JP2004271459A - 液体クロマトグラフィー用充填剤およびその製造法ならびにそれを用いたフラーレン類や金属内包フラーレン類の分離方法 - Google Patents

液体クロマトグラフィー用充填剤およびその製造法ならびにそれを用いたフラーレン類や金属内包フラーレン類の分離方法 Download PDF

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Abstract

【目的】移動相溶媒としてトルエンを用いた場合においても、フラーレン類が充分に分離され得るような保持力を備え、また、これまでに知られている充填剤に比べて、フラーレン類、特に金属内包フラーレン類に対する選択性が異なる液体クロマトグラフィー用充填剤を提供する。
【構成】液体クロマトグラフィー用充填剤を、窒素原子を少なくとも一つ有する複素環を含む縮合環の数が3以上である含窒素多環芳香族官能基が化学結合された多孔性担体より構成し、この充填剤を用いて、フラーレン類や金属内包フラーレン類を液体クロマトグラフィー分離する。また、そのような含窒素多環芳香族官能基を有するシリル化剤を用い、それを多孔性担体表面の水酸基と反応せしめることにより、かかる含窒素多環芳香族官能基を有する固定相を多孔性担体の表面に形成して、目的とする充填剤を製造する。

Description

【0001】
【技術分野】
本発明は、フラーレン類や金属内包フラーレン類を有利に分離することの出来る液体クロマトグラフィー用充填剤、およびその製造方法に関するものである。また、本発明は、かかる液体クロマトグラフィー用充填剤を用いて、フラーレン類、特に金属内包フラーレン類を分離する方法にも関するものである。
【0002】
【背景技術】
従来から、液体クロマトグラフィー手法は、広範囲の分離条件の適用が可能であり、試料を高温にさらす必要もなく、室温程度の低い温度条件下でも、化合物の分離が可能であるところから、生体関連物質から有機化合物全般に至る、種々の化合物の精製、分離等に広く利用されてきている。そして、この液体クロマトグラフィー手法による物質の分離能は、カラムに充填される充填剤や、用いられる移動相溶媒等によって大きく影響されるところから、これら充填剤や、移動相溶媒等の選択によって、液体クロマトグラフィー手法による化合物の分離能を高めることが出来ることとなる。
【0003】
一方、かかる液体クロマトグラフィー手法により分離、精製される物質に関して注目されているものの一つとして、フラーレン類が挙げられる。このフラーレン類は、C60やC70等にて代表されるように、炭素原子だけから構成されてなる単体、或いはこの単体を基本骨格として、各種官能基が結合されてなる化合物群であって、超伝導体、強磁性体、潤滑油、半導体等の分野に適用され得るような新たな機能が期待されている新しい物質である。また、最近では、球状の化学構造を持つフラーレン類の内部に、金属が内包されてなる構造の化合物群(以下、金属内包フラーレン類という)も、また、上記のような新規材料として期待されている。
【0004】
ところで、これらフラーレン類は、グラファイト棒のアーク放電や抵抗加熱等の際に発生する煤と共に生成し、かかる煤をトルエンなどの芳香族炭化水素溶媒で抽出することによって、煤から分離せしめられるようになっている。而して、現在のところ、単一種類のフラーレンのみを合成する技術が確立されていないところから、前記煤のトルエン抽出溶液の中に混在する多種のフラーレン類の同素体や金属内包フラーレン類より、それらがそれぞれ有している有用な機能を発現せしめる上において、各同素体や金属内包フラーレン類の分離、精製を行なうことが必要となる。
【0005】
しかしながら、フラーレン類は、類似した性質を有している同素体乃至は異性体が非常に多いことに加えて、高融点の物質であり、また高温の条件下で、他の同素体に変化する虞れがあり、更には金属内包フラーレン類においては、煤中の存在比が非常に少ないために、通常の化合物の精製によく用いられる蒸留、再結晶などの精製法による単離は、困難となっている。従って、かかるフラーレン類の分離精製には、分離能が優れていて、しかも穏和な条件において、フラーレン類を分離し得る、液体クロマトグラフィー手法を用いた分離が期待されているのである。
【0006】
そして、現在のところ、フラーレン類を分離するために、様々な種類の充填剤の使用が提案されている。例えば、これまでの充填剤のうち、オクタデシルシリル基導入型充填剤、トリアコンチルシリル基導入型充填剤等は、移動相溶媒として、ヘキサン或いはトルエンとアセトニトリルの混合液を用いた場合に、フラーレン類を分離することができる。しかし、特開平8−62198号公報に示されているように、ヘキサンやトルエンとアセトニトリルの混合液等の、フラーレン類に対する溶解性が低い移動相溶媒を用いた場合には、フラーレン類の大量分離を行なうことは困難となるのである。フラーレン類を大量に精製するためには、トルエンのように、フラーレン類に対する溶解性が高い移動相溶媒を用いる必要があるのである。しかし、上記充填剤は、トルエンを移動相溶媒とした場合、フラーレン類に対する保持力がないため、フラーレン類が充填剤を素通りしてしまい、分離が達成できないという問題がある。
【0007】
尤も、トルエンを移動相溶媒として用いても、フラーレン類の液体クロマトグラフィー手法による分離が可能となるような充填剤が、報告されている。例えば、特開平6−321517号公報に示されるような、ピレンが結合している充填剤であり、特開平8−62198号公報に示される、芳香環に臭素やヨウ素が結合している充填剤である。それらの充填剤は、トルエンを移動相溶媒としても、フラーレン類に対して保持力があり、分離が達成できることが報告されており、実用的に使用されている。
【0008】
そして、それらの充填剤でフラーレン類を分析した場合において、フラーレンの炭素数が多いほど、充填剤からの溶出が遅くなる傾向がある。つまり、C70はC60よりも後に、また、C84はC70よりも後に溶出することとなるのである。一方、金属内包フラーレン類と、金属を内包していないフラーレン(以後、空フラーレンと言う)類とを較べると、同じ炭素数を持つ場合、金属内包フラーレン類の方が後に溶出する傾向がある。
【0009】
このため、上記した、ピレンが結合している充填剤や、芳香環に臭素やヨウ素が結合している充填剤では、金属内包フラーレン類はより炭素数の多い空フラーレン類と同時に溶出してくるため、分離精製ができなくなってしまうという問題がある。また、金属内包フラーレン類以外のフラーレン類においても、従来の充填剤では分離できない同位体や誘導体が存在すると考えられる。
【0010】
ところで、液体クロマトグラフィーでは、分離が困難である場合において、異なる選択性を持つ充填剤の使用が、分離を改善するための一つの対策として、汎用的に用いられてきている。そして、上記の金属内包フラーレン類の分離に関して言えば、金属内包フラーレンを類より選択的に長く保持するか、或いは短く保持する充填剤の使用が、分離の改善に繋がると考えられる。
【0011】
かかる状況下、そのような選択性の異なる充填剤として、H.Pirkleらの報告〔Journal of Chromatography,609(1992),p89−101〕においては、ジニトロフェニル基が結合している充填剤が、提案されている。この充填剤は、ピレンが結合している充填剤や芳香環に臭素やヨウ素が結合している充填剤とは異なる選択性を示すものである。具体的には、金属内包フラーレン類をより選択的に長く保持する特性を持っているのである。しかしながら、この充填剤は、トルエンを移動相溶媒とした場合に、フラーレン類に対する保持力が乏しいため、金属内包フラーレン類や分離が困難なフラーレン類の分離を効率的に行ない得るとは言い難い。
【0012】
従って、トルエンを移動相溶媒として用いて、液体クロマトグラフィー手法によって分離するに際しても、フラーレン類が充分に分離され得るような保持力を備え、且つ、従来から使用されている、ピレンを結合している充填剤や芳香環に臭素やヨウ素が結合している充填剤と較べて、フラーレン類、特に金属内包フラーレン類に対する選択性が異なる液体クロマトグラフィー用充填剤の開発が、望まれているのである。
【0013】
【特許文献1】
特開平8−62198号公報
【特許文献2】
特開平6−321517号公報
【非特許文献1】
Journal of Chromatography,609(1992),p89−101
【0014】
【解決課題】
ここにおいて、本発明は、かかる事情を背景にして為されたものであって、その課題とするところは、移動相溶媒としてトルエンを用いた場合においても、フラーレン類が充分に分離され得るような保持力を備え、また、これまでに知られている充填剤に比べて、フラーレン類、特に金属内包フラーレン類に対する選択性が異なる液体クロマトグラフィー用充填剤を提供することにあり、また、そのような充填剤を有利に製造し得る方法を提供することにあり、更には、そのような充填剤を用いたフラーレン類や金属内包フラーレン類を有利に分離する方法を提供することも、その課題とするものである。
【0015】
【解決手段】
そして、本発明者が、そのような課題を解決すべく、優れた官能基について探索を重ねた結果、窒素原子を少なくとも1つ以上有する複素環を含む縮合環の数が3以上である多環芳香族(含窒素多環芳香族)官能基が化学結合せしめられてなる充填剤が、トルエンを移動相溶媒とした場合においても、分離に適した保持が得られ、しかも、金属内包フラーレン類をより長く保持し得ることが見出されたのである。
【0016】
従って、本発明は、かかる知見に基づいて完成されたものであって、その要旨とするところは、窒素原子を少なくとも1つ以上有する複素環を含む縮合環の数が3以上である含窒素多環芳香族官能基が化学結合された多孔性担体より構成されていることを特徴とする液体クロマトグラフィー用充填剤にある。
【0017】
このように、本発明にあっては、充填剤を化学修飾して、結合せしめた特定の含窒素多環芳香族官能基の存在によって、従来の充填剤を用いた場合には、保持力が不充分であるために分離することが困難であったフラーレン類、特に、金属内包フラーレン類を、トルエンを移動相溶媒として、効果的に分離することが可能となったのである。
【0018】
なお、そのような本発明に従う液体クロマトグラフィー用充填剤の有利な態様の一つによれば、前記含窒素多環芳香族官能基は、フェノチアジン環、フェノキサジン環、およびそれらの誘導体からなる群より選ばれた多環芳香族を有していることが望ましく、また、多孔性担体は、無機担体、特にシリカゲルであることが望ましいのである。
【0019】
また、かくの如き本発明に従う液体クロマトグラフィー用充填剤を有利に得るために、本発明にあっては、窒素原子を少なくとも1つ以上有する複素環を含む縮合環の数が3以上である含窒素多環芳香族官能基を有するシリル化剤を用い、該シリル化剤を、多孔性担体表面の水酸基と反応せしめることにより、該含窒素多環芳香族官能基を有する固定相を、該多孔性担体の表面に形成したことを特徴とする液体クロマトグラフィー用充填剤の製造法をも、その要旨とするものである。
【0020】
さらに、本発明にあっては、フラーレン類、特に金属内包フラーレン類を有利に分離せしめるべく、液体クロマトグラフィー手法によってフラーレン類や金属内包フラーレン類を分離するに際して、窒素原子を少なくとも1つ以上有する複素環を含む縮合環の数が3以上である含窒素多環芳香族官能基で化学修飾された多孔性担体より構成される充填剤を用いることを特徴とするフラーレン類や金属内包フラーレン類の分離方法をも、その要旨とするものであり、特に、その際には、移動相溶媒として、トルエンが有利に用いられることとなる。
【0021】
【発明の実施の形態】
ところで、本発明に従う液体クロマトグラフィー用充填剤は、上述せる如く、多孔性担体に対して、窒素原子を少なくとも一つ以上有する複素環を含む縮合環の数が3以上である多環芳香族たる、含窒素多環芳香族を有する官能基が化学結合されてなるものであって、本発明ではそのような含窒素多環芳香族が結合含有されてなる形態である限りにおいて、如何なる形態のものであっても、採用可能であるが、一般に、ArN−A−(O) −担体材料(但し、ArN:含窒素多環芳香族官能基、A:スペーサー基、n:0または1)にて表される構造の充填剤が好適に用いられることとなり、また、その際、スペーサー基(A)としては、特にアルキルシリル基が有利に用いられることとなる。
【0022】
そして、かかる含窒素多環芳香族官能基が所定のスペーサー基(A)を介して結合せしめられて、目的とする充填剤を与える多孔性担体材料としては、前記した含窒素多環芳香族官能基が化学的に結合せしめられて保持され得るものであれば、公知の如何なる担体材料をも用いられ得るが、かかる充填剤を製造するにあたって、充填剤の一般的な製法としてよく知られている有機珪素化合物(シリル化剤)を用いた化学修飾法を採用する場合にあっては、シリカゲルの他、多孔性ガラス、ガラスビーズ、アルミナ、チタニア、ジルコニア等の無機担体も、適宜に用いられ得るのである。尤も、担体材料の表面積並びにシリル化剤と担体表面の水酸基との反応性を考慮すると、前記担体の中でも、シリカゲルが、特に好ましく用いられることとなる。
【0023】
なお、前記シリル化剤は、無機担体材料表面上に存在する水酸基だけに反応するものでなく、有機担体に存在するアルコール性水酸基とも反応する。このシリル化剤とアルコール性水酸基との反応は、アルコキシシラン(Si−O−R)を形成し、その結合は、容易に加水分解を受けるため、水−アルコール混合溶媒を移動相溶媒とするような条件では使用できないが、移動相溶媒に水やアルコールを用いない条件下で液体クロマトグラフィーが行なわれる場合には、ポリスチレンゲル、ポリビニルアルコールゲル等の有機高分子ゲルやアガロース、セルロース等の多糖類を基剤とする担体材料を使用することも可能である。
【0024】
また、前記多孔性担体材料を化学修飾する含窒素多環芳香族官能基は、環の歪みが少なくなることや、環上のπ電子の共役が阻害されなくなることから、6員環のみで構成されていることが好ましいが、充填剤としての性能に影響を与えない範囲内で、例えば、5員環を構成する場合や、7員環を構成する場合においても、支障はない。また、含窒素多環芳香族官能基中に窒素以外の硫黄原子や酸素原子を含んでいても、更には、その環上において置換基を有していても、何等差し支えない。
【0025】
そして、そのような官能基の具体例としては、フェノチアジン環、フェノキサジン環、およびその誘導体のうちの何れかを含むものが、充填剤への結合が容易である点や、6員環のみで構成されている点等から、最も好ましいが、その他にも、カルバゾール、イミノスチルベン、アクリジン、フェナントロリン、フェナジン、フェナントリジン、ベンゾキノリン、およびこれらの誘導体等から導かれる官能基が挙げられる。
【0026】
さらに、含窒素多環芳香族官能基と担体材料との間に結合せしめられるスペーサー基としては、充填剤のフラーレン類に対する保持力の大部分が、含窒素多環芳香族官能基部分にて発現され、スペーサー基の違いによる影響を殆ど受けないところから、公知の各種の原子団が用いられ得るのである。そして、そのようなスペーサー基としては、例えば、メチレン基、エチレン基、プロピレン基等の直鎖炭化水素基が挙げられるが、それらに、エーテル結合、アミド結合、エステル結合、カルボニル基等の他、硫黄原子、窒素原子を含む官能基等が導入された原子団が用いられても、何等差し支えない。その中でも、アルキルシリル基が有利に採用されることとなる。また、ここでは、スペーサー基を有する構造のものを例示したが、これだけに限定されるものではなく、含窒素多環芳香族官能基が、スペーサー基を介さずに、直接に担体材料に結合せしめられていても、何等差し支えない。
【0027】
ところで、本発明に従う充填剤中の固定相の量は、溶質の保持時間に影響を与えるものであるが、一般に、その量が増加すると、溶質と固定相との相互作用が大きくなり、その結果として溶質の保持力が増大する。そして、この関連性は、フラーレン類についても同様に当てはめることが出来、固定相が多く結合せしめられてなる充填剤の使用により、フラーレンに対する強い保持力が発揮され、その結果、フラーレン類の分離が効果的に為され得る。つまり、フラーレンに対して、より大きな保持力を有し、また、より選択性の高い充填剤を得るためには、出来るだけ多くの含窒素多環芳香族官能基が担体に結合せしめられることが望ましいのである。
【0028】
一方、本発明に従う充填剤中の固定相量の下限は、条件によって異なり、一概に決定されるものではないが、一般に、目的とする物質に対する保持力が有効に発揮されるのに充分な量があればよい。それ故、固定相である含窒素多環芳香族官能基にて担体を化学修飾する際に、その反応性が従来の充填剤における反応性に比べて多少悪いものであっても、本発明に従う充填剤に採用される固定相の溶質に対する保持力が強いところから、充分に使用され得るような充填剤が得られるのである。つまり、含窒素多環芳香族官能基にて化学修飾する際に、その含窒素多環芳香族官能基との反応性が悪くなるような担体であっても、従来の充填剤よりも有用な充填剤が得られることがあり、そのために、反応せしめられる担体の選択の幅が有利に広げられるのである。具体的には、例えば、従来の充填剤と比較して3倍の保持力を有する充填剤では、かかる充填剤の固定相の量が1/3となっても、従来の充填剤と同程度の保持力を有するのであり、それより固定相の量が多くなるように構成されれば、保持力の改善された有用な充填剤となるのである。
【0029】
ところで、本発明に従う液体クロマトグラフィー用充填剤は、公知の各種の反応を利用して製造され得るものであるが、一般に、1)含窒素多環芳香族官能基を有するシリル化剤を担体に反応せしめる方法、2)含窒素多環芳香族官能基を有する有機金属化合物を担体と反応せしめる方法、3)反応性を有する官能基を担体に導入した後、その官能基に含窒素多環芳香族官能基を結合せしめる方法、4)含窒素多環芳香族官能基を有するモノマーを重合することにより担体を合成する方法等を利用して、製造されることとなる。
【0030】
より詳細には、前記1)のシリル化剤を用いる方法では、先ず、含窒素多環芳香族官能基に二重結合を有する置換基が導入される。そして、この二重結合を有する置換基の含窒素多環芳香族官能基への導入は、含窒素多環芳香族官能基にアリル基等の二重結合を有する置換基を導入することにより、具体的には、下記反応式(1a)、(1b)に示される反応を順に行うことにより、有利に行なうことが出来るのである。なお、ここで、ArNは、含窒素多環芳香族官能基を表しており、以下の反応式でも同様である。
ArN−H + NaH ──→ ArNNa ・・・(1a)
ArNNa + Br−CH−CH=CH
──→ ArN−CH −CH=CH ・・・(1b)
【0031】
次いで、このようにして得られた二重結合を有する含窒素多環芳香族官能基の二重結合部位に、下記反応式(2)に示される如く、白金触媒を用いて、ヒドロシラン(H−Si)を付加せしめる、所謂ハイドロシリレーション反応を行なわしめることにより、シリル化剤が得られるのである。なお、この反応において、ヒドロシランの付加反応は、反マルコフニコフ型の付加が主として進行し、アルケン分子の末端に、珪素原子が結合するように反応する。かかる方法は、シリル化剤への転化率が大きく、副反応が少ないために、目的とする構造のシリル化剤が得られ易いという利点がある。
ArN−CH −CH=CH + H−Si(CH −ClPt
──→ ArN−(CH −Si(CH −Cl・・・(2)
【0032】
また、かくして合成されたシリル化剤の反応性の置換基としては、クロロシラン(Si−Cl)基等が挙げられるが、そのような反応性置換基は、珪素原子に結合可能な4つの置換基のうち、必ずしも一つだけに限られず、2個或いは3個の反応性の官能基を有するシリル化剤も、担体の化学修飾に適用され得るのである。なお、このようなシリル化剤の反応性の官能基としては、珪素原子に塩素(−Cl)が結合せしめられてなるクロロシランに限らず、珪素原子に、臭素(−Br)、メトキシ基(−OCH )、エトキシ基(−OCHCH)、アルキルアミノ基(−NR )等、担体表面に存在する水酸基等の活性部位と反応可能な官能基を結合せしめたものであれば、何れのものでも、本発明に適用することが可能である。
【0033】
さらに、シリル化剤の合成方法として、上記においては、ヒドロシランの二重結合への付加反応を用いた方法を例示したが、何等これに限定されるものではなく、例えば、二つ以上の反応性の官能基(主として塩素)を持つ有機化合物とグリニヤール試薬等の有機金属試薬を反応させる方法でも、シリル化剤を合成することができる。
【0034】
そして、このようにして得られた含窒素多環芳香族官能基を有するシリル化剤を、下記反応式(3)のように、シリカゲル(HO−Si)等の担体に反応せしめることにより、目的とする充填剤を得ることが出来るのである。
ArN(CH−Si(CH −Cl + HO−Si
──→ ArN−(CH−Si(CH−O−Si・・・(3)
【0035】
また、前記2)の有機金属化合物を用いる方法は、Locke等が報告している方法〔D.C.Locke,J.J.Schermud and B.Banner,Anal.Chem.,44,90(1972)〕であって、この方法では、下記反応式(4a)、(4b)に示される二段階の反応工程を経て、目的とする充填剤が得られることとなる。なお、ここにおいて、反応式(4a)に示される反応は、塩化チオニルのような、水酸基を塩素化することの出来る試薬を用いて、担体(例えばシリカゲル)の水酸基を塩素化する反応であり、反応式(4b)に示される反応は、グリニヤール試薬を前記反応式(4a)において合成された塩素化担体と反応させて、ArNにて表される含窒素多環芳香族官能基を担体に結合させる反応である。なお、反応式中、Siは、シリカゲル残基を示している。
Si−OH +SOCl ──→ Si−Cl・・・(4a)
ArNMgBr + Si−Cl ──→ ArN−Si・・・(4b)
【0036】
さらに、前記3)における、反応性を有する官能基を担体に導入した後に、その官能基に含窒素多環芳香族官能基を結合せしめる方法は、上記2)で示した、有機金属化合物を担体と反応させる方法と類似するが、この方法では、下記反応式(5a)に示される如く、予めアミノ基のような反応性を有する官能基を担体(例えばシリカゲル)に導入し、このアミノ基と反応し得る官能基、例えば、カルボキシル基を有する含窒素多環芳香族官能基と、前記反応式(5a)において得られた反応性官能基の導入された担体とが、下記反応式(5b)に示されるように、ジシクロヘキシルカルボジイミド等の縮合剤にて縮合させられることにより、目的とする充填剤が得られるのである。なお、この例では、最終的にアミド結合が形成される反応について示されているが、その他エステル結合やエーテル結合等を形成する官能基の組合せについても、同様に行なわれ得るものである。また、反応式中のSi−O−は、ここでは、シリカゲル残基を示している。
NH(CH Si(OCH + HO−Si
──→ NH(CHSi(OCH−O−Si・・・(5a)
ArNCOOH + NH(CHSi(OCH−O−Si ──→
ArNCONH(CH Si(OCH−O−Si ・・・(5b)
【0037】
更にまた、前記4)の、含窒素多環芳香族官能基を有するモノマーを重合することにより担体を合成する方法では、ジビニルベンゼン等と含窒素多環芳香族官能基を有するモノマーとを共重合させることにより、含窒素多環芳香族官能基を有する担体を得るようにしたものである。なお、この共重合時に、トルエン等の希釈剤と言われる溶媒を混合しておくと、重合後、得られた重合体からなる担体を洗浄すると、重合に関与しなかった希釈剤が洗い流され、残された担体内部は細孔となるため、多孔性担体を得ることができる。
【0038】
その他、前記3)の方法と4)の方法とを併用して、ビニル基のような重合性を有する官能基を担体に導入した後、含窒素多環芳香族官能基を有するモノマーと共重合させることによっても、合成が可能である。
【0039】
このように、本発明に従う充填剤は、各種の合成方法によって製造され得るものであるが、有利には、種々の含窒素多環芳香族官能基を担体に結合させることが出来て、目的とする充填剤が容易に得られるところから、好ましくは、前記した1)の、含窒素多環芳香族官能基を有するシリル化剤を担体に反応せしめて、化学結合される製造方法によって、合成されることとなる。
【0040】
また、本発明は、かくの如き本発明に従う充填剤を用いて、フラーレン類、特に金属内包フラーレン類を液体クロマトグラフィー分離することをも、その特徴とするものであり、これにより、効果的にフラーレン類、特に金属内包フラーレン類を分離することが出来ることとなったのである。なお、そのようなフラーレン類の液体クロマトグラフィー手法による分離操作には、従来と同様な操作乃至は条件を採用することが出来る。
【0041】
すなわち、そのような分離操作にあっては、本発明に従う充填剤を充填せしめたカラムに対して、フラーレン類は、所定の溶媒に溶解させた溶液として供給せしめられることとなる。そして、この分離カラム内に溶液形態において供給されたフラーレン類は、充填剤にて保持され、続いて、分離カラム内に流通せしめられる移動相溶媒にて、フラーレン類が順次溶出せしめられるのである。即ち、フラーレン類が、移動相溶媒によってそれぞれ個別に経時的に分離カラムから溶出せしめられ、この分離カラムから流出させられる溶出液を経時的に分離することにより、フラーレン類を分離することが可能となるのである。
【0042】
ところで、このような目的に使用する溶媒には、特に制限はないが、フラーレン類を効率的に分離精製するためには、フラーレン類を良く溶解する溶媒を使用する必要がある。このようなフラーレン類を溶解する溶媒や移動相とする溶媒としては、トルエン等の芳香族炭化水素溶媒やクロロベンゼン、o−ジクロロベンゼン、1,2,4−トリクロロベンゼン等の塩素化芳香族炭化水素溶媒、および二硫化炭素があるが、好ましくはトルエンが用いられる。何故なら、液体クロマトグラフィーで分離精製を行った後には、使用した移動相溶媒を、減圧留去等の操作にて除去する必要があるところ、塩素化芳香族炭化水素溶媒は沸点が高いために、より高度な減圧装置が必要であり、また、試料を高温で処理する必要があり、試料の分解を招く恐れがあるからである。また、二硫化炭素にあっては、毒性が高く、また、引火点が低いために、発火の危険を伴う等、実用上の問題があるのである。このため、フラーレン類の分離精製には、上記溶媒よりも、実用上の問題の少ないトルエンが、最も望ましいのである。
【0043】
尤も、上記の溶媒以外にも、フラーレン類をあまり溶解しない溶媒を使用する場合がある。このような溶媒としては、ヘキサンやイソオクタン等の脂肪族炭化水素溶媒や、アセトニトリルやメタノール等がある。これらは、フラーレンに対する溶解性が低いために、単独で、移動相として用いることは好ましくないが、トルエン等に少量添加すると、フラーレンの保持が伸び、分離が向上する場合があるため、必要に応じて使用されることとなる。
【0044】
そして、上述せるように、本発明に従う充填剤を用いて、液体クロマトグラフィー分離を行なうことによって、効果的に、フラーレン類、特に金属内包フラーレンを分離精製することが可能となったのである。
【0045】
【実施例】
以下に、本発明を更に具体的に明らかにするために、本発明のいくつかの実施例を示すすることとするが、本発明が、そのような実施例の記載によって何等の制約をも受けるものでないことは、言うまでもないところである。また、本発明には、以下の実施例の他にも、更には、上記した具体的記述以外にも、本発明の趣旨を逸脱しない限りにおいて、当業者の知識に基づいて種々なる変更、修正、改良等を加え得るものであることが、理解されるべきである。
【0046】
実施例 1
フェノチアジンの25.0gをDMF150mlに溶解した後、氷冷下、水素化ナトリウム5.5gを加え、2時間攪拌した。次いで、臭化アリル30.2gを加え、1時間攪拌した後、更に80℃に加熱し、2時間攪拌することにより反応を行った。この得られた反応液を室温まで放冷した後、水50mlを加えて攪拌し、続いてジエチルエーテル200mlで抽出を行った。抽出液は、飽和食塩水で洗浄した後、無水硫酸ナトリウムで乾燥せしめた。次いで、かかる無水硫酸ナトリウムを抽出液から除いた後、ロータリー・エバポレーターを用いて、抽出液中のジエチルエーテルを減圧留去した。そして、その得られた残査をシリカゲルカラムクロマトグラフィーにて精製して、N−アリルフェノチアジン27.0gを得た。
【0047】
次いで、かかるN−アリルフェノチアジンの13.4gを、ベンゼン100mlに溶解し、続いて、塩化白金酸25mgとジメチルクロロシラン8.0gを加え、80℃の温度で3時間還流させることにより、反応せしめた。この反応の後、白金触媒を濾過して除去し、更に溶媒を減圧留去して、3−(N−フェノキサジン)プロピルジメチルクロロシランを得た。そして、この得られた3−(N−フェノキサジン)プロピルジメチルクロロシランを、ピリジンの4.4gと共にシリカゲル(粒子径:5μm、細孔径:12nm、表面積:330m /g)20.0gのトルエン200ml分散液に加え、6時間加熱還流することにより、反応せしめた。この反応の後、メタノール200mlとクロロホルム200mlを用いて、順次、吸引濾過洗浄し、50℃の温度で乾燥することにより、目的とするN−フェノチアジンプロピルシリル化シリカゲルからなる充填剤(PTZ−3)を得た。
【0048】
また、充填剤の固定相構造を変えた各種の充填剤:PTZ−6、PXZ−3、ID−3を、その官能基部の試薬を変える以外は、上記と同様の方法により合成した。なお、官能基部の試薬として、PTZ−6の合成に際しては、上記の臭化アリルに代えて、6−臭化−1−ヘキセンを用いる一方、PXZ−3及びID−3の合成の場合においては、フェノチアジンに代えて、フェノキサジン又はインドールをそれぞれ用いた。下記表1には、上記で合成された各種の充填剤についての詳細が示されている。また、比較のために、ピレンを結合せしめた市販の充填剤:PY−3も準備した。そして、図1には、それら準備された各種充填剤の固定相構造が示されている。
【0049】
【表1】
Figure 2004271459
【0050】
また、それぞれ合成された、各充填剤の元素分析値及び担体であるシリカゲルの表面に結合せしめられている固定相の量を測定し、その結果を、下記表2に示した。なお、本実施例において用いられたシリカゲルは、1g当り330m の表面積を有し、この表面積1m 当りに結合している固定相の量(μmol)で示された値が、表面反応率である。そして、この表面反応率が高い充填剤は、シリカゲルの表面に高い割合で固定相が結合せしめられていることを示している。また、表面反応率は、炭素の含有率から算出されたものである。
【0051】
【表2】
Figure 2004271459
【0052】
実施例 2
上記の実施例1において合成された各種充填剤を用い、それらを、それぞれ、内径4.6mm×長さ150mmのクロマト管に詰めて、各充填剤のフラーレン類に対する保持特性の評価を行なった。なお、その際、従来品であるPY−3については、市販品(株式会社ナカライテスク社製、商品名:COSMOSIL Buckyprep)を用いた。
【0053】
具体的には、液体クロマトグラフィー装置は、送液ポンプ(LC−9A型:株式会社島津製作所製)と、前記各充填剤が詰められたカラムと、試料注入を行なうループ式注入バルブ(レオダイン社製)と、紫外吸収検出器(SPD−6A型UV検出器:株式会社島津製作所製)とから構成され、移動相溶媒としてはトルエンを用い、その送液速度は、全て1.0ml/minの流速とした。また、紫外吸収検出器の検出波長を285nm、検出感度を0.16AUFSに設定して測定を行なった。なお、カラム温度を恒温水槽により調節して、分析温度が30℃となるようにした。そして、溶出時間とピーク面積の計測には、データ処理装置(CR−5A型:株式会社島津製作所製)を用いた。
【0054】
また、充填剤によるフラーレン類の保持特性を評価するために用いられる試料としては、C60、C70、C76、C84標準品(すべてSESリサーチ社製)を用いた。前記標準フラーレンを0.3〜1mg/mL程度の濃度となるように、トルエンで希釈して、標準試料溶液とした。そして、そのように調製された標準試料溶液を、マイクロシリンジを用いて、所定の量(1μL〜5μL)を注入して、各種充填剤によるフラーレン類の保持特性を測定し、その結果を、下記表3に示した。
【0055】
なお、一般に、カラム(充填剤)の保持特性を示す場合において、試料をカラムに注入してから、カラムから溶出されたピークの頂上までの時間(保持時間)が、用いられることとなるが、この保持時間は、送液する移動相溶媒の流速が同一で、しかも用いられるカラムが同一である場合においてのみ、その相対的な評価が可能となるものであるために、充填剤が異なる複数のカラムの比較やカラムの大きさが違う場合、或いは移動相溶媒の送液速度が異なる場合などにおいては、前記保持時間を比較しても、相対的な比較を行なうことが不可能となる。そのために、異なる条件のクロマトグラフィー分離の結果の比較においては、通常、次式のk’で表される値、即ち、保持されない溶質の溶出時間に対する保持される化合物のカラム内に滞留する時間の割合において、各溶質の保持特性(保持力)が、評価されることとなる。そして、かかるk’値を用いることにより、カラムの長さや太さ或いは流速の違い等による影響を無視することが出来るのであり、以て純粋に充填剤の特性評価を行なうことが可能となるのである。
k’=(t −t )/t
但し、t :溶質の保持時間、t :保持されない溶質の溶出時間である。
【0056】
なお、溶出挙動には、溶媒と固定相との相互作用も関与すると考えられるが、トルエン溶媒中において、固定相によるトルエン自身の保持が観察されないことから、固定相と溶媒との相互作用は非常に小さく、溶質と溶媒との相互作用の強さのみを考慮すればよいと考えられる。
【0057】
また、下記表3には、それぞれの充填剤が与えるフラーレンの保持力(k’値)と、そのk’値を表面反応率で除して、固定相の充填剤に対する単位表面反応率(μmol/m )当たりの保持力、及び縮合環の数が、示されている。
【0058】
さらに、ここで単位表面反応率当たりの保持力が示されているのは、それぞれの固定相が与える保持力の大きさを正当に評価するためである。つまり、通常、充填剤による溶質の保持は、充填剤に結合せしめられている全ての固定相による溶質との相互作用の総和として発現するものと考えられるので、それぞれの固定相が与える保持力の大きさを正当に評価するためには、同数の固定相による相互作用として比較しなければならない。それ故に、ここでは、単位表面反応率(μmol/m )当りの保持力(k’値)を併記して、これにより、比較を行なっているのである。
【0059】
【表3】
Figure 2004271459
【0060】
かかる表3の結果より、各固定相を比較すると、縮合環の数が多いほど、フラーレン類に対する保持力が大きくなっている。また、実用的な見地から考慮すると、液体クロマトグラフィーでは、分離の状態にも影響を受け、一概には言うことはできないが、通常、k’値は1〜20程度が望ましいと考えられる。何故なら、k’が1以下の場合、分離が不十分な場合が多く、分離精製時の負荷量も、多くならないためである。一方、k’が20以上と大きすぎると、分離時間が長くなりすぎて、効率的な分離精製ができなくなるためである。
【0061】
また、縮合環の数が3以上であるPTZ−3,PTZ−6,PXZ−3,PY−3は、トルエンを移動相とした場合、分離精製に適当な保持力を持っている。一方、縮合環が2であるID−3は、保持力が少なく、フラーレン類を十分に分離することが困難であると考えられる。
【0062】
さらに、PTZ−3とPTZ−6は、スペーサーであるメチレン基の数が異なる充填剤であるが、そのようなメチレン基の数は殆ど保持力に影響はなく、フラーレン類に対する保持は、含窒素多環芳香族官能基であるフェノチアジンによって発現していると考えられる。
【0063】
実施例 3
金属内包フラーレン類に対する固定相の選択性を評価するために、金属内包フラーレン類としてSc @C84(I)、又はGd@C82を用い、上記の各充填剤についての評価を行なった。なお、金属内包フラーレンは、通常、M@C で表記され、そこで、Mは金属原子であり、C のXは、フラーレンの炭素数を示している。従って、前記したSc @C84(I)は、C84が、スカンジウム(Sc)の2原子を内包してなる構造を示しており、またGd@C82では、C82がガドリニウム原子(Gd)を内包していることを示している。
【0064】
そして、下記表4には、C88とSc @C84(I)とのk’と分離係数とが示されており、また、表5には、C90とGd@C82 とのk’と分離係数とが示されている。それらの表においては、ピレンを結合している充填剤や、芳香環に臭素やヨウ素が結合している充填剤では分離が困難な金属内包フラーレンと、より炭素数の多い空フラーレンとの組み合わせに係るものである。これら試料の同定は、質量分析装置を用いて行い、また、試料以外の分析条件は、実施例2に準じた方法で行った。
【0065】
また、分離係数は、二つの溶質の保持(k’値)の比率を表す値であり、ピーク間の分離の程度を示す尺度の一つとされる。具体的には、分離係数=一つの溶質のk’値/他の溶質のk’値で求められる。従って、分離係数或いは分離係数の逆数が大きな値となる場合には、充填剤が二つの溶質をよく分離する性質を持っていると判断することが出来る。
【0066】
【表4】
Figure 2004271459
【0067】
【表5】
Figure 2004271459
【0068】
かかる表4及び表5について検討するに、縮合環中に窒素原子を含むPTZ−3、PTZ−6、PXZ−3、ID−3は、分離係数が表4の試料では1.19〜1.23、表5の試料では1.49〜1.97と大きな値を示したのに対して、縮合環中に窒素原子を含まないPY−3は、分離係数が表4の試料では1.06、分離係数が表5の試料では0.90(逆数の場合1.11)と小さくなった。このことから、窒素原子の効果により分離係数が増加しており、従って窒素原子を有する複素環は、金属内包フラーレン類をより長く保持する特性を持つと考えられる。
【0069】
また、実施例2と3から、窒素原子を少なくとも1つ以上有する複素環を含む縮合環の数が3以上の多環芳香族よりなる官能基が化学修飾された充填剤は、トルエンを移動相溶媒とした場合において、分離に適した保持力を持ち、また、金属内包フラーレン類を、金属が内包していないフラーレン類よりも相対的に長く保持するという、ピレンが結合している充填剤や芳香環に臭素やヨウ素が結合している充填剤とは異なる選択性を持つ充填剤であることが認められる。
【0070】
以上のことから、本発明品に係る充填剤:PTZ−3、PTZ−6、PXZ−3、を用いた場合、金属内包フラーレン類は、従来型の充填剤では分離が困難であった空フラーレン類と分離することはできるが、新たに、他の異なる炭素数を持つフラーレン類と同時に溶出してくる可能性がある。このような場合には、金属内包フラーレン類を従来型の充填剤と二段階で分離することによって、解決することが出来る。例えば、まず、ピレンを結合している充填剤や芳香環に臭素やヨウ素が結合している充填剤で分離を行った後に、本発明に係る充填剤で分離を行うと、金属内包フラーレン類と炭素数の異なる空フラーレン類を完全に分離することが出来ることとなるのである。
【0071】
【発明の効果】
以上の説明から明らかなように、本発明によれば、従来から用いられている充填剤に比べて、フラーレン類、特に金属内包フラーレン類に対する選択性が異なる液体クロマトグラフィー用充填剤が、有利に提供され得たのであり、また、そのような特徴を有する充填剤が有利に製造され、さらには、そのような充填剤を用いることにより、フラーレン類や金属内包フラーレン類の分離が、より一層有利に実現され得ることとなったのである。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施例1において合成された各種充填剤における固定相の構造を示す説明図である。

Claims (11)

  1. 窒素原子を少なくとも1つ以上有する複素環を含む縮合環の数が3以上である含窒素多環芳香族官能基が化学結合された多孔性担体より構成されていることを特徴とする液体クロマトグラフィー用充填剤。
  2. 前記含窒素多環芳香族官能基が、フェノチアジン環、フェノキサジン環およびそれらの誘導体からなる群より選ばれた多環芳香族を有する請求項1に記載の液体クロマトグラフィー用充填剤。
  3. 前記多孔性担体が、無機担体である請求項1又は請求項2に記載の液体クロマトグラフィー用充填剤。
  4. 前記無機担体が、シリカゲルである請求項3に記載の液体クロマトグラフィー用充填剤。
  5. 窒素原子を少なくとも1つ以上有する複素環を含む縮合環の数が3以上である含窒素多環芳香族官能基を有するシリル化剤を用い、該シリル化剤を、多孔性担体表面の水酸基と反応せしめることにより、該含窒素多環芳香族官能基を有する固定相を、該多孔性担体の表面に形成したことを特徴とする液体クロマトグラフィー用充填剤の製造法。
  6. 前記多孔性担体が、無機担体である請求項5に記載の液体クロマトグラフィー用充填剤の製造法。
  7. 前記無機担体が、シリカゲルである請求項6に記載の液体クロマトグラフィー用充填剤の製造法。
  8. 液体クロマトグラフィー手法によってフラーレン類や金属内包フラーレン類を分離するに際して、窒素原子を少なくとも1つ以上有する複素環を含む縮合環の数が3以上である含窒素多環芳香族官能基で化学修飾された多孔性担体より構成される充填剤を用いることを特徴とするフラーレン類や金属内包フラーレン類の分離方法。
  9. 前記多孔性担体が、無機担体である請求項8に記載のフラーレン類や金属内包フラーレン類の分離方法。
  10. 前記無機担体が、シリカゲルである請求項9に記載のフラーレン類や金属内包フラーレン類の分離方法。
  11. 前記液体クロマトグラフィー手法における移動相溶媒として、トルエンを用いることからなる請求項8乃至請求項10の何れかに記載のフラーレン類や金属フラーレン類の分離方法。
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