JP2004256878A - 表面処理装置及び方法 - Google Patents

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Masashi Takahashi
Hitoshi Muramatsu
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Abstract

【課題】ワークの形状、大きさ、及び外観の表面処理の有無によらず、ワーク内における電荷の集中を抑制することにより安定しためっき皮膜の品質を得ることができるような表面処理装置及び方法を提供する。
【解決手段】陽極側の電極(例えば、陽極10)と陰極側のワークの被処理面(例えば、シリンダブロック2,3のボア内面α,β)との間を表面処理液(例えば、めっき液13)で満たし、電流を印加することにより前記ワークの被処理面に表面処理を施す表面処理装置1において、前記ワークを設置した状態で表面処理装置本体への搬入及び搬出が可能なパレット4を備え、このパレット4を介して前記ワークを陰極(例えば、電源22の陰極端子23)に接続する。
【選択図】 図1

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、例えばシリンダブロックのような円筒形状を有するワークに電解処理液を流して、ワークの円筒内面(例えば、シリンダブロックのボア内面)に表面処理を施すための表面処理装置及び方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
シリンダブロックのボア内面に電気めっきを施す場合には、通常、ワークであるシリンダブロックを電解処理液(めっき液)に浸漬させる一方、シリンダブロックに陰極を直接取付けることによってこのシリンダブロックを陰極とし、そのボアの内部に挿入配置した円柱形状の陽極に通電してボア内面にめっき処理を施すようにしている。
【0003】
また、ワークであるシリンダブロックを縦に重ね合わせると共に、シリンダブロック間に位置決め兼通電部材を配し、その通電部材から給電することにより、通電部材を介してシリンダブロックに給電するようにしためっき装置(例えば、特許文献1参照)が提案されている。
【0004】
【特許文献1】
特開平7−188988号公報(第2〜3頁、第1図)
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、被処理面であるワークの円筒内面に電解処理液(めっき液)を流し、かつ、電流密度を高くしたり電極間距離を狭くしたりすることにより短時間でめっき処理することを目的としためっき処理方法(表面処理方法)においては、めっき皮膜の形成速度が速いことから、ワーク内に電荷の分布が生じると、場所によってめっき皮膜の形成速度に違いが生じるため、例えばシリンダブロックのボア内面に形成されためっき皮膜の品質(膜厚など)に違いが生じる問題がある。
【0006】
特に、複数個のワークを同時に処理する場合や、多気筒シリンダブロックのような大型のワークを処理する場合にあっては、陰極の接点に近いところとそうでないところとでは電荷分布の差が顕著に表れる。そのため、陰極の接点箇所の数を多くするような対策が採られているが、このような方法では、治具や生産工数が増加したりするなど工業化において効率が悪いという問題が発生する。
【0007】
更には、ワークの外観形状が複雑な場合や、ワークの外表面に塗装などの表面処理がなされている場合には、給電をすることが可能な箇所が限定されたり、ワークと陰極との接触面積が小さくなったりするため、被処理面の各部における電荷分布の差が大きくなり、品質にばらつきが生じる要因となるおそれがある。また、ワーク通電による生産時には、ワークと陰極との接触面積が小さいことから、充分な通電を確保するためには結線時(通電時)にワークに対して陰極部材を強い力でクランプするなどの操作が必要である。なお、その際にワークがずれると、電解処理液の漏れ(液漏れ)を生じたり、陰極−陽極間の距離が変化してしまうなどの大きな問題を生じる。
【0008】
また、上述の特許文献1(特開平7−188988号公報)に記載のめっき装置では、陰極の給電箇所を1箇所にすることはできるものの、ワークとの接触面積は、従来におけるワークに直接給電する方法と同様に小さいため、ワークと陰極との相互間の接触面積をできる限り大きくして、被処理面の各部における電荷分布の差を小さくし得ることにはならない。このため、段積みしたワークの上下に位置する治具に通電プレートを更に設けることによって、電流が集中するのを防止することも試みられている。しかしながら、大量生産を行なううちに前記治具などが汚染されることも考えられ、その場合には給電可能な接触面積が更に小さくなり、めっき皮膜の品質をばらつかせる要因となり得る。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明は、このような種々の実状に鑑みてなされたものであって、その目的は、ワークの形状、大きさ、及び外観の表面処理の有無によらず、ワーク内における電荷の集中を抑制することにより安定しためっき皮膜の品質を得ることができるような表面処理装置及び方法を提供することにある。更に、本発明の目的は、複数個もワークを同時に処理することが可能であり、生産性を大幅に向上できるような表面処理装置及び方法を提供することにある。
【0010】
【課題を解決するための手段】
上述の目的を達成するために、本発明に係る表面処理装置及び方法では、陽極側の電極と陰極側のワークの被処理面との間を表面処理液で満たし、電流を印加することにより前記ワークの被処理面に表面処理を施す表面処理装置において、前記ワークを設置した状態で表面処理装置本体への搬入及び搬出が可能なパレットを備え、該パレットを介して前記ワークを陰極に接続するようにしている。
【0011】
本発明の好ましい実施形態では、円筒形状を有するワーク(例えば、シリンダブロック)のボアの内部に陽極を挿入し、陽極とワークの円筒内面(例えば、シリンダブロックのボア内面)との間にめっき液を流しながら被処理面となる円筒内面にめっき処理を施す装置及び方法において、導電材料からなるパレット上にワークを設置すると共に、そのパレットに陰極を接続し、これによりパレットを介してワークに給電する。なお、エッチング処理及びアルマイト処理に際しては、上述のパレットを陽極に接続し、パレットを介してワークに給電する。
【0012】
この場合、ワークには、円筒両端部の少なくとも何れか一方に、全周にわたって機械加工などにより加工された平面が形成されており、この面をパレットに接するように設定する。すなわち、パレットに給電することによりパレット全体が陰極(又は、陽極)となり、このパレットとワークとの接触面積が従来と比較して非常に大きいことから、ワークにおける電荷のばらつきが抑制される。特に、円筒両端部は全周にわたってパレットと接していることから、ワークの被処理面の円周方向においては、品質にばらつきが発生しない。複数のワークを大量生産する場合においては、パレットなどが汚れることも考えられるが、パレットとワークとの接触面積が大きいため、汚れによるワークの電荷の分布は発生しにくい。また、円筒両端部の平面(機械加工面)を介して給電するため、ワークの外観形状に影響されないばかりでなく、例えば外観に塗装などの表面処理がなされている場合においても、問題はない。また、パレットの上に横並びにワークを設置することも可能であり、その場合には更に多くのワークを同時処理することが可能となり、より生産性が向上する。加えて、多気筒シリンダブロックのような円筒部(ボア内面)を複数有する大型のワークに対しても処理することが可能である。
【0013】
なお、本明細書において、「パレット」とは、所謂ワークの設置台或いは搬送台のことを意味し、表面処理装置本体とは別体に設けられ、かつ、表面処理装置から容易に取り外し可能なものを言うものとする。かくして、ワークがこのパレットに予めセットされた後に、パレットごと表面処理装置本体内に搬入されてセットされ、表面処理後には、パレットごと表面処理装置本体の外に搬出される。なお、このパレットは、表面処理の前処理ステーション、並びに、後処理ステーションへの搬送にそれぞれ用いることも可能である。
【0014】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施形態について図1〜図5を参照して説明する。
【0015】
図1は、本発明の一実施形態に係る表面処理方法を施行する表面処理装置1を示すものであって、本装置1は、例えば円筒形状を有する2つのシリンダブロック(ワーク)2,3を段積みしてこれらのシリンダブロック2,3のボアの円筒内面(被処理面であるボア内面)α,βを所謂パレット通電により同時に表面処理するようにしたものである。
【0016】
上述の表面処理装置1は、装置本体への搬入及び搬出が可能なパレット4を位置決め状態で受け支える下治具5と、前記パレット4上に段積み状態で載置された2つのシリンダブロック2,3のうちの上方側のシリンダブロック3を押圧保持する上治具6とをそれぞれ具備している。そして、上述の下治具5には、上下方向に延びる孔部7が設けられており、この孔部7の内部に導電材料から成るめっき液供給管8が前記孔部7の内周面7aとの間に隙間をもって同軸状に取付けられている。また、めっき液供給管8の上部には、めっき液流通用通路9を有する陽極10が同軸状に連結されており、この陽極10が下治具5の上端面(パレット載置面)11から上方に突出配置されている。また、上述のめっき液供給管8には、めっき液槽12に貯留されているめっき液13が送液ポンプ14により圧送されるように構成されている。更に、下治具5には、前記孔部7に連通するめっき液回収管15が取付けられている。
【0017】
一方、パレット4は、導電性材料から成るものであって、めっき液流通用の開孔16を有する基盤部17と、この基盤部17の上面側において前記開孔16を取り囲むように配設された円筒部18とを有する導電性部材である。上述のパレット4の開孔16並びに円筒部18の内部には、段付き円筒形状の絶縁部材19が密着状態で嵌合されている。そして、前記円筒部18の上端は、断面L字形状に屈曲された円環形状部20となされており、この円環形状部20の上面20aが、段積みされるシリンダブロック2の載置面となされている。すなわち、上述の円環形状部20の上面20aは、機械加工によりシリンダブロック2に形成される平面(切削加工面)2aに密着状態で当接される円環状の平面、すなわち、被処理面であるボア内面α,βの回りの全周にわたって形成された平面として形成されている。
【0018】
また、上述の導電性のパレット4には、図1及び図2に示すように、導電性材料から成る給電用部材21が取付けられている。更に具体的に述べると、給電用部材21は、図1及び図2に示すように断面ほぼL字形状の導電性部材から成り、給電用部材21の取付片部21aがパレット4の基盤部17の上面に接触状態で取付けられて給電用部材21がパレット4に通電可能に接続されている。そして、前記取付片部21aに対してほぼ直角状に屈曲された屈曲片部21bが起立状態で配置されている。
【0019】
更に、本実施形態の表面処理装置1には電源(直流電源)22が備えられており、この電源22の陰極端子23が、図2(A),(B)に示す如くエアシリンダ24にて移動可能に保持された給電用部材25にリード線26を介して電気的に接続されている。かくして、この給電用部材25は、エアシリンダ24の動作に応じてパレット4の給電用部材21に対して選択的に接触若しくは分離されるように構成されており、電源側の給電用部材25がパレット4側の給電部材21に当接された場合には、パレット4が給電用部材21を介して電源22の陰極端子23に接続されてパレット4の全体が陰極となるように構成されている。なお、図1に示す状態は、給電用部材21が陰極端子23に接続されてこの給電用部材21並びにパレット4が陰極となされている状態である。
【0020】
一方、上述の電源22の陽極端子27は、導電性のめっき液供給管8にリード線28を介して電気的に接続されている。これにより、陽極10は、めっき液供給管8を介して電源22の陽極端子27に接続されて陽極(陽極棒)としての機能を果たすように構成されている。
【0021】
次に、内燃機関である単気筒シリンダブロック2,3(以下において、単にシリンダブロック2,3と記載する)を表面処理装置1にて表面処理を行なう際の作業手順の具体例について説明する。なお、この具体例は、シリンダブロック2,3のボア内面α,βにSiC粒子を分散させたニッケル複合めっきを施すようにした例である。
【0022】
まず、2つのシリンダブロック2,3をパレット4上に段積み状態で設置する。具体的には、シリンダブロック2の一端側の部分をパレット4の円筒部18内に差し込んでシリンダブロック2の円環状の平面2aをパレット4の円環状の上面20aに載置してこれらの両面2a,20aを互いに通電可能な接続状態にする。次いで、パレット4に載置されたシリンダブロック2の上部に位置決め用のステンレス製プレート30を挟んでシリンダブロック3を載置して2つのシリンダブロック2,3を段積みする。なお、この段積みは、2つのシリンダブロック2,3を互いに上下逆向きにした状態で行なうと共に、これらのシリンダブロック2,3のボア内面α,βが上下方向において一致するように行なう。
【0023】
このようにして2つのシリンダブロック2,3を2段積み状態でパレット4上に設置した後に、このパレット4をシリンダブロック2,3と一緒に表面処理装置1の下治具5及び陽極10の上方位置に搬送して下降移動させることにより、パレット4を下治具5上に位置決めして載置する。この際、2段積み状態のシリンダブロック2,3のボア並びにパレット4側の絶縁部材19の中空部にて形成された一連の中空部内に陽極10を僅かな隙間を隔てて同軸状に配置する。しかる後に、表面処理装置1の上治具6を待機位置から下降移動させて上側のシリンダブロック3の円環状の切削加工面3aを押圧することによって、ステンレス製プレート30を挟んで段積み状態となされた2つのシリンダブロック2,3を上治具6とパレット4の円筒部18との間に挟持すると共に、下側のシリンダブロック2の平面2aとパレット4の円筒部18の上面20aとを所定の押し付け力をもって密着せしめた状態、すなわち、シリンダブロック2の平面2a及びパレット4の上面20aを介してパレット4とシリンダブロック2,3とを互いに電気的に導通せしめた状態にする。
【0024】
これに伴い、めっき液供給管8の連通路8aと、この連通路8aに連なる陽極10のめっき液流通用通路9と、上治具6と陽極10との間に形成される室31と、シリンダブロック2,3のボア内面α,βと陽極10の外周面γとの間の隙間に形成される幅狭の流路32と、下治具5の孔部7の内周面7aとめっき供給管8の外周面との間に形成される流路33と、めっき液回収管15の連通路(図示せず)とにより、一連のめっき液流通路が形成されることとなる。
【0025】
かくして、このような状態の下で、液送ポンプ14を作動させてめっき液槽12内のめっき液13を圧送すると、めっき液13はめっき供給管8の連通路8a及び陽極10のめっき液流通用通路9を順次に通って室31内に流入し、次いで上治具6の外周方向に向けて噴水状に広がって、陽極10とシリンダブロック2,3のボア内面α,βとの間のめっき流通路32を通り、しかる後にめっき流通路33及びめっき回収管15を通ってめっき液槽12に回収される。
【0026】
このようにめっき液13をシリンダブロック2,3のボア内面α,β内に満たして所定方向に流した状態に設定した後に、エアシリンダ24を作動させて電源側の給電用部材25を図2(A)に示す復動位置(非接触位置)から図2(B)に示す往動位置(接触位置)に移動させることによって、前記給電用部材25をパレット4側の給電用部材21に当接させて結線状態にする。それに伴い、電源22から導電性のパレット4を介して給電され、陽極10から陰極であるシリンダブロック2,3に所定の電流が流れ、シリンダブロック2,3のボア内面α,βに電気めっきによるめっき皮膜が形成される。この場合、めっき液13を流しながら前記ボア内面α,βを電気めっきするようにしているので、めっきの品質が安定し、めっき不良の削減を図ることができる。
【0027】
なお、この際、パレット4に給電することによりパレット4の全体が電極(具体的には、陰極)となり、パレット4を介してシリンダブロック2,3の全体に均等に電流が流れ、電荷の集中が生じることを防ぐので、めっき品質が安定し、めっき不良の削減を図ることができる。また、このパレット4とシリンダブロック2,3との接触面積が従来と比較して非常に大きいことから、シリンダブロック2,3における電荷のばらつきが抑制される。特に、シリンダブロック2の円筒部の平面2aは全周にわたってパレット4の円筒部18の上面20aと接していることから、シリンダブロック2,3の円周方向においては、品質にばらつきが発生しない。また、シリンダブロック2の円筒部の機械加工面である平面2aから給電するようにしているため、シリンダブロック2,3の外観形状に影響されないばかりでなく、例えば外観に塗装などの表面処理がなされている場合においても、問題はない。また、パレット4の上に横並びに複数のワークを設置することも可能であり、その場合には更に多くのワークを同時処理することが可能となり、より生産性が向上する。また、既述のようなパレット通電では、結線のためのクランプ時にシリンダブロック2,3がずれることがないため、液漏れや、陽極−陰極間の距離が変わるなどの問題が発生しない。
【0028】
一方、シリンダブロック2,3を設置するパレット4においては、その一部にめっき液流路となる開孔16(すなわち、シリンダブロック2,3を設置した状態では、被処理面となるボア内面α,βからつながる部分)を有しているが、その開孔16の最表面(内周面)に絶縁部材19が密着されてこの開孔16の最表面が絶縁されているため、開孔16の内周面にめっき皮膜が形成されるのが防止されると共に腐食などよる汚染が防止され、従ってメンテナンスが必要になるなどの問題は発生しない。
【0029】
ここで、めっき条件についての一例を述べると、次の通りである。すなわち、めっき液を流速1.0m/secで流れるよう制御すると共に、電流密度を80A/dm、並びに、150A/dmに設定してめっき処理をそれぞれ20回だけ行なった。また、パレット4は、ステンレス製とした。その結果、何れの電流密度においてもヤケ(焼け)或いはコゲ(焦げ)など不良の発生はなく、全数について良好なめっき処理(表面処理)をすることができた。なお、本実施例では、段積みした上下のシリンダブロック2,3を固定するために、それらの間に位置決めのためのステンレス製プレート30を配置するようにしているが、プレート30を介在させることなくシリンダブロック2,3を直接段積みしても同様の結果が得られた。
【0030】
比較例として、既述の実施形態の場合と同様に単気筒シリンダブロック2,3を2つ段積みし、その上側のシリンダブロックの一部に直接陰極を接続し、めっき処理を行なった。めっき条件は、記述の実施形態の場合と同様である。その結果、80A/dmでは不良の発生はなかったが、150A/dmでは20個あたり2個についてコゲが発生した。不良発生品は、何れも上側に段積みしたシリンダブロック3であり、それは電荷の分布状態に起因していると考えられる。
【0031】
一方、上述の如きめっき処理を行なう前に施行するめっき前処理(表面処理の一種)においては、上述の表面処理装置1と同様の構成の装置を用いて良い。すなわち、段積みされたシリンダブロック2,3のボア内面α,βを電解液に浸漬すべくこれらのボア内の流通路に電解液を流して被処理面であるボア内面α,βをエッチング又はアルマイト処理する場合には、ワークであるシリンダブロック2,3を陽極として上記と同様にパレット4を介して給電するような表面処理(エッチング処理又はアルマイト処理)を行なうことが可能である。この際、電解液を流しながら前記ボア内面α,βを電解エッチング又はアルマイト処理することにより、めっきの前処理である電解エッチング又はアルマイト処理を均一に行なうことができ、めっき品質の向上を図ることができる。
【0032】
以上、本発明の一実施形態について述べたが、本発明はこの実施形態に限定されるものではなく、本発明の技術的思想に基づいて各種の変形及び変更が可能である。例えば、パレット4側の給電用部材21に電源側の給電用部材25を当接及び当接解除を選択的に行なう機構として、図2(A)に示す如くパレット4上に給電用部材21を設ける必要は必ずしもなく、図3(A),(B)に示すように導電性のパレット4の端縁17aを屈曲してこの端縁4aを給電用部材25の当接部として構成するようにしても良く、また図4(A),(B)に示すように導電性のパレット4の基盤部17の端面17bを給電用部材25の当接部として構成するようにしても良く、また図5(A),(B)に示すように導電性のパレット4の基盤部17の下端面17c(或いは、上端面17d)を給電用部材25の当接部として構成するようにしても良い。既述の実施形態における給電用部材当接機構や図3〜図5にそれぞれ示す給電用部材当接機構によれば、パレット4自体を給電用部材として兼用することができ、特別な専用部材を給電用部材として用いる必要がなくなる。また、結線時にワークであるシリンダブロック2,3には下治具5と上治具6とによるクランプ力以外の外力は全く加わらないため、クランプ時にシリンダブロック2,3がずれたり、液漏れを生じたり、陰極−楊極間の距離が変わるなどの不具合の発生を防止することが可能となる。
【0033】
また、パレット4とシリンダブロック2,3(ワーク)との相対的な位置関係については、パレット4の上にシリンダブロック2,3を設置する場合と、パレットの下にシリンダブロック2,3を設置する場合のどちらであっても良い。更に、既述の実施形態では2つのシリンダブロック2,3を上下に段積みした状態でめっき処理を行なうようにしたが、3つ以上のシリンダブロックを段積みしてこれらのシリンダブロックのボア内面を同時にめっき処理又はめっき前処理を行なうことも可能である。
【0034】
また、本発明は、シリンダブロックのボア内面を表面処理する場合に限らず、シリンダブロック以外の各種のワークの表面処理にも適用できることは言う迄もない。
【0035】
【発明の効果】
請求項1に記載の本発明は、陽極側の電極と陰極側のワークの被処理面(例えば、シリンダブロックのボア内面)との間を表面処理液で満たし、電流を印加することによりワークの被処理面に表面処理を施す表面処理装置において、ワークを設置した状態で表面処理装置本体への搬入及び搬出が可能なパレットを備え、このパレットを介してワークを陰極に接続するようにしたものであるから、ワークに陰極を直接接続しないため、ワークの形状、大きさ、及び外観面の表面処理の有無によらず、ワーク内における電荷の集中を抑制することができ、安定した品質の表面処理を行なうことが可能となる。しかも、上述の如くワークに直接陰極を接続しないため、ワークに外力が加わることがなく、従って接続時(結線時)のワークのずれ、液漏れ、並びにワークの形状による極間距離の変化などの発生を防止することができる。
【0036】
また、請求項2に記載の本発明は、ワークの被処理面(例えば、シリンダブロックのボア内面)を電解液に浸漬し、ワークを陽極に接続して電流を印加することによりワークの被処理面に表面処理(エッチング処理及びアルマイト処理)を施す表面処理装置において、ワークを設置した状態で表面処理装置本体への搬入及び搬出が可能なパレットを備え、このパレットを介してワークを陽極に接続するようにしたものであるから、ワークに陽極を直接接続しないため、ワークの形状、大きさ、及び外観面の表面処理の有無によらず、ワーク内における電荷の集中を抑制することができ、安定した品質のエッチング処理及びアルマイト処理(表面処理に先立って行なう前処理)を行なうことが可能となる。しかも、ワークに陽極を直接接続しないため、ワークに外力が加わることがなく、従って接続時(結線時)のワークのずれ、液漏れ、並びにワークの形状による陽極−陰極間の距離の変化などの発生を防止することができる。
【0037】
また、請求項3に記載の本発明は、パレットのうち少なくともワークと接する面を含む部分を導電材料にて構成するようにしとものであるから、パレットからワークヘの給電を容易かつ確実に行なうことが可能となる。
【0038】
また、請求項4に記載の本発明は、ワークのうちのパレットと接する箇所に、機械加工による平面を形成するようにしたものであるから、パレットとワークとの接触面積を大きくとることが可能となり、これによりワークにおける電荷のばらつきを抑制することができる。更に、パレットの汚れに起因するワークにおける電荷の分布の変化を生じにくくすることが可能となる。
【0039】
また、請求項5に記載の本発明は、ワークのパレットと接する平面を、ワークの被処理面の回りの全周にわたって形成するようにしたものであるから、このワークの平面を介して給電することにより、ワークの外観形状に影響されることがなく、しかも外観面に表面処理がなされている場合であっても表面処理を良好に行なうことができる。
【0040】
また、請求項6に記載の本発明は、複数のワークをパレットに接するようにしたものであるから、更に多くのワークを同時処理することが可能となり、生産性のより一層の向上を図ることができる。
【0041】
また、請求項7に記載の本発明は、ワークの上部に1つ又は複数のワークを導電可能に載置するようにしたものであるから、更に多くのワークを段積み状態の下で同時処理することが可能となり、生産性のより一層の向上を図ることができる。
【0042】
また、請求項8に記載の本発明は、パレットに表面処理液の流路となる開孔を形成し、この開孔の最表面に絶縁部材を設けるようにしたものであるから、パレットの開孔の最表面(内周面)が絶縁されることにより、パレットヘの皮膜形成や腐食などの汚染を防ぐため、余分なメンテナンスが不要となる。
【0043】
また、請求項9に記載の本発明は、パレットに給電用部材を設け、この給電用部材に電源側の給電用部材を結線するように構成したものであるから、パレットの形状に影響されることなく確実に結線(電気的接続)に必要な平面を確保することが可能となる。
【0044】
また、請求項10に記載の本発明は、陽極側の電極と陰極側のワークの被処理面との間を表面処理液で満たし、電流を印加することによりワークの被処理面に表面処理を施す表面処理方法において、ワークを設置した状態で表面処理装置本体への搬入及び搬出が可能な導電材料から成るパレットを用い、このパレットを陰極に接続することにより、パレットを介してワークを陰極に接続するようにしたものであるから、ワークに陰極を直接接続しないため、ワークの形状、大きさ、及び外観面の表面処理の有無によらず、ワーク内における電荷の集中を抑制することができ、安定した品質の表面処理を行うことが可能となる。しかも、上述の如くワークに陰極を直接接続しないため、ワークに外力が加わることがなく、従って接続時のワークのずれ、液漏れ、並びにワークの形状による陽極−陰極間の距離の変化などの発生を防止することが可能な表面処理装置を提供することができる。
【0045】
また、請求項11に記載の本発明は、ワークの被処理面を電解液に浸漬し、ワークを陽極に接続して電流を印加することによりワークの被処理面に表面処理を施す表面処理方法において、ワークを設置した状態で表面処理装置本体への搬入及び搬出が可能なパレットを用い、このパレットを介してワークを陽極に接続するようにしたものであるから、ワークに陽極を直接接続しないため、ワークの形状、大きさ、及び外観面の表面処理の有無によらず、ワーク内における電荷の集中を抑制することができ、安定した品質の表面処理(エッチング処理及びアルマイト処理)を行なうことが可能となる。しかも、上述の如くワークに陽極を直接接続しないため、ワークに外力が加わることがなく、従って接続時のワークのずれ、液漏れ、並びにワークの形状による陽極−陰極間の距離の変化などの発生を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施形態に係る表面処理方法を施行するために用いられる表面処理装置を示す断面図である。
【図2】パレット側の給電用部材に電源側の給電用部材を当接及び当接解除を選択的に行なう機構を示す図であって、図2(A)は上述の給電用部材が互いに当接解除されている状態を示す説明図、図2(B)は上述の給電用部材が互いに当接されている状態を示す説明図である。
【図3】上述の機構とは別の変形例を示すものであって、図3(A),(B)は図2(A),(B)とそれぞれ同様の説明図である。
【図4】上述の機構とは更に別の変形例を示すものであって、図4(A),(B)は図2(A),(B)とそれぞれ同様の説明図である。
【図5】上述の機構とは更に別の変形例を示すものであって、図5(A),(B)は図2(A),(B)とそれぞれ同様の説明図である。
【符号の説明】
1 表面処理装置
2,3シリンダブロック(ワーク)
2a,3a 平面(切削加工面)
4 パレット
5 下治具
6 上治具
8 めっき液供給管
9 めっき液流通用通路
10 陽極
13 めっき液
17 基盤部
18 円筒部
19 絶縁部材
20a 上面
21,25 給電用部材
21a 取付片部
21b 屈曲片部
22 電源
23 陰極端子
27 陽極端子
30 ステンレス製プレート
31 室
32,33 流路
α,β ボア内面

Claims (11)

  1. 陽極側の電極と陰極側のワークの被処理面との間を表面処理液で満たし、電流を印加することにより前記ワークの被処理面に表面処理を施す表面処理装置において、前記ワークを設置した状態で表面処理装置本体への搬入及び搬出が可能なパレットを備え、該パレットを介して前記ワークを陰極に接続したことを特徴とする表面処理装置。
  2. ワークの被処理面を電解液に浸漬し、前記ワークを陽極に接続して電流を印加することにより前記ワークの被処理面に表面処理を施す表面処理装置において、前記ワークを設置した状態で表面処理装置本体への搬入及び搬出が可能なパレットを備え、該パレットを介して前記ワークを陽極に接続したことを特徴とする表面処理装置。
  3. 前記パレットのうち少なくとも前記ワークと接する面を含む部分を導電材料にて構成したことを特徴とする請求項1又は2に記載の表面処理装置。
  4. 前記ワークのうちの前記パレットと接する箇所に、機械加工による平面を形成したことを特徴とする請求項1乃至3の何れか1項に記載の表面処理装置。
  5. 前記ワークの前記パレットと接する前記平面を、前記ワークの被処理面の回りの全周にわたって形成したことを特徴とする請求項4に記載の表面処理装置。
  6. 複数のワークを前記パレットに接することを特徴とする請求項1乃至5の何れか1項に記載の表面処理装置。
  7. 前記ワークの上部に1つ又は複数のワークを導電可能に載置することを特徴とする請求項1乃至5の何れか1項に記載の表面処理装置。
  8. 前記パレットに表面処理液の流路となる開孔を形成し、該開孔の最表面に絶縁部材を設けたことを特徴とする請求項1又は2に記載の表面処理装置。
  9. 前記パレットに給電用部材を設け、該給電用部材に電源側の給電用部材を結線するように構成したことを特徴とする請求項1乃至8の何れか1項に記載の表面処理装置。
  10. 陽極側の電極と陰極側のワークの被処理面との間を表面処理液で満たし、電流を印加することによりワークの被処理面に表面処理を施す表面処理方法において、前記ワークを設置した状態で表面処理装置本体への搬入及び搬出が可能な導電材料から成るパレットを用い、該パレットを陰極に接続することにより、前記パレットを介して前記ワークを陰極に接続することを特徴とする表面処理方法。
  11. ワークの被処理面を電解液に浸漬し、前記ワークを陽極に接続して電流を印加することによりワークの被処理面に表面処理を施す表面処理方法において、前記ワークを設置した状態で表面処理装置本体への搬入及び搬出が可能なパレットを用い、該パレットを介して前記ワークを陽極に接続することを特徴とする表面処理方法。
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JP2010007114A (ja) * 2008-06-25 2010-01-14 Suzuki Motor Corp 表面処理装置の電極取付構造
CN107338464A (zh) * 2017-06-20 2017-11-10 中国科学院力学研究所 一种全铝发动机缸体内壁陶瓷化夹具

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