JP3494763B2 - 液体クロマトグラフィー用充填剤及びそれを用いた分離方法 - Google Patents
液体クロマトグラフィー用充填剤及びそれを用いた分離方法Info
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Description
用充填剤及びその製造方法に係り、特にポリ塩化ビフェ
ニル類やフラーレン類に対する保持力が効果的に大なら
しめられ得る構造を有する液体クロマトグラフィー用充
填剤と、それを有利に製造する方法に関する。また、本
発明は、かかる液体クロマトグラフィー用充填剤を用い
て、ポリ塩化ビフェニル若しくはフラーレン類を分離す
る方法にも関するものである。
は、広範囲の分離条件の適用が可能であり、試料を高温
にさらす必要もなく、室温程度の低い温度条件下でも、
化合物の分離が可能であるところから、生体関連物質か
ら有機化合物全般に至る、種々の化合物の精製、分離等
に広く利用されてきている。そして、この液体クロマト
グラフィー手法による物質の分離能は、カラムに充填さ
れる充填剤の性能によって大きく影響されるところか
ら、その充填剤の選択によって、液体クロマトグラフィ
ー手法による化合物の分離能を高めることが出来るので
ある。
トグラフィー用充填剤としては、オクタデシル基を担体
に結合させたC18型充填剤が多用されている。そして、
このC18型充填剤を用いたカラム(以下、C18系カラム
という)は、その保持力が、C18型充填剤の疎水性と試
料の疎水性との相互作用によって発揮されているのであ
るが、最近においては、種々の化合物の分離が液体クロ
マトグラフィー手法にて行なわれるようになって来てい
るために、かかるC18系カラムで十分に分離ができない
化合物も増加しつつある。
難な化合物群の一つに、例えば、ポリ塩化ビフェニル
(以下、PCBという)類がある。このPCB類は耐燃
性、熱的安定性、耐酸化性、電気的特性、溶解性、不活
性、液体性等において優れているところから、各種の分
野において利用され、特に以前は主として、変圧器、コ
ンデンサー等の電気部品や熱媒として大量に使用されて
いたために、最近、環境問題において注目されているダ
イオキシン類よりも、遥かに多くのPCB類が環境に放
出されているのである。而して、近年、PCB類の毒性
が明らかとなると共に、PCB類による環境汚染が深刻
な問題となっており、PCB類の分析、特に毒性に関す
る分析が必要となって来ている。
性体を有しており、それら異性体を分離することが困難
であることに加えて、ビフェニル骨格に結合している塩
素原子の数や結合位置の違いにより、それぞれ異なる毒
性を発揮するために、その毒性分析を行なうことが困難
なものとなっている。
ェニル骨格において、それぞれが互いに結合している位
置を1位とした場合の2位や6位に塩素原子が結合して
いないものが、強い毒性を発揮するのであり、特に3,
3’,4,4’−テトラクロロビフェニル(IUPAC
No.77)、3,3’,4,4’,5−ペンタクロ
ロビフェニル(IUPAC No.126)、及び3,
3’,4,4’,5,5’−ヘキサクロロビフェニル
(IUPAC No.169)の毒性が強いことが明ら
かとされている。そして、種々のPCB試料の毒性を評
価する際において、全PCB量を測定するだけでは、そ
の毒性を正確に評価し得ないために、毒性の強いPCB
類だけを分離して、その量を測定する必要があるのであ
る。
フィー手法を用いて毒性の強いPCB類を定量する場合
には、PCB類を前処理するために、一般に活性炭カラ
ムが使用される。そして、その活性炭カラムの毒性の強
いPCB類に対する分離能が低く、PCB類を充分に分
離するために、複数の活性炭カラムを必要とするところ
から、PCB類を定量する際の効率が悪くなるのであ
る。また、キャピラリーGC−MSを用いて、PCB類
を直接分析する場合には、試料の負荷量が少ないため
に、十分な感度が得られない等の問題が生じる。更に、
担体のシリカゲルにピレニルエチル基を結合させたPY
E充填剤を用いたカラム(以下、PYE系カラムとい
う)を用いて、液体クロマトグラフィーにより、毒性の
強いPCB類を分離する場合では、かかるPYE系カラ
ムによるPCB類の保持時間が短く、十分な分離が行な
われ得ていないというのが現状である。それ故に、この
ような背景から、毒性の強いPCB類を効率よく分離す
る方法の開発が望まれているのである。
的に分離することが出来ない化合物の一つである。この
フラーレン類は、C60やC70等にて代表されるように、
炭素原子だけから構成されてなる単体、或いはこの単体
を基本骨格として、各種官能基が結合されてなる化合物
群であって、超伝導材料、強磁性材料、医薬品、潤滑
油、半導体等の分野に適用され得るような新たな機能が
期待されている新しい物質である。
ァイト棒のアーク放電や抵抗加熱等の際に発生する煤と
共に生成し、かかる煤をトルエンなどの芳香族炭化水素
溶媒で抽出することによって、煤から分離されている。
而して、現在のところ、単一種類のフラーレンのみを合
成する技術が確立されていないところから、前記煤のト
ルエン抽出溶液の中に混在する多種のフラーレンの同素
体より、それら同素体がそれぞれ有している有用な機能
を発現せしめる上において、各同素体の分離、精製を行
なうことが必要となる。しかしながら、フラーレン類
は、類似した性質を有している同素体乃至は異性体が非
常に多いことに加えて、高融点の物質であり、また高温
の条件下で他の同素体に変化する虞れがあるために、通
常の化合物の精製によく用いられる蒸留、再結晶、昇華
などの精製法による単離が困難である。従って、かかる
フラーレン類の分離精製には、分離能が優れていて、し
かも穏和な条件において、フラーレン類を分離し得る、
液体クロマトグラフィー手法を用いた分離が期待されて
いる。
レン類をよく溶解するトルエン等の溶媒中において、C
18系カラムではほとんど保持されないために、うまく分
離することが出来ないという問題点があったのである。
する他の液体クロマトグラフィー用の充填剤を用いた場
合において、充分には分離され得ない難分離性化合物が
存在するところから、そのような難分離性化合物、特に
PCB類やフラーレン類を効率的に分離し得るような液
体クロマトグラフィー用充填剤の開発が切望されている
のである。
決すべく、優れた保持力を有するような官能基について
鋭意探索を重ねた結果、担体を多環芳香族系官能基にて
化学修飾して得られる充填剤が、毒性の強いPCB類に
対して、より強い保持力を示し、しかも、その保持力
が、前記多環芳香族官能基を構成する縮合環の数が増加
するほど、強くなるという特性を見出した。そして、こ
のような充填剤をPCB類の分離に適用した結果、従来
の充填剤を適用した場合には分離することが困難であっ
た毒性の強いPCB類のみを、効果的に分離することが
可能となったのである。また、そのような多環芳香族官
能基結合型充填剤を、フラーレン類の分離に適用したと
ころ、従来の充填剤よりも、有利にフラーレン類を構成
する炭素数の差異をよく認識する充填剤であることが確
認でき、本発明に従う充填剤を用いることにより、効率
的にフラーレン類を分離し得ることが明らかとなった。
0である多環芳香族官能基にて化学修飾された担体より
構成されていることを特徴とする液体クロマトグラフィ
ー用充填剤を、その要旨とするものである。
マトグラフィー用充填剤では、担体が多環芳香族官能基
を有する固定相にて化学修飾されているところから、そ
の固定相の疎水性により、各種化合物との間に疎水性相
互作用を惹起して、それら化合物が保持される。また、
それに加えて、多環芳香族官能基が多くのπ電子を有し
ている電子供与性官能基であるところから、電子吸引性
の置換基を有する、即ち電子受容性の化合物との間に惹
起される電荷移動相互作用が大きくなり、以て電子吸引
基を有する化合物が、より一層強く保持されることとな
る。更に、前記多環芳香族官能基のπ電子は、π電子を
有する化合物のπ電子との電子的相互作用が大きく、π
電子を有する化合物も、強く保持されることとなる。
ラフィー用充填剤の好ましい態様によれば、前記担体に
は、シリカゲルが用いられることとなる。
れることにより、担体材料の表面積が大きくなり、担体
表面に結合せしめられる固定相の量が容易に大ならしめ
られ得るところから、前記充填剤による化合物の保持
力、延いては分離能がより向上せしめられることとなる
のである。
ある多環芳香族官能基を有するシリル化剤を用い、該シ
リル化剤を、担体表面の水酸基と反応せしめて、前記多
環芳香族官能基を有する固定相を、該担体の表面に形成
することを特徴とする液体クロマトグラフィー用充填剤
の製造法をも、その要旨とする。
10である多環芳香族官能基を有する固定相がシリル化
剤として調製され、それが担体表面の水酸基と反応せし
められることにより、担体への固定相の導入が、効率よ
く、確実に行なわれ得ることとなるのである。
ィー用充填剤の製造方法の好ましい態様によれば、前記
担体は、前述せるように、シリカゲルとされる。
れることにより、担体材料の表面積が大きくなり、しか
も前記シリル化剤と担体表面の水酸基との反応性がよく
なるところから、結合せしめられる固定相の量が多くな
る、換言すれば保持力が増大せしめられる充填剤がより
有利に得られることとなる。また、シリル化剤と担体と
の反応性が増大せしめられているところから、担体に対
して反応せしめられるシリル化剤の量を減らしても、優
れた保持力を有する充填剤が得られることとなる。
ー手法によってポリ塩化ビフェニル類若しくはフラーレ
ン類を分離するに際して、縮合環の数が5〜10である
多環芳香族官能基にて化学修飾された担体より構成され
る充填剤を用いることを特徴とする分離方法をも、その
要旨とするものである。
記縮合環の数が5〜10である多環芳香族官能基にて化
学修飾された担体より構成される充填剤を用いているた
めに、多環芳香族官能基と毒性の強いポリ塩化ビフェニ
ル類とが相互作用を及ぼし易いところから、毒性の強い
ポリ塩化ビフェニルと毒性の強くないポリ塩化ビフェニ
ルとが有利に分離されることとなる。また、多環芳香族
官能基とフラーレン類との相互作用は、フラーレン類を
構成している炭素数の違いにより異なるために、フラー
レン同素体も有利に分離されることとなるのである。こ
のように、本発明にあっては、従来の充填剤を用いた場
合には、保持力が不充分であるために分離することが困
難であった異性体や同素体等を効果的に分離し得るので
ある。
しては、前記の如き縮合した環の数が5〜10である多
環芳香族官能基にて担体が化学修飾されたものであれ
ば、如何なる形態のものであっても、差し支えないが、
一般には、Ar−A−O−担体材料(但し、Ar:多環
芳香族官能基、A:スペーサー基、O:酸素原子)にて
表される化学結合型の充填剤である。
スペーサー基(A)を介して結合せしめられて、目的と
する充填剤を与える担体材料としては、前記した多環芳
香族官能基が化学的に結合せしめられて保持され得るも
のであれば、公知の如何なる担体材料も用いられ得る
が、かかる充填剤を製造するにあたって、充填剤の一般
的な製法としてよく知られている有機珪素化合物(シリ
ル化剤)を用いた化学修飾法を採用する場合にあって
は、シリカゲルの他、多孔性ガラス、ガラスビーズ、ア
ルミナ、チタニア、ジルコニア等が適宜に用いられるこ
ととなる。尤も、担体材料の表面積並びにシリル化剤と
担体表面の水酸基との反応性を考慮すると、前記担体の
中でも、好ましくはシリカゲルや多孔性ガラスが、より
好ましくはシリカゲルが用いられる。
面上に存在する水酸基だけに反応するものでなく、有機
担体に存在するアルコール性水酸基とも反応する。この
シリル化剤とアルコール性水酸基との反応は、アルコキ
シシラン(Si−O−R)を形成し、その結合は、容易
に加水分解を受けるため、水−アルコール混合溶媒を移
動相溶媒とするような条件では使用できないが、移動相
溶媒に水やアルコールを用いない条件下で液体クロマト
グラフィーが行なわれる場合には、ポリスチレンゲル、
ポリビニルアルコールゲル等の有機高分子ゲルやアガロ
ース、セルロース等の多糖類を基剤とする担体材料を使
用することも可能である。
能基と担体材料との間に結合せしめられるスペーサー基
としては、充填剤によるPCB類やフラーレン類に対す
る保持力の大部分が、多環芳香族官能基部分にて発現さ
れ、スペーサー基の違いによる影響を殆ど受けないとこ
ろから、公知の各種の原子団が用いられ得る。そして、
そのようなスペーサー基としては、例えば、メチレン
基、エチレン基、プロピレン基等の直鎖炭化水素基が挙
げられるが、それらに、エーテル結合、アミド結合、エ
ステル結合、カルボニル基等の他、硫黄原子、窒素原子
を含む官能基等が導入された原子団が用いられても、何
等差し支えない。また、ここでは、スペーサー基を有す
る構造のものを例示したが、これだけに限定されるもの
ではなく、前記多環芳香族官能基が、スペーサー基を介
さずに、直接担体材料に結合せしめられていても、何等
差し支えない。
る化学修飾が、縮合環の数が5〜10である多環芳香族
官能基にて行なわれるのである。けだし、多環芳香族官
能基の縮合環の数が5より小さい場合には、充分な保持
力が得られず、目的とする化合物を分離することが困難
となるからであり、また多環芳香族官能基の縮合環の数
が10より大きい場合には、多環芳香族官能基が大きく
なり、立体障害による反応阻害のために、担体への固定
相の結合量が減少して、保持力が低下するからであり、
更に縮合環の数の増加に従い、その天然に存在する量が
少なくなるために、充填剤を製造する際に、必要量の多
環芳香族化合物を得ることが困難となるからである。
は、縮環数が5〜10となるものであるならば、如何な
るものをも採用され得るものであり、例えば、ピセニル
基、ペリレニル基、ペンタフェニル基、ペンタセニル
基、テトラフェニレン基、ベンゾフルオランチニル基、
ヘキサフェニル基、ヘキサセニル基、ルビセニル基、コ
ロネニル基、トリナフチレニル基、ヘプタフェニル基、
ヘプタセニル基、ピランスレニル基、デカシクレニル
基、オバレニル基等が挙げられる。そして、これらの多
環芳香族官能基は、環の歪みが少なくなることや環上の
π電子の共役が阻害されなくなることから、6員環のみ
で構成されていることが好ましいが、充填剤としての性
能に影響を与えない範囲内で、例えば、前記ベンゾフル
オランチニル基やデカシクレニル基のように5員環を構
成環に含んでいたり、前記テトラフェニレン基のように
8員環を構成環に含んでいたりしてもよい。また、多環
芳香族官能基は、その環上において置換基を有していて
も、何等差し支えない。
(多環芳香族官能基)の量は、溶質の保持時間に影響を
与えるのであるが、一般に、その量が増加すると、溶質
と固定相との相互作用が大きくなり、その結果として溶
質の保持力が増大する。そして、この関連性はPCB類
やフラーレン類についても同様に当てはめることが出
来、固定相が多く結合せしめられてなる充填剤の使用に
より、PCB類やフラーレン類に対する強い保持力が発
揮され、その結果、それら化合物の分離が効果的に為さ
れ得る。つまり、PCB類やフラーレン類に対する、よ
り大きな保持力を有する充填剤を得るためには、出来る
だけ多くの多環芳香族官能基が担体に結合せしめられる
ことが望ましいのである。
の下限は、条件によって異なり、一概に決定されるもの
ではないが、一般に、目的とする物質に対する保持力が
有効に発揮されるのに充分な量があればよい。それ故、
多環芳香族官能基を有する固定相にて担体を化学修飾す
る際に、その反応性が従来の充填剤における反応性に比
べて多少悪いものであっても、本発明に従う充填剤に採
用される固定相の溶質に対する保持力が強いところか
ら、充分に使用され得るような充填剤が得られるのであ
る。つまり、多環芳香族官能基にて化学修飾する際に、
その多環芳香族官能基との反応性が悪くなるような担体
であっても、従来の充填剤よりも有用な充填剤が得られ
ることがあり、そのために、反応せしめられる担体の選
択の幅が有利に広げられるのである。具体的には、例え
ば、従来の充填剤と比較して3倍の保持力を有する充填
剤では、かかる充填剤の固定相の量が1/3となって
も、従来の充填剤と同程度の保持力を有するのであり、
それより固定相の量が多くなるようにされれば、保持力
の改善された有用な充填剤となるのである。
グラフィー用充填剤は、公知の各種の反応を利用して製
造され得るものであるが、一般に、1)多環芳香族官能
基を有するシリル化剤を担体に反応せしめる方法、2)
多環芳香族官能基を有する有機金属化合物を担体と反応
せしめる方法、3)反応性を有する官能基を担体に導入
した後、その官能基に多環芳香族官能基を結合せしめる
方法等の反応を利用して製造されることとなる。
いる方法では、先ず、多環芳香族官能基に二重結合を有
する置換基が導入される。そして、この二重結合を有す
る置換基の多環芳香族官能基への導入は、多環芳香族官
能基に、例えばアリル基等の二重結合を有する置換基を
導入することにより、具体的には、下記反応式(1
a)、(1b)、(1c)に示される反応のようにする
ことにより、有利に行なうことが出来るのである。な
お、ここで、Arは多環芳香族官能基を、またCuXは
ハロゲン化銅を表しており、以下の反応式でも同様であ
る。
は、上記の反応に限られものではなく、例えば下記反応
式(1d)〜(1g)の如く行われてもよい。なお、こ
こでは二重結合を有する置換基として、4−ブテニル基
の導入が行なわれている。
重結合を有する多環芳香族官能基の二重結合部位に、下
記反応式(2)に示される如く、白金触媒を用いてヒド
ロシラン(H−Si)を付加せしめる、所謂ハイドロシ
リレーション反応をすることにより、シリル化剤が得ら
れるのである。そして、この反応において、ヒドロシラ
ンの付加反応は、反マルコフニコフ型の付加が主として
進行し、アルケン分子の末端に珪素原子が結合するよう
に反応する。かかる方法は、シリル化剤への転化率が大
きく、副反応が少ないために、目的とする構造のシリル
化剤が得られ易いという利点がある。
応性の置換基としては、クロロシラン(Si−Cl)基
等が挙げられるが、そのような反応性置換基は、珪素原
子に結合可能な4つの置換基のうち、必ずしも一つだけ
に限られず、2個あるいは3個の反応性の官能基を有す
るシリル化剤も、担体の化学修飾に適用され得る。そし
て、このようなシリル化剤の反応性の官能基としては、
珪素原子に塩素(−Cl)が結合せしめられてなるクロ
ロシランに限らず、珪素原子に臭素(−Br)、メトキ
シ(−OCH3 )、エトキシ(−OCH2 CH3 )、ア
ルキルアミノ基(−NR2 )等、担体表面に存在する水
酸基等の活性部位と反応可能な官能基であれば、何れの
ものでも、本発明に適用され得るのである。
においては、ヒドロシランの二重結合への付加反応を用
いた方法を例示したが、何等これに限定されるものでな
く、例えば、二つ以上の反応性の官能基(主として塩
素)を持つ有機化合物とグリニヤール試薬等の有機金属
試薬を反応させる方法でも、シリル化剤を合成すること
ができる。
族官能基を有するシリル化剤を、反応式(3)に示され
るように、シリカゲル(HO−Si)等の担体に反応せ
しめることにより、目的とする充填剤を得ることが出来
るのである。
方法は、Locke 等が報告している方法〔D.C. Locke, J.
J. Schermud and B. Banner, Anal.Chem., 44, 90 (197
2)〕であり、この方法では、下記反応式(4a)、(4
b)に示される二段階の反応工程を経て、目的とする充
填剤が得られるのである。なお、ここにおいて、反応式
(4a)に示される反応は、塩化チオニルのような水酸
基を塩素化することの出来る試薬を用いて、担体(例え
ばシリカゲル)の水酸基を塩素化する反応であり、反応
式(4b)に示される反応は、前記反応式(1a)、
(1b)に従って得られるグリニヤール試薬を、下記反
応式(4a)において合成された塩素化担体と反応させ
て、Arにて表される多環芳香族官能基を担体に結合さ
せる反応である。なお、反応式中、Siはシリカゲル残
基を示す。
を担体に導入した後に、その官能基に多環芳香族官能基
を結合せしめる方法は、上記2)で示した有機金属化合
物を担体と反応させる方法と類似するが、この方法で
は、下記反応式(5a)に示される如く、予めアミノ基
のような反応性を有する官能基を担体(例えばシリカゲ
ル)に導入し、このアミノ基と反応し得る官能基、例え
ば、カルボキシル基を有する多環芳香族官能基と、下記
反応式(5a)において得られた反応性官能基の導入さ
れた担体とが、下記反応式(5b)に示されるように、
ジシクロヘキシルカルボジイミド等の縮合剤にて縮合さ
せられることにより、目的とする充填剤が得られるので
ある。なお、この例では、最終的にアミド結合が形成さ
れる反応について示されているが、その他エステル結合
やエーテル結合等を形成する官能基の組合せについて
も、同様に行なわれ得るのである。また、反応式中のS
i−O−はシリカゲル残基を示す。
の合成方法によって製造され得るものであるが、無機担
体の有機化合物による化学修飾法として広く知られ、有
機珪素化合物(シリル化剤)に結合している官能基の違
いにより種々の官能基を無機担体に結合できる有用な手
法であり、目的とする充填剤が容易に得られるところか
ら、前記1)の方法により、製造されることが好まし
い。
充填剤を用いて、PCB類やフラーレン類を液体クロマ
トグラフィー分離することをも、その特徴とするもので
あり、これにより、効果的にPCB類やフラーレン類を
分離することが出来るようになったのであるが、そのよ
うなPCB類やフラーレン類の液体クロマトグラフィー
手法による分離操作には、従来と同様な操作乃至は条件
が採用されることとなる。
は、本発明に従う充填剤を充填せしめたカラムに対し
て、PCB類やフラーレン類は、所定の溶媒に溶解させ
た溶液として供給せしめられることとなる。ところで、
PCB類は、ヘキサン、イソオクタン等の炭化水素やト
ルエン、ベンゼン等の芳香族炭化水素溶媒によく溶解
し、またフラーレン類は、トリクロロベンゼン、トルエ
ン、ベンゼン等の芳香族炭化水素溶媒や二硫化炭素によ
く溶解するものであるところから、分離精製する場合、
PCB類を溶解させる溶媒には、トルエン、ヘキサン等
を、フラーレン類を溶解させる溶媒には、芳香族炭化水
素系溶媒、二硫化炭素等を用いる方が、より高濃度の分
離用試料溶液を調製することが可能となり、好ましい。
いて供給されたPCB類やフラーレン類は、充填剤にて
保持され、続いて、分離カラム内に流通せしめられる移
動相溶媒にて、PCB類やフラーレン類が順次溶出せし
められるのである。なお、移動相溶媒として、PCB類
については、PCB類と同じ紫外線吸収領域を有してお
らず、PCB類をより有利に検出し得て、しかも試料と
固定相との相互作用を阻害しないようにπ電子を有して
いないヘキサン、イソオクタン等の炭化水素溶媒が用い
られることが好ましく、またフラーレン類については、
例えばトルエン、ヘキサン、又はトルエンとヘキサンの
混合溶媒、好ましくは二硫化炭素又は二硫化炭素とトル
エンの混合溶媒が用いられる。そして、PCB類やフラ
ーレン類が、移動相溶媒によってそれぞれ個別に経時的
に分離カラムから溶出せしめられ、この分離カラムから
流出させられる溶出液を経時的に分離することにより、
PCB類やフラーレン類の各異性体或いは同素体を分離
することが可能となるのである。
ために、本発明の幾つかの実施例を示すこととするが、
本発明が、そのような実施例の記載によって、何等の制
約をも受けるものでないことは、言うまでもないところ
である。また、本発明には、以下の実施例の他にも、更
には上記の具体的記述以外にも、本発明の趣旨を逸脱し
ない限りにおいて、当業者の知識に基づいて種々なる変
更、修正、改良等を加え得るものであることが、理解さ
れるべきである。
化合物への二重結合の導入、2)二重結合を有する多環
芳香族化合物とクロロシランとの反応、3)シリカゲル
とクロロシランとの反応という3段階の反応を経て、表
1に示す固定相(多環芳香族官能基+スペーサー基)構
造を有する本発明例1〜3及び比較例1〜3の充填剤を
合成した。なお、表1中において、本発明例1及び2の
充填剤は、共に同じ固定相構造を有するが、これら充填
剤を合成するに際して、固定相とシリカゲルとの反応率
が相違せしめられており、区別するために、別の略号で
示している。
リル化充填剤の合成 ───コロネンアルデヒドの合成─── 先ず、コロネン:6.0gを600mLの二硫化炭素に
溶解せしめたものに、四塩化チタン:36mLを加えた
後、0℃の温度条件下で撹拌しながら、これにジクロロ
メチルメチルエーテル:36mLを5分間掛けて滴下し
た。滴下後、氷冷下で、30分間撹拌し、更に室温で、
1時間撹拌しながら反応させた。かかる反応後、氷を入
れた分液ロートに反応溶液を移し、振とうしてから、有
機層を分離した。そして、更に残渣の水層を、二硫化炭
素で抽出して、これを先に分離した有機層と合わせて、
硫酸ナトリウムで乾燥後、二硫化炭素を減圧留去して、
コロネンアルデヒドの粗結晶を得た。ここで得られた疎
結晶を、ソックスレー抽出器を用いて、キシレンで抽出
することにより、キシレンに不溶性の固体を除去し、キ
シレンから再結晶して、目的とするコロネンアルデヒド
を得た(収量:6.2g)。なお、生成物の確認はNM
Rを用いて行なった。
m) 8.5−8.95(11H,m,Ar),10.71
(1H,s,−CHO)
ニル)コロネンの合成─── マグネシウム:0.73gとテトラヒドロフラン:20
mLをフラスコに入れ、それに、アルゴン気流中で、4
−ブロモ−1−ブテン:2.7gを加えて、グリニヤー
ル試薬を調製した。また、上記で合成したコロネンアル
デヒド:6.0gを、ベンゼンと共沸せしめて、水を除
いたものを、テトラヒドロフランに分散させた。そし
て、これに、前記グリニヤール試薬を滴下した。そし
て、このグリニヤール試薬の滴下後、1時間、加熱還流
しながら反応させた。かかる反応の後、得られた反応液
を、室温まで冷却した後、それに水及び燐酸を加えて、
トルエンで抽出した。得られたトルエン層を硫酸ナトリ
ウムで乾燥した後、トルエンを減圧留去して、粗2−
(1−ヒドロキシ−4−ペンテニル)コロネンを得た
(収量:6.1g)。
ル)コロネンの合成─── 上記で得られた粗2−(1−ヒドロキシ−4−ペンテニ
ル)コロネン:11.5gに、トリフェニルホスフィ
ン:10.5gと四塩化炭素:100mLとを加え、6
時間、還流しながら反応させた。かかる反応後、反応液
にエタノールを加え、更に1時間、還流して、過剰のト
リフェニルホスフィンを分解した。そして、得られた反
応液の溶媒を留去した後、トルエンを展開溶媒とするシ
リカゲルカラムクロマトグラフィーで精製して、粗2−
(1−クロロ−4−ペンテニル)コロネンを得た(収
量:7.5g)。
成─── 上記で得られた粗2−(1−クロロ−4−ペンテニル)
コロネン:7.4gを、テトラヒドロフラン:100m
Lに分散させて、これにリチウムアルミニウムヒドリ
ド:1.5gを加えた後、5時間、加熱還流しながら反
応させた。そして、還流後、室温で、一夜、放置した。
かかる反応後、反応液に、水を加えて、リチウムアルミ
ニウムヒドリドを加水分解した後、目的とする化合物を
ベンゼンで抽出し、それを塩化カルシウムで乾燥した。
得られたベンゼンを減圧留去した後、トルエン:ヘキサ
ン=1:1を展開溶媒とするシリカゲルカラムクロマト
グラフィーで精製して、目的とする1−コロネニル−4
−ペンテンを得た(収量:5.8g)。なお、得られた
1−コロネニル−4−ペンテンの確認はNMRで行なっ
た。
m) 2.14(2H,tt,J=7.7Hz,7.5Hz,
−CH2 CH2 −Ar),2.35(2H,dt,J=
7.5Hz,7.0Hz,CH2 =CH−CH 2 ),
3.54(2H,t,J=7.7Hz,CH2 −A
r),5.09(1H,dd,J=10.3Hz[ci
s],1.5Hz[geminal],CH 2=CH
−),5.18(1H,dd,J=16.0Hz[tr
ans],1.5Hz[geminal],CH 2 =C
H−),6.00(1H,ddt,J=7.0Hz,1
0.3Hz,16.0Hz,CH2 =CH−),8.3
0−8.88(11H,m,Ar).
ロロシランの合成─── 次に、白金を触媒としたハイドロシリレーション反応に
より、上記で得られた1−コロネニル−4−ペンテンに
クロロシランを反応させて、シリル化剤である5−コロ
ネニルペンチルジメチルクロロシランを合成した。
テン:5gを、ベンゼン:100mLに溶解させ、これ
に塩化白金酸:20mgとジメチルクロロシラン:10
mLを加えて、80℃で、3時間、還流しながら、反応
させた。そして、反応後、白金触媒を濾過して除去し、
更に過剰のジメチルクロロシランとベンゼンを減圧留去
して、目的とする5−コロネニルペンチルジメチルクロ
ロシランを得た(収量:5.9g)。なお、生成物の確
認はNMRで行なった。
m) 0.3(6H,s,Si−CH3 ×2),0.8(2
H,m,Si−CH2 ),1.5(2H,m,−CH2
CH2 CH2 −Si),1.8(2H,m,−CH2 C
H2 −Ar),3.3(2H,t,CH2 −Ar),
8.30−8.88(11H,m,Ar)
リル化充填剤の合成─── 次いで、上記で得られた5−コロネニルペンチルジメチ
ルクロロシランをシリル化剤として、シリカゲルに反応
させて、5−コロネニルペンチルシリル化充填剤を得
た。
m、細孔径:10nm、表面積:300m2 /g):1
重量部をトルエン:30重量部に分散し、それに5−コ
ロネニルペンチルジメチルクロロシラン:2重量部とピ
リジン:0.5重量部を加えた後、8時間、加熱還流し
ながら、反応させた。かかる反応の後、メタノールとク
ロロホルムの各々の100重量部で順次吸引濾過洗浄
し、50℃で乾燥して、目的とする本発明例1の充填剤
(COP−5−1)を得た。
メチルクロロシランを、上記の1/4に減量して、担体
であるシリカゲルとシリル化剤との反応率を低下させ
た、本発明例例2の充填剤(COP−5−2)も同様に
して得た。
合を有するコロネン誘導体を合成することが出来のであ
り、その得られたコロネン誘導体とジメチルクロロシラ
ンとを反応させることにより、シリル化剤を得ることが
出来る。例えばコロネンアルデヒドからビニルコロネン
を経て、2−コロネニルエチルジメチルクロロシラン
は、以下の如く、合成することが出来る。
ム:3.6gを、テトラヒドロフラン:30mLに分散
させ、それに、室温条件で、1.5Mのn−ブチルリチ
ウム:6.7mLを5分間掛けて滴下した。滴下後、室
温において、2時間、撹拌した。これに、前記と同様に
して合成したコロネンアルデヒド:3.3gをテトラヒ
ドロフラン:50mLに分散せしめた溶液を加え、更に
室温条件で、5時間、撹拌しながら、反応させた。かか
る反応後、得られた反応液に、飽和塩化アンモニウム水
溶液を加えたものを、エーテルで抽出した。そして、得
られたエーテル層を、硫酸ナトリウムで乾燥し、溶媒を
減圧留去して、粗結晶を得た。この粗結晶をジクロロメ
タン:10mLに溶解させ、ヘキサン:酢酸エチル=
4:1を展開溶媒とするシリカゲルカラムクロマトグラ
フィーで精製して、ビニルコロネンを得た(収量:1.
5g)。
m) 5.84(1H,dd,J=10.9,1.57Hz,
=CH 2 ),6.24(1H,dd,J=17.2,
1.57Hz,=CH 2 ),8.7(1H,dd,J=
17.2,10.9Hz,CH=),8.7−9.2
(11H,m,Ar)
ら5−コロネニルペンチルジメチルクロロシランを合成
した際と同様にして、ビニルコロネン:1.5gを原料
として、2−コロネニルエチルジメチルクロロシランを
合成した(収量:1.9g)。以下に、得られた生成物
のNMRの結果を示す。
m) 0.29(6H,s,Si−CH3 ×2),1.44
(2H,m,CH2 ),3.74(2H,m,C
H2 ),8.6−9.0(11H,m,Ar)
ネニルエチルジメチルクロロシランにしても、前記5−
コロネニルペンチルジメチルクロロシランから本発明例
1の充填剤を合成した場合と同様にして、シリカゲルと
反応させることにより、目的とする充填剤を得ることが
出来る。
リル化充填剤の合成 ───ブロモペリレンの合成─── 先ず、ペリレン:10.0gに四塩化炭素:80mLを
加え、臭素:2.0mLを30mLの四塩化炭素に溶解
させた溶液を、1時間掛けて滴下した。そして、滴下の
後、6時間撹拌しながら反応させた。かかる反応の後、
室温で、一夜、放置した。四塩化炭素を減圧留去し、エ
タノールを加えて還流した。冷却した後、粗結晶を吸引
濾過して回収した(収量:11.5g)。
ランに、マグネシウム:0.97gと、前記反応で得ら
れたブロモペリレン:11.5gとを反応させて、グリ
ニヤール試薬を調製した。この際、反応を円滑に進行さ
せるために、ヨウ化メチルを加えて反応を開始させた
後、ブロモペリレンを添加する方法で行った。添加完了
後、1時間還流しながら反応させた。そして、反応後、
得られた反応液を、−20℃まで冷却し、ヨウ化第一
銅:3.8gを加え、直ちに、臭化アリル:7.3gを
滴下した。滴下後、昇温しながら2時間反応した。反応
後、1夜放置した。放置後、テトラヒドロフランを減圧
留去し、燐酸水溶液を加えた後、トルエンで抽出し、シ
リカゲルオープンカラムクロマトグラフィーで精製し
て、目的とするアリルペリレンを得た(収量:5.1
g)。生成物の確認は、NMRで行なった。
m) 3.75−3.95(2H,m,CH2 −Ar),4.
95−5.45(2H,m,CH2 =CH−),5.9
0−6.38(1H,m,CH2 =CH−),7.30
−8.35(11H,m,Ar)
ルシリルを合成したときと同様にして、白金を触媒とし
たハイドロシリレーション反応により、上記で得られた
アリルペリレンにクロロシランを反応させて、シリル化
剤である3−ペリレニルプロピルジメチルクロロシラン
を合成した。
を、ベンゼン:100mLに溶解させ、これに塩化白金
酸:20mgとジメチルクロロシラン:10mLを加え
て、80℃で、3時間、還流しながら、反応させた。そ
して、反応後、白金触媒を濾過して除去し、更に過剰の
ジメチルクロロシランとベンゼンを減圧留去して、目的
とする3−ペリレニルプロピルジメチルクロロシランを
得た(収量:6.1g)。なお、生成物の確認はNMR
で行なった。
m) 0.25(6H,s,Si−CH3 ×2),1.4(2
H,m,Si−CH2 ),1.9(2H,m,Si−C
H2 CH2 ),3.1(2H,m,CH2 −Ar),
8.3−7.2(11H,m,Ar)
ロピルジメチルクロロシランをシリル化剤として、シリ
カゲルに反応させて、3−ペリレニルプロピルシリル化
充填剤を得た。
m、細孔径:10nm、表面積:300m2 /g):1
重量部をトルエン:30重量部に分散し、それに、3−
ペリレニルプロピルジメチルクロロシラン:1.7重量
部とピリジン:0.5重量部を加えた後、8時間、加熱
還流しながら、反応させた。かかる反応の後、メタノー
ルとクロロホルムの各々の100重量部で順次吸引濾過
洗浄し、50℃で乾燥して、本発明例3の充填剤(PE
R−3)を得た。
対応する出発化合物から、本発明例の充填剤と同様にし
て合成を行なった。
れた各充填剤の元素分析値及び担体であるシリカゲルの
表面に結合せしめられている固定相の量を測定し、その
結果を、下記表2に示す。また、本実施例において用い
られたシリカゲルは1g当り300m2 の表面積を有
し、この表面積1m2 当りに結合している固定相の量
(μmol)で示された値が表面反応率である。そし
て、この表面反応率が高い充填剤は、シリカゲルの表面
に高い割合で固定相が結合せしめられていることを示し
ている。なお、表面反応率の算出は、炭素の含有率から
算出した。
を、内径4.6mmφ×長さ150mmのクロマト管に
詰めて、各種カラムを作製した。そして、その得られた
カラムを用いて、各種試料溶液の液体クロマトグラフィ
ーを行なうことにより、充填剤の疎水性及び極性識別能
を評価した。
置は、送液ポンプ(LC−9A型:株式会社島津製作所
製)と、前記各充填剤が詰められたカラムと、試料注入
を行なうループ式注入バルブ(レオダイン社製)と、紫
外吸収検出器(SPD−6A型UV検出器:株式会社島
津製作所製)とから構成されており、移動相溶媒の送液
速度を、全て1.0mL/minの流速とした。また、
紫外吸収検出器の検出感度を、0.08〜0.16AU
FSに設定し、更に検出波長を、254nmに設定し
て、測定を行なった。なお、カラム温度を恒温水槽によ
り調節して、分析温度が30℃となるようにした。そし
て、溶出時間とピーク面積の計測には、データ処理装置
(CR−5A型:株式会社島津製作所製)を用いた。
を用い、試料には、安息香酸メチル、ベンゼン、トルエ
ンの3種類の化合物を用いた。そして、これら試料を、
200μg/mLの濃度となるように、メタノールに溶
解せしめて、試料溶液を調製し、これを検出感度に合わ
せて1〜5μL、液体クロマトグラフィー装置に注入し
て、液体クロマトグラフィーを行なった。
調べ、更にその保持力をもとにして、ベンゼンに対する
安息香酸メチル或いはトルエンの分離係数を算出した。
溶媒を移動相溶媒として用いた場合における各充填剤の
与える溶質の保持力が、k’値を指標として示されてい
る。なお、一般に、カラム(充填剤)の保持特性を示す
場合、試料をカラムに注入してから、カラムから溶出さ
れたピークの頂上までの時間(保持時間)が用いられる
が、この保持時間は、送液する移動相溶媒の流速が同一
で、しかも用いられるカラムが同一である場合において
のみ、その相対的な評価が可能となるものであるため
に、充填剤が異なる複数のカラムの比較やカラムの大き
さが違う場合、あるいは移動相溶媒の送液速度が異なる
場合などにおいては、前記保持時間を比較しても、相対
的な比較を行なうことが不可能となる。そのために、異
なる条件のクロマトグラフィー分離の結果の比較におい
ては、通常、次式のk’で表される値、即ち保持されな
い溶質の溶出時間に対する保持される化合物のカラム内
に滞留する時間の割合で、各溶質の保持特性(保持力)
が評価されることとなる。 k’=(tr −to )/to
されない溶質の溶出時間である。そして、かかるk’値
を用いることにより、カラムの長さや太さ或いは流速の
違い等による影響を無視することが出来るのであり、以
て純粋に充填剤の特性評価を行なうことが可能となるの
である。
(k’値)の比率を表す値であり、ピーク間の分離の程
度を示す尺度の一つとされる。具体的には、 分離係数=一つの溶質のk’値/他の溶質のk’値 で求められる。従って、分離係数或いは分離係数の逆数
が大きな値となる場合には、充填剤が二つの溶質をよく
分離する性質を持っていると判断できる。
に、本発明に従う充填剤は、その疎水性が強められてい
るところから、疎水性基を有する化合物を、より長く保
持するのである。詳細には、トルエンのメチル基は疎水
性基であり、メチル基を持たないベンゼンに対するトル
エンの分離係数が大きいほど充填剤の試料に対する疎水
性の認識能が大きいことを示しており、固定相の担体に
対する反応率を低下させた本発明例2の充填剤(COP
−5−2)を除く、多環芳香族官能基を有する固定相が
結合せしめられた充填剤(COP−5−1、PER−
3、PYE、NE)では、多環芳香族官能基を構成する
環の数が増加すればするほど、ベンゼンに対するトルエ
ンの分離係数が大きくなる傾向を示し、シリカゲルを化
学修飾している官能基たる多環芳香族官能基における環
の数が増加すると、疎水性の大きな試料が、より長く保
持されることが明らかとなった。
基を有する化合物に対する保持力も強められている。詳
細には、安息香酸メチルは、電子吸引性の官能基を有し
ており、ベンゼンに対する安息香酸メチルの分離係数
は、その値が大きいほど、電子吸引性の官能基をもつ試
料に対する保持が大きいことを示しており、比較例1の
充填剤(PYE)を用いた場合よりも、本発明例1の充
填剤(COP−5−1)や本発明例3の充填剤(PER
−3)を用いた場合の方が、ベンゼンに対する安息香酸
メチルの分離係数が大きくなり、担体であるシリカゲル
に結合している多環芳香族官能基を構成する環の数が多
いほど、電子吸引性の官能基を有する試料がより長く保
持されることが明らかとなった。
族官能基を構成する環の数が多いほど、試料に対する疎
水性の認識能及び電子的な相互作用とが向上せしめられ
るのであり、以て疎水性による分離能力に加えて、電子
的な相互作用により、化合物を効率的に分離し得るので
ある。従って、本発明に係る充填剤を用いることによ
り、C18系カラムのように主として疎水性によってのみ
試料を識別、分離する充填剤では分離が困難であった化
合物群も、効果的に分離を行ない得ることが推定される
のである。
分離能について、比較検討を行なうこととする。具体的
には、先ず、PCB類試料として、2位や6位に塩素原
子を有さず、4個の塩素原子で置換されたPCBである
3,3’,4,4’−テトラクロロビフェニル(IUP
AC No.77)、2位に1個の塩素原子を有し、4
個の塩素原子で置換されたPCBである2,3,4,
4’−テトラクロロビフェニル(IUPAC No.6
6)、2位や6位に塩素原子を有さず、6個の塩素原子
で置換されたPCBである3,3’,4,4’,5,
5’−ヘキサクロロビフェニル(IUPAC No.1
69)、2位と6位に4個の塩素原子を有し、6個の塩
素原子で置換されたPCBである2,2’,4,4’,
6,6’−ヘキサクロロビフェニル(IUPAC N
o.155)を用意し、これらを、それぞれの濃度が1
mg/mLの濃度となるようにトルエンに溶解せしめて
試料溶液として調製し、PCB類の検出感度に合わせ
て、1μL〜10μL程度に増減して用いた。なお、用
いられたPCB試料は、米国公衆保健局疾病予防センタ
ーから提供されたものであり、以下の実施例でも同様で
ある。
充填剤を、前記実施例2と同様なカラムに詰めて、それ
を用いて、前記で調製した各種試料溶液について、液体
クロマトグラフィーを行なった。なお、液体クロマトグ
ラフィーに用いた装置及びその条件は、実施例2と同様
であった。但し、移動相溶媒は、ヘキサンを用い、紫外
吸収検出器の検出波長は、220nmに設定した。
であるk’値を求め、下記表4に示した。また、IUP
AC No.66のPCBのk’値に対するIUPAC
No.77のPCBのk’値の比、及びIUPAC
No.155のPCBのk’値に対するIUPAC N
o.169のPCBのk’値の比を、分離係数として算
出し、下記表4に併せ示した。
うに、毒性の強くないPCB類に対する、毒性の強いP
CB類の分離係数、換言すればビフェニル骨格の2位や
6位に塩素原子を有しているPCB類に対する、ビフェ
ニル骨格の2位や6位に塩素原子を有していないPCB
類の分離係数は、固定相中に含まれる多環芳香族官能基
の環の数が増加すればするほど、大きくなる傾向を示
し、従来から用いられているPYEよりも、コロネンや
ペリレンを担体に結合せしめた本発明例の充填剤(CO
P−5−1、PER−3)の方が、分離係数が大きくな
っているのであり、本発明に従う充填剤が、毒性の強い
PCB類を、毒性の強くないPCB類より一層長く保持
して、それらPCB類の異性体を効果的に分離し得るこ
とが示されたのである。
では、固定相と担体との反応率が低くても、PCB類が
有利に分離出来るのである。詳細には、例えば本発明例
2の充填剤(COP−5−2)では、前記表1に示され
るように、炭素含有率が4%であるが、IUPAC N
o.155のPCBに対する、IUPAC No.16
9のPCBの分離係数は20以上となり、コロネンを担
体に結合させた充填剤は、4%程度の低い炭素含有率の
もの、即ち担体に結合せしめられた固定相の量が少ない
ものでも、従来型の充填剤よりも、PCB異性体に対す
る高い分離性能が得られたのである。
基)がメチレン基5個から構成されたスペーサー基で担
体に結合せしめられた本発明例1の充填剤(COP−5
−1)と、多環芳香族官能基(ピレニル基)がメチレン
基3個から構成されたスペーサー基で担体に結合せしめ
られた本発明例3の充填剤(PER−3)とを比較した
ところ、多環芳香族官能基と担体とを結合するスペーサ
ー基が、PCB異性体の認識能の発現や、前記実施例2
の表3に示したベンゼン誘導体の分離能、後述する実施
例6に示すフラーレン誘導体の分離能に及ぼす影響は少
なく、それら充填剤が、2位や6位に塩素原子が結合し
ていない毒性の強いPCB類をより長く保持するという
特性は、固定相中に含まれる多環芳香族官能基の特性に
よってのみ発現していると考えられる。従って、多環芳
香族官能基と担体とを結合しているスペーサー基は、そ
の鎖長が違っていても、或いはメチレン基の他に、エス
テル、アミド、エーテル等の官能基がスペーサ基に導入
されていても、2位や6位に塩素原子を有していない、
毒性の強いPCB類を、2位や6位に塩素原子を有す
る、毒性の強くないPCB類よりも長く保持し得ると推
定されるのである。
ェニル骨格の2位や6位に結合している塩素原子の数が
多くなればなるほど、毒性が減少する傾向があるため
に、通常、試料中に含有されているPCB類の毒性を正
確に評価するためには、2位や6位に塩素原子を有して
いないPCB類と、2位や6位に塩素原子を有している
PCB類を分離することの出来る充填剤が有効である。
剤(COP−5−1)が、2位や6位に塩素原子を有し
てない、毒性の強いPCB類をより長く保持し、それと
2位や6位に塩素原子を有している、毒性の強くないP
CB類との分離が、効果的に行なわれ得るものであるこ
とを明らかとする。
合している塩素原子数が4〜6個のPCB類を用い、そ
れらを、結合している塩素原子数が同じであるものに区
分し、更にそれぞれを、ビフェニルの2位及び6位に塩
素原子が結合していないもの(Cグループ)、ビフェニ
ルの2位或いは6位に塩素原子が1個結合しているもの
(Mグループ)、ビフェニルの2位或いは6位に塩素原
子が2個以上結合しているもの(Oグループ)の、3つ
のグループに分けた。
類のそれぞれを実施例3と同様に、濃度が1mg/mL
の濃度となるようにトルエンに溶解せしめて試料溶液と
して調製した。
剤及び比較対象としての比較例2の充填剤とを、それぞ
れ前記実施例2と同様なカラムに詰めて、それを用い
て、前記で調製した各種試料溶液について、液体クロマ
トグラフィーを行ない、それぞれの溶出時間を、下記表
5に示した。なお、液体クロマトグラフィーに用いた装
置及びその条件は、実施例3と同様であり、試料溶液
は、検出感度に合わせて、1μL〜10μL程度に増減
して用いた。
うに、本発明例1の充填剤(COP−5−1)を用いた
場合には、結合している塩素原子数が同じPCB異性体
同士で比較すると、2位及び6位に塩素原子を有してい
ないPCB異性体(グループC)の溶出時間の方が、2
位或いは6位に塩素原子を有しているPCB異性体(グ
ループM、グループO)の溶出時間より長く、それらグ
ループCとグループM及びグループOとが、有利に分離
され得ることが示された。一方、比較例1の充填剤(P
YE)を用いた場合には、結合している塩素原子数が同
じPCB異性体同士で比較すると、2位及び6位に塩素
原子を有していないPCB異性体(グループC)の溶出
時間と2位或いは6位に塩素原子を有しているPCB異
性体(グループM、グループO)の溶出時間とに余り差
がなく、分離が不十分であることが示された。
例1の充填剤及び比較例1の充填剤を用いて、72種の
PCB類の異性体混合物を、同時分離した際のクロマト
グラムを示した。なお、かかる図1、図2において、ピ
ークの上に記載されている数字は、そのピークを与える
PCB類のIUPAC No.を表している。また、液
体クロマトグラフィー装置及び条件は、上記と同様であ
り、試料溶液は、IUPAC No.が、2,3,11,12,1
3,14,15,22,28,33,35,36,37,38,39,41,44,47,49,52,56,
60,66,74,77,78,79,80,81,87,99,101,105,110,114,118,
122,126,127,130,137,138,146,151,153,154,156,157,15
8,167,169,170,172,174,177,178,180,182,183,187,189,
191,193,194,195,196,197,201,203,204,206,209である
PCBの標準品を、トルエンで、濃度が500μL/m
Lとなるように希釈して、合計8μL注入した。
なように、本発明例1の充填剤(COP−5−1)を用
いることにより、毒性の強いIUPAC No.77、
126、169のPCBが完全に分離されているのに対
して、比較例1の充填剤(PYE)を用いた場合には、
毒性の強いPCB類に対する保持が不充分で、その結
果、それらの分離が不完全なものとなっているのであ
る。
填剤(COP−5−1)を用いて、液体クロマトグラフ
ィーを行なった場合に、結合している塩素原子の数が4
個であるPCB類の内、毒性の強いグループCと、毒性
の強くないグループM或いはグループOとの間で、溶出
時間が一部重複し、グループの分離が完全に出来ていな
いことが示されているが、図1に示されるように、本発
明例1の充填剤を用いて、液体クロマトグラフィーを行
なった場合には、結合している塩素原子数が4個である
PCB異性体の中で、最も強い毒性を有する3,3’,
4,4’−テトラクロロビフェニル(IUPAC N
o.77)は、略完全に分離されており、毒性の大きな
PCB異性体が効果的に分離され得ることが示された。
り、効果的にフラーレン類を分離することが可能である
ことを明らかとするために、既存の充填剤と本発明に従
う充填剤とを用いた場合のフラーレンの保持力と分離係
数に関して比較を行ない、その結果を、下記表6に示し
た。
フラーレン類の保持特性を評価するために用いられる試
料としては、フラーレン混合粉末(商品名 Refined C
60/C70:真空冶金製)を分離精製して得られたフラー
レンが用いられた。詳細には、前記フラーレン混合粉末
は、フラーレン類を含むススからフラーレン同素体ある
いは異性体を抽出した後、乾燥させたものであり、
C60、C70以外に少量の高次フラーレンを含有している
ところから、それら高次フラーレンを分離除去して、C
60とC70を分取精製して標準品とした。そして、得られ
た標準フラーレンを濃度が0.3〜1mg/mL程度と
なるようにトルエンで希釈して試料溶液とした。また、
分析は、調製した標準試料をマイクロシリンジを用いて
必要に応じて1μL〜5μL注入することで行った。な
お、移動相溶媒には、トルエンを用いた。但し、C18型
充填剤は、トルエンを移動相溶媒を用いると、フラーレ
ン類を保持し得ないために、充填剤にC18型充填剤を用
いた場合のみ、フラーレン類に対して貧溶媒であるヘキ
サンを用いた。また、フラーレンの検出波長は285n
mとした。
ように、本発明に従う充填剤を用いることにより、効果
的にフラーレン類が分離され得たのである。即ち、従来
から用いられている比較例1〜3の充填剤では、C60に
対するC70の分離係数が2以下であるのに対して、本発
明例1〜3の充填剤を用いた場合では、何れも、分離係
数が2以上となり、フラーレン類の構成炭素数の違い
を、従来から用いられている充填剤より高く識別する特
性を有していることが確認されたのである。
に従う充填剤にあっては、疎水性相互作用のみならず、
電子吸引性基との相互作用を有しており、溶質に対する
強い保持力が発揮され得るのであり、逆相クロマトグラ
フィー条件下において、疎水性相互作用を主たる分離能
とするC18型充填剤で保持又は分離できない試料、例え
ばPCB類やフラーレン類等の物質にも有利に適用さ
れ、液体クロマトグラフィー操作において、それらを効
果的に保持、分離することが出来るのである。
ー用充填剤の製造方法によれば、上記の如き優れた液体
クロマトグラフィーを、多環芳香族官能基を有するシリ
ル化剤を、担体表面の水酸基と反応せしめることによ
り、容易に製造することが出来るのである。
性体混合物を液体クロマトグラフィーにより分離した結
果を示すクロマトグラムである。
混合物を液体クロマトグラフィーにより分離した結果を
示すクロマトグラムである。
Claims (3)
- 【請求項1】 ポリ塩化ビフェニル類若しくはフラーレ
ン類の液体クロマトグラフィー分離に用いられる充填剤
にして、縮合環の数が5〜10である多環芳香族官能基
にて化学修飾された担体より構成されていることを特徴
とする液体クロマトグラフィー用充填剤。 - 【請求項2】 前記担体が、シリカゲルである請求項1
に記載の液体クロマトグラフィー用充填剤。 - 【請求項3】 液体クロマトグラフィー手法によってポ
リ塩化ビフェニル類若しくはフラーレン類を分離するに
際して、縮合環の数が5〜10である多環芳香族官能基
にて化学修飾された担体より構成される充填剤を用いる
ことを特徴とする分離方法。
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JP19014895A JP3494763B2 (ja) | 1995-07-26 | 1995-07-26 | 液体クロマトグラフィー用充填剤及びそれを用いた分離方法 |
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JPH0943222A JPH0943222A (ja) | 1997-02-14 |
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-
1995
- 1995-07-26 JP JP19014895A patent/JP3494763B2/ja not_active Expired - Fee Related
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