JP2004277213A - セラミックス表面の不純物の除去方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】セラミックス表面に存在する不純物の炭素を効果的に除去でき、しかも、除去処理による不純物の混入の少ない良好なセラミックス表面を形成することができる不純物の除去方法を提供する。
【解決手段】表面に炭素を主成分とする不純物含有層を有するセラミックスを、アンモニア等の窒素と水素から構成される気体状または液体状化合物で処理することにより、不純物の炭素を除去することを特徴とするセラミックス表面の不純物の除去方法。
【選択図】 図2
【解決手段】表面に炭素を主成分とする不純物含有層を有するセラミックスを、アンモニア等の窒素と水素から構成される気体状または液体状化合物で処理することにより、不純物の炭素を除去することを特徴とするセラミックス表面の不純物の除去方法。
【選択図】 図2
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、セラミックス表面に存在する不純物の炭素を効果的に除去でき、しかも、除去処理による不純物の混入の少ない良好なセラミックス表面を形成することができる不純物の除去方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
いろいろな物質の表面は、外部からの汚染や製造工程においてその物質が生成する段階で不純物の炭素層に覆われている場合が多い。またこの不純物炭素層は、その製品を様々に利用する場合に、接着強度、耐熱性、耐薬品性などの面で特性を低下させる原因として挙げられ、その除去が重要な課題となっていた。これらの除去のためには、酸やアルカリ溶液を用いた湿式処理や高温で酸素との酸化反応を利用して除去する乾式処理方法が一般的に用いられる。
【0003】
しかし、例えば、酸やアルカリ溶液を用いた湿式処理方法では、物理吸着しているような炭素不純物しか除去できなかったり、水分により損傷を受けるような試料には適応できないなどの問題があった。
また、酸素との酸化反応を利用して除去する乾式処理方法では、処理に高い温度が必要であるのに加え、酸化による製品の汚染がもっとも問題となり、その適応できる範囲は、ごく限られた物質にとどまっていた。
【0004】
セラミックス表面の不純物炭素が問題になる例として、セラミックス繊維を用いた複合材料が挙げられる。特に、炭化ケイ素系セラミックス繊維を用いた炭化ケイ素マトリックス系複合材(以降SiC/SiC複合材料と記す)の場合は、1000℃を超える高温での機械的特性の劣化が大きな問題となってくる。
従来、SiC/SiC複合材料では、マトリックスと繊維の界面に炭素Cに代表されるような、適度な滑り効果を発現する層を設けることで、進展するクラックの偏向を起こさせ、脆性的な破壊をする炭化ケイ素系セラミックスに高い靱性を付与していた。近年では、この炭素界面に替わり、より耐熱性の高い窒化ホウ素BNや酸化物を界面に適応する研究が盛んに行われている(例えば、特許文献1参照)。
【0005】
しかし、この様な高耐熱性界面を利用する場合、繊維とこれら界面との間に僅かに不純物炭素がある繊維でSiC/SiC複合材料を作製し、高温酸化雰囲気に暴露した場合、不純物炭素が酸化により消失してしまい、高耐熱性界面層であるはずのBNが、その能力を十分に発揮できない。このため、複合材料の場合に使用する繊維表面に存在する不純物炭素の除去は、重要な課題となっている。
【0006】
【特許文献1】
特願2001−379821
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、上記の問題点を解決し、セラミックス表面に存在する不純物の炭素を効果的に除去でき、しかも、除去処理による不純物の混入の少ない良好なセラミックス表面を形成することができる不純物の除去方法を提供することである。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明者等は、上記課題を解決するために、炭素の除去方法について以下の2つの反応を検討した。
NH3(気体)+C(固体)→ N2(気体)+CH4(気体) (1)
H2(気体)+C(固体)→ CH4(気体) (2)
このうち、式(2)の反応は、自由エネルギー変化が負の値を示す温度が高いので耐熱性の低い材料の処理には利用出来ないことがわかった
これに対し、式(1)のアンモニアと炭素の反応の自由エネルギー変化は、室温付近から負の値を示すことから、反応が低温から非常に容易に進行することがわかった。
そして、上記式(1)の反応を利用することにより、低温で酸化を受けることなく、セラミックス表面の不純物炭素を除去できることを見出し、本発明に到達した。
【0009】
すなわち、本発明は、表面に炭素を主成分とする不純物含有層を有するセラミックスを、窒素と水素から構成される気体状または液体状化合物で処理することにより、不純物の炭素を除去することを特徴とするセラミックス表面の不純物の除去方法に関するものである。
【0010】
本発明では、処理するセラミックスに制限はなく、多孔質材料、バルク材料、セラミックス繊維フェルト、セラミックス長繊維、セラミックス長繊維を用いた織物などに幅広く利用できる。また、材質も酸化物、窒化物、炭化物、硼化物などの種々の物質に対して、処理条件を選択することで幅広く利用できる。
【0011】
酸化物の具体例としては、ケイ素、チタン、ジルコニウム、アルミニウム、ウラン、タングステン、タンタル、ハフニウム、ホウ素、鉄、マンガンのような元素の酸化物、これら元素の複合酸化物が挙げられる。
【0012】
窒化物の具体例としては、ケイ素、ホウ素、アルミニウム、マグネシウム、モリブデンにような元素の窒化物、これらの元素の複合酸化物、サイアロンが挙げられる。
【0013】
炭化物の具体例としては、ケイ素、チタン、ジルコニウム、アルミニウム、ウラン、タングステン、タンタル、ハフニウム、ホウ素、鉄、マンガンのような元素の炭化物、これら元素の複合炭化物が挙げられる。
【0014】
硼化物の具体例としては、チタン、イットリウム、ランタンのような元素の硼化物、CeCoB2,CeCo4B4,ErRh4B4のような硼化白金族ランタノイドが挙げられる。
【0015】
また、本発明に使用できるセラミックス繊維フェルト、セラミックス長繊維およびセラミックス長繊維の種類としては、酸化物繊維、非酸化物繊維が挙げられる。
【0016】
酸化物繊維としては、アルミナ繊維、アルミナ−ムライト繊維などが挙げられる。
非酸化物繊維としては、炭化ケイ素繊維、窒化ケイ素繊維、炭窒化ケイ素繊維、ボロン繊維、BN繊維などが挙げられる。
特に、本発明は、炭化ケイ素系繊維に好適に使用できる。
【0017】
炭化ケイ素系繊維としては、特に制限はなく、公知のものが使用できるが、特に、密度が2.7〜3.2/cm3であり、重量割合で、Si:50〜70%、C:28〜45%、Al:0.06〜3.8%、好ましくは、0.13〜1.25%、及びB:0.06%〜0.5%、好ましくは、0.06〜0.19%からなり、SiCの焼結構造からなる結晶性炭化ケイ素系繊維に好適に使用できる。
【0018】
前記結晶性炭化ケイ素系繊維は、少量の酸素及び余剰の炭素を含むことがあるが、いずれも2重量%以下であることが好ましい。なお、余剰の炭素とは、繊維中に含有されるSiに対してSiCとして存在し得る化学量論的組成量を超えて存在する炭素を意味する。
【0019】
また、前記結晶性炭化ケイ素系繊維は、Alを0.05〜3重量%、及びBを0.05〜0.4重量%含有し、さらにSiに対して余剰の炭素を1重量%以上含有する非晶質の炭化ケイ素繊維を、1600〜2100℃の範囲の温度に加熱することによって調製される。この加熱処理は、アルゴン、ヘリウムのような不活性ガス雰囲気下に行われる。
【0020】
非晶質炭化ケイ素繊維中のアルミニウムの割合が3重量%を超えると、焼結後の繊維において、多くのアルミニウムが焼結SiC結晶の粒界に遍在するために、粒界破壊が優勢に起こるようになって、高い強度が得られないと共に、高温における力学的特性の低下が顕著になる。この繊維中のアルミニウムの割合が0.05重量%未満であると、充分に焼結した結晶性繊維が得られなくなる。非晶質炭化ケイ素繊維中のホウ素の割合が0.4重量%を超えると、得られる結晶性炭化ケイ素繊維の耐アルカリ性が極端に低下し、逆にその割合が0.05重量%より少ないと、充分に焼結した結晶性繊維が得られなくなる。
【0021】
また、非晶質炭化ケイ素繊維は、酸素を8〜16重量%含むことが好ましい。
非晶質炭化ケイ素繊維を加熱する際に、この酸素は前述の余剰の炭素をCOガスとして脱離させる。
【0022】
上記の非晶質炭化ケイ素繊維は、カルボシラン(−Si−CH2 −)結合単位、及びポリシラン(−Si−Si−)結合単位から主としてなり、ケイ素の側鎖に水素原子、低級アルキル基、アリ−ル基、フェニル基及びシリル基からなる群から選択される基を有する有機ケイ素重合体に、前記金属原子のアルコキシド、アセチルアセトキシ化合物、カルボニル化合物、シクロペンタジエニル化合物及びアミン化合物からなる群から選択される化合物を加熱反応して金属含有有機ケイ素重合体を調製し、次いで金属含有有機ケイ素重合体を溶融紡糸し、得られた紡糸繊維を酸素含有雰囲気中で不融化し、得られた不融化繊維を不活性雰囲気中で予備加熱後、不活性ガス雰囲気あるいは還元性ガス雰囲気で高温焼成することにより得られる。
【0023】
本発明においては、表面に炭素を主成分とする不純物含有層を有するセラミックスを、窒素と水素から構成される気体状または液体状化合物で処理することにより、不純物の炭素を除去することができるが、前記処理によりセラミックス表面の不純物の炭素濃度が繊維内部に向かって減少傾向にあり、不純物の炭素濃度が5原子%以下になる繊維表面からの深さを0〜10nm(SiO2換算)にすることが可能である。なお、セラミックス自体が炭素を含有する場合には、セラミックス内部に向かって全炭素濃度が一定になる値をセラミックス自体の炭素濃度とし、セラミックス表面の不純物の炭素濃度は、セラミックス中に含まれる全炭素濃度からこのセラミックス自体の炭素濃度を差し引いて算出したものである。
【0024】
また、本発明によれば、低温で酸化を受けることなく、セラミックス表面の不純物炭素を除去できるので、処理後のセラミックスの最表面における不純物の窒素濃度が0〜15原子%、不純物の酸素濃度が0〜30原子%であり、かつ窒素及び酸素の濃度は繊維内部に向かって減少傾向にあり、窒素および酸素の濃度が5原子%以下になる繊維表面からの深さをともに、0〜10nm(SiO2換算)にすることができる。
【0025】
本発明において、セラミックス表面の不純物炭素の除去に用いる窒素と水素から構成される気体状または液体状化合物としては、アンモニアやヒドラジンが挙げられる。また、反応を制御するために、アルゴンや窒素などの希釈ガスを使用してもよい。
【0026】
本発明において、セラミックス表面の不純物炭素の除去処理に使用する装置の形式も、アンモニア雰囲気、所定の温度、適切な処理時間を制御できるものであれば特に限定するものではない。例えば、多孔質材料、バルク材料、フェルト、長繊維の織物などの形状物は、バッチ式炉を用いることができる。また、連続長繊維、連続シート状物などは、これらを送り出し、巻き取りのための装置が設置された連続形式の炉を使用することができる。
【0027】
バッチ炉の場合は、酸化物系セラミックス製の内容器を有する密閉容器を用い、例えば、炉内に、連続繊維の織物を充填する。炉内の酸素および水分を十分除去した後、所定流量のアンモニアを炉内に導入する。必要に応じて希釈用のアルゴンガスや窒素ガスなどの不活性ガスを導入する。その後、所定の温度まで昇温・保持することで、表面の不純物炭素が除去された連続繊維が得られる。
【0028】
連続形式の炉の場合は、例えば、連続長繊維を、送り出し用のボビンから処理炉を通して巻き取りようのボビンまで繊維を通す。送り出し部、処理炉、巻き取り部全体を真空置換等で酸素および水分を十分除去する。その後、所定流量のアンモニアを炉内に導入する。必要に応じて希釈用のアルゴンガスや窒素ガスなどの不活性ガスを導入する。処理炉が所定の温度になると、繊維を所定の巻き取り速度で巻き取ることで、表面の不純物炭素が除去された連続繊維が得られる。
このように処理するものの形態に合わせて、処理炉の形式や処理条件を適切に制御することで、不純物炭素を除去したセラミックスが得られる。
【0029】
【実施例】
以下、本発明を実施例により説明する。
実施例1
炭化ケイ素系繊維として、化学組成が、Si:67%、C:31%、O:0.3%、Al:0.8%、B:0.06%(原子比Si:C:O:Al=1:1.08:0.008:0.012)の結晶性炭化ケイ素系繊維の長繊維(平均直径:7.5μm、1600本/繊維束)を用いた。この炭化ケイ素系繊維の処理前の繊維表面から深さ方向のオージェ分析結果を図1に示す。オージェ分析による深さ方向の元素プロファイルから表面の炭素層の厚みを算出した。尚、深さ方向の厚みは、SiO2膜のアルゴンイオンによるエッチング速度を基準に決定した。表面炭素層の厚さは、約40nmであった。最表面の炭素濃度は99原子%であった。また、最表面の酸素濃度は1原子%、窒素濃度は0原子%であった。
次いで、この炭化ケイ素系繊維を下記の条件で処理した。
・反応炉の温度:1000℃
・アンモニア流量:1リットル/分
・圧力:760Torr
処理した炭化ケイ素系繊維のオージェ分析による深さ方向の元素プロファイルから炭素層の厚みを算出した。この結果から炭素層の厚さは、約40nmであった。最表面の炭素濃度は93原子%であり、不純物の炭素濃度が5原子%以下になる繊維表面からの深さは30nmであった。また、最表面の酸素濃度は3原子%、窒素濃度は2原子%であり、最表面から10nmの深さで酸素濃度は0原子%、窒素濃度は0原子%で、窒素および酸素濃度が5原子%以下になる厚さも10nm以下に低く抑えられていることがわかった。
【0030】
実施例2
実施例1と同様の炭化ケイ素系繊維を下記の条件で処理した。
・反応炉の温度:1100℃
・アンモニア流量:1リットル/分
・圧力:760Torr
実施例1と同様に処理後の炭化ケイ素系繊維のオージェ分析による深さ方向の元素プロファイルから炭素層の厚みを算出した。これから炭素層の厚さは、約35nmであった。最表面の炭素濃度は67原子%であり、不純物の炭素濃度が5原子%以下になる繊維表面からの深さは10nmであった。また、最表面の酸素濃度は9原子%、窒素濃度は11原子%であり、最表面から10nmの深さで酸素濃度は1原子%、窒素濃度は2原子%で、窒素および酸素の濃度が5原子%以下になる厚さも10nm以下に低く抑えられていることがわかった。
【0031】
実施例3
実施例1と同様の炭化ケイ素系繊維を下記の条件で処理した。
・反応炉の温度:1200℃
・アンモニア流量:1リットル/分
・圧力:760Torr
実施例1と同様に処理後の炭化ケイ素系繊維のオージェ分析による深さ方向の元素プロファイルから炭素層の厚みを算出した。これから炭素層の厚さは、約10nmであった。最表面の炭素濃度は56原子%であり、不純物の炭素濃度が5原子%以下になる繊維表面からの深さは5nmであった。また、最表面の酸素濃度は21原子%、窒素濃度は7原子%であり、最表面から10nmの深さで酸素濃度は2原子%、窒素濃度は2原子%で、窒素および酸素の濃度が5原子%以下になる厚さも10nm以下に低く抑えられていることがわかった。
【0032】
実施例4
実施例1と同様の炭化ケイ素系繊維を下記の条件で処理した。
・反応炉の温度:1300℃
・アンモニア流量:1リットル/分
・圧力:760Torr
実施例1と同様に処理後の炭化ケイ素系繊維のオージェ分析による深さ方向の元素プロファイルから炭素層の厚みを算出した。これから炭素層の厚さは、約5nmであった。最表面の炭素濃度は54原子%であり、不純物の炭素濃度が5原子%以下になる繊維表面からの深さは0nmであった。また、最表面の酸素濃度は27原子%、窒素濃度は3原子%であり、最表面から10nmの深さで酸素濃度は3原子%、窒素濃度は2原子%で、窒素および酸素の濃度が5原子%以下になる厚さも10nm以下と低く抑えられていることがわかった。
【0033】
実施例5
実施例1と同様の炭化ケイ素系繊維を平織りにしたものを10枚積層した積層体を用い、これを下記の条件で処理した。
・反応炉の温度:1000℃
・アンモニア流量:1リットル/分
・圧力:760Torr
実施例1と同様に炭化ケイ系素繊維平織り10枚積層体中心部の繊維表面のオージェ分析による深さ方向の元素プロファイルから炭素層の厚みを算出した。これから炭素層の厚さは、約40nmであった。最表面の炭素濃度は95原子%であり、不純物の炭素濃度が5原子%以下になる繊維表面からの深さは31nmであった。また、最表面の酸素濃度は3原子%、窒素濃度は3原子%であり、最表面から10nmの深さで酸素濃度は0原子%、窒素濃度は0原子%で、窒素および酸素の濃度が5原子%以下になる厚さも10nm以下に低く抑えられていることがわかった。
【0034】
実施例6
実施例5と同様の炭化ケイ素系繊維平織り10枚積層体を下記の条件で処理した。
・反応炉の温度:1100℃
・アンモニア流量:1リットル/分
・圧力:760Torr
実施例1と同様に炭化ケイ素系繊維平織り10枚積層体中心部の繊維表面のオージェ分析による深さ方向の元素プロファイルから炭素層の厚みを算出した。これから炭素層の厚さは、約35nmであった。最表面の炭素濃度は69原子%であり、不純物の炭素濃度が5原子%以下になる繊維表面からの深さは10nmであった。また、最表面の酸素濃度は8原子%、窒素濃度は10原子%であり、最表面から10nmの深さで酸素濃度は1原子%、窒素濃度は2原子%で、窒素および酸素の濃度が5原子%以下になる厚さも10nm以下に低く抑えられていることがわかった。
【0035】
実施例7
実施例5と同様の炭化ケイ素系繊維平織り10枚積層体を下記の条件で処理した。
・反応炉の温度:1200℃
・アンモニア流量:1リットル/分
・圧力:760Torr
実施例1と同様に炭化ケイ素系繊維平織り10枚積層体中心部の繊維表面のオージェ分析による深さ方向の元素プロファイルから炭素層の厚みを算出した。これから炭素層の厚さは、約10nmであった。最表面の炭素濃度は57原子%であり、不純物の炭素濃度が5原子%以下になる繊維表面からの深さは5nmであった。また、最表面の酸素濃度は20原子%、窒素濃度は9原子%であり、最表面から10nmの深さで酸素濃度は2原子%、窒素濃度は2原子%で、窒素および酸素の濃度が5原子%以下になる厚さも10nm以下に低く抑えられていることがわかった。
【0036】
実施例8
実施例5と同様の炭化ケイ素系繊維平織り10枚積層体を下記の条件で処理した。
・反応炉の温度:1300℃
・アンモニア流量:1リットル/分
・圧力:760Torr
実施例1と同様に炭化ケイ素系繊維平織り10枚積層体中心部の繊維表面のオージェ分析による深さ方向の元素プロファイルから炭素層の厚みを算出した。これから炭素層の厚さは、約5nmであった。最表面の炭素濃度は54原子%であり、不純物の炭素濃度が5原子%以下になる繊維表面からの深さは0nmであった。また、最表面の酸素濃度は24原子%、窒素濃度は2原子%であり、最表面から10nmの深さで酸素濃度は4原子%、窒素濃度は2原子%で、窒素および酸素の濃度が5原子%以下になる厚さも10nm以下に低く抑えられていることがわかった。
上記結果をまとめて表1に示す。
【0037】
【表1】
【0038】
【発明の効果】
本発明によれば、セラミックス表面に存在する不純物の炭素を効果的に除去でき、しかも、除去処理による不純物の混入の少ない良好なセラミックス表面を形成することができる。本発明に係るセラミックス表面の炭素を除去する処理方法は、広範囲の無機化合物に広く適応でき、各種セラミックス表面に存在する余剰な炭素を除去する出来ることにより、表面状態の良好なセラミックスを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】図1は、実施例1の処理前の炭化ケイ素系繊維のAESによる繊維表面から深さ方向の元素プロファイルを示す図である。
【図2】図2は、実施例3の処理後の炭化ケイ素系繊維のAESによる繊維表面から深さ方向の元素プロファイルを示す図である。
【発明の属する技術分野】
本発明は、セラミックス表面に存在する不純物の炭素を効果的に除去でき、しかも、除去処理による不純物の混入の少ない良好なセラミックス表面を形成することができる不純物の除去方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
いろいろな物質の表面は、外部からの汚染や製造工程においてその物質が生成する段階で不純物の炭素層に覆われている場合が多い。またこの不純物炭素層は、その製品を様々に利用する場合に、接着強度、耐熱性、耐薬品性などの面で特性を低下させる原因として挙げられ、その除去が重要な課題となっていた。これらの除去のためには、酸やアルカリ溶液を用いた湿式処理や高温で酸素との酸化反応を利用して除去する乾式処理方法が一般的に用いられる。
【0003】
しかし、例えば、酸やアルカリ溶液を用いた湿式処理方法では、物理吸着しているような炭素不純物しか除去できなかったり、水分により損傷を受けるような試料には適応できないなどの問題があった。
また、酸素との酸化反応を利用して除去する乾式処理方法では、処理に高い温度が必要であるのに加え、酸化による製品の汚染がもっとも問題となり、その適応できる範囲は、ごく限られた物質にとどまっていた。
【0004】
セラミックス表面の不純物炭素が問題になる例として、セラミックス繊維を用いた複合材料が挙げられる。特に、炭化ケイ素系セラミックス繊維を用いた炭化ケイ素マトリックス系複合材(以降SiC/SiC複合材料と記す)の場合は、1000℃を超える高温での機械的特性の劣化が大きな問題となってくる。
従来、SiC/SiC複合材料では、マトリックスと繊維の界面に炭素Cに代表されるような、適度な滑り効果を発現する層を設けることで、進展するクラックの偏向を起こさせ、脆性的な破壊をする炭化ケイ素系セラミックスに高い靱性を付与していた。近年では、この炭素界面に替わり、より耐熱性の高い窒化ホウ素BNや酸化物を界面に適応する研究が盛んに行われている(例えば、特許文献1参照)。
【0005】
しかし、この様な高耐熱性界面を利用する場合、繊維とこれら界面との間に僅かに不純物炭素がある繊維でSiC/SiC複合材料を作製し、高温酸化雰囲気に暴露した場合、不純物炭素が酸化により消失してしまい、高耐熱性界面層であるはずのBNが、その能力を十分に発揮できない。このため、複合材料の場合に使用する繊維表面に存在する不純物炭素の除去は、重要な課題となっている。
【0006】
【特許文献1】
特願2001−379821
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、上記の問題点を解決し、セラミックス表面に存在する不純物の炭素を効果的に除去でき、しかも、除去処理による不純物の混入の少ない良好なセラミックス表面を形成することができる不純物の除去方法を提供することである。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明者等は、上記課題を解決するために、炭素の除去方法について以下の2つの反応を検討した。
NH3(気体)+C(固体)→ N2(気体)+CH4(気体) (1)
H2(気体)+C(固体)→ CH4(気体) (2)
このうち、式(2)の反応は、自由エネルギー変化が負の値を示す温度が高いので耐熱性の低い材料の処理には利用出来ないことがわかった
これに対し、式(1)のアンモニアと炭素の反応の自由エネルギー変化は、室温付近から負の値を示すことから、反応が低温から非常に容易に進行することがわかった。
そして、上記式(1)の反応を利用することにより、低温で酸化を受けることなく、セラミックス表面の不純物炭素を除去できることを見出し、本発明に到達した。
【0009】
すなわち、本発明は、表面に炭素を主成分とする不純物含有層を有するセラミックスを、窒素と水素から構成される気体状または液体状化合物で処理することにより、不純物の炭素を除去することを特徴とするセラミックス表面の不純物の除去方法に関するものである。
【0010】
本発明では、処理するセラミックスに制限はなく、多孔質材料、バルク材料、セラミックス繊維フェルト、セラミックス長繊維、セラミックス長繊維を用いた織物などに幅広く利用できる。また、材質も酸化物、窒化物、炭化物、硼化物などの種々の物質に対して、処理条件を選択することで幅広く利用できる。
【0011】
酸化物の具体例としては、ケイ素、チタン、ジルコニウム、アルミニウム、ウラン、タングステン、タンタル、ハフニウム、ホウ素、鉄、マンガンのような元素の酸化物、これら元素の複合酸化物が挙げられる。
【0012】
窒化物の具体例としては、ケイ素、ホウ素、アルミニウム、マグネシウム、モリブデンにような元素の窒化物、これらの元素の複合酸化物、サイアロンが挙げられる。
【0013】
炭化物の具体例としては、ケイ素、チタン、ジルコニウム、アルミニウム、ウラン、タングステン、タンタル、ハフニウム、ホウ素、鉄、マンガンのような元素の炭化物、これら元素の複合炭化物が挙げられる。
【0014】
硼化物の具体例としては、チタン、イットリウム、ランタンのような元素の硼化物、CeCoB2,CeCo4B4,ErRh4B4のような硼化白金族ランタノイドが挙げられる。
【0015】
また、本発明に使用できるセラミックス繊維フェルト、セラミックス長繊維およびセラミックス長繊維の種類としては、酸化物繊維、非酸化物繊維が挙げられる。
【0016】
酸化物繊維としては、アルミナ繊維、アルミナ−ムライト繊維などが挙げられる。
非酸化物繊維としては、炭化ケイ素繊維、窒化ケイ素繊維、炭窒化ケイ素繊維、ボロン繊維、BN繊維などが挙げられる。
特に、本発明は、炭化ケイ素系繊維に好適に使用できる。
【0017】
炭化ケイ素系繊維としては、特に制限はなく、公知のものが使用できるが、特に、密度が2.7〜3.2/cm3であり、重量割合で、Si:50〜70%、C:28〜45%、Al:0.06〜3.8%、好ましくは、0.13〜1.25%、及びB:0.06%〜0.5%、好ましくは、0.06〜0.19%からなり、SiCの焼結構造からなる結晶性炭化ケイ素系繊維に好適に使用できる。
【0018】
前記結晶性炭化ケイ素系繊維は、少量の酸素及び余剰の炭素を含むことがあるが、いずれも2重量%以下であることが好ましい。なお、余剰の炭素とは、繊維中に含有されるSiに対してSiCとして存在し得る化学量論的組成量を超えて存在する炭素を意味する。
【0019】
また、前記結晶性炭化ケイ素系繊維は、Alを0.05〜3重量%、及びBを0.05〜0.4重量%含有し、さらにSiに対して余剰の炭素を1重量%以上含有する非晶質の炭化ケイ素繊維を、1600〜2100℃の範囲の温度に加熱することによって調製される。この加熱処理は、アルゴン、ヘリウムのような不活性ガス雰囲気下に行われる。
【0020】
非晶質炭化ケイ素繊維中のアルミニウムの割合が3重量%を超えると、焼結後の繊維において、多くのアルミニウムが焼結SiC結晶の粒界に遍在するために、粒界破壊が優勢に起こるようになって、高い強度が得られないと共に、高温における力学的特性の低下が顕著になる。この繊維中のアルミニウムの割合が0.05重量%未満であると、充分に焼結した結晶性繊維が得られなくなる。非晶質炭化ケイ素繊維中のホウ素の割合が0.4重量%を超えると、得られる結晶性炭化ケイ素繊維の耐アルカリ性が極端に低下し、逆にその割合が0.05重量%より少ないと、充分に焼結した結晶性繊維が得られなくなる。
【0021】
また、非晶質炭化ケイ素繊維は、酸素を8〜16重量%含むことが好ましい。
非晶質炭化ケイ素繊維を加熱する際に、この酸素は前述の余剰の炭素をCOガスとして脱離させる。
【0022】
上記の非晶質炭化ケイ素繊維は、カルボシラン(−Si−CH2 −)結合単位、及びポリシラン(−Si−Si−)結合単位から主としてなり、ケイ素の側鎖に水素原子、低級アルキル基、アリ−ル基、フェニル基及びシリル基からなる群から選択される基を有する有機ケイ素重合体に、前記金属原子のアルコキシド、アセチルアセトキシ化合物、カルボニル化合物、シクロペンタジエニル化合物及びアミン化合物からなる群から選択される化合物を加熱反応して金属含有有機ケイ素重合体を調製し、次いで金属含有有機ケイ素重合体を溶融紡糸し、得られた紡糸繊維を酸素含有雰囲気中で不融化し、得られた不融化繊維を不活性雰囲気中で予備加熱後、不活性ガス雰囲気あるいは還元性ガス雰囲気で高温焼成することにより得られる。
【0023】
本発明においては、表面に炭素を主成分とする不純物含有層を有するセラミックスを、窒素と水素から構成される気体状または液体状化合物で処理することにより、不純物の炭素を除去することができるが、前記処理によりセラミックス表面の不純物の炭素濃度が繊維内部に向かって減少傾向にあり、不純物の炭素濃度が5原子%以下になる繊維表面からの深さを0〜10nm(SiO2換算)にすることが可能である。なお、セラミックス自体が炭素を含有する場合には、セラミックス内部に向かって全炭素濃度が一定になる値をセラミックス自体の炭素濃度とし、セラミックス表面の不純物の炭素濃度は、セラミックス中に含まれる全炭素濃度からこのセラミックス自体の炭素濃度を差し引いて算出したものである。
【0024】
また、本発明によれば、低温で酸化を受けることなく、セラミックス表面の不純物炭素を除去できるので、処理後のセラミックスの最表面における不純物の窒素濃度が0〜15原子%、不純物の酸素濃度が0〜30原子%であり、かつ窒素及び酸素の濃度は繊維内部に向かって減少傾向にあり、窒素および酸素の濃度が5原子%以下になる繊維表面からの深さをともに、0〜10nm(SiO2換算)にすることができる。
【0025】
本発明において、セラミックス表面の不純物炭素の除去に用いる窒素と水素から構成される気体状または液体状化合物としては、アンモニアやヒドラジンが挙げられる。また、反応を制御するために、アルゴンや窒素などの希釈ガスを使用してもよい。
【0026】
本発明において、セラミックス表面の不純物炭素の除去処理に使用する装置の形式も、アンモニア雰囲気、所定の温度、適切な処理時間を制御できるものであれば特に限定するものではない。例えば、多孔質材料、バルク材料、フェルト、長繊維の織物などの形状物は、バッチ式炉を用いることができる。また、連続長繊維、連続シート状物などは、これらを送り出し、巻き取りのための装置が設置された連続形式の炉を使用することができる。
【0027】
バッチ炉の場合は、酸化物系セラミックス製の内容器を有する密閉容器を用い、例えば、炉内に、連続繊維の織物を充填する。炉内の酸素および水分を十分除去した後、所定流量のアンモニアを炉内に導入する。必要に応じて希釈用のアルゴンガスや窒素ガスなどの不活性ガスを導入する。その後、所定の温度まで昇温・保持することで、表面の不純物炭素が除去された連続繊維が得られる。
【0028】
連続形式の炉の場合は、例えば、連続長繊維を、送り出し用のボビンから処理炉を通して巻き取りようのボビンまで繊維を通す。送り出し部、処理炉、巻き取り部全体を真空置換等で酸素および水分を十分除去する。その後、所定流量のアンモニアを炉内に導入する。必要に応じて希釈用のアルゴンガスや窒素ガスなどの不活性ガスを導入する。処理炉が所定の温度になると、繊維を所定の巻き取り速度で巻き取ることで、表面の不純物炭素が除去された連続繊維が得られる。
このように処理するものの形態に合わせて、処理炉の形式や処理条件を適切に制御することで、不純物炭素を除去したセラミックスが得られる。
【0029】
【実施例】
以下、本発明を実施例により説明する。
実施例1
炭化ケイ素系繊維として、化学組成が、Si:67%、C:31%、O:0.3%、Al:0.8%、B:0.06%(原子比Si:C:O:Al=1:1.08:0.008:0.012)の結晶性炭化ケイ素系繊維の長繊維(平均直径:7.5μm、1600本/繊維束)を用いた。この炭化ケイ素系繊維の処理前の繊維表面から深さ方向のオージェ分析結果を図1に示す。オージェ分析による深さ方向の元素プロファイルから表面の炭素層の厚みを算出した。尚、深さ方向の厚みは、SiO2膜のアルゴンイオンによるエッチング速度を基準に決定した。表面炭素層の厚さは、約40nmであった。最表面の炭素濃度は99原子%であった。また、最表面の酸素濃度は1原子%、窒素濃度は0原子%であった。
次いで、この炭化ケイ素系繊維を下記の条件で処理した。
・反応炉の温度:1000℃
・アンモニア流量:1リットル/分
・圧力:760Torr
処理した炭化ケイ素系繊維のオージェ分析による深さ方向の元素プロファイルから炭素層の厚みを算出した。この結果から炭素層の厚さは、約40nmであった。最表面の炭素濃度は93原子%であり、不純物の炭素濃度が5原子%以下になる繊維表面からの深さは30nmであった。また、最表面の酸素濃度は3原子%、窒素濃度は2原子%であり、最表面から10nmの深さで酸素濃度は0原子%、窒素濃度は0原子%で、窒素および酸素濃度が5原子%以下になる厚さも10nm以下に低く抑えられていることがわかった。
【0030】
実施例2
実施例1と同様の炭化ケイ素系繊維を下記の条件で処理した。
・反応炉の温度:1100℃
・アンモニア流量:1リットル/分
・圧力:760Torr
実施例1と同様に処理後の炭化ケイ素系繊維のオージェ分析による深さ方向の元素プロファイルから炭素層の厚みを算出した。これから炭素層の厚さは、約35nmであった。最表面の炭素濃度は67原子%であり、不純物の炭素濃度が5原子%以下になる繊維表面からの深さは10nmであった。また、最表面の酸素濃度は9原子%、窒素濃度は11原子%であり、最表面から10nmの深さで酸素濃度は1原子%、窒素濃度は2原子%で、窒素および酸素の濃度が5原子%以下になる厚さも10nm以下に低く抑えられていることがわかった。
【0031】
実施例3
実施例1と同様の炭化ケイ素系繊維を下記の条件で処理した。
・反応炉の温度:1200℃
・アンモニア流量:1リットル/分
・圧力:760Torr
実施例1と同様に処理後の炭化ケイ素系繊維のオージェ分析による深さ方向の元素プロファイルから炭素層の厚みを算出した。これから炭素層の厚さは、約10nmであった。最表面の炭素濃度は56原子%であり、不純物の炭素濃度が5原子%以下になる繊維表面からの深さは5nmであった。また、最表面の酸素濃度は21原子%、窒素濃度は7原子%であり、最表面から10nmの深さで酸素濃度は2原子%、窒素濃度は2原子%で、窒素および酸素の濃度が5原子%以下になる厚さも10nm以下に低く抑えられていることがわかった。
【0032】
実施例4
実施例1と同様の炭化ケイ素系繊維を下記の条件で処理した。
・反応炉の温度:1300℃
・アンモニア流量:1リットル/分
・圧力:760Torr
実施例1と同様に処理後の炭化ケイ素系繊維のオージェ分析による深さ方向の元素プロファイルから炭素層の厚みを算出した。これから炭素層の厚さは、約5nmであった。最表面の炭素濃度は54原子%であり、不純物の炭素濃度が5原子%以下になる繊維表面からの深さは0nmであった。また、最表面の酸素濃度は27原子%、窒素濃度は3原子%であり、最表面から10nmの深さで酸素濃度は3原子%、窒素濃度は2原子%で、窒素および酸素の濃度が5原子%以下になる厚さも10nm以下と低く抑えられていることがわかった。
【0033】
実施例5
実施例1と同様の炭化ケイ素系繊維を平織りにしたものを10枚積層した積層体を用い、これを下記の条件で処理した。
・反応炉の温度:1000℃
・アンモニア流量:1リットル/分
・圧力:760Torr
実施例1と同様に炭化ケイ系素繊維平織り10枚積層体中心部の繊維表面のオージェ分析による深さ方向の元素プロファイルから炭素層の厚みを算出した。これから炭素層の厚さは、約40nmであった。最表面の炭素濃度は95原子%であり、不純物の炭素濃度が5原子%以下になる繊維表面からの深さは31nmであった。また、最表面の酸素濃度は3原子%、窒素濃度は3原子%であり、最表面から10nmの深さで酸素濃度は0原子%、窒素濃度は0原子%で、窒素および酸素の濃度が5原子%以下になる厚さも10nm以下に低く抑えられていることがわかった。
【0034】
実施例6
実施例5と同様の炭化ケイ素系繊維平織り10枚積層体を下記の条件で処理した。
・反応炉の温度:1100℃
・アンモニア流量:1リットル/分
・圧力:760Torr
実施例1と同様に炭化ケイ素系繊維平織り10枚積層体中心部の繊維表面のオージェ分析による深さ方向の元素プロファイルから炭素層の厚みを算出した。これから炭素層の厚さは、約35nmであった。最表面の炭素濃度は69原子%であり、不純物の炭素濃度が5原子%以下になる繊維表面からの深さは10nmであった。また、最表面の酸素濃度は8原子%、窒素濃度は10原子%であり、最表面から10nmの深さで酸素濃度は1原子%、窒素濃度は2原子%で、窒素および酸素の濃度が5原子%以下になる厚さも10nm以下に低く抑えられていることがわかった。
【0035】
実施例7
実施例5と同様の炭化ケイ素系繊維平織り10枚積層体を下記の条件で処理した。
・反応炉の温度:1200℃
・アンモニア流量:1リットル/分
・圧力:760Torr
実施例1と同様に炭化ケイ素系繊維平織り10枚積層体中心部の繊維表面のオージェ分析による深さ方向の元素プロファイルから炭素層の厚みを算出した。これから炭素層の厚さは、約10nmであった。最表面の炭素濃度は57原子%であり、不純物の炭素濃度が5原子%以下になる繊維表面からの深さは5nmであった。また、最表面の酸素濃度は20原子%、窒素濃度は9原子%であり、最表面から10nmの深さで酸素濃度は2原子%、窒素濃度は2原子%で、窒素および酸素の濃度が5原子%以下になる厚さも10nm以下に低く抑えられていることがわかった。
【0036】
実施例8
実施例5と同様の炭化ケイ素系繊維平織り10枚積層体を下記の条件で処理した。
・反応炉の温度:1300℃
・アンモニア流量:1リットル/分
・圧力:760Torr
実施例1と同様に炭化ケイ素系繊維平織り10枚積層体中心部の繊維表面のオージェ分析による深さ方向の元素プロファイルから炭素層の厚みを算出した。これから炭素層の厚さは、約5nmであった。最表面の炭素濃度は54原子%であり、不純物の炭素濃度が5原子%以下になる繊維表面からの深さは0nmであった。また、最表面の酸素濃度は24原子%、窒素濃度は2原子%であり、最表面から10nmの深さで酸素濃度は4原子%、窒素濃度は2原子%で、窒素および酸素の濃度が5原子%以下になる厚さも10nm以下に低く抑えられていることがわかった。
上記結果をまとめて表1に示す。
【0037】
【表1】
【0038】
【発明の効果】
本発明によれば、セラミックス表面に存在する不純物の炭素を効果的に除去でき、しかも、除去処理による不純物の混入の少ない良好なセラミックス表面を形成することができる。本発明に係るセラミックス表面の炭素を除去する処理方法は、広範囲の無機化合物に広く適応でき、各種セラミックス表面に存在する余剰な炭素を除去する出来ることにより、表面状態の良好なセラミックスを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】図1は、実施例1の処理前の炭化ケイ素系繊維のAESによる繊維表面から深さ方向の元素プロファイルを示す図である。
【図2】図2は、実施例3の処理後の炭化ケイ素系繊維のAESによる繊維表面から深さ方向の元素プロファイルを示す図である。
Claims (6)
- 表面に炭素を主成分とする不純物含有層を有するセラミックスを、窒素と水素から構成される気体状または液体状化合物で処理することにより、不純物の炭素を除去することを特徴とするセラミックス表面の不純物の除去方法。
- 処理後のセラミックス表面の不純物の炭素濃度は繊維内部に向かって減少傾向にあり、不純物の炭素濃度が5原子%以下になる繊維表面からの深さが0〜10nm(SiO2換算)である請求項1に記載のセラミックス表面の不純物の除去方法。
- 処理後のセラミックスの最表面における不純物の窒素濃度が0〜15原子%、不純物の酸素濃度が0〜30原子%であり、かつ窒素及び酸素の濃度は繊維内部に向かって減少傾向にあり、窒素および酸素の濃度が5原子%以下になる繊維表面からの深さがともに、0〜10nm(SiO2換算)であることを特徴とする請求項1に記載のセラミックス表面の不純物の除去方法。
- 窒素と水素から構成される気体状または液体状化合物が、アンモニアである請求項1に記載のセラミックス表面の不純物の除去方法。
- セラミックスが、炭化ケイ素系セラミックス繊維である請求項1に記載のセラミックス表面の不純物の除去方法。
- 炭化ケイ素系セラミックス繊維が、密度が2.7〜3.2g/cm3であり、重量割合で、Si:50〜70%、C:28〜45%、Al:0.06〜3.8%及びB:0.06%〜0.5%からなり、SiCの焼結構造からなる結晶性炭化ケイ素系繊維である請求項5に記載のセラミックス表面の不純物の除去方法。
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WO2022269178A1 (fr) * | 2021-06-23 | 2022-12-29 | Safran Ceramics | Procede de traitement d'une fibre de carbure de silicium |
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2003
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