JP2004277652A - 低タンパク質吸着性成形物、その製造方法、及び細胞培養器 - Google Patents
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Abstract
【課題】タンパク質などの吸着物質の吸着性が低く、タンパク質の剥離が容易な成形物を提供する。
【解決手段】支持層表面に低タンパク質吸着層を有する成形物であって、該低タンパク質吸着層が両親媒性の重合体からなり、支持層に共有結合で結合して層を形成してなることを特徴とする低タンパク質吸着性成形物及びその製造方法。
【選択図】 なし
【解決手段】支持層表面に低タンパク質吸着層を有する成形物であって、該低タンパク質吸着層が両親媒性の重合体からなり、支持層に共有結合で結合して層を形成してなることを特徴とする低タンパク質吸着性成形物及びその製造方法。
【選択図】 なし
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、低タンパク質吸着性成形物、その製造方法、及び細胞培養器に関する。
【0002】
【従来の技術】
分離膜、電子工業、食品工業、廃水処理、印刷材料等の分野においては、タンパク質、コロイド、バクテリヤ、フミン質、油脂、大気中の汚染物質等の吸着が極めて少ない成形物が求められている。
また、例えば人工臓器等の医療用具や培養、検査等の用具等の医療用途、医薬品工業、及び生化学等の分野においては、抗原抗体、酵素、タンパク質、DNA等の吸着の少ない、生体適合性のある低タンパク質吸着性成形物が求められている。
さらに、培養、検査及び生化学分析においては、タンパク質や細胞などの吸着性(または接着性)を用途に応じて幅広く制御した成形物が求められている。
例えば、分離膜分野においては、これらの物質の吸着による透過流束の低下が問題となっている。また、生化学分野においては、有用タンパク質の容器への吸着による分析精度の低下、更に、人工臓器などの医療分野における異物として認識されてしまうケースの発生等が問題となっており、血栓、溶血、感作性、抗原抗体反応などの発生等も問題となっている。
【0003】
このような問題を解決するために、活性光線により重合可能なモノマー及び/又はオリゴマーと光重合開始剤とを必須成分として含む光重合性樹脂組成物の硬化物の表面に、親水性モノマー及び/又は親水性オリゴマーが、上記活性光線により重合可能なモノマー及び/又はオリゴマーにブロック共重合して硬化することにより層を形成した表面親水性成形物の製造方法が開示されている(例えば、特許文献1参照。)。
【0004】
【特許文献1】
特開平10−53658号公報
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
前記特許文献1に記載の方法で得られる表面親水性成形物は、タンパク質などの吸着物質との相互作用(吸着性や接着性)の制御が困難で、この表面親水成形物を例えば細胞培養器として用いた場合、細胞等のタンパク質が容易に細胞培養器表面から剥離しなかった。
【0006】
本発明が解決しようとする課題は、表面の親水性が高く、かつ、タンパク質などの吸着物質の吸着性が低く、タンパク質や細胞などの物質の表面に対する吸着性または接着性を幅広く制御でき、特に表面に吸着したタンパク質等の吸着物質の剥離が容易であり、かつ高い親水性を付与することに伴う耐水性低下を呈しない成形物を提供し、また、そのような成形物を高い生産性で製造する方法を提供することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記の課題を解決すべく鋭意研究を重ねた結果、所望の形状に賦形してなる支持層の表面に、両親媒性の重合体が、前記表層に共有結合で結合して層を形成してなる成形物が、低タンパク質吸着性となり、上記課題を解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0008】
すなわち、本発明は支持層表面に低タンパク質吸着層を有する成形物であって、該低タンパク質吸着層が両親媒性の重合体からなり、支持層に共有結合で結合して層を形成してなることを特徴とする低タンパク質吸着性成形物を提供する。また、本発明は前記低タンパク質吸着性成形物が基材の表面に形成されていることを特徴とする細胞培養器を提供する。
【0009】
また、本発明は前記支持層が熱又は活性エネルギー線重合性化合物(α)を含有する熱又は活性エネルギー線硬化性組成物(a)の硬化物(A)からなり、該支持層の表面に、前記化合物(α)との共重合性を有する化合物(β)を含有する熱又は活性エネルギー線硬化性組成物(b)の硬化物(B)または前記両親媒性の化合物(β)の重合体(B’)が、前記硬化物(A)に共有結合で結合して両親媒性の重合体からなる層を形成してなる低タンパク質吸着性成形物を製造する方法であって、疎水性の熱又は活性エネルギー線重合性化合物(α)を含有する熱又は活性エネルギー線硬化性組成物(a)を賦形し、該賦形物が未硬化、又はこれを加熱若しくは活性エネルギー線照射により半硬化させた状態で、その表面に、前記化合物(α)との共重合性を有する両親媒性の化合物(β)を含有する熱又は活性エネルギー線硬化性組成物(b)と接触させ、加熱若しくは活性エネルギー線照射により、該賦形物中に含有される未反応の前記化合物(α)及び前記化合物(β)をそれぞれ重合させると共に境界面において両化合物を共重合させることを特徴とする低タンパク質吸着性成形物の製造方法を提供する。
【0010】
また、本発明は前記支持層が疎水性の熱又は活性エネルギー線重合性化合物(α)を含有する熱又は活性エネルギー線硬化性組成物(a)の硬化物(A)からなり、該支持層の表面に、前記化合物(α)との共重合性を有する化合物(β)を含有する熱又は活性エネルギー線硬化性組成物(b)の硬化物(B)または前記化合物(β)の重合体(B’)が、前記硬化物(A)に共有結合で結合して両親媒性の重合体からなる層を形成してなる低タンパク質吸着性成形物を製造する方法であって、疎水性の熱又は活性エネルギー線重合性化合物(α)を含有する熱又は活性エネルギー線硬化性組成物(a)を賦形し、前記組成物(a)の賦形物が未硬化又はこれを加熱若しくは活性エネルギー線照射により半硬化させた状態で、その表面に、前記化合物(α)と共重合性を有する両親媒性の化合物(β)を含有する水溶液を接触させ、加熱若しくは活性エネルギー線照射により、該賦形物中に含有される未反応の前記化合物(α)及び前記化合物(β)をそれぞれ重合させると共に境界面において両化合物を共重合させることを特徴とする低タンパク質吸着性成形物の製造方法を提供する。
【0011】
【発明の実施の形態】
本発明の低タンパク質吸着性成形物は支持層表面にタンパク質の吸着性の低い層(以下、「低タンパク質吸着層」という。)を有する成形物であって、該低タンパク質吸着層が両親媒性の重合体からなる。
この低タンパク質吸着層を構成する両親媒性の重合体としては、一分子中に親水基と疎水基を有する重合体であれば、特に限定されないが、両親媒性の化合物(β)を含有する熱又は活性エネルギー線硬化性組成物(b)の硬化物(B)または前記化合物(β)の重合体(B’)であることが好ましい。
本発明において、硬化とは流動性の物体が固化することをいい、熱または活性エネルギー線硬化性組成物は、熱または活性エネルギー線照射前は流動性であり、照射後は固化する性質を有する組成物であることを意味する。また硬化物とは熱または活性エネルギー線照射により固化したものをいう。
【0012】
本発明に使用する両親媒性の化合物(β)が、特に非イオン性親水基、特にポリエーテル系の親水鎖を有する場合には、親水性と疎水性のバランスが、グリフィンのHLB(エイチ・エル・ビー)値にして10〜16の範囲にあるものが好ましく、11〜15の範囲にあるものが更に好ましい。この範囲内とすることにより、親水性と耐水性に優れた成形物を得ることができ、しかもそれを得るための化合物の組み合わせや混合比がさほど限定されることがなく、従って、所定の成形物の性能を安定して賦与することができるようになる。
【0013】
両親媒性の化合物(β)の親水基の例としては、例えば、アミノ基、四級アンモニウム基、フォスフォニウム基の如きカチオン基;スルホン基、燐酸基、カルボニル基の如きアニオン基;水酸基、ポリエチレングリコール鎖などのポリエーテル鎖、アミド基の如きノニオン基;アミノ酸残基の如き両性イオン基が挙げられ、このうちポリエーテル鎖が好ましく、特に繰り返し数6〜20のポリエチレングリコール鎖を有する化合物が好ましい。
【0014】
両親媒性の化合物(β)の疎水基の例としては、例えば、アルキル基、アルキレン基、アルキルフェニル基、長鎖アルコキシ基、フッ素置換アルキル基、モノアルキルシロキシ基、ジアルキルシロキシ基、トリアルキルシロキシ基などが挙げられ、炭素数6〜20のアルキル基又はアルキレン基が好ましい。炭素数6〜20のアルキル基又はアルキレン基は、例えば、アルキルフェニル基、アルキルフェノキシ基、アルコキシ基、フェニルアルキル基などの形で含有されていてもよい。
【0015】
両親媒性の化合物(β)は、親水基として繰り返し数6〜20のポリエチレングリコール鎖を有し、且つ、疎水基として炭素数6〜20のアルキル基又はアルキレン基を有する化合物であることが好ましい。
【0016】
また、両親媒性の化合物(β)が前記支持層と共重合で結合する場合には、該両親媒性の化合物(β)の分子内に重合性の官能基を導入する必要がある。
該重合性の官能基としては、例えば、ビニル基、ビニリデン基、アクリロイル基、メタクリロイル基(以下、アクリロイル基とメタクリロイル基を併せて「(メタ)アクリロイル基」と称する。「(メタ)アクリル」、「(メタ)アクリレート」等についても同様である。)等が挙げられ、これらの官能基を分子内に有するモノマー及び/又はオリゴマーを両親媒性の化合物(β)として用いることが好ましい。上述した官能基のうち、活性エネルギー線照射による重合速度が速いことから、(メタ)アクリロイル基が好ましい。
これらの中でも、更に好ましく使用できる両親媒性の化合物(β)として、一般式(1)で表わされる化合物を挙げることができる。
CH2=CR1COO(R2O)n−φ−R3 (1)
(式中、R1は水素、ハロゲン原子又は低級アルキル基を表わし、R2は炭素数1〜3のアルキレン基を表わし、nは6〜20の整数、φはフェニレン基、R3は炭素数6〜20のアルキル基を表わす。)
【0017】
ここで、R3はより具体的には、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ドデシル基、又はペンタデシル基であり、好ましくはノニル基又はドデシル基である。一般式(1)において、nの数が大きいほど、R3の炭素数も大きいことが好ましい。
【0018】
これらの両親媒性の化合物(β)の中でも、ノニルフェノキシポリエチレングリコール(n=7〜20)(メタ)アクリレート、ノニルポリエチレングリコール(n=7〜20)(メタ)アクリレート、ノニルフェノキシポリプロピレングリコール(n=7〜20)(メタ)アクリレートが特に好ましい。
【0019】
両親媒性の化合物(β)を含む熱又は活性エネルギー線硬化性組成物(b)には、製造方法、要求される表面特性などに応じて、例えば2官能以上の重合性化合物や、親水基(例えば、アミノ基、N−置換アミノ基、アミド基、N置換アミド基、水酸基、カルボキシル基、スルホン基、リン酸基、アンモニウム塩基、ポリエチレングリコール鎖など)を有する(メタ)アクリレート等の、上記以外の重合性化合物を含んでいてもよい。また、熱又は活性エネルギー線硬化性組成物(b)は、重合開始剤、重合遅延剤、重合禁止剤、水、溶剤、消泡剤、紫外線吸収剤、浸透剤、pH調整剤、塩、顔料、染料等の着色剤、界面活性剤、耐水化剤、ポリマー、酸、アルカリ、防黴剤、抗菌剤、等のその他の成分を含有していても良い。
また、製造方法によっては、前記熱又は活性エネルギー線硬化性組成物(b)は、両親媒性の化合物(β)のみから構成されていてもよい。
【0020】
両親媒性の化合物(β)を含む熱又は活性エネルギー線硬化性組成物(b)の硬化物(B)は、用途に応じて架橋重合体であってもよいが、親水性や低タンパク質吸着性を十分発揮させる面から、通常非架橋重合体であることが好ましい。
また、この硬化物(B)は、表面親水性、タンパク質吸着性などの要求に応じて、水及びひまし油との接触角が任意に調整できるが、高親水性、低タンパク質吸着性の観点から、水との接触角が0°〜45°で、且つひまし油との接触角が0°〜30°であることが好ましく、水との接触角が0°〜25°で、且つひまし油との接触角が0°〜20°であることが更に好ましい。
【0021】
前記支持層は前記両親媒性の重合体と共有結合可能なものであればどのようなものも用いることができ、(メタ)アクリル酸エステルのような(メタ)アクリル系の重合体、ポリアミドのようなアミド系ポリマー、ポリイミドのようなイミド系ポリマー、スチレン系ポリマー、スルホン系ポリマー等の前記両親媒性の重合体と共有結合できる基を有する高分子化合物や、前記両親媒性の重合体と共有結合できる基を有するシランカップリング剤で表面処理されたガラス、金属や、紙、木材、布などのセルロース系ポリマーの成形品などが挙げられる。しかしながら、高い生産性で製造できることから、この支持体表層が、前記両親媒性の重合体と共有結合できる基を有する熱又は活性エネルギー線硬化性組成物(a)の硬化物(A)からなるものであることが好ましい。
【0022】
本発明で使用する、前記両親媒性の重合体と共有結合できる基を有する熱又は活性エネルギー線重合性化合物(α)は、有機、無機を問わず、熱または活性エネルギー線(例えば、紫外線、可視光線、赤外線等)の照射により重合し架橋重合体となるものであればよく、ラジカル重合性、アニオン重合性、カチオン重合性等、任意のものであってよい。そのような熱又は活性エネルギー線重合性化合物(α)としては、例えば、(メタ)アクリル酸エステルのような(メタ)アクリル系の重合体が挙げられる。
【0023】
本発明に用いる硬化物(A)に耐水性が要求される場合には、前記化合物(α)として、疎水性の熱又は活性エネルギー線重合性化合物(α’)を用い、該硬化物(B)として該化合物(α’)を含有する熱又は活性エネルギー線硬化性組成物(a)の硬化物を用いることが好ましい。
【0024】
そのような疎水性の熱又は活性エネルギー線重合性化合物(α’)としては、例えば、一分子内にビニル基、ビニリデン基、(メタ)アクリロイル基等を有するモノマー及び/又はオリゴマーが挙げられるが、中でも前記化合物(β)の説明で述べたと同様の理由で、(メタ)アクリロイル基を有する重合性化合物が好ましい。具体例を挙げると、例えばエチル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、t−ブチル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、フェニル(メタ)アクリレート、フェニルセロソルブ(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニルオキシエチル(メタ)アクリレート、トリフルオロエチルアクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリロイルクロライド、(メタ)アクリロイルオキシエチルイソシアネート、(メタ)アクリルアルデヒド等の1官能モノマー;
【0025】
1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、3−アクリロイルオキシグリセリンモノメタクリレート、2,2′−ビス(4−(メタ)アクリロイルオキシポリエチレンオキシフェニル)プロパン、2,2′−ビス(4−(メタ)アクリロイルオキシポリプロピレンオキシフェニル)プロパン、ジシクロペンタニルジ(メタ)アクリレート、ビス[(メタ)アクリロイルオキシエチル]ヒドロキシエチルイソシアネート、フェニルグリシジルエーテルアクリレート等の2官能モノマー;
トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールエタントリ(メタ)アクリレート、トリス[(メタ)アクリロイルオキシエチル]イソシアネート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート等の3官能モノマー;ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、グリセリンジ(メタ)アクリレートヘキサメチレンジイソシアネート等の4官能モノマー;ジペンタエリスリトールモノヒドロキシペンタ(メタ)アクリレート等の5官能モノマー;ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート等の6官能モノマーなどが挙げられる。
【0026】
また、疎水性の熱又は活性エネルギー線重合性化合物(α)としては、分子量500〜50,000のオリゴマーも好適に使用できる。例えば、ビスフェノールA−ジエポキシ−(メタ)アクリル酸付加物等のエポキシ樹脂の(メタ)アクリル酸エステル、ポリエーテル樹脂の(メタ)アクリル酸エステル、ポリブタジエン樹脂の(メタ)アクリル酸エステル、分子末端に(メタ)アクリル基を有するポリウレタン樹脂などが挙げられる。
【0027】
これらの疎水性の熱又は活性エネルギー線重合性化合物(α)は、単独で用いることも、2種以上の化合物を混合して用いることもできる。
疎水性の熱又は活性エネルギー線重合性化合物(α)としては、上記(メタ)アクリレートのほかに、マレイミド基を有する重合性化合物も好適に用いることができる。また、例えば接着性の向上等の目的で、硬化物が膨潤により支持体から剥離しない程度に、両親媒性の(メタ)アクリレート、親水基(例えば、アミノ基、N置換アミノ基、アミド基、N置換アミド基、カルバモイル基、水酸基、カルボキシル基、スルホン基、リン酸基、アンモニウム塩基、ポリエチレングリコール鎖など)を有する(メタ)アクリレートを併用することもできる。
【0028】
また、熱又は活性エネルギー線硬化性組成物(a)には、例えば、重合開始剤、重合遅延剤、重合禁止剤、溶剤、増粘剤、消泡剤、紫外線吸収剤、浸透剤、pH調整剤、塩、顔料、染料等の着色剤、界面活性剤、耐水化剤、ポリマー、無機物(シリカ、アルミナ等)、酸、アルカリ、防黴剤、抗菌剤、等のその他の成分が溶解又は分散状態で含有されていても良い。
上述の重合開始剤としては、例えば、p−t−ブチルトリクロロアセトフェノン、2,2′−ジエトキシアセトフェノン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オンの如きアセトフェノン類;ベンゾフェノン、4,4′−ビスジメチルアミノベンゾフェノン、2−クロロチオキサントン、2−メチルチオキサントン、2−エチルチオキサントン、2−イソプロピルチオキサントンの如きケトン類;ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテルの如きベンゾインエーテル類;ベンジルジメチルケタール、ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトンの如きベンジルケタール類、等の光重合開始剤が挙げられる。その他に、熱重合開始剤も好適に使用できる。熱重合開始剤としては例えば、ジブチルパーオキサイドメチルエチルケトンパーオキサイド、t−ヘキシルヒドロパーオキサイドなどが挙げられる。
また、該開始剤の代わりに、マレイミド化合物の如き重合性樹脂組成物に組み込まれ、かつ、該開始剤としての機能を有する化合物を用いても良い。
【0029】
硬化物(A)は、前記組成物(a)の賦形物を硬化させたものであるが、耐溶剤性や耐熱性、強度等の観点から、架橋重合体であることが好ましい。即ち、組成物(a)が2官能以上の重合性化合物を含むことが好ましい。
また、本発明の硬化物(A)は、耐水性、耐膨潤性または、基材上に形成された場合の基材からの耐剥離性等の要求に応じて、水との接触角が任意に調整できるが、水、特に、熱水に対する耐水性が要求される場合は、硬化物(A)の水との接触角が60°以上であることが好ましく、65°〜100°であることが特に好ましい。
本発明の低タンパク質吸着性成形物は、使用条件に応じて、重合性化合物(α)の選択により硬化物(A)と基材との間の接着性を、調整することができ、例えば、熱水に長時間接する用途に用いる場合には、硬化物(A)と基材が、35℃〜100℃の熱水中に1分〜500時間浸漬した時に剥離しない。
【0030】
本発明の低タンパク質吸着性成形物は、用途に応じて、任意の形であってよく、また、任意の形状の基材上に積層して固着されてなるものでもよい。例えば、成形物の形状としては、板状、糸状、中空糸状、カプセル状、(微)粒子状、表面に複数の溝を有する板状(例えばマイクロ流体デバイス)、格子状等が挙げられる。一方、成形物が基材上に固着された場合、例えば、シャーレの表面、スライドガラスの表面、96穴のマイクロプレートのウエルの内表面、幅及び深さが数十〜数百μmの溝の底面(例えばマイクロ流体デバイスの流路の表面)、粒子の表面、多孔質体の細孔表面に固着されてなる成形物が挙げられる。
【0031】
本発明に使用する基材は、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリスチレン、ポリアミド、ポリイミド、ABS樹脂、ポリカーボネート、アクリル樹脂、塩化ビニル、酢酸ビニル、ポリプロビレン、ポリスルホン等の樹脂、ガラス(特に無蛍光ガラス)、木材、不織布、多孔質膜、金属等が挙げられる。基材と支持層との接着性が悪い場合には、基材を表面処理したものを用いることが好ましい。表面処理法としては、プライマー樹脂の塗工、酸またはアルカリ処理、火炎処理、コロナ処理、プラズマ処理、紫外線処理その他任意の処理法を利用できる。
【0032】
本発明の低タンパク質吸着性成形物において、支持層の表面に設けられた硬化物(B)または重合体(B’)は、乾燥状態で厚み100μm以下、より好ましくは30μm以下、さらに好ましくは10μm以下とすることが好ましい。硬化物(B)または重合体(B’)の層の厚みの下限は、分子寸法で規定されるため、特に限定する必要はない。厚みがこの値以上であると、膨潤時の寸法変化により表面から剥離し易くなる。硬化物(B)または重合体(B’)層の厚みは、上記範囲で用途目的に応じて設計できる。該硬化物(B)または重合体(B’)層は、該支持層の全表面を覆っている必要はなく、例えば、分子寸法程度の大きさの間隙があってもよいし、また、フォトリソグラフなどの手法により、該支持層表面の必要部位のみを覆う構造であってもよい。
【0033】
本発明の細胞培養器は、前記低タンパク質吸着性成形物が上記基材の表面に形成されたものである。本発明の細胞培養器は、栄養分(例えばタンパク質、アミノ酸など)、pH調整剤、色素と細胞からなる培養液を該細胞培養器に入れ、公知慣用の方法で細胞培養ができる。本発明の細胞培養器で細胞培養を行うと、剥離試薬(例えばトリプシン)を使用することなく、培養された細胞を容易に培養器表面から剥離、回収することができる。
すなわち、本発明の細胞培養器は、前記低タンパク質吸着性成形物が基材の表面に形成されたものである。
【0034】
次に、本発明の製造方法について説明する。
本発明の製造方法で使用される疎水性の熱または活性エネルギー線重合性化合物(α)、化合物(α)を含む熱または活性エネルギー線硬化性組成物(a)、両親媒性の化合物(β)、及び化合物(β)を含む熱または活性エネルギー線硬化性組成物(b)は、上記低タンパク質吸着性成形物の説明に述べたのと同じものであるので、説明を省略する。
【0035】
本発明に用いる熱または活性エネルギー線硬化性組成物(a)の賦形法は公知慣用の方法であればいずれの方法でもよく、例えば注型、塗工、印刷又は浸漬等によって賦形することができるが、コーターや噴霧等による塗工や印刷が好ましく挙げられる。また、基材の表面形状が複雑な場合または薄く塗工する場合は、組成物(a)を溶剤で薄め、基材表面へ塗工してから溶剤を揮発させる方法や、浸漬後に溶剤を揮発させる方法等を利用することもできる。その他の賦形法として、組成物(a)をノズルより押し出して、糸状や中空糸状またはビーズ状に賦形することもできる。また、賦形に際して、組成物(a)を基材上にて賦形し、そのまま上記低タンパク質吸着性成形物を形成して製品としてもよいし、低タンパク質吸着性成形物を形成した後に該成形物を基材から剥がして製品としてもよい。
【0036】
本発明の製造方法においては、組成物(a)の未硬化の賦形物を未硬化又は半硬化させた状態でその表面に組成物(b)を接触させるが、組成物(a)と組成物(b)との接触方法は任意であり、例えば、賦形物の組成物(b)中への浸漬、賦形物表面への組成物(b)の流延、塗布又はスプレー、賦形物と組成物(b)の泡との接触、組成物(a)と組成物(b)の共押し出しなどの方法が挙げられ、中でも賦形物の組成物(b)中への浸漬や賦形物表面への組成物(b)の流延又は塗布が好ましい。組成物(a)の賦形物と接触させる組成物(b)は、気相、即ち、蒸気の状態で接触させてもよい。
賦形物を組成物(b)中へ浸漬する方法の場合は、賦形物の硬化物(A)の表面に形成される組成物(b)の硬化物(B)の分子量や厚み、強度及び表面の平滑性の制御、及び硬化物(B)のゲル化防止、並びに操作性などの観点から、組成物(b)を含有する水溶液を使用することが好ましい。水溶液中の化合物(β)の濃度は、要求される表面特性(例えば親水性、タンパク質吸着性等)、界面での反応性及び後洗浄等の面から、0.5〜50質量%の範囲が好ましく、5〜20質量%の範囲が特に好ましい。
【0037】
一般的に、水溶液中の化合物(β)の濃度が高くなるほど、組成物(a)の賦形物を硬化させた硬化物(A)の表面に形成される化合物(β)の重合体(B’)の層が厚くなるが、例えば、乾燥状態で厚さ100μmを超えるほど厚くなりすぎると、湿潤時に表面強度が低下し、重合体(B’)層の変形や剥離が生じ易くなる。水溶液中の化合物(β)の濃度を上記の範囲にすることで、充分な親水性と低タンパク質吸着性を示し、且つ重合体(B’)層が過度に厚くない低タンパク質吸着性成型物を得ることができる。
また、必要に応じて上記水溶液中には、重合禁止剤、重合遅延剤、溶剤、ポリマー、増粘剤、消泡剤、紫外線吸収剤、浸透剤、界面活性剤、耐水化剤、無機化合物、及び親水基(例えば、アミノ基、N置換アミノ基、アミド基、N置換アミド基、カルバモイル基、水酸基、カルボキシル基、スルホン基、リン酸基、アンモニウム塩基、ポリエチレングリコール鎖など)を有する(メタ)アクリレート等その他の成分が含有されていてもよい。
【0038】
組成物(a)を賦形して得られた未硬化または半硬化の賦形物を、組成物(b)またはその水溶液と接触させた状態で光照射すると、賦形物の内部又は表面で発生したラジカル、アニオン、カチオンなどの活性種によって、化合物(α)が重合するとともに、発生したこれらの活性種あるいはこれら化合物(α)の重合連鎖におけるこれらの活性種によって、賦形物の表面で化合物(β)の重合も誘発され、1つの活性種から開始した重合反応は実質的に瞬時に終了する。即ち、重合反応は賦形物内部において組成物(a)中の疎水性の化合物(α)同士、賦形物と両親媒性の化合物(β)との接触面において疎水性の化合物(α)と両親媒性の化合物(β)の間、及び該接触面近傍の両親媒性の化合物(β)相中において化合物(β)同士で起こり、疎水性の化合物(α)と両親媒性の化合物(β)とのブロック共重合体からなる層が形成される。従って、賦形物が硬化することにより形成された硬化物(A)の内部には、化合物(β)あるいはその硬化物(B)または重合体(B’)は存在せず、化合物(β)あるいはその硬化物(B)または重合体(B’)は、硬化物(A)の表面のみに結合される。硬化物(A)の表面に結合される硬化物(B)または重合体(B’)は、組成物(b)または水溶液中の化合物(β)の濃度、反応温度、組成物(a)中の光重合開始剤濃度、光強度等によって調節することができる。硬化物(A)の表面に結合される化合物(β)は、重合体とならず、化合物(β)自体であることもあり得る。
【0039】
組成物(a)の粘度が低い場合は、組成物(a)からなる賦形物を、組成物(b)またはその水溶液と接触させた時に、賦形物の形状を維持しにくい場合がある。このような場合は、賦形物を予め活性エネルギー線で予備硬化させて半硬化状態としてから、組成物(b)またはその水溶液と接触させて、活性エネルギー照射を行なう方法が、最終成形物の表面平滑性が向上するので、好ましい。予備硬化が過剰に進んだ場合は、硬化物(A)の表面に形成される層の硬化物(B)または重合体(B’)の量が減じるため、組成物(a)中の化合物(α)の重合性官能基が残留している程度に止める必要があるが、その最適条件は簡単な実験により求めることができる。予備硬化は窒素雰囲気中で短時間で行なうこともできるが、組成物(a)中の疎水性の重合性化合物(α)が酸素存在下では完全重合しない性質を利用して、重合阻害を受けやすい空気中で短時間硬化させることにより、半硬化状態とすることが好ましい。
【0040】
なお、本発明の製造方法では、化合物(β)は、使用された量の一部分が硬化物(A)の表面に結合し、残余の両親媒性の化合物(β)は、未硬化のまま残留することになる。
【0041】
本発明の製造方法で活性エネルギー線を用いる場合は、用いる活性エネルギー線としては、紫外線、可視光、赤外線を挙げられる。活性エネルギー線としては、上記の他に、電子線、エックス線、γ線等のエネルギー線の使用も可能であるが、硬化物(A)に結合しない組成物(b)の硬化物(B)または両親媒性の化合物(β)の重合体(B’)の量をできるだけ少なくするためには前述の紫外線、可視光、赤外線が好ましい。これらの活性エネルギー線の中でも、適度な重合硬化速度が得られ、かつ、簡便に使用できる点で、紫外線、可視光が好ましく、紫外線が特に好ましい。紫外線としては、その波長が300nm以上であるのが好ましく、350nm以上であることが特に好ましい。
照射する活性エネルギー線の強度は、1〜5000mW/cm2 の範囲が好ましく、10〜2000mW/cm2 の範囲が特に好ましい。また、重合硬化速度を速め、重合を完全に行う目的で、光照射を不活性ガス雰囲気下で行なうことが好ましく、両親媒性の化合物(β)を水に溶解したものを用いる場合は、水溶液中に溶解している酸素を除去しておくことが好ましい。
【0042】
光重合時の温度は特に制約されないが、70℃程度までの範囲では、温度は高い方が成形物の親水性が増加するので好ましい。作業条件をも考慮すると、室温〜50℃程度の範囲が好ましい。勿論、活性エネルギー線照射による硬化は、回分式で行っても良く、連続式で行っても良い。活性エネルギー線照射による硬化を回分式で行なう場合、賦形した後、そのまま活性エネルギー線照射して予備硬化させ、次いで得られた予備硬化物を組成物(b)と接触させて再び活性エネルギー線照射し、本硬化させてもよい。
【0043】
本発明において、硬化物(A)の表面に組成物(b)の硬化物(B)または両親媒性の化合物(β)の重合体(B’)が結合されていることは、表面の水との接触角が低下することで判定できる。本発明の製造方法により製造される成形物は、硬化物(A)の表面に硬化物(B)または重合体(B’)からなる層が形成されていない場合と比較して、水との接触角が5°以上低下することが好ましい。成形物が疎水性物質の吸着防止を要求される用途に使用される場合などには、水との接触角の低下の度合いは大きいほど好ましく、10°以上低下することが好ましく、20°以上低下することが更に好ましい。
【0044】
本発明の細胞培養器は、前記組成物(a)を前記基材へ塗工し、上述した本発明の低タンパク質吸着性成形物の製造方法に準じて製造される。本発明の細胞培養器は、細胞あるいは細胞の持つタンパク質と、培養器の低タンパク質吸着層表面との吸着性(接着性)を、培養条件、細胞の回収方法及び用途に応じて、両親媒性の化合物(β)の種類や濃度、賦形物の表面形状、並びに疎水性である組成物(a)の組成を調節することにより、幅広く調整することができる。特に、本発明の低タンパク質吸着性成形物の上で培養された細胞は、例えばトリプシン等の剥離試薬を使用することなく、細胞を容易に培養器表面から剥離、回収することができる。
【0045】
また、本発明の低タンパク質吸着性成形物を濾過膜として用いる場合、該濾過膜は前記組成物(a)を多孔質膜の表面(孔の壁面を含む)に塗工し、その後、上述した本発明の低タンパク質吸着性成形物の製造方法に準じて製造される。該濾過膜はタンパク質、油脂、フミン質などの吸着による膜の濾過性能の低下を抑制できる。
【0046】
また、本発明の低タンパク質吸着性成形物を電極として用いる場合、該電極は前記組成物(a)を金属の表面に塗工し、その後、上述した本発明の低タンパク質吸着性成形物の製造方法に準じて製造される。該電極は、タンパク質等の吸着による感度の低下を抑制することができる。更に、同様な方法で表面処理されたカテーテルは、タンパク質やその他の血中成分のカテーテル表面への吸着を抑制でき、生体適合性を向上させることができる。
【0047】
また、本発明の低タンパク質吸着性成形物を抗原抗体反応又はDNA分析用基板として用いる際は、対象となる抗原、抗体以外の抗体やタンパク質等の非特異的吸着を抑制でき、分析感度を向上させることができる。
【0048】
【実施例】
以下、実施例及び比較例を用いて本発明をさらに詳細に説明するが、本発明は、これらの実施例の範囲に限定されるものではない。なお、以下の実施例において、「部」及び「%」は、特に断りがない限り、夫々「質量部」及び「質量%」を表わす。
【0049】
[測定項目]
実施例及び比較例における以下の測定は、次の方法に従って行った。
(1)水接触角の測定
表面親水性成形物の水接触角は、協和科学株式会社製液滴法接触角計「CA−D型」を用いて測定した。
(2)(タンパク質吸着量の測定)
まず、1cm×1cmの後述の実施例、比較例で得た成形物をそれぞれ2枚用意した。次いで、25mlの牛血清アルブミン水溶液(濃度10mg/ml、pH7.0)を検出試薬である同仁化学研究所製4−クロロ−7−ニトロベンゾフラザン、「NBD−Cl」のエタノール溶液(NBD−Cl濃度10mg/ml)5mlと混合し、37℃、2時間反応させて、吸着用タンパク質溶液とした。
吸着試験として、1枚の成形物を上記吸着用タンパク質溶液(30ml)に室温(22℃)で15時間浸漬した後、該成形物を約200mlの蒸留水でリンスして、室温で乾燥させた。乾燥した該成形物を富士写真フィルム社製蛍光測定装置「FLA―3000G」を用いて、蛍光測定を行った。
また、コントロール試験として、2枚目の成形物の表面に上記吸着用タンパク質溶液を12μlのせ、室温で乾燥させた後、蛍光測定装置FLA―3000Gを用いて、蛍光測定を行った。
成形物表面のアルブミン吸着量は、下記の式より求めた。
アルブミン吸着量(mg/mm2)=[(8.3×10−3mg/FI2)×FI1]/100mm2
但し、FI1は1枚目の成形物の(吸着したアルブミンの)蛍光強度、FI2は2枚目の成形物の(原液のアルブミンの)蛍光強度である。
【0050】
[実施例1]
(疎水性の硬化性組成物(a1)の調製)
疎水性の重合性化合物(α)として、平均分子量約2000の大日本インキ化学工業社製3官能ウレタンアクリレートオリゴマー「ユニディックV−4263」80部、日本化薬社製ジシクロペンタニルジアクリレート「R−684」20部、チバガイギー社製紫外線重合開始剤「イルガキュアー184」(1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン)3部、を均一に混合して組成物(a1)を調製した。
【0051】
(両親媒性の化合物(β)を含む組成物(b1)の調製)
化合物(β)として第一工業製薬社製ノニルフェノキシポリエチレングリコール(n=17)アクリレート「N−177E」20部、蒸留水80部を均一に混合して、化合物(β)を含む組成物(b1)を調製した。
【0052】
(低タンパク質吸着性成形物の作製)
組成物(a1)をガラス板に厚さ250μmのコーターで塗工し、組成物(b1)中に投入して、直ちに100mW/cm2 の紫外線を40秒間照射した後、該ガラス板を取り出した。このようにして得た硬化物を流水で30分洗浄した後、自然乾燥させて、該硬化物をガラス板から剥がして、シート状の低タンパク質吸着性成形物(C1)を得た。
【0053】
(成形物の水接触角測定)
得られた成形物(C1)の表面について水接触角を測定した結果、接触角は15°であった。
(剥離試験)
直径約100mmのポリスチレン製シャーレを用いて、上記同様の方法で成形物(C1s)を作製した。成形物(C1s)を40℃の熱水中に24時間浸漬した。その結果、成形物(C1s)のシャーレの内表面からの剥離は認められなかった。
【0054】
(成形物のタンパク質吸着試験)
成形物(C1)を1cm×1cmの大きさに切り、タンパク質の吸着試験を行った。その結果、成形物(C1)の表面のタンパク質吸着量は1.9×10―4mg/mm2 であった。
【0055】
[実施例2]
(両親媒性の化合物(β)を含む組成物(b2)の調製)
化合物(β)としてノニルフェノキシポリエチレングリコール(n=17)アクリレート「N−177E」10部、蒸留水90部を均一に混合して、両親媒性の化合物(β)を含む組成物(b2)を調製した。
【0056】
(低タンパク質吸着性成形物の作製)
組成物(b1)に代えて、組成物(b2)を用いたこと以外は実施例1と同様にして低タンパク質吸着性成形物(C2)を得た。
【0057】
(成形物の水接触角測定)
成形物(C2)の表面について水接触角を測定した結果、接触角は21°であった。
(剥離試験)
直径約100mmのポリスチレン製シャーレを用いて、上記同様の方法で成形物(C2s)を作製した。成形物(C2s)を40℃の熱水中に24時間浸漬した。その結果、成形物(C2s)のシャーレの内表面からの剥離は認められなかった。
(成形物のタンパク質吸着試験)
成形物(C2)を1cm×1cmの大きさに切り、タンパク質の吸着試験を行った。その結果、成形物(C2)の表面のタンパク質吸着量は2.4×10―4mg/mm2 であった。
【0058】
[実施例3]
(両親媒性の化合物(β)を含む組成物(b3)の調製)
化合物(β)としてノニルフェノキシポリエチレングリコール(n=17)アクリレート「N−177E」5部、蒸留水95部を均一に混合して、化合物(β)を含む組成物(b3)を調製した。
(低タンパク質吸着性成形物の作製)
組成物(b1)に代えて、組成物(b3)を用いたこと以外は実施例1と同様にして低タンパク質吸着性成形物(C3)を得た。
【0059】
(成形物の水接触角測定)
成形物(C3)の表面について水接触角を測定した結果、接触角は29°であった。
(剥離試験)
直径約100mmのポリスチレン製シャーレを用いて、上記同様の方法で成形物(C3s)を作製した。成形物(C3s)を40℃の熱水中に24時間浸漬した。その結果、成形物(C3s)のシャーレの内表面からの剥離は認められなかった。
(成形物のタンパク質吸着試験)
成形物(C3)を1cm×1cmの大きさに切り、タンパク質の吸着試験を行った。その結果、成形物(C3)の表面のタンパク質吸着量は3.2×10―4mg/mm2 であった。
【0060】
[実施例4]
(疎水性の硬化性組成物(a2)の調製)
疎水性の重合性化合物(α)として、平均分子量約2000の大日本インキ化学工業社製3官能ウレタンアクリレートオリゴマー「ユニディックV−4263」60部、第一工業製薬社製ヘキサンジオールジアクリレート「ニューフロンティアHDDA」40部、チバガイギー社製紫外線重合開始剤「イルガキュアー184」3部、アセトン10部を均一に混合して組成物(a2)を調製した。
【0061】
(両親媒性の化合物(β)を含む組成物(b4)の調製)
化合物(β)として共栄社化学社製ノニルフェノキシポリエチレングリコール(n=8)アクリレート「ライトアクリレートNP−8EA」15部、蒸留水70部を均一に混合して、両親媒性の化合物(β)を含む組成物(b4)を調製した。
【0062】
(低タンパク質吸着性成形物の作製)
直径100mm、高さ20mmのポリスチレン製の東京硝子機械社製シャーレ「ペトリディッシュ」に組成物(a2)を約0.5ml入れ、スピンコーターを用いて塗工し、空気中100mW/cm2 の紫外線を2秒間照射した後、該シャーレに、組成物(b4)を約30ml入れ、直ちに100mW/cm2 の紫外線を60秒間照射した。照射後、該シャーレを流水で30分洗浄した後、自然乾燥させて、シャーレの内表面に成形物を形成した積層体状の低タンパク質吸着性成形物(C4)を得た。
【0063】
(成形物の水接触角測定)
成形物(C4)の表面について水接触角を測定した結果、接触角は25°であった。
(剥離試験)
成形物(C4)を40℃の熱水中に24時間浸漬した。その結果、成形物(C4)のシャーレの内表面からの剥離は認められなかった。
(成形物のタンパク質吸着試験)
まず、ポリスチレン製のシャーレに代えて、ガラス板を用いて、同様な方法で成形物(C4’)を作製した。
次いで、成形物(C4’)をガラス板から剥がし、1cm×1cmの大きさに切り、タンパク質の吸着試験を行った。その結果、タンパク質の吸着量は2.6×10―4mg/mm2 であった。
【0064】
[実施例5]
(疎水性の硬化性組成物(a5)の調製)
疎水性の重合性化合物(α)として、トリテトラエチレングリコールビスマレイミド(大日本インキ化学工業株式会社製の「ルミキュアMIA200」)80部、1,6−ヘキサンジオールエトキシレートジアクリレート(コグニスジャパン株式会社製の「フォトマー4361」)40部を均一に混合して組成物(a5)を調製した。
(低タンパク質吸着性成形物の作製)
組成物(a1)に代えて、組成物(a5)を用いたこと以外は実施例1と同様にして低タンパク質吸着性成形物(C5)を得た。
【0065】
(成形物の水接触角測定)
成形物(C5)の表面について水接触角を測定した結果、接触角は21°であった。
(剥離試験)
直径約100mmのポリスチレン製シャーレを用いて、上記同様の方法で成形物(C5s)を作製した。成形物(C5s)を40℃の熱水中に24時間浸漬した。その結果、成形物(C5s)のシャーレの内表面からの剥離は認められなかった。
(成形物のタンパク質吸着試験)
成形物(C5)を1cm×1cmの大きさに切り、タンパク質の吸着試験を行った。その結果、成形物(C5)の表面のタンパク質吸着量は2.5×10−4mg/mm2 であった。
【0066】
[比較例1]
(親水性の重合性化合物の水溶液の調製)
親水性の重合性化合物である新中村化学工業社製メトキシノナエチレングリコールアクリレート「NK−エステルAM−90G」10部と、蒸留水90部とを均一に混合して、親水性の重合性化合物の水溶液を調製した。
(表面親水性成形物の作製)
両親媒性の化合物(β)を含む組成物(b1)に代えて、この親水性の重合性化合物の水溶液を用いたこと以外は実施例1と同様にして表面親水性成形物(C1’)を得た。
(成形物の水接触角測定)
表面親水性成形物(C1’)の表面について水接触角を測定した結果、接触角は50°であった。
(成形物のタンパク質吸着試験)
成形物(C1’)をガラス板から剥がし、1cm×1cmの大きさに切り、タンパク質の吸着試験を行った。その結果、タンパク質の吸着量は1.1×10―3mg/mm2 であった。
【0067】
[比較例2]
組成物(a2)をガラス板に厚さ250μmのコーターで塗工し、窒素雰囲気中で100mW/cm2 の紫外線を40秒間照射して、塗膜状の成形物(C2’)を得た。
(成形物の水接触角測定)
成形物(C2’)の表面について水接触角を測定した結果、接触角は68°であった。
(成形物のタンパク質吸着試験)
成形物(C2’)をガラス板から剥がし、1cm×1cmの大きさに切り、タンパク質の吸着試験を行った。その結果、タンパク質の吸着量は3.5×10― 3mg/mm2であった。
【0068】
【発明の効果】
本発明は、極めて高い親水性の表面を有し、タンパク質などの物質の吸着性が低く、更に、タンパク質や細胞などの物質の表面に対する吸着性または接着性を幅広く制御でき、且つ高い親水性を付与することに伴う耐水性低下を呈しない成形物及びその製造方法を提供できる。また、その表面から細胞等のタンパク質を容易に剥離できる細胞培養器を提供できる。
【発明の属する技術分野】
本発明は、低タンパク質吸着性成形物、その製造方法、及び細胞培養器に関する。
【0002】
【従来の技術】
分離膜、電子工業、食品工業、廃水処理、印刷材料等の分野においては、タンパク質、コロイド、バクテリヤ、フミン質、油脂、大気中の汚染物質等の吸着が極めて少ない成形物が求められている。
また、例えば人工臓器等の医療用具や培養、検査等の用具等の医療用途、医薬品工業、及び生化学等の分野においては、抗原抗体、酵素、タンパク質、DNA等の吸着の少ない、生体適合性のある低タンパク質吸着性成形物が求められている。
さらに、培養、検査及び生化学分析においては、タンパク質や細胞などの吸着性(または接着性)を用途に応じて幅広く制御した成形物が求められている。
例えば、分離膜分野においては、これらの物質の吸着による透過流束の低下が問題となっている。また、生化学分野においては、有用タンパク質の容器への吸着による分析精度の低下、更に、人工臓器などの医療分野における異物として認識されてしまうケースの発生等が問題となっており、血栓、溶血、感作性、抗原抗体反応などの発生等も問題となっている。
【0003】
このような問題を解決するために、活性光線により重合可能なモノマー及び/又はオリゴマーと光重合開始剤とを必須成分として含む光重合性樹脂組成物の硬化物の表面に、親水性モノマー及び/又は親水性オリゴマーが、上記活性光線により重合可能なモノマー及び/又はオリゴマーにブロック共重合して硬化することにより層を形成した表面親水性成形物の製造方法が開示されている(例えば、特許文献1参照。)。
【0004】
【特許文献1】
特開平10−53658号公報
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
前記特許文献1に記載の方法で得られる表面親水性成形物は、タンパク質などの吸着物質との相互作用(吸着性や接着性)の制御が困難で、この表面親水成形物を例えば細胞培養器として用いた場合、細胞等のタンパク質が容易に細胞培養器表面から剥離しなかった。
【0006】
本発明が解決しようとする課題は、表面の親水性が高く、かつ、タンパク質などの吸着物質の吸着性が低く、タンパク質や細胞などの物質の表面に対する吸着性または接着性を幅広く制御でき、特に表面に吸着したタンパク質等の吸着物質の剥離が容易であり、かつ高い親水性を付与することに伴う耐水性低下を呈しない成形物を提供し、また、そのような成形物を高い生産性で製造する方法を提供することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記の課題を解決すべく鋭意研究を重ねた結果、所望の形状に賦形してなる支持層の表面に、両親媒性の重合体が、前記表層に共有結合で結合して層を形成してなる成形物が、低タンパク質吸着性となり、上記課題を解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0008】
すなわち、本発明は支持層表面に低タンパク質吸着層を有する成形物であって、該低タンパク質吸着層が両親媒性の重合体からなり、支持層に共有結合で結合して層を形成してなることを特徴とする低タンパク質吸着性成形物を提供する。また、本発明は前記低タンパク質吸着性成形物が基材の表面に形成されていることを特徴とする細胞培養器を提供する。
【0009】
また、本発明は前記支持層が熱又は活性エネルギー線重合性化合物(α)を含有する熱又は活性エネルギー線硬化性組成物(a)の硬化物(A)からなり、該支持層の表面に、前記化合物(α)との共重合性を有する化合物(β)を含有する熱又は活性エネルギー線硬化性組成物(b)の硬化物(B)または前記両親媒性の化合物(β)の重合体(B’)が、前記硬化物(A)に共有結合で結合して両親媒性の重合体からなる層を形成してなる低タンパク質吸着性成形物を製造する方法であって、疎水性の熱又は活性エネルギー線重合性化合物(α)を含有する熱又は活性エネルギー線硬化性組成物(a)を賦形し、該賦形物が未硬化、又はこれを加熱若しくは活性エネルギー線照射により半硬化させた状態で、その表面に、前記化合物(α)との共重合性を有する両親媒性の化合物(β)を含有する熱又は活性エネルギー線硬化性組成物(b)と接触させ、加熱若しくは活性エネルギー線照射により、該賦形物中に含有される未反応の前記化合物(α)及び前記化合物(β)をそれぞれ重合させると共に境界面において両化合物を共重合させることを特徴とする低タンパク質吸着性成形物の製造方法を提供する。
【0010】
また、本発明は前記支持層が疎水性の熱又は活性エネルギー線重合性化合物(α)を含有する熱又は活性エネルギー線硬化性組成物(a)の硬化物(A)からなり、該支持層の表面に、前記化合物(α)との共重合性を有する化合物(β)を含有する熱又は活性エネルギー線硬化性組成物(b)の硬化物(B)または前記化合物(β)の重合体(B’)が、前記硬化物(A)に共有結合で結合して両親媒性の重合体からなる層を形成してなる低タンパク質吸着性成形物を製造する方法であって、疎水性の熱又は活性エネルギー線重合性化合物(α)を含有する熱又は活性エネルギー線硬化性組成物(a)を賦形し、前記組成物(a)の賦形物が未硬化又はこれを加熱若しくは活性エネルギー線照射により半硬化させた状態で、その表面に、前記化合物(α)と共重合性を有する両親媒性の化合物(β)を含有する水溶液を接触させ、加熱若しくは活性エネルギー線照射により、該賦形物中に含有される未反応の前記化合物(α)及び前記化合物(β)をそれぞれ重合させると共に境界面において両化合物を共重合させることを特徴とする低タンパク質吸着性成形物の製造方法を提供する。
【0011】
【発明の実施の形態】
本発明の低タンパク質吸着性成形物は支持層表面にタンパク質の吸着性の低い層(以下、「低タンパク質吸着層」という。)を有する成形物であって、該低タンパク質吸着層が両親媒性の重合体からなる。
この低タンパク質吸着層を構成する両親媒性の重合体としては、一分子中に親水基と疎水基を有する重合体であれば、特に限定されないが、両親媒性の化合物(β)を含有する熱又は活性エネルギー線硬化性組成物(b)の硬化物(B)または前記化合物(β)の重合体(B’)であることが好ましい。
本発明において、硬化とは流動性の物体が固化することをいい、熱または活性エネルギー線硬化性組成物は、熱または活性エネルギー線照射前は流動性であり、照射後は固化する性質を有する組成物であることを意味する。また硬化物とは熱または活性エネルギー線照射により固化したものをいう。
【0012】
本発明に使用する両親媒性の化合物(β)が、特に非イオン性親水基、特にポリエーテル系の親水鎖を有する場合には、親水性と疎水性のバランスが、グリフィンのHLB(エイチ・エル・ビー)値にして10〜16の範囲にあるものが好ましく、11〜15の範囲にあるものが更に好ましい。この範囲内とすることにより、親水性と耐水性に優れた成形物を得ることができ、しかもそれを得るための化合物の組み合わせや混合比がさほど限定されることがなく、従って、所定の成形物の性能を安定して賦与することができるようになる。
【0013】
両親媒性の化合物(β)の親水基の例としては、例えば、アミノ基、四級アンモニウム基、フォスフォニウム基の如きカチオン基;スルホン基、燐酸基、カルボニル基の如きアニオン基;水酸基、ポリエチレングリコール鎖などのポリエーテル鎖、アミド基の如きノニオン基;アミノ酸残基の如き両性イオン基が挙げられ、このうちポリエーテル鎖が好ましく、特に繰り返し数6〜20のポリエチレングリコール鎖を有する化合物が好ましい。
【0014】
両親媒性の化合物(β)の疎水基の例としては、例えば、アルキル基、アルキレン基、アルキルフェニル基、長鎖アルコキシ基、フッ素置換アルキル基、モノアルキルシロキシ基、ジアルキルシロキシ基、トリアルキルシロキシ基などが挙げられ、炭素数6〜20のアルキル基又はアルキレン基が好ましい。炭素数6〜20のアルキル基又はアルキレン基は、例えば、アルキルフェニル基、アルキルフェノキシ基、アルコキシ基、フェニルアルキル基などの形で含有されていてもよい。
【0015】
両親媒性の化合物(β)は、親水基として繰り返し数6〜20のポリエチレングリコール鎖を有し、且つ、疎水基として炭素数6〜20のアルキル基又はアルキレン基を有する化合物であることが好ましい。
【0016】
また、両親媒性の化合物(β)が前記支持層と共重合で結合する場合には、該両親媒性の化合物(β)の分子内に重合性の官能基を導入する必要がある。
該重合性の官能基としては、例えば、ビニル基、ビニリデン基、アクリロイル基、メタクリロイル基(以下、アクリロイル基とメタクリロイル基を併せて「(メタ)アクリロイル基」と称する。「(メタ)アクリル」、「(メタ)アクリレート」等についても同様である。)等が挙げられ、これらの官能基を分子内に有するモノマー及び/又はオリゴマーを両親媒性の化合物(β)として用いることが好ましい。上述した官能基のうち、活性エネルギー線照射による重合速度が速いことから、(メタ)アクリロイル基が好ましい。
これらの中でも、更に好ましく使用できる両親媒性の化合物(β)として、一般式(1)で表わされる化合物を挙げることができる。
CH2=CR1COO(R2O)n−φ−R3 (1)
(式中、R1は水素、ハロゲン原子又は低級アルキル基を表わし、R2は炭素数1〜3のアルキレン基を表わし、nは6〜20の整数、φはフェニレン基、R3は炭素数6〜20のアルキル基を表わす。)
【0017】
ここで、R3はより具体的には、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ドデシル基、又はペンタデシル基であり、好ましくはノニル基又はドデシル基である。一般式(1)において、nの数が大きいほど、R3の炭素数も大きいことが好ましい。
【0018】
これらの両親媒性の化合物(β)の中でも、ノニルフェノキシポリエチレングリコール(n=7〜20)(メタ)アクリレート、ノニルポリエチレングリコール(n=7〜20)(メタ)アクリレート、ノニルフェノキシポリプロピレングリコール(n=7〜20)(メタ)アクリレートが特に好ましい。
【0019】
両親媒性の化合物(β)を含む熱又は活性エネルギー線硬化性組成物(b)には、製造方法、要求される表面特性などに応じて、例えば2官能以上の重合性化合物や、親水基(例えば、アミノ基、N−置換アミノ基、アミド基、N置換アミド基、水酸基、カルボキシル基、スルホン基、リン酸基、アンモニウム塩基、ポリエチレングリコール鎖など)を有する(メタ)アクリレート等の、上記以外の重合性化合物を含んでいてもよい。また、熱又は活性エネルギー線硬化性組成物(b)は、重合開始剤、重合遅延剤、重合禁止剤、水、溶剤、消泡剤、紫外線吸収剤、浸透剤、pH調整剤、塩、顔料、染料等の着色剤、界面活性剤、耐水化剤、ポリマー、酸、アルカリ、防黴剤、抗菌剤、等のその他の成分を含有していても良い。
また、製造方法によっては、前記熱又は活性エネルギー線硬化性組成物(b)は、両親媒性の化合物(β)のみから構成されていてもよい。
【0020】
両親媒性の化合物(β)を含む熱又は活性エネルギー線硬化性組成物(b)の硬化物(B)は、用途に応じて架橋重合体であってもよいが、親水性や低タンパク質吸着性を十分発揮させる面から、通常非架橋重合体であることが好ましい。
また、この硬化物(B)は、表面親水性、タンパク質吸着性などの要求に応じて、水及びひまし油との接触角が任意に調整できるが、高親水性、低タンパク質吸着性の観点から、水との接触角が0°〜45°で、且つひまし油との接触角が0°〜30°であることが好ましく、水との接触角が0°〜25°で、且つひまし油との接触角が0°〜20°であることが更に好ましい。
【0021】
前記支持層は前記両親媒性の重合体と共有結合可能なものであればどのようなものも用いることができ、(メタ)アクリル酸エステルのような(メタ)アクリル系の重合体、ポリアミドのようなアミド系ポリマー、ポリイミドのようなイミド系ポリマー、スチレン系ポリマー、スルホン系ポリマー等の前記両親媒性の重合体と共有結合できる基を有する高分子化合物や、前記両親媒性の重合体と共有結合できる基を有するシランカップリング剤で表面処理されたガラス、金属や、紙、木材、布などのセルロース系ポリマーの成形品などが挙げられる。しかしながら、高い生産性で製造できることから、この支持体表層が、前記両親媒性の重合体と共有結合できる基を有する熱又は活性エネルギー線硬化性組成物(a)の硬化物(A)からなるものであることが好ましい。
【0022】
本発明で使用する、前記両親媒性の重合体と共有結合できる基を有する熱又は活性エネルギー線重合性化合物(α)は、有機、無機を問わず、熱または活性エネルギー線(例えば、紫外線、可視光線、赤外線等)の照射により重合し架橋重合体となるものであればよく、ラジカル重合性、アニオン重合性、カチオン重合性等、任意のものであってよい。そのような熱又は活性エネルギー線重合性化合物(α)としては、例えば、(メタ)アクリル酸エステルのような(メタ)アクリル系の重合体が挙げられる。
【0023】
本発明に用いる硬化物(A)に耐水性が要求される場合には、前記化合物(α)として、疎水性の熱又は活性エネルギー線重合性化合物(α’)を用い、該硬化物(B)として該化合物(α’)を含有する熱又は活性エネルギー線硬化性組成物(a)の硬化物を用いることが好ましい。
【0024】
そのような疎水性の熱又は活性エネルギー線重合性化合物(α’)としては、例えば、一分子内にビニル基、ビニリデン基、(メタ)アクリロイル基等を有するモノマー及び/又はオリゴマーが挙げられるが、中でも前記化合物(β)の説明で述べたと同様の理由で、(メタ)アクリロイル基を有する重合性化合物が好ましい。具体例を挙げると、例えばエチル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、t−ブチル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、フェニル(メタ)アクリレート、フェニルセロソルブ(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニルオキシエチル(メタ)アクリレート、トリフルオロエチルアクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリロイルクロライド、(メタ)アクリロイルオキシエチルイソシアネート、(メタ)アクリルアルデヒド等の1官能モノマー;
【0025】
1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、3−アクリロイルオキシグリセリンモノメタクリレート、2,2′−ビス(4−(メタ)アクリロイルオキシポリエチレンオキシフェニル)プロパン、2,2′−ビス(4−(メタ)アクリロイルオキシポリプロピレンオキシフェニル)プロパン、ジシクロペンタニルジ(メタ)アクリレート、ビス[(メタ)アクリロイルオキシエチル]ヒドロキシエチルイソシアネート、フェニルグリシジルエーテルアクリレート等の2官能モノマー;
トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールエタントリ(メタ)アクリレート、トリス[(メタ)アクリロイルオキシエチル]イソシアネート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート等の3官能モノマー;ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、グリセリンジ(メタ)アクリレートヘキサメチレンジイソシアネート等の4官能モノマー;ジペンタエリスリトールモノヒドロキシペンタ(メタ)アクリレート等の5官能モノマー;ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート等の6官能モノマーなどが挙げられる。
【0026】
また、疎水性の熱又は活性エネルギー線重合性化合物(α)としては、分子量500〜50,000のオリゴマーも好適に使用できる。例えば、ビスフェノールA−ジエポキシ−(メタ)アクリル酸付加物等のエポキシ樹脂の(メタ)アクリル酸エステル、ポリエーテル樹脂の(メタ)アクリル酸エステル、ポリブタジエン樹脂の(メタ)アクリル酸エステル、分子末端に(メタ)アクリル基を有するポリウレタン樹脂などが挙げられる。
【0027】
これらの疎水性の熱又は活性エネルギー線重合性化合物(α)は、単独で用いることも、2種以上の化合物を混合して用いることもできる。
疎水性の熱又は活性エネルギー線重合性化合物(α)としては、上記(メタ)アクリレートのほかに、マレイミド基を有する重合性化合物も好適に用いることができる。また、例えば接着性の向上等の目的で、硬化物が膨潤により支持体から剥離しない程度に、両親媒性の(メタ)アクリレート、親水基(例えば、アミノ基、N置換アミノ基、アミド基、N置換アミド基、カルバモイル基、水酸基、カルボキシル基、スルホン基、リン酸基、アンモニウム塩基、ポリエチレングリコール鎖など)を有する(メタ)アクリレートを併用することもできる。
【0028】
また、熱又は活性エネルギー線硬化性組成物(a)には、例えば、重合開始剤、重合遅延剤、重合禁止剤、溶剤、増粘剤、消泡剤、紫外線吸収剤、浸透剤、pH調整剤、塩、顔料、染料等の着色剤、界面活性剤、耐水化剤、ポリマー、無機物(シリカ、アルミナ等)、酸、アルカリ、防黴剤、抗菌剤、等のその他の成分が溶解又は分散状態で含有されていても良い。
上述の重合開始剤としては、例えば、p−t−ブチルトリクロロアセトフェノン、2,2′−ジエトキシアセトフェノン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オンの如きアセトフェノン類;ベンゾフェノン、4,4′−ビスジメチルアミノベンゾフェノン、2−クロロチオキサントン、2−メチルチオキサントン、2−エチルチオキサントン、2−イソプロピルチオキサントンの如きケトン類;ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテルの如きベンゾインエーテル類;ベンジルジメチルケタール、ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトンの如きベンジルケタール類、等の光重合開始剤が挙げられる。その他に、熱重合開始剤も好適に使用できる。熱重合開始剤としては例えば、ジブチルパーオキサイドメチルエチルケトンパーオキサイド、t−ヘキシルヒドロパーオキサイドなどが挙げられる。
また、該開始剤の代わりに、マレイミド化合物の如き重合性樹脂組成物に組み込まれ、かつ、該開始剤としての機能を有する化合物を用いても良い。
【0029】
硬化物(A)は、前記組成物(a)の賦形物を硬化させたものであるが、耐溶剤性や耐熱性、強度等の観点から、架橋重合体であることが好ましい。即ち、組成物(a)が2官能以上の重合性化合物を含むことが好ましい。
また、本発明の硬化物(A)は、耐水性、耐膨潤性または、基材上に形成された場合の基材からの耐剥離性等の要求に応じて、水との接触角が任意に調整できるが、水、特に、熱水に対する耐水性が要求される場合は、硬化物(A)の水との接触角が60°以上であることが好ましく、65°〜100°であることが特に好ましい。
本発明の低タンパク質吸着性成形物は、使用条件に応じて、重合性化合物(α)の選択により硬化物(A)と基材との間の接着性を、調整することができ、例えば、熱水に長時間接する用途に用いる場合には、硬化物(A)と基材が、35℃〜100℃の熱水中に1分〜500時間浸漬した時に剥離しない。
【0030】
本発明の低タンパク質吸着性成形物は、用途に応じて、任意の形であってよく、また、任意の形状の基材上に積層して固着されてなるものでもよい。例えば、成形物の形状としては、板状、糸状、中空糸状、カプセル状、(微)粒子状、表面に複数の溝を有する板状(例えばマイクロ流体デバイス)、格子状等が挙げられる。一方、成形物が基材上に固着された場合、例えば、シャーレの表面、スライドガラスの表面、96穴のマイクロプレートのウエルの内表面、幅及び深さが数十〜数百μmの溝の底面(例えばマイクロ流体デバイスの流路の表面)、粒子の表面、多孔質体の細孔表面に固着されてなる成形物が挙げられる。
【0031】
本発明に使用する基材は、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリスチレン、ポリアミド、ポリイミド、ABS樹脂、ポリカーボネート、アクリル樹脂、塩化ビニル、酢酸ビニル、ポリプロビレン、ポリスルホン等の樹脂、ガラス(特に無蛍光ガラス)、木材、不織布、多孔質膜、金属等が挙げられる。基材と支持層との接着性が悪い場合には、基材を表面処理したものを用いることが好ましい。表面処理法としては、プライマー樹脂の塗工、酸またはアルカリ処理、火炎処理、コロナ処理、プラズマ処理、紫外線処理その他任意の処理法を利用できる。
【0032】
本発明の低タンパク質吸着性成形物において、支持層の表面に設けられた硬化物(B)または重合体(B’)は、乾燥状態で厚み100μm以下、より好ましくは30μm以下、さらに好ましくは10μm以下とすることが好ましい。硬化物(B)または重合体(B’)の層の厚みの下限は、分子寸法で規定されるため、特に限定する必要はない。厚みがこの値以上であると、膨潤時の寸法変化により表面から剥離し易くなる。硬化物(B)または重合体(B’)層の厚みは、上記範囲で用途目的に応じて設計できる。該硬化物(B)または重合体(B’)層は、該支持層の全表面を覆っている必要はなく、例えば、分子寸法程度の大きさの間隙があってもよいし、また、フォトリソグラフなどの手法により、該支持層表面の必要部位のみを覆う構造であってもよい。
【0033】
本発明の細胞培養器は、前記低タンパク質吸着性成形物が上記基材の表面に形成されたものである。本発明の細胞培養器は、栄養分(例えばタンパク質、アミノ酸など)、pH調整剤、色素と細胞からなる培養液を該細胞培養器に入れ、公知慣用の方法で細胞培養ができる。本発明の細胞培養器で細胞培養を行うと、剥離試薬(例えばトリプシン)を使用することなく、培養された細胞を容易に培養器表面から剥離、回収することができる。
すなわち、本発明の細胞培養器は、前記低タンパク質吸着性成形物が基材の表面に形成されたものである。
【0034】
次に、本発明の製造方法について説明する。
本発明の製造方法で使用される疎水性の熱または活性エネルギー線重合性化合物(α)、化合物(α)を含む熱または活性エネルギー線硬化性組成物(a)、両親媒性の化合物(β)、及び化合物(β)を含む熱または活性エネルギー線硬化性組成物(b)は、上記低タンパク質吸着性成形物の説明に述べたのと同じものであるので、説明を省略する。
【0035】
本発明に用いる熱または活性エネルギー線硬化性組成物(a)の賦形法は公知慣用の方法であればいずれの方法でもよく、例えば注型、塗工、印刷又は浸漬等によって賦形することができるが、コーターや噴霧等による塗工や印刷が好ましく挙げられる。また、基材の表面形状が複雑な場合または薄く塗工する場合は、組成物(a)を溶剤で薄め、基材表面へ塗工してから溶剤を揮発させる方法や、浸漬後に溶剤を揮発させる方法等を利用することもできる。その他の賦形法として、組成物(a)をノズルより押し出して、糸状や中空糸状またはビーズ状に賦形することもできる。また、賦形に際して、組成物(a)を基材上にて賦形し、そのまま上記低タンパク質吸着性成形物を形成して製品としてもよいし、低タンパク質吸着性成形物を形成した後に該成形物を基材から剥がして製品としてもよい。
【0036】
本発明の製造方法においては、組成物(a)の未硬化の賦形物を未硬化又は半硬化させた状態でその表面に組成物(b)を接触させるが、組成物(a)と組成物(b)との接触方法は任意であり、例えば、賦形物の組成物(b)中への浸漬、賦形物表面への組成物(b)の流延、塗布又はスプレー、賦形物と組成物(b)の泡との接触、組成物(a)と組成物(b)の共押し出しなどの方法が挙げられ、中でも賦形物の組成物(b)中への浸漬や賦形物表面への組成物(b)の流延又は塗布が好ましい。組成物(a)の賦形物と接触させる組成物(b)は、気相、即ち、蒸気の状態で接触させてもよい。
賦形物を組成物(b)中へ浸漬する方法の場合は、賦形物の硬化物(A)の表面に形成される組成物(b)の硬化物(B)の分子量や厚み、強度及び表面の平滑性の制御、及び硬化物(B)のゲル化防止、並びに操作性などの観点から、組成物(b)を含有する水溶液を使用することが好ましい。水溶液中の化合物(β)の濃度は、要求される表面特性(例えば親水性、タンパク質吸着性等)、界面での反応性及び後洗浄等の面から、0.5〜50質量%の範囲が好ましく、5〜20質量%の範囲が特に好ましい。
【0037】
一般的に、水溶液中の化合物(β)の濃度が高くなるほど、組成物(a)の賦形物を硬化させた硬化物(A)の表面に形成される化合物(β)の重合体(B’)の層が厚くなるが、例えば、乾燥状態で厚さ100μmを超えるほど厚くなりすぎると、湿潤時に表面強度が低下し、重合体(B’)層の変形や剥離が生じ易くなる。水溶液中の化合物(β)の濃度を上記の範囲にすることで、充分な親水性と低タンパク質吸着性を示し、且つ重合体(B’)層が過度に厚くない低タンパク質吸着性成型物を得ることができる。
また、必要に応じて上記水溶液中には、重合禁止剤、重合遅延剤、溶剤、ポリマー、増粘剤、消泡剤、紫外線吸収剤、浸透剤、界面活性剤、耐水化剤、無機化合物、及び親水基(例えば、アミノ基、N置換アミノ基、アミド基、N置換アミド基、カルバモイル基、水酸基、カルボキシル基、スルホン基、リン酸基、アンモニウム塩基、ポリエチレングリコール鎖など)を有する(メタ)アクリレート等その他の成分が含有されていてもよい。
【0038】
組成物(a)を賦形して得られた未硬化または半硬化の賦形物を、組成物(b)またはその水溶液と接触させた状態で光照射すると、賦形物の内部又は表面で発生したラジカル、アニオン、カチオンなどの活性種によって、化合物(α)が重合するとともに、発生したこれらの活性種あるいはこれら化合物(α)の重合連鎖におけるこれらの活性種によって、賦形物の表面で化合物(β)の重合も誘発され、1つの活性種から開始した重合反応は実質的に瞬時に終了する。即ち、重合反応は賦形物内部において組成物(a)中の疎水性の化合物(α)同士、賦形物と両親媒性の化合物(β)との接触面において疎水性の化合物(α)と両親媒性の化合物(β)の間、及び該接触面近傍の両親媒性の化合物(β)相中において化合物(β)同士で起こり、疎水性の化合物(α)と両親媒性の化合物(β)とのブロック共重合体からなる層が形成される。従って、賦形物が硬化することにより形成された硬化物(A)の内部には、化合物(β)あるいはその硬化物(B)または重合体(B’)は存在せず、化合物(β)あるいはその硬化物(B)または重合体(B’)は、硬化物(A)の表面のみに結合される。硬化物(A)の表面に結合される硬化物(B)または重合体(B’)は、組成物(b)または水溶液中の化合物(β)の濃度、反応温度、組成物(a)中の光重合開始剤濃度、光強度等によって調節することができる。硬化物(A)の表面に結合される化合物(β)は、重合体とならず、化合物(β)自体であることもあり得る。
【0039】
組成物(a)の粘度が低い場合は、組成物(a)からなる賦形物を、組成物(b)またはその水溶液と接触させた時に、賦形物の形状を維持しにくい場合がある。このような場合は、賦形物を予め活性エネルギー線で予備硬化させて半硬化状態としてから、組成物(b)またはその水溶液と接触させて、活性エネルギー照射を行なう方法が、最終成形物の表面平滑性が向上するので、好ましい。予備硬化が過剰に進んだ場合は、硬化物(A)の表面に形成される層の硬化物(B)または重合体(B’)の量が減じるため、組成物(a)中の化合物(α)の重合性官能基が残留している程度に止める必要があるが、その最適条件は簡単な実験により求めることができる。予備硬化は窒素雰囲気中で短時間で行なうこともできるが、組成物(a)中の疎水性の重合性化合物(α)が酸素存在下では完全重合しない性質を利用して、重合阻害を受けやすい空気中で短時間硬化させることにより、半硬化状態とすることが好ましい。
【0040】
なお、本発明の製造方法では、化合物(β)は、使用された量の一部分が硬化物(A)の表面に結合し、残余の両親媒性の化合物(β)は、未硬化のまま残留することになる。
【0041】
本発明の製造方法で活性エネルギー線を用いる場合は、用いる活性エネルギー線としては、紫外線、可視光、赤外線を挙げられる。活性エネルギー線としては、上記の他に、電子線、エックス線、γ線等のエネルギー線の使用も可能であるが、硬化物(A)に結合しない組成物(b)の硬化物(B)または両親媒性の化合物(β)の重合体(B’)の量をできるだけ少なくするためには前述の紫外線、可視光、赤外線が好ましい。これらの活性エネルギー線の中でも、適度な重合硬化速度が得られ、かつ、簡便に使用できる点で、紫外線、可視光が好ましく、紫外線が特に好ましい。紫外線としては、その波長が300nm以上であるのが好ましく、350nm以上であることが特に好ましい。
照射する活性エネルギー線の強度は、1〜5000mW/cm2 の範囲が好ましく、10〜2000mW/cm2 の範囲が特に好ましい。また、重合硬化速度を速め、重合を完全に行う目的で、光照射を不活性ガス雰囲気下で行なうことが好ましく、両親媒性の化合物(β)を水に溶解したものを用いる場合は、水溶液中に溶解している酸素を除去しておくことが好ましい。
【0042】
光重合時の温度は特に制約されないが、70℃程度までの範囲では、温度は高い方が成形物の親水性が増加するので好ましい。作業条件をも考慮すると、室温〜50℃程度の範囲が好ましい。勿論、活性エネルギー線照射による硬化は、回分式で行っても良く、連続式で行っても良い。活性エネルギー線照射による硬化を回分式で行なう場合、賦形した後、そのまま活性エネルギー線照射して予備硬化させ、次いで得られた予備硬化物を組成物(b)と接触させて再び活性エネルギー線照射し、本硬化させてもよい。
【0043】
本発明において、硬化物(A)の表面に組成物(b)の硬化物(B)または両親媒性の化合物(β)の重合体(B’)が結合されていることは、表面の水との接触角が低下することで判定できる。本発明の製造方法により製造される成形物は、硬化物(A)の表面に硬化物(B)または重合体(B’)からなる層が形成されていない場合と比較して、水との接触角が5°以上低下することが好ましい。成形物が疎水性物質の吸着防止を要求される用途に使用される場合などには、水との接触角の低下の度合いは大きいほど好ましく、10°以上低下することが好ましく、20°以上低下することが更に好ましい。
【0044】
本発明の細胞培養器は、前記組成物(a)を前記基材へ塗工し、上述した本発明の低タンパク質吸着性成形物の製造方法に準じて製造される。本発明の細胞培養器は、細胞あるいは細胞の持つタンパク質と、培養器の低タンパク質吸着層表面との吸着性(接着性)を、培養条件、細胞の回収方法及び用途に応じて、両親媒性の化合物(β)の種類や濃度、賦形物の表面形状、並びに疎水性である組成物(a)の組成を調節することにより、幅広く調整することができる。特に、本発明の低タンパク質吸着性成形物の上で培養された細胞は、例えばトリプシン等の剥離試薬を使用することなく、細胞を容易に培養器表面から剥離、回収することができる。
【0045】
また、本発明の低タンパク質吸着性成形物を濾過膜として用いる場合、該濾過膜は前記組成物(a)を多孔質膜の表面(孔の壁面を含む)に塗工し、その後、上述した本発明の低タンパク質吸着性成形物の製造方法に準じて製造される。該濾過膜はタンパク質、油脂、フミン質などの吸着による膜の濾過性能の低下を抑制できる。
【0046】
また、本発明の低タンパク質吸着性成形物を電極として用いる場合、該電極は前記組成物(a)を金属の表面に塗工し、その後、上述した本発明の低タンパク質吸着性成形物の製造方法に準じて製造される。該電極は、タンパク質等の吸着による感度の低下を抑制することができる。更に、同様な方法で表面処理されたカテーテルは、タンパク質やその他の血中成分のカテーテル表面への吸着を抑制でき、生体適合性を向上させることができる。
【0047】
また、本発明の低タンパク質吸着性成形物を抗原抗体反応又はDNA分析用基板として用いる際は、対象となる抗原、抗体以外の抗体やタンパク質等の非特異的吸着を抑制でき、分析感度を向上させることができる。
【0048】
【実施例】
以下、実施例及び比較例を用いて本発明をさらに詳細に説明するが、本発明は、これらの実施例の範囲に限定されるものではない。なお、以下の実施例において、「部」及び「%」は、特に断りがない限り、夫々「質量部」及び「質量%」を表わす。
【0049】
[測定項目]
実施例及び比較例における以下の測定は、次の方法に従って行った。
(1)水接触角の測定
表面親水性成形物の水接触角は、協和科学株式会社製液滴法接触角計「CA−D型」を用いて測定した。
(2)(タンパク質吸着量の測定)
まず、1cm×1cmの後述の実施例、比較例で得た成形物をそれぞれ2枚用意した。次いで、25mlの牛血清アルブミン水溶液(濃度10mg/ml、pH7.0)を検出試薬である同仁化学研究所製4−クロロ−7−ニトロベンゾフラザン、「NBD−Cl」のエタノール溶液(NBD−Cl濃度10mg/ml)5mlと混合し、37℃、2時間反応させて、吸着用タンパク質溶液とした。
吸着試験として、1枚の成形物を上記吸着用タンパク質溶液(30ml)に室温(22℃)で15時間浸漬した後、該成形物を約200mlの蒸留水でリンスして、室温で乾燥させた。乾燥した該成形物を富士写真フィルム社製蛍光測定装置「FLA―3000G」を用いて、蛍光測定を行った。
また、コントロール試験として、2枚目の成形物の表面に上記吸着用タンパク質溶液を12μlのせ、室温で乾燥させた後、蛍光測定装置FLA―3000Gを用いて、蛍光測定を行った。
成形物表面のアルブミン吸着量は、下記の式より求めた。
アルブミン吸着量(mg/mm2)=[(8.3×10−3mg/FI2)×FI1]/100mm2
但し、FI1は1枚目の成形物の(吸着したアルブミンの)蛍光強度、FI2は2枚目の成形物の(原液のアルブミンの)蛍光強度である。
【0050】
[実施例1]
(疎水性の硬化性組成物(a1)の調製)
疎水性の重合性化合物(α)として、平均分子量約2000の大日本インキ化学工業社製3官能ウレタンアクリレートオリゴマー「ユニディックV−4263」80部、日本化薬社製ジシクロペンタニルジアクリレート「R−684」20部、チバガイギー社製紫外線重合開始剤「イルガキュアー184」(1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン)3部、を均一に混合して組成物(a1)を調製した。
【0051】
(両親媒性の化合物(β)を含む組成物(b1)の調製)
化合物(β)として第一工業製薬社製ノニルフェノキシポリエチレングリコール(n=17)アクリレート「N−177E」20部、蒸留水80部を均一に混合して、化合物(β)を含む組成物(b1)を調製した。
【0052】
(低タンパク質吸着性成形物の作製)
組成物(a1)をガラス板に厚さ250μmのコーターで塗工し、組成物(b1)中に投入して、直ちに100mW/cm2 の紫外線を40秒間照射した後、該ガラス板を取り出した。このようにして得た硬化物を流水で30分洗浄した後、自然乾燥させて、該硬化物をガラス板から剥がして、シート状の低タンパク質吸着性成形物(C1)を得た。
【0053】
(成形物の水接触角測定)
得られた成形物(C1)の表面について水接触角を測定した結果、接触角は15°であった。
(剥離試験)
直径約100mmのポリスチレン製シャーレを用いて、上記同様の方法で成形物(C1s)を作製した。成形物(C1s)を40℃の熱水中に24時間浸漬した。その結果、成形物(C1s)のシャーレの内表面からの剥離は認められなかった。
【0054】
(成形物のタンパク質吸着試験)
成形物(C1)を1cm×1cmの大きさに切り、タンパク質の吸着試験を行った。その結果、成形物(C1)の表面のタンパク質吸着量は1.9×10―4mg/mm2 であった。
【0055】
[実施例2]
(両親媒性の化合物(β)を含む組成物(b2)の調製)
化合物(β)としてノニルフェノキシポリエチレングリコール(n=17)アクリレート「N−177E」10部、蒸留水90部を均一に混合して、両親媒性の化合物(β)を含む組成物(b2)を調製した。
【0056】
(低タンパク質吸着性成形物の作製)
組成物(b1)に代えて、組成物(b2)を用いたこと以外は実施例1と同様にして低タンパク質吸着性成形物(C2)を得た。
【0057】
(成形物の水接触角測定)
成形物(C2)の表面について水接触角を測定した結果、接触角は21°であった。
(剥離試験)
直径約100mmのポリスチレン製シャーレを用いて、上記同様の方法で成形物(C2s)を作製した。成形物(C2s)を40℃の熱水中に24時間浸漬した。その結果、成形物(C2s)のシャーレの内表面からの剥離は認められなかった。
(成形物のタンパク質吸着試験)
成形物(C2)を1cm×1cmの大きさに切り、タンパク質の吸着試験を行った。その結果、成形物(C2)の表面のタンパク質吸着量は2.4×10―4mg/mm2 であった。
【0058】
[実施例3]
(両親媒性の化合物(β)を含む組成物(b3)の調製)
化合物(β)としてノニルフェノキシポリエチレングリコール(n=17)アクリレート「N−177E」5部、蒸留水95部を均一に混合して、化合物(β)を含む組成物(b3)を調製した。
(低タンパク質吸着性成形物の作製)
組成物(b1)に代えて、組成物(b3)を用いたこと以外は実施例1と同様にして低タンパク質吸着性成形物(C3)を得た。
【0059】
(成形物の水接触角測定)
成形物(C3)の表面について水接触角を測定した結果、接触角は29°であった。
(剥離試験)
直径約100mmのポリスチレン製シャーレを用いて、上記同様の方法で成形物(C3s)を作製した。成形物(C3s)を40℃の熱水中に24時間浸漬した。その結果、成形物(C3s)のシャーレの内表面からの剥離は認められなかった。
(成形物のタンパク質吸着試験)
成形物(C3)を1cm×1cmの大きさに切り、タンパク質の吸着試験を行った。その結果、成形物(C3)の表面のタンパク質吸着量は3.2×10―4mg/mm2 であった。
【0060】
[実施例4]
(疎水性の硬化性組成物(a2)の調製)
疎水性の重合性化合物(α)として、平均分子量約2000の大日本インキ化学工業社製3官能ウレタンアクリレートオリゴマー「ユニディックV−4263」60部、第一工業製薬社製ヘキサンジオールジアクリレート「ニューフロンティアHDDA」40部、チバガイギー社製紫外線重合開始剤「イルガキュアー184」3部、アセトン10部を均一に混合して組成物(a2)を調製した。
【0061】
(両親媒性の化合物(β)を含む組成物(b4)の調製)
化合物(β)として共栄社化学社製ノニルフェノキシポリエチレングリコール(n=8)アクリレート「ライトアクリレートNP−8EA」15部、蒸留水70部を均一に混合して、両親媒性の化合物(β)を含む組成物(b4)を調製した。
【0062】
(低タンパク質吸着性成形物の作製)
直径100mm、高さ20mmのポリスチレン製の東京硝子機械社製シャーレ「ペトリディッシュ」に組成物(a2)を約0.5ml入れ、スピンコーターを用いて塗工し、空気中100mW/cm2 の紫外線を2秒間照射した後、該シャーレに、組成物(b4)を約30ml入れ、直ちに100mW/cm2 の紫外線を60秒間照射した。照射後、該シャーレを流水で30分洗浄した後、自然乾燥させて、シャーレの内表面に成形物を形成した積層体状の低タンパク質吸着性成形物(C4)を得た。
【0063】
(成形物の水接触角測定)
成形物(C4)の表面について水接触角を測定した結果、接触角は25°であった。
(剥離試験)
成形物(C4)を40℃の熱水中に24時間浸漬した。その結果、成形物(C4)のシャーレの内表面からの剥離は認められなかった。
(成形物のタンパク質吸着試験)
まず、ポリスチレン製のシャーレに代えて、ガラス板を用いて、同様な方法で成形物(C4’)を作製した。
次いで、成形物(C4’)をガラス板から剥がし、1cm×1cmの大きさに切り、タンパク質の吸着試験を行った。その結果、タンパク質の吸着量は2.6×10―4mg/mm2 であった。
【0064】
[実施例5]
(疎水性の硬化性組成物(a5)の調製)
疎水性の重合性化合物(α)として、トリテトラエチレングリコールビスマレイミド(大日本インキ化学工業株式会社製の「ルミキュアMIA200」)80部、1,6−ヘキサンジオールエトキシレートジアクリレート(コグニスジャパン株式会社製の「フォトマー4361」)40部を均一に混合して組成物(a5)を調製した。
(低タンパク質吸着性成形物の作製)
組成物(a1)に代えて、組成物(a5)を用いたこと以外は実施例1と同様にして低タンパク質吸着性成形物(C5)を得た。
【0065】
(成形物の水接触角測定)
成形物(C5)の表面について水接触角を測定した結果、接触角は21°であった。
(剥離試験)
直径約100mmのポリスチレン製シャーレを用いて、上記同様の方法で成形物(C5s)を作製した。成形物(C5s)を40℃の熱水中に24時間浸漬した。その結果、成形物(C5s)のシャーレの内表面からの剥離は認められなかった。
(成形物のタンパク質吸着試験)
成形物(C5)を1cm×1cmの大きさに切り、タンパク質の吸着試験を行った。その結果、成形物(C5)の表面のタンパク質吸着量は2.5×10−4mg/mm2 であった。
【0066】
[比較例1]
(親水性の重合性化合物の水溶液の調製)
親水性の重合性化合物である新中村化学工業社製メトキシノナエチレングリコールアクリレート「NK−エステルAM−90G」10部と、蒸留水90部とを均一に混合して、親水性の重合性化合物の水溶液を調製した。
(表面親水性成形物の作製)
両親媒性の化合物(β)を含む組成物(b1)に代えて、この親水性の重合性化合物の水溶液を用いたこと以外は実施例1と同様にして表面親水性成形物(C1’)を得た。
(成形物の水接触角測定)
表面親水性成形物(C1’)の表面について水接触角を測定した結果、接触角は50°であった。
(成形物のタンパク質吸着試験)
成形物(C1’)をガラス板から剥がし、1cm×1cmの大きさに切り、タンパク質の吸着試験を行った。その結果、タンパク質の吸着量は1.1×10―3mg/mm2 であった。
【0067】
[比較例2]
組成物(a2)をガラス板に厚さ250μmのコーターで塗工し、窒素雰囲気中で100mW/cm2 の紫外線を40秒間照射して、塗膜状の成形物(C2’)を得た。
(成形物の水接触角測定)
成形物(C2’)の表面について水接触角を測定した結果、接触角は68°であった。
(成形物のタンパク質吸着試験)
成形物(C2’)をガラス板から剥がし、1cm×1cmの大きさに切り、タンパク質の吸着試験を行った。その結果、タンパク質の吸着量は3.5×10― 3mg/mm2であった。
【0068】
【発明の効果】
本発明は、極めて高い親水性の表面を有し、タンパク質などの物質の吸着性が低く、更に、タンパク質や細胞などの物質の表面に対する吸着性または接着性を幅広く制御でき、且つ高い親水性を付与することに伴う耐水性低下を呈しない成形物及びその製造方法を提供できる。また、その表面から細胞等のタンパク質を容易に剥離できる細胞培養器を提供できる。
Claims (7)
- 支持層表面に低タンパク質吸着層を有する成形物であって、該低タンパク質吸着層が両親媒性の重合体からなり、支持層に共有結合で結合して層を形成していることを特徴とする低タンパク質吸着性成形物。
- 前記両親媒性の重合体の、水との接触角が0°〜45°、且つ、ひまし油との接触角が0°〜30°である請求項1に記載の低タンパク質吸着性成形物。
- 前記支持層が疎水性の熱又は活性エネルギー線重合性化合物(α)を含有する熱又は活性エネルギー線硬化性組成物(a)の硬化物(A)からなり、該支持層の表面に、前記化合物(α)との共重合性を有する両親媒性の化合物(β)を含有する熱又は活性エネルギー線硬化性組成物(b)の硬化物(B)または前記化合物(β)の重合体(B’)が、前記硬化物(A)に共有結合で結合して両親媒性の重合体からなる層を形成している請求項1又は2記載の低タンパク質吸着性成形物。
- 前記硬化物(A)の、水との接触角が60°以上である請求項3に記載の低タンパク質吸着性成形物。
- 請求項1〜4のいずれか1項に記載の低タンパク質吸着性成形物が基材の表面に形成されたことを特徴とする細胞培養器。
- 請求項3に記載の低タンパク質吸着性成形物を製造する方法であって、疎水性の熱又は活性エネルギー線重合性化合物(α)を含有する熱又は活性エネルギー線硬化性組成物(a)を賦形し、該賦形物が未硬化、又はこれを加熱若しくは活性エネルギー線照射により半硬化させた状態で、その表面に、前記化合物(α)との共重合性を有する両親媒性の化合物(β)を含有する熱又は活性エネルギー線硬化性組成物(b)と接触させ、加熱若しくは活性エネルギー線照射により、該賦形物中に含有される未反応の前記化合物(α)及び前記化合物(β)をそれぞれ重合させると共に境界面において両化合物を共重合させることを特徴とする低タンパク質吸着性成形物の製造方法。
- 請求項3に記載の低タンパク質吸着性成形物を製造する方法であって、疎水性の熱又は活性エネルギー線重合性化合物(α)を含有する熱又は活性エネルギー線硬化性組成物(a)を賦形し、該賦形物が未硬化又はこれを加熱若しくは活性エネルギー線照射により半硬化させた状態で、その表面に、前記化合物(α)と共重合性を有する両親媒性の化合物(β)を含有する水溶液を接触させ、加熱若しくは活性エネルギー線照射により、該賦形物中に含有される未反応の前記化合物(α)及び前記化合物(β)をそれぞれ重合させると共に境界面において両化合物を共重合させることを特徴とする低タンパク質吸着性成形物の製造方法。
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JP2003073976A JP2004277652A (ja) | 2003-03-18 | 2003-03-18 | 低タンパク質吸着性成形物、その製造方法、及び細胞培養器 |
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Cited By (3)
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JP2010063439A (ja) * | 2008-09-12 | 2010-03-25 | Dainippon Printing Co Ltd | 細胞培養支持体の製造方法 |
JP2013162796A (ja) * | 2013-05-13 | 2013-08-22 | Dainippon Printing Co Ltd | 細胞培養支持体の製造方法 |
JP2017077240A (ja) * | 2015-10-21 | 2017-04-27 | 株式会社日本触媒 | 接着性細胞培養用基材、ならびにこれを利用した細胞培養容器および細胞培養方法 |
-
2003
- 2003-03-18 JP JP2003073976A patent/JP2004277652A/ja active Pending
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