JP2004265069A - 仮想受動関節モデルのモデルパラメータ同定方法およびその制御方法 - Google Patents

仮想受動関節モデルのモデルパラメータ同定方法およびその制御方法 Download PDF

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Abstract

【課題】未知パラメータの同定を自動的に且つ高速に行い、また実稼動中にパラメータ同定を行うことにより、制御対象の負荷条件などの特性値が変化した場合でも、再調整を行うことなく制御の実行を継続する。
【解決手段】仮想受動関節モデルのモデルパラメータ同定方法において、仮想受動関節モデルのマスとバネとダンパの特性に対応したパラメータを前記構造物をあらかじめ稼動して実稼動データを保存し、仮想受動関節モデルの数値計算結果と実稼動データとの偏差を演算し、偏差を用いて、遺伝的アルゴリズムによりモデルパラメータを同定するものである。
【選択図】 図1

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、たとえばロボットアームや大型構造物、その他バネ要素を含む機械設備のモデルパラメータの同定方法およびそのモデルを用いた制御方法に関するものであり、複数のマスが、バネとダンパを有する受動的な仮想関節によって接続されているものと想定して表すモデル(以下、本モデルを仮想受動関節モデルと呼ぶ)を用いたモデルパラメータ同定方法および制御方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
高速位置決め仕様を満たすためのいわゆるメカトロ制御システムを設計する場合に、制御対象の動特性に基づいた運動方程式を用いてコントローラを設計することがある。特に、制御対象が弾性要素を有する場合、そのモデル化は非常に困難とされてきたが、その柔軟構造物を、複数のマスが、バネとダンパを有する受動的な仮想関節によって接続されているものと想定して表すモデルを用いて表現する方法が、近年注目されている。一般に本モデルは仮想受動関節モデルと呼ばれている(例えば、日本ロボット学会誌、Vol.17、No.2、pp250〜259、1999年「フレキシブルアームに対する仮想受動関節モデルの有効性の検討」(吉川ほか)など)。
図3に基づいて、前記参考文献に基づく従来技術を説明する。図3は仮想受動関節モデルの概念図を示している。図3において、101は柔軟アーム、102は実関節、103は仮想関節、104は剛体リンクである。
図3左図は、両端に実関節を有する柔軟アームを示しており、弾性要素のためにアームがたわんでいる様子をあらわしている。右図はこの柔軟アームを、2本のリンクが仮想関節1個によって結合されているとして近似的に表したものである。仮想関節は、バネ、ダンパ特性により受動的な特性をもつものとして表される。
ここで、図3右図の運動方程式を求めると以下のようになる。
【0003】
【数1】
Figure 2004265069
【0004】
である。
式(1)を離散化することにより次式が得られる。
【0005】
【数2】
Figure 2004265069
【0006】
である。
このように仮想受動関節モデルでは、状態変数により構成させる回帰ベクトルと、仮想受動関節の特性値となる仮想のダンピング係数およびバネ定数で表される未知ベクトルとに分けて表現される。
【0007】
【非特許文献1】
吉川ほか「フレキシブルアームに対する仮想受動関節モデルの有効性の検討」ロボット学会誌1999年Vol.17、No.2、250〜259頁
【特許文献1】
特開平7−196216号公報
【特許文献2】
特開平9−131087号公報
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、式(2)中の未知パラメータは、前述の論文にもあるように実系の特性を反映するようにある評価関数を最小とするように試行錯誤的に同定を行っていたため、パラメータ決定にいたるまでに非常に時間がかかった。また、負荷条件の変化などが生じた場合、そのたびに未知パラメータの同定をやり直さなくてはならず、そこで多大な調整時間を必要としていた。
本発明は上記問題を解決するためになされたものであり、その目的とするところは、(1)未知パラメータの同定を自動的に且つ高速に行うモデルパラメータ同定方法を提供し、(2)実稼動中にパラメータ同定を行うことにより、制御対象の負荷条件などの特性値が変化した場合でも、再調整を行うことなく制御の実行を継続する制御方法を提供することにある。
【0009】
【課題を解決するための手段】
上記問題点を解決するため請求項1記載の発明は、モデルパラメータ同定方法は柔軟な特性をもつ構造物を、複数のマスが、バネとダンパを有する受動的な仮想関節によって接続されているものと想定して表すモデルである仮想受動関節モデルのモデルパラメータ同定方法において、前記仮想受動関節モデルのマスとバネとダンパの特性に対応したパラメータを前記構造物をあらかじめ稼動して実稼動データを保存し、前記仮想受動関節モデルの数値計算結果と実稼動データとの偏差を演算し、前記偏差を用いて、遺伝的アルゴリズムによりモデルパラメータを同定することを特徴とするものである。したがって、遺伝的アルゴリズムによる調整により未知パラメータの同定を自動的に且つ高速に行うことができる。
また、請求項2記載の発明は、柔軟な特性をもつ構造物を、複数のマスが、バネとダンパを有する受動的な仮想関節によって接続されているものと想定して表すモデルである仮想受動関節モデルを用いた制御方法において、前記仮想受動関節モデルのマスとバネとダンパの特性に対応したパラメータを、前記構造物の実稼動データと前記仮想受動関節モデルの数値演算結果との偏差を、前記構造物を稼動させながら演算し、その偏差を用いて、適応調整則によりモデルパラメータをオンラインで同定し、前記同定された前記モデルを用いてコントローラパラメータを調整することを特徴とするものである。したがって、実稼動中にパラメータ同定を行うことにより、制御対象の負荷条件などの特性値が変化した場合でも、再調整を行うことなく制御実行を継続できる。
【0010】
【発明の実施の形態】
この発明の第1の実施の形態のモデルパラメータ同定方法について図1に基づいて説明する。
図1において、1は開始ステップ、2は制御対象の実稼動データを取得するステップ、3は仮想受動関節モデルの数値演算結果と実稼動データとの偏差を演算するステップ、4は演算された偏差が規定値eより小さいかどうかを判断するステップ、5は遺伝的アルゴリズムによりパラメータを同定するステップ、6は5により同定されたパラメータにより仮想受動関節モデルを再設定するステップ、7は終了ステップである。
すなわち、作業者は実稼動データを採取する(ステップ1)。これは、任意の指令に基づいて従来則(例えば比例・積分・微分制御など)により取得されたものでよい。次に、仮想受動関節モデルの数値演算を行い、実機より取得したデータと同じ状態量のデータを取得し、その状態量の実機と仮想受動関節モデルとの偏差を演算する(ステップ2)。この偏差は、時系列のデータとして保存される。次に、この偏差が、適当に設定された規定値eより小さいかどうかを判断する(ステップ3)。偏差が規定値より大きい場合は、仮想受動関節モデルのパラメータを遺伝的アルゴリズムにより調整する(ステップ4)。このときの遺伝的アルゴリズムは、例えば特開平10−250888で用いているものでよい。
即ち最初に、第1の工程として各条件の入力を行い、第2の工程として、遺伝的アルゴリズムにおいて個体として使用するコード列の初期集団を作成する。本実施の形態では、各未知パラメータの下限値と、必要あるいは設定できる数値の刻みを基にしたスケーリングと、2進数変換とにより各未知パラメータをコード化する。そして、このようにコード化された各未知パラメータを表すビット列をつなぎあわせたものを未知パラメータの組み合わせ候補となる1つのコード列(個体)とする。そして各ビットをランダムに設定したコード列をM個発生させ、初期集団としている。次に、第3の工程として、集団に含まれる各コード列をデコードした未知パラメータにより応答シミュレーションを行い、前記各候補の評価値をそれぞれ求める。すなわち、コード列をデコードして得た各未知パラメータを仮想受動関節モデルに与え、実稼動データ取得時に用いたのと同じ指令に対する仮想受動関節モデルの応答を求める。そして、評価関数比較手段である評価値演算部により、仮想受動関節モデルの応答を実稼動データの応答と比較し、評価値を算出する。
【0011】
次に、調整されたパラメータを用いて、式(2)に基づき仮想受動関節モデルを構築する(ステップ5)。
以上をステップ3の偏差評価において、偏差がeより小さくなるまで繰り返す。
第一の実施の形態であるモデルパラメータ同定方法によれば、従来、試行錯誤的に調整していた仮想受動関節モデルの未知パラメータを、実稼動データに基づき遺伝的アルゴリズムにより自動調整するので、調整時間の大幅な短縮が図れる。
つぎにこの発明の第2の実施形態である制御方法について図2に基づいて説明する。図2において、11は仮想受動関節モデルの数値演算を実行する仮想受動関節モデル部、12は実稼動する制御対象、13は前記仮想受動関節モデル部で演算された状態量と、実稼動する前記制御対象の状態量との偏差を評価する偏差評価部、14はモデルパラメータを自動調整する適応調整部、15は実稼動する前記制御対象を制御するコントローラ部である。
すなわち、制御対象12と仮想受動関節モデル部11の状態量(位置や速度など)との偏差を偏差評価部13で評価し、その評価値を適応調整部14に送る。
このとき、適応調整部15で用いる適応調整則は、例えばいわゆる最小2乗則でもよいし、特開平7−196216で用いている適応調整則でもよい。次に、適応調整部14で調整されたパラメータを用いてコントローラ部15のパラメータを調整するとともに、仮想受動関節モデル部11のモデルパラメータも調整し、更新する。
第二の実施の形態である制御方法によれば、従来試行錯誤的に行っていた仮想受動関節モデルの未知パラメータ調整を自動で行えるだけでなく、負荷変動などにより制御対象の特性が変化した場合でも、適応調整部によりパラメータのオンライン調整が行われることで、稼動を停止しパラメータの再調整をおこなうことなく、制御目的を達成することができる。
【0012】
【発明の効果】
請求項1記載のモデルパラメータ同定方法によれば、遺伝的アルゴリズムによる調整により未知パラメータの同定を自動的に且つ高速に行うことができる。
請求項2記載の制御方法によれば、実稼動中にパラメータ同定を行うことにより、制御対象の負荷条件などの特性値が変化した場合でも、再調整を行うことなく制御の実行を継続できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明請求項1の実施例
【図2】本発明請求項2の実施例
【図3】従来技術の概念を示す図
【符号の説明】
1 開始ステップ
2 制御対象の実稼動データを取得するステップ
3 仮想受動関節モデルの数値演算結果と実稼動データとの偏差を演算するステップ
4 演算された偏差が規定値eより小さいかどうかを判断するステップ
5 遺伝的アルゴリズムによりパラメータを同定するステップ
6 5により同定されたパラメータにより仮想受動関節モデルを再構築するステップ
7 終了ステップ
11 仮想受動関節モデルの数値演算を実行する仮想受動関節モデル部
12 実稼動する制御対象
13 前記仮想受動関節モデル部で演算された状態量と、実稼動する前記制御対象の状態量との偏差を評価する偏差評価部
14 モデルパラメータを自動調整する適応調整部
15 実稼動する前記制御対象を制御するコントローラ部

Claims (2)

  1. 柔軟な特性をもつ構造物を、複数のマスが、バネとダンパを有する受動的な仮想関節によって接続されているものと想定して表すモデルである仮想受動関節モデルのモデルパラメータ同定方法において、
    前記仮想受動関節モデルのマスとバネとダンパの特性に対応したパラメータを前記構造物をあらかじめ稼動して実稼動データを保存し、
    前記仮想受動関節モデルの数値計算結果と実稼動データとの偏差を演算し、
    前記偏差を用いて、遺伝的アルゴリズムによりモデルパラメータを同定することを特徴とする仮想受動関節モデルのモデルパラメータ同定方法。
  2. 柔軟な特性をもつ構造物を、複数のマスが、バネとダンパを有する受動的な仮想関節によって接続されているものと想定して表すモデルである仮想受動関節モデルを用いた制御方法において、
    前記仮想受動関節モデルのマスとバネとダンパの特性に対応したパラメータを、前記構造物の実稼動データと前記仮想受動関節モデルの数値演算結果との偏差を、前記構造物を稼動させながら演算し、
    その偏差を用いて、適応調整則によりモデルパラメータをオンラインで同定し、
    前記同定された前記モデルを用いてコントローラパラメータを調整することを特徴とする仮想受動関節モデルの制御方法。
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