JP2004271707A - 平版印刷版の製版方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】感度を改善させると共に、生産性も向上させることができるポジ型平版印刷版の製版方法を提供すること。
【解決手段】親水性支持体上に、水不溶性且つアルカリ可溶性樹脂を含む下層と、水不溶性且つアルカリ可溶性樹脂を含有し、露光によりアルカリ性水溶液に対する溶解性が増大する上層とをこの順に有し、前記下層および上層の少なくとも1つの層に赤外線吸収染料を含む平版印刷版用原版を、レーザーを用いてレーザービーム画素滞留時間が2.0〜20μ秒で画像様に露光した後、現像液で現像処理することを特徴とする平版印刷版の製版方法。
【選択図】 なし

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、平版印刷版の製版方法に関するものあり、特にサーマルポジ型平版印刷版の製版方法に関するものである。
【0002】
近年、印刷業界においても省資源、省力化、高速化などの要求は、より一層高まっており、それらの要求に対応できる「刷り易い印刷版」が要求されている。それには印刷条件、特に湿し水やインキの厳密なコントロールを行わなくとも、美しい印刷物が得られることが重要なポイントとなる。
【0003】
一方、近年のレーザの発展は目ざましく、特に近赤外から赤外に発光領域を持つ固体レーザおよび半導体レーザは高出力かつ小型の物が容易に入手できる様になっている。このような高出力レーザを用いた露光(通常、露光エネルギー密度が5kW〜10kW/cmより大きい)により、感光性樹脂の溶解性を変化させる記録方式はヒートモード記録又はサーマル記録方式と呼ばれ、近年、平版印刷の分野において、コンピュータ等のディジタルデータから直接製版するダイレクト製版に用いる記録方式として注目されている。具体的には、支持体上に、高出力レーザ露光により溶解性が増大する感光層(ポジ型感光層という)を設けたサーマルポジ型平版印刷版原版、支持体上に高出力レーザ露光によりその溶解性が低下する感光層(ネガ型感光層という)を設けたサーマルネガ型平版印刷版が上市されている。
【0004】
そして、ダイレクト製版タイプの平版印刷版では、露光ヘッドのマルチチャンネル化によって、1版あたりの露光時間を短縮し、生産性を向上させることが求められている。これを解決する技術として、近年、GLV(Grating Light Valve)と呼ばれる変調素子が開発され、チャンネル数が従来ヘッドよりも更に増大している(特許文献1及び2参照)。
一方、元光源にあたるレーザーの高出力化がこれに追いつかず、1ビームあたりの露光量が減少し、必要露光量を得るために、低速度露光(1画素当たりの露光時間を長くすること)が必要である。このとき支持体、特にアルミ基板への熱の逃げによる感度低下(低照度不軌)が起こるという問題が生じ、これを回避するには更に低速度としなければならず、生産性向上は望めなくなる。
【0005】
【特許文献1】
特開2001−162866号公報
【特許文献2】
特開2000−168136号公報
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、感度を改善させると共に生産性も向上させることができるポジ型平版印刷版の製版方法を提供することを課題とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明の課題は以下の手段により達成できる。
(1)親水性支持体上に、水不溶性且つアルカリ可溶性樹脂を含む下層と、水不溶性且つアルカリ可溶性樹脂を含有し、露光によりアルカリ性水溶液に対する溶解性が増大する上層とをこの順に有し、前記下層および上層の少なくとも1つの層に赤外線吸収染料を含む平版印刷版用原版を、レーザーを用いてレーザービーム画素滞留時間が2.0〜20μ秒で画像様に露光した後、現像液で現像処理することを特徴とする平版印刷版の製版方法。
【0008】
(2)前記上層及び下層の総塗布量が、1.2〜3.0g/mであることを特徴とする上記(1)記載の平版印刷版の製版方法。
(3)前記画像様露光工程において、GLV変調素子を備えたレーザー露光記録装置を用いることを特徴とする上記(1)または(2)記載の平版印刷版の製版方法。
【0009】
【発明の実施の態様】
以下に本発明の製版方法について詳細に説明する。
本発明は、平版印刷版原版に、レーザーを用いて画像様露光する露光工程、及び露光された該原版を現像する現像工程を含む平版印刷版の製版方法において、該平版印刷版原版の画像記録層を重層構造とすると共に該像様露光する工程における平版印刷版原版上のレーザービーム画素滞留時間を特定の範囲にしたことを特徴とする。
【0010】
本発明に用いられる平版印刷版原版は、親水性支持体上に、水不溶性且つアルカリ可溶性樹脂を含む下層と、その上に、水不溶性且つアルカリ可溶性樹脂を含有し、露光によりアルカリ性水溶液に対する溶解性が増大する上層とからなり、該下層および上層の少なくとも1つの層に赤外線吸収染料を含む画像記録層を設けた平版印刷版原版である。このような構成の平版印刷版を、以下、重層サーマルポジともいう。
重層サーマルポジの下層は、断熱層として機能するため親水性支持体への熱の拡散が抑制され、画像記録層として機能する上層の感度向上を図ることができる。
また、この高感度化された重層サーマルポジとGLVなどの多チャンネルビームを組み合わせ、レーザービーム画素滞留時間を2.0〜20μ秒として像様露光することにより、平版印刷版の生産性(時間当たりの露光枚数)が向上することとなる。
【0011】
ところで、重層サーマルポジの問題点として、レーザー露光時のアブレーションによる飛散カスの発生がある。これは、画像記録層の上層に赤外線吸収色素を添加している重層型感光材料で特に起こりやすく、飛散カスの発生により、光学系を汚染し、長期安定使用の障害となっている。特に高照度短時間露光では、画像記録層表面の到達温度が画像形成に必要な温度をはるかに越えた値に上昇してしまうため、問題が顕在化しやすい。
これに対し、本発明のレーザービーム画像滞留時間で露光を行うと、低照度長時間露光になるため、画像記録層表面の到達温度が画像形成に必要な適正温度まで下がり、不要なアブレーションを起こすことなく露光が可能となるため、上記問題点の解決につながる。
【0012】
〔露光工程〕
本発明の製版方法に用いられる露光装置としてはレーザービーム方式であれば特に限定されず、円筒外面(アウタードラム)走査方式、円筒内面(インナードラム)走査方式、平面(フラットベッド)走査方式の何れも用いることができるが、低照度長時間露光による生産性を上げるためにマルチビーム化しやすいアウタードラム方式が好ましく用いられ、特にGLV変調素子を備えたアウタードラム方式の露光装置が好ましい。
【0013】
本発明において、レーザービーム画素滞留時間とはレーザービームが1画素(ワンドット)を通過する時間、即ち1画素当たりの露光時間を意味する。本発明では、レーザービーム画素滞留時間を2.0〜20μ秒、好ましくは2.5〜15μ秒とする。
また、レーザービームが1画素を通過する時間におけるレーザービーム印加量は、10〜500mJ/cmが好ましく、30〜300mJ/cmが更に好ましい。
【0014】
画像記録層の塗布量は、上層及び下層からなる乾燥後の総質量を意味し、1.2〜3.0g/mが好ましく、1.4〜2.5g/mが更に好ましい。
画像記録層の塗布量が、少なすぎると、即ち画像記録層厚が薄すぎると、親水性支持体への熱の拡散が大きくなり、感度が低下し生産性を上げることが困難となる傾向がある。
画像記録層の塗布量が、多すぎると、即ち画像記録層厚が厚すぎると、断熱性の点では問題はないが、溶解させる画像記録層の絶対量が増加してしまい、感度低下の要因となる傾向がある。
【0015】
本発明は露光工程において、GLV変調素子を備えたレーザー露光記録装置を用いてマルチチャンネル化することが平版印刷版の生産性を向上させる上で好ましい。GLV変調素子としては、レーザービームを200チャンネル以上に分割できるものが好ましく、500チャンネル以上に分割できるものが更に好ましい。また、レーザービーム径は、15μm以下が好ましく、10μm以下が更に好ましい。
レーザー出力は10〜100Wが好ましく、20〜80Wが更に好ましい。ドラム回転数は、20〜300rpmが好ましく、30〜200rpmが更に好ましい。
【0016】
〔アルカリ可溶性高分子〕
本発明において、画像記録層上層及び下層に使用される水不溶性且つアルカリ可溶性樹脂(以下、適宜、アルカリ可溶性高分子と称する)とは、高分子中の主鎖および/または側鎖に酸性基を含有する単独重合体、これらの共重合体またはこれらの混合物を包含する。従って、本発明に係る高分子層は、アルカリ性現像液に接触すると溶解する特性を有するものである。本発明の上層及び下層に使用されるアルカリ可溶性高分子は、従来公知のものであれば特に制限はないが、(1)フェノール性水酸基、(2)スルホンアミド基、(3)活性イミド基のいずれかの官能基を分子内に有する高分子化合物であることが好ましい。例えば以下のものが例示されるが、これらに限定されるものではない。
【0017】
(1)フェノール性水酸基を有する高分子化合物としては、例えば、フェノールホルムアルデヒド樹脂、m−クレゾールホルムアルデヒド樹脂、p−クレゾールホルムアルデヒド樹脂、m−/p−混合クレゾールホルムアルデヒド樹脂、フェノール/クレゾール(m−,p−,又はm−/p−混合のいずれでもよい)混合ホルムアルデヒド樹脂等のノボラック樹脂やピロガロールアセトン樹脂が挙げられる。フェノール性水酸基を有する高分子化合物としてはこの他に、側鎖にフェノール性水酸基を有する高分子化合物を用いることが好ましい。側鎖にフェノール性水酸基を有する高分子化合物としては、フェノール性水酸基と重合可能な不飽和結合をそれぞれ1つ以上有する低分子化合物からなる重合性モノマーを単独重合、或いは該モノマーに他の重合性モノマーを共重合させて得られる高分子化合物が挙げられる。
【0018】
フェノール性水酸基を有する重合性モノマーとしては、フェノール性水酸基を有するアクリルアミド、メタクリルアミド、アクリル酸エステル、メタクリル酸エステル、又はヒドロキシスチレン等が挙げられる。具体的には、N−(2−ヒドロキシフェニル)アクリルアミド、N−(3−ヒドロキシフェニル)アクリルアミド、N−(4−ヒドロキシフェニル)アクリルアミド、N−(2−ヒドロキシフェニル)メタクリルアミド、N−(3−ヒドロキシフェニル)メタクリルアミド、N−(4−ヒドロキシフェニル)メタクリルアミド、o−ヒドロキシフェニルアクリレート、m−ヒドロキシフェニルアクリレート、p−ヒドロキシフェニルアクリレート、o−ヒドロキシフェニルメタクリレート、m−ヒドロキシフェニルメタクリレート、p−ヒドロキシフェニルメタクリレート、o−ヒドロキシスチレン、m−ヒドロキシスチレン、p−ヒドロキシスチレン、2−(2−ヒドロキシフェニル)エチルアクリレート、2−(3−ヒドロキシフェニル)エチルアクリレート、2−(4−ヒドロキシフェニル)エチルアクリレート、2−(2−ヒドロキシフェニル)エチルメタクリレート、2−(3−ヒドロキシフェニル)エチルメタクリレート、2−(4−ヒドロキシフェニル)エチルメタクリレート等を好適に使用することができる。かかるフェノール性水酸基を有する樹脂は、2種類以上を組み合わせて使用してもよい。更に、米国特許第4,123,279号明細書に記載されているように、t−ブチルフェノールホルムアルデヒド樹脂、オクチルフェノールホルムアルデヒド樹脂のような、炭素数3〜8のアルキル基を置換基として有するフェノールとホルムアルデヒドとの縮重合体を併用してもよい。
【0019】
(2)スルホンアミド基を有するアルカリ可溶性高分子化合物としては、スルホンアミド基を有する重合性モノマーを単独重合、或いは該モノマーに他の重合性モノマーを共重合させて得られる高分子化合物が挙げられる。スルホンアミド基を有する重合性モノマーとしては、1分子中に、窒素原子上に少なくとも1つの水素原子が結合したスルホンアミド基−NH−SO−と、重合可能な不飽和結合をそれぞれ1つ以上有する低分子化合物からなる重合性モノマーが挙げられる。その中でも、アクリロイル基、アリル基、又はビニロキシ基と、置換或いはモノ置換アミノスルホニル基又は置換スルホニルイミノ基とを有する低分子化合物が好ましい。
【0020】
(3)活性イミド基を有するアルカリ可溶性高分子化合物は、活性イミド基を分子内に有するものが好ましく、この高分子化合物としては、1分子中に活性イミド基と重合可能な不飽和結合をそれぞれ一つ以上有する低分子化合物からなる重合性モノマーを単独重合、或いは該モノマーに他の重合性モノマーを共重合させて得られる高分子化合物が挙げられる。
【0021】
このような化合物としては、具体的には、N−(p−トルエンスルホニル)メタクリルアミド、N−(p−トルエンスルホニル)アクリルアミド等を好適に使用することができる。
【0022】
更に、本発明のアルカリ可溶性高分子化合物としては、前記フェノール性水酸基を有する重合性モノマー、スルホンアミド基を有する重合性モノマー、及び活性イミド基を有する重合性モノマーのうちの2種以上を重合させた高分子化合物、或いはこれら2種以上の重合性モノマーに他の重合性モノマーを共重合させて得られる高分子化合物を使用することが好ましい。フェノール性水酸基を有する重合性モノマーに、スルホンアミド基を有する重合性モノマー及び/又は活性イミド基を有する重合性モノマーを共重合させる場合には、これら成分の配合質量比は50:50から5:95の範囲にあることが好ましく、40:60から10:90の範囲にあることが特に好ましい。
【0023】
本発明において、アルカリ可溶性高分子が前記フェノール性水酸基を有する重合性モノマー、スルホンアミド基を有する重合性モノマー、又は活性イミド基を有する重合性モノマーと、他の重合性モノマーとの共重合体である場合には、アルカリ可溶性を付与するモノマーは10モル%以上含むことが好ましく、20モル%以上含むものがより好ましい。共重合成分が10モル%より少ないと、アルカリ可溶性が不十分となりやすく、現像ラチチュードの向上効果が十分達成されないことがある。
【0024】
前記フェノール性水酸基を有する重合性モノマー、スルホンアミド基を有する重合性モノマー、又は活性イミド基を有する重合性モノマーと共重合させるモノマー成分としては、下記(m1)〜(m12)に挙げる化合物を例示することができるが、これらに限定されるものではない。
(m1)2−ヒドロキシエチルアクリレート又は2−ヒドロキシエチルメタクリレート等の脂肪族水酸基を有するアクリル酸エステル類、及びメタクリル酸エステル類。
(m2)アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸プロピル、アクリル酸ブチル、アクリル酸アミル、アクリル酸ヘキシル、アクリル酸オクチル、アクリル酸ベンジル、アクリル酸−2−クロロエチル、グリシジルアクリレート、等のアルキルアクリレート。
(m3)メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸プロピル、メタクリル酸ブチル、メタクリル酸アミル、メタクリル酸ヘキシル、メタクリル酸シクロヘキシル、メタクリル酸ベンジル、メタクリル酸−2−クロロエチル、グリシジルメタクリレート、等のアルキルメタクリレート。
(m4)アクリルアミド、メタクリルアミド、N−メチロールアクリルアミド、N−エチルアクリルアミド、N−ヘキシルメタクリルアミド、N−シクロヘキシルアクリルアミド、N−ヒドロキシエチルアクリルアミド、N−フェニルアクリルアミド、N−ニトロフェニルアクリルアミド、N−エチル−N−フェニルアクリルアミド等のアクリルアミド若しくはメタクリルアミド。
【0025】
(m5)エチルビニルエーテル、2−クロロエチルビニルエーテル、ヒドロキシエチルビニルエーテル、プロピルビニルエーテル、ブチルビニルエーテル、オクチルビニルエーテル、フェニルビニルエーテル等のビニルエーテル類。
(m6)ビニルアセテート、ビニルクロロアセテート、ビニルブチレート、安息香酸ビニル等のビニルエステル類。
(m7)スチレン、α−メチルスチレン、メチルスチレン、クロロメチルスチレン等のスチレン類。
(m8)メチルビニルケトン、エチルビニルケトン、プロピルビニルケトン、フェニルビニルケトン等のビニルケトン類。
(m9)エチレン、プロピレン、イソブチレン、ブタジエン、イソプレン等のオレフィン類。
(m10)N−ビニルピロリドン、アクリロニトリル、メタクリロニトリル等。(m11)マレイミド、N−アクリロイルアクリルアミド、N−アセチルメタクリルアミド、N−プロピオニルメタクリルアミド、N−(p−クロロベンゾイル)メタクリルアミド等の不飽和イミド。
(m12)アクリル酸、メタクリル酸、無水マレイン酸、イタコン酸等の不飽和カルボン酸。
【0026】
アルカリ水可溶性高分子化合物としては、赤外線レーザー等による露光での画像形成性に優れる点で、フェノール性水酸基を有することが好ましく、例えば、フェノールホルムアルデヒド樹脂、m−クレゾールホルムアルデヒド樹脂、p−クレゾールホルムアルデヒド樹脂、m−/p−混合クレゾールホルムアルデヒド樹脂、フェノール/クレゾール(m−,p−,又はm−/p−混合のいずれでもよい)混合ホルムアルデヒド樹脂等のノボラック樹脂やピロガロールアセトン樹脂が好ましく挙げられる。
【0027】
また、フェノール性水酸基を有するアルカリ水可溶性高分子化合物としては、更に、米国特許第4,123,279号明細書に記載されているように、t−ブチルフェノールホルムアルデヒド樹脂、オクチルフェノールホルムアルデヒド樹脂のような、炭素数3〜8のアルキル基を置換基として有するフェノールとホルムアルデヒドとの縮重合体が挙げられる。
【0028】
アルカリ水可溶性高分子化合物の共重合の方法としては、従来知られている、グラフト共重合法、ブロック共重合法、ランダム共重合法等を用いることができる。
【0029】
本発明においてアルカリ可溶性高分子が、前記フェノール性水酸基を有する重合性モノマー、スルホンアミド基を有する重合性モノマー、又は活性イミド基を有する重合性モノマーの単独重合体或いは共重合体の場合、重量平均分子量が2,000以上、数平均分子量が500以上のものが好ましい。更に好ましくは、重量平均分子量が5,000〜300,000で、数平均分子量が800〜250,000であり、分散度(重量平均分子量/数平均分子量)が1.1〜10のものである。また、本発明においてアルカリ可溶性高分子がフェノールホルムアルデヒド樹脂、クレゾールアルデヒド樹脂等の樹脂である場合には、重量平均分子量が500〜20,000であり、数平均分子量が200〜10,000のものが好ましい。
【0030】
下層で用いられるアルカリ可溶性高分子としては、アクリル樹脂が好ましい。さらに、このアクリル樹脂としてスルホアミド基を有するものが特に好ましい。また、上部上部感熱層で用いられるアルカリ可溶性高分子としては、未露光部では強い水素結合性を生起し、露光部においては、一部の水素結合が容易に解除される点においてフェノール性水酸基を有する樹脂が望ましい。更に好ましくはノボラック樹脂である。
【0031】
これらアルカリ可溶性高分子化合物は、それぞれ1種類或いは2種類以上を組み合わせて使用してもよく、前記画像記録層全固形分中、30〜99質量%、好ましくは40〜95質量%、特に好ましくは50〜90質量%の添加量で用いられる。アルカリ可溶性高分子の添加量が上記範囲において画像記録層の耐久性および感度の両面で好ましい。
【0032】
〔赤外線吸収染料〕
本発明において、画像記録層に用いられる赤外線吸収染料は、赤外光を吸収し熱を発生する染料であれば特に制限はなく、赤外線吸収染料として知られる種々の染料を用いることができる。
【0033】
本発明に係る赤外線吸収染料としては、市販の染料及び文献(例えば「染料便覧」有機合成化学協会編集、昭和45年刊)に記載されている公知のものが利用できる。具体的には、アゾ染料、金属錯塩アゾ染料、ピラゾロンアゾ染料、アントラキノン染料、フタロシアニン染料、カルボニウム染料、キノンイミン染料、メチン染料、シアニン染料などの染料が挙げられる。本発明において、これらの染料のうち赤外光、もしくは近赤外光を吸収するものが、赤外光もしくは近赤外光を発光するレーザでの利用に適する点で特に好ましい。
【0034】
そのような赤外光、もしくは近赤外光を吸収する染料としては例えば特開昭58−125246号、特開昭59−84356号、特開昭59−202829号、特開昭60−78787号各公報等に記載されているシアニン染料、特開昭58−173696号、特開昭58−181690号、特開昭58−194595号各公報等に記載されているメチン染料、特開昭58−112793号、特開昭58−224793号、特開昭59−48187号、特開昭59−73996号、特開昭60−52940号、特開昭60−63744号各公報等に記載されているナフトキノン染料、 特開昭58−112792号公報等に記載されているスクワリリウム色素、英国特許434,875号明細書記載のシアニン染料等を挙げることができる。
【0035】
また、染料として米国特許第5,156,938号明細書記載の近赤外吸収増感剤も好適に用いられ、また、米国特許第3,881,924号明細書記載の置換されたアリールベンゾ(チオ)ピリリウム塩、特開昭57−142645号公報(米国特許第4,327,169号明細書)記載のトリメチンチアピリリウム塩、特開昭58−181051号、同58−220143号、同59−41363号、同59−84248号、同59−84249号、同59−146063号、同59−146061号各公報に記載されているピリリウム系化合物、特開昭59−216146号公報記載のシアニン色素、米国特許第4,283,475号明細書に記載のペンタメチンチオピリリウム塩等や特公平5−13514号、同5−19702号各公報に開示されているピリリウム化合物等が、市販品としては、エポリン社製のEpolight III−178、Epolight III−130、Epolight III−125等が、特に好ましく用いられる。また、染料として特に好ましい別の例として米国特許第4,756,993号明細書中に式(I)、(II)として記載されている近赤外線吸収染料を挙げることができる。
【0036】
これらの赤外線吸収染料は、上層または下層の何れか一方か、あるいは、両方の層に添加することができる。下層に赤外線吸収染料を添加することで、下層も感熱層として機能させることができる。なお、両方の層に添加する場合、下層に添加する赤外線吸収染料と、上層に添加する赤外線吸収染料とは互いに同じでも異なっていてもよい。また、これらの赤外線吸収染料は他の成分と同一の層に添加してもよいし、別の層を設けそこへ添加してもよい。別の層とする場合、感熱層に隣接する層へ添加するのが望ましい。また、染料と前記アルカリ可溶性樹脂とは同一の層に含まれるのが好ましいが、別の層でも構わない。
添加量としては、上層組成物の全固形分に対し1〜50質量%、好ましくは2〜20質量%の割合で添加することができる。染料の添加量が1質量%以上とすることで充分な感度が得られ、50質量%以下であれば感熱層の均一性および耐久性も良好である。また、下層組成物の全固形分に対し0〜20質量%、好ましくは0〜15質量%、さらに好ましくは0.1〜10質量%の割合で添加することができる。染料の添加量が20質量%以下とすることで、充分な感度が得られる。
【0037】
本発明において、上層は、少なくとも水不溶性且つアルカリ可溶性樹脂を含み、好ましくは、さらに赤外線吸収染料を含む層であり、像様露光工程により赤外線吸収染料から発生する熱エネルギーにより、上層を形成していた該アルカリ可溶性樹脂などの高分子化合物の結合が解除されるなどの働きにより、アルカリ性水溶液に対する上層の溶解性が増大し、露光部は下層を含め可溶となり、現像工程において除去されて非画像部を形成し、未露光部は不溶のままで画像部とするものである。
下層には赤外線吸収染料を含むことは必須ではないが、含むことが好ましい。
【0038】
〔その他の成分〕
前記上層又は下層を形成するにあたっては、上記の必須成分の他、本発明の効果を損なわない限りにおいて、更に必要に応じて、種々の添加剤を添加することができる。添加剤は下層のみに含有させてもよいし、上層のみに含有させてもよい。更に、両方の層に含有させてもよい。
以下に、添加剤の例を挙げて説明する。例えばオニウム塩、o−キノンジアジド化合物、芳香族スルホン化合物、芳香族スルホン酸エステル化合物等の熱分解性であり、分解しない状態ではアルカリ水可溶性高分子化合物の溶解性を実質的に低下させる物質を併用することは、画像部の現像液への溶解阻止性の向上、及び表面硬度の向上を図る点では好ましい。オニウム塩としてはジアゾニウム塩、アンモニウム塩、ホスホニウム塩、ヨードニウム塩、スルホニウム塩、セレノニウム塩、アルソニウム塩等を挙げることができる。
【0039】
本発明において用いられるオニウム塩として、好適なものとしては、例えば S. I. Schlesinger, Photogr. Sci. Eng.,18, 387(1974) 、T. S. Bal et al, Polymer, 21, 423(1980) 、特開平5−158230号公報に記載のジアゾニウム塩、米国特許第4,069,055号、同4,069,056号各明細書、特開平3−140140号公報に記載のアンモニウム塩、D. C. Necker et al,Macromolecules, 17, 2468(1984)、C. S. Wen et al, Teh, Proc. Conf. Rad. Curing ASIA, p478 Tokyo, Oct (1988)、米国特許第4,069,055号、同4,069,056号各明細書に記載のホスホニウム塩、J. V.Crivello et al, Macromorecules, 10(6), 1307 (1977)、Chem.& Eng. News, Nov.28, p31 (1988)、欧州特許第104,143 号、特開平2−150848号、特開平2−296514号各公報に記載のヨードニウム塩、J. V.Crivello et al, Polymer J. 17, 73 (1985)、J. V. Crivello et al. J.Org.Chem.,43, 3055 (1978)、W. R. Watt et al, J. Polymer Sci., Polymer Chem.Ed., 22, 1789 (1984) 、J. V. Crivello et al,Polymer Bull., 14, 279 (1985) 、J.V. Crivello et al, Macromorecules, 14(5) ,1141(1981)、J. V. Crivello et al, J. PolymerSci., Polymer Chem. Ed., 17, 2877 (1979) 、欧州特許第370,693 号、同233,567 号、同297,443 号、同297,442 号、米国特許第4,933,377号、同3,902,114 号、同4,760,013 号、同4,734,444 号、同2,833,827 号、独国特許第2,904,626 号、同3,604,580 号、同3,604,581 号の各明細書に記載のスルホニウム塩、J. V. Crivello et al,Macromorecules, 10(6), 1307 (1977)、J. V. Crivello et al, J. Polymer Sci., Polymer Chem.Ed.,17, 1047 (1979) に記載のセレノニウム塩、C. S. Wen et al, Teh,Proc.Conf.Rad. Curing ASIA, p478 Tokyo, Oct (1988)に記載のアルソニウム塩等があげられる。オニウム塩のなかでも、ジアゾニウム塩およびアンモニウム塩が特に好ましい。好適なジアゾニウム塩としては特開平5−158230号公報記載のものが挙げられ、好適なアンモニウム塩としては特願2001−398047明細書に記載のものが挙げられる。
【0040】
オニウム塩の対イオンとしては、四フッ化ホウ酸、六フッ化リン酸、トリイソプロピルナフタレンスルホン酸、5−ニトロ−o−トルエンスルホン酸、5−スルホサリチル酸、2,5−ジメチルベンゼンスルホン酸、2,4,6−トリメチルベンゼンスルホン酸、2−ニトロベンゼンスルホン酸、3−クロロベンゼンスルホン酸、3−ブロモベンゼンスルホン酸、2−フルオロカプリルナフタレンスルホン酸、ドデシルベンゼンスルホン酸、1−ナフトール−5−スルホン酸、2−メトキシ−4−ヒドロキシ−5−ベンゾイル−ベンゼンスルホン酸、及びパラトルエンスルホン酸等を挙げることができる。これらの中でも特に六フッ化リン酸、トリイソプロピルナフタレンスルホン酸や2,5−ジメチルベンゼンスルホン酸のごときアルキル芳香族スルホン酸が好適である。
【0041】
好適なキノンジアジド類としてはo−キノンジアジド化合物を挙げることができる。本発明に用いられるo−キノンジアジド化合物は、少なくとも1個のo−キノンジアジド基を有する化合物で、熱分解によりアルカリ可溶性を増すものであり、種々の構造の化合物を用いることができる。つまり、o−キノンジアジドは熱分解により結着剤の溶解抑制能を失うことと、o−キノンジアジド自身がアルカリ可溶性の物質に変化することの両方の効果により感材系の溶解性を助ける。本発明に用いられるo−キノンジアジド化合物としては、例えば、J.コーサー著「ライト−センシティブ・システムズ」(John Wiley & Sons. Inc.)第339〜352頁に記載の化合物が使用できるが、特に種々の芳香族ポリヒドロキシ化合物あるいは芳香族アミノ化合物と反応させたo−キノンジアジドのスルホン酸エステル又はスルホン酸アミドが好適である。また、特公昭43−28403 号公報に記載されているようなベンゾキノン(1,2)−ジアジドスルホン酸クロライド又はナフトキノン−(1,2)−ジアジド−5−スルホン酸クロライドとピロガロール−アセトン樹脂とのエステル、米国特許第3,046,120号及び同第3,188,210号各明細書に記載されているベンゾキノン−(1,2)−ジアジドスルホン酸クロライド又はナフトキノン−(1,2)−ジアジド−5−スルホン酸クロライドとフェノール−ホルムアルデヒド樹脂とのエステルも好適に使用される。
【0042】
さらにナフトキノン−(1,2)−ジアジド−4−スルホン酸クロライドとフェノールホルムアルデヒド樹脂あるいはクレゾール−ホルムアルデヒド樹脂とのエステル、ナフトキノン−(1,2)−ジアジド−4−スルホン酸クロライドとピロガロール−アセトン樹脂とのエステルも同様に好適に使用される。その他の有用なo−キノンジアジド化合物としては、数多くの特許に報告され知られている。例えば特開昭47−5303号、特開昭48−63802 号、特開昭48−63803 号、特開昭48−96575 号、特開昭49−38701 号、特開昭48−13354 号、特公昭41−11222号、特公昭45−9610号、特公昭49−17481 号などの各公報、米国特許第2,797,213 号、同第3,454,400 号、同第3,544,323 号、同第3,573,917 号、同第3,674,495 号、同第3,785,825 号、英国特許第1,227,602 号、同第1,251,345 号、同第1,267,005 号、同第1,329,888 号、同第1,330,932 号、ドイツ特許第854,890 号などの各明細書中に記載されているものをあげることができる。
【0043】
o−キノンジアジド化合物の添加量は好ましくは層を形成する全固形分に対し、1〜50質量%、更に好ましくは5〜30質量%、特に好ましくは10〜30質量%の範囲である。これらの化合物は単一で使用できるが、数種の混合物として使用してもよい。
【0044】
o−キノンジアジド化合物以外の添加剤の添加量は、好ましくは1〜50質量%、更に好ましくは5〜30質量%、特に好ましくは10〜30質量%である。本発明の添加剤とアルカリ可溶性高分子とは、同一層へ含有させることが好ましい。
【0045】
また、画像のディスクリミネーション(疎水性/親水性の識別性)の強化や表面のキズに対する抵抗力を強化する目的で、特開2000−187318号公報に記載されているような、分子中に炭素数3〜20のパーフルオロアルキル基を2又は3個有する(メタ)アクリレート単量体を重合成分とする重合体を併用すること好ましい。このような化合物は、下層および上層のどちらに含有させてもよいが、より効果的なのは上部に位置する感熱層に含有させることである。添加量としては、感熱層材料中に占める割合が0.1〜10質量%が好ましく、より好ましくは0.5〜5質量%である。
【0046】
本発明における印刷版材料中には、キズに対する抵抗性を付与する目的で、表面の静摩擦係数を低下させる化合物を添加することもできる。具体的には、US6117913号公報に用いられているような、長鎖アルキルカルボン酸のエステルなどを挙げることが出来る。このような化合物は、下層、上層のどちらに含有させてもよいが、より効果的なのは上部に位置する上部感熱層に含有させることである。添加量として好ましいのは、層を形成する材料中に占める割合が0.1〜10質量%。より好ましくは0.5〜5質量%である。
【0047】
また、本発明における下層或いは上層中には、必要に応じて低分子量の酸性基を有する化合物を含んでもよい。酸性基としてはスルホン酸、カルボン酸、リン酸基を挙げることが出来る。中でもスルホン酸基を有する化合物が好ましい。具体的には、p−トルエンスルホン酸、ナフタレンスルホン酸等の芳香族スルホン酸類や脂肪族スルホン酸類を挙げることが出来る。このような化合物は、下層、上層のどちらに含有させてもよい。添加量として好ましいのは、層を形成する材料中に占める割合が0.05〜5質量%。より好ましくは0.1〜3質量%である。上記範囲とすることで、各層の現像液に対する溶解性が良好となる。
【0048】
また、本発明においては、下層或いは上層の溶解性を調節する目的で前述したもの以外の種々の溶解抑制剤を含んでもよい。それら溶解抑制剤としては、特開平11−119418号公報に示されるようなジスルホン化合物又はスルホン化合物が好適に用いられる。このような化合物は、下層、上層のどちらに含有させてもよい。添加量として好ましいのは、それぞれ層を構成する材料中に占める割合が0.05〜20質量%。より好ましくは0.5〜10質量%である。
【0049】
また、更に感度を向上させる目的で、環状酸無水物類、フェノール類、有機酸類を併用することもできる。環状酸無水物としては米国特許第4,115,128 号明細書に記載されている無水フタル酸、テトラヒドロ無水フタル酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸、3,6−エンドオキシ−Δ4 −テトラヒドロ無水フタル酸、テトラクロル無水フタル酸、無水マレイン酸、クロル無水マレイン酸、α−フェニル無水マレイン酸、無水コハク酸、無水ピロメリット酸などが使用できる。フェノール類としては、ビスフェノールA、p−ニトロフェノール、p−エトキシフェノール、2,4,4′−トリヒドロキシベンゾフェノン、2,3,4−トリヒドロキシベンゾフェノン、4−ヒドロキシベンゾフェノン、4,4′,4″−トリヒドロキシトリフェニルメタン、4,4′,3″,4″−テトラヒドロキシ−3,5,3′,5′−テトラメチルトリフェニルメタンなどが挙げられる。更に、有機酸類としては、特開昭60−88942 号、特開平2−96755 号各公報などに記載されている、スルホン酸類、スルフィン酸類、アルキル硫酸類、ホスホン酸類、リン酸エステル類及びカルボン酸類などがあり、具体的には、p−トルエンスルホン酸、ドデシルベンゼンスルホン酸、p−トルエンスルフィン酸、エチル硫酸、フェニルホスホン酸、フェニルホスフィン酸、リン酸フェニル、リン酸ジフェニル、安息香酸、イソフタル酸、アジピン酸、p−トルイル酸、3,4−ジメトキシ安息香酸、フタル酸、テレフタル酸、4−シクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸、エルカ酸、ラウリン酸、n−ウンデカン酸、アスコルビン酸などが挙げられる。上記の環状酸無水物、フェノール類及び有機酸類の層を構成する材料中に占める割合は、0.05〜20質量%が好ましく、より好ましくは0.1〜15質量%、特に好ましくは0.1〜10質量%である。
【0050】
本発明における下層或いは上層中には、露光による加熱後直ちに可視像を得るための焼き出し剤や、画像着色剤としての染料や顔料を加えることができる。焼き出し剤としては、露光による加熱によって酸を放出する化合物(光酸放出剤)と塩を形成し得る有機染料の組合せを代表として挙げることができる。具体的には、特開昭50−36209号、同53−8128号の各公報に記載されているo−ナフトキノンジアジド−4−スルホン酸ハロゲニドと塩形成性有機染料の組合せや、特開昭53−36223号、同54−74728号、同60−3626号、同61−143748号、同61−151644号及び同63−58440号の各公報に記載されているトリハロメチル化合物と塩形成性有機染料の組合せを挙げることができる。かかるトリハロメチル化合物としては、オキサゾール系化合物とトリアジン系化合物とがあり、どちらも経時安定性に優れ、明瞭な焼き出し画像を与える。
【0051】
画像の着色剤としては、前述の塩形成性有機染料以外に他の染料を用いることができる。塩形成性有機染料を含めて、好適な染料として油溶性染料と塩基性染料をあげることができる。具体的にはオイルイエロー#101、オイルイエロー#103、オイルピンク#312、オイルグリーンBG、オイルブルーBOS、オイルブルー#603、オイルブラックBY、オイルブラックBS、オイルブラックT−505(以上オリエント化学工業(株)製)、ビクトリアピュアブルー、クリスタルバイオレット(CI42555)、メチルバイオレット(CI42535)、エチルバイオレット、ローダミンB(CI145170B)、マラカイトグリーン(CI42000)、メチレンブルー(CI52015)などを挙げることができる。また、特開昭62−293247号公報に記載されている染料は特に好ましい。これらの染料は、印刷版材料全固形分に対し、0.01〜10質量%、好ましくは0.1〜3質量%の割合で印刷版材料中に添加することができる。更に本発明の印刷版材料中には必要に応じ、塗膜の柔軟性等を付与するために可塑剤が加えられる。例えば、ブチルフタリル、ポリエチレングリコール、クエン酸トリブチル、フタル酸ジエチル、フタル酸ジブチル、フタル酸ジヘキシル、フタル酸ジオクチル、リン酸トリクレジル、リン酸トリブチル、リン酸トリオクチル、オレイン酸テトラヒドロフルフリル、アクリル酸又はメタクリル酸のオリゴマー及びポリマー等が用いられる。
【0052】
本発明の方法が適用される平版印刷版用原版の上層および下層は、通常上記各成分を溶媒に溶かして、適当な支持体上に順次塗布することにより形成することができる。ここで使用する溶媒としては、エチレンジクロライド、シクロヘキサノン、メチルエチルケトン、メタノール、エタノール、プロパノール、エチレングリコールモノメチルエーテル、1−メトキシ−2−プロパノール、2−メトキシエチルアセテート、1−メトキシ−2−プロピルアセテート、ジメトキシエタン、乳酸メチル、乳酸エチル、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、テトラメチルウレア、N−メチルピロリドン、ジメチルスルホキシド、スルホラン、γ−ブチロラクトン、トルエン等をあげることができるがこれに限定されるものではない。これらの溶媒は単独あるいは混合して使用される。
【0053】
また、塗布に用いる溶剤としては、上層に用いるアルカリ可溶性高分子と下層に用いるアルカリ可溶性高分子に対して溶解性の異なるものを選ぶことが好ましい。つまり、下層を塗布した後、それに隣接して上層である感熱層を塗布する際、最上層の塗布溶剤として下層のアルカリ可溶性高分子を溶解させうる溶剤を用いると、層界面での混合が無視できなくなり、極端な場合、重層にならず均一な単一層になってしまう場合がある。このように、隣接する2つの層の界面で混合が生じたり、互いに相溶して均一層の如き挙動を示す場合、2層を有することによる本発明の効果が損なわれる虞があり、好ましくない。このため、上部の感熱層を塗布するのに用いる溶剤は、下層に含まれるアルカリ可溶性高分子に対する貧溶剤であることが望ましい。
【0054】
各層を塗布する場合の溶媒中の上記成分(添加剤を含む全固形分)の濃度は、好ましくは1〜50質量%である。また塗布、乾燥後に得られる支持体上の感熱層の塗布量(固形分)は、用途によって異なるが、感熱層は0.05〜1.0g/mであり、下層は0.3〜3.0g/mであることが好ましい。塗布量を上記範囲とすることで良好な感度および画像形成性が得られる。また、前記の2層の合計で0.5〜3.0g/mであることが好ましい。塗布量が0.5g/m以上であれば被膜特性が良好であり、また3.0g/m以下とすることで良好な感度が得られる。なお、塗布量が少なくなるにつれて、見かけの感度は大になるが、感光膜の被膜特性は低下する。
【0055】
塗布する方法としては、種々の方法を用いることができるが、例えば、バーコーター塗布、回転塗布、スプレー塗布、カーテン塗布、ディップ塗布、エアーナイフ塗布、ブレード塗布、ロール塗布等を挙げることができる。本発明における感熱層中には、塗布性を良化するための界面活性剤、例えば特開昭62−170950号公報に記載されているようなフッ素系界面活性剤を添加することができる。好ましい添加量は、下層或いは上層全固形分中0.01〜1質量%、さらに好ましくは0.05〜0.5質量%である。
【0056】
〔支持体〕
本発明に使用される平版印刷版用原版の親水性支持体としては、必要な強度と耐久性を備えた寸度的に安定な板状物が挙げられ、例えば、紙、プラスチック(例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン等)がラミネートされた紙、金属板(例えば、アルミニウム、亜鉛、銅等)、プラスチックフィルム(例えば、二酢酸セルロース、三酢酸セルロース、プロピオン酸セルロース、酪酸セルロース、酢酸酪酸セルロース、硝酸セルロース、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレン、ポリスチレン、ポリプロピレン、ポリカーボネート、ポリビニルアセタール等)、上記のごとき金属がラミネート、もしくは蒸着された紙、もしくはプラスチックフィルム等が含まれる。
【0057】
本発明の支持体としては、ポリエステルフィルム又はアルミニウム板が好ましく、その中でも寸法安定性がよく、比較的安価であるアルミニウム板は特に好ましい。好適なアルミニウム板は、純アルミニウム板及びアルミニウムを主成分とし、微量の異元素を含む合金板であり、更にアルミニウムがラミネートもしくは蒸着されたプラスチックフィルムでもよい。アルミニウム合金に含まれる異元素には、ケイ素、鉄、マンガン、銅、マグネシウム、クロム、亜鉛、ビスマス、ニッケル、チタンなどがある。合金中の異元素の含有量は高々10質量%以下である。
【0058】
本発明において特に好適なアルミニウムは、純アルミニウムであるが、完全に純粋なアルミニウムは精錬技術上製造が困難であるので、僅かに異元素を含有するものでもよい。このように本発明に適用されるアルミニウム板は、その組成が特定されるものではなく、従来より公知公用の素材のアルミニウム板を適宜に利用することができる。本発明で用いられるアルミニウム板の厚みはおよそ0.1〜0.6mm程度、好ましくは0.12〜0.5mm、特に好ましくは0.15mm〜0.4mmである。
【0059】
アルミニウム板を粗面化するに先立ち、所望により、表面の圧延油を除去するための例えば界面活性剤、有機溶剤又はアルカリ性水溶液などによる脱脂処理が行われる。アルミニウム板の表面の粗面化処理は、種々の方法により行われるが、例えば、機械的に粗面化する方法、電気化学的に表面を溶解粗面化する方法及び化学的に表面を選択溶解させる方法により行われる。機械的方法としては、ボール研磨法、ブラシ研磨法、ブラスト研磨法、バフ研磨法などの公知の方法を用いることができる。また、電気化学的な粗面化法としては塩酸又は硝酸電解液中で交流又は直流により行う方法がある。また、特開昭54−63902号公報に開示されているように両者を組み合わせた方法も利用することができる。この様に粗面化されたアルミニウム板は、必要に応じてアルカリエッチング処理及び中和処理された後、所望により表面の保水性や耐摩耗性を高めるために陽極酸化処理が施される。アルミニウム板の陽極酸化処理に用いられる電解質としては、多孔質酸化皮膜を形成する種々の電解質の使用が可能で、一般的には硫酸、リン酸、蓚酸、クロム酸あるいはそれらの混酸が用いられる。それらの電解質の濃度は電解質の種類によって適宜決められる。
【0060】
陽極酸化の処理条件は用いる電解質により種々変わるので一概に特定し得ないが一般的には電解質の濃度が1〜80質量%溶液、液温は5〜70℃、電流密度5〜60A/dm、電圧1〜100V、電解時間10秒〜5分の範囲であれば適当である。陽極酸化皮膜の量は1.0g/mより少ないと耐刷性が不十分であったり、平版印刷版の非画像部に傷が付き易くなって、印刷時に傷の部分にインキが付着するいわゆる「傷汚れ」が生じ易くなる。陽極酸化処理を施された後、アルミニウム表面は必要により親水化処理が施される。
本発明に使用される親水化処理としては、米国特許第2,714,066号、同第3,181,461号、第3,280,734号及び第3,902,734号各明細書に開示されているようなアルカリ金属シリケート(例えばケイ酸ナトリウム水溶液)法がある。この方法においては、支持体がケイ酸ナトリウム水溶液で浸漬処理されるか又は電解処理される。他に特公昭36−22063号公報に開示されているフッ化ジルコン酸カリウム及び米国特許第3,276,868号、同第4,153,461号、同第4,689,272号各明細書に開示されているようなポリビニルホスホン酸で処理する方法などが用いられる。
【0061】
本発明に適用される平版印刷版用原版は、親水性支持体上に少なくとも上層(上部感熱層)と下層の2層を積層して設けたものであるが、必要に応じて支持体と下層との間に下塗層を設けることができる。
下塗層成分としては種々の有機化合物が用いられ、例えば、カルボキシメチルセルロース、デキストリン、アラビアガム、2−アミノエチルホスホン酸などのアミノ基を有するホスホン酸類、置換基を有してもよいフェニルホスホン酸、ナフチルホスホン酸、アルキルホスホン酸、グリセロホスホン酸、メチレンジホスホン酸及びエチレンジホスホン酸などの有機ホスホン酸、置換基を有してもよいフェニルリン酸、ナフチルリン酸、アルキルリン酸及びグリセロリン酸などの有機リン酸、置換基を有してもよいフェニルホスフィン酸、ナフチルホスフィン酸、アルキルホスフィン酸及びグリセロホスフィン酸などの有機ホスフィン酸、グリシンやβ−アラニンなどのアミノ酸類、及びトリエタノールアミンの塩酸塩などのヒドロキシ基を有するアミンの塩酸塩等から選ばれるが、2種以上混合して用いてもよい。
【0062】
この有機下塗層は次のような方法で設けることができる。即ち、水又はメタノール、エタノール、メチルエチルケトンなどの有機溶剤もしくはそれらの混合溶剤に上記の有機化合物を溶解させた溶液をアルミニウム板上に塗布、乾燥して設ける方法と、水又はメタノール、エタノール、メチルエチルケトンなどの有機溶剤もしくはそれらの混合溶剤に上記の有機化合物を溶解させた溶液に、アルミニウム板を浸漬して上記化合物を吸着させ、その後水などによって洗浄、乾燥して有機下塗層を設ける方法である。前者の方法では、上記の有機化合物の0.005〜10質量%の濃度の溶液を種々の方法で塗布できる。また後者の方法では、溶液の濃度は0.01〜20質量%、好ましくは0.05〜5質量%であり、浸漬温度は20〜90℃、好ましくは25〜50℃であり、浸漬時間は0.1秒〜20分、好ましくは2秒〜1分である。これに用いる溶液は、アンモニア、トリエチルアミン、水酸化カリウムなどの塩基性物質や、塩酸、リン酸などの酸性物質によりpH1〜12の範囲に調整することもできる。また、画像記録材料の調子再現性改良のために黄色染料を添加することもできる。有機下塗層の被覆量は、2〜200mg/mが適当であり、好ましくは5〜100mg/mである。被覆量が上記範囲であれば十分な耐刷性能が得られる。
【0063】
上記のようにして作成されたポジ型平版印刷版用原版は、本発明の製版方法に従って画像様に露光され、その後、現像処理を施される。像様露光に用いられる活性光線の光源としては、高密度エネルギービーム(レーザービーム)が使用される。レーザービームとしてはヘリウム・ネオンレーザー、アルゴンレーザー、クリプトンレーザー、ヘリウム・カドミウムレーザー、KrFエキシマレーザー等が挙げられる。本発明においては、近赤外から赤外領域に発光波長を持つ光源が好ましく、固体レーザ、半導体レーザが特に好ましい。
【0064】
〔現像工程〕
本発明の方法において平版印刷版用原版の現像に用いる現像液および補充液としては、従来から知られている、緩衝作用を有する有機化合物と塩基とを主成分とし、実質上、二酸化ケイ素を含有しないアルカリ現像液を用いることを要する。本発明では、このような現像液を以下、「非シリケート現像液」と称する。なお、ここで「実質上」とは不可避の不純物及び副生成物としての微量の二酸化ケイ素の存在を許容することを意味する。本発明の画像形成方法において、前記平版印刷版用原版の現像工程に、このような非シリケート現像液を適用することで、傷の発生抑制効果は発現され、画像部に欠陥のない、良好な平版印刷版を得ることができる。アルカリ水溶液としては、特にpH12.5〜13.5のものが好ましい。
【0065】
本発明の製版方法に用いる「非シリケート現像液」は、前記したように緩衝作用を有する有機化合物と塩基とを主成分とするものである。緩衝作用を有する有機化合物としては、特開平8−220775号公報に緩衝作用を有する化合物として記載されている糖類(特に一般式(I)又は(II)で表されるもの)、オキシム類(特に一般式(III)で表されるもの)、フェノール類(特に一般式(IV)で表されるもの)及びフッ素化アルコール類(特に一般式(V)で表されるもの)等が挙げられる。一般式(I)〜(V)で表される化合物のなかでも、好ましいものは、一般式(I)又は(II)で表される糖類、一般式(V)で表されるフェノール類であり、さらに好ましくは一般式(I)又は(II)で表される糖類のうち、サッカロース等の非還元糖又はスルホサリチル酸である。非還元糖には、還元基同士の結合したトレハロース型少糖類、糖類の還元基と非糖類が結合した配糖体、糖類に水素添加して還元した糖アルコール等が包含される。本発明ではこれらのいずれも好適に用いられる。
【0066】
前記トレハロース型少糖類としては、例えば、サッカロースやトレハロースが挙げられ、前記配糖体としては、例えば、アルキル配糖体、フェノール配糖体、カラシ油配糖体等が挙げられる。前記糖アルコールとしては、例えば、D,L−アラビット、リビット、キシリット、D,L−ソルビット、D,L−アンニット、D,L−イジット、D,L−タリット、ズリシット、アロズルシット等が挙げられる。さらには、二糖類の水素添加で得られるマルチトール、オリゴ糖の水素添加で得られる還元体(還元水あめ)等も好適に挙げることができる。
【0067】
上記のうち、非還元糖としては、糖アルコール、サッカロースが好ましく、中でも特に、D−ソルビット、サッカロース、還元水あめが、適度なpH領域に緩衝作用がある点でより好ましい。これらの非還元糖は、単独でも、二種以上を組合せてもよく、現像液中に占める割合としては、0.1〜30質量%が好ましく、1〜20質量%がより好ましい。
【0068】
前記緩衝作用を有する有機化合物には、塩基としてアルカリ剤を、従来公知のものの中から適宜選択して組合せることができる。前記アルカリ剤としては、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム、リン酸三ナトリウム、リン酸三カリウム、リン酸三アンモニウム、リン酸二ナトリウム、リン酸二カリウム、リン酸二アンモニウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸アンモニウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム、炭酸水素アンモニウム、ホウ酸ナトリウム、ホウ酸カリウム、ホウ酸アンモニウム等の無機アルカリ剤、クエン酸カリウム、クエン酸三カリウム、クエン酸ナトリウム等が挙げられる。さらに、モノメチルアミン、ジメチルアミン、トリメチルアミン、モノエチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、モノイソプロピルアミン、ジイソプロピルアミン、トリイソプロピルァミン、n−ブチルアミン、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、モノイソプロパノールアミン、ジイソブロパノールアミシ、エチレンイミン、エチレンジアミン、ピリジン等の有機アルカリ剤も好適に挙げることができる。これらのアルカリ剤は、単独で用いても、二種以上を組合わせて用いてもよい。
【0069】
なかでも、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムが好ましい。その理由は、非還元糖に対する添加量を調整することにより、広いpH領域においてpH調整が可能となるためである。また、リン酸三ナトリウム、リン酸三カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム等もそれ自身に緩衝作用があるので好ましい。
【0070】
更に、自動現像機を用いて現像する場合には、現像液よりもアルカリ強度の高い水溶液(補充液)を現像液に加えることによって、長時間現像タンク中の現像液を交換する事なく、多量の平版印刷版用原版を処理できることが知られている。本発明においてもこの補充方式が好ましく適用される。現像液および補充液には、現像性の促進や抑制、現像カスの分散および印刷版画像部の親インキ性を高める目的で、必要に応じて種々の界面活性剤や有機溶剤を添加できる。好ましい界面活性剤としては、アニオン系、カチオン系、ノニオン系および両性界面活性剤が挙げられる。アニオン界面活性剤としては、ヒドロキシアルカンスルホン酸塩類、アルカンスルホン酸塩類、アルキルジフェニルエーテルスルホン酸塩類、などが好適に挙げられる。ノニオン性界面活性剤としては、例えば、ポリエチレングリコール、ポリエチレングリコールポリプロピレングリコールブロックコポリマー等のポリエチレングリコール類、多価アルコール型アルキレンオキシド付加化合物が挙げられる。両性界面活性剤としては、例えば、N−ラウリル−N,N−ジメチル−N−カルボキシメチルアンモニウム、N−ステアリル−N,N−ジメチル−N−カルボキシメチルアンモニウム、イミダゾリン類、スルホベタイン類等を挙げることができる。
更に現像液および補充液には必要に応じて、ハイドロキノン、レゾルシン、亜硫酸、亜硫酸水素酸などの無機酸のナトリウム塩、カリウム塩等の還元剤、更に有機カルボン酸、消泡剤、硬水軟化剤を加えることもできる。
【0071】
上記現像液及び補充液を用いて現像処理された印刷版は水洗水、界面活性剤等を含有するリンス液、アラビアガムや澱粉誘導体を含む不感脂化液で後処理される。本発明の画像記録材料を印刷版として使用する場合の後処理としては、これらの処理を種々組み合わせて用いることができる。
【0072】
近年、製版・印刷業界では製版作業の合理化及び標準化のため、印刷版用の自動現像機が広く用いられている。この自動現像機は、一般に現像部と後処理部からなり、印刷版を搬送する装置と各処理液槽及びスプレー装置からなり、露光済みの印刷版を水平に搬送しながら、ポンプで汲み上げた各処理液をスプレーノズルから吹き付けて現像処理するものである。また、最近は処理液が満たされた処理液槽中に液中ガイドロールなどによって印刷版を浸漬搬送させて処理する方法も知られている。このような自動処理においては、各処理液に処理量や稼働時間等に応じて補充液を補充しながら処理することができる。また、実質的に未使用の処理液で処理するいわゆる使い捨て処理方式も適用できる。
【0073】
本発明に係る平版印刷版用原版においては、画像露光し、現像し、水洗及び/又はリンス及び/又はガム引きして得られた平版印刷版に不必要な画像部(例えば原画フィルムのフィルムエッジ跡など)がある場合には、その不必要な画像部の消去が行なわれる。このような消去は、例えば特公平2−13293号公報に記載されているような消去液を不必要画像部に塗布し、そのまま所定の時間放置したのちに水洗することにより行なう方法が好ましいが、特開平59−174842号公報に記載されているようなオプティカルファイバーで導かれた活性光線を不必要画像部に照射したのち現像する方法も利用できる。
【0074】
以上のようにして本発明の製版方法により得られた平版印刷版は所望により不感脂化ガムを塗布したのち、印刷工程に供することができるが、より一層の高耐刷力の平版印刷版としたい場合にはバーニング処理が施される。平版印刷版をバーニングする場合には、バーニング前に特公昭61−2518号、同55−28062号、特開昭62−31859号、同61−159655号の各公報に記載されているような整面液で処理することが好ましい。その方法としては、該整面液を浸み込ませたスポンジや脱脂綿にて、平版印刷版上に塗布するか、整面液を満たしたバット中に印刷版を浸漬して塗布する方法や、自動コーターによる塗布などが適用される。また、塗布した後でスキージ、あるいは、スキージローラーで、その塗布量を均一にすることは、より好ましい結果を与える。
【0075】
整面液の塗布量は一般に0.03〜0.8g/m(乾燥質量)が適当である。整面液が塗布された平版印刷版は必要であれば乾燥された後、バーニングプロセッサー(たとえば富士写真フイルム(株)より販売されているバーニングプロセッサー:「BP−1300」)などで高温に加熱される。この場合の加熱温度及び時間は、画像を形成している成分の種類にもよるが、180〜300℃の範囲で1〜20分の範囲が好ましい。
【0076】
バーニング処理された平版印刷版は、必要に応じて適宜、水洗、ガム引きなどの従来より行なわれている処理を施こすことができるが水溶性高分子化合物等を含有する整面液が使用された場合にはガム引きなどのいわゆる不感脂化処理を省略することができる。
この様な処理によって得られた平版印刷版はオフセット印刷機等にかけられ、多数枚の印刷に用いられる。
【0077】
【実施例】
以下、本発明を実施例に従って説明するが、本発明の範囲はこれらの実施例に限定されない。
〔基板の作製〕
厚み0.3mmのアルミニウム板(材質1050)をトリクロロエチレンで洗浄して脱脂した後、毛径0.3mmの束植ナイロンブラシ3本とメジアン径25μmのパミス−水懸濁液(比重1.1g/cm)を用いアルミ表面を砂目立てして、水でよく洗浄した。この板を45℃の25%水酸化ナトリウム水溶液に9秒間浸漬してエッチングを行い、水洗後、さらに60℃で20%硝酸に20秒間浸漬し、水洗した。この時の砂目立て表面のエッチング量は約3g/mであった。次に、60Hzの交流電圧を用いて連続的に電気化学的な粗面化処理を行った。このときの電解液は、硝酸1質量%水溶液(アルミニウムイオンを0.5質量%含む)、液温50℃であった。交流電源波形は、電流値がゼロからピークに達するまでの時間TPが0.8msec、duty比1:1、台形の矩形波交流を用いて、カーボン電極を対極として電気化学的な粗面化処理を行った。補助アノードにはフェライトを用いた。電流密度は電流のピーク値で30A/dm、補助陽極には電源から流れる電流の5%を分流させた。硝酸電解における電気量はアルミニウム板が陽極時の電気量175C/dmであった。その後、スプレーによる水洗を行った。次に、塩酸0.5質量%水溶液(アルミニウムイオンを0.5質量%含む)、液温50℃の電解液にて、アルミニウム板が陽極時の電気量50C/dmの条件で、硝酸電解と同様の方法で、電気化学的な粗面化処理を行い、その後、スプレーによる水洗を行った。この板を15%硫酸(アルミニウムイオンを0.5質量%含む)を電解液として電流密度15A/dmで2.5g/mの直流陽極酸化被膜を設けた後、水洗、乾燥し、さらに、珪酸ナトリウム2.5質量%水溶液で30℃で10秒処理した。この基板の中心線平均粗さ(Ra)を直径2μmの針を用いて測定したところ、0.51μmであった。上記のようにして得られた基板に、下記下塗り液を塗布し、80℃で15秒間乾燥して、塗膜を形成させた。乾燥後の塗膜の被覆量は15mg/mであった。
【0078】
〔下塗り液〕
・下記化合物(P) 0.3g
・メタノール 100g
・水 1g
【0079】
【化1】
Figure 2004271707
【0080】
(実施例1)
得られた基板に下記塗布液1を塗布量が1.0g/mになるよう塗布したのち、TABAI社製、PERFECT OVEN PH200にてWind Controlを7に設定して140℃で50秒間乾燥した。更にその上に塗布液2を塗布量が0.3g/mになるようワイヤーバーで塗布したのち、同様に140℃60秒で乾燥し、2層構成の画像記録層を有する平版印刷版原版を得た。
【0081】
〔塗布液1〕
・N−(4−アミノスルホニルフェニル)メタクリルアミド/
アクリロニトリル/メタクリル酸メチル(36/34/30:
重量平均分子量5万) 210g
・シアニン染料A(下記構造) 13g
・4,4’−ビスヒドロキシフェニルスルホン 13g
・無水テトラヒドロフタル酸 19g
・p−トルエンスルホン酸 1g
・エチルバイオレットの対イオンを6−ヒイドロキシナフタレン
スルホンに変えたもの 8g
・2−メトキシ−4−(N−フェニルアミノ)ベンゼンジアゾニウム・
ヘキサフルオロホスフェート 3g
・フッ素系界面活性剤(メガファックF780F、大日本インキ
化学工業(株)社製) 2g
・メチルエチルケトン 2500g
・1−メトキシ−2−プロパノール 1300g
・γ−ブチロラクトン 1300g
【0082】
【化2】
Figure 2004271707
【0083】
〔塗布液2〕
・m,p−クレゾールノボラック(m/p比=6/4、重量平均分子量
4500、未反応クレゾール0.8質量%含有) 35g
・シアニン染料A(上記構造) 2g
・アクリル系ポリマーB(下記構造、重量平均分子量9万) 14g
・アンモニウム塩C(下記構造) 0.4g
・フッ素系界面活性剤(メガファックF780F、30%溶液、
大日本インキ化学工業(株)製) 2g
・フッ素系界面活性剤(メガファックF781F、大日本インキ
化学工業(株)製) 0.3g
・メチルエチルケトン 1050g
・1−メトキシ−2−プロパノール 2100g
【0084】
【化3】
Figure 2004271707
【0085】
【化4】
Figure 2004271707
【0086】
[平版印刷版の作製及び評価]
得られた平版印刷版原版の感度を以下のようにして測定した。
平版印刷版用原版を、ドラム径330mmのアウタードラム方式の露光装置で、GLV変調素子によりビームを512チャンネルに分割し、ビーム径10μm、半導体レーザー出力40W、ドラム回転速度50rpmで全面露光(レーザービーム画素滞留時間は10μ秒)した後、富士写真フイルム(株)製現像液DT−2(1:8で希釈したもの)及び富士写真フイルム(株)製フィニッシャーFP2W(1:1で希釈したもの)を投入した富士写真フイルム(株)製PSプロセッサー900Hを用い、液温を30℃に保ち、現像時間12秒で現像し、平版印刷版を作製した。この時の現像液の電導度はそれぞれ45mS/cmであった。
現像後の版を50倍のルーペで観察し、残膜が観測されないところの露光ビーム強度を平版印刷版原版の感度とした。露光ビーム強度が小さいものほど高感度である。また、露光前後の原版の重量変化を実測し、アブレーション量を測定した。結果を下記表1に示す。
【0087】
(実施例2〜7、比較例1、2及び4)
実施例1において、表1に記載のように画像記録層の上層及び下層の塗布量、露光におけるドラム回転数、レーザービーム画素滞留時間を変更した以外は、実施例1と同様にして重層サーマルポジを得、実施例1と同様に評価した。結果を表1に示す。
(比較例3)
実施例1で作成した基板に、下記塗布液3を塗布量が2.0g/mになるよう塗布したのち、TABAI社製、PERFECT OVEN PH200にてWind Controlを7に設定して150℃で80秒間乾燥し、単層構成の画像記録層を有する比較用平版印刷版原版を得、実施例1と同様に評価した。結果を表1に示す。
〔塗布液3〕
・N−(4−アミノスルホニルフェニル)メタクリルアミド/
アクリロニトリル/メタクリル酸メチル(36/34/30:
重量平均分子量5万) 190g
・クレゾールノボラツク(m/p=6/4,重量平均分子量、4500、
未反応クレゾール1.2質量%) 50g
・ビスヒドロキシフェニルスルホン 6g
・p−トルエンスルホン酸 0.8g
・テトラヒドロ無水フタル酸 20g
・シアニン染料A 15g
・ビクトリアピュアブルーBOHの対イオンを
1−ナフタレンスルホン酸アニオンにした染料 5g
・3−メトキシ−4−ジアゾジフェニルアミンヘキサフルオロリン酸塩 3g
・ステアリン酸 n−ドデシル 6g
・フッ素系界面括性剤 3.5g
(メガファックF−176、大日本インキ化学工業(株)製)
・フッ素系界面括性剤 5g
(MCF−312、大日本インキ化学工業(株)製)
・γ−ブチルラクトン 1200g
・メチルエチルケトン 2400g
・1−メトキシ−2−プロパノール 1200g
【0088】
(比較例5)
実施例1において、Creo社製Trendsetter800 Quantumを用いて、ビーム強度7W、ドラム回転速度360rpmの条件で全面露光した以外は、実施例1と同様にして評価を行った。結果を表1に示す。
【0089】
【表1】
Figure 2004271707
【0090】
表1から明らかなように、本発明に係るレーザービーム画素滞留時間にて露光した場合は、感度が良好であり、非アブレーション性に優れる。一方、塗布量が少なすぎる比較例1、多すぎる比較例2、単層タイプの比較例3では、いずれも感度が低く、生産性に劣る。また、1画素当たりの露光時間を早めた比較例4の場合は、1チャンネル当たりの露光量が少なすぎるため、画像形成不可であった。さらに、高照度でレーザービーム画素滞留時間が短い比較例5では、画像形成感度は高いが、アブレーションによる飛散カス量が多い。
【0091】
(実施例8)
厚さ0.3mmのアルミニウム板(材質:JIS A 1050)を苛性ソーダ濃度30g/l、アルミニウムイオン濃度10g/l、液温60℃で10秒間エッチング処理を行い、流水で水洗し、10g/l硝酸で中和洗浄後、水洗した。これを印加電圧Va=20Vの条件下で正弦波の交番波形電流を用いて、塩化水素濃度15g/l、アルミニウムイオン濃度10g/l、液温30℃の水溶液中で、500C/dmの電気量で電気化学的な粗面化処理を行い水洗後、苛性ソーダ濃度30g/l、アルミニウムイオン濃度10g/l、液温40℃で10秒間エッチング処理を行い、流水で水洗した。次に、硫酸濃度15質量%、液温30℃の硫酸水溶液中でデスマット処理を行い水洗した。さらに、液温20℃の10質量%硫酸水溶液中、直流にて電流密度6A/dmの条件下で、陽極酸化皮膜量が2.5g/m相当となるように陽極酸化処理し、水洗、乾燥した。その後、珪酸ナトリウム2.5質量%水溶液で30℃において10秒間処理し、基板を作製した。この基板の中心線平均粗さ(Ra)を直径2μmの針を用いて測定したところ、0.48μmであった。
上記のようにして得られた珪酸塩処理後のアルミニウム基板上に、下記組成の下塗液を塗布し、80℃で15秒間乾燥し、塗膜を形成させた。乾燥後の塗膜の被覆量は17mg/mであった。
【0092】
<下塗液組成>
・化合物(P) 0.3g
・メタノール 100g
・水 1g
【0093】
上記により得られた基板に、実施例1記載の画像記録層を設け、同様に評価を行ったところ、感度110mJ/cm、アブレーション量0.5mg/mであり、良好な結果を得た。
【0094】
【発明の効果】
本発明は、重層サーマルポジ構成を用いると共に、レーザービーム画素滞留時間を比較的長くすることにより、GLV変調素子を備えた露光記録装置を用いて平版印刷版原版の感度を改善させると共に、平版印刷版の生産性も向上させることができる。また、本発明は、アブレーションによる飛散カスが低減される効果が奏される。

Claims (3)

  1. 親水性支持体上に、水不溶性且つアルカリ可溶性樹脂を含む下層と、水不溶性且つアルカリ可溶性樹脂を含有し、露光によりアルカリ性水溶液に対する溶解性が増大する上層とをこの順に有し、前記下層および上層の少なくとも1つの層に赤外線吸収染料を含む平版印刷版用原版を、レーザーを用いてレーザービーム画素滞留時間が2.0〜20μ秒で画像様に露光した後、現像液で現像処理することを特徴とする平版印刷版の製版方法。
  2. 前記上層及び下層の総塗布量が、1.2〜3.0g/mであることを特徴とする請求項1記載の平版印刷版の製版方法。
  3. 前記画像様露光工程において、GLV変調素子を備えたレーザー露光記録装置を用いることを特徴とする請求項1または2記載の平版印刷版の製版方法。
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