JP2004270894A - 歯付ベルト - Google Patents
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Abstract
【課題】高温高張力や高温高負荷のような極めて過酷な条件下での走行でも耐摩耗性、耐歯欠け性を維持し、走行寿命の長い歯付ベルトを提供することを目的とする。
【解決手段】長さ方向に沿って所定間隔で配置した複数の歯部2と、心線3を埋設した背部4とを有し、上記歯部2の表面に歯布5を被覆した歯付ベルト1であり、歯布5がシリコーン−アクリル樹脂共重合体粉体を混合した加硫可能なゴム組成物を含浸付着させたゴム付き帆布からなる。
【選択図】 図1
【解決手段】長さ方向に沿って所定間隔で配置した複数の歯部2と、心線3を埋設した背部4とを有し、上記歯部2の表面に歯布5を被覆した歯付ベルト1であり、歯布5がシリコーン−アクリル樹脂共重合体粉体を混合した加硫可能なゴム組成物を含浸付着させたゴム付き帆布からなる。
【選択図】 図1
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は歯付ベルトに係り、高温高張力下および高温高負荷下での走行においても耐摩耗性および耐歯欠け性を改善した歯付ベルトに関する。
【0002】
【従来の技術】
従来の歯付ベルトは、クロロプレンを原料ゴムとするゴム配合物を歯部と背部に、SBR系のビニルピリジンラテックスをラテックス成分とするRFL(レゾルシン・ホルムアルデヒド・ラテックス)液にて接着処理されたガラス繊維コードもしくはアラミド繊維コードを心線に、そして捲縮加工されたナイロンを緯糸としてベルト長手方向に使用された歯布から構成され、自動車用OHC駆動(オーバーヘッドカム駆動)用のベルトとして使用されている。
【0003】
このOHC駆動用歯付ベルトは、エンジンルームのコンパクト化やFF化によって使用する環境温度が高温となり、従来のクロロプレンを原料ゴムとする歯付ベルトでは、背部や歯元部のクラックから歯欠けに至る現象、又は高温下での屈曲によるガラス心線の劣化によってベルトが切断しやすかった。そこで、近年特に自動車用歯付ベルトの長寿命化の要求に対して、クロロスルフォン化ポリエチレン(CSM)やアクリロニトリル−ブタジエン共重合体を水素添加して得られる水素化ニトリルゴム(HNBR)がゴム配合物の原料ゴムとして使用されるようになってきた。これについては、例えば、特許文献1に開示されている。
【0004】
一方、ゴム配合物中の原料ゴムの改善だけでなく、心線や歯布の改善も数多くなされている。そのうち、歯布の場合には、例えば経糸あるいは緯糸の一方の糸をポリエステル糸、アラミド繊維とし、他の糸を6ナイロン、6.6ナイロンとする帆布を用いて、耐熱性を向上させることが、特許文献2に開示されている。また、特許文献3には、歯布としてベルト長手方向の緯糸に少なくともアラミド繊維のウーリー加工糸とウレタン弾性糸を用いることが提示されている。
【0005】
また、耐摩耗性および耐歯欠け性を改善することを目的として、歯布としてベルト長手方向の緯糸にアラミド繊維の紡績糸とウレタン弾性糸との混撚糸を用い、かつ経糸に脂肪族あるいはアラミド繊維のフィラメント糸を用いた帆布を使用することを提案した。これは特許文献4に開示されている。
【0006】
更に、最近では、歯布表面にポリテトラフルオロエチレンなどの摺動剤粒子を担持させ、歯布表面の摩擦係数を低下させ、耐摩耗性を改善したものも提案されている。
【0007】
【特許文献1】
特開昭62−159827号公報
【特許文献2】
特開昭55−36642号公報
【特許文献3】
実開昭62−183147号
【特許文献4】
特開平4−8948号公報
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、従来の歯布では、ウーリー加工糸が加工温度の調節が困難で均一な仮撚りができずにランダムな太さになり、また繊維自身が高い剛性を有しているために、タオルのような凹凸表面になって平滑な帆布にならなかった。このような帆布を用いた歯付ベルトは、PLD値(心線の中心線となるピッチラインとベルト歯底面間の距離)がばらつき、また同じモールドで成型したベルトの長さも不均一になるといった不具合が発生した。
【0009】
また、アラミド繊維の紡績糸とウレタン弾性糸との混撚糸をベルト長手方向の緯糸に用いた歯布は、この問題点を改善した。しかし、歯付ベルトを高負荷で、かつベルト幅が狭い状態で使用する場合や、またディーゼルエンジンのように負荷変動が大きくなると、歯布表面の摩耗が大きくなって、これによりベルト歯元部の亀裂や歯欠けが発生しやすく、しかもベルト歯元部の応力集中によってベルト歯元部の亀裂や歯欠けが発生しやすかった。
【0010】
更に、歯布表面にポリテトラフルオロエチレンなどの摺動剤粒子を担持させた場合には、歯部と歯布との接着性が低下する恐れがあり、また摺動剤粒子の欠落、歯部形状の精密性に欠けるなどの問題があった。
【0011】
本発明はこのような問題点を改善するものであり、高温高張力や高温高負荷のような極めて過酷な条件下での走行でも耐摩耗性、耐歯欠け性を維持し、走行寿命の長い歯付ベルトを提供することを目的とする。
【0012】
【課題を解決するための手段】
即ち、本願の請求項1記載の発明では、長さ方向に沿って所定間隔で配置した複数の歯部と、心線を埋設した背部とを有し、上記歯部の表面に歯布を被覆した歯付ベルトにおいて、前記歯布がシリコーン−アクリル樹脂共重合体粉体を混合した加硫可能なゴム組成物を含浸付着させたゴム付き帆布からなる歯付ベルトにあり、歯布にシリコーン−アクリル樹脂共重合体粉体を混合したゴム組成物を付着することによって歯布表面の摩擦係数を下げてプーリ表面との滑りを良好にして歯布の耐摩耗性を向上させ、そして歯布と歯部の接着性を低下させずに耐歯欠け性や走行寿命を高めることができる。このシリコーン−アクリル樹脂共重体粉体は、シリコーン部で摺動性をもたせ、アクリル部でポリマーとの相溶性をもたせた粉体であり、単成分の摺動剤を用いては発現しない摺動性とポリマーとの相互作用を両立することができる。
【0013】
本願の請求項2記載の発明では、ゴム付き帆布がシリコーン−アクリル樹脂共重合体粉体を混合した加硫可能なゴム組成物を溶剤によって溶解したゴム糊で含浸付着させた歯付ベルトにある。
【0014】
本願の請求項3記載の発明では、ゴム付き帆布に含浸付着させる加硫可能なゴム組成物が、歯部に使用する原料ゴムと同じ原料ゴム100質量部に対してシリコーン−アクリル樹脂共重合体粉体配合量を5〜20質量部含有している歯付ベルトにある。
【0015】
本願の請求項4記載の発明では、ゴム付き帆布に含浸付着させる加硫可能なゴム組成物に使用する原料ゴムが、水素化ニトリルゴムである歯付ベルトにある。
【0016】
本願の請求項5記載の発明では、歯布のベルト長手方向の緯糸がパラ系アラミド繊維のフィラメント原糸を収束したマルチフィラメント糸を含む歯付ベルトにあり、歯布の構成糸にパラ系アラミド繊維のフィラメント原糸を収束したマルチフィラメント糸を使用しているため、上記高張力下あるいは高負荷走行下でもベルト歯底部の歯布の摩耗が阻止され、これによってベルト歯元部を長時間補強するために、耐歯欠け性に優れる。
【0017】
本願の請求項6記載の発明では、歯布の緯糸がパラ系アラミド繊維のマルチフィラメント糸とメタ系アラミド繊維とを含んでいる歯付ベルトにある。
【0018】
【発明の実施の形態】
図1は本発明に係る歯付ベルトの断面斜視図であり、歯付ベルト1はベルト長手方向(図中矢印)に沿って複数の歯部2とガラス繊維コードあるいはアラミド繊維コードからなる心線3を埋設した背部4とからなり、上記歯部2の表面には歯布5が貼着されている。
【0019】
前記歯部2及び背部4に使用される原料ゴムは、水素化ニトリルゴムを始めとして、クロロスルホン化ポリエチレン(CSM)、アルキル化クロロスルホン化ポリエチレン(ACSM)、クロロプレンゴムなどの耐熱老化性の改善されたゴムが好ましい。尚、水素化ニトリルゴムは水素添加率が80%以上であり、耐熱性及び耐オゾン性の特性を発揮するためには90%以上が良い。水素添加率80%未満の水素化ニトリルゴムは、耐熱性及び耐オゾン性は極度に低下する。
【0020】
負荷とともに張力の大きい条件下で歯付ベルト1を使用すると、従来の歯付ベルトの歯布が異常に摩耗を起こし、比較的早く歯元部にクラックが生じ、やがて歯欠けによる寿命となるため、100〜140°Cの高温度で高負荷、また高温度で高張力の条件下ではさらに歯部2の補強が必要である。本発明者等は歯布5として用いられる帆布を下記のものとすることにより耐摩耗性及び耐歯欠け性を向上させることを見出した。
【0021】
上記歯布5はRFL液、イソシアネート溶液あるいはエポキシ溶液によって処理される。RFL液は、レゾルシンとホルマリンとの初期縮合物をラテックスに混合したものであり、ここで使用するラテックスとしてはスチレン.ブタジエン.ビニルピリジン三元共重合体、水素化ニトリルゴム、クロロスルフォン化ポリエチレン、エピクロルヒドリンなどのラテックスである。
【0022】
上記RFL処理した歯布は、歯部に使用した原料ゴムと同種の原料ゴムにシリコーン−アクリル樹脂共重合体粉体を混合した加硫可能なゴム組成物を含浸付着させたゴム付き帆布であり、具体的にはゴム組成物を溶剤によって溶解したゴム糊を含浸付着させて加硫したゴム付き帆布にする。このゴム組成物は水素化ニトリルゴムを始めとして、クロロスルホン化ポリエチレン(CSM)、アルキル化クロロスルホン化ポリエチレン(ACSM)、クロロプレンゴムなどの耐熱老化性の改善された歯部に使用する原料ゴム100質量部にシリコーン−アクリル樹脂共重合体粉体を5〜20質量部混合し、これにカーボンブラック、シリカなどの補強剤、老化防止剤、加硫促進剤、硫黄もしくはパーオキサイドからなる加硫剤、共加硫剤を添加したものである。
【0023】
得られたシリコーン−アクリル樹脂共重合体粉体を混合したゴム組成物をメチルエチルケトン、ジメチルスルホキシド、ジメチルホルムアミド、クロロホルムなどから選ばれた溶剤に溶解してゴム糊にした後、該ゴム糊を歯布に塗布、吹き付け等によって含浸付着させたものである。
【0024】
シリコーン−アクリル樹脂共重合体粉体は、シリコーン樹脂の優れた表面摺動性の効果とアクリル部でポリマーとの相溶性をもたせた平均粒径30〜250μmの粉体であり、例えば市販品として日信化学工業社製のシャリーヌRが知られている。
【0025】
歯布5として用いられる帆布は、平織物、綾織物、朱子織物などからなり、少なくともベルト長手方向の緯糸6に0.3〜1.2デニールのパラ系アラミド繊維のフィラメント原糸を収束したマルチフィラメント糸をベルト長手方向の緯糸全量の20〜80質量%含んでいる。即ち、緯糸6は少なくともパラ系アラミド繊維のマルチフィラメント糸を含んだ糸であり、このパラ系アラミド繊維のマルチフィラメント糸にメタ系アラミド繊維からなる糸とを含めることができる。具体的な緯糸の構成は、パラ系アラミド繊維のマルチフィラメント糸、メタ系アラミド繊維からなる紡績糸、そしてウレタン弾性糸の3種の糸を合撚したものである。
【0026】
また、他の具体的な緯糸6構成は、パラ系アラミド繊維のマルチフィラメント糸、脂肪族繊維糸(6ナイロン、66ナイロン、ポリエステル、ポリビニルアルコール等)、そしてウレタン弾性糸の3種の糸を合撚したものであってもよい。
【0027】
上記パラ系アラミド繊維のマルチフィラメント糸は、0.3〜1.2デニールのフィラメント原糸を複数収束したものを複数本寄せ集めたマルチフィラメント糸、あるいは0.3〜1.2デニールのフィラメント原糸を複数収束したマルチフィラメント糸であり、例えば商品名ケブラー、テクノーラ、トワロンからなっている。このフィラメント原糸の太さが0.3デニール未満であると、ベルト長手方向の歯布の引張強さが低下し、またプーリとの接触による耐摩耗性に劣ってくる。一方、フィラメント原糸の太さが1.2デニールを越えると、製織後において歯布として接着処理をする際に、その過程でパラ系アラミド繊維のマルチフィラメント糸を打込んだ方向の糸の剛性が過大になるため、帆布としての経糸と緯糸のバランスが取れなくなって、布厚みの不均一でシワが発生した状態となり、均一なPLD値が要求される歯付ベルトには使用できない。
【0028】
また、ベルト長手方向の緯糸全量の20〜80質量%がパラ系アラミド繊維のマルチフィラメント糸である。この理由として、20質量%未満ではベルト長手方向の歯布の引張強さが低下し、高負荷でのベルト走行時に歯欠けが発生しやすくなり、また一方80質量%を越えると、パラ系アラミド繊維のマルチフィラメント糸の打込み方向の剛性が前記理由と同じく過大になるため、均一な厚みの帆布を得ることできなくなるためである。
【0029】
緯糸6として前記パラ系アラミド繊維のマルチフィラメント糸と併用することができるメタ系アラミド繊維からなる糸は、例えば商品名ノーメックス、コーネックスを素材とするもので、紡績糸が好ましい。
【0030】
ベルト長手方向のパラ系アラミド繊維はマルチフィラメント糸の使用量20〜80質量%に対し、メタ系アラミド繊維からなる糸を80〜20質量%用いる。これは、引張強さ及びモジュラスの高いパラ系アラミド繊維のマルチフィラメント糸が高温高負荷下の走行でも、また高温高張力下の走行でも充分耐え、歯部表面の摩耗に有効である。また、パラ系アラミド繊維のマルチフィラメント糸の占める割合と、メタ系アラミド繊維からなる糸の占める割合を調節して、厚さの均一な歯布にする効果もある。
【0031】
尚、従来の歯布には6ナイロン、6.6ナイロン糸が用いられてきたが、ベルトの高温(100〜140°C)下における長時間走行では、歯布の摩耗によりナイロンの摩耗粉がプーリ表面に固着し、これがベルト歯部の摩耗を加速的に促進させ、歯欠けを発生させていた。ここで、歯布に明確な融点のないアラミド繊維を使用すると、摩耗粉がプーリ表面に固着することがないため、このような問題は起こりにくい。
【0032】
また、歯布5の経糸7としては、パラ系アラミド繊維、メタ系アラミド繊維からなるアラミド繊維のフィラメント糸、6ナイロン、6.6ナイロン、12ナイロン等のポリアミド、ポリビニルアルコール、ポリエステル等のフィラメント糸からなる。好ましくは、アラミド繊維のフィラメント糸が緯糸5にパラ系アラミド繊維のフィラメント原糸を収束したマルチフィラメント糸を使用すれば、剛性のバランスが取れ、均一な厚みの歯布になる。
【0033】
【実施例】
以下、本発明を実施例にて詳細に説明する。
実施例1〜3、比較例1、2
経糸に1.5デニールのパラ系アラミド繊維のフィラメント原糸を収束した200デニールのフィラメント糸と、そして緯糸にテクノーラ(200D/2本、コーネックス30番手/1本(紡績糸)、スパンデックス140D/1本からなる合撚糸を使用し、織時組織(経110本/5cm、緯120本/5cm)からなる2/2綾織帆布を製織した。製織後、帆布を水中にて振動を与えて製織時の幅の約1/2幅まで収縮させた後、表1のH−NBRゴム配合物を所定比率でメチルエチルケトン中に溶解して得たゴム糊に浸漬、乾燥した後、165℃で30分間加硫して0.9mmの処理帆布を得た。
【0034】
上記帆布の表面動摩擦係数の測定では、サンプルを移動台上に固定し、サンプルの上に垂直荷重100g重のステンレスからなる重りを置き、移動台を400mm/分で移動させた場合の摩擦力をロードセルで測定し、F=μWに基づきμ(動摩擦係数)を算出した。その結果を表4に示す。
【0035】
【表1】
【0036】
表1のH−NBRゴム配合物を用いて所定の方法で得られた処理帆布を歯布として用いた。この場合、上記帆布は緯糸方向をベルトの長手方向に使用した。
【0037】
また、心線として溶融紡糸され、シランカップリング剤で表面処理された素線径約9μmのガラス繊維フィラメント約200本を束ねてストランドとし、3本のストランドを引き揃えて表2の各RFL液中に浸漬し、130℃で2分間乾燥、250〜300℃で2分間ベーキング後、下撚りを約12回/10cmにてS方向に撚った下撚り糸と、同回数Z方向に撚った下撚り糸を準備した。
【0038】
【表2】
【0039】
次にS方向の下撚り糸を13本引き揃え、上撚りを約8回/10cmの割合でZ方向に撚られたガラス繊維コードとし、また同様にZ撚り下撚り糸を同様に13本引き揃え、S方向に8回/10cmの撚り数のガラス繊維コードとし、各RFL液に対し、上撚り方向がS、Zの各一対のRFL処理ガラス繊維コードとした。そして、各RFL処理ガラス繊維コードを背部、歯部そして歯布に接着させるために、更にゴム組成物を溶剤に溶解させ、イソシアネートを添加したオーバーコート液に浸漬、乾燥させて心線となるガラス繊維コードを作製した。
【0040】
歯付ベルトの作製では、前記の歯布をモールドに巻き付け、この上に前記ガラス繊維コードをスピニングした後、更に表3のH−NBRゴム配合物からなるゴムシートを巻き付けた。続いて、これを加硫して、得られた加硫スリーブを所定の幅に切断して個々のベルトを得た。
【0041】
【表3】
【0042】
ベルトのサイズは105S8M19(ベルトの歯型:STPDタイプ、歯数:105、ベルト幅:19.1mm、歯ピッチ:8mm)であった。
【0043】
各ベルトを高温高張力下で走行させ、歯欠けに至る走行時間を測定した。ここで使用する走行試験機は駆動プーリ8(歯数21)と従動プーリ9(歯数42)間に歯付ベルト1を巻き付け、この歯付ベルトの背面にテンションプーリ10直径52mm)を当接したものであり、該ベルトを雰囲気温度120℃、駆動プーリの回転数7,200rpm、従動プーリの負荷5馬力、ベルトの初張力30kgfにて走行させ、歯面の摩耗による歯欠けに至る走行時間を測定した。その結果を表4に併記する。
【0044】
また、前記各ベルトを高負荷走行での歯欠けに至る走行時間を測定した。ここで使用する走行試験機は駆動プーリ8(歯数21)、従動プーリ9(歯数21)、そしてアイドラープーリ11(歯数21)の3軸からなり、これらのプーリに歯付ベルト1巻き付け、従動プーリ9との噛み合い歯数を6歯に設定した。このようにしてベルト1を雰囲気温度120℃、駆動プーリの回転数6,000rpm、従動プーリの負荷7馬力での歯欠けに至る走行時間を測定した。その結果を表4に併記する。
【0045】
【表4】
【0046】
この結果より、本実施例では、処理帆布の摩擦係数が減少し、また歯付ベルトの高温高張力下での歯欠けに時間も従来の歯布を使用したベルトに比べて格段に長くなり、また高温高負荷走行での歯欠け時間も長くなっていることが判る。
【0047】
【発明の効果】
以上のように本願請求項記載の発明では、歯布がシリコーン−アクリル樹脂共重合体粉体を混合したゴム組成物を溶剤によって溶解したゴム糊組成物を含浸付着させ加硫したゴム付き帆布を使用した歯付ベルトにあり、歯布にシリコーン−アクリル樹脂共重合体粉体を混合したゴム組成物を付着することによって、歯布表面の摩擦係数を下げてプーリ表面との滑りを良好にして歯布の耐摩耗性を向上させ、そして歯布と歯部の接着性を維持して耐歯欠け性や走行寿命を高めることができる効果がある。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る歯付ベルトの斜視図である。
【符号の説明】
1 歯付ベルト
2 歯部
3 心線
4 背部
5 歯布
6 緯糸
7 経糸
【発明の属する技術分野】
本発明は歯付ベルトに係り、高温高張力下および高温高負荷下での走行においても耐摩耗性および耐歯欠け性を改善した歯付ベルトに関する。
【0002】
【従来の技術】
従来の歯付ベルトは、クロロプレンを原料ゴムとするゴム配合物を歯部と背部に、SBR系のビニルピリジンラテックスをラテックス成分とするRFL(レゾルシン・ホルムアルデヒド・ラテックス)液にて接着処理されたガラス繊維コードもしくはアラミド繊維コードを心線に、そして捲縮加工されたナイロンを緯糸としてベルト長手方向に使用された歯布から構成され、自動車用OHC駆動(オーバーヘッドカム駆動)用のベルトとして使用されている。
【0003】
このOHC駆動用歯付ベルトは、エンジンルームのコンパクト化やFF化によって使用する環境温度が高温となり、従来のクロロプレンを原料ゴムとする歯付ベルトでは、背部や歯元部のクラックから歯欠けに至る現象、又は高温下での屈曲によるガラス心線の劣化によってベルトが切断しやすかった。そこで、近年特に自動車用歯付ベルトの長寿命化の要求に対して、クロロスルフォン化ポリエチレン(CSM)やアクリロニトリル−ブタジエン共重合体を水素添加して得られる水素化ニトリルゴム(HNBR)がゴム配合物の原料ゴムとして使用されるようになってきた。これについては、例えば、特許文献1に開示されている。
【0004】
一方、ゴム配合物中の原料ゴムの改善だけでなく、心線や歯布の改善も数多くなされている。そのうち、歯布の場合には、例えば経糸あるいは緯糸の一方の糸をポリエステル糸、アラミド繊維とし、他の糸を6ナイロン、6.6ナイロンとする帆布を用いて、耐熱性を向上させることが、特許文献2に開示されている。また、特許文献3には、歯布としてベルト長手方向の緯糸に少なくともアラミド繊維のウーリー加工糸とウレタン弾性糸を用いることが提示されている。
【0005】
また、耐摩耗性および耐歯欠け性を改善することを目的として、歯布としてベルト長手方向の緯糸にアラミド繊維の紡績糸とウレタン弾性糸との混撚糸を用い、かつ経糸に脂肪族あるいはアラミド繊維のフィラメント糸を用いた帆布を使用することを提案した。これは特許文献4に開示されている。
【0006】
更に、最近では、歯布表面にポリテトラフルオロエチレンなどの摺動剤粒子を担持させ、歯布表面の摩擦係数を低下させ、耐摩耗性を改善したものも提案されている。
【0007】
【特許文献1】
特開昭62−159827号公報
【特許文献2】
特開昭55−36642号公報
【特許文献3】
実開昭62−183147号
【特許文献4】
特開平4−8948号公報
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、従来の歯布では、ウーリー加工糸が加工温度の調節が困難で均一な仮撚りができずにランダムな太さになり、また繊維自身が高い剛性を有しているために、タオルのような凹凸表面になって平滑な帆布にならなかった。このような帆布を用いた歯付ベルトは、PLD値(心線の中心線となるピッチラインとベルト歯底面間の距離)がばらつき、また同じモールドで成型したベルトの長さも不均一になるといった不具合が発生した。
【0009】
また、アラミド繊維の紡績糸とウレタン弾性糸との混撚糸をベルト長手方向の緯糸に用いた歯布は、この問題点を改善した。しかし、歯付ベルトを高負荷で、かつベルト幅が狭い状態で使用する場合や、またディーゼルエンジンのように負荷変動が大きくなると、歯布表面の摩耗が大きくなって、これによりベルト歯元部の亀裂や歯欠けが発生しやすく、しかもベルト歯元部の応力集中によってベルト歯元部の亀裂や歯欠けが発生しやすかった。
【0010】
更に、歯布表面にポリテトラフルオロエチレンなどの摺動剤粒子を担持させた場合には、歯部と歯布との接着性が低下する恐れがあり、また摺動剤粒子の欠落、歯部形状の精密性に欠けるなどの問題があった。
【0011】
本発明はこのような問題点を改善するものであり、高温高張力や高温高負荷のような極めて過酷な条件下での走行でも耐摩耗性、耐歯欠け性を維持し、走行寿命の長い歯付ベルトを提供することを目的とする。
【0012】
【課題を解決するための手段】
即ち、本願の請求項1記載の発明では、長さ方向に沿って所定間隔で配置した複数の歯部と、心線を埋設した背部とを有し、上記歯部の表面に歯布を被覆した歯付ベルトにおいて、前記歯布がシリコーン−アクリル樹脂共重合体粉体を混合した加硫可能なゴム組成物を含浸付着させたゴム付き帆布からなる歯付ベルトにあり、歯布にシリコーン−アクリル樹脂共重合体粉体を混合したゴム組成物を付着することによって歯布表面の摩擦係数を下げてプーリ表面との滑りを良好にして歯布の耐摩耗性を向上させ、そして歯布と歯部の接着性を低下させずに耐歯欠け性や走行寿命を高めることができる。このシリコーン−アクリル樹脂共重体粉体は、シリコーン部で摺動性をもたせ、アクリル部でポリマーとの相溶性をもたせた粉体であり、単成分の摺動剤を用いては発現しない摺動性とポリマーとの相互作用を両立することができる。
【0013】
本願の請求項2記載の発明では、ゴム付き帆布がシリコーン−アクリル樹脂共重合体粉体を混合した加硫可能なゴム組成物を溶剤によって溶解したゴム糊で含浸付着させた歯付ベルトにある。
【0014】
本願の請求項3記載の発明では、ゴム付き帆布に含浸付着させる加硫可能なゴム組成物が、歯部に使用する原料ゴムと同じ原料ゴム100質量部に対してシリコーン−アクリル樹脂共重合体粉体配合量を5〜20質量部含有している歯付ベルトにある。
【0015】
本願の請求項4記載の発明では、ゴム付き帆布に含浸付着させる加硫可能なゴム組成物に使用する原料ゴムが、水素化ニトリルゴムである歯付ベルトにある。
【0016】
本願の請求項5記載の発明では、歯布のベルト長手方向の緯糸がパラ系アラミド繊維のフィラメント原糸を収束したマルチフィラメント糸を含む歯付ベルトにあり、歯布の構成糸にパラ系アラミド繊維のフィラメント原糸を収束したマルチフィラメント糸を使用しているため、上記高張力下あるいは高負荷走行下でもベルト歯底部の歯布の摩耗が阻止され、これによってベルト歯元部を長時間補強するために、耐歯欠け性に優れる。
【0017】
本願の請求項6記載の発明では、歯布の緯糸がパラ系アラミド繊維のマルチフィラメント糸とメタ系アラミド繊維とを含んでいる歯付ベルトにある。
【0018】
【発明の実施の形態】
図1は本発明に係る歯付ベルトの断面斜視図であり、歯付ベルト1はベルト長手方向(図中矢印)に沿って複数の歯部2とガラス繊維コードあるいはアラミド繊維コードからなる心線3を埋設した背部4とからなり、上記歯部2の表面には歯布5が貼着されている。
【0019】
前記歯部2及び背部4に使用される原料ゴムは、水素化ニトリルゴムを始めとして、クロロスルホン化ポリエチレン(CSM)、アルキル化クロロスルホン化ポリエチレン(ACSM)、クロロプレンゴムなどの耐熱老化性の改善されたゴムが好ましい。尚、水素化ニトリルゴムは水素添加率が80%以上であり、耐熱性及び耐オゾン性の特性を発揮するためには90%以上が良い。水素添加率80%未満の水素化ニトリルゴムは、耐熱性及び耐オゾン性は極度に低下する。
【0020】
負荷とともに張力の大きい条件下で歯付ベルト1を使用すると、従来の歯付ベルトの歯布が異常に摩耗を起こし、比較的早く歯元部にクラックが生じ、やがて歯欠けによる寿命となるため、100〜140°Cの高温度で高負荷、また高温度で高張力の条件下ではさらに歯部2の補強が必要である。本発明者等は歯布5として用いられる帆布を下記のものとすることにより耐摩耗性及び耐歯欠け性を向上させることを見出した。
【0021】
上記歯布5はRFL液、イソシアネート溶液あるいはエポキシ溶液によって処理される。RFL液は、レゾルシンとホルマリンとの初期縮合物をラテックスに混合したものであり、ここで使用するラテックスとしてはスチレン.ブタジエン.ビニルピリジン三元共重合体、水素化ニトリルゴム、クロロスルフォン化ポリエチレン、エピクロルヒドリンなどのラテックスである。
【0022】
上記RFL処理した歯布は、歯部に使用した原料ゴムと同種の原料ゴムにシリコーン−アクリル樹脂共重合体粉体を混合した加硫可能なゴム組成物を含浸付着させたゴム付き帆布であり、具体的にはゴム組成物を溶剤によって溶解したゴム糊を含浸付着させて加硫したゴム付き帆布にする。このゴム組成物は水素化ニトリルゴムを始めとして、クロロスルホン化ポリエチレン(CSM)、アルキル化クロロスルホン化ポリエチレン(ACSM)、クロロプレンゴムなどの耐熱老化性の改善された歯部に使用する原料ゴム100質量部にシリコーン−アクリル樹脂共重合体粉体を5〜20質量部混合し、これにカーボンブラック、シリカなどの補強剤、老化防止剤、加硫促進剤、硫黄もしくはパーオキサイドからなる加硫剤、共加硫剤を添加したものである。
【0023】
得られたシリコーン−アクリル樹脂共重合体粉体を混合したゴム組成物をメチルエチルケトン、ジメチルスルホキシド、ジメチルホルムアミド、クロロホルムなどから選ばれた溶剤に溶解してゴム糊にした後、該ゴム糊を歯布に塗布、吹き付け等によって含浸付着させたものである。
【0024】
シリコーン−アクリル樹脂共重合体粉体は、シリコーン樹脂の優れた表面摺動性の効果とアクリル部でポリマーとの相溶性をもたせた平均粒径30〜250μmの粉体であり、例えば市販品として日信化学工業社製のシャリーヌRが知られている。
【0025】
歯布5として用いられる帆布は、平織物、綾織物、朱子織物などからなり、少なくともベルト長手方向の緯糸6に0.3〜1.2デニールのパラ系アラミド繊維のフィラメント原糸を収束したマルチフィラメント糸をベルト長手方向の緯糸全量の20〜80質量%含んでいる。即ち、緯糸6は少なくともパラ系アラミド繊維のマルチフィラメント糸を含んだ糸であり、このパラ系アラミド繊維のマルチフィラメント糸にメタ系アラミド繊維からなる糸とを含めることができる。具体的な緯糸の構成は、パラ系アラミド繊維のマルチフィラメント糸、メタ系アラミド繊維からなる紡績糸、そしてウレタン弾性糸の3種の糸を合撚したものである。
【0026】
また、他の具体的な緯糸6構成は、パラ系アラミド繊維のマルチフィラメント糸、脂肪族繊維糸(6ナイロン、66ナイロン、ポリエステル、ポリビニルアルコール等)、そしてウレタン弾性糸の3種の糸を合撚したものであってもよい。
【0027】
上記パラ系アラミド繊維のマルチフィラメント糸は、0.3〜1.2デニールのフィラメント原糸を複数収束したものを複数本寄せ集めたマルチフィラメント糸、あるいは0.3〜1.2デニールのフィラメント原糸を複数収束したマルチフィラメント糸であり、例えば商品名ケブラー、テクノーラ、トワロンからなっている。このフィラメント原糸の太さが0.3デニール未満であると、ベルト長手方向の歯布の引張強さが低下し、またプーリとの接触による耐摩耗性に劣ってくる。一方、フィラメント原糸の太さが1.2デニールを越えると、製織後において歯布として接着処理をする際に、その過程でパラ系アラミド繊維のマルチフィラメント糸を打込んだ方向の糸の剛性が過大になるため、帆布としての経糸と緯糸のバランスが取れなくなって、布厚みの不均一でシワが発生した状態となり、均一なPLD値が要求される歯付ベルトには使用できない。
【0028】
また、ベルト長手方向の緯糸全量の20〜80質量%がパラ系アラミド繊維のマルチフィラメント糸である。この理由として、20質量%未満ではベルト長手方向の歯布の引張強さが低下し、高負荷でのベルト走行時に歯欠けが発生しやすくなり、また一方80質量%を越えると、パラ系アラミド繊維のマルチフィラメント糸の打込み方向の剛性が前記理由と同じく過大になるため、均一な厚みの帆布を得ることできなくなるためである。
【0029】
緯糸6として前記パラ系アラミド繊維のマルチフィラメント糸と併用することができるメタ系アラミド繊維からなる糸は、例えば商品名ノーメックス、コーネックスを素材とするもので、紡績糸が好ましい。
【0030】
ベルト長手方向のパラ系アラミド繊維はマルチフィラメント糸の使用量20〜80質量%に対し、メタ系アラミド繊維からなる糸を80〜20質量%用いる。これは、引張強さ及びモジュラスの高いパラ系アラミド繊維のマルチフィラメント糸が高温高負荷下の走行でも、また高温高張力下の走行でも充分耐え、歯部表面の摩耗に有効である。また、パラ系アラミド繊維のマルチフィラメント糸の占める割合と、メタ系アラミド繊維からなる糸の占める割合を調節して、厚さの均一な歯布にする効果もある。
【0031】
尚、従来の歯布には6ナイロン、6.6ナイロン糸が用いられてきたが、ベルトの高温(100〜140°C)下における長時間走行では、歯布の摩耗によりナイロンの摩耗粉がプーリ表面に固着し、これがベルト歯部の摩耗を加速的に促進させ、歯欠けを発生させていた。ここで、歯布に明確な融点のないアラミド繊維を使用すると、摩耗粉がプーリ表面に固着することがないため、このような問題は起こりにくい。
【0032】
また、歯布5の経糸7としては、パラ系アラミド繊維、メタ系アラミド繊維からなるアラミド繊維のフィラメント糸、6ナイロン、6.6ナイロン、12ナイロン等のポリアミド、ポリビニルアルコール、ポリエステル等のフィラメント糸からなる。好ましくは、アラミド繊維のフィラメント糸が緯糸5にパラ系アラミド繊維のフィラメント原糸を収束したマルチフィラメント糸を使用すれば、剛性のバランスが取れ、均一な厚みの歯布になる。
【0033】
【実施例】
以下、本発明を実施例にて詳細に説明する。
実施例1〜3、比較例1、2
経糸に1.5デニールのパラ系アラミド繊維のフィラメント原糸を収束した200デニールのフィラメント糸と、そして緯糸にテクノーラ(200D/2本、コーネックス30番手/1本(紡績糸)、スパンデックス140D/1本からなる合撚糸を使用し、織時組織(経110本/5cm、緯120本/5cm)からなる2/2綾織帆布を製織した。製織後、帆布を水中にて振動を与えて製織時の幅の約1/2幅まで収縮させた後、表1のH−NBRゴム配合物を所定比率でメチルエチルケトン中に溶解して得たゴム糊に浸漬、乾燥した後、165℃で30分間加硫して0.9mmの処理帆布を得た。
【0034】
上記帆布の表面動摩擦係数の測定では、サンプルを移動台上に固定し、サンプルの上に垂直荷重100g重のステンレスからなる重りを置き、移動台を400mm/分で移動させた場合の摩擦力をロードセルで測定し、F=μWに基づきμ(動摩擦係数)を算出した。その結果を表4に示す。
【0035】
【表1】
【0036】
表1のH−NBRゴム配合物を用いて所定の方法で得られた処理帆布を歯布として用いた。この場合、上記帆布は緯糸方向をベルトの長手方向に使用した。
【0037】
また、心線として溶融紡糸され、シランカップリング剤で表面処理された素線径約9μmのガラス繊維フィラメント約200本を束ねてストランドとし、3本のストランドを引き揃えて表2の各RFL液中に浸漬し、130℃で2分間乾燥、250〜300℃で2分間ベーキング後、下撚りを約12回/10cmにてS方向に撚った下撚り糸と、同回数Z方向に撚った下撚り糸を準備した。
【0038】
【表2】
【0039】
次にS方向の下撚り糸を13本引き揃え、上撚りを約8回/10cmの割合でZ方向に撚られたガラス繊維コードとし、また同様にZ撚り下撚り糸を同様に13本引き揃え、S方向に8回/10cmの撚り数のガラス繊維コードとし、各RFL液に対し、上撚り方向がS、Zの各一対のRFL処理ガラス繊維コードとした。そして、各RFL処理ガラス繊維コードを背部、歯部そして歯布に接着させるために、更にゴム組成物を溶剤に溶解させ、イソシアネートを添加したオーバーコート液に浸漬、乾燥させて心線となるガラス繊維コードを作製した。
【0040】
歯付ベルトの作製では、前記の歯布をモールドに巻き付け、この上に前記ガラス繊維コードをスピニングした後、更に表3のH−NBRゴム配合物からなるゴムシートを巻き付けた。続いて、これを加硫して、得られた加硫スリーブを所定の幅に切断して個々のベルトを得た。
【0041】
【表3】
【0042】
ベルトのサイズは105S8M19(ベルトの歯型:STPDタイプ、歯数:105、ベルト幅:19.1mm、歯ピッチ:8mm)であった。
【0043】
各ベルトを高温高張力下で走行させ、歯欠けに至る走行時間を測定した。ここで使用する走行試験機は駆動プーリ8(歯数21)と従動プーリ9(歯数42)間に歯付ベルト1を巻き付け、この歯付ベルトの背面にテンションプーリ10直径52mm)を当接したものであり、該ベルトを雰囲気温度120℃、駆動プーリの回転数7,200rpm、従動プーリの負荷5馬力、ベルトの初張力30kgfにて走行させ、歯面の摩耗による歯欠けに至る走行時間を測定した。その結果を表4に併記する。
【0044】
また、前記各ベルトを高負荷走行での歯欠けに至る走行時間を測定した。ここで使用する走行試験機は駆動プーリ8(歯数21)、従動プーリ9(歯数21)、そしてアイドラープーリ11(歯数21)の3軸からなり、これらのプーリに歯付ベルト1巻き付け、従動プーリ9との噛み合い歯数を6歯に設定した。このようにしてベルト1を雰囲気温度120℃、駆動プーリの回転数6,000rpm、従動プーリの負荷7馬力での歯欠けに至る走行時間を測定した。その結果を表4に併記する。
【0045】
【表4】
【0046】
この結果より、本実施例では、処理帆布の摩擦係数が減少し、また歯付ベルトの高温高張力下での歯欠けに時間も従来の歯布を使用したベルトに比べて格段に長くなり、また高温高負荷走行での歯欠け時間も長くなっていることが判る。
【0047】
【発明の効果】
以上のように本願請求項記載の発明では、歯布がシリコーン−アクリル樹脂共重合体粉体を混合したゴム組成物を溶剤によって溶解したゴム糊組成物を含浸付着させ加硫したゴム付き帆布を使用した歯付ベルトにあり、歯布にシリコーン−アクリル樹脂共重合体粉体を混合したゴム組成物を付着することによって、歯布表面の摩擦係数を下げてプーリ表面との滑りを良好にして歯布の耐摩耗性を向上させ、そして歯布と歯部の接着性を維持して耐歯欠け性や走行寿命を高めることができる効果がある。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る歯付ベルトの斜視図である。
【符号の説明】
1 歯付ベルト
2 歯部
3 心線
4 背部
5 歯布
6 緯糸
7 経糸
Claims (6)
- 長さ方向に沿って所定間隔で配置した複数の歯部と、心線を埋設した背部とを有し、上記歯部の表面に歯布を被覆した歯付ベルトにおいて、前記歯布がシリコーン−アクリル樹脂共重合体粉体を混合した加硫可能なゴム組成物を含浸付着させたゴム付き帆布からなることを特徴とする歯付ベルト。
- ゴム付き帆布がシリコーン−アクリル樹脂共重合体粉体を混合した加硫可能なゴム組成物を溶剤によって溶解したゴム糊で含浸付着させたものである請求項1記載の歯付ベルト。
- ゴム付き帆布に含浸付着させる加硫可能なゴム組成物が、歯部に使用する原料ゴムと同じ原料ゴム100質量部に対してシリコーン−アクリル樹脂共重合体粉体配合量を5〜20質量部含有している請求項1記載の歯付ベルト。
- ゴム付き帆布に含浸付着させる加硫可能なゴム組成物に使用する原料ゴムが、水素化ニトリルゴムである請求項1または2記載の歯付ベルト。
- 歯布のベルト長手方向の緯糸がパラ系アラミド繊維のフィラメント原糸を収束したマルチフィラメント糸を含む請求項1記載の歯付ベルト。
- 歯布の緯糸がパラ系アラミド繊維のマルチフィラメント糸とメタ系アラミド繊維とを含んでいる請求項5記載の歯付ベルト。
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