機EL層10の下に有機絶縁層(第2の層間絶縁膜7)が存在しないので、有機EL層10の下の画素電極8は無機絶縁層(第1の層間絶縁膜5または第3の層間絶縁膜12)と接している。これにより、有機EL層10で生じた熱を効率良く逃がすことができるので、有機EL層10の熱による劣化を抑制でき、その結果表示装置の表示特性を安定化させることができる。なお、第1の層間絶縁膜5または第3の層間絶縁膜12の無機材料として放熱性の高い材料を選択すると、表示装置の放熱特性をより向上させることができるので有利である。また、表示装置にバンク9を設ける場合、バンク9の厚さを第2の層間絶縁膜7の厚さの分小さくすることができるので、製造コストを低減できる。
【0069】
本発明は、モノクロおよびフルカラー有機EL表示装置の何れにも適用できる。また、本発明はトップエミッション型およびボトムエミッション型有機EL表示装置の何れにも適用できる。ボトムエミッション型有機EL表示装置に適用すると、有機EL層10からの光は第2の層間絶縁膜7を通過することなく基板1に達するので、光のロスを低減できるため特に有利である。
【0070】
さらに、本発明によると、このような構成の有機EL表示装置を、従来の有機EL表示装置の製造方法に新規プロセスを追加したり、製造コストを増大させたりすることなく製造できる。
【0071】
【発明の効果】
電圧印加時間の経過に伴って発光輝度が急激に上昇する現象を抑制することにより、焼きつき現象の発生が抑制された有機EL表示装置を提供できる。また、そのような表示装置を、製造コストを増大させたり、製造プロセスを複雑にしたりすることなく、簡便に製造する方法を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】アクティブ駆動有機EL装置における1つの画素についての等価回路を示す図である。
【図2】従来の有機EL表示装置に一定電圧を印加した場合の時間と輝度の関係を示すグラフである。
【図3】(a)は本発明による実施形態の有機EL表示装置の平面図であり、(b)および(c)は(a)に示す有機EL表示装置のA−A線における断面を模式的に示す図である。
【図4】(a)〜(f)は、本発明による実施形態の有機EL表示装置の製造方法を説明するための図3(a)のA−A線における模式的な断面工程図である。
【図5】(a)は参考例の有機EL表示装置の平面図であり、(b)および(c)は(a)に示す有機EL表示装置のA−A線における断面を模式的に示す図である。
【図6】(a)〜(f)は、本発明による実施形態の有機EL表示装置の製造方法を説明するための図5(a)のA−A線における模式的な断面工程図である。
【図7】本発明の有機EL表示装置および参考例の有機EL表示装置に一定電圧を印加した場合の時間と輝度の関係を示すグラフである。
【符号の説明】
1 基板
2 半導体膜
3 ゲート絶縁膜
4b ゲート電極
5 第1の層間絶縁膜
7 第2の層間絶縁膜
8 画素電極
9 バンク
10 有機EL層
11 上部電極
12 第3の層間絶縁膜
101、102 薄膜トランジスタ
【発明の属する技術分野】
本発明は,有機エレクトロルミネッセンス(以下、「EL」と略すことがある)表示装置に関し、より詳細には、薄膜トランジスタ(以下、「TFT」と略すことがある)などのアクティブ素子を備えたアクティブマトリックス駆動有機EL表示装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
携帯電話や携帯情報端末に用いられる表示装置には、表示の画質を高めることや、消費電力を低減させることなどが要求されている。これらの要求に応え得る表示装置として、液晶表示装置に代わって、有機EL表示装置が有望視されている。有機EL表示装置には、パッシブ駆動法およびアクティブ駆動法の2種類の駆動法がある。パッシブ駆動法では、TFTなどのアクティブ素子を備える必要がないため、製造コストが低いという利点がある。しかし、ある特定の画素に着目した場合、選択期間((選択期間)=(フレーム周期)/(走査ライン数))内でのみ点灯させるために、瞬間的に高輝度で発光させる必要がある。従って、パッシブ駆動有機EL表示装置の有機EL層は劣化しやすく、その結果、表示の高輝度化と有機EL層の長寿命化との両立は非常に困難である。一方、アクティブ駆動法では、TFTなどのアクティブ素子を形成する必要があるため、製造コストは高くなる。しかし、TFTの構成によって、フレーム期間中に常に有機EL層に電流を供給することが可能になる。これにより、電流のピーク値を低減できるので、有機EL層の長寿命化を図ることができる。
【0003】
アクティブ駆動有機EL表示装置におけるアクティブ素子としては、一般的には、電荷のドリフト移動度が高く、かつ有機EL層への電流供給が容易であることから、多結晶シリコンTFTが用いられる。
【0004】
図1に、アクティブ駆動有機EL装置における1つの画素についての等価回路を示す。ここでは、説明を簡略化するために、1画素につき2個のTFTを用いている。このような装置の構成は、例えば特許文献1に開示されている。図1に示される2個の薄膜トランジスタ51および52のうち、薄膜トランジスタ51は「スイッチングTFT」と呼ばれ、画素の選択/非選択を決定するトランジスタである。薄膜トランジスタ52は、「駆動TFT」と呼ばれ、電流を有機EL層53に一定期間供給する役割を担うトランジスタである。走査ライン54に信号が加わると薄膜トランジスタ51はオン状態となる。このオン状態の間に、表示する階調レベルに対応した信号がデータライン55に入力されると、薄膜トランジスタ52のゲート(−ソース間)容量に電荷が蓄積される。このゲート容量に蓄積された電荷量に応じて、薄膜トランジスタ52のチャネル抵抗が変化する。電源ライン56から一定電圧(または一定電流)が供給されると、薄膜トランジスタ52のチャネル部の抵抗に応じて、有機EL層53の輝度(階調)が決定される。データライン55から入力されて薄膜トランジスタ52のゲート容量に蓄えられた電荷は、フレーム期間を通して保持される必要があるので、必要に応じて補助容量を付加することも可能である。
【0005】
このような構成を有するTFT駆動有機EL表示装置において、薄膜トランジスタ(スイッチングTFT)51がn型、薄膜トランジスタ(駆動TFT)52がp型の場合、例えば走査ライン(ゲートライン)54に+15V、データライン(ソースライン)55に±0V、電源ライン56に+8Vを印加すると、有機EL層3に電荷が供給されることにより、有機EL層3が点灯する。
【0006】
図1に示すようなTFTなどのアクティブ素子を備えたアクティブ駆動有機EL表示装置には、以下のような問題がある。
【0007】
図2は、上記有機EL表示装置の有機EL層に一定電圧を印加した場合の時間と輝度の関係を示す図である。以下の例では電源ラインに定電圧を印加するが、代わりに定電流を流しても本質的に同様の結果が得られる。図2では、電圧印加時間は任意単位である。例えば1任意単位は10分〜1時間程度であり、有機EL層の寿命に比べて極めて短い時間である。電圧印加時間を任意単位としているのは、有機EL層の材料や膜厚、正孔輸送層、電子輸送層の構成などによって、駆動を行う最適電圧の絶対値や得られる輝度の値及び経時変化の様子が異なるからである。また、輝度の値(規格化輝度)は、初期値を1として規格化した値である。図2から、電圧印加から1任意単位の時間が経過すると、規格化輝度は1から1.5へ、1.5倍に増大していることがわかる。
【0008】
なお、上記では輝度の上昇について説明したが、表示装置の有機EL層や正孔輸送層に用いる材料が異なると、電圧印加から1任意単位の時間が経過すると輝度が低下する現象もみられることがわかっている。
【0009】
このように、発光輝度が時間経過によって急激に上昇または低下すると、全表示領域のうち、ある特定のパターンを表示させた領域のみの輝度が上昇または低下するので、焼きつき現象を引き起こす可能性がある。
【0010】
図2に示すような輝度の上昇または低下(以下、「表示特性の変化」ということがある)は、様々な要因が複合されて生じると考えられている。主な要因の一つに、有機EL層の劣化(有機EL層に含まれる高分子材料の構造変化など)による、有機EL層の電圧−輝度特性(または電流−輝度特性)の変化が挙げられる。このような有機EL層の劣化は、例えば、有機EL層の発光に伴う熱によって引き起こされる。
【0011】
一般的な蛍光性発光材料を用いて有機EL層を形成した場合、有機EL層で生成される励起子のうち発光に寄与する励起子の割合は25%程度と言われている。残りの75%の励起子のうちの大部分は熱失活するため、有機EL層における発熱量は大きい。また、発熱が有機EL層の電圧−輝度特性に与える影響は、輝度が高くなるほど大きくなる。
【0012】
従って、このような表示特性の変化を防ぐためには、有機EL表示装置は、有機EL層で生じた熱を効率良く逃がすことができる、すなわち放熱特性が高い装置構成を有する必要がある。
【0013】
これに対し、従来のアクティブ駆動有機EL表示装置では、以下の理由から、放熱特性を向上させるのは困難であった。従来のアクティブ駆動有機EL表示装置では、基板の上に、無機材料を用いて層間絶縁膜(以下、「第1の層間絶縁膜」という)が形成され、この上に別の層間絶縁膜(以下、「第2の層間絶縁膜」という)が形成されている。第2の層間絶縁膜の上には、画素電極を隔てて有機EL層が形成されている。このような表示装置において、第2の層間絶縁膜は典型的には有機材料を用いて形成されているので、一般的に熱伝導率が小さい。従って、有機EL層で生じた熱は下方から放出されにくいため、装置内部に篭りやすい。
【0014】
上記第2の層間絶縁膜が典型的に有機材料を用いて形成されているのは、以下のような利点があるからである。
【0015】
画素電極は、第2の層間絶縁膜およびそのコンタクト部の上に導電膜を設けた後、その導電膜をエッチングでパターニングすることによって形成される。第2の層間絶縁膜が有機材料からなる膜(有機膜)であれば、導電膜をエッチングするときに、第2の層間絶縁膜の下にあるソース電極などをエッチングしてしまうことを防止できる。また、画素電極とドレイン電極との接続部近傍における絶縁耐圧を向上できるので、リーク電流を充分に防止できる。さらに、有機材料は無機材料よりも誘電率が低いので、第2の層間絶縁膜における寄生容量を低減できる。
【0016】
そこで、例えば特許文献2には、上記の利点を維持しながら放熱特性を向上させることができる表示装置の構成が開示されている。この装置では、第2の層間絶縁膜の上方に、熱伝導率が高い無機膜が設けられている。この無機膜によって、有機EL層で生じた熱を発散させることができるので、有機EL層の熱による劣化を防止できる。このような構成の有機EL表示装置を用いれば、有機EL層の膜面と平行な方向に熱が逃げるため、前述したような輝度が上昇または低下する現象を抑制できると考えられる。
【0017】
【特許文献1】
特開平5−107561号公報
【特許文献2】
特開2001−52873号公報
【0018】
【発明が解決しようとする課題】
特許文献2に開示される有機EL表示装置では、有機EL層で生じた熱を従来より効率良く逃がすことができるので、有機EL層の劣化を抑制できる。しかしながら、有機EL層の下に無機膜を形成するための新たな成膜プロセス(真空プロセス)およびパターニングプロセスが必要となる。その結果、表示装置の製造コストが増大する。さらに、この装置では、有機EL層で発生した光は、第2の層間絶縁膜の中を通過する。この通過の際、第2の層間絶縁膜によって光の一部が吸収されるので、発光効率(外部取り出し効率)が低下するという問題もある。特に、第2の層間絶縁膜の透過率が小さいと、発光効率の低下が大きくなる。
【0019】
一方、第2の層間絶縁膜を無機材料を用いて形成することも考えられる。例えば、特許文献2には、TFTによる段差の平坦化が可能ならば、無機膜を第2の層間絶縁膜として用いても良い、との記載がある。しかし、第2の層間絶縁膜を無機材料を用いて形成すると、有機材料を用いることによる前述したような利点が得られなくなる。
【0020】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、その主な目的は、電圧印加時間の経過に伴って生じる表示特性の変化(発光輝度が上昇または低下する現象)を抑制することにより、焼きつき現象の発生が抑制された有機EL表示装置を提供することである。また、そのような表示装置を、製造コストを増大させたり、製造プロセスを複雑にしたりすることなく、簡便に製造できる方法を提供することである。
【0021】
【課題を解決するための手段】
本発明の有機エレクトロルミネッセンス表示装置は、基板と、前記基板の上に形成されたスイッチング素子と、前記スイッチング素子を覆う有機絶縁層であって、その下地の表面を露出する開口部を有する有機絶縁層と、前記基板の上に形成された画素電極であって、前記スイッチング素子と電気的に接続された画素電極と、上部電極と、前記画素電極と前記上部電極とに挟まれた有機材料を含む有機EL層とを備え、前記有機EL層が前記開口部内に形成されていることを特徴とし、そのことにより上記目的が達成される。
【0022】
ある好ましい実施形態において、前記有機絶縁層の上に形成されたバンクをさらに備え、前記バンクは前記有機EL層の前記開口部内に、前記下地の表面を露出する開口領域を形成し、前記有機EL層は前記開口領域内に形成されている。
【0023】
ある好ましい実施形態において、前記画素電極と前記基板との間に無機絶縁層をさらに有し、前記下地の表面は前記無機絶縁層の表面である。
【0024】
前記無機絶縁層は窒化アルミニウムを含んでもよい。前記無機絶縁層は酸化アルミニウムを含んでもよい。前記無機絶縁層は窒化シリコンを含んでもよい。また、前記無機絶縁層は酸化シリコンを含んでもよい。
【0025】
本発明の有機エレクトロルミネッセンス表示装置の製造方法は、基板の上にスイッチング素子を形成する工程と、前記スイッチング素子を覆う有機絶縁層を設ける工程と、前記有機絶縁層に、その下地の表面を露出する開口部を形成する工程と、前記基板の上に、前記スイッチング素子と電気的に接続される画素電極を形成する工程と、前記開口部内における前記画素電極の上に有機材料を含む有機EL層を形成する工程と、前記有機EL層の上に上部電極を設ける工程とを包含することを特徴とし、そのことにより上記目的が達成される。
【0026】
ある好ましい実施形態において、前記有機EL層を形成する工程の前に、前記有機絶縁層の上にバンクを形成する工程をさらに包含し、前記バンクは前記有機絶縁層の前記下地の表面を露出する開口領域を形成し、前記有機EL層を形成する工程において、前記開口領域に前記有機EL層を形成する。
【0027】
【発明の実施の形態】
本発明者は、表示装置に新たな膜を付加することなく、上記課題を解決する手段を模索し、その結果、有機材料を用いて形成された第2の層間絶縁膜のパターンを変更することによって、輝度の経時変化(輝度の上昇または低下)を飛躍的に抑制できることを見出した。具体的には、有機EL表示装置において、有機EL層の下の第2の層間絶縁膜を除去することにより、有機EL層で発生した熱を、第2の層間絶縁膜の熱伝導率よりも高い熱伝導率を有する第1の層間絶縁膜へ直接移動させることができる。
【0028】
以下、図を参照しながら、本発明による有機EL表示装置の実施形態を説明する。
【0029】
図3(a)は、本実施形態の有機EL表示装置の平面図であり、図3(b)および図3(c)は、図3(a)に示す有機EL表示装置のA−A線における断面を模式的に示す図である。ここでは、低温多結晶シリコンを有するTFTをスイッチング素子として備えるアクティブマトリクス型の有機EL表示装置を例に説明するが、本発明はこれに限定されない。
【0030】
図3(a)に示すように、本実施形態の有機EL表示装置は、画素ごとに、半導体層2aを含む薄膜トランジスタ(スイッチングTFT)101と、半導体層2bを含む薄膜トランジスタ(駆動TFT)102とを有している。薄膜トランジスタ101のゲート電極は走査ライン4aと接続され、薄膜トランジスタ101のソース電極はデータライン6aと接続されている。また、薄膜トランジスタ101のドレイン電極6bは、薄膜トランジスタ102のゲート電極4bと接続されている。薄膜トランジスタ102のソース電極は電源ライン6cと接続されている。典型的には、ソース電極6c、ドレイン電極6d、データライン6aおよび薄膜トランジスタ101のドレイン電極6dは、同一の導電(積層)膜から形成される。
【0031】
薄膜トランジスタ102は、図3(b)に示すように、ガラス基板1上に、多結晶シリコンなどの半導体層2b、ゲート絶縁膜3、ゲート電極4bおよびゲート配線4a、第1の層間絶縁膜5、ソース電極6cおよびドレイン電極6dが順次形成された構造を有している。
【0032】
第1の層間絶縁膜5の上には、第1の層間絶縁膜5のうち薄膜トランジスタ102が形成された領域を覆うように第2の層間絶縁膜7が形成されている。第2の層間絶縁膜7は、その下地となる表面(ここでは、第1の層間絶縁膜5)を露出する開口部を有している。第2の層間絶縁膜7の開口部内と、開口部周辺の第2の層間絶縁膜7の一部とを覆うように、画素電極8が形成されている。画素電極8は、第2の層間絶縁膜7に設けられたコンタクト部を介して、薄膜トランジスタ102のドレイン電極6dと接続されている。第2の層間絶縁膜7を覆うように、この画素における有機EL層10が形成される領域を規定するためのバンク9が形成されている。第2の層間絶縁膜7の開口部内の画素電極8上には、有機EL層10が形成されている。バンク9および有機EL層10の上には、上部電極11が設けられている。すなわち、第2の層間絶縁膜7に形成された開口部内に画素電極8、有機EL層10および上部電極11がこの順に積層された有機EL素子部が形成されており、画素電極8はその下地である第1の層間絶縁膜5に接触している。
【0033】
図3(c)に示すように、第1の層間絶縁膜5と第2の層間絶縁膜7との間に、窒化シリコンなどの無機材料を用いて形成された第3の層間絶縁膜12を設けてもよい。この場合は、画素電極8は、第3の層間絶縁膜12と接するように形成される。第3の層間絶縁膜12を設けると、画素電極8と駆動TFTのドレイン電極6dとの接続部における絶縁耐圧を向上させたり、層間絶縁膜における寄生容量を低減させたりすることができる。
【0034】
本実施形態の表示装置では、各画素につき2個のTFTを用いているが、各画素につき2〜4個のTFTを用いてもよい。各画素につき4個のTFTを用いると、TFTの閾値電圧や移動度の面内バラ付きを補償することが可能になる。
【0035】
なお、上記のように画素電極8の直下から有機絶縁層である第2の層間絶縁膜12を除去すると、画素電極8表面の平坦性が悪化するために表示装置の特性が劣化してしまうのではないかという懸念があった。それは画素電極8表面の状態がキャリア注入効率において重要だとの観点からである。しかし、その不安は杞憂であり有機絶縁層が無くても特性上全く問題ないという結論に達している。
【0036】
このように、本実施形態の有機EL表示装置では、薄膜トランジスタ102と、そのドレイン電極6dと画素電極8との接続部とが、有機絶縁層(第2の層間絶縁膜7)によって覆われている。そのため、前述したような第2の層間絶縁膜を有機材料で形成することの利点を維持できる。また、有機EL層10の下部には、第2の層間絶縁膜7が存在せず、従って画素電極8が無機絶縁層(第1の層間絶縁膜5または第3の層間絶縁膜12)と直接接触している。そのため、本実施形態の有機EL表示装置は、従来の表示装置と比べて高い放熱特性を有するので、熱による有機EL層10の劣化を抑えることができる。なお、本明細書において、「有機絶縁層」とは、有機材料を用いて形成された層を意味し、単層であっても多層構造を有していてもよい。同様に、「無機絶縁層」とは、無機材料を用いて形成された層を意味し、単層であっても多層構造を有していてもよい。
【0037】
また、特許文献2に開示された表示装置では、有機EL層からの光は、第2の層間絶縁膜を通過するときに第2の層間絶縁膜に吸収されるので、発光効率(外部取り出し効率)が低下するという問題があった。これに対し、本実施形態の有機EL表示装置では、有機EL層からの光は第2の層間絶縁膜7を通過せずに基板1の背面から出射されるので、上記のような問題はない。
【0038】
次に、図4を参照しながら、上記の有機EL表示装置の製造方法を説明する。図4(a)〜(f)は、図3(a)のA−A線における断面工程図である。
【0039】
まず、基板1の上に、公知の方法により薄膜トランジスタ102を形成する。基板1の上に、例えば多結晶シリコンなどの半導体膜2dを形成する。多結晶シリコンの形成は、一般的には、プラズマCVD(Chemical VaporDeposition)法や熱CVD法を用いてアモルファスシリコン膜を成膜した後、レーザーアニール法や固相成長法などによりアモルファスシリコン膜を結晶化させことによって行う。次いで、半導体膜2dを覆うゲート絶縁膜3を形成する。ゲート絶縁膜3の材料は、例えば酸化シリコンや窒化シリコンなどの無機材料である。この後、ゲート電極4bおよび走査ライン4aを、例えばタングステンやタンタルなどの高融点金属を用いて形成された膜をパターニングすることによって形成する。ゲート絶縁膜3の形成後またはゲート電極4bの形成後に、半導体膜2bにリンまたはホウ素をイオンドーピングすることによって、薄膜トランジスタ102をnチャネルとするか、pチャネルとするかを決定する。次いで、ゲート電極4bおよび走査ライン4aを覆う第1の層間絶縁膜5を形成する。第1の層間絶縁膜5の材料は、典型的には酸化シリコンや窒化シリコンなどの無機材料である。第1の層間絶縁膜5の上に導電膜を形成し、この導電膜から、ソース電極6cおよびドレイン電極6dを形成する。なお、この導電膜から、データライン6aおよびスイッチングTFTのドレイン電極6bも同時に形成できる。導電膜は、例えばアルミニウムなどの低抵抗金属膜または低抵抗金属膜を含む積層膜である。
【0040】
次に、図4(b)に示すように、第2の層間絶縁膜7を形成する。第2の層間絶縁膜7の材料として、例えばアクリル樹脂、ノボラック樹脂、ポリイミド樹脂などの有機系樹脂を用いることができる。なお、第2の層間絶縁膜7の材料は、次に行われる画素電極8を形成する工程において、画素電極8の材料(画素電極材料)を基板上に堆積させる時の基板の温度(例えば150℃)や、堆積させた画素電極材料をエッチングするプロセスに耐える材料であることが望ましい。また、アクリル樹脂などの感光性樹脂を用いると、プロセスを簡略できるので有利である。
【0041】
第2の層間絶縁膜7の形成は例えば以下のようにして行う。まず、感光性を有するアクリル樹脂を第1の層間絶縁膜5の上にスピンコート法で塗布する。次に、塗布されたアクリル樹脂を、第2の層間絶縁膜7は、画素電極8とドレイン電極6dとの接続部を設けるためのスルーホールと、第1の層間絶縁膜5のうち有機EL層10が形成される領域を露出する開口部とを有するようにパターニングする。パターニングは、塗布されたアクリル樹脂のプリベーク、フォトマスクを用いた露光、現像、ポストベークという一連のフォトリソグラフィープロセスにより行う。第2の層間絶縁層7の厚さは、好ましくは0.3μm以上である。
【0042】
0.3μm以上であれば、画素電極8とドレイン電極6dとの接続部において充分な絶縁耐圧が得られる。一方、第2の層間絶縁膜7の厚さは、3μm以下であることが好ましい。第2の層間絶縁膜7の材料にも依存するが、3μm以下であれば、十分な光透過率を確保することができるからである。
【0043】
次いで、図4(c)に示すように、ITO(Indium tin oxide)などの透明導電性材料を用いて画素電極8を形成する。本実施形態では、有機EL表示装置は、基板1の薄膜トランジスタ102などの回路素子が形成された面と反対側の面から光を取り出す、いわゆるボトムエミッション型である。従って、画素電極8は透明電極であり、陽極としての役割を担う。画素電極8の材料として、酸化インジウム錫(ITO)、酸化インジウム亜鉛(IZO)などを用いることができる。
【0044】
代わりに、基板1に設けられた上部電極11側から光を取り出すトップエミッション型有機EL表示装置であってもよい。この場合、画素電極8は反射電極であり、陰極としての役割を担う。画素電極8の材料として、金、白金などを用いることができる。
【0045】
画素電極8の形成は、例えば以下のようにして行う。まず、第2の層間絶縁膜7の表面および第1の層間絶縁膜5の表面(第2の層間絶縁膜7の開口部)に、例えば100nmの膜厚でITOを堆積する。この後、公知のフォトリソプロセスを用いてITOをパターニングすることにより、画素電極8を得る。画素電極8は、少なくとも第2の層間絶縁膜7の開口部に位置する第1の層間絶縁膜5の表面と、第2の層間絶縁膜7に設けられたスルーホール内部およびスルーホール上とを覆うように形成する。なお、ここでは、ITOのエッチングは塩化鉄(III)塩酸溶液を用いたウェットプロセスにより行う。
【0046】
この後、図4(d)に示すように、各画素における有機EL層10を形成する領域を規定するためのバンクを形成する。バンクは、耐熱性に優れ、かつ後の有機EL層を形成する工程において変化を起こさない材料を用いて形成されることが望ましい。典型的には、第2の層間絶縁膜7と同様の有機材料、例えばアクリル樹脂、ノボラック樹脂、ポリイミド樹脂などを用いることができる。第2の層間絶縁膜7と同様に、アクリル樹脂などの感光性樹脂の方がプロセス簡略化の観点から都合がよい。バンクの形成は、例えば以下のようにして行う。まず、アクリル樹脂をスピンコート法で塗布する。塗布されたアクリル樹脂は、プリベーク、露光、現像、ポストベークという一連のフォトリソプロセスによって、各画素において画素電極8の一部を露出する開口領域を形成するようにパターニングされる。これにより、バンク9が得られる。パターニング後、バンク9の表面に撥水性または撥油性を付与してもよい。撥水性または撥油性を付与すると、後の有機EL層を形成する工程において、例えば有機EL層の材料(以下、「有機EL材料」という)をインクジェット吐出したときに、その材料の液滴をバンク9の表面ではじくことにより、有機EL材料をバンク9によって形成された開口領域のみに付寄するためである。従って、バンク9の表面には、有機EL材料の種類に応じて、撥水性または撥油性を付与するとよい。撥水性または撥油性を付与するために、例えばバンク9の表面に四フッ化炭素ガスを用いてプラズマ処理を施すことにより、バンク9の表面をフッ素化する。または、バンク9の材料として、ポストベーク後に撥水性を示す樹脂を用いると、プラズマ処理などの撥水性を付与する工程を省略できる。
【0047】
バンク9を設けることにより、有機EL層10が第2の層間絶縁膜7の開口部内に形成されることが確実となる。そのため、有機EL層10で生じた熱を効率よく逃がすことができる。また、本実施形態の有機EL表示装置をフルカラー有機EL表示装置に適用する場合、バンク9があると、各RGB(赤、緑、青)画素用の有機EL材料が混ざらないので有利である。好ましくはバンク9の厚さは0.5μm以上である。0.5μm以上であれば、有機EL層10をより確実に第2の層間絶縁膜7の開口部に形成できる。一方、好ましくはバンク9の厚さは5μm以下である。5μmを超えると、パターン精度が悪化し高精細化が困難になるからである。
【0048】
次いで、図4(e)に示すように、各画素におけるバンク9によって形成された開口領域に有機EL層10を形成する。有機EL層10の形成方法として、低分子系の有機EL材料を用いる場合は蒸着法、高分子系の有機EL材料を用いる場合はスピンコート法やインクジェット法などが挙げられる。ここでは、高分子系の有機EL材料を用いて、高精細な形成が可能であり、かつRGBの塗り分けが可能なインクジェット法によって有機EL層10を形成する例について説明する。
【0049】
まず、高分子材料であるポリフルオレン誘導体を0.5wt%の濃度で有機溶剤(例えばテトラリン(テトラヒドロナフタレン))に溶解させることにより、インクを作製する。なお、高分子材料は、ポリスピロ誘導体、ポリパラフェニレンビニレン誘導体、ポリアリーレン、ポリビニルカルバゾールなどでもよい。また、高分子材料の濃度は、0.5wt%に限定されず、0.1wt%〜数wt%の範囲内で最適な濃度を選択すればよい。有機溶剤は、テトラリンに限定されず、インクジェット吐出工程時にノズルの目詰まりを生じにくく、かつ基板上に滴下されて即座に乾燥してしまわないような高沸点溶媒であればよい。有機溶剤として、例えば1,2,3,4−テトラメチルベンゼン、1,2,4−トリメチルベンゼン、1,3,5−トリメチルベンゼン、p−シメン、ドデシルベンゼンなども用いることができる。上記のインクをインクジェット塗布すると、塗布されたインクは、撥インク性の表面を有するバンク9によって、第2の層間絶縁膜7の開口部内に収められる。この後、塗布されたインクを100℃以上200℃以下の温度で1時間程度乾燥させる。この乾燥により、塗布されたインクが膜化し、例えば膜厚が70nm程度の有機EL層(発光層)10が得られる。ここで例示した有機EL材料を用いると、単層で有機EL層10を構成できるが、有機EL層10は、一般に多層構造(正孔輸送層/発光層/電子輸送層)を有する。多層構造を有する有機EL層10の厚さは、50nm以上であれば、電気的リークを抑制できるため好ましい。一方、有機EL層10の厚さは200nm以下が好ましい。厚さが200nmを超えると、駆動電圧の上昇を招くおそれがあるからである。
【0050】
有機EL層10の発光効率および輝度を向上させるために、有機EL層10は多層構造を有することが好ましい。例えば、上記の有機EL層(発光層)10を形成する前に、正孔輸送層を形成することが好ましい。正孔輸送層は、ポリエチレンジオキシチオフェン(REDOD)−ポリスチレンサルフォネート(PSS)やポリアニリンなどを用いて形成された膜である。まず、例えばPEDOTとPSSとを含む水溶液を、基板1の上にインクジェット法にて吐出する。この後、吐出された水溶液を200℃で乾燥・焼成することによって、厚さが例えば80nm程度の正孔輸送層を形成する。正孔輸送層の膜厚が、50nm以上であれば、画素電極8の表面に絶縁破壊を引き起こす原因となりうる凹凸(スパイク)がある場合であっても、正孔輸送層は略平坦な表面を有する、言い換えれば正孔輸送層がバッファ層としての役割を果たすので好ましい。一方、正孔輸送層の膜厚は、駆動電圧低減のため200nm以下であることが好ましい。
【0051】
次いで、図4(f)に示すように、上部電極11を例えば抵抗加熱蒸着法により形成する。上部電極11に用いる電極材料として、効率良く電子を注入できる低仕事関数金属を選択するとよい。低仕事関数金属として、リチウムなどのアルカリ金属、カルシウムやバリウムなどのアルカリ土類金属、それらと他の金属との合金、またはそれらのフッ化物や酸化物を広く用いることができる。このような低仕事関数金属は、化学的に活性であるものが多いので、酸素や水と接触すると変化を起こしやすく、その結果、表示特性を劣化させる可能性がある。そこで、上部電極11は、上記低仕事関数金属を用いた層と、その層を保護するためのキャップ電極層との2層構造とするのが好ましい。キャップ電極層の材料は、ボトムエミッション型有機EL表示装置の場合、例えばアルミニウムや銀である。また、トップエミッション型有機EL表示装置の場合、キャップ電極層はITO、IZOなどを用いて形成される。
【0052】
本実施形態では、有機EL表示装置はボトムエミッション型であるので、上部電極11は陰極として機能する。アクティブ駆動の場合、陰極は表示部の全面に形成すればよいので、上部電極11は細かなパターニングを行う必要はない。上部電極11は、例えば膜厚300nmのアルミニウム膜と膜厚5nmのカルシウム膜とを含む積層膜である。この積層膜を用いると、仕事関数が低いカルシウム膜を有機EL層10と直接コンタクトさせることにより、電子の注入効率を向上できる。また、アルミニウム膜を上面に設けると、アルミニウム膜は水や酸素を遮断するキャップ電極としての役割を果たすために、水や酸素の進入によるカルシウム膜の劣化を抑制できるので表示装置の信頼性が向上する。
【0053】
最後に、図4(f)の基板1と、UV硬化シール樹脂ディスペンス、ガラスからなる対向基板とを貼合せる。これにより、例えばITO(画素電極8=陽極)/PEDOT(正孔輸送層)/ポリフルオレン誘導体(有機EL層10)/カルシウム(上部電極11の下層=陰極)/アルミニウム(上部電極11の上層=キャップ電極)という積層体を外気から遮断するために封止することができる。このようにして、有機EL表示装置が得られる。
【0054】
図3(c)に示すように、本実施形態では、有機EL表示装置は第1の層間絶縁膜5と第2の層間絶縁膜7との間に第3の層間絶縁膜12を有していてもよい。第3の層間絶縁膜12は、例えば以下の方法で形成することができる。第3の層間絶縁膜12の形成は、上述した方法において、第1の層間絶縁膜5を形成した後、第2の層間絶縁膜を形成する前に行う。まず、第1の層間絶縁膜5の上に、CVD法やスパッタ法などの真空成膜プロセスを用いて無機材料を堆積させることにより、膜を形成する。無機材料として、酸化シリコン、窒化シリコン、酸化アルミニウムおよび窒化アルミニウムのうちの1種類、またはこのうちの複数種類を組み合わせて用いることができる。上記の材料のうち複数種類を含む膜には、1種類の材料のみを含む膜と比べて、ピンホールなどの欠陥が生じにくい。膜の厚さは150nm以上300nm以下であることが好ましい。この膜を形成した後、フォトレジストの塗布、プリベーク、露光、現像、ポストベーク、エッチング、レジスト剥離という公知の一連のフォトリソプロセスにより、膜のパターニングを行う。これにより、第3の層間絶縁膜12が得られる。エッチングには、例えばドライプロセスであるRIE(Reactive Ion Etching)を用いる。この後、図4を参照して前述した工程と同様の工程を行い、図3(c)に示すような有機EL表示装置が得られる。
【0055】
本実施形態では、上述したようなプロセスによって有機EL表示装置が製造されるので、従来の有機EL表示装置のプロセスに新規プロセスを追加する必要がない。従来のプロセスとの変更点は、第2の層間絶縁膜7をエッチングするときに用いるフォトマスクのパターンのみである。従って、製造コストを増大させることなく、信頼性の高い有機EL表示装置を製造することができる。
【0056】
次に、本実施形態の有機EL表示装置と比較するために、参考例として、有機EL層10の下に有機絶縁層が存在する有機EL表示装置を作製した。以下に、図を参照しながら、参考例の有機EL表示装置の構成および製造方法を説明する。
【0057】
図5(a)は、参考例の有機EL表示装置の平面図であり、図5(b)および図5(c)は、図5(a)に示す有機EL表示装置のA−A線における断面を模式的に示す図である。図5および図6では、図3および図4と実質的に同様の要素に図3および図4と同じ参照符号を付している。
【0058】
図5(b)および(c)から明らかなように、参考例の有機EL表示装置では、有機EL層10の下に画素電極8を隔てて第2の層間絶縁膜7が形成されている。また、参考例および上記実施形態におけるバンク9の上面と有機EL層10の上面との高さの差は同じであるため、参考例におけるバンク9は、上記実施形態におけるバンク9と比べて第2の層間絶縁膜7の厚さの分だけ高い。その他の構成は、基本的に図3(b)および(c)に示す上記実施形態の表示装置と実質的に同様である。
【0059】
図6(a)〜(f)に、参考例の有機EL表示装置の製造方法を説明する断面模式図を示す。参考例では、図6(b)に示すように、第2の層間絶縁膜7に図4(b)に示すような開口部を設けない。すなわち、上記実施形態とは、第2の層間絶縁膜7のパターニングの際に用いるフォトマスクの形状が異なる。また、参考例の表示装置では、第2の層間絶縁膜7の厚さの分だけ、バンク9を高く形成する。これらの点以外は、参考例の有機EL表示装置は、図4(a)〜(f)に示す上記実施形態の製造方法と実質的に同様の方法で製造される。
【0060】
図5(b)に示す参考例の有機EL表示装置と、図3(b)に示す上記実施形態の有機EL表示装置とについて、以下のように表示特性の比較・検討を行ったので、その結果を説明する。ここでは、参考例の有機EL表示装置は、例えば酸化シリコンを用いて形成した第1の層間絶縁膜5を有する。また、上記実施形態の有機EL表示装置として、それぞれ酸化シリコン、窒化シリコン、酸化アルミニウム及び窒化アルミニウムを用いて形成した第1の層間絶縁膜を有する4種類のサンプル(表示装置A、B、C及びDとする)を用いる。なお、いずれの表示装置(参考例および上記実施形態)も、第2の層間絶縁膜7はポリフルオレン誘導体を用いて形成する。
【0061】
図7は、参考例および上記実施形態の有機EL表示装置を、電源ラインへ印加する電圧が一定の状態で駆動させた場合の、電圧印加時間(経過時間)と表示の輝度との関係を比較したグラフである。図7では、電圧印加時間は任意単位であり、1任意単位は10分〜1時間程度である。また、輝度の値(規格化輝度)は、初期値を1としたときの規格化した値である。
【0062】
図7から明らかなように、参考例の有機EL表示装置では、電圧印加から1任意単位の時間が経過すると、規格化輝度は1から1.5へ、1.5倍に増大することがわかる。前述したように、このような輝度上昇は焼きつき現象を引き起こす可能性がある。
【0063】
これと比べて、有機EL層10の下部から有機絶縁層である第2の層間絶縁膜を取り除き、かつ第1の層間絶縁膜を無機材料を用いて形成した本実施形態の有機EL表示装置はいずれも、規格化輝度の変化(上昇)が小さく抑えられている。これは、有機EL層10で生じた熱を効率良く逃がすことができるので、熱による有機EL層10の劣化が抑制されたためと考えられる。従って、本実施形態の有機EL表示装置の構成は、表示特性の安定化に大きく寄与することが明らかになった。
【0064】
次に、本実施形態の有機EL表示装置において、有機EL層10で生じた熱をより効率良く逃がすことにより、表示特性をより安定化させるためには、第1の層間絶縁膜5(または第3の層間絶縁膜12)の材料として何を用いたら良いかを検討したので、その結果を説明する。
【0065】
表示装置A〜Dの輝度の変化を比較すると、表示装置A(第1の層間絶縁膜5の材料:酸化シリコン)の輝度は、1任意単位の時間経過後には電圧印加時の輝度の約1.2倍に上昇している。表示装置B(第1の層間絶縁膜5の材料:窒化シリコン)の1任意単位時間後の輝度は、電圧印加時の輝度の約1.1倍であり、輝度の変化は表示装置Aよりも小さく抑えられている。表示装置C(第1の層間絶縁膜5の材料:窒化アルミニウム)の1任意単位時間後の輝度は電圧印加時からほとんど上昇しておらず(電圧印加時の輝度の約1.05倍以下)、安定した表示特性が得られている。図示していないが、第1の層間絶縁膜5の材料として酸化アルミニウムを用いると、輝度の経時変化は表示装置Bの輝度の経時変化とほぼ同等であった。
【0066】
なお、第3の層間絶縁膜12を有する表示装置(図3(c))の場合は、第3の層間絶縁膜12の材料として酸化シリコン、窒化シリコン、窒化アルミニウムを用いた表示装置はそれぞれ、上記の表示装置A、B、Cと略同様の輝度の変化を示す。
【0067】
熱による有機EL層10の劣化に起因する表示特性の変化は、図7に示すような10分以上1時間以内(1任意単位の時間)という比較的短い時間内に生じる発光輝度の上昇に限定されない。表示装置の有機EL層や正孔輸送層に用いる材料が異なると、発光輝度が低下する表示装置や、数百〜数千時間の長時間に亘って表示特性が変化する表示装置も存在することも確認されている。これらの表示特性の変化は何れも、有機EL層10の下部に位置する第2の層間絶縁膜を取り除くことによって小さく抑えることができる。
【0068】
上述したように、本発明の有機EL表示装置では、有機EL層10の下に有機絶縁層(第2の層間絶縁膜7)が存在しないので、有機EL層10の下の画素電極8は無機絶縁層(第1の層間絶縁膜5または第3の層間絶縁膜12)と接している。これにより、有機EL層10で生じた熱を効率良く逃がすことができるので、有機EL層10の熱による劣化を抑制でき、その結果表示装置の表示特性を安定化させることができる。なお、第1の層間絶縁膜5または第3の層間絶縁膜12の無機材料として放熱性の高い材料を選択すると、表示装置の放熱特性をより向上させることができるので有利である。また、表示装置にバンク9を設ける場合、バンク9の厚さを第2の層間絶縁膜7の厚さの分小さくすることができるので、製造コストを低減できる。
【0069】
本発明は、モノクロおよびフルカラー有機EL表示装置の何れにも適用できる。また、本発明はトップエミッション型およびボトムエミッション型有機EL表示装置の何れにも適用できる。ボトムエミッション型有機EL表示装置に適用すると、有機EL層10からの光は第2の層間絶縁膜7を通過することなく基板1に達するので、光のロスを低減できるため特に有利である。
【0070】
さらに、本発明によると、このような構成の有機EL表示装置を、従来の有機EL表示装置の製造方法に新規プロセスを追加したり、製造コストを増大させたりすることなく製造できる。
【0071】
【発明の効果】
電圧印加時間の経過に伴って発光輝度が急激に上昇する現象を抑制することにより、焼きつき現象の発生が抑制された有機EL表示装置を提供できる。また、そのような表示装置を、製造コストを増大させたり、製造プロセスを複雑にしたりすることなく、簡便に製造する方法を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】アクティブ駆動有機EL装置における1つの画素についての等価回路を示す図である。
【図2】従来の有機EL表示装置に一定電圧を印加した場合の時間と輝度の関係を示すグラフである。
【図3】(a)は本発明による実施形態の有機EL表示装置の平面図であり、(b)および(c)は(a)に示す有機EL表示装置のA−A線における断面を模式的に示す図である。
【図4】(a)〜(f)は、本発明による実施形態の有機EL表示装置の製造方法を説明するための図3(a)のA−A線における模式的な断面工程図である。
【図5】(a)は参考例の有機EL表示装置の平面図であり、(b)および(c)は(a)に示す有機EL表示装置のA−A線における断面を模式的に示す図である。
【図6】(a)〜(f)は、本発明による実施形態の有機EL表示装置の製造方法を説明するための図5(a)のA−A線における模式的な断面工程図である。
【図7】本発明の有機EL表示装置および参考例の有機EL表示装置に一定電圧を印加した場合の時間と輝度の関係を示すグラフである。
【符号の説明】
1 基板
2 半導体膜
3 ゲート絶縁膜
4b ゲート電極
5 第1の層間絶縁膜
7 第2の層間絶縁膜
8 画素電極
9 バンク
10 有機EL層
11 上部電極
12 第3の層間絶縁膜
101、102 薄膜トランジスタ
Claims (9)
- 基板と、
前記基板の上に形成されたスイッチング素子と、
前記スイッチング素子を覆う有機絶縁層であって、その下地の表面を露出する開口部を有する有機絶縁層と、
前記基板の上に形成された画素電極であって、前記スイッチング素子と電気的に接続された画素電極と、
上部電極と、
前記画素電極と前記上部電極とに挟まれた有機材料を含む有機EL層とを備え、
前記有機EL層が前記開口部内に形成されている、有機エレクトロルミネッセンス表示装置。 - 前記有機絶縁層の上に形成されたバンクをさらに備え、前記バンクは前記有機EL層の前記開口部内に、前記下地の表面を露出する開口領域を形成し、前記有機EL層は前記開口領域内に形成されている、請求項1に記載の有機エレクトロルミネッセンス表示装置。
- 前記画素電極と前記基板との間に無機絶縁層をさらに有し、前記下地の表面は前記無機絶縁層の表面である、請求項1または2に記載の有機エレクトロルミネッセンス表示装置。
- 前記無機絶縁層は窒化アルミニウムを含む、請求項3に記載の有機エレクトロルミネッセンス表示装置。
- 前記無機絶縁層は酸化アルミニウムを含む、請求項3または4に記載の有機エレクトロルミネッセンス表示装置。
- 前記無機絶縁層は窒化シリコンを含む、請求項3から5のいずれかに記載の有機エレクトロルミネッセンス表示装置。
- 前記無機絶縁層は酸化シリコンを含む、請求項3から6のいずれかに記載の有機エレクトロルミネッセンス表示装置。
- 基板の上にスイッチング素子を形成する工程と、
前記スイッチング素子を覆う有機絶縁層を設ける工程と、
前記有機絶縁層に、その下地の表面を露出する開口部を形成する工程と、
前記基板の上に、前記スイッチング素子と電気的に接続される画素電極を形成する工程と、
前記開口部内における前記画素電極の上に有機材料を含む有機EL層を形成する工程と、
前記有機EL層の上に上部電極を設ける工程と、
を包含する、有機エレクトロルミネッセンス表示装置の製造方法。 - 前記有機EL層を形成する工程の前に、前記有機絶縁層の上にバンクを形成する工程をさらに包含し、前記バンクは前記有機絶縁層の前記下地の表面を露出する開口領域を形成し、前記有機EL層を形成する工程において、前記開口領域に前記有機EL層を形成する、請求項8に記載の有機エレクトロルミネッセンス表示装置の製造方法。
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