JP2004269280A - 腐植酸と栄養元素とを含む農業用資材 - Google Patents
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Abstract
【課題】植物の生長を促進する栄養元素を含む農業用資材を土壌表面に散布した時の栄養元素の土壌浸透性を向上する。
【解決手段】所定粒径となるように粉砕され分級された腐植酸を含む資材と、植物の生育に必要な栄養元素を含む資材とを所定の混合比で混合し、バインダー溶液を噴霧しながら造粒して、腐植酸と栄養元素とを含む農業用資材を製造する。この農業用資材中に含まれる腐植酸は土壌表面に散布されると長期間に渡って徐々に溶出し、溶出した腐植酸は栄養元素と接触すると栄養元素の可溶化を促進するため有機農業用資材からの栄養元素の土壌浸透性が向上する。
【選択図】図4
【解決手段】所定粒径となるように粉砕され分級された腐植酸を含む資材と、植物の生育に必要な栄養元素を含む資材とを所定の混合比で混合し、バインダー溶液を噴霧しながら造粒して、腐植酸と栄養元素とを含む農業用資材を製造する。この農業用資材中に含まれる腐植酸は土壌表面に散布されると長期間に渡って徐々に溶出し、溶出した腐植酸は栄養元素と接触すると栄養元素の可溶化を促進するため有機農業用資材からの栄養元素の土壌浸透性が向上する。
【選択図】図4
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、農業用資材に関し、例えば、腐植酸と植物の生育に必要な栄養元素とを含む農業用資材における栄養元素の土壌浸透性の改善に関する。
【0002】
【従来の技術】
作物を多く収穫するためには、作物の生育に適する土壌とする必要があり、その土壌中には、窒素,リン酸,カリウム以外にもCa,Mg,Fe、Mn、Si、Znなどの必要な栄養元素が十分に分布されていて、土壌中の根からこれらの栄養元素が常に必要な量だけ作物に吸収されるようにしなければならない。そのためには、作物の生長とともに必要な栄養元素が根から吸収されるように、土壌深部までこれらの栄養元素を供給しなければならない。
【0003】
通常、土壌表面に散布されたこれらの栄養元素は、降雨あるいは散水処理により、水中に溶けだし、水と共に土壌表面から土壌深部に浸透する。その結果、これらの栄養元素は、土壌深部まで分布することになるため、作物の根は、土壌表面近傍にある栄養元素ばかりでなく、土壌深部にある栄養元素も利用できる。そこで、土壌表面に散布された栄養元素を水分に溶けやすくして、効率よく土壌中に浸透させることは重要である。
【0004】
植物の生長に必要な栄養元素としては、例えば、植物が多量に必要とするCa,Mg,N,P,K,Sなどの多量栄養元素、少量で足りるB,Cl,Co,Cu,I,Fe,Mn,Mo,Znなどの微量栄養元素などがある。このうち、土壌中で最も欠乏しやすく施肥効果の大きいものとして窒素,リン酸,カリウムがあり、これらは、肥料3要素と呼ばれるように、植物の生長のために十分に供給する必要があるが、それとともにCa,Mg,Fe、Mn、Siなどの元素もバランスよく供給しなければ植物が健全に生長しないことは良く知られている。
【0005】
ところで、腐植酸は、上記の栄養元素を含む土壌改良資材や肥料などから栄養元素を可溶化して水に溶けやすい状態にする働きを有すことが知られている。この腐植酸は、腐植酸を含む石炭や亜炭などを酸分解して、すなわち、硝酸または硝酸と硫酸で分解して、抽出されるか(特許文献1)、あるいは、アルカリで抽出される(特許文献2)。このように、腐植酸を含む石炭や亜炭などから酸またはアルカリ処理して抽出された腐植酸は、Ca,Mg,Fe、Mnなどの栄養元素を含む土壌改良資材や肥料などとともに土壌表面に散布されると、水に溶けにくいCa,Mg,Fe、Mnなどの栄養元素は腐植酸の働きで可溶化して、効率よく土壌中に浸透する。
【0006】
【特許文献1】
特開昭62−100495号公報
【特許文献2】
特開平11−157976号公報
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記説明した例では、腐植酸をCa,Mg,Fe、Mnなどの栄養元素を含む土壌改良資材や肥料などとともに土壌表面に散布した直後は、腐植酸の働きでこれらの栄養元素が土壌中に供給されるが、土壌表面に供給された腐植酸やCa,Mg,Fe、Mnなどの栄養元素が雨水などで土壌表面から深部に移動すると、土壌表面やその付近にある腐植酸の濃度やCa,Mg,Fe、Mnなどの栄養元素の濃度は、時間と共に除々に低下する。そのため、作物が生長する期間の間、これらの栄養素を供給するためには、腐植酸をCa,Mg,Fe、Mnなどの栄養元素を含む土壌改良資材や肥料などとともに土壌表面に繰り返し散布する必要がある。しかしながら、これらの作業は大変な労力を要するし、費用もかさむ。
【0008】
本発明は、上記説明した従来技術の問題点を解決するためになされたものであり、その目的は、農業用資材を土壌表面に散布した場合に、農業用資材に含まれる植物の生長を促進するための栄養元素を容易にかつ長期間に渡って安定して土壌中に供給することができる農業用資材を提供することである。
【0009】
【発明を解決するための手段】
上記目的を達成するための本発明に係る一実施形態の農業用資材は、以下の構成を有する。すなわち、腐植酸を含む資材の粉末と、植物の生育に必要な栄養元素を含む資材の粉末と、バインダーとを含み、前記バインダーが前記腐植酸を含む資材の粉末と前記栄養元素を含む資材の粉末とを結合し、略粒状になっていることを特徴とする。
【0010】
ここで、例えば、前記腐植酸を含む資材は、石炭、亜炭、泥炭、褐炭、および草炭のうちの少なくとも1つを含むことを特徴とする。
【0011】
ここで、例えば、前記植物の生育に必要な栄養元素は、カルシウム、鉄、マグネシウム、マンガン、カリウム、リンおよび珪素のうちの少なくとも1つを含むことを特徴とする。
【0012】
ここで、例えば、前記栄養元素はカルシウムであり、前記栄養元素を含む資材の粉末は、炭酸カルシウム肥料、貝化石肥料、苦土石灰肥料および副産石灰肥料を含む石灰質肥料であることを特徴とする。
【0013】
ここで、例えば、前記バインダーは、澱粉のり、または、合成のりを含むことを特徴とする。
【0014】
ここで、例えば、前記腐植酸を含む資材の粉末および前記栄養元素を含む資材の粉末は、それぞれ0.5mm以下の粒径であることを特徴とする。
【0015】
ここで、例えば、前記腐植酸を含む資材の粉末と、前記植物の生育に必要な栄養元素を含む資材の粉末との混合割合が、重量比で10:1〜1:10であることを特徴とする。
【0016】
ここで、例えば、前記農業用資材は、0.5〜4mmの粒径を有し、略粒状であることを特徴とする。
【0017】
上記目的を達成するための本発明に係る一実施形態の農業用資材の製造方法は、以下の構成を有する。すなわち、腐植酸を含む資材を0.5mm以下に粉砕して粉末とする粉砕工程と、植物の生育に必要な栄養元素を含む資材を0.5mm以下に粉砕して粉末とする粉砕工程と、前記腐植酸を含む資材の粉末と、前記植物の生育に必要な栄養元素を含む資材の粉末とを所定の割合で混合する混合工程と、前記混合した粉末にバインダーを含む水溶液を噴霧し、前記混合した粉末を結合して略粒状の農業用資材を製造する製造工程と、を有することを特徴とする。
【0018】
【発明の実施の形態】
発明の実施形態を説明する前に簡単に本発明の概要を説明する。
【0019】
本明細書において、「有機農業用資材」との文言は、有機農業で使用できる肥料または土壌改良資材を含む有機農業用の資材のことであり、「有機」が付加されていない「農業用資材」との文言は、有機農業で使用できる肥料または土壌改良資材を含む有機農業用の資材と、有機農業では使用できないが有機農業以外では使用できる肥料または土壌改良資材を含む資材との両資材を含むもの、すなわち、有機農業に限定されないで使用できる農業用の資材のことである。
【0020】
[発明の概要]
本発明で製造される「農業用資材」は、「腐植酸を含む資材」と、「植物の生育に必要な栄養元素を含む資材」とを「バインダー」を用いて結合し造粒して略粒状としたものであり、農業用の肥料または土壌改良資材として使用することができる。この農業用資材は土壌表面に散布された後、水が散布されたり降雨があると農業用資材に含まれる腐植酸は溶出する。この際に、溶出した腐植酸が栄養元素(例えば、カルシウムなど)と接触すると、腐植酸はその栄養元素を可溶化してその溶出を促進する。そのため農業用資材中のカルシウムなどの成分は溶けだして土壌中に浸透する。また、農業用資材に含まれる腐植酸は、水が散布されたときや降雨のときなどに徐々に溶出するため、本農業用資材は長期間に渡って栄養元素を土壌中に浸透させることができる。その結果、本農業用資材は植物の根の生長にあわせて必要な栄養元素を土壌中の広範囲に渡って、長期間に供給することができる。
【0021】
以下に図面を参照して、本発明に係る好適な実施形態である、腐植酸と植物の生育に必要な栄養元素とを含む農業用資材の一例として、腐植酸とCa元素を含む農業用資材を例にとり、農業用資材に含まれる腐植酸がCa元素の土壌浸透性を長期間に渡って改善できることを詳しく説明する。ただし、この実施形態に記載されている構成要素、数値などは、特に特定的な記載がない限りは、この発明をそれらのみに限定する趣旨のものではない。
【0022】
[原料]
<腐植酸を含む資材>
腐植酸はフミン酸とも呼ばれ、土壌中の有機質や石炭質の大部分を形成している。「腐植酸を含む資材」としては、石炭をはじめとして、泥炭、亜炭、褐炭、瀝青炭および草炭等があげられる。亜炭や褐炭は泥炭と瀝青炭の中間の性質を示し、褐炭は亜炭より地質学的に若く、石炭化の程度が低いものである。腐植酸は、土壌または低石炭化度の石炭質中に存在するアルカリ可溶で、酸に不溶の褐色から黒色の無定型酸性有機物であり、その元素組成は、炭素50〜65%、水素3〜6%、窒素分1.5〜6%、硫黄1%以下、残部の大部分は酸素であるが、その化学構造は不明であり、ベンゼン、ナフタリン、ピリジン、アントラセンなどの多価フェノール形の芳香族化合物と含窒素化合物との縮合物である。
【0023】
本実施形態で使用する「腐植酸を含む資材」としては、上記説明した腐植酸を含む石炭、泥炭、亜炭、褐炭、瀝青炭および草炭などを用いることができる。ただし、これらの腐植酸を含む石炭や亜炭などを有機農業用資材の「腐植酸を含む資材」の原料として使用する場合には、酸処理やアルカリ処理をしていない石炭や亜炭などを使用する。
【0024】
なお、腐植酸を含む石炭や亜炭などを農業用資材の「腐植酸を含む資材」の原料として使用する場合には、上記説明した酸あるいはアルカリ処理していない石炭などや、石炭などを酸あるいはアルカリ処理して得られる腐植酸なども使用することができる。
【0025】
これらを「腐植酸を含む資材」として使用する時には、予め0.5mm以下に粉砕して用いるのが好ましい。これは、本実施形態の農業用資材を土壌表面に散布したときに、農業用資材に含まれる「腐植酸を含む資材」から腐植酸が長期間に渡って容易に溶出し、溶出した腐植酸が農業用資材に含まれる栄養元素とよく接触して栄養元素の可溶化を促進するからである。
【0026】
<植物の生育に必要な栄養元素を含む資材>
本実施形態で使用する「植物の生育に必要な栄養元素を含む資材」とは、植物の生育に必要な栄養元素であるCa、Mg、Fe、Mn、Si、P、Kなどの成分を含む資材である。
【0027】
これらの栄養元素を含む資材のなかで、有機農業用資材の「植物の生育に必要な栄養元素を含む資材」の原料として使用できる資材を図1に示す。図1は、有機農業で使用できる肥料または土壌改良資材の例であり、図1の中から必要な栄養元素を含むものを選択して使用すればよい。例えば、図1の塩基性スラグ鉱さいケイ酸肥料(以下、鉱さいと呼ぶ)には、図2の鉱さいの種類と成分からわかるように、Fe、Ca、Mg、Mnなどの植物の生育に必要な栄養元素が含まれている。鉱さいは、鉱石を炉で精錬し、または、粗金属を乾式で精製する場合に脈石又は不純物が融剤と結合して目的物から分離したものであり、製鉄溶鉱炉の鉱さい中には、CaO、MgO、MnO2などの栄養元素が多く含まれ、転炉、製鋼用塩基性平戸や銅溶鉱炉の鉱さい中には、FeO、CaO、MgO、MnO2などの栄養元素が多く含まれている。
【0028】
なお、「植物の生育に必要な栄養元素を含む資材」を農業用資材の原料として使用する場合には、図1に示した有機農業で使用できる肥料または土壌改良資材や、上記栄養元素を含む化学合成された肥料や土壌改良資材をも使用することができる。例えば、栄養元素がCaの場合には、炭酸カルシウム肥料、貝化石肥料、苦土石灰肥料および副産石灰肥料などの石灰質肥料などを使用できる。また、栄養元素がCa以外の他の元素の場合もそれらの栄養元素を含む天然のまたは化学合成された各種肥料や土壌改良資材を使用できる。
【0029】
これらを「植物の生育に必要な栄養元素を含む資材」として使用するときには、予め0.5mm以下となるように粉砕して使用するのが好ましい。これは、「腐植酸を含む資材」と「植物の生育に必要な栄養元素を含む資材」とが農業用資材中でよく接触できるように接触面積を増やすためである。
【0030】
<バインダー>
本実施形態で使用するバインダーとしては、「腐植酸を含む資材」と「植物の生育に必要な栄養元素を含む資材」とを結合し、所定径を有する略粒状体の農業用資材を形成することができ、かつ、植物の生長を阻害しないものであればどのようなものでも使用することができる。
【0031】
ただし、有機農業用資材のバインダーとして使用する場合には、天然のバインダー、例えば、澱粉類を水などで練り、場合によっては加熱して作られた天然の澱粉のり、製糖鉱業の副産物である廃糖蜜、アルコール発酵の廃液などをバインダとして使用する。
【0032】
なお、農業用資材のバインダーとして使用する場合には、上記説明した天然のバインダーや、カルボキシメチルセルロースやポリビニルアルコールなどの合成のりや、製紙工業の副産物であるリグニンスルフォン酸塩なども使用することができる。
【0033】
バインダーは所定量の水にとかして所定濃度としたバインダー溶液として、撹拌造粒装置に供給されるが、バインダー溶液中のバインダー濃度やバインダー溶液の供給量は、造粒する粒の粒径や結合強度に応じて適時決定される。
【0034】
[農業用資材の製造方法]
次に、農業用資材の製造方法を図4を用いて説明する。
【0035】
<原料の選択工程>
(有機農業用資材の原料)
▲1▼腐植酸を含む資材
「腐植酸を含む資材」の原料としては、酸やアルカリ処理しない石炭、泥炭、亜炭、褐炭、瀝青炭および草炭などを使用することができる。上記の石炭などに含まれる腐植酸の量は種々のものがあるので、使用条件に適した特性を有するものを選択する。
【0036】
▲2▼植物の生育に必要な栄養元素を含む資材
「植物の生育に必要な栄養元素を含む資材」の原料としては、図1に示す有機農業で使用できる肥料または土壌改良資材を使用することができる。図1に示した肥料または土壌改良資材に含まれる栄養元素はまちまちなので、使用目的に適した栄養元素を含むものを選択する。
【0037】
▲3▼バインダー
バインダーとしては、天然の澱粉のり、廃糖蜜、アルコール発酵の廃液などを使用できるので、有機農業用資材が所定の粒径や強度を有するようなものをバインダーとして選択する。
【0038】
(農業用資材の原料)
▲1▼腐植酸を含む資材
「腐植酸を含む資材」の原料としては、酸やアルカリ処理しない石炭、泥炭、亜炭、褐炭、瀝青炭および草炭などや、石炭などを酸またはアルカリ処理した腐植酸等の中から使用条件に適した特性を有するものを選択する。
【0039】
▲2▼植物の生育に必要な栄養元素を含む資材
「植物の生育に必要な栄養元素を含む資材」としては、図1に示す有機農業で使用できる肥料または土壌改良資材や、必要な栄養元素を含む化学合成されたものも使用できるので、使用目的に適した栄養元素を含むものを選択する。
【0040】
▲3▼バインダー
バインダーとしては、天然の澱粉のり、廃糖蜜、アルコール発酵の廃液や、リグニンスルフォン酸塩、カルボキシメチルセルロースやポリビニルアルコールなどの合成のりを使用することができるので、農業用資材が所定の粒径や強度を有するようなものをバインダーとして選択する。
【0041】
<原料の粉砕工程>
次の原料の粉砕工程では、原料の選択工程で選択された原料である「腐植酸を含む資材」と「植物の生育に必要な栄養元素を含む資材」は、所定の粒径となるようにそれぞれ粉砕され、続いて分級される。各資材の粉砕には、例えば、転動ミルなどの粉砕機を使用することができる。また、粉砕した各資材の分級にはふるい分け装置などの分級装置を使用することができる。本実施形態では、各資材は、例えば、それぞれ0.5mmのふるいを通過する程度まで粉砕する。
【0042】
<混合工程>
次の混合工程では、原料の粉砕工程で粉砕され分級された「腐植酸を含む資材」と「植物の生育に必要な栄養元素を含む資材」とを、好適な配合で混合する。「腐植酸を含む資材」と「植物の生育に必要な栄養元素を含む資材」とは、配合比率が重量比で、好ましくは、10:1〜1:10、より好ましくは、5:1〜1:5となるように混合される。この混合比は、含まれる腐植酸と栄養元素との量をどのような割合とするかによって決定され、例えば、含まれる栄養元素をより多くしたい場合には腐植酸を含む資材に対する栄養元素を含む資材の割合を増すように配合される。
【0043】
図3に、有機農業用資材および農業用資材の配合の一例を示す。有機農業用資材の配合例では、「腐植酸を含む資材」として亜炭を、「植物の生育に必要な栄養元素を含む資材」として鉱さいを用いた場合の好適な配合比率が重量比で10:1〜1:10であり、より好適な配合が5:1〜1:5であり、最適な配合が1:4である。また、農業用資材の配合例では、「腐植酸を含む資材」として亜炭を、「植物の生育に必要な栄養元素を含む資材」として有機農業では使用できない合成した石灰質肥料を用いた場合の好適な配合比率が重量比で10:1〜1:10であり、より好適な配合が6:1〜1:6であり、最適な配合が1:5である。
【0044】
<造粒工程>
次の造粒工程では、混合工程で所定の配合比率で混合された各資材は、撹拌造粒装置、例えば、回転円筒型、回転皿形、ミキサー型などの撹拌造粒装置に入れられ、撹拌造粒装置を回転しながら、所定濃度のバインダー溶液を混合された各資材上に噴霧などして、所定の配合比率で混合された各資材をバインダーで結合させながら造粒して略粒状の所定粒径を有する農業用資材あるいは農業用資材を製造する。造粒された粒の粒径は、土壌に散布するのに適した大きさであればよいが、好適には0.5〜4mm、より好適には2〜3mmである。なお、バインダー液は原料の選択工程で選択されたバインダーを水にとかして所定濃度としたものであり、撹拌造粒装置に供給されるバインダー液の濃度や供給量は、造粒する粒の粒径や結合強度に応じて適時決定される。
【0045】
【実施例】
<実施例1>
次に図4で説明した製造方法で製造した有機農業用資材(以下、本発明品1と称す)の施肥効果の一例として有機農業用資材を散布した場合のトマトの生育結果を図5に示す。
【0046】
なお、実施例1では、本発明品1の原料として、「腐植酸を含む資材」として酸やアルカリ処理していない亜炭を、「植物の生育に必要な栄養元素を含む資材」として有機農業で使用できる鉱さいを、バインダーとして有機農業で使用できるトウモロコシの澱粉であるコーンスターチを用いた。
【0047】
また、粉砕した亜炭及び鉱さいは、0.5mmのふるいに通過した0.5mm以下のものをそれぞれ使用し、亜炭:鉱さいの比を重量で1:4となるようにして混合したものに、コーンスターチの水溶液をバインダーとして噴霧器で噴霧しながら通常の撹拌造粒装置を用いて造粒し、1〜4mmの粒状の有機農業用資材(本発明品1)を得た。
【0048】
次に、1/5000アールのワグネルポットに育苗培土を充填し、本発明品1を100、150、200Kg/10アールの処理量で混和処理した後、この本発明品1を含む育苗培土に、予め通常の培養土で播種から20日間生育させたトマトの苗を移植した。そして、本発明品1を含む育苗培土で50日間生育させた後でトマトの茎葉部と根部を分離し、分離した各試料を105℃で乾燥させてから各重量(乾物重量)を測定した。その結果を図5に示す。
【0049】
なお比較のために、育苗培土のみからなる1/5000アールのワグネルポットに、予め通常の培養土で播種から20日間生育させたトマトの苗を移植し、さらに50日間生育させた後でトマトの茎葉部と根部を分離し、分離した各試料を105℃で乾燥させてから各重量(乾物重量)を測定した結果を図5にあわせて示した。
【0050】
図5より、本発明品1を添加した育苗培土で生育したトマトの茎葉部および根部の乾物重量は、本発明品1を添加しないで生育したトマトの乾物重量(茎葉部8.76g/株、根部1.44g/株)に比べてどちらも重かった。また、本発明品1を添加した育苗培土を比較すると、本発明品1の添加量の増加と共に生育したトマトの茎葉部の乾物重量および根部の乾物重量もそれぞれ増加した。このことから、育苗培土中均一に混合された有機農業用資材(本発明品1)は、トマトの生育に有効であること、および、上記の添加量の範囲では、有機農業用資材(本発明品1)の畑地への添加量が多いほど施肥効果が大きいことがわかった。
【0051】
<実施例2>
実施例2では、実施例1で使用した本発明品1を土壌表面に散布した場合に、本発明品1に含まれるカルシウム、マグネシウム、鉄成分が、土壌深部まで浸透するか否かを、また、土壌中に浸透するカルシウム、マグネシウム、鉄成分は長期間に渡って土壌中に供給されるか否かを調べる。すなわち、実施例2では、土壌表面に散布された本発明品1に含まれるカルシウム、マグネシウム、鉄成分がどの程度溶出するか、溶出したカルシウム、マグネシウム、鉄成分はどの程度の土壌深部まで浸透するか、土壌中に浸透するカルシウムやマグネシウム成分は長期間に渡って供給されるか否かを調べる。
【0052】
そのため、実施例2では、所定量の本発明品1を畑地(土壌)の表面に散布し、所定期間放置した後、土壌の表層より0〜10cmの深さ(第1測定点)、表層より10〜20cmの深さ(第2測定点)、表層より20〜30cmの深さ(第3測定点)の3点で土壌を採取し、土壌中に含まれるカルシウムやマグネシウム成分を測定することとした。
【0053】
また、実施例2では、本発明品1の効果を比較する2つの試験をあわせて行った。すなわち、第1比較試験では、土壌表面に本発明品1を散布しない場合(以下、無処理と呼ぶ)に、土壌中に含まれているカルシウム、マグネシウム、鉄成分の濃度を調べることにより、土壌中に予め含まれているカルシウム、マグネシウム、鉄成分の濃度(以下、基準濃度と呼ぶ)を調べた。このため、第1比較試験では、実施例2の試験条件とほぼ同一にするため、実施例2で使用する畑地の隣の畑地を用いた。
【0054】
第2比較試験では、本発明品1に含まれる腐植酸がカルシウム、マグネシウム、鉄成分の溶出を促進するか否かを調べるために、比較処理として、本発明品1の製造原料である鉱さいを、本発明品1に含まれる量だけ土壌表面に散布し、土壌中に含まれているカルシウム、マグネシウム、鉄成分の濃度を調べた。このため、第2比較試験では、実施例2の試験条件とほぼ同一にするため、実施例2で使用する畑地の隣の畑地を用いた。
【0055】
実施例2、第1比較試験および第2比較試験で得られた土壌中に含まれるカルシウムやマグネシウム成分の測定は、採取した土壌を1N酢酸アンモニウム溶液と混合し、1N酢酸アンモニウム溶液に抽出される置換性カルシウム、マグネシウム、鉄濃度を土壌中に含まれるカルシウム、マグネシウム、鉄成分とした。この抽出された置換性カルシウム、マグネシウム、鉄は、土壌中に含まれるカルシウム、マグネシウム、鉄成分のうちで、植物に吸収されやすく植物の生長に役立つ有効成分である。
【0056】
実施例2の試験結果例を図6に示す。図6は、土壌中に含まれるカルシウム、マグネシウムおよび鉄成分の分布を示すものであり、上記説明した実験条件の一例として、畑地として黒ボク土壌の畑地を、本発明品1の散布量として、150Kg/10アールの処理量を、放置期間として5ヶ月を用いた例である。なお、図には示さなかったが、本発明品1の散布量や放置期間を変更しても図6と類似する傾向を示す試験結果が得られた。
【0057】
図6の試験結果をまとめると以下の通りである。
【0058】
[カルシウム成分(置換性塩基カルシウム)について]
1)第1比較試験より、無処理の黒ボク土壌の畑地には、カルシウム成分が3.3mg/100g土壌程度存在し、かつ、表層〜土壌30cmまでほぼ均一に存在する。
【0059】
2)第2比較試験より、鉱さいのみ散布した黒ボク土壌の畑地には、カルシウム成分が無処理の場合(第1比較試験)に比べて多く存在する。
【0060】
3)実施例2より、本発明品1を散布した黒ボク土壌の畑地には、カルシウム成分が鉱さいのみ散布した場合(第2比較試験)に比べて多く存在する。
【0061】
以上の結果より、畑地に鉱さいを散布すると土壌中のカルシウム成分は増加するが、畑地に本発明品1を散布すると土壌中のカルシウム成分は鉱さいを単独で散布した場合に比べてさらに増加することが分かる。また、鉱さいを単独で散布した場合に比べて本発明品1を散布したときに見られる土壌中のカルシウム成分の増加は、5ヶ月後でも持続していることが分かる。これは、本発明品1中に含まれる腐植酸が長期間に渡って徐々に溶出し、この溶出した腐植酸が鉱さい中に含まれるカルシウム成分の溶出を促進したためである。
【0062】
[マグネシウム成分(置換性塩基マグネシウム)について]
1)第1比較試験より、無処理の黒ボク土壌の畑地には、マグネシウム成分が0.4mg/100g土壌程度存在し、かつ、表層〜土壌30cmまでほぼ均一に存在する。
【0063】
2)第2比較試験より、鉱さいのみ散布した黒ボク土壌の畑地には、マグネシウム成分が無処理の場合(第1比較試験)に比べて多く存在する。
【0064】
3)実施例2より、本発明品1を散布した黒ボク土壌の畑地には、マグネシウム成分が鉱さいのみ散布した場合(第2比較試験)に比べて多く存在する。
【0065】
以上の結果より、畑地に鉱さいを散布すると土壌中のマグネシウム成分は増加するが、畑地に本発明品1を散布すると土壌中のマグネシウム成分は鉱さいを単独で散布した場合に比べてさらに増加することが分かる。また、鉱さいを単独で散布した場合に比べて本発明品1を散布したときに見られる土壌中のマグネシウム成分の増加は、5ヶ月後でも持続していることが分かる。これは、本発明品1中に含まれる腐植酸が長期間に渡って徐々に溶出し、この溶出した腐植酸が鉱さい中に含まれるマグネシウム成分の溶出を促進したためである。
【0066】
[鉄成分(置換性鉄)について]
1)第1比較試験より、無処理の黒ボク土壌の畑地には、鉄成分が0.1mg/100g土壌程度存在し、かつ、表層〜土壌30cmまでほぼ均一に存在する。
【0067】
2)第2比較試験より、鉱さいのみ散布した黒ボク土壌の畑地には、鉄成分が無処理の場合(第1比較試験)に比べて多く存在する。
【0068】
3)実施例2より、本発明品1を散布した黒ボク土壌の畑地には、マグネシウム成分が鉱さいのみ散布した場合(第2比較試験)に比べて同等または多く存在する。
【0069】
以上の結果より、畑地に鉱さいを散布すると土壌中の鉄成分は増加するが、畑地に本発明品1を散布すると土壌中の鉄成分は鉱さいを単独で散布した場合に比べてさらに増加することが分かる。また、鉱さいを単独で散布した場合に比べて本発明品1を散布したときに見られる土壌中の鉄成分の増加は、5ヶ月後でも持続していることが分かる。これは、本発明品1中に含まれる腐植酸が長期間に渡って徐々に溶出し、この溶出した腐植酸が鉱さい中に含まれる鉄成分の溶出を促進したためである。
【0070】
<実施例3>
次に、図4で説明した製造方法で製造した有機農業では使用できない資材(以下、本発明品2と称す)の施肥効果の一例として本資材を散布した場合のトマトの生育結果を図7に示す。
【0071】
なお、実施例3では、本発明品2の原料には、「腐植酸を含む資材」として亜炭を、「植物の生育に必要な栄養元素を含む資材」として合成されたマグネシウムの酸化物を含む炭酸カルシウム材料を、バインダーとしてトウモロコシの澱粉であるコーンスターチを用いた。
【0072】
また、粉砕した亜炭及びマグネシウムの酸化物を含む炭酸カルシウム材料は、0.5mmのふるいに通過した0.5mm以下のものをそれぞれ使用し、亜炭:炭酸カルシウム材料の比を重量で1:5となるようにして混合したものに、コーンスターチの水溶液をバインダーとして噴霧器で噴霧しながら通常の撹拌造粒装置を用いて造粒し、1〜4mmの粒状の本発明品2を得た。
【0073】
次に、1/5000アールのワグネルポットに育苗培土を充填し、本発明品2を100、150、200Kg/10アールの処理量で混和処理した後、この本発明品2を含む育苗培土に、予め通常の培養土で播種から20日間生育させたトマトの苗を移植した。そして、本発明品1を含む育苗培土で50日間生育させた後でトマトの茎葉部と根部を分離し、分離した各試料を105℃で乾燥させてから各重量(乾物重量)を測定した。その結果を図7に示す。
【0074】
なお比較のために、育苗培土のみからなる1/5000アールのワグネルポットに、予め通常の培養土で播種から20日間生育させたトマトの苗を移植し、さらに50日間生育させた後でトマトの茎葉部と根部を分離し、分離した各試料を105℃で乾燥させてから各重量(乾物重量)を測定した結果を図7にあわせて示した。
【0075】
図7より、本発明品2を添加した育苗培土で生育したトマトの茎葉部および根部の乾物重量は、本発明品2を添加しないで生育したトマトの乾物重量(茎葉部8.76g/株、根部1.44g/株)に比べてどちらも重かった。また、本発明品2を添加した育苗培土を比較すると、本発明品2の添加量の増加と共に生育したトマトの茎葉部の乾物重量および根部の乾物重量もそれぞれ増加した。このことから、育苗培土中に均一に混合された本発明品2は、トマトの生育に有効であること、および、上記の添加量の範囲では、本発明品2の畑地への添加量が多いほど施肥効果が大きいことがわかった。
【0076】
<実施例4>
実施例4では、実施例3で使用した有機農業では使用できない資材(本発明品2)を土壌表面に散布した場合に、本発明品2に含まれるカルシウムやマグネシウム成分が、土壌深部まで浸透するか否かを、また、土壌中に浸透するカルシウムやマグネシウム成分は長期間に渡って土壌中に供給されるか否かを調べる。すなわち、実施例4では、土壌表面に散布された本発明品2に含まれるカルシウムやマグネシウム成分がどの程度溶出するか、溶出したカルシウムやマグネシウム成分はどの程度の土壌深部まで浸透するか、土壌中に浸透するカルシウムやマグネシウム成分は長期間に渡って供給されるか否かを調べる。
【0077】
そのため、実施例4では、所定量の本発明品2を畑地(土壌)の表面に散布し、所定期間放置した後、土壌の表層より0〜10cmの深さ(第1測定点)、表層より10〜20cmの深さ(第2測定点)、表層より20〜30cmの深さ(第3測定点)の3点で土壌を採取し、土壌中に含まれるカルシウムやマグネシウム成分を測定することとした。
【0078】
また、実施例4では、本発明品2の効果を比較する2つの試験を行った。第1比較試験では、土壌表面に本発明品2を散布しない場合(以下、無処理と呼ぶ)に、土壌中に含まれているカルシウムやマグネシウム成分の濃度を調べることにより、土壌中に予め含まれているカルシウムやマグネシウム成分の濃度(以下、基準濃度と呼ぶ)を調べた。このため、第1比較試験では、実施例4の試験条件とほぼ同一にするため、実施例4で使用する畑地の隣の畑地を用いた。
【0079】
第2比較試験では、本発明品2に含まれる腐植酸がカルシウムやマグネシウム成分の溶出を促進するか否かを調べるために、比較処理として、本発明品2の製造原料である炭酸カルシウム材料(マグネシウムを含む)を、本発明品2に含まれる量だけ土壌表面に散布し、土壌中に含まれているカルシウムやマグネシウム成分の濃度を調べた。このため、第2比較試験では、実施例4の試験条件とほぼ同一にするため、実施例4で使用する畑地の隣の畑地を用いた。
【0080】
実施例4、第1比較試験および第2比較試験で得られた土壌中に含まれるカルシウムやマグネシウム成分の測定は、採取した土壌を1N酢酸アンモニウム溶液と混合し、1N酢酸アンモニウム溶液に抽出される置換性カルシウムとマグネシウム濃度を土壌中に含まれるカルシウムやマグネシウム成分とした。この抽出された置換性カルシウムとマグネシウムは、土壌中に含まれるカルシウムやマグネシウム成分のうちで、植物に吸収されやすく植物の生長に役立つ有効成分である。
【0081】
実施例4の試験結果例を図8に示す。図8は、土壌中に含まれるカルシウム、およびマグネシウム成分の分布を示すものであり、上記説明した実験条件の一例として、畑地として黒ボク土壌の畑地を、本発明品2の散布量として、150Kg/10アールの処理量を、放置期間として5ヶ月を用いた例である。なお、図には示さなかったが、本発明品2の散布量や放置期間を変更しても図8と類似する傾向を示す試験結果が得られた。
【0082】
図8の試験結果をまとめると以下の通りである。
【0083】
[カルシウム成分(置換性塩基カルシウム)について]
1)第1比較試験より、無処理の黒ボク土壌の畑地には、カルシウム成分が3.3mg/100g土壌程度存在し、かつ、表層〜土壌30cmまでほぼ均一に存在する。
【0084】
2)第2比較試験より、炭酸カルシウム材料のみ散布した黒ボク土壌の畑地には、カルシウム成分が無処理の場合(第1比較試験)に比べて多く存在する。
【0085】
3)実施例4より、本発明品2を散布した黒ボク土壌の畑地には、カルシウム成分が炭酸カルシウム材料のみ散布した場合(第2比較試験)に比べて多く存在する。
【0086】
以上の結果より、畑地に炭酸カルシウム材料を散布すると土壌中のカルシウム成分は増加するが、畑地に本発明品2を散布すると土壌中のカルシウム成分は炭酸カルシウム材料を単独で散布した場合に比べてさらに増加することが分かる。また、畑地に炭酸カルシウム材料を単独で散布した場合に比べて本発明品2を散布したときに見られる土壌中のマグネシウム成分の増加は、5ヶ月後でも持続していることが分かる。これは、本発明品2中に含まれる腐植酸が長期間に渡って徐々に溶出し、この溶出した腐植酸が炭酸カルシウム材料中に含まれるカルシウム成分の溶出を促進したためである。
【0087】
[マグネシウム成分(置換性塩基マグネシウム)について]
1)第1比較試験より、無処理の黒ボク土壌の畑地には、マグネシウム成分が0.4mg/100g土壌程度存在し、かつ、表層〜土壌30cmまでほぼ均一に存在する。
【0088】
2)第2比較試験より、炭酸カルシウム材料のみ散布した黒ボク土壌の畑地には、マグネシウム成分が無処理の場合(第1比較試験)に比べて多く存在する。
3)実施例2より、本発明品2を散布した黒ボク土壌の畑地には、マグネシウム成分が炭酸カルシウム材料(マグネシウムを含む)のみ散布した場合(第2比較試験)に比べて多く存在する。
【0089】
以上の結果より、畑地にマグネシウムの酸化物を含む炭酸カルシウム材料を含む)を散布すると土壌中のマグネシウム成分は増加するが、畑地に本発明品2を散布すると土壌中のマグネシウム成分はマグネシウムの酸化物を含む炭酸カルシウム材料を単独で散布した場合に比べてさらに増加することが分かる。また、マグネシウムの酸化物を含む炭酸カルシウム材料を単独で散布した場合に比べて本発明品2を散布したときに見られる土壌中のマグネシウム成分の増加は、5ヶ月後でも持続していることが分かる。これは、本発明品2中に含まれる腐植酸が長期間に渡って徐々に溶出し、この溶出した腐植酸がマグネシウムの酸化物を含む炭酸カルシウム材料中に含まれるマグネシウム成分の溶出を促進したためである。
【0090】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明の農業用資材は、腐植酸を含む資材と、植物の生育に必要な栄養元素を含む資材とを含む。この腐植酸は栄養元素の溶出を促進するため、農業用資材を土壌表面に散布した場合に、その中に含まれる植物の生長を促進するための栄養元素を容易にかつ長期間に渡って安定して土壌中に供給することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】有機農業で使用できる肥料または土壌改良資材を説明する図である。
【図2】鉱さいの成分の一例を説明する図である。
【図3】本発明の農業用資材の種類、成分、粒径の一例を示す図である。
【図4】本発明の農業用資材の製造方法の一例を説明する図である。
【図5】本発明の有機農業用資材をトマトの生育用に用いた場合の効果の一例を説明する図である。
【図6】本発明の有機農業用資材を土壌表面に散布した後で5ヶ月間放置した場合の土壌中に含まれるカルシウムとマグネシウム成分の分布を調べた結果の一例を説明する図である。
【図7】本発明の有機農業に限定されない農業用資材をトマトの生育用に用いた場合の効果の一例を説明する図である。
【図8】本発明の有機農業に限定されない農業用資材を土壌表面に散布した後で5ヶ月間放置した場合の土壌中に含まれるカルシウムとマグネシウム成分の分布を調べた結果の一例を説明する図である。
【発明の属する技術分野】
本発明は、農業用資材に関し、例えば、腐植酸と植物の生育に必要な栄養元素とを含む農業用資材における栄養元素の土壌浸透性の改善に関する。
【0002】
【従来の技術】
作物を多く収穫するためには、作物の生育に適する土壌とする必要があり、その土壌中には、窒素,リン酸,カリウム以外にもCa,Mg,Fe、Mn、Si、Znなどの必要な栄養元素が十分に分布されていて、土壌中の根からこれらの栄養元素が常に必要な量だけ作物に吸収されるようにしなければならない。そのためには、作物の生長とともに必要な栄養元素が根から吸収されるように、土壌深部までこれらの栄養元素を供給しなければならない。
【0003】
通常、土壌表面に散布されたこれらの栄養元素は、降雨あるいは散水処理により、水中に溶けだし、水と共に土壌表面から土壌深部に浸透する。その結果、これらの栄養元素は、土壌深部まで分布することになるため、作物の根は、土壌表面近傍にある栄養元素ばかりでなく、土壌深部にある栄養元素も利用できる。そこで、土壌表面に散布された栄養元素を水分に溶けやすくして、効率よく土壌中に浸透させることは重要である。
【0004】
植物の生長に必要な栄養元素としては、例えば、植物が多量に必要とするCa,Mg,N,P,K,Sなどの多量栄養元素、少量で足りるB,Cl,Co,Cu,I,Fe,Mn,Mo,Znなどの微量栄養元素などがある。このうち、土壌中で最も欠乏しやすく施肥効果の大きいものとして窒素,リン酸,カリウムがあり、これらは、肥料3要素と呼ばれるように、植物の生長のために十分に供給する必要があるが、それとともにCa,Mg,Fe、Mn、Siなどの元素もバランスよく供給しなければ植物が健全に生長しないことは良く知られている。
【0005】
ところで、腐植酸は、上記の栄養元素を含む土壌改良資材や肥料などから栄養元素を可溶化して水に溶けやすい状態にする働きを有すことが知られている。この腐植酸は、腐植酸を含む石炭や亜炭などを酸分解して、すなわち、硝酸または硝酸と硫酸で分解して、抽出されるか(特許文献1)、あるいは、アルカリで抽出される(特許文献2)。このように、腐植酸を含む石炭や亜炭などから酸またはアルカリ処理して抽出された腐植酸は、Ca,Mg,Fe、Mnなどの栄養元素を含む土壌改良資材や肥料などとともに土壌表面に散布されると、水に溶けにくいCa,Mg,Fe、Mnなどの栄養元素は腐植酸の働きで可溶化して、効率よく土壌中に浸透する。
【0006】
【特許文献1】
特開昭62−100495号公報
【特許文献2】
特開平11−157976号公報
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記説明した例では、腐植酸をCa,Mg,Fe、Mnなどの栄養元素を含む土壌改良資材や肥料などとともに土壌表面に散布した直後は、腐植酸の働きでこれらの栄養元素が土壌中に供給されるが、土壌表面に供給された腐植酸やCa,Mg,Fe、Mnなどの栄養元素が雨水などで土壌表面から深部に移動すると、土壌表面やその付近にある腐植酸の濃度やCa,Mg,Fe、Mnなどの栄養元素の濃度は、時間と共に除々に低下する。そのため、作物が生長する期間の間、これらの栄養素を供給するためには、腐植酸をCa,Mg,Fe、Mnなどの栄養元素を含む土壌改良資材や肥料などとともに土壌表面に繰り返し散布する必要がある。しかしながら、これらの作業は大変な労力を要するし、費用もかさむ。
【0008】
本発明は、上記説明した従来技術の問題点を解決するためになされたものであり、その目的は、農業用資材を土壌表面に散布した場合に、農業用資材に含まれる植物の生長を促進するための栄養元素を容易にかつ長期間に渡って安定して土壌中に供給することができる農業用資材を提供することである。
【0009】
【発明を解決するための手段】
上記目的を達成するための本発明に係る一実施形態の農業用資材は、以下の構成を有する。すなわち、腐植酸を含む資材の粉末と、植物の生育に必要な栄養元素を含む資材の粉末と、バインダーとを含み、前記バインダーが前記腐植酸を含む資材の粉末と前記栄養元素を含む資材の粉末とを結合し、略粒状になっていることを特徴とする。
【0010】
ここで、例えば、前記腐植酸を含む資材は、石炭、亜炭、泥炭、褐炭、および草炭のうちの少なくとも1つを含むことを特徴とする。
【0011】
ここで、例えば、前記植物の生育に必要な栄養元素は、カルシウム、鉄、マグネシウム、マンガン、カリウム、リンおよび珪素のうちの少なくとも1つを含むことを特徴とする。
【0012】
ここで、例えば、前記栄養元素はカルシウムであり、前記栄養元素を含む資材の粉末は、炭酸カルシウム肥料、貝化石肥料、苦土石灰肥料および副産石灰肥料を含む石灰質肥料であることを特徴とする。
【0013】
ここで、例えば、前記バインダーは、澱粉のり、または、合成のりを含むことを特徴とする。
【0014】
ここで、例えば、前記腐植酸を含む資材の粉末および前記栄養元素を含む資材の粉末は、それぞれ0.5mm以下の粒径であることを特徴とする。
【0015】
ここで、例えば、前記腐植酸を含む資材の粉末と、前記植物の生育に必要な栄養元素を含む資材の粉末との混合割合が、重量比で10:1〜1:10であることを特徴とする。
【0016】
ここで、例えば、前記農業用資材は、0.5〜4mmの粒径を有し、略粒状であることを特徴とする。
【0017】
上記目的を達成するための本発明に係る一実施形態の農業用資材の製造方法は、以下の構成を有する。すなわち、腐植酸を含む資材を0.5mm以下に粉砕して粉末とする粉砕工程と、植物の生育に必要な栄養元素を含む資材を0.5mm以下に粉砕して粉末とする粉砕工程と、前記腐植酸を含む資材の粉末と、前記植物の生育に必要な栄養元素を含む資材の粉末とを所定の割合で混合する混合工程と、前記混合した粉末にバインダーを含む水溶液を噴霧し、前記混合した粉末を結合して略粒状の農業用資材を製造する製造工程と、を有することを特徴とする。
【0018】
【発明の実施の形態】
発明の実施形態を説明する前に簡単に本発明の概要を説明する。
【0019】
本明細書において、「有機農業用資材」との文言は、有機農業で使用できる肥料または土壌改良資材を含む有機農業用の資材のことであり、「有機」が付加されていない「農業用資材」との文言は、有機農業で使用できる肥料または土壌改良資材を含む有機農業用の資材と、有機農業では使用できないが有機農業以外では使用できる肥料または土壌改良資材を含む資材との両資材を含むもの、すなわち、有機農業に限定されないで使用できる農業用の資材のことである。
【0020】
[発明の概要]
本発明で製造される「農業用資材」は、「腐植酸を含む資材」と、「植物の生育に必要な栄養元素を含む資材」とを「バインダー」を用いて結合し造粒して略粒状としたものであり、農業用の肥料または土壌改良資材として使用することができる。この農業用資材は土壌表面に散布された後、水が散布されたり降雨があると農業用資材に含まれる腐植酸は溶出する。この際に、溶出した腐植酸が栄養元素(例えば、カルシウムなど)と接触すると、腐植酸はその栄養元素を可溶化してその溶出を促進する。そのため農業用資材中のカルシウムなどの成分は溶けだして土壌中に浸透する。また、農業用資材に含まれる腐植酸は、水が散布されたときや降雨のときなどに徐々に溶出するため、本農業用資材は長期間に渡って栄養元素を土壌中に浸透させることができる。その結果、本農業用資材は植物の根の生長にあわせて必要な栄養元素を土壌中の広範囲に渡って、長期間に供給することができる。
【0021】
以下に図面を参照して、本発明に係る好適な実施形態である、腐植酸と植物の生育に必要な栄養元素とを含む農業用資材の一例として、腐植酸とCa元素を含む農業用資材を例にとり、農業用資材に含まれる腐植酸がCa元素の土壌浸透性を長期間に渡って改善できることを詳しく説明する。ただし、この実施形態に記載されている構成要素、数値などは、特に特定的な記載がない限りは、この発明をそれらのみに限定する趣旨のものではない。
【0022】
[原料]
<腐植酸を含む資材>
腐植酸はフミン酸とも呼ばれ、土壌中の有機質や石炭質の大部分を形成している。「腐植酸を含む資材」としては、石炭をはじめとして、泥炭、亜炭、褐炭、瀝青炭および草炭等があげられる。亜炭や褐炭は泥炭と瀝青炭の中間の性質を示し、褐炭は亜炭より地質学的に若く、石炭化の程度が低いものである。腐植酸は、土壌または低石炭化度の石炭質中に存在するアルカリ可溶で、酸に不溶の褐色から黒色の無定型酸性有機物であり、その元素組成は、炭素50〜65%、水素3〜6%、窒素分1.5〜6%、硫黄1%以下、残部の大部分は酸素であるが、その化学構造は不明であり、ベンゼン、ナフタリン、ピリジン、アントラセンなどの多価フェノール形の芳香族化合物と含窒素化合物との縮合物である。
【0023】
本実施形態で使用する「腐植酸を含む資材」としては、上記説明した腐植酸を含む石炭、泥炭、亜炭、褐炭、瀝青炭および草炭などを用いることができる。ただし、これらの腐植酸を含む石炭や亜炭などを有機農業用資材の「腐植酸を含む資材」の原料として使用する場合には、酸処理やアルカリ処理をしていない石炭や亜炭などを使用する。
【0024】
なお、腐植酸を含む石炭や亜炭などを農業用資材の「腐植酸を含む資材」の原料として使用する場合には、上記説明した酸あるいはアルカリ処理していない石炭などや、石炭などを酸あるいはアルカリ処理して得られる腐植酸なども使用することができる。
【0025】
これらを「腐植酸を含む資材」として使用する時には、予め0.5mm以下に粉砕して用いるのが好ましい。これは、本実施形態の農業用資材を土壌表面に散布したときに、農業用資材に含まれる「腐植酸を含む資材」から腐植酸が長期間に渡って容易に溶出し、溶出した腐植酸が農業用資材に含まれる栄養元素とよく接触して栄養元素の可溶化を促進するからである。
【0026】
<植物の生育に必要な栄養元素を含む資材>
本実施形態で使用する「植物の生育に必要な栄養元素を含む資材」とは、植物の生育に必要な栄養元素であるCa、Mg、Fe、Mn、Si、P、Kなどの成分を含む資材である。
【0027】
これらの栄養元素を含む資材のなかで、有機農業用資材の「植物の生育に必要な栄養元素を含む資材」の原料として使用できる資材を図1に示す。図1は、有機農業で使用できる肥料または土壌改良資材の例であり、図1の中から必要な栄養元素を含むものを選択して使用すればよい。例えば、図1の塩基性スラグ鉱さいケイ酸肥料(以下、鉱さいと呼ぶ)には、図2の鉱さいの種類と成分からわかるように、Fe、Ca、Mg、Mnなどの植物の生育に必要な栄養元素が含まれている。鉱さいは、鉱石を炉で精錬し、または、粗金属を乾式で精製する場合に脈石又は不純物が融剤と結合して目的物から分離したものであり、製鉄溶鉱炉の鉱さい中には、CaO、MgO、MnO2などの栄養元素が多く含まれ、転炉、製鋼用塩基性平戸や銅溶鉱炉の鉱さい中には、FeO、CaO、MgO、MnO2などの栄養元素が多く含まれている。
【0028】
なお、「植物の生育に必要な栄養元素を含む資材」を農業用資材の原料として使用する場合には、図1に示した有機農業で使用できる肥料または土壌改良資材や、上記栄養元素を含む化学合成された肥料や土壌改良資材をも使用することができる。例えば、栄養元素がCaの場合には、炭酸カルシウム肥料、貝化石肥料、苦土石灰肥料および副産石灰肥料などの石灰質肥料などを使用できる。また、栄養元素がCa以外の他の元素の場合もそれらの栄養元素を含む天然のまたは化学合成された各種肥料や土壌改良資材を使用できる。
【0029】
これらを「植物の生育に必要な栄養元素を含む資材」として使用するときには、予め0.5mm以下となるように粉砕して使用するのが好ましい。これは、「腐植酸を含む資材」と「植物の生育に必要な栄養元素を含む資材」とが農業用資材中でよく接触できるように接触面積を増やすためである。
【0030】
<バインダー>
本実施形態で使用するバインダーとしては、「腐植酸を含む資材」と「植物の生育に必要な栄養元素を含む資材」とを結合し、所定径を有する略粒状体の農業用資材を形成することができ、かつ、植物の生長を阻害しないものであればどのようなものでも使用することができる。
【0031】
ただし、有機農業用資材のバインダーとして使用する場合には、天然のバインダー、例えば、澱粉類を水などで練り、場合によっては加熱して作られた天然の澱粉のり、製糖鉱業の副産物である廃糖蜜、アルコール発酵の廃液などをバインダとして使用する。
【0032】
なお、農業用資材のバインダーとして使用する場合には、上記説明した天然のバインダーや、カルボキシメチルセルロースやポリビニルアルコールなどの合成のりや、製紙工業の副産物であるリグニンスルフォン酸塩なども使用することができる。
【0033】
バインダーは所定量の水にとかして所定濃度としたバインダー溶液として、撹拌造粒装置に供給されるが、バインダー溶液中のバインダー濃度やバインダー溶液の供給量は、造粒する粒の粒径や結合強度に応じて適時決定される。
【0034】
[農業用資材の製造方法]
次に、農業用資材の製造方法を図4を用いて説明する。
【0035】
<原料の選択工程>
(有機農業用資材の原料)
▲1▼腐植酸を含む資材
「腐植酸を含む資材」の原料としては、酸やアルカリ処理しない石炭、泥炭、亜炭、褐炭、瀝青炭および草炭などを使用することができる。上記の石炭などに含まれる腐植酸の量は種々のものがあるので、使用条件に適した特性を有するものを選択する。
【0036】
▲2▼植物の生育に必要な栄養元素を含む資材
「植物の生育に必要な栄養元素を含む資材」の原料としては、図1に示す有機農業で使用できる肥料または土壌改良資材を使用することができる。図1に示した肥料または土壌改良資材に含まれる栄養元素はまちまちなので、使用目的に適した栄養元素を含むものを選択する。
【0037】
▲3▼バインダー
バインダーとしては、天然の澱粉のり、廃糖蜜、アルコール発酵の廃液などを使用できるので、有機農業用資材が所定の粒径や強度を有するようなものをバインダーとして選択する。
【0038】
(農業用資材の原料)
▲1▼腐植酸を含む資材
「腐植酸を含む資材」の原料としては、酸やアルカリ処理しない石炭、泥炭、亜炭、褐炭、瀝青炭および草炭などや、石炭などを酸またはアルカリ処理した腐植酸等の中から使用条件に適した特性を有するものを選択する。
【0039】
▲2▼植物の生育に必要な栄養元素を含む資材
「植物の生育に必要な栄養元素を含む資材」としては、図1に示す有機農業で使用できる肥料または土壌改良資材や、必要な栄養元素を含む化学合成されたものも使用できるので、使用目的に適した栄養元素を含むものを選択する。
【0040】
▲3▼バインダー
バインダーとしては、天然の澱粉のり、廃糖蜜、アルコール発酵の廃液や、リグニンスルフォン酸塩、カルボキシメチルセルロースやポリビニルアルコールなどの合成のりを使用することができるので、農業用資材が所定の粒径や強度を有するようなものをバインダーとして選択する。
【0041】
<原料の粉砕工程>
次の原料の粉砕工程では、原料の選択工程で選択された原料である「腐植酸を含む資材」と「植物の生育に必要な栄養元素を含む資材」は、所定の粒径となるようにそれぞれ粉砕され、続いて分級される。各資材の粉砕には、例えば、転動ミルなどの粉砕機を使用することができる。また、粉砕した各資材の分級にはふるい分け装置などの分級装置を使用することができる。本実施形態では、各資材は、例えば、それぞれ0.5mmのふるいを通過する程度まで粉砕する。
【0042】
<混合工程>
次の混合工程では、原料の粉砕工程で粉砕され分級された「腐植酸を含む資材」と「植物の生育に必要な栄養元素を含む資材」とを、好適な配合で混合する。「腐植酸を含む資材」と「植物の生育に必要な栄養元素を含む資材」とは、配合比率が重量比で、好ましくは、10:1〜1:10、より好ましくは、5:1〜1:5となるように混合される。この混合比は、含まれる腐植酸と栄養元素との量をどのような割合とするかによって決定され、例えば、含まれる栄養元素をより多くしたい場合には腐植酸を含む資材に対する栄養元素を含む資材の割合を増すように配合される。
【0043】
図3に、有機農業用資材および農業用資材の配合の一例を示す。有機農業用資材の配合例では、「腐植酸を含む資材」として亜炭を、「植物の生育に必要な栄養元素を含む資材」として鉱さいを用いた場合の好適な配合比率が重量比で10:1〜1:10であり、より好適な配合が5:1〜1:5であり、最適な配合が1:4である。また、農業用資材の配合例では、「腐植酸を含む資材」として亜炭を、「植物の生育に必要な栄養元素を含む資材」として有機農業では使用できない合成した石灰質肥料を用いた場合の好適な配合比率が重量比で10:1〜1:10であり、より好適な配合が6:1〜1:6であり、最適な配合が1:5である。
【0044】
<造粒工程>
次の造粒工程では、混合工程で所定の配合比率で混合された各資材は、撹拌造粒装置、例えば、回転円筒型、回転皿形、ミキサー型などの撹拌造粒装置に入れられ、撹拌造粒装置を回転しながら、所定濃度のバインダー溶液を混合された各資材上に噴霧などして、所定の配合比率で混合された各資材をバインダーで結合させながら造粒して略粒状の所定粒径を有する農業用資材あるいは農業用資材を製造する。造粒された粒の粒径は、土壌に散布するのに適した大きさであればよいが、好適には0.5〜4mm、より好適には2〜3mmである。なお、バインダー液は原料の選択工程で選択されたバインダーを水にとかして所定濃度としたものであり、撹拌造粒装置に供給されるバインダー液の濃度や供給量は、造粒する粒の粒径や結合強度に応じて適時決定される。
【0045】
【実施例】
<実施例1>
次に図4で説明した製造方法で製造した有機農業用資材(以下、本発明品1と称す)の施肥効果の一例として有機農業用資材を散布した場合のトマトの生育結果を図5に示す。
【0046】
なお、実施例1では、本発明品1の原料として、「腐植酸を含む資材」として酸やアルカリ処理していない亜炭を、「植物の生育に必要な栄養元素を含む資材」として有機農業で使用できる鉱さいを、バインダーとして有機農業で使用できるトウモロコシの澱粉であるコーンスターチを用いた。
【0047】
また、粉砕した亜炭及び鉱さいは、0.5mmのふるいに通過した0.5mm以下のものをそれぞれ使用し、亜炭:鉱さいの比を重量で1:4となるようにして混合したものに、コーンスターチの水溶液をバインダーとして噴霧器で噴霧しながら通常の撹拌造粒装置を用いて造粒し、1〜4mmの粒状の有機農業用資材(本発明品1)を得た。
【0048】
次に、1/5000アールのワグネルポットに育苗培土を充填し、本発明品1を100、150、200Kg/10アールの処理量で混和処理した後、この本発明品1を含む育苗培土に、予め通常の培養土で播種から20日間生育させたトマトの苗を移植した。そして、本発明品1を含む育苗培土で50日間生育させた後でトマトの茎葉部と根部を分離し、分離した各試料を105℃で乾燥させてから各重量(乾物重量)を測定した。その結果を図5に示す。
【0049】
なお比較のために、育苗培土のみからなる1/5000アールのワグネルポットに、予め通常の培養土で播種から20日間生育させたトマトの苗を移植し、さらに50日間生育させた後でトマトの茎葉部と根部を分離し、分離した各試料を105℃で乾燥させてから各重量(乾物重量)を測定した結果を図5にあわせて示した。
【0050】
図5より、本発明品1を添加した育苗培土で生育したトマトの茎葉部および根部の乾物重量は、本発明品1を添加しないで生育したトマトの乾物重量(茎葉部8.76g/株、根部1.44g/株)に比べてどちらも重かった。また、本発明品1を添加した育苗培土を比較すると、本発明品1の添加量の増加と共に生育したトマトの茎葉部の乾物重量および根部の乾物重量もそれぞれ増加した。このことから、育苗培土中均一に混合された有機農業用資材(本発明品1)は、トマトの生育に有効であること、および、上記の添加量の範囲では、有機農業用資材(本発明品1)の畑地への添加量が多いほど施肥効果が大きいことがわかった。
【0051】
<実施例2>
実施例2では、実施例1で使用した本発明品1を土壌表面に散布した場合に、本発明品1に含まれるカルシウム、マグネシウム、鉄成分が、土壌深部まで浸透するか否かを、また、土壌中に浸透するカルシウム、マグネシウム、鉄成分は長期間に渡って土壌中に供給されるか否かを調べる。すなわち、実施例2では、土壌表面に散布された本発明品1に含まれるカルシウム、マグネシウム、鉄成分がどの程度溶出するか、溶出したカルシウム、マグネシウム、鉄成分はどの程度の土壌深部まで浸透するか、土壌中に浸透するカルシウムやマグネシウム成分は長期間に渡って供給されるか否かを調べる。
【0052】
そのため、実施例2では、所定量の本発明品1を畑地(土壌)の表面に散布し、所定期間放置した後、土壌の表層より0〜10cmの深さ(第1測定点)、表層より10〜20cmの深さ(第2測定点)、表層より20〜30cmの深さ(第3測定点)の3点で土壌を採取し、土壌中に含まれるカルシウムやマグネシウム成分を測定することとした。
【0053】
また、実施例2では、本発明品1の効果を比較する2つの試験をあわせて行った。すなわち、第1比較試験では、土壌表面に本発明品1を散布しない場合(以下、無処理と呼ぶ)に、土壌中に含まれているカルシウム、マグネシウム、鉄成分の濃度を調べることにより、土壌中に予め含まれているカルシウム、マグネシウム、鉄成分の濃度(以下、基準濃度と呼ぶ)を調べた。このため、第1比較試験では、実施例2の試験条件とほぼ同一にするため、実施例2で使用する畑地の隣の畑地を用いた。
【0054】
第2比較試験では、本発明品1に含まれる腐植酸がカルシウム、マグネシウム、鉄成分の溶出を促進するか否かを調べるために、比較処理として、本発明品1の製造原料である鉱さいを、本発明品1に含まれる量だけ土壌表面に散布し、土壌中に含まれているカルシウム、マグネシウム、鉄成分の濃度を調べた。このため、第2比較試験では、実施例2の試験条件とほぼ同一にするため、実施例2で使用する畑地の隣の畑地を用いた。
【0055】
実施例2、第1比較試験および第2比較試験で得られた土壌中に含まれるカルシウムやマグネシウム成分の測定は、採取した土壌を1N酢酸アンモニウム溶液と混合し、1N酢酸アンモニウム溶液に抽出される置換性カルシウム、マグネシウム、鉄濃度を土壌中に含まれるカルシウム、マグネシウム、鉄成分とした。この抽出された置換性カルシウム、マグネシウム、鉄は、土壌中に含まれるカルシウム、マグネシウム、鉄成分のうちで、植物に吸収されやすく植物の生長に役立つ有効成分である。
【0056】
実施例2の試験結果例を図6に示す。図6は、土壌中に含まれるカルシウム、マグネシウムおよび鉄成分の分布を示すものであり、上記説明した実験条件の一例として、畑地として黒ボク土壌の畑地を、本発明品1の散布量として、150Kg/10アールの処理量を、放置期間として5ヶ月を用いた例である。なお、図には示さなかったが、本発明品1の散布量や放置期間を変更しても図6と類似する傾向を示す試験結果が得られた。
【0057】
図6の試験結果をまとめると以下の通りである。
【0058】
[カルシウム成分(置換性塩基カルシウム)について]
1)第1比較試験より、無処理の黒ボク土壌の畑地には、カルシウム成分が3.3mg/100g土壌程度存在し、かつ、表層〜土壌30cmまでほぼ均一に存在する。
【0059】
2)第2比較試験より、鉱さいのみ散布した黒ボク土壌の畑地には、カルシウム成分が無処理の場合(第1比較試験)に比べて多く存在する。
【0060】
3)実施例2より、本発明品1を散布した黒ボク土壌の畑地には、カルシウム成分が鉱さいのみ散布した場合(第2比較試験)に比べて多く存在する。
【0061】
以上の結果より、畑地に鉱さいを散布すると土壌中のカルシウム成分は増加するが、畑地に本発明品1を散布すると土壌中のカルシウム成分は鉱さいを単独で散布した場合に比べてさらに増加することが分かる。また、鉱さいを単独で散布した場合に比べて本発明品1を散布したときに見られる土壌中のカルシウム成分の増加は、5ヶ月後でも持続していることが分かる。これは、本発明品1中に含まれる腐植酸が長期間に渡って徐々に溶出し、この溶出した腐植酸が鉱さい中に含まれるカルシウム成分の溶出を促進したためである。
【0062】
[マグネシウム成分(置換性塩基マグネシウム)について]
1)第1比較試験より、無処理の黒ボク土壌の畑地には、マグネシウム成分が0.4mg/100g土壌程度存在し、かつ、表層〜土壌30cmまでほぼ均一に存在する。
【0063】
2)第2比較試験より、鉱さいのみ散布した黒ボク土壌の畑地には、マグネシウム成分が無処理の場合(第1比較試験)に比べて多く存在する。
【0064】
3)実施例2より、本発明品1を散布した黒ボク土壌の畑地には、マグネシウム成分が鉱さいのみ散布した場合(第2比較試験)に比べて多く存在する。
【0065】
以上の結果より、畑地に鉱さいを散布すると土壌中のマグネシウム成分は増加するが、畑地に本発明品1を散布すると土壌中のマグネシウム成分は鉱さいを単独で散布した場合に比べてさらに増加することが分かる。また、鉱さいを単独で散布した場合に比べて本発明品1を散布したときに見られる土壌中のマグネシウム成分の増加は、5ヶ月後でも持続していることが分かる。これは、本発明品1中に含まれる腐植酸が長期間に渡って徐々に溶出し、この溶出した腐植酸が鉱さい中に含まれるマグネシウム成分の溶出を促進したためである。
【0066】
[鉄成分(置換性鉄)について]
1)第1比較試験より、無処理の黒ボク土壌の畑地には、鉄成分が0.1mg/100g土壌程度存在し、かつ、表層〜土壌30cmまでほぼ均一に存在する。
【0067】
2)第2比較試験より、鉱さいのみ散布した黒ボク土壌の畑地には、鉄成分が無処理の場合(第1比較試験)に比べて多く存在する。
【0068】
3)実施例2より、本発明品1を散布した黒ボク土壌の畑地には、マグネシウム成分が鉱さいのみ散布した場合(第2比較試験)に比べて同等または多く存在する。
【0069】
以上の結果より、畑地に鉱さいを散布すると土壌中の鉄成分は増加するが、畑地に本発明品1を散布すると土壌中の鉄成分は鉱さいを単独で散布した場合に比べてさらに増加することが分かる。また、鉱さいを単独で散布した場合に比べて本発明品1を散布したときに見られる土壌中の鉄成分の増加は、5ヶ月後でも持続していることが分かる。これは、本発明品1中に含まれる腐植酸が長期間に渡って徐々に溶出し、この溶出した腐植酸が鉱さい中に含まれる鉄成分の溶出を促進したためである。
【0070】
<実施例3>
次に、図4で説明した製造方法で製造した有機農業では使用できない資材(以下、本発明品2と称す)の施肥効果の一例として本資材を散布した場合のトマトの生育結果を図7に示す。
【0071】
なお、実施例3では、本発明品2の原料には、「腐植酸を含む資材」として亜炭を、「植物の生育に必要な栄養元素を含む資材」として合成されたマグネシウムの酸化物を含む炭酸カルシウム材料を、バインダーとしてトウモロコシの澱粉であるコーンスターチを用いた。
【0072】
また、粉砕した亜炭及びマグネシウムの酸化物を含む炭酸カルシウム材料は、0.5mmのふるいに通過した0.5mm以下のものをそれぞれ使用し、亜炭:炭酸カルシウム材料の比を重量で1:5となるようにして混合したものに、コーンスターチの水溶液をバインダーとして噴霧器で噴霧しながら通常の撹拌造粒装置を用いて造粒し、1〜4mmの粒状の本発明品2を得た。
【0073】
次に、1/5000アールのワグネルポットに育苗培土を充填し、本発明品2を100、150、200Kg/10アールの処理量で混和処理した後、この本発明品2を含む育苗培土に、予め通常の培養土で播種から20日間生育させたトマトの苗を移植した。そして、本発明品1を含む育苗培土で50日間生育させた後でトマトの茎葉部と根部を分離し、分離した各試料を105℃で乾燥させてから各重量(乾物重量)を測定した。その結果を図7に示す。
【0074】
なお比較のために、育苗培土のみからなる1/5000アールのワグネルポットに、予め通常の培養土で播種から20日間生育させたトマトの苗を移植し、さらに50日間生育させた後でトマトの茎葉部と根部を分離し、分離した各試料を105℃で乾燥させてから各重量(乾物重量)を測定した結果を図7にあわせて示した。
【0075】
図7より、本発明品2を添加した育苗培土で生育したトマトの茎葉部および根部の乾物重量は、本発明品2を添加しないで生育したトマトの乾物重量(茎葉部8.76g/株、根部1.44g/株)に比べてどちらも重かった。また、本発明品2を添加した育苗培土を比較すると、本発明品2の添加量の増加と共に生育したトマトの茎葉部の乾物重量および根部の乾物重量もそれぞれ増加した。このことから、育苗培土中に均一に混合された本発明品2は、トマトの生育に有効であること、および、上記の添加量の範囲では、本発明品2の畑地への添加量が多いほど施肥効果が大きいことがわかった。
【0076】
<実施例4>
実施例4では、実施例3で使用した有機農業では使用できない資材(本発明品2)を土壌表面に散布した場合に、本発明品2に含まれるカルシウムやマグネシウム成分が、土壌深部まで浸透するか否かを、また、土壌中に浸透するカルシウムやマグネシウム成分は長期間に渡って土壌中に供給されるか否かを調べる。すなわち、実施例4では、土壌表面に散布された本発明品2に含まれるカルシウムやマグネシウム成分がどの程度溶出するか、溶出したカルシウムやマグネシウム成分はどの程度の土壌深部まで浸透するか、土壌中に浸透するカルシウムやマグネシウム成分は長期間に渡って供給されるか否かを調べる。
【0077】
そのため、実施例4では、所定量の本発明品2を畑地(土壌)の表面に散布し、所定期間放置した後、土壌の表層より0〜10cmの深さ(第1測定点)、表層より10〜20cmの深さ(第2測定点)、表層より20〜30cmの深さ(第3測定点)の3点で土壌を採取し、土壌中に含まれるカルシウムやマグネシウム成分を測定することとした。
【0078】
また、実施例4では、本発明品2の効果を比較する2つの試験を行った。第1比較試験では、土壌表面に本発明品2を散布しない場合(以下、無処理と呼ぶ)に、土壌中に含まれているカルシウムやマグネシウム成分の濃度を調べることにより、土壌中に予め含まれているカルシウムやマグネシウム成分の濃度(以下、基準濃度と呼ぶ)を調べた。このため、第1比較試験では、実施例4の試験条件とほぼ同一にするため、実施例4で使用する畑地の隣の畑地を用いた。
【0079】
第2比較試験では、本発明品2に含まれる腐植酸がカルシウムやマグネシウム成分の溶出を促進するか否かを調べるために、比較処理として、本発明品2の製造原料である炭酸カルシウム材料(マグネシウムを含む)を、本発明品2に含まれる量だけ土壌表面に散布し、土壌中に含まれているカルシウムやマグネシウム成分の濃度を調べた。このため、第2比較試験では、実施例4の試験条件とほぼ同一にするため、実施例4で使用する畑地の隣の畑地を用いた。
【0080】
実施例4、第1比較試験および第2比較試験で得られた土壌中に含まれるカルシウムやマグネシウム成分の測定は、採取した土壌を1N酢酸アンモニウム溶液と混合し、1N酢酸アンモニウム溶液に抽出される置換性カルシウムとマグネシウム濃度を土壌中に含まれるカルシウムやマグネシウム成分とした。この抽出された置換性カルシウムとマグネシウムは、土壌中に含まれるカルシウムやマグネシウム成分のうちで、植物に吸収されやすく植物の生長に役立つ有効成分である。
【0081】
実施例4の試験結果例を図8に示す。図8は、土壌中に含まれるカルシウム、およびマグネシウム成分の分布を示すものであり、上記説明した実験条件の一例として、畑地として黒ボク土壌の畑地を、本発明品2の散布量として、150Kg/10アールの処理量を、放置期間として5ヶ月を用いた例である。なお、図には示さなかったが、本発明品2の散布量や放置期間を変更しても図8と類似する傾向を示す試験結果が得られた。
【0082】
図8の試験結果をまとめると以下の通りである。
【0083】
[カルシウム成分(置換性塩基カルシウム)について]
1)第1比較試験より、無処理の黒ボク土壌の畑地には、カルシウム成分が3.3mg/100g土壌程度存在し、かつ、表層〜土壌30cmまでほぼ均一に存在する。
【0084】
2)第2比較試験より、炭酸カルシウム材料のみ散布した黒ボク土壌の畑地には、カルシウム成分が無処理の場合(第1比較試験)に比べて多く存在する。
【0085】
3)実施例4より、本発明品2を散布した黒ボク土壌の畑地には、カルシウム成分が炭酸カルシウム材料のみ散布した場合(第2比較試験)に比べて多く存在する。
【0086】
以上の結果より、畑地に炭酸カルシウム材料を散布すると土壌中のカルシウム成分は増加するが、畑地に本発明品2を散布すると土壌中のカルシウム成分は炭酸カルシウム材料を単独で散布した場合に比べてさらに増加することが分かる。また、畑地に炭酸カルシウム材料を単独で散布した場合に比べて本発明品2を散布したときに見られる土壌中のマグネシウム成分の増加は、5ヶ月後でも持続していることが分かる。これは、本発明品2中に含まれる腐植酸が長期間に渡って徐々に溶出し、この溶出した腐植酸が炭酸カルシウム材料中に含まれるカルシウム成分の溶出を促進したためである。
【0087】
[マグネシウム成分(置換性塩基マグネシウム)について]
1)第1比較試験より、無処理の黒ボク土壌の畑地には、マグネシウム成分が0.4mg/100g土壌程度存在し、かつ、表層〜土壌30cmまでほぼ均一に存在する。
【0088】
2)第2比較試験より、炭酸カルシウム材料のみ散布した黒ボク土壌の畑地には、マグネシウム成分が無処理の場合(第1比較試験)に比べて多く存在する。
3)実施例2より、本発明品2を散布した黒ボク土壌の畑地には、マグネシウム成分が炭酸カルシウム材料(マグネシウムを含む)のみ散布した場合(第2比較試験)に比べて多く存在する。
【0089】
以上の結果より、畑地にマグネシウムの酸化物を含む炭酸カルシウム材料を含む)を散布すると土壌中のマグネシウム成分は増加するが、畑地に本発明品2を散布すると土壌中のマグネシウム成分はマグネシウムの酸化物を含む炭酸カルシウム材料を単独で散布した場合に比べてさらに増加することが分かる。また、マグネシウムの酸化物を含む炭酸カルシウム材料を単独で散布した場合に比べて本発明品2を散布したときに見られる土壌中のマグネシウム成分の増加は、5ヶ月後でも持続していることが分かる。これは、本発明品2中に含まれる腐植酸が長期間に渡って徐々に溶出し、この溶出した腐植酸がマグネシウムの酸化物を含む炭酸カルシウム材料中に含まれるマグネシウム成分の溶出を促進したためである。
【0090】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明の農業用資材は、腐植酸を含む資材と、植物の生育に必要な栄養元素を含む資材とを含む。この腐植酸は栄養元素の溶出を促進するため、農業用資材を土壌表面に散布した場合に、その中に含まれる植物の生長を促進するための栄養元素を容易にかつ長期間に渡って安定して土壌中に供給することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】有機農業で使用できる肥料または土壌改良資材を説明する図である。
【図2】鉱さいの成分の一例を説明する図である。
【図3】本発明の農業用資材の種類、成分、粒径の一例を示す図である。
【図4】本発明の農業用資材の製造方法の一例を説明する図である。
【図5】本発明の有機農業用資材をトマトの生育用に用いた場合の効果の一例を説明する図である。
【図6】本発明の有機農業用資材を土壌表面に散布した後で5ヶ月間放置した場合の土壌中に含まれるカルシウムとマグネシウム成分の分布を調べた結果の一例を説明する図である。
【図7】本発明の有機農業に限定されない農業用資材をトマトの生育用に用いた場合の効果の一例を説明する図である。
【図8】本発明の有機農業に限定されない農業用資材を土壌表面に散布した後で5ヶ月間放置した場合の土壌中に含まれるカルシウムとマグネシウム成分の分布を調べた結果の一例を説明する図である。
Claims (9)
- 腐植酸を含む資材の粉末と、
植物の生育に必要な栄養元素を含む資材の粉末と、
バインダーとを含み、
前記バインダーが前記腐植酸を含む資材の粉末と前記栄養元素を含む資材の粉末とを結合し、略粒状になっていることを特徴とする農業用資材。 - 前記腐植酸を含む資材は、石炭、亜炭、泥炭、褐炭、および草炭のうちの少なくとも1つを含むことを特徴とする請求項1に記載の農業用資材。
- 前記植物の生育に必要な栄養元素は、カルシウム、鉄、マグネシウム、マンガン、カリウム、リンおよび珪素のうちの少なくとも1つを含むことを特徴とする請求項1に記載の農業用資材。
- 前記栄養元素はカルシウムであり、前記栄養元素を含む資材の粉末は、炭酸カルシウム肥料、貝化石肥料、苦土石灰肥料および副産石灰肥料を含む石灰質肥料であることを特徴とする請求項1に記載の農業用資材。
- 前記バインダーは、澱粉のり、または、合成のりを含むことを特徴とする請求項1に記載の農業用資材。
- 前記腐植酸を含む資材の粉末および前記栄養元素を含む資材の粉末は、それぞれ0.5mm以下の粒径であることを特徴とする請求項1に記載の農業用資材。
- 前記腐植酸を含む資材の粉末と、前記植物の生育に必要な栄養元素を含む資材の粉末との混合割合が、重量比で10:1〜1:10であることを特徴とする請求項1に記載の農業用資材。
- 前記農業用資材は、0.5〜4mmの粒径を有し、略粒状であることを特徴とする請求項1に記載の農業用資材。
- 腐植酸を含む資材を0.5mm以下に粉砕して粉末とする粉砕工程と、
植物の生育に必要な栄養元素を含む資材を0.5mm以下に粉砕して粉末とする粉砕工程と、
前記腐植酸を含む資材の粉末と、前記植物の生育に必要な栄養元素を含む資材の粉末とを所定の割合で混合する混合工程と、
前記混合した粉末にバインダーを含む水溶液を噴霧し、前記混合した粉末を結合して略粒状の農業用資材を製造する製造工程と、
を有することを特徴とする農業用資材の製造方法。
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