JP2004255634A - フッ素ゴム積層金属板 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】上記ゴム積層金属板において、4−ビニルフェノールポリマー、ホルムアルデヒドおよび2−アミノエタノールまたはそのN−アルキル誘導体の反応生成物を含有する表面処理剤で表面処理された金属板を用いる。この表面処理剤は、さらにH2ZrF6またはH2TiF6およびコロイダルシリカを添加した水性分散液として用いられる。
Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、フッ素ゴム積層金属板に関する。さらに詳しくは、金属板/フェノール樹脂系接着剤/フッ素ゴムよりなるフッ素ゴム積層金属板に関する。
【0002】
【従来の技術】
耐LLC(ロングライフクーラント)性が必要とされるエンジンシリンダヘッドガスケットの金属板としてはステンレス鋼が用いられるが、ステンレス鋼板上に直接加硫接着剤を塗布し、そこにゴムを接着させても耐液接着耐久性が悪く、ゴム積層金属板についてLLC浸漬試験を実施すると接着剥離を生ずる。
【0003】
その対策として、接着剤塗布の前処理として、ステンレス鋼板表面にクロメート処理が施され、水やLLCに対する耐性を向上させることが行われているが、クロメート処理剤中には人体や環境に悪影響を及ぼすCr+6が含まれており、それの使用は好ましくないといえる。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、金属板/フェノール樹脂系接着剤/フッ素ゴムよりなるゴム積層金属板において、金属板、特にステンレス鋼板の表面にクロメート処理を施さずとも、高温条件下でのLLC浸漬試験において良好な接着性を保持できるフッ素ゴム積層金属板を提供することにある。
【0005】
【課題を解決するための手段】
かかる本発明の目的は、上記ゴム積層金属板において、4−ビニルフェノールポリマー、ホルムアルデヒドおよび2−アミノエタノールまたはそのN−アルキル誘導体の反応生成物を含有する表面処理剤で表面処理された金属板を用いることによって達成される。
【0006】
【発明の実施の形態】
この金属板用表面処理剤の有効成分は、4−ビニルフェノールポリマー、ホルムアルデヒドおよび2−アミノエタノールまたはそのN−アルキル誘導体の反応生成物である。この反応生成物は、1−プロポキシ−2−プロパノール等を反応溶媒として用い、4−ビニルフェノールポリマーにホルマリンおよび2−アミノエタノールまたはそのN−アルキル誘導体を添加し、約40〜80℃に加熱することにより得られ、反応混合物はさらに1−プロポキシ−2−プロパノール等でその固形分濃度が約20〜30重量%程度に迄希釈したポリマー分散体として用いられる。
【0007】
ここで用いられる4−ビニルフェノールポリマーは、4−ビニルフェノールのビニル基が付加重合したポリマーであり、実際には市販品、例えば丸善石油化学製品マルカリンカーM等をそのまま用いることができる。このポリマーをホルムアルデヒドおよび2−アミノエタノールまたはそのN−アルキル誘導体と反応させると、ポリマー側鎖中の水酸基に対しo−位に−CH2NRCH2CH2OH基が導入される。ここで、Rは水素原子、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基等である。
【0008】
表面処理剤は、このような反応生成物に加えて、二水素ヘキサフルオロジルコニウムまたはチタン(H2ZrF6またはH2TiF6)の水溶液、コロイダルシリカの水分散液および脱イオン水を添加した水性分散液として用いられる。これらは、反応生成物に対する重量比で、例えば40重量%H2ZrF6またはH2TiF6水溶液が約0.001〜5倍量、また例えば20重量%コロイダルシリカ水分散液が約0.1〜2倍量用いられ、表面処理剤水性分散液中の固形分濃度が約1〜30重量%となるように分散させて用いられる。
【0009】
これらの各成分からなる水性分散液としての表面処理剤は、アルカリ脱脂したステンレス鋼板上等に塗布され、室温または温風で乾燥させた後、約100〜150℃で約1〜20分間程度焼付処理が実施される。塗布方法としては、スプレー法、浸漬法、刷毛塗り法、ロールコータ法等任意の方法で行うことができ、約0.1〜10μmの膜厚で塗布される。このような表面処理剤で表面処理される金属板としては、例えばステンレス鋼、軟鋼、銅、マグネシウム、アルミニウム、アルミニウムダイキャスト等の板状体が用いられ、好ましくはSUS304、301、301H、430等のステンレス鋼板が用いられる。
【0010】
表面処理剤で表面処理された金属板上には、フェノール樹脂系接着剤が塗布され、フェノール樹脂系接着剤としては好ましくはジヒドロベンゾオキサジン環を有する熱硬化性樹脂およびレゾール型フェノール樹脂の有機溶媒溶液が用いられる。
【0011】
ジヒドロベンゾオキサジン環を有する熱硬化性樹脂としては、ジヒドロベンゾオキサジン環を有し、ジヒドロベンゾオキサジン環の開環反応によって硬化する熱硬化性樹脂であれば任意のものを使用することができ、例えばフェノール性水酸基を有する化合物、1級アミンおよびホルムアルデヒドから、次式に示される如く、ジヒドロ−2H−1,3−ベンゾオキサジン誘導体が合成される。
【0012】
フェノール性水酸基を有する化合物としては、芳香環のフェノール性水酸基に対して少くとも一方のo−位に水素原子が結合していることが必要であり、好ましくは分子中にフェノール性水酸基が複数個存在する多官能性フェノール類が用いられる。具体的には、カテコール、レゾルシノール、ハイドロキノン等のフェノール類、1,5−ジヒドロキシナフタレン、2,6−ジヒドロキシナフタレン等のジヒドロキシナフタレン類、ビスフェノールA、ビスフェノールF等のビスフェノール類、ノボラック型またはレゾール型フェノール樹脂、メラミンフェノール樹脂、アルキルフェノール樹脂等のフェノール樹脂類が例示される。
【0013】
また、1級アミンとしては、アニリン、トルイジン等の低級アルキル基または低級アルコキシ基で置換されたアニリン誘導体からなる芳香族アミン類またはメチルアミン、エチルアミン等の脂肪族アミンが例示される。
【0014】
これらのフェノール性水酸基を有する化合物と1級アミンのそれぞれ1モルに対して、2モル以上のホルムアルデヒドが用いられ、しゅう酸触媒等の存在下に、反応温度約70〜130℃、好ましくは約90〜110℃で約1/3〜4時間程度反応させた後、減圧下120℃以下で未反応のフェノール性化合物、1級アミン類、ホルムアルデヒド等を除去することにより、ジヒドロベンゾオキサジン環を有する熱硬化性樹脂が得られる。
【0015】
一方、レゾール型フェノール樹脂としては、フェノール、p−クレゾール、m−クレゾール、p−第3ブチルフェノール等のフェノール性水酸基に対してo−位および/またはp−位に2個または3個の置換可能な核水素原子を有するフェノール類またはこれらの混合物とホルムアルデヒドとを、水酸化ナトリウム、炭酸ナトリウム、水酸化バリウム、アンモニア等のアルカリ触媒の存在下において縮合反応させることによって得られたものが用いられる。
【0016】
加硫接着剤を構成するこれらの各成分は、ジヒドロベンゾオキサジン環を有する熱硬化性樹脂100重量部に対して、レゾール型フェノール樹脂が約50〜1000重量部、好ましくは約100〜500重量部の割合で用いられる。レゾール型フェノール樹脂の割合がこれよりも多いと耐熱性が低くなり、一方これよりも少ない割合で用いられると耐水性、耐LLC性などが低下するようになる。また、焼付け温度を下げたり、短時間の焼付け処理で使用する場合には、これらの樹脂成分合計量100重量部当り約1〜20重量部のヘキサメチレンテトラミンを添加して用いることも有効である。
【0017】
以上の各成分からなる接着剤は、メタノール、エタノール、イソプロパノール等のアルコール類、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン類の単独溶媒または混合溶媒に、約0.2〜10重量%の成分濃度になるように溶解させた有機溶媒溶液として用いられる。この接着剤中には、フッ素ゴムとの密着性を上げるために、被着フッ素ゴムの有機溶媒溶液を添加して用いることもできる。また、接着剤の塗布および焼付け処理は、スプレー法、浸漬法、刷毛塗り法、ロールコータ法等で塗布した後、室温または温風下で乾燥させ、約100〜250℃で約1〜20分間加熱することにより行うことができ、膜厚約0.1〜15μmの接着剤層を形成させる。
【0018】
フェノール樹脂系接着剤上には、未加硫のフッ素ゴムコンパウンドが接合され、フッ素ゴムの加硫温度(約150〜230℃)での加圧加硫が約0.5〜30分間行われる。あるいは、未加硫のゴムコンパウンドを溶媒に分散させたゴム溶液をコーティングして加圧下または無加圧にて加熱加硫する方法も、多く行われる。フッ素ゴムの加硫物層は、片面厚さが約5〜120μm程度となるように、金属板の片面側または両面側に形成される。なお、粘着が不適な製品については、フッ素ゴム加硫物層の表面に粘着防止剤を塗布することも行われる。
【0019】
フッ素ゴムとしては、硬度(デュロメーターA)が80以上で、圧縮永久歪(100℃、22時間)が50%以下の加硫物層を形成するものであれば任意のもの、例えばポリオール加硫性およびパーオキサイド加硫性のいずれも使用することができ、未加硫のフッ素ゴムコンパウンドとしては、例えば次のような配合例が示される。
【0020】
【0021】
ポリオール加硫性フッ素ゴムとしては、一般にフッ化ビニリデンと他の含フッ素オレフィン、例えばヘキサフルオロプロペン、ペンタフルオロプロペン、テトラフルオロエチレン、トリフルオロクロロエチレン、フッ化ビニル、パーフルオロ(メチルビニルエーテル)等の少なくとも一種との共重合体が挙げられ、これらのフッ素ゴムは、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)パーフルオロプロパン、ヒドロキノン等のポリヒドロキシ芳香族化合物によってポリオール加硫される。
【0022】
また、パーオキサイド加硫性フッ素ゴムとしては、例えば分子中にヨウ素および/または臭素を有するフッ素ゴムが挙げられ、これらのフッ素ゴムは一般にパーオキサイド加硫に用いられている有機過酸化物によって加硫(架橋)される。この場合には、有機過酸化物と共に、トリアリルイソシアヌレートによって代表される多官能性不飽和化合物を併用することが好ましい。
【0023】
【発明の効果】
本発明に係るフッ素ゴム積層金属板においては、金属板/フェノール樹脂系接着剤/フッ素ゴムよりなるゴム積層金属板において、金属板表面を特定の表面処理剤で表面処理しておくことにより、金属板、特にステンレス鋼の表面にクロメート処理を施さずとも、高温条件下でのLLC浸漬試験において良好な接着性を保持できるという効果を奏する。
【0024】
かかる効果を奏する本発明のフッ素ゴム積層金属板は、耐熱性、耐油性、耐LLC等にすぐれているので、自動車、工業機械等のメタルガスケットとして使用され、特に高温条件下での耐LLC性が要求されるシリンダガスケット等の用途に好適に使用することができる。
【0025】
【実施例】
次に、実施例について本発明を説明する。
【0026】
参考例1
攪拌機および還流装置を備えた反応容器に、1−プロポシキ−2−プロパノール425部(重量、以下同じ)を仕込み、次いで4−ビニルフェノールポリマー(丸善石油化学製品マルカリンカーM)240部を仕込んで、攪拌しながら還流下に80℃迄加熱し、その温度を1時間保持して完全に溶解させた。この溶液を45〜50℃に冷却し、2−アミノエタノール124部、次いで脱イオン水480部を添加し、さらに36.75%ホルムアルデヒド溶液(ホルマリン)163.4部を45分間かけてゆっくりと添加した。添加終了後、攪拌しながら40〜45℃に2時間保持した後80℃に加熱し、この温度に4時間保持した。この後45℃に冷却し、1−プロポキシ−2−プロパノール85部を添加して、固形分濃度24.6重量%のポリマー分散体Aを得た。
【0027】
このポリマー分散体A 2部、40重量%H2ZrF6水溶液12部、20重量%コロイダルシリカ水分散液2部および脱イオン水484部から、表面処理剤Aを調製した。
【0028】
参考例2
参考例1において、2−アミノエタノールの代りに2−メチルアミノエタノール151.7部を用い、固形分濃度26.8重量%のポリマー分散体Bを得た。
【0029】
このポリマー分散体B 2部、40重量%H2ZrF6水溶液12部、20重量%コロイダルシリカ水分散液2部および脱イオン水484部から、表面処理剤Bを調製した。
【0030】
参考例3
参考例1において、40重量% H2ZrF6水溶液の代りに同量の40重量% H2TiF6水溶液を用い、表面処理剤Cを調製した。
【0031】
参考例4
容量5Lのフラスコに、フェノール500g、37%ホルマリン302.5gおよびしゅう酸1gを仕込み、還流温度で6時間反応させた後、内部を減圧して水分および未反応フェノールを除去し、フェノールノボラック樹脂を得た。
【0032】
このフェノールノボラック樹脂300gおよびアニリン263gを混合し、80℃で5時間攪拌して、均一な溶液を調製した。容量5Lのフラスコ中に、ホルマリン286gを仕込み、90℃に加熱した後、そこへフェノールノボラック樹脂−アニリン混合物溶液を30分間かけて少しずつ添加した。添加終了後、30分間還流温度に保ち、その後100℃で2時間減圧して縮合水を除去し、ジヒドロベンゾオキサジン環を有する熱硬化性樹脂を得た。
【0033】
この熱硬化性樹脂を用い、フェノール樹脂系接着剤A〜Cを調製した。
なお、未加硫フッ素ゴム溶液としては、前記配合例Iの未加硫フッ素ゴムコンパウンド25部、メタノール8部およびメチルエチルケトン67部から調製された溶液が用いられた。
【0034】
また、次の配合組成を有するフェノール系接着剤Dが調製された。
【0035】
さらに、他の接着剤E〜Fが調製された。
【0036】
実施例1〜9、比較例1〜6
脱脂したSUS301鋼板(厚さ0.2mm)の表面をアルカリ脱脂した後、表面処理剤A、BまたはCを塗布して100℃、3分間の乾燥を行い、冷却後各種接着剤A〜Fを塗布して室温で乾燥させた後、230℃で5分間の焼付処理を行った。この接着剤層の上に、前記未加硫フッ素ゴム溶液(固形分濃度25重量%)を塗布し、60℃で15分間乾燥させて片面厚さ20μmの未加硫フッ素ゴム層を形成させた後、180℃、60Kgf/cm2(5.88MPa)、25分間の条件下で加圧加硫を行ってガスケットを作成した。
【0037】
このガスケットについて、初期および120℃、150℃、175℃の50%LLC(制研化学製品L004NA)水溶液中に100時間、300時間、500時間浸漬後の塗膜付着性試験(クロスカット法、JIS K5600−5−6準拠)を行い、次の表1〜2に示されるような評点結果を得た。
Claims (6)
- 金属板/フェノール樹脂系接着剤/フッ素ゴムよりなるゴム積層金属板において、4−ビニルフェノールポリマー、ホルムアルデヒドおよび2−アミノエタノールまたはそのN−アルキル誘導体の反応生成物を含有する表面処理剤で表面処理された金属板が用いられたフッ素ゴム積層金属板。
- 金属板がステンレス鋼板である請求項1記載のフッ素ゴム積層金属板。
- さらにH2ZrF6またはH2TiF6およびコロイダルシリカが添加された水性分散液よりなる表面処理剤が用いられた請求項1または2記載のフッ素ゴム積層金属板。
- フェノール樹脂系接着剤がジヒドロベンゾオキサジン環を有する熱硬化性樹脂およびレゾール型フェノール樹脂の有機溶媒溶液である請求項1または2記載のフッ素ゴム積層金属板。
- 4−ビニルフェノールポリマー、ホルムアルデヒドおよび2−アミノエタノールまたはそのN−アルキル誘導体の反応生成物、H2ZrF6またはH2TiF6およびコロイダルシリカの水性分散液からなる金属板用表面処理剤。
- 請求項5記載の表面処理剤で表面処理された金属板。
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