JP2004271220A - 石英ガラスの評価装置及び方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】石英ガラスの評価装置は、石英ガラス試料にレーザ光を照射するレーザ光源と、レーザ光が照射された石英ガラス試料から発するラマン散乱光を受光する検出器と、石英ガラス試料と前記検出器間のラマン散乱光の光路に進退自在に設けられ特定色の蛍光のみを透過させるバンドパスフィルタとを有する。また、これを用いた測定方法。
【選択図】 図1
Description
【発明の属する技術分野】
本発明は石英ガラスの評価装置及び方法に係わり、特にラマン散乱光の検出、屈折・散乱による光量の変化の検出あるいは赤色蛍光の検出をする石英ガラスの評価装置及び方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
透過する光線が影響を受けないようにするため、レンズ材等の光学材料や半導体回路製造用のフォトマスク材では、特定波長の蛍光の発生を抑制することが不可欠であり、蛍光の評価が極めて重要である。
【0003】
上記フォトマスク材では、可視蛍光強度が一定の値を超えないように規定される場合がある。その理由としては、石英ガラスに紫外線を照射したときに発生する赤色蛍光は、非架橋の酸素に起因しているからであり、シリコンウェーハにパターンを書き込む際に悪影響を及ぼすため、品質管理の面でその評価方法が必要になっている。
【0004】
ここで蛍光とは、物質中の電子が種々の刺激、例えば、光照射による光量子の吸収により、基底状態から励起状態に遷移し、再び基底状態に戻るときに光を放出する現象をルミネッセンスといい、この放出光の減衰時間の短いもの(10−9〜10−3sec)、すなわち、外部からの刺激を除いた後に物質が発する残光の中で、減衰時間が短い成分に対応する発光である。
【0005】
また、上記蛍光材料の他に、シリコン単結晶インゴットを引上げるのに用いられる石英ルツボやその他のガラス製品でも、特定の蛍光を評価することにより、材料の品質を評価することができる。
【0006】
石英ルツボに対する蛍光の評価は、有害な気泡の発生の評価に適用される。以下、気泡発生の評価の必要性について説明する。石英ガラスルツボは、透明な内層と不透明な外層とからなり、その製造方法は、一般に不透明の外層を形成した後、外層に石英粉を撒き、溶融等の方法で透明な内層を形成するものであるが、単結晶引上げ時に高温に上昇させることにより透明層に気泡が発生し、ルツボ材の変形を招くと共に、気泡部分がシリコン融液に溶解し、単結晶化率を低下させるという問題がある。透明層に発生する気泡は酸素が主体で、不純物や構造水の多い部分が気泡の核となり、形成された気泡に周囲の酸素が拡散し成長するものである。気泡の発生防止には、核となる不純物や構造水を除去するか、又はガラス中に過剰に溶存するあるいは不安定な状態でSi原子と結合した酸素を除去することが必要であるが、前者はこれを完全に除去することは困難であるが、後者に関して水素中で透明層を形成するか、あるいは再加熱又は溶融することにより気泡発生を抑制することができる。気泡抑制に及ぼす水素の影響は次のように説明できる。すなわち、第1に雰囲気より酸素を除外することにより、過剰に溶解した酸素をガラス外に排出する、第2に不安定酸素をガラス網目構造に取込み固定するかあるいはOH基として安定化する。水素は雰囲気中に混入した酸素を水に変えることにより雰囲気中の酸素濃度を低下させる働きと、ガラス内部で不安定酸素をOH基に変えて固定する働きをなすものと考えられる。ルツボ材としては、水素処理により無気泡層が形成されているか否か、また常時その厚さの確認が必要であり、その評価手段が不可欠である。非破壊での評価方法としては、不安定酸素を含む過剰酸素が650nmにピークを有する赤色蛍光を発することから、これを検出することにより過剰酸素の除去効果、すなわち気泡が発生するかどうかを判定できる。
【0007】
従来、石英ガラスの赤色蛍光評価法として、蛍光分光法及びレーザーラマン分光法(例えば特許文献1)があるが、いずれも分光を要し、装置が複雑で測定に時間がかかる問題があった。
【0008】
さらに、フォトマスクやレンズ等の光学ガラスでは、上記のように特定波長の蛍光の発生を抑制することの他に、気泡や析出物等の内部欠陥及び局所的な屈折率の変化があってはならず、光学ガラスの非破壊による内部欠陥及び局所的な屈折率の変化の評価が不可欠である。
【0009】
従来、これら欠陥の検出法として、目視観察又はシュリーレン法を主体に行われているが、しかしながら、目視観察では微小な欠陥あるいは透明な欠陥の検出は困難で、検査担当者の熟練度にも依存するという問題があり、シュリーレン法は、平行な光線をガラスに照射して屈折率の変化を見るため、屈折率があまり変化しない欠陥に対しては感度が不足すること及び、微小な欠陥の検出は困難が伴うという問題があった。
【0010】
なお、シリコン等の結晶の内部まで測定可能なフォトルミネッセンス計測方法及び装置に関する技術として特許文献2に記載のようなものがある。しかしながら、特許文献2に記載のものは、結晶内部の構造を解析して微少析出物を評価するものであり、ガラス内部に存在する異物の検出を行うものと異なり、装置が複雑で測定に時間がかかる。
【0011】
また、本発明者等は、レーザ光を試料表面に斜めに入射させ、入射レーザ光によって試料内部より発する蛍光を集光・検出することにより、試料の深さ方向の光学物性を評価する蛍光検出測定装置についての提案を行っている(特許文献3)。しかしながら、特許文献3に記載の蛍光検出測定装置は、レーザ光路と集光・検出光路が別個に形成されているため、装置が大形であり、その場測定に適さない。
【0012】
【特許文献1】
特開平2000−344536号公報(段落番号[0064]、[0065])
【0013】
【特許文献2】
特開平5−281141号公報(段落番号[0018]、図3)
【0014】
【特許文献3】
特開2002−181710号公報(段落番号[0013]〜[0015]、図1)
【0015】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は上述した事情を考慮してなされたもので、分光を必要とせず、装置が簡単で測定に時間がかからず、石英ガラスの特定色の蛍光の定量的評価にかかる時間を短縮できる石英ガラスの蛍光強度の定量的評価装置及び方法を提供することを目的とする。
【0016】
また、操作が簡単かつ容易で、屈折率があまり変化しない欠陥あるいは微小な欠陥を確実に検出でき、さらに、その場測定に適する石英ガラスの蛍光強度の定量的評価装置及び方法を提供することを目的とする。
【0017】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するため、本発明の1つの態様によれば、石英ガラス試料にレーザ光を照射するレーザ光源と、レーザ光が照射された石英ガラス試料から発するラマン散乱光を受光する検出器と、前記石英ガラス試料と前記検出器間のラマン散乱光の光路に進退自在に設けられ特定色の蛍光のみを透過させるバンドパスフィルタとを有することを特徴とする石英ガラスの評価装置が提供される。これにより、分光を必要とせず、装置が簡単で測定に時間がかからず、石英ガラスの特定色の蛍光の定量的評価にかかる時間を短縮できる石英ガラスの蛍光強度の定量的評価装置が実現される。
【0018】
好適な一例では、前記特定色の蛍光は、赤色蛍光である。これにより、非架橋の酸素に起因する赤色蛍光を測定し、気泡の発生が抑制可能な製造の制御が行える。
【0019】
また、本発明の他の態様によれば、石英ガラス試料にレーザ光を照射するレーザ光源と、このレーザ光源から発光されたレーザ光を平板状にするレーザ光平板化手段と、このレーザ光平板化手段により平板化されたレーザ光が通過し一方向に延びて開口された第1のスリットと、この第1のスリットを通過したレーザ光が通過し第1のスリットの開口と直交する方向に延びて開口した第2のスリットと、この第2のスリットを通過し石英ガラス試料を透過した光が通過する開口が設けられた第3のスリットと、この第3のスリットを通過した光を検出する検出器とを有することを特徴とする石英ガラスの評価装置が提供される。これにより、目視法等では確認できない石英ガラス試料中の気泡や析出物のような微小な欠陥を非破壊で検出できる。また、スリットを設けることにより、試料中で一次光が集光した近傍のみからの蛍光を検出することにより、位置分解能を向上させることができる。
【0020】
好適な一例では、前記レーザ光平板化手段は、シリンダレ8ンズである。これにより、レーザ光が容易に平板化される。
【0021】
また、他の好適な一例では、前記レーザ光平板化手段は、レーザ光源を振り子運動させて拡散させる光源回動機構である。これにより、レーザ光が容易に平板化される。
【0022】
また、他の好適な一例では、前記第3のスリットは、スリットの中央部が遮蔽されている。これにより、微小な欠陥が確実に検出される。
【0023】
また、他の好適な一例では、前記第2のスリットと石英ガラス試料間には、石英ガラス試料の端面に付着した塵挨等により生じる散乱光を検出し、塵埃等の有無を検出するための光検出器が設けられる。これにより、石英ガラス試料の端面に付着した塵埃等を除去でき、確実に試料内部の欠陥を検出できる。
【0024】
本発明の他の態様によれば、一次光を発光させる発光装置と、この発光装置から出射される光線から赤色光のみをカットする赤外カットフィルタと、この赤外カットフィルタを透過した光線を石英ガラス試料へ入射するように反射させるミラーと、このミラーと前記石英ガラス試料間に配置され、前記入射光線により石英ガラス試料から二次的に発生する蛍光と前記入射光線の光軸が同一になるように設けられた対物レンズと、この対物レンズ及び前記ミラーに対向して設けられ対物レンズを透過した光線を集束する結像レンズと、この結像レンズを透過した光線から赤色光のみを透過させるバンドパスフィルタと、このバンドパスフィルタを透過した光線を絞る絞りと、この絞りを通過した光線を検出する検出器とを有することを特徴とする石英ガラスの評価装置が提供される。これにより、装置を大幅に簡略化でき、また、分光器、液体窒素冷却CCD検出器を必要とせず、また必ずしもレーザ光源を必要としないので、コンパクトになると共に、光学系の調整も容易になるので、製造プロセスでのモニタリング手段として最適である。さらに大出力のランプを使用することにより感度を大幅に向上でき、測定時間を短縮できる。また、絞りは、石英ガラス試料中で一次光が絞り込まれた焦点付近のみからの蛍光を検出するようにし、焦点前後の深さからの蛍光を除去することにより深さ方向の解像度を上げることができる。
【0025】
好適な一例では、前記赤外カットフィルタの透過波長がλ<λ1のとき、バンドパスフィルタ5Bの波長特性はλ2>λ>λ1であり、λ1は550〜670nmの領域にあり、λ2は590〜690nmの領域にある関係を有する。
【0026】
好適な一例では、前記発光装置と、赤外カットフィルタと、ミラーと、対物レンズと、結像レンズと、バンドパスフィルタと、絞りと検出器とが一体的にケーシングに収納され、プローブを形成する。これにより、その場測定が極めて容易になる。
【0027】
本発明の他の態様によれば、石英ガラス試料にレーザ光を照射し、石英ガラス試料から発する全ラマン散乱光と、特定色の蛍光のみを透過させるバンドパスフィルタを透過する特定色の蛍光とを選択的に区分して測定し、全ラマン散乱光と特定色の蛍光の比をとり、特定色の蛍光の定量的評価を行うことを特徴とする石英ガラスの評価方法が提供される。
【0028】
好適な一例では、前記特定色の蛍光は、赤色蛍光であることを特徴とする石英ガラスの評価方法が提供される。
【0029】
【発明の実施の形態】
以下、本発明に係わる石英ガラスの評価装置の第1実施形態について添付図面を参照して説明する。
【0030】
図1は本第1実施形態の石英ガラスの蛍光強度の定量的評価装置の模式図である。
【0031】
図1に示すように、本第1実施形態の石英ガラスの蛍光強度の定量的評価装置1は、試料Sにレーザ光を照射するレーザ光源2と、レーザ光を照射された石英ガラス試料Sから発するラマン散乱光を受光する検出器3と、前記石英ガラス試料Sと前記検出器3間のラマン散乱光の光路4の一部又は全部に進退自在に設けられ特定色の蛍光、例えば赤色蛍光のみを透過させるバンドパスフィルタ5とを有する。
【0032】
上記レーザ光源2は、例えば波長514nmレーザを用い、検出器3は、特に限定されるものではないが、二次元検出器であることが好ましい。好適な二次元検出器としては、フォトマル、フォトダイオードアレイ、CCD等の検出器を挙げることができ、これらのうち、時間短縮を望むならCCDが最も好適であり、その波長測定範囲は例えば514〜650nm強であり、より高感度を求めるならフォトマルが好適である。
【0033】
次に本第1実施形態の石英ガラスの蛍光強度の定量的評価方法について説明する。
【0034】
最初に石英ガラス試料Sをレーザ光源2と検出器3間にセットする。
【0035】
レーザ光源2からレーザ光を発光させて石英ガラス試料Sに照射する。バンドパスフィルタ5は、光路4から外れた待機位置(後退位置)にあり、石英ガラス試料Sから個々の試料に応じたラマン散乱光が発光し、この発光したラマン散乱光は全て検出器3に達し、図2に示すように、その強度が測定される。
【0036】
次にバンドパスフィルタ5を前進させて光路4に位置させ、石英ガラス試料Sから発光するラマン散乱光のうち赤色蛍光(650nm)のみを透過させ、透過した赤色蛍光(650nm)のみが検出器3に達し、図2に示すように、その強度が測定される。
【0037】
この両者の強度比から赤色蛍光の量を定量的に評価できる。この評価により、不安定酸素を含む過剰酸素(非架橋の酸素)に起因し650nmにピークを有する赤色蛍光を発することから、過剰酸素の把握ができ、短時間で石英ガラスの評価が可能となる。
【0038】
本第1実施形態の石英ガラスの蛍光強度の定量的評価装置によれば、石英ガラス試料から他の要因により発生する特定色の蛍光のみを透過するバンドパスフィルタを用いることにより、特定色の蛍光を検出して特定要因を評価することができる。従って、分光を必要とせず、装置が簡単で測定に時間がかからず、石英ガラスの特定色の蛍光の定量的評価にかかる時間を短縮できる石英ガラスの蛍光強度の定量的評価が可能となる。
【0039】
また、本発明に係わる石英ガラスの評価装置の第2実施形態について説明する。
【0040】
図3は本第2実施形態の石英ガラスの蛍光強度の定量的評価装置の模式図である。
【0041】
図3に示すように、本第2実施形態の石英ガラスの蛍光強度の定量的評価装置1Aは、石英ガラス試料Sにレーザ光を照射するレーザ光源2Aと、このレーザ光源2Aから発光されたレーザ光を平板状にするレーザ光平板化手段、例えばシリンダレンズ6Aと、このシリンダレンズ6Aにより平板化されたレーザ光が通過し一方向、例えばX軸方向に延びて開口された第1のスリット7Aと、この第1のスリット7Aを通過したレーザ光が通過し第1のスリットの開口と直交するY軸方向に延びて開口した第2のスリット8Aと、この第2のスリット8Aを通過し石英ガラス試料Sを透過した光が通過しY軸方向に延び図4(a)に示すような開口が設けられた第3のスリット9Aと、この第3のスリット9Aを通過した光を検出する検出器3Aとを有している。また、第2のスリット8Aと石英ガラス試料S間には、石英ガラス試料Sの端面に付着した塵挨等により生じる散乱光を検出し、塵埃等の有無を検出するための光検出器としてのフォトダイオード10A、11Aが設けられている。
【0042】
なお、上記レーザ光平板化手段は、シリンダレンズに限らず、レーザ光源を振り子運動させて拡散させる光源回動機構のようなものであってもよい。
【0043】
次に本第2実施形態の石英ガラスの蛍光強度の定量的評価方法について説明する。
【0044】
図3に示すように、最初に石英ガラス試料Sを第2のスリット8Aと第3のスリット9A間にセットし、フォトダイオード10A、11Aを石英ガラス試料Sの端面から発する散乱光を検出できる位置に調整する。
【0045】
レーザ光源2Aからレーザ光を発光させてシリンダレンズ6Aを透過させて、一旦、例えばX軸方向に光束を広げ、広げられた光束を再度平板化(平行)レーザ光にする。
【0046】
平板化されたレーザ光は、第1のスリット7Aを通過して、上下方向(Y軸方向)がカットされ所望上下幅のレーザ光となり、第2のスリット8Aを通過し横方向(X軸方向)がカットされ所望横幅のレーザ光となり、所望平板状のレーザ光となって、石英ガラス試料Sに照射される。石英ガラス試料Sに照射されたレーザ光は、石英ガラスSを透過して、第3のスリット9Aを通過し、検出器3Aで検出され、石英ガラス試料Sは評価される。このとき、第3のスリット9Aは、検出器3Aの前に置かれており、異物による屈折したレーザ光をカットすると共に、石英ガラス試料Sの端面の塵埃等による乱反射を押える役割を果たす。また、第3のスリットは、図4(b)に示すように、その中央部を遮蔽した構造でも良く、この構造では正常な透過光をカットし、異物によって屈折した光のみを検出する。図4(a)に示すような前者は、図4(b)に示す後者に比べて、試料端面の塵埃等による散乱光の影響を受けにくい利点を有するが、微小な欠陥の検出については、後者の方が好ましい。
【0047】
上記のような評価過程において、石英ガラス試料Sに欠陥が存在すれば、レーザ光は散乱され、あるいは屈折されて検出器3Aでの受光量に変化が生じる。これによって、目視法等では確認できない石英ガラス試料中の気泡や析出物のような微小な欠陥を非破壊で検出できる。
【0048】
評価時、石英ガラス試料Sの表面に異物が付着していると、異物と試料内部の欠陥との区別ができなくなるため、フォトダイオード10A、11Aにより石英ガラス試料Sの端面から発する散乱光を検出し、散乱光が検出された場合には、石英ガラス試料Sの表面をきれいに拭いて異物を除去する。このように確実に試料内部の欠陥を検出できる。
【0049】
また、本発明に係わる石英ガラスの評価装置の第3実施形態について説明する。
【0050】
図5は本第3実施形態の石英ガラスの蛍光強度の定量的評価装置の模式図である。
【0051】
図5に示すように、本第3実施形態の石英ガラスの蛍光強度の定量的評価装置1Bは、可視又は紫外光線あるいは可視、紫外域のレーザ光等の一次光を発光させる発光装置2Bと、この発光装置Bから出射される光線から赤色光のみをカットする赤外カットフィルタ15Bと、この赤外カットフィルタ15Bを透過した光線を石英ガラス試料Sへ入射するように反射させるミラー16Bと、このミラー16Bと石英ガラス試料S間に配置され、入射光線により石英ガラス試料Sから二次的に発生する蛍光と入射光線の光軸が同一になるように設けられた対物レンズ17Bと、この対物レンズ17B及びミラー16Bに対向して設けられ対物レンズ17Bを透過した光線を集束する結像レンズ18Bと、この集光レンズ18Bを透過した光線から赤色光のみを透過させるバンドパスフィルタ5Bと、このバンドパスフィルタ5Bを透過した光線を絞る絞り19Bと、この絞り19Bを通過した光線を検出する検出器3Bとを有する。
【0052】
バンドパスフィルタの透過波長は570〜730nm間の任意の領域に設定し、好ましくは600〜700nmである。上記赤色カットフィルタのカット波長位置はバンドパスフィルタの波長域に依存し、バンドパス最短波長より短いが、あまり離れない位置、例えば590〜690nmの領域に設定する。上記赤外カットフィルタ15Bの透過波長がλ<λ1のとき、バンドパスフィルタ5Bの波長特性はλ2>λ>λ1であり、ここで、λ1は570〜710nmの領域にあり、λ2は590〜730nmの領域にある関係を有する。
【0053】
また、上記二次蛍光を集光する対物レンズ17B設置し、検出器3B集光面にスリットを設け、試料中で一次光が集光した近傍のみからの蛍光を検出することにより、位置分解能を向上させることができる。
【0054】
次に本第3実施形態の石英ガラスの蛍光強度の定量的評価方法について説明する。
【0055】
図5に示すように、最初に石英ガラス試料Sをセットする。
【0056】
発光装置2Bから可視又は紫外光線を発光させ、赤外カットフィルタ15Bを透過させる。赤外カットフィルタ15Bを透過させることにより、試料面や対物レンズ17B、集束18B、ミラー16Bでの散乱光又は反射光が、検出器3Bに入り、バックグラウンドとなって赤色蛍光検出に支障が生じるのが防止される。
【0057】
赤外カットされた可視又は紫外光線は、ミラー16Bで反射され、対物レンズ17Bで絞り込まれて試料に入射される。
【0058】
一次光は石英ガラス試料S中の深さで焦点を結び、そこから蛍光を発する。
【0059】
二次的に発生した蛍光を同じ対物レンズ17Bで集光し、一旦平行光線にした後、バンドパスフィルタ5Bに達する。二次的に発生した蛍光のうち赤色光のみが絞り19Bを通過して、検出器3Bにより検出される。絞り19Bは、石英ガラス試料S中で一次光が絞り込まれた焦点付近のみからの蛍光を検出するようにし、焦点前後の深さからの蛍光を除去することにより深さ方向の解像度を上げるもので、焦点の大きさや目的の解像度に依存し絞り径を変化させる。
【0060】
図9に示すように、光学系はケーシングに一体的に収納して小型のプローブにすることができ、石英ガラスルツボ内面の任意の部位の測定を可能にすることができる。例えば、プローブをルツボ内面に対して垂直になるように位置決めし、ルツボ内面に対して上下させることにより、深さ方向の構造変化を評価でき、さらに左右にずらすことにより、ニ次元あるいは三次元での評価が可能になる。
【0061】
上記のように本第3実施形態によれば、一次光を試料に照射し、同光線によって励起され発生した蛍光を検出することにより、石英ガラスの厚さを測定することが可能となる。また、従来装置に比べて装置を大幅に簡略化できる。分光器、液体窒素冷却CCD検出器を必要とせず、さらに、必ずしもレーザ光源を必要としないので、コンパクトになると共に、光学系の調整も容易になり、製造プロセスでのモニタリング手段として最適である。また、大出力のランプを使用することにより感度を大幅に向上でき、測定時間を短縮できる。従来装置では製品のその場測定は困難であったが、本第3実施形態によれば、その場測定が極めて容易になる。
【0062】
【実施例】
「試験1」
試験方法: 図1に示すような本発明の第1実施形態の石英ガラスの蛍光強度の定量的評価装置(波長514nmレーザ光、CCD検出器)を用いて、石英ガラスを測定した。
【0063】
結果: 図2は測定した石英ガラスのラマンスペクトルである。
【0064】
測定波長範囲は514nm〜650nm強であるが、従来はこの波長範囲を5分割して測定するため、測定に長時間を要した。
【0065】
これに対して、本実施例では、一回のバンドパスフィルタの出入れのみで測定が可能であり、測定時間は極めて短時間であった。また、全ラマン散乱光カウント数は7.8×106、赤色蛍光カウント数は1.2×105となり、赤色蛍光強度は1.5×10−2という結果を得た。
【0066】
「試験2」
試験方法: 図3に示すような本発明の第2実施形態の石英ガラスの蛍光強度の定量的評価装置(波長514nmのArイオンレーザ光、CCD検出器)を用いて、厚さ15cmの石英ガラス内に存在する数10nmの大きさの透明異物の検出を試みた。
【0067】
結果: 図6〜図8に示す。
【0068】
図6は、透明無欠陥部分を通過したレーザ光のスポット図であり、同心円状で偏心がない。
【0069】
図7及び図8は、透明欠陥部分を通過したレーザ光のスポット像図であり、スポット像は楕円形に変形しており、さらに、屈折により中心位置よりずれていることが確認された。スポット像の形状は、欠陥の形状により様々な形状になるが、いずれにしても正常な同心円ではなく、スポット像が不均一になり、これを検出することにより、欠陥の有無を確認できることがわかった。
【0070】
「試験3」
試験方法: 図5及び図9に示すような本発明の第3実施形態の石英ガラスの蛍光強度の定量的評価装置(光源に50WのXeランプ組込み)を用いて、水素処理により内面の表層約3mmに渡って気泡発生を抑制する層を形成した石英ルツボに対して、その内面から深さ方向の蛍光測定を行った。
【0071】
結果: 図10に示す。
【0072】
図10に示すように、表層では赤色蛍光が少ないが、2.8mmの深さから急激に増加している。急激増加前の層が気泡の発生しない層であり、非破壊で検出可能であることが確認できた。測定に要した時間は、1点当たり1分以内であり、測定時間は、従来に比べ数分の1に短縮できた。
【0073】
【発明の効果】
本発明に係わる石英ガラスの蛍光強度の定量的評価装置及び方法によれば、分光を必要とせず、装置が簡単で測定に時間がかからず、石英ガラスの特定色の蛍光の定量的評価にかかる時間を短縮できる石英ガラスの蛍光強度の定量的評価装置及び方法を提供することができる。
【0074】
また、操作が簡単かつ容易で、屈折率があまり変化しない欠陥あるいは微小な欠陥を確実に検出でき、さらに、その場測定に適する石英ガラスの蛍光強度の定量的評価装置及び方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係わる石英ガラスの評価装置の第1実施形態の模式図。
【図2】本発明の第1実施形態を用いたラマンスペクトル図。
【図3】本発明に係わる石英ガラスの評価装置の第2実施形態の模式図。
【図4】(a)及び(b)は本発明の第2実施形態に用いられる第3のスリットの概念図。
【図5】本発明に係わる石英ガラスの評価装置の第3実施形態の模式図。
【図6】本発明の第2実施形態により形成されたスポット像図。
【図7】本発明の第2実施形態により形成されたスポット像図。
【図8】本発明の第2実施形態により形成されたスポット像図。
【図9】本発明の第3実施形態を用いた石英ガラスルツボの測定概念図。
【図10】本発明の第3実施形態を用いた石英ガラスルツボの測定結果図。
【符号の説明】
1 石英ガラスの蛍光強度の定量的評価装置
2 レーザ光源
3 検出器
4 光路
5 バンドパスフィルタ
S 試料
Claims (12)
- 石英ガラス試料にレーザ光を照射するレーザ光源と、レーザ光が照射された石英ガラス試料から発するラマン散乱光を受光する検出器と、前記石英ガラス試料と前記検出器間のラマン散乱光の光路に進退自在に設けられ特定色の蛍光のみを透過させるバンドパスフィルタとを有することを特徴とする石英ガラスの評価装置。
- 請求項1に記載の石英ガラスの評価装置において、前記特定色の蛍光は、赤色蛍光であることを特徴とする石英ガラスの評価装置。
- 石英ガラス試料にレーザ光を照射するレーザ光源と、このレーザ光源から発光されたレーザ光を平板状にするレーザ光平板化手段と、このレーザ光平板化手段により平板化されたレーザ光が通過し一方向に延びて開口された第1のスリットと、この第1のスリットを通過したレーザ光が通過し第1のスリットの開口と直交する方向に延びて開口した第2のスリットと、この第2のスリットを通過し石英ガラス試料を透過した光が通過する開口が設けられた第3のスリットと、この第3のスリットを通過した光を検出する検出器とを有することを特徴とする石英ガラスの評価装置。
- 請求項3に記載の石英ガラスの評価装置において、前記レーザ光平板化手段は、シリンダレンズであることを特徴とする石英ガラスの評価装置。
- 請求項3に記載の石英ガラスの評価装置において、前記レーザ光平板化手段は、レーザ光源を振り子運動させて拡散させる光源回動機構であることを特徴とする石英ガラスの評価装置。
- 請求項3に記載の石英ガラスの評価装置において、前記第3のスリットは、このスリットの中央部が遮蔽されていることを特徴とする石英ガラスの評価装置。
- 請求項3ないし6のいずれか1項に記載の石英ガラスの評価装置において、前記第2のスリットと石英ガラス試料間には、石英ガラス試料の端面に付着した塵挨等により生じる散乱光を検出し、塵埃等の有無を検出するための光検出器が設けられることを特徴とする石英ガラスの評価装置。
- 一次光を発光させる発光装置と、この発光装置から出射される光線から赤色光のみをカットする赤外カットフィルタと、この赤外カットフィルタを透過した光線を石英ガラス試料へ入射するように反射させるミラーと、このミラーと前記石英ガラス試料間に配置され、前記入射光線により石英ガラス試料から二次的に発生する蛍光と前記入射光線の光軸が同一になるように設けられた対物レンズと、この対物レンズ及び前記ミラーに対向して設けられ対物レンズを透過した光線を集束する結像レンズと、この結像レンズを透過した光線から赤色光のみを透過させるバンドパスフィルタと、このバンドパスフィルタを透過した光線を絞る絞りと、この絞りを通過した光線を検出する検出器とを有することを特徴とする石英ガラスの評価装置。
- 請求項8に記載の石英ガラスの評価装置において、前記赤外カットフィルタの透過波長がλ<λ1のとき、バンドパスフィルタ5Bの波長特性はλ2>λ>λ1であり、λ1は570〜710nmの領域にあり、λ2は590〜730nmの領域にある関係を有することを特徴とする石英ガラスの評価装置。
- 請求項8または9に記載の石英ガラスの評価装置において、前記発光装置と、赤外カットフィルタと、ミラーと、対物レンズと、結像レンズと、バンドパスフィルタと、絞りと検出器とが一体的にケーシングに収納され、プローブを形成することを特徴とする石英ガラスの評価装置。
- 石英ガラス試料にレーザ光を照射し、石英ガラス試料から発する全ラマン散乱光と、特定色の蛍光のみを透過させるバンドパスフィルタを透過する特定色の蛍光とを選択的に区分して測定し、全ラマン散乱光と特定色の蛍光の比をとり、特定色の蛍光の定量的評価を行うことを特徴とする石英ガラスの評価方法。
- 請求項11に記載の石英ガラスの評価方法において、前記特定色の蛍光は、赤色蛍光であることを特徴とする石英ガラスの評価方法。
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