JP2004264495A - トナーおよびこのトナーを用いた画像形成装置 - Google Patents
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Abstract
【課題】加熱定着時の実際のトナー挙動により即した動的粘弾性特性を用いて、トナーの低温定着性およびトナーの耐オフセット性をより効果的に向上する。
【解決手段】トナーの、粘弾性特性の線形領域から非線形領域へのステップストレイン測定において、180℃での線形領域における貯蔵弾性率(G′(L1))と非線形領域における貯蔵弾性率(G′(NL))との比G′(L1)/G′(NL)が5〜20に設定され、かつG′(NL)が100〜400 dyn/cm2に設定されている。これにより、定着ニップ内でのトナーの溶融がスムーズに行われ、トナーの低温定着性およびトナーの耐オフセット性をより効果的に向上する。
【選択図】 図1
【解決手段】トナーの、粘弾性特性の線形領域から非線形領域へのステップストレイン測定において、180℃での線形領域における貯蔵弾性率(G′(L1))と非線形領域における貯蔵弾性率(G′(NL))との比G′(L1)/G′(NL)が5〜20に設定され、かつG′(NL)が100〜400 dyn/cm2に設定されている。これにより、定着ニップ内でのトナーの溶融がスムーズに行われ、トナーの低温定着性およびトナーの耐オフセット性をより効果的に向上する。
【選択図】 図1
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、電子写真、静電記録、静電印刷などにおける静電画像をトナー像に現像し、このトナー像を加熱定着により定着して画像を形成するために使用するトナーの技術分野およびこのトナーを用いて画像を形成する、複写機、プリンタ、ファックス等の画像形成装置の技術分野に属する。
【0002】
【従来の技術】
電子写真法として、光導電性物質からなる感光体上に静電荷像を形成し、次いで該静電荷像を現像ローラ上に担持したトナーを用いて現像し、感光体上に現像されたトナー画像を、直接、または中間転写体を介して紙等の記録媒体上に転写し、更に、記録媒体上のトナー画像を加熱ローラー等の定着ローラにより紙等の記録媒体に圧着加熱して定着する方法が知られている。
【0003】
この方法に使用されるトナーとしては加熱ローラに溶融トナーが付着する、いわゆる低温または高温オフセット現象を生じないこと、また、記録媒体上に定着されたトナー画像の定着強度に大きいこと等の優れた定着性が要求される。
加熱ローラを使用した定着にあっては、トナーの定着性、耐オフセット性を制御する要因として、トナーの動的粘弾性特性における貯蔵弾性率G′と損失弾性率G″が影響することは良く知られている。貯蔵弾性率G′と損失弾性率G″は、一般的な粘弾性を有する物質の振動実験において複素弾性率で定義される粘弾性特性であり、複素弾性率の実数部分を貯蔵弾性率G′、虚数部分を損失弾性率G″といい、具体的には貯蔵弾性率はトナーの弾性の度合を示す指標とされ、また、損失弾性率は粘性の度合を示す指標とされている。このトナーの動的粘弾性特性は温度によって変化する温度依存性、周波数によって変化する周波数依存性および歪み量によって変化する歪み依存性、すなわち温度。周波数および歪みによって線形に挙動する線形領域あるいは非線形の挙動をする非線形領域を示す特性を有している。
【0004】
トナー定着時のトナーの溶融状態をこのようなトナーの温度依存性の動的粘弾性特性により表すことで、トナー画像の定着性、耐オフセット性、耐ブロッキング性をそれぞれ改良することが提案されている(例えば、特許文献1を参照)。
すなわち、この提案のトナーは、結着樹脂,着色剤及びワックスを含有したトナーであり、損失弾性率と貯蔵弾性率の比(G″/G′=tanδ)が1.0となる温度を55〜70℃の温度領域に設定し、そのときの弾性率を1.5×108Pa以下に設定し、貯蔵弾性率G′(40)と貯蔵弾性率G′(50)の比(G′(40)/G′(50))を1.5〜5.0に設定し、貯蔵弾性率G′(50)と貯蔵弾性率G′(60)との比(G′(50)/G′(60))を3〜20に設定し、貯蔵弾性率G′(70)と貯蔵弾性率G′(100)の比(G′(70)/G′(100))を50〜250に設定し、貯蔵弾性率G′(110)と貯蔵弾性率G′(140)の比(G′(110) /G′(140)を2〜20に設定することで、低温定着性、耐オフセット性および耐ブロッキング性を良好にしている。
【特許文献1】
特開平10−171156号公報([要約]等)
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、前述のような加熱定着においては、トナーは定着ニップ前(入口)では線形領域(L1)の挙動、定着ニップ部では非線形領域(NL)の挙動、定着ニップ出口では線形領域(L2)の挙動をするようになる。
しかしながら、前述の特許文献1に提案されているトナーでは、線形領域で測定した温度依存性の動的粘弾性が用いられている。前述のように加熱定着時において、線形領域(L1)−非線形領域(NL)−線形領域(L2)の挙動をするトナーに対して、このように線形領域で測定した温度依存性の動的粘弾性を単に用いただけでは、加熱定着時におけるトナーの実際の挙動に即したものではない。このため、トナーの低温定着性および耐オフセット性の改良が十分にかつ効果的に行われているとはいえない。
このように、従来のトナーの定着特性の改良では十分にかつ効果的に改良が行われているとはいえず、トナーの低温定着性および耐オフセット性を更に改良する余地がある。
【0006】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであって、その目的は、加熱定着時の実際のトナー挙動により即した動的粘弾性特性を用いることで、トナーの低温定着性およびトナーの耐オフセット性をより効果的に向上することのできるトナーを提供することである。
また、本発明の他の目的は、低温定着を可能にしつつトナーのオフセットを防止して、良好な高品質のトナー画像を形成することのできる画像形成装置を提供することである
【0007】
【課題を解決するための手段】
前述の課題を解決するために、請求項1の発明のトナーは、結着樹脂と少なくとも着色剤とからなり、粘弾性特性の線形領域から非線形領域へのステップストレイン測定において、180℃での線形領域における貯蔵弾性率(G′(L1))と非線形領域における貯蔵弾性率(G′(NL))との比G′(L1)/G′(NL)が5〜20であり、かつG′(NL)が100〜400dyn/cm2である関係を満たすことを特徴としている。
また、請求項2の発明のトナーは、離型剤が結着樹脂100重量部に対して4重量部以下含まれることを特徴としている。
【0008】
更に、請求項3の発明の画像形成装置は、静電潜像が形成される像担持体と、この像担持体上の静電潜像をトナーによりトナー像に現像する現像器と、前記像担持体上のトナー像を記録媒体に転写する転写器と、前記記録媒体に転写されたトナー像を加熱定着する定着器とを少なくとも備えている画像形成装置において、前記トナーが、請求項1または2記載のトナーであり、前記定着器がオイルレス2ローラを備えた定着器であることを特徴としている。
【0009】
【発明の作用および効果】
このように構成された本発明のトナーにおいては、粘弾性特性の線形領域から非線形領域へのステップストレイン測定において、180℃での線形領域における貯蔵弾性率(G′(L1))と非線形領域における貯蔵弾性率(G′(NL))との比G′(L1)/G′(NL)を5〜20に設定し、かつG′(NL)を100〜400dyn/cm2に設定しているので、加熱定着時において、トナーのもつ歪み依存性の動的粘弾性特性の線形領域および非線形領域が効果的に利用され、実際の挙動により一層即したトナーを得ることができる。
【0010】
したがって、本発明のトナーによれば、定着ニップ内でのトナーの溶融がスムーズに行われ、トナーの低温定着性およびトナーの耐オフセット性をより効果的に向上させることができるようになる。
特に、トナーに離型剤が結着樹脂100重量部に対して4重量部より大きく含まれると、透明性が阻害されるので、離型剤の含有量を結着樹脂100重量部に対して4重量部以下に設定することで、透明性を向上することができる。
【0011】
本発明の画像形成装置においては、前述のような低温定着性および耐オフセット性の向上したトナーあるいはこれらに加えて透明性の向上したトナーと、オイルレス2ローラ定着器とを有機的に組み合わせることで、オイルレスで低温定着を可能にしつつオフセットを防止し、更には良好な透明性を有する高品質のトナー画像を形成することができる。
【0012】
【発明の実施の形態】
本発明にかかるトナーは、定着ニップ前(入口)では線形領域(L1)の挙動、定着ニップ部では非線形領域(NL)の挙動、定着ニップ出口では線形領域(L2)の挙動をする動的粘弾性特性を有している。この動的粘弾性特性は歪みによって変わる歪み依存性の特性である。例えば、後述する実施例3のトナーでは、図1に示すような180℃での粘弾性特性のステップストレイン測定において、測定開始後300secまでは、貯蔵弾性率G′dyn/cm2および損失弾性率G″dyn/cm2がともに線形のG′(L1)dyn/cm2およびG″(L1)dyn/cm2の挙動をし、次の300secから600secまでは、歪み量を増加することにより貯蔵弾性率G′dyn/cm2および損失弾性率G″dyn/cm2がともに非線形のG′(NL)dyn/cm2およびG″(NL)dyn/cm2の挙動をし、更に600secから900secまでは、歪み量L1と同じにすることにより貯蔵弾性率G′dyn/cm2および損失弾性率G″dyn/cm2がともに線形のG′(L2)dyn/cm2およびG″(L2)dyn/cm2の挙動をする動的粘弾性特性を有している。
そして、本発明のトナーの結着樹脂は、粘弾性特性の線形領域から非線形領域へのステップストレイン測定において、180℃での線形領域における貯蔵弾性率(G′(L1))および非線形領域における貯蔵弾性率(G′(NL))が、
G′(L1)/G′(NL)が5〜20であり、かつ
G′(NL)が100〜400dyn/cm2である
関係を満たすように設定されている。
このように構成された本発明のトナーにおいては、加熱定着時において、トナーのもつ歪み依存性の動的粘弾性特性の線形領域および非線形領域が効果的に利用され、実際の挙動により一層即したトナーを得ることができる。
【0013】
その場合、G′(NL)を100〜400dyn/cm2の範囲であって、比G′(L1)/G′(NL)が5未満であると、弾性が低くなり過ぎ、耐オフセット性に問題が生じる。また、G′(NL)を100〜400dyn/cm2の範囲であって、比G′(L1)/G′(NL)が20より大きいと、弾性が大きくなり過ぎ、低温定着性に問題が生じる。
したがって、本発明のトナーによれば、定着ニップ内でのトナーの溶融がスムーズに行われ、トナーの低温定着性およびトナーの耐オフセット性をより効果的に向上させることができるようになる。
【0014】
特に、トナーに離型剤が結着樹脂100重量部に対して4重量部より大きく含まれると、透明性が阻害されるので、離型剤の含有量を結着樹脂100重量部に対して4重量部以下に設定することで、透明性を向上することができる。
【0015】
本発明のトナーに用いられ、定着領域における粘弾性特性を制御できる結着樹脂としては、結着樹脂が結晶領域と非晶質領域の双方を有するものがよく、例えば、ウレタン結合やウレア結合を有する樹脂、結晶ポリエステル樹脂と非晶質ポリエステル樹脂とをブレンドした樹脂、結晶性部分と非晶質部分とをブロック重合したポリエステル樹脂等がある。特に、結着樹脂として、非晶性ポリエステル、ブロックポリエステルを用いるのが好ましい。
【0016】
また、予め結着樹脂の重合を制御すると共に定着時に所定以上の熱エネルギーが加えられた際に機能発現する重合開始剤や架橋開始剤を配合しておくことにより、定着温度領域での熱エネルギーの付与によりトナー中の結着樹脂がさらに重合し、結着樹脂が架橋したり分子量が増大するように設計した組成物においても同様に定着領域における粘弾性特性を制御できる。
【0017】
本発明のトナーに用いられる結着樹脂は高分子ポリマーからなるが、一般に、高分子ポリマーの性状はトナーの溶融状態において粘弾性特性を有する。この粘弾性特性の1つである緩和弾性率G(t)[Pa]は、後述する応力緩和測定において、ある歪みを与えたとき、トナーの応力が時間t[sec]とともに緩和されていくことから、この緩和時間t[sec]とともに小さくなっていく特性を呈する。
【0018】
以下に、このような粘弾性特性を示すトナーにおける結着樹脂として、従来から知られているポリエステル樹脂を用いた結着樹脂を例として、本発明のトナーを説明する。
この例のトナーは、ポリエステル樹脂中に着色剤や荷電制御剤とを混練・微粉砕してトナー粒子とされている。そして、この結着樹脂は着色剤粒子等をトナー粒子中に保持し、定着に際しては定着ローラーでの熱と圧力で軟化し、紙等の転写材にトナー粒子を付着させる機能を有するが、低温定着を目的として、結着樹脂の分子量を低くし軟化温度を下げると、ガラス転移温度の低下や強度低下が生じ、着色剤の保持性や耐オフセット性、定着像強度、さらには保存性等が低下する。
【0019】
[トナーの構成材料]
本発明のトナーは、少なくとも、主成分としての樹脂(以下、単に「樹脂」ともいう)を含む原料を用いて製造することができる。
以下、本発明のトナーの製造に用いられる原料の各成分について説明する。
【0020】
1.樹脂(バインダー樹脂)
本発明においては、樹脂(バインダー樹脂)は、主として、ポリエステル系樹脂で構成されたものである。樹脂中におけるポリエステル系樹脂の含有量は、50wt%以上であるのが好ましく、80wt%以上であるのがより好ましい。
一般に、ポリエステル系樹脂は、アルコール成分(2個以上の水酸基を有するものを含む)とカルボン酸成分(2価以上のカルボン酸またはその誘導体等を含む)とで構成されるものである。
【0021】
アルコール成分としては、2個以上の水酸基を有するものを用いることができ、例えば、エチレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,2−プロピレングリコール、1,3−プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、ジエチレングリコール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ジプロピレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、1,2−プロパンジオール、1,3−ブタンジオール、2,3−ブタンジオール、ネオペンチルグリコール(2,2−ジメチルプロパン−1,3−ジオール)、1,2−ヘキサンジオール、2,5−ヘキサンジオール、2−メチル−2,4−ペンタンジオール、3−メチル−1,3−ペンタンジオール、2−エチル−1,3−ヘキサンジオール、2−ブチル−2−エチル−1,3−プロパンジオール、2,4−ジエチル−1,5−ペンタンジオール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコール等の鎖状ジオール類、またはポリオキシプロピレン(2.2)−2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、ポリオキシプロピレン(3.3)−2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、ポリオキシエチレン(2.0)−2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、ポリオキシプロピレン(2.0)−ポリオキシエチレン(2.0)−2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、ポリオキシプロピレン(6)−2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン等のビスフェノールAのアルキレンオキシド付加物、2,2−ビス(4−ヒドロキシシクロヘキシル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシシクロヘキシル)プロパンのアルキレンオキサイド付加物、1,4−シクロヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、水添ビスフェノールA、水添ビスフェノールAのアルキレンオキサイド付加物等の環状ジオール類、またはソルビトール、1,2,3,6−ヘキサンテトロール、1,4−ソルビタン、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、トリペンタエリスリトール、1,2,4−ブタントリオール、1,2,5−ペンタントリオール、グリセロール、2−メチルプロパントリオール、2−メチル−1,2,4−ブタントリオール、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、1,3,5−トリヒドロキシメチルベンゼン等の3価以上の多価アルコール類が挙げられる。
【0022】
特に、本発明では、主としてアルコール成分が、2個の水酸基を有する脂肪族ジオールで構成されたものであることを特徴とする。なお、アルコール成分が、3個以上の水酸基を有する脂肪族アルコールで構成されたものであってもよい。2個以上の水酸基を有する脂肪族アルコールとしては、例えば、エチレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,2−プロピレングリコール、1,3−プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、ジエチレングリコール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ジプロピレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、1,2−プロパンジオール、1,3−ブタンジオール、2,3−ブタンジオール、ネオペンチルグリコール(2,2−ジメチルプロパン−1,3−ジオール)、1,2−ヘキサンジオール、2,5−ヘキサンジオール、2−メチル−2,4−ペンタンジオール、3−メチル−1,3−ペンタンジオール、2−エチル−1,3−ヘキサンジオール、2−ブチル−2−エチル−1,3−プロパンジオール、2,4−ジエチル−1,5−ペンタンジオール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコール等の鎖状ジオール類、または2,2−ビス(4−ヒドロキシシクロヘキシル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシシクロヘキシル)プロパンのアルキレンオキサイド付加物、1,4−シクロヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、水添ビスフェノールA、水添ビスフェノールAのアルキレンオキサイド付加物等の環状ジオール類等が挙げられる。
このように、本発明では、主としてアルコール成分が、脂肪族ジオールで構成されたものであるが、その50mol%以上が脂肪族ジオールで構成されたものであるのが好ましく、その80mol%以上が脂肪族ジオールで構成されたものであるのがより好ましい。
【0023】
カルボン酸成分としては、例えば、2価以上のカルボン酸またはその誘導体(例えば、酸無水物、低級アルキルエステル等)等を用いることができ、例えば、o−フタル酸(フタル酸)、テレフタル酸、イソフタル酸、コハク酸、アジピン酸、セバシン酸、アゼライン酸、オクチルコハク酸、シクロヘキサンジカルボン酸、フマル酸、マレイン酸、イタコン酸、トリメリット酸、ピロメリット酸およびこれらの誘導体(例えば、無水物、低級アルキルエステル等)等が挙げられる。
【0024】
特に、本発明では、カルボン酸成分が、2価のジカルボン酸で構成されたものであるのが好ましい。
2価のジカルボン酸としては、例えば、o−フタル酸(フタル酸)、テレフタル酸、イソフタル酸、コハク酸、アジピン酸、セバシン酸、アゼライン酸、オクチルコハク酸、シクロヘキサンジカルボン酸、フマル酸、マレイン酸、イタコン酸およびこれらの誘導体(例えば、無水物、低級アルキルエステル等)等が挙げられる。
【0025】
また、本発明では、ポリエステル系樹脂として、以下で説明するようなブロックポリエステルと、非晶性ポリエステルとを含むものを用いるのが特に好ましい。以下、これらについて詳細に説明する。
【0026】
1−1.ブロックポリエステル
ブロックポリエステルは、アルコール成分とカルボン酸成分とを縮合してなる結晶性ブロックと、前記結晶性ブロックより結晶性の低い非晶性ブロックとを有するブロック共重合体で構成されたものである。
【0027】
▲1▼結晶性ブロック
結晶性ブロックは、非晶性ブロックや非晶性ポリエステルに比べて、高い結晶性を有している。すなわち、分子配列構造が、非晶性ブロックや非晶性ポリエステルに比べて強固で安定したものである。このため、結晶性ブロックは、トナー全体としての強度を向上させるのに寄与する。その結果、最終的に得られるトナーは、機械的ストレスに強く、耐久性、保存性に優れたものとなる。
ところで、結晶性の高い樹脂は、一般に、結晶性の低い樹脂に比べて、いわゆるシャープメルト性を有している。すなわち、結晶性の高い樹脂は、示差走査熱量分析(DSC)による融点の吸熱ピークの測定を行ったとき、結晶性の低い樹脂に比べて、吸熱ピークがシャープな形状として現れる性質を有している。
【0028】
一方、結晶性ブロックは、上述したように、結晶性の高いものである。したがって、結晶性ブロックは、ブロックポリエステルにシャープメルト性を付与する機能を有する。このため、最終的に得られるトナーは、後述する非晶性ポリエステルが十分に軟化するような、比較的高い温度(ブロックポリエステルの融点付近の温度)においても、優れた形状の安定性を保持することができる。したがって、このようなブロックポリエステルを用いた場合には、幅広い温度領域で十分な定着性(定着強度)を発揮することができる。
また、このような結晶性ブロックを有することにより、トナー中に、高硬度で適度な大きさの結晶を析出させることができる。このような結晶が存在すると、トナーの形状の安定性が特に優れたものとなり、機械的ストレスに対し、特に優れた安定性を示すものとなる。また、このような結晶がトナー中に存在すると、後述するような外添剤が、トナー粒子(母粒子)の表面付近に、より確実に保持されることとなり(外添剤が母粒子中に埋没するのを効果的に防止することができ)、外添剤が有する機能(例えば、優れた流動性、帯電性の付与等の効果)を十分に発揮させることができる。
【0029】
以下、結晶性ブロックを構成する成分について説明する。
結晶性ブロックを構成するアルコール成分としては、2個以上の水酸基を有するものを用いることができ、中でも水酸基を2個有するジオール成分であるのが好ましい。このような水酸基を2個有するジオール成分としては、例えば、芳香環構造を有する芳香族ジオールや、芳香環構造を有さない脂肪族ジオール等が挙げられ、芳香族ジオールとしては、例えば、ビスフェノールAや、ビスフェノールAのアルキレンオキサイド付加物(例えば、ポリオキシプロピレン(2.2)−2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、ポリオキシプロピレン(3.3)−2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、ポリオキシエチレン(2.0)−2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、ポリオキシプロピレン(2.0)−ポリオキシエチレン(2.0)−2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、ポリオキシプロピレン(6)−2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン等)等が挙げられ、また、脂肪族ジオールとしては、例えば、エチレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,2−プロピレングリコール、1,3−プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、ジエチレングリコール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ジプロピレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、1,2−プロパンジオール、1,3−ブタンジオール、2,3−ブタンジオール、ネオペンチルグリコール(2,2−ジメチルプロパン−1,3−ジオール)、1,2−ヘキサンジオール、2,5−ヘキサンジオール、2−メチル−2,4−ペンタンジオール、3−メチル−1,3−ペンタンジオール、2−エチル−1,3−ヘキサンジオール、2−ブチル−2−エチル−1,3−プロパンジオール、2,4−ジエチル−1,5−ペンタンジオール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコール等の鎖状ジオール類、または2,2−ビス(4−ヒドロキシシクロヘキシル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシシクロヘキシル)プロパンのアルキレンオキサイド付加物、1,4−シクロヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、水添ビスフェノールA、水添ビスフェノールAのアルキレンオキサイド付加物等の環状ジオール類等が挙げられる。
【0030】
このように、結晶性ブロックを構成するジオール成分は、特に限定されないが、少なくともその一部が脂肪族ジオールであるのが好ましく、その80mol%以上が脂肪族ジオールであるのがより好ましく、その90mol%以上が脂肪族ジオールであるのがさらに好ましい。これにより、ブロックポリエステル(結晶性ブロック)の結晶性を特に高いものとすることができ、上述した効果がさらに顕著なものとなる。
【0031】
また、結晶性ブロックを構成するジオール成分は、炭素数が3〜7の直鎖状の分子構造を有し、その両端に水酸基を有するもの(一般式:HO−(CH2)n−OHで表されるジオール(ただし、n=3〜7))を含むのが好ましい。このようなジオール成分が含まれることにより、結晶性が向上し、摩擦係数が低下するため、機械的ストレスに強く、耐久性や保存性に特に優れたものとなる。このようなジオールとしては、例えば、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール等が挙げられるが、この中でも1,4−ブタンジオールが好ましい。1,4−ブタンジオールを含むことにより、前述した効果は特に顕著なものとなる。
【0032】
結晶性ブロックを構成するジオール成分として1,4−ブタンジオールを含む場合、結晶性ブロックを構成するジオールの50mol%以上が1,4−ブタンジオールであるのがより好ましく、その80mol%以上が1,4−ブタンジオールであるのがさらに好ましい。これにより、前述した効果はさらに顕著なものとなる。
【0033】
結晶性ブロックを構成するカルボン酸成分としては、2価以上のカルボン酸またはその誘導体(例えば、酸無水物、低級アルキルエステル等)等を用いることができるが、2価のジカルボン酸またはその誘導体等を用いるのが好ましい。このような2価のジカルボン酸成分としては、例えば、o−フタル酸(フタル酸)、テレフタル酸、イソフタル酸、コハク酸、アジピン酸、セバシン酸、アゼライン酸、オクチルコハク酸、シクロヘキサンジカルボン酸、フマル酸、マレイン酸、イタコン酸およびこれらの誘導体(例えば、無水物、低級アルキルエステル等)等が挙げられる。
【0034】
このように、結晶性ブロックを構成するジカルボン酸成分は、特に限定されないが、少なくともその一部がテレフタル酸骨格を有するものであるのが好ましく、その50mol%以上がテレフタル酸骨格を有するものであるのがより好ましく、その80mol%以上がテレフタル酸骨格を有するものであるのがさらに好ましい。これにより、最終的に得られるトナーは、トナーとして求められる各種特性のバランスが特に優れたものとなる。
【0035】
ブロックポリエステル中における結晶性ブロックの含有率は、特に限定されないが、5〜60mol%であるのが好ましく、10〜40mol%であるのがより好ましい。結晶性ブロックの含有率が前記下限値未満であると、ブロックポリエステルの含有量等によっては、上述したような結晶性ブロックを有することによる効果が十分に発揮されない可能性がある。一方、結晶性ブロックの含有率が前記上限値を超えると、相対的に非晶性ブロックの含有率が低下するため、ブロックポリエステルと、後述する非晶性ポリエステルとの相溶性が低下する可能性がある。
なお、結晶ブロックは、上記のようなアルコール成分、カルボン酸成分以外の成分を含むものであってもよい。
【0036】
上記のような結晶性ブロックを有するブロックポリエステルの平均分子量(重量平均分子量)Mwは、特に限定されないが、1×104〜3×105であるのが好ましく、1.2×104〜1.5×105であるのがより好ましい。平均分子量Mwが前記下限値未満であると、最終的に得られるトナーの機械的強度が低下し、十分な耐久性(保存性)が得られない可能性がある。また、平均分子量Mwが小さすぎると、トナーの定着時に凝集破壊を起こし易くなり、耐オフセット性が低下する傾向を示す。一方、平均分子量Mwが前記上限値を超えると、トナーの定着時に粒界破壊を起こし易くなり、紙等の転写材(記録媒体)への濡れ性も低下し、定着に要する熱量も大きくなる。
【0037】
ブロックポリエステルのガラス転移点Tgは、特に限定されないが、50〜75℃であるのが好ましく、55〜70℃であるのがより好ましい。ガラス転移点が前記下限値未満であると、トナーの保存性(耐熱性)が低下し、使用環境等によっては、トナー粒子間での融着が発生する場合がある。一方、ガラス転移点が前記上限値を超えると、低温定着性や透明性が低下する。また、ガラス転移点が高すぎると、後述するような熱球形化処理の効果が十分に発揮されない可能性がある。なお、ガラス転移点は、JIS K 7121に準拠して測定することができる。
【0038】
ブロックポリエステルの軟化点T1/2は、特に限定されないが、90〜160℃であるのが好ましく、100〜150℃であるのがより好ましい。軟化点が前記下限値未満であると、トナーとしての保存性が低下し、十分な耐久性が得られない可能性がある。また、軟化点が低すぎると、トナーの定着時に凝集破壊を起こし易くなり、耐オフセット性が低下する傾向を示す。一方、軟化点が前記上限値を超えると、トナーの定着時に粒界破壊を起こし易くなり、紙等の転写材(記録媒体)への濡れ性も低下し、定着に要する熱量も大きくなる。なお、軟化点T1/2は、例えば、フローテスタを用い、サンプル量:1g、ダイ孔径:1mm、ダイ長さ:1mm、荷重:20kgf、予熱時間:300秒、測定開始温度:50℃、昇温速度:5℃/分という条件で測定したときに得られる解析用フローチャートのh/2に相当するフロー曲線上の点の温度として求めることができる。
【0039】
ブロックポリエステルの融点Tm(後述する示差走査式熱量分析による融点の吸熱ピークの測定を行ったときのピークの中心値Tmp)は、特に限定されないが、190℃以上であるのが好ましく、190〜230℃であるのがより好ましい。融点が190℃未満であると、耐オフセット性の向上等の効果が十分に得られない可能性がある。また、融点が高すぎると、後述する混練工程等において、材料温度を比較的高い温度にしなければならなくなる。その結果、樹脂材料のエステル交換反応が進行しやすくなり、樹脂設計を最終的に得られるトナーに十分に反映させることが困難になる場合がある。なお、融点は、例えば、示差走査熱量分析(DSC)による吸熱ピークの測定により求めることができる。
【0040】
また、最終的に得られるトナーが、後述するような定着ローラを有する定着装置で用いられるものである場合、ブロックポリエステルの融点(後述する示差走査式熱量分析による融点の吸熱ピークの測定を行ったときのピークの中心値Tmp)をTm(B)[℃]、定着ローラの表面の標準設定温度をTfix[℃]としたとき、Tfix≦Tm(B)≦(Tfix+100)の関係を満足するのが好ましく、(Tfix+10)≦Tm(B)≦(Tfix+70)の関係を満足するのがより好ましい。このような関係を満足することにより、後述する定着装置の定着ローラへのトナーの付着を効果的に防止することができる。また、ブロックポリエステルは、前述したように適度な大きさの結晶を作りやすい性質を有しているため、記録媒体へのトナーの定着後にも、安定性、耐久性を維持することができる。特に、ブロックポリエステルを後述する非晶性ポリエステルと組み合わせて用いる場合、定着時に、後述する非晶性ポリエステルが十分に軟化することができる。このため、記録媒体へのトナーの定着性(定着強度)を十分に高めることができ、さらに、トナーの低温定着性も優れたものとなる。また、ブロックポリエステルは、高硬度な結晶を作りやすいものであるため、トナーは、定着後の安定性にも優れたものとなる。
【0041】
また、ブロックポリエステルの融点は、後述する非晶性ポリエステルの軟化点より高いのが好ましい。これにより、最終的に得られるトナーの形状の安定性が向上し、機械的ストレスに対し、特に優れた安定性を示すものとなる。また、ブロックポリエステルの融点が後述する非晶性ポリエステルの軟化点より高いと、例えば、後述する熱球形化処理において、ブロックポリエステルにより、トナー製造用粉末の形状の安定性をある程度確保しつつ、非晶性ポリエステルを十分に軟化させることができる。その結果、熱球形化処理を効率良く行うことができ、比較的容易に、最終的に得られるトナー(トナー粒子)の円形度を比較的高いものとすることができる。
【0042】
ところで、前述したように、ブロックポリエステルは、結晶性の高い結晶性ブロックを有しているため、比較的結晶性の低い樹脂材料(例えば、後述する非晶性ポリエステル等)に比べて、いわゆるシャープメルト性を有している。
結晶性を表す指標としては、例えば、示差走査熱量分析(DSC)による融点の吸熱ピークの測定を行ったときのピークの中心値をTmp[℃]、ショルダーピーク値をTms[℃]としたときに、ΔT=Tmp−Tmsで表されるΔT値等が挙げられる。このΔT値が小さいほど結晶性が高い。
【0043】
ブロックポリエステルのΔT値は、50℃以下であるのが好ましく、20℃以下であるのがより好ましい。Tmp[℃]、Tms[℃]の測定条件は特に限定されないが、例えば、試料となるブロックポリエステルを、昇温速度:10℃/分で200℃まで昇温し、さらに、降温速度:10℃/分で降温した後、昇温速度:10℃/分で昇温して測定することができる。
【0044】
また、ブロックポリエステルは、後述する非晶性ポリエステルより結晶性が高い。したがって、非晶性ポリエステルのΔT値をΔTA[℃]、ブロックポリエステルのΔT値をΔTB[℃]としたとき、ΔTA>ΔTBの関係を満足する。特に、本発明では、ΔTA−ΔTB>10の関係を満足するのが好ましく、ΔTA−ΔTB>30の関係を満足するのがより好ましい。このような関係を満足することにより、上述した効果はより顕著なものとなる。ただし、非晶性ポリエステルの結晶性が特に低い場合、TmpまたはTmsの少なくとも一方が測定困難(判別困難)であることがある。このような場合、ΔTAは∞[℃]とする。
【0045】
ブロックポリエステルは示差走査熱量分析による融点の吸熱ピークの測定を行ったときに求められる融解熱Efが5mJ/mg以上であるのが好ましく、15mJ/mg以上であるのがより好ましい。融解熱Efが5mJ/mg未満であると、結晶性ブロックを有することによる前述したような効果が十分に発揮されない可能性がある。ただし、融解熱としては、ガラス転移点の吸熱ピークの熱量は含まないものとする。融点の吸熱ピークの測定条件は特に限定されないが、例えば、試料となるブロックポリエステルを、昇温速度:10℃/分で200℃まで昇温し、さらに、降温速度:10℃/分で降温した後、昇温速度:10℃/分で昇温したときに測定される値を融解熱として求めることことができる。
【0046】
また、ブロックポリエステルは、リニア型ポリマー(架橋構造を有さないポリマー)であるのが好ましい。リニア型ポリマーは、架橋型のものに比べて、摩擦係数が小さい。これにより、特に優れた離型性が得られ、トナーの転写効率がさらに向上する。
なお、ブロックポリエステルは、前述した結晶性ブロック、非晶性ブロック以外のブロックを有するものであってもよい。
【0047】
1−2.非晶性ポリエステル
非晶性ポリエステルは、前述したブロックポリエステルより低い結晶性を有するものである。
非晶性ポリエステルは、主として、トナーを構成する各成分(例えば、後述するような着色剤、ワックス、帯電防止剤等)の分散性や、トナー製造時における混練物の粉砕性、トナーの定着性(特に、低温定着性)、透明性、機械的特性(例えば、弾性、機械的強度等)、帯電性、耐湿性等の機能を向上させるのに寄与する成分である。言い換えると、以下で詳述するような非晶性ポリエステルがトナー中に含まれないと、前記のようなトナーとして求められる特性を十分に発揮するのが困難となる場合がある。
【0048】
以下、非晶性ポリエステルを構成する成分について説明する。
非晶性ポリエステルを構成するアルコール成分としては、2個以上の水酸基を有するものを用いることができ、中でも水酸基を2個有するジオールであるのが好ましい。このような水酸基を2個有するジオール成分としては、例えば、芳香環構造を有する芳香族ジオールや、芳香環構造を有さない脂肪族ジオール等が挙げられる。芳香族ジオールとしては、例えば、ビスフェノールA、ビスフェノールAのアルキレンオキサイド付加物等が挙げられ、また、脂肪族ジオールとしては、例えば、エチレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,2−プロピレングリコール、1,3−プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、ジエチレングリコール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ジプロピレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、1,2−プロパンジオール、1,3−ブタンジオール、2,3−ブタンジオール、ネオペンチルグリコール(2,2−ジメチルプロパン−1,3−ジオール)、1,2−ヘキサンジオール、2,5−ヘキサンジオール、2−メチル−2,4−ペンタンジオール、3−メチル−1,3−ペンタンジオール、2−エチル−1,3−ヘキサンジオール、2−ブチル−2−エチル−1,3−プロパンジオール、2,4−ジエチル−1,5−ペンタンジオール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコール等の鎖状ジオール類、または2,2−ビス(4−ヒドロキシシクロヘキシル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシシクロヘキシル)プロパンのアルキレンオキサイド付加物、1,4−シクロヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、水添ビスフェノールA、水添ビスフェノールAのアルキレンオキサイド付加物等の環状ジオール類等が挙げられる。
【0049】
非晶性ポリエステルを構成するカルボン酸成分としては、2価以上のカルボン酸またはその誘導体(例えば、酸無水物、低級アルキルエステル等)等を用いることができるが、2価のジカルボン酸またはその誘導体等を用いるのが好ましい。このような2価のジカルボン酸成分としては、例えば、o−フタル酸(フタル酸)、テレフタル酸、イソフタル酸、コハク酸、アジピン酸、セバシン酸、アゼライン酸、オクチルコハク酸、シクロヘキサンジカルボン酸、フマル酸、マレイン酸、イタコン酸およびこれらの誘導体(例えば、無水物、低級アルキルエステル等)等が挙げられる。
【0050】
このように、非晶性ポリエステルを構成するジカルボン酸成分は、特に限定されないが、少なくともその一部がテレフタル酸骨格を有するものであるのが好ましく、その80mol%以上がテレフタル酸骨格を有するものであるのがより好ましく、その90mol%以上がテレフタル酸骨格を有するものであるのがさらに好ましい。これにより、最終的に得られるトナーは、トナーとして求められる各種特性のバランスが特に優れたものとなる。
【0051】
また、非晶性ポリエステルを構成するモノマー成分は、その50mol%以上(より好ましくは、80mol%以上)が、前述した非晶性ブロックを構成するモノマー成分と同一であるのが好ましい。すなわち、非晶性ポリエステルは、非晶性ブロックと同様のモノマー成分で構成されたものであるのが好ましい。これにより、ブロックポリエステルと非晶性ポリエステルとの相溶性が、特に優れたものとなる。ただし、ここでの「モノマー成分」は、ブロックポリエステル、非晶性ポリエステルの製造に用いるモノマーを指すものではなく、ブロックポリエステル、非晶性ポリエステル中に含まれるモノマー成分のことを指す。
なお、非晶性ポリエステルは、上記のようなジオール成分、ジカルボン酸成分以外の成分を含むものであってもよい。
【0052】
非晶性ポリエステルの平均分子量(重量平均分子量)Mwは、特に限定されないが、5×103〜4×104であるのが好ましく、8×103〜2.5×104であるのがより好ましい。平均分子量Mwが前記下限値未満であると、最終的に得られるトナーの機械的強度が低下し、十分な耐久性(保存性)が得られない可能性がある。また、平均分子量Mwが小さすぎると、トナーの定着時に凝集破壊を起こし易くなり、耐オフセット性が低下する傾向を示す。一方、平均分子量Mwが前記上限値を超えると、トナーの定着時に粒界破壊を起こし易くなり、紙等の転写材(記録媒体)への濡れ性も低下し、定着に要する熱量も大きくなる。
非晶性ポリエステルのガラス転移点Tgは、特に限定されないが、50〜75℃であるのが好ましく、55〜70℃であるのがより好ましい。ガラス転移点が前記下限値未満であると、トナーの保存性(耐熱性)が低下し、使用環境等によっては、トナー粒子間での融着が発生する場合がある。一方、ガラス転移点が前記上限値を超えると、低温定着性や透明性が低下する。また、ガラス転移点が高すぎると、後述するような熱球形化処理の効果が十分に発揮されない可能性がある。なお、ガラス転移点は、JIS K 7121に準拠して測定することができる。
【0053】
非晶性ポリエステルの軟化点T1/2は、特に限定されないが、90〜160℃であるのが好ましく、100〜150℃であるのがより好ましく、100〜130℃であるのがさらに好ましい。軟化点が前記下限値未満であると、トナーとしての保存性が低下し、十分な耐久性が得られない可能性がある。また、軟化点が低すぎると、トナーの定着時に凝集破壊を起こし易くなり、耐オフセット性が低下する傾向を示す。一方、軟化点が前記上限値を超えると、トナーの定着時に粒界破壊を起こし易くなり、紙等の転写材(記録媒体)への濡れ性も低下し、定着に要する熱量も大きくなる。
【0054】
また、非晶性ポリエステルの軟化点をT1/2(A)[℃]、前述したブロックポリエステルの融点をTm(B)としたとき、Tm(B)>(T1/2(A)+60)の関係を満足するのが好ましく、(T1/2(A)+60)<Tm(B)<(T1/2(A)+150)の関係を満足するのがより好ましい。このような関係を満足することにより、例えば、比較的高い温度において、ブロックポリエステルがトナー粒子の形状の安定性をある程度確保しつつ、非晶性ポリエステルが十分に軟化することができる。これにより、トナーの定着温度付近での、トナー粒子の粘度を比較的低いものとし、かつ、トナーの応力緩和時間を長くすることができる。その結果、本発明のトナーを後述するような定着装置で用いた場合における定着性を、特に優れたものにすることができる。また、上記のような関係を満足することにより、例えば、後述する熱球形化処理をより効率良く行うことができ、得られるトナー(粒子)の円形度をさらに向上させることができる。また、上記のような関係を満足することにより、トナーはより幅広い温度領域において、優れた定着性を発揮することができる。
【0055】
なお、軟化点T1/2は、例えば、フローテスタを用い、サンプル量:1g、ダイ孔径:1mm、ダイ長さ:1mm、荷重:20kgf、予熱時間:300秒、測定開始温度:50℃、昇温速度:5℃/分という条件で測定したときに得られる、解析用フローチャートのh/2に相当するフロー曲線上の点の温度として求めることができる。
【0056】
また、非晶性ポリエステルは、リニア型ポリマー(架橋構造を有さないポリマー)であるのが好ましい。リニア型ポリマーは、架橋型のものに比べて、摩擦係数が小さい。これにより、特に優れた離型性が得られ、トナーの転写効率がさらに向上する。
【0057】
以上説明したように、ブロックポリエステルと、非晶性ポリエステルとを併用した場合、前述したような、ブロックポリエステルが有する特長と、非晶性ポリエステルが有する特長とを両立することができる。これにより、最終的に得られるトナーは、機械的ストレスに強く(十分な物理的安定性を有し)、かつ、幅広い温度領域で十分な定着性(定着強度)を発揮することが可能なものとなる。
【0058】
ブロックポリエステルと、非晶性ポリエステルとの配合比は、重量比で5:95〜45:55であるのが好ましく、10:90〜30:70であるのがより好まし。ブロックポリエステルの配合比が低くなりすぎると、前述したような相乗効果が十分に発揮されず、トナーの耐オフセット性を十分に向上させるのが困難になる可能性がある。一方、非晶性ポリエステルの配合比が低くなりすぎると、前述したような相乗効果が十分に発揮されず、十分な低温定着性や透明性が得られない可能性がある。また、非晶性ポリエステルの配合比が低くなりすぎると、例えば、トナーの製造方法の粉砕工程において、効率良く、均一な大きさに粉砕するのが困難となる場合がある。
【0059】
また、樹脂(バインダー樹脂)は、前述したポリエステル系樹脂以外の成分を含むものであってもよい。
ポリエステル系樹脂以外の樹脂成分(第3の樹脂成分)としては、例えば、ポリスチレン、ポリ−α−メチルスチレン、クロロポリスチレン、スチレン−クロロスチレン共重合体、スチレン−プロピレン共重合体、スチレン−ブタジエン共重合体、スチレン−塩化ビニル共重合体、スチレン−酢酸ビニル共重合体、スチレン−マレイン酸共重合体、スチレン−アクリル酸エステル共重合体、スチレン−メタクリル酸エステル共重合体、スチレン−アクリル酸エステル−メタクリル酸エステル共重合体、スチレン−α−クロルアクリル酸メチル共重合体、スチレン−アクリロニトリル−アクリル酸エステル共重合体、スチレン−ビニルメチルエーテル共重合体等のスチレン系樹脂でスチレンまたはスチレン置換体を含む単重合体または共重合体、エポキシ樹脂、ウレタン変性エポキシ樹脂、シリコーン変性エポキシ樹脂、塩化ビニル樹脂、ロジン変性マレイン酸樹脂、フェニール樹脂、ポリエチレン、ポリプロピレン、アイオノマー樹脂、ポリウレタン樹脂、シリコーン樹脂、ケトン樹脂、エチレン−エチルアクリレート共重合体、キシレン樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、テルペン樹脂、フェノール樹脂、脂肪族または脂環族炭化水素樹脂等が挙げられ、これらのうち1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0060】
原料中における樹脂の含有量は、特に限定されないが、50〜98wt%であるのが好ましく、85〜97wt%であるのがより好ましい。樹脂の含有量が前記下限値未満であると、最終的に得られるトナーにおいて、樹脂が有する機能(例えば、幅広い温度領域での良好な定着性等)が十分に発揮されない可能性がある。一方、樹脂の含有量が前記上限値を超えると、着色剤等の樹脂以外の成分の含有量が相対的に低下し、発色等のトナーの特性を十分に発揮するのが困難となる。
【0061】
着色剤としては、例えば、顔料、染料等を使用することができる。このような顔料、染料としては、例えば、カーボンブラック、スピリットブラック、ランプブラック(C.I.No.77266)、マグネタイト、チタンブラック、黄鉛、亜鉛黄、カドミウムイエロー、ミネラルファストイエロー、ネーブルイエロー、ナフトールエローS、ハンザイエローG、パーマネントエローNCG、クロムイエロー、ベンジジンイエロー、キノリンイエロー、タートラジンレーキ、赤口黄鉛、モリブデンオレンジ、パーマネントオレンジGTR、ピラゾロンオレンジ、ベンジジンオレンジG、カドミウムレッド、パーマネントレッド4R、ウオッチングレッドカルシウム塩、エオシンレーキ、ブリリアントカーミン3B、マンガン紫、ファストバイオレットB、メチルバイオレットレーキ、紺青、コバルトブルー、アルカリブルーレーキ、ビクトリアブルーレーキ、ファーストスカイブルー、インダンスレンブルーBC、群青、アニリンブルー、フタロシアニンブルー、カルコオイルブルー、クロムグリーン、酸化クロム、ピグメントグリーンB、マラカイトグリーンレーキ、フタロシアニングリーン、ファイナルイエローグリーンG、ローダミン6G、キナクリドン、ローズベンガル(C.I.45432)、C.I.ダイレクトレッド、C.I.ダイレクトレッド4、C.I.アシッドレッド、C.I.ベーシックレッド、C.I.モーダントレッド30、C.I.ピグメントレッド48:1、C.I.ピグメントレッド57:1、C.I.ピグメントレッド122、C.I.ピグメントレッド184、C.I.ダイレクトブルー1、C.I.ダイレクトブルー2、C.I.アシッドブルー9、C.I.アシッドブルー15、C.I.ベーシックブルー3、C.I.ベーシックブルー5、C.I.モーダントブルー7、C.I.ピグメントブルー15:1、C.I.ピグメントブルー15:3、C.I.ピグメントブルー5:1、C.I.ダイレクトグリーン6、C.I.ベーシックグリーン4、C.I.ベーシックグリーン6、C.I.ピグメントイエロー17、C.I.ピグメントイエロー93、C.I.ピグメントイエロー97、C.I.ピグメントイエロー12、C.I.ピグメントイエロー180、C.I.ピグメントイエロー162、ニグロシン染料(C.I.No.50415B)、金属錯塩染料、シリカ、酸化アルミニウム、マグネタイト、マグヘマイト、各種フェライト類、酸化第二銅、酸化ニッケル、酸化亜鉛、酸化ジルコニウム、酸化チタン、酸化マグネシウム等の金属酸化物や、Fe、Co、Niのような磁性金属を含む磁性材料等が挙げられ、これらのうち、1種または2種以上を組合せて用いることができる。
【0062】
本発明における結着樹脂は、分子間結合力が大きく、高結晶性ポリマーであるため、分子量を低下させTmを下げる分子設計をした時のTgの低下幅を小さくすることができ、低Tmと高Tgを両立させることができ、また、50%流出点における溶融粘度が2×102 〜3×104 Pa・sとでき、オイルレス定着用トナーとして適したものとできる。
【0063】
本発明の結着樹脂は、重量平均分子量(Mw)は5000〜100000、好ましくは6000〜70000である。重量平均分子量(Mw)が5000より小さいと、トナー内部凝集力が小さくなり過ぎて耐高温オフセット性に問題が生じ、また、100000より大きいと、生産上および粉砕に問題が生じる。
【0064】
本発明のトナーは、軟化点(Tm)が90℃〜150℃、好ましくは100℃〜140℃、さらに好ましくは100℃〜130℃の範囲にある。軟化点(Tm)が90℃より低いと耐高温オフセット性に問題が生じ、また、150℃より高いと、定着強度に問題が生じる。
また、ガラス転移温度(Tg)は50℃〜75℃、好ましくは55℃〜70℃の範囲にある。ガラス転移温度(Tg)が55℃より低いと、熱保存安定性に問題が生じ、また、75℃より高いと、粉砕性等の生産性の低下の問題が生じる。
【0065】
本発明のトナーは、荷電制御剤(CCA)、必要に応じて離型剤、分散剤、磁性粒子等を含有してもよく、原料であるポリオール類に分散してもよく、また、樹脂を形成した後適宜混練により配合してもよい。
荷電制御剤(CCA)としては、摩擦帯電により正または負の荷電を与え得るものであれば、特に限定されず有機あるいは無機の各種のものを用いることができる。
【0066】
正荷電制御剤としては、例えば、ニグロシンベースEX(オリエント化学工業(株)製)、第4級アンモニウム塩P−51(オリエント化学工業(株)製)、ニグロシン ボントロンN−01(オリエント化学工業(株)製)、スーダンチーフシュバルツBB(ソルベントブラック3: Color Index 26150)、フェットシュバルツHBN(C.I. NO.26150)、ブリリアントスピリッツシュバルツTN(ファルベン・ファブリッケン・バイヤ社製)、ザボンシュバルツX(ファルベルケ・ヘキスト社製)、さらにアルコキシ化アミン、アルキルアミド、モリブデン酸キレート顔料などが挙げられる。中でも第4級アンモニウム塩P−51が好ましい。
【0067】
また、負荷電制御剤としては、例えば、オイルブラック(Color Index 26150)、オイルブラックBY(オリエント化学工業(株)製)、ボントロンS−22(オリエント化学工業(株)製)、サリチル酸金属錯体E−81(オリエント化学工業(株)製)、チオインジゴ系顔料、銅フタロシアニンのスルホニルアミン誘導体、スピロンブラックTRH(保土谷化学工業(株)製)、ボントロンS−34(オリエント化学工業(株)製)、ニグロシンSO(オリエント化学工業(株)製)、セレスシュバルツ(R)G(ファルベン・ファブリケン・バイヤ社製)、クロモーゲンシュバルツET00(C.I.NO.14645)、アゾオイルブラック(R)(ナショナル・アニリン社製)などが挙げられる。中でも、サリチル酸金属錯体E−81が好ましい。
これらの荷電制御剤は、単独であるいは複数種組合せて使用することができるが、結着樹脂に添加する荷電制御剤の添加量は、結着樹脂100重量部に対して0.001〜5重量部であり、好ましくは0.001〜3重量部である。
【0068】
また、本発明のトナーに用いられる結着樹脂はその分子量範囲により熱溶融特性に優れ、また、定着温度領域での粘弾性特性により離型剤を不要とするが、添加する場合には、結着樹脂100重量部に対して4重量部(4重量%)以下であり、好ましくは0〜3重量部程度である。
【0069】
離型剤としては、具体的にはパラフィンワックス、ポリオレフィンワックス、芳香族基を有する変性ワックス、脂環基を有する炭化水素化合物、天然ワックス、炭素数12以上の長鎖炭化水素鎖〔CH3(CH2)11またはCH3(CH2)12以上の脂肪族炭素鎖〕を有する長鎖カルボン酸、そのエステル脂肪酸金属塩、脂肪酸アシド、脂肪酸ビスアシド等を例示し得る。異なる低軟化点化合物を混合して用いても良い。具体的には、パラフィンワックス(日本石油社製)、パラフィンワックス(日本精蝋社製)、マイクロワックス(日本石油社製)、マイクロクリスタリンワックス(日本精蝋社製)、硬質パラフィンワックス(日本精蝋社製)、PE−130(ヘキスト社製)、三井ハイワックス110P(三井石油化学社製)、三井ハイワックス220P(三井石油化学社製)、三井ハイワックス660P(三井石油化学社製)、三井ハイワックス210P(三井石油化学社製)、三井ハイワックス320P(三井石油化学社製)、三井ハイワックス410P(三井石油化学社製)、三井ハイワックス420P(三井石油化学社製)、変性ワックスJC−1141(三井石油化学社製)、変性ワックスJC−2130(三井石油化学社製)、変性ワックスJC−4020(三井石油化学社製)、変性ワックスJC−1142(三井石油化学社製)、変性ワックスJC−5020(三井石油化学社製)、密ロウ、カルナバワックス、モンタンワックス等を挙げることができる。脂肪酸金属塩として、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム、オレイン酸亜鉛、パルミチン酸亜鉛、パルミチン酸マグネシウム等がある。
【0070】
ポリオレフィン系ワックスとしては、例えば低分子量ポリプロピレン、低分子量ポリエチレン、あるいは酸化型のポリプロピレン、酸化型のポリエチレン等が挙げられる。ポリオレフィン系ワックスの具体例としては、例えば、Hoechst wax PE520、Hoechst wax PE130、Hoechstwax PE190(ヘキスト社製)、三井ハイワックス200、三井ハイワックス210、三井ハイワックス210M、三井ハイワックス220、三井ハイワックス220M(三井石油化学工業社製)、サンワックス131−P、サンワックス151−P、サンワックス161−P(三洋化成工業社製)などのような非酸化型ポリエチレンワックス、Hoechst wax PED121、Hoechst wax PED153、Hoechst wax PED521、Hoechst wax PED522、同Ceridust 3620、同Ceridust VP130、同Ceridust VP5905、同Ceridust VP9615A、同Ceridust TM9610F、同Ceridust 3715(ヘキスト社製)、三井ハイワックス420M(三井石油化学工業社製)、サンワックスE−300、サンワックスE−250P(三洋化成工業社製)などのような酸化型ポリエチレンワックス、Hoechst Wachs PP230(ヘキスト社製)、ビスコール330−P、ビスコール550−P、ビスコール660P(三洋化成工業社製)などのような非酸化型ポリプロピレンワックス、ビスコールTS−200(三洋化成工業社製)などのような酸化型ポリプロピレンワックスなどが例示される。これらの離型剤は、単独であるいは複数種組合せて使用することができる。必要に応じて添加される離型剤としては、セイコーインストルメント(株)製「DSC120」で測定されるDSC吸熱曲線における吸熱メインピーク値である軟化点(融点)が40〜130℃、好ましくは50〜120℃のものを使用するとよい。
【0071】
本発明におけるトナー母粒子は、上記で得た組成物を、混練・溶融した後、微粉砕手段により粉砕・分級して得られるが、その流動性を向上させる為に、流動性向上剤を外添してもよい。
流動性向上剤としては、有機系微粉末または無機系微粉末を用いることができる。例えばフツ素系樹脂粉末、すなわちフツ化ビニリデン微粉末、ポリテトラフルオロエチレン微粉末、アクリル樹脂系微粉末など;又は脂肪酸金属塩、すなわちステアリン酸亜鉛、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸鉛など;又は金属酸化物、すなわち酸化鉄、酸化アルミニウム、酸化チタン、酸化亜鉛など;又は微粉末シリカ、すなわち湿式製法シリカ、乾式製法シリカ、それらシリカにシランカツプリング剤、チタンカツプリング剤、シリコンオイルなどにより表面処理をほどこした処理シリカなどがあり、これらは1種或いは2種以上の混合物で用いられる。
【0072】
好ましい流動性向上剤としては、ケイ素ハロゲン化合物の気相酸化法により生成された微粉体であり、いわゆる乾式法シリカ又はヒユームドシリカと称されるもので、従来公知の技術によって製造されるものである。例えば四塩化ケイ素ガスの酸水素焔中における熱分解酸化反応を利用するもので、基礎となる反応式は次の様なものである。
SiCl4 + 2H2 + O2 → SiO2 + 4HCl
【0073】
また、この製造工程において、例えば塩化アルミニウム又は塩化チタンなど他の金属ハロゲン化合物をケイ素ハロゲン化合物と共に用いる事によってシリカと他の金属酸化物の複合微粉体を得る事も可能であり、それらも包含する。その粒径は平均の一次粒径として、0.001〜2μmの範囲内である事が望ましく、特に好ましくは、0.002〜0.2μmの範囲内のシリカ微粉体を使用するのが良い。本発明に用いられるケイ素ハロゲン化合物の気相酸化法により生成された市販のシリカ微粉体としては、例えば以下の様な商品名で市販されているものがある。日本アエロジル社製の「AEROSIL 130」、以下、同 200、同300、同 380、TT600、MOX170、MOX80、COK84等が挙げられ、また、CABOT Co.社製の「Ca−O−SiL M−5」、以下、同 MS−7、同 MS−75、同 HS−5、同 EH−5等が挙げられ、また、WACKER−CHEMIE GMBH社製の「Wacker HDK N 20V15」、以下、同 N20E、同 T30、同 T40、ダウコーニングCo.社の「D−C Fine Silica」、Fransill社の「Fransol」等が挙げられる。
【0074】
更には、該ケイ素ハロゲン化合物の気相酸化により生成されたシリカ微粉体に疎水化処理した処理シリカ微粉体を用いることがより好ましい。該処理シリカ微粉体において、メタノール滴定試験によって測定された疎水化度が30〜80の範囲の値を示すようにシリカ微粉体を処理したものが特に好ましい。疎水化方法としてはシリカ微粉体と反応、あるいは物理吸着する有機ケイ素化合物などで化学的に処理することによって付与される。好ましい方法としては、ケイ素ハロゲン化合物の上記気相酸化により生成されたシリカ微粉体を有機ケイ素化合物で処理する。
【0075】
その様な有機ケイ素化合物の例は、ヘキサメチルジシラザン、トリメチルシラン、トリメチルクロルシラン、トリメチルエトキシシラン、ジメチルジクロルシラン、メチルトリクロルシラン、アリルジメチルクロルシラン、アリルフエニルジクロルシラン、ベンジルジメチルクロルシラン、ブロムメチルジメチルクロルシラン、α−クロルエチルトリクロルシラン、β−クロルエチルトリクロルシラン、クロルメチルジメチルクロルシラン、トリオルガノシリルメルカプタン、トリメチルシリルメルカプタン、トリオルガノシリルアクリレート、ビニルジメチルアセトキシシラン、ジメチルエトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、ジフエニルジエトキシシラン、ヘキサメチルジシロキサン、1,3−ジビニルテトラメチルジシロキサン、1,3−ジフエニルテトラメチルジシロキサンおよび1分子当り2から12個のシロキサン単位を有し末端に位置する単位にそれぞれ1個宛のSiに結合した水酸基を有するジメチルポリシロキサン等がある。これらは1種あるいは2種以上の混合物で用いられる。
【0076】
その処理シリカ微粉体の粒径としては0.003〜0.1μm、0.005〜0.05μmの範囲のものを使用することが好ましい。市販品としては、タラノツクス−500(タルコ社)、AEROSIL R−972(日本アエロジル社)などがある。
流動性向上剤の添加量としては、該樹脂粒子100重量部に対して0.01〜5重量部、好ましくは0.1〜3重量部である。0.01重量部未満では流動性向上に効果はなく、5重量部を超えるとカブリや文字のにじみ、機内飛散を助長する。
【0077】
次に、本発明のトナーを用いて画像を形成する本発明の画像形成装置について説明する。
図示しないが、本発明の画像形成装置は、従来の一般的な画像形成装置と同様に、静電潜像が形成される像担持体と、この像担持体上の静電潜像をトナーによりトナー像に現像する現像器と、像担持体上のトナー像を紙等の記録媒体に転写する転写器と、記録媒体に転写されたトナー像を加熱定着する定着器とを少なくとも備えている。その場合、像担持体、現像器および転写器は、従来の一般的なものと同じであるので、それらの説明は省略する。
【0078】
また、定着器はオイルレス2ローラを備えた定着器である。以下、この定着器を図2により説明する。図中、1は定着ローラ(加熱ローラ)、2はバックアップローラ(加圧ローラ)、3は分離爪、4は紙等の記録媒体である。
定着ローラ1は、単層タイプ、多層タイプのいずれでもよい。単層タイプにあっては、加熱手段を内蔵した15〜50mm径の芯金の周面に0.1〜20mm、好ましくは0.5〜3mm厚のシリコンゴム層、またはフッ素ゴム層を積層したものである。また、多層タイプにあっては、加熱手段を内蔵した15〜50mm径の芯金の周面に0.1〜20mm、好ましくは0.5〜3mm厚の弾性層、0.05〜2mm、好ましくは0.1〜1mm厚のコート層を順次積層したもので、弾性層とコート層の組み合わせとしては、例えば、
(1)シリコン樹脂からなる弾性層、フッ素樹脂からなるコート層としたもの、
(2)シリコンゴムからなる弾性層、フッ素ゴムからなるコート層としたもの、
(3)シリコンゴムからなる弾性層、シリコンゴムとフッ素ゴムからなるコート層としたもの
等が挙げられる。そして、単層タイプにおけるゴム層、また、多層タイプにおける弾性層は、JISA硬度で30度以下、好ましくは15度以下のゴム硬度を有するものである。
【0079】
また、バックアップローラ2は、単層タイプ、多層タイプのいずれでもよい。単層タイプにあっては15〜50mm径の芯金の周面に0.1〜20mm、好ましくは0.5〜3mm厚のシリコンゴム層、またはフッ素ゴム層を積層したものである。また、多層タイプにあっては15〜50mm径の芯金の周面に0.1〜20mm、好ましくは0.5〜3mm厚の弾性層、0.05〜2mm、好ましくは0.1〜1mm厚のコート層を順次積層したもので、弾性層とコート層の組み合わせとしては、例えば、
(1)シリコンスポンジからなる弾性層、高離型性シリコンからなるコート層を順次積層したもの、
(2)シリコンゴムからなる弾性層、フッ素ゴムからなるコート層を順次積層したもの、
(3)シリコンゴムからなる弾性層、フッ素ゴムラテックス、フッ素樹脂コートからなるコート層を順次積層したもの、
(4)シリコンスポンジゴムからなる弾性層、フッ素樹脂(PFAチューブ)被覆層を順次積層したもの等が挙げられる。そして、単層タイプにおけるゴム層、また、多層タイプにおける弾性層は、JISA硬度で30度以下、好ましくは15度以下のゴム硬度を有するものである。
【0080】
定着ローラ1とバックアップローラ2との加圧力(線圧)は、0.2〜2kgf/cm、好ましくは0.3〜1kgf/cmであり、ニップ幅は1〜20mm、好ましくは4〜10mmである。また、速度は適宜設定されるが、ニップ通過時間が10〜150msec、好ましくは30〜100msecとなるように設定される。
【0081】
前述のように本発明のトナーは、定着ローラ(加熱ローラ)1との接触に際しているにもかかわらず、その弾性や粘性の増加により体に付着(オフセット)することなく記録媒体4に定着され、低温および高温における耐オフセット性に優れるので、本発明の画像形成装置の定着器は、定着ローラ表面にシリコンオイル等の離型剤塗布を不要としたオイルレス定着器とすることができる。
そして、本発明の画像形成装置によれば、前述のような低温定着性および耐オフセット性の向上し、かつ透明性の向上したトナーと、オイルレス2ローラ定着器とを有機的に組み合わせることで、オイルレスで良好な低温定着性を有しつつ高温オフセットを防止し、更には良好な透明性を有する高品質のトナー画像を形成することができる。
【0082】
本発明のトナーの、軟化点(Tm)、ガラス転移点(Tg)、分子量、粒径,貯蔵弾性率G′、損失弾性率G″等のトナーの物性値の測定方法および定着時のトナーのオフセット良好域の評価方法、透明性の評価方法はそれぞれ公知の方法が採用できるが、それらの一例を後述する実施例および比較例の説明において説明する。
【0083】
(本発明の実施例および比較例)
次に、本発明のトナーを実施例および比較例により、具体的に説明する。
まず、本発明のトナーの実施例および比較例の各トナーの物性値の測定、動的粘弾性の測定、定着時のトナーのオフセット良好域の評価および透明性(HAZE値)の測定評価について説明する。
【0084】
(1)軟化点(Tm;融点)[℃]の測定
下記測定装置を用いて下記条件にて、トナーの軟化点(Tm)を測定する。
(a) 測定装置
(株)島津製作所製
「定荷重押出型細管式レオメータ フローテスタ CFD−500D」。
(b) 測定試料の調製
測定試料としてトナー約1gを圧縮成型し、フローテスタのシリンダの内径に合わせた円柱状試料とする。
(c) 測定条件
荷重 20kgf、ダイ穴 1mm、ダイ長さ 1mm。
(d) Tm算出方法
1/2法。
【0085】
(2)ガラス転移点(Tg)[℃]の測定
を用いて下記の条件で、トナーのガラス転移点(Tg)を測定する。
(a) 測定装置
セイコーインスツルメント(株)製
示差走査熱量測定装置DSC220C/EXTRa6000 PC ステーション。
(b) 測定試料の調製
測定試料としてトナー10mgをアルミニウム製サンプル容器に封入する。
(c) 測定温度
20℃(測定開始温度)〜200 ℃(測定終了温度)。
(d) 昇温速度
10 ℃/min。
(e) Tg
ガラス転移点に相当する吸熱が生じた位置(吸熱カーブのショルダー位置)の温度とする。
【0086】
(3)分子量分布の測定
結着樹脂の5mgを5gのTHFに溶解し、THF不溶分およびコンタミ物質を除去するため、ポアサイズ0.2μmのメンブランフィルターを通して、GPC用サンプルを調製する。こうして調製したサンプル(THF可溶分)を、GPCを用いて、下記の条件にて測定する。
(a) カラム
昭和電工(株)製
「Shodex(GPC)KF806M+KF802.5」。
(b) カラム温度
30 ℃。
(c) 溶媒
THF(テトラヒドロフラン)。
(d) 流速
1.0 ml/min。
(e) 検出器
RI検出器。
(f) 標準試料
単分散ポリスチレン標準試料(重量平均分子量580から390万)。
【0087】
(4)粒径の測定
本明細書では、粒径という場合「平均粒径」を意味する。
コールターマルチサイザーIII 型(コールター社製)を用い、100μmのアパチャーチューブで粒径別相対重量分布を測定することにより求める。また、シリカ粒子等の外添剤の粒径は、電子顕微鏡法による。
【0088】
(5)ステップストレインによる動的粘弾性の測定
本発明のトナーの動的粘弾性は、下記の粘弾性測定装置を用いステップストレインにより下記の条件で動的粘弾性測定を行うことで求める。
【0089】
(a) 粘弾性測定装置
粘弾性測定装置は、アレス粘弾性測定システム(ARES粘弾性測定装置;レオメトリック・サイエンティフィック・エフ・イー社製)である。
(b) 使用治具
使用治具は、上下2枚のパラレルプレート(φ25mm径)である。
(c) 測定試料の調製
測定試料は、トナー約1gをパラレルプレートの下プレートに載せ、ヒーターにより測定開始温度に加熱し少し柔らかくなってきたところで、このトナーをパラレルプレートの上プレートで挟んで加圧する。パラレルプレートからはみ出したトナーはトリミングして取り除き、パラレルプレートの外周形状(つまり、パラレルプレートの直径)に合わせ、かつ試料の高さ(上下プレート間のギャップ)を1.0〜2.0mmに調製して円柱状試料とする。
(d) 測定周波数
測定周波数は、1rad/sec(1Hz=6.28 rad/sec)に設定する。
(e) 測定温度
測定温度は一定の180℃に設定する。
(f) 測定歪み
まず、パラレルプレートの上プレートは回転させずに、パラレルプレートの下プレートのみを回転して歪を与える。このとき、測定温度を一定にし、歪み依存(Strain Sweep)モードで、測定試料に徐々に大きな歪み(歪み0.1〜200%)を与える。そして、与えた歪みに対し動的粘弾性の貯蔵弾性率G′が線形領域における最大歪み、および非線形領域(non linear monitor の値が0.06以上)の最小歪みを求める。これらの最大歪みおよび最小歪みをステップストレイン測定時の測定歪みとした。
次に、測定開始の初期の5minはこのように求めた線形領域の最大歪みをかけてG′(L1)を測定し、次の5minは同様に求めた非線形領域の歪みをかけてG′(NL)を測定し、更に次の5minは初期の線形領域の最大歪みをかけてG′(L2)を測定する。そして、G′(L1)は測定開始後300秒(sec)後の値とし、また、G′(NL)は測定開始後600秒(sec)後の値とする。
【0090】
【0091】
(6)定着性測定方法
(a) 定着性評価用画像の作成
セイコーエプソン社製カラーレーザープリンタ LP3000Cより定着部を外したものを用いて、J紙(富士ゼロックスオフィスサプライ社製)を評価用紙とし、このJ紙上にトナーを均一に付着させた、いわゆるベタ画像を形成し、そのベタ画像におけるトナー付着量が0.4mg/cm2となるように画像形成条件を調整し、次に、紙先端から10mmの位置で20mm四方の領域に、解像度600dpiの孤立ドットによる30%ハーフトーン画像を形成し、このハーフトーン画像を定着性評価用画像とした。
【0092】
(b) 定着性評価用画像の定着
コニカ社製カラーレーザープリンタ KL−2010から定着器(定着ユニット)を取り外して、前述の定着性評価用画像の定着に使用した。この定着器は加熱ローラおよび加圧ローラからなる熱ローラ定着器である。そして、この定着器を外部駆動装置により独立して駆動可能にするとともに、その定着ニップ通過時間を調整できるようにし、更に、J紙上の定着性評価用画像に接する側の加熱ローラ(定着ローラ)の表面温度を100℃から200℃に制御できるように改造した。更に、定着ローラ表面にシリコーンオイルを塗布する塗布手段を取り外し(オイルパッド非装着状態)、また、印字されていないA4サイズの白紙を1,000枚通紙させ、更に定着ローラ表面をイソプロピルアルコールにより清掃し、更に綿布で乾拭きし、定着ローラの表面にシリコーンオイルのない状態に維持した。
このように定着ローラの表面からシリコーンオイルを除去した定着器に、J紙上の定着性評価用画像を、加熱ローラ側が未定着トナー(定着性評価用画像)付着面となるようにして定着ニップ通過時間50mm/secで通過させて定着した。
【0093】
(c) 非オフセット領域の判定
定着ローラの表面温度を段階的に変化させながら、未定着の定着性評価用画像を定着器に通過させ、画像の一部が通紙時に定着ローラに転移した後、再度J紙に移行しているか否かを目視で判定した。J紙への画像の一部の移行があるものをオフセット有り、ないものをオフセットなしとすることで、非オフセット領域を判定した。
【0094】
(d) 定着強度良好域の測定
非オフセット領域の判定後、定着後の定着性評価用画像を消しゴム(ライオン事務機 ECR−502R インキボールペン用)を用い、1kgの荷重にて5回擦り、画像濃度により残存率を測定した。この画像濃度残存率の測定方法は、擦る前と擦った後の濃度をX−Rite Inc.社製「X−Ritemodel 404」により測定し、次式で計算して画像濃度残存率を求めた。
残存率 =(擦った後の濃度/擦る前の濃度)×100 [%]
測定結果、画像濃度残存率が70%以上の温度領域を定着強度良好域とした。そして、定着率の評価に、この定着強度良好域の最低温度を定着率良好最低温度として用いる。
【0095】
(e) 透明性(HAZE値)の測定
ベタ画像におけるトナー付着量が0.7mg/cm2となるように画像形成条件を調整し、次に、OHPシート上の先端から10mmの位置で20mm四方の領域に現像し、180℃の定着像についてHAZEメータ{日本電色工業(株)ヘーズメーターMODEL1001DP}にてHAZE値を測定した。数値が小さいほど透明性が高いことを示す。
【0096】
(本発明のトナーの実施例および比較例)
次に、本発明のトナーの実施例および比較例について説明する。
〈トナー用樹脂の製造方法〉
まず、本発明のトナーの実施例および比較例に用いた樹脂の製造例について説明する。
(樹脂1)
まず、ネオペンチルアルコール:36モル部、エチレングリコール:36モル部、1,4ーシクロヘキサンジオール:48モル部、テレフタル酸ジメチル:90モル部、無水フタル酸:10モル部の混合物を用意した。
2リットル4つ口フラスコに、環流冷却器、蒸留塔、水分離装置、窒素ガス導入管、温度計および撹拌装置を常法に従い設置し、前述の混合物1000gとエステル化縮合触媒1gを仕込み、180℃で生成する水、メタノールを蒸留塔より流出させながらエステル化反応させた。蒸留塔から水、メタノールが流出しなくなった時点で、2リットル4つ口フラスコから蒸留塔を取り外し、真空ポンプに接続した。系内圧力を5mmHg以下に減圧した状態で、温度200℃、撹拌回転数150rpmで撹拌することにより、縮合反応で発生した遊離ジオールを系外に排出し、その結果得られた反応物を樹脂1とした。樹脂1の軟化点(Tm)は111℃、ガラス転移点(Tg)は60℃、重量平均分子量(Mw)13,000であった。
【0097】
(樹脂2)
まず、前述の樹脂1:70モル部、1,4ーブタンジオール:15モル部、テレフタル酸ジメチル:15モル部の混合物を用意した。
2リットル4つ口フラスコに、環流冷却器、蒸留塔、水分離装置、窒素ガス導入管、温度計および撹拌装置を常法に従い設置し、前述の混合物1000gとエステル化縮合触媒1gを仕込み、200℃で生成する水、メタノールを蒸留塔より流出させながらエステル化反応させた。蒸留塔から水、メタノールが流出しなくなった時点で、2リットル4つ口フラスコから蒸留塔を取り外し、真空ポンプに接続した。系内圧力を5mmHg以下に減圧した状態で、温度220℃、撹拌回転数150rpmで撹拌することにより、縮合反応で発生した遊離ジオールを系外に排出し、その結果得られた反応物を樹脂2とした。樹脂2の軟化点(Tm)は149℃、ガラス転移点(Tg)は64℃、重量平均分子量(Mw)28,000であった。
【0098】
〈トナー用マスターバッチの製造方法〉
(マスターバッチ1)
前述の樹脂2の70wt%に、着色剤として顔料 Toner Magenta 6B(クラリアント社製)を30wt%加えた。これをヘンシェルミキサー20B(三井鉱山(株)製)で十分混合した後、連続式2本ロール混練機{三井鉱山(株)社製}で混練した。この混練物を粉砕機{ホソカワミクロン(株)社製}で直径2mm程度に粗粉砕しマスターバッチ1とした。
(マスターバッチ2)
前述の樹脂1の70wt%に、着色剤として顔料 Toner Magenta 6B(クラリアント社製)を30wt%加えた。これをヘンシェルミキサー20B(三井鉱山(株)製)で十分混合した後、連続式2本ロール混練機{三井鉱山(株)社製}で混練した。この混練物を粉砕機{ホソカワミクロン(株)社製}で直径2mm程度に粗粉砕しマスターバッチ2とした。
【0099】
〈実施例および比較例のトナーの製造方法〉
(実施例1)
前述のマスターバッチ1の14重量部に、前述の樹脂1を80重量部、前述の樹脂2を12重量部、CCAとして Bontron E−81(オリヱント化学工業社製)を1.1重量部、離型剤としてカルナウバワックス(日本ワックス社製)を3.3重量部添加しヘンシェルミキサー20B(三井鉱山(株)製)で十分混合した後、2軸押出機2軸押出機{東芝機械(株)社製}で溶融混練し、常温(約25℃)に冷却後、粉砕機 200AFG{ホソカワミクロン(株)社製}で粉砕、同分級機 100ATP で分級し、重量D50が8μmの母粒子を得た。この母粒子100重量部に対して、シリカ RX200(日本アエロジル社製)を1重量部添加して、ヘンシェルミキサー20B(三井鉱山(株)製)で混合し、実施例1のトナーを得た。
【0100】
(実施例2)
前述のマスターバッチ1の14重量部に、前述の樹脂1を50重量部、前述の樹脂2を42重量部、CCAとして Bontron E−81(オリヱント化学工業社製)を1.1重量部、離型剤としてカルナウバワックス(日本ワックス社製)を3.3重量部添加しヘンシェルミキサー20B(三井鉱山(株)製)で十分混合した後、2軸押出機{東芝機械(株)社製}で溶融混練し、常温(約25℃)に冷却後、粉砕機 200AFG{ホソカワミクロン(株)社製}で粉砕、同分級機 100ATP で分級し、重量D50が8μmの母粒子を得た。この母粒子100重量部に対して、シリカ RX200(日本アエロジル社製)を1重量部添加して、ヘンシェルミキサー20B(三井鉱山(株)製)で混合し、実施例2のトナーを得た。
【0101】
(実施例3)
前述のマスターバッチ1の14重量部に、前述の樹脂1を70重量部、前述の樹脂2を22重量部、CCAとして Bontron E−81(オリヱント化学工業社製)を1.1重量部、離型剤としてカルナウバワックス(日本ワックス社製)を3.3重量部添加しヘンシェルミキサー20B(三井鉱山(株)製)で十分混合した後、2軸押出機{東芝機械(株)社製}で溶融混練し、常温(約25℃)に冷却後、粉砕機 200AFG{ホソカワミクロン(株)社製}で粉砕、同分級機 100ATP で分級し、重量D50が8μmの母粒子を得た。この母粒子100重量部に対して、シリカ RX200(日本アエロジル社製)を1重量部添加して、ヘンシェルミキサー20B(三井鉱山(株)製)で混合し、実施例3のトナーを得た。
【0102】
(比較例1)
前述のマスターバッチ1の14重量部に、前述の樹脂1を90重量部、前述の樹脂2を2重量部、CCAとして Bontron E−81(オリヱント化学工業社製)を1.1重量部、離型剤としてカルナウバワックス(日本ワックス社製)を3.3重量部添加しヘンシェルミキサー20B(三井鉱山(株)製)で十分混合した後、2軸押出機{東芝機械(株)社製}で溶融混練し、常温(約25℃)に冷却後、粉砕機 200AFG{ホソカワミクロン(株)社製}で粉砕、同分級機 100ATP で分級し、重量D50が8μmの母粒子を得た。この母粒子100重量部に対して、シリカ RX200(日本アエロジル社製)を1重量部添加して、ヘンシェルミキサー20B(三井鉱山(株)製)で混合し、比較例1のトナーを得た。
【0103】
(比較例2)
前述のマスターバッチ1の14重量部に、前述の樹脂1を10重量部、前述の樹脂2を82重量部、CCAとして Bontron E−81(オリヱント化学工業社製)を1.1重量部、離型剤としてカルナウバワックス(日本ワックス社製)を3.3重量部添加しヘンシェルミキサー20B(三井鉱山(株)製)で十分混合した後、2軸押出機{東芝機械(株)社製}で溶融混練し、常温(約25℃)に冷却後、粉砕機 AFG200{ホソカワミクロン(株)社製}で粉砕、同分級機 ATP200 で分級し、重量D50が8μmの母粒子を得た。この母粒子100重量部に対して、シリカ RX200(日本アエロジル社製)を1重量部添加して、ヘンシェルミキサー20B(三井鉱山(株)製)で混合し、比較例2のトナーを得た。
【0104】
(比較例3)
前述のマスターバッチ1の14重量部に、前述の樹脂1を80重量部、前述の樹脂2を12重量部、CCAとして Bontron E−81(オリヱント化学工業社製)を1.1重量部、離型剤としてカルナウバワックス(日本ワックス社製)を5.6重量部添加しヘンシェルミキサー20B(三井鉱山(株)製)で十分混合した後、2軸押出機{東芝機械(株)社製}で溶融混練し、常温(約25℃)に冷却後、粉砕機 200AFG{ホソカワミクロン(株)社製}で粉砕、同分級機 100ATP で分級し、重量D50が8μmの母粒子を得た。この母粒子100重量部に対して、シリカ RX200(日本アエロジル社製)を1重量部添加して、ヘンシェルミキサー20B(三井鉱山(株)製)で混合し、比較例3のトナーを得た。
【0105】
(比較例4)
前述のマスターバッチ2の14重量部に、線状ポリエステル樹脂(三洋化成工業株式会社製:軟化点(Tm)105℃、ガラス転移点(Tg)68℃、重量平均分子量(Mw)11,500)を70重量部、架橋ポリエステル樹脂(三洋化成工業株式会社製:軟化点(Tm)144℃、ガラス転移点(Tg)60℃、重量平均分子量(Mw)29,000)を22重量部、CCAとして Bontron E−81(オリヱント化学工業社製)を1.1重量部、離型剤としてカルナウバワックス(日本ワックス社製)を3.3重量部添加しヘンシェルミキサー20B(三井鉱山(株)製)で十分混合した後、2軸押出機{東芝機械(株)社製}で溶融混練し、常温(約25℃)に冷却後、粉砕機 200AFG{ホソカワミクロン(株)社製}で粉砕、同分級機 100ATP で分級し、重量D50が8μmの母粒子を得た。この母粒子100重量部に対して、シリカ RX200(日本アエロジル社製)を1重量部添加して、ヘンシェルミキサー20B(三井鉱山(株)製)で混合し、比較例4のトナーを得た。
【0106】
これらの各実施例および各比較例のトナーに対して、温度180℃の時の線形領域における貯蔵弾性率G′(L1)および非線形領域における貯蔵弾性率G′(NL)を測定するとともに、これらのトナーを用いて前述のように非オフセット領域、定着強度領域および透明性(HAZE値)の評価試験を行った。それらの結果を表1に示す。
【0107】
【表1】
【0108】
表1に示すように、180℃での非線形領域のG′(NL)は、実施例1では120dyn/cm2、実施例2では380dyn/cm2、実施例3では200dyn/cm2、比較例1では80dyn/cm2、比較例2では600dyn/cm2、比較例3では110dyn/cm2、比較例4では700dyn/cm2であった。また、180℃での線形領域のG′(L1)と非線形領域のG′(NL)との比(G′(L1)/G′(NL))は、実施例1では8.3、実施例2では19.7、実施例3では12.5、比較例1では4.8、比較例2では21.5、比較例3では10.4、比較例4では21.4であった。
【0109】
また表1からわかるように、低温オフセットは、実施例1および3では160℃以下で、実施例2では180℃より低く、いずれの実施例も良好であった。また、低温オフセットは、比較例1ではすべての測定温度で低温オフセットが生じて不良であり、比較例2および4では180℃以上でも低温オフセットが生じて不良であり、比較例3では160℃以下で良好であった。
【0110】
また、定着率良好最低温度は、実施例1および3では160℃以下で、実施例2では180℃より低く、いずれの実施例も良好であった。また、定着率良好最低温度は、比較例1ではすべての測定温度でオフセットが発生しており定着率の測定が不能であり、比較例2および4では180℃以上でも定着率が不良であり、比較例3では160℃以下で定着率が良好であった。
【0111】
更に、透明性は、実施例1ないし3ではいずれもHAZE値が30未満であり良好であった。また透明性は、比較例1ではすべての測定温度でHAZE値が測定不能で不良であり、比較例2ではHAZE値が30未満で良好であり、比較例3および4ではともにHAZE値が50より大きく不良であった。
以上のことから、実施例1ないし3のトナーはいずれも所期の効果を得られることが確認された。
【図面の簡単な説明】
【図1】加熱定着器の定着ニップ前、定着ニップ、定着ニップ出口における、温度依存性の動的粘弾性を有する本発明のトナーにおける1実施例の挙動の一例を示す図である。
【図2】本発明のトナーが適用される画像形成装置の定着器の一例を模式的に示す図である。
【符号の説明】
1…定着ローラ(加熱ローラ)、2…バックアップローラ(加圧ローラ)、3…分離爪、4…紙等の記録媒体
【発明の属する技術分野】
本発明は、電子写真、静電記録、静電印刷などにおける静電画像をトナー像に現像し、このトナー像を加熱定着により定着して画像を形成するために使用するトナーの技術分野およびこのトナーを用いて画像を形成する、複写機、プリンタ、ファックス等の画像形成装置の技術分野に属する。
【0002】
【従来の技術】
電子写真法として、光導電性物質からなる感光体上に静電荷像を形成し、次いで該静電荷像を現像ローラ上に担持したトナーを用いて現像し、感光体上に現像されたトナー画像を、直接、または中間転写体を介して紙等の記録媒体上に転写し、更に、記録媒体上のトナー画像を加熱ローラー等の定着ローラにより紙等の記録媒体に圧着加熱して定着する方法が知られている。
【0003】
この方法に使用されるトナーとしては加熱ローラに溶融トナーが付着する、いわゆる低温または高温オフセット現象を生じないこと、また、記録媒体上に定着されたトナー画像の定着強度に大きいこと等の優れた定着性が要求される。
加熱ローラを使用した定着にあっては、トナーの定着性、耐オフセット性を制御する要因として、トナーの動的粘弾性特性における貯蔵弾性率G′と損失弾性率G″が影響することは良く知られている。貯蔵弾性率G′と損失弾性率G″は、一般的な粘弾性を有する物質の振動実験において複素弾性率で定義される粘弾性特性であり、複素弾性率の実数部分を貯蔵弾性率G′、虚数部分を損失弾性率G″といい、具体的には貯蔵弾性率はトナーの弾性の度合を示す指標とされ、また、損失弾性率は粘性の度合を示す指標とされている。このトナーの動的粘弾性特性は温度によって変化する温度依存性、周波数によって変化する周波数依存性および歪み量によって変化する歪み依存性、すなわち温度。周波数および歪みによって線形に挙動する線形領域あるいは非線形の挙動をする非線形領域を示す特性を有している。
【0004】
トナー定着時のトナーの溶融状態をこのようなトナーの温度依存性の動的粘弾性特性により表すことで、トナー画像の定着性、耐オフセット性、耐ブロッキング性をそれぞれ改良することが提案されている(例えば、特許文献1を参照)。
すなわち、この提案のトナーは、結着樹脂,着色剤及びワックスを含有したトナーであり、損失弾性率と貯蔵弾性率の比(G″/G′=tanδ)が1.0となる温度を55〜70℃の温度領域に設定し、そのときの弾性率を1.5×108Pa以下に設定し、貯蔵弾性率G′(40)と貯蔵弾性率G′(50)の比(G′(40)/G′(50))を1.5〜5.0に設定し、貯蔵弾性率G′(50)と貯蔵弾性率G′(60)との比(G′(50)/G′(60))を3〜20に設定し、貯蔵弾性率G′(70)と貯蔵弾性率G′(100)の比(G′(70)/G′(100))を50〜250に設定し、貯蔵弾性率G′(110)と貯蔵弾性率G′(140)の比(G′(110) /G′(140)を2〜20に設定することで、低温定着性、耐オフセット性および耐ブロッキング性を良好にしている。
【特許文献1】
特開平10−171156号公報([要約]等)
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、前述のような加熱定着においては、トナーは定着ニップ前(入口)では線形領域(L1)の挙動、定着ニップ部では非線形領域(NL)の挙動、定着ニップ出口では線形領域(L2)の挙動をするようになる。
しかしながら、前述の特許文献1に提案されているトナーでは、線形領域で測定した温度依存性の動的粘弾性が用いられている。前述のように加熱定着時において、線形領域(L1)−非線形領域(NL)−線形領域(L2)の挙動をするトナーに対して、このように線形領域で測定した温度依存性の動的粘弾性を単に用いただけでは、加熱定着時におけるトナーの実際の挙動に即したものではない。このため、トナーの低温定着性および耐オフセット性の改良が十分にかつ効果的に行われているとはいえない。
このように、従来のトナーの定着特性の改良では十分にかつ効果的に改良が行われているとはいえず、トナーの低温定着性および耐オフセット性を更に改良する余地がある。
【0006】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであって、その目的は、加熱定着時の実際のトナー挙動により即した動的粘弾性特性を用いることで、トナーの低温定着性およびトナーの耐オフセット性をより効果的に向上することのできるトナーを提供することである。
また、本発明の他の目的は、低温定着を可能にしつつトナーのオフセットを防止して、良好な高品質のトナー画像を形成することのできる画像形成装置を提供することである
【0007】
【課題を解決するための手段】
前述の課題を解決するために、請求項1の発明のトナーは、結着樹脂と少なくとも着色剤とからなり、粘弾性特性の線形領域から非線形領域へのステップストレイン測定において、180℃での線形領域における貯蔵弾性率(G′(L1))と非線形領域における貯蔵弾性率(G′(NL))との比G′(L1)/G′(NL)が5〜20であり、かつG′(NL)が100〜400dyn/cm2である関係を満たすことを特徴としている。
また、請求項2の発明のトナーは、離型剤が結着樹脂100重量部に対して4重量部以下含まれることを特徴としている。
【0008】
更に、請求項3の発明の画像形成装置は、静電潜像が形成される像担持体と、この像担持体上の静電潜像をトナーによりトナー像に現像する現像器と、前記像担持体上のトナー像を記録媒体に転写する転写器と、前記記録媒体に転写されたトナー像を加熱定着する定着器とを少なくとも備えている画像形成装置において、前記トナーが、請求項1または2記載のトナーであり、前記定着器がオイルレス2ローラを備えた定着器であることを特徴としている。
【0009】
【発明の作用および効果】
このように構成された本発明のトナーにおいては、粘弾性特性の線形領域から非線形領域へのステップストレイン測定において、180℃での線形領域における貯蔵弾性率(G′(L1))と非線形領域における貯蔵弾性率(G′(NL))との比G′(L1)/G′(NL)を5〜20に設定し、かつG′(NL)を100〜400dyn/cm2に設定しているので、加熱定着時において、トナーのもつ歪み依存性の動的粘弾性特性の線形領域および非線形領域が効果的に利用され、実際の挙動により一層即したトナーを得ることができる。
【0010】
したがって、本発明のトナーによれば、定着ニップ内でのトナーの溶融がスムーズに行われ、トナーの低温定着性およびトナーの耐オフセット性をより効果的に向上させることができるようになる。
特に、トナーに離型剤が結着樹脂100重量部に対して4重量部より大きく含まれると、透明性が阻害されるので、離型剤の含有量を結着樹脂100重量部に対して4重量部以下に設定することで、透明性を向上することができる。
【0011】
本発明の画像形成装置においては、前述のような低温定着性および耐オフセット性の向上したトナーあるいはこれらに加えて透明性の向上したトナーと、オイルレス2ローラ定着器とを有機的に組み合わせることで、オイルレスで低温定着を可能にしつつオフセットを防止し、更には良好な透明性を有する高品質のトナー画像を形成することができる。
【0012】
【発明の実施の形態】
本発明にかかるトナーは、定着ニップ前(入口)では線形領域(L1)の挙動、定着ニップ部では非線形領域(NL)の挙動、定着ニップ出口では線形領域(L2)の挙動をする動的粘弾性特性を有している。この動的粘弾性特性は歪みによって変わる歪み依存性の特性である。例えば、後述する実施例3のトナーでは、図1に示すような180℃での粘弾性特性のステップストレイン測定において、測定開始後300secまでは、貯蔵弾性率G′dyn/cm2および損失弾性率G″dyn/cm2がともに線形のG′(L1)dyn/cm2およびG″(L1)dyn/cm2の挙動をし、次の300secから600secまでは、歪み量を増加することにより貯蔵弾性率G′dyn/cm2および損失弾性率G″dyn/cm2がともに非線形のG′(NL)dyn/cm2およびG″(NL)dyn/cm2の挙動をし、更に600secから900secまでは、歪み量L1と同じにすることにより貯蔵弾性率G′dyn/cm2および損失弾性率G″dyn/cm2がともに線形のG′(L2)dyn/cm2およびG″(L2)dyn/cm2の挙動をする動的粘弾性特性を有している。
そして、本発明のトナーの結着樹脂は、粘弾性特性の線形領域から非線形領域へのステップストレイン測定において、180℃での線形領域における貯蔵弾性率(G′(L1))および非線形領域における貯蔵弾性率(G′(NL))が、
G′(L1)/G′(NL)が5〜20であり、かつ
G′(NL)が100〜400dyn/cm2である
関係を満たすように設定されている。
このように構成された本発明のトナーにおいては、加熱定着時において、トナーのもつ歪み依存性の動的粘弾性特性の線形領域および非線形領域が効果的に利用され、実際の挙動により一層即したトナーを得ることができる。
【0013】
その場合、G′(NL)を100〜400dyn/cm2の範囲であって、比G′(L1)/G′(NL)が5未満であると、弾性が低くなり過ぎ、耐オフセット性に問題が生じる。また、G′(NL)を100〜400dyn/cm2の範囲であって、比G′(L1)/G′(NL)が20より大きいと、弾性が大きくなり過ぎ、低温定着性に問題が生じる。
したがって、本発明のトナーによれば、定着ニップ内でのトナーの溶融がスムーズに行われ、トナーの低温定着性およびトナーの耐オフセット性をより効果的に向上させることができるようになる。
【0014】
特に、トナーに離型剤が結着樹脂100重量部に対して4重量部より大きく含まれると、透明性が阻害されるので、離型剤の含有量を結着樹脂100重量部に対して4重量部以下に設定することで、透明性を向上することができる。
【0015】
本発明のトナーに用いられ、定着領域における粘弾性特性を制御できる結着樹脂としては、結着樹脂が結晶領域と非晶質領域の双方を有するものがよく、例えば、ウレタン結合やウレア結合を有する樹脂、結晶ポリエステル樹脂と非晶質ポリエステル樹脂とをブレンドした樹脂、結晶性部分と非晶質部分とをブロック重合したポリエステル樹脂等がある。特に、結着樹脂として、非晶性ポリエステル、ブロックポリエステルを用いるのが好ましい。
【0016】
また、予め結着樹脂の重合を制御すると共に定着時に所定以上の熱エネルギーが加えられた際に機能発現する重合開始剤や架橋開始剤を配合しておくことにより、定着温度領域での熱エネルギーの付与によりトナー中の結着樹脂がさらに重合し、結着樹脂が架橋したり分子量が増大するように設計した組成物においても同様に定着領域における粘弾性特性を制御できる。
【0017】
本発明のトナーに用いられる結着樹脂は高分子ポリマーからなるが、一般に、高分子ポリマーの性状はトナーの溶融状態において粘弾性特性を有する。この粘弾性特性の1つである緩和弾性率G(t)[Pa]は、後述する応力緩和測定において、ある歪みを与えたとき、トナーの応力が時間t[sec]とともに緩和されていくことから、この緩和時間t[sec]とともに小さくなっていく特性を呈する。
【0018】
以下に、このような粘弾性特性を示すトナーにおける結着樹脂として、従来から知られているポリエステル樹脂を用いた結着樹脂を例として、本発明のトナーを説明する。
この例のトナーは、ポリエステル樹脂中に着色剤や荷電制御剤とを混練・微粉砕してトナー粒子とされている。そして、この結着樹脂は着色剤粒子等をトナー粒子中に保持し、定着に際しては定着ローラーでの熱と圧力で軟化し、紙等の転写材にトナー粒子を付着させる機能を有するが、低温定着を目的として、結着樹脂の分子量を低くし軟化温度を下げると、ガラス転移温度の低下や強度低下が生じ、着色剤の保持性や耐オフセット性、定着像強度、さらには保存性等が低下する。
【0019】
[トナーの構成材料]
本発明のトナーは、少なくとも、主成分としての樹脂(以下、単に「樹脂」ともいう)を含む原料を用いて製造することができる。
以下、本発明のトナーの製造に用いられる原料の各成分について説明する。
【0020】
1.樹脂(バインダー樹脂)
本発明においては、樹脂(バインダー樹脂)は、主として、ポリエステル系樹脂で構成されたものである。樹脂中におけるポリエステル系樹脂の含有量は、50wt%以上であるのが好ましく、80wt%以上であるのがより好ましい。
一般に、ポリエステル系樹脂は、アルコール成分(2個以上の水酸基を有するものを含む)とカルボン酸成分(2価以上のカルボン酸またはその誘導体等を含む)とで構成されるものである。
【0021】
アルコール成分としては、2個以上の水酸基を有するものを用いることができ、例えば、エチレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,2−プロピレングリコール、1,3−プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、ジエチレングリコール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ジプロピレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、1,2−プロパンジオール、1,3−ブタンジオール、2,3−ブタンジオール、ネオペンチルグリコール(2,2−ジメチルプロパン−1,3−ジオール)、1,2−ヘキサンジオール、2,5−ヘキサンジオール、2−メチル−2,4−ペンタンジオール、3−メチル−1,3−ペンタンジオール、2−エチル−1,3−ヘキサンジオール、2−ブチル−2−エチル−1,3−プロパンジオール、2,4−ジエチル−1,5−ペンタンジオール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコール等の鎖状ジオール類、またはポリオキシプロピレン(2.2)−2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、ポリオキシプロピレン(3.3)−2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、ポリオキシエチレン(2.0)−2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、ポリオキシプロピレン(2.0)−ポリオキシエチレン(2.0)−2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、ポリオキシプロピレン(6)−2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン等のビスフェノールAのアルキレンオキシド付加物、2,2−ビス(4−ヒドロキシシクロヘキシル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシシクロヘキシル)プロパンのアルキレンオキサイド付加物、1,4−シクロヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、水添ビスフェノールA、水添ビスフェノールAのアルキレンオキサイド付加物等の環状ジオール類、またはソルビトール、1,2,3,6−ヘキサンテトロール、1,4−ソルビタン、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、トリペンタエリスリトール、1,2,4−ブタントリオール、1,2,5−ペンタントリオール、グリセロール、2−メチルプロパントリオール、2−メチル−1,2,4−ブタントリオール、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、1,3,5−トリヒドロキシメチルベンゼン等の3価以上の多価アルコール類が挙げられる。
【0022】
特に、本発明では、主としてアルコール成分が、2個の水酸基を有する脂肪族ジオールで構成されたものであることを特徴とする。なお、アルコール成分が、3個以上の水酸基を有する脂肪族アルコールで構成されたものであってもよい。2個以上の水酸基を有する脂肪族アルコールとしては、例えば、エチレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,2−プロピレングリコール、1,3−プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、ジエチレングリコール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ジプロピレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、1,2−プロパンジオール、1,3−ブタンジオール、2,3−ブタンジオール、ネオペンチルグリコール(2,2−ジメチルプロパン−1,3−ジオール)、1,2−ヘキサンジオール、2,5−ヘキサンジオール、2−メチル−2,4−ペンタンジオール、3−メチル−1,3−ペンタンジオール、2−エチル−1,3−ヘキサンジオール、2−ブチル−2−エチル−1,3−プロパンジオール、2,4−ジエチル−1,5−ペンタンジオール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコール等の鎖状ジオール類、または2,2−ビス(4−ヒドロキシシクロヘキシル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシシクロヘキシル)プロパンのアルキレンオキサイド付加物、1,4−シクロヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、水添ビスフェノールA、水添ビスフェノールAのアルキレンオキサイド付加物等の環状ジオール類等が挙げられる。
このように、本発明では、主としてアルコール成分が、脂肪族ジオールで構成されたものであるが、その50mol%以上が脂肪族ジオールで構成されたものであるのが好ましく、その80mol%以上が脂肪族ジオールで構成されたものであるのがより好ましい。
【0023】
カルボン酸成分としては、例えば、2価以上のカルボン酸またはその誘導体(例えば、酸無水物、低級アルキルエステル等)等を用いることができ、例えば、o−フタル酸(フタル酸)、テレフタル酸、イソフタル酸、コハク酸、アジピン酸、セバシン酸、アゼライン酸、オクチルコハク酸、シクロヘキサンジカルボン酸、フマル酸、マレイン酸、イタコン酸、トリメリット酸、ピロメリット酸およびこれらの誘導体(例えば、無水物、低級アルキルエステル等)等が挙げられる。
【0024】
特に、本発明では、カルボン酸成分が、2価のジカルボン酸で構成されたものであるのが好ましい。
2価のジカルボン酸としては、例えば、o−フタル酸(フタル酸)、テレフタル酸、イソフタル酸、コハク酸、アジピン酸、セバシン酸、アゼライン酸、オクチルコハク酸、シクロヘキサンジカルボン酸、フマル酸、マレイン酸、イタコン酸およびこれらの誘導体(例えば、無水物、低級アルキルエステル等)等が挙げられる。
【0025】
また、本発明では、ポリエステル系樹脂として、以下で説明するようなブロックポリエステルと、非晶性ポリエステルとを含むものを用いるのが特に好ましい。以下、これらについて詳細に説明する。
【0026】
1−1.ブロックポリエステル
ブロックポリエステルは、アルコール成分とカルボン酸成分とを縮合してなる結晶性ブロックと、前記結晶性ブロックより結晶性の低い非晶性ブロックとを有するブロック共重合体で構成されたものである。
【0027】
▲1▼結晶性ブロック
結晶性ブロックは、非晶性ブロックや非晶性ポリエステルに比べて、高い結晶性を有している。すなわち、分子配列構造が、非晶性ブロックや非晶性ポリエステルに比べて強固で安定したものである。このため、結晶性ブロックは、トナー全体としての強度を向上させるのに寄与する。その結果、最終的に得られるトナーは、機械的ストレスに強く、耐久性、保存性に優れたものとなる。
ところで、結晶性の高い樹脂は、一般に、結晶性の低い樹脂に比べて、いわゆるシャープメルト性を有している。すなわち、結晶性の高い樹脂は、示差走査熱量分析(DSC)による融点の吸熱ピークの測定を行ったとき、結晶性の低い樹脂に比べて、吸熱ピークがシャープな形状として現れる性質を有している。
【0028】
一方、結晶性ブロックは、上述したように、結晶性の高いものである。したがって、結晶性ブロックは、ブロックポリエステルにシャープメルト性を付与する機能を有する。このため、最終的に得られるトナーは、後述する非晶性ポリエステルが十分に軟化するような、比較的高い温度(ブロックポリエステルの融点付近の温度)においても、優れた形状の安定性を保持することができる。したがって、このようなブロックポリエステルを用いた場合には、幅広い温度領域で十分な定着性(定着強度)を発揮することができる。
また、このような結晶性ブロックを有することにより、トナー中に、高硬度で適度な大きさの結晶を析出させることができる。このような結晶が存在すると、トナーの形状の安定性が特に優れたものとなり、機械的ストレスに対し、特に優れた安定性を示すものとなる。また、このような結晶がトナー中に存在すると、後述するような外添剤が、トナー粒子(母粒子)の表面付近に、より確実に保持されることとなり(外添剤が母粒子中に埋没するのを効果的に防止することができ)、外添剤が有する機能(例えば、優れた流動性、帯電性の付与等の効果)を十分に発揮させることができる。
【0029】
以下、結晶性ブロックを構成する成分について説明する。
結晶性ブロックを構成するアルコール成分としては、2個以上の水酸基を有するものを用いることができ、中でも水酸基を2個有するジオール成分であるのが好ましい。このような水酸基を2個有するジオール成分としては、例えば、芳香環構造を有する芳香族ジオールや、芳香環構造を有さない脂肪族ジオール等が挙げられ、芳香族ジオールとしては、例えば、ビスフェノールAや、ビスフェノールAのアルキレンオキサイド付加物(例えば、ポリオキシプロピレン(2.2)−2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、ポリオキシプロピレン(3.3)−2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、ポリオキシエチレン(2.0)−2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、ポリオキシプロピレン(2.0)−ポリオキシエチレン(2.0)−2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、ポリオキシプロピレン(6)−2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン等)等が挙げられ、また、脂肪族ジオールとしては、例えば、エチレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,2−プロピレングリコール、1,3−プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、ジエチレングリコール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ジプロピレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、1,2−プロパンジオール、1,3−ブタンジオール、2,3−ブタンジオール、ネオペンチルグリコール(2,2−ジメチルプロパン−1,3−ジオール)、1,2−ヘキサンジオール、2,5−ヘキサンジオール、2−メチル−2,4−ペンタンジオール、3−メチル−1,3−ペンタンジオール、2−エチル−1,3−ヘキサンジオール、2−ブチル−2−エチル−1,3−プロパンジオール、2,4−ジエチル−1,5−ペンタンジオール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコール等の鎖状ジオール類、または2,2−ビス(4−ヒドロキシシクロヘキシル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシシクロヘキシル)プロパンのアルキレンオキサイド付加物、1,4−シクロヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、水添ビスフェノールA、水添ビスフェノールAのアルキレンオキサイド付加物等の環状ジオール類等が挙げられる。
【0030】
このように、結晶性ブロックを構成するジオール成分は、特に限定されないが、少なくともその一部が脂肪族ジオールであるのが好ましく、その80mol%以上が脂肪族ジオールであるのがより好ましく、その90mol%以上が脂肪族ジオールであるのがさらに好ましい。これにより、ブロックポリエステル(結晶性ブロック)の結晶性を特に高いものとすることができ、上述した効果がさらに顕著なものとなる。
【0031】
また、結晶性ブロックを構成するジオール成分は、炭素数が3〜7の直鎖状の分子構造を有し、その両端に水酸基を有するもの(一般式:HO−(CH2)n−OHで表されるジオール(ただし、n=3〜7))を含むのが好ましい。このようなジオール成分が含まれることにより、結晶性が向上し、摩擦係数が低下するため、機械的ストレスに強く、耐久性や保存性に特に優れたものとなる。このようなジオールとしては、例えば、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール等が挙げられるが、この中でも1,4−ブタンジオールが好ましい。1,4−ブタンジオールを含むことにより、前述した効果は特に顕著なものとなる。
【0032】
結晶性ブロックを構成するジオール成分として1,4−ブタンジオールを含む場合、結晶性ブロックを構成するジオールの50mol%以上が1,4−ブタンジオールであるのがより好ましく、その80mol%以上が1,4−ブタンジオールであるのがさらに好ましい。これにより、前述した効果はさらに顕著なものとなる。
【0033】
結晶性ブロックを構成するカルボン酸成分としては、2価以上のカルボン酸またはその誘導体(例えば、酸無水物、低級アルキルエステル等)等を用いることができるが、2価のジカルボン酸またはその誘導体等を用いるのが好ましい。このような2価のジカルボン酸成分としては、例えば、o−フタル酸(フタル酸)、テレフタル酸、イソフタル酸、コハク酸、アジピン酸、セバシン酸、アゼライン酸、オクチルコハク酸、シクロヘキサンジカルボン酸、フマル酸、マレイン酸、イタコン酸およびこれらの誘導体(例えば、無水物、低級アルキルエステル等)等が挙げられる。
【0034】
このように、結晶性ブロックを構成するジカルボン酸成分は、特に限定されないが、少なくともその一部がテレフタル酸骨格を有するものであるのが好ましく、その50mol%以上がテレフタル酸骨格を有するものであるのがより好ましく、その80mol%以上がテレフタル酸骨格を有するものであるのがさらに好ましい。これにより、最終的に得られるトナーは、トナーとして求められる各種特性のバランスが特に優れたものとなる。
【0035】
ブロックポリエステル中における結晶性ブロックの含有率は、特に限定されないが、5〜60mol%であるのが好ましく、10〜40mol%であるのがより好ましい。結晶性ブロックの含有率が前記下限値未満であると、ブロックポリエステルの含有量等によっては、上述したような結晶性ブロックを有することによる効果が十分に発揮されない可能性がある。一方、結晶性ブロックの含有率が前記上限値を超えると、相対的に非晶性ブロックの含有率が低下するため、ブロックポリエステルと、後述する非晶性ポリエステルとの相溶性が低下する可能性がある。
なお、結晶ブロックは、上記のようなアルコール成分、カルボン酸成分以外の成分を含むものであってもよい。
【0036】
上記のような結晶性ブロックを有するブロックポリエステルの平均分子量(重量平均分子量)Mwは、特に限定されないが、1×104〜3×105であるのが好ましく、1.2×104〜1.5×105であるのがより好ましい。平均分子量Mwが前記下限値未満であると、最終的に得られるトナーの機械的強度が低下し、十分な耐久性(保存性)が得られない可能性がある。また、平均分子量Mwが小さすぎると、トナーの定着時に凝集破壊を起こし易くなり、耐オフセット性が低下する傾向を示す。一方、平均分子量Mwが前記上限値を超えると、トナーの定着時に粒界破壊を起こし易くなり、紙等の転写材(記録媒体)への濡れ性も低下し、定着に要する熱量も大きくなる。
【0037】
ブロックポリエステルのガラス転移点Tgは、特に限定されないが、50〜75℃であるのが好ましく、55〜70℃であるのがより好ましい。ガラス転移点が前記下限値未満であると、トナーの保存性(耐熱性)が低下し、使用環境等によっては、トナー粒子間での融着が発生する場合がある。一方、ガラス転移点が前記上限値を超えると、低温定着性や透明性が低下する。また、ガラス転移点が高すぎると、後述するような熱球形化処理の効果が十分に発揮されない可能性がある。なお、ガラス転移点は、JIS K 7121に準拠して測定することができる。
【0038】
ブロックポリエステルの軟化点T1/2は、特に限定されないが、90〜160℃であるのが好ましく、100〜150℃であるのがより好ましい。軟化点が前記下限値未満であると、トナーとしての保存性が低下し、十分な耐久性が得られない可能性がある。また、軟化点が低すぎると、トナーの定着時に凝集破壊を起こし易くなり、耐オフセット性が低下する傾向を示す。一方、軟化点が前記上限値を超えると、トナーの定着時に粒界破壊を起こし易くなり、紙等の転写材(記録媒体)への濡れ性も低下し、定着に要する熱量も大きくなる。なお、軟化点T1/2は、例えば、フローテスタを用い、サンプル量:1g、ダイ孔径:1mm、ダイ長さ:1mm、荷重:20kgf、予熱時間:300秒、測定開始温度:50℃、昇温速度:5℃/分という条件で測定したときに得られる解析用フローチャートのh/2に相当するフロー曲線上の点の温度として求めることができる。
【0039】
ブロックポリエステルの融点Tm(後述する示差走査式熱量分析による融点の吸熱ピークの測定を行ったときのピークの中心値Tmp)は、特に限定されないが、190℃以上であるのが好ましく、190〜230℃であるのがより好ましい。融点が190℃未満であると、耐オフセット性の向上等の効果が十分に得られない可能性がある。また、融点が高すぎると、後述する混練工程等において、材料温度を比較的高い温度にしなければならなくなる。その結果、樹脂材料のエステル交換反応が進行しやすくなり、樹脂設計を最終的に得られるトナーに十分に反映させることが困難になる場合がある。なお、融点は、例えば、示差走査熱量分析(DSC)による吸熱ピークの測定により求めることができる。
【0040】
また、最終的に得られるトナーが、後述するような定着ローラを有する定着装置で用いられるものである場合、ブロックポリエステルの融点(後述する示差走査式熱量分析による融点の吸熱ピークの測定を行ったときのピークの中心値Tmp)をTm(B)[℃]、定着ローラの表面の標準設定温度をTfix[℃]としたとき、Tfix≦Tm(B)≦(Tfix+100)の関係を満足するのが好ましく、(Tfix+10)≦Tm(B)≦(Tfix+70)の関係を満足するのがより好ましい。このような関係を満足することにより、後述する定着装置の定着ローラへのトナーの付着を効果的に防止することができる。また、ブロックポリエステルは、前述したように適度な大きさの結晶を作りやすい性質を有しているため、記録媒体へのトナーの定着後にも、安定性、耐久性を維持することができる。特に、ブロックポリエステルを後述する非晶性ポリエステルと組み合わせて用いる場合、定着時に、後述する非晶性ポリエステルが十分に軟化することができる。このため、記録媒体へのトナーの定着性(定着強度)を十分に高めることができ、さらに、トナーの低温定着性も優れたものとなる。また、ブロックポリエステルは、高硬度な結晶を作りやすいものであるため、トナーは、定着後の安定性にも優れたものとなる。
【0041】
また、ブロックポリエステルの融点は、後述する非晶性ポリエステルの軟化点より高いのが好ましい。これにより、最終的に得られるトナーの形状の安定性が向上し、機械的ストレスに対し、特に優れた安定性を示すものとなる。また、ブロックポリエステルの融点が後述する非晶性ポリエステルの軟化点より高いと、例えば、後述する熱球形化処理において、ブロックポリエステルにより、トナー製造用粉末の形状の安定性をある程度確保しつつ、非晶性ポリエステルを十分に軟化させることができる。その結果、熱球形化処理を効率良く行うことができ、比較的容易に、最終的に得られるトナー(トナー粒子)の円形度を比較的高いものとすることができる。
【0042】
ところで、前述したように、ブロックポリエステルは、結晶性の高い結晶性ブロックを有しているため、比較的結晶性の低い樹脂材料(例えば、後述する非晶性ポリエステル等)に比べて、いわゆるシャープメルト性を有している。
結晶性を表す指標としては、例えば、示差走査熱量分析(DSC)による融点の吸熱ピークの測定を行ったときのピークの中心値をTmp[℃]、ショルダーピーク値をTms[℃]としたときに、ΔT=Tmp−Tmsで表されるΔT値等が挙げられる。このΔT値が小さいほど結晶性が高い。
【0043】
ブロックポリエステルのΔT値は、50℃以下であるのが好ましく、20℃以下であるのがより好ましい。Tmp[℃]、Tms[℃]の測定条件は特に限定されないが、例えば、試料となるブロックポリエステルを、昇温速度:10℃/分で200℃まで昇温し、さらに、降温速度:10℃/分で降温した後、昇温速度:10℃/分で昇温して測定することができる。
【0044】
また、ブロックポリエステルは、後述する非晶性ポリエステルより結晶性が高い。したがって、非晶性ポリエステルのΔT値をΔTA[℃]、ブロックポリエステルのΔT値をΔTB[℃]としたとき、ΔTA>ΔTBの関係を満足する。特に、本発明では、ΔTA−ΔTB>10の関係を満足するのが好ましく、ΔTA−ΔTB>30の関係を満足するのがより好ましい。このような関係を満足することにより、上述した効果はより顕著なものとなる。ただし、非晶性ポリエステルの結晶性が特に低い場合、TmpまたはTmsの少なくとも一方が測定困難(判別困難)であることがある。このような場合、ΔTAは∞[℃]とする。
【0045】
ブロックポリエステルは示差走査熱量分析による融点の吸熱ピークの測定を行ったときに求められる融解熱Efが5mJ/mg以上であるのが好ましく、15mJ/mg以上であるのがより好ましい。融解熱Efが5mJ/mg未満であると、結晶性ブロックを有することによる前述したような効果が十分に発揮されない可能性がある。ただし、融解熱としては、ガラス転移点の吸熱ピークの熱量は含まないものとする。融点の吸熱ピークの測定条件は特に限定されないが、例えば、試料となるブロックポリエステルを、昇温速度:10℃/分で200℃まで昇温し、さらに、降温速度:10℃/分で降温した後、昇温速度:10℃/分で昇温したときに測定される値を融解熱として求めることことができる。
【0046】
また、ブロックポリエステルは、リニア型ポリマー(架橋構造を有さないポリマー)であるのが好ましい。リニア型ポリマーは、架橋型のものに比べて、摩擦係数が小さい。これにより、特に優れた離型性が得られ、トナーの転写効率がさらに向上する。
なお、ブロックポリエステルは、前述した結晶性ブロック、非晶性ブロック以外のブロックを有するものであってもよい。
【0047】
1−2.非晶性ポリエステル
非晶性ポリエステルは、前述したブロックポリエステルより低い結晶性を有するものである。
非晶性ポリエステルは、主として、トナーを構成する各成分(例えば、後述するような着色剤、ワックス、帯電防止剤等)の分散性や、トナー製造時における混練物の粉砕性、トナーの定着性(特に、低温定着性)、透明性、機械的特性(例えば、弾性、機械的強度等)、帯電性、耐湿性等の機能を向上させるのに寄与する成分である。言い換えると、以下で詳述するような非晶性ポリエステルがトナー中に含まれないと、前記のようなトナーとして求められる特性を十分に発揮するのが困難となる場合がある。
【0048】
以下、非晶性ポリエステルを構成する成分について説明する。
非晶性ポリエステルを構成するアルコール成分としては、2個以上の水酸基を有するものを用いることができ、中でも水酸基を2個有するジオールであるのが好ましい。このような水酸基を2個有するジオール成分としては、例えば、芳香環構造を有する芳香族ジオールや、芳香環構造を有さない脂肪族ジオール等が挙げられる。芳香族ジオールとしては、例えば、ビスフェノールA、ビスフェノールAのアルキレンオキサイド付加物等が挙げられ、また、脂肪族ジオールとしては、例えば、エチレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,2−プロピレングリコール、1,3−プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、ジエチレングリコール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ジプロピレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、1,2−プロパンジオール、1,3−ブタンジオール、2,3−ブタンジオール、ネオペンチルグリコール(2,2−ジメチルプロパン−1,3−ジオール)、1,2−ヘキサンジオール、2,5−ヘキサンジオール、2−メチル−2,4−ペンタンジオール、3−メチル−1,3−ペンタンジオール、2−エチル−1,3−ヘキサンジオール、2−ブチル−2−エチル−1,3−プロパンジオール、2,4−ジエチル−1,5−ペンタンジオール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコール等の鎖状ジオール類、または2,2−ビス(4−ヒドロキシシクロヘキシル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシシクロヘキシル)プロパンのアルキレンオキサイド付加物、1,4−シクロヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、水添ビスフェノールA、水添ビスフェノールAのアルキレンオキサイド付加物等の環状ジオール類等が挙げられる。
【0049】
非晶性ポリエステルを構成するカルボン酸成分としては、2価以上のカルボン酸またはその誘導体(例えば、酸無水物、低級アルキルエステル等)等を用いることができるが、2価のジカルボン酸またはその誘導体等を用いるのが好ましい。このような2価のジカルボン酸成分としては、例えば、o−フタル酸(フタル酸)、テレフタル酸、イソフタル酸、コハク酸、アジピン酸、セバシン酸、アゼライン酸、オクチルコハク酸、シクロヘキサンジカルボン酸、フマル酸、マレイン酸、イタコン酸およびこれらの誘導体(例えば、無水物、低級アルキルエステル等)等が挙げられる。
【0050】
このように、非晶性ポリエステルを構成するジカルボン酸成分は、特に限定されないが、少なくともその一部がテレフタル酸骨格を有するものであるのが好ましく、その80mol%以上がテレフタル酸骨格を有するものであるのがより好ましく、その90mol%以上がテレフタル酸骨格を有するものであるのがさらに好ましい。これにより、最終的に得られるトナーは、トナーとして求められる各種特性のバランスが特に優れたものとなる。
【0051】
また、非晶性ポリエステルを構成するモノマー成分は、その50mol%以上(より好ましくは、80mol%以上)が、前述した非晶性ブロックを構成するモノマー成分と同一であるのが好ましい。すなわち、非晶性ポリエステルは、非晶性ブロックと同様のモノマー成分で構成されたものであるのが好ましい。これにより、ブロックポリエステルと非晶性ポリエステルとの相溶性が、特に優れたものとなる。ただし、ここでの「モノマー成分」は、ブロックポリエステル、非晶性ポリエステルの製造に用いるモノマーを指すものではなく、ブロックポリエステル、非晶性ポリエステル中に含まれるモノマー成分のことを指す。
なお、非晶性ポリエステルは、上記のようなジオール成分、ジカルボン酸成分以外の成分を含むものであってもよい。
【0052】
非晶性ポリエステルの平均分子量(重量平均分子量)Mwは、特に限定されないが、5×103〜4×104であるのが好ましく、8×103〜2.5×104であるのがより好ましい。平均分子量Mwが前記下限値未満であると、最終的に得られるトナーの機械的強度が低下し、十分な耐久性(保存性)が得られない可能性がある。また、平均分子量Mwが小さすぎると、トナーの定着時に凝集破壊を起こし易くなり、耐オフセット性が低下する傾向を示す。一方、平均分子量Mwが前記上限値を超えると、トナーの定着時に粒界破壊を起こし易くなり、紙等の転写材(記録媒体)への濡れ性も低下し、定着に要する熱量も大きくなる。
非晶性ポリエステルのガラス転移点Tgは、特に限定されないが、50〜75℃であるのが好ましく、55〜70℃であるのがより好ましい。ガラス転移点が前記下限値未満であると、トナーの保存性(耐熱性)が低下し、使用環境等によっては、トナー粒子間での融着が発生する場合がある。一方、ガラス転移点が前記上限値を超えると、低温定着性や透明性が低下する。また、ガラス転移点が高すぎると、後述するような熱球形化処理の効果が十分に発揮されない可能性がある。なお、ガラス転移点は、JIS K 7121に準拠して測定することができる。
【0053】
非晶性ポリエステルの軟化点T1/2は、特に限定されないが、90〜160℃であるのが好ましく、100〜150℃であるのがより好ましく、100〜130℃であるのがさらに好ましい。軟化点が前記下限値未満であると、トナーとしての保存性が低下し、十分な耐久性が得られない可能性がある。また、軟化点が低すぎると、トナーの定着時に凝集破壊を起こし易くなり、耐オフセット性が低下する傾向を示す。一方、軟化点が前記上限値を超えると、トナーの定着時に粒界破壊を起こし易くなり、紙等の転写材(記録媒体)への濡れ性も低下し、定着に要する熱量も大きくなる。
【0054】
また、非晶性ポリエステルの軟化点をT1/2(A)[℃]、前述したブロックポリエステルの融点をTm(B)としたとき、Tm(B)>(T1/2(A)+60)の関係を満足するのが好ましく、(T1/2(A)+60)<Tm(B)<(T1/2(A)+150)の関係を満足するのがより好ましい。このような関係を満足することにより、例えば、比較的高い温度において、ブロックポリエステルがトナー粒子の形状の安定性をある程度確保しつつ、非晶性ポリエステルが十分に軟化することができる。これにより、トナーの定着温度付近での、トナー粒子の粘度を比較的低いものとし、かつ、トナーの応力緩和時間を長くすることができる。その結果、本発明のトナーを後述するような定着装置で用いた場合における定着性を、特に優れたものにすることができる。また、上記のような関係を満足することにより、例えば、後述する熱球形化処理をより効率良く行うことができ、得られるトナー(粒子)の円形度をさらに向上させることができる。また、上記のような関係を満足することにより、トナーはより幅広い温度領域において、優れた定着性を発揮することができる。
【0055】
なお、軟化点T1/2は、例えば、フローテスタを用い、サンプル量:1g、ダイ孔径:1mm、ダイ長さ:1mm、荷重:20kgf、予熱時間:300秒、測定開始温度:50℃、昇温速度:5℃/分という条件で測定したときに得られる、解析用フローチャートのh/2に相当するフロー曲線上の点の温度として求めることができる。
【0056】
また、非晶性ポリエステルは、リニア型ポリマー(架橋構造を有さないポリマー)であるのが好ましい。リニア型ポリマーは、架橋型のものに比べて、摩擦係数が小さい。これにより、特に優れた離型性が得られ、トナーの転写効率がさらに向上する。
【0057】
以上説明したように、ブロックポリエステルと、非晶性ポリエステルとを併用した場合、前述したような、ブロックポリエステルが有する特長と、非晶性ポリエステルが有する特長とを両立することができる。これにより、最終的に得られるトナーは、機械的ストレスに強く(十分な物理的安定性を有し)、かつ、幅広い温度領域で十分な定着性(定着強度)を発揮することが可能なものとなる。
【0058】
ブロックポリエステルと、非晶性ポリエステルとの配合比は、重量比で5:95〜45:55であるのが好ましく、10:90〜30:70であるのがより好まし。ブロックポリエステルの配合比が低くなりすぎると、前述したような相乗効果が十分に発揮されず、トナーの耐オフセット性を十分に向上させるのが困難になる可能性がある。一方、非晶性ポリエステルの配合比が低くなりすぎると、前述したような相乗効果が十分に発揮されず、十分な低温定着性や透明性が得られない可能性がある。また、非晶性ポリエステルの配合比が低くなりすぎると、例えば、トナーの製造方法の粉砕工程において、効率良く、均一な大きさに粉砕するのが困難となる場合がある。
【0059】
また、樹脂(バインダー樹脂)は、前述したポリエステル系樹脂以外の成分を含むものであってもよい。
ポリエステル系樹脂以外の樹脂成分(第3の樹脂成分)としては、例えば、ポリスチレン、ポリ−α−メチルスチレン、クロロポリスチレン、スチレン−クロロスチレン共重合体、スチレン−プロピレン共重合体、スチレン−ブタジエン共重合体、スチレン−塩化ビニル共重合体、スチレン−酢酸ビニル共重合体、スチレン−マレイン酸共重合体、スチレン−アクリル酸エステル共重合体、スチレン−メタクリル酸エステル共重合体、スチレン−アクリル酸エステル−メタクリル酸エステル共重合体、スチレン−α−クロルアクリル酸メチル共重合体、スチレン−アクリロニトリル−アクリル酸エステル共重合体、スチレン−ビニルメチルエーテル共重合体等のスチレン系樹脂でスチレンまたはスチレン置換体を含む単重合体または共重合体、エポキシ樹脂、ウレタン変性エポキシ樹脂、シリコーン変性エポキシ樹脂、塩化ビニル樹脂、ロジン変性マレイン酸樹脂、フェニール樹脂、ポリエチレン、ポリプロピレン、アイオノマー樹脂、ポリウレタン樹脂、シリコーン樹脂、ケトン樹脂、エチレン−エチルアクリレート共重合体、キシレン樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、テルペン樹脂、フェノール樹脂、脂肪族または脂環族炭化水素樹脂等が挙げられ、これらのうち1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0060】
原料中における樹脂の含有量は、特に限定されないが、50〜98wt%であるのが好ましく、85〜97wt%であるのがより好ましい。樹脂の含有量が前記下限値未満であると、最終的に得られるトナーにおいて、樹脂が有する機能(例えば、幅広い温度領域での良好な定着性等)が十分に発揮されない可能性がある。一方、樹脂の含有量が前記上限値を超えると、着色剤等の樹脂以外の成分の含有量が相対的に低下し、発色等のトナーの特性を十分に発揮するのが困難となる。
【0061】
着色剤としては、例えば、顔料、染料等を使用することができる。このような顔料、染料としては、例えば、カーボンブラック、スピリットブラック、ランプブラック(C.I.No.77266)、マグネタイト、チタンブラック、黄鉛、亜鉛黄、カドミウムイエロー、ミネラルファストイエロー、ネーブルイエロー、ナフトールエローS、ハンザイエローG、パーマネントエローNCG、クロムイエロー、ベンジジンイエロー、キノリンイエロー、タートラジンレーキ、赤口黄鉛、モリブデンオレンジ、パーマネントオレンジGTR、ピラゾロンオレンジ、ベンジジンオレンジG、カドミウムレッド、パーマネントレッド4R、ウオッチングレッドカルシウム塩、エオシンレーキ、ブリリアントカーミン3B、マンガン紫、ファストバイオレットB、メチルバイオレットレーキ、紺青、コバルトブルー、アルカリブルーレーキ、ビクトリアブルーレーキ、ファーストスカイブルー、インダンスレンブルーBC、群青、アニリンブルー、フタロシアニンブルー、カルコオイルブルー、クロムグリーン、酸化クロム、ピグメントグリーンB、マラカイトグリーンレーキ、フタロシアニングリーン、ファイナルイエローグリーンG、ローダミン6G、キナクリドン、ローズベンガル(C.I.45432)、C.I.ダイレクトレッド、C.I.ダイレクトレッド4、C.I.アシッドレッド、C.I.ベーシックレッド、C.I.モーダントレッド30、C.I.ピグメントレッド48:1、C.I.ピグメントレッド57:1、C.I.ピグメントレッド122、C.I.ピグメントレッド184、C.I.ダイレクトブルー1、C.I.ダイレクトブルー2、C.I.アシッドブルー9、C.I.アシッドブルー15、C.I.ベーシックブルー3、C.I.ベーシックブルー5、C.I.モーダントブルー7、C.I.ピグメントブルー15:1、C.I.ピグメントブルー15:3、C.I.ピグメントブルー5:1、C.I.ダイレクトグリーン6、C.I.ベーシックグリーン4、C.I.ベーシックグリーン6、C.I.ピグメントイエロー17、C.I.ピグメントイエロー93、C.I.ピグメントイエロー97、C.I.ピグメントイエロー12、C.I.ピグメントイエロー180、C.I.ピグメントイエロー162、ニグロシン染料(C.I.No.50415B)、金属錯塩染料、シリカ、酸化アルミニウム、マグネタイト、マグヘマイト、各種フェライト類、酸化第二銅、酸化ニッケル、酸化亜鉛、酸化ジルコニウム、酸化チタン、酸化マグネシウム等の金属酸化物や、Fe、Co、Niのような磁性金属を含む磁性材料等が挙げられ、これらのうち、1種または2種以上を組合せて用いることができる。
【0062】
本発明における結着樹脂は、分子間結合力が大きく、高結晶性ポリマーであるため、分子量を低下させTmを下げる分子設計をした時のTgの低下幅を小さくすることができ、低Tmと高Tgを両立させることができ、また、50%流出点における溶融粘度が2×102 〜3×104 Pa・sとでき、オイルレス定着用トナーとして適したものとできる。
【0063】
本発明の結着樹脂は、重量平均分子量(Mw)は5000〜100000、好ましくは6000〜70000である。重量平均分子量(Mw)が5000より小さいと、トナー内部凝集力が小さくなり過ぎて耐高温オフセット性に問題が生じ、また、100000より大きいと、生産上および粉砕に問題が生じる。
【0064】
本発明のトナーは、軟化点(Tm)が90℃〜150℃、好ましくは100℃〜140℃、さらに好ましくは100℃〜130℃の範囲にある。軟化点(Tm)が90℃より低いと耐高温オフセット性に問題が生じ、また、150℃より高いと、定着強度に問題が生じる。
また、ガラス転移温度(Tg)は50℃〜75℃、好ましくは55℃〜70℃の範囲にある。ガラス転移温度(Tg)が55℃より低いと、熱保存安定性に問題が生じ、また、75℃より高いと、粉砕性等の生産性の低下の問題が生じる。
【0065】
本発明のトナーは、荷電制御剤(CCA)、必要に応じて離型剤、分散剤、磁性粒子等を含有してもよく、原料であるポリオール類に分散してもよく、また、樹脂を形成した後適宜混練により配合してもよい。
荷電制御剤(CCA)としては、摩擦帯電により正または負の荷電を与え得るものであれば、特に限定されず有機あるいは無機の各種のものを用いることができる。
【0066】
正荷電制御剤としては、例えば、ニグロシンベースEX(オリエント化学工業(株)製)、第4級アンモニウム塩P−51(オリエント化学工業(株)製)、ニグロシン ボントロンN−01(オリエント化学工業(株)製)、スーダンチーフシュバルツBB(ソルベントブラック3: Color Index 26150)、フェットシュバルツHBN(C.I. NO.26150)、ブリリアントスピリッツシュバルツTN(ファルベン・ファブリッケン・バイヤ社製)、ザボンシュバルツX(ファルベルケ・ヘキスト社製)、さらにアルコキシ化アミン、アルキルアミド、モリブデン酸キレート顔料などが挙げられる。中でも第4級アンモニウム塩P−51が好ましい。
【0067】
また、負荷電制御剤としては、例えば、オイルブラック(Color Index 26150)、オイルブラックBY(オリエント化学工業(株)製)、ボントロンS−22(オリエント化学工業(株)製)、サリチル酸金属錯体E−81(オリエント化学工業(株)製)、チオインジゴ系顔料、銅フタロシアニンのスルホニルアミン誘導体、スピロンブラックTRH(保土谷化学工業(株)製)、ボントロンS−34(オリエント化学工業(株)製)、ニグロシンSO(オリエント化学工業(株)製)、セレスシュバルツ(R)G(ファルベン・ファブリケン・バイヤ社製)、クロモーゲンシュバルツET00(C.I.NO.14645)、アゾオイルブラック(R)(ナショナル・アニリン社製)などが挙げられる。中でも、サリチル酸金属錯体E−81が好ましい。
これらの荷電制御剤は、単独であるいは複数種組合せて使用することができるが、結着樹脂に添加する荷電制御剤の添加量は、結着樹脂100重量部に対して0.001〜5重量部であり、好ましくは0.001〜3重量部である。
【0068】
また、本発明のトナーに用いられる結着樹脂はその分子量範囲により熱溶融特性に優れ、また、定着温度領域での粘弾性特性により離型剤を不要とするが、添加する場合には、結着樹脂100重量部に対して4重量部(4重量%)以下であり、好ましくは0〜3重量部程度である。
【0069】
離型剤としては、具体的にはパラフィンワックス、ポリオレフィンワックス、芳香族基を有する変性ワックス、脂環基を有する炭化水素化合物、天然ワックス、炭素数12以上の長鎖炭化水素鎖〔CH3(CH2)11またはCH3(CH2)12以上の脂肪族炭素鎖〕を有する長鎖カルボン酸、そのエステル脂肪酸金属塩、脂肪酸アシド、脂肪酸ビスアシド等を例示し得る。異なる低軟化点化合物を混合して用いても良い。具体的には、パラフィンワックス(日本石油社製)、パラフィンワックス(日本精蝋社製)、マイクロワックス(日本石油社製)、マイクロクリスタリンワックス(日本精蝋社製)、硬質パラフィンワックス(日本精蝋社製)、PE−130(ヘキスト社製)、三井ハイワックス110P(三井石油化学社製)、三井ハイワックス220P(三井石油化学社製)、三井ハイワックス660P(三井石油化学社製)、三井ハイワックス210P(三井石油化学社製)、三井ハイワックス320P(三井石油化学社製)、三井ハイワックス410P(三井石油化学社製)、三井ハイワックス420P(三井石油化学社製)、変性ワックスJC−1141(三井石油化学社製)、変性ワックスJC−2130(三井石油化学社製)、変性ワックスJC−4020(三井石油化学社製)、変性ワックスJC−1142(三井石油化学社製)、変性ワックスJC−5020(三井石油化学社製)、密ロウ、カルナバワックス、モンタンワックス等を挙げることができる。脂肪酸金属塩として、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム、オレイン酸亜鉛、パルミチン酸亜鉛、パルミチン酸マグネシウム等がある。
【0070】
ポリオレフィン系ワックスとしては、例えば低分子量ポリプロピレン、低分子量ポリエチレン、あるいは酸化型のポリプロピレン、酸化型のポリエチレン等が挙げられる。ポリオレフィン系ワックスの具体例としては、例えば、Hoechst wax PE520、Hoechst wax PE130、Hoechstwax PE190(ヘキスト社製)、三井ハイワックス200、三井ハイワックス210、三井ハイワックス210M、三井ハイワックス220、三井ハイワックス220M(三井石油化学工業社製)、サンワックス131−P、サンワックス151−P、サンワックス161−P(三洋化成工業社製)などのような非酸化型ポリエチレンワックス、Hoechst wax PED121、Hoechst wax PED153、Hoechst wax PED521、Hoechst wax PED522、同Ceridust 3620、同Ceridust VP130、同Ceridust VP5905、同Ceridust VP9615A、同Ceridust TM9610F、同Ceridust 3715(ヘキスト社製)、三井ハイワックス420M(三井石油化学工業社製)、サンワックスE−300、サンワックスE−250P(三洋化成工業社製)などのような酸化型ポリエチレンワックス、Hoechst Wachs PP230(ヘキスト社製)、ビスコール330−P、ビスコール550−P、ビスコール660P(三洋化成工業社製)などのような非酸化型ポリプロピレンワックス、ビスコールTS−200(三洋化成工業社製)などのような酸化型ポリプロピレンワックスなどが例示される。これらの離型剤は、単独であるいは複数種組合せて使用することができる。必要に応じて添加される離型剤としては、セイコーインストルメント(株)製「DSC120」で測定されるDSC吸熱曲線における吸熱メインピーク値である軟化点(融点)が40〜130℃、好ましくは50〜120℃のものを使用するとよい。
【0071】
本発明におけるトナー母粒子は、上記で得た組成物を、混練・溶融した後、微粉砕手段により粉砕・分級して得られるが、その流動性を向上させる為に、流動性向上剤を外添してもよい。
流動性向上剤としては、有機系微粉末または無機系微粉末を用いることができる。例えばフツ素系樹脂粉末、すなわちフツ化ビニリデン微粉末、ポリテトラフルオロエチレン微粉末、アクリル樹脂系微粉末など;又は脂肪酸金属塩、すなわちステアリン酸亜鉛、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸鉛など;又は金属酸化物、すなわち酸化鉄、酸化アルミニウム、酸化チタン、酸化亜鉛など;又は微粉末シリカ、すなわち湿式製法シリカ、乾式製法シリカ、それらシリカにシランカツプリング剤、チタンカツプリング剤、シリコンオイルなどにより表面処理をほどこした処理シリカなどがあり、これらは1種或いは2種以上の混合物で用いられる。
【0072】
好ましい流動性向上剤としては、ケイ素ハロゲン化合物の気相酸化法により生成された微粉体であり、いわゆる乾式法シリカ又はヒユームドシリカと称されるもので、従来公知の技術によって製造されるものである。例えば四塩化ケイ素ガスの酸水素焔中における熱分解酸化反応を利用するもので、基礎となる反応式は次の様なものである。
SiCl4 + 2H2 + O2 → SiO2 + 4HCl
【0073】
また、この製造工程において、例えば塩化アルミニウム又は塩化チタンなど他の金属ハロゲン化合物をケイ素ハロゲン化合物と共に用いる事によってシリカと他の金属酸化物の複合微粉体を得る事も可能であり、それらも包含する。その粒径は平均の一次粒径として、0.001〜2μmの範囲内である事が望ましく、特に好ましくは、0.002〜0.2μmの範囲内のシリカ微粉体を使用するのが良い。本発明に用いられるケイ素ハロゲン化合物の気相酸化法により生成された市販のシリカ微粉体としては、例えば以下の様な商品名で市販されているものがある。日本アエロジル社製の「AEROSIL 130」、以下、同 200、同300、同 380、TT600、MOX170、MOX80、COK84等が挙げられ、また、CABOT Co.社製の「Ca−O−SiL M−5」、以下、同 MS−7、同 MS−75、同 HS−5、同 EH−5等が挙げられ、また、WACKER−CHEMIE GMBH社製の「Wacker HDK N 20V15」、以下、同 N20E、同 T30、同 T40、ダウコーニングCo.社の「D−C Fine Silica」、Fransill社の「Fransol」等が挙げられる。
【0074】
更には、該ケイ素ハロゲン化合物の気相酸化により生成されたシリカ微粉体に疎水化処理した処理シリカ微粉体を用いることがより好ましい。該処理シリカ微粉体において、メタノール滴定試験によって測定された疎水化度が30〜80の範囲の値を示すようにシリカ微粉体を処理したものが特に好ましい。疎水化方法としてはシリカ微粉体と反応、あるいは物理吸着する有機ケイ素化合物などで化学的に処理することによって付与される。好ましい方法としては、ケイ素ハロゲン化合物の上記気相酸化により生成されたシリカ微粉体を有機ケイ素化合物で処理する。
【0075】
その様な有機ケイ素化合物の例は、ヘキサメチルジシラザン、トリメチルシラン、トリメチルクロルシラン、トリメチルエトキシシラン、ジメチルジクロルシラン、メチルトリクロルシラン、アリルジメチルクロルシラン、アリルフエニルジクロルシラン、ベンジルジメチルクロルシラン、ブロムメチルジメチルクロルシラン、α−クロルエチルトリクロルシラン、β−クロルエチルトリクロルシラン、クロルメチルジメチルクロルシラン、トリオルガノシリルメルカプタン、トリメチルシリルメルカプタン、トリオルガノシリルアクリレート、ビニルジメチルアセトキシシラン、ジメチルエトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、ジフエニルジエトキシシラン、ヘキサメチルジシロキサン、1,3−ジビニルテトラメチルジシロキサン、1,3−ジフエニルテトラメチルジシロキサンおよび1分子当り2から12個のシロキサン単位を有し末端に位置する単位にそれぞれ1個宛のSiに結合した水酸基を有するジメチルポリシロキサン等がある。これらは1種あるいは2種以上の混合物で用いられる。
【0076】
その処理シリカ微粉体の粒径としては0.003〜0.1μm、0.005〜0.05μmの範囲のものを使用することが好ましい。市販品としては、タラノツクス−500(タルコ社)、AEROSIL R−972(日本アエロジル社)などがある。
流動性向上剤の添加量としては、該樹脂粒子100重量部に対して0.01〜5重量部、好ましくは0.1〜3重量部である。0.01重量部未満では流動性向上に効果はなく、5重量部を超えるとカブリや文字のにじみ、機内飛散を助長する。
【0077】
次に、本発明のトナーを用いて画像を形成する本発明の画像形成装置について説明する。
図示しないが、本発明の画像形成装置は、従来の一般的な画像形成装置と同様に、静電潜像が形成される像担持体と、この像担持体上の静電潜像をトナーによりトナー像に現像する現像器と、像担持体上のトナー像を紙等の記録媒体に転写する転写器と、記録媒体に転写されたトナー像を加熱定着する定着器とを少なくとも備えている。その場合、像担持体、現像器および転写器は、従来の一般的なものと同じであるので、それらの説明は省略する。
【0078】
また、定着器はオイルレス2ローラを備えた定着器である。以下、この定着器を図2により説明する。図中、1は定着ローラ(加熱ローラ)、2はバックアップローラ(加圧ローラ)、3は分離爪、4は紙等の記録媒体である。
定着ローラ1は、単層タイプ、多層タイプのいずれでもよい。単層タイプにあっては、加熱手段を内蔵した15〜50mm径の芯金の周面に0.1〜20mm、好ましくは0.5〜3mm厚のシリコンゴム層、またはフッ素ゴム層を積層したものである。また、多層タイプにあっては、加熱手段を内蔵した15〜50mm径の芯金の周面に0.1〜20mm、好ましくは0.5〜3mm厚の弾性層、0.05〜2mm、好ましくは0.1〜1mm厚のコート層を順次積層したもので、弾性層とコート層の組み合わせとしては、例えば、
(1)シリコン樹脂からなる弾性層、フッ素樹脂からなるコート層としたもの、
(2)シリコンゴムからなる弾性層、フッ素ゴムからなるコート層としたもの、
(3)シリコンゴムからなる弾性層、シリコンゴムとフッ素ゴムからなるコート層としたもの
等が挙げられる。そして、単層タイプにおけるゴム層、また、多層タイプにおける弾性層は、JISA硬度で30度以下、好ましくは15度以下のゴム硬度を有するものである。
【0079】
また、バックアップローラ2は、単層タイプ、多層タイプのいずれでもよい。単層タイプにあっては15〜50mm径の芯金の周面に0.1〜20mm、好ましくは0.5〜3mm厚のシリコンゴム層、またはフッ素ゴム層を積層したものである。また、多層タイプにあっては15〜50mm径の芯金の周面に0.1〜20mm、好ましくは0.5〜3mm厚の弾性層、0.05〜2mm、好ましくは0.1〜1mm厚のコート層を順次積層したもので、弾性層とコート層の組み合わせとしては、例えば、
(1)シリコンスポンジからなる弾性層、高離型性シリコンからなるコート層を順次積層したもの、
(2)シリコンゴムからなる弾性層、フッ素ゴムからなるコート層を順次積層したもの、
(3)シリコンゴムからなる弾性層、フッ素ゴムラテックス、フッ素樹脂コートからなるコート層を順次積層したもの、
(4)シリコンスポンジゴムからなる弾性層、フッ素樹脂(PFAチューブ)被覆層を順次積層したもの等が挙げられる。そして、単層タイプにおけるゴム層、また、多層タイプにおける弾性層は、JISA硬度で30度以下、好ましくは15度以下のゴム硬度を有するものである。
【0080】
定着ローラ1とバックアップローラ2との加圧力(線圧)は、0.2〜2kgf/cm、好ましくは0.3〜1kgf/cmであり、ニップ幅は1〜20mm、好ましくは4〜10mmである。また、速度は適宜設定されるが、ニップ通過時間が10〜150msec、好ましくは30〜100msecとなるように設定される。
【0081】
前述のように本発明のトナーは、定着ローラ(加熱ローラ)1との接触に際しているにもかかわらず、その弾性や粘性の増加により体に付着(オフセット)することなく記録媒体4に定着され、低温および高温における耐オフセット性に優れるので、本発明の画像形成装置の定着器は、定着ローラ表面にシリコンオイル等の離型剤塗布を不要としたオイルレス定着器とすることができる。
そして、本発明の画像形成装置によれば、前述のような低温定着性および耐オフセット性の向上し、かつ透明性の向上したトナーと、オイルレス2ローラ定着器とを有機的に組み合わせることで、オイルレスで良好な低温定着性を有しつつ高温オフセットを防止し、更には良好な透明性を有する高品質のトナー画像を形成することができる。
【0082】
本発明のトナーの、軟化点(Tm)、ガラス転移点(Tg)、分子量、粒径,貯蔵弾性率G′、損失弾性率G″等のトナーの物性値の測定方法および定着時のトナーのオフセット良好域の評価方法、透明性の評価方法はそれぞれ公知の方法が採用できるが、それらの一例を後述する実施例および比較例の説明において説明する。
【0083】
(本発明の実施例および比較例)
次に、本発明のトナーを実施例および比較例により、具体的に説明する。
まず、本発明のトナーの実施例および比較例の各トナーの物性値の測定、動的粘弾性の測定、定着時のトナーのオフセット良好域の評価および透明性(HAZE値)の測定評価について説明する。
【0084】
(1)軟化点(Tm;融点)[℃]の測定
下記測定装置を用いて下記条件にて、トナーの軟化点(Tm)を測定する。
(a) 測定装置
(株)島津製作所製
「定荷重押出型細管式レオメータ フローテスタ CFD−500D」。
(b) 測定試料の調製
測定試料としてトナー約1gを圧縮成型し、フローテスタのシリンダの内径に合わせた円柱状試料とする。
(c) 測定条件
荷重 20kgf、ダイ穴 1mm、ダイ長さ 1mm。
(d) Tm算出方法
1/2法。
【0085】
(2)ガラス転移点(Tg)[℃]の測定
を用いて下記の条件で、トナーのガラス転移点(Tg)を測定する。
(a) 測定装置
セイコーインスツルメント(株)製
示差走査熱量測定装置DSC220C/EXTRa6000 PC ステーション。
(b) 測定試料の調製
測定試料としてトナー10mgをアルミニウム製サンプル容器に封入する。
(c) 測定温度
20℃(測定開始温度)〜200 ℃(測定終了温度)。
(d) 昇温速度
10 ℃/min。
(e) Tg
ガラス転移点に相当する吸熱が生じた位置(吸熱カーブのショルダー位置)の温度とする。
【0086】
(3)分子量分布の測定
結着樹脂の5mgを5gのTHFに溶解し、THF不溶分およびコンタミ物質を除去するため、ポアサイズ0.2μmのメンブランフィルターを通して、GPC用サンプルを調製する。こうして調製したサンプル(THF可溶分)を、GPCを用いて、下記の条件にて測定する。
(a) カラム
昭和電工(株)製
「Shodex(GPC)KF806M+KF802.5」。
(b) カラム温度
30 ℃。
(c) 溶媒
THF(テトラヒドロフラン)。
(d) 流速
1.0 ml/min。
(e) 検出器
RI検出器。
(f) 標準試料
単分散ポリスチレン標準試料(重量平均分子量580から390万)。
【0087】
(4)粒径の測定
本明細書では、粒径という場合「平均粒径」を意味する。
コールターマルチサイザーIII 型(コールター社製)を用い、100μmのアパチャーチューブで粒径別相対重量分布を測定することにより求める。また、シリカ粒子等の外添剤の粒径は、電子顕微鏡法による。
【0088】
(5)ステップストレインによる動的粘弾性の測定
本発明のトナーの動的粘弾性は、下記の粘弾性測定装置を用いステップストレインにより下記の条件で動的粘弾性測定を行うことで求める。
【0089】
(a) 粘弾性測定装置
粘弾性測定装置は、アレス粘弾性測定システム(ARES粘弾性測定装置;レオメトリック・サイエンティフィック・エフ・イー社製)である。
(b) 使用治具
使用治具は、上下2枚のパラレルプレート(φ25mm径)である。
(c) 測定試料の調製
測定試料は、トナー約1gをパラレルプレートの下プレートに載せ、ヒーターにより測定開始温度に加熱し少し柔らかくなってきたところで、このトナーをパラレルプレートの上プレートで挟んで加圧する。パラレルプレートからはみ出したトナーはトリミングして取り除き、パラレルプレートの外周形状(つまり、パラレルプレートの直径)に合わせ、かつ試料の高さ(上下プレート間のギャップ)を1.0〜2.0mmに調製して円柱状試料とする。
(d) 測定周波数
測定周波数は、1rad/sec(1Hz=6.28 rad/sec)に設定する。
(e) 測定温度
測定温度は一定の180℃に設定する。
(f) 測定歪み
まず、パラレルプレートの上プレートは回転させずに、パラレルプレートの下プレートのみを回転して歪を与える。このとき、測定温度を一定にし、歪み依存(Strain Sweep)モードで、測定試料に徐々に大きな歪み(歪み0.1〜200%)を与える。そして、与えた歪みに対し動的粘弾性の貯蔵弾性率G′が線形領域における最大歪み、および非線形領域(non linear monitor の値が0.06以上)の最小歪みを求める。これらの最大歪みおよび最小歪みをステップストレイン測定時の測定歪みとした。
次に、測定開始の初期の5minはこのように求めた線形領域の最大歪みをかけてG′(L1)を測定し、次の5minは同様に求めた非線形領域の歪みをかけてG′(NL)を測定し、更に次の5minは初期の線形領域の最大歪みをかけてG′(L2)を測定する。そして、G′(L1)は測定開始後300秒(sec)後の値とし、また、G′(NL)は測定開始後600秒(sec)後の値とする。
【0090】
【0091】
(6)定着性測定方法
(a) 定着性評価用画像の作成
セイコーエプソン社製カラーレーザープリンタ LP3000Cより定着部を外したものを用いて、J紙(富士ゼロックスオフィスサプライ社製)を評価用紙とし、このJ紙上にトナーを均一に付着させた、いわゆるベタ画像を形成し、そのベタ画像におけるトナー付着量が0.4mg/cm2となるように画像形成条件を調整し、次に、紙先端から10mmの位置で20mm四方の領域に、解像度600dpiの孤立ドットによる30%ハーフトーン画像を形成し、このハーフトーン画像を定着性評価用画像とした。
【0092】
(b) 定着性評価用画像の定着
コニカ社製カラーレーザープリンタ KL−2010から定着器(定着ユニット)を取り外して、前述の定着性評価用画像の定着に使用した。この定着器は加熱ローラおよび加圧ローラからなる熱ローラ定着器である。そして、この定着器を外部駆動装置により独立して駆動可能にするとともに、その定着ニップ通過時間を調整できるようにし、更に、J紙上の定着性評価用画像に接する側の加熱ローラ(定着ローラ)の表面温度を100℃から200℃に制御できるように改造した。更に、定着ローラ表面にシリコーンオイルを塗布する塗布手段を取り外し(オイルパッド非装着状態)、また、印字されていないA4サイズの白紙を1,000枚通紙させ、更に定着ローラ表面をイソプロピルアルコールにより清掃し、更に綿布で乾拭きし、定着ローラの表面にシリコーンオイルのない状態に維持した。
このように定着ローラの表面からシリコーンオイルを除去した定着器に、J紙上の定着性評価用画像を、加熱ローラ側が未定着トナー(定着性評価用画像)付着面となるようにして定着ニップ通過時間50mm/secで通過させて定着した。
【0093】
(c) 非オフセット領域の判定
定着ローラの表面温度を段階的に変化させながら、未定着の定着性評価用画像を定着器に通過させ、画像の一部が通紙時に定着ローラに転移した後、再度J紙に移行しているか否かを目視で判定した。J紙への画像の一部の移行があるものをオフセット有り、ないものをオフセットなしとすることで、非オフセット領域を判定した。
【0094】
(d) 定着強度良好域の測定
非オフセット領域の判定後、定着後の定着性評価用画像を消しゴム(ライオン事務機 ECR−502R インキボールペン用)を用い、1kgの荷重にて5回擦り、画像濃度により残存率を測定した。この画像濃度残存率の測定方法は、擦る前と擦った後の濃度をX−Rite Inc.社製「X−Ritemodel 404」により測定し、次式で計算して画像濃度残存率を求めた。
残存率 =(擦った後の濃度/擦る前の濃度)×100 [%]
測定結果、画像濃度残存率が70%以上の温度領域を定着強度良好域とした。そして、定着率の評価に、この定着強度良好域の最低温度を定着率良好最低温度として用いる。
【0095】
(e) 透明性(HAZE値)の測定
ベタ画像におけるトナー付着量が0.7mg/cm2となるように画像形成条件を調整し、次に、OHPシート上の先端から10mmの位置で20mm四方の領域に現像し、180℃の定着像についてHAZEメータ{日本電色工業(株)ヘーズメーターMODEL1001DP}にてHAZE値を測定した。数値が小さいほど透明性が高いことを示す。
【0096】
(本発明のトナーの実施例および比較例)
次に、本発明のトナーの実施例および比較例について説明する。
〈トナー用樹脂の製造方法〉
まず、本発明のトナーの実施例および比較例に用いた樹脂の製造例について説明する。
(樹脂1)
まず、ネオペンチルアルコール:36モル部、エチレングリコール:36モル部、1,4ーシクロヘキサンジオール:48モル部、テレフタル酸ジメチル:90モル部、無水フタル酸:10モル部の混合物を用意した。
2リットル4つ口フラスコに、環流冷却器、蒸留塔、水分離装置、窒素ガス導入管、温度計および撹拌装置を常法に従い設置し、前述の混合物1000gとエステル化縮合触媒1gを仕込み、180℃で生成する水、メタノールを蒸留塔より流出させながらエステル化反応させた。蒸留塔から水、メタノールが流出しなくなった時点で、2リットル4つ口フラスコから蒸留塔を取り外し、真空ポンプに接続した。系内圧力を5mmHg以下に減圧した状態で、温度200℃、撹拌回転数150rpmで撹拌することにより、縮合反応で発生した遊離ジオールを系外に排出し、その結果得られた反応物を樹脂1とした。樹脂1の軟化点(Tm)は111℃、ガラス転移点(Tg)は60℃、重量平均分子量(Mw)13,000であった。
【0097】
(樹脂2)
まず、前述の樹脂1:70モル部、1,4ーブタンジオール:15モル部、テレフタル酸ジメチル:15モル部の混合物を用意した。
2リットル4つ口フラスコに、環流冷却器、蒸留塔、水分離装置、窒素ガス導入管、温度計および撹拌装置を常法に従い設置し、前述の混合物1000gとエステル化縮合触媒1gを仕込み、200℃で生成する水、メタノールを蒸留塔より流出させながらエステル化反応させた。蒸留塔から水、メタノールが流出しなくなった時点で、2リットル4つ口フラスコから蒸留塔を取り外し、真空ポンプに接続した。系内圧力を5mmHg以下に減圧した状態で、温度220℃、撹拌回転数150rpmで撹拌することにより、縮合反応で発生した遊離ジオールを系外に排出し、その結果得られた反応物を樹脂2とした。樹脂2の軟化点(Tm)は149℃、ガラス転移点(Tg)は64℃、重量平均分子量(Mw)28,000であった。
【0098】
〈トナー用マスターバッチの製造方法〉
(マスターバッチ1)
前述の樹脂2の70wt%に、着色剤として顔料 Toner Magenta 6B(クラリアント社製)を30wt%加えた。これをヘンシェルミキサー20B(三井鉱山(株)製)で十分混合した後、連続式2本ロール混練機{三井鉱山(株)社製}で混練した。この混練物を粉砕機{ホソカワミクロン(株)社製}で直径2mm程度に粗粉砕しマスターバッチ1とした。
(マスターバッチ2)
前述の樹脂1の70wt%に、着色剤として顔料 Toner Magenta 6B(クラリアント社製)を30wt%加えた。これをヘンシェルミキサー20B(三井鉱山(株)製)で十分混合した後、連続式2本ロール混練機{三井鉱山(株)社製}で混練した。この混練物を粉砕機{ホソカワミクロン(株)社製}で直径2mm程度に粗粉砕しマスターバッチ2とした。
【0099】
〈実施例および比較例のトナーの製造方法〉
(実施例1)
前述のマスターバッチ1の14重量部に、前述の樹脂1を80重量部、前述の樹脂2を12重量部、CCAとして Bontron E−81(オリヱント化学工業社製)を1.1重量部、離型剤としてカルナウバワックス(日本ワックス社製)を3.3重量部添加しヘンシェルミキサー20B(三井鉱山(株)製)で十分混合した後、2軸押出機2軸押出機{東芝機械(株)社製}で溶融混練し、常温(約25℃)に冷却後、粉砕機 200AFG{ホソカワミクロン(株)社製}で粉砕、同分級機 100ATP で分級し、重量D50が8μmの母粒子を得た。この母粒子100重量部に対して、シリカ RX200(日本アエロジル社製)を1重量部添加して、ヘンシェルミキサー20B(三井鉱山(株)製)で混合し、実施例1のトナーを得た。
【0100】
(実施例2)
前述のマスターバッチ1の14重量部に、前述の樹脂1を50重量部、前述の樹脂2を42重量部、CCAとして Bontron E−81(オリヱント化学工業社製)を1.1重量部、離型剤としてカルナウバワックス(日本ワックス社製)を3.3重量部添加しヘンシェルミキサー20B(三井鉱山(株)製)で十分混合した後、2軸押出機{東芝機械(株)社製}で溶融混練し、常温(約25℃)に冷却後、粉砕機 200AFG{ホソカワミクロン(株)社製}で粉砕、同分級機 100ATP で分級し、重量D50が8μmの母粒子を得た。この母粒子100重量部に対して、シリカ RX200(日本アエロジル社製)を1重量部添加して、ヘンシェルミキサー20B(三井鉱山(株)製)で混合し、実施例2のトナーを得た。
【0101】
(実施例3)
前述のマスターバッチ1の14重量部に、前述の樹脂1を70重量部、前述の樹脂2を22重量部、CCAとして Bontron E−81(オリヱント化学工業社製)を1.1重量部、離型剤としてカルナウバワックス(日本ワックス社製)を3.3重量部添加しヘンシェルミキサー20B(三井鉱山(株)製)で十分混合した後、2軸押出機{東芝機械(株)社製}で溶融混練し、常温(約25℃)に冷却後、粉砕機 200AFG{ホソカワミクロン(株)社製}で粉砕、同分級機 100ATP で分級し、重量D50が8μmの母粒子を得た。この母粒子100重量部に対して、シリカ RX200(日本アエロジル社製)を1重量部添加して、ヘンシェルミキサー20B(三井鉱山(株)製)で混合し、実施例3のトナーを得た。
【0102】
(比較例1)
前述のマスターバッチ1の14重量部に、前述の樹脂1を90重量部、前述の樹脂2を2重量部、CCAとして Bontron E−81(オリヱント化学工業社製)を1.1重量部、離型剤としてカルナウバワックス(日本ワックス社製)を3.3重量部添加しヘンシェルミキサー20B(三井鉱山(株)製)で十分混合した後、2軸押出機{東芝機械(株)社製}で溶融混練し、常温(約25℃)に冷却後、粉砕機 200AFG{ホソカワミクロン(株)社製}で粉砕、同分級機 100ATP で分級し、重量D50が8μmの母粒子を得た。この母粒子100重量部に対して、シリカ RX200(日本アエロジル社製)を1重量部添加して、ヘンシェルミキサー20B(三井鉱山(株)製)で混合し、比較例1のトナーを得た。
【0103】
(比較例2)
前述のマスターバッチ1の14重量部に、前述の樹脂1を10重量部、前述の樹脂2を82重量部、CCAとして Bontron E−81(オリヱント化学工業社製)を1.1重量部、離型剤としてカルナウバワックス(日本ワックス社製)を3.3重量部添加しヘンシェルミキサー20B(三井鉱山(株)製)で十分混合した後、2軸押出機{東芝機械(株)社製}で溶融混練し、常温(約25℃)に冷却後、粉砕機 AFG200{ホソカワミクロン(株)社製}で粉砕、同分級機 ATP200 で分級し、重量D50が8μmの母粒子を得た。この母粒子100重量部に対して、シリカ RX200(日本アエロジル社製)を1重量部添加して、ヘンシェルミキサー20B(三井鉱山(株)製)で混合し、比較例2のトナーを得た。
【0104】
(比較例3)
前述のマスターバッチ1の14重量部に、前述の樹脂1を80重量部、前述の樹脂2を12重量部、CCAとして Bontron E−81(オリヱント化学工業社製)を1.1重量部、離型剤としてカルナウバワックス(日本ワックス社製)を5.6重量部添加しヘンシェルミキサー20B(三井鉱山(株)製)で十分混合した後、2軸押出機{東芝機械(株)社製}で溶融混練し、常温(約25℃)に冷却後、粉砕機 200AFG{ホソカワミクロン(株)社製}で粉砕、同分級機 100ATP で分級し、重量D50が8μmの母粒子を得た。この母粒子100重量部に対して、シリカ RX200(日本アエロジル社製)を1重量部添加して、ヘンシェルミキサー20B(三井鉱山(株)製)で混合し、比較例3のトナーを得た。
【0105】
(比較例4)
前述のマスターバッチ2の14重量部に、線状ポリエステル樹脂(三洋化成工業株式会社製:軟化点(Tm)105℃、ガラス転移点(Tg)68℃、重量平均分子量(Mw)11,500)を70重量部、架橋ポリエステル樹脂(三洋化成工業株式会社製:軟化点(Tm)144℃、ガラス転移点(Tg)60℃、重量平均分子量(Mw)29,000)を22重量部、CCAとして Bontron E−81(オリヱント化学工業社製)を1.1重量部、離型剤としてカルナウバワックス(日本ワックス社製)を3.3重量部添加しヘンシェルミキサー20B(三井鉱山(株)製)で十分混合した後、2軸押出機{東芝機械(株)社製}で溶融混練し、常温(約25℃)に冷却後、粉砕機 200AFG{ホソカワミクロン(株)社製}で粉砕、同分級機 100ATP で分級し、重量D50が8μmの母粒子を得た。この母粒子100重量部に対して、シリカ RX200(日本アエロジル社製)を1重量部添加して、ヘンシェルミキサー20B(三井鉱山(株)製)で混合し、比較例4のトナーを得た。
【0106】
これらの各実施例および各比較例のトナーに対して、温度180℃の時の線形領域における貯蔵弾性率G′(L1)および非線形領域における貯蔵弾性率G′(NL)を測定するとともに、これらのトナーを用いて前述のように非オフセット領域、定着強度領域および透明性(HAZE値)の評価試験を行った。それらの結果を表1に示す。
【0107】
【表1】
【0108】
表1に示すように、180℃での非線形領域のG′(NL)は、実施例1では120dyn/cm2、実施例2では380dyn/cm2、実施例3では200dyn/cm2、比較例1では80dyn/cm2、比較例2では600dyn/cm2、比較例3では110dyn/cm2、比較例4では700dyn/cm2であった。また、180℃での線形領域のG′(L1)と非線形領域のG′(NL)との比(G′(L1)/G′(NL))は、実施例1では8.3、実施例2では19.7、実施例3では12.5、比較例1では4.8、比較例2では21.5、比較例3では10.4、比較例4では21.4であった。
【0109】
また表1からわかるように、低温オフセットは、実施例1および3では160℃以下で、実施例2では180℃より低く、いずれの実施例も良好であった。また、低温オフセットは、比較例1ではすべての測定温度で低温オフセットが生じて不良であり、比較例2および4では180℃以上でも低温オフセットが生じて不良であり、比較例3では160℃以下で良好であった。
【0110】
また、定着率良好最低温度は、実施例1および3では160℃以下で、実施例2では180℃より低く、いずれの実施例も良好であった。また、定着率良好最低温度は、比較例1ではすべての測定温度でオフセットが発生しており定着率の測定が不能であり、比較例2および4では180℃以上でも定着率が不良であり、比較例3では160℃以下で定着率が良好であった。
【0111】
更に、透明性は、実施例1ないし3ではいずれもHAZE値が30未満であり良好であった。また透明性は、比較例1ではすべての測定温度でHAZE値が測定不能で不良であり、比較例2ではHAZE値が30未満で良好であり、比較例3および4ではともにHAZE値が50より大きく不良であった。
以上のことから、実施例1ないし3のトナーはいずれも所期の効果を得られることが確認された。
【図面の簡単な説明】
【図1】加熱定着器の定着ニップ前、定着ニップ、定着ニップ出口における、温度依存性の動的粘弾性を有する本発明のトナーにおける1実施例の挙動の一例を示す図である。
【図2】本発明のトナーが適用される画像形成装置の定着器の一例を模式的に示す図である。
【符号の説明】
1…定着ローラ(加熱ローラ)、2…バックアップローラ(加圧ローラ)、3…分離爪、4…紙等の記録媒体
Claims (3)
- 結着樹脂と少なくとも着色剤とからなり、
粘弾性特性の線形領域から非線形領域へのステップストレイン測定において、180℃での線形領域における貯蔵弾性率(G′(L1))および非線形領域における貯蔵弾性率(G′(NL))が、
G′(L1)/G′(NL)が5〜20であり、かつ
G′(NL)が100〜400dyn/cm2である
関係を満たすことを特徴とするトナー。 - 離型剤が結着樹脂100重量部に対して4重量部以下含まれることを特徴とする請求項1記載のトナー。
- 静電潜像が形成される像担持体と、この像担持体上の静電潜像をトナーによりトナー像に現像する現像器と、前記像担持体上のトナー像を記録媒体に転写する転写器と、前記記録媒体に転写されたトナー像を加熱定着する定着器とを少なくとも備えている画像形成装置において、
前記トナーは、請求項1または2記載のトナーであり、
前記定着器は、オイルレス2ローラを備えた定着器であることを特徴とする画像形成装置。
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-
2003
- 2003-02-28 JP JP2003053833A patent/JP2004264495A/ja active Pending
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Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
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WO2015034028A1 (en) * | 2013-09-06 | 2015-03-12 | Ricoh Company, Ltd. | Toner, developer, and image forming apparatus |
JP2015052697A (ja) * | 2013-09-06 | 2015-03-19 | 株式会社リコー | トナー、現像剤、及び画像形成装置 |
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