JP2004256930A - 補強織物の製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】少なくともたて糸に補強繊維糸を用い、よこ糸に熱可塑性繊維糸または熱可塑性繊維を含む糸を用いた補強織物の熱処理において、熱可塑性繊維糸の熱収縮による補強織物基材表面の凸凹をなくし、表面が平滑で、かつ形態が安定した補強織物基材が得られる補強織物の製造方法を提供する。
【解決手段】少なくともたて糸に補強繊維糸を用い、よこ糸に熱可塑性繊維糸、または熱可塑性繊維を含む糸を用いた補強織物をシリンダーの外周面に沿わしながら導き、該シリンダー外周面上で加熱処理することを特徴とする補強織物の製造方法。
【選択図】図1
【解決手段】少なくともたて糸に補強繊維糸を用い、よこ糸に熱可塑性繊維糸、または熱可塑性繊維を含む糸を用いた補強織物をシリンダーの外周面に沿わしながら導き、該シリンダー外周面上で加熱処理することを特徴とする補強織物の製造方法。
【選択図】図1
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は繊維強化プラスチックに用いるに有用な補強織物の製造方法の改良に関するものである。詳しくは、熱可塑性繊維糸、あるいは熱可塑性樹脂を含む補強織物に熱処理を行う際に補強織物の熱収縮を抑えるために有効な熱処理を施した補強織物の製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来より、炭素繊維などの補強繊維は、比強度、比弾性率が高いことから、繊維強化プラスチック(以下FRPという。)として軽量化効果の大きいスポーツ・レジャー用品をはじめ、航空機用途や一般産業用に多く使われている。
【0003】
かかるFRPの成形方法としては、ハンドレイアップ成形をはじめとしてオートクレーブ成形、フィラメントワィンディング成形、RTM成形など種々の方法があり、成形品の形状、個数、要求される特性、あるいは製品許容価格などにより適宜決められている。これら種々の成形法のなかでも、フィラメントワィンディング成形法を除いては、FRPの製造過程中で補強繊維を一旦、中間基材の形態にしておく必要があり、補強繊維を織物の形態にしたものが多用されている。成形用補強織物としての要求特性としては、取り扱い性が優れ、かつ補強繊維の有する強度・弾性率を最大限発揮させることが重要であるが、 補強繊維織物はたて糸とよこ糸の交錯点においてクリンプが生じ、補強繊維が本来有する高い物性の発現が期待できない問題点がある。このような問題点を解決するために、通常、織糸のクリンプを小さくする目的でたて糸とよこ糸の配列密度をできるだけ小さくした織り設計が行われるが、織物を取り扱う際に変形したり織糸がずれたりする問題や、織物をカットした際に織糸が解れ易い問題がある。
【0004】
そのような問題点に対して、補強繊維からなるたて糸またはよこ糸に熱可塑性ポリマー糸を同時に製織するとともに、織機上で織物の腹巻きローラ(引き取りローラ)と巻き取り機間に設けた遠赤外線ヒータで熱可塑性ポリマー糸を軟化または溶融させてたて糸とよこ糸の交点を目どめすることにより、補強繊維のたて糸またはよこ糸の解れ防止機能、形態安定性、さらには前記熱可塑性ポリマーにより補強織物同士を接着させる機能を与え、取り扱い性の優れた中間基材の製造方法の提案がなされている(例えば、特許文献1参照)。
【0005】
しかしながら、上記製造技術は簡単な方法で加熱処理を施せる長所があるが、たて糸は弾性率の高い補強繊維であるから織物をたて糸方向に緊張させても均一に張力が付与されず、その結果たて糸とよこ糸間に張力差が生じる。また、そのような状態で加熱処理されると低融点熱可塑性繊維の熱収縮によって、たて糸張力の低い箇所が織物幅方向に収縮し、織物面に皺が発生する問題がある。
【0006】
さらに、補強繊維の有する強度・弾性率を最大限発揮させる方法として、補強繊維をたて糸とし、よこ糸に例えば繊度が30デシテックス以下の熱可塑性繊維糸を用いた一方向性の織物にすることで、織糸のクリンプがほとんどなく、また、よこ糸が熱可塑性可塑性繊維糸であるから補強繊維糸はよこ糸の交錯部に応力集中を受けることがないので強度低下がほとんどなく、高い強度・弾性率が発現する特徴があることが分かっている。
【0007】
このような織物はよこ糸が非常に細繊度であるから、たて糸とよこ糸の交錯による拘束力がないために形態が一層不安定となり、前記目どめ方法と同様に低融点熱可塑性繊維糸をよこ糸と一緒に挿入して熱溶融させて目どめするか、あるいは熱溶融性樹脂からなる粒子を織物表面に塗布し、熱溶融性樹脂を熱溶融して目どめする方法が採られている。
【0008】
上記織物はよこ糸の剛性が非常に小さいので、たて糸の張力差で織物面が大きく凸凹した状態で遠赤外線ヒータあるいはオーブンに導かれ、その状態で目どめ処理されるために表面が平滑な織物基材が得られない。このような織物でFRPに成形すると補強繊維が真っ直ぐに配向されず、高い力学的特性が発揮できないばかりか、表面平滑な成形品とならない問題を抱えている。
【0009】
【特許文献1】
特開昭63−152637号公報
【0010】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、上記従来技術の問題点を解決し、少なくともたて糸に補強繊維糸を用い、よこ糸に熱可塑性繊維糸、または熱可塑性繊維を含む糸を用いた補強織物の熱処理において、熱可塑性繊維糸の熱収縮による補強織物基材表面の凸凹をなくし、表面が平滑で、かつ形態が安定した補強織物基材が得られる補強織物の製造方法を提供することにある。
【0011】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために、本発明は以下の構成を採用する。すなわち、
(1)少なくともたて糸に補強繊維糸を用い、よこ糸に熱可塑性繊維糸または熱可塑性繊維を含む糸を用いた補強織物をシリンダーの外周面に沿わしながら導き、該シリンダー外周面上で加熱処理することを特徴とする補強織物の製造方法。
【0012】
(2)シリンダーの外周面に接触した補強織物の耳部を外側面からエンドレスベルトで押し圧しながら導くことを特徴とする前記(1)に記載の補強織物の製造方法。
【0013】
(3)シリンダーの円周方向で補強織物の耳部が通過する部分にピンを配設し、シリンダー外周面に接触した補強織物の耳部を前記ピンに突き刺しながら導くことを特徴とする前記(1)に記載の補強織物の製造方法。
【0014】
(4)たて糸に炭素繊維糸を用い、よこ糸に熱可塑性繊維を含む糸を用いた一方向性の補強織物であることを特徴とする前記(1)〜(3)のいずれかに記載の補強織物の製造方法。
【0015】
(5)たて糸とよこ糸に炭素繊維糸を用い、少なくとも前記よこ糸に低融点熱可塑性繊維糸を引き揃えて挿入して補強織物にした後、加熱処理して該低融点熱可塑性繊維を溶融してたて糸とよこ糸の交点を接着することを特徴とする前記(1)〜(3)のいずれかに記載の補強織物の製造方法。
【0016】
(6)たて糸に炭素繊維を用い、よこ糸にガラスヤーンと低融点熱可塑性繊維糸との合撚糸、またはカバーリング糸を用いた一方向性の補強織物を加熱処理して低融点熱可塑性繊維を溶融してたて糸とよこ糸を低融点熱可塑性樹脂により接着することを特徴とする前記(1)〜(3)のいずれかに記載の補強織物の製造方法。
【0017】
(7)補強織物の表面に熱溶融性の粒子を塗布し、加熱処理して該粒子を補強織物の表面に接着させることを特徴とする前記(1)〜(4)のいずれかに記載の補強織物の製造方法。
【0018】
【発明の実施の形態】
本発明は、優れた力学的特性を発揮し、成形加工時の取り扱い性に優れ、表面平滑な織物基材とすることが可能な補強織物の製造方法を提供することにあり、少なくともたて糸に補強繊維を用いるものである。この補強繊維としては熱収縮の小さいガラス繊維、アラミド繊維、炭素繊維を用いることができ、なかでも高強度・高弾性率で、熱収縮がほとんどない炭素繊維が好ましい。
【0019】
炭素繊維としては、繊維直径が5〜10μのポリアクリルニトリル系で、引張強度が3〜7GPa、引張弾性率が200〜500GPaのマルチフィラメントとすることにより高い力学的特性を発揮するCFRPが得られることから好ましい。
【0020】
炭素繊維糸は、一般に繊度が大きくなるほど製造コストが安価であるから低コストの織物基材を提供できることから、本発明に用いる炭素繊維糸の繊度は5000〜30000デシテックスの太い糸が好ましい。
【0021】
炭素繊維糸の繊度が5000デシテックスより小さい細繊度糸では、たて糸とよこ糸の交錯点数が多いので織物形態が安定しており、目どめする必要もなく本発明の熱処理を施すことなくそのままの形で用いることが可能である。
【0022】
一方、5000デシテックス以上の繊度の大きい炭素繊維糸の場合、たて糸とよこ糸の交錯点数が少なくなり目ずれし易く、取り扱い難い織物であるから低融点熱可塑性繊維による目どめ加工が必要となり、本発明の効果が発揮される。
【0023】
しかし、30000デシテックスを越える太い繊度の炭素繊維糸となると、糸幅を均一に拡げない限り繊維分散が均一な織物が得られない問題があり、力学的特性を十分に発揮させる補強織物を得ることが難しいものである。
【0024】
本発明は、よこ糸に少なくとも熱可塑性繊維糸または熱可塑性繊維を含む糸を用いた補強織物である。すなわち、よこ糸に熱可塑性繊維糸を単独で用いてもよいし、熱可塑性繊維に他の繊維を含めた糸であってもよい。補強織物のよこ糸に熱可塑性繊維を含める際の熱可塑性繊維としては、ナイロン繊維、ポリエステル繊維、ポリプロピレン繊維などや、共重合ナイロンや共重合ポリエステル繊維などの低融点熱可塑性繊維が含まれ、なかでも樹脂との接着性が良好なナイロン系の繊維が好ましい。また、該熱可塑性繊維糸の繊度は10〜200デシテックスの範囲のものであることが好ましい。
【0025】
また、よこ糸に熱可塑性繊維を含める方法としては、熱可塑性繊維糸を単独で用いてもよいし、補強繊維糸と低融点熱可塑性繊維糸とを一緒に挿入する方法、または低融点熱可塑性繊維糸とガラスヤーンなどとの引き揃え、合撚、あるいはカバーリングなどで一緒に挿入する方法などが含まれる。ガラスヤーンは繊度が100〜300デシテックスの細繊度のものが好ましく用いられる。
【0026】
合撚あるいはカバーリングの撚り数としては、ガラスヤーンと低融点熱可塑性繊維糸が一体化されておればよいので50〜300ターン/mの少ない撚り数で十分である。
【0027】
また、熱可塑性繊維糸を単独で用いる方法としては、たて糸に炭素繊維糸を用い、よこ糸に繊度が10〜50デシテックスの細い熱可塑性繊維糸を用い、よこ糸密度が0.5〜5.0本/cmの一方向性補強織物である。そうすることにより、たて糸の炭素繊維糸は細繊度の柔軟な熱可塑性繊維糸と交錯しているので交錯部での応力集中が避けられ、炭素繊維の有する高強度、高弾性率が最大限発揮されものである。
【0028】
たて糸が炭素繊維糸で、よこ糸に熱可塑性繊維糸を用いた一方向性の補強織物は、よこ糸の剛性が小さく、また、たて糸の炭素繊維糸との拘束力が小さいので、そのままでは形態では変形し易く、取り扱い難い織物であるから、例えば織物面に熱溶融性樹脂の粒子を塗布し、加熱処理を施して熱溶融樹脂を接着させることに安定化させることが好ましい。
【0029】
熱溶融性樹脂としては、目的により適宜選択されるものであるが、単なる目どめ用としては融点が120〜180℃の低融点のナイロンやポリエステルの熱可塑性樹脂、また、常温では固形のエポキシ樹脂などが好ましく用いられ、また、積層時の層間靭性用としてはエポキシ樹脂などの高靭性の熱可塑性樹脂がミックスされた樹脂などを粉末化した粒子である。
【0030】
粒子の大きさとしては300ミクロン以下、さらに好ましくは200ミクロン以下の細かい方が、均一に分散できるので好ましいものである。
【0031】
また、織物組織としては特に限定されないが、少なくとも補強繊維糸をたて糸とした平織、綾織、朱子織、あるい補強繊維糸が真っ直ぐに配向し、たて糸とよこ糸の補助糸が互いに交錯して一体化されたノンクリンプ組織などの組織のものが好ましく用いられる。
【0032】
以下、本発明の補強織物の製造方法の一実施例を図面を参照しながら詳細に説明する。
【0033】
図1は、本発明の製造方法の一例を説明するための織機の概略側面図で、たて糸とよこ糸が補強繊維糸で、よこ糸と一緒に低融点熱可塑性繊維糸を挿入した補強織物を織機上で加熱処理し、低融点熱可塑性繊維糸を溶融させてたて糸とよこ糸の交点を目どめする方法の一実施例を示す側面図である。
【0034】
ヘルド(綜絖)2、リード(筬)3などの作用で製織された補強織物13は腹巻きローラ4により一定速度で引き取られ、シリンダー1の外表面に接しながら巻き取りロール7で巻き取られる。
【0035】
補強織物13がシリンダー1の表面に接しているところで遠赤外線ヒータ5によって加熱処理され、よこ糸方向に挿入された低融点可塑性繊維を溶融させるものである。
【0036】
このように補強織物13をシリンダー1の表面に沿わせることにより、導かれた補強織物のたて糸張力が不揃いで織物面が波打ち状の皺が生じるような織物であってもシリンダー表面に接触させることで織物面が平滑となり、そのような状態で目どめされるので表面平滑な補強織物が得られ、また、補強織物がシリンダー表面に接した状態で加熱処理されるので、低融点可塑性繊維が熱収縮応力が作用しても補強織物はシリンダー1の表面との摩擦力により幅方向の収縮が抑えられる。
【0037】
通常の衣料用の合繊織物は、織物を引き出した際のたて糸長の不揃いによる張力差が生じても、糸自身の弾性率が低いために張力が高い箇所のみが引き伸ばされて、補強織物のように皺などが生じるようなことがなく、波打つような皺は発生しない。
【0038】
また、熱収縮に対してはピンテンターにより織物の両方の耳が把持された状態で加熱処理する方法があるが、補強織物は、たて糸はよこ糸との拘束力がないために幅方向に収縮応力が作用するとピンが突き刺さった箇所で目ずれを起こし、幅規制が難しいものである。
【0039】
補強織物においては、補強繊維自体が高弾性率であるために織物を引き出した際、たて糸長の短い箇所がつっぱり、たて糸長の長い箇所が緩んだままの状態で導かれ、その状態で加熱処理によりセットされてしまうという問題があるが、本発明のように、シリンダー表面に接触させて加熱処理を行うことによって波打ち状の皺が発生することなく処理が行え、表面平滑な補強織物が得られるものである。
【0040】
また、低融点熱可塑性繊維がよこ糸方向に含まれた補強織物を熱処理すると、低融点熱可塑性繊維の熱収縮により織物が幅方向に収縮するが、本発明の熱処理方法では補強織物をシリンダー表面に接触させて熱処理させるので、補強織物とシリンダー表面の摩擦力により織物幅の収縮が抑えられ、安定した織物幅の基材を供給することができる。
【0041】
図1は織機の巻き取り機構をそのまま用いた例を示したが、巻き取り機構を織機後方に設けた別巻き取り方式を採用し、巻き取りロールまでの間にシリンダー1および加熱機構を設けることもできる。
【0042】
上記の別巻き取り方式にすることにより、シリンダーを設けるスペースが十分に採れるので複数個のシリンダーを並列させ、補強織物をそれぞれのシリンダー表面に順次接触させながら導くことができ、それぞれの接触面で加熱処理することができる。
【0043】
しかし、補強織物の片面に熱溶融性樹脂の粒子を塗布する補強織物においては、複数個のシリンダーに順次導くと粒子塗布面がシリンダー表面と接触することになり、粒子がシリンダー表面にくっついて折角塗布した粒子が剥がれることになるので1個のシリンダーで熱処理することが好ましい。
【0044】
前記シリンダー1は加熱処理条件により異なるが、直径が100〜1000mm程度で、直径が大きいほど加熱処理時間が長く採れるが、余りに大きくすると装置が大きくなるのでさらに好まし直径は300〜1000mmである。
【0045】
シリンダー1は回転自在な円筒状で、積極的に回転させるものでもよいが、補強織物の移動により摩擦力で回転するようにしておけば特に積極的に回転させる必要はない。
【0046】
また、シリンダー1の表面に溶融した樹脂が付着しないよう、例えばシリンダー表面をフッ素樹脂(例えば、“テフロン”(登録商標))コーティング加工、あるいはフッ素樹脂(例えば、“テフロン”(登録商標))コーティング布を貼り付けておくなどの処理を行っておくことが好ましい。
【0047】
なお、シリンダーは長さ方向の直径が均一であって表面平滑であることが好ましく、特に炭素繊維は伸度が殆どないのでシリンダー直径に差があると補強織物の幅方向において均一な張力で導くことができない問題が生じる。
【0048】
シリンダーの長さ方向の直径差は1/50mm以内にするのが好ましい。
【0049】
加熱の方法としては、補強織物がシリンダーと接触している箇所に遠赤外線ヒータを設けて加熱する方法であっても良く、またその箇所に熱風を吹き付ける方法であっても構わないが、前者の方が熱効率の点から好ましいものである。
【0050】
さらに、シリンダー内部に加熱装置を内蔵させ、前記加熱手段と併用することより一層効率的な加熱を行うことができる。
【0051】
加熱温度は、溶融させる樹脂の軟化点または融点、および熱処理加工速度により適宜決めればよいもので、通常120〜200℃の範囲が好ましく、加工速度が速い場合には加熱温度を高くしておくことが重要である。
【0052】
図2は、製織された補強織物を別ラインで熱処理を行う方法の一実施例を示し、熱溶融性樹脂の粒子を塗布し、粒子を補強織物の表面に接着させる例である。
【0053】
織物ロール8から供給された補強織物13上に熱溶融性樹脂の粒子11を塗布装置10から散布塗布され、次いでシリンダー1の表面に接しながら導かれ、接している間に遠赤外線ヒータ5で加熱処理され、ガイドローラ12を経て巻き取りロール9に巻き取る加熱処理方法である。
【0054】
上記方法により、前述したよこ糸に熱可塑性繊維を用いた一方向性の補強織物を、取り扱い性が優れ、かつ表面平滑で織物幅が安定した補強織物とすることができるものである。
【0055】
図3は、シリンダー1の外周部に接触した補強織物13の耳部を上面からエンドレスベルト14で押し圧しながら導く方法を説明するための側面図で、エンドレスベルト14は補強織物13の両耳部に配置され、ガイドローラ15a、15bに掛けらてシリンダー1の表面の動きに従って補強織物の耳部を押し圧しながら移動するようになっている。
【0056】
したがって、補強繊維の耳部がエンドレスベルト14で押さえられているので、補強織物が加熱処理される際に熱収縮による幅方向に作用する応力に耐え、幅方向の収縮を抑えることができるものである。
【0057】
エンドレスベルト14は、耳部だけを押さえるので幅は20〜50mmでよく、織物と接触する面に溶融樹脂が付着し易いので、エンドレスベルト14の外面にフッ素樹脂(例えば、“テフロン”(登録商標))コーティング加工しておくことが好ましい。
【0058】
図4は、シリンダー1の円周方向で、補強織物の耳部通過する部分のみにピン16を配列し、シリンダー外周面に接触した補強織物の耳部に前記ピン16を貫通させながら導く方法について説明するための側面図である。
【0059】
ピン16はシリンダー1の外周面の円周方向で、織物に耳が通過する箇所にピン16が設けられ、織物がシリンダー1に接触し始める際にピンが織物耳部に貫通し、織物に加熱処理されても織物幅の収縮を抑えるようにしたものである。
【0060】
なお、補強織物は目ずれし易いためにピン16の箇所に大きな収縮応力が採用する場合は上記方式は向かないが、本発明は補強織物はシリンダー1と接触させているのでその摩擦力で収縮応力を抑えられており、大きな収縮応力が作用することがないので特に、耳近傍の幅方向収縮を抑えるのに効果的である。
【0061】
ピン16の長さは、補強織物13がシリンダー1と接触始める際に突き刺し易く、またシリンダー1から離れる際にピン16から外れ易くする目的で2mm以内であることが好ましい。ピン16の長さが短くても補強織物13はシリンダー1の表面に強く接しているのでピン16から補強織物の耳が外れるようなことがないものである。
【0062】
また、ピン16をシリンダー1の円周方向に千鳥配置で複数列配置させる方が織物幅の規制効果が大きく好ましいものである。
【0063】
【実施例】
【0064】
【発明の効果】
本発明は、少なくともたて糸が補強繊維で、よこ糸に熱可塑性繊維を含む補強織物をシリンダーの外周面に沿わしながら導き、該シリンダー外周面上で加熱処理するので、補強織物に皺を発生させることなく熱処理を施すことができ、また、よこ糸方向に配向した熱可塑性繊維の熱収縮による織物幅の変動を抑えることができ、優れた強度、弾性率を発現する補強織物を提供することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【図1】たて糸に補強繊維を、そしてよこ糸に熱可塑性繊維糸を含む補強織物を織機上で加熱処理する方法の一実施例を示す側面図である。
【図2】製織された補強織物を別ラインで熱処理を行う方法の一実施例を示す側面図である。
【図3】シリンダーの外周部に接触した補強織物の耳部を上面からエンドレスベルトで押し圧しながら導く方法を説明するための側面図である。
【図4】シリンダーの円周方向で、補強織物の耳部通過する部分のみにピンを配列し、シリンダー外周面に接触した補強織物の耳部に前記ピンを貫通させながら導く方法の一実施例の側面図である。
【符号の説明】
1 :シリンダー
2 :ヘルド(綜絖)
3 :リード(筬)
4 :腹巻きローラ(引取ローラ)
5 :遠赤外線ヒータ
6、12:ガイドローラ
7、9 :巻き取りロール
8 :織物ロール
10 :粒子塗布装置
11 :粒子
13 :補強織物
14 :エンドレスベルト
15a、15b:ガイドローラ
16 :ピン
【発明の属する技術分野】
本発明は繊維強化プラスチックに用いるに有用な補強織物の製造方法の改良に関するものである。詳しくは、熱可塑性繊維糸、あるいは熱可塑性樹脂を含む補強織物に熱処理を行う際に補強織物の熱収縮を抑えるために有効な熱処理を施した補強織物の製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来より、炭素繊維などの補強繊維は、比強度、比弾性率が高いことから、繊維強化プラスチック(以下FRPという。)として軽量化効果の大きいスポーツ・レジャー用品をはじめ、航空機用途や一般産業用に多く使われている。
【0003】
かかるFRPの成形方法としては、ハンドレイアップ成形をはじめとしてオートクレーブ成形、フィラメントワィンディング成形、RTM成形など種々の方法があり、成形品の形状、個数、要求される特性、あるいは製品許容価格などにより適宜決められている。これら種々の成形法のなかでも、フィラメントワィンディング成形法を除いては、FRPの製造過程中で補強繊維を一旦、中間基材の形態にしておく必要があり、補強繊維を織物の形態にしたものが多用されている。成形用補強織物としての要求特性としては、取り扱い性が優れ、かつ補強繊維の有する強度・弾性率を最大限発揮させることが重要であるが、 補強繊維織物はたて糸とよこ糸の交錯点においてクリンプが生じ、補強繊維が本来有する高い物性の発現が期待できない問題点がある。このような問題点を解決するために、通常、織糸のクリンプを小さくする目的でたて糸とよこ糸の配列密度をできるだけ小さくした織り設計が行われるが、織物を取り扱う際に変形したり織糸がずれたりする問題や、織物をカットした際に織糸が解れ易い問題がある。
【0004】
そのような問題点に対して、補強繊維からなるたて糸またはよこ糸に熱可塑性ポリマー糸を同時に製織するとともに、織機上で織物の腹巻きローラ(引き取りローラ)と巻き取り機間に設けた遠赤外線ヒータで熱可塑性ポリマー糸を軟化または溶融させてたて糸とよこ糸の交点を目どめすることにより、補強繊維のたて糸またはよこ糸の解れ防止機能、形態安定性、さらには前記熱可塑性ポリマーにより補強織物同士を接着させる機能を与え、取り扱い性の優れた中間基材の製造方法の提案がなされている(例えば、特許文献1参照)。
【0005】
しかしながら、上記製造技術は簡単な方法で加熱処理を施せる長所があるが、たて糸は弾性率の高い補強繊維であるから織物をたて糸方向に緊張させても均一に張力が付与されず、その結果たて糸とよこ糸間に張力差が生じる。また、そのような状態で加熱処理されると低融点熱可塑性繊維の熱収縮によって、たて糸張力の低い箇所が織物幅方向に収縮し、織物面に皺が発生する問題がある。
【0006】
さらに、補強繊維の有する強度・弾性率を最大限発揮させる方法として、補強繊維をたて糸とし、よこ糸に例えば繊度が30デシテックス以下の熱可塑性繊維糸を用いた一方向性の織物にすることで、織糸のクリンプがほとんどなく、また、よこ糸が熱可塑性可塑性繊維糸であるから補強繊維糸はよこ糸の交錯部に応力集中を受けることがないので強度低下がほとんどなく、高い強度・弾性率が発現する特徴があることが分かっている。
【0007】
このような織物はよこ糸が非常に細繊度であるから、たて糸とよこ糸の交錯による拘束力がないために形態が一層不安定となり、前記目どめ方法と同様に低融点熱可塑性繊維糸をよこ糸と一緒に挿入して熱溶融させて目どめするか、あるいは熱溶融性樹脂からなる粒子を織物表面に塗布し、熱溶融性樹脂を熱溶融して目どめする方法が採られている。
【0008】
上記織物はよこ糸の剛性が非常に小さいので、たて糸の張力差で織物面が大きく凸凹した状態で遠赤外線ヒータあるいはオーブンに導かれ、その状態で目どめ処理されるために表面が平滑な織物基材が得られない。このような織物でFRPに成形すると補強繊維が真っ直ぐに配向されず、高い力学的特性が発揮できないばかりか、表面平滑な成形品とならない問題を抱えている。
【0009】
【特許文献1】
特開昭63−152637号公報
【0010】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、上記従来技術の問題点を解決し、少なくともたて糸に補強繊維糸を用い、よこ糸に熱可塑性繊維糸、または熱可塑性繊維を含む糸を用いた補強織物の熱処理において、熱可塑性繊維糸の熱収縮による補強織物基材表面の凸凹をなくし、表面が平滑で、かつ形態が安定した補強織物基材が得られる補強織物の製造方法を提供することにある。
【0011】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために、本発明は以下の構成を採用する。すなわち、
(1)少なくともたて糸に補強繊維糸を用い、よこ糸に熱可塑性繊維糸または熱可塑性繊維を含む糸を用いた補強織物をシリンダーの外周面に沿わしながら導き、該シリンダー外周面上で加熱処理することを特徴とする補強織物の製造方法。
【0012】
(2)シリンダーの外周面に接触した補強織物の耳部を外側面からエンドレスベルトで押し圧しながら導くことを特徴とする前記(1)に記載の補強織物の製造方法。
【0013】
(3)シリンダーの円周方向で補強織物の耳部が通過する部分にピンを配設し、シリンダー外周面に接触した補強織物の耳部を前記ピンに突き刺しながら導くことを特徴とする前記(1)に記載の補強織物の製造方法。
【0014】
(4)たて糸に炭素繊維糸を用い、よこ糸に熱可塑性繊維を含む糸を用いた一方向性の補強織物であることを特徴とする前記(1)〜(3)のいずれかに記載の補強織物の製造方法。
【0015】
(5)たて糸とよこ糸に炭素繊維糸を用い、少なくとも前記よこ糸に低融点熱可塑性繊維糸を引き揃えて挿入して補強織物にした後、加熱処理して該低融点熱可塑性繊維を溶融してたて糸とよこ糸の交点を接着することを特徴とする前記(1)〜(3)のいずれかに記載の補強織物の製造方法。
【0016】
(6)たて糸に炭素繊維を用い、よこ糸にガラスヤーンと低融点熱可塑性繊維糸との合撚糸、またはカバーリング糸を用いた一方向性の補強織物を加熱処理して低融点熱可塑性繊維を溶融してたて糸とよこ糸を低融点熱可塑性樹脂により接着することを特徴とする前記(1)〜(3)のいずれかに記載の補強織物の製造方法。
【0017】
(7)補強織物の表面に熱溶融性の粒子を塗布し、加熱処理して該粒子を補強織物の表面に接着させることを特徴とする前記(1)〜(4)のいずれかに記載の補強織物の製造方法。
【0018】
【発明の実施の形態】
本発明は、優れた力学的特性を発揮し、成形加工時の取り扱い性に優れ、表面平滑な織物基材とすることが可能な補強織物の製造方法を提供することにあり、少なくともたて糸に補強繊維を用いるものである。この補強繊維としては熱収縮の小さいガラス繊維、アラミド繊維、炭素繊維を用いることができ、なかでも高強度・高弾性率で、熱収縮がほとんどない炭素繊維が好ましい。
【0019】
炭素繊維としては、繊維直径が5〜10μのポリアクリルニトリル系で、引張強度が3〜7GPa、引張弾性率が200〜500GPaのマルチフィラメントとすることにより高い力学的特性を発揮するCFRPが得られることから好ましい。
【0020】
炭素繊維糸は、一般に繊度が大きくなるほど製造コストが安価であるから低コストの織物基材を提供できることから、本発明に用いる炭素繊維糸の繊度は5000〜30000デシテックスの太い糸が好ましい。
【0021】
炭素繊維糸の繊度が5000デシテックスより小さい細繊度糸では、たて糸とよこ糸の交錯点数が多いので織物形態が安定しており、目どめする必要もなく本発明の熱処理を施すことなくそのままの形で用いることが可能である。
【0022】
一方、5000デシテックス以上の繊度の大きい炭素繊維糸の場合、たて糸とよこ糸の交錯点数が少なくなり目ずれし易く、取り扱い難い織物であるから低融点熱可塑性繊維による目どめ加工が必要となり、本発明の効果が発揮される。
【0023】
しかし、30000デシテックスを越える太い繊度の炭素繊維糸となると、糸幅を均一に拡げない限り繊維分散が均一な織物が得られない問題があり、力学的特性を十分に発揮させる補強織物を得ることが難しいものである。
【0024】
本発明は、よこ糸に少なくとも熱可塑性繊維糸または熱可塑性繊維を含む糸を用いた補強織物である。すなわち、よこ糸に熱可塑性繊維糸を単独で用いてもよいし、熱可塑性繊維に他の繊維を含めた糸であってもよい。補強織物のよこ糸に熱可塑性繊維を含める際の熱可塑性繊維としては、ナイロン繊維、ポリエステル繊維、ポリプロピレン繊維などや、共重合ナイロンや共重合ポリエステル繊維などの低融点熱可塑性繊維が含まれ、なかでも樹脂との接着性が良好なナイロン系の繊維が好ましい。また、該熱可塑性繊維糸の繊度は10〜200デシテックスの範囲のものであることが好ましい。
【0025】
また、よこ糸に熱可塑性繊維を含める方法としては、熱可塑性繊維糸を単独で用いてもよいし、補強繊維糸と低融点熱可塑性繊維糸とを一緒に挿入する方法、または低融点熱可塑性繊維糸とガラスヤーンなどとの引き揃え、合撚、あるいはカバーリングなどで一緒に挿入する方法などが含まれる。ガラスヤーンは繊度が100〜300デシテックスの細繊度のものが好ましく用いられる。
【0026】
合撚あるいはカバーリングの撚り数としては、ガラスヤーンと低融点熱可塑性繊維糸が一体化されておればよいので50〜300ターン/mの少ない撚り数で十分である。
【0027】
また、熱可塑性繊維糸を単独で用いる方法としては、たて糸に炭素繊維糸を用い、よこ糸に繊度が10〜50デシテックスの細い熱可塑性繊維糸を用い、よこ糸密度が0.5〜5.0本/cmの一方向性補強織物である。そうすることにより、たて糸の炭素繊維糸は細繊度の柔軟な熱可塑性繊維糸と交錯しているので交錯部での応力集中が避けられ、炭素繊維の有する高強度、高弾性率が最大限発揮されものである。
【0028】
たて糸が炭素繊維糸で、よこ糸に熱可塑性繊維糸を用いた一方向性の補強織物は、よこ糸の剛性が小さく、また、たて糸の炭素繊維糸との拘束力が小さいので、そのままでは形態では変形し易く、取り扱い難い織物であるから、例えば織物面に熱溶融性樹脂の粒子を塗布し、加熱処理を施して熱溶融樹脂を接着させることに安定化させることが好ましい。
【0029】
熱溶融性樹脂としては、目的により適宜選択されるものであるが、単なる目どめ用としては融点が120〜180℃の低融点のナイロンやポリエステルの熱可塑性樹脂、また、常温では固形のエポキシ樹脂などが好ましく用いられ、また、積層時の層間靭性用としてはエポキシ樹脂などの高靭性の熱可塑性樹脂がミックスされた樹脂などを粉末化した粒子である。
【0030】
粒子の大きさとしては300ミクロン以下、さらに好ましくは200ミクロン以下の細かい方が、均一に分散できるので好ましいものである。
【0031】
また、織物組織としては特に限定されないが、少なくとも補強繊維糸をたて糸とした平織、綾織、朱子織、あるい補強繊維糸が真っ直ぐに配向し、たて糸とよこ糸の補助糸が互いに交錯して一体化されたノンクリンプ組織などの組織のものが好ましく用いられる。
【0032】
以下、本発明の補強織物の製造方法の一実施例を図面を参照しながら詳細に説明する。
【0033】
図1は、本発明の製造方法の一例を説明するための織機の概略側面図で、たて糸とよこ糸が補強繊維糸で、よこ糸と一緒に低融点熱可塑性繊維糸を挿入した補強織物を織機上で加熱処理し、低融点熱可塑性繊維糸を溶融させてたて糸とよこ糸の交点を目どめする方法の一実施例を示す側面図である。
【0034】
ヘルド(綜絖)2、リード(筬)3などの作用で製織された補強織物13は腹巻きローラ4により一定速度で引き取られ、シリンダー1の外表面に接しながら巻き取りロール7で巻き取られる。
【0035】
補強織物13がシリンダー1の表面に接しているところで遠赤外線ヒータ5によって加熱処理され、よこ糸方向に挿入された低融点可塑性繊維を溶融させるものである。
【0036】
このように補強織物13をシリンダー1の表面に沿わせることにより、導かれた補強織物のたて糸張力が不揃いで織物面が波打ち状の皺が生じるような織物であってもシリンダー表面に接触させることで織物面が平滑となり、そのような状態で目どめされるので表面平滑な補強織物が得られ、また、補強織物がシリンダー表面に接した状態で加熱処理されるので、低融点可塑性繊維が熱収縮応力が作用しても補強織物はシリンダー1の表面との摩擦力により幅方向の収縮が抑えられる。
【0037】
通常の衣料用の合繊織物は、織物を引き出した際のたて糸長の不揃いによる張力差が生じても、糸自身の弾性率が低いために張力が高い箇所のみが引き伸ばされて、補強織物のように皺などが生じるようなことがなく、波打つような皺は発生しない。
【0038】
また、熱収縮に対してはピンテンターにより織物の両方の耳が把持された状態で加熱処理する方法があるが、補強織物は、たて糸はよこ糸との拘束力がないために幅方向に収縮応力が作用するとピンが突き刺さった箇所で目ずれを起こし、幅規制が難しいものである。
【0039】
補強織物においては、補強繊維自体が高弾性率であるために織物を引き出した際、たて糸長の短い箇所がつっぱり、たて糸長の長い箇所が緩んだままの状態で導かれ、その状態で加熱処理によりセットされてしまうという問題があるが、本発明のように、シリンダー表面に接触させて加熱処理を行うことによって波打ち状の皺が発生することなく処理が行え、表面平滑な補強織物が得られるものである。
【0040】
また、低融点熱可塑性繊維がよこ糸方向に含まれた補強織物を熱処理すると、低融点熱可塑性繊維の熱収縮により織物が幅方向に収縮するが、本発明の熱処理方法では補強織物をシリンダー表面に接触させて熱処理させるので、補強織物とシリンダー表面の摩擦力により織物幅の収縮が抑えられ、安定した織物幅の基材を供給することができる。
【0041】
図1は織機の巻き取り機構をそのまま用いた例を示したが、巻き取り機構を織機後方に設けた別巻き取り方式を採用し、巻き取りロールまでの間にシリンダー1および加熱機構を設けることもできる。
【0042】
上記の別巻き取り方式にすることにより、シリンダーを設けるスペースが十分に採れるので複数個のシリンダーを並列させ、補強織物をそれぞれのシリンダー表面に順次接触させながら導くことができ、それぞれの接触面で加熱処理することができる。
【0043】
しかし、補強織物の片面に熱溶融性樹脂の粒子を塗布する補強織物においては、複数個のシリンダーに順次導くと粒子塗布面がシリンダー表面と接触することになり、粒子がシリンダー表面にくっついて折角塗布した粒子が剥がれることになるので1個のシリンダーで熱処理することが好ましい。
【0044】
前記シリンダー1は加熱処理条件により異なるが、直径が100〜1000mm程度で、直径が大きいほど加熱処理時間が長く採れるが、余りに大きくすると装置が大きくなるのでさらに好まし直径は300〜1000mmである。
【0045】
シリンダー1は回転自在な円筒状で、積極的に回転させるものでもよいが、補強織物の移動により摩擦力で回転するようにしておけば特に積極的に回転させる必要はない。
【0046】
また、シリンダー1の表面に溶融した樹脂が付着しないよう、例えばシリンダー表面をフッ素樹脂(例えば、“テフロン”(登録商標))コーティング加工、あるいはフッ素樹脂(例えば、“テフロン”(登録商標))コーティング布を貼り付けておくなどの処理を行っておくことが好ましい。
【0047】
なお、シリンダーは長さ方向の直径が均一であって表面平滑であることが好ましく、特に炭素繊維は伸度が殆どないのでシリンダー直径に差があると補強織物の幅方向において均一な張力で導くことができない問題が生じる。
【0048】
シリンダーの長さ方向の直径差は1/50mm以内にするのが好ましい。
【0049】
加熱の方法としては、補強織物がシリンダーと接触している箇所に遠赤外線ヒータを設けて加熱する方法であっても良く、またその箇所に熱風を吹き付ける方法であっても構わないが、前者の方が熱効率の点から好ましいものである。
【0050】
さらに、シリンダー内部に加熱装置を内蔵させ、前記加熱手段と併用することより一層効率的な加熱を行うことができる。
【0051】
加熱温度は、溶融させる樹脂の軟化点または融点、および熱処理加工速度により適宜決めればよいもので、通常120〜200℃の範囲が好ましく、加工速度が速い場合には加熱温度を高くしておくことが重要である。
【0052】
図2は、製織された補強織物を別ラインで熱処理を行う方法の一実施例を示し、熱溶融性樹脂の粒子を塗布し、粒子を補強織物の表面に接着させる例である。
【0053】
織物ロール8から供給された補強織物13上に熱溶融性樹脂の粒子11を塗布装置10から散布塗布され、次いでシリンダー1の表面に接しながら導かれ、接している間に遠赤外線ヒータ5で加熱処理され、ガイドローラ12を経て巻き取りロール9に巻き取る加熱処理方法である。
【0054】
上記方法により、前述したよこ糸に熱可塑性繊維を用いた一方向性の補強織物を、取り扱い性が優れ、かつ表面平滑で織物幅が安定した補強織物とすることができるものである。
【0055】
図3は、シリンダー1の外周部に接触した補強織物13の耳部を上面からエンドレスベルト14で押し圧しながら導く方法を説明するための側面図で、エンドレスベルト14は補強織物13の両耳部に配置され、ガイドローラ15a、15bに掛けらてシリンダー1の表面の動きに従って補強織物の耳部を押し圧しながら移動するようになっている。
【0056】
したがって、補強繊維の耳部がエンドレスベルト14で押さえられているので、補強織物が加熱処理される際に熱収縮による幅方向に作用する応力に耐え、幅方向の収縮を抑えることができるものである。
【0057】
エンドレスベルト14は、耳部だけを押さえるので幅は20〜50mmでよく、織物と接触する面に溶融樹脂が付着し易いので、エンドレスベルト14の外面にフッ素樹脂(例えば、“テフロン”(登録商標))コーティング加工しておくことが好ましい。
【0058】
図4は、シリンダー1の円周方向で、補強織物の耳部通過する部分のみにピン16を配列し、シリンダー外周面に接触した補強織物の耳部に前記ピン16を貫通させながら導く方法について説明するための側面図である。
【0059】
ピン16はシリンダー1の外周面の円周方向で、織物に耳が通過する箇所にピン16が設けられ、織物がシリンダー1に接触し始める際にピンが織物耳部に貫通し、織物に加熱処理されても織物幅の収縮を抑えるようにしたものである。
【0060】
なお、補強織物は目ずれし易いためにピン16の箇所に大きな収縮応力が採用する場合は上記方式は向かないが、本発明は補強織物はシリンダー1と接触させているのでその摩擦力で収縮応力を抑えられており、大きな収縮応力が作用することがないので特に、耳近傍の幅方向収縮を抑えるのに効果的である。
【0061】
ピン16の長さは、補強織物13がシリンダー1と接触始める際に突き刺し易く、またシリンダー1から離れる際にピン16から外れ易くする目的で2mm以内であることが好ましい。ピン16の長さが短くても補強織物13はシリンダー1の表面に強く接しているのでピン16から補強織物の耳が外れるようなことがないものである。
【0062】
また、ピン16をシリンダー1の円周方向に千鳥配置で複数列配置させる方が織物幅の規制効果が大きく好ましいものである。
【0063】
【実施例】
【0064】
【発明の効果】
本発明は、少なくともたて糸が補強繊維で、よこ糸に熱可塑性繊維を含む補強織物をシリンダーの外周面に沿わしながら導き、該シリンダー外周面上で加熱処理するので、補強織物に皺を発生させることなく熱処理を施すことができ、また、よこ糸方向に配向した熱可塑性繊維の熱収縮による織物幅の変動を抑えることができ、優れた強度、弾性率を発現する補強織物を提供することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【図1】たて糸に補強繊維を、そしてよこ糸に熱可塑性繊維糸を含む補強織物を織機上で加熱処理する方法の一実施例を示す側面図である。
【図2】製織された補強織物を別ラインで熱処理を行う方法の一実施例を示す側面図である。
【図3】シリンダーの外周部に接触した補強織物の耳部を上面からエンドレスベルトで押し圧しながら導く方法を説明するための側面図である。
【図4】シリンダーの円周方向で、補強織物の耳部通過する部分のみにピンを配列し、シリンダー外周面に接触した補強織物の耳部に前記ピンを貫通させながら導く方法の一実施例の側面図である。
【符号の説明】
1 :シリンダー
2 :ヘルド(綜絖)
3 :リード(筬)
4 :腹巻きローラ(引取ローラ)
5 :遠赤外線ヒータ
6、12:ガイドローラ
7、9 :巻き取りロール
8 :織物ロール
10 :粒子塗布装置
11 :粒子
13 :補強織物
14 :エンドレスベルト
15a、15b:ガイドローラ
16 :ピン
Claims (7)
- 少なくともたて糸に補強繊維糸を用い、よこ糸に熱可塑性繊維糸または熱可塑性繊維を含む糸を用いた補強織物をシリンダーの外周面に沿わしながら導き、該シリンダー外周面上で加熱処理することを特徴とする補強織物の製造方法。
- シリンダーの外周面に接触した補強織物の耳部を外側面からエンドレスベルトで押し圧しながら導くことを特徴とする請求項1に記載の補強織物の製造方法。
- シリンダーの円周方向で補強織物の耳部が通過する部分にピンを配設し、シリンダー外周面に接触した補強織物の耳部を前記ピンに突き刺しながら導くことを特徴とする請求項1に記載の補強織物の製造方法。
- たて糸に炭素繊維糸を用い、よこ糸に熱可塑性繊維糸を用いた一方向性の補強織物であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の補強織物の製造方法。
- たて糸とよこ糸に炭素繊維糸を用い、少なくとも前記よこ糸に低融点熱可塑性繊維糸を引き揃えて挿入して補強織物にした後、加熱処理して該低融点熱可塑性繊維を溶融してたて糸とよこ糸の交点を接着することを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の補強織物の製造方法。
- たて糸に炭素繊維糸を用い、よこ糸にガラスヤーンと低融点熱可塑性繊維糸との合撚糸、またはカバーリング糸を用いた一方向性の補強織物を加熱処理して低融点熱可塑性繊維を溶融してたて糸とよこ糸を低融点熱可塑性樹脂により接着することを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の補強織物の製造方法。
- 補強織物の表面に熱溶融性の粒子を塗布し、加熱処理して該粒子を補強織物の表面に接着させることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の補強織物の製造方法。
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Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
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JP2003045588A JP2004256930A (ja) | 2003-02-24 | 2003-02-24 | 補強織物の製造方法 |
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Cited By (2)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
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JP2010189810A (ja) * | 2009-02-19 | 2010-09-02 | Kuraray Fastening Co Ltd | 耳部ほつれ防止織物 |
JP2015183295A (ja) * | 2014-03-20 | 2015-10-22 | 三菱レイヨン株式会社 | 強化繊維織物の製造方法 |
-
2003
- 2003-02-24 JP JP2003045588A patent/JP2004256930A/ja active Pending
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JP2015183295A (ja) * | 2014-03-20 | 2015-10-22 | 三菱レイヨン株式会社 | 強化繊維織物の製造方法 |
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