JP2004261962A - 高周波誘電加熱用金型、およびこれを用いた高周波融着加工製品の製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】自己発熱性レベルの低い素材からなる被加熱物を、高周波誘電加熱法により効率よく加熱することのできる高周波誘電加熱用金型を提供すること。
【解決手段】高周波誘電加熱により被加熱物を加熱するための高周波誘電加熱用金型30の表面の少なくとも一部に、誘電損失係数が0.01以上の無機材料の皮膜32を形成した高周波誘電加熱用金型30。
【選択図】 図2
【解決手段】高周波誘電加熱により被加熱物を加熱するための高周波誘電加熱用金型30の表面の少なくとも一部に、誘電損失係数が0.01以上の無機材料の皮膜32を形成した高周波誘電加熱用金型30。
【選択図】 図2
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、高周波誘電加熱用金型およびこれを用いた高周波融着加工製品の製造方法に関し、例えば、熱可塑性樹脂フィルムの融着を行う高周波誘電加熱融着方法に利用することができる。
【0002】
【背景技術】
従来、包装材や文房具、玩具、日用雑貨などの分野においては、各種合成樹脂製のフィルムやシートを素材として、これらに裁断や融着などの二次加工を施して製造された合成樹脂加工製品が用いられている。
このような合成樹脂成形素材の二次加工における融着加工方法には、様々な方法が採用されている。
【0003】
最も簡便な方法として、熱板等によるヒートシール法があるが、この方法では、冷却固化工程を別途設ける必要があるため、融着に時間がかかることから生産性が低い。また、融着部全域にわたって、均一に加熱することが困難なことから、融着部の外観に難がある。
また、超音波振動を被融着体に付与して、フィルムやシートの融着を行う融着加工方法もあるが、加工時に独特の騒音が生じるという問題がある。
【0004】
さらに、高周波誘電加熱による方法がある。この方法は成形金型の構造が簡単であり、高周波の発振を停止すると陽極(例えば、成形金型)および陰極(例えば、アルミ定盤)ともに融着部の冷却固化に寄与するため、生産性が高いという利点がある。また、融着と溶断とが同時に行え、しかも融着加工製品の意匠性に優れるという利点もある。
しかしながら、高周波誘電による加熱を行うためには、比較的大きな誘電損失係数が必要となるため、誘電損失係数が小さいポリオレフィン系樹脂等からなる素材では、高周波誘電加熱による融着加工が困難であり、専らポリ塩化ビニル等の誘電損失係数の大きな樹脂からなる素材の融着加工に採用されてきた。
【0005】
ところで、近年における環境汚染の問題から、ポリ塩化ビニル系樹脂素材の使用が差し控えられるようになり、これまでポリ塩化ビニル系樹脂素材の加工製品が使用されてきた分野においても、ポリオレフィン系樹脂への置き換えが検討されるようになってきた。このような状況から、ポリオレフィン系樹脂素材の融着加工を、上述のような利点の多い高周波誘電加熱法により行う試みがなされている。
【0006】
例えば、特開昭55−61435号公報では、高周波誘電加熱を行う際の融着面に鉄等の金属導電素子を散在させておき、高周波電圧の印加による金属導電素子の発熱をポリオレフィン系樹脂素材に伝達して融着させる方法が提案されている。しかし、この場合には、ポリオレフィン系樹脂素材に鉄粉などの金属導電素子が接触することから、融着加工製品の色相や外観が損なわれるという問題がある。
【0007】
また、特開昭51−119771号公報では、ポリオレフィン系樹脂素材に極性を有する樹脂シートを接触させて高周波誘電加熱を行う方法が提案されている。
さらに、特開平1−160633号公報では、ポリオレフィン系樹脂素材に、クロロスルホン化ポリエチレンや塩素化ポリエチレン、エチレン−酢酸ビニル共重合体のいずれかからなるシートを接触させて高周波誘電加熱を行う方法が提案されている。このほか、特公平7−5771号公報では、被融着体として用いるポリエチレンの重合体側鎖にカルボニル基を導入した共重合体のシートを用いる方法が提案されており、特開平8−52802号公報では、高周波誘電加熱を行う際に、予め成形用の金型および基台を被融着体の融点よりいくらか低い温度まで加熱してから高周波誘電加熱を行う方法が提案されている。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、前記各公報に開示される方法では、ポリオレフィン系樹脂素材の高周波誘電加熱による融着を可能にしてはいるものの、得られる融着加工製品の融着部の機械的強度、特に融着強度が十分に得られないという問題がある。
また、必要とする融着強度が得られたとしても、加工時間がかかりすぎるので、製品の生産性が低いという問題がある。
【0009】
さらに、このような高周波誘電加熱による融着加工においては、電圧印加時にスパークが発生することがあるため、スパークが発生しにくく安定生産の可能な融着加工方法の開発が要望されている。
このため、ポリプロピレン等のポリオレフィン系樹脂、ポリエチレンテレフタレート等のポリエステル系樹脂、ナイロン等のポリアミド、ポリスチレン、ポリカーボネート等の自己発熱性レベルの低い素材を、高周波誘電加熱により効率的に加熱できる方法が要望されている。
【0010】
本発明の目的は、自己発熱性レベルの低い素材からなる被加熱物を、高周波誘電加熱法により効率よく加熱することのできる高周波誘電加熱用金型、およびこれを用いた高周波融着加工製品の製造方法を提供することにある。
【0011】
【課題を解決するための手段】
本発明に係る高周波誘電加熱用金型は、高周波誘電加熱により被加熱物を加熱するための高周波誘電加熱用金型であって、誘電損失係数が0.01以上の無機材料の皮膜を、金型表面の少なくとも一部に形成したことを特徴とする。
【0012】
ここで、誘電損失係数は、自己発熱性のし易さを表す物質固有の特性値である。具体的には、高周波誘電加熱における発熱量をP、周波数f、電極間電圧をE、無機物の誘電率をε、誘電正接をtanδとすると発熱量Pは、以下の式により求められ、下式における誘電率εと誘電正接tanδとの積(ε・tanδ)を誘電損失係数という。
P=K・f・E2・ε・tanδ(Kは定数)
【0013】
本発明において、誘電損失係数が0.01未満であると、無機材料の自己発熱性が不十分であり好ましくない。すなわち、0.01以上とすることで、必要とする無機材料の自己発熱性が満たされ、高周波融着加工を効率よく行うことができる。また、前述の式より、誘電損失係数が大きくなれば、周波数が小さくても十分な発熱量が得られることとなるから、融着加工の際の同調を容易に行うことができる。より好ましい誘電損失係数は、0.1以上である。
【0014】
本発明の高周波誘電加熱用金型の皮膜を構成する無機材料は、皮膜にした場合反り、ねじれ等の変形のない、平坦性の高いものが好ましく、さらに、その表面平滑性は、Ra<20μm、Rmax<100μmであるのが好ましい。
また、体積固有抵抗値は、特に限定はないが、電圧印加時にスパーク等の不具合発生を防ぐことを考慮すると、106Ω・cm以上であることが好ましく、その値は、高ければ高いほどよい。
【0015】
さらに、その熱伝導率は、特に限定はないが、4.19×10−1 〜 419W/m/K(1×10−3〜1.0cal/cm/sec/℃をSI単位に換算した値)であるのが好ましい。
すなわち、熱伝導率が4.19×10−1W/m/K未満であると、熱融着加工後に、皮膜および金型が冷めにくくなり、続けて加工する際に生産性が悪くなる可能性がある。一方、419W/m/Kを超えると、熱融着加工時に高周波誘電により無機材料が自己発熱しても、熱が電極側に逃げてしまうので、被加熱物の加熱が十分に行われず、融着強度が低下したり、加工の長時間化を招く可能性がある。
【0016】
そして、無機材料の耐久性としては、1〜10秒で常温から250℃までの温度変化に耐え、2〜3mm幅で局所的に980kPa(10kgf/cm2をSI単位に換算した値)程度の圧力に耐えるものであることが理想的であるが、必ずしもこれらを満たす必要はない。
なお、無機材料の形状には、特に制限はないが、粉末状であることが好ましい。粉末としては、平均粒径(D50%)が、1.0〜50μmであることが好ましい。
【0017】
また、高周波誘電加熱用金型の材質としては、特に限定はないが、真鍮、アルミニウム、鉄等を採用することができる。
金型形状としては、任意のものを採用でき、平坦な融着部のみからなる融着刃を有するものや、融着と同時に溶断する場合には、融着部の外側端部に溶断部を有する融着刃等を採用できる。この際、溶断部は、融着部と別体のものをビス止めした、いわゆる巻刃タイプのものや、無垢の金属塊からNC加工等で彫刻された一体タイプのどちらを採用してもよい。
【0018】
さらに、金型に無機材料の皮膜を形成する手法としては、特に限定はないが、プラズマ溶射法等の溶射法、無機材料を含む溶液へ金型をディッピングさせた後に乾燥固化する方法、無機材料を含む溶液を金型に塗装した後に乾燥固化する方法等を採用することができる。
ここで、プラズマ溶射法としては、大気圧下で行うAPS(Atmospheric Plasma Spraying)、減圧下で行うVPS(Vacuum Plasma Spraying)を用いることができるが、緻密で高強度の層を形成するにはVPSを採用するのが好ましい。
【0019】
皮膜は、金型表面の少なくとも一部に形成されていればよく、例えば、融着部と溶断部との被加熱体と接触する先端部分周辺だけでも構わない。このように、皮膜を形成する面積を必要最小限に抑えることで、被加熱体への伝熱以外のロスを最小にできるため、エネルギ効率の点で有効である。また、一部にのみ皮膜を形成することで、皮膜形成作業も容易に行え、かつ、コストの低減につながる。
ただし、金型表面全体に皮膜を形成しても構わない。
【0020】
本発明における、金型の皮膜を構成する誘電損失係数が0.01以上の無機材料としては、酸化物系セラミック、複合酸化物系セラミック、窒化物系セラミック、炭化物系セラミック、チタン含有複合酸化物、鉛含有複合酸化物、およびジルコニウム含有複合酸化物のいずれかから選択されたもの、またはこれらのうち少なくとも2種以上の混合物を採用することが好ましい。
【0021】
ここで、酸化物系セラミックとしては、アルミナ(Al2O3)、チタニア(TiO2)、フェライト(Fe2O3)、ジルコニア(ZrO2)等を採用できる。この中でも、アルミナ・チタニア系粉末が、原料価格が安価であり、かつ、誘電損失係数も高くて好ましい。アルミナ・チタニア系粉末は、アルミナとチタニアの粉末混合物から電融粉砕、電融合成、または焼成されたものが使用でき、それらの混合比は、任意に設定できるが、重量比でアルミナ/チタニア=60/40のものが好ましい。
【0022】
複合酸化物系セラミックとしては、コーディエライト(2MgO・2Al2O3・5SiO2)、フォルステライト(2MgO・SiO2)、ステアタイト(3MgO・4SiO2・H2O)等を採用できる。
窒化物系セラミックとしては、窒化ケイ素、窒化アルミニウム等を採用でき、炭化物系セラミックとしては、炭化ケイ素等を採用できる。
【0023】
チタン含有複合酸化物としては、各種チタン酸(アルカリ)金属塩、例えば、チタン酸マグネシウム、チタン酸カルシウム、チタン酸ストロンチウム、チタン酸バリウム、チタン酸カリウム、チタン酸アルミニウム等を採用できる。
鉛含有複合酸化物としては、チタン酸鉛、チタン酸ジルコニウム鉛、ジルコニウム酸鉛等を採用できる。
ジルコニウム含有複合酸化物としては、各種ジルコニウム酸(アルカリ)金属塩、例えば、ジルコニウム酸カルシウム、ジルコニウム酸ストロンチウム、ジルコニウム酸バリウム等を採用できる。
なお、無機材料は純品である必要はなく、誘電損失係数の異なる混合物でも構わないが、少なくともその1成分は、0.01以上の誘電損失係数を有する必要がある。
【0024】
以上に示した無機材料の中でも、チタン酸アルミニウムを含むものを採用することが好ましい。
ここで、チタン酸アルミニウムとしては、各種の酸化度のものを採用できるが、TiAl2Oxで表したときに、x=5〜8であるものを採用することが好ましい。特に、x=5の場合、すなわち、TiAl2O5を主相として含むものであることが一層好ましい。
【0025】
また、チタン酸アルミニウムは、上述のアルミナおよびチタニアを原料とした電融合成、焼成等により得ることができる。
この際、得られたチタン酸アルミニウムは、原料として用いたアルミナ、チタニアとの混合物として用いてもよく、単離して純粋なチタン酸アルミニウムとして用いてもよい。混合物として用いる場合のチタン酸アルミニウムの含有量は、被加熱物の材質等に応じて適宜設定することができるが、TiAl2Ox(x=5〜8)が、5wt%以上含まれていることが好ましい。
このように高絶縁性のチタン酸アルミニウムを使用することで、高周波誘電による被加熱物の加熱が一層効率的に行える。
【0026】
本発明によれば、誘電損失係数が0.01以上の無機材料の皮膜が形成された高周波誘電加熱用金型である。したがって、皮膜に高周波電磁波を印加すると、皮膜を構成する無機材料が容易に自己発熱し、これと接触している金型が加熱される。この金型を用いることで、誘電損失係数が小さく、自己発熱性レベルの低いポリオレフィン系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリアミド、ポリスチレン、ポリカーボネート等の素材からなる被加熱物を効率よく加熱することができる。
【0027】
また、無機材料からなる皮膜であるから、繰り返し使用に伴う劣化が少なく、耐久性および耐熱性に優れ、高周波誘電加熱による融着加工を行う場合に好適である。
さらに、本発明の無機材料をセラミック等の絶縁性の高い材料で構成すれば、電圧印加時にスパークが発生しにくいので、融着加工を安定して行うことができる。
【0028】
本発明に係る融着加工製品の製造方法は、上述の高周波誘電加熱用金型を自己発熱させることで、高周波融着加工を行い、融着加工製品を製造することを特徴とする。
ここで、「金型を自己発熱させる」とは、金型に形成された無機材料からなる皮膜に電圧をかけて発熱させることを意味する。
【0029】
高周波融着加工機は、任意であり、例えば、周波数が1〜300MHzのものを採用できる。一般的には、18MHz、27MHz、40MHzの周波数のものがよく用いられる。また、同調機付整合回路を備えた機械を用いてもよい。
なお、高周波融着加工に際して、加熱器または冷却器を用いて、電極である金型を加熱または冷却してもよい。
【0030】
本発明によれば、上述の金型を用いて高周波融着加工を行う融着加工製品の製造方法であるから、誘電損失係数が小さく、自己発熱性レベルの低いポリオレフィン系樹脂からなるフィルム、シート等を効率的に融着加工することができる。
【0031】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の一形態を図面に基づいて説明する。
図1には、本発明の高周波誘電加熱用金型を用いた高周波誘電加熱融着加工装置が示されている。
この装置は、上定盤10、無機材料の皮膜が形成された金型30、下定盤40を備えている。金型30が上部電極と、下定盤40が下部電極とされ、これらの間に被加熱物であるポリオレフィン系樹脂からなる2枚のシート素材71、72を配置して融着を行う。
なお、必要に応じて、シート素材71、72の上下面に耐熱樹脂製フィルム81を配置して融着加工を行う。
【0032】
上定盤10は、金型30を支持固定する部分であり、融着加工装置本体の駆動機構により、下定盤40に対して接近、離間するようになっている。金型30は、外周端部に融着刃31を備え、上定盤10の下降とともに、この融着刃31の部分でシート素材71、72を押圧して2枚のシート素材71、72の熱融着を行う。
【0033】
融着刃31は、図2に示されるように、下定盤40と略水平に形成された融着部31Aと、この融着部31Aの外側、すなわち金型30の外周縁に沿って立ち上げて形成された断面略3角形状の溶断部31Bとを備えている。
また、融着刃31の表面には、誘電損失係数0.01以上の無機材料からなる被膜32が形成されている。なお、皮膜32は、プラズマ溶射法により形成したものである。
【0034】
ここで、皮膜32は、電気絶縁性の高いチタン酸アルミニウムを含む無機材料から構成されている。
また、皮膜32の熱伝導率は、4.19×10−1 〜 419W/m/Kであることが好ましく、さらに、その体積抵抗率は106Ω・cm以上であることが好ましい。
さらに、皮膜32の表面平滑性は、Ra<20μm、Rmax<100μmとされている。また、約1〜10秒で常温から250℃までの温度変化に耐え、2〜3mm幅で局所的に980kPa程度の圧力が作用しても、破損等が生じないものである。
【0035】
なお、融着刃31は、下部電極である下定盤40と最も接近することになるので、融着刃31および下定盤40の間隔の誤差は、±100μm以内に調整する必要がある。この調整は、上定盤10および下定盤40の相互の傾きを調製するとともに、金型30の上定盤10との接合面を研磨するなどして行う。
この間隔の誤差が、100μmを超えると、高周波誘電融着加工を行う際に、シート素材71、72の厚みの分布が増大し、印加電圧が局所的にシートの絶縁破壊電圧を上回り、スパークの発生を招く危険性が高くなる。
【0036】
なお、この金型30の融着刃31における先端部分の温度分布が、融着刃31の一部において±3℃を超える箇所が存在すると、その後の圧着時に、シート厚みの減少が不均一になり、印加電圧の過大部が生じ、シートの絶縁破壊電圧を超えてスパーク現象が発生しやすくなる。
また、融着加工製品の生産時に、融着刃31の先端部の温度が大きく変化すると、印加電圧の過大部が生じやすくなり、スパーク現象の発生を招くことがある。
【0037】
必要に応じて用いられる耐熱樹脂製フィルム81としては、ポリエチレンテレフタレート、ポリカーボネート、ポリエーテルスルホン、ポリイミド樹脂等からなるフィルムが好適であり、その厚みが10〜100μmのものを使用すればよい。
なお、このような耐熱樹脂製フィルム81を使用することにより、2枚のシート素材71、72の融着に際して、その平滑な表面がシート素材71、72の融着加工部表面に転写され、融着加工部の光沢を向上させることができる。
【0038】
このような、高周波誘電加熱融着加工装置によって、種々のポリオレフィン系樹脂素材の融着加工が可能となるが、加工可能な素材としては、ポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂、およびこれらを主成分とするポリオレフィン系樹脂等が挙げられる。また、その他誘電損失係数が小さく、自己発熱性の少ない、または全くない樹脂からなるフィルム、シート、不織布、織布(単層、多層を問わない)の加工に適している。
【0039】
次に、上述した高周波誘電加熱融着加工装置によるシート素材71、72の融着加工手順について説明する。
[1]シート素材71、72を重ね合わせ、さらに、2枚のシート素材71、72を耐熱樹脂製フィルム81で多い下定盤40上に設置する。
[2]この状態で、上定盤10を下降させ、金型30の融着刃31でシート素材71、72を押圧した状態で、高周波電界を印加し、皮膜32を自己発熱させ、これにより金型30を加熱する。この際の周波数は、1〜300MHzの範囲に設定できるが、通常は、18MHz、27MHz、40MHzのものがよく用いられる。
【0040】
[3]シート素材71、72への高周波電界の印加の開始時には、無負荷状態の電流値に設定し、次いで、シート素材71、72の絶縁破壊95%未満の印加電圧に設定して高周波誘電加熱を行う。印加開始時に無負荷状態の電流値とするのは、スパークに伴うシート素材71、72の絶縁破壊を回避するためである。
[4]また、印加電流は、シート素材71、72の種類、厚み、融着面積等により異なるが、通常、0.1〜0.8A、好ましくは、0.2〜0.5Aの範囲に設定する。
【0041】
[5]高周波電界の印加時間もシート素材71、72の種類、厚み、融着面積等により異なるが、通常、0.5〜10秒間、好ましくは1〜6秒間、さらに好ましくは1〜4秒間である。また、高周波誘電加熱のための通電時間は、0.5〜10秒間、好ましくは1〜5秒間、さらに好ましくは1〜3秒間である。
[6]高周波電界印加中および印加後の冷却時間には、金型30および下定盤40の間に圧力を加え、両電極間でのスパークの防止および被加熱物の融着加工部の変形を防止する。
この際の加圧力は、シート素材71、72の種類、厚み等によって異なるが、通常、49.0〜490kPa(0.5〜5kg/cm2をSI単位に換算した値)に設定する。
【0042】
以上のような、高周波誘電加熱融着加工装置により融着加工されたシート素材71、72は、融着加工部が高い機械的強度と透明性を有することから、種々の用途に広く用いることが可能であり、例えば、カードケース、ブックケース、ファイル、ネームホルダー等の文房具、玩具、目薬等の包装容器、雨具や袋物等の日用雑貨、各種包装資材として好適に利用できる。
【0043】
上述のような本実施形態によれば、次のような効果がある。
(1)誘電損失係数が0.01以上の無機材料の皮膜32が形成された高周波誘電加熱用金型30である。したがって、当該皮膜32に高周波電磁波を印可すると、皮膜32を構成している無機材料が容易に自己発熱し、これと接触している金型30が加熱される。この金型30を用いることで、誘電損失係数が小さく、自己発熱性レベルの低いポリオレフィン系樹脂からなるシート素材71、72を効率よく加熱することができる。
【0044】
(2)無機材料からなる皮膜32であるから、繰り返し使用に伴う劣化が少なく、耐久性および耐熱性に優れている。
(3)皮膜32が、電気絶縁性高いチタン酸アルミニウムを含む無機材料から構成されているから、電極間のスパーク等の発生を防止でき、シート素材71、72の融着加工を安定して行うことができる。
【0045】
(4)皮膜32の熱伝導率が、4.19×10−1 〜 419W/m/Kとされているから、熱融着後の下敷50の速やかな冷却により、次加工時のシート素材71、72の過熱を防止することができ、しかも、熱逃げに伴うシート素材71、72の加熱不良による融着強度低下を招くこともない。
(5)皮膜32の体積抵抗率が106Ω・cm以上とされているから、シート素材71、72を一層効率的に融着加工することができる。
【0046】
(6)皮膜32が、金型30の融着刃31の部分にのみ形成されているから、シート素材71、72への伝熱以外のロスをより少なくできるため、エネルギ効率の点で有効である。また、このように金型30の一部にだけ皮膜32を形成することで、皮膜形成作業も容易に行え、かつ、コストの低減につながる。
【0047】
なお、本発明は前記実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を達成できる範囲での変形、改良は、本発明に含まれるものである。例えば、前記実施形態では、皮膜の形成法にプラズマ溶射法を用いていたが、これに限られない。すなわち、無機材料からなる皮膜32を金型30の表面に形成できる任意の製造方法を使用することができ、例えば、その他の溶射法、無機材料を含む溶液へ金型をディッピングさせた後に乾燥固化する方法、無機材料を含む溶液を金型に塗装した後に乾燥固化する方法等を採用することができる。
【0048】
前記実施形態では、金型30の融着刃31の部分にのみ皮膜32を形成していたが、これに限られず、金型全面に形成してもよい。
また、金型30として、溶断部31Bを有するものを用いていたが、これに限られず、融着部のみを有する金型を用いてもよい。さらに、溶断部31Bとしては、融着部31Aと一体構造のものを採用していたが、これに限られず、別体の融着部と溶断部とを、ビス等により固定したものを用いることもできる。
そして、金型30には加熱器または冷却器は設けられていなかったが、これに限られず、加熱器または冷却器を設けて、金型自体を直接加熱または冷却する装置を採用することもできる。
【0049】
前記実施形態では、被加熱物であるシート素材71、72としてポリオレフィン系樹脂からなるシートを用いていたが、これに限られず、ポリエステル系樹脂、ポリアミド、ポリスチレン、ポリカーボネート等を用いることもできる。
その他、本発明を実施する際の具体的な構造および形状等は、本発明の目的を達成できる範囲内で他の構造等としてもよい。
【0050】
【実施例】
以下、実施例および比較例を挙げて本発明をより具体的に説明する。
前記実施形態における高周波融着加工装置において、溶射材の種類を変更することにより、種々の金型30を製造し、高周波ウェルダ試験によってシート素材71、72を融着加工して、図3に示される天チャック付袋2を製造した。
なお、天チャック付袋2は、開口部21に天チャック21Aを有するとともに、他の3方が封止部22とされているものである。天チャック付袋2の具体的な寸法は、150(両サイド)×80(底部)mmである。
【0051】
溶射材としては、粉末状のアルミナおよびチタニアを、重量比(wt%)でアルミナ/チタニア=60/40の配合で混合したもの(溶射材1)、粉末状のチタン酸バリウム(溶射材2)、溶射材1をさらに電融合成した後、平均粒径20μmに微粉砕して得たチタン酸アルミニウム(TiAl2O590wt%含有)(溶射材3)を採用した。
【0052】
金型の基材として真鍮を用い、前述の溶射材1〜3をそれぞれVSP法にてプラズマ溶射を行い皮膜を形成した。
金型としては、以下の金型を用いた。
(A)天チャック付袋2の封止部22に対応した大きさの略U字状の融着部31Aおよび溶断部31B(巻刃タイプ)を有し、融着部31Aの幅寸法2mmの金型30。
(B)180(長さ)×2(幅)(mm)のローレット刃付金型(天チャック21A取り付け用)。
【0053】
【表1】
【0054】
なお、表1中誘電損失係数は、横河ヒューレットパッカード社製の試験機器(本体:HP4284A 周波数1MHz、電極:HP16451B 印加電圧範囲・42V)を用い、JIS K6911に準拠して誘電率および誘電正接を測定し、これらの積により求めた。
【0055】
上述した高周波誘電加熱融着加工装置を用い、高周波ウェルダ試験を行って、融着加工性を評価し、その結果を表2に示した。
なお、高周波ウェルダ試験は、高周波ウェルダ装置として、クインライト電子精工(株)製LW4060−APH(高周波出力:3.6kW、発信周波数:41.1MHz)を使用し、前記金型A、Bを用い、上記天チャック付袋2を製造することで行った。この際、陽極電流値は0.2〜0.5Aの範囲に設定した。
【0056】
また、高周波ウェルダ試験におけるシート素材71、72としては、エチレン−ポリプロピレン共重合体(メルトインデックス7、融点137℃ 出光石油化学(株)製)をTダイ押出機にて幅400mm、厚み0.3mmのシートを作製し、これを200mm×300mmにカットしたものを使用した。
さらに、天チャック21Aとしては、ポリプロピレンからなるものを用いた。
【0057】
【表2】
【0058】
ここで、実施例1〜3では、封止部22について15mm幅に切り取り、両シートを引き裂くことで、融着強度を測定したものである。
一方、実施例4〜6では、天チャック21Aのシール部について、同じく15mm幅に切り取り、シートと天チャックとを引き裂くことで、融着強度を測定したものである。
【0059】
実施例1〜3によれば、封止部22におけるシート素材71、72の融着強度が32.3N/15mm(3.3kgf/15mmをSI単位に換算した値)以上であるので、良好な融着加工を行えることがわかる。
一方、実施例4〜6によれば、天チャック21Aにおける融着強度が、41.2N/15mm(4.2kgf/15mmをSI単位に換算した値)以上であるので、良好な融着加工を行えることがわかる。
【0060】
また、いずれの場合も5000ショット以上の使用に耐えることができるので、極めて耐久性の高いものとすることができることがわかる。
さらに、金型温度が100℃以下でも十分に融着加工を行うことができ、しかも、1ショットの時間を4秒以内とすることができるので、高周波誘電加熱融着加工を効率的に行えることがわかる。
【0061】
【発明の効果】
本発明によれば、誘電損失係数が0.01以上の無機材料の皮膜が形成された高周波誘電加熱用金型である。したがって、当該皮膜に高周波電磁波を印可すると、皮膜を構成している無機材料が容易に自己発熱し、これと接触している金型が加熱される。この金型を用いることで、誘電損失係数が小さく、自己発熱性レベルの低いポリオレフィン系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリアミド、ポリスチレン、ポリカーボネート等の素材からなる被加熱物を効率よく加熱することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施形態に係る高周波誘電加熱用金型を用いた高周波誘電加熱融着加工装置の構造を示す部分側面図である。
【図2】図1の実施形態における融着刃を示す部分拡大断面図である。
【図3】本発明に係る高周波誘電加熱用金型を用いて製造した天チャック付袋を示す正面図である。
【符号の説明】
30 金型(上部電極)
31 融着刃
31A 融着部
31B 溶断部
32 皮膜
40 下定盤(下部電極)
71、72 シート素材(被加熱物)
【発明の属する技術分野】
本発明は、高周波誘電加熱用金型およびこれを用いた高周波融着加工製品の製造方法に関し、例えば、熱可塑性樹脂フィルムの融着を行う高周波誘電加熱融着方法に利用することができる。
【0002】
【背景技術】
従来、包装材や文房具、玩具、日用雑貨などの分野においては、各種合成樹脂製のフィルムやシートを素材として、これらに裁断や融着などの二次加工を施して製造された合成樹脂加工製品が用いられている。
このような合成樹脂成形素材の二次加工における融着加工方法には、様々な方法が採用されている。
【0003】
最も簡便な方法として、熱板等によるヒートシール法があるが、この方法では、冷却固化工程を別途設ける必要があるため、融着に時間がかかることから生産性が低い。また、融着部全域にわたって、均一に加熱することが困難なことから、融着部の外観に難がある。
また、超音波振動を被融着体に付与して、フィルムやシートの融着を行う融着加工方法もあるが、加工時に独特の騒音が生じるという問題がある。
【0004】
さらに、高周波誘電加熱による方法がある。この方法は成形金型の構造が簡単であり、高周波の発振を停止すると陽極(例えば、成形金型)および陰極(例えば、アルミ定盤)ともに融着部の冷却固化に寄与するため、生産性が高いという利点がある。また、融着と溶断とが同時に行え、しかも融着加工製品の意匠性に優れるという利点もある。
しかしながら、高周波誘電による加熱を行うためには、比較的大きな誘電損失係数が必要となるため、誘電損失係数が小さいポリオレフィン系樹脂等からなる素材では、高周波誘電加熱による融着加工が困難であり、専らポリ塩化ビニル等の誘電損失係数の大きな樹脂からなる素材の融着加工に採用されてきた。
【0005】
ところで、近年における環境汚染の問題から、ポリ塩化ビニル系樹脂素材の使用が差し控えられるようになり、これまでポリ塩化ビニル系樹脂素材の加工製品が使用されてきた分野においても、ポリオレフィン系樹脂への置き換えが検討されるようになってきた。このような状況から、ポリオレフィン系樹脂素材の融着加工を、上述のような利点の多い高周波誘電加熱法により行う試みがなされている。
【0006】
例えば、特開昭55−61435号公報では、高周波誘電加熱を行う際の融着面に鉄等の金属導電素子を散在させておき、高周波電圧の印加による金属導電素子の発熱をポリオレフィン系樹脂素材に伝達して融着させる方法が提案されている。しかし、この場合には、ポリオレフィン系樹脂素材に鉄粉などの金属導電素子が接触することから、融着加工製品の色相や外観が損なわれるという問題がある。
【0007】
また、特開昭51−119771号公報では、ポリオレフィン系樹脂素材に極性を有する樹脂シートを接触させて高周波誘電加熱を行う方法が提案されている。
さらに、特開平1−160633号公報では、ポリオレフィン系樹脂素材に、クロロスルホン化ポリエチレンや塩素化ポリエチレン、エチレン−酢酸ビニル共重合体のいずれかからなるシートを接触させて高周波誘電加熱を行う方法が提案されている。このほか、特公平7−5771号公報では、被融着体として用いるポリエチレンの重合体側鎖にカルボニル基を導入した共重合体のシートを用いる方法が提案されており、特開平8−52802号公報では、高周波誘電加熱を行う際に、予め成形用の金型および基台を被融着体の融点よりいくらか低い温度まで加熱してから高周波誘電加熱を行う方法が提案されている。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、前記各公報に開示される方法では、ポリオレフィン系樹脂素材の高周波誘電加熱による融着を可能にしてはいるものの、得られる融着加工製品の融着部の機械的強度、特に融着強度が十分に得られないという問題がある。
また、必要とする融着強度が得られたとしても、加工時間がかかりすぎるので、製品の生産性が低いという問題がある。
【0009】
さらに、このような高周波誘電加熱による融着加工においては、電圧印加時にスパークが発生することがあるため、スパークが発生しにくく安定生産の可能な融着加工方法の開発が要望されている。
このため、ポリプロピレン等のポリオレフィン系樹脂、ポリエチレンテレフタレート等のポリエステル系樹脂、ナイロン等のポリアミド、ポリスチレン、ポリカーボネート等の自己発熱性レベルの低い素材を、高周波誘電加熱により効率的に加熱できる方法が要望されている。
【0010】
本発明の目的は、自己発熱性レベルの低い素材からなる被加熱物を、高周波誘電加熱法により効率よく加熱することのできる高周波誘電加熱用金型、およびこれを用いた高周波融着加工製品の製造方法を提供することにある。
【0011】
【課題を解決するための手段】
本発明に係る高周波誘電加熱用金型は、高周波誘電加熱により被加熱物を加熱するための高周波誘電加熱用金型であって、誘電損失係数が0.01以上の無機材料の皮膜を、金型表面の少なくとも一部に形成したことを特徴とする。
【0012】
ここで、誘電損失係数は、自己発熱性のし易さを表す物質固有の特性値である。具体的には、高周波誘電加熱における発熱量をP、周波数f、電極間電圧をE、無機物の誘電率をε、誘電正接をtanδとすると発熱量Pは、以下の式により求められ、下式における誘電率εと誘電正接tanδとの積(ε・tanδ)を誘電損失係数という。
P=K・f・E2・ε・tanδ(Kは定数)
【0013】
本発明において、誘電損失係数が0.01未満であると、無機材料の自己発熱性が不十分であり好ましくない。すなわち、0.01以上とすることで、必要とする無機材料の自己発熱性が満たされ、高周波融着加工を効率よく行うことができる。また、前述の式より、誘電損失係数が大きくなれば、周波数が小さくても十分な発熱量が得られることとなるから、融着加工の際の同調を容易に行うことができる。より好ましい誘電損失係数は、0.1以上である。
【0014】
本発明の高周波誘電加熱用金型の皮膜を構成する無機材料は、皮膜にした場合反り、ねじれ等の変形のない、平坦性の高いものが好ましく、さらに、その表面平滑性は、Ra<20μm、Rmax<100μmであるのが好ましい。
また、体積固有抵抗値は、特に限定はないが、電圧印加時にスパーク等の不具合発生を防ぐことを考慮すると、106Ω・cm以上であることが好ましく、その値は、高ければ高いほどよい。
【0015】
さらに、その熱伝導率は、特に限定はないが、4.19×10−1 〜 419W/m/K(1×10−3〜1.0cal/cm/sec/℃をSI単位に換算した値)であるのが好ましい。
すなわち、熱伝導率が4.19×10−1W/m/K未満であると、熱融着加工後に、皮膜および金型が冷めにくくなり、続けて加工する際に生産性が悪くなる可能性がある。一方、419W/m/Kを超えると、熱融着加工時に高周波誘電により無機材料が自己発熱しても、熱が電極側に逃げてしまうので、被加熱物の加熱が十分に行われず、融着強度が低下したり、加工の長時間化を招く可能性がある。
【0016】
そして、無機材料の耐久性としては、1〜10秒で常温から250℃までの温度変化に耐え、2〜3mm幅で局所的に980kPa(10kgf/cm2をSI単位に換算した値)程度の圧力に耐えるものであることが理想的であるが、必ずしもこれらを満たす必要はない。
なお、無機材料の形状には、特に制限はないが、粉末状であることが好ましい。粉末としては、平均粒径(D50%)が、1.0〜50μmであることが好ましい。
【0017】
また、高周波誘電加熱用金型の材質としては、特に限定はないが、真鍮、アルミニウム、鉄等を採用することができる。
金型形状としては、任意のものを採用でき、平坦な融着部のみからなる融着刃を有するものや、融着と同時に溶断する場合には、融着部の外側端部に溶断部を有する融着刃等を採用できる。この際、溶断部は、融着部と別体のものをビス止めした、いわゆる巻刃タイプのものや、無垢の金属塊からNC加工等で彫刻された一体タイプのどちらを採用してもよい。
【0018】
さらに、金型に無機材料の皮膜を形成する手法としては、特に限定はないが、プラズマ溶射法等の溶射法、無機材料を含む溶液へ金型をディッピングさせた後に乾燥固化する方法、無機材料を含む溶液を金型に塗装した後に乾燥固化する方法等を採用することができる。
ここで、プラズマ溶射法としては、大気圧下で行うAPS(Atmospheric Plasma Spraying)、減圧下で行うVPS(Vacuum Plasma Spraying)を用いることができるが、緻密で高強度の層を形成するにはVPSを採用するのが好ましい。
【0019】
皮膜は、金型表面の少なくとも一部に形成されていればよく、例えば、融着部と溶断部との被加熱体と接触する先端部分周辺だけでも構わない。このように、皮膜を形成する面積を必要最小限に抑えることで、被加熱体への伝熱以外のロスを最小にできるため、エネルギ効率の点で有効である。また、一部にのみ皮膜を形成することで、皮膜形成作業も容易に行え、かつ、コストの低減につながる。
ただし、金型表面全体に皮膜を形成しても構わない。
【0020】
本発明における、金型の皮膜を構成する誘電損失係数が0.01以上の無機材料としては、酸化物系セラミック、複合酸化物系セラミック、窒化物系セラミック、炭化物系セラミック、チタン含有複合酸化物、鉛含有複合酸化物、およびジルコニウム含有複合酸化物のいずれかから選択されたもの、またはこれらのうち少なくとも2種以上の混合物を採用することが好ましい。
【0021】
ここで、酸化物系セラミックとしては、アルミナ(Al2O3)、チタニア(TiO2)、フェライト(Fe2O3)、ジルコニア(ZrO2)等を採用できる。この中でも、アルミナ・チタニア系粉末が、原料価格が安価であり、かつ、誘電損失係数も高くて好ましい。アルミナ・チタニア系粉末は、アルミナとチタニアの粉末混合物から電融粉砕、電融合成、または焼成されたものが使用でき、それらの混合比は、任意に設定できるが、重量比でアルミナ/チタニア=60/40のものが好ましい。
【0022】
複合酸化物系セラミックとしては、コーディエライト(2MgO・2Al2O3・5SiO2)、フォルステライト(2MgO・SiO2)、ステアタイト(3MgO・4SiO2・H2O)等を採用できる。
窒化物系セラミックとしては、窒化ケイ素、窒化アルミニウム等を採用でき、炭化物系セラミックとしては、炭化ケイ素等を採用できる。
【0023】
チタン含有複合酸化物としては、各種チタン酸(アルカリ)金属塩、例えば、チタン酸マグネシウム、チタン酸カルシウム、チタン酸ストロンチウム、チタン酸バリウム、チタン酸カリウム、チタン酸アルミニウム等を採用できる。
鉛含有複合酸化物としては、チタン酸鉛、チタン酸ジルコニウム鉛、ジルコニウム酸鉛等を採用できる。
ジルコニウム含有複合酸化物としては、各種ジルコニウム酸(アルカリ)金属塩、例えば、ジルコニウム酸カルシウム、ジルコニウム酸ストロンチウム、ジルコニウム酸バリウム等を採用できる。
なお、無機材料は純品である必要はなく、誘電損失係数の異なる混合物でも構わないが、少なくともその1成分は、0.01以上の誘電損失係数を有する必要がある。
【0024】
以上に示した無機材料の中でも、チタン酸アルミニウムを含むものを採用することが好ましい。
ここで、チタン酸アルミニウムとしては、各種の酸化度のものを採用できるが、TiAl2Oxで表したときに、x=5〜8であるものを採用することが好ましい。特に、x=5の場合、すなわち、TiAl2O5を主相として含むものであることが一層好ましい。
【0025】
また、チタン酸アルミニウムは、上述のアルミナおよびチタニアを原料とした電融合成、焼成等により得ることができる。
この際、得られたチタン酸アルミニウムは、原料として用いたアルミナ、チタニアとの混合物として用いてもよく、単離して純粋なチタン酸アルミニウムとして用いてもよい。混合物として用いる場合のチタン酸アルミニウムの含有量は、被加熱物の材質等に応じて適宜設定することができるが、TiAl2Ox(x=5〜8)が、5wt%以上含まれていることが好ましい。
このように高絶縁性のチタン酸アルミニウムを使用することで、高周波誘電による被加熱物の加熱が一層効率的に行える。
【0026】
本発明によれば、誘電損失係数が0.01以上の無機材料の皮膜が形成された高周波誘電加熱用金型である。したがって、皮膜に高周波電磁波を印加すると、皮膜を構成する無機材料が容易に自己発熱し、これと接触している金型が加熱される。この金型を用いることで、誘電損失係数が小さく、自己発熱性レベルの低いポリオレフィン系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリアミド、ポリスチレン、ポリカーボネート等の素材からなる被加熱物を効率よく加熱することができる。
【0027】
また、無機材料からなる皮膜であるから、繰り返し使用に伴う劣化が少なく、耐久性および耐熱性に優れ、高周波誘電加熱による融着加工を行う場合に好適である。
さらに、本発明の無機材料をセラミック等の絶縁性の高い材料で構成すれば、電圧印加時にスパークが発生しにくいので、融着加工を安定して行うことができる。
【0028】
本発明に係る融着加工製品の製造方法は、上述の高周波誘電加熱用金型を自己発熱させることで、高周波融着加工を行い、融着加工製品を製造することを特徴とする。
ここで、「金型を自己発熱させる」とは、金型に形成された無機材料からなる皮膜に電圧をかけて発熱させることを意味する。
【0029】
高周波融着加工機は、任意であり、例えば、周波数が1〜300MHzのものを採用できる。一般的には、18MHz、27MHz、40MHzの周波数のものがよく用いられる。また、同調機付整合回路を備えた機械を用いてもよい。
なお、高周波融着加工に際して、加熱器または冷却器を用いて、電極である金型を加熱または冷却してもよい。
【0030】
本発明によれば、上述の金型を用いて高周波融着加工を行う融着加工製品の製造方法であるから、誘電損失係数が小さく、自己発熱性レベルの低いポリオレフィン系樹脂からなるフィルム、シート等を効率的に融着加工することができる。
【0031】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の一形態を図面に基づいて説明する。
図1には、本発明の高周波誘電加熱用金型を用いた高周波誘電加熱融着加工装置が示されている。
この装置は、上定盤10、無機材料の皮膜が形成された金型30、下定盤40を備えている。金型30が上部電極と、下定盤40が下部電極とされ、これらの間に被加熱物であるポリオレフィン系樹脂からなる2枚のシート素材71、72を配置して融着を行う。
なお、必要に応じて、シート素材71、72の上下面に耐熱樹脂製フィルム81を配置して融着加工を行う。
【0032】
上定盤10は、金型30を支持固定する部分であり、融着加工装置本体の駆動機構により、下定盤40に対して接近、離間するようになっている。金型30は、外周端部に融着刃31を備え、上定盤10の下降とともに、この融着刃31の部分でシート素材71、72を押圧して2枚のシート素材71、72の熱融着を行う。
【0033】
融着刃31は、図2に示されるように、下定盤40と略水平に形成された融着部31Aと、この融着部31Aの外側、すなわち金型30の外周縁に沿って立ち上げて形成された断面略3角形状の溶断部31Bとを備えている。
また、融着刃31の表面には、誘電損失係数0.01以上の無機材料からなる被膜32が形成されている。なお、皮膜32は、プラズマ溶射法により形成したものである。
【0034】
ここで、皮膜32は、電気絶縁性の高いチタン酸アルミニウムを含む無機材料から構成されている。
また、皮膜32の熱伝導率は、4.19×10−1 〜 419W/m/Kであることが好ましく、さらに、その体積抵抗率は106Ω・cm以上であることが好ましい。
さらに、皮膜32の表面平滑性は、Ra<20μm、Rmax<100μmとされている。また、約1〜10秒で常温から250℃までの温度変化に耐え、2〜3mm幅で局所的に980kPa程度の圧力が作用しても、破損等が生じないものである。
【0035】
なお、融着刃31は、下部電極である下定盤40と最も接近することになるので、融着刃31および下定盤40の間隔の誤差は、±100μm以内に調整する必要がある。この調整は、上定盤10および下定盤40の相互の傾きを調製するとともに、金型30の上定盤10との接合面を研磨するなどして行う。
この間隔の誤差が、100μmを超えると、高周波誘電融着加工を行う際に、シート素材71、72の厚みの分布が増大し、印加電圧が局所的にシートの絶縁破壊電圧を上回り、スパークの発生を招く危険性が高くなる。
【0036】
なお、この金型30の融着刃31における先端部分の温度分布が、融着刃31の一部において±3℃を超える箇所が存在すると、その後の圧着時に、シート厚みの減少が不均一になり、印加電圧の過大部が生じ、シートの絶縁破壊電圧を超えてスパーク現象が発生しやすくなる。
また、融着加工製品の生産時に、融着刃31の先端部の温度が大きく変化すると、印加電圧の過大部が生じやすくなり、スパーク現象の発生を招くことがある。
【0037】
必要に応じて用いられる耐熱樹脂製フィルム81としては、ポリエチレンテレフタレート、ポリカーボネート、ポリエーテルスルホン、ポリイミド樹脂等からなるフィルムが好適であり、その厚みが10〜100μmのものを使用すればよい。
なお、このような耐熱樹脂製フィルム81を使用することにより、2枚のシート素材71、72の融着に際して、その平滑な表面がシート素材71、72の融着加工部表面に転写され、融着加工部の光沢を向上させることができる。
【0038】
このような、高周波誘電加熱融着加工装置によって、種々のポリオレフィン系樹脂素材の融着加工が可能となるが、加工可能な素材としては、ポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂、およびこれらを主成分とするポリオレフィン系樹脂等が挙げられる。また、その他誘電損失係数が小さく、自己発熱性の少ない、または全くない樹脂からなるフィルム、シート、不織布、織布(単層、多層を問わない)の加工に適している。
【0039】
次に、上述した高周波誘電加熱融着加工装置によるシート素材71、72の融着加工手順について説明する。
[1]シート素材71、72を重ね合わせ、さらに、2枚のシート素材71、72を耐熱樹脂製フィルム81で多い下定盤40上に設置する。
[2]この状態で、上定盤10を下降させ、金型30の融着刃31でシート素材71、72を押圧した状態で、高周波電界を印加し、皮膜32を自己発熱させ、これにより金型30を加熱する。この際の周波数は、1〜300MHzの範囲に設定できるが、通常は、18MHz、27MHz、40MHzのものがよく用いられる。
【0040】
[3]シート素材71、72への高周波電界の印加の開始時には、無負荷状態の電流値に設定し、次いで、シート素材71、72の絶縁破壊95%未満の印加電圧に設定して高周波誘電加熱を行う。印加開始時に無負荷状態の電流値とするのは、スパークに伴うシート素材71、72の絶縁破壊を回避するためである。
[4]また、印加電流は、シート素材71、72の種類、厚み、融着面積等により異なるが、通常、0.1〜0.8A、好ましくは、0.2〜0.5Aの範囲に設定する。
【0041】
[5]高周波電界の印加時間もシート素材71、72の種類、厚み、融着面積等により異なるが、通常、0.5〜10秒間、好ましくは1〜6秒間、さらに好ましくは1〜4秒間である。また、高周波誘電加熱のための通電時間は、0.5〜10秒間、好ましくは1〜5秒間、さらに好ましくは1〜3秒間である。
[6]高周波電界印加中および印加後の冷却時間には、金型30および下定盤40の間に圧力を加え、両電極間でのスパークの防止および被加熱物の融着加工部の変形を防止する。
この際の加圧力は、シート素材71、72の種類、厚み等によって異なるが、通常、49.0〜490kPa(0.5〜5kg/cm2をSI単位に換算した値)に設定する。
【0042】
以上のような、高周波誘電加熱融着加工装置により融着加工されたシート素材71、72は、融着加工部が高い機械的強度と透明性を有することから、種々の用途に広く用いることが可能であり、例えば、カードケース、ブックケース、ファイル、ネームホルダー等の文房具、玩具、目薬等の包装容器、雨具や袋物等の日用雑貨、各種包装資材として好適に利用できる。
【0043】
上述のような本実施形態によれば、次のような効果がある。
(1)誘電損失係数が0.01以上の無機材料の皮膜32が形成された高周波誘電加熱用金型30である。したがって、当該皮膜32に高周波電磁波を印可すると、皮膜32を構成している無機材料が容易に自己発熱し、これと接触している金型30が加熱される。この金型30を用いることで、誘電損失係数が小さく、自己発熱性レベルの低いポリオレフィン系樹脂からなるシート素材71、72を効率よく加熱することができる。
【0044】
(2)無機材料からなる皮膜32であるから、繰り返し使用に伴う劣化が少なく、耐久性および耐熱性に優れている。
(3)皮膜32が、電気絶縁性高いチタン酸アルミニウムを含む無機材料から構成されているから、電極間のスパーク等の発生を防止でき、シート素材71、72の融着加工を安定して行うことができる。
【0045】
(4)皮膜32の熱伝導率が、4.19×10−1 〜 419W/m/Kとされているから、熱融着後の下敷50の速やかな冷却により、次加工時のシート素材71、72の過熱を防止することができ、しかも、熱逃げに伴うシート素材71、72の加熱不良による融着強度低下を招くこともない。
(5)皮膜32の体積抵抗率が106Ω・cm以上とされているから、シート素材71、72を一層効率的に融着加工することができる。
【0046】
(6)皮膜32が、金型30の融着刃31の部分にのみ形成されているから、シート素材71、72への伝熱以外のロスをより少なくできるため、エネルギ効率の点で有効である。また、このように金型30の一部にだけ皮膜32を形成することで、皮膜形成作業も容易に行え、かつ、コストの低減につながる。
【0047】
なお、本発明は前記実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を達成できる範囲での変形、改良は、本発明に含まれるものである。例えば、前記実施形態では、皮膜の形成法にプラズマ溶射法を用いていたが、これに限られない。すなわち、無機材料からなる皮膜32を金型30の表面に形成できる任意の製造方法を使用することができ、例えば、その他の溶射法、無機材料を含む溶液へ金型をディッピングさせた後に乾燥固化する方法、無機材料を含む溶液を金型に塗装した後に乾燥固化する方法等を採用することができる。
【0048】
前記実施形態では、金型30の融着刃31の部分にのみ皮膜32を形成していたが、これに限られず、金型全面に形成してもよい。
また、金型30として、溶断部31Bを有するものを用いていたが、これに限られず、融着部のみを有する金型を用いてもよい。さらに、溶断部31Bとしては、融着部31Aと一体構造のものを採用していたが、これに限られず、別体の融着部と溶断部とを、ビス等により固定したものを用いることもできる。
そして、金型30には加熱器または冷却器は設けられていなかったが、これに限られず、加熱器または冷却器を設けて、金型自体を直接加熱または冷却する装置を採用することもできる。
【0049】
前記実施形態では、被加熱物であるシート素材71、72としてポリオレフィン系樹脂からなるシートを用いていたが、これに限られず、ポリエステル系樹脂、ポリアミド、ポリスチレン、ポリカーボネート等を用いることもできる。
その他、本発明を実施する際の具体的な構造および形状等は、本発明の目的を達成できる範囲内で他の構造等としてもよい。
【0050】
【実施例】
以下、実施例および比較例を挙げて本発明をより具体的に説明する。
前記実施形態における高周波融着加工装置において、溶射材の種類を変更することにより、種々の金型30を製造し、高周波ウェルダ試験によってシート素材71、72を融着加工して、図3に示される天チャック付袋2を製造した。
なお、天チャック付袋2は、開口部21に天チャック21Aを有するとともに、他の3方が封止部22とされているものである。天チャック付袋2の具体的な寸法は、150(両サイド)×80(底部)mmである。
【0051】
溶射材としては、粉末状のアルミナおよびチタニアを、重量比(wt%)でアルミナ/チタニア=60/40の配合で混合したもの(溶射材1)、粉末状のチタン酸バリウム(溶射材2)、溶射材1をさらに電融合成した後、平均粒径20μmに微粉砕して得たチタン酸アルミニウム(TiAl2O590wt%含有)(溶射材3)を採用した。
【0052】
金型の基材として真鍮を用い、前述の溶射材1〜3をそれぞれVSP法にてプラズマ溶射を行い皮膜を形成した。
金型としては、以下の金型を用いた。
(A)天チャック付袋2の封止部22に対応した大きさの略U字状の融着部31Aおよび溶断部31B(巻刃タイプ)を有し、融着部31Aの幅寸法2mmの金型30。
(B)180(長さ)×2(幅)(mm)のローレット刃付金型(天チャック21A取り付け用)。
【0053】
【表1】
【0054】
なお、表1中誘電損失係数は、横河ヒューレットパッカード社製の試験機器(本体:HP4284A 周波数1MHz、電極:HP16451B 印加電圧範囲・42V)を用い、JIS K6911に準拠して誘電率および誘電正接を測定し、これらの積により求めた。
【0055】
上述した高周波誘電加熱融着加工装置を用い、高周波ウェルダ試験を行って、融着加工性を評価し、その結果を表2に示した。
なお、高周波ウェルダ試験は、高周波ウェルダ装置として、クインライト電子精工(株)製LW4060−APH(高周波出力:3.6kW、発信周波数:41.1MHz)を使用し、前記金型A、Bを用い、上記天チャック付袋2を製造することで行った。この際、陽極電流値は0.2〜0.5Aの範囲に設定した。
【0056】
また、高周波ウェルダ試験におけるシート素材71、72としては、エチレン−ポリプロピレン共重合体(メルトインデックス7、融点137℃ 出光石油化学(株)製)をTダイ押出機にて幅400mm、厚み0.3mmのシートを作製し、これを200mm×300mmにカットしたものを使用した。
さらに、天チャック21Aとしては、ポリプロピレンからなるものを用いた。
【0057】
【表2】
【0058】
ここで、実施例1〜3では、封止部22について15mm幅に切り取り、両シートを引き裂くことで、融着強度を測定したものである。
一方、実施例4〜6では、天チャック21Aのシール部について、同じく15mm幅に切り取り、シートと天チャックとを引き裂くことで、融着強度を測定したものである。
【0059】
実施例1〜3によれば、封止部22におけるシート素材71、72の融着強度が32.3N/15mm(3.3kgf/15mmをSI単位に換算した値)以上であるので、良好な融着加工を行えることがわかる。
一方、実施例4〜6によれば、天チャック21Aにおける融着強度が、41.2N/15mm(4.2kgf/15mmをSI単位に換算した値)以上であるので、良好な融着加工を行えることがわかる。
【0060】
また、いずれの場合も5000ショット以上の使用に耐えることができるので、極めて耐久性の高いものとすることができることがわかる。
さらに、金型温度が100℃以下でも十分に融着加工を行うことができ、しかも、1ショットの時間を4秒以内とすることができるので、高周波誘電加熱融着加工を効率的に行えることがわかる。
【0061】
【発明の効果】
本発明によれば、誘電損失係数が0.01以上の無機材料の皮膜が形成された高周波誘電加熱用金型である。したがって、当該皮膜に高周波電磁波を印可すると、皮膜を構成している無機材料が容易に自己発熱し、これと接触している金型が加熱される。この金型を用いることで、誘電損失係数が小さく、自己発熱性レベルの低いポリオレフィン系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリアミド、ポリスチレン、ポリカーボネート等の素材からなる被加熱物を効率よく加熱することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施形態に係る高周波誘電加熱用金型を用いた高周波誘電加熱融着加工装置の構造を示す部分側面図である。
【図2】図1の実施形態における融着刃を示す部分拡大断面図である。
【図3】本発明に係る高周波誘電加熱用金型を用いて製造した天チャック付袋を示す正面図である。
【符号の説明】
30 金型(上部電極)
31 融着刃
31A 融着部
31B 溶断部
32 皮膜
40 下定盤(下部電極)
71、72 シート素材(被加熱物)
Claims (5)
- 高周波誘電加熱により被加熱物を加熱するための高周波誘電加熱用金型であって、
誘電損失係数が0.01以上の無機材料の皮膜を、金型表面の少なくとも一部に形成したことを特徴とする高周波誘電加熱用金型。 - 請求項1に記載の高周波誘電加熱用金型において、
前記無機材料は、酸化物系セラミック、複合酸化物系セラミック、窒化物系セラミック、炭化物系セラミック、チタン含有複合酸化物、および鉛含有複合酸化物のいずれか、またはこれらのうち少なくとも2種以上を混合した混合物を含むことを特徴とする高周波誘電加熱用金型。 - 請求項1に記載の高周波誘電加熱用金型において、
前記無機材料は、チタン酸アルミニウムを含むことを特徴とする高周波誘電加熱用金型。 - 請求項3に記載の高周波誘電加熱用金型において、
前記チタン酸アルミニウムは、TiAl2Oxで表したときに、x=5〜8であることを特徴とする高周波誘電加熱用金型。 - 請求項1から請求項4のいずれかに記載の高周波誘電加熱用金型を自己発熱させることで、被加熱物に高周波融着加工を行い、高周波融着加工製品を製造することを特徴とする高周波融着加工製品の製造方法。
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