JP2004278688A - 自転車用動力伝達システムと自転車用プーリ - Google Patents
自転車用動力伝達システムと自転車用プーリ Download PDFInfo
- Publication number
- JP2004278688A JP2004278688A JP2003071739A JP2003071739A JP2004278688A JP 2004278688 A JP2004278688 A JP 2004278688A JP 2003071739 A JP2003071739 A JP 2003071739A JP 2003071739 A JP2003071739 A JP 2003071739A JP 2004278688 A JP2004278688 A JP 2004278688A
- Authority
- JP
- Japan
- Prior art keywords
- pulley
- tooth
- toothed belt
- power transmission
- bicycle
- Prior art date
- Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
- Granted
Links
Images
Landscapes
- Pulleys (AREA)
- Devices For Conveying Motion By Means Of Endless Flexible Members (AREA)
Abstract
【解決手段】駆動プーリのプーリ歯溝部14、プーリ歯部12を、中心線Y’を挟んでそれぞれ対になっている4つの円弧で構成する。歯付きベルトとの干渉が軽減されるようプーリ歯部の動力伝達面と歯付きベルト30のベルト歯部の動力伝達面との間隙が所定の大きさを確保すべく、第3の円弧B6、及び第3の円弧B6に連続する第2の円弧B5の一部を形成する。また、被動プーリのプーリ歯溝部、プーリ歯部も、中心線を挟んでそれぞれ対になっている4つの円弧で構成する。被動プーリのプーリ歯溝部の溝深さがベルト歯部の歯高さより大きくなるよう、駆動プーリの第4の円弧B7に相当する被動プーリの円弧を形成する。
【選択図】 図3
Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、歯付きベルトが巻き回される自転車用タイミングプーリに関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、自転車は、ペダルの回転運動と連動して回転する駆動プーリと、自転車後部のギア列に回転運動を伝達する被動プーリと、この2つのプーリに巻き回される歯付きベルトとを備える。自転車の乗り手がペダルをこぐと駆動プーリが回転し、その回転運動は歯付きベルトを介して被動プーリに伝達される。
【0003】
駆動プーリ及び被動プーリの外周面には、プーリ溝部が円周方向に沿って所定間隔毎に形成されており、歯付きベルトにはプーリ溝部に係合するベルト歯部が所定間隔ごとに形成されている。駆動プーリの回転に伴って駆動プーリのプーリ溝部にベルト歯部が順次係合することにより、歯付きベルトにペダルの回転駆動力が伝達される。そして、ベルト歯部に被動プーリのプーリ溝部が順次係合して、ペダルの回転駆動力が被動プーリに伝達される(例えば特許文献1)。
【0004】
【特許文献1】
特開平8−192786号公報
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
上述のような動力伝達システムにおいては、歯付きベルトの歯ピッチと駆動及び被動プーリの歯ピッチが一致していると、歯付きベルトとプーリの理想的な噛合が得られる。ところが、歯付きベルトに大きな負荷がかかり張力が高くなると、歯付きベルトの歯ピッチは、プーリと噛み合っている部分、プーリと噛み合い始める部分、及びプーリと噛み合っていない部分の間にピッチ誤差が生じる。その結果、歯付きベルトとプーリの噛み合いにずれが生じることがある。
【0006】
例えば、自転車の乗り手がサドルに腰掛けずにペダルをこぐような所謂立ちこぎをすると、ペダルには相対的に大きな負荷がかかり、歯付きベルトの張力は極めて高くなる。このような場合、従来の自転車では、上述のピッチ誤差の発生により駆動プーリから異音が発生するという問題があった。また、歯付きベルトの張力が高くなった状態で雨が降っている中を自転車に乗ると、被動プーリでジャンピングが発生するという問題があった。
【0007】
本発明は以上の問題を解決するものであり、自転車に乗る際の外的条件に左右されることなく、動力伝達システムを常時安定して稼動させることを目的としている。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明に係る自転車用動力伝達システムは、長手方向の沿う断面において中心線に関して対称の形状を呈する歯部を有する歯付きベルトと、歯部に係合する溝部が外周面に形成された駆動プーリ及び被動プーリとを備え、駆動プーリが歯付きベルトと噛み合うときの歯付きベルトとの干渉を低減すべく、歯部の第1動力伝達面と駆動プーリの溝部において第1動力伝達面に対向する第2動力伝達面との間に所定の距離が確保されるよう駆動プーリの溝部が形成され、被動プーリの溝部の溝深さは、歯部の歯高さよりも大きく形成されていることを特徴とする。
【0009】
好ましくは、駆動プーリが歯付きベルトと噛み合い始めるとき、駆動プーリにおいてその歯先面と第2動力伝達面とが交差する部分が歯付きベルトに干渉しないよう、駆動プーリの交差部分は所定の曲率半径を有する曲線を呈し、及び/または、駆動プーリの溝部の溝深さは、歯部の歯高さよりも大きく形成される。
【0010】
好ましくは、被動プーリが歯付きベルトと噛み合うときの歯付きベルトとの干渉を低減すべく、歯部の第1動力伝達面と被動プーリの溝部において第1動力伝達面に対向する第3動力伝達面との間に所定の距離が確保されるよう被動プーリの溝部が形成され、及び/または、被動プーリが歯付きベルトと噛み合い始めるとき、被動プーリにおいてその歯先面と第3動力伝達面とが交差する部分が歯付きベルトに干渉しないよう、被動プーリの交差部分は所定の曲率半径を有する曲線を呈する。
【0011】
より好ましくは、駆動プーリの中心と同軸の円弧であって、その直径が駆動プーリの外径から歯付きベルトの歯部の歯高さを差し引いた長さを有する円弧に沿った、第1動力伝達面と駆動プーリの第2動力伝達面の間隙が、歯付きベルトの歯ピッチの1〜3パーセントの範囲となるよう形成される。
【0012】
より好ましくは、被動プーリの中心と同軸の円弧であって、その直径が被動プーリの外径から歯付きベルトの歯部の歯高さを差し引いた長さを有する円弧に沿った、第1動力伝達面と被動プーリの第3動力伝達面の間隙が、歯付きベルトの歯ピッチの1〜3パーセントの範囲となるよう形成される。
【0013】
より好ましくは、被動プーリの溝深さは、歯付きベルトの歯部の歯高さより大きく、かつ被動プーリの溝深さと歯高さとの差分は歯高さの5パーセント以下の範囲で形成される。
【0014】
また、本発明に係る自転車用駆動プーリは、長手方向の沿う断面において中心線に関して対称の形状を呈する歯部を有する歯付きベルトが巻き回され、この歯部に係合する溝部が外周面に形成された自転車用駆動プーリであって、歯付きベルトと噛み合うときの歯付きベルトとの干渉を低減すべく、歯部の第1動力伝達面と自転車用プーリの溝部において第1動力伝達面に対向する第2動力伝達面との間に所定の距離が確保されるよう溝部が形成されることを特徴とする。
【0015】
好ましくは、歯付きベルトと噛み合い始めるとき、自転車用駆動プーリの歯先面と第2動力伝達面とが交差する部分が歯付きベルトに干渉しないよう、所定の曲率半径を有する曲線を呈し、及び/または、溝部の溝深さは、歯部の歯高さよりも大きく形成されている。
【0016】
より好ましくは、自転車用駆動プーリの中心と同軸の円弧であって、その直径が、自転車用駆動プーリの外径から歯付きベルトの歯部の歯高さを差し引いた長さを有する円弧に沿った、第1及び第2動力伝達面の間隙が、歯付きベルトの歯ピッチの1〜3パーセントの範囲となるよう形成される。
【0017】
また、本発明に係る自転車用被動プーリは、長手方向の沿う断面において中心線に関して対称の形状を呈する歯部を有する歯付きベルトが巻き回され、歯部に係合する溝部が外周面に形成された自転車用被動プーリであって、溝部の溝深さは、歯部の歯高さよりも大きく形成されている。
【0018】
好ましくは、歯付きベルトと噛み合うときの歯付きベルトとの干渉を低減すべく、歯部の第1動力伝達面と自転車用被動プーリの溝部において第1動力伝達面に対向する第2動力伝達面との間に所定の距離が確保されるよう溝部が形成され、及び/または、歯付きベルトと噛み合い始めるとき、自転車用駆動プーリの歯先面と第2動力伝達面とが交差する部分が歯付きベルトに干渉しないよう、所定の曲率半径を有する曲線を呈する。
【0019】
より好ましくは、自転車用被動プーリの溝深さは、歯付きベルトの歯部の歯高さより大きく、かつこの溝深さと歯高さとの差分が歯高さの5パーセント以下の範囲で形成される。
【0020】
また、本発明に係る自転車用プーリは、長手方向の沿う断面において中心線に関して対称の形状を呈する歯部を有する歯付きベルトが巻き回され、この歯部に係合する溝部が外周面に形成された自転車用プーリであって、歯付きベルトと噛み合うときの前記歯付きベルトとの干渉を低減すべく、歯部の第1動力伝達面と自転車用プーリの溝部において第1動力伝達面に対向する第2動力伝達面との間に所定の距離が確保されるよう溝部が形成され、かつ溝部の溝深さは、歯部の歯高さよりも大きく形成されていることを特徴とする。
【0021】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態を、図面を参照して説明する。
図1は、本発明に係る実施形態が適用される自転車用動力伝達システムを模式的に示す図である。駆動プーリ10は、自転車のペダルの回転に連動して回転する。被動プーリ20は、自転車の後部に設けられるギア列を介して自転車の後輪に動力を伝達するためのプーリである。歯付きベルト30は、駆動プーリ10及び被動プーリ20に巻き回される。ペダルの回転に連動して駆動プーリ10が回転すると、その回転運動は歯付きベルト30により被動プーリ20へ伝達される。被動プーリ20の回転は上述の後部ギア列を介して後輪に伝達され、後輪が回転する。尚、歯付きベルト30は直歯であり、その本体にはCRゴムやNBR等のゴム、ウレタン樹脂、エステル樹脂等が用いられる。抗張体としてアラミド繊維、ガラス繊維、スチール繊維等が用いられる。また歯補強布を用いる場合は、ナイロン帆布、アラミド帆布等が用いられる。
【0022】
図2は、歯付きベルト30の一部を示す断面図である。歯付きベルト30のベルト歯部34は円弧状の断面形状を呈する。その断面形状は、歯付きベルト30の外周面、すなわち背面30Bから歯面30Fの方向に沿った中心線Yを基準にして左右対称である。線対称なベルト歯部34の断面形状は、複数の円弧が連続的に繋がることにより形成されており、中心線Yを挟んでそれぞれ対になっている3つの円弧から構成される。また、隣り合う2つのベルト歯部34の中心線Y間の距離が歯付きベルト30の歯ピッチBPに定められる(図1参照)。
【0023】
中心線Yを境にして片方の輪郭線KL(ベルト歯部34の歯元部分の端点A1から頂点である端点A4まで)について説明する。輪郭線KLは、端点A1から端点A2の範囲にある第1のベルト円弧B1と、端点A2から端点A3の範囲にある第2のベルト円弧B2と、端点A3から端点A4の範囲にある第3のベルト円弧B3によって形成される。第1のベルト円弧B1は、曲率中心C1を中心とした第1の半径R1による凹状円弧であり、曲率中心C1はベルト歯部34の外部にある。第2のベルト円弧B2は、曲率中心C2を中心とした第2の半径R2による凸状円弧である。曲率中心C2は、中心線Yに対して円弧B2の反対側であってベルト歯底部32の表面に沿ったランドラインLLの近傍に位置する。第3のベルト円弧B3は、曲率中心C3を中心とした第3の半径R3による凸状円弧であり、曲率中心C3は、中心線Y上に位置する。尚、各ベルト円弧の凹凸は、ベルト背面30Bの側から見た形を示す。
【0024】
ベルト歯部34の表面において、第1のベルト円弧B1は歯元部分の表面に、第3のベルト円弧B3は歯先部分の表面に対応する。また、第2のベルト円弧B2は、ベルト歯部34の動力伝達面(第1動力伝達面)に対応する。
【0025】
ベルト歯部34の高さhは、ベルト歯底部32からベルト歯部34の頂点までの距離として規定され、中心線YとランドラインLLとの交点をOとした場合、交点Oから中心線Y上にある頂点(端点)A4までの距離に相当する。
【0026】
図3は、駆動プーリ10において歯付きベルト30と噛み合うプーリ歯溝部14、プーリ歯部12の断面形状を示す図である。図3において、歯付きベルト30のベルト歯部34の輪郭線は破線で示され、駆動プーリ10の外周面の輪郭線は実線で示される。
【0027】
駆動プーリ10のプーリ歯溝部14、プーリ歯部12は円弧状の断面形状を呈する。その断面形状は、プーリ歯溝部14の最深部の接線に垂直な中心線Y’を基準にして左右対称である。線対称なプーリ歯溝部14、プーリ歯部12の断面形状は、複数の円弧が連続的に繋がることにより形成されており、中心線Y’を挟んでそれぞれ対になっている4つの円弧から構成される。また、図6に示すように、ベルトピッチライン円弧AR(直径が駆動プーリ10の外径にPLDの2倍の寸法を加えた長さを有する円弧)に沿った、隣り合う2つのプーリ溝部14の中心線Y’間の円弧距離が駆動プーリ10の溝ピッチPPに定められる。
【0028】
中心線Y’を境にして片方の輪郭線JL(プーリ歯部12の歯先部分の端点A5からプーリ歯溝部14の最深部である端点A9まで)について説明する。輪郭線JLは、端点A5から端点A6の範囲にある第1のプーリ円弧B4と、端点A6から端点A7の範囲にある第2のプーリ円弧B5と、端点A7から端点A8の範囲にある第3のプーリ円弧B6と、端点A8から端点A9の範囲にある第4のプーリ円弧B7とによって形成される。第1のプーリ円弧B4は、曲率中心C4を中心とした第1の半径R4による凹状円弧であり、曲率中心C4はプーリ歯部12の内部にある。第2のプーリ円弧B5は、曲率中心C5を中心とした第2の半径R5による凹状円弧である。第3のプーリ円弧B6は、曲率中心C6を中心とした第3の半径R6による凸状円弧であり、曲率中心C6はプーリ歯部12の外部にある。第4のプーリ円弧B7は、曲率中心C7を中心とした第4の半径R7による凸状円弧であり、曲率中心C7は中心線Y’の近傍に位置する。尚、各プーリ円弧の凹凸は、駆動プーリ10の外部から見た形を示す。
【0029】
プーリ歯部12及びプーリ歯溝部14の表面において、第1のプーリ円弧B4、及び第2のプーリ円弧B5のうち第1のプーリ円弧B4に連続する部分は、プーリ歯部12の肩Rの表面に、第4のプーリ円弧B7はプーリ歯溝部14の底面部分の表面に対応する。また、第3のプーリ円弧B6、及び第2のプーリ円弧B5のうち第3のプーリ円弧B6に連続する部分は、プーリ歯部12の動力伝達面(第2動力伝達面)に対応する。すなわち、肩Rとは、プーリ歯部12の端点A5近傍の歯先部分と動力伝達面が交差する部分であり、第2のプーリ円弧B5は、動力伝達面と肩Rを連結する部分である。
【0030】
図3に示されるように、駆動プーリ10と歯付きベルト30が噛み合う状態において、歯付きベルト30のベルト歯部34の中心線Yと駆動プーリ10のプーリ歯溝部14の中心線Y’は一致する。尚、図3において、外周線OLはプーリ歯部12の歯先面の輪郭線に沿った線である。駆動プーリ10と歯付きベルト30が噛み合うとき、中心線YとランドラインLL(図2参照)との交点Oと、外周線OLと中心線Y’との交点O’は一致する。
【0031】
ここで、ベルト歯部34の歯高さhと、プーリ歯溝部14の溝深さh’を比較する。溝深さh’は、上述の交点O’からプーリ歯溝部14の最深部(端点A9)までの長さである。本実施形態において、溝深さh’は歯高さhよりも大きく、その差分HDは、歯高さhの5パーセント以下に定められ、例えば、歯高さhの3.3パーセントに定められる。
【0032】
また、プーリ歯溝部14の第2動力伝達面とベルト歯部34の第1動力伝達面との間隙、すなわちバックラッシは上述の歯ピッチBPの1〜3パーセントに定められ、例えば、歯ピッチBPの2.6パーセントに定められる。尚、本実施形態においてバックラッシとは、図4に示すように、駆動プーリ10の中心と同軸の円弧であって、その直径が、駆動プーリ10の外径からベルト歯部34の歯高さを差し引いた長さを有する円弧CLに沿った、プーリ歯溝部14の第2動力伝達面とベルト歯部34の第1動力伝達面との間の間隙(円弧)BRである。
【0033】
また、駆動プーリ10が歯付きベルト30と噛み合いはじめるとき、上述の肩Rが歯付きベルト30に干渉しないよう、肩Rは所定の曲率半径を有する曲線を呈している。
【0034】
尚、図1に示すように、本実施形態において被動プーリ20には、駆動プーリ10と同一形状であり、駆動プーリ10よりも径の小さいプーリが用いられる。すなわち、被動プーリ20のプーリ歯溝部、プーリ歯部も、中心線を挟んでそれぞれ対になっている4つの円弧で構成される。被動プーリ20のプーリ歯溝部の溝深さ(駆動プーリ10の溝深さh’に相当)はベルト歯部34の高さhよりも大きく、その差分は、歯高さhの5パーセント以下に定められ、例えば、歯高さhの3.3パーセントに定められる。被動プーリ20のプーリ歯溝部の第2動力伝達面とベルト歯部34の第1動力伝達面との間隙(バックラッシ)は上述の歯ピッチBPの1〜3パーセントに定められ、例えば、歯ピッチBPの2.6パーセントに定められる。また、被動プーリ20の肩Rも、被動プーリ20が歯付きベルト30と噛み合いはじめるとき、歯付きベルト30に干渉しないよう、所定の曲率半径を有する曲線を呈している。
【0035】
以上のように、駆動プーリ10のプーリ歯部12及びプーリ歯溝部14と、歯付きベルト30のベルト歯部34との間には、上述の所定のクリアランス(バックラッシBR、溝深さh’と歯高さhの差分HD)が存在し、被動プーリ20とベルト歯部34の間にも同様のクリアランスが存在する。従って、巻き回された歯付きベルト30の張力が高くなっても、駆動プーリ10においては、バックラッシを従来より大きくとることにより歯付きベルト30への干渉が抑制されるため、異音の発生が抑えられ、かつ、ベルト歯部34の磨耗が低減される。また、被動プーリ20においては、歯付きベルト30の張力が高くなった状態で歯付きベルト30との間に雨水等が浸入しても、溝深さh’と歯高さhの差分HDによりその排水路が確保されるため、ジャンピングの発生が防止される。
【0036】
尚、本実施形態において、駆動プーリ10と被動プーリ20は、互いに同一形状であり、駆動プーリ10の径が被動プーリ20の径より大きいが、これに限るものではない。すなわち、歯付きベルト30の張力が高くなることにより駆動プーリ10及び被動プーリ20のそれぞれにおいて発生する問題が防止されるよう、駆動プーリ10にはバックラッシBRが上述の範囲内であるものを用い、被動プーリ20においては、溝深さh’と歯高さhの差分HDが上述の範囲内であるものを用いてもよい。
【0037】
【実施例】
ここで、従来の駆動プーリと比較しながら本発明の実施例である駆動プーリについて説明する。なお、本発明は以下の実施例により何ら限定されるものではない。
【0038】
(実施例ベルト)
実施例ベルトにおいては、歯ピッチBP=9.525mm、歯高さh=3.44mm、ベルト幅は13mm、歯数は126歯とされた。上述のベルト半径は、R1=1.096mm、R2=4.267mm、R3=2.521mmとされた。
【0039】
(実施例プーリ)
実施例プーリにおいては、溝ピッチPP=9.525mm、溝深さh’と歯高さhの差分HD=0.11352mm(歯高さhの3.3パーセント)、歯数は69歯とされた。
【0040】
第1〜第4の半径は、R4=1.037mm、R5=4.567mm、R6=4.181mm、R7=2.555mmとされた。その結果、バックラッシBRは0.24765mm(実施例ベルトの歯ピッチBPの2.6パーセント)となった。
【0041】
(比較プーリ)
図5に歯付きベルト30が巻き回された状態の比較プーリ40を示す。比較プーリ40のプーリ歯溝部44及びプーリ歯部42の断面形状は、中心線Y”を挟んでそれぞれ対になっている3つの円弧から構成される。中心線Y”を境にして片方の輪郭線ML(プーリ歯部42の歯先部分の端点A10からプーリ歯溝部44の最深部である端点A13まで)について説明する。輪郭線MLは、端点A10から端点A11の範囲にある第1のプーリ円弧B8と、端点A11から端点A12の範囲にある第2のプーリ円弧B9と、端点A12から端点A13の範囲にある第3のプーリ円弧B10とによって形成される。第1のプーリ円弧B8は、曲率中心C8を中心とした第1の半径R8による凹状円弧であり、第2のプーリ円弧B9は、曲率中心C9を中心とした第2の半径R9による凸状円弧であり、第3のプーリ円弧B10は、曲率中心C10を中心とした第3の半径R10による凸状円弧である。
【0042】
第1〜第3の半径は、R8=1.096mm、R9=4.267mm、R10=2.521mmとされた。バックラッシは0.0762mm(実施例ベルトの歯ピッチBPの0.8パーセント)である。
【0043】
図5に示されるように、比較プーリ40のプーリ歯溝部44の溝深さh”は、巻き回される歯付きベルト30のベルト歯部34の歯高さhと同一である。すなわち、溝深さh”と歯高さhの差分は「0」である。また、上述のようにバックラッシは0.0762mmである。図3及び図5を比較すると明らかなように、本願発明に係る駆動プーリ10は、比較プーリ40に比べ、歯付きベルト30が巻き回された状態におけるクリアランスが相対的に大きく存在する。
【0044】
また、駆動プーリ10の肩R(第1のプーリ円弧B4、及び第1のプーリ円弧B4に連続する第2のプーリ円弧B5の一部)と比較プーリ40の肩R(第1のプーリ円弧B8)を比較すると、円弧B4の半径R4は「1.037mm」、円弧B5の半径R5は「4.567mm」であり、円弧B8の半径R8は「1.096mm」である。換言すると、R4とR5の一部で構成する駆動プーリ10の肩Rは、R8で構成する比較プーリ40の肩Rよりも広く形成されている。従って、駆動プーリ10によれば、歯付きプーリ30が噛み合い始めるときの干渉がより効果的に軽減され、その結果、歯付きベルト30の張力が極めて高くなっても、異音の発生の防止及び歯付きベルト30のベルト歯部34の磨耗の低減がより効果的となる。
【0045】
【発明の効果】
以上のように、本発明によれば、自転車走行時の外的条件により歯付きベルトの張力が高くなっても、動力伝達システムを常時安定して稼動するベルトシステムが得られる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る実施形態が適用される自転車用動力伝達システムの模式図である。
【図2】歯付きベルトの一部を示す断面図である。
【図3】駆動プーリにおいて歯付きベルトと噛み合うプーリ歯溝部、プーリ歯部の断面形状を示す図である。
【図4】噛合状態にある歯付きベルトと駆動プーリの間のバックラッシを説明するための図である。
【図5】歯付きベルトが巻き回された状態の比較プーリの断面形状を示す図である。
【図6】歯付きベルトのPLDにより規定される駆動プーリの溝ピッチを示す図である。
【符号の説明】
10 駆動プーリ
12 プーリ歯部
14 プーリ歯溝部
20 被動プーリ
30 歯付きベルト
32 ベルト歯底部
34 ベルト歯部
40 比較プーリ
Claims (13)
- 長手方向の沿う断面において中心線に関して対称の形状を呈する歯部を有する歯付きベルトと、前記歯部に係合する溝部が外周面に形成された駆動プーリ及び被動プーリとを備え、
前記駆動プーリが前記歯付きベルトと噛み合うときの前記歯付きベルトとの干渉を低減すべく、前記歯部の第1動力伝達面と前記駆動プーリの前記溝部において前記第1動力伝達面に対向する第2動力伝達面との間に所定の距離が確保されるよう前記駆動プーリの前記溝部が形成され、
前記被動プーリの前記溝部の溝深さは、前記歯部の歯高さよりも大きく形成されていることを特徴とする自転車用動力伝達システム。 - 前記駆動プーリが前記歯付きベルトと噛み合い始めるとき、前記駆動プーリにおいてその歯先面と前記第2動力伝達面とが交差する部分が前記歯付きベルトに干渉しないよう、前記駆動プーリの前記交差部分は所定の曲率半径を有する曲線を呈し、及び/または、前記駆動プーリの前記溝部の溝深さは、前記歯部の歯高さよりも大きく形成されていることを特徴とする請求項1に記載の自転車用動力伝達システム。
- 前記被動プーリが前記歯付きベルトと噛み合うときの前記歯付きベルトとの干渉を低減すべく、前記歯部の第1動力伝達面と前記被動プーリの前記溝部において前記第1動力伝達面に対向する第3動力伝達面との間に所定の距離が確保されるよう前記被動プーリの前記溝部が形成され、及び/または、前記被動プーリが前記歯付きベルトと噛み合い始めるとき、前記被動プーリにおいてその歯先面と前記第3動力伝達面とが交差する部分が前記歯付きベルトに干渉しないよう、前記被動プーリの前記交差部分は所定の曲率半径を有する曲線を呈することを特徴とする請求項1に記載の自転車用動力伝達システム。
- 前記駆動プーリの中心と同軸の円弧であって、その直径が前記駆動プーリの外径から前記歯付きベルトの前記歯部の歯高さを差し引いた長さを有する円弧に沿った、前記第1動力伝達面と前記駆動プーリの前記第2動力伝達面の間隙が、前記歯付きベルトの歯ピッチの1〜3パーセントの範囲となるよう形成されることを特徴とする請求項1または2のいずれかに記載の自転車用動力伝達システム。
- 前記被動プーリの中心と同軸の円弧であって、その直径が前記被動プーリの外径から前記歯付きベルトの前記歯部の歯高さを差し引いた長さを有する円弧に沿った、前記第1動力伝達面と前記被動プーリの前記第3動力伝達面の間隙が、前記歯付きベルトの歯ピッチの1〜3パーセントの範囲となるよう形成されることを特徴とする請求項1または3のいずれかに記載の自転車用動力伝達システム。
- 前記被動プーリの前記溝深さは、前記歯付きベルトの前記歯部の歯高さより大きく、かつ前記被動プーリの前記溝深さと前記歯高さとの差分は前記歯高さの5パーセント以下の範囲で形成されることを特徴とする請求項1乃至5のいずれかに記載の自転車用動力伝達システム。
- 長手方向の沿う断面において中心線に関して対称の形状を呈する歯部を有する歯付きベルトが巻き回され、前記歯部に係合する溝部が外周面に形成された自転車用駆動プーリであって、
前記歯付きベルトと噛み合うときの前記歯付きベルトとの干渉を低減すべく、前記歯部の第1動力伝達面と前記自転車用プーリの前記溝部において前記第1動力伝達面に対向する第2動力伝達面との間に所定の距離が確保されるよう前記溝部が形成されることを特徴とする自転車用駆動プーリ。 - 前記歯付きベルトと噛み合い始めるとき、前記自転車用駆動プーリの歯先面と前記第2動力伝達面とが交差する部分が前記歯付きベルトに干渉しないよう、所定の曲率半径を有する曲線を呈し、及び/または、前記溝部の溝深さは、前記歯部の歯高さよりも大きく形成されていることを特徴とする請求項7に記載の自転車用駆動プーリ。
- 前記自転車用駆動プーリの中心と同軸の円弧であって、その直径が、前記自転車用駆動プーリの外径から前記歯付きベルトとの前記歯部の歯高さを差し引いた長さを有する円弧に沿った、前記第1及び第2動力伝達面の間隙が、前記歯付きベルトの歯ピッチの1〜3パーセントの範囲となるよう形成されることを特徴とする請求項7または8のいずれかに記載の自転車用駆動プーリ。
- 長手方向の沿う断面において中心線に関して対称の形状を呈する歯部を有する歯付きベルトが巻き回され、前記歯部に係合する溝部が外周面に形成された自転車用被動プーリであって、
前記溝部の溝深さは、前記歯部の歯高さよりも大きく形成されていることを特徴とする自転車用被動プーリ。 - 前記歯付きベルトと噛み合うときの前記歯付きベルトとの干渉を低減すべく、前記歯部の第1動力伝達面と前記自転車用被動プーリの前記溝部において前記第1動力伝達面に対向する第2動力伝達面との間に所定の距離が確保されるよう前記溝部が形成され、及び/または、前記歯付きベルトと噛み合い始めるとき、前記自転車用駆動プーリの歯先面と前記第2動力伝達面とが交差する部分が前記歯付きベルトに干渉しないよう、所定の曲率半径を有する曲線を呈することを特徴とする請求項10に記載の自転車用被動プーリ。
- 前記溝深さは、前記歯付きベルトの前記歯部の歯高さより大きく、かつ前記溝深さと前記歯高さとの差分が前記歯高さの5パーセント以下の範囲で形成されることを特徴とする請求項10または11のいずれかに記載の自転車用被動プーリ。
- 長手方向の沿う断面において中心線に関して対称の形状を呈する歯部を有する歯付きベルトが巻き回され、前記歯部に係合する溝部が外周面に形成された自転車用プーリであって、
前記歯付きベルトと噛み合うときの前記歯付きベルトとの干渉を低減すべく、前記歯部の第1動力伝達面と前記自転車用プーリの前記溝部において前記第1動力伝達面に対向する第2動力伝達面との間に所定の距離が確保されるよう前記溝部が形成され、かつ前記溝部の溝深さは、前記歯部の歯高さよりも大きく形成されていることを特徴とする自転車用プーリ。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2003071739A JP4340460B2 (ja) | 2003-03-17 | 2003-03-17 | 自転車用動力伝達システムと自転車用プーリ |
Applications Claiming Priority (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2003071739A JP4340460B2 (ja) | 2003-03-17 | 2003-03-17 | 自転車用動力伝達システムと自転車用プーリ |
Publications (2)
Publication Number | Publication Date |
---|---|
JP2004278688A true JP2004278688A (ja) | 2004-10-07 |
JP4340460B2 JP4340460B2 (ja) | 2009-10-07 |
Family
ID=33288103
Family Applications (1)
Application Number | Title | Priority Date | Filing Date |
---|---|---|---|
JP2003071739A Expired - Fee Related JP4340460B2 (ja) | 2003-03-17 | 2003-03-17 | 自転車用動力伝達システムと自転車用プーリ |
Country Status (1)
Country | Link |
---|---|
JP (1) | JP4340460B2 (ja) |
Cited By (2)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
JP2006153249A (ja) * | 2004-10-29 | 2006-06-15 | Mitsuboshi Belting Ltd | 歯付ベルト駆動装置 |
CN105492800A (zh) * | 2013-08-30 | 2016-04-13 | 三之星机带株式会社 | 自行车用有齿带驱动装置 |
-
2003
- 2003-03-17 JP JP2003071739A patent/JP4340460B2/ja not_active Expired - Fee Related
Cited By (4)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
JP2006153249A (ja) * | 2004-10-29 | 2006-06-15 | Mitsuboshi Belting Ltd | 歯付ベルト駆動装置 |
JP4672353B2 (ja) * | 2004-10-29 | 2011-04-20 | 三ツ星ベルト株式会社 | 歯付ベルト駆動装置 |
CN105492800A (zh) * | 2013-08-30 | 2016-04-13 | 三之星机带株式会社 | 自行车用有齿带驱动装置 |
US9950768B2 (en) | 2013-08-30 | 2018-04-24 | Mitsuboshi Belting Ltd. | Toothed belt driving device for bicycle |
Also Published As
Publication number | Publication date |
---|---|
JP4340460B2 (ja) | 2009-10-07 |
Similar Documents
Publication | Publication Date | Title |
---|---|---|
TWI622525B (zh) | Toothed belt drive for bicycle | |
CN103538688B (zh) | 用于自行车变速系统的后变速器及其导链轮 | |
JP2597077Y2 (ja) | 同期駆動ベルトおよび同期伝導プーリ | |
US7128673B2 (en) | Sprocket for chain | |
JP2535130B2 (ja) | ベルトスプロケット | |
JP4871294B2 (ja) | 芯金レスゴムクローラ | |
CA2722793C (en) | Synchronous belt sprocket | |
US7114788B2 (en) | Angled traction lugs for endless band | |
US8298104B2 (en) | Timing chain driving system | |
US20080161144A1 (en) | Chain transmission device | |
US20070087878A1 (en) | Standard sprocket for chain | |
KR101128630B1 (ko) | 벨트 | |
JP2004278688A (ja) | 自転車用動力伝達システムと自転車用プーリ | |
JP4917285B2 (ja) | 芯金レスクローラのスプロケット構造及び芯金レスクローラのスプロケット | |
JP6495678B2 (ja) | スプロケットおよび弾性クローラ駆動機構 | |
US20080092684A1 (en) | Resin double helical gear pair | |
TWM434735U (en) | A bicycle sprocket | |
US10837517B2 (en) | Toothed belt drive | |
JP4273050B2 (ja) | シャフト及びハブの動力伝達機構 | |
TW202308895A (zh) | 後鏈輪 | |
JPH0314474Y2 (ja) | ||
JP2541980Y2 (ja) | 自転車におけるチェーンの巻き込み防止プレート | |
JPH03235768A (ja) | ゴム履帯の芯金 | |
KR20120008614A (ko) | 변속기의 기어 구조 | |
WO1997011292A1 (en) | Roller chain timing drive having reduced noise |
Legal Events
Date | Code | Title | Description |
---|---|---|---|
A621 | Written request for application examination |
Effective date: 20060203 Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A621 |
|
A977 | Report on retrieval |
Effective date: 20080924 Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A971007 |
|
A131 | Notification of reasons for refusal |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131 Effective date: 20081111 |
|
A521 | Written amendment |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523 Effective date: 20090108 |
|
TRDD | Decision of grant or rejection written | ||
A01 | Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model) |
Effective date: 20090630 Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01 |
|
A01 | Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model) |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01 |
|
A61 | First payment of annual fees (during grant procedure) |
Effective date: 20090706 Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A61 |
|
R150 | Certificate of patent (=grant) or registration of utility model |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R150 |
|
FPAY | Renewal fee payment (prs date is renewal date of database) |
Year of fee payment: 3 Free format text: PAYMENT UNTIL: 20120710 |
|
LAPS | Cancellation because of no payment of annual fees |