JP2004276393A - 複合材料用ドライプリフォームとその製造方法および製造装置 - Google Patents

複合材料用ドライプリフォームとその製造方法および製造装置 Download PDF

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Abstract

【課題】任意の異形断面を有し、かつ任意の湾曲形状を持つ複合材料用ドライプリフォームとその製造方法および製造装置を提供する。
【解決手段】直線軸2に対して平行に任意形状の一部分に張設された強化繊維層aと、直線軸2に対して0°<θ<180°の角度を持って交わるように張設された強化繊維層bを持ち、前記強化繊維層bのみからなる部分が変形する性質を利用して、前記強化繊維層bを面外方向に変形させることによって、任意の形状(例えば、L型断面で湾曲形状)を有する強化繊維群5、6を形成し、それらを合わせて使用することで任意の強化繊維配向を持つ複合材料用のドライプリフォーム1とする。上記の強化繊維層aおよび/または強化繊維層bは、多数のピンを持つ治具上に、複数の強化繊維誘導パイプを有する強化繊維張設装置を使用して、複数の強化繊維を同時に張設して形成する。
【選択図】 図1

Description

【0001】
【産業上の利用分野】
本発明は航空・宇宙用構造体、建築用構造体、自動車用構造体、船舶用構造体、その他強度が必要とされる各種構造体に用いる湾曲成形性が向上した、複合材料用ドライプリフォームとその製造方法および製造装置に関するものである。なお、以下の説明において、「ドライプリフォーム」とは、RTM法、RFI法、VaRTM法などの成形方法によって樹脂含浸、成形される前の繊維構造体に対する呼称である。
【0002】
【従来の技術】
一般に航空・宇宙用構造体、建築用構造体、自動車用構造体、船舶用構造体、その他強度が必要とされる各種構造体などの軽量化・高強度化が要求されている。
【0003】
従来、航空機における構造材の中でも湾曲部を有する部材においては、その要求特性に応じた機械的強度の大きい金属材料が適用されてきた。これらの金属材料によって必要強度を得るためには膨大な重量、部品点数を使用しなければならず、機体全体の重量は重くなる傾向があった。そのため、設計上の自由を奪われていたし、実際に飛行する際の燃料消費についても莫大なものとなり、航空機材料の軽量化は航空機の設計、製造、運用時のコストにおいて、重要なファクターとなっていた。
【0004】
最近の航空機用構造材料においては、例えばガラス繊維やアラミド繊維、炭素繊維などの強化繊維にエポキシ樹脂などの高分子マトリックスを含浸した比強度の高い繊維強化複合材料による航空機構造材料の製造が研究され、実際に適用されている部分も多く出てきた。複合材料は金属材料に比べ、比強度、比剛性において優れていることが知られており、また、強化繊維による異方性という特徴のため、構造設計においての自由度が高いということも知られている。また、大型の構造部材の一体成形が可能であるため、部品点数を大幅に減らせ、コスト低減が可能となる。
【0005】
一方、その製造方法に関しては、所望する形状にあわせてパイプなどを厚み方向に対して垂直に設置し、それに強化繊維を蛇行張設し、パイプなどを厚み方向の繊維と置き換えることによって強化繊維どうしを一体化して繊維基材を得ようとする技術が知られているが(例えば、特許文献1参照。)、この方法では長繊維を1本のみで蛇行張設するため時間がかかり、決して効率の良い方法とは言えず、しかもパイプを厚み方向の強化繊維に置き換える手間がかかり、高コストとなっている。
【0006】
また、強化繊維を湾曲形状に張設して、湾曲しかつ異形断面を持った強化繊維基材を得る方法が知られているが(例えば、特許文献2参照。)、この方法においての強化繊維配向は直線的であって、湾曲形状に沿った強化繊維は配向されておらず、強化繊維基材として十分な強度は得られない。
【0007】
また、環形状、湾曲形状などの曲線部を一部または全体に持つ異形断面を持つ形状を得ようとする場合には、例えば、あらかじめ強化繊維に樹脂を含浸したプリプレグを細かく裁断した多数のシート状のものを、所望の形状に貼り付けていくハンドレイアップ法などが行われているが(例えば、特許文献3参照。)、ほとんどが人手による手作業となり、自動生産が困難であり、製造工程数が非常に多く、製造期間も長くかかり、廃材料も多く出るため、生産性が低いという問題があった。また、そうした場合は環状、湾曲状の強化繊維が寸断されている状態であり、連続した強化繊維による同様の構造材と比較した場合、充分な強度が得られず、しかも非常に高コストであった。
【0008】
また、強化繊維をある一定の幅で任意の繊維配向に張設し、所望の厚みを持つように張設した後にステッチングなどによって連続して一体化して、強化繊維による基材を作り出すという技術(例えば、特許文献4参照。)が知られているが、これは基本的に一旦プリフォームの中間基材を作成した後に最終形状をつくるためのものであり、直接所望の形状を得ることは難しいので、最終形状とするためには、製造された中間基材をカットしたり、重ねたりする必要があり、非常に手間がかかり、高コストとなっていた。
【0009】
また、プリプレグを使用した、ATL(オート・テープ・レイアップ)(またはファイバー・プレイスメントなどと)という技術(例えば、特許文献5参照。)が知られており、曲面形状をもつ大型部材などについて実際に適用されている。この方法は航空機やロケットなどにおけるスキン部分など大型の曲面部材の製造が主であって、I型、L型、T型、ハット型などの入り組んだ異形断面を持つ形状は製造できないという問題点があった。
【0010】
また、強化繊維の織物による製造方法も従来から知られている。例えば、円盤状や螺旋状などの所望の形態に織物を構成したものなどもあるが(例えば、特許文献6、7、8、9、10、11参照。)、いずれも繊維を織物にする工程を含むためコストが高くなり、織物をカットしたり、積み重ねたりなどという工数が多く、割高となっていたし、部分的に繊維の本数を細かく変更するためには非常に手間を要し、コストアップの原因となっていた。
【0011】
また、I型、H型、T型などの異形断面を有する強化繊維による織物も知られているが(例えば、特許文献12参照。)、織機による織物であるため、強化繊維の配向に限界があり、必要な部位、方向に簡単に繊維配向できず、しかも織物であるため強化繊維はクリンプした状態で配置されているので十分な強度が得られなかった。
【0012】
また、織物の繊維組織を変化させることによって、湾曲した構造物を製造可能な技術も知られているが(例えば、特許文献13、14参照。)、やはり織物であるために繊維がクリンプしており、強度面においても弱点があり、工数も多いために大量生産には不向きであり、実現できる形状には限界があった。
【0013】
また、強化繊維の組み物であるブレード基材を使用した複合材料の製造方法もある(例えば、特許文献15参照。)。ブレード基材は基本的なものは交差する2方向の配向からなるために変形性を有するが、基材中に2方向以外の繊維配向をすると組み合わされた強化繊維どうしが拘束しあって変形性が損なわれるし、本来必要とされない方向の強化繊維の量も一緒に増やしてしまうことになるため、設計の自由度が低く、重量や寸法も増える結果となる。織物・組物・編物のいずれについても言えることであるが基材における繊維はクリンプした状態で構成されているため、強度が小さいという課題が存在し、織物を使用する場合と同じく高コストとなっていた。また、時には設計に応じた強度を得られない、などという新たな課題が生じ、民間航空機への複合材料の適用は遅れがちとなっているのが現状であった(例えば、特許文献16参照。)。
【0014】
【特許文献1】
特開昭59−47464号公報
【特許文献2】
米国特許第5914002号明細書および図面
【特許文献3】
特開平07−081566号公報
【特許文献4】
米国特許第5809805号明細書および図面
【特許文献5】
米国特許第6096164号明細書および図面
【特許文献6】
特開昭57−133242号公報
【特許文献7】
特開平10−217263号公報
【特許文献8】
特開平09−207236号公報
【特許文献9】
特開2001−073241号公報
【特許文献10】
特開平07−133548号公報
【特許文献11】
特開2002−3280号公報
【特許文献12】
特開昭57−133241号公報
【特許文献13】
特開昭63−120153号公報
【特許文献14】
特開平02−191742号公報
【特許文献15】
特開平10−290851号公報
【特許文献16】
特開2000−328392号公報
【0015】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、前記の問題を解消し、強化繊維を張設し、張設された強化繊維を一体化し、しかも湾曲形状に賦形する際の設計の自由度が高く、製造時間や工数が少なく、廃材料も少ない、従来に比べて安価で繊維のクリンプが無く高密度で高強度の複合材料用ドライプリフォームとその製造方法および製造装置を提供することにある。
【0016】
【課題を解決するための手段】
本発明の複合材料用ドライプリフォームは、任意の形状に適宜に設定された直線軸に平行して任意形状の一部に少なくとも一層以上張設された第一の強化繊維層と、前記直線軸と交わる角度で任意の形状に複数層張設された第二の強化繊維層とによって構成された強化繊維群が一体化され、前記第二の強化繊維層のみで構成される部分が面外方向への変形性を有することを特徴とする複合材料用ドライプリフォームとした(請求項1)。
【0017】
また、本発明の複合材料用ドライプリフォームは、任意の形状に適宜に設定された直線軸に平行して任意形状の一部に少なくとも一層以上張設された第一の強化繊維層と、前記直線軸と交わる角度で任意の形状に複数層張設された第二の強化繊維層とによって構成され、前記第一の強化繊維層および前記第二の強化繊維層が占める範囲を増減させることにより厚みを変化させたことを特徴とする請求項1に記載の複合材料用ドライプリフォームとした(請求項2)。
【0018】
また、本発明の複合材料用ドライプリフォームは、任意の形状に適宜に設定された直線軸に平行して任意形状の一部に少なくとも一層以上張設された第一の強化繊維層と、前記直線軸と交わる角度で任意の形状に複数層張設された第二の強化繊維層とによって構成された強化繊維群が、ステッチング、ニッティング、ニードルパンチのいずれかの方法によって一体化されたことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の複合材料用ドライプリフォームとした(請求項3)。
【0019】
また、本発明の複合材料用ドライプリフォームは、任意の形状に適宜に設定された直線軸に平行して任意形状の一部に少なくとも一層以上張設された第一の強化繊維層と、前記直線軸と交わる角度で任意の形状に複数層張設された第二の強化繊維層とによって構成された強化繊維群が、熱融着樹脂によって一体化されたことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の複合材料用ドライプリフォームとした(請求項4)。
【0020】
また、本発明の複合材料用ドライプリフォームの製造方法は、任意の形状に適宜に設定された直線軸に平行して任意形状の一部に少なくとも一層以上張設された第一の強化繊維層と、前記直線軸と交わる角度で任意の形状に複数層張設された第二の強化繊維層とによって構成された強化繊維群を一体化させる工程と、前記第一の強化繊維層および第二の強化繊維層からなる強化繊維群を同一半径上に湾曲させる工程と、前記第二の強化繊維層のみにて構成される部分を面外方向に変形させて異形断面を有する湾曲形状とする工程とを有することを特徴とする複合材料用ドライプリフォームの製造方法とした(請求項5)。
【0021】
また、本発明の複合材料用ドライプリフォームの製造方法は、任意の形状に適宜に設定された直線軸に平行して任意形状の一部に少なくとも一層以上多列張設された第一の強化繊維層と、前記直線軸と交わる角度で任意の形状に複数層多列張設された第二の強化繊維層とによって構成された強化繊維群を一体化させ、前記第一の強化繊維層を構成する強化繊維の長さを変化させずに任意の形状に変形させ、かつ前記第二の強化繊維層のみにて構成される部分を面外方向に変形させて異形断面を有する湾曲形状とすることを特徴とする請求項5に記載の複合材料用ドライプリフォームの製造方法とした(請求項6)。
【0022】
また、本発明の複合材料用ドライプリフォームの製造方法は、任意の形状に適宜に設定された直線軸に平行して任意形状の一部に少なくとも一層以上張設された第一の強化繊維層と、前記直線軸と交わる角度で任意の形状に複数層張設された第二の強化繊維層とによって構成された強化繊維群を、ステッチング、ニッティング、ニードルパンチのいずれかによって一体化し、前記第一の強化繊維層および第二の強化繊維層からなる強化繊維群を同一半径上に湾曲させ、第二の強化繊維層のみにて構成される部分を面外方向に変形させて異形断面を有する湾曲形状とすることを特徴とする請求項5または請求項6に記載の複合材料用ドライプリフォームの製造方法とした(請求項7)。
【0023】
また、本発明の複合材料用ドライプリフォームの製造方法は、任意の形状に適宜に設定された直線軸に平行して任意形状の一部に少なくとも一層以上張設された第一の強化繊維層と、前記直線軸と交わる角度で任意の形状に複数層張設された第二の強化繊維層とによって構成された強化繊維群を熱融着樹脂によって一体化させ、前記第一の強化繊維層および第二の強化繊維層からなる強化繊維群を同一半径上に湾曲させ、かつ前記第二の強化繊維層のみにて構成される部分を面外方向に変形させて異形断面を有する湾曲形状とすることを特徴とする請求項5または請求項6に記載の複合材料用ドライプリフォームの製造方法とした(請求項8)。
【0024】
また、本発明の複合材料用ドライプリフォームの製造方法は、任意の形状に適宜に設定された直線軸に平行して任意形状の一部に少なくとも一層以上張設された第一の強化繊維層と、前記直線軸と交わる角度で任意の形状に複数層張設された第二の強化繊維層とによって構成された強化繊維群を一体化させ、前記第一の強化繊維層を構成する強化繊維の長さを変化させずに任意の形状に変化させ、かつ前記第二の強化繊維層のみにて構成される部分を面外方向に変形させて異形断面を有する湾曲形状としたものを複数個組み合わせて任意の強化繊維配向とすることを特徴とする請求項5に記載の複合材料用ドライプリフォームの製造方法とした(請求項9)。
【0025】
また、本発明の複合材料用ドライプリフォームの製造装置は、構造材料に用いられる複合材料用ドライプリフォームの製造装置において、前記第一の強化繊維層および前記第二の強化繊維層を張設するために、適宜に設定された一度に張設される強化繊維の本数または列数に対応した強化繊維誘導パイプと、前記強化繊維誘導パイプを固定し間隔を保持するためのバーと、前記強化繊維誘導パイプおよび前記バーを前記直線軸に沿って動作させるための駆動装置または前記バーを前記直線軸に対して角度を持って動作させるための駆動装置と、前記強化繊維誘導パイプに強化繊維を供給するためのクリール装置とを具備することを特徴とする複合材料用ドライプリフォームの製造装置とした(請求項10)。
【0026】
【発明の実施の形態】
以下、本発明に係る複合材料用ドライプリフォーム(以下ドライプリフォームと記す)とその製造方法および製造装置の実施形態について、図面を参照して説明する。
【0027】
図1は本発明によって製造されるドライプリフォームの典型的な形状を図示したものである。図1に示されたドライプリフォーム1は、L型断面を持った湾曲形状を有するもので、後述するL型断面を持った湾曲形状を有する強化繊維群5と強化繊維群6とを一体化して製造されている。その製造方法を以下に説明する。なお、本発明においては、図1に示されたようなL型断面を持った湾曲形状の他に、略U型、I型、Z型、T型などの異形断面を有し、かつ湾曲形状を有するドライプリフォームを製造することが可能である。
【0028】
図2は、図1に示すドライプリフォーム1における、直線軸2に平行して張設された強化繊維層aと直線軸2と交わる角度で張設された強化繊維層bの配置を簡略に示すと共に、その製造方法についての概略を示した斜視図である。図2(A)は強化繊維層aおよび強化繊維層bによって構成される平面状の強化繊維群3を図示している。図2(A)において強化繊維層aは直線軸2に対して平行に強化繊維を配向、張設されているために長手方向への変形性を有しない。そもそも強化繊維層aのような配向の強化繊維は直線軸2の方向に対する強度を得るためのものであるため、直線軸2の方向へは変形しない性質を持っている。また強化繊維層bは必要とする強度に合わせた繊維配向に張設されたものであって、これら強化繊維の配向角度は直線軸2に対して0°<θ<180°の範囲で設けられるのが望ましい。この構成による強化繊維層bは直線軸2の方向に対して変形する性質を有する。本発明の発明者らは上記に示したような強化繊維層aおよび強化繊維層bの変形に関する性質の違いに着目した。
【0029】
上記の強化繊維層aおよび強化繊維層bの性質によれば、強化繊維層aと強化繊維層bの両方が配置されている強化繊維群3全体は図2(B)に図示する強化繊維群4のように平面を同一半径上に変形させることが可能である。そのように変形させられた強化繊維群4において、強化繊維層bのみによって占められる部分はさらに面外方向の変形性を有しているため、図2(C)に図示されている強化繊維群5のような略円筒形状に鍔状のフランジが付いたような形状が得られる。図2(C)に図示されている強化繊維群5は、略円筒形状の面に強化繊維層aが配置され、それに付属した鍔状部分に強化繊維層bが配置されている。
【0030】
図2(D)は図2(C)に図示した強化繊維群5と強化繊維層aの配置が直線軸2に対して対称に配置されている強化繊維群6を示している。すなわち、この強化繊維群6は、略円筒形状の面に強化繊維層bが配置され、それに付属した鍔状部分に強化繊維層aが配置されている。このような強化繊維群5と強化繊維群6を合わせて使用し、一体化することで、図1に示すような繊維配向を持ったドライプリフォーム1が得られる。従来、図1に示すような、異形断面を有しかつ湾曲した形状を持ち、基材全面に軸方向の強化繊維が配置されたドライプリフォーム1を製造するためには、プリプレグ材、クロス材、ニット材、ブレード材などを使用するために非常な手間を要し、充分な強度を実現するためのドライプリフォーム1の製造は高コストであり、困難を伴っていたが、本発明においては強化繊維の配向を工夫したドライプリフォーム1を得ると共に、製造方法および製造装置を工夫することによって工程を簡略化し、直線軸2に平行して張設された強化繊維層aが配置されているために高強度化、低コスト化を実現した。
【0031】
図2に図示した強化繊維群3〜6は、本発明においては図2(A)のような平面の状態で一体化されるのが作業性の点から見てもっとも望ましい。図2(A)〜図2(C)の状態の強化繊維群3〜6をミシンによるステッチングを施して一体化する場合の具体的なステッチング例としては、図3に図示するような形態が挙げられる。図3(A)は図2(A)の強化繊維群3に対してステッチングした部位の状態、図3(B)は図2(B)の強化繊維群4に対してステッチングした部位の状態、図3(C)は図2(C)の強化繊維群5に対してステッチングした部位の状態を表わしている。この場合のステッチングに用いられる繊維dとしては、炭素繊維やアラミド繊維、ポリエステル繊維など適用できる種類の繊維ならどの種類でも使用できる。ステッチング自体の形態としては、図3に図示したような直線的な縫い方でも良いが、所望するドライプリフォームの厚みが厚い場合や変形の度合いが大きい場合などは、縫製加工技術として一般に知られている伸縮性を持った図4に示すようなジグザグ状のステッチングなどを採用することもできる。機械によるステッチングやニッティングは効率良く、規則正しく強化繊維群を一体化できる方法であり、強化繊維群を一体化する工程を簡便かつ迅速にするための有効な手段の一つである。また、図2(A)の強化繊維群3に対してニードルパンチを施すことによっても同様に効率良く一体化工程を行うことができる。また、図2(A)の状態で熱融着樹脂を使用し、ホットプレスを行い一体化させる方法も可能である。強化繊維群に熱融着樹脂を含ませる方法としては、繊維状の熱融着樹脂を強化繊維と引き揃えて使用することが本発明においてはもっとも一般的である。この方法によっても同様に効率良く一体化工程を行うことができる。
【0032】
次に、本発明に係るドライプリフォームの製造装置について説明する。図5は図2(A)の状態の強化繊維群3を製造するための強化繊維張設治具7の斜視図である。強化繊維張設治具7上には強化繊維の張設ピッチに応じて起立する多数のピン8が設置されている。図5に図示された強化繊維張設治具7に強化繊維を張設するのであるが、その一例を模式的に示したのが図6である。図6において強化繊維cはP1より張設の動作に入り、P2のピン8へと張設し、その後P3のピン8へと張設される。その後、P3のピン8からP4のピン8へ張設し、さらにP5のピン8へと張設する。このような強化繊維cの張設方法によれば、V字状を描いて強化繊維cを張設するため、図6に示すような強化繊維c1本による張設作業だけではなく、図7に図示されるように任意の張設範囲eの幅で複数本の強化繊維cを同時に張設する多列張設にて行うこともできる。強化繊維cの張設範囲eは任意形状の長手方向のすべてに渡る長さのものにしても良い。その場合に、強化繊維cの張設範囲eが長手方向の長さのうちに多数存在していても良いし、状況に応じて適宜に設定されればよい。このように、強化繊維の張設作業を多列化することで1本の強化繊維による張設作業よりも時間を大幅に短縮することができる。図6および図7において図示した例は+45°方向と−45°方向という極めて典型的な繊維配向について示したが、この繊維配向角度θは0°<θ<180°の範囲で変化させることができる。
【0033】
また、図8に示すような直線軸2に平行に配向された強化繊維cを張設する際においては、図9に図示する強化繊維張設装置を使用する。この強化繊維張設装置には、張設範囲c´の強化繊維の列数に応じた強化繊維誘導パイプ9と、それを固定し間隔を保持するためのバー10が任意形状に設定された直線軸2に対して平行に稼動する可動部分11に固定されている。可動部分11は駆動装置12によって動作させられて、ガイドレール13上を直線軸2の方向に移動する。可動部分11には強化繊維cが巻かれたボビン14を多数備えたクリール装置部15が側設されている。クリール装置部15より繰り出された強化繊維cはガイド16、17を通過して可動部分11が移動している間は随時強化繊維cをピン8に張設する作業を行う。このような装置を使用することによって長手方向の強化繊維の張設作業を効率良く行うことができる。
【0034】
また、図7に図示されているような直線軸2に対して0°<θ<180°の角度を持って張設される強化繊維cは、図10に図示されるような強化繊維張設装置を使用する。この強化繊維張設装置は、ピン8の間隔に応じた強化繊維誘導パイプ9を持ち、その強化繊維誘導パイプ9を固定し、間隔を保持するためのバー10を持ち、さらに前記強化繊維誘導パイプ9とバー10を直線軸2に対して0°<θ<180°の角度を持って動作するように駆動させるための駆動装置18を備えている。駆動装置18は、例えば図11の矢印のような動作が可能であり、必要とされる強化繊維の配向を得ることができる。強化繊維誘導パイプ9が図7の幅eの範囲で配置されていれば、幅eの範囲の強化繊維cを同時にピン8に張設することができる。
【0035】
また、図12においては、強化繊維張設治具7における、強化繊維層bを多列張設した際の強化繊維群における端部の様子について図示したものである。複数の強化繊維cを同時に張設する多列張設を行う場合には、図12(A)におけるeの範囲がピン8に張設されないなどといった事態が起こるが、こうした場合にはボビン14を張設時に回転する方向とは反対の方向へと反転させる動きを行う駆動装置を設置することによって、図12(B)のように強化繊維cを引き戻してやることができ、強化繊維cの張設作業をスムーズに進めることができる。
【0036】
また、直線軸2に平行に配向された強化繊維cを張設する範囲と、直線軸2に角度を持って交わるように配向された強化繊維cを張設する範囲の任意形状における面積を変化させて任意形状に傾斜部をつけることも可能である。この場合はもっとも下段にくる強化繊維層をもっとも広い範囲で張設してやり、その上に張設された複数の強化繊維層が任意形状において占める割合を漸次減らしていった場合は、ほぼ連続的に厚み形状が変化したドライプリフォームが得られるし、任意形状の一部分に凸部を必要とする場合においては、その部分における強化繊維層の数を適宜の強化繊維配向にて増やしてやることによって可能となる。本発明の発明者らはこのような厚み変化の方法は、従来の方法に比較して大幅に低コスト化できることを実験によって確認した。
【0037】
図9および図10に図示される強化繊維張設装置を併せて使用することで、より効率良く強化繊維cの張設を行うことができる。本発明におけるドライプリフォーム1は、図9および図10の装置を併せて使用することによって、従来に比べて遥かに短時間のうちに良質のプリフォームを製造できることを、発明者らは実験によって確認した。
【0038】
【発明の効果】
本発明の複合材料用ドライプリフォームは、前述の如く、任意形状に適宜に設定された直線軸に平行して張設された第一の強化繊維層と、前記直線軸と交わる角度で張設された第二の強化繊維層とによってなる強化繊維群で構成されるので、前記直線軸と交わる角度で張設された第二の強化繊維層のみで構成される部分が変形性を有する複合材料用ドライプリフォームとしたので、従来に比べて簡便な工程で異形断面を持ち、湾曲した構造材料に用いられる低コストな複合材料用ドライプリフォームが得られる。
【0039】
また、本発明の複合材料用ドライプリフォームの製造方法は、構造材料に用いられる複合材料用ドライプリフォームの製造方法において、任意の形状に適宜に設定された直線軸に平行して任意形状の一部に少なくとも一層以上張設された第一の強化繊維層と前記直線軸と交わる角度で任意の形状に複数層張設された強化繊維群とを一体化させる工程と、前記第一の強化繊維層を構成する強化繊維の長さを変化させずに任意の形状に変形させる工程と、かつ前記第二の強化繊維層のみにて構成される部分を面外方向に変形させて異形断面を有する湾曲形状とする工程とを有することを特徴とする複合材料用ドライプリフォームの製造方法としたので、従来のように複雑な工程を経る必要が無く、低コストで高強度の複合材料用ドライプリフォームを簡便に得ることができる。本発明にて述べられている方法は従来困難とされていた、異形断面を有する湾曲形状を持った構造材料に用いられる複合材料用ドライプリフォームを工業的に大量生産できる製造方法である。
【0040】
また、本発明の複合材料用ドライプリフォームの製造装置は、構造材料に用いられる複合材料用ドライプリフォームの製造装置において、前記第一の強化繊維層および前記第二の強化繊維層を張設するために、適宜に設定された一度に張設される強化繊維の本数または列数に対応した強化繊維誘導パイプと、前記強化繊維誘導パイプを固定し間隔を保持するためのバーと、前記強化繊維誘導パイプおよび前記バーを前記直線軸に沿って動作させるための駆動装置または前記バーを前記直線軸に対して角度を持って動作させるための駆動装置と、前記強化繊維誘導パイプに強化繊維を供給するためのクリール装置とを具備することを特徴とする複合材料用ドライプリフォームの製造装置としたため、任意の形状に適宜に設定された直線軸に平行して任意形状の一部に少なくとも一層以上張設された強化繊維層を非常に効率良く製造できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施形態に係る複合材料用ドライプリフォームの概略斜視図である。
【図2】(A)は図1の構成の複合材料用ドライプリフォームとなる前の状態における平面状の強化繊維群の概略斜視図、(B)は(A)の強化繊維群を同一半径上で変形させた強化繊維群の概略斜視図、(C)は(B)の強化繊維群の一部を面外方向に変形させた強化繊維群の概略斜視図、(D)は図1の形状の複合材料用ドライプリフォームを製造するために必要な(C)の強化繊維群とは対称的な強化繊維配向を持った強化繊維群の概略斜視図である。
【図3】(A)は図2(A)の強化繊維群に対してステッチングを施した際の概略斜視図、(B)は図2(B)の強化繊維群に対してステッチングを施した際の概略斜視図、(C)は図2(C)の強化繊維群に対してステッチングを施した際の概略斜視図である。
【図4】本発明の実施形態に係る複合材料用ドライプリフォームに対するジグザグ状のステッチングの概略平面図である。
【図5】本発明の実施形態における強化繊維張設用のピン付き治具の簡略的な斜視図である。
【図6】本発明の実施形態における強化繊維張設の様子を示した簡略な平面図である。
【図7】本発明の実施形態における典型的な強化繊維の張設方法を簡略に示した平面図である。
【図8】本発明の実施形態における典型的な強化繊維の張設方法を簡略に示した平面図である。
【図9】本発明の実施形態における強化繊維張設装置の簡略な側面図である。
【図10】本発明の異なる実施形態における強化繊維張設装置の簡略な側面図である。
【図11】本発明の実施形態における強化繊維張設装置の動作方向を表した平面図である。
【図12】(A)は本発明の実施形態に係る強化繊維張設治具端部における強化繊維張設の様子を表した平面図、(B)は(A)の状態から強化繊維を引き戻した強化繊維張設治具端部における強化繊維張設の様子を表した平面図である。
【符号の説明】
1 複合材料用ドライプリフォーム
2 直線軸
3、4、5、6 強化繊維群
7 強化繊維張設治具
8 ピン
9 強化繊維張設装置における強化繊維誘導パイプ
10 バー
11 可動部分
12 駆動装置
13 ガイドレール
14 ボビン
15 クリール部
16、17 ガイド
a 強化繊維が直線軸に平行して張設された第一の強化繊維層
b 強化繊維が直線軸と交わる角度で張設された第二の強化繊維層
c 強化繊維
d ジグザグ状のステッチング
e 強化繊維の張設範囲
P1、P2、P3、P4、P5 強化繊維の張設ポイント

Claims (10)

  1. 構造材料に用いられる複合材料用ドライプリフォームにおいて、任意の形状に適宜に設定された直線軸に平行して任意形状の一部に少なくとも一層以上張設された第一の強化繊維層と、前記直線軸と交わる角度で任意の形状に複数層張設された第二の強化繊維層とによって構成された強化繊維群が一体化され、前記第二の強化繊維層のみで構成される部分が面外方向への変形性を有することを特徴とする複合材料用ドライプリフォーム。
  2. 構造材料に用いられる複合材料用ドライプリフォームにおいて、任意の形状に適宜に設定された直線軸に平行して任意形状の一部に少なくとも一層以上張設された第一の強化繊維層と、前記直線軸と交わる角度で任意の形状に複数層張設された第二の強化繊維層とによって構成され、前記第一の強化繊維層および前記第二の強化繊維層が占める範囲を増減させることにより厚みを変化させたことを特徴とする請求項1に記載の複合材料用ドライプリフォーム。
  3. 構造材料に用いられる複合材料用ドライプリフォームにおいて、任意の形状に適宜に設定された直線軸に平行して任意形状の一部に少なくとも一層以上張設された第一の強化繊維層と、前記直線軸と交わる角度で任意の形状に複数層張設された第二の強化繊維層とによって構成された強化繊維群が、ステッチング、ニッティング、ニードルパンチのいずれかの方法によって一体化されたことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の複合材料用ドライプリフォーム。
  4. 構造材料に用いられる複合材料用ドライプリフォームの製造方法において、任意の形状に適宜に設定された直線軸に平行して任意形状の一部に少なくとも一層以上張設された第一の強化繊維層と、前記直線軸と交わる角度で任意の形状に複数層張設された第二の強化繊維層とによって構成された強化繊維群が、熱融着樹脂によって一体化されたことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の複合材料用ドライプリフォーム。
  5. 構造材料に用いられる複合材料用ドライプリフォームの製造方法において、任意の形状に適宜に設定された直線軸に平行して任意形状の一部に少なくとも一層以上張設された第一の強化繊維層と、前記直線軸と交わる角度で任意の形状に複数層張設された第二の強化繊維層とによって構成された強化繊維群を一体化させる工程と、前記第一の強化繊維層および第二の強化繊維層からなる強化繊維群を同一半径上に湾曲させる工程と、前記第二の強化繊維層のみにて構成される部分を面外方向に変形させて異形断面を有する湾曲形状とする工程とを有することを特徴とする複合材料用ドライプリフォームの製造方法。
  6. 構造材料に用いられる複合材料用ドライプリフォームの製造方法において、任意の形状に適宜に設定された直線軸に平行して任意形状の一部に少なくとも一層以上多列張設された第一の強化繊維層と、前記直線軸と交わる角度で任意の形状に複数層多列張設された第二の強化繊維層とによって構成された強化繊維群を一体化させ、前記第一の強化繊維層および第二の強化繊維層からなる強化繊維群を同一半径上に湾曲させ、前記第二の強化繊維層のみにて構成される部分を面外方向に変形させて異形断面を有する湾曲形状とすることを特徴とする請求項5に記載の複合材料用ドライプリフォームの製造方法。
  7. 構造材料に用いられる複合材料用ドライプリフォームの製造方法において、任意の形状に適宜に設定された直線軸に平行して任意形状の一部に少なくとも一層以上張設された第一の強化繊維層と、前記直線軸と交わる角度で任意の形状に複数層張設された第二の強化繊維層とによって構成された強化繊維群を、ステッチング、ニッティング、ニードルパンチのいずれかによって一体化し、前記第一の強化繊維層および第二の強化繊維層からなる強化繊維群を同一半径上に湾曲させ、第二の強化繊維層のみにて構成される部分を面外方向に変形させて異形断面を有する湾曲形状とすることを特徴とする請求項5または請求項6に記載の複合材料用ドライプリフォームの製造方法。
  8. 構造材料に用いられる複合材料用ドライプリフォームの製造方法において、任意の形状に適宜に設定された直線軸に平行して任意形状の一部に少なくとも一層以上張設された第一の強化繊維層と、前記直線軸と交わる角度で任意の形状に複数層張設された第二の強化繊維層とによって構成された強化繊維群を熱融着樹脂によって一体化させ、前記第一の強化繊維層および第二の強化繊維層からなる強化繊維群を同一半径上に湾曲させ、前記第二の強化繊維層のみにて構成される部分を面外方向に変形させて異形断面を有する湾曲形状とすることを特徴とする請求項5または請求項6に記載の複合材料用ドライプリフォームの製造方法。
  9. 構造材料に用いられる複合材料用ドライプリフォームの製造方法において、任意の形状に適宜に設定された直線軸に平行して任意形状の一部に少なくとも一層以上張設された第一の強化繊維層と、前記直線軸と交わる角度で任意の形状に複数層張設された第二の強化繊維層とによって構成された強化繊維群を一体化させ、前記第一の強化繊維層および第二の強化繊維層からなる強化繊維群を同一半径上に湾曲させ、前記第二の強化繊維層のみにて構成される部分を面外方向に変形させて異形断面を有する湾曲形状としたものを複数個組み合わせて任意の強化繊維配向とすることを特徴とする請求項5に記載の複合材料用ドライプリフォームの製造方法。
  10. 構造材料に用いられる複合材料用ドライプリフォームの製造装置において、前記第一の強化繊維層および前記第二の強化繊維層を張設するために、適宜に設定された一度に張設される強化繊維の本数または列数に対応した強化繊維誘導パイプと、前記強化繊維誘導パイプを固定し間隔を保持するためのバーと、前記強化繊維誘導パイプおよび前記バーを前記直線軸に沿って動作させるための駆動装置または前記バーを前記直線軸に対して角度を持って動作させるための駆動装置と、前記強化繊維誘導パイプに強化繊維を供給するためのクリール装置とを具備することを特徴とする複合材料用ドライプリフォームの製造装置。
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