JP2004265669A - 加熱装置 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】磁束発生手段5・6と、磁束発生手段の発生磁束の作用により電磁誘導発熱する誘導発熱体7を有し、加熱部Nにおいて磁束発生手段から誘導発熱体に対する作用磁束の、被加熱材の搬送方向Cに交差する加熱部長尺方向に関する密度分布を変化せしめる磁束調整手段を備え、加熱部に被加熱材Sを導入搬送させて誘導発熱体の熱により被加熱材を加熱する加熱装置において、磁束発生手段を保持する保持部材2と磁束調整手段である磁束遮蔽部材3を有し、保持部材の長手方向の両端部に設けられた支持部2a・2bにて磁束遮蔽部材を回動可能に支持させる。
【選択図】図1
Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、例えば、複写機・プリンタ・ファクシミリなどの画像情報記録装置(画像形成装置)において未定着画像を加熱・加圧定着させるための画像加熱定着装置として用いて好適な、特に電磁(磁気)誘導加熱方式の加熱装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
電子写真複写機・プリンタ・ファクシミリ等の画像形成装置に搭載される画像加熱定着装置を例にして説明する。
【0003】
画像形成装置における画像加熱定着装置は、画像形成装置の作像部において電子写真・静電記録・磁束記録等の適宜の画像形成プロセス手段により、加熱溶融性の樹脂等よりなるトナー(顕画剤)を用いて被加熱材としての記録材の面に直接方式若しくは間接(転写)方式で形成した未定着のトナー画像を記録材面に永久固着画像として加熱定着処理する装置である。
【0004】
従来、そのような画像加熱定着装置として、熱ローラ方式、フィルム加熱方式、電磁誘導加熱方式等の各種装置がある。
【0005】
a.熱ローラ方式
これは、ハロゲンランプ等の熱源を内蔵させて所定の定着温度に加熱・温調した定着ローラ(熱ローラ)と加圧ローラとの回転ローラ対からなり、該ローラ対の圧接ニップ部(定着ニップ部)に被加熱材としての、未定着トナー画像を形成担持させた記録材を導入して挟持搬送させることで未定着のトナー画像を記録材面に加熱定着する装置である。
【0006】
しかしながら、この装置は定着ローラの熱容量が大きくて、加熱に要する電力が大きい、ウエイトタイム(装置電源投入時からプリント出力可能状態になるまでの待ち時間)が長い等の問題があった。また、定着ローラの熱容量が大きいため、限られた電力で定着ニップ部の温度を上昇させるためには大きな電力を必要とするという問題があった。
【0007】
その対策としては、定着ローラの肉厚を薄くして、定着ローラの熱容量を低減することが行われる。しかし、薄す過ぎると強度不足となる。さらに、後述するフィルム定着と同様に非通紙部昇温の問題が発生する。
【0008】
b.フィルム加熱方式
これは、加熱体と、一方の面がこの加熱体と摺動し他方の面が記録材と接して移動するフィルムを有し、加熱体の熱をフィルムを介して記録材に付与して未定着のトナー画像を記録材面に加熱定着処理する装置である(例えば、特許文献1〜16参照)。
【0009】
このようなフィルム加熱方式の装置は、加熱体として低熱容量のセラミックヒータ等を、フィルムとして耐熱性で薄い低熱容量のものを用いることができて、熱容量が大きい定着ローラを用いる熱ローラ方式の装置に比べて格段に省電力化・ウエイトタイム短縮化が可能となり、クイックスタート性があり、また機内昇温を抑えることができる等の利点がある。
【0010】
c.電磁誘導加熱方式
これは加熱体として電磁誘導発熱体を用い、該電磁誘導発熱体に磁場発生手段で磁場を作用させて該電磁誘導発熱体に発生する渦電流に基づくジュール発熱で被加熱材としての記録材に熱を付与して未定着のトナー画像を記録材面に加熱定着処理する装置である。
【0011】
この種の装置として、例えば、特許文献17には、強磁性体の定着ローラを電磁誘導加熱する熱ローラ方式の装置が開示されており、発熱位置を定着ニップ部に近くすることができ、ハロゲンランプを熱源として用いた熱ローラ方式の装置よりも高効率の定着プロセスを達成している。
【0012】
しかしながら、定着ローラの熱容量が大きいため、限られた電力で定着ニップ部の温度を上昇させるためには大きな電力を必要とするという問題があった。定着ローラの熱容量を低減することが、この問題の一つの解決方法である。たとえば、定着ローラの肉厚を薄くすることである。
【0013】
また、例えば、特許文献18には、熱容量を低減したフィルム状の定着ローラ(フィルム)を用いた電磁誘導加熱方式の定着装置が開示されている。
【0014】
しかしながら、熱容量を低減したフィルム状の定着ローラ(フィルム)では、長尺方向(定着ニップ部長手方向)の熱流が阻害されるため、小サイズ記録材を通紙した場合に非通紙部での過昇温(非通紙部昇温)が発生して、フィルムや加圧ローラの寿命を低下させるという問題が発生していた。この非通紙部昇温の問題は前記b項のフィルム加熱方式の装置の場合も同様である。
【0015】
また、例えば、特許文献19・20に、定着ローラ(フィルム)の長手方向に関する磁束発生手段から誘導発熱体に対する作用磁束の密度分布を変化せしめる磁束調整手段を有することを特徴とする加熱装置が開示されている。この電磁誘導加熱方式の定着装置により、非通紙部昇温を解決する一つの方法が示された。
【0016】
上記特許文献19・20はフィルム状の誘導発熱体を加熱させた構成を実施例としているが、円筒状の誘導発熱体を定着ローラにした構成に対しても非通紙部昇温の問題の対策として効果があると考えられる。
【0017】
その他の非通紙部昇温を解決する方法としては、小サイズ記録材を通紙したときに定着スピードを遅くする方法もある(スループットダウン)。定着スピードを遅くすることで、定着ローラの端部方向(非通紙部)への熱移動時間を設けている。しかし、この方法では画像形成装置の生産性を低下することになっている。
【特許文献1】
特開昭63−313182号公報
【特許文献2】
特開平2−157878号公報
【特許文献3】
特開平4−44075号公報
【特許文献4】
特開平4−44076号公報
【特許文献5】
特開平4−44077号公報
【特許文献6】
特開平4−44078号公報
【特許文献7】
特開平4−44079号公報
【特許文献8】
特開平4−44080号公報
【特許文献9】
特開平4−44081号公報
【特許文献10】
特開平4−44082号公報
【特許文献11】
特開平4−44083号公報
【特許文献12】
特開平4−204980号公報
【特許文献13】
特開平4−204981号公報
【特許文献14】
特開平4−204982号公報
【特許文献15】
特開平4−204983号公報
【特許文献16】
特開平4−204984号公報
【特許文献17】
特公平5−9027号公報
【特許文献18】
特開平4−166966号公報
【特許文献19】
特開平9−171889号公報
【特許文献20】
特開平10―74009号公報
【0018】
【発明が解決しようとする課題】
したがって、画像形成装置の画像加熱定着装置としては、非通紙部昇温対策に用いられる磁束調整手段の待機スペースや、磁束調整手段用の駆動手段の設置スペースの省スペース化が可能である、等の性能を合わせ持った像加熱装置が要望されている。
【0019】
本発明は、このような要望に応じ得る電磁誘導加熱方式の加熱装置を提供しようとするものである。
【0020】
【課題を解決するための手段】
本発明は以下の構成を特徴とする加熱装置である。
【0021】
磁束発生手段と、磁束発生手段の発生磁束の作用により電磁誘導発熱する誘導発熱体を有し、加熱部において磁束発生手段から誘導発熱体に対する作用磁束の、被加熱材の搬送方向に交差する加熱部長尺方向に関する密度分布を変化せしめる磁束調整手段を備え、加熱部に被加熱材を導入搬送させて誘導発熱体の熱により被加熱材を加熱する加熱装置において、磁束発生手段を保持する保持部材と磁束調整手段である磁束遮蔽部材を有し、保持部材の長手方向の両端部には支持部が設けられ、該保持部材の支持部にて磁束遮蔽部材を回動可能に支持することを特徴とする加熱装置。
【0022】
このような構成において、保持部材は磁束発生手段を保持し、磁束遮蔽部材は保持部材の長手方向両端部の支持部を支点に回動するので、誘導発熱体内部において磁束遮蔽部材を磁束発生手段に対して回動させることができる。したがって、誘導発熱体の外部に磁束遮蔽部材の待機スペースを設ける必要がなく、また、磁束遮蔽部材の回動を保持部材の長手方向片側から行えるので、磁束遮蔽部材の駆動手段用設置スペースを誘導発熱体の長手方向片側に設けるだけでよい。よって、磁束遮蔽部材の待機スペースや駆動手段の設置スペースの省スペース化を実現できる。
【0023】
【発明の実施の形態】
[第一の実施例]
図1〜4に、本発明に係る加熱装置として、電磁誘導加熱方式の定着装置の一例を示す。
【0024】
図1は本例の定着装置の定着ローラ長手方向(定着ローラ軸方向)における概略構成を示す断面図、図2は同装置の定着ローラ径方向における概略構成を示す断面図である。また、図3には、磁束遮蔽手段と磁束発生手段の構成を説明する分解斜視図を示す。
【0025】
本例の定着装置は、磁束調整加熱アセンブリ1、誘導発熱体としての定着ローラ7、加圧ローラ8を主体とする。
【0026】
磁束調整加熱アセンブリ1は、磁束発生手段としての励磁コイル5(以下コイルと称す)と磁性体コア6(以下コアと称す)、コイル5とコア6を保持するホルダー(保持部材)2、およびホルダー2の両端部を回動軸として矢示a・bの反時計方向又は時計方向に回動移動自由に配設した、磁束調整手段である円弧状の磁束遮蔽板3などからなる。
【0027】
磁束発生手段は、定着ローラ7の内部にコイル5とT字型コア6が配置されている構成である。コイル5とコア6はホルダー2に保持され、ホルダーフタ19で覆われている。
【0028】
コイル5は定着ローラ7の長手方向に略楕円形状(横長舟形)をしており、定着ローラの内面に沿うようにホルダー2の内部に配置されている。コア6はコイル5の巻き中心部にある第一コア6a(垂直部)と上部に第二コア6b(水平部)が配置されてT字型コアを構成している。
【0029】
コイル5としては加熱に十分な交番磁束を発生するものでなければならないが、そのためには抵抗成分を低く、インダクタンス成分を高くとる必要がある。コイルの芯線としては、φ0.1〜0.3mmの細線を略80〜160本程度に束ねたリッツ線を用いている。細線には絶縁被覆電線を用いている。本例ではコイル5として、第一コア6aを周回するように8〜12回巻回して構成したものが使われる。コイル5には不図示の励磁回路が接続されており、該回路を介して交番電流をコイル5へ供給できるようになっている。
【0030】
コア6にはフェライト、パーマロイなどの高透磁率で残留磁束密度の低い材質のものを用いると良いが、磁束を発生できるものであれば良く特に規定するものではない。コアの形状・材質は上記のものに規定されるものでない。例えば、第一コア6a、第二コア6bを一体成形でT字型にしても本発明の効果を得ることができる。
【0031】
誘導発熱体としての円筒状の定着ローラ7は、鉄、ニッケル、コバルトなどの強磁性の金属を用いることが良い。強磁性の金属(透磁率の大きい金属)を使うことで、磁束発生手段5・6から発生する磁束を強磁性の金属内により多く拘束させることができる。すなわち、磁束密度を高くすることができる。それにより、効率的に強磁性金属の表面(定着ローラ表面)にうず電流を発生させ、該表面を発熱させられる。
【0032】
定着ローラ7の肉厚は、略0.3〜2mm程度にすることで熱容量を低減している。定着ローラ7の外側表面には不図示のトナー離型層がある。一般にはPTFE10〜50μmやPFA10〜50μmで構成されている。また、トナー離型層の内側にはゴム層を用いる構成にしても良い。
【0033】
定着ローラ7の一端には定着ローラギア18が取り付けられ、該ギアは不図示の駆動モータにより回転される。
【0034】
加圧ローラ8は鉄製の芯金の外周に、シリコーンゴム層と定着ローラ7と同様にトナー離型層を設けた構成である。
【0035】
本例の定着装置における定着ローラ長手方向の磁束調整手段は、磁束遮蔽部材3、ホルダー2、遮蔽ギア11、ブッシュ14が主な構成要素である。これらの構成要素のうち、ホルダー2と磁束遮蔽部材3は定着ローラ7の内部に配置される。
【0036】
本例の定着装置ではコイル5とコア6を保持しているホルダー2の両端支持部を磁束遮蔽部材3の回動中心にしたことを特徴とする。
【0037】
ホルダー2の両端部は磁束遮蔽部材3を回動自在に支持するために軸形状である。ホルダー2はコイル5とコア6を保持する機能と、磁束遮蔽部材3を回動支持する機能を備えている。
【0038】
ホルダー2の支持軸2aには、磁束遮蔽部材3を回動するための遮蔽ギア11が設けられ、逆側の支持軸2bには磁束遮蔽部材3の摺動性を良くするためにブッシュ14が設けられ、それぞれスラスト止め輪12、16でスラスト方向が規制されている。
【0039】
ホルダー2は、非磁性、電気絶縁性および高耐熱性の物質で作られる。たとえば、ホルダー2の材質としては、耐熱性と機械的強度を兼ね備えたPPS系樹脂にガラスを添加したものを用いている。もちろん非磁性である。ホルダーが磁性材料であると、電磁誘導によりホルダーが発熱して定着ローラの発熱効率が落ちてしまう。
【0040】
ホルダーの材質には、PPS系樹脂、PEEK系樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリアミドイミド系樹脂、セラミック、液晶ポリマー、フッ素系樹脂などの物質が適している。
【0041】
ブッシュ14・遮蔽ギア11の材質についてもホルダーと同様である。この中でも特に摺動性の良い材質のものを選ぶと良い。たとえば、ポリアミドイミド系樹脂、PFA系樹脂、PEEK系樹脂などがある。
【0042】
磁束遮蔽部材3は非磁性かつ良電気導電性の部材で構成されている。非磁性部材にすることで磁束を遮断する効果がある。良電気導電性部材にすることで磁束遮蔽部材自身の電磁誘導の発熱を抑える効果がある。本例では、磁束遮蔽部材3の材質として、アルミニウム合金を用いたが、銅・マグネシウム・銀などの合金でもよい。
【0043】
磁束遮蔽部材3の厚さは、略0.3〜1.0mm程度でよい。薄すぎると、磁束遮蔽部材自身が電磁誘導発熱する。また、強度不足にもなる。逆に厚すぎると、磁束遮蔽部材の熱容量が増加して定着ローラを温めるとき逆に熱を奪ってしまい、ウエイトタイムの増加につながる。
【0044】
図3に示されるように、磁束遮蔽部材3には被加熱材としての記録材(用紙)の紙サイズに対応した段階的に変化している形状の切り欠き部3c・3dを設けてある。図では、例えば、磁束遮蔽部材3の長手方向において、非通紙部昇温の起こらない紙サイズ幅A(最大通紙サイズ)の内側に、該紙サイズ幅Aより小さい紙サイズ幅Bに対応した切り欠き部3cを設け、さらに紙サイズ幅Bの内側に、該紙サイズ幅Bより小さい紙サイズ幅Cに対応した切り欠き部3dを設けている。上記切り欠き部3cによって紙サイズ幅Aの内側両端に紙サイズ幅Bに応じた遮蔽部(非通紙部)3e・3fを形成し、上記切り欠き部3dによって紙サイズ幅Bの内側両端に紙サイズ幅Cに応じた遮蔽部(非通紙部)3g・3hを形成している。
【0045】
したがって、本例の磁束遮蔽部材3は、紙サイズに応じた遮蔽部3e・3fと3g・3hが段階的に変化している形状である。
【0046】
ホルダー支持軸2a側では、磁束遮蔽部材3の一端部に設けられた切り欠き部を有する異型穴3aと遮蔽ギア11の円筒部11bが嵌合する。遮蔽ギアの円筒部11bに形成された突起部11aと磁束遮蔽部材3のU字型穴部3a’が嵌合していることで、遮蔽ギア11が回動すると磁束遮蔽部材3が遮蔽ギア11に同期して回動する。遮蔽ギア11には駆動手段20から回転駆動が与えられる。駆動手段20はモータなどの駆動源であれば良く、本発明は駆動手段の構成に依存するものではない。たとえば、駆動手段として、ソレノイドなどのアクチュエータと、該アクチュエータの作動を回転運動に変換して遮蔽ギア11に伝達するリンク機構などの運動伝達機構とによって、磁束遮蔽部材3を回動させてもよい。
【0047】
ホルダー支持軸2b側は、コイル5へ電力を供給しているコイル供給線15のガイドを兼ねた形状をしている。ホルダー支持軸2bを中空パイプ形状にすることで、その内部を通してコイル供給線15を引き出している。ホルダー支持軸2bには磁束遮蔽部材3の他端側に設けられた保持穴3bがブッシュ14の円筒部14aに回転可能に嵌合している。コイル供給線15の端部には、コネクタ部15aが設けられ、電力制御装置25に接続する構成である。コイル5には、電力制御装置25で不図示の励磁回路が制御されることにより、コイル供給線15を介して交番電流が供給される。
【0048】
ホルダー2は支持軸2a側がホルダー支持板13で支持され、支持軸2b側がホルダー支持部材17で支持されている。支持軸2aとホルダー支持板13との嵌合部の形状は、D字型状(Dカット)で嵌合する構成である。D字型状にすることで、ホルダー2を定着ローラ円周方向において位置決めをしている。これにより、ホルダー2は支持軸2a・支持軸2bの軸中心2c(図3参照)が定着ローラ7の回転軸中心7c(図1参照)と同軸上に位置するように位置決めされる。
【0049】
本例の定着装置において、磁束遮蔽部材3は、紙サイズに対応した角度分だけ駆動手段20により所定方向に所定角度回転されて、磁束遮蔽部材の段階的に変化している形状の遮蔽部3e・3fと3g・3hがコア6aの対向部に回動移動される。この遮蔽部によってコア6aから定着ローラ7へと通る磁束線を遮蔽することで、その遮蔽部分において定着ローラの発熱を緩和し、異常温度昇温を防止する。
【0050】
本例に示す磁束遮蔽部材3では、非通紙部昇温の起こらない紙サイズ幅A(最大通紙サイズ)より小さい紙サイズ幅Bおよび紙サイズ幅Cの2段階の磁束調整が可能である。たとえば、メートル系の紙サイズであれば、紙サイズ幅AをA4幅(297mm)、紙サイズ幅BをB4幅(257mm)、紙サイズ幅CをA4R幅(210mm)である。この場合、切り欠き部の全長を、それぞれの紙サイズ幅A・B・Cに対応した、段階的に変化している切り欠き幅(紙サイズ幅)にする。どのような紙サイズにするかは、定着装置が搭載される画像形成装置の仕様によって決められる。また、磁束遮蔽部材3の遮蔽部(又は切り欠き部)は、2段階に限ったものでは無く、非通紙部昇温が起こるサイズによって、その都度に段階的に変化している遮蔽部(又は切り欠き部)を増減して設けることができ、1つでも、3つ以上設けても、紙サイズに応じた非通紙昇温防止効果を得ることができる。
【0051】
本例の定着装置では、上述したように、コイル5及びコア6を保持するホルダー2と磁束遮蔽部材3において、ホルダー支持軸2aで磁束遮蔽部材3の一端側を保持し、ホルダー支持軸2bで磁束遮蔽部材3の一端側を保持することから、ホルダー2と磁束遮蔽部材3とが一つのコンパクトなアセンブリ(ユニット)として構成される。
【0052】
また、磁束遮蔽部材3が保持されたホルダー2の支持軸2a・支持軸2bの軸中心2c(図3参照)を、定着ローラ7の回転軸中心7c(図1参照)と同軸上に配置している。これにより、磁束遮蔽部材3は、定着ローラ7の回転軸中心7cと同軸上のホルダー支持軸2a・2bに、上記遮蔽ギア11・ブッシュ14を介して定着ローラ7の内部に配置される。これによって、定着ローラ外部たとえば定着ローラ端の外側に磁束遮蔽部材の待機スペースを設ける必要がなくなり、省スペース化が図られる。
【0053】
また、磁束発生手段5・6を保持するホルダー2と磁束遮蔽部材3が一つのアセンブリ(ユニット)でコンパクトに構成されているため、装置の組立工程においてホルダー2と磁束遮蔽部材3との組立て性の向上を図れ、メンテナンス時においては定着ローラ7の交換性(サービス性)の向上を図れる。
【0054】
また、定着ローラ7の回転軸中心7cにおいてその片側(ホルダー2の支持軸2a側)に配設した駆動手段20により磁束遮蔽部材3を回転駆動できるので、該駆動手段の設置スペースをホルダー2の支持軸2a側に設けるだけでよく、定着ローラスラスト方向の省スペース化が可能である。
【0055】
したがって、従来、記録材としての用紙を定着ローラの長手方向中央に通る場合(中央基準の紙搬送系)、磁束遮蔽部材の待機スペースおよび磁束遮蔽部材の駆動手段スペースが、定着ローラ長手方向の両側に必要であったが、本例では定着ローラ7の内部に磁束遮蔽部材3を待機させるとともに、駆動手段20を定着ローラ片側に配置することができるので、省スペース化が実現でき、搭載対象の画像形成装置本体の大きさを抑えることができる。
【0056】
本例に示す定着装置においては、図1及び図2に示されるように、前記アセンブリ1を内包する定着ローラ7と加圧ローラ8は互いに上下に圧接され不図示の装置筐体に組み込んで、両者7・8間に所定幅の定着ニップ部(加熱ニップ部)Nを形成させてある。
【0057】
定着ローラ7は定着ローラギア18により矢示Pの時計方向に回転され、それにともない加圧ロ−ラ8も従動して矢示Qの反時計方向に回転する。
【0058】
コイル5は電力制御装置25から供給される交番電流によって交番磁束を発生し、交番磁束はコア6に導かれて定着ニップ部Nに作用し、定着ニップ部Nにおいて定着ローラ表面に渦電流を発生させる。その渦電流はローラ表面の固有抵抗によってジュール熱を発生させる。即ち、コイルに交番電流を供給することで定着ニップ部Nにおいて定着ローラ7が電磁誘導発熱状態になる。
【0059】
定着ニップ部Nの温度は不図示の温度検知センサを含む温調系により電力制御装置25からコイル5への供給交番電流が制御されることで所定の定着温度に温調制御される。
【0060】
しかして、定着ローラギア18の回転により定着ローラ7の回転がなされ、電力制御装置25からコイル6への交番電流の供給がなされて定着ニップ部Nの温度が所定温度に立ち上がり温調された状態において、定着ニップ部Nの定着ローラ7と加圧ローラ8との間に、被加熱材としての、未定着トナー像を担持した記録材(用紙)Sが用紙搬送路(一点鎖線)Hを矢印C方向から導入されることで、記録材は定着ローラ7の発熱で記録材と未定着トナー像が加熱されてトナー像の加熱定着がなされる。定着ニップ部Nを通った記録材は定着ニップ部の出口側で分離爪30により定着ローラの外面から分離されて搬送される。
【0061】
次に、磁気回路のイメージ図である図4を用いて、本例の定着装置における磁束遮蔽部材の動作および作用について説明する。
【0062】
磁力線Ja(二点鎖線にて図示)は磁束発生手段に電力制御装置から電力(交番電流)を入力したときの、発生した磁力線の磁気回路を示したものである。磁力線Jaは、第一コア6a(垂直部)、定着ローラ7、第二コア6b(水平部)を通過する。実際には磁力線は透磁率の高い定着ローラの内部を通るが、説明をわかりやすくするために図4のように示した。
【0063】
ここで、定着ローラ7における電磁誘導加熱による発熱ヶ所を考えてみる。
【0064】
発熱ヶ所はコイル5の対向する定着ローラ部で特に大きくなる。これは第一コア6aと第二コア6bを磁力線が行き来するように発生するために、コイル5の対向する定着ローラ部において磁束密度が高くなるためであると考えられる。このことを考慮に入れ、本例の磁束発生手段5・6は定着ニップN部およびその前方に発熱部が来るように傾いた配置にしている。さらに、定着ローラ7は回転することで、温度ムラがなく加熱される。
【0065】
磁束調整手段は上述した電磁誘導加熱原理に基づいて設けられたものである。本例の磁束調整手段は磁束遮蔽部材3によって、定着ローラ内部を行き来する磁束の通路を変化させている。これにより、定着ローラ長手方向の電磁誘導の発熱を制御するのである。
【0066】
すなわち、コア6と定着ローラ7の間に磁束遮蔽部材3を置くことで、効率的に定着ローラの発熱を緩和できるのである。特に、T字型コア6のときは、第一コア(垂直部)6aを遮蔽することが効率的である。図4(a)に示されるように、磁束線Jaは第一コア6aが第二コア(水平部)6bより密度が高く、第一コアの端部から第二コアの端部のそれぞれに分かれので、この磁気回路位置で磁束線Jaを遮蔽するのが効率的である。
【0067】
図4(a)に示されるように、非通紙部昇温の起こらない紙サイズ幅Aのとき、磁束遮蔽部材3は磁気回路Jaに影響の少ない範囲に待機している。図では磁束遮蔽部材3は磁気回路Jaが存在しない位置に待機している。この位置の磁束遮蔽部材3は磁気回路Jaに影響を与えないので、紙サイズ幅Aの全域幅で電磁誘導加熱による定着処理が可能である。
【0068】
非通紙部昇温の起こる紙サイズ幅Bのとき、磁束遮蔽部材3は図4(b)に示すように同図(a)に示す磁気回路Ja上に回動移動して磁束の流れを阻害する。図では磁束遮蔽部材3の遮蔽部3e及び3fが第一コア6aと対向して磁束の流れを阻害する。図に示す磁気回路Jbは遮蔽部3e(3f)の幅Ba(Bb)(図3参照)で遮蔽されたときの磁気回路である。紙サイズ幅Bのときに非通紙部となる遮蔽部3e(3f)の幅Ba(Bb)において、定着ローラ内部を通る磁束は、図4(a)の場合に比べて小さくなっていることが分かる。これにより、遮蔽部3e・3fの幅Ba・Bbの範囲では電磁誘導による発熱が減少し、非通紙部昇温を抑えることができる。このとき、紙サイズ幅B(切り欠き部3c)が電磁誘導加熱による定着可能領域となる。
【0069】
非通紙部昇温の起こる紙サイズ幅Cのときも同様である。磁束遮蔽部材3は、さらに磁気回路Ja上に回動移動する。図では磁束遮蔽部材3の遮蔽部3g(3h)が第一コア6aと対向して磁束の流れを阻害する。図に示す磁気回路Jc・Jc’は遮蔽部3g(3h)の幅Ca(Cb)(図3参照)で遮蔽されたときの磁気回路である。紙サイズ幅Cのときに非通紙部となる遮蔽部3eと3gの加算幅(Ba+Ca)及び遮蔽部3fと3hの加算幅(Bb+Cb)において、定着ローラ内部を通る磁束は、図4(b)と図4(c)に示す磁気回路Jb、Jc・Jc’のようになる。上記幅(Ba+Ca)・(Bb+Cb)の範囲で定着ローラ内部を通る磁束は、図4(a)の場合に比べて小さくなっていることが分かる。これにより、幅(Ba+Ca)、(Bb+Cb)の範囲で電磁誘導発熱が減少し、非通紙部昇温を抑えることができる。このとき、紙サイズ幅C(切り欠き部3d)が電磁誘導加熱による定着可能領域となる。
【0070】
[第二の実施例]
定着装置の第二の実施例を図6、7、8を用いて説明する。
【0071】
本例に示す定着装置は、固定されている磁束調整手段(磁束遮蔽部材)に対して磁束発生手段が回動することで磁束調整を行う構成である。磁束発生手段、定着ローラ、加圧ローラなどは第一実施例と同様で、同じ機能のものは同じ符号とした。ホルダー、磁束遮蔽部材の材質なども第一実施例と同様である。
【0072】
磁束調整手段である磁束遮蔽部材は、第一実施例の磁束遮蔽部材と異なり、二つの部材3A・3Bから構成されている(図6参照)。磁束遮蔽部材3A・3Bは図8に示すような段階的に変化している切り欠き部のある円弧形状をしている。この切り欠き部については追って説明する。二つの磁束遮蔽部材3A・3Bのうち、一方の磁束遮蔽部材3Aはホルダー2の支持軸2a側のホルダー支持板13に、他方の磁束遮蔽部材3Bは同ホルダー2の支持軸2b側のホルダー支持板17にそれぞれ不図示のビスで固定されている。
【0073】
本例の定着装置では、磁束発生手段であるコイル5とコア6を保持するホルダー2が、支持軸2a、2bを回動中心にして遮蔽ギア11によって回動する。遮蔽ギア11と支持軸2aは、D字形状(Dカット)の嵌合により駆動を伝えられる構成である。それにより、ホルダー2は矢印a・b方向に回動する。
【0074】
図8に示されるように、磁束遮蔽部材3A・3Bには紙サイズに対応した段階的に変化している遮蔽部(非通紙部)3p・3q及び3r・3sを設けている。これらの遮蔽部は、第一実施例で説明した、段階的に変化している切り欠き部3c・3dに対応するような形状に設けている。
【0075】
したがって、磁束遮蔽部材3A・3Bは、紙サイズに応じた遮蔽部3p・3qと3r・3sが段階的に変化している形状である。また、ホルダー2は、紙サイズに対応した角度分だけ駆動手段20により、磁束遮蔽部材の段階的に変化している形状の遮蔽部3p・3qと3r・3sにホルダー2と一体のコア6aの対向部を回動移動させる。コア6aから定着ローラ7へと通る磁束線を上記遮蔽部によって遮蔽することで、遮蔽部(非通紙部)での定着ローラの発熱を緩和し、異常温度昇温を防止する。
【0076】
上記磁束遮蔽部材3A・3Bでは、非通紙部昇温の起こらない紙サイズ幅A(最大通紙サイズ)より小さい紙サイズ幅Bおよび紙サイズ幅Cの2段階の磁束調整が可能である。たとえば、メートル系の紙サイズであれば、紙サイズ幅AをA4幅(297mm)、紙サイズ幅BをB4幅(257mm)、紙サイズ幅CをA4R幅(210mm)である。この場合、切り欠き部の全長を、それぞれの紙サイズ幅A・B・Cに対応した、段階的に変化している切り欠き幅(紙サイズ幅)にする。どのような紙サイズにするかは、定着装置が搭載される画像形成装置の仕様によって決められる。また、磁束遮蔽部材の遮蔽部(又は切り欠き部)は、2段階に限ったものでは無く、非通紙部昇温が起こるサイズによって、その都度に段階的に変化している遮蔽部(又は切り欠き部)を増減して設けるものである。ただし、遮蔽をようする紙サイズが一つのときは段階的形状では無くなる。
【0077】
非通紙部昇温の起こらない紙サイズ幅Aのとき、磁束遮蔽部材3A(または3B)とコイル5・コア6を保持しているホルダー2の位置関係は、図7(a)に示すような位置関係となる。すなわち、ホルダー2は磁気回路Jaに影響の少ない範囲の位置にある。この位置にホルダー2があるときは、磁束遮蔽部材3A(または3B)は磁気回路Jaに影響を与えないので、紙サイズ幅Aの全域幅で電磁誘導加熱による定着処理が可能である。
【0078】
非通紙部昇温の起こる紙サイズ幅Bのとき、コイル5・コア6を保持しているホルダー2は、磁気回路上に磁束遮蔽部材が来るように回動移動して、該磁束遮蔽部材が磁束の流れを阻害する。図では第一コア6aが磁束遮蔽部材3A(または3B)の遮蔽部3p(3q)に対向し、該遮蔽部が磁束の流れを阻害する。図に示す磁気回路Jb・Jb’は遮蔽部3q(3p)の幅Ba(Bb)(図8参照)で遮蔽されたときの磁気回路である。紙サイズ幅Bのときに非通紙部となる遮蔽部3q(3p)の幅Ba(Bb)において、定着ローラ内部を通る磁束は、図7(a)の場合に比べて小さくなっていることが分かる。これにより、遮蔽部3q・3pの幅Ba・Bbの範囲では電磁誘導による発熱が減少し、非通紙部昇温を抑えることができる。このとき、紙サイズ幅B(切り欠き部3c)が電磁誘導加熱による定着可能領域となる。
【0079】
非通紙部昇温の起こる紙サイズ幅Cのときも同様である。コイル5・コア6を保持しているホルダー2は、さらに回動移動する。図では第一コア6aが磁束遮蔽部材3A(または3B)の遮蔽部3r(3s)に対向し、該遮蔽部が磁束の流れを阻害する。図に示す磁気回路Jc、Jc’は遮蔽部3s(3r)の幅Ca(Cb)(図8参照)で遮蔽されたときの磁気回路である。紙サイズ幅Cのときに非通紙部となる遮蔽部3rと3pの加算幅(Ba+Ca)及び遮蔽部3sと3qの加算幅(Bb+Cb)(図7参照)において、定着ローラ内部を通る磁束は、図7(b)と図7(c)の磁気回路Jb・Jb’、Jc・Jc’のようになる。上記幅紙サイズ幅(Ba+Ca)・(Bb+Cb)の範囲で定着ローラ内部を通る磁束は、図7(a)の場合に比べて小さくなっていることが分かる。これにより、幅(Ba+Ca)、(Bb+Cb)の範囲で電磁誘導発熱が減少し、非通紙部昇温を抑えることができる。このとき、紙サイズ幅C(第一実施例の切り欠き部3dに相当)が電磁誘導加熱による定着可能領域となる。
【0080】
[第三の実施例]
定着装置の第三の実施例を図9を用いて説明する。
【0081】
本例に示す定着装置は、第一の実施例の磁束調整加熱アセンブリ1を、磁束遮蔽部材3の回転半径r1よりも大きな半径r2(r2<r1)の定着ローラ7に対して適用した例である。本例の定着装置では、定着ローラの中心と磁束遮蔽部材3の回動中心が異なる。すなわち、磁束遮蔽部材3の回動中心o1は定着ローラ7の回転中心o2に対して偏心している。磁束発生手段5・6、加圧ローラ8などは第一実施例と同様で、同じ機能のものは同じ符号とした。ホルダー2、磁束遮蔽部材3の材質なども第一実施例と同様である。
【0082】
本例の定着装置においては、磁束遮蔽部材3は定着ローラ7の内部でアセンブリ1に対して矢印a・b方向に回動されることによって、第一実施例の装置と同様な効果を得ている。
【0083】
このように、大径定着ローラ7にも、それより小さな径の定着ローラで使用する磁束調整加熱アセンブリ1を用いることができ、部品の共通化・成形型の削減が可能になり、低コスト化につながる。
【0084】
さらに、大きな径の定着ローラに対して、磁束調整加熱アセンブリを一本の定着ローラに複数設けることもできることは、第三の実施例から容易に推測できる。
【0085】
[第四の実施例]
定着装置の第四の実施例を図10、11を用いて説明する。
【0086】
図10は第四の実施例の定着装置を説明する構成断面図である。図11は、第四実施例の磁束遮蔽部材の動作および作用について説明する磁気回路のイメージ図である。
【0087】
第四の実施例に示す定着装置は、磁束調整加熱アセンブリ1、定着フィルム7、円弧状フィルムガイド部材23、回転加圧部材としての加圧ローラ8を主体とする。磁束調整加熱アセンブリ1は、第一実施例と同じ構成である。誘導発熱体として定着ローラの代わりに従来例と同様な定着フィルムを用いた構成である。
【0088】
誘導発熱体としての円筒状(シームレス)の定着フィルム7が円筒状フィルムガイド部材23にルーズに外嵌している。第一実施例と同様に磁束遮蔽部材3が円筒状フィルムガイド部材23の内面に回動可能に設けてある。
【0089】
円筒状フィルムガイド部材23と加圧ローラ8は互いに上下に圧接させて不図示の装置筐体に組み込んで、両者8・23間に所定幅の定着ニップ部(加熱ニップ部)Nを形成させている。この定着ニップ部Nにおいて定着フィルム7の内面は円弧状フィルムガイド部材23の下面に密着している。
【0090】
加圧ローラ8は不図示の駆動手段により矢印Qの方向に回転駆動され、この加圧ローラ8の回転駆動による該ローラ8と定着フィルム7の外面との定着ニップ部Nにおける摩擦力で定着フィルム7に回転力が作用する。それにより、定着フィルム7は円筒状フィルムガイド部材23の外回りを、その内面が定着ニップ部Nにおいて円筒状フィルムガイド部材23の下面に密着摺動しながら矢印Pの方向に回転する。
【0091】
コイル5は不図示の励磁回路から供給される交番電流によって交番磁束を発生し、交番磁束はコア6に導かれて定着ニップ部Nに作用し、定着ニップ部Nにおいて定着フィルム7の後述する電磁誘導発熱層に渦電流を発生させる。その渦電流は電磁誘導発熱層の固有抵抗によってジュール熱を発生させる。即ち、コイル5に交番電流を供給することで定着ニップ部Nにおいて定着フィルム7が電磁誘導発熱状態になる。
【0092】
定着フィルムにおいても、電磁誘導加熱の原理、画像定着方式は第一の実施例の定着ローラと同様である。
【0093】
定着フィルムを用いた第四の実施例では、定着ニップ部Nを通った記録材Sは定着ニップ部Nの出口側で定着フィルム7の外面から円筒状フィルムガイド部材23の曲率により分離されるため、定着ローラの実施例のように分離爪を必要としない。
【0094】
円弧状フィルムガイド部材23は、磁束の通過を妨げない絶縁性・耐熱性部材であり、円弧状フィルムガイド部材23の外側を回転する円筒状定着フィルム7の内面をガイドして定着フィルム7の回転の安定性を確保する役目をする。
【0095】
第四の実施例の定着フィルム7は従来同様である。内側(フィルムガイド部材23側)の電磁誘導発熱層、その外側の弾性層、更にその外側の離型層(表層;加圧ローラ8側)の3層積層の複合層構成である。
【0096】
円弧状の磁束遮蔽板3は円弧状フィルムガイド部材23の内側で矢印a・b方向に回動可能である。磁束遮蔽板3は非通紙部昇温の起こる紙サイズが通紙使用された場合において、定着ニップ部Nの非通紙領域部に対する交番磁束の作用密度を通紙領域部に対する磁束の作用密度よりも低めて、非通紙部昇温現象を防止或は緩和する役目をするのは、他の実施例と同様である。
【0097】
第四実施例の磁気回路のイメージ図を図11に示す。非通紙部昇温の磁束遮蔽部材3による磁気回路の変化は第一実施例と同様で次のようになる。
【0098】
非通紙部昇温の起こらない紙サイズ幅Aのときの磁気回路を図11(a)に示す。磁束遮蔽部材3は磁気回路Jaに影響の少ない範囲に待機している。磁束遮蔽部材3が待機位置にあるときは、紙サイズ幅Aの全域幅で定着が可能である。
【0099】
非通紙部昇温の起こる紙サイズ幅Bのとき、図11(b)のように、磁束遮蔽部材3は磁気回路上に回動移動して磁束の流れを阻害する。図に示す磁気回路Jbは磁束遮蔽部材3の遮蔽部3e(3f)の幅Ba(Bb)(図3参照)で遮蔽されたときの磁気回路である。紙サイズ幅Bのときに非通紙部となる遮蔽部3e(3f)の幅Ba(Bb)において、定着フィルム内部を通る磁束は、図11(a)の場合に比べて小さくなっていることが分かる。これにより、遮蔽部3e・3fの幅Ba、Bbの範囲では電磁誘導による発熱が減少し、非通紙部昇温を抑えることができる。このとき、紙サイズ幅B(切り欠き部3c)が定着可能領域となる。
【0100】
非通紙部昇温の起こる紙サイズ幅Cのときも同様である。磁束遮蔽部材3は、さらに磁気回路上に回動移動する。図では磁束遮蔽部材3の遮蔽部3g(3h)が第一コア6aと対向して磁束の流れを阻害する。図に示す磁気回路Jc・Jc’は遮蔽部3g(3h)の幅Ca(Cb)(図3参照)で遮蔽されたときの磁気回路である。紙サイズ幅Cのときに非通紙部となる遮蔽部3eと3gの加算幅(Ba+Ca)及び3fと3hの加算幅(Bb+Cb)において、定着ローラ内部を通る磁束は、図4(b)と図4(c)に示す磁気回路Jb、Jc・Jc’のようになる。上記幅(Ba+Ca)・(Bb+Cb)の範囲で定着ローラ内部を通る磁束は、図4(a)の場合に比べて小さくなっていることが分かる。これにより、幅(Ba+Ca)、(Bb+Cb)の範囲で電磁誘導発熱が減少し、非通紙部昇温を抑えることができる。このとき、紙サイズ幅C(切り欠き部3d)が電磁誘導加熱による定着可能領域となる。
【0101】
[画像形成装置例]
各実施例の定着装置は、例えば、電子写真画像形成装置に搭載される。図5は第一実施例の定着装置10を備えた画像形成装置の一例を示す概略構成の説明図である。
【0102】
画像形成装置100は、画像読取部108で原稿の画像を読み取り、読み取られた画像データに基づいたコントローラ(図示せず)からの指令により、感光ドラム101の表面に画像書き込み部109から露光を行って感光ドラム101上に静電潜像を形成する。なお、露光の前に、感光ドラム101の表面が帯電器102により所定の電位に一様に帯電させられており、一様に帯電させられた感光ドラム101上に、画像書き込み部109からレーザー光等を照射することにより、感光ドラム101上に静電潜像が形成される。感光ドラム101上に形成された静電潜像は、現像装置103のトナーにより現像され、その後、現像されたトナー画像が感光ドラム101の回転により転写装置104との対向部へ搬送される。
【0103】
現像されたトナー画像の搬送に対応して、ピックアップローラ132により用紙Sが用紙カセットから1枚づつ給紙されるとともに、レジストローラ対135によってタイミングを取って感光ドラム101と転写装置104との対向部へ搬送される。そして、用紙Sが感光ドラム101と転写装置104との対向部を通過する際に、感光ドラム101上の現像されたトナー画像が転写装置104により用紙Sの上に転写される。
【0104】
トナー画像が転写された用紙Sは、所定の搬送装置により定着ローラ7の位置に搬送され、定着ローラ7と加圧ローラ8で圧接されるとともに、定着ローラ内に設けられた磁束発生手段により電磁誘導加熱されて、用紙S上のトナーが用紙Sに溶融定着させられる。その後、トナー画像が定着させられた用紙Sは、排紙ローラ111により装置本体外部のトレー115に収納され一連の画像形成プロセスが終了する。
【0105】
各実施例の定着装置では、保持部材(ホルダー2)で磁束発生手段(コイル5・コア6)を保持し、該保持部材の長手方向両端部の支持部(支持軸2a・2b)を支点として磁束遮蔽部材3を定着ローラ(定着フィルム)7の内部で回転させているので、磁束発生手段におけるコイル5と磁束遮蔽部材3の接触が回避される。これにより、コイルの破損を防止することができる。
【0106】
また、磁束遮蔽部材3を保持部材の長手方向両端部の支持部を支点に回転させるので、定着スピードを落とすことなく非通紙部昇温を抑止できるので、画像形成の生産性の向上につながる。
【0107】
特に、第一ないし第四の実施例では、磁束発生手段(コイル5・コア6)、ホルダー2、磁束遮蔽部材3を一つのアセンブリ構成にしたので、組立て性・サービス性の向上が図れる。
【0108】
第一、第三、第四の実施例では、磁束遮蔽部材3の回動中心を定着ローラ7の中心軸上にすることで、磁束遮蔽部材の待機スペースおよび磁束遮蔽部材の駆動手段スペースの省スペース化が図れる。
【0109】
第二の実施例では、磁束発生手段(コイル5・コア6)を含むホルダー2の回動中心を定着ローラ7の中心軸上にすることで、上記待機スペースおよび駆動手段スペースの省スペース化が図れる。
【0110】
第四の実施例では、定着加圧部材(円弧状フィルムガイド23)の内部に磁束遮蔽部材3を回動させるため、磁束遮蔽部材3が回動移動時に定着フィルム7に擦れることがなく、定着フィルムの破損・劣化を無くすことができる。また、定着フィルムとの接触が無いため、磁束遮蔽部材の駆動トルクを従来に比べ抑えることができる。
【0111】
以上説明したように、省スペース化・低コスト化を図りつつ、省電力化・生産性を向上した磁束遮蔽手段を用いた誘導発熱方式の定着装置を実現できる。
【0112】
[その他]
本発明の加熱装置は実施形態例の画像加熱定着装置としてに限らず、画像を担持した記録材を加熱してつや等の表面性を改質する像加熱装置、仮定着する像加熱装置、その他、被加熱材の加熱乾燥装置、加熱ラミネート装置など、広く被加熱材を加熱処理する手段・装置として使用できる。
【0113】
以上、本発明の様々な例と実施例が示され説明されたが、当業者であれば、本発明の趣旨と範囲は本明細書内の特定の説明と図に限定されるのではなく、本願特許請求の範囲に全て述べられた様々の修正と変更に及ぶことが理解されるであろう。
【0114】
本発明の実施態様の例を以下に列挙する。
【0115】
〔実施態様1〕励磁コイルと磁性体コアを有する磁束発生手段と、磁束発生手段の発生磁束の作用により電磁誘導発熱する誘導発熱体を有し、加熱部において磁束発生手段から誘導発熱体に対する作用磁束の、被加熱材の搬送方向に交差する加熱部長尺方向に関する密度分布を変化せしめる磁束調整手段を備え、加熱部に被加熱材を導入搬送させて誘導発熱体の熱により被加熱材を加熱する加熱装置において、励磁コイルと磁性体コアを保持する保持部材と磁束調整手段である磁束遮蔽部材を有し、保持部材の長手方向の両端部には保持部材を支持する支持部が設けられ、該保持部材の支持部にて磁束遮蔽部材を回動可能に支持することを特徴とする加熱装置。
【0116】
〔実施態様2〕誘導発熱体が中空円筒形状のとき、磁束遮蔽部材の回動中心と円筒形状誘導発熱体の中心が同じ軸中心上にある、実施態様1に記載の加熱装置。
【0117】
〔実施態様3〕磁束遮蔽部材は、略円弧形状である、実施態様1又は2に記載の加熱装置。
【0118】
〔実施態様4〕磁束遮蔽部材は、被加熱材のサイズに応じた遮蔽部が段階的に変化している形状である、実施態様1乃至3のいずれかに記載の加熱装置。
【0119】
〔実施態様5〕磁束遮蔽部材は、磁束遮蔽部材の駆動手段により遮蔽を要する被加熱材のサイズに応じた遮蔽位置に対応した角度分だけ回動移動し、遮蔽を要する被加熱材のサイズの非通紙部を磁束遮蔽部材の段階的に変化している形状部により磁性体コアと誘導発熱体の間を遮蔽するものである、実施態様1乃至4のいずれかに記載の加熱装置。
【0120】
〔実施態様6〕磁束発生手段の磁性体コアの形状がT字型である、実施態様1乃至5のいずれかに記載の加熱装置。
【0121】
〔実施態様7〕T字型の磁性体コアのとき、磁束遮蔽部材は、磁束遮蔽部材の駆動手段により遮蔽を要する被加熱材のサイズに応じた遮蔽位置に対応した角度分だけ回動移動され、遮蔽を要する被加熱材のサイズの非通紙部において、磁束遮蔽部材は少なくともT字型コアの中央部と誘導発熱体の間を遮蔽するために磁束遮蔽部材の段階的に変化している形状の遮蔽部を回動移動されるものである、実施態様1乃至6のいずれかに記載の加熱装置。
【0122】
〔実施態様8〕励磁コイルと磁性体コアを有する磁束発生手段と、磁束発生手段の発生磁束の作用により電磁誘導発熱する誘導発熱体を有し、加熱部において磁束発生手段から誘導発熱体に対する作用磁束の、被加熱材の搬送方向に交差する加熱部長尺方向に関する密度分布を変化せしめる磁束調整手段を備え、加熱部に被加熱材を導入搬送させて誘導発熱体の熱により被加熱材を加熱する加熱装置において、励磁コイルと磁性体コアを保持する保持部材を回動可能に支持し、固定支持されている磁束遮蔽部材の作用する位置に保持部材が回動可能とすることを特徴とする加熱装置。
【0123】
〔実施態様9〕磁束遮蔽部材は、略円弧形状である、実施態様8に記載の加熱装置。
【0124】
〔実施態様10〕磁束遮蔽部材の形状は、被加熱材のサイズに応じた遮蔽部が段階的に変化している形状である、実施態様8又は9に記載の加熱装置。
【0125】
〔実施態様11〕励磁コイルと磁性体コアを保持する保持部材は、保持部材の駆動手段により遮蔽する被加熱材のサイズに応じた遮蔽位置に対応した角度分だけ回動移動し、遮蔽する被加熱材のサイズの非通紙部を磁束遮蔽部材の段階的に変化している形状部により磁性体コアと誘導発熱体の間を遮蔽するものである、実施態様8乃至10のいずれかに記載の加熱装置。
【0126】
〔実施態様12〕磁束発生手段の磁性体コアの形状がT字型である、実施態様8乃至11のいずれかに記載の加熱装置。
【0127】
〔実施態様13〕T字型の磁性体コアのとき、励磁コイルと磁性体コアを保持する保持部材は、保持部材の駆動手段により遮蔽を要する被加熱材のサイズに応じた遮蔽位置に対応した角度分だけ回動移動され、遮蔽を要する被加熱材のサイズの非通紙部において、保持部材は少なくともT字型コアの中央部と誘導発熱体の間を遮蔽するために磁束遮蔽部材の段階的に変化している形状の遮蔽部に回動移動されるものである、実施態様8乃至12のいずれかに記載の加熱装置。
【0128】
〔実施態様14〕磁束遮蔽部材は、非磁性かつ良電気導電性の物質で作られる、実施態様1乃至13のいずれかに記載の加熱装置。
【0129】
〔実施態様15〕磁束遮蔽部材の材質は、アルミニウム、銅、マグシウム、銀などの合金である、実施態様1乃至13のいずれかに記載の加熱装置。
【0130】
〔実施態様16〕保持部材の支持部の少なくとも一方を中空パイプ形状にし、内部に励磁コイルの束線を通したものである、実施態様1乃至15のいずれかに記載の加熱装置。
【0131】
〔実施態様17〕保持部材の支持部の少なくとも一方の形状が磁束遮蔽部材の回動する周方向を規制する形状である、実施態様1乃至16のいずれかに記載の加熱装置。
【0132】
〔実施態様18〕保持部材は、非磁性、電気絶縁性および高耐熱性の物質で作られる、実施態様1乃至17のいずれかに記載の加熱装置。
【0133】
〔実施態様19〕保持部材の材質は、PPS系樹脂、PEEK系樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリアミドイミド系樹脂、セラミック、液晶ポリマー、フッ素系樹脂である、実施態様1乃至17のいずれかに記載の加熱装置。
【0134】
〔実施態様20〕保持部材および磁束遮蔽部材を一つのアセンブリ(ユニット)構成にしたことを特徴とする、実施態様1乃至19のいずれかに記載の加熱装置。
【0135】
〔実施態様21〕一つの誘導発熱体に対して、一つ以上のアセンブリ構成された磁束調整手段の付いた磁束発生手段をさらに備えることを特徴とする実施態様1乃至20のいずれかに記載の加熱装置。
【0136】
〔実施態様22〕被加熱材が画像を担持した記録材であることを特徴とする実施態様1乃至21のいずれかに記載の加熱装置。
【0137】
〔実施態様23〕記録材上に画像を形成する像形成手段と、該記録材上の画像を加熱する像加熱手段とを有する画像形成装置において、前記像加熱手段が実施態様1乃至22のいずれかに記載の加熱装置であることを特徴とする画像形成装置。
【0138】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明によれば、電磁誘導加熱方式の加熱装置について、磁束遮蔽部材の待機スペースと駆動手段の設置スペースの省スペース化を実現できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】第一の実施例の定着装置(加熱装置)の定着ローラ長手方向における概略構成断面図。
【図2】第一の実施例の定着装置の定着ローラ径方向における概略構成断面図。
【図3】第一の実施例の定着装置における磁束遮蔽部材と磁束発生手段の構成を説明する分解斜視図。
【図4】第一の実施例の定着装置において磁束遮蔽部材で磁束を遮断したときの磁気回路のイメージ図。
【図5】第一の実施例の定着装置を搭載した画像形成装置の一例を示す概略構成図。
【図6】第二の実施例の定着装置における定着ローラ長手方向の概略構成断面図。
【図7】第二の実施例の定着装置において磁束遮蔽部材で磁束を遮断したときの磁気回路のイメージ図。
【図8】第二の実施例の定着装置における磁束遮蔽部材の斜視図。
【図9】第三の実施例の定着装置の定着ローラ径方向における概略構成断面図。
【図10】第四の実施例の定着装置の定着ローラ径方向における概略構成断面図。
【図11】第四の実施例の定着装置において磁束遮蔽部材で磁束を遮断したときの磁気回路のイメージ図。
【符号の説明】
1:磁束調整加熱アセンブリ、2:ホルダー、
2a(2b):ホルダー支持軸、3:磁束遮蔽部材、3e〜3h,3p〜3q:遮蔽部、5:励磁コイル、6:磁性体コア、6a:第一の磁性体コア、6b:第2の磁性体コア、7:定着ローラ、8:加圧ローラ、N:定着ニップ部、
Ja,Jb,Jc,Jc’:磁束発生部の磁力線(磁気回路)
Claims (1)
- 磁束発生手段と、磁束発生手段の発生磁束の作用により電磁誘導発熱する誘導発熱体を有し、加熱部において磁束発生手段から誘導発熱体に対する作用磁束の、被加熱材の搬送方向に交差する加熱部長尺方向に関する密度分布を変化せしめる磁束調整手段を備え、加熱部に被加熱材を導入搬送させて誘導発熱体の熱により被加熱材を加熱する加熱装置において、
磁束発生手段を保持する保持部材と磁束調整手段である磁束遮蔽部材を有し、保持部材の長手方向の両端部には支持部が設けられ、該保持部材の支持部にて磁束遮蔽部材を回動可能に支持することを特徴とする加熱装置。
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