JP2004273870A - 積層型光電変換素子の測定方法および装置 - Google Patents

積層型光電変換素子の測定方法および装置 Download PDF

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Abstract

【課題】積層型光電変換素子の電流電圧特性を正確に測定できる方法および装置を提供する。
【解決手段】基準太陽光に疑似した光に、積層型光電変換素子を構成する各コンポーネントセルの分光感度が極大となる波長λ(Qmax,n)に対し、±15%以内の波長に、輝線を除いた光強度の極大値あるいは極小値を持ち、かつ輝線を除いた光強度変化の半値幅が、各コンポーネントセルの分光感度の波長に対する変化の半値幅以下である、各コンポーネントセルの数に対応した数の重畳光を付加し、前記各重畳光の光強度を調整することによって、各コンポーネントセル内で発生する光電流を調整した後、電流電圧特性を測定する。
【選択図】 図1

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、太陽電池、光起電力素子、光センサーなどの光電変換素子、特に2つ以上のコンポーネントセルを含む積層型光電変換素子の電流電圧特性を光照射下で測定する測定方法および測定装置に関する。なお、本発明では、積層型光電変換素子を直列あるいは並列に接続して作成した光電変換装置も、積層型光電変換素子に含める。また、本発明において、コンポーネントセルとは、積層型光電変換素子を構成する、積層された半導体接合の一つ一つを指す。
【0002】
【従来の技術】
分光感度の異なる光電変換素子を複数積層した積層型の光電変換素子は、光入射側の光電変換素子で吸収しきれなかった長波長光を逆側の光電変換素子で吸収することによって、光電変換素子を高出力化または高感度化することができる。そのため、このような積層型光電変換素子は、盛んに開発されている。
【0003】
ところで、積層型光電変換素子の出力特性を正確に測定することは、以下のような理由から非常に重要である。
【0004】
例えば、最大出力が重要な積層型光電変換素子を製造して出荷する場合、検査において最大出力が定格値に満たないものは不良品とするが、正確な出力測定ができなければ、出荷する積層型光電変換素子の最大出力を保証することができない。また、出力測定の誤差が大きく測定装置の状態によって変化すると、同じ品質の積層型光電変換素子を製造していても、検査のしきい値が変化してしまうので、製造の歩留まりが不安定になってしまう。さらに、出荷品の品質を保証するため、出力測定の誤差分を検査のしきい値に上乗せすると、製造の歩留まりが低下してしまう。また、上記積層型光電変換素子を利用したシステムを構築する場合、積層型光電変換素子の出力を正確に予測できないと、システム全体の誤差が大きくなったり、システムの効率が低下したりする。
【0005】
具体的には、例えば太陽電池の場合、積層型太陽電池の最大出力の保証、製造の歩留まり、積層型太陽電池を用いた発電システムの発電予測、システム効率などに大きな影響が出る。
【0006】
しかしながら、積層型光電変換素子の出力特性を正確に測定することは、非常に困難であった。
【0007】
前記の正確な出力測定が困難である理由の最たるものは、照射する光のスペクトルによって、積層型光電変換素子の出力特性が大きく変化するからである。
【0008】
具体的には、例えば2つの半導体接合を積層し直列に接続したダブル型太陽電池(以下、ダブルセルと略記する。)の場合について説明する。光入射側の半導体接合をトップセル、逆側の半導体接合をボトムセルとした場合、それぞれのセルの短絡電流は、セルの分光感度が異なるため、照射する光のスペクトルによって変化する。その結果、ダブルセル全体の短絡電流と曲線因子と開放電圧が変化して、ダブルセルの出力特性が大きく変化してしまう。
【0009】
これに対し、単一の半導体接合からなる単層型太陽電池(以下、シングルセルと略記する。)の場合、照射する光のスペクトルによって変化するのは、短絡電流であり、曲線因子と開放電圧にはほとんど影響を受けないので、短絡電流のスペクトルによる影響を補正すれば、ほぼ正確な出力特性を測定することができる。
【0010】
以上のように、積層型光電変換素子の出力特性は、照射する光のスペクトルに対し敏感である。
【0011】
一般に、光電変換素子の出力特性を正確に測定するためには、照射する光の強度とスペクトルと光電変換素子の温度等の試験条件を規定する必要がある。例えば、太陽電池の場合は、このような試験条件は、基準状態(Standard Test Condition、STCと略記されることがある。)として、JIS C 8960に以下のように規定されている。
太陽電池の温度:25℃
照射する光のスペクトル:基準太陽光
(基準太陽光のスペクトルは、JIS C 8911に規定されている。)
照射する光の放射照度:1000W/m
【0012】
屋外において基準太陽光の得られる条件で光電変換素子の出力特性を測定する方法は、基準太陽光法と呼ばれ、積層型光電変換素子であっても正確な測定が可能である。しかしながら、以上の基準状態の内、基準太陽光のスペクトルを得ることは、屋外で太陽光を用いても、非常に困難である。基準太陽光の得られる気象条件は、非常に限られるからである。例えば、日本で基準太陽光の得られる気象条件は、年間数日しかないと言われている。したがって、基準太陽光法は、正確な測定が可能であるもののその実施は非常に困難であり、測定頻度が極端に少ないことから実用性に問題がある。
【0013】
一方、屋内で擬似太陽光照射装置を用いる場合には、擬似太陽光照射装置のスペクトルの、基準太陽光のスペクトルとの違いが大きいため、エアマスフィルタ等で擬似太陽光照射装置のスペクトルを調整しても、基準太陽光のスペクトルを得るのは、事実上不可能である。
【0014】
ところで、シングルセルの場合は、擬似太陽光照射装置(ソーラシミュレータ)を、スペクトルと放射照度の場所むら、時間変動率によって、基準太陽光に近い状態から順にA、B、Cに等級分けしており(JIS C 8912、JISC 8933に記載されている。)、等級AまたはBのソーラシミュレータ用い、被測定太陽電池と分光感度の近い二次基準太陽電池を用いて、ソーラシミュレータの放射照度を設定することによって、スペクトルのずれによる誤差を補正している。(JIS C 8913、JIS C 8934に記載されている。)この方法は、シングルセルの場合、スペクトルの影響がほぼ短絡電流のみであるから可能である。
【0015】
しかしながら、積層型太陽電池の場合は、スペクトルの影響が短絡電流のみならず曲線因子と開放電圧にも及ぶので、上述の方法では、出力特性を正確に測定することができない。そのため、上述のJIS規格の適用範囲から、積層型太陽電池は除外されている。
【0016】
そこで、積層型太陽電池を正確に測定する方法として、以下のような技術が開示されている。
【0017】
それは、積層型太陽電池を測定するときのソーラシミュレータによる照射光スペクトルを調整可能にし、照射光スペクトルを調整することによって、ソーラシミュレータによる照射光の下で、積層型光電変換素子を構成する各コンポーネントセルが発生する各短絡電流値を、基準太陽光の下で発生するであろう各コンポーネントセルの各短絡電流値に一致させることによって、積層型太陽電池が基準太陽光の下で発生すると推定される短絡電流と曲線因子の値を得て、出力特性を正確に測定する技術である(非特許文献1)。この測定技術を以下、マルチソース法と呼ぶ。
【0018】
すなわち、積層型太陽電池を構成する各コンポーネントセルが、積層型太陽電池の内部で、基準太陽光の下で発生する短絡電流をIn,ref(nは各コンポーネントセルの番号)とし、ソーラシミュレータによる照射光の下で発生する短絡電流をIn,testとすれば、各コンポーネントセルに対し、
In,test=In,ref …#1
となるようにソーラシミュレータのスペクトルを調整することによって、積層型太陽電池の短絡電流と曲線因子が基準太陽光の下での値に一致すると推定されるものである。
【0019】
前述の測定技術において前提となっているのは、スペクトルを調整できるソーラシミュレータを用いていることである。各コンポーネントセルの短絡電流を調整するため、前述の非特許文献1においては、Xeランプ1つと、ハロゲンランプ2つを用い、3つの光源の光をフィルタによって3つの波長帯域に分けた後、合成している。そして3つの光源の放射照度をそれぞれ調整することで、3つの波長帯域の光強度を制御して合成された光のスペクトルを調整している。このように複数の光源の光を合成して用いる擬似太陽光照射装置を多灯式擬似太陽光照射装置と呼ぶことにする。
【0020】
前述の多灯式擬似太陽光照射装置によれば、複数の光源の発生する光の内、それぞれ一部の波長領域の光のみを選択して用いているため、非選択波長領域の光は捨てることになり、通常のソーラシミュレータに比べて、光源のエネルギーロスが大きく、使用電力量が大幅に増大する。
【0021】
また、複数の光源を配置する構造と、ダイクロイックミラー等の波長選択および光合成用の光学部品を必要とすることから、擬似太陽光照射装置が、複雑化、大型化、高額化する。
【0022】
また、光源によって、照射面の照度の場所むらが異なる問題がある。また、光源ごとに照射光の光量をフィードバックして制御する必要があるので、装置の制御が複雑で困難になる。
【0023】
このような問題点は、積層型光電変換素子を構成するコンポーネントセルの個数が増えるほど、加速的に増大する。
【0024】
また、測定する積層型光電変換素子の種類が異なり、コンポーネントセルの数が増えると、光源の数も増やす必要があり、事実上、擬似太陽光照射装置を最初から設計し直す必要がある。また、コンポーネントセルの個数が同じであっても、異なる種類の積層型光電変換素子を測定する場合は、分光感度が大幅に異なるので、前記光の波長を選択および合成する光学部品を全て設計し直す必要がある。このように、多灯式擬似太陽光照射装置は、測定する積層型光電変換素子の種類に応じた汎用性に欠けるという問題点がある。
【0025】
このような多灯式擬似太陽光照射装置に対し、特許文献1に、単一の光源から放射される光の光路の一部に、所定波長の光を透過するフィルタを配し、該フィルタを透過した光と該フィルタを透過しなかった光を合成する擬似太陽光照射装置の技術が開示されている。この技術によれば、所定波長の光を透過するフィルタに遮蔽板を設けて、遮蔽板の開度を調整することによって、あるいは、該フィルタを光路に挿入する挿入量を調整することによって、所定波長の光強度を調整することができる。それによって、合成された照射光のスペクトルを調整することができる。このような擬似太陽光照射装置をフィルタ重畳光式擬似太陽光照射装置と呼ぶことにする。
【0026】
フィルタ重畳光式擬似太陽光照射装置によれば、光源は単一なので、多灯式擬似太陽光照射装置の問題点の内、光源ごとの光量制御が困難である問題と、照度の場所むらの制御が困難である問題と、複数の光源を用いることによる装置の大型化の問題は解決される。
【0027】
【特許文献1】
特許第2892132号公報
【非特許文献1】
T.Glatfelter and J.Burdick, 19th IEEE Photovoltaic Specialists Conference,(1987)p1187−1193
【0028】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、特許文献1に開示された技術は、擬似太陽光照射装置の技術であり、この擬似太陽光照射装置を用いて、積層型光電変換素子の電流電圧特性を測定する測定方法の技術は開示されていない。すなわち、スペクトル可変な擬似太陽光照射装置の一つの技術が開示されているに過ぎない。
【0029】
また、前記所定波長の光を透過するフィルタとして、どのような透過率スペクトルを持つものが好適であるかは、全く記載されておらず不明であった。
【0030】
本発明の目的は、上述した問題点を解決し、積層型光電変換素子の電流電圧特性を正確に測定できる方法および装置を提供することにある。
【0031】
【課題を解決するための手段】
本発明者は、検討の結果、以下の構成による積層型光電変換素子の測定方法および測定装置によって、前述の目的を達成できた。
【0032】
すなわち、少なくとも2つ以上のコンポーネントセルを含む積層型光電変換素子の電流電圧特性の測定方法に於いて、基準太陽光に疑似した光に、前記各コンポーネントセルの分光感度が極大となる波長に対し、±15%以内の波長に、輝線を除いた光強度の極大値あるいは極小値を持ち、かつ輝線を除いた光強度変化の半値幅が、前記各コンポーネントセルの分光感度の波長に対する変化の半値幅以下である、前記各コンポーネントセルの数に対応した数の重畳光を付加し、前記各重畳光の光強度を調整することによって、前記各コンポーネントセル内で発生する光電流を調整した後、電流電圧特性を測定することを特徴とする積層型光電変換素子の電流電圧特性の測定方法である。
【0033】
ここで、例えば、前記各重畳光の輝線を除いた光強度変化の半値幅が、120nm以上であることが好ましい。
【0034】
ここで、例えば、前記各重畳光は、前記各コンポーネントセルの分光感度が極大となる波長に対し、輝線を除いて±15%以内の波長に光強度の極小値を持つことが好ましい。
【0035】
上記目的を達成するための本発明に係る積層型光電変換素子の測定装置は、以下の構成を有する。
【0036】
すなわち、単一の光源と、透過光が基準太陽光のスペクトルに疑似させるように透過率を調整したエアマスフィルタを有する擬似太陽光照射装置において、単一の光源により所定の方向に放射される光が、該エアマスフィルタを透過するように配置し、所定の方向に放射される光の光路の一部に重畳用フィルタを配置し、該重畳用フィルタを通過した光と、該重畳用フィルタを通過しなかった光を合成する積分光学系を有し、前記重畳用フィルタは、積層型光電変換素子を構成する各コンポーネントセルの分光感度の極大波長に対し、±15%以内の波長に透過率の極大値あるいは極小値を持ち、かつ透過率の波長に対する変化の半値幅が前記各コンポーネントセルの分光感度の波長に対する変化の半値幅以下であることを特徴とする擬似太陽光照射装置である。
【0037】
ここで、例えば、前記重畳用フィルタは、透過率の波長に対する変化の半値幅が120nm以上であることが好ましい。
【0038】
ここで、例えば、前記重畳用フィルタの波長に対する透過率の変化率が、透過率の極大値あるいは極小値に至る変化幅の半値にあたる透過率を示す波長における変化率の絶対値で、0.2%/nm以上、2%/nm以下であることが好ましい。
【0039】
ここで、例えば、前記重畳用フィルタは、極小値を含む所望の波長領域に渡って透過率が下がっており、所望の波長領域以外で、積層型光電変換素子の感度のある波長領域では、70%以上の透過率を有することが好ましい。
【0040】
ここで、例えば、前記重畳用フィルタは、少なくともその一部が多層膜からなることが好ましい。
【0041】
【発明の実施の形態(実施態様例)】
以下、本発明をさらに詳細に説明する。
【0042】
図1は、本発明の測定装置の一例である擬似太陽光照射装置のn番目の重畳用フィルタの一例と積層型光電変換素子のn番目のコンポーネントセルの分光感度の一例の関係を模式的に説明する説明図である。図1において、101は、n番目のコンポーネントセルの分光感度Q(λ)のグラフ、102は、n番目の重畳用フィルタの透過率T(λ)のグラフである。
【0043】
また、図1における各記号は、それぞれ、以下の意味を示す。
Qmax,n:n番目のコンポーネントセルの分光感度の最大値
Tmin,n:n番目の重畳用フィルタの透過率の極小値
λ(Qmax,n):n番目のコンポーネントセルの分光感度の最大値の波長 (nm)
λ(Tmin,n):n番目の重畳用フィルタの透過率の極小値の波長(nm)
Δλ(Qn):n番目のコンポーネントセルの分光感度の波長変化の半値幅(nm)
Δλ(Tn):n番目の重畳用フィルタの透過率の波長変化の半値幅(nm)
Tslope,n:n番目の重畳用フィルタの透過率の、波長変化の半値の波 長における変化率
【0044】
以下、図1の例を用いて、本発明の擬似太陽光照射装置の一例および積層型光電変換素子の電流電圧特性の測定方法の一例について述べる。
【0045】
まず、本発明の擬似太陽光照射装置の重畳用フィルタの一例の作成手順を図2のフローチャートに示したので、該フローチャートに沿って説明する。
【0046】
まず、図2のステップS010において、予め、測定する積層型光電変換素子の代表的特性を持つサンプルを準備しておく。ここで、積層型光電変換素子のサイズが大きすぎて分光感度が測定できない場合は、同じ条件で作成した、小面積のサンプルを用いても良い。
【0047】
次に、ステップS110において、前記代表サンプルのn番目のコンポーネントセルの分光感度Qn(λ)を測定する。このとき、分光感度の測定は、以下のような、公知の分光感度測定方法によって行われる。すなわち、n番目のコンポーネントセルが、積層型光電変換素子全体の電流を律速するように、n番目のコンポーネントセルの感度波長領域の光強度のみが著しく不足したバイアス光をサンプルに照射した状態で、単色光をチョッピングしながらサンプルに照射し、単色光の波長を掃引しながら、サンプルの出力電流の変化を検出することによって、測定される。
【0048】
次に、ステップS120において、前記分光感度の測定データから、n番目のコンポーネントセルの分光感度の最大値の波長(λ(Qmax,n))と波長に対する変化の半値幅(Δλ(Qn))のデータを取得する。
【0049】
次に、ステップS130において、n番目のコンポーネントセルに対応する、n番目の重畳用フィルタの透過率の極小値の波長(λ(Tmin,n))と透過率の波長に対する変化の半値幅(Δλ(Tn))を前記λ(Qmax,n)とΔλ(Qn)に基づいて設計する。
【0050】
次に、ステップS140において、前記設計に基づいて、n番目の重畳用フィルタの材料と製法を選択し、透過率T(λ)の値をシミュレーション計算で求める。
【0051】
次に、ステップS150において、設計した重畳用フィルタの透過率が、以下の式#2〜式#4を満たすかどうかを、ステップS140で計算したシミュレーション結果に基づいてチェックする。
Figure 2004273870
【0052】
その結果、前記式#2〜式#4を満たす場合は、次のステップS160に進み、満たさない場合は、ステップS130に戻って、設計をやり直す。
【0053】
次に、ステップS160において、n番目の重畳用フィルタを前記設計に基づいて製作し、製作した重畳用フィルタの透過率を測定する。
【0054】
次に、ステップS170において、製作した重畳用フィルタの透過率が、前記式#2〜式#4を満たすかどうかをチェックする。このステップは、重畳用フィルタの製作が、前記ステップの設計通りにできたかどうかをチェックするためのものである。その結果、前記式#2〜式#4を満たす場合は、n番目の重畳用フィルタの製作が終了し、満たさない場合は、ステップS160に戻って、製作をやり直す。
【0055】
以上の工程によって、本発明の擬似太陽光照射装置の最も重要な部品である重畳用フィルタを製作することができる。
【0056】
次に、本発明の積層型光電変換素子の電流電圧特性の測定方法による測定手順の一例を、図3のフローチャートに示したので、該フローチャートに沿って説明する。
【0057】
まず、図3のステップS200において、予め、測定する積層型光電変換素子の種類に応じて、各コンポーネントセルに応じた重畳光を調整して、照射光のスペクトルを調整できる擬似太陽光照射装置を準備しておく。例えば、図2のフローチャートに従って作成した重畳用フィルタを備え、該重畳用フィルタを透過する光強度を調整することのできる擬似太陽光照射装置が好適に用いられる。
【0058】
次に、ステップS210において、重畳光を重畳させない状態で、後述する基準デバイスによって、照射光の照度を、1000W/mに調整する。このステップは、擬似太陽光照射装置による照射光の照度を、まず大まかに調整するためのものである。
【0059】
次に、ステップS220において、積層型光電変換素子を構成する各コンポーネントセルについて、前述の式#1を満たすかどうかチェックする。式#1を満たす場合は、ステップS260に進み、満たさない場合は、ステップS230に進む。ここで、n番目のコンポーネントセルが、照射光の下で発生する短絡電流In,testは、n番目のコンポーネントセルに対応する基準セルによって測定する。基準セルについては、後に詳述する。式#1を満たすことは、全てのコンポーネントセルについて、照射光の下で発生する短絡電流が、基準太陽光の下で発生する短絡電流に等しいことを意味する。この時点では、照射光に重畳光が合成されていないので、前述の式#1を満たすことは、照射光のスペクトルのバランスが非常に良いことを意味し、希である。なお、式#1において、In,testは、In,refに対し、In,testの測定値の不確かさの範囲内で一致すれば、一致すると見なして良い。
【0060】
次に、ステップS230において、各コンポーネントセルについて、次の式#5を満たすかどうかチェックする。
In,test<In,ref …#5
【0061】
ここで、式#5を満たす場合は、ステップS240に進み、式#5を満たさない場合は、ステップS250に進む。
【0062】
ステップS240に進む場合、照射光のスペクトルで、n番目のコンポーネントセルの分光感度がある波長領域の光が不足していることを示す。そこで、In,testが増大するように、n番目のコンポーネントセルに対応する重畳光の光強度を増大させる。
【0063】
ステップS250に進む場合、照射光のスペクトルで、n番目のコンポーネントセルの分光感度がある波長領域の光が過剰であることを示す。そこで、In,testが減少するように、n番目のコンポーネントセルに対応する重畳光の光強度を減少させる。
【0064】
次に、ステップS240に進んだ場合も、ステップS250に進んだ場合も、ステップS220に戻り、各コンポーネントセルについて、前述の式#1を満たすかどうかチェックする。
【0065】
そして、以上のステップS220、S230、S240、またはS220、S230、S250のループを、ステップS220が満たされるまで続ける。これは、すなわち、n個のコンポーネントセル全てについて、照射光の下で発生する短絡電流が、基準太陽光の下で発生する短絡電流に等しくなるように、重畳光の強度調整によって照射光のスペクトルを調整することを意味する。
【0066】
以上のステップが終了し、各コンポーネントセルについて、前述の式#1を満たすことが確認された後、次のステップS260に進む。
【0067】
次に、ステップS260において、再度、基準デバイスによって、照射光の照度を、1000W/mに調整する。このステップは、照度の微調を意味する。擬似太陽光照射装置による有効照射エリア内の、照射光スペクトルの場所むらが大きくない限り、前述のスペクトル調整のステップは、小面積の基準セルを照射光スペクトルの平均的な位置に置いて行われる。したがって、擬似太陽光照射装置による有効照射エリア内の照度の場所むらが無く全く均一であれば、前記基準セルを置いた位置の照度は、1000W/mに調整済みであるので、有効照射エリア全体の照度も調整済みということになる。しかし実際は、照度の場所むらが存在するので、有効照射エリア内の、測定する積層型光電変換素子の占める面積(使用面積)全体で、平均1000W/mになるように調整する必要があり、このステップは、その調整のためである。
【0068】
前記使用面積全体の照度を調整するには、例えば以下の2つの方法がある。一つには、基準デバイスとして、測定する積層型光電変換素子と同じ大きさで、特性が安定で平均的な積層型光電変換素子を選択し、公知の基準デバイスの校正方法にしたがって、基準太陽光の下での短絡電流を測定したものを用い、該短絡電流を再現するように照射光の照度を調整する方法がある。もう一つには、基準デバイスとして、小面積の基準セルを用い、測定エリア内の何点かの場所の照度を測定して、平均照度が、1000W/mになるように照射光の照度を調整する方法である。
【0069】
以上のS260までのステップで、擬似太陽光照射装置からの照射光のスペクトルが、各コンポーネントセルについて、前記式#1を満たし、かつ測定エリアの平均照度が、1000W/mになるように調整された。
【0070】
次に、ステップS270において、基準デバイスを取り除いて、照射光下の同じ位置に、測定する積層型光電変換素子をセットした後、電圧印加手段によって、積層型光電変換素子にかける電圧を掃引し、積層型光電変換素子の電流電圧特性を取得する。このとき、積層型光電変換素子の電流と電圧の測定は、公知の4端子法の接続方法によって、プローブまたはリード線を素子の電極に接続して行われる。また、電圧印加、電圧の掃引、電流電圧特性の取得は、後述する公知の方法によって行われる。
【0071】
次に、ステップS280において、測定した電流電圧特性の全データ、または、Voc、Isc、FF、Pmax等の出力特性値を記憶手段に記憶させて、本発明の積層型光電変換素子の電流電圧特性の測定方法による測定手順が終了する。
【0072】
以下、本発明の構成の詳細について述べる。
【0073】
(擬似太陽光照射装置)
本発明の擬似太陽光照射装置の最も重要な特徴は、前記重畳用フィルタにある。したがって、重畳用フィルタ以外の擬似太陽光照射装置の基本構造は、例えば図4のような、公知のものが好適に用いられる。
【0074】
図4において、401は光源ランプ、402は楕円ミラー、403は一次平面ミラー、404はエアマスフィルタ、405はインテグレータ、406はシャッター、407は二次平面ミラー、408はコリメータレンズ、409は光照射面である。本発明の擬似太陽光照射装置においては、以上の基本構造に加えて、重畳用フィルタ410が、楕円ミラー402とインテグレータ405の間の光路の一部に配置されている。重畳用フィルタを透過する光は、重畳用フィルタを通過しない光路の光と、インテグレータによって合成されて、ほぼ均一な照射光として、照射面に照射される。
【0075】
重畳用フィルタを透過する光の強度は、重畳用フィルタを移動可能にして前記光路への重畳用フィルタの挿入量を調節するか、重畳用フィルタに遮蔽板を設け、遮蔽板の開度を調節することによって、調節される。光源の光束を効率的に利用し、擬似太陽光照射装置の使用電力量を低減させるためには、前者の挿入量を調節することが、より好ましい。
【0076】
本発明の擬似太陽光照射装置の光源ランプは、キセノンランプ、メタルハライドランプ等が好適に用いられる。点灯方法は、連続点灯(定常光)でもパルス点灯(パルス光)でも良い。
【0077】
本発明の擬似太陽光照射装置において、エアマスフィルタは、重畳用フィルタと同様に重要である。エアマスフィルタは、キセノンランプ、メタルハライドランプ等の光源ランプの持つスペクトルを、基準太陽光に近づけるために用いられるフィルタで、公知の、多層膜フィルタが好適に用いられる。例えば、光源が、キセノンランプの場合、900nm近傍の幾つかの輝線による光を減衰させるため、900nm付近の透過率を下げる設計になっている。また、400nm付近の透過率も少し下げる設計になっている。
【0078】
しかしながら、キセノンランプの出力、ミラー等の光学部品の特性等によって、基準太陽光に近い照射光のスペクトルを得るための、エアマスフィルタの最適透過率は、微妙に調整が必要になる。さらに、エアマスフィルタは、多数の層数を有する多層膜干渉フィルタで構成されることが多く、そのような多層膜フィルタは、設計した透過率と実際に製作したフィルタの透過率にずれが出やすい。これは、例えば、多層の薄膜1層1層の膜厚の設計値からのずれが、出来上がりの透過率に大きく影響することによる。
【0079】
このように、エアマスフィルタによって、擬似太陽光照射装置の照射光スペクトルを基準太陽光に近づけることは、容易とは言えない。しかしながら、JISC 8912に定義された、照射光スペクトルの合致度が、等級Aに入るような透過率を持つ、エアマスフィルタが望ましい。
【0080】
しかしながら、本発明の擬似太陽光照射装置では、照射光スペクトルの合致度が、等級Aに入ることを目的としている訳ではなく、照射光の下で積層型光電変換素子の各コンポーネントセルの発生する短絡電流値が、基準太陽光の下で発生する短絡電流値に等しくなるように調整することが目的である。
【0081】
本発明の擬似太陽光照射装置において、エアマスフィルタを通した照射光は、後述する重畳用フィルタによって調整される照射光のベースとなるものである。したがって、そのベースとなる照射光が、基準太陽光からの乖離が大きければ、重畳用フィルタを通った重畳光を合成しても、合成された照射光のスペクトルが望ましい状態に調整しきれない虞がある。したがって、やはりエアマスフィルタを通した照射光は、前記合致度が、等級Aに入っていることが望ましいが、これは必須事項ではない。
【0082】
基準太陽光からのずれは、当然小さい方が望ましいが、JIS C 8912に定義された100nm区切りの照射光エネルギーの基準太陽光エネルギーからのずれの標準偏差が同じであれば、積層型光電変換素子が感度を有する波長領域の、短波領域から長波領域にかけて、前記ずれ量が、単調増加あるいは単調減少したりせず、基準太陽光を中心としたランダムなばらつきを示している方が、望ましい。これは、前記ずれが、単調増加あるいは単調減少していると、ずれの標準偏差は同じで、合致度も等級Aに入っていても、積層型光電変換素子の各コンポーネントセルの内、最も短波に感度を有するものと、最も長波に感度を有するものの間で、基準太陽光の下での短絡電流値からのずれが、逆方向に乖離し、後述する重畳用フィルタを通した重畳光による調整範囲を越えてしまう虞があるためである。このことを言い換えれば、エアマスフィルタを通した照射光は、波長100nm区切りの合致度にこだわらず、積層型光電変換素子が感度を有する短波領域から長波領域にかけて、広い範囲に渡って、基準太陽光に対するずれのバランスがとれていることが望ましい。そして、基準太陽光に対するずれが少ないことがより好ましい。
【0083】
(重畳用フィルタ)
本発明の擬似太陽光照射装置の最も重要な部品である重畳用フィルタは、前述の図2のフローチャートに示した作成手順にしたがって、設計製作される。この時、重畳用フィルタの透過率は、少なくとも、式#2および式#3を満たすことが望ましい。
【0084】
すなわち、n番目のコンポーネントセルに対応した、n番目の重畳用フィルタの透過率が、式#2を満たすことにより、重畳光の吸収波長が、n番目のコンポーネントセルの分光感度の最大感度波長と近くなり、重畳光の光強度の変化に対するコンポーネントセルの短絡電流の変化の感度が向上する。
【0085】
また、重畳用フィルタは、前述の図1のごとく、n番目のコンポーネントセルの分光感度の最大値の波長λ(Qmax,n)の付近で透過率が減少するような透過率スペクトル(このような透過率パターンをバンドオフと呼ぶことにする。)を有していても良いし、逆に図8のごとく、λ(Qmax,n)の付近で透過率が増大するような透過率スペクトル(このような透過率パターンを持つフィルタをバンドオンフィルタと呼ぶことにする。)を有していても良い。
【0086】
後者のバンドオンの場合、n番目の重畳用フィルタの透過率が極大となる波長をλ(Tmax,n)とすれば、式#2の代わりに次の式#6を満たすことが望ましい。
Figure 2004273870
【0087】
ただし、ここで、図7のような、いわゆるバンドパスフィルタは、本発明の重畳用フィルタとして適切ではない。これは、以下の理由による。
【0088】
すなわち、バンドパスフィルタの場合、透過帯以外の波長では、透過率がほとんど0%に近いため、バンドパスフィルタを透過する光エネルギーのほとんどをカットしてしまうことになり、結果として合成後の照射光の照度を下げてしまうからである。この照度の損失を補うには、光源ランプの出力を増大させる必要があり、擬似太陽光照射装置の大型化と電力の過剰な消費につながる。
【0089】
また、バンドパスフィルタは、一般に数十層という非常に多くの層数の薄膜を積層した、多層膜フィルタによって実現されるので、製造に多大な手間がかかり、非常に高価である。
【0090】
また、数十層という非常に多くの層数の薄膜の膜厚を、それぞれ微妙に制御することが必要になるので、製造の再現性も悪い。
【0091】
また、一般に層数が増えることで、薄膜の内部応力が増大し、耐熱性や耐久性が低下して剥がれを生じる危険も増大する。
【0092】
以上の理由から、いわゆるバンドパスフィルタは、測定する積層型光電変換素子の種類に応じて、作り直すには、非常に高価で、かつ製造にも困難を伴う。
【0093】
したがって、バンドオンの重畳用フィルタの場合、積層型光電変換素子の分光感度がある波長領域での透過率の最小値をTminとすれば、フィルタの基板の透過率が低下することの多い、波長350nm以下の短波長領域を除いて、以下の式#7を満たすことが、望ましい。
Tmin≧30% …#7
【0094】
これは、バンドオンの重畳用フィルタのTminの値が、30%未満になると、前記いわゆるバンドパスフィルタの弊害が出始めることによる。
【0095】
さらに、積層型光電変換素子の分光感度がある波長領域での、重畳用フィルタの透過率の最大値をTmax、最小値をTmin、最大値と最小値の差をΔTmax−minとすれば、バンドオフであっても、バンドオンであっても、重畳用フィルタが、以下の式#8を満たすことが、より好ましい。
ΔTmax−min≧30% …#8
【0096】
これは、ΔTmax−minの値が30%未満になると、重畳光による照射光のスペクトル変化の変動幅が小さくなり、コンポーネントセルの短絡電流の調整幅が小さくなってしまうためである。すなわち、式#8を満たすことにより、重畳光による照射光のスペクトル変化の変動幅が十分になり、コンポーネントセルの短絡電流の調整幅を十分取ることができる。
【0097】
また、重畳用フィルタが、式#3を満たすことが、望ましい。それにより、以下の効果がある。すなわち、n番目の重畳用フィルタを調整することによって、対応するn番目のコンポーネントセルの短絡電流が変化するのみならず、n番目のコンポーネントセルと分光感度が重なる波長部分のある他のコンポーネントセルの短絡電流も変化することがあるが、式#3を満たすことによって、他のコンポーネントセルの短絡電流の変化量が減少し、各コンポーネントセルの短絡電流の調整の独立性を向上させることができる。その結果、本発明の擬似太陽光照射装置の制御性が向上する。
【0098】
さらに、重畳用フィルタは、次の式#9を満たすことが、より好ましい。
120nm≦Δλ(Tn)≦Δλ(Qn) …#9
【0099】
式#9は、式#3に下限値を追加した式である。本発明者の検討の結果、透過率の波長に対する変化の半値幅(Δλ(Tn))が、120nm未満になると、重畳光による照射光のスペクトル変化の変動幅が小さくなり、コンポーネントセルの短絡電流の調整幅が小さくなってしまうためである。また、Δλ(Tn)の小さい重畳光は、照射光のスペクトルの形を歪めてしまい、JIS C 8912に定義されたスペクトル合致度を悪化する虞がある。すなわち、式#9を満たすΔλ(Tn)を持つ重畳用フィルタによって、照射光のスペクトルの形を大きく歪める事なく、スペクトル合致度を維持しつつ、コンポーネントセルの短絡電流の調整幅を効率的に取ることができる。
【0100】
さらに、重畳用フィルタは、式#4を満たすことが、望ましい。Tslope,nが、0.2%/nm未満になると、重畳用フィルタの透過率の変化が小さくなり過ぎるので、照射光のスペクトル変化の変動幅が小さくなり、コンポーネントセルの短絡電流の調整幅が小さくなってしまうためである。また、Tslope,nが、2%/nmを超えると、重畳光によって、照射光のスペクトルの形を歪めてしまう虞があり、前述のバンドパスフィルタで述べたような、高価で、製造の再現性が悪く、耐久性が低下するといった弊害が出始める。すなわち、重畳用フィルタが、式#4を満たすことにより、照射光のスペクトルの形を大きく歪める事なく、スペクトル合致度を維持しつつ、コンポーネントセルの短絡電流の調整幅を効率的に取ることができる。
【0101】
さらに、重畳用フィルタは、前述のバンドオンのタイプより、バンドオフのタイプの方が、より好ましい。さらに、積層型光電変換素子の感度のある波長領域では、70%以上の透過率を有することが、より好ましい。それによって、重畳用フィルタを透過する重畳光の光エネルギーの損失が減少し、光源の光の利用効率が向上する。それによって、光源の使用電力を抑えることができ、擬似太陽光照射装置の大きさもよりコンパクトにすることができる。
【0102】
また、重畳用フィルタは、透過率の設計の自由度と波長選択性から、薄膜を積層した多層膜フィルタを用いることが好ましい。ただし、バンドパスフィルタ、あるいはダイクロイックフィルタ、あるいはエアマスフィルタのように数十層もの多層膜である必要はなく、選択する材料によるが、せいぜい10層程度までの層数で設計できることが多い。層数が少ない方が、低コストで、製造の制御性、再現性も向上し、フィルタとしての耐久性も向上する。また、積層型光電変換素子の種類が異なる場合の設計もし易い。多層膜は、基板上に異なる種類の材料を蒸着あるいはスパッタリングして積層することが多い。
【0103】
また、重畳用フィルタの多層膜の材料としては、MgF、SiO、Al、Si、CeF、MgO、SiO、ThO、CeO、Pr11、In、SnO、Si、ZrO、Ti、Ta、TiO、ZnS等の材料が好適に用いられる。
【0104】
また、重畳用フィルタの多層膜の材料の組合せと薄膜の膜厚あるいは層数の設計は、前記λ(Tmin,n)、Δλ(Tn)、Tslope,nの要求パラメータに応じて、有効フレネル係数を用いる方法、光学インピーダンスを用いたマトリクス法、フレネル係数を用いたマトリクス法等の、公知の光学多層膜の光学計算方法によって行えば良い。前記計算方法にしたがって、透過率のシミュレーションを、計算機を用いて行えば良い。多層膜材料の組合せと設計には、屈折率n、吸収係数、膜厚dが重要な設計パラメータとなる。また、多層膜の耐久性のために、材料に応じた薄膜の内部応力を考慮して、応力を打ち消し合うような材料の組合せも考慮すべきである。
【0105】
また、多層膜を蒸着するガラス基板は、平面性、透過率、耐熱性、耐久性を考慮して選定される。例えば、白板ガラス、パイレックス(登録商標)ガラス、石英硝子等が好適に用いられる。また、透過率と波長の設計によっては、色ガラスフィルタを基板として用いても良い。
【0106】
なお、重畳用フィルタの代わりに、選択した波長を反射するミラーを用いることもできるが、擬似太陽光照射装置の光路の設計が複雑になることと、ミラーの耐久性が懸念されることから、フィルタの方が望ましい。
【0107】
(積層型光電変換素子)
本発明の測定方法によって測定される積層型光電変換素子の種類としては、太陽電池、フォトダイオード等の光起電力素子、光センサー、電子写真感光体等が挙げられる。
【0108】
光電変換の機能を有するのは、半導体接合であり、半導体接合の種類としては、pn接合、pin接合、MIS型接合などが挙げられる。積層型光電変換素子は、これらの半導体接合を複数積層したものであり、積層した各半導体接合をコンポーネントセルと呼ぶ。
【0109】
半導体材料としては、結晶質、多結晶質、微結晶質、非晶質のものが挙げられ、物質としては、Si、SiC、SiGe、C、Ge等のIV族あるいはIV族化合物、GaAs、AlGaAs、InP、InSb等のIII−V族化合物、ZnSe、ZnO、CdS、CdTe、CuS等のII−VI族化合物、CuInSe、CuInS等のI−III−VI族化合物、有機半導体等、あるいは上述の化合物の混合物が挙げられる。
【0110】
また、積層型光電変換素子を直列あるいは並列に接続したり、耐環境性容器に封入したりして作成された、積層型光電変換装置も積層型光電変換素子と同様に、本発明の測定方法によって測定できる。
【0111】
また、本発明の測定方法を実施するため、あるいは、本発明の擬似太陽光照射装置を作成するために、測定する積層型光電変換素子は、その代表的な特性の素子の分光感度を、予め測定されていることが、必要である。
【0112】
積層型光電変換素子の分光感度の測定は、前述の図2のフローチャートのステップS110で説明した方法で行われる。
【0113】
また、積層型光電変換素子は、電流電圧特性の温度係数が分かっていることが望ましい。具体的には、開放電圧、短絡電流、曲線因子それぞれの温度係数が分かっていることが望ましい。積層型光電変換素子自体の温度係数を測定することが困難である場合は、同等の積層型光電変換素子の温度係数の代表値を用いても良い。また、積層型光電変換素子を測定する場合に、積層型光電変換素子は、25±2℃になるように温度調整することが望ましい。温度調整することが困難である場合には、前述の温度係数によって温度補正を行い、25℃における特性を求めることが必要である。
【0114】
(基準デバイス)
(1)基準デバイスは、基本的に前記積層型光電変換素子と同じ構成の素子を用いることが望ましいが、異なる材料によって構成されていても良い。ただし、異なる材料を用いた場合は、基準デバイスの分光感度が、積層型光電変換素子と同等の分光感度を有するようにフィルタ等で、分光感度を調整することが望ましい。それによって、基準デバイスを用いて照射光の放射照度を測定するときに、照射光のスペクトルと積層型光電変換素子の分光感度に起因する誤差が少なくなり、積層型光電変換素子の電流電圧特性の測定結果が正確になる。
【0115】
(2)基準デバイスは、経時的に特性が安定であるように処理されていることが望ましい。基準デバイスを、光、熱、湿度等に対して、安定化させることにより、基準デバイスの後述する基準状態における校正値の信頼性が高まり、積層型光電変換素子の電流電圧特性の測定が正確になる。また、基準状態における校正値を再測定する時間間隔を広くとることができる。ここで、基準状態とは、前述の、JIS C 8960に規定された、試験条件を指す。
【0116】
(3)基準デバイスは、前記基準状態における短絡電流が、予め測定されていることが望ましい。基準状態における短絡電流の測定方法は、例えば、JIS C8910:一次基準太陽電池セル、あるいは、JIS C 8911:二次基準結晶系太陽電池セル、あるいは、IEC 60904−2:Photovoltaic devices Part2 Requirements for reference solar cells、あるいは、IEC 60904−6:Photovoltaic devices Part6 Requirements for reference solar modules等の規格に記載された公知の方法を取れば良い。定められた規格にしたがって、公的な機関で測定された値は、校正値と呼ばれる。ただし、基準デバイスが、積層型光電変換素子である場合は、積層型光電変換素子の電流電圧特性を測定する方法を記述した規格が、国内でも海外でも未制定であるため、校正値と呼ぶことができず、単に測定値となる。基準デバイスの基準状態における短絡電流は、公的機関で校正値として値付けされていることが望ましい。なお、基準デバイスを複数用い、これらを常用一次基準デバイス、常用二次基準デバイスとすれば、常用一次基準デバイスは、公的機関で校正し、常用二次基準デバイスは、事業者自ら、常用一次基準デバイスから、値を移し替えて使用しても良い。
【0117】
(4)基準デバイスは、短絡電流の温度係数が分かっているものを使用することが望ましい。基準デバイス自体の温度係数を測定することが困難である場合は、同じ構成の積層型光電変換素子の温度係数の値を用いても良い。また、基準デバイスを用いて、積層型光電変換素子を測定する場合に、基準デバイスは、25±2℃になるように温度調整することが望ましい。温度調整することが困難である場合には、前述の温度係数を用い、規格に述べられた公知の温度補正方法によって温度補正を行って、25℃における短絡電流を求めることが必要である。
【0118】
(5)基準デバイスと積層型光電変換素子の分光感度の関係が、式#10で計算されるミスマッチ係数Mnが0.98以上1.02以下であることが望ましい。
Figure 2004273870
Eo(λ):基準太陽光のスペクトル強度
Et(λ):照射光のスペクトル強度
Qr(λ):基準デバイスの分光感度
Qs(λ):積層型光電変換素子の分光感度
【0119】
(6)人工光源を用いる場合のように、照射光の放射照度に場所むらが有る場合は、基準デバイスの発電部面積は、積層型光電変換素子の発電部面積と、好ましくは、±15%以下、より好ましくは、±10%以下、最適には±5%以下の範囲で近似していることが望ましい。基準デバイスと積層型光電変換素子の発電部面積が近似することによって、照射される光の場所むらによる誤差が大幅に低減されるからである。なお、前記常用二次基準デバイスを、積層型光電変換素子の電流電圧特性測定中に、照射光の放射照度をモニターするために用いる場合は、発電部面積が近似してなくても良い。ただし、照射エリアのどの部分に常用二次基準デバイスを設置するかは、固定しておくことが望ましい。また、照射光の放射照度あるいはスペクトルの場所むらが、変化した場合は、前記常用一次基準デバイスから、前記常用二次基準デバイスへの値の移し替えをやり直す必要がある。
【0120】
(7)基準デバイスの内、JIS C 8960に述べられているように、被測定太陽電池と同一基板、同一製造条件で製造した一群のうちから、定められた条件で選出されたものは、基準セルと呼ばれる。基準セルは、通常、受光部の面積が、2cm×2cm以下の大きさで、直並列接続されておらず、セル温度の制御と光学的配慮から、定められた要件を満たす標準的なパッケージにマウントされている。本発明において使用される基準セルは、積層型光電変換素子のコンポーネントセルの数だけ用意され、n番目の基準セルは、単接合の光電変換素子とその光入射側に配する光学フィルタを適宜選択し組み合わせることによって、n番目のコンポーネントセルの分光感度を近似するように設計されている。
【0121】
すなわち、本発明における基準セルは、積層型光電変換素子のコンポーネントセルを分離して抽出するようなものである。各コンポーネントセルの分光感度は、他のコンポーネントセルの分光感度の影響を受けているので、実際に分離することは不可能である。そこで、このような分光感度を模擬した基準セルが用いられる。そのため、このような基準セルは、疑似セルと呼ばれることもある。前述のごとく、積層型光電変換素子の校正値は得られないが、疑似セルの場合は、それぞれが、単接合の光電変換素子なので、校正値が得られる。したがって、疑似セルを用いれば、n番目のコンポーネントセルが分光感度を有する波長領域の照射光の照度を測定することができ、n番目のコンポーネントセルが照射光の下で発生しているであろう短絡電流値を推定することができる。本来は、各コンポーネントセルが、照射光の下で発生する短絡電流は、各コンポーネントセルの分光感度と照射光のスペクトルを測定し、それらの積を波長に渡って積分することで間接的にしか求められない。しかし、疑似セルを用いれば、照射光のスペクトルやコンポーネントセルの分光感度を測定しなくても、疑似セルの短絡電流を測定するだけで、コンポーネントセルの短絡電流値を推定することができる。
【0122】
本発明の測定方法では、重畳光の光量を調整するために、前述の図3のフローチャートに示したステップS220において、このような疑似セルを、n番目のコンポーネントセルに対応する基準セルとして用いている。
【0123】
図5は、前記疑似セルの具体例の一つを分解して示した断面構成図であり、501は単接合光電変換素子、502は光電変換素子のケース、503は光学フィルタのホルダー、504、505は光学フィルタである。前記疑似セルの分光感度も、対応する積層型光電変換素子のコンポーネントセルの分光感度に対して、式#10で計算されるミスマッチ係数Mnが0.98以上1.02以下であることが望ましい。
【0124】
(電流電圧特性測定手段)
電流電圧特性測定手段は、電圧検出手段と電流検出手段からなる。電圧検出手段と電流検出手段は、デジタルマルチメータ、または、アナログデジタル変換ボード(A/Dボード)と抵抗を組み合わせたもの等、公知の手段を用いれば良い。
【0125】
(電圧可変手段)
測定対象の積層型光電変換素子の電圧を可変させる手段は、バイポーラ電源、電子負荷、コンデンサに蓄積した電荷の放電等、公知の手段を用いればよい。また、積層型光電変換素子に流れる電流を制御しつつ変化させて、積層型光電変換素子の電圧を測定しても良い。
【0126】
電圧または電流を制御しつつ変化させる場合に、電流電圧特性測定を得るためには、電圧または電流を掃引しなければならない。この掃引は、連続的変化でもステップ状変化でも良いが、測定対象の積層型光電変換素子の充放電に対する時定数を考慮し、充放電の時定数よりも十分長い測定間隔でIVデータを測定するようにすることが望ましい。このことは、静電容量の大きい積層型光電変換素子を測定する場合に特に重要である。
【0127】
(計測制御/データ処理手段)
以上の計測器を制御する手段および計測されたデータを処理する手段として、パーソナルコンピュータ等の計測器とデータのやりとりが可能なデータ処理手段を設けることが望ましい。また、データ処理手段は、計測器の制御が可能な機能も有しているものが望ましく、計測器の制御をプログラミングできるものがさらに望ましい。
【0128】
また、前記計測制御/データ処理手段によって、検出された放射照度により測定された積層型光電変換素子の電流電圧特性のデータを温度補正できるようにすることが望ましい。温度補正の数式は、公知の数式を用いれば良い。
【0129】
【実施例】
以下の実施例により本発明を詳細に説明するが、これら実施例は例示であり、本発明の範囲はこれら実施例に限定されるものではない。
【0130】
[実施例1]
前述の実施態様例で説明した、図2のフローチャートに示した手順で、重畳用フィルタを作成して準備した、図4に示した本発明の擬似太陽光照射装置を用いて、図3のフローチャートに示した測定手順で、本発明の測定方法によって、以下のように積層型光電変換素子の電流電圧特性を測定した。
【0131】
すなわち、測定対象の積層型光電変換素子としては、光入射側からアモルファスシリコンをi層に用いたpin接合(a−Siセル)と、アモルファスシリコンゲルマニウムをi層に用いたpin接合(a−SiGeセル)と、アモルファスシリコンゲルマニウムをi層に用いたpin接合(a−SiGeセル)をこの順に積層した構造のa−Si/a−SiGe/a−SiGeトリプル型太陽電池セルを用いた。すなわち、本実施例の積層型光電変換素子には、a−Siセル、a−SiGeセル、a−SiGeセルと3つのコンポーネントセルがある。これらのコンポーネントセルを、光入射側から順に、トップセル、ミドルセル、ボトムセルと呼ぶことにする。前記トリプル型太陽電池セルは、1枚のステンレス基板上に作成された、35cm×24cmの大きさのセルである。
【0132】
まず、図2のフローチャートに示した手順で、重畳用フィルタを作成した。
まず、図2のステップS010において、本実施例のトリプル型太陽電池セルと同じ構成で、同じ製造方法、同じ製造条件で作成した、面積だけが、1cm(1cm×1cm)と小さいセルを準備した。
【0133】
次に、ステップS110において、この小面積セルの各コンポーネントセルの分光感度を実施態様例で説明した方法で測定した。その結果を図6に示す。図6において、601は、トップセルの分光感度、602は、ミドルセルの分光感度、603は、ボトムセルの分光感度を示す。それぞれの分光感度は、量子効率を縦軸にとって、その最大値で規格化してある。
【0134】
次に、ステップS120において、分光感度の測定結果から、トップセル、ミドルセル、ボトムセルそれぞれについて、前述のλ(Qmax,n)、Δλ(Qn)を求めた。本実施例では、n=1、2、3で、それぞれ、トップセル、ミドルセル、ボトムセルを表す。
【0135】
次に、ステップS130において、上記各コンポーネントセルの分光感度に対応して、重畳用フィルタのλ(Tmin,n)とΔλ(Tn)を設計した。
【0136】
次に、ステップS140において、トップセル用、ミドルセル用、ボトムセル用の各重畳用フィルタを設計し、透過率T(λ)の値をシミュレーション計算で求めた。このステップは、多層膜フィルタの製造メーカーに依頼した。
【0137】
次に、ステップS150において、シミュレーション結果が、式#2〜式#4を満たすことを確認した。
【0138】
次に、ステップS160において、前記多層膜フィルタの製造メーカーに、トップセル用、ミドルセル用、ボトムセル用、各2枚ずつ、20cm×20cmの大きさで、重畳用フィルタの製作を依頼した。
【0139】
次に、ステップS170において、製作した重畳用フィルタの透過率が、前記式#2〜式#4を満たすことをチェックした。
【0140】
以上の工程によって、本発明の擬似太陽光照射装置の最も重要な部品である重畳用フィルタを製作した。製作した重畳用フィルタの出来上がりのλ(Tmin,n)とΔλ(Tn)の値を、λ(Qmax,n)、Δλ(Qn)と比較して、また、Tmax,n、Tmin,n、Tslope,nの値を表1にまとめた。Tslope,nの値が、それぞれの重畳用フィルタに対して、2つずつ記されているのは、透過率変化の極小値に対し、左側の傾きと右側の傾きをそれぞれ記したものである。
【0141】
【表1】
Figure 2004273870
【0142】
製作したトップセル用、ミドルセル用、ボトムセル用の各重畳用フィルタの透過率を図6に示した。図6において、604は、トップセル用の重畳用フィルタの透過率、605は、ミドルセル用の重畳用フィルタの透過率、606は、ボトムセル用の重畳用フィルタの透過率を示す。
【0143】
また、図4に示したような本発明の擬似太陽光照射装置として、有効照射エリア40cm×40cmの定常光型ソーラシミュレータを用いた。光源ランプ401としては、6.5kwのショートアークキセノンランプを用いた。また、エアマスフィルタ404としては、公知の多層膜フィルタを用いたが、重畳光を合成しない状態の照射光で、なるべく基準太陽光に近くなるように選択して用いた結果、重畳光を合成しない状態の照射光で、スペクトル合致度は等級Aを満足し、短波長と長波長のスペクトルのバランスも基準太陽光に近いものを得た。また、重畳用フィルタ410としては、上述の各ステップによって作成したものを用い、トップセル用、ミドルセル用、ボトムセル用の各重畳用フィルタは、各2枚ずつ独立に動くようにし、一部は、光路に対して重なって配置した。各重畳用フィルタの光路に対する挿入量を変えることで、各重畳光の強度を変化させた。その結果、トップセル、ミドルセル、ボトムセルの短絡電流を約±10%の範囲で変化させることができた。これらの短絡電流の可変範囲は、トップセル用、ミドルセル用、ボトムセル用の各基準セルの短絡電流を測定することで確認した。なお、本実施例の重畳用フィルタは、4000h使用しても、透過率の大きな変化や、膜剥がれ等の問題はなく、耐久性に優れていた。
【0144】
ここで、基準セルとしては、結晶シリコン太陽電池の光入射側に、色ガラスフィルタを組み合わせたものを用いた。また、基準セルのパッケージは、表面に黒色アルマイト処理を施したアルミニウムのブロックを用いた公知のもの(例えばJIS C 8911に示されている)を用い、パッケージの外側にペルチェ素子を取り付けて、セルの温度が、25℃±2℃になるように温度調整した。また、色ガラスフィルタは、トップセル用基準セルとしては、HOYAオプティクス製、HA30とB460を、ミドルセル用基準セルとしては、HOYAオプティクス製、HA30と、東芝硝子製、LBA8を、ボトムセル用基準セルとしては、HOYAオプティクス製、CF870と、東芝硝子製、A73Bをそれぞれ組み合わせて用いた。
【0145】
これらのトップセル用、ミドルセル用、ボトムセル用の各基準セルは、財団法人、日本品質保証機構(以下JQAと記す。)において、校正値をつけてもらったものである。またこれらの基準セルの分光感度をそれぞれ測定し、ソーラシミュレータの照射光のスペクトルを公知のスペクトロラジオメータを用いて測定し、図6に示した測定済みのトップセル、ミドルセル、ボトムセルの分光感度のデータを用いて、式#10で計算されるミスマッチ係数Mnを、トップセル、ミドルセル、ボトムセルについて求めたところ、それぞれ、1.004、0.993、0.991と良好な値であった。
【0146】
次に、図3のフローチャートに示した測定手順にしたがって、本発明の測定方法によって、積層型光電変換素子の電流電圧特性を測定した。
【0147】
まず、ステップS210において、重畳光を重畳させない状態で、以下の基準デバイスによって、照射光の照度を、1000W/mに調整した。
【0148】
ここで、照射光の照度を調整する基準デバイスとしては、まず、測定する積層型光電変換素子と同じ構成のトリプル型太陽電池セルを予め作成し、これを光劣化させて安定化したものを用いた。ここで、ソーラシミュレータの照射光には、±1.7%の照度の場所むらが存在したため、基準デバイスは、測定対象の積層型光電変換素子と同じ構成、同じ大きさであることが重要である。そのため、トリプル型太陽電池セルを使用した。この基準デバイスのセルは、予めJQAに測定依頼して、短絡電流の測定値を得てあったものである。ステップS210においては、この基準デバイスのJQAにおける短絡電流値を再現するようにソーラシミュレータの放射照度を調整した。
【0149】
次に、ステップS220からS250において、トップセル用、ミドルセル用、ボトムセル用の各基準セルが、それぞれ前述の式#1を満たすように、トップセル用、ミドルセル用、ボトムセル用の各重畳用フィルタの光路に対する挿入量を変えることで、各重畳光の強度を調整することによって、照射光のスペクトルを調整した。ここで、ソーラシミュレータの照射光の本実施例で測定する積層型光電変換素子の面積内のスペクトルの場所むらは、トップセルの短絡電流値を1とした時の、ミドルセルとボトムセルの基準太陽光の下での短絡電流値からのずれで、±0.5%未満で良好であったが、前記ずれの値が平均値に近い場所に前記基準セルを置いて、スペクトルの調整を行った。また、トップセル用、ミドルセル用、ボトムセル用の各基準セルのJQAにおける校正値In,refは、それぞれ、5.17mA、7.56mA、7.29mAであった。
【0150】
次に、ステップS260において、再度、前記基準デバイスによって、照射光の照度を、1000W/mに調整した。このとき、基準デバイスの温度が、25℃±1℃になるように、雰囲気温度を調整した。放射照度の調整量は、1%未満であった。なお、光源のキセノンランプのランプ電流値は、125Aであった。
【0151】
次に、前述のステップS270とステップS280において、積層型光電変換素子の電流電圧特性を取得し、Voc、Isc、FF、Pmax等の出力特性値を記憶手段に記憶させた。
【0152】
ここで、電圧検出手段および電流検出手段としては、高速のデジタルマルチメータを用い、計測制御/データ処理手段として、パーソナルコンピュータを用いて、デジタルマルチメータによる取得データをパーソナルコンピュータに取り込んで、データ処理を行った。ここで、電圧検出と電流検出の測定の積分時間は、0.1msecとした。
【0153】
電圧可変手段としては、プログラマブルなバイポーラ電源を用い、V<0,I>0のIsc側から、V>0,I<0のVoc側に向かって、積層型光電変換素子に印加する電圧を掃引した。このとき、印加電圧値は、予めパーソナルコンピュータで、積層型光電変換素子のVocに応じて設定された値を、バイポーラ電源のメモリに記憶させてから、階段状に128点変化させた。ここで、電圧を変化させる時間間隔は、デジタルマルチメータの外部トリガー受付間隔を考慮して、4.5msecとし、本実施例の積層型光電変換素子であるトリプル型太陽電池セルが、比較的大きな静電容量を持ち、充放電の時定数が大きいことを考慮して、電源による設定電圧値を変化させた後、1msecの遅延時間の後、積層型光電変換素子のIVデータの取得を開始するようにした。なお、トリプル型太陽電池セルの裏面に、シート型銅コンスタンタンの熱電対センサーが接触するようにして、IVデータ測定中のセルの温度を測定した。
【0154】
次に、128点分のIVデータを、IVデータ測定中のセル温度の測定値によって、温度補正した。温度補正は、JIS C 8934:アモルファス太陽電池セル出力測定方法の6.2項に記載された、公知の補正式を用いた。
【0155】
以上の温度補正のデータ処理をパーソナルコンピュータで行った結果、トリプル型太陽電池セルの最終結果としての電流電圧特性(補正後IVカーブ)が得られた。
【0156】
得られた電流電圧特性の精度を検証するため、同じトリプル型太陽電池セルを屋外で、太陽光下で電流電圧特性を測定した。この時、セルは、太陽を追尾する架台に設置し、同じ架台に、前記基準セルを取り付けて、太陽光の放射照度を検出した。また、測定時の太陽光スペクトルも測定した。電流電圧特性の測定は、快晴で、放射照度800〜1200W/mの範囲で、エアマス1.5±0.1の安定した日射条件で、測定した太陽光スペクトルが、前記基準太陽光に近い条件を選んで行った。したがって、放射照度の変動の影響はなく、基準太陽光に近い理想的な条件で、電流電圧特性を測定した。なお、前記基準セルの校正値を用いて、放射照度を計算した。また、前述と同様にセルの温度を測定し、さらに、太陽光によるセルの温度上昇を抑制するため、測定を開始するまで太陽光を遮蔽しておき、測定直前に、セルに太陽光をあてるようにした。なお、基準セルは、25℃±2℃に温度制御した。また、測定された、IVデータに対して、照度補正、温度補正を行い、補正後IVカーブを得た。
【0157】
ここで、電流電圧特性測定手段、電圧可変手段、計測制御/データ処理手段は、前述したものと同じものを用いた。また、前記128点分のIVデータを同時に測定した放射照度によって、1点1点照度補正を行った。照度補正の補正式は、JIS C 8913:結晶系太陽電池セル出力測定方法の6.2項に記載された、公知の補正式を用いた。ここで、2つの照度レベルのデータからの補正ではなく、測定した1つの照度レベルのデータのみから補正するために、結晶系太陽電池セルの補正式を用いた。また、セルのシリーズ抵抗Rsの値は、Voc近傍のIVデータの接線の傾きから推定して求めた。
【0158】
また、補正後IVカーブから計算された、出力特性値(Voc、Isc、FF、Pmaxの値)を、本発明の擬似太陽光照射装置とそれを用いた本発明の測定方法によるものを屋内値、太陽光によるものを屋外値として、以下の表2に示す。また、屋外値を1とした、屋内値を、屋内/屋外として、表2に示す。
【0159】
本発明の測定方法によって測定した、擬似太陽光照射装置によるIVカーブは、屋外で測定された補正後IVカーブに良く一致した。また、表2から明らかなように、擬似太陽光照射装置によるIVカーブから計算した出力特性値は、屋外測定による値に±1%以内の差で、良く一致した。
【0160】
以上の結果から明らかなように、本発明の測定方法によって、トリプル型太陽電池セルの電流電圧特性を、正確に測定することができた。
【0161】
【表2】
Figure 2004273870
【0162】
[比較例1]
実施例1において、重畳用フィルタとして、図7に示した透過率をもつ従来の一般的な多層膜フィルタを用いた以外は、実施例1と同様にしてトリプル型太陽電池セルの電流電圧特性を測定した。図7に示した従来の多層膜フィルタは、701が、トップセル用で、短波長光のみ透過するダイクロイックフィルタ、702が、ミドルセル用で、バンドパスフィルタ、703が、ボトムセル用で、長波長光のみ透過するコールドミラーである。
【0163】
これらの従来の多層膜フィルタを用いて、実施例1と同様に重畳光の光強度を調整し、照射光のスペクトルを式#1を満たすように調整することができ、実施例1と同様にトリプル型太陽電池セルの電流電圧特性を、正確に測定することができた。
【0164】
しかしながら、重畳光の光強度が、実施例1に比較して、1/3〜1/10程度しかなかったので、合成された照射光の光強度を1000W/mに調整するために、光源のキセノンランプのランプ電流値を定格ぎりぎりの160Aまで上げなければならず、電力消費量が大幅に増大してしまった。また、キセノンランプの使用時間が増えるにつれて、光量が不足し、使用時間400hの時点で、照射光の光強度を1000W/mに維持できなくなり、測定そのものができなくなった。また、この時点で、前記バンドパスフィルタに膜剥がれが生じた。
【0165】
なお、前記従来のダイクロイックフィルタ、バンドパスフィルタ、コールドミラーを製作するために、実施例1で製作した重畳用フィルタの製作コストに対し、約4倍の製作コストがかかった。これは、比較例1の従来の多層膜フィルタに必要とする多層膜の層数が、実施例1の重畳用フィルタに必要とする層数の3倍以上となり、多層膜作成の制御も高コストであるためである。
【0166】
また、実施例1の重畳用フィルタは、後述する実施例のように、測定する積層型光電変換素子の種類に応じて、最適なものを再作成することが容易であったが、本比較例の従来の多層膜フィルタでは、設計の自由度、製造の再現性、製作コストの点で、他の種類の積層型光電変換素子に適合するように再作成することは、困難であった。
【0167】
実施例1と比較するため、従来の多層膜フィルタについて、実施例1の表1と同様の表を表3としてまとめた。なお、本比較例のトップセル用とボトムセル用のフィルタは、透過率変化の半値幅を定義できないので、Δλ(Tn)の欄は−と記入した。図7から、本比較例と実施例1の多層膜フィルタの透過率スペクトルの違いは明らかであるが、表3の数値で見ると、従来の多層膜フィルタと本発明の重畳用フィルタの違いは、Tmin,n、Tslope,n、に顕著に現れる。
【0168】
【表3】
Figure 2004273870
【0169】
[実施例2]
実施例1において、重畳用フィルタとして、図8に示した透過率をもつ前記バンドオンフィルタを用いた以外は、実施例1と同様にしてトリプル型太陽電池セルの電流電圧特性を測定した。図8において、801は、トップセル用のバンドオンフィルタの透過率、802は、ミドルセル用のバンドオンフィルタの透過率、803は、ボトムセル用のバンドオンフィルタの透過率を示す。
【0170】
これらのバンドオンフィルタを用いて、実施例1と同様に重畳光の光強度を調整し、照射光のスペクトルを式#1を満たすように調整することができ、実施例1と同様にトリプル型太陽電池セルの電流電圧特性を、正確に測定することができた。
【0171】
また、これらのバンドオンフィルタは、実施例1のバンドオフフィルタと同程度のコストで製作することができた。また、合成された照射光の光強度を1000W/mに調整した時の、キセノンランプのランプ電流値は、135Aで、実施例1より若干大きい程度であった。また、本実施例のバンドオンフィルタも実施例1と同様に耐久性に優れていた。
【0172】
本実施例のバンドオンフィルタについて、実施例1の表1と同様の表を表4としてまとめた。ただし、重畳用フィルタの透過率の極小値波長λ(Tmin,n)の代わりに、透過率の極大値波長λ(Tmax,n)を用いた。
【0173】
【表4】
Figure 2004273870
【0174】
[実施例3]
実施例1において、測定対象の積層型光電変換素子として、光入射側からアモルファスシリコンをi層に用いたpin接合(a−Siセル)と、微結晶シリコンをi層に用いたpin接合(微結晶Siセル)をこの順に積層した構造のa−Si/微結晶Siダブル型太陽電池セルを用いた。本実施例の積層型光電変換素子には、a−Siセル、微結晶Siセルと2つのコンポーネントセルがある。これらのコンポーネントセルを、光入射側から順に、トップセル、ボトムセルと呼ぶ。
【0175】
実施例1と同様に小面積セルを作成し、各コンポーネントセルの分光感度を測定した結果を図9に示す。図9において、901は、トップセルの分光感度グラフ、902は、ボトムセルの分光感度グラフである。それぞれの分光感度は、量子効率を縦軸にとって、その最大値で規格化してある。
【0176】
実施例1と同様に、図2のフローチャートに示した手順で、重畳用フィルタを作成した。実施例1と同様に製作した重畳用フィルタの特性を表5にまとめた。また、作成した重畳用フィルタの透過率を図9に示す。図9において、903は、トップセル用の重畳用フィルタの透過率グラフ、904は、ボトムセル用の重畳用フィルタの透過率グラフである。ここで、測定する積層型光電変換素子の種類が、実施例1と異なり、分光感度も異なるので、重畳用フィルタを再設計して、本実施例のダブル型太陽電池セルに合うものを再製作したが、重畳用フィルタの製作は、実施例1と同様に、低コストで、制御性良く作成でき、重畳用フィルタの交換のみで、他の部品は、実施例1と変更することなく、実施例1のソーラシミュレータを使用することができた。
【0177】
【表5】
Figure 2004273870
【0178】
これらの重畳用フィルタを用いて、実施例1と同様に重畳光の光強度を調整し、照射光のスペクトルを式#1を満たすように調整することができ、実施例1と同様にダブル型太陽電池セルの電流電圧特性を、正確に測定することができた。
【0179】
なお、基準セルとしては、色ガラスフィルタを測定するダブル型太陽電池セルのコンポーネントセルの分光感度に合わせて、以下のものに変更した以外、実施例1と同様のものを使用した。すなわち、色ガラスフィルタは、トップセル用基準セルとしては、HOYAオプティクス製、L39と、旭テクノ硝子製、C50Sを、ボトムセル用基準セルとしては、HOYAオプティクス製、HA50と、旭テクノ硝子製、A73Aをそれぞれ組み合わせて用いた。
【0180】
[実施例4]
実施例1において、測定対象の積層型光電変換素子として、光入射側からAlGaAsによるpn接合と、GaAsによるpn接合とをこの順に積層した構造のAlGaAs/GaAs積層型太陽電池セルを用いた。
【0181】
実施例3と同様に、測定対象のAlGaAs/GaAs積層型太陽電池の分光感度に合わせて、重畳用フィルタを再設計して、再制作した以外は、実施例1と同様のソーラシミュレータを使用し、再制作した重畳用フィルタを用いて、実施例1と同様に重畳光の光強度を調整し、照射光のスペクトルを式#1を満たすように調整することができ、実施例1と同様にAlGaAs/GaAs積層型太陽電池セルの電流電圧特性を、正確に測定することができた。
【0182】
【発明の効果】
本発明によって、以下のような効果がある。
すなわち、少なくとも2つ以上のコンポーネントセルを含む積層型光電変換素子の電流電圧特性の測定方法に於いて、基準太陽光に疑似した光に、前記各コンポーネントセルの分光感度が極大となる波長に対し、±15%以内の波長に、輝線を除いた光強度の極大値あるいは極小値を持ち、かつ輝線を除いた光強度変化の半値幅が、前記各コンポーネントセルの分光感度の波長に対する変化の半値幅以下である、前記各コンポーネントセルの数に対応した数の重畳光を付加することによって、波長間隔ごとの基準太陽光に対する合致度を1に近い値を基本としつつ、照射光のスペクトルを可変にすることができる。また、前記各重畳光の光強度を調整することによって、照射光のスペクトルを変化させることにより、前記基本としたスペクトルの合致度を大きく乖離させることなく、効率的に前記各コンポーネントセル内で発生する光電流を調整することができる。この効果は、前記重畳光のスペクトルを上述の方法で、前記各コンポーネントセルの分光感度に合わせて設定した事による。また、前記各コンポーネントセル内で発生する光電流を調整することによって、前記各コンポーネントセルが照射光の下で発生する光電流を、前記各コンポーネントセルが基準太陽光の下で発生する光電流に合わせることができる。このような照射光の状態で、積層型光電変換素子の電流電圧特性を測定することにより、開放電圧、短絡電流、曲線因子、最大出力の全てが正確な、電流電圧特性を得ることができる。
【0183】
また、単一の光源と、透過光が基準太陽光のスペクトルに疑似させるように透過率を調整したエアマスフィルタを有する擬似太陽光照射装置において、単一の光源により所定の方向に放射される光の少なくとも一部が、該エアマスフィルタを透過するように配置し、所定の方向に放射される光の光路の一部に重畳用フィルタを配置し、該重畳用フィルタを通過した光と、該重畳用フィルタを通過しなかった光を合成する積分光学系を有し、前記重畳用フィルタは、積層型光電変換素子を構成する各コンポーネントセルの分光感度の極大波長に対し、±15%以内の波長に、透過率の極大値あるいは極小値を持ち、かつ透過率の波長に対する変化の半値幅が前記各コンポーネントセルの分光感度の波長に対する変化の半値幅以下であることを特徴とする擬似太陽光照射装置によって、上述の測定方法をより効果的に実施することができる。また、単一の光源を用いていることによって、擬似太陽光照射装置がコンパクトになり、光量の制御、照度の場所むらの制御がし易くなる。また、測定する積層型光電変換素子の種類が異なっても、前記重畳用フィルタを積層型光電変換素子の種類に合わせて交換することによって、容易に対応することができ、擬似太陽光照射装置の汎用性が向上する。また、測定する積層型光電変換素子の種類に応じて、好ましい前記重畳用フィルタを容易に設計することができる。また、耐久性の高い重畳用フィルタを低コストで作成することができる。
【0184】
また、前記重畳用フィルタは、透過率の波長に対する変化の半値幅を120nm以上にすることによって、前記重畳光を合成した照射光のスペクトルの調整幅を増大させることができ、擬似太陽光照射装置の制御性がより向上する。また、前記重畳光の合成による合成後の照射光のスペクトル合致度の基準太陽光からの乖離を小さく抑えることができる。
【0185】
また、前記重畳用フィルタの波長に対する透過率の変化率が、透過率の極大値あるいは極小値に至る変化幅の半値にあたる透過率を示す波長における変化率の絶対値で、0.2%/nm以上、2%/nm以下であることによって、前記重畳光の合成による合成後の照射光のスペクトル合致度の基準太陽光からの乖離をさらに小さく抑えることができる。また、コンポーネントセルの短絡電流の調整幅を効率的に取ることができ、擬似太陽光照射装置の制御性がより向上する。
【0186】
また、前記重畳用フィルタは、極小値を含む所望の波長領域に渡って透過率が下がっており、所望の波長領域以外で、積層型光電変換素子の感度のある波長領域では、70%以上の透過率を有することによって、前記重畳用フィルタによる光エネルギーの損失が減少し、光源の光の利用効率が向上する。それによって、光源の使用電力を抑えることができ、擬似太陽光照射装置の大きさもよりコンパクトにすることができる。
【0187】
前記重畳用フィルタは、少なくともその一部が多層膜からなることによって、測定する積層型光電変換素子の種類に合わせて、透過率の極大値あるいは極小値、透過率の波長に対する変化の半値幅、透過率の極大値あるいは極小値に至る変化幅の半値にあたる透過率の波長における変化率を容易に設計し、実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の擬似太陽光照射装置の重畳用フィルタの一例と積層型光電変換素子のコンポーネントセルの分光感度の一例の関係を模式的に説明する説明図である。
【図2】本発明の擬似太陽光照射装置の重畳用フィルタの一例の作成手順を示すフローチャートである。
【図3】本発明の積層型光電変換素子の電流電圧特性の測定方法による測定手順の一例を示すフローチャートである。
【図4】本発明の擬似太陽光照射装置の一例の基本構造を模式的に説明する説明図である。
【図5】本発明の測定方法に使用する基準セルの一例を説明する断面構成図である。
【図6】実施例1のトリプル型太陽電池セルの各コンポーネントセルの分光感度と、それに対応する重畳用フィルタの透過率を示すグラフである。
【図7】比較例1の従来の多層膜フィルタの透過率を示すグラフである。
【図8】実施例2のバンドオンフィルタの透過率を示すグラフである。
【図9】実施例3のダブル型太陽電池セルの各コンポーネントセルの分光感度と、それに対応する重畳用フィルタの透過率を示すグラフである。
【符号の説明】
101 n番目のコンポーネントセルの分光感度Q(λ)のグラフ
102 n番目の重畳用フィルタの透過率T(λ)のグラフ
401 光源ランプ
402 楕円ミラー
403 一次平面ミラー
404 エアマスフィルタ
405 インテグレータ
406 シャッター
407 二次平面ミラー
408 コリメータレンズ
409 光照射面
410 重畳用フィルタ
501 単接合光電変換素子
502 光電変換素子のケース
503 光学フィルタのホルダー
504、505 光学フィルタ
601 トップセルの分光感度グラフ
602 ミドルセルの分光感度グラフ
603 ボトムセルの分光感度グラフ
604 トップセル用の重畳用フィルタの透過率グラフ
605 ミドルセル用の重畳用フィルタの透過率グラフ
606 ボトムセル用の重畳用フィルタの透過率グラフ
701 ダイクロイックフィルタの透過率グラフ
702 バンドパスフィルタの透過率グラフ
703 コールドミラーの透過率グラフ
801 トップセル用のバンドオンフィルタの透過率グラフ
802 ミドルセル用のバンドオンフィルタの透過率グラフ
803 ボトムセル用のバンドオンフィルタの透過率グラフ
901 トップセルの分光感度グラフ
902 ボトムセルの分光感度グラフ
903 トップセル用の重畳用フィルタの透過率グラフ
904 ボトムセル用の重畳用フィルタの透過率グラフ

Claims (7)

  1. 少なくとも2つ以上のコンポーネントセルを含む積層型光電変換素子の電流電圧特性の測定方法に於いて、基準太陽光に疑似した光に、前記各コンポーネントセルの分光感度が極大となる波長に対し、±15%以内の波長に、輝線を除いた光強度の極大値あるいは極小値を持ち、かつ輝線を除いた光強度変化の半値幅が、前記各コンポーネントセルの分光感度の波長に対する変化の半値幅以下である、前記各コンポーネントセルの数に対応した数の重畳光を付加し、前記各重畳光の光強度を調整することによって、前記各コンポーネントセル内で発生する光電流を調整した後、電流電圧特性を測定することを特徴とする積層型光電変換素子の電流電圧特性の測定方法。
  2. 前記各重畳光の輝線を除いた光強度変化の半値幅が、120nm以上であることを特徴とする請求項1に記載の積層型光電変換素子の電流電圧特性の測定方法。
  3. 単一の光源と、透過光が基準太陽光のスペクトルに疑似させるように透過率を調整したエアマスフィルタを有する擬似太陽光照射装置において、単一の光源により所定の方向に放射される光が、該エアマスフィルタを透過するように配置し、所定の方向に放射される光の光路の一部に重畳用フィルタを配置し、該重畳用フィルタを通過した光と、該重畳用フィルタを通過しなかった光を合成する積分光学系を有し、前記重畳用フィルタは、積層型光電変換素子を構成する各コンポーネントセルの分光感度の極大波長に対し、±15%以内の波長に、透過率の極大値あるいは極小値を持ち、かつ透過率の波長に対する変化の半値幅が前記各コンポーネントセルの分光感度の波長に対する変化の半値幅以下であることを特徴とする擬似太陽光照射装置。
  4. 前記重畳用フィルタは、透過率の波長に対する変化の半値幅が120nm以上であることを特徴とする請求項3に記載の擬似太陽光照射装置。
  5. 前記重畳用フィルタの波長に対する透過率の変化率が、透過率の極大値あるいは極小値に至る変化幅の半値にあたる透過率を示す波長における変化率の絶対値で、0.2%/nm以上、2%/nm以下であることを特徴とする請求項3又は4に記載の擬似太陽光照射装置。
  6. 前記重畳用フィルタは、極小値を含む所望の波長領域に渡って透過率が下がっており、所望の波長領域以外で、積層型光電変換素子の感度のある波長領域では、70%以上の透過率を有することを特徴とする請求項3〜5の何れか1項に記載の擬似太陽光照射装置。
  7. 前記重畳用フィルタは、少なくともその一部が多層膜からなることを特徴とする請求項3〜6の何れか1項に記載の擬似太陽光照射装置。
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