JP2004257986A - 試料検索方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】未知の高分子試料に一致する割合が高い既知の高分子を容易に絞り込みできる試料検索方法を提供する。
【解決手段】未知の高分子試料を熱分解しガスクロマトグラフ装置を用いて分離する。分離された各熱分解成分から生成した分子イオン及びフラグメントイオンのトータルイオン強度を算出し、未知試料のクロマトグラムを作成する。該トータルイオン強度に含まれる該検出データを同一質量のイオン毎に合算し質量順に配列して合算マススペクトルを作成する。該合算マススペクトルと、第1のデータベースとを比較し、未知試料の合算マススペクトルに一致する割合の高い既知の高分子を選択する。選択された既知の高分子のクロマトグラムを、第2のデータベースから抽出し、抽出されたクロマトグラムと該未知試料のクロマトグラムとを比較して、未知試料に一致する割合の高い既知の高分子を絞り込む。
【選択図】 図1
【解決手段】未知の高分子試料を熱分解しガスクロマトグラフ装置を用いて分離する。分離された各熱分解成分から生成した分子イオン及びフラグメントイオンのトータルイオン強度を算出し、未知試料のクロマトグラムを作成する。該トータルイオン強度に含まれる該検出データを同一質量のイオン毎に合算し質量順に配列して合算マススペクトルを作成する。該合算マススペクトルと、第1のデータベースとを比較し、未知試料の合算マススペクトルに一致する割合の高い既知の高分子を選択する。選択された既知の高分子のクロマトグラムを、第2のデータベースから抽出し、抽出されたクロマトグラムと該未知試料のクロマトグラムとを比較して、未知試料に一致する割合の高い既知の高分子を絞り込む。
【選択図】 図1
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、未知の高分子試料を、既知の高分子試料のデータベースから検索する試料検索方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来、未知の高分子試料を、既知の高分子のデータベースから検索する試料検索方法として、該未知の高分子試料の合算マススペクトルと既知の高分子の合算マススペクトルにより構築されたデータベースとを比較し、該未知の高分子試料の合算マススペクトルに一致する割合の高い既知の高分子の合算マススペクトルを検索する方法が知られている(例えば特許文献1参照)。
【0003】
前記方法は、本出願人により提案されたものであり、具体的には次のようにして行われる。前記方法では、まず、前記未知の高分子試料を熱分解炉に導入して瞬間的に熱分解するか、または連続的に昇温加熱して熱分解することにより得られる熱分解生成物の混合物をキャピラリーカラムで各熱分解生成物に分離し、分離された熱分解生成物を磁場型質量分析計、四重極型質量分析計等の質量分析計で検出する。前記質量分析計では、前記キャピラリーカラムで分離されたガス状の熱分解生成物に対し、所定時間毎に、例えば0.008分毎に電子を照射して分子イオンまたはフラグメントイオンを生成させ、所定範囲の質量/電荷(m/z)比に対応する分子イオン及びフラグメントイオンを連続的に走査する。この結果、前記質量分析計では、前記所定時間毎に、前記所定範囲の質量/電荷(m/z)比に対応する各イオン強度が1組の検出データとして得られる。
【0004】
次に、前記所定時間毎の走査で得られる前記イオン強度を1組として、該1組毎に加算してトータルイオン強度とし、前記トータルイオン強度を検出順に配列して各トータルイオン強度の頂点を結ぶと、保持時間に対応して検出されたイオンの強度を示す熱分解ガスクロマトグラムが得られる。そこで、次に、前記熱分解ガスクロマトグラムに含まれる全てのピークまたは一部のピークについて、前記各イオン強度を前記各分子イオン及びフラグメントイオンの質量/電荷(m/z)比毎に合計し、これを質量順に配列することにより、合算マススペクトルを作成する。
【0005】
そして、前記合算マススペクトルを、既知の高分子について同様にして作成された合算マススペクトルを集成して構築されたデータベースと比較することにより、高分子試料の同定を行うものである。
【0006】
前記合算マススペクトルは、前記高分子試料を熱分解して得られる熱分解生成物の混合物を、キャピラリーカラムにかけることなく直ちに質量分析計にかけることにより検出されたマススペクトルと考えることができる。従って、前記公報記載の方法によれば、1つの前記未知の高分子試料に対して合算マススペクトルが1つだけ得られるので、前記データベースから、前記未知の高分子試料と一致する割合の高い既知の高分子試料を短時間で容易に検索することができる。
【0007】
しかしながら、例えば80%以上の割合で前記未知の高分子試料と一致する複数の既知の高分子が、前記データベースから得られた場合、該未知の高分子試料を同定するには高度の熟練と経験とが必要とされる。
【0008】
【特許文献1】
特開2000−35422号公報
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、かかる不都合を解消して、未知の高分子試料の合算マススペクトルと既知の高分子の合算マススペクトルにより構築されたデータベースとを比較して、該未知の高分子試料に一致する割合の高い複数の既知の高分子が得られたときに、該未知の高分子試料に一致する割合がさらに高い既知の高分子を容易に絞り込むことができる試料検索方法を提供することを目的とする。
【0010】
【課題を解決するための手段】
かかる目的を達成するために、本発明の試料検索方法は、未知の高分子試料を熱分解して得られる個々の熱分解成分をガスクロマトグラフ装置を用いて分離する工程と、分離された各熱分解成分を所定時間毎にイオン化して生成した分子イオン及びフラグメントイオンの強度を検出して該高分子試料の検出データとすると共に、該所定時間毎の検出で得られた該高分子試料の検出データを1組として該検出データを1組毎に加算してトータルイオン強度とし、該トータルイオン強度を検出順に配列して構成されるヒストグラムの各頂点を結ぶことにより該高分子試料のクロマトグラムを作成する工程と、該クロマトグラムの少なくとも一部を構成する各ピークに対応する該トータルイオン強度に含まれる該検出データを同一質量のイオン毎に合算して該分子イオン及びフラグメントイオンの強度の合算データとし、該合算データが該分子イオン及びフラグメントイオンの質量順に配列された合算マススペクトルを作成する工程と、該合算マススペクトルと、複数の既知の高分子の合算マススペクトルにより構築された第1のデータベースとを比較し、該未知の高分子試料の合算マススペクトルに一致する割合の高い既知の高分子の合算マススペクトルを検索し、該未知の高分子試料に一致する割合の高い複数の既知の高分子を選択する工程と、選択された既知の高分子のクロマトグラムを、複数の既知の高分子のクロマトグラムにより構築された第2のデータベースから抽出し、抽出されたクロマトグラムと該未知の高分子試料のクロマトグラムとを比較して、該未知の高分子試料に一致する割合の高い既知の高分子を絞り込む工程とを備えることを特徴とする。
【0011】
本発明の試料検索方法では、まず、未知の高分子試料を熱分解して得られる個々の熱分解成分をガスクロマトグラフ装置を用いて分離し、分離された各熱分解成分について特開2000−35422号公報記載の方法により、前記クロマトグラムの全てのピークに対応するトータルイオン強度から合算マススペクトルを作成する。
【0012】
次に、前記未知の高分子試料の合算マススペクトルと、複数の既知の高分子の合算マススペクトルにより構築された第1のデータベースとを比較し、該未知の高分子試料の合算マススペクトルに一致する割合の高い既知の高分子の合算マススペクトルを検索する。前記第1のデータベースの既知の高分子の合算マススペクトルは、例えば、前記特開2000−35422号公報記載の方法により作成されている。
【0013】
このようにすると、前記未知の高分子試料の合算マススペクトルに一致する割合の高い複数の既知の高分子の合算マススペクトルが選択される。しかし、この段階では、前記未知の高分子試料が選択された複数の既知の高分子のどれに当たるかを同定するには、高度の熟練と経験とが必要とされる。
【0014】
そこで、本発明の試料検索方法では、次に、前記選択された複数の既知の高分子のクロマトグラムを、複数の既知の高分子のクロマトグラムにより構築された第2のデータベースから抽出する。前記第2のデータベースの既知の高分子のクロマトグラムは、前記第1のデータベースの合算マススペクトルを作成する元となったものである。
【0015】
そして、次に、抽出された既知の高分子のクロマトグラムと、前記未知の高分子試料のクロマトグラムとを視覚的に比較することにより、前記選択された複数の既知の高分子の中から、該未知の高分子試料に一致する割合がさらに高い既知の高分子を絞り込む。
【0016】
前記未知の高分子試料のクロマトグラムは、前記第2のデータベースと直接比較すると、検索に長時間を要する。しかし、本発明の試料検索方法では、該未知の高分子試料のクロマトグラムから、一旦、前記合算マススペクトルを作成し、該未知の高分子試料の合算マススペクトルに一致する割合が高い既知の高分子の合算マススペクトルを検索している。そして、前記検索により選択された既知の高分子について、そのクロマトグラムと前記未知の高分子試料のクロマトグラムとを比較するので、クロマトグラム自体の検索でありながら、短時間で結果を得ることができる。
【0017】
また、前記選択された既知の高分子のクロマトグラムと前記未知の高分子試料のクロマトグラムとの比較は視覚的に行うので、両者の異同を目視により確認することができ、該未知の高分子試料に一致する割合がさらに高い既知の高分子を絞り込みを、初心者でも容易に行うことができる。
【0018】
本発明の試料検索方法において、前記熱分解成分は、前記未知の高分子試料を熱分解炉中で瞬時に熱分解するか、または該未知の高分子試料を連続的に昇温加熱して熱分解することにより得られる。尚、前記未知の高分子試料を連続的に昇温加熱すると、昇温過程の初期に低分子量成分が気化するが、本明細書では前記気化した成分も前記熱分解成分に含まれる。
【0019】
また、前記合算マススペクトルは、前記クロマトグラム全体の各ピークに対応する前記トータルイオン強度から作成される全合算マススペクトルであってもよく、前記クロマトグラムの一部を構成する各ピークに対応する該トータルイオン強度から作成される部分合算マススペクトルであってもよい。この場合、前記第1のデータベースは、前記全合算マススペクトルと、前記部分合算マススペクトルとによって構築されている。
【0020】
前記部分合算マススペクトルによれば、前記未知の高分子試料のクロマトグラムの内、特徴的なピークに対応するものとすることにより、前記絞り込みをさらに容易に行うことができる。
【0021】
【発明の実施の形態】
次に、添付の図面を参照しながら本発明の実施の形態についてさらに詳しく説明する。図1は本発明の試料検索方法に使用する未知試料検索装置の一実施形態を示すシステム構成図であり、図2は図1示の装置により得られた高分子試料の熱分解ガスクロマトグラムの一例であり、図3は図2示のクロマトグラムの全てのピークに対応する合算マススペクトル、図4は図3示の合算マススペクトルに一致する割合の高い既知の高分子の合算マススペクトル、図5は図4示の高分子と同一の既知の高分子のクロマトグラムである。また、図6は図1示の装置により得られた高分子試料の熱分解ガスクロマトグラムの他の例であり、図7は図6示のクロマトグラムの一部のピークに対応する合算マススペクトル、図8は図7示の合算マススペクトルに一致する割合の高い既知の高分子の合算マススペクトル、図9は図8示の高分子と同一の既知の高分子のクロマトグラムである。
【0022】
本実施形態の未知試料検索装置は、図1示のように、熱分解炉1を備える熱分解装置2と、注入口3を介して熱分解装置2に接続されたキャピラリーカラム4と、キャピラリーカラム4に接続された質量分析計5と、質量分析計5で得られた検出データが入力可能なパーソナルコンピュータ(以下、パソコンと略記する)6とからなる。
【0023】
熱分解装置2は、試料導入部7から試料カップ8に収容された高分子試料を、予め高温に加熱された熱分解炉1内に重力により導入し、該高分子試料を瞬間的に熱分解して複数のガス状の有機化合物からなる熱分解生成物の混合物を生成させる。該熱分解生成物は、図示しない導入口から導入されるキャリヤガスにより、注入口3を介してキャピラリーカラム4に案内される。
【0024】
キャピラリーカラム4は、恒温槽9内に収容されており、恒温槽9内の温度を低温から高温まで昇温させることにより前記混合物を概ね低沸点の化合物から高沸点の化合物の順に、各熱分解生成物に分離して、質量分析計5に案内する。キャピラリーカラム4としては、内径0.25mm、長さ30m程度の溶融シリカからなる溶融シリカキャピラリーカラムまたはステンレス等の金属からなる金属キャピラリーカラムを用いることができる。
【0025】
質量分析計5は、キャピラリーカラム4から導入されたガス状の有機化合物である熱分解生成物に所定時間毎に、例えば0.008分毎に電子を照射して分子イオンまたはフラグメントイオンを生成させる。質量分析計5は四重極型質量分析計であり、4本の電極に高周波電圧を印加することにより電場を形成し、前記分子イオンまたはフラグメントイオンが4本の電極に囲まれた電場に入ると該イオンと電場との相互作用により、特定の質量/電荷(m/z)比を持つイオンだけが図示しない検出器に到達する。前記イオンは、前記検出器に到達すると放電して電流を生じるので、該電流を測定することにより前記イオンの質量毎にその相対的強度を示す検出データが得られる。そこで、質量分析計5は、所定範囲の質量/電荷比に対応する分子イオン及びフラグメントイオンを連続的に走査し、前記所定時間毎に、前記所定範囲の質量/電荷(m/z)比に対応する各イオン強度が1組の検出データとして得られる。
【0026】
次に、前記検出データは、電気信号の形でパソコン6に入力され、パソコン6により処理される。パソコン6は、前記所定時間毎の走査で得られる前記イオン強度を1組として、該1組毎に加算してトータルイオン強度とし、前記トータルイオン強度を検出順に配列して各トータルイオン強度の頂点を結ぶことにより、保持時間に対応して検出されたイオンの強度を示すクロマトグラムを作成する。次に、パソコン6は、前記クロマトグラムに含まれる全てのピークまたは一部のピークについて、前記各イオン強度を前記各分子イオン及びフラグメントイオンの質量/電荷(m/z)比毎に合計し、これを質量順に配列することにより、合算マススペクトルを作成する。
【0027】
尚、図1に示す装置では質量分析計5として四重極型質量分析計を用いているが、磁場型質量分析計を用いることもできる。
【0028】
また、図1に示す装置では、熱分解装置2で前記高分子試料を瞬間的に熱分解する様にしているが、熱分解装置2は試料導入部7から試料カップ8により導入される高分子試料を、熱分解炉1内で連続的に昇温加熱して、該高分子試料を熱分解してもよい。この場合には、前記キャピラリーカラム4に代えて、内径0.15mm、長さ2.5m程度の不活性チューブを用いる。
【0029】
次に、本実施形態の試料検索方法について説明する。
【0030】
本実施形態の第1の態様では、まず、未知の高分子試料を試料カップ8に収容し、熱分解装置2の試料導入部7から、予め高温に加熱された熱分解炉1内に導入し、該高分子試料を瞬間的に熱分解して複数のガス状の有機化合物からなる熱分解生成物の混合物を生成させる。そして、前記熱分解生成物が、キャピラリーカラム4を介して質量分析計5に案内されることにより、検出データが得られる。
【0031】
前記検出データは、パソコン6で処理され、熱分解クロマトグラム(パイログラム)と、合算マススペクトルとが作成される。前記未知の高分子試料のパイログラムを図2に、合算マススペクトルを図3に示す。尚、図3に示す合算マススペクトルは、図2に示すパイログラムの全てのピークに対応するものであるが、一部のピークのみに対応するものであってもよい。
【0032】
次に、パソコン6は、図3に示す合算マススペクトルと、既知の高分子の合算マススペクトルから構築されている第1のデータベースとを比較し、図3に示す合算マススペクトルと一致する割合の高い既知の高分子の合算マススペクトルを検索する。前記第1のデータベースは、例えば、ハードディスク等の記憶手段に予め記憶されていてもよく、CD−ROM等の外部記憶手段に記憶されていてもよい。
【0033】
前記検索は、前記合算マススペクトルの電子データと、前記第1のデータベースを構築する各高分子の合算マススペクトルの電子データとを比較することにより行うことができ、極めて短時間で結果を得ることができる。前記検索結果は、図3に示す合算マススペクトルと一致する割合の高い順に、既知の高分子の合算マススペクトルが、該高分子の物質名、一致する割合と共に、パソコン6のディスプレイに表示される。前記既知の高分子の合算マススペクトルを図4に示す。
【0034】
本態様において、図4(a)はランク1の高分子であり、物質名はポリスチレン、一致する割合は99%である。図4(b)はランク2の高分子であり、物質名はアクリロニトリル−ブタジエン−スチレンコポリマー、一致する割合は99%である。図4(c)はランク3の高分子であり、物質名はアクリロニトリルアクリレートスチレンコポリマー、一致する割合は99%である。
【0035】
上述のように、図4(a)〜4(c)の高分子はいずれもスチレン系ポリマーであり、前記未知の高分子試料がスチレン系ポリマーであることは判るが、図4(a)〜4(c)の高分子のいずれであるかは判然としない。
【0036】
そこで、次に、図4(a)〜4(c)の合算マススペクトル作成の元になったパイログラムを、既知の高分子のパイログラムから構築されている第2のデータベースから抽出し、図1に示すパイログラムと、同時にパソコンの画面に表示する。前記第2のデータベースは、例えば、ハードディスク等の記憶手段に予め記憶されていてもよく、CD−ROM等の外部記憶手段に記憶されていてもよい。
【0037】
図4(a)〜4(c)の合算マススペクトル作成の元になったパイログラムを図5(a)〜5(c)に示す。ここで、図5(a)はポリスチレンのパイログラム、図5(b)はアクリロニトリル−ブタジエン−スチレンコポリマーのパイログラム、図5(c)はアクリロニトリルアクリレートスチレンコポリマーのパイログラムである。
【0038】
次に、図1に示すパイログラムと、図5(a)〜5(c)のパイログラムとを、画面上で目視により、あるいはパソコン6の機能を用いて比較する。この結果、図5(a)のポリスチレンと、図5(b)のアクリロニトリル−ブタジエン−スチレンコポリマーとが、図1の未知の高分子試料とよく一致しており、図5(c)のアクリロニトリルアクリレートスチレンコポリマーは図1の未知の高分子試料と一致しないことが判る。
【0039】
従って、前記未知の高分子試料の候補を、ランク1〜3の高分子から、ランク1〜2の高分子に、容易に絞り込むことができる。
【0040】
次に、本実施形態の第2の態様について説明する。本態様では、まず、未知の高分子試料を試料カップ8に収容し、熱分解装置2の試料導入部7から熱分解炉1内に導入して、熱分解炉1内で連続的に昇温加熱して複数のガス状の有機化合物からなる熱分解生成物の混合物を生成させる。そして、前記熱分解生成物が、キャピラリーカラム4に代わる不活性チューブを介して質量分析計5に案内されることにより、検出データが得られる。
【0041】
前記検出データは、パソコン6で処理され、熱分解クロマトグラム(サーモグラム)と、合算マススペクトルとが作成される。前記未知の高分子試料のサーモグラムを図6に、合算マススペクトルを図7に示す。尚、図7に示す合算マススペクトルは、図6に示すサーモグラムの15〜20分の間のピークに対応するものであるが、全てのピークに対応するものであってもよい。
【0042】
次に、パソコン6は、図7に示す合算マススペクトルと、既知の高分子の合算マススペクトルから構築されている第1のデータベースとを比較し、図7に示す合算マススペクトルと一致する割合の高い既知の高分子の合算マススペクトルを検索する。
【0043】
前記検索結果は、図7に示す合算マススペクトルと一致する割合の高い順に、既知の高分子の合算マススペクトルが、該高分子の物質名、一致する割合と共に、パソコン6のディスプレイに表示される。前記既知の高分子の合算マススペクトルを図8に示す。
【0044】
本態様において、図8(a)はランク1の高分子であり、物質名はスチレン−エチレン−ブタジエン−スチレンコポリマー、一致する割合は94%である。図8(b)はランク2の高分子であり、物質名はメチルメタクリレート−ブタジエン−スチレンコポリマー、一致する割合は87%である。図8(c)はランク4の高分子であり、物質名はポリスチレン、一致する割合は84%である。
【0045】
上述のように、図8(a)〜8(c)の高分子はいずれもスチレン系ポリマーであり、前記未知の高分子試料がスチレン系ポリマーであることは判るが、図8(a)〜8(c)の高分子のいずれであるかは判然としない。
【0046】
そこで、次に、図8(a)〜8(c)の合算マススペクトル作成の元になったサーモグラムを、既知の高分子のサーモグラムから構築されている第2のデータベースから抽出し、図6に示すサーモグラムと同時にパソコンの画面に表示する。
【0047】
図8(a)〜8(c)の合算マススペクトル作成の元になったサーモグラムを図9(a)〜9(c)に示す。ここで、図9(a)はスチレン−エチレン−ブタジエン−スチレンコポリマーのサーモグラム、図9(b)はメチルメタクリレート−ブタジエン−スチレンコポリマーのサーモグラム、図9(c)はポリスチレンのサーモグラムである。
【0048】
次に、図6に示すサーモグラムと、図9(a)〜9(c)のパイログラムとを、画面上で目視により、あるいはパソコン6の機能を用いて比較する。この結果、図9(a)のスチレン−エチレン−ブタジエン−スチレンコポリマーと、図9(c)のポリスチレンとが、図1の未知の高分子試料とよく一致しており、図9(b)のアクリロニトリルアクリレートスチレンコポリマーは図6の未知の高分子試料と一致しないことが判る。
【0049】
従って、前記未知の高分子試料の候補を、ランク1,2,4の高分子から、ランク1またはランク4の高分子に、容易に絞り込むことができる。
【0050】
本実施形態では、未知の高分子試料を熱分解炉中で瞬時に熱分解する場合(第1の態様)と、未知の高分子試料を連続的に昇温加熱して熱分解する場合(第2の態様)とについて説明している。しかし、同一の試料について、第1の態様の方法と、第2の態様の方法との両方を適用してもよく、このようにすることにより、さらに未知の高分子試料に一致する割合の高い既知の高分子を絞り込むことができる。
【0051】
例えば、前記第1の態様と、第2の態様とにおいて、同一の未知の高分子試料を用いたとすると、第1の態様で絞り込まれた高分子はポリスチレンとアクリロニトリル−ブタジエン−スチレンコポリマーとであり、第2の態様で絞り込まれた高分子はスチレン−エチレン−ブタジエン−スチレンコポリマーとポリスチレンとである。従って、前記未知の高分子試料に一致する割合の高い既知の高分子を、両方の態様で絞り込まれているポリスチレンに、さらに絞り込むことができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の試料検索方法に使用する未知試料検索装置の一実施形態を示すシステム構成図。
【図2】高分子試料の熱分解ガスクロマトグラムの一例。
【図3】
図2示のクロマトグラムの全てのピークに対応する合算マススペクトル。
【図4】図3示の合算マススペクトルに一致する割合の高い既知の高分子の合算マススペクトル。
【図5】図4示の高分子と同一の既知の高分子のクロマトグラム。
【図6】高分子試料の熱分解ガスクロマトグラムの他の例。
【図7】図6示のクロマトグラムの一部のピークに対応する合算マススペクトル。
【図8】図7示の合算マススペクトルに一致する割合の高い既知の高分子の合算マススペクトル。
【図9】図8示の高分子と同一の既知の高分子のクロマトグラム。
【符号の説明】
1…熱分解炉、 2…ガスクロマトグラフ装置、 5…検出器、 6…パーソナルコンピューター。
【発明の属する技術分野】
本発明は、未知の高分子試料を、既知の高分子試料のデータベースから検索する試料検索方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来、未知の高分子試料を、既知の高分子のデータベースから検索する試料検索方法として、該未知の高分子試料の合算マススペクトルと既知の高分子の合算マススペクトルにより構築されたデータベースとを比較し、該未知の高分子試料の合算マススペクトルに一致する割合の高い既知の高分子の合算マススペクトルを検索する方法が知られている(例えば特許文献1参照)。
【0003】
前記方法は、本出願人により提案されたものであり、具体的には次のようにして行われる。前記方法では、まず、前記未知の高分子試料を熱分解炉に導入して瞬間的に熱分解するか、または連続的に昇温加熱して熱分解することにより得られる熱分解生成物の混合物をキャピラリーカラムで各熱分解生成物に分離し、分離された熱分解生成物を磁場型質量分析計、四重極型質量分析計等の質量分析計で検出する。前記質量分析計では、前記キャピラリーカラムで分離されたガス状の熱分解生成物に対し、所定時間毎に、例えば0.008分毎に電子を照射して分子イオンまたはフラグメントイオンを生成させ、所定範囲の質量/電荷(m/z)比に対応する分子イオン及びフラグメントイオンを連続的に走査する。この結果、前記質量分析計では、前記所定時間毎に、前記所定範囲の質量/電荷(m/z)比に対応する各イオン強度が1組の検出データとして得られる。
【0004】
次に、前記所定時間毎の走査で得られる前記イオン強度を1組として、該1組毎に加算してトータルイオン強度とし、前記トータルイオン強度を検出順に配列して各トータルイオン強度の頂点を結ぶと、保持時間に対応して検出されたイオンの強度を示す熱分解ガスクロマトグラムが得られる。そこで、次に、前記熱分解ガスクロマトグラムに含まれる全てのピークまたは一部のピークについて、前記各イオン強度を前記各分子イオン及びフラグメントイオンの質量/電荷(m/z)比毎に合計し、これを質量順に配列することにより、合算マススペクトルを作成する。
【0005】
そして、前記合算マススペクトルを、既知の高分子について同様にして作成された合算マススペクトルを集成して構築されたデータベースと比較することにより、高分子試料の同定を行うものである。
【0006】
前記合算マススペクトルは、前記高分子試料を熱分解して得られる熱分解生成物の混合物を、キャピラリーカラムにかけることなく直ちに質量分析計にかけることにより検出されたマススペクトルと考えることができる。従って、前記公報記載の方法によれば、1つの前記未知の高分子試料に対して合算マススペクトルが1つだけ得られるので、前記データベースから、前記未知の高分子試料と一致する割合の高い既知の高分子試料を短時間で容易に検索することができる。
【0007】
しかしながら、例えば80%以上の割合で前記未知の高分子試料と一致する複数の既知の高分子が、前記データベースから得られた場合、該未知の高分子試料を同定するには高度の熟練と経験とが必要とされる。
【0008】
【特許文献1】
特開2000−35422号公報
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、かかる不都合を解消して、未知の高分子試料の合算マススペクトルと既知の高分子の合算マススペクトルにより構築されたデータベースとを比較して、該未知の高分子試料に一致する割合の高い複数の既知の高分子が得られたときに、該未知の高分子試料に一致する割合がさらに高い既知の高分子を容易に絞り込むことができる試料検索方法を提供することを目的とする。
【0010】
【課題を解決するための手段】
かかる目的を達成するために、本発明の試料検索方法は、未知の高分子試料を熱分解して得られる個々の熱分解成分をガスクロマトグラフ装置を用いて分離する工程と、分離された各熱分解成分を所定時間毎にイオン化して生成した分子イオン及びフラグメントイオンの強度を検出して該高分子試料の検出データとすると共に、該所定時間毎の検出で得られた該高分子試料の検出データを1組として該検出データを1組毎に加算してトータルイオン強度とし、該トータルイオン強度を検出順に配列して構成されるヒストグラムの各頂点を結ぶことにより該高分子試料のクロマトグラムを作成する工程と、該クロマトグラムの少なくとも一部を構成する各ピークに対応する該トータルイオン強度に含まれる該検出データを同一質量のイオン毎に合算して該分子イオン及びフラグメントイオンの強度の合算データとし、該合算データが該分子イオン及びフラグメントイオンの質量順に配列された合算マススペクトルを作成する工程と、該合算マススペクトルと、複数の既知の高分子の合算マススペクトルにより構築された第1のデータベースとを比較し、該未知の高分子試料の合算マススペクトルに一致する割合の高い既知の高分子の合算マススペクトルを検索し、該未知の高分子試料に一致する割合の高い複数の既知の高分子を選択する工程と、選択された既知の高分子のクロマトグラムを、複数の既知の高分子のクロマトグラムにより構築された第2のデータベースから抽出し、抽出されたクロマトグラムと該未知の高分子試料のクロマトグラムとを比較して、該未知の高分子試料に一致する割合の高い既知の高分子を絞り込む工程とを備えることを特徴とする。
【0011】
本発明の試料検索方法では、まず、未知の高分子試料を熱分解して得られる個々の熱分解成分をガスクロマトグラフ装置を用いて分離し、分離された各熱分解成分について特開2000−35422号公報記載の方法により、前記クロマトグラムの全てのピークに対応するトータルイオン強度から合算マススペクトルを作成する。
【0012】
次に、前記未知の高分子試料の合算マススペクトルと、複数の既知の高分子の合算マススペクトルにより構築された第1のデータベースとを比較し、該未知の高分子試料の合算マススペクトルに一致する割合の高い既知の高分子の合算マススペクトルを検索する。前記第1のデータベースの既知の高分子の合算マススペクトルは、例えば、前記特開2000−35422号公報記載の方法により作成されている。
【0013】
このようにすると、前記未知の高分子試料の合算マススペクトルに一致する割合の高い複数の既知の高分子の合算マススペクトルが選択される。しかし、この段階では、前記未知の高分子試料が選択された複数の既知の高分子のどれに当たるかを同定するには、高度の熟練と経験とが必要とされる。
【0014】
そこで、本発明の試料検索方法では、次に、前記選択された複数の既知の高分子のクロマトグラムを、複数の既知の高分子のクロマトグラムにより構築された第2のデータベースから抽出する。前記第2のデータベースの既知の高分子のクロマトグラムは、前記第1のデータベースの合算マススペクトルを作成する元となったものである。
【0015】
そして、次に、抽出された既知の高分子のクロマトグラムと、前記未知の高分子試料のクロマトグラムとを視覚的に比較することにより、前記選択された複数の既知の高分子の中から、該未知の高分子試料に一致する割合がさらに高い既知の高分子を絞り込む。
【0016】
前記未知の高分子試料のクロマトグラムは、前記第2のデータベースと直接比較すると、検索に長時間を要する。しかし、本発明の試料検索方法では、該未知の高分子試料のクロマトグラムから、一旦、前記合算マススペクトルを作成し、該未知の高分子試料の合算マススペクトルに一致する割合が高い既知の高分子の合算マススペクトルを検索している。そして、前記検索により選択された既知の高分子について、そのクロマトグラムと前記未知の高分子試料のクロマトグラムとを比較するので、クロマトグラム自体の検索でありながら、短時間で結果を得ることができる。
【0017】
また、前記選択された既知の高分子のクロマトグラムと前記未知の高分子試料のクロマトグラムとの比較は視覚的に行うので、両者の異同を目視により確認することができ、該未知の高分子試料に一致する割合がさらに高い既知の高分子を絞り込みを、初心者でも容易に行うことができる。
【0018】
本発明の試料検索方法において、前記熱分解成分は、前記未知の高分子試料を熱分解炉中で瞬時に熱分解するか、または該未知の高分子試料を連続的に昇温加熱して熱分解することにより得られる。尚、前記未知の高分子試料を連続的に昇温加熱すると、昇温過程の初期に低分子量成分が気化するが、本明細書では前記気化した成分も前記熱分解成分に含まれる。
【0019】
また、前記合算マススペクトルは、前記クロマトグラム全体の各ピークに対応する前記トータルイオン強度から作成される全合算マススペクトルであってもよく、前記クロマトグラムの一部を構成する各ピークに対応する該トータルイオン強度から作成される部分合算マススペクトルであってもよい。この場合、前記第1のデータベースは、前記全合算マススペクトルと、前記部分合算マススペクトルとによって構築されている。
【0020】
前記部分合算マススペクトルによれば、前記未知の高分子試料のクロマトグラムの内、特徴的なピークに対応するものとすることにより、前記絞り込みをさらに容易に行うことができる。
【0021】
【発明の実施の形態】
次に、添付の図面を参照しながら本発明の実施の形態についてさらに詳しく説明する。図1は本発明の試料検索方法に使用する未知試料検索装置の一実施形態を示すシステム構成図であり、図2は図1示の装置により得られた高分子試料の熱分解ガスクロマトグラムの一例であり、図3は図2示のクロマトグラムの全てのピークに対応する合算マススペクトル、図4は図3示の合算マススペクトルに一致する割合の高い既知の高分子の合算マススペクトル、図5は図4示の高分子と同一の既知の高分子のクロマトグラムである。また、図6は図1示の装置により得られた高分子試料の熱分解ガスクロマトグラムの他の例であり、図7は図6示のクロマトグラムの一部のピークに対応する合算マススペクトル、図8は図7示の合算マススペクトルに一致する割合の高い既知の高分子の合算マススペクトル、図9は図8示の高分子と同一の既知の高分子のクロマトグラムである。
【0022】
本実施形態の未知試料検索装置は、図1示のように、熱分解炉1を備える熱分解装置2と、注入口3を介して熱分解装置2に接続されたキャピラリーカラム4と、キャピラリーカラム4に接続された質量分析計5と、質量分析計5で得られた検出データが入力可能なパーソナルコンピュータ(以下、パソコンと略記する)6とからなる。
【0023】
熱分解装置2は、試料導入部7から試料カップ8に収容された高分子試料を、予め高温に加熱された熱分解炉1内に重力により導入し、該高分子試料を瞬間的に熱分解して複数のガス状の有機化合物からなる熱分解生成物の混合物を生成させる。該熱分解生成物は、図示しない導入口から導入されるキャリヤガスにより、注入口3を介してキャピラリーカラム4に案内される。
【0024】
キャピラリーカラム4は、恒温槽9内に収容されており、恒温槽9内の温度を低温から高温まで昇温させることにより前記混合物を概ね低沸点の化合物から高沸点の化合物の順に、各熱分解生成物に分離して、質量分析計5に案内する。キャピラリーカラム4としては、内径0.25mm、長さ30m程度の溶融シリカからなる溶融シリカキャピラリーカラムまたはステンレス等の金属からなる金属キャピラリーカラムを用いることができる。
【0025】
質量分析計5は、キャピラリーカラム4から導入されたガス状の有機化合物である熱分解生成物に所定時間毎に、例えば0.008分毎に電子を照射して分子イオンまたはフラグメントイオンを生成させる。質量分析計5は四重極型質量分析計であり、4本の電極に高周波電圧を印加することにより電場を形成し、前記分子イオンまたはフラグメントイオンが4本の電極に囲まれた電場に入ると該イオンと電場との相互作用により、特定の質量/電荷(m/z)比を持つイオンだけが図示しない検出器に到達する。前記イオンは、前記検出器に到達すると放電して電流を生じるので、該電流を測定することにより前記イオンの質量毎にその相対的強度を示す検出データが得られる。そこで、質量分析計5は、所定範囲の質量/電荷比に対応する分子イオン及びフラグメントイオンを連続的に走査し、前記所定時間毎に、前記所定範囲の質量/電荷(m/z)比に対応する各イオン強度が1組の検出データとして得られる。
【0026】
次に、前記検出データは、電気信号の形でパソコン6に入力され、パソコン6により処理される。パソコン6は、前記所定時間毎の走査で得られる前記イオン強度を1組として、該1組毎に加算してトータルイオン強度とし、前記トータルイオン強度を検出順に配列して各トータルイオン強度の頂点を結ぶことにより、保持時間に対応して検出されたイオンの強度を示すクロマトグラムを作成する。次に、パソコン6は、前記クロマトグラムに含まれる全てのピークまたは一部のピークについて、前記各イオン強度を前記各分子イオン及びフラグメントイオンの質量/電荷(m/z)比毎に合計し、これを質量順に配列することにより、合算マススペクトルを作成する。
【0027】
尚、図1に示す装置では質量分析計5として四重極型質量分析計を用いているが、磁場型質量分析計を用いることもできる。
【0028】
また、図1に示す装置では、熱分解装置2で前記高分子試料を瞬間的に熱分解する様にしているが、熱分解装置2は試料導入部7から試料カップ8により導入される高分子試料を、熱分解炉1内で連続的に昇温加熱して、該高分子試料を熱分解してもよい。この場合には、前記キャピラリーカラム4に代えて、内径0.15mm、長さ2.5m程度の不活性チューブを用いる。
【0029】
次に、本実施形態の試料検索方法について説明する。
【0030】
本実施形態の第1の態様では、まず、未知の高分子試料を試料カップ8に収容し、熱分解装置2の試料導入部7から、予め高温に加熱された熱分解炉1内に導入し、該高分子試料を瞬間的に熱分解して複数のガス状の有機化合物からなる熱分解生成物の混合物を生成させる。そして、前記熱分解生成物が、キャピラリーカラム4を介して質量分析計5に案内されることにより、検出データが得られる。
【0031】
前記検出データは、パソコン6で処理され、熱分解クロマトグラム(パイログラム)と、合算マススペクトルとが作成される。前記未知の高分子試料のパイログラムを図2に、合算マススペクトルを図3に示す。尚、図3に示す合算マススペクトルは、図2に示すパイログラムの全てのピークに対応するものであるが、一部のピークのみに対応するものであってもよい。
【0032】
次に、パソコン6は、図3に示す合算マススペクトルと、既知の高分子の合算マススペクトルから構築されている第1のデータベースとを比較し、図3に示す合算マススペクトルと一致する割合の高い既知の高分子の合算マススペクトルを検索する。前記第1のデータベースは、例えば、ハードディスク等の記憶手段に予め記憶されていてもよく、CD−ROM等の外部記憶手段に記憶されていてもよい。
【0033】
前記検索は、前記合算マススペクトルの電子データと、前記第1のデータベースを構築する各高分子の合算マススペクトルの電子データとを比較することにより行うことができ、極めて短時間で結果を得ることができる。前記検索結果は、図3に示す合算マススペクトルと一致する割合の高い順に、既知の高分子の合算マススペクトルが、該高分子の物質名、一致する割合と共に、パソコン6のディスプレイに表示される。前記既知の高分子の合算マススペクトルを図4に示す。
【0034】
本態様において、図4(a)はランク1の高分子であり、物質名はポリスチレン、一致する割合は99%である。図4(b)はランク2の高分子であり、物質名はアクリロニトリル−ブタジエン−スチレンコポリマー、一致する割合は99%である。図4(c)はランク3の高分子であり、物質名はアクリロニトリルアクリレートスチレンコポリマー、一致する割合は99%である。
【0035】
上述のように、図4(a)〜4(c)の高分子はいずれもスチレン系ポリマーであり、前記未知の高分子試料がスチレン系ポリマーであることは判るが、図4(a)〜4(c)の高分子のいずれであるかは判然としない。
【0036】
そこで、次に、図4(a)〜4(c)の合算マススペクトル作成の元になったパイログラムを、既知の高分子のパイログラムから構築されている第2のデータベースから抽出し、図1に示すパイログラムと、同時にパソコンの画面に表示する。前記第2のデータベースは、例えば、ハードディスク等の記憶手段に予め記憶されていてもよく、CD−ROM等の外部記憶手段に記憶されていてもよい。
【0037】
図4(a)〜4(c)の合算マススペクトル作成の元になったパイログラムを図5(a)〜5(c)に示す。ここで、図5(a)はポリスチレンのパイログラム、図5(b)はアクリロニトリル−ブタジエン−スチレンコポリマーのパイログラム、図5(c)はアクリロニトリルアクリレートスチレンコポリマーのパイログラムである。
【0038】
次に、図1に示すパイログラムと、図5(a)〜5(c)のパイログラムとを、画面上で目視により、あるいはパソコン6の機能を用いて比較する。この結果、図5(a)のポリスチレンと、図5(b)のアクリロニトリル−ブタジエン−スチレンコポリマーとが、図1の未知の高分子試料とよく一致しており、図5(c)のアクリロニトリルアクリレートスチレンコポリマーは図1の未知の高分子試料と一致しないことが判る。
【0039】
従って、前記未知の高分子試料の候補を、ランク1〜3の高分子から、ランク1〜2の高分子に、容易に絞り込むことができる。
【0040】
次に、本実施形態の第2の態様について説明する。本態様では、まず、未知の高分子試料を試料カップ8に収容し、熱分解装置2の試料導入部7から熱分解炉1内に導入して、熱分解炉1内で連続的に昇温加熱して複数のガス状の有機化合物からなる熱分解生成物の混合物を生成させる。そして、前記熱分解生成物が、キャピラリーカラム4に代わる不活性チューブを介して質量分析計5に案内されることにより、検出データが得られる。
【0041】
前記検出データは、パソコン6で処理され、熱分解クロマトグラム(サーモグラム)と、合算マススペクトルとが作成される。前記未知の高分子試料のサーモグラムを図6に、合算マススペクトルを図7に示す。尚、図7に示す合算マススペクトルは、図6に示すサーモグラムの15〜20分の間のピークに対応するものであるが、全てのピークに対応するものであってもよい。
【0042】
次に、パソコン6は、図7に示す合算マススペクトルと、既知の高分子の合算マススペクトルから構築されている第1のデータベースとを比較し、図7に示す合算マススペクトルと一致する割合の高い既知の高分子の合算マススペクトルを検索する。
【0043】
前記検索結果は、図7に示す合算マススペクトルと一致する割合の高い順に、既知の高分子の合算マススペクトルが、該高分子の物質名、一致する割合と共に、パソコン6のディスプレイに表示される。前記既知の高分子の合算マススペクトルを図8に示す。
【0044】
本態様において、図8(a)はランク1の高分子であり、物質名はスチレン−エチレン−ブタジエン−スチレンコポリマー、一致する割合は94%である。図8(b)はランク2の高分子であり、物質名はメチルメタクリレート−ブタジエン−スチレンコポリマー、一致する割合は87%である。図8(c)はランク4の高分子であり、物質名はポリスチレン、一致する割合は84%である。
【0045】
上述のように、図8(a)〜8(c)の高分子はいずれもスチレン系ポリマーであり、前記未知の高分子試料がスチレン系ポリマーであることは判るが、図8(a)〜8(c)の高分子のいずれであるかは判然としない。
【0046】
そこで、次に、図8(a)〜8(c)の合算マススペクトル作成の元になったサーモグラムを、既知の高分子のサーモグラムから構築されている第2のデータベースから抽出し、図6に示すサーモグラムと同時にパソコンの画面に表示する。
【0047】
図8(a)〜8(c)の合算マススペクトル作成の元になったサーモグラムを図9(a)〜9(c)に示す。ここで、図9(a)はスチレン−エチレン−ブタジエン−スチレンコポリマーのサーモグラム、図9(b)はメチルメタクリレート−ブタジエン−スチレンコポリマーのサーモグラム、図9(c)はポリスチレンのサーモグラムである。
【0048】
次に、図6に示すサーモグラムと、図9(a)〜9(c)のパイログラムとを、画面上で目視により、あるいはパソコン6の機能を用いて比較する。この結果、図9(a)のスチレン−エチレン−ブタジエン−スチレンコポリマーと、図9(c)のポリスチレンとが、図1の未知の高分子試料とよく一致しており、図9(b)のアクリロニトリルアクリレートスチレンコポリマーは図6の未知の高分子試料と一致しないことが判る。
【0049】
従って、前記未知の高分子試料の候補を、ランク1,2,4の高分子から、ランク1またはランク4の高分子に、容易に絞り込むことができる。
【0050】
本実施形態では、未知の高分子試料を熱分解炉中で瞬時に熱分解する場合(第1の態様)と、未知の高分子試料を連続的に昇温加熱して熱分解する場合(第2の態様)とについて説明している。しかし、同一の試料について、第1の態様の方法と、第2の態様の方法との両方を適用してもよく、このようにすることにより、さらに未知の高分子試料に一致する割合の高い既知の高分子を絞り込むことができる。
【0051】
例えば、前記第1の態様と、第2の態様とにおいて、同一の未知の高分子試料を用いたとすると、第1の態様で絞り込まれた高分子はポリスチレンとアクリロニトリル−ブタジエン−スチレンコポリマーとであり、第2の態様で絞り込まれた高分子はスチレン−エチレン−ブタジエン−スチレンコポリマーとポリスチレンとである。従って、前記未知の高分子試料に一致する割合の高い既知の高分子を、両方の態様で絞り込まれているポリスチレンに、さらに絞り込むことができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の試料検索方法に使用する未知試料検索装置の一実施形態を示すシステム構成図。
【図2】高分子試料の熱分解ガスクロマトグラムの一例。
【図3】
図2示のクロマトグラムの全てのピークに対応する合算マススペクトル。
【図4】図3示の合算マススペクトルに一致する割合の高い既知の高分子の合算マススペクトル。
【図5】図4示の高分子と同一の既知の高分子のクロマトグラム。
【図6】高分子試料の熱分解ガスクロマトグラムの他の例。
【図7】図6示のクロマトグラムの一部のピークに対応する合算マススペクトル。
【図8】図7示の合算マススペクトルに一致する割合の高い既知の高分子の合算マススペクトル。
【図9】図8示の高分子と同一の既知の高分子のクロマトグラム。
【符号の説明】
1…熱分解炉、 2…ガスクロマトグラフ装置、 5…検出器、 6…パーソナルコンピューター。
Claims (3)
- 未知の高分子試料を熱分解して得られる個々の熱分解成分をガスクロマトグラフ装置を用いて分離する工程と、
分離された各熱分解成分を所定時間毎にイオン化して生成した分子イオン及びフラグメントイオンの強度を検出して該高分子試料の検出データとすると共に、該所定時間毎の検出で得られた該高分子試料の検出データを1組として該検出データを1組毎に加算してトータルイオン強度とし、該トータルイオン強度を検出順に配列して構成されるヒストグラムの各頂点を結ぶことにより該高分子試料のクロマトグラムを作成する工程と、
該クロマトグラムの少なくとも一部を構成する各ピークに対応する該トータルイオン強度に含まれる該検出データを同一質量のイオン毎に合算して該分子イオン及びフラグメントイオンの強度の合算データとし、該合算データが該分子イオン及びフラグメントイオンの質量順に配列された合算マススペクトルを作成する工程と、
該合算マススペクトルと、複数の既知の高分子の合算マススペクトルにより構築された第1のデータベースとを比較し、該未知の高分子試料の合算マススペクトルに一致する割合の高い既知の高分子の合算マススペクトルを検索し、該未知の高分子試料に一致する割合の高い複数の既知の高分子を選択する工程と、
選択された既知の高分子のクロマトグラムを、複数の既知の高分子のクロマトグラムにより構築された第2のデータベースから抽出し、抽出されたクロマトグラムと該未知の高分子試料のクロマトグラムとを比較して、該未知の高分子試料に一致する割合の高い既知の高分子を絞り込む工程とを備えることを特徴とする試料検索方法。 - 前記熱分解成分は、前記未知の高分子試料を熱分解炉中で瞬時に熱分解するか、または該未知の高分子試料を連続的に昇温加熱して熱分解することにより得られることを特徴とする請求項1記載の試料検索方法。
- 前記合算マススペクトルは、前記クロマトグラム全体の各ピークに対応する前記トータルイオン強度または該クロマトグラムの一部を構成する各ピークに対応する該トータルイオン強度から作成されることを特徴とする請求項1または請求項2記載の試料検索方法。
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Cited By (3)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
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JP2006138755A (ja) * | 2004-11-12 | 2006-06-01 | Hitachi Ltd | 危険物探知装置および危険物探知方法 |
KR101209618B1 (ko) | 2011-07-07 | 2012-12-07 | 현대자동차주식회사 | 열분해 가스크로마토그래피 분석법을 이용한 에틸렌 프로필렌 다이엔 모노머 고무 소재 내 에틸리덴노보렌 함량 산출 방법 |
WO2022070274A1 (ja) * | 2020-09-29 | 2022-04-07 | 株式会社島津製作所 | 分析データの処理装置、分析装置、分析データの処理方法および解析プログラム |
-
2003
- 2003-02-27 JP JP2003051652A patent/JP2004257986A/ja active Pending
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