JP2004245729A - 放射線検査装置及び放射線検査方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】構成が簡易で金属材料の表面形状を検査することの可能な放射線検査装置及び放射線検査方法を提供すること。
【解決手段】金属材料である検査対象物M1の一方から同検査対象物M1に放射線を照射する線源11と、同検査対象物M1から線源11側に向かうコンプトン後方散乱線を検出する検出器14とを有する。この検出器14はコリメーターにより検査対象部の視野を限定される放射線カウンターであり、線源11及び検出器14は検査対象物M1の表面から離隔されており、検査対象物M1からのコンプトン後方散乱線により検査対象物M1の表面形状を検査する。また、検出器14の検出エネルギー範囲を限定するエネルギー識別回路を備えるとよい。なお、本発明は、検査対象物M1と放射線検出装置との間に放射線吸収率が検査対象物M1よりも小さな保温材等の介在物M2が存在している場合に適する。
【選択図】 図1
【解決手段】金属材料である検査対象物M1の一方から同検査対象物M1に放射線を照射する線源11と、同検査対象物M1から線源11側に向かうコンプトン後方散乱線を検出する検出器14とを有する。この検出器14はコリメーターにより検査対象部の視野を限定される放射線カウンターであり、線源11及び検出器14は検査対象物M1の表面から離隔されており、検査対象物M1からのコンプトン後方散乱線により検査対象物M1の表面形状を検査する。また、検出器14の検出エネルギー範囲を限定するエネルギー識別回路を備えるとよい。なお、本発明は、検査対象物M1と放射線検出装置との間に放射線吸収率が検査対象物M1よりも小さな保温材等の介在物M2が存在している場合に適する。
【選択図】 図1
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、コンプトン後方散乱線による放射線検査装置及び放射線検査方法に関するものである。さらに詳しくは、金属材料の表面形状の検査方法及び例えば保温材により囲まれた鋼管等の表面減肉を検査するための装置及び方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、コンプトン後方散乱線による放射線検査装置及び放射線検査方法としては、次の特許文献1に記載の如きものが知られている。
【0003】
【特許文献1】
特開平6−38949号公報
【0004】
同公報によれば、同公報の図6に示すように、エックス線を照射し、その後方散乱波をラインセンサ等の検出装置20で検出している。そして、左右2つの検出装置に異なる深さを分担させ、各深さ毎に得られる後方散乱波により検査対象19の内部を画像化している。
【0005】
同従来技術によれば、内部を可視化するために複雑な装置構成を要し、コスト高となる割に、物体表面の形状を検査するには不向きであった。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
かかる従来の実情に鑑みて、本発明は、構成が簡易で金属材料の表面形状を検査することの可能な放射線検査装置及び放射線検査方法を提供することを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するため、本発明に係る放射線検査装置の特徴構成は、コンプトン後方散乱線による検査に用いるものであって、金属材料である検査対象物の一方から同検査対象物に放射線を照射する線源と、同検査対象物から線源側に向かうコンプトン後方散乱線を検出する検出器とを有し、この検出器はコリメーターにより検査対象部の視野を限定される放射線カウンターであり、線源及び検出器は検査対象物の表面から離隔されており、検査対象物の表面形状を検査することにある。
【0008】
同特徴構成によれば、検出器は放射線カウンターであればよく、その他主要な構成要素としてコリメーターと線源等を設ければ足りるので、処理系統も簡素が可能であり、構成が簡易となる。線源及び検出器は検査対象物の表面から適度な距離離隔されており、検査対象物で散乱された散乱線がカウンターに到達する。そして、発明者らの実験により、検査対象物内部で散乱された放射線は減衰により検出器には到達せず、検査対象物表面近傍での散乱線が主として検出器に到達し、検出器の計数値と検出器及び検査対象物表面の距離とは相関を有することが判明した。かかる実用的な原理の確認により、検査対象物と検出器との距離として、検査対象物の表面形状を検査することが可能となった。
【0009】
上記特徴構成において、前記検出器の検出エネルギー範囲を限定するエネルギー識別回路を備えることが望ましい。散乱角と散乱線のエネルギーとの間には相関が存在するため、エネルギー範囲を限定することで、散乱角による幾何学的関連から所定の部位で散乱した散乱線のみを検出することになるので、他部位からの散乱線及び直接線等のノイズをカットし、検出精度を向上させることができる。
【0010】
ところで、例えば保温材で覆った配管は、表面の減肉が隠蔽され、検査が困難である。しかし、放射線は保温材を容易に透過するため、前記検査対象物と前記放射線検出装置との間に放射線吸収率が前記検査対象物よりも小さな介在物が存在している場合であっても検査が可能である。
【0011】
本発明に係る放射線検査方法の特徴は、上記いずれかに記載の特徴構成を有す放射線検査装置を検査対象物の表面から離隔した状態で同表面にほぼ沿わせて移動させ、検出器の計数値により表面位置を推定することにより前記検査対象物の表面形状を検査することにあり、前記放射線検査装置と前記検査対象物の表面との間に保温材が介在している場合にも有用である。
【0012】
【発明の効果】
このように、上記本発明に係る放射線検査装置及び放射線検査方法の特徴によれば、検出器及び検査対象物表面と検出器の計数値との相関を利用して、検査対象物と検出器との距離として、検査対象物の表面形状を検査することが可能となった。しかも、検出器は放射線カウンターであれば足り、装置全体の構成を簡素化し、安価で利用しやすい検査装置を提供し得るに至った。
【0013】
特に、エネルギー範囲を限定することで、異なる散乱角の他部位からの散乱線及び直接線であるノイズを低減して検出精度を向上させることが可能となった。
【0014】
そして、保温材等の被覆材で覆われた検査対象物を検査する際に、この被覆材を取り外すことなく、透過検査を簡単に行うことができるようになった。
【0015】
本発明の他の目的、構成、効果は以下の「発明の実施の形態」の項で明らかになるであろう。
【0016】
【発明の実施の形態】
次に、添付図面を参照しながら、本発明をさらに詳しく説明する。
図1は本発明に係る放射線検出装置1と検査対象との関係を示す概念図である。放射線検出装置1は、検査ヘッド2,処理ユニット3を備える。検査対象物M1はステンレス鋼等を含む鋼材や銅その他の金属が該当し、厚板や管として形成されたものが対象となりうる。保温材M2は原理的には存在しなくてもよいが、通常、保温材であり、検査対象物M1よりも放射線吸収率の小さな物質であればよい。本実施形態では、検査対象物M1の表面である検査対象表面S1に形成された減肉部Dを検査することを目的とする。
【0017】
保温材M2としては、特に吸収率の小さな物質であることが望ましい。保温材M2の外側である移動基準面S2には通常亜鉛メッキ鋼板等の板金が施されており、保温材M2の厚みx1だけ検査対象表面S1から隔たった位置で、この板金表面に沿って検査ヘッド2を移動させることとなる。保温材M2には、例えば、けい酸カルシュウム、はっ水性パーライト、グラスウール、ロックウール、ビーズ法ポリスチレンフォーム、押し出し法ポリスチレンフォーム、硬質ウレタンフォーム、ポリエチレンフォーム、フェノールフォーム等の材料・製造方法で形成された保温材が用いられる。
【0018】
検査ヘッド2は線源部10,検出部13,座標センサ16を備えている。検出部13は検査対象物M1に対して放射線であるγ線を照射する線源11とこれを収納する線源容器12とを備えている。線源11としては例えば241Amや57Co等、エネルギーが50−100keV程度のものを用いるのが望ましい。また、検出器14は放射線をカウントするCdTeなどの半導体検出器やシンチレーションカウンターであり、コリメーター15により限定された視野範囲から入射する後方散乱線のエネルギーを出力する。座標センサ16は接触又は非接触のエンコーダーであり、移動基準面S2と検査ヘッド2との相対移動量を二次元方向に分けて出力する。
【0019】
一方、処理ユニット3は、検出信号制御部17と汎用のパーソナルコンピューター18とを有している。検出信号制御部17は検出器14の出力信号のエネルギー識別回路と放射線カウントの計数回路とを有している。検出器14の出力信号の強度は、例えば図2の横軸に放射線のエネルギーとして表示され、各エネルギーにおける計数値の累積値が強度として図2の縦軸に表示される。図2の例では、50keV近傍の強度が高いため、50keV近傍のエネルギーのみをカウントするよう、検出信号制御部17のエネルギー識別回路を設定することで、ノイズの低減を図っている。すなわち、検出器14から送出されるパルスの強度を一定範囲に限定してカウントを行う。先の座標センサ16はパーソナルコンピューター18に検査ヘッド2の位置を二次元座標で識別できるように座標情報を送信する。
【0020】
ここで、図1を参照しながら動作原理を説明する。検出器14から距離x離れた検査対象物M1内における厚みdx、視野角dsの微小部分mを考える。この微小部分mの体積は、検出器14がコリメータ15を見込む立体角をdSとして、x2・dS・dxで与えられる。線源強度をIとすると、この部分に入射する放射線の強度はIcosφ/r2になる。ただしφは、微小部分mと線源11を結んだ直線P1が、コリメータの中心軸P2となす角度である。cosφ=x/rであることと、r=(x2+L2)1/2であることを考慮すると、この微小部分mでコンプトン散乱されて検出器に入射する強度dNは次式で表される。ただしKは散乱係数で、Δは機器・配管中の放射線の減衰率である。なお断熱保温材中の減衰は無視している。
【0021】
【数1】
dN=I・K・dS・x/(L2+x2)3/2・Δdx (1)
【0022】
仮に線源11の位置を検出器14の位置と同位置である符号11’の位置とし、Δ=1とすれば、この(1)式をx=x0(検査対象表面−検出器距離)から検査対象物である機器・配管の裏面まで積分することで、次式のように測定される全強度Nが得られる。なお、表現の簡素化のため、複数の係数をまとめてAと表現してある。
【0023】
【数2】
N=A/(x02+L2)1/2 (2)
【0024】
この式(2)を保温材M2を設けずに測定を行うシュミレーション例を図3に示す。図3に示すグラフの横軸は検出器14の先端と検査対象物表面S1間の距離x0で、理論上はコリメーター15の厚みを考慮していないため、x0=0を表示している。一方、同グラフの縦軸は検出器で測定される散乱線強度の相対値である。同グラフより、深さが1cm以下の範囲で変化が少ないが、コリメーター15は必ず存在してその厚さは1cmを簡単に越えるためこの部分は問題にはならない。深さが2cm以上の場合、強度は距離の約2乗に反比例して減少している。点線源からの放射線を測定した時も、測定値は距離の2乗に反比例する。このことは、測定される散乱線は、機器・配管の外表面付近で散乱した放射線が主体で、内部で発生した散乱線の寄与は少ないことを意味している。つまり、外表面に腐食が存在し、図1の距離x0が大きくなると測定値は減少する。したがって、この傾向を用いて、先の座標センサ16の座標情報と相まって、腐食など減肉部Dにおける減肉深さdx0とその範囲分布の測定が可能である。なお、上述の傾向は、線源の位置が11’よりも検査対象表面S1により近い11の部位に位置しても同様であり、保温材M2が介在してもΔはほぼ1に近く、上述した検査を行うことができる。
【0025】
次に、図1、4を参照しながら、線源11と検出器14の位置関係について説明する。図4は、図1に示す線源11と検出器14の水平距離Lの値をそれぞれLa、Lb、Lc(La>Lb>Lc)とした場合に、検出器14で検出した計数値同士を比較したグラフであり、同グラフでは相対値を用いて比較してある。同グラフから、距離Lをより小さくし、線源11と検出器14を近接させた際に、検出器14先端から検査対象物M1の表面S1までの距離x0に対する計数値(相対値)Nの減少率はより急峻となる。検査にあっては、線源容器12が視野角ds内に入らなければよく、検査精度を向上させる観点から、実際には線源容器12はコリメーター15とx方向視で一部重なるくらいの位置に配置してもよい。
【0026】
ここで、検出信号制御部17における検出放射線の制御について簡単に説明する。本実施形態では、散乱線強度のカウントの際、エネルギー識別回路により特定のエネルギ範囲の散乱線だけをカウントする。放射線源11には放射性同位元素を用いるため、入射する放射線は一定のエネルギーを有する。一方、図1に示す散乱角φはほぼ一定の値になる。散乱放射線のエネルギーは散乱角によって決まるためほぼ一定になり、この値は測定配置より理論的に計算される。したがってカウントするエネルギー範囲をこの値に合わせることでSN比が向上する。
【0027】
次に、本発明に係る放射線検査装置を用い検査を行う場合の使用手順について断熱配管の検査を例にとって説明する。断熱配管の場合、配管表面を保温材で覆ってあり、その保温材の吸湿により配管表面に腐食が発生する。そこで、腐食の発生が懸念される領域に検査ヘッド2を配置し、配管表面に沿って走査させる。これにより、腐食による減肉が配管表面の形状として検出されることから、腐食の位置、分布、腐食深さ等を検知することができる。
【0028】
最後に、本発明の他の実施形態の可能性について言及する。なお、以下の各実施形態は上記実施形態と適宜組み合わせて実施してもよい。
【0029】
上記実施形態では、放射線としてγ線を用いたが、保温材M2を容易に透過し、検査対象物M1中の原子・電子との間でコンプトン散乱を行うのであれば、エックス線等、他の放射線を用いることができる。
【0030】
上記実施形態では、検査対象物M1の表面を保温材M2で覆った場合について説明した。しかし、放射線吸収率が低い材料であれば、保温材に限らず、他の介在物により検査対象の表面を覆ってもよい。また、保温材M2を有しない検査対象物の検査にも適用可能である。
【0031】
上記実施形態では、検査対象物M1外表面の減肉部Dを検出する場合について説明した。しかし、例えば、溶接跡といった突出部等の検出を行うことも可能であり、係る場合には、溶接箇所及びその形状・大きさ等を検出することができる。
【0032】
なお、特許請求の範囲の項に記入した符号は、あくまでも図面との対照を便利にするためのものにすぎず、該記入により本発明は添付図面の構成に限定されるものではない。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る放射線検査装置及び検査対象物の関係を示す説明図である。
【図2】検査対象となるエネルギー範囲の限定を説明するためのグラフである。
【図3】検出器−検査対象物表面間距離と散乱線強度との関係を示すグラフである。
【図4】検出器−検査対象物表面間距離と計数値との関係を示すグラフである。
【符号の説明】
1:放射線検出装置,2:検査ヘッド,3:処理ユニット,10:線源部,11:線源,12:線源容器,13:検出部,14:検出器,15:コリメーター,16:座標センサ,17:検出信号制御部,18:パーソナルコンピューター,S1:検査対象表面,S2:移動基準面,M1:検査対象物,M2:保温材
【発明の属する技術分野】
本発明は、コンプトン後方散乱線による放射線検査装置及び放射線検査方法に関するものである。さらに詳しくは、金属材料の表面形状の検査方法及び例えば保温材により囲まれた鋼管等の表面減肉を検査するための装置及び方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、コンプトン後方散乱線による放射線検査装置及び放射線検査方法としては、次の特許文献1に記載の如きものが知られている。
【0003】
【特許文献1】
特開平6−38949号公報
【0004】
同公報によれば、同公報の図6に示すように、エックス線を照射し、その後方散乱波をラインセンサ等の検出装置20で検出している。そして、左右2つの検出装置に異なる深さを分担させ、各深さ毎に得られる後方散乱波により検査対象19の内部を画像化している。
【0005】
同従来技術によれば、内部を可視化するために複雑な装置構成を要し、コスト高となる割に、物体表面の形状を検査するには不向きであった。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
かかる従来の実情に鑑みて、本発明は、構成が簡易で金属材料の表面形状を検査することの可能な放射線検査装置及び放射線検査方法を提供することを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するため、本発明に係る放射線検査装置の特徴構成は、コンプトン後方散乱線による検査に用いるものであって、金属材料である検査対象物の一方から同検査対象物に放射線を照射する線源と、同検査対象物から線源側に向かうコンプトン後方散乱線を検出する検出器とを有し、この検出器はコリメーターにより検査対象部の視野を限定される放射線カウンターであり、線源及び検出器は検査対象物の表面から離隔されており、検査対象物の表面形状を検査することにある。
【0008】
同特徴構成によれば、検出器は放射線カウンターであればよく、その他主要な構成要素としてコリメーターと線源等を設ければ足りるので、処理系統も簡素が可能であり、構成が簡易となる。線源及び検出器は検査対象物の表面から適度な距離離隔されており、検査対象物で散乱された散乱線がカウンターに到達する。そして、発明者らの実験により、検査対象物内部で散乱された放射線は減衰により検出器には到達せず、検査対象物表面近傍での散乱線が主として検出器に到達し、検出器の計数値と検出器及び検査対象物表面の距離とは相関を有することが判明した。かかる実用的な原理の確認により、検査対象物と検出器との距離として、検査対象物の表面形状を検査することが可能となった。
【0009】
上記特徴構成において、前記検出器の検出エネルギー範囲を限定するエネルギー識別回路を備えることが望ましい。散乱角と散乱線のエネルギーとの間には相関が存在するため、エネルギー範囲を限定することで、散乱角による幾何学的関連から所定の部位で散乱した散乱線のみを検出することになるので、他部位からの散乱線及び直接線等のノイズをカットし、検出精度を向上させることができる。
【0010】
ところで、例えば保温材で覆った配管は、表面の減肉が隠蔽され、検査が困難である。しかし、放射線は保温材を容易に透過するため、前記検査対象物と前記放射線検出装置との間に放射線吸収率が前記検査対象物よりも小さな介在物が存在している場合であっても検査が可能である。
【0011】
本発明に係る放射線検査方法の特徴は、上記いずれかに記載の特徴構成を有す放射線検査装置を検査対象物の表面から離隔した状態で同表面にほぼ沿わせて移動させ、検出器の計数値により表面位置を推定することにより前記検査対象物の表面形状を検査することにあり、前記放射線検査装置と前記検査対象物の表面との間に保温材が介在している場合にも有用である。
【0012】
【発明の効果】
このように、上記本発明に係る放射線検査装置及び放射線検査方法の特徴によれば、検出器及び検査対象物表面と検出器の計数値との相関を利用して、検査対象物と検出器との距離として、検査対象物の表面形状を検査することが可能となった。しかも、検出器は放射線カウンターであれば足り、装置全体の構成を簡素化し、安価で利用しやすい検査装置を提供し得るに至った。
【0013】
特に、エネルギー範囲を限定することで、異なる散乱角の他部位からの散乱線及び直接線であるノイズを低減して検出精度を向上させることが可能となった。
【0014】
そして、保温材等の被覆材で覆われた検査対象物を検査する際に、この被覆材を取り外すことなく、透過検査を簡単に行うことができるようになった。
【0015】
本発明の他の目的、構成、効果は以下の「発明の実施の形態」の項で明らかになるであろう。
【0016】
【発明の実施の形態】
次に、添付図面を参照しながら、本発明をさらに詳しく説明する。
図1は本発明に係る放射線検出装置1と検査対象との関係を示す概念図である。放射線検出装置1は、検査ヘッド2,処理ユニット3を備える。検査対象物M1はステンレス鋼等を含む鋼材や銅その他の金属が該当し、厚板や管として形成されたものが対象となりうる。保温材M2は原理的には存在しなくてもよいが、通常、保温材であり、検査対象物M1よりも放射線吸収率の小さな物質であればよい。本実施形態では、検査対象物M1の表面である検査対象表面S1に形成された減肉部Dを検査することを目的とする。
【0017】
保温材M2としては、特に吸収率の小さな物質であることが望ましい。保温材M2の外側である移動基準面S2には通常亜鉛メッキ鋼板等の板金が施されており、保温材M2の厚みx1だけ検査対象表面S1から隔たった位置で、この板金表面に沿って検査ヘッド2を移動させることとなる。保温材M2には、例えば、けい酸カルシュウム、はっ水性パーライト、グラスウール、ロックウール、ビーズ法ポリスチレンフォーム、押し出し法ポリスチレンフォーム、硬質ウレタンフォーム、ポリエチレンフォーム、フェノールフォーム等の材料・製造方法で形成された保温材が用いられる。
【0018】
検査ヘッド2は線源部10,検出部13,座標センサ16を備えている。検出部13は検査対象物M1に対して放射線であるγ線を照射する線源11とこれを収納する線源容器12とを備えている。線源11としては例えば241Amや57Co等、エネルギーが50−100keV程度のものを用いるのが望ましい。また、検出器14は放射線をカウントするCdTeなどの半導体検出器やシンチレーションカウンターであり、コリメーター15により限定された視野範囲から入射する後方散乱線のエネルギーを出力する。座標センサ16は接触又は非接触のエンコーダーであり、移動基準面S2と検査ヘッド2との相対移動量を二次元方向に分けて出力する。
【0019】
一方、処理ユニット3は、検出信号制御部17と汎用のパーソナルコンピューター18とを有している。検出信号制御部17は検出器14の出力信号のエネルギー識別回路と放射線カウントの計数回路とを有している。検出器14の出力信号の強度は、例えば図2の横軸に放射線のエネルギーとして表示され、各エネルギーにおける計数値の累積値が強度として図2の縦軸に表示される。図2の例では、50keV近傍の強度が高いため、50keV近傍のエネルギーのみをカウントするよう、検出信号制御部17のエネルギー識別回路を設定することで、ノイズの低減を図っている。すなわち、検出器14から送出されるパルスの強度を一定範囲に限定してカウントを行う。先の座標センサ16はパーソナルコンピューター18に検査ヘッド2の位置を二次元座標で識別できるように座標情報を送信する。
【0020】
ここで、図1を参照しながら動作原理を説明する。検出器14から距離x離れた検査対象物M1内における厚みdx、視野角dsの微小部分mを考える。この微小部分mの体積は、検出器14がコリメータ15を見込む立体角をdSとして、x2・dS・dxで与えられる。線源強度をIとすると、この部分に入射する放射線の強度はIcosφ/r2になる。ただしφは、微小部分mと線源11を結んだ直線P1が、コリメータの中心軸P2となす角度である。cosφ=x/rであることと、r=(x2+L2)1/2であることを考慮すると、この微小部分mでコンプトン散乱されて検出器に入射する強度dNは次式で表される。ただしKは散乱係数で、Δは機器・配管中の放射線の減衰率である。なお断熱保温材中の減衰は無視している。
【0021】
【数1】
dN=I・K・dS・x/(L2+x2)3/2・Δdx (1)
【0022】
仮に線源11の位置を検出器14の位置と同位置である符号11’の位置とし、Δ=1とすれば、この(1)式をx=x0(検査対象表面−検出器距離)から検査対象物である機器・配管の裏面まで積分することで、次式のように測定される全強度Nが得られる。なお、表現の簡素化のため、複数の係数をまとめてAと表現してある。
【0023】
【数2】
N=A/(x02+L2)1/2 (2)
【0024】
この式(2)を保温材M2を設けずに測定を行うシュミレーション例を図3に示す。図3に示すグラフの横軸は検出器14の先端と検査対象物表面S1間の距離x0で、理論上はコリメーター15の厚みを考慮していないため、x0=0を表示している。一方、同グラフの縦軸は検出器で測定される散乱線強度の相対値である。同グラフより、深さが1cm以下の範囲で変化が少ないが、コリメーター15は必ず存在してその厚さは1cmを簡単に越えるためこの部分は問題にはならない。深さが2cm以上の場合、強度は距離の約2乗に反比例して減少している。点線源からの放射線を測定した時も、測定値は距離の2乗に反比例する。このことは、測定される散乱線は、機器・配管の外表面付近で散乱した放射線が主体で、内部で発生した散乱線の寄与は少ないことを意味している。つまり、外表面に腐食が存在し、図1の距離x0が大きくなると測定値は減少する。したがって、この傾向を用いて、先の座標センサ16の座標情報と相まって、腐食など減肉部Dにおける減肉深さdx0とその範囲分布の測定が可能である。なお、上述の傾向は、線源の位置が11’よりも検査対象表面S1により近い11の部位に位置しても同様であり、保温材M2が介在してもΔはほぼ1に近く、上述した検査を行うことができる。
【0025】
次に、図1、4を参照しながら、線源11と検出器14の位置関係について説明する。図4は、図1に示す線源11と検出器14の水平距離Lの値をそれぞれLa、Lb、Lc(La>Lb>Lc)とした場合に、検出器14で検出した計数値同士を比較したグラフであり、同グラフでは相対値を用いて比較してある。同グラフから、距離Lをより小さくし、線源11と検出器14を近接させた際に、検出器14先端から検査対象物M1の表面S1までの距離x0に対する計数値(相対値)Nの減少率はより急峻となる。検査にあっては、線源容器12が視野角ds内に入らなければよく、検査精度を向上させる観点から、実際には線源容器12はコリメーター15とx方向視で一部重なるくらいの位置に配置してもよい。
【0026】
ここで、検出信号制御部17における検出放射線の制御について簡単に説明する。本実施形態では、散乱線強度のカウントの際、エネルギー識別回路により特定のエネルギ範囲の散乱線だけをカウントする。放射線源11には放射性同位元素を用いるため、入射する放射線は一定のエネルギーを有する。一方、図1に示す散乱角φはほぼ一定の値になる。散乱放射線のエネルギーは散乱角によって決まるためほぼ一定になり、この値は測定配置より理論的に計算される。したがってカウントするエネルギー範囲をこの値に合わせることでSN比が向上する。
【0027】
次に、本発明に係る放射線検査装置を用い検査を行う場合の使用手順について断熱配管の検査を例にとって説明する。断熱配管の場合、配管表面を保温材で覆ってあり、その保温材の吸湿により配管表面に腐食が発生する。そこで、腐食の発生が懸念される領域に検査ヘッド2を配置し、配管表面に沿って走査させる。これにより、腐食による減肉が配管表面の形状として検出されることから、腐食の位置、分布、腐食深さ等を検知することができる。
【0028】
最後に、本発明の他の実施形態の可能性について言及する。なお、以下の各実施形態は上記実施形態と適宜組み合わせて実施してもよい。
【0029】
上記実施形態では、放射線としてγ線を用いたが、保温材M2を容易に透過し、検査対象物M1中の原子・電子との間でコンプトン散乱を行うのであれば、エックス線等、他の放射線を用いることができる。
【0030】
上記実施形態では、検査対象物M1の表面を保温材M2で覆った場合について説明した。しかし、放射線吸収率が低い材料であれば、保温材に限らず、他の介在物により検査対象の表面を覆ってもよい。また、保温材M2を有しない検査対象物の検査にも適用可能である。
【0031】
上記実施形態では、検査対象物M1外表面の減肉部Dを検出する場合について説明した。しかし、例えば、溶接跡といった突出部等の検出を行うことも可能であり、係る場合には、溶接箇所及びその形状・大きさ等を検出することができる。
【0032】
なお、特許請求の範囲の項に記入した符号は、あくまでも図面との対照を便利にするためのものにすぎず、該記入により本発明は添付図面の構成に限定されるものではない。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る放射線検査装置及び検査対象物の関係を示す説明図である。
【図2】検査対象となるエネルギー範囲の限定を説明するためのグラフである。
【図3】検出器−検査対象物表面間距離と散乱線強度との関係を示すグラフである。
【図4】検出器−検査対象物表面間距離と計数値との関係を示すグラフである。
【符号の説明】
1:放射線検出装置,2:検査ヘッド,3:処理ユニット,10:線源部,11:線源,12:線源容器,13:検出部,14:検出器,15:コリメーター,16:座標センサ,17:検出信号制御部,18:パーソナルコンピューター,S1:検査対象表面,S2:移動基準面,M1:検査対象物,M2:保温材
Claims (5)
- コンプトン後方散乱線による放射線検査装置であって、金属材料である検査対象物(M1)の一方から同検査対象物(M1)に放射線を照射する線源(11)と、同検査対象物(M1)から線源(11)側に向かうコンプトン後方散乱線を検出する検出器(14)とを有し、この検出器(14)はコリメーター(15)により検査対象部の視野を限定される放射線カウンターであり、線源(11)及び検出器(14)は検査対象物(M1)の表面(S1)から離隔されており、検査対象物(M1)の表面形状を検査することを特徴とする放射線検査装置。
- 前記検出器(14)の検出エネルギー範囲を限定するエネルギー識別回路を備えることを特徴とする請求項1に記載の放射線検査装置。
- 前記検査対象物(M1)と前記放射線検出装置との間に放射線吸収率が前記検査対象物(M1)よりも小さな介在物(M2)が存在していることを特徴とする請求項1又は2のいずれかに記載の放射線検査装置。
- 請求項1〜3のいずれかに記載の放射線検査装置を用いた放射線検査方法であって、前記放射線検査装置を検査対象物(M1)の表面(S1)から離隔した状態で同表面(S1)にほぼ沿わせて移動させ、検出器(14)の計数値により表面位置を推定することにより前記検査対象物(M1)の表面形状を検査することを特徴とする放射線検査方法。
- 前記放射線検査装置と前記検査対象物(M1)の表面(S1)との間に保温材(M2)が介在していることを特徴とする請求項4に記載の放射線検査方法。
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---|---|---|---|
JP2003036954A JP2004245729A (ja) | 2003-02-14 | 2003-02-14 | 放射線検査装置及び放射線検査方法 |
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JP (1) | JP2004245729A (ja) |
Cited By (4)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
CN1779451B (zh) * | 2004-11-26 | 2010-04-28 | 清华大学 | 一种用放射源对液体进行背散射安全检测的装置 |
JP2010249785A (ja) * | 2009-04-20 | 2010-11-04 | Central Res Inst Of Electric Power Ind | 非破壊検査方法及びその装置 |
JP2011128007A (ja) * | 2009-12-17 | 2011-06-30 | Ihi Corp | X線透視装置及びx線透視方法 |
JP2020091153A (ja) * | 2018-12-04 | 2020-06-11 | 東日本旅客鉄道株式会社 | 構造物検査装置及び構造物検査方法 |
-
2003
- 2003-02-14 JP JP2003036954A patent/JP2004245729A/ja active Pending
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