JP2004278428A - ディーゼルエンジン及びその運転方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】本発明は、新気Iが吸気される主室1と主室1に連通路23を介して連通する副室10とからなる燃焼室と、副室10に燃料Gを噴射する燃料噴射手段30とを備えたディーゼルエンジン100において、高価な添加剤を必要とせずに、着火性の低いLPガス等の燃料を用いても、燃焼室に噴射して良好に自己着火させることができる技術を実現することを目的とする。
【解決手段】新気Iよりも高温の加熱酸素含有ガスHAを、主室1を介することなく副室10に供給する加熱酸素含有ガス供給手段31,40,42とを備える。
【選択図】 図1
【解決手段】新気Iよりも高温の加熱酸素含有ガスHAを、主室1を介することなく副室10に供給する加熱酸素含有ガス供給手段31,40,42とを備える。
【選択図】 図1
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、新気が吸気される主室と前記主室に連通路を介して連通する副室とからなる燃焼室と、前記副室に燃料を噴射する燃料噴射手段とを備えたディーゼルエンジン及びその運転方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
エンジンは、一般的に、火花点火式エンジンとディーゼルエンジンとに大別することができる。
火花点火式エンジンは、空気と燃料との混合気を燃焼室に吸引して圧縮し、その後、点火プラグにより点火し燃焼させるものである。火花点火式エンジンでは点火手段を備えているため、燃料の着火性に関わらず良好な燃焼状態を確保することが可能であり、着火性の低いLPGを燃料としたエンジンも実用化されている。
【0003】
一方、ディーゼルエンジンは、ピストン位置が上死点位置付近であり高温かつ高圧である燃焼室に燃料噴射装置により燃料を噴射して、燃料を自己着火させて、理想的にはディーゼルサイクル(定圧サイクル)で運転するように構成されている。そして、ディーゼルエンジンにおいては、火花点火式エンジンのように、燃焼室の火炎伝播における最終燃焼部分(末端ガス)が自己着火することで発生する圧力振動、所謂ノッキングの発生がなく、比較的圧縮比を高くすることができるので、火花点火式エンジンと比較して、高い熱効率を実現することができる。
【0004】
ディーゼルエンジンでは、燃料を自己着火させるため、着火性のよい燃料が使用され、通常は軽油等が使用される。例えばLPガス等のように、着火性の低い燃料を使用する場合には、圧縮により燃焼室を高温化するだけでは安定した運転状態を得ることは困難であるため、セタン価向上剤を燃料中に混合するというようなディーゼルエンジンの運転方法が提案されている。(例えば、非特許文献1参照。)
この非特許文献1記載のディーゼルエンジンの運転方法では、LPガス等の燃料中に、着火性の良い物質をセタン価向上剤として混合することにより、燃料の着火性を向上させ、燃料を良好に自己着火させることが可能になる。
【0005】
【非特許文献1】
梶原 昌高、杉山 宏石、相良 信、森 牧彦 (岩谷産業(株))、Alam Mahabubul、後藤 新一 (産業技術総合研究所)
「LPGディーゼルエンジンの性能と排気特性」
社団法人 自動車技術会 学術講演会前刷集 No.114−01
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、燃料にセタン化向上剤を混合するディーゼルエンジンでは、燃料とは別に比較的高価なセタン化向上剤を消費するので運転コストが高くなり、更に、上記セタン化向上剤を貯留しておくためのタンク等を設ける必要があるため、装置コストも高くなることがある。
従って、本発明は、上記の事情に鑑みて、高価な添加剤を必要とせずに、着火性の低いLPガス等の燃料を用いても、燃焼室に噴射して良好に自己着火させることができるディーゼルエンジンを実現することを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するための本発明に係るディーゼルエンジンの第一特徴構成は、新気が吸気される主室と前記主室に連通路を介して連通する副室とからなる燃焼室と、前記副室に燃料を噴射する燃料噴射手段とを備えたディーゼルエンジンであって、
前記新気よりも高温の加熱酸素含有ガスを、前記主室を介することなく前記副室に供給する加熱酸素含有ガス供給手段を備えた点にある。
【0008】
また、上記目的を達成するための本発明に係るディーゼルエンジンの運転方法は、上記ディーゼルエンジンの第一特徴構成により実施可能で、その特徴構成は、主室に新気を吸気する吸気行程又は前記主室の新気を圧縮する圧縮行程において、前記新気よりも高温の加熱酸素含有ガスを、前記主室を介することなく、前記主室に連通路を介して連通する副室に供給してから、前記副室に燃料を噴射して、前記噴射した燃料を自己着火させる点にある。
【0009】
即ち、燃焼室を、吸気弁を介して空気又は希薄混合気等の新気が吸気される主室と、その主室に連通路を介して連通する副室とで構成し、燃料噴射手段からその副室に燃料を噴射して自己着火させるように構成されたディーゼルエンジンにおいて、本発明に係るディーゼルエンジン及びその運転方法の特徴構成のごとく、吸気行程又は圧縮行程において、上記加熱酸素含有ガス供給手段により、主室に吸気される新気よりも高温の加熱空気等の加熱酸素含有ガスを、前記主室を介することなく、直接副室に供給することで、副室に主室よりも高温となる高温領域を形成することができる。
【0010】
そして、上記のように副室に高温領域を形成することで、主室と副室との間で連通路を介して発生する新気流や熱移動による影響はあるものの、その高温領域は、圧縮行程において圧縮されて主室よりも高温となり、燃料噴射手段により燃料が噴射される上死点位置付近では、燃料の自着火が可能な温度に到達する。
【0011】
よって、上記のように加熱酸素含有ガス供給手段により副室に加熱酸素含有ガスを供給して副室に上記高温領域を形成してから、上死点位置付近において、副室に設けられた上記燃料噴射手段により前記副室の前記高温領域内に燃料を噴射すると、副室には主室よりも高温の高温領域が良好に保持されていることから、着火性の低い燃料であっても良好に自己着火させることができる。
【0012】
従って、上記のような独特な構成を有する本発明のディーゼルエンジンによって、従来のディーゼルエンジンのように高価なセタン化向上剤を必要とせずに、着火性の低い燃料を用いても、ディーゼル燃焼を実現することができる。そして、本発明のディーゼルエンジンは、副室のみに高温領域を形成するために、主室に吸気される新気を加熱し燃焼室全体を高温化させる必要がなく、熱損失を最小限にすることができ、高効率化を図ることができる。また、高温化するために圧縮比を必要以上に高く設定する必要がなく、安定した運転が可能となり、機械効率を低下させずに高効率な安定運転を実現することができる。
【0013】
本発明に係るディーゼルエンジンの第二特徴構成は、上記第一特徴構成に加えて、前記加熱酸素含有ガス供給手段が、酸素含有ガスが流通し前記副室に開口する副室吸気路と、前記副室吸気路を流通する酸素含有ガスを加熱して前記加熱酸素含有ガスを生成する加熱手段と、前記副室吸気路の前記副室への開口部を開閉する副室吸気弁とを備えて構成されている点にある。
【0014】
即ち、上記第二特徴構成のごとく、上記副室吸気路と上記加熱手段と上記副室吸気弁というような簡単な構成で上記加熱酸素含有ガス供給手段を構成することができる。
詳しくは、シリンダ内圧力(主室の圧力)の低い吸気行程中に、上記副室吸気弁を開状態とすることで、加熱手段で加熱され副室吸気路を流通する加熱酸素含有ガスを、比較的低い圧力で副室に供給することができる。
従って、加熱酸素含有ガスを圧縮するための高価な圧縮装置を備える必要がなく、吸気行程において副室に発生する負圧により加熱酸素含有ガスを副室に供給することができる。
【0015】
また、副室に供給された加熱酸素含有ガスは、圧縮行程における断熱圧縮により更に高温化されるため、加熱手段で生成され副室吸気路を流通する加熱酸素含有ガスの温度を比較的低温化することができるので、加熱手段の加熱出力を比較的小さいものとすることができ、加熱手段を安価且つ小型に構成することができる。
更に、上記副室の前記副室吸気路の開口部に設けられた副室吸気弁は、吸気路の主室への開口部に設けられた吸気弁と同様に、カムシャフト等からなる動弁機構を用いて、開閉動作させることができ、更に、その動弁機構を用いて、副室吸気弁の開閉時期及びリフト量を調整して、副室への加熱酸素含有ガスの供給量を調整することができる。
【0016】
本発明に係るディーゼルエンジンの第三特徴構成は、上記第一乃至第二特徴構成に加えて、前記加熱酸素含有ガス供給手段が、前記副室に供給する前記加熱酸素含有ガスの温度を調整可能に構成され、
前記燃焼室の燃焼状態を検出する燃焼状態検出手段と、
前記燃焼状態検出手段の検出結果に基づいて前記加熱酸素含有ガス供給手段を働かせて前記加熱酸素含有ガスの温度を制御する制御手段とを備えた点にある。
【0017】
これまで説明してきたように、副室に加熱酸素含有ガスを供給するディーゼルエンジンでは、副室に高温領域を形成して、燃料を良好に自己着火させることができるが、副室に形成される高温領域が必要以上に高温化されると、熱損失が増加し効率が低下し、更に、加熱手段において過大な加熱エネルギーが必要となる。逆に、上記高温領域が十分に高温化されていないと、燃料が自着火せず、失火サイクルが発生し、効率の低下やエンジンストールを引き起こす。
そこで、上記第三特徴構成のごとく、上記制御手段により、上記燃焼状態検出手段の検出結果に基づいて副室に供給される加熱酸素含有ガスの温度を制御することで、その燃焼状態が良好なものに維持され、高効率且つ排ガス中のNOx及びTHC(未燃炭化水素)の濃度を低減した安定運転を行うことができる。
【0018】
本発明に係るディーゼルエンジンの第四特徴構成は、上記第三特徴構成に加えて、前記燃焼状態検出手段が、前記燃焼状態として、前記燃焼室の圧力状態、又は、前記燃焼室から排出される排ガスの所定成分の濃度状態を検出するように構成されており、
前記制御手段が、前記圧力状態又は前記所定成分の濃度状態が正常状態となるように前記加熱酸素含有ガスの温度を制御する点にある。
【0019】
上記副室に加熱酸素含有ガスを供給するディーゼルエンジンでは、副室に形成される高温領域が必要以上に高温化された場合には、排ガス中のNOx濃度が上昇したり、異常燃焼が発生して圧力上昇率が異常に大きくなる。逆に、上記高温領域が十分に高温化されずに燃料が自着火しない失火サイクルが生じた場合には、排ガス中のTHCの濃度が上昇したり、最高圧力が低いサイクルが発生する。
よって、上記第四特徴構成のごとく、上記燃焼状態検出手段により、燃焼室の圧力変化率又は最高圧力等の圧力状態、又は、排ガスの上記NOx濃度又はTHC濃度等の所定成分の濃度状態を、燃焼状態として検出し、上記制御手段により、前記圧力状態又は前記所定成分の濃度状態が、予め認識されている良好な状態で維持されるように、副室に供給される加熱酸素含有ガスの温度を制御することができる。
【0020】
本発明に係るディーゼルエンジンの第五特徴構成は、上記第一乃至第四特徴構成に加えて、前記燃料としてLPガスを用いる点にある。
【0021】
即ち、上記第五特徴構成のごとく、本発明に係るディーゼルエンジンは、燃料として、着火性が低いがLPガスボンベ等により容易に貯留可能なLPガスを利用することができる。
【0022】
【発明の実施の形態】
本発明に係るディーゼルエンジンの実施の形態について図面を用いて説明する。
図1に示す本発明に係るディーゼルエンジン100(以下、「本エンジン100」と呼ぶ。)は、ピストン2と、ピストン2を収容してピストン2の頂面と共に主室1を形成するシリンダ3を備え、ピストン2をシリンダ3内で往復運動させると共に、吸気弁4及び排気弁5を開閉動作させて、空気又は希薄混合気等の新気Iを主室1に取り込み、主室1において吸気、圧縮、燃焼・膨張、排気の諸行程を行い、ピストン2の往復動を連結棒(図示せず)によってクランク軸(図示せず)の回転運動として出力されるものである。このような本エンジンの構成は、通常の4ストロークエンジンと変わるところはない。尚、本エンジン100において、シリンダ3のボア径は110mmであり、ピストン2のストローク長は106mmであり、ピストン2の位置が上死点位置であるときの燃焼室容量に対する、ピストン2の位置が下死点位置であるときの燃焼室容量の比である圧縮比は18である。また、本エンジン100は、クランク軸の回転数が1200rpmで運転されて15kW程度の出力が得られるように構成されている。
【0023】
また、本エンジン100は、LPガス(液化石油ガス)を燃料Gとして使用するものであり、吸気行程において吸気弁4を開状態として、主室1に空気である新気Iを吸入し、圧縮行程においてこの吸入した新気Iを圧縮して燃料Gを燃焼させるものである。
【0024】
更に、本エンジン100のシリンダヘッド9には、主室1と同様に本エンジン100の燃焼室の一部として設けられ、主室1に連通路23を介して連通される副室10が設けられており、この副室10を有する副室機構20の構造について以下に説明する。尚、副室機構20の副室10の容量は、ピストン2の位置が上死点位置であるときの主室1の容量を加えた総燃焼室容量の1/10程度である。また、副室10と主室1とを連通する連通路23は、主室1側に開口する4つの主室孔21と、副室10側に開口する1つの副室孔22とを両端部に有する流路として形成されており、主室孔21は、ピストン2の動作方向に対して直角方向に軸心を有すると共に、当該動作方向を軸にした周方向に等間隔で配設されており、一方、副室孔22は、副室吸気弁31側への上方方向に軸心を有している。また、連通路23の流路径は3mmとなっている。
【0025】
副室10の上方には、燃料噴射弁30(燃料噴射手段の一例)が設けられており、この燃料噴射弁30は、圧縮行程において燃焼室の新気が圧縮された後のピストン2位置が上死点位置付近となったときに、燃料Gを副室10に高圧噴射して、燃料を自己着火させて、ディーゼル燃焼させるように構成されている。
【0026】
更に、本エンジン100には、主室1に吸気される新気Iよりも高温の200℃程度の加熱空気HA(加熱酸素含有ガスの一例)を、主室1を介することなく副室10に供給する加熱酸素含有ガス供給手段として、副室10に開口し空気Aが流通する副室吸気路42と、副室吸気路42を流通する酸素含有ガスを加熱して加熱空気HAを生成する熱交換部40(加熱手段の一例)と、副室吸気路42の副室10への開口部を開閉自在な副室吸気弁31とが設けられている。
【0027】
また、上記熱交換部40は、副室吸気路42を流通する空気Aを、排気路41を流通する排ガスEとの熱交換により加熱して、主室1に吸気される新気Iよりも高温の加熱空気HAを生成するように構成されている。
【0028】
副室10の上方部に設けられた副室吸気弁31は、吸気弁4及び排気弁5と共通のカムシャフト等からなる動弁機構により開閉動作し、更に、吸気弁4と同期してその開閉時期及びリフト量が調整可能に構成されている。
【0029】
また、空気流路42に熱交換部40の上流側と下流側を連通するバイパス路43及びそのバイパス路43の流路断面積を調整可能なバイパス弁44が設けられており、コンピュータからなるエンジン・コントロール・ユニット(以下、「ECU」と略称する。)50によりバイパス弁44の開度を調整することにより、副室10に供給される加熱空気HAの温度を調整可能に構成されている。
【0030】
本エンジン100には、前記燃焼室の燃焼状態を検出する燃焼状態検出手段として、排気路41を流通する排ガスE中のNOx濃度を検出可能なNOxセンサ51と、排ガスE中のTHC(未燃炭化水素)濃度を検出可能なTHCセンサ52が設けられており、それらの検出結果はECU50に送信される。
【0031】
ECU50は、後に詳細については説明するが、NOxセンサ51とTHCセンサ52の検出結果に基づいて所定の演算を行い、上記バイパス弁50の開度調整により、副室10に供給する加熱空気HAの温度を制御する制御手段として機能する。
【0032】
次に、本エンジン100の運転方法として、1サイクルにおける動作状態を、図2に基づいて説明する。尚、図2は、本エンジン100の1サイクルにおける動作状態を示すフローチャートである。
【0033】
まず、本エンジン100は、吸気弁4が開状態となって、ピストン2が上死点を経て下降し、主室1に新気Iが吸入される吸気行程を行う。同時に副室吸気弁31が開状態とされ、副室10に加熱空気HAが供給される。
後に、吸気弁4が閉状態とされてピストン2が上昇し、主室1内の新気Iが圧縮される圧縮行程が開始される。
そして、圧縮行程後期において燃料噴射弁30は燃料Gを副室10内に噴射する。噴射された燃料Gは副室19の上記加熱空気HAにより高温となった高温領域において自己着火し、更に燃焼しながら主室1へと噴出する。
【0034】
次に、本エンジン100のECU50による制御アルゴリズムを図3に基づいて説明する。
まず、ECU50は、NOxセンサ51からの信号により、排ガスE中のNOx濃度が予め設定された設定NOx濃度よりも高いかを判断し(ステップ11)、排ガスE中のNOx濃度が上記設定NOx濃度よりも高い場合には、バイパス弁44に開度を所定量増加させるための指令信号をバイパス弁44側に出力する(ステップ12)。
【0035】
次に、ECU50は、THCセンサ52からの信号により、排ガスE中のTHC濃度が予め設定された設定THC濃度よりも高いかを判断し(ステップ13)、排ガスE中のTHC濃度が上記設定THC濃度よりも高い場合には、バイパス弁44に開度を所定量減少させるための指令信号をバイパス弁44側に出力する(ステップ14)。
【0036】
そして、上記ステップ11において、排ガスE中のNOx濃度が上記設定NOx濃度以下と判断し、且つ、上記ステップ13において、排ガスE中のTHC濃度が上記設定THC濃度以下と判定した場合には、バイパス弁44の開度を現時点での開度に維持し(ステップ15)、上記アルゴリズムの先頭へと戻る。
【0037】
上記のように、NOx濃度及びTHC濃度が正常状態となるように副室10に供給する加熱空気HAの温度を制御することによって、燃料Gとして着火性の低いLPガス等を用いても、燃焼Gにセタン化向上剤を加えずに、圧縮比18、副室10に供給する加熱空気HAの温度200℃において、熱効率38%での安定運転を実現した。
【0038】
〔別実施形態〕
本発明に係るディーゼルエンジンの別実施の形態について説明する。
〈1〉
上記実施の形態においては、ECU50が機能する制御手段を、NOxセンサ51とTHCセンサ52の検出結果に基づいて副室10に供給する加熱空気HAの温度を制御するように構成したが、別に、シリンダ3内の圧力状態に基づいて副室10に供給する加熱空気HAの温度を制御するように構成することもでき、その詳細構成について、以下に説明する。
【0039】
図1に示すように、本エンジン100の主室1に、主室1の圧力を検出するための圧力センサ53を設け、ECU50を、上記圧力センサ53の検出結果に基づいて所定の演算を行い、上記バイパス弁50の開度調整により、副室10に供給する加熱空気HAの温度を制御する制御手段として機能するように構成する。
【0040】
このように構成されたECU50による制御アルゴリズムを図4に基づいて説明する。
まず、ECU50は、圧力センサ53からの信号により、主室1の最大圧力上昇率が予め設定された設定圧力上昇率よりも高いかを判断し(ステップ21)、主室1の最大圧力上昇率が上記設定圧力上昇率よりも高い場合には、バイパス弁44に開度を所定量増加させるための指令信号をバイパス弁44側に出力する(ステップ22)。
【0041】
次に、ECU50は、圧力センサ53からの信号により、主室1の最大圧力が予め設定された設定最大圧力よりも低いかを判断し(ステップ23)、主室1の最大圧力が上記設定最大圧力よりも低い場合には、バイパス弁44に開度を所定量減少させるための指令信号をバイパス弁44側に出力する(ステップ24)。
【0042】
そして、上記ステップ21において、主室1の最大圧力上昇率が上記設定圧力上昇率以下と判断し、且つ、上記ステップ23において、主室1の最大圧力が上記設定最大圧力以上と判定した場合には、バイパス弁44の開度を現時点での開度に維持し(ステップ25)、上記アルゴリズムの先頭へと戻る。
上記のように、燃焼室の圧力状態が正常状態となるように副室10に供給する加熱空気HAの温度を制御することによっても、安定した運転状態を維持することができる。
尚、圧力センサ53の設置位置は、主室1ではなく、副室10でも構わない。
【0043】
〈2〉
上記実施の形態のディーゼルエンジン100において、副室10に供給される加熱空気HAを生成する加熱手段として、副室吸気路42を流通する空気Aを排気路41を流通する排ガスEとの熱交換により加熱する熱交換部40を設けたが、更に、副室吸気路42を流通する空気Aを電気ヒータ56により加熱可能に構成しても構わない。即ち、起動時等のように、排ガスEが未だ高温となっておらず、その排ガスEとの熱交換のみでは充分に空気Aを加熱することができない場合には、電気ヒータ56の電源55をON状態として、空気Aを充分な温度まで加熱することができる。
【0044】
〈3〉
上記実施の形態において、加熱空気HAを吸気行程中に副室10に供給する構成を説明したが、別に、加熱空気HAを圧縮行程中に副室10に供給する構成としても構わない。
【0045】
〈4〉
上記実施形の態において、燃料GとしてLPガスを用いたが、燃料Gとしては、天然ガスのような炭化水素系気体燃料、又はガソリン、軽油、重油、アルコール、水素等の可燃性燃料を使用することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係るディーゼルエンジンの実施形態を示す概略構成図
【図2】図1に示すディーゼルエンジンの動作タイミングを示すチャート図
【図3】図1に示すディーゼルエンジンの制御アルゴリズムを示す図
【図4】別実施形態のディーゼルエンジンの制御アルゴリズムを示す図
【符号の説明】
1:主室
2:ピストン
3:シリンダ
4:吸気弁
5:排気弁
9:シリンダヘッド
10:副室
20:副室機構
21:主室孔
22:副室孔
23:連通路
30:燃料噴射弁(燃料噴射手段)
31:副室吸気弁
40:熱交換部(加熱手段)
41:排気路
42:副室吸気路
43:バイパス路
44:バイパス弁
50:エンジン・コントロール・ユニット(制御手段)
51:NOxセンサ(燃焼状態検出手段)
52:THCセンサ(燃焼状態検出手段)
53:圧力センサ(燃焼状態検出手段)
A:空気(酸素含有ガス)
G:燃料
I:新気
E:排ガス
HA:加熱空気(加熱酸素含有ガス)
【発明の属する技術分野】
本発明は、新気が吸気される主室と前記主室に連通路を介して連通する副室とからなる燃焼室と、前記副室に燃料を噴射する燃料噴射手段とを備えたディーゼルエンジン及びその運転方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
エンジンは、一般的に、火花点火式エンジンとディーゼルエンジンとに大別することができる。
火花点火式エンジンは、空気と燃料との混合気を燃焼室に吸引して圧縮し、その後、点火プラグにより点火し燃焼させるものである。火花点火式エンジンでは点火手段を備えているため、燃料の着火性に関わらず良好な燃焼状態を確保することが可能であり、着火性の低いLPGを燃料としたエンジンも実用化されている。
【0003】
一方、ディーゼルエンジンは、ピストン位置が上死点位置付近であり高温かつ高圧である燃焼室に燃料噴射装置により燃料を噴射して、燃料を自己着火させて、理想的にはディーゼルサイクル(定圧サイクル)で運転するように構成されている。そして、ディーゼルエンジンにおいては、火花点火式エンジンのように、燃焼室の火炎伝播における最終燃焼部分(末端ガス)が自己着火することで発生する圧力振動、所謂ノッキングの発生がなく、比較的圧縮比を高くすることができるので、火花点火式エンジンと比較して、高い熱効率を実現することができる。
【0004】
ディーゼルエンジンでは、燃料を自己着火させるため、着火性のよい燃料が使用され、通常は軽油等が使用される。例えばLPガス等のように、着火性の低い燃料を使用する場合には、圧縮により燃焼室を高温化するだけでは安定した運転状態を得ることは困難であるため、セタン価向上剤を燃料中に混合するというようなディーゼルエンジンの運転方法が提案されている。(例えば、非特許文献1参照。)
この非特許文献1記載のディーゼルエンジンの運転方法では、LPガス等の燃料中に、着火性の良い物質をセタン価向上剤として混合することにより、燃料の着火性を向上させ、燃料を良好に自己着火させることが可能になる。
【0005】
【非特許文献1】
梶原 昌高、杉山 宏石、相良 信、森 牧彦 (岩谷産業(株))、Alam Mahabubul、後藤 新一 (産業技術総合研究所)
「LPGディーゼルエンジンの性能と排気特性」
社団法人 自動車技術会 学術講演会前刷集 No.114−01
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、燃料にセタン化向上剤を混合するディーゼルエンジンでは、燃料とは別に比較的高価なセタン化向上剤を消費するので運転コストが高くなり、更に、上記セタン化向上剤を貯留しておくためのタンク等を設ける必要があるため、装置コストも高くなることがある。
従って、本発明は、上記の事情に鑑みて、高価な添加剤を必要とせずに、着火性の低いLPガス等の燃料を用いても、燃焼室に噴射して良好に自己着火させることができるディーゼルエンジンを実現することを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するための本発明に係るディーゼルエンジンの第一特徴構成は、新気が吸気される主室と前記主室に連通路を介して連通する副室とからなる燃焼室と、前記副室に燃料を噴射する燃料噴射手段とを備えたディーゼルエンジンであって、
前記新気よりも高温の加熱酸素含有ガスを、前記主室を介することなく前記副室に供給する加熱酸素含有ガス供給手段を備えた点にある。
【0008】
また、上記目的を達成するための本発明に係るディーゼルエンジンの運転方法は、上記ディーゼルエンジンの第一特徴構成により実施可能で、その特徴構成は、主室に新気を吸気する吸気行程又は前記主室の新気を圧縮する圧縮行程において、前記新気よりも高温の加熱酸素含有ガスを、前記主室を介することなく、前記主室に連通路を介して連通する副室に供給してから、前記副室に燃料を噴射して、前記噴射した燃料を自己着火させる点にある。
【0009】
即ち、燃焼室を、吸気弁を介して空気又は希薄混合気等の新気が吸気される主室と、その主室に連通路を介して連通する副室とで構成し、燃料噴射手段からその副室に燃料を噴射して自己着火させるように構成されたディーゼルエンジンにおいて、本発明に係るディーゼルエンジン及びその運転方法の特徴構成のごとく、吸気行程又は圧縮行程において、上記加熱酸素含有ガス供給手段により、主室に吸気される新気よりも高温の加熱空気等の加熱酸素含有ガスを、前記主室を介することなく、直接副室に供給することで、副室に主室よりも高温となる高温領域を形成することができる。
【0010】
そして、上記のように副室に高温領域を形成することで、主室と副室との間で連通路を介して発生する新気流や熱移動による影響はあるものの、その高温領域は、圧縮行程において圧縮されて主室よりも高温となり、燃料噴射手段により燃料が噴射される上死点位置付近では、燃料の自着火が可能な温度に到達する。
【0011】
よって、上記のように加熱酸素含有ガス供給手段により副室に加熱酸素含有ガスを供給して副室に上記高温領域を形成してから、上死点位置付近において、副室に設けられた上記燃料噴射手段により前記副室の前記高温領域内に燃料を噴射すると、副室には主室よりも高温の高温領域が良好に保持されていることから、着火性の低い燃料であっても良好に自己着火させることができる。
【0012】
従って、上記のような独特な構成を有する本発明のディーゼルエンジンによって、従来のディーゼルエンジンのように高価なセタン化向上剤を必要とせずに、着火性の低い燃料を用いても、ディーゼル燃焼を実現することができる。そして、本発明のディーゼルエンジンは、副室のみに高温領域を形成するために、主室に吸気される新気を加熱し燃焼室全体を高温化させる必要がなく、熱損失を最小限にすることができ、高効率化を図ることができる。また、高温化するために圧縮比を必要以上に高く設定する必要がなく、安定した運転が可能となり、機械効率を低下させずに高効率な安定運転を実現することができる。
【0013】
本発明に係るディーゼルエンジンの第二特徴構成は、上記第一特徴構成に加えて、前記加熱酸素含有ガス供給手段が、酸素含有ガスが流通し前記副室に開口する副室吸気路と、前記副室吸気路を流通する酸素含有ガスを加熱して前記加熱酸素含有ガスを生成する加熱手段と、前記副室吸気路の前記副室への開口部を開閉する副室吸気弁とを備えて構成されている点にある。
【0014】
即ち、上記第二特徴構成のごとく、上記副室吸気路と上記加熱手段と上記副室吸気弁というような簡単な構成で上記加熱酸素含有ガス供給手段を構成することができる。
詳しくは、シリンダ内圧力(主室の圧力)の低い吸気行程中に、上記副室吸気弁を開状態とすることで、加熱手段で加熱され副室吸気路を流通する加熱酸素含有ガスを、比較的低い圧力で副室に供給することができる。
従って、加熱酸素含有ガスを圧縮するための高価な圧縮装置を備える必要がなく、吸気行程において副室に発生する負圧により加熱酸素含有ガスを副室に供給することができる。
【0015】
また、副室に供給された加熱酸素含有ガスは、圧縮行程における断熱圧縮により更に高温化されるため、加熱手段で生成され副室吸気路を流通する加熱酸素含有ガスの温度を比較的低温化することができるので、加熱手段の加熱出力を比較的小さいものとすることができ、加熱手段を安価且つ小型に構成することができる。
更に、上記副室の前記副室吸気路の開口部に設けられた副室吸気弁は、吸気路の主室への開口部に設けられた吸気弁と同様に、カムシャフト等からなる動弁機構を用いて、開閉動作させることができ、更に、その動弁機構を用いて、副室吸気弁の開閉時期及びリフト量を調整して、副室への加熱酸素含有ガスの供給量を調整することができる。
【0016】
本発明に係るディーゼルエンジンの第三特徴構成は、上記第一乃至第二特徴構成に加えて、前記加熱酸素含有ガス供給手段が、前記副室に供給する前記加熱酸素含有ガスの温度を調整可能に構成され、
前記燃焼室の燃焼状態を検出する燃焼状態検出手段と、
前記燃焼状態検出手段の検出結果に基づいて前記加熱酸素含有ガス供給手段を働かせて前記加熱酸素含有ガスの温度を制御する制御手段とを備えた点にある。
【0017】
これまで説明してきたように、副室に加熱酸素含有ガスを供給するディーゼルエンジンでは、副室に高温領域を形成して、燃料を良好に自己着火させることができるが、副室に形成される高温領域が必要以上に高温化されると、熱損失が増加し効率が低下し、更に、加熱手段において過大な加熱エネルギーが必要となる。逆に、上記高温領域が十分に高温化されていないと、燃料が自着火せず、失火サイクルが発生し、効率の低下やエンジンストールを引き起こす。
そこで、上記第三特徴構成のごとく、上記制御手段により、上記燃焼状態検出手段の検出結果に基づいて副室に供給される加熱酸素含有ガスの温度を制御することで、その燃焼状態が良好なものに維持され、高効率且つ排ガス中のNOx及びTHC(未燃炭化水素)の濃度を低減した安定運転を行うことができる。
【0018】
本発明に係るディーゼルエンジンの第四特徴構成は、上記第三特徴構成に加えて、前記燃焼状態検出手段が、前記燃焼状態として、前記燃焼室の圧力状態、又は、前記燃焼室から排出される排ガスの所定成分の濃度状態を検出するように構成されており、
前記制御手段が、前記圧力状態又は前記所定成分の濃度状態が正常状態となるように前記加熱酸素含有ガスの温度を制御する点にある。
【0019】
上記副室に加熱酸素含有ガスを供給するディーゼルエンジンでは、副室に形成される高温領域が必要以上に高温化された場合には、排ガス中のNOx濃度が上昇したり、異常燃焼が発生して圧力上昇率が異常に大きくなる。逆に、上記高温領域が十分に高温化されずに燃料が自着火しない失火サイクルが生じた場合には、排ガス中のTHCの濃度が上昇したり、最高圧力が低いサイクルが発生する。
よって、上記第四特徴構成のごとく、上記燃焼状態検出手段により、燃焼室の圧力変化率又は最高圧力等の圧力状態、又は、排ガスの上記NOx濃度又はTHC濃度等の所定成分の濃度状態を、燃焼状態として検出し、上記制御手段により、前記圧力状態又は前記所定成分の濃度状態が、予め認識されている良好な状態で維持されるように、副室に供給される加熱酸素含有ガスの温度を制御することができる。
【0020】
本発明に係るディーゼルエンジンの第五特徴構成は、上記第一乃至第四特徴構成に加えて、前記燃料としてLPガスを用いる点にある。
【0021】
即ち、上記第五特徴構成のごとく、本発明に係るディーゼルエンジンは、燃料として、着火性が低いがLPガスボンベ等により容易に貯留可能なLPガスを利用することができる。
【0022】
【発明の実施の形態】
本発明に係るディーゼルエンジンの実施の形態について図面を用いて説明する。
図1に示す本発明に係るディーゼルエンジン100(以下、「本エンジン100」と呼ぶ。)は、ピストン2と、ピストン2を収容してピストン2の頂面と共に主室1を形成するシリンダ3を備え、ピストン2をシリンダ3内で往復運動させると共に、吸気弁4及び排気弁5を開閉動作させて、空気又は希薄混合気等の新気Iを主室1に取り込み、主室1において吸気、圧縮、燃焼・膨張、排気の諸行程を行い、ピストン2の往復動を連結棒(図示せず)によってクランク軸(図示せず)の回転運動として出力されるものである。このような本エンジンの構成は、通常の4ストロークエンジンと変わるところはない。尚、本エンジン100において、シリンダ3のボア径は110mmであり、ピストン2のストローク長は106mmであり、ピストン2の位置が上死点位置であるときの燃焼室容量に対する、ピストン2の位置が下死点位置であるときの燃焼室容量の比である圧縮比は18である。また、本エンジン100は、クランク軸の回転数が1200rpmで運転されて15kW程度の出力が得られるように構成されている。
【0023】
また、本エンジン100は、LPガス(液化石油ガス)を燃料Gとして使用するものであり、吸気行程において吸気弁4を開状態として、主室1に空気である新気Iを吸入し、圧縮行程においてこの吸入した新気Iを圧縮して燃料Gを燃焼させるものである。
【0024】
更に、本エンジン100のシリンダヘッド9には、主室1と同様に本エンジン100の燃焼室の一部として設けられ、主室1に連通路23を介して連通される副室10が設けられており、この副室10を有する副室機構20の構造について以下に説明する。尚、副室機構20の副室10の容量は、ピストン2の位置が上死点位置であるときの主室1の容量を加えた総燃焼室容量の1/10程度である。また、副室10と主室1とを連通する連通路23は、主室1側に開口する4つの主室孔21と、副室10側に開口する1つの副室孔22とを両端部に有する流路として形成されており、主室孔21は、ピストン2の動作方向に対して直角方向に軸心を有すると共に、当該動作方向を軸にした周方向に等間隔で配設されており、一方、副室孔22は、副室吸気弁31側への上方方向に軸心を有している。また、連通路23の流路径は3mmとなっている。
【0025】
副室10の上方には、燃料噴射弁30(燃料噴射手段の一例)が設けられており、この燃料噴射弁30は、圧縮行程において燃焼室の新気が圧縮された後のピストン2位置が上死点位置付近となったときに、燃料Gを副室10に高圧噴射して、燃料を自己着火させて、ディーゼル燃焼させるように構成されている。
【0026】
更に、本エンジン100には、主室1に吸気される新気Iよりも高温の200℃程度の加熱空気HA(加熱酸素含有ガスの一例)を、主室1を介することなく副室10に供給する加熱酸素含有ガス供給手段として、副室10に開口し空気Aが流通する副室吸気路42と、副室吸気路42を流通する酸素含有ガスを加熱して加熱空気HAを生成する熱交換部40(加熱手段の一例)と、副室吸気路42の副室10への開口部を開閉自在な副室吸気弁31とが設けられている。
【0027】
また、上記熱交換部40は、副室吸気路42を流通する空気Aを、排気路41を流通する排ガスEとの熱交換により加熱して、主室1に吸気される新気Iよりも高温の加熱空気HAを生成するように構成されている。
【0028】
副室10の上方部に設けられた副室吸気弁31は、吸気弁4及び排気弁5と共通のカムシャフト等からなる動弁機構により開閉動作し、更に、吸気弁4と同期してその開閉時期及びリフト量が調整可能に構成されている。
【0029】
また、空気流路42に熱交換部40の上流側と下流側を連通するバイパス路43及びそのバイパス路43の流路断面積を調整可能なバイパス弁44が設けられており、コンピュータからなるエンジン・コントロール・ユニット(以下、「ECU」と略称する。)50によりバイパス弁44の開度を調整することにより、副室10に供給される加熱空気HAの温度を調整可能に構成されている。
【0030】
本エンジン100には、前記燃焼室の燃焼状態を検出する燃焼状態検出手段として、排気路41を流通する排ガスE中のNOx濃度を検出可能なNOxセンサ51と、排ガスE中のTHC(未燃炭化水素)濃度を検出可能なTHCセンサ52が設けられており、それらの検出結果はECU50に送信される。
【0031】
ECU50は、後に詳細については説明するが、NOxセンサ51とTHCセンサ52の検出結果に基づいて所定の演算を行い、上記バイパス弁50の開度調整により、副室10に供給する加熱空気HAの温度を制御する制御手段として機能する。
【0032】
次に、本エンジン100の運転方法として、1サイクルにおける動作状態を、図2に基づいて説明する。尚、図2は、本エンジン100の1サイクルにおける動作状態を示すフローチャートである。
【0033】
まず、本エンジン100は、吸気弁4が開状態となって、ピストン2が上死点を経て下降し、主室1に新気Iが吸入される吸気行程を行う。同時に副室吸気弁31が開状態とされ、副室10に加熱空気HAが供給される。
後に、吸気弁4が閉状態とされてピストン2が上昇し、主室1内の新気Iが圧縮される圧縮行程が開始される。
そして、圧縮行程後期において燃料噴射弁30は燃料Gを副室10内に噴射する。噴射された燃料Gは副室19の上記加熱空気HAにより高温となった高温領域において自己着火し、更に燃焼しながら主室1へと噴出する。
【0034】
次に、本エンジン100のECU50による制御アルゴリズムを図3に基づいて説明する。
まず、ECU50は、NOxセンサ51からの信号により、排ガスE中のNOx濃度が予め設定された設定NOx濃度よりも高いかを判断し(ステップ11)、排ガスE中のNOx濃度が上記設定NOx濃度よりも高い場合には、バイパス弁44に開度を所定量増加させるための指令信号をバイパス弁44側に出力する(ステップ12)。
【0035】
次に、ECU50は、THCセンサ52からの信号により、排ガスE中のTHC濃度が予め設定された設定THC濃度よりも高いかを判断し(ステップ13)、排ガスE中のTHC濃度が上記設定THC濃度よりも高い場合には、バイパス弁44に開度を所定量減少させるための指令信号をバイパス弁44側に出力する(ステップ14)。
【0036】
そして、上記ステップ11において、排ガスE中のNOx濃度が上記設定NOx濃度以下と判断し、且つ、上記ステップ13において、排ガスE中のTHC濃度が上記設定THC濃度以下と判定した場合には、バイパス弁44の開度を現時点での開度に維持し(ステップ15)、上記アルゴリズムの先頭へと戻る。
【0037】
上記のように、NOx濃度及びTHC濃度が正常状態となるように副室10に供給する加熱空気HAの温度を制御することによって、燃料Gとして着火性の低いLPガス等を用いても、燃焼Gにセタン化向上剤を加えずに、圧縮比18、副室10に供給する加熱空気HAの温度200℃において、熱効率38%での安定運転を実現した。
【0038】
〔別実施形態〕
本発明に係るディーゼルエンジンの別実施の形態について説明する。
〈1〉
上記実施の形態においては、ECU50が機能する制御手段を、NOxセンサ51とTHCセンサ52の検出結果に基づいて副室10に供給する加熱空気HAの温度を制御するように構成したが、別に、シリンダ3内の圧力状態に基づいて副室10に供給する加熱空気HAの温度を制御するように構成することもでき、その詳細構成について、以下に説明する。
【0039】
図1に示すように、本エンジン100の主室1に、主室1の圧力を検出するための圧力センサ53を設け、ECU50を、上記圧力センサ53の検出結果に基づいて所定の演算を行い、上記バイパス弁50の開度調整により、副室10に供給する加熱空気HAの温度を制御する制御手段として機能するように構成する。
【0040】
このように構成されたECU50による制御アルゴリズムを図4に基づいて説明する。
まず、ECU50は、圧力センサ53からの信号により、主室1の最大圧力上昇率が予め設定された設定圧力上昇率よりも高いかを判断し(ステップ21)、主室1の最大圧力上昇率が上記設定圧力上昇率よりも高い場合には、バイパス弁44に開度を所定量増加させるための指令信号をバイパス弁44側に出力する(ステップ22)。
【0041】
次に、ECU50は、圧力センサ53からの信号により、主室1の最大圧力が予め設定された設定最大圧力よりも低いかを判断し(ステップ23)、主室1の最大圧力が上記設定最大圧力よりも低い場合には、バイパス弁44に開度を所定量減少させるための指令信号をバイパス弁44側に出力する(ステップ24)。
【0042】
そして、上記ステップ21において、主室1の最大圧力上昇率が上記設定圧力上昇率以下と判断し、且つ、上記ステップ23において、主室1の最大圧力が上記設定最大圧力以上と判定した場合には、バイパス弁44の開度を現時点での開度に維持し(ステップ25)、上記アルゴリズムの先頭へと戻る。
上記のように、燃焼室の圧力状態が正常状態となるように副室10に供給する加熱空気HAの温度を制御することによっても、安定した運転状態を維持することができる。
尚、圧力センサ53の設置位置は、主室1ではなく、副室10でも構わない。
【0043】
〈2〉
上記実施の形態のディーゼルエンジン100において、副室10に供給される加熱空気HAを生成する加熱手段として、副室吸気路42を流通する空気Aを排気路41を流通する排ガスEとの熱交換により加熱する熱交換部40を設けたが、更に、副室吸気路42を流通する空気Aを電気ヒータ56により加熱可能に構成しても構わない。即ち、起動時等のように、排ガスEが未だ高温となっておらず、その排ガスEとの熱交換のみでは充分に空気Aを加熱することができない場合には、電気ヒータ56の電源55をON状態として、空気Aを充分な温度まで加熱することができる。
【0044】
〈3〉
上記実施の形態において、加熱空気HAを吸気行程中に副室10に供給する構成を説明したが、別に、加熱空気HAを圧縮行程中に副室10に供給する構成としても構わない。
【0045】
〈4〉
上記実施形の態において、燃料GとしてLPガスを用いたが、燃料Gとしては、天然ガスのような炭化水素系気体燃料、又はガソリン、軽油、重油、アルコール、水素等の可燃性燃料を使用することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係るディーゼルエンジンの実施形態を示す概略構成図
【図2】図1に示すディーゼルエンジンの動作タイミングを示すチャート図
【図3】図1に示すディーゼルエンジンの制御アルゴリズムを示す図
【図4】別実施形態のディーゼルエンジンの制御アルゴリズムを示す図
【符号の説明】
1:主室
2:ピストン
3:シリンダ
4:吸気弁
5:排気弁
9:シリンダヘッド
10:副室
20:副室機構
21:主室孔
22:副室孔
23:連通路
30:燃料噴射弁(燃料噴射手段)
31:副室吸気弁
40:熱交換部(加熱手段)
41:排気路
42:副室吸気路
43:バイパス路
44:バイパス弁
50:エンジン・コントロール・ユニット(制御手段)
51:NOxセンサ(燃焼状態検出手段)
52:THCセンサ(燃焼状態検出手段)
53:圧力センサ(燃焼状態検出手段)
A:空気(酸素含有ガス)
G:燃料
I:新気
E:排ガス
HA:加熱空気(加熱酸素含有ガス)
Claims (6)
- 新気が吸気される主室と前記主室に連通路を介して連通する副室とからなる燃焼室と、前記副室に燃料を噴射する燃料噴射手段とを備えたディーゼルエンジンであって、
前記新気よりも高温の加熱酸素含有ガスを、前記主室を介することなく前記副室に供給する加熱酸素含有ガス供給手段を備えたディーゼルエンジン。 - 前記加熱酸素含有ガス供給手段が、酸素含有ガスが流通し前記副室に開口する副室吸気路と、前記副室吸気路を流通する酸素含有ガスを加熱して前記加熱酸素含有ガスを生成する加熱手段と、前記副室吸気路の前記副室への開口部を開閉する副室吸気弁とを備えて構成されている請求項1に記載のディーゼルエンジン。
- 前記加熱酸素含有ガス供給手段が、前記副室に供給する前記加熱酸素含有ガスの温度を調整可能に構成され、
前記燃焼室の燃焼状態を検出する燃焼状態検出手段と、
前記燃焼状態検出手段の検出結果に基づいて前記加熱酸素含有ガス供給手段を働かせて前記加熱酸素含有ガスの温度を制御する制御手段とを備えた請求項1又は2に記載のディーゼルエンジン。 - 前記燃焼状態検出手段が、前記燃焼状態として、前記燃焼室の圧力状態、又は、前記燃焼室から排出される排ガスの所定成分の濃度状態を検出するように構成されており、
前記制御手段が、前記圧力状態又は前記所定成分の濃度状態が正常状態となるように前記加熱酸素含有ガスの温度を制御する請求項3に記載のディーゼルエンジン。 - 前記燃料としてLPガスを用いる請求項1から4の何れか1項に記載のディーゼルエンジン。
- 主室に新気を吸気する吸気行程又は前記主室の新気を圧縮する圧縮行程において、前記新気よりも高温の加熱酸素含有ガスを、前記主室を介することなく、前記主室に連通路を介して連通する副室に供給してから、前記副室に燃料を噴射して、前記噴射した燃料を自己着火させるディーゼルエンジンの運転方法。
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