JP2004244535A - ビニルエーテルポリマーの製造方法 - Google Patents
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Abstract
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、ビニルエーテルポリマーの製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
一般に、リビングカチオン重合法では、その生長末端のカチオンが安定化されている(移動反応や停止反応が起こらない)ために、重合の制御が可能であり、分子量分布の狭い重合体やブロック共重合体を得ることができる。また、末端に他の反応性官能基(例えば、水酸基、カルボキシル基、アミノ基、重合性ビニル基など)を定量的に効率よく導入することができるため、反応性高分子ブレンド剤等の高分子反応原料を容易に得る事ができる。また、ビニルエーテルモノマーの種類を選択して重合し、ポリマー中の側鎖の官能基変換操作をすることで親水化したり、両親媒性ブロック共重合体を製造したりし、新規な界面活性剤等として使用することも可能である。以上のように、リビングカチオン重合法で得られるポリマーは、高分子材料の高機能、高性能化が期待できる為に、工業的に非常に有用である。
【0003】
ビニルエーテルのリビングカチオン重合方法は、例えば非特許文献1に記載されている。これらの重合方法の多くは、室温よりかなり低い低温条件が必要であり、室温付近で重合すると、得られるポリマーの分子量分布が広くなるか、あるいは、二峰性のポリマーが得られる。特許文献1にもビニルエーテルのリビングカチオン重合方法が記載されているが、添加剤としてホウ素化合物、非特許文献2では、テトラブチルアンモニウムクロリド等のアンモニウム塩やホスホニウム塩のような比較的高価な添加剤を必要とすることもあり、工業的製造方法としてはさらに検討が必要である。
【0004】
一方、非特許文献3には、低温条件を必要とせずかつ高収率でリビング重合が進行する例が記載されている。しかし、本法は重合開始剤に対して、当量以上のルイス酸が必要であり、比較的低分子量のポリマーを製造する際には高価なルイス酸を多量に使用する事になるために、工業的に有利とは言えない。
【0005】
また、非特許文献4には、ビニルエーテルとしてイソブチルビニルエーテルを用い、0℃で酢酸/四臭化スズ(SnBr4)/1,4−ジオキサンまたは2,6−ジ−tert−ブチルメチルピリジンを用いた系でリビング重合が進行する事が報告されている。この方法では、開始剤に対して0.1当量以上のルイス酸が必要である。よって、この方法を用いて比較的低分子量の構造の制御されたビニルエーテルポリマーを製造するためには、低温でかつ高価なルイス酸が多量に必要となるので、やはり工業的に有利でない。
【0006】
【特許文献1】
特開平7−62011号公報
【非特許文献1】
新高分子実験学 第2巻 高分子の合成・反応(1)−付加系高分子の合成− 第3章 カチオン重合
【非特許文献2】
マクロモレキュールズ(Macromolecules.), 26, 1643−1649 (1993)
【非特許文献3】
マクロモレキュールズ(Macromolecules.), 22, 1009−1013 (1989)
【非特許文献4】
J. Polym. Sci. Part A: Polymer Chemistry 36,3173−3185(1998)
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、簡便に、高収率で、工業的に有利にビニルエーテルリビングポリマーを製造することができる製造方法を提供することにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明は、以下の[1]〜[10]を提供する。
[1] 一般式(I)
【0009】
【化3】
【0010】
(式中、R1は、水素原子、置換もしくは非置換の低級アルキル、置換もしくは非置換のシクロアルキル、置換もしくは非置換のアリールまたは置換もしくは非置換のアラルキルを表し、Yは、アシロキシル基、アルコキシル基、ヒドロキシル基またはハロゲン原子を表す)で表される基を分子中に少なくとも1個含有する化合物及びルイス酸の存在下において、ビニルエーテルを滴下して重合することを特徴とするビニルエーテルポリマーの製造方法。
[2]ビニルエーテルが、一般式(II)
【0011】
【化4】
【0012】
(式中、R2は、置換もしくは非置換の低級アルキル、置換もしくは非置換のシクロアルキル、置換もしくは非置換のアリールまたは置換もしくは非置換のアラルキルを表し、R3、R4およびR5は、同一または異なって、水素原子、置換もしくは非置換の低級アルキル、置換もしくは非置換のシクロアルキル、置換もしくは非置換のアリールまたは置換もしくは非置換のアラルキルを表す)で表されるビニルエーテルである[1]記載のビニルエーテルポリマーの製造方法。
[3]一般式(I)の式中のYがアシロキシル基である[1]〜[2]いずれかに記載のビニルエーテルポリマーの製造方法。
[4]ルイス酸がSnX4、SnX2、ZnX2またはTiX4(式中、XはCl、BrまたはIを表す)である[1]〜[3]いずれかに記載のビニルエーテルポリマーの製造方法。
[5]ルイス塩基性化合物を反応系に添加する、[1]〜[4]いずれかに記載の製造方法。
[6]添加するルイス塩基性化合物がエステル化合物である、[5]記載のビニルエーテルポリマーの製造方法。
[7]重合反応の温度が0〜100℃である、[1]〜[6]いずれかに記載のビニルエーテルポリマーの製造方法。
[8]一般式(I)で表される基を分子中に少なくとも1個含有する化合物の1モルに対して0.0001〜1.0モルのルイス酸を使用する、[1]〜[7]いずれかに記載のビニルエーテルポリマーの製造方法。
[9] [1]〜[8]いずれかに記載の方法により製造することができる、ビニルエーテルポリマー。
[10] 数平均分子量に対する重量平均分子量の比Mw/Mnが1以上1.3以下であることを特徴とする[9]記載のビニルエーテルポリマー。
【0013】
【発明の実施の形態】
一般式(I)および(II)中の基の定義において、低級アルキルとしては、例えば炭素数1〜8の直鎖または分岐状のものがあげられ、その具体例としては、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、sec−ブチル、tert−ブチル、イソブチル、ペンチル、イソペンチル、ネオペンチル、ヘキシル、ヘプチル、オクチル等があげられる。
シクロアルキルとしては、例えば炭素数3〜10のものがあげられ、その具体例としては、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチル、シクロオクチル、シクロノニル、シクロデシル等があげられる。
【0014】
アリールまたはアラルキルのアリール部分としては、例えば、炭素数6〜14のアリールがあげられ、その具体例としては、フェニル、ナフチル、アントリル等があげられ、アラルキルのアルキレン部分としては、前記の低級アルキルから水素原子を1つまたは2つ除いたもの等があげられる。アラルキルの具体例としては、ベンジル、フェネチル、フェニルプロピル、ナフチルメチル、ナフチルエチル、ジフェニルメチル等があげられる。
置換低級アルキル、置換シクロアルキル、置換アリールまたは置換アラルキルにおける置換基としては、低級アルキル、低級アルコキシ、低級アルカノイルオキシ、ハロゲン原子等があげられる。その置換数は、1〜3であるのが好ましい。
置換基の定義において、低級アルキル、低級アルコキシ、低級アルカノイルオキシのアルキル部分としては、前記低級アルキルであげたものと同様のものがあげられ、ハロゲン原子としては、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素の各原子があげられる。
【0015】
一般式(I)中、Yが表すアシロキシル基のアシル部分としては、アセチル、プロピオニル、ブチリル、イソブチリル、ヘキサノイル、シクロヘキサノイル、ベンゾイル、トルイル(オルト−、パラ−、メタ−)等があげられる。また、一般式(I)中、Yが表すアルコキシル基のアルキル部分及びYが表すハロゲン原子としては、前記と同様のものがあげられる。一般式(I)で表わされる基を分子中に少なくとも1個含有する化合物としては、例えば、1−エトキシエチルアセテート、1−イソブトキシエチルアセテート、1−(1−アセトキシエトキシ)−4−(1−アセトキシエトキシ)ブタン、1−(1−アセトキシエトキシメチル)−4−(1−アセトキシエトキシメチル)シクロへキサン、アセトアルデヒドジメチルアセタール、アセトアルデヒドジエチルアセタール、アセトアルデヒドジブチルアセタール、マロンアルデヒドテトラメチルアセタール、マロンアルデヒドビスジエチルアセタール、1−イソブトキシエチルクロライド、1−イソブトキシエチルブロマイド、1−イソブトキシエチルヨーダイド、1−ブトキシエチルクロライド、1−イソブトキシプロピルクロライド等があげられ、これらは、単独でまたは二種以上を混合して使用される。
これらの化合物は、例えば、「新高分子実験学 第2巻 高分子の合成・反応(1)−付加系高分子の合成」、p.249、共立出版株式会社、1995年6月15日発行に記載された方法に準じて合成することができる。
一般式(I)で表される基を分子中に少なくとも1個含有する化合物において、R1は置換もしくは非置換の低級アルキルであるのが好ましい。
また、一般式(I)で表わされる基を分子中に少なくとも1個含有する化合物の、該基の含有個数は、目的とする重合体の骨格に応じて適宜選択すればよく、この数が1又は2の場合は、直鎖の骨格を有する重合体を得ることができ、3以上の場合は分岐状の骨格を有する重合体を得ることができる。
【0016】
本発明において、ビニルエーテルとしては、一般式(II)
【0017】
【化5】
【0018】
(式中、 R2、R3、R4およびR5は、それぞれ前記と同義である)で表されるビニルエーテルが好ましい。
一般式(II)で表されるビニルエーテルにおいて、R3、R4およびR5が水素原子であり、R2が置換もしくは非置換の低級アルキルであるものが好ましく使用され、例えば、メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル、プロピルビニルエーテル、ブチルビニルエーテル、イソブチルビニルエーテル、メトキシエチルビニルエーテル等が好ましく使用される。前記のビニルエーテルは、単独でまたは二種以上を混合して使用される。
【0019】
上記一般式(I)で表わされる基を分子中に少なくとも1個含有する化合物の使用量は、特には限定されないが、ビニルエーテル1モルに対して0.001〜0.5モルであるのが好ましく、0.01〜0.3モルであるのがより好ましい。
【0020】
本発明において、ルイス酸としては、ビニル系化合物の重合に一般的に用いられるルイス酸であればよいが、例えば、SnZ4、SnZ2、ZnZ2およびTiZ4(式中、Zはハロゲン原子、低級アルキル、低級アルコキシ、またはフェノキシである)から選ばれる化合物が好ましく用いられ(ここでハロゲン原子、低級アルキル、低級アルコキシとしてはそれぞれ前記と同様のものがあげられる)、特に、SnX4、SnX2、ZnX2およびTiX4(式中、XはCl、BrまたはIを表す)から選ばれるルイス酸、例えば、四塩化スズ(SnCl4)、四臭化スズ(SnBr4)、四ヨウ化スズ(SnI4)、二塩化亜鉛(ZnCl2)、二塩化スズ(SnCl2)、二臭化亜鉛(ZnBr2)、二ヨウ化亜鉛(ZnI2)、四塩化チタン(TiCl4)、四臭化チタン(TiBr4)等があげられる。前記した中でも、スズのハロゲン化物が好ましく、具体的には四塩化スズ(SnCl4)、四臭化スズ(SnBr4)、または四ヨウ化スズ(SnI4)が好ましく使用される。中でも、四塩化スズ(SnCl4)が好ましい。
【0021】
ルイス酸の使用量は、特には限定されないが、一般式(I)で表わされる基を分子中に少なくとも1個含有する化合物の1モルに対して0.0001〜1.0モルであるのが好ましく、0.001〜0.1モルであるのがより好ましい。この量が0.0001モル以上であると、反応の進行が速く、0.1モル以下であるとコストの点で好ましい。本発明の製造方法では、少量のルイス酸添加で重合が可能であり、製造コストを低減できる。
【0022】
重合反応の際には、必要に応じて、ルイス塩基性化合物を添加してもよい。ルイス塩基性化合物を添加すると、重合速度を制御し、連鎖移動などの副反応を抑制する作用を奏し、また分子量分布を狭くするのに有効である。ルイス塩基性化合物の具体例としては、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸tert−ブチル、酢酸イソプロピル、酢酸フェニル、酪酸エチル、ステアリン酸エチル、安息香酸エチル、安息香酸フェニル、フタル酸ジエチル、イソフタル酸ジエチル、クロロ酢酸エチル、ジエチルカーボネートなどのエステル化合物、ジオキサン、テトラヒドロフラン、ジエチルエーテル、テトラヒドロチオフェン、2,6−ジメチルピリジン等があげられる。前記した中でも、エステル化合物が好ましく、具体的には酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸tert−ブチル、酢酸イソプロピル、酢酸フェニル、酪酸エチル、ステアリン酸エチル、安息香酸エチル、安息香酸フェニル、フタル酸ジエチル、イソフタル酸ジエチル等が好ましく使用される。ルイス塩基性化合物の使用量は、特には限定されないが、ビニルエーテル1モルに対して0.001〜100モルであるのが好ましい。
【0023】
重合反応は、溶媒の存在下で行ってもよい。溶媒は、反応に不活性なものであれば、特に限定されず、例えば、ベンゼン、トルエン等の芳香族炭化水素、塩化メチル、塩化メチレン、1,2−ジクロロエタン等のハロゲン化炭化水素、ニトロメタン、ニトロエタン等のニトロ化合物、へキサン、ヘプタン、オクタン、ノナン等の飽和炭化水素、酢酸エチル等、またはこれらの混合溶媒等があげられるが、中でも、ベンゼン、トルエン等の芳香族炭化水素が好ましく使用される。溶媒の使用量は、特には限定されないが、ビニルエーテルに対して、0.4〜100倍量であるのが好ましい。
重合反応の温度は、特には限定されないが、−80〜100℃であるのが好ましく、0〜100℃であるのがより好ましい。本発明の製造方法は、室温及びそれ以上の温度で実施することが可能であり、低温条件を必要とした従来のリビングカチオン重合方法に比べて、工業的に有利である。重合反応の時間は特に限定されないが、0.5〜24時間であるのが好ましい。
【0024】
本発明の製造方法におけるビニルエーテルの仕込み方法としては、反応系に滴下する方法を用いることが必要である。滴下方法は、特には限定されないが、例えば、連続滴下法や分割滴下法等で行なう事が可能で、連続滴下法であるのが好ましい。滴下に要する時間は特に限定されないが、0.1〜24時間であるのが好ましく、30分〜2時間であるのがより好ましい。
重合反応液からのビニルエーテルポリマーの回収は、アルカリ性アルコール溶液等の添加で重合を停止させた後、水洗等により重合触媒を除去後、濃縮する方法等にて行われる。
【0025】
本発明の製造方法は、ビニルエーテルポリマーを、簡便に、高収率で製造することができる、工業的な製造に適した製造方法である。また、製造されたビニルエーテルポリマーとしては、分子量分布が非常に狭いMw/Mnが1以上1.3以下であるものが好ましく、1以上1.2以下であるものがより好ましい。
【0026】
本発明の製造方法によれば、分子量の制御が可能な上に、生長末端のカチオンは安定化されている(移動反応や停止反応が起こらない)ために、重合の制御が可能であり、分子量分布の狭い重合体やブロック共重合体を得ることができる。
重合は、当業者に周知の方法、例えば特開平7−62011号公報、特開平7−138335号公報、特開平10−130315号公報、又は特開平11−80221号公報に記載された方法等により行なうことができる。
【0027】
さらに、本発明のビニルエーテルポリマーの末端に他の官能基、例えば、水酸基、カルボキシル基、アミノ基、重合性ビニル基などを導入することにより、反応性高分子ブレンド剤等の高分子反応原料を容易に得ることができる。該導入は、例えば、Macromolecules, 20 1 (1987)に記載された方法により行なうことができる。また、ビニルエーテルモノマーの種類を選択して重合し、ポリマー中の側鎖を、例えばエステルからカルボキシル基もしくは水酸基または、イミド基からアミノ基へ加水分解するなどして、官能基変換して親水化することにより、水溶性高分子や両親媒性ブロックポリマーも製造可能である。このような方法は、例えば、Macromolecules, 20 2045(1987)、高分子学会予稿集、37巻、590頁、1988年等に記載された方法により行なうことができる。
かくして本発明の製造方法で得られるビニルエーテルポリマーは、高分子材料の高機能、高性能化が可能であり、工業的に非常に有用である。
【0028】
【実施例】
次に本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明はこれら実施例により限定されるものではない。
[調製例]
1−(1−アセトキシエトキシ)−4−(1−アセトキシエトキシ)ブタン(式(I)の化合物)の合成
三方コック付きシュレンク管に、1,4−ブタンジオールジビニルエーテル59ml、酢酸47mlを測り取り、攪拌子を入れて一端を空気に開放した塩化カルシウム乾燥管を取り付け、60℃で3時間反応させた。反応終了後、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液で3回、飽和塩化ナトリウム水溶液で3回洗浄し、得られた無色液体に水素化カルシウムを添加して蒸留精製した。合成物の構造は、1H−NMR測定により確認した。
【0029】
【化6】
【0030】
1H−NMR(400MHz,CDCl3)δ(ppm): c 1.38(CH3)
e 1.60〜1.70
a 2.07
d 3.5、3.7
b 5.9
【0031】
実施例1:ポリエチルビニルエーテルの製造
乾燥した50mlガラス製フラスコに、上記方法で合成した式(I)の化合物1−(1−アセトキシエトキシ)−4−(1−アセトキシエトキシ)ブタン0.551gを測り取り、攪拌子を入れて三方コックを取り付けて窒素置換した。その後、トルエン1ml、酢酸エチル3.0mlを加えた。この溶液に6.0mmol/lの四塩化スズ(ルイス酸として)のトルエン溶液1.0mlを25℃で添加し、十分に撹拌した。その後、エチルビニルエーテル5.0mlを50分間かけて滴下した。滴下終了後、80分間熟成してこの重合溶液にアンモニア入りメタノール5mlを添加して重合を停止させた。この溶液をヘキサンで希釈後、水酸化ナトリウム水溶液、水の順に洗浄し、溶媒を留去し、両末端にアセタールを有するポリエチルビニルエーテル4.1gを回収した。このときのポリエチルビニルエーテルの数平均分子量Mn(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー法により測定した。ポリスチレン換算値)が、2,500であり、分子量分布Mw/Mnが1.11であった。ポリマーの構造が、両末端にアセタールを有するポリエチルビニルエーテルであることが、1H−NMR測定により確認された。
【0032】
【化7】
【0033】
1H−NMR(400MHz,CDCl3)δ(ppm): i+c 1.15(CH3)
a+a’+e 1.30〜2.0
g 2.08
b+d+f+h 3.15〜3.85
f’ 6.00
ゲルパーミエーションクロマトグラフィー分析は、以下の条件により行った。以下の実施例においても同様の条件で分析を行い、数平均分子量および分子量分布Mw/Mnの測定を行った。
(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー分析条件)
検出器:RIおよびUV
カラム: TSK guardcolumn Super H−H、TSK gel Super HM−M、TSK gel Super HM−N、TSK gel Super HM−Lを接続
カラムオーブン:40℃
展開溶媒:テトラヒドロフラン、流速0.5ml/分
内部標準物質:ポリスチレン
【0034】
実施例2:ポリイソブチルビニルエーテルの製造
50mlガラス製フラスコに、1−(1−アセトキシエトキシ)−4−(1−アセトキシエトキシ)ブタン2.2gを測り取り、攪拌子を入れて三方コックを取り付けて窒素置換した。その後、酢酸エチル12.0mlを加えた。この溶液に6.0mmol/lの四塩化スズのトルエン溶液8.0mlを25℃で添加し、十分に撹拌した。その後、イソブチルビニルエーテル20.0mlを50分間かけて滴下した。滴下終了後、20分間熟成してこの重合溶液にアンモニア入りメタノール10mlを添加して重合を停止させた。添加終了後の操作は、実施例1と同様である。結果、ポリイソブチルビニルエーテル17.1gを回収した。このときのポリイソブチルビニルエーテルの数平均分子量Mn(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー法により測定した。ポリスチレン換算値)が、2,500であり、分子量分布Mw/Mnが1.12であった。ポリマーの構造が、両末端にアセタールを有するポリイソブチルビニルエーテルであることが1H−NMR測定により確認された。
【0035】
【化8】
【0036】
1H−NMR(400MHz,CDCl3)δ(ppm): j 0.90(CH3)
c 1.10〜1.20(CH3)
a+a’+e+i 1.30〜2.0
g 2.06(CH3)
b+d+f+h 3.00〜3.75
f’ 5.9〜6.1
【0037】
比較例1:ポリエチルビニルエーテルの製造
1−(1−アセトキシエトキシ)−4−(1−アセトキシエトキシ)ブタン0.531gを測り取り、攪拌子を入れて三方コックを取り付けて窒素置換した。その後、トルエン1ml、酢酸エチル3.0ml、エチルビニルエーテル5.0mlを加えた。この溶液に6.0mmol/lの四塩化スズのトルエン溶液1.0mlを25℃で一気に添加し重合を開始し、4時間10分熟成後、実施例1と同様の反応後処理操作を行なった。結果、ポリエチルビニルエーテル4.13gを回収した。このときのポリエチルビニルエーテルは二峰性ポリマーであった。[数平均分子量Mn≧6,500:Mn≦6,500=17:83(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー法により測定した。ポリスチレン換算値)]
【0038】
比較例2:ポリイソブチルビニルエーテルの製造
50mlガラス製フラスコに、1−(1−アセトキシエトキシ)−4−(1−アセトキシエトキシ)ブタン0.551gを測り取り、攪拌子を入れて三方コックを取り付けて窒素置換した。その後、トルエン3.5ml、酢酸エチル0.5ml、イソブチルビニルエーテル5.0mlを加えた。この溶液に6.0mmol/lの四塩化スズのトルエン溶液1.0mlを25℃で一気に添加し、重合を開始し、3時間熟成後、実施例1と同様の反応後処理操作を行なった。結果、ポリイソブチルビニルエーテル4.55gを回収した。このときのポリイソブチルビニルエーテルは、二峰性ポリマーであった。[数平均分子量Mn≧7,800:Mn≦7,800=17:83(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー法により測定した。ポリスチレン換算値)]
ビニルエーテルモノマーを滴下して重合を行なった実施例1及び2では、25℃という温度で、分子量分布Mw/Mnが1.11または1.12という分子量の制御された重合が可能であった。これに対して、ビニルエーテルモノマーを滴下せずに、初発で全量添加して、25℃で重合を行なった比較例1及び2では、二峰性ポリマーが得られた。
【0039】
【発明の効果】
本発明により、式(I)の化合物の存在下、ビニルエーテルモノマーを滴下することで、簡便に、高収率で、工業的に有利にビニルエーテルポリマーが製造できる製造方法が提供される。加えて、本法の製造方法によればポリマーの生長末端のカチオンは安定化されている(移動反応や停止反応が起こらない)ために、重合の制御が可能であり、分子量分布の狭い重合体やブロック共重合体を得ることができる。また、末端に他の官能基を導入したりし、反応性高分子ブレンド剤等の高分子反応原料を容易に得る事ができる。また、ビニルエーテルモノマーの種類を選択して重合し、ポリマー中の側鎖を官能基変換することで、水溶性高分子や両親媒性ブロックポリマーも製造可能である。このように、本発明の方法で得られたビニルエーテルポリマーは、高機能化、又は高性能化された高分子材料の原料とすることができる。
【発明の属する技術分野】
本発明は、ビニルエーテルポリマーの製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
一般に、リビングカチオン重合法では、その生長末端のカチオンが安定化されている(移動反応や停止反応が起こらない)ために、重合の制御が可能であり、分子量分布の狭い重合体やブロック共重合体を得ることができる。また、末端に他の反応性官能基(例えば、水酸基、カルボキシル基、アミノ基、重合性ビニル基など)を定量的に効率よく導入することができるため、反応性高分子ブレンド剤等の高分子反応原料を容易に得る事ができる。また、ビニルエーテルモノマーの種類を選択して重合し、ポリマー中の側鎖の官能基変換操作をすることで親水化したり、両親媒性ブロック共重合体を製造したりし、新規な界面活性剤等として使用することも可能である。以上のように、リビングカチオン重合法で得られるポリマーは、高分子材料の高機能、高性能化が期待できる為に、工業的に非常に有用である。
【0003】
ビニルエーテルのリビングカチオン重合方法は、例えば非特許文献1に記載されている。これらの重合方法の多くは、室温よりかなり低い低温条件が必要であり、室温付近で重合すると、得られるポリマーの分子量分布が広くなるか、あるいは、二峰性のポリマーが得られる。特許文献1にもビニルエーテルのリビングカチオン重合方法が記載されているが、添加剤としてホウ素化合物、非特許文献2では、テトラブチルアンモニウムクロリド等のアンモニウム塩やホスホニウム塩のような比較的高価な添加剤を必要とすることもあり、工業的製造方法としてはさらに検討が必要である。
【0004】
一方、非特許文献3には、低温条件を必要とせずかつ高収率でリビング重合が進行する例が記載されている。しかし、本法は重合開始剤に対して、当量以上のルイス酸が必要であり、比較的低分子量のポリマーを製造する際には高価なルイス酸を多量に使用する事になるために、工業的に有利とは言えない。
【0005】
また、非特許文献4には、ビニルエーテルとしてイソブチルビニルエーテルを用い、0℃で酢酸/四臭化スズ(SnBr4)/1,4−ジオキサンまたは2,6−ジ−tert−ブチルメチルピリジンを用いた系でリビング重合が進行する事が報告されている。この方法では、開始剤に対して0.1当量以上のルイス酸が必要である。よって、この方法を用いて比較的低分子量の構造の制御されたビニルエーテルポリマーを製造するためには、低温でかつ高価なルイス酸が多量に必要となるので、やはり工業的に有利でない。
【0006】
【特許文献1】
特開平7−62011号公報
【非特許文献1】
新高分子実験学 第2巻 高分子の合成・反応(1)−付加系高分子の合成− 第3章 カチオン重合
【非特許文献2】
マクロモレキュールズ(Macromolecules.), 26, 1643−1649 (1993)
【非特許文献3】
マクロモレキュールズ(Macromolecules.), 22, 1009−1013 (1989)
【非特許文献4】
J. Polym. Sci. Part A: Polymer Chemistry 36,3173−3185(1998)
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、簡便に、高収率で、工業的に有利にビニルエーテルリビングポリマーを製造することができる製造方法を提供することにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明は、以下の[1]〜[10]を提供する。
[1] 一般式(I)
【0009】
【化3】
【0010】
(式中、R1は、水素原子、置換もしくは非置換の低級アルキル、置換もしくは非置換のシクロアルキル、置換もしくは非置換のアリールまたは置換もしくは非置換のアラルキルを表し、Yは、アシロキシル基、アルコキシル基、ヒドロキシル基またはハロゲン原子を表す)で表される基を分子中に少なくとも1個含有する化合物及びルイス酸の存在下において、ビニルエーテルを滴下して重合することを特徴とするビニルエーテルポリマーの製造方法。
[2]ビニルエーテルが、一般式(II)
【0011】
【化4】
【0012】
(式中、R2は、置換もしくは非置換の低級アルキル、置換もしくは非置換のシクロアルキル、置換もしくは非置換のアリールまたは置換もしくは非置換のアラルキルを表し、R3、R4およびR5は、同一または異なって、水素原子、置換もしくは非置換の低級アルキル、置換もしくは非置換のシクロアルキル、置換もしくは非置換のアリールまたは置換もしくは非置換のアラルキルを表す)で表されるビニルエーテルである[1]記載のビニルエーテルポリマーの製造方法。
[3]一般式(I)の式中のYがアシロキシル基である[1]〜[2]いずれかに記載のビニルエーテルポリマーの製造方法。
[4]ルイス酸がSnX4、SnX2、ZnX2またはTiX4(式中、XはCl、BrまたはIを表す)である[1]〜[3]いずれかに記載のビニルエーテルポリマーの製造方法。
[5]ルイス塩基性化合物を反応系に添加する、[1]〜[4]いずれかに記載の製造方法。
[6]添加するルイス塩基性化合物がエステル化合物である、[5]記載のビニルエーテルポリマーの製造方法。
[7]重合反応の温度が0〜100℃である、[1]〜[6]いずれかに記載のビニルエーテルポリマーの製造方法。
[8]一般式(I)で表される基を分子中に少なくとも1個含有する化合物の1モルに対して0.0001〜1.0モルのルイス酸を使用する、[1]〜[7]いずれかに記載のビニルエーテルポリマーの製造方法。
[9] [1]〜[8]いずれかに記載の方法により製造することができる、ビニルエーテルポリマー。
[10] 数平均分子量に対する重量平均分子量の比Mw/Mnが1以上1.3以下であることを特徴とする[9]記載のビニルエーテルポリマー。
【0013】
【発明の実施の形態】
一般式(I)および(II)中の基の定義において、低級アルキルとしては、例えば炭素数1〜8の直鎖または分岐状のものがあげられ、その具体例としては、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、sec−ブチル、tert−ブチル、イソブチル、ペンチル、イソペンチル、ネオペンチル、ヘキシル、ヘプチル、オクチル等があげられる。
シクロアルキルとしては、例えば炭素数3〜10のものがあげられ、その具体例としては、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチル、シクロオクチル、シクロノニル、シクロデシル等があげられる。
【0014】
アリールまたはアラルキルのアリール部分としては、例えば、炭素数6〜14のアリールがあげられ、その具体例としては、フェニル、ナフチル、アントリル等があげられ、アラルキルのアルキレン部分としては、前記の低級アルキルから水素原子を1つまたは2つ除いたもの等があげられる。アラルキルの具体例としては、ベンジル、フェネチル、フェニルプロピル、ナフチルメチル、ナフチルエチル、ジフェニルメチル等があげられる。
置換低級アルキル、置換シクロアルキル、置換アリールまたは置換アラルキルにおける置換基としては、低級アルキル、低級アルコキシ、低級アルカノイルオキシ、ハロゲン原子等があげられる。その置換数は、1〜3であるのが好ましい。
置換基の定義において、低級アルキル、低級アルコキシ、低級アルカノイルオキシのアルキル部分としては、前記低級アルキルであげたものと同様のものがあげられ、ハロゲン原子としては、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素の各原子があげられる。
【0015】
一般式(I)中、Yが表すアシロキシル基のアシル部分としては、アセチル、プロピオニル、ブチリル、イソブチリル、ヘキサノイル、シクロヘキサノイル、ベンゾイル、トルイル(オルト−、パラ−、メタ−)等があげられる。また、一般式(I)中、Yが表すアルコキシル基のアルキル部分及びYが表すハロゲン原子としては、前記と同様のものがあげられる。一般式(I)で表わされる基を分子中に少なくとも1個含有する化合物としては、例えば、1−エトキシエチルアセテート、1−イソブトキシエチルアセテート、1−(1−アセトキシエトキシ)−4−(1−アセトキシエトキシ)ブタン、1−(1−アセトキシエトキシメチル)−4−(1−アセトキシエトキシメチル)シクロへキサン、アセトアルデヒドジメチルアセタール、アセトアルデヒドジエチルアセタール、アセトアルデヒドジブチルアセタール、マロンアルデヒドテトラメチルアセタール、マロンアルデヒドビスジエチルアセタール、1−イソブトキシエチルクロライド、1−イソブトキシエチルブロマイド、1−イソブトキシエチルヨーダイド、1−ブトキシエチルクロライド、1−イソブトキシプロピルクロライド等があげられ、これらは、単独でまたは二種以上を混合して使用される。
これらの化合物は、例えば、「新高分子実験学 第2巻 高分子の合成・反応(1)−付加系高分子の合成」、p.249、共立出版株式会社、1995年6月15日発行に記載された方法に準じて合成することができる。
一般式(I)で表される基を分子中に少なくとも1個含有する化合物において、R1は置換もしくは非置換の低級アルキルであるのが好ましい。
また、一般式(I)で表わされる基を分子中に少なくとも1個含有する化合物の、該基の含有個数は、目的とする重合体の骨格に応じて適宜選択すればよく、この数が1又は2の場合は、直鎖の骨格を有する重合体を得ることができ、3以上の場合は分岐状の骨格を有する重合体を得ることができる。
【0016】
本発明において、ビニルエーテルとしては、一般式(II)
【0017】
【化5】
【0018】
(式中、 R2、R3、R4およびR5は、それぞれ前記と同義である)で表されるビニルエーテルが好ましい。
一般式(II)で表されるビニルエーテルにおいて、R3、R4およびR5が水素原子であり、R2が置換もしくは非置換の低級アルキルであるものが好ましく使用され、例えば、メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル、プロピルビニルエーテル、ブチルビニルエーテル、イソブチルビニルエーテル、メトキシエチルビニルエーテル等が好ましく使用される。前記のビニルエーテルは、単独でまたは二種以上を混合して使用される。
【0019】
上記一般式(I)で表わされる基を分子中に少なくとも1個含有する化合物の使用量は、特には限定されないが、ビニルエーテル1モルに対して0.001〜0.5モルであるのが好ましく、0.01〜0.3モルであるのがより好ましい。
【0020】
本発明において、ルイス酸としては、ビニル系化合物の重合に一般的に用いられるルイス酸であればよいが、例えば、SnZ4、SnZ2、ZnZ2およびTiZ4(式中、Zはハロゲン原子、低級アルキル、低級アルコキシ、またはフェノキシである)から選ばれる化合物が好ましく用いられ(ここでハロゲン原子、低級アルキル、低級アルコキシとしてはそれぞれ前記と同様のものがあげられる)、特に、SnX4、SnX2、ZnX2およびTiX4(式中、XはCl、BrまたはIを表す)から選ばれるルイス酸、例えば、四塩化スズ(SnCl4)、四臭化スズ(SnBr4)、四ヨウ化スズ(SnI4)、二塩化亜鉛(ZnCl2)、二塩化スズ(SnCl2)、二臭化亜鉛(ZnBr2)、二ヨウ化亜鉛(ZnI2)、四塩化チタン(TiCl4)、四臭化チタン(TiBr4)等があげられる。前記した中でも、スズのハロゲン化物が好ましく、具体的には四塩化スズ(SnCl4)、四臭化スズ(SnBr4)、または四ヨウ化スズ(SnI4)が好ましく使用される。中でも、四塩化スズ(SnCl4)が好ましい。
【0021】
ルイス酸の使用量は、特には限定されないが、一般式(I)で表わされる基を分子中に少なくとも1個含有する化合物の1モルに対して0.0001〜1.0モルであるのが好ましく、0.001〜0.1モルであるのがより好ましい。この量が0.0001モル以上であると、反応の進行が速く、0.1モル以下であるとコストの点で好ましい。本発明の製造方法では、少量のルイス酸添加で重合が可能であり、製造コストを低減できる。
【0022】
重合反応の際には、必要に応じて、ルイス塩基性化合物を添加してもよい。ルイス塩基性化合物を添加すると、重合速度を制御し、連鎖移動などの副反応を抑制する作用を奏し、また分子量分布を狭くするのに有効である。ルイス塩基性化合物の具体例としては、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸tert−ブチル、酢酸イソプロピル、酢酸フェニル、酪酸エチル、ステアリン酸エチル、安息香酸エチル、安息香酸フェニル、フタル酸ジエチル、イソフタル酸ジエチル、クロロ酢酸エチル、ジエチルカーボネートなどのエステル化合物、ジオキサン、テトラヒドロフラン、ジエチルエーテル、テトラヒドロチオフェン、2,6−ジメチルピリジン等があげられる。前記した中でも、エステル化合物が好ましく、具体的には酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸tert−ブチル、酢酸イソプロピル、酢酸フェニル、酪酸エチル、ステアリン酸エチル、安息香酸エチル、安息香酸フェニル、フタル酸ジエチル、イソフタル酸ジエチル等が好ましく使用される。ルイス塩基性化合物の使用量は、特には限定されないが、ビニルエーテル1モルに対して0.001〜100モルであるのが好ましい。
【0023】
重合反応は、溶媒の存在下で行ってもよい。溶媒は、反応に不活性なものであれば、特に限定されず、例えば、ベンゼン、トルエン等の芳香族炭化水素、塩化メチル、塩化メチレン、1,2−ジクロロエタン等のハロゲン化炭化水素、ニトロメタン、ニトロエタン等のニトロ化合物、へキサン、ヘプタン、オクタン、ノナン等の飽和炭化水素、酢酸エチル等、またはこれらの混合溶媒等があげられるが、中でも、ベンゼン、トルエン等の芳香族炭化水素が好ましく使用される。溶媒の使用量は、特には限定されないが、ビニルエーテルに対して、0.4〜100倍量であるのが好ましい。
重合反応の温度は、特には限定されないが、−80〜100℃であるのが好ましく、0〜100℃であるのがより好ましい。本発明の製造方法は、室温及びそれ以上の温度で実施することが可能であり、低温条件を必要とした従来のリビングカチオン重合方法に比べて、工業的に有利である。重合反応の時間は特に限定されないが、0.5〜24時間であるのが好ましい。
【0024】
本発明の製造方法におけるビニルエーテルの仕込み方法としては、反応系に滴下する方法を用いることが必要である。滴下方法は、特には限定されないが、例えば、連続滴下法や分割滴下法等で行なう事が可能で、連続滴下法であるのが好ましい。滴下に要する時間は特に限定されないが、0.1〜24時間であるのが好ましく、30分〜2時間であるのがより好ましい。
重合反応液からのビニルエーテルポリマーの回収は、アルカリ性アルコール溶液等の添加で重合を停止させた後、水洗等により重合触媒を除去後、濃縮する方法等にて行われる。
【0025】
本発明の製造方法は、ビニルエーテルポリマーを、簡便に、高収率で製造することができる、工業的な製造に適した製造方法である。また、製造されたビニルエーテルポリマーとしては、分子量分布が非常に狭いMw/Mnが1以上1.3以下であるものが好ましく、1以上1.2以下であるものがより好ましい。
【0026】
本発明の製造方法によれば、分子量の制御が可能な上に、生長末端のカチオンは安定化されている(移動反応や停止反応が起こらない)ために、重合の制御が可能であり、分子量分布の狭い重合体やブロック共重合体を得ることができる。
重合は、当業者に周知の方法、例えば特開平7−62011号公報、特開平7−138335号公報、特開平10−130315号公報、又は特開平11−80221号公報に記載された方法等により行なうことができる。
【0027】
さらに、本発明のビニルエーテルポリマーの末端に他の官能基、例えば、水酸基、カルボキシル基、アミノ基、重合性ビニル基などを導入することにより、反応性高分子ブレンド剤等の高分子反応原料を容易に得ることができる。該導入は、例えば、Macromolecules, 20 1 (1987)に記載された方法により行なうことができる。また、ビニルエーテルモノマーの種類を選択して重合し、ポリマー中の側鎖を、例えばエステルからカルボキシル基もしくは水酸基または、イミド基からアミノ基へ加水分解するなどして、官能基変換して親水化することにより、水溶性高分子や両親媒性ブロックポリマーも製造可能である。このような方法は、例えば、Macromolecules, 20 2045(1987)、高分子学会予稿集、37巻、590頁、1988年等に記載された方法により行なうことができる。
かくして本発明の製造方法で得られるビニルエーテルポリマーは、高分子材料の高機能、高性能化が可能であり、工業的に非常に有用である。
【0028】
【実施例】
次に本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明はこれら実施例により限定されるものではない。
[調製例]
1−(1−アセトキシエトキシ)−4−(1−アセトキシエトキシ)ブタン(式(I)の化合物)の合成
三方コック付きシュレンク管に、1,4−ブタンジオールジビニルエーテル59ml、酢酸47mlを測り取り、攪拌子を入れて一端を空気に開放した塩化カルシウム乾燥管を取り付け、60℃で3時間反応させた。反応終了後、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液で3回、飽和塩化ナトリウム水溶液で3回洗浄し、得られた無色液体に水素化カルシウムを添加して蒸留精製した。合成物の構造は、1H−NMR測定により確認した。
【0029】
【化6】
【0030】
1H−NMR(400MHz,CDCl3)δ(ppm): c 1.38(CH3)
e 1.60〜1.70
a 2.07
d 3.5、3.7
b 5.9
【0031】
実施例1:ポリエチルビニルエーテルの製造
乾燥した50mlガラス製フラスコに、上記方法で合成した式(I)の化合物1−(1−アセトキシエトキシ)−4−(1−アセトキシエトキシ)ブタン0.551gを測り取り、攪拌子を入れて三方コックを取り付けて窒素置換した。その後、トルエン1ml、酢酸エチル3.0mlを加えた。この溶液に6.0mmol/lの四塩化スズ(ルイス酸として)のトルエン溶液1.0mlを25℃で添加し、十分に撹拌した。その後、エチルビニルエーテル5.0mlを50分間かけて滴下した。滴下終了後、80分間熟成してこの重合溶液にアンモニア入りメタノール5mlを添加して重合を停止させた。この溶液をヘキサンで希釈後、水酸化ナトリウム水溶液、水の順に洗浄し、溶媒を留去し、両末端にアセタールを有するポリエチルビニルエーテル4.1gを回収した。このときのポリエチルビニルエーテルの数平均分子量Mn(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー法により測定した。ポリスチレン換算値)が、2,500であり、分子量分布Mw/Mnが1.11であった。ポリマーの構造が、両末端にアセタールを有するポリエチルビニルエーテルであることが、1H−NMR測定により確認された。
【0032】
【化7】
【0033】
1H−NMR(400MHz,CDCl3)δ(ppm): i+c 1.15(CH3)
a+a’+e 1.30〜2.0
g 2.08
b+d+f+h 3.15〜3.85
f’ 6.00
ゲルパーミエーションクロマトグラフィー分析は、以下の条件により行った。以下の実施例においても同様の条件で分析を行い、数平均分子量および分子量分布Mw/Mnの測定を行った。
(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー分析条件)
検出器:RIおよびUV
カラム: TSK guardcolumn Super H−H、TSK gel Super HM−M、TSK gel Super HM−N、TSK gel Super HM−Lを接続
カラムオーブン:40℃
展開溶媒:テトラヒドロフラン、流速0.5ml/分
内部標準物質:ポリスチレン
【0034】
実施例2:ポリイソブチルビニルエーテルの製造
50mlガラス製フラスコに、1−(1−アセトキシエトキシ)−4−(1−アセトキシエトキシ)ブタン2.2gを測り取り、攪拌子を入れて三方コックを取り付けて窒素置換した。その後、酢酸エチル12.0mlを加えた。この溶液に6.0mmol/lの四塩化スズのトルエン溶液8.0mlを25℃で添加し、十分に撹拌した。その後、イソブチルビニルエーテル20.0mlを50分間かけて滴下した。滴下終了後、20分間熟成してこの重合溶液にアンモニア入りメタノール10mlを添加して重合を停止させた。添加終了後の操作は、実施例1と同様である。結果、ポリイソブチルビニルエーテル17.1gを回収した。このときのポリイソブチルビニルエーテルの数平均分子量Mn(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー法により測定した。ポリスチレン換算値)が、2,500であり、分子量分布Mw/Mnが1.12であった。ポリマーの構造が、両末端にアセタールを有するポリイソブチルビニルエーテルであることが1H−NMR測定により確認された。
【0035】
【化8】
【0036】
1H−NMR(400MHz,CDCl3)δ(ppm): j 0.90(CH3)
c 1.10〜1.20(CH3)
a+a’+e+i 1.30〜2.0
g 2.06(CH3)
b+d+f+h 3.00〜3.75
f’ 5.9〜6.1
【0037】
比較例1:ポリエチルビニルエーテルの製造
1−(1−アセトキシエトキシ)−4−(1−アセトキシエトキシ)ブタン0.531gを測り取り、攪拌子を入れて三方コックを取り付けて窒素置換した。その後、トルエン1ml、酢酸エチル3.0ml、エチルビニルエーテル5.0mlを加えた。この溶液に6.0mmol/lの四塩化スズのトルエン溶液1.0mlを25℃で一気に添加し重合を開始し、4時間10分熟成後、実施例1と同様の反応後処理操作を行なった。結果、ポリエチルビニルエーテル4.13gを回収した。このときのポリエチルビニルエーテルは二峰性ポリマーであった。[数平均分子量Mn≧6,500:Mn≦6,500=17:83(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー法により測定した。ポリスチレン換算値)]
【0038】
比較例2:ポリイソブチルビニルエーテルの製造
50mlガラス製フラスコに、1−(1−アセトキシエトキシ)−4−(1−アセトキシエトキシ)ブタン0.551gを測り取り、攪拌子を入れて三方コックを取り付けて窒素置換した。その後、トルエン3.5ml、酢酸エチル0.5ml、イソブチルビニルエーテル5.0mlを加えた。この溶液に6.0mmol/lの四塩化スズのトルエン溶液1.0mlを25℃で一気に添加し、重合を開始し、3時間熟成後、実施例1と同様の反応後処理操作を行なった。結果、ポリイソブチルビニルエーテル4.55gを回収した。このときのポリイソブチルビニルエーテルは、二峰性ポリマーであった。[数平均分子量Mn≧7,800:Mn≦7,800=17:83(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー法により測定した。ポリスチレン換算値)]
ビニルエーテルモノマーを滴下して重合を行なった実施例1及び2では、25℃という温度で、分子量分布Mw/Mnが1.11または1.12という分子量の制御された重合が可能であった。これに対して、ビニルエーテルモノマーを滴下せずに、初発で全量添加して、25℃で重合を行なった比較例1及び2では、二峰性ポリマーが得られた。
【0039】
【発明の効果】
本発明により、式(I)の化合物の存在下、ビニルエーテルモノマーを滴下することで、簡便に、高収率で、工業的に有利にビニルエーテルポリマーが製造できる製造方法が提供される。加えて、本法の製造方法によればポリマーの生長末端のカチオンは安定化されている(移動反応や停止反応が起こらない)ために、重合の制御が可能であり、分子量分布の狭い重合体やブロック共重合体を得ることができる。また、末端に他の官能基を導入したりし、反応性高分子ブレンド剤等の高分子反応原料を容易に得る事ができる。また、ビニルエーテルモノマーの種類を選択して重合し、ポリマー中の側鎖を官能基変換することで、水溶性高分子や両親媒性ブロックポリマーも製造可能である。このように、本発明の方法で得られたビニルエーテルポリマーは、高機能化、又は高性能化された高分子材料の原料とすることができる。
Claims (10)
- 一般式(I)の式中のYがアシロキシル基である請求項1〜2いずれかに記載の製造方法。
- ルイス酸がSnX4、SnX2、ZnX2またはTiX4(式中、XはCl、BrまたはIを表す)である請求項1〜3いずれかに記載のビニルエーテルポリマーの製造方法。
- ルイス塩基性化合物を反応系に添加する、請求項1〜4いずれかに記載のビニルエーテルポリマーの製造方法。
- 添加するルイス塩基性化合物がエステル化合物である、請求項5記載のビニルエーテルポリマーの製造方法。
- 重合反応の温度が0〜100℃である、請求項1〜6いずれかに記載のビニルエーテルポリマーの製造方法。
- 一般式(I)で表される基を分子中に少なくとも1個含有する化合物の1モルに対して0.0001〜1.0モルのルイス酸を使用する、請求項1〜7いずれかに記載のビニルエーテルポリマーの製造方法。
- 請求項1〜8いずれかに記載の方法により製造することができる、ビニルエーテルポリマー。
- 数平均分子量に対する重量平均分子量の比Mw/Mnが1以上1.3以下であることを特徴とする請求項9に記載のビニルエーテルポリマー。
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