JP2004264147A - 静電気試験装置 - Google Patents
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Abstract
【課題】静電気放電の試験の実施と同時に、静電気放電電流の伝播箇所が特定できるように、放電電流波形を表示する機能を付加した静電気試験装置を提供する。
【解決手段】放電電流波形を観測しフーリエ級数に展開し、その周波数スペクトルを表示する機能を有する静電気放電試験装置。周波数スペクトルを基に、被試験体に流れる電流の通路が概略解析できる。
【選択図】 図1
【解決手段】放電電流波形を観測しフーリエ級数に展開し、その周波数スペクトルを表示する機能を有する静電気放電試験装置。周波数スペクトルを基に、被試験体に流れる電流の通路が概略解析できる。
【選択図】 図1
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、帯電した人体から電子機器への静電気放電を模擬する静電気試験装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
電子機器の品質試験において、人からの静電気放電に対する耐性チェックは、欠かせないものである。従来の静電気試験では、コンデンサと放電抵抗を使用し、人体と大地間に実際に発生する電位差に前記コンデンサを充電し、前記放電抵抗を介して放電させるような電気回路が用いられてきた。つまり、前記コンデンサは擬似的に人体と大地間に生じる静電容量を形成する。
【0003】
静電気放電は、きわめて高速な現象なので、浮遊容量やインダクタンスの影響を受けやすいため、前記コンデンサや放電抵抗をコンパクトにまとめたものが、静電気試験装置として市販されている。
【0004】
このように、これまでに考案されている静電気試験装置は、人体からの静電気放電を模擬して高電圧を発生し、それを被試験物に印加するというものであり、静電気放電試験に提供される基本的な仕様は満たしている。
【0005】
また、特開平8−233887号公報には、静電気を放電したときに流れるインパルス状の電流により発生する磁界の磁界強度変化をストレージオシロスコープ等の測定装置により測定する静電気放電試験装置が開示されている。作業者は、該測定装置に表示された磁界波形を基に、被測定試料の静電気特性を評価するようにしている。
【0006】
【特許文献1】
特開平8−233887号(第3頁、図1)
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
静電気放電試験は一般に被試験装置の電源を投入し、該装置を通常に動作させながら行われ、静電気放電試験の合否は該装置に動作エラーが発生したか否かにより決定する。異常が発生した場合、装置を分解して構造を検討し、静電気放電電流の伝播経路すなわち絶縁不良箇所を推測する。このように、異常が発生した場合、原因の究明は作業者の経験や感に基づいて行われ、長時間を要する作業となっていた。
【0008】
本発明は上記問題点に鑑みなされたもので、その目的とするところは、静電気放電試験の実施と同時に、静電気放電電流の伝播箇所を特定できる表示機能を備え、この伝播個所が電子機器の耐静電気性を損なう経路であるか否かを判別可能にした静電気試験装置を提供することにある。
【0009】
【課題を解決するための手段】
請求項1に記載の本発明は、所定の電圧によって充電されるコンデンサを有し、このコンデンサの電荷をトリガースイッチを介して放電電極に出力する放電ガンと;前記放電電極を被試験装置に接近させて、前記放電電極から被試験装置に対して放電を行ったときの放電電流を測定する放電電流測定器と;前記測定した放電電流波形をフーリエ級数に展開し、その周波数スペクトルを表示する表示部とを具備したことを特徴とする静電気試験装置である。
【0010】
また、請求項5に記載の本発明は、所定の電圧によって充電されるコンデンサを有し、このコンデンサの電荷をトリガースイッチを介して放電電極に出力する放電ガンと;前記放電電極を被試験装置に接近させて、前記放電電極から被試験装置に対して放電を行ったときの放電電流を測定する放電電流測定器と;前記測定した放電電流波形をフーリエ級数に展開する展開手段と;予め基準となる少なくとも1種類の周波数スペクトル波形を記憶する記憶部と;前記展開手段によってフーリエ級数に展開した周波数スペクトルと、前記記憶部に記憶した周波数スペクトル波形を比較し、周波数スペクトルの相違を判定する比較対照手段と;前記比較対照手段による比較結果を表示する表示部とを具備したことを特徴とする静電気試験装置である。
【0011】
上記した本発明の静電気放電試験装置によれば、被試験装置の放電電流を測定し、その放電電流波形をフーリエ級数に展開した周波数スペクトルを利用することで、放電電流の経路を概略判定することができる。
【0012】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の静電気試験装置の実施形態を図面を参照して説明する。
【0013】
図1は本発明の全体構成を概略的に示す図であり、11は静電気試験装置のコントローラで、人体に蓄積される静電気を模擬した所定の電圧(例えば10KV程度)を発生する機能を有する。このコントローラ11からの電圧は放電ガン12に供給され、放電ガン12からの電圧が放電電極13から放電されるようになっている。また、コントローラ11と放電ガン12はケーブル14を介して接続されている。
【0014】
前記放電ガン12には、人体を模擬した蓄積コンデンサ12aと放電抵抗12bが内蔵され、コントローラ11からの電圧によってコンデンサ12aを充電するとともに、トリガースイッチ12cをオンすることにより、コンデンサ12aに蓄積した電圧を放電抵抗12bを介して放電電極13に導くようにしている。
【0015】
静電気試験を実施する際は、放電電極13を被試験装置の電子機器に接触させ、トリガー12dを引くことによりスイッチ12cをオンさせ、コンデンサ12aに蓄積した電荷を放電をさせるか、又はトリガー12dを引きながら、放電電極13を徐々に被検査物に近づけて気中放電させる。そして、被検査物の動作の正常性をチェックする。
【0016】
また、放電ガン12に付帯した放電電極13には、放電電流測定装置15が取り付けられ、放電ガン12から被試験体への放電電流を測定することができる。放電電流測定装置15は、ロゴスキーコイルであり、該コイルに対する放電電流の誘導作用を利用して、放電電流を測定する。
【0017】
放電電流測定装置15で測定された放電電流波形は、モニター装置16に伝送され、電流波形は、フーリエ級数展開装置161によって周波数成分に分解され、記録部162により記録され、表示装置163によって周波数スペクトルが表示される。尚、放電電極13を被試験体の電子機器に接触させて放電して得られる電流波形と、放電電極13を接触させずに近づけて空中放電させて得られる電流波形は、それぞれ個別に(別波形として)分析される。
【0018】
図2は測定した放電電流波形のフーリエ級数展開を説明するための図である。図2(a)は測定した放電電流波形、図2(b)はフーリエ級数展開後の周波数スペクトルを示す。
【0019】
本来放電電流は単独のパルスであるが、単パルスをフーリエ級数展開すると周波数領域を無限に取らないといけないので、電流波形1パルスより長い時間幅で、パルスの1周期を定義し、フーリエ級数展開を行う。その1周期の幅としては、電流の立ち上がりから電流値の絶対値がピーク値の絶対値の1/1000に収束するまでの時間(例えば200nS程度)を採用する。
【0020】
図3は、静電気放電試験において使用される試験テーブルの一例を示すもので、(a)は外観図、(b)は等価回路を示す。
【0021】
この試験テーブルは、フレーム20の上に取り付けられた合板21と、この合板21の上に敷かれた導体板22と、この導体板22の上に置かれた絶縁シート23から成り、この絶縁シート23上にパソコン等の被試験体が置かれ、試験テーブル上の導体板22は抵抗24を介して接地されている。
【0022】
図3(b)は放電ガン12と上記試験テーブルの等価回路であり、放電ガンの内部コンデンサ12aの容量は例えば150pF、放電抵抗12bは例えば330Ωである。従って、放電ガン12からの放電により、PC(personal computer)等の被試験体と試験テーブル上の導体板22で構成されるコンデンサ26を充電することになる。
【0023】
静電気放電試験は、放電電極13を被試験体である電子機器(例えばPC)の表面に露出しているビス等の金属部、あるいはコネクタ表面に対して接近(接触させたり近づけたり)させて行われ、電流波形が記録される。電子機器の構成に異常がなければ、外部からのノイズ信号は電子機器の内部基板を保護する筐体アースに逃げるようになっているので、この放電電流の波形は予め計算することができる。したがって、計算で求めた電流波形と実測した電流波形が似ていれば、機器には異常がないと判別できる。また放電電流の波形を診ることでパルス電流の伝播経路が正常なパスか否かを判断できる。放電は各測定箇所について実施される。
【0024】
一方、電子機器に異常がある場合、放電電流が正規の伝播経路以外にも流れるため、放電電流波形も変わってくる。例えば、コネクタから回路基板を介して筐体に流れる経路等が考えられる。被試験体内の基板を流れる場合は、各種の浮遊静電容量やインダクタンスの影響を受けるので、特徴的な振動が発生すると予想される。図4(a)は電子機器の構成に不具合がある場合の被試験体の放電電流波形を示している。この例では、電流のピーク付近に窪みGを有する波形が得られる。
【0025】
図4(b)は図4(a)の波形をフーリエ級数展開したときの、その周波数スペクトルを示し、このスペクトルでは凸部Lが観測される。このように、時間変化でなく周波数スペクトルで表した方が特徴が明確になる。
【0026】
こうして、本発明では、フーリエ級数展開した放電電流波形を表示することにより、放電経路を推測することができ、従来に比べ短時間で機器の静電気試験を行うことができる。
【0027】
次に、図5は第2の実施形態を示したものである。図5(a)は、放電電流の立ち上がり開始時刻から、放電電流のピーク値の1000分の1の大きさに電流値が収束するまでの時刻を前半周期(図2(a)の1周期と同一)とし、残りの後半周期では、前半の波形をプラス・マイナス反転させた電流波形を生成するようにしたものである。このように対称性を持たせることにより、フーリエ係数の一方がゼロになり、扱いが簡単になる。図5(b)は図5(a)の電流波形をフーリエ級数に展開した結果である。
【0028】
図6は本発明の第3の実施形態を表す静電気試験装置である。この実施形態では、静電気試験装置内にあらかじめ記憶させた周波数スペクトルのリファレンス波形を記憶する記憶部165と、被試験体の測定波形をフーリエ級数展開装置161にて周波数展開したスペクトルと前記リファレンス波形を比較する比較対照装置164とを有し、その比較による相違を表示部163に表示し、記録部162に記録するようにしている。
【0029】
測定値と比較対照するリファレンス波形は、例えば図3(b)のコンデンサ26を充電する電流のシミュレーション波形を用いる。放電は被試験体の筐体アースに対して行われる。電子機器の構成に異常がなければ、外部からのノイズ信号は電子機器の内部基板を保護する筐体アースに逃げるようになっており、放電電流の波形も解析的に計算でき、このリファレンスは比較の対象として最適である。
【0030】
被試験体の内部回路の回路定数が数値的にシミュレート可能な場合は、該回路定数を用いてシミュレートした放電波形を、リファレンス波形として複数個記憶部165に記憶しておく。又リファレンス波形は、正常に動作する良品の実測データでも良いし、動作エラーを発生した被試験体の実測データでも良い。更に、絶縁不良等の不具合箇所がある場合の放電電流スペクトル波形をリファレンス波形として記憶部165に複数種記憶してもよい。実測値のスペクトルとリファレンス波形を比較することにより、被試験体の不具合箇所あるいは異常放電電流経路を推定したり、設計外の経路を流れる異常放電であることを突き止めることができる。従って本発明では、被試験体に電源を投入せずに静電放電試験を行い、被試験体の不具合を放電電流のスペクトルから予測できる。
【0031】
図7は本発明の第4の実施例において使われる周波数スペクトルを説明するための図である。図7(a)は実測した放電電流波形から求めた周波数スペクトルを示す。測定される電流値は、印加電圧や負荷インピーダンスに依存して、その大きさは測定毎に異なる。これをレファレンスの周波数スペクトルとの比較を容易にするために、基本周波数のスペクトルで規格化する。図7(b)は図7(a)の基本周波数ωにおけるスペクトル値で、各周波数におけるスペクトル値を割ることにより得られる規格化されたスペクトルを示す。図7(c)はリファレンススペクトルである。スペクトルの特徴を示すには、スペクトルのピーク値で規格化してもよい。
【0032】
図8は本発明の第5の実施形態である。放電電流測定装置15で測定された放電電流波形は、モニター装置16に伝送されるが、伝送線の途中に高域周波数をカットするフィルタ(LPF)17が挿入されている。静電気放電は、高周波のノイズ成分を持つので、モニタ装置に入力される前にノイズ除去を行うのが良い。
【0033】
【発明の効果】
以上の説明から明らかなように、本発明は、測定した放電電流波形をフーリエ級数展開し、周波数スペクトルを表示する機能を付加したことを特徴とするものであり、その周波数スペクトルを基に、被試験体に流れる電流の通路を概略解析でき、絶縁破壊等のトラブルが発生した場合に、スムーズな対応が可能な静電気試験装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の静電気試験装置の全体概略構成図である。
【図2】測定した放電電流波形のフーリエ級数展開を示す図。
【図3】静電気放電試験において使用される試験テーブルの外観図、及びその等価回路である。
【図4】放電電流波形、及びその周波数スペクトルの他の例を示す図。
【図5】本発明の第2の実施形態に係る放電電流波形及びそのスペクトルを示す図。
【図6】本発明の第3の実施形態に係る静電気試験装置の構成を示す図。
【図7】本発明の第4の実施形態を説明するためのスペクトル図。
【図8】本発明の第4の実施形態に係る静電気試験装置の構成を示す図。
【符号の説明】
11…コントローラ、12…放電ガン、13…放電電極、14…接続ケーブル、15…放電電流測定装置、16…モニター装置、161… フーリエ級数展開装置、163… 表示装置、165… 記憶部、164… 比較対照装置、17…フィルタ
【発明の属する技術分野】
本発明は、帯電した人体から電子機器への静電気放電を模擬する静電気試験装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
電子機器の品質試験において、人からの静電気放電に対する耐性チェックは、欠かせないものである。従来の静電気試験では、コンデンサと放電抵抗を使用し、人体と大地間に実際に発生する電位差に前記コンデンサを充電し、前記放電抵抗を介して放電させるような電気回路が用いられてきた。つまり、前記コンデンサは擬似的に人体と大地間に生じる静電容量を形成する。
【0003】
静電気放電は、きわめて高速な現象なので、浮遊容量やインダクタンスの影響を受けやすいため、前記コンデンサや放電抵抗をコンパクトにまとめたものが、静電気試験装置として市販されている。
【0004】
このように、これまでに考案されている静電気試験装置は、人体からの静電気放電を模擬して高電圧を発生し、それを被試験物に印加するというものであり、静電気放電試験に提供される基本的な仕様は満たしている。
【0005】
また、特開平8−233887号公報には、静電気を放電したときに流れるインパルス状の電流により発生する磁界の磁界強度変化をストレージオシロスコープ等の測定装置により測定する静電気放電試験装置が開示されている。作業者は、該測定装置に表示された磁界波形を基に、被測定試料の静電気特性を評価するようにしている。
【0006】
【特許文献1】
特開平8−233887号(第3頁、図1)
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
静電気放電試験は一般に被試験装置の電源を投入し、該装置を通常に動作させながら行われ、静電気放電試験の合否は該装置に動作エラーが発生したか否かにより決定する。異常が発生した場合、装置を分解して構造を検討し、静電気放電電流の伝播経路すなわち絶縁不良箇所を推測する。このように、異常が発生した場合、原因の究明は作業者の経験や感に基づいて行われ、長時間を要する作業となっていた。
【0008】
本発明は上記問題点に鑑みなされたもので、その目的とするところは、静電気放電試験の実施と同時に、静電気放電電流の伝播箇所を特定できる表示機能を備え、この伝播個所が電子機器の耐静電気性を損なう経路であるか否かを判別可能にした静電気試験装置を提供することにある。
【0009】
【課題を解決するための手段】
請求項1に記載の本発明は、所定の電圧によって充電されるコンデンサを有し、このコンデンサの電荷をトリガースイッチを介して放電電極に出力する放電ガンと;前記放電電極を被試験装置に接近させて、前記放電電極から被試験装置に対して放電を行ったときの放電電流を測定する放電電流測定器と;前記測定した放電電流波形をフーリエ級数に展開し、その周波数スペクトルを表示する表示部とを具備したことを特徴とする静電気試験装置である。
【0010】
また、請求項5に記載の本発明は、所定の電圧によって充電されるコンデンサを有し、このコンデンサの電荷をトリガースイッチを介して放電電極に出力する放電ガンと;前記放電電極を被試験装置に接近させて、前記放電電極から被試験装置に対して放電を行ったときの放電電流を測定する放電電流測定器と;前記測定した放電電流波形をフーリエ級数に展開する展開手段と;予め基準となる少なくとも1種類の周波数スペクトル波形を記憶する記憶部と;前記展開手段によってフーリエ級数に展開した周波数スペクトルと、前記記憶部に記憶した周波数スペクトル波形を比較し、周波数スペクトルの相違を判定する比較対照手段と;前記比較対照手段による比較結果を表示する表示部とを具備したことを特徴とする静電気試験装置である。
【0011】
上記した本発明の静電気放電試験装置によれば、被試験装置の放電電流を測定し、その放電電流波形をフーリエ級数に展開した周波数スペクトルを利用することで、放電電流の経路を概略判定することができる。
【0012】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の静電気試験装置の実施形態を図面を参照して説明する。
【0013】
図1は本発明の全体構成を概略的に示す図であり、11は静電気試験装置のコントローラで、人体に蓄積される静電気を模擬した所定の電圧(例えば10KV程度)を発生する機能を有する。このコントローラ11からの電圧は放電ガン12に供給され、放電ガン12からの電圧が放電電極13から放電されるようになっている。また、コントローラ11と放電ガン12はケーブル14を介して接続されている。
【0014】
前記放電ガン12には、人体を模擬した蓄積コンデンサ12aと放電抵抗12bが内蔵され、コントローラ11からの電圧によってコンデンサ12aを充電するとともに、トリガースイッチ12cをオンすることにより、コンデンサ12aに蓄積した電圧を放電抵抗12bを介して放電電極13に導くようにしている。
【0015】
静電気試験を実施する際は、放電電極13を被試験装置の電子機器に接触させ、トリガー12dを引くことによりスイッチ12cをオンさせ、コンデンサ12aに蓄積した電荷を放電をさせるか、又はトリガー12dを引きながら、放電電極13を徐々に被検査物に近づけて気中放電させる。そして、被検査物の動作の正常性をチェックする。
【0016】
また、放電ガン12に付帯した放電電極13には、放電電流測定装置15が取り付けられ、放電ガン12から被試験体への放電電流を測定することができる。放電電流測定装置15は、ロゴスキーコイルであり、該コイルに対する放電電流の誘導作用を利用して、放電電流を測定する。
【0017】
放電電流測定装置15で測定された放電電流波形は、モニター装置16に伝送され、電流波形は、フーリエ級数展開装置161によって周波数成分に分解され、記録部162により記録され、表示装置163によって周波数スペクトルが表示される。尚、放電電極13を被試験体の電子機器に接触させて放電して得られる電流波形と、放電電極13を接触させずに近づけて空中放電させて得られる電流波形は、それぞれ個別に(別波形として)分析される。
【0018】
図2は測定した放電電流波形のフーリエ級数展開を説明するための図である。図2(a)は測定した放電電流波形、図2(b)はフーリエ級数展開後の周波数スペクトルを示す。
【0019】
本来放電電流は単独のパルスであるが、単パルスをフーリエ級数展開すると周波数領域を無限に取らないといけないので、電流波形1パルスより長い時間幅で、パルスの1周期を定義し、フーリエ級数展開を行う。その1周期の幅としては、電流の立ち上がりから電流値の絶対値がピーク値の絶対値の1/1000に収束するまでの時間(例えば200nS程度)を採用する。
【0020】
図3は、静電気放電試験において使用される試験テーブルの一例を示すもので、(a)は外観図、(b)は等価回路を示す。
【0021】
この試験テーブルは、フレーム20の上に取り付けられた合板21と、この合板21の上に敷かれた導体板22と、この導体板22の上に置かれた絶縁シート23から成り、この絶縁シート23上にパソコン等の被試験体が置かれ、試験テーブル上の導体板22は抵抗24を介して接地されている。
【0022】
図3(b)は放電ガン12と上記試験テーブルの等価回路であり、放電ガンの内部コンデンサ12aの容量は例えば150pF、放電抵抗12bは例えば330Ωである。従って、放電ガン12からの放電により、PC(personal computer)等の被試験体と試験テーブル上の導体板22で構成されるコンデンサ26を充電することになる。
【0023】
静電気放電試験は、放電電極13を被試験体である電子機器(例えばPC)の表面に露出しているビス等の金属部、あるいはコネクタ表面に対して接近(接触させたり近づけたり)させて行われ、電流波形が記録される。電子機器の構成に異常がなければ、外部からのノイズ信号は電子機器の内部基板を保護する筐体アースに逃げるようになっているので、この放電電流の波形は予め計算することができる。したがって、計算で求めた電流波形と実測した電流波形が似ていれば、機器には異常がないと判別できる。また放電電流の波形を診ることでパルス電流の伝播経路が正常なパスか否かを判断できる。放電は各測定箇所について実施される。
【0024】
一方、電子機器に異常がある場合、放電電流が正規の伝播経路以外にも流れるため、放電電流波形も変わってくる。例えば、コネクタから回路基板を介して筐体に流れる経路等が考えられる。被試験体内の基板を流れる場合は、各種の浮遊静電容量やインダクタンスの影響を受けるので、特徴的な振動が発生すると予想される。図4(a)は電子機器の構成に不具合がある場合の被試験体の放電電流波形を示している。この例では、電流のピーク付近に窪みGを有する波形が得られる。
【0025】
図4(b)は図4(a)の波形をフーリエ級数展開したときの、その周波数スペクトルを示し、このスペクトルでは凸部Lが観測される。このように、時間変化でなく周波数スペクトルで表した方が特徴が明確になる。
【0026】
こうして、本発明では、フーリエ級数展開した放電電流波形を表示することにより、放電経路を推測することができ、従来に比べ短時間で機器の静電気試験を行うことができる。
【0027】
次に、図5は第2の実施形態を示したものである。図5(a)は、放電電流の立ち上がり開始時刻から、放電電流のピーク値の1000分の1の大きさに電流値が収束するまでの時刻を前半周期(図2(a)の1周期と同一)とし、残りの後半周期では、前半の波形をプラス・マイナス反転させた電流波形を生成するようにしたものである。このように対称性を持たせることにより、フーリエ係数の一方がゼロになり、扱いが簡単になる。図5(b)は図5(a)の電流波形をフーリエ級数に展開した結果である。
【0028】
図6は本発明の第3の実施形態を表す静電気試験装置である。この実施形態では、静電気試験装置内にあらかじめ記憶させた周波数スペクトルのリファレンス波形を記憶する記憶部165と、被試験体の測定波形をフーリエ級数展開装置161にて周波数展開したスペクトルと前記リファレンス波形を比較する比較対照装置164とを有し、その比較による相違を表示部163に表示し、記録部162に記録するようにしている。
【0029】
測定値と比較対照するリファレンス波形は、例えば図3(b)のコンデンサ26を充電する電流のシミュレーション波形を用いる。放電は被試験体の筐体アースに対して行われる。電子機器の構成に異常がなければ、外部からのノイズ信号は電子機器の内部基板を保護する筐体アースに逃げるようになっており、放電電流の波形も解析的に計算でき、このリファレンスは比較の対象として最適である。
【0030】
被試験体の内部回路の回路定数が数値的にシミュレート可能な場合は、該回路定数を用いてシミュレートした放電波形を、リファレンス波形として複数個記憶部165に記憶しておく。又リファレンス波形は、正常に動作する良品の実測データでも良いし、動作エラーを発生した被試験体の実測データでも良い。更に、絶縁不良等の不具合箇所がある場合の放電電流スペクトル波形をリファレンス波形として記憶部165に複数種記憶してもよい。実測値のスペクトルとリファレンス波形を比較することにより、被試験体の不具合箇所あるいは異常放電電流経路を推定したり、設計外の経路を流れる異常放電であることを突き止めることができる。従って本発明では、被試験体に電源を投入せずに静電放電試験を行い、被試験体の不具合を放電電流のスペクトルから予測できる。
【0031】
図7は本発明の第4の実施例において使われる周波数スペクトルを説明するための図である。図7(a)は実測した放電電流波形から求めた周波数スペクトルを示す。測定される電流値は、印加電圧や負荷インピーダンスに依存して、その大きさは測定毎に異なる。これをレファレンスの周波数スペクトルとの比較を容易にするために、基本周波数のスペクトルで規格化する。図7(b)は図7(a)の基本周波数ωにおけるスペクトル値で、各周波数におけるスペクトル値を割ることにより得られる規格化されたスペクトルを示す。図7(c)はリファレンススペクトルである。スペクトルの特徴を示すには、スペクトルのピーク値で規格化してもよい。
【0032】
図8は本発明の第5の実施形態である。放電電流測定装置15で測定された放電電流波形は、モニター装置16に伝送されるが、伝送線の途中に高域周波数をカットするフィルタ(LPF)17が挿入されている。静電気放電は、高周波のノイズ成分を持つので、モニタ装置に入力される前にノイズ除去を行うのが良い。
【0033】
【発明の効果】
以上の説明から明らかなように、本発明は、測定した放電電流波形をフーリエ級数展開し、周波数スペクトルを表示する機能を付加したことを特徴とするものであり、その周波数スペクトルを基に、被試験体に流れる電流の通路を概略解析でき、絶縁破壊等のトラブルが発生した場合に、スムーズな対応が可能な静電気試験装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の静電気試験装置の全体概略構成図である。
【図2】測定した放電電流波形のフーリエ級数展開を示す図。
【図3】静電気放電試験において使用される試験テーブルの外観図、及びその等価回路である。
【図4】放電電流波形、及びその周波数スペクトルの他の例を示す図。
【図5】本発明の第2の実施形態に係る放電電流波形及びそのスペクトルを示す図。
【図6】本発明の第3の実施形態に係る静電気試験装置の構成を示す図。
【図7】本発明の第4の実施形態を説明するためのスペクトル図。
【図8】本発明の第4の実施形態に係る静電気試験装置の構成を示す図。
【符号の説明】
11…コントローラ、12…放電ガン、13…放電電極、14…接続ケーブル、15…放電電流測定装置、16…モニター装置、161… フーリエ級数展開装置、163… 表示装置、165… 記憶部、164… 比較対照装置、17…フィルタ
Claims (10)
- 所定の電圧によって充電されるコンデンサを有し、このコンデンサの電荷をトリガースイッチを介して放電電極に出力する放電ガンと、
前記放電電極を被試験装置に接近させて、前記放電電極から被試験装置に対して放電を行ったときの放電電流を測定する放電電流測定器と、
前記測定した放電電流波形をフーリエ級数に展開し、その周波数スペクトルを表示する表示部とを具備したことを特徴とする静電気試験装置。 - 前記コンデンサに充電される電圧は、自然界で通常起こる人体からの静電気放電を模擬した電位に設定されたことを特徴とする静電試験装置。
- 前記表示部は、前記放電電流の立ち上がり開始時刻から、放電電流のピーク値の約1000分の1の大きさに電流値が収束するまでの時刻を1周期として、フーリエ級数展開した周波数スペクトル波形を表示することを特徴とする請求項1記載の静電試験装置。
- 前記表示部は、前記放電電流の立ち上がり開始時刻から、放電電流のピーク値の約1000分の1の大きさに電流値が収束するまでの時刻を前半周期とし、後半周期では前半周期の波形を反転させた波形をフーリエ級数展開した周波数スペクトル波形を表示することを特徴とする請求項1記載の静電試験装置。
- 所定の電圧によって充電されるコンデンサを有し、このコンデンサの電荷をトリガースイッチを介して放電電極に出力する放電ガンと、
前記放電電極を被試験装置に接近させて、前記放電電極から被試験装置に対して放電を行ったときの放電電流を測定する放電電流測定器と、
前記測定した放電電流波形をフーリエ級数に展開する展開手段と、
予め基準となる少なくとも1種類の周波数スペクトル波形を記憶する記憶部と、前記展開手段によってフーリエ級数に展開した周波数スペクトルと、前記記憶部に記憶した周波数スペクトル波形を比較し、周波数スペクトルの相違を判定する比較対照手段と、
前記比較対照手段による比較結果を表示する表示部とを具備したことを特徴とする静電気試験装置。 - 前記記憶部は、前記被試験装置の筐体アースに放電したときの放電電流に基く周波数スペクトル波形を記憶したことを特徴とする請求項5に記載の静電試験装置。
- 前記記憶部は、前記被試験装置の予め予想される複数個の放電経路を通る電流波形に基く周波数スペクトル波形を記憶したことを特徴とする請求項5に記載の静電試験装置。
- 前記記憶部に記憶した周波数スペクトル波形と、測定した放電電流の周波数スペクトル波形が、スペクトルの最大値で規格化されていることを特徴とする請求項5に記載の静電試験装置。
- 前記記憶部に記憶した周波数スペクトル波形と、測定した放電電流の周波数スペクトル波形が、基本周波数のスペクトルの値で規格化されていることを特徴とする請求項5に記載の静電試験装置。
- 前記放電ガンからの放電電流を前記放電電流測定器に入力する経路に高周波カットフィルタを設けた具備したことを特徴とする請求項1又は5に記載の静電試験装置。
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