JP2004263008A - 防曇剤組成物およびそれを用いた浴室用防曇剤 - Google Patents

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Abstract

【課題】基材表面への即効性、親水性、耐久性、耐水性、耐汚れ性、乾燥後外観に優れる防曇剤組成物およびそれを用いた浴室用防曇剤を提供する。
【解決手段】下記の(A)、(B)、(C)、(D)を必須成分として含むことを特徴とする防曇剤組成物およびそれを用いた浴室用防曇剤。
(A)カチオン性の(メタ)アクリル酸エステル系モノマーのみを重合して得られたカチオン化水溶性高分子
(B)ノニオン性の(メタ)アクリルアミド系モノマーとカチオン性の(メタ)アクリル酸エステル系モノマーを含む群から選ばれる二種以上のモノマーを共重合して得られた(メタ)アクリルアミド系カチオン化水溶性高分子
(C)界面活性剤
(D)溶剤

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、防曇剤組成物に関するものである。詳しくは施工者が既設の基材表面に簡単にかつ手軽に施工でき、特に施工後の塗膜の透明性、塗布基材の外観が格段に優れ、効果発現後の視界確保性、防曇性、耐久性、耐汚れ性、乾燥後外観も優れている防曇剤組成物およびそれを用いた浴室用防曇剤に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
基材表面、特にガラス・鏡表面の曇り現象は、その表面に微小な水滴が付着し、その水滴が光を乱反射するためにガラス、鏡表面の透明性が失われる現象である。これは水の表面張力のためにガラス・鏡の表面になじまずに、弾かれて水滴になってしまうことが原因である。
【0003】
従来から、ガラス、鏡等の表面に発生する水分による曇りを防止する方策として、セッケンやシャンプー或いは台所用洗剤等の界面活性剤を塗布する方法(例えば、特許文献1参照)や熱若しくは熱風によって表面に凝集水分の発生を防ぐ方法、更には表面に防曇性フィルムを張り付けたり、防曇性物質を表面で重合(架橋)させ耐久性を有する防曇層を形成させる方法などが採られてきた。しかしながら、セッケンやシャンプー或いは台所用洗剤等の界面活性剤を使用する方法では塗布面に濁り、泡残りが生じることがある上に、効果が数分〜数十分程度しか持たない。また熱を利用する方法では大がかりな装置が必要となり限られた用途しか使えなかった。
【0004】
親水性の硬化性樹脂を透明基材に塗布して硬化させる方法(例えば、特許文献2参照)は、吸湿により塗膜の硬度が低下して傷が付いたり、塗膜が剥離したりして耐久性に劣るという問題があった。しかも、防曇膜が吸湿により白化するという問題があった。また耐用年数が過ぎるとはがす必要が生じた。
【0005】
さらに、ポリオキシアルキレン変性オルガノポリシロキサン系化合物等を、架橋剤を用いて表面で重合を行い、耐久性を有する防曇層を形成させる方法(例えば、特許文献3参照)等は確かにガラス等の製品に付加価値を与え、且つ長期間に渡って防曇性を付与しうるものではあるが、一般家庭などの消費者が気軽に加工できるものではない。
【0006】
また、皮膜形成能を有する親水性ポリマー(例えばポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール等)を含有する組成物を塗布する方法(例えば、特許文献4参照)は、被膜がガラス面等に強固に付着して良好な曇止め効果が長時間維持されるという耐久性を有していること、及び曇止め効果を与える被膜自身が結晶化せず常に透明性を有していることの両性質を同時に満足させることは困難であり、未だ十分なる効果の期待出来るものは得られていない。従って、優れた曇止め効果を有し、しかもその効果が長時間にわたり持続する曇止め剤の開発が望まれていた。
【0007】
親油性ポリマーと親水性ポリマーの共重合体および無機粒子を含有する組成物を塗布後乾燥して成膜する方法(例えば、特許文献5参照)は、基材表面に均一に塗布するためにスプレーガンを用いる必要があり、更に成膜するために熱風乾燥機中で基材を乾燥する必要があった。これは一般家庭などの消費者が気軽に施工できるものではない。また無機粒子を含有するため、乾燥後白い筋や粒子跡が残り、塗布後の表面の外観および乾燥した後の外観が悪いという課題があった。
【0008】
【参考文献1】
特開昭62−4773
【参考文献2】
特開昭63−251401号公報
【参考文献3】
特開平4−180916号公報
【参考文献4】
特開2002−88298号公報
【参考文献5】
特開2002−173633号公報
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、一般家庭用ならびに業務用等においての使用が極めて容易であるだけでなく、ガラスや鏡表面に対して施工後の塗膜の透明性、効果発現後の視界確保性、防曇性、耐久性、耐汚れ性、乾燥後外観に優れている防曇剤組成物の提供を目的とする。
【0010】
【課題を解決するための手段】
本発明は、上記課題を解決するために、異なった2種以上のカチオン化水溶性高分子と界面活性剤と溶剤を含有してなる防曇剤組成物を提供する。
【0011】
異なった2種以上のカチオン化水溶性高分子を含有する防曇剤組成物は、極めて優れた親水性効果発現性と長期耐久性、耐水性を有している。また界面活性剤、溶剤を含有すると、外観が格段に優れ、レベリング、耐汚れ性にも効果を発揮することができる。本発明はこの知見に基づき完成されるに至ったものである。
【0012】
以下、本発明の防曇剤組成物について詳細に説明する。すなわち本発明の防曇剤組成物の好ましい態様においては、
下記の(A)、(B)、(C)、(D)
(A)カチオン性の(メタ)アクリル酸エステル系モノマーのみを重合して得られたカチオン化水溶性高分子
(B)ノニオン性の(メタ)アクリルアミド系モノマーとカチオン性の(メタ)アクリル酸エステル系モノマーを含む群から選ばれる二種以上のモノマーを共重合して得られた(メタ)アクリルアミド系カチオン化水溶性高分子
(C)界面活性剤
(D)溶剤
を必須成分として含むことを特徴とする。
【0013】
本発明に用いられる(A)カチオン性の(メタ)アクリル酸エステル系モノマーのみを重合して得られたカチオン化水溶性高分子は、透明性が高く、基材表面を被覆し、皮膜を形成し、高い親水効果を付与することを目的に使用される。また官能基がすべてカチオン性であるために周囲の水分を取り込んで容易にかつ早急に水膜を形成・保持し、親水性を発現させることができる。基材の表面はヒドロキシル基などの極性基が偏在化していることが知られており、これらの表面への吸着は極性、特にカチオン性を持つ水溶性高分子が好適であると考えられる。なお、本明細書では、アクリルとメタクリルを(メタ)アクリルと総称する。
【0014】
本発明に用いられる(B)ノニオン性の(メタ)アクリルアミド系モノマーとカチオン性の(メタ)アクリル酸エステル系モノマーを含む群から選ばれる二種以上のモノマーを共重合して得られた(メタ)アクリルアミド系カチオン化水溶性高分子は、透明性が高く、基材表面を被覆し、皮膜を形成し、高い親水効果を付与することを目的に使用される。またノニオン性、カチオン性両方のモノマーを含むため、水溶性高分子でありながら長期間耐水性を維持し、親水性も容易に発現する。また、アミド結合を含有することから、高分子がより結晶化しにくくなり、周囲の水分を取り込みやすく、親水性がより向上される
【0015】
本発明に用いられる(C)界面活性剤は基材表面を被覆し、塗膜形成を補助する目的で使用される。また、初期親水性に効果およびレベリングを向上させたり、撥水成分、油脂成分などが付着した基材表面にも塗膜形成させることができる。(C)界面活性剤としてはアニオン系界面活性剤、カチオン系界面活性剤、ノニオン系界面活性剤、両性界面活性剤のいずれを用いても良いが、好ましくはノニオン系界面活性剤が好ましい。ノニオン系界面活性剤は、その他の界面活性剤に比べ消泡性がよく、レベリング性に優れており、中でも特にポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテルであり、その1種もしくは2種以上を混合して用いることによって初期親水性に効果を発現し、塗膜の水に対する接触角を5°以下に保つことができる。
【0016】
本発明で利用できる(C)界面活性剤としては、上記のもののほかに、多価アルコール型非イオン界面活性剤(グリセロールの脂肪酸モノエステル、ソルビタンエステル、砂糖の脂肪酸エステルなど)、ポリエチレングリコール型非イオン界面活性剤(高級アルコールのポリオキシアルキレンオキサイド付加物、アルキルフェノールのポリオキシアルキレンオキサイド付加物、脂肪酸のポリオキシアルキレンオキサイド付加物、高級脂肪族アミンのポリオキシアルキレンオキサイド付加物、プルロニック型非イオン界面活性剤、多価アルコール型非イオン界面活性剤のポリオキシアルキレンオキサイド付加物、ポリエーテル変性オルガノシロキサンなど)、脂肪酸アルカノールアミドなどの非イオン性界面活性剤、脂肪酸塩(脂肪酸石けんなど)、硫酸エステル塩(α−オレフィン硫酸エステル塩、高級アルコール硫酸エステル塩、脂肪酸エステルの硫酸エステル塩、硫酸化油、高級アルコールAOAの硫酸エステル塩、アルキルフェノールAOAの硫酸エステル塩など)、スルホン酸塩(α−オレフィンスルホン酸塩、α−スルホン化脂肪酸塩、α−スルホン化脂肪酸エステル塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩、イゲポンA型、エアロゾルOT型、ポリスチレンスルホン酸塩など)、リン酸エステル塩(高級アルコールのリン酸エステル塩、高級アルコールAOAのリン酸エステル塩など)などのアニオン性界面活性剤、アミン塩型カチオン界面活性剤(高級脂肪族アミンの塩酸塩など)、第4級アンモニウム塩型界面活性剤(アルキルジメチルベンジルアンモニウム塩など)などのカチオン性界面活性剤、アミノ酸型両性界面活性剤(ラウリルアミノプロピオン酸ナトリウムなど)、ベタイン型両性界面活性剤(ラウリルジメチルベタインなど)、硫酸エステル塩型両性界面活性剤、スルホン酸塩型両性界面活性剤、リン酸エステル塩型両性界面活性剤などの両性界面活性剤、が挙げられる。
【0017】
本発明に用いられる(D)溶剤は、蒸発速度が高い親水性溶剤が好ましく、例えば水溶性アルコールと、水との混合溶媒を用いることが出来る。水溶性アルコールとしては、炭素数1〜3のアルコール、すなわち、メタノール、エタノール、変性アルコール、1−プロパノール、2−プロパノールが挙げられる。該アルコールは、単独か、あるいは2種類以上を混合して使用することができる。
【0018】
本発明の好ましい態様においては、カチオン性の(メタ)アクリル酸エステル系モノマーが、ジアルキルアミノアルキルアルコールと(メタ)アクリル酸とのエステルであるジアルキルアミノアルキル(メタ)アクリレート類であることを特徴とする。これらは透明性が高く、基材表面を被覆し、皮膜を形成し、高い親水効果を付与することを目的に使用される。また官能基がすべてカチオン性であるために周囲の水分を取り込んで容易にかつ早急に水膜を形成・保持し、親水性を発現させることができる。
【0019】
ジアルキルアミノアルキル(メタ)アクリレート類の中でも好ましくは、メチル(メタ)アクリレート、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノプロピル(メタ)アクリレートが挙げられる。
【0020】
本発明の好ましい態様においては、
(B)成分が、ノニオン性の(メタ)アクリルアミド系モノマー(b1)、カチオン性の(メタ)アクリル酸エステル系モノマー、ノニオン性またはカチオン性の多官能性ビニルモノマー(b2)を含有する群から選ばれる三種以上モノマーを共重合して得られるカチオン化水溶性高分子であることを特徴とする。
【0021】
本発明に用いられるノニオン性の(メタ)アクリルアミド系モノマー(b1)としては、例えば(メタ)アクリルアミドの他に、N−メチル(メタ)アクリルアミド、N−エチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジエチル(メタ)アクリルアミド、N−イソプロピル(メタ)アクリルアミド、N−t−オクチル(メタ)アクリルアミド等のN置換(メタ)アクリルアミドなどを挙げることができ、これらは1種単独で用いても良いし、2種以上を併用しても良い。これらの中で特に好ましいのは(メタ)アクリルアミドである。
【0022】
本発明に用いられる多官能性ビニルモノマー(b2)としては、例えばジ(メタ)アクリレート類、ビス(メタ)アクリルアミド類、ジビニルエステル類等の2官能性ビニルモノマー、エポキシアクリレート類、ウレタンアクリレート類、3官能性ビニルモノマー、4官能性ビニルモノマー、水溶性アジリジニル化合物等を挙げることができ、これらは1種単独で用いても良いし、2種以上を併用しても良い。多官能性ビニルモノマーとしては、前記の他に、水溶性多官能エポキシ化合物や、シリコン系化合物等も挙げることができ、これらは、1種単独で用いても良いし、2種以上を併用してもよい。前記ジ(メタ)アクリレート類としては、例えば、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、及びグリセリンジ(メタ)アクリレート等を挙げることができ、これらは1種単独で用いても良いし、2種以上を併用しても良い。前記ビス(メタ)アクリルアミド類としては、例えばメチレンビス(メタ)アクリルアミド、エチレンビス(メタ)アクリルアミド、ヘキサメチレンビス(メタ)アクリルアミド、N,N’−ビスアクリルアミド酢酸、N,N’−ビスアクリルアミド酢酸メチル、N,N−ベンジリデンビスアクリルアミド等を挙げることができ、これらは1種単独で用いても良いし、2種以上を併用しても良い。前記ジビニルエステル類としては、例えば、アジピン酸ジビニル、セバシン酸ジビニル等を挙げることができ、これらは1種単独で用いても良いし、2種以上を併用しても良い。前記以外の多官能性ビニルモノマーとしては、例えば、アリル(メタ)アクリレート、ジアリルフタレート、ジアリルマレート、ジアリルサクシネート、ジアリルアクリルアミド、ジビニルベンゼン、ジイソプロペニルベンゼン、N,N−ジアリルメタクリルアミド、N−メチロールアクリルアミド、ジアリルジメチルアンモニウム、ジアリルクロレンデート、グリシジル(メタ)アクリレート等を挙げることができ、これらは1種単独で用いても良いし、2種以上を併用しても良い。
【0023】
前記3官能性ビニルモノマーとしては、例えば、1,3,5−トリアクリロイルヘキサヒドロ−S−トリアジン、トリアリルイソシアヌレート、N,N−ジアリルアクリルアミド、トリアリルアミン、トリアリルトリメリテート等を挙げることができ、これらは1種単独で用いても良いし、2種以上を併用しても良い。前記4官能性ビニルモノマーとしては、例えば、テトラメチロールメタンテトラアクリレート、テトラアリルピロメリテート、N,N,N’,N’−テトラアリル−1,4−ジアミノブタン、テトラアリルアミン塩、テトラアリルオキシエタン等を挙げることができ、これらは1種単独で用いても良いし、2種以上を併用しても良い。前記水溶性アジリジニル化合物としては、例えば、テトラメチロールメタン−トリ−β−アジリジニルプロピオネート、トリメチロールプロパン−トリ−β−アジリジニルプロピオネート、4,4’−ビス(エチレンイミンカルボニルアミノ)ジフェニルメタン等を挙げることができ、これらは1種単独で用いても良いし、2種以上を併用しても良い。前記水溶性多官能エポキシ化合物としては、例えば、(ポリ)エチレングリコールジグリシジルエーテル、(ポリ)プロピレングリコールジグリシジルエーテル、(ポリ)グリセリンジグリシジルエーテル、(ポリ)グリセリントリグリシジルエーテル等を挙げることができ、これらは1種単独で用いても良いし、2種以上を併用しても良い。前記シリコン系化合物としては、例えば、3−(メタ)アクリロキシメチルトリメトキシシラン、3−(メタ)アクリロキシプロピルジメトキシメチルシラン、3−(メタ)アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−(メタ)アクリロキシプロピルメチルジクロロシラン、3−(メタ)アクリロキシオクタデシルトリアセトキシシラン、3−(メタ)アクリロキシ−2,5−ジメチルヘキシルジアセトキシメチルシラン、ビニルジメチルアセトキシシラン等を挙げることができ、これらは1種単独で用いても良いし、2種以上を併用しても良い。
【0024】
本発明の好ましい態様においては、(A)成分、(B)成分の合計濃度が0.01〜1重量%であることを特徴とする。
【0025】
(A)、(B)の水溶性高分子合計濃度は本発明の防曇剤組成物中に0.01〜1重量%、特に0.02〜0.5重量%で含有することが望ましい。0.01重量%より少ない場合は塗膜が薄くなりすぎて防曇効果が低下する。
また、1重量%より多い場合は塗膜が厚くなってムラになりやすく、塗布後外観が悪くなる。上記範囲とすることで、ムラのない均一な塗膜が得られる。
【0026】
本発明の好ましい態様においては、(B)成分のノニオン性モノマー:カチオン性モノマーのモル比が55:45〜99:1であることを特徴とする。
【0027】
(B)成分のノニオン性モノマー:カチオン性モノマーのモル比は本発明の防曇剤組成物中に55:45〜99:1、特に70:30〜95:5であることが好ましい。ノニオン性モノマー比率が55%より少なく、カチオン性モノマー比率が45%より多い場合は、高分子中のカチオン比率が高くなり、初期の親水性は向上するものの、水に溶けやすくなってしまい、耐水性、耐久性が低下する。
【0028】
本発明の好ましい態様においては、(C)界面活性剤の濃度が0.005〜0.5重量%であることを特徴とする。
【0029】
(C)界面活性剤は本発明の防曇剤組成物中に0.005〜0.5重量%含有されることが好ましく、より好ましくは0.007〜0.3重量%である。0.005重量%より少ない場合は、均一な塗膜形成が難しく、外観も筋が発生して悪くなる。特に、本発明の防曇剤組成物がアルコールを含有する場合は、レベリング性の低下が顕著に現れる。0.5重量%より多い場合は塗膜強度が低下し、防曇効果の持続性が短くなり、また泡立ちが激しく外観が悪化する。
【0030】
本発明の好ましい態様においては、界面活性剤がフッ素系界面活性剤であることを特徴とする。
【0031】
本発明の防曇剤組成物に用いられるフッ素系界面活性剤としては、例えばパーフルオロアルキルスルホン酸塩、パーフルオロアルキルカルボン酸塩、パーフルオロアルキルエチレンオキサイド付加物、パーフルオロアルキルトリメチルアンモニウム塩、パーフルオロアルキルアミノスルホン酸塩、パーフルオロアルキル基含有オリゴマー、パーフルオロアルキルオキシベンゼンスルホン酸塩、パーフルオロアルキルオキシベンゼンスルホニルサルコシンナトリウム、パーフルオロアルキルポリオキシエチレンエーテル、パーフルオロアルキルオキシベンゼンスルホンアルキルアンモニウムヨージド、パーフルオロアルキルオキシベンズアミドアルキルアンモニウムヨージド、パーフルオロアルキルオキシアラルキルベタイン、パーフルオロアルキルオキシアラルキルホスホン酸、ジグリセリンテトラキス(パーフルオロアルキルポリオキシエチレンエーテル)(例えば、「フタージェント」(株)ネオス製など)などが挙げられる。
【0032】
フッ素系界面活性剤を用いると一般の界面活性剤に比べ少量でレベリング性、耐汚れ性を向上させることができる。
【0033】
本発明の一態様においては、防曇組成物を浴室の曇り止めとして使う浴室防曇剤を提供する。防曇組成物を基材に塗布することで、親水性の皮膜を形成し曇りを抑制することができる。ここで曇りの抑制とは、基材表面上の水滴発生を減少させ、良好な視界を確保することを言う。
【0034】
本発明の一態様においては、防曇組成物を、スプレー付きボトル、または、フェルト付きボトルに入れたか、もしくは布および/または不織布および/または紙に浸透させた浴室用防曇剤を提供する。曇りが生ずる基材表面に塗布し、発生する水滴を抑制することができる。基材表面に塗布する方法は特に限定されず、他にタオル、スポンジ等に液剤を含浸させ表面に塗り伸ばして塗布しても良い。
【0035】
【発明の実施の形態】
本発明の防曇組成物は、各水溶性高分子の分子量は1万以上必要であり、好ましくは20万〜600万であり、より好ましくは50万〜500万である。分子量が1万未満では、粘度が低くなりすぎて耐水性が低下し、1000万を超えると塗膜が厚くなり外観が悪くなることが考えられる。
【0036】
本発明の防曇組成物中の(D)溶剤における水溶性アルコール成分と水との配合比は、重量比で、水溶性アルコール/水=50/50〜1/99の範囲であることが好ましい。水がこの範囲よりも少ないと、カチオン化高分子が溶解しなくなるので好ましくない。また、水溶性アルコールがこの範囲よりも少ないと、コーティング組成物の濡れ性が悪くなり、塗布時に基材表面ではじかれやすくなるので好ましくない。
【0037】
本発明の防曇組成物は、さらに必要に応じてアルキル基が炭素数1〜3であるプロピレングリコールモノアルキルエーテルを含むことができる。前記プロピレングリコールモノアルキルエーテルは上記アルコールよりも沸点が高いため、レベリング性の向上や蒸発速度の調整を行なうことが可能となる。また、アルキル基の炭素数1〜3とすることによって濡れ性を低下させることなく、透明な塗膜を得ることが可能となる。
【0038】
前記プロピレングリコールモノアルキルエーテルの添加量は、0.5〜5.0重量%とするのが好ましい。この範囲内であると、塗布時に均一になりやすく、より均一な薄膜が得られるとともに、塗膜の強度や耐水性が損なわれない。
【0039】
本発明の防曇組成物は、他の水溶性溶剤を含むことができる。他の水溶性溶剤としては、例えば、エチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテルなどのグリコールエーテル類、エチレングリコール、プロピレングリコールなどのグリコール類、アセトン、ジメチルケトンなどのケトン類、テトラヒドロフラン、ジオキサンなどのエーテル類、プロピレングリコールモノメチルエーテル・アセテートなどのエステル類、アセトニトリル、ジメチルスルホキシドなどが挙げられる。
【0040】
本発明の防曇組成物には必要に応じて、抗菌剤および/または防カビ剤および/または防錆剤を含有することができる。水を主成分とする防曇組成物にはカビが生えたり、菌が繁殖したりする可能性がある。この可能性は特に組成物中のアルコール比率が低いときに高まるが、抗菌剤や防カビ剤を添加することで貯蔵安定性を向上させることが出来る。抗菌・防カビ剤としては、スルホン酸ナトリウム、イソチアゾリン系、安息香酸系、10,10−オキシビスフェノキシアルシン、2−(4−チアゾリル)−ベンズイミダゾール、N−(フルオロジクロロメチルチオ)−フタールイミド、2−メチルカルボニールアミノベンツイミダゾール、銀、銅、ゼオライト、銀リン酸ジルコニウム、銀ハイドロアパタイト、銀リン酸塩ガラス、銀リン酸塩セラミックなどが挙げられる。
【0041】
また、本発明の防曇組成物には必要に応じて、増粘剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、色素剤等の任意成分を配合することができる。
【0042】
本発明の防曇組成物の基材表面への塗布方法としては、均一に塗布できる方法を適宜選択して用いることができる。例えば、ローラータッチ法、バーコーター法、スプレー法、刷毛塗り、スポンジ塗り、布、不織布、紙などに含浸させて塗り広げる方法などが挙げられる。
【0043】
本発明の防曇組成物において、使用可能な場所としては、例えば家庭や公共の浴室、洗面所の湿度が高く曇りが発生しやすい鏡、降雨時に視界が悪くなると考えられる住宅や商店のガラスや鏡、自動車のフェンダーミラーやサイドミラー、サイドウィンドウが挙げられる。防曇剤組成物を基材に塗布することで、親水性の皮膜を形成し曇りを抑制することができる。
【0044】
【実施例】
次に実施例を挙げ、本発明をさらに詳しく説明するが、本発明はこれら実施例に何ら制約されるものではない。
【0045】
(防曇剤組成物の調製)
(実施例1)ジメチルアミノエチルメタクリレート4級塩重合物を0.01wt%、メタクリルアミド−ジメチルアミノエチルアクリレート共重合体を0.4wt%、ポリオキシエチレンアルキルエーテルを0.1wt%、エタノールを10wt%になるようにイオン交換水に溶解し、防曇剤組成物を調整した。
(実施例2)ジメチルアミノエチルメタクリレート4級塩重合物を0.01wt%、アクリルアミド−ジメチルアミノエチルアクリレート共重合体を0.4wt%、パーフルオロアルキルポリオキシエチレンエーテルを0.01wt%、エタノールを10wt%になるようにイオン交換水に溶解し、防曇剤組成物を調整した。
(実施例3)ジエチルアミノプロピルアクリレート4級塩重合物を0.01wt%、アクリルアミド−ジメチルアミノエチルアクリレート共重合体を0.4wt%、ポリオキシエチレンアルキルエーテルを0.1wt%、エタノールを10wt%になるようにイオン交換水に溶解し、防曇剤組成物を調整した。
(実施例4)ジメチルアミノエチルメタクリレート4級塩重合物を0.01wt%、アクリルアミド−ジメチルアミノエチルアクリレート−エチレングリコールジ(メタ)アクリレート共重合体を0.4wt%、ポリオキシエチレンアルキルエーテルを0.1wt%、エタノールを10wt%になるようにイオン交換水に溶解し、防曇剤組成物を調整した。
(比較例1)ポリビニルピロリドンを0.5wt%、ポリオキシエチレンアルキルエーテルを0.1wt%、エタノールを10wt%になるようにイオン交換水に溶解し、防曇剤組成物を調整した。
(比較例2)ポリビニルピロリドンを0.1wt%、ビニルピロリドン−四級塩化ジメチルアミノエチルメタアクリレート共重合体を0.4wt%、ポリオキシエチレンアルキルエーテルを0.1wt%、エタノールを10wt%になるようにイオン交換水に溶解し、防曇剤組成物を調整した。
(比較例3)アクリルアミド−アクリル酸ナトリウム共重合体を0.4wt%、ポリオキシエチレンアルキルエーテルを0.1wt%、エタノールを10wt%になるようにイオン交換水に溶解し、防曇剤組成物を調整した。
(比較例4)ヒドロキシエチルセルロースを0.5wt%、ポリオキシエチレンアルキルエーテルを0.1wt%、エタノールを10wt%になるようにイオン交換水に溶解し、防曇剤組成物を調整した。
(比較例5)エチレンジアミン四酢酸二ナトリウム、ラウリル酸ナトリウム、アクリル酸ブチル、メタクリル酸メチル、メトキシポリエチレングリコールモノメタクリレート、メタクリル酸を共重合させたものを0.4wt%、コロイダルシリカを3wt%、ポリオキシエチレンアルキルエーテルを0.1wt%、になるようにイオン交換水に溶解し、防曇剤組成物を調整した。
【0046】
得られた実施例1〜4、比較例1〜5の防曇剤組成物について、以下の評価試験を行なった。結果を表1に示す。
【0047】
(初期親水性、耐久性)
温水を満たした水槽の上に容器を設置し、容器内が常に温度20℃、湿度90%RHになるよう設定した。不織布に実施例1〜4および比較品1〜5の防曇剤組成物を含ませ、表面をきれいに洗浄した直径140mmの鏡の表面にまんべんなく塗布したものを容器内に設置した。時間経過とともに鏡表面が曇りはじめる時間を測定した。
【0048】
(耐水性)
塗布した鏡に直ちに、家庭用霧吹きで10回(全量約10g)連続して水を噴射した。この連続10回の水噴射を1サイクルとして計10サイクル実施した。防曇剤組成物のはじきが認められないほど良とする。
【0049】
(耐汚れ性)
リンス原液を鏡に塗布した後、軽く水洗いし、接触角を測定して50±10°であるものを用い、不織布に実施例1〜4および比較品1〜5の防曇剤組成物を含ませ、鏡の表面にまんべんなく塗布したものを前記容器内に設置した。鏡に曇りが発生しないほど良とする。
【0050】
(乾燥後の白化)
塗布後のサンプルを50℃恒温槽で30分乾燥させた後、鏡上に白い析出物が認められないものを良とする。
【0051】
【表1】
Figure 2004263008
【0052】
この結果から明らかなように、本発明品1〜4の防曇組成物は、初期親水効果、耐久性、耐水性、耐汚れ性が高いことが確認でき、乾燥後も透明性の高い外観が得られ防曇剤組成物として最適であることがわかった。
【0053】
【発明の効果】
本発明の防曇剤組成物は、カチオン性の(メタ)アクリル酸エステル系モノマーのみを重合して得られたカチオン化水溶性高分子、ノニオン性の(メタ)アクリルアミド系モノマーとカチオン性の(メタ)アクリル酸エステル系モノマーを含む群から選ばれる二種以上のモノマーを共重合して得られた(メタ)アクリルアミド系カチオン化水溶性高分子、界面活性剤、溶剤を必須成分として含むことからなる。これを基材表面に塗布すると、基材表面上に皮膜を形成し、またカチオン性の高いカチオン化水溶性高分子は高い親水効果を発現し、イオン性の低いカチオン化高分子は長時間基材表面に保持され耐水性を有するため、基材表面上に水滴が付着しても、一様に濡れ広がり、水滴によって生じる視認性の低下を長時間防止することができる。さらに、親油性成分を含む塵芥を付着させにくい効果も有するので、防汚性も発現する。また、塗膜は耐水性を有するので、水や蒸気に繰り返し曝しても親水性を長期にわたって持続することができる。また汚れた基材表面にも好適に防曇効果を発揮することができ、乾燥後も良好な外観を保持することができる。またこの防曇組成物を浴室用防曇剤として使用することで、入浴中長時間にわたり鏡の曇りを防止することができる。
【0054】
したがって、本発明の防曇剤組成物およびそれを用いた浴室用防曇剤は、浴室はもちろんのこと、家庭や公共に設置される鏡、窓ガラス、車の鏡、窓等の用途に好適に使用することができるものである。

Claims (9)

  1. 下記の(A)、(B)、(C)、(D)を必須成分として含むことを特徴とする防曇剤組成物。
    (A)カチオン性の(メタ)アクリル酸エステル系モノマーのみを重合して得られたカチオン化水溶性高分子
    (B)ノニオン性の(メタ)アクリルアミド系モノマーとカチオン性の(メタ)アクリル酸エステル系モノマーを含む群から選ばれる二種以上のモノマーを共重合して得られた(メタ)アクリルアミド系カチオン化水溶性高分子
    (C)界面活性剤
    (D)溶剤
  2. 前記カチオン性の(メタ)アクリル酸エステル系モノマーが、ジアルキルアミノアルキルアルコールと(メタ)アクリル酸とのエステルであるジアルキルアミノアルキル(メタ)アクリレート類であることを特徴とする請求項1記載の防曇剤組成物。
  3. (B)成分が、ノニオン性の(メタ)アクリルアミド系モノマー(b1)、カチオン性の(メタ)アクリル酸エステル系モノマー、ノニオン性またはカチオン性の多官能性ビニルモノマー(b2)を含む群から選ばれる三種以上のモノマーを共重合して得られるカチオン化水溶性高分子であることを特徴とする請求項1乃至2記載の防曇剤組成物。
  4. (A)成分、(B)成分の合計濃度が0.01〜1重量%であることを特徴とする請求項1乃至3記載の防曇剤組成物。
  5. (B)成分のノニオン性モノマー:カチオン性モノマーのモル比が55:45〜99:1であることを特徴とする請求項1乃至4記載の防曇剤組成物。
  6. (C)界面活性剤の濃度が0.005〜0.5重量%であることを特徴とする請求項1乃至5記載の防曇剤組成物。
  7. 界面活性剤がフッ素系界面活性剤であることを特徴とする請求項1乃至6記載の防曇剤組成物。
  8. 請求項第1項乃至第7項記載の防曇組成物を浴室の曇り止めとして用いることを特徴とする浴室用防曇剤。
  9. 請求項第1項乃至第7項記載の防曇組成物を、スプレー付きボトルまたはフェルト付きボトルに入れたか、もしくは布、不織布、または紙に浸透させたことを特徴とする浴室用防曇剤。
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