JP2004243359A - 鋳鉄軸の製造方法 - Google Patents

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Norihiro Akita
憲宏 秋田
Takashi Kamasaka
剛史 釜坂
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Abstract

【課題】金型内での冷却等を制御することにより、様々な金属組織を含む耐摩耗性に優れた鋳鉄軸を一体物として製造可能な鋳鉄軸の製造方法を提供する。
【解決手段】キャビティ7内に溶湯を注湯後、金型本体1,2及び8組の移動式入子型3A〜5Bを介しての熱除去によりキャビティ内で製品形状が崩れない程度に製品の表面を凝固させる。その後速やかに、7組の入子型4A,4B,5A及び5Bを凝固した製品表面から離間させ、対応する部位における製品表面と入子型との非接触状態を約20秒間保持する。更に、離間させた入子型のうちの4組の入子型4A,4Bを製品表面に再び接触させその再接触状態を約30秒間保持し、その後抜型する。離間・接触を繰り返す4組の入子型4A,4Bに対応する部位には、マルテンサイト組織が主に形成される。
【選択図】 図1

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、鋳鉄軸の製造方法に関し、特に、金属組織の異なる複数の部位を有する鋳鉄軸の製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
一般にエンジンの動弁系等に使用されるカムシャフトは、鋳鉄を用いた金型鋳造により一体成形される。かかるカムシャフトにあっては、特に耐摩耗性が要求される部位(例えばカム部)と、耐摩耗性よりも被削性が要求される部位(例えばジャーナル部)とが混在する。このような作り分けを行うために、例えば、金型内に溶湯を注湯した後、金型と接触する溶湯表層部が高硬度チル組織の殻状凝固層となった時点で離型し、離型した鋳造品が赤熱状態にあるうちに鋳造品の軟化すべき部分を高周波誘導加熱によって昇温及び保持し、高周波誘導加熱を停止して常温付近まで降温せしめた後、鋳造品全体を炉内で加熱して歪取りの焼鈍を行うという鋳造品の局部軟化方法が提案されている(特許文献1参照)。この局部軟化方法をカムシャフトに適用した場合、カム部を金型急冷によるチル(レーデブライト)組織とし、ジャーナル部を高周波誘導加熱処理に基づいてチル組織よりも軟化した組織とすることができる。
【0003】
【特許文献1】特開平4−316号公報(特許請求の範囲等)
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、エンジン技術の発達に伴い、例えばフリクション低減のためのローラー方式、可変バルブタイミング、燃料の筒内直接噴射などの様々な新機構が採用されるようになった。その結果、カムシャフトの摺動部(カム部、ジャーナル部あるいはギヤ部等)における耐摩耗性等の要求性能も多様化しつつある。例えば従来ならば、カム部には摺動摩耗の観点から高い硬度が付与されれば事足りたが、例えばローラー方式機構では、単に摺動摩耗という観点からではなく、転がり摩耗という観点から硬度と疲労強度の二つを満足させる必要が生じている。つまり、一つのカムシャフトの中に必要な硬度及び疲労強度が異なる部位が混在することが求められるようになった(鋳鉄軸における要求性能の多様化)。
【0005】
上記特許文献1の技術は、耐摩耗性必要部位(即ちカム部)に耐摩耗性の高いチル組織を得ると共に、その他の部位を軟化させて被削性を向上するものに過ぎず、耐摩耗性必要部位やその他の部位の硬度及び疲労強度を要求性能に応じて制御するものではなかった。また、鋳造品の一部に対して高周波誘導加熱による熱処理を行うことは、工程数の増大と複雑化を招くという欠点があった。
【0006】
本発明の目的は、金型内での冷却及び抜型後の冷却を制御することにより、主にマルテンサイトあるいはソルバイト組織からなる部位と、その他の組織からなる部位とを含む耐摩耗性に優れた鋳鉄軸を一体物として製造可能な鋳鉄軸の製造方法を提供することにある。そして、鋳鉄軸における要求性能の多様化に応えることを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本件発明者らは、上記事情に鑑みつつ、優れた耐摩耗性を有するカムシャフト等の鋳鉄軸を得るための研究を重ねた結果、金型鋳造による付形後の冷却を制御することにより、疲労強度に優れたマルテンサイト等の組織と、「切削性が良好で且つ耐摩耗性にも優れるパーライト組織」及び「高硬度で且つ耐摺動摩耗性に優れたチル組織」のうちの少なくとも一方の組織とをそれぞれ必要な部位に有する鋳鉄軸を一体物として得られることを見いだした。本発明は、かかる知見に基づいてなされたものである。
【0008】
請求項1の発明は、鋳造用金型内に区画形成された鋳鉄軸成形用のキャビティ内に溶湯を注湯し、キャビティ内で製品形状が崩れない程度に製品の少なくとも表面を凝固させる付形工程と、前記表面が凝固した製品の少なくとも一部分を所定時間だけ空気放冷状態又は断熱状態に保持する保持工程と、前記空気放冷状態又は断熱状態に保持された前記少なくとも一部分のうちの少なくとも一部を焼き入れに匹敵する速度で冷却する急冷工程とを備え、上記一連の工程を経て、基地組織が主にマルテンサイトあるいはソルバイト組織からなる部位と、主にパーライト組織からなる部位及び/又は主にチル組織からなる部位とを備えた鋳鉄軸を得ることを特徴とする鋳鉄軸の製造方法である。
【0009】
請求項2の発明は、請求項1に記載の鋳鉄軸の製造方法において、前記急冷工程における焼き入れに匹敵する速度での冷却は、前記金型を介しての冷却対象部位からの熱除去、又は、冷却対象部位に対して流動性冷媒を接触させることによる熱除去により行われることを特徴とする。
【0010】
請求項3の発明は、請求項1又は2に記載の鋳鉄軸の製造方法において、前記鋳造用金型は、金型本体とともに前記鋳鉄軸成形用のキャビティを区画形成する複数の移動式入子型を具備してなり、前記保持工程における空気放冷状態又は断熱状態は、そのような状態に保持すべき製品部位に対応した移動式入子型を製品表面から離間させ、当該部位において製品表面と移動式入子型とを非接触状態とすることにより実現されることを特徴とする。
【0011】
請求項4の発明は、請求項3に記載の鋳鉄軸の製造方法において、前記急冷工程における焼き入れに匹敵する速度での冷却は、前記保持工程における空気放冷状態又は断熱状態を実現すべく製品表面から離間させ非接触状態としていた移動式入子型を、元位置に戻して再び製品表面に接触させることにより実現されることを特徴とする。
【0012】
請求項5の発明は、請求項1〜4のいずれかに記載の鋳鉄軸の製造方法であって、鋳鉄軸において主にチル組織からなる部位は、前記付形工程で製品表面を凝固させた直後から、前記保持工程での空気放冷状態及び断熱状態を経ること無く、当該部位の温度が自己焼鈍によってチルが分解しない温度に達するまで当該部位に対する冷却を持続することにより形成されることを特徴とする。
【0013】
(請求項1〜5の作用)
請求項1〜5の鋳鉄軸の製造方法によれば、キャビティへの注湯後の製品表面の凝固後に、所定時間だけ空気放冷状態又は断熱状態に保持され且つその後に焼き入れに匹敵する速度で冷却された部位は、基地組織が主にマルテンサイトあるいはソルバイト組織からなる部位となる。また、キャビティへの注湯後の製品表面の凝固後に、所定時間だけ空気放冷状態又は断熱状態に保持され且つその後も空気放冷状態又は断熱状態に保たれた部位は、主にパーライト組織からなる部位となる。これに対し、保持工程での空気放冷状態及び断熱状態を経ること無く、キャビティへの注湯後の製品表面の凝固直後から、自己焼鈍によってチルが分解しない温度に達するまで冷却が続けられた部位は、主にチル組織からなる部位となる。このように本製造方法によれば、キャビティ内での製品表面の凝固後における各部位の冷却を制御することにより、金属組織が異なる部位を位置選択的に形成することができる。即ち、主にマルテンサイトあるいはソルバイト組織からなる部位を少なくとも一部に備えてなる耐摩耗性に優れた鋳鉄軸を一体物として製造することができる。
【0014】
尚、前記保持工程において空気放冷状態又は断熱状態に保持する所定時間は、15秒から200秒の範囲であることが好ましい。ここで15秒を保持時間の下限としたのは、保持時間が15秒より短いと、製品の表層に生じたチル組織を分解することが困難になる虞れがあるからである。また、200秒を保持時間の上限としたのは、保持時間が200秒を超えると、製品の温度が焼き入れ可能温度より低くなって前記急冷工程を行えなくなってしまう虞れがあるからである。
【0015】
請求項6の発明は、金型本体とともに鋳鉄軸成形用のキャビティを区画形成する複数の移動式入子型を具備してなる鋳造用金型を準備すると共に、そのキャビティ内に溶湯を注湯し、金型本体及び複数の移動式入子を介しての熱除去によりキャビティ内で製品形状が崩れない程度に製品の表面を凝固させ、前記製品表面の凝固後速やかに、前記複数の移動式入子型のうちの全て又はいくつかをキャビティ内で凝固した製品の表面から離間させて当該部位における製品表面と移動式入子型との非接触状態を所定時間保持し、更に前記離間させた移動式入子型のうちの全て又はいくつかをキャビティ内で凝固した製品の表面に再び接触させその再接触状態を所定時間保持し、その後に鋳造用金型から製品を取り出すことで、基地組織が主にマルテンサイトあるいはソルバイト組織からなる部位と、主にパーライト組織からなる部位及び/又は主にチル組織からなる部位とを備えた鋳鉄軸を得ることを特徴とする鋳鉄軸の製造方法である。
【0016】
(請求項6の作用)
請求項6の鋳鉄軸の製造方法によれば、キャビティへの注湯後の製品表面の凝固後に、移動式入子型との非接触状態を所定時間保持し、更に当該移動式入子型との再接触状態を所定時間保持した後に抜型に到った部位は、基地組織が主にマルテンサイトあるいはソルバイト組織からなる部位となる。また、キャビティへの注湯後の製品表面の凝固後に、移動式入子型との非接触状態を所定時間保持し、その後も移動式入子型との非接触状態を保ったまま抜型に到った部位は、主にパーライト組織からなる部位となる。これに対し、キャビティへの注湯後の製品表面の凝固から抜型までの間一貫して金型本体又は移動式入子型に接触して熱除去を受け続けた部位は、主にチル組織からなる部位となる。このように本製造方法によれば、複数ある移動式入子型を個々に製品表面から離間させあるいは再接触させるという比較的簡単な移動操作に基づいて、金属組織が異なる部位を位置選択的に形成することができる。即ち、主にマルテンサイトあるいはソルバイト組織からなる部位を少なくとも一部に備えてなる耐摩耗性に優れた鋳鉄軸を一体物として効率的に製造することができる。
【0017】
付記:請求項1〜6において、前記鋳鉄軸がエンジン用カムシャフトであることは好ましい。また、前記マルテンサイトあるいはソルバイト組織、パーライト組織又はチル組織からなる各部位が、カムシャフトの摺動部(他部材との接触摺動に関与する部位)であることは好ましい。
【0018】
【発明の実施の形態】
以下に本発明の実施形態を説明する。本発明の実施に際しては、金型を用いた鋳造における凝固冷却が制御される。この凝固冷却の制御は、注湯後の金型内や抜型後の冷却時における金型の温度、流動性冷媒の材質及び温度、あるいは冷却時間(つまり金型や冷媒との接触時間)を調節することにより行われる。
【0019】
本発明の製造方法で得られる鋳鉄軸には、各部位における金属組織の組合せパターンに応じて次の三通りがある。即ち、(1):主にマルテンサイト組織あるいはソルバイト組織からなる部位と、主にパーライト組織からなる部位と、主にチル組織からなる部位とを有する鋳鉄軸、(2):主にマルテンサイト組織あるいはソルバイト組織からなる部位と、主にパーライト組織からなる部位とを有する鋳鉄軸、(3):主にマルテンサイト組織あるいはソルバイト組織からなる部位と、主にチル組織からなる部位とを有する鋳鉄軸、である。
【0020】
鋳造用金型内での冷却において主にチル組織を有する部位を形成するには、金型によって急冷凝固させればよい。チル組織を一旦形成した後は、その部位の温度が自己焼鈍によりチルが分解しない温度になるまで金型にて持続的に冷却すれば、その部位のチル組織は安定化する。なお、金型による持続的冷却に代えて、自己焼鈍によりチルが分解しない温度まで冷却する手法として、当該部位に対して流動性冷媒(例えば水などの液冷媒や低温窒素などのガス冷媒)を接触させて熱除去を行うという方法を採用してもよい。また、チル組織を得やすくするために、例えば強制冷却配管付きの金型を用いて金型による冷却の速度を早めたり、あるいは、溶湯中に炭化物の生成を促進する元素(例えば、Cr,V,Mn,Cu,Sn等)を予め添加してもよい。
【0021】
マルテンサイト組織あるいはソルバイト組織のようないわゆる焼き入れによって得られる組織を主に有する部位を形成するには、鋳造用金型の鋳鉄軸成形用キャビティ内に溶湯を注湯後、キャビティ内で製品形状が崩れない程度に製品の少なくとも表面を凝固(即ち付形)させた後(例えば溶湯を1410〜1580Kの温度まで冷却した後)、抜型して金型(移動式入子を含む)と製品との間に空間を確保し、金型による冷却を断絶する(即ち断熱)。凝固した製品の表層にチル組織が生じている場合には、自己焼鈍によりチルを分解させる。尚、チル組織の生成を抑制するために、溶湯中に黒鉛の生成を促進する黒鉛化元素(例えば、Si,Ni等)を予め添加してもよい。そして、製品が鋳鉄の焼き入れ可能温度(即ち1073〜1223K)になったら、当該部位に金型(移動式入子を含む)を再び接触させ、焼き入れに匹敵する速度で冷却する。なお、金型の再接触に代えて、焼き入れに匹敵する速度で冷却する手法として、当該部位に対して流動性冷媒(例えば焼き入れに使用されるような水や油などの冷媒)を接触させて熱除去を行うという方法を採用してもよい。また、マルテンサイト組織等の形成を促進するために、再接触の際の金型の温度や熱伝導度など、又は流動性冷媒の温度や熱伝導度などを最適化したり、あるいは、溶湯中に焼き入れ促進元素(例えば、Mn,Cu,Ni,Mo等)を予め添加してもよい。尚、ソルバイト組織の形成については、例えば一旦マルテンサイト化した部位に対して焼き戻し等の熱収支制御を行うことで当該部位をソルバイト組織に変換することができる。
【0022】
一般に焼準(焼きならし)で得られるパーライト組織を主に有する部位を形成するには、鋳造用金型の鋳鉄軸成形用キャビティ内に溶湯を注湯後、キャビティ内で製品形状が崩れない程度に製品の少なくとも表面を凝固(即ち付形)させた後(例えば溶湯を1410〜1580Kの温度まで冷却した後)、抜型して金型(移動式入子を含む)と製品との間に空間を確保し、金型による冷却を断絶する(即ち断熱)。凝固した製品の表層にチル組織が生じている場合には、自己焼鈍によりチルを分解させる。尚、チル組織の生成を抑制するために、溶湯中に黒鉛の生成を促進する黒鉛化元素(例えばSi,Ni等)を予め添加してもよい。そして、製品が鋳鉄の焼き入れ可能温度(即ち1073〜1223K)になったら、当該部位に金型を再接触させること無く、焼準で行われるような放冷あるいは空気冷却によりそのまま自然冷却する。なお、パーライト組織の形成を促進するために、所定限度内で冷却を早めたり、あるいは、溶湯中に炭化物の生成を促進する元素(例えば、Cr,V,Mn,Cu,Sn等)を予め添加してもよい。
【0023】
鋳鉄軸を構成する鋳鉄(材質)としては、例えば、球状黒鉛鋳鉄、ねずみ鋳鉄又はCV黒鉛鋳鉄を使用できる。これらの材料鋳鉄が一部にチル組織を含んでいてもよい。材料鋳鉄の選択にあたっては、主にマルテンサイト組織等を必要とする部位の耐久性(疲労強度を含む)、主にパーライト組織を必要とする部位の耐久性、あるいは鋳鉄軸全体の耐久性等を考慮して材料選択が行われる。
【0024】
また、本発明を適用可能な鋳鉄軸としては、カムシャフトの他に、バランスシャフト、クランクシャフト等の耐摩耗性を必要とする部位を有する軸製品を例示することができる。
【0025】
【実施例】
次に、本発明を4気筒直噴エンジン用カムシャフトの製造に適用した実施例について説明する。図4に示すように、製造目的物たるカムシャフト10は、第1の摺動部としての1つのカム部13、第2の摺動部としての4つのカム部14及び第3の摺動部としての3つのジャーナル部15を備えている。各摺動部の軸直交断面形状は図5に示す通りである。カム部13は燃料直噴ポンプのタイミング設定に利用される部位であり、優れた摺動摩耗性(即ち高硬度)が要求される。4つのカム部13はそれぞれエンジンの各気筒に配設されたバルブを押圧するための部位であり、優れた転がり摩耗性(即ち硬度と疲労強度)が要求される。ジャーナル部14は軸受けされる部位であり、ある程度の耐摩耗性に加えて切削加工のし易さが要求される。
【0026】
カムシャフト10の金型鋳造には図1〜図3に示すような金型装置が用いられる。この金型装置は、上型1及び下型2からなる金型本体と、カム部13を形成するための1組の移動式入子型3A,3Bと、カム部14を形成するための4組の移動式入子型4A,4Bと、ジャーナル部15を形成するための3組の移動式入子型5A,5Bとを具備している。上型1及び下型2のうちの一方が固定型であり他方が可動型である。前記各組の移動式入子型はそれぞれ上下二分割の割型(xA,xB)となっており、各割型は軸直交方向にスライド可能な状態で金型本体(1,2)に支持されている。図1に示すように、注湯前の待機状態では、上型1及び下型2を接合すると共に各組の移動式入子型3A〜5Bを注湯時初期位置に配置することで、金型装置内には、湯道6と連通する鋳鉄軸成形用のキャビティ7が区画形成される。尚、この金型装置の金型本体及び全ての移動式入子型は、熱伝導率が48W/M/Kの鋳鉄で作られている。
【0027】
前記キャビティ7に注ぎ込む溶湯を次のように準備した。即ち、C:3.72重量%、Si:2.81重量%、Mn:0.22重量%、P:0.023重量%、S:0.009重量%を含有する鉄溶湯20kgを高周波誘導炉で溶製し、1778Kで取鍋に出湯した。その取鍋内の溶湯に対して1.3%の(Fe−45%Si−4.5%Mg)合金及び0.3%の(Fe−75%Si)合金を添加し、サンドイッチ法により球状化処理して溶湯を準備した。
【0028】
そして、図1の金型装置を加熱状態(型温度523K)で待機させておき、溶湯温度が1653Kに達したときに金型内への注湯を開始し、約4秒で注湯を完了した。注湯完了から5秒経過後に(即ち溶湯が1465Kの温度まで冷却された後に)、移動式入子型4A,4B,5A及び5Bをそれぞれ離間方向に約20mmスライドさせ、少なくとも表面凝固により形が整った製品との接触を断絶した(図2参照)。それから21秒後に移動式入子型4A及び4Bを元位置(注湯時初期位置)に戻し、1140Kの温度の製品に再び接触させて29秒間保持した(図3参照)。つまり、移動式入子型5A及び5Bに関しては、20mm引いた非接触状態のまま都合50秒間保持された。注湯完了から55(=5+21+29)秒経過後に金型を抜型し、そこから取り出した製品を空気放冷のまま常温まで冷却して図4示すようなカムシャフト10を得た。尚、このカムシャフト10を最終製品に仕上げるまでには、更に各種の機械加工を施す必要があることは言うまでもない。
【0029】
このようにして得られたカムシャフト10を複数箇所で切断し組織観察を行った。図5(A)〜(C)に各摺動部の断面のマクロ的な組織分布の概要を示す。注湯完了から抜型までの55秒間連続して入子型3A及び3Bに接していたカム部13の組織は主にチル組織であり、外周部ほどチル組織の割合が多くなっていた。そして、当該カム部13における機械加工後摺動に供される位置、即ち表面直下約0.5mmの位置では、図6の光学顕微鏡写真(倍率100倍)に示すように、従来の自動車エンジン用カムシャフトの動弁用カム部におけるチル組織と同様のチル組織となっていた。
【0030】
注湯完了から5秒経過後に移動式入子型5A及び5Bを約20mmスライドさせ、その後抜型までの50秒間、入子型5A及び5Bと非接触状態にあったジャーナル部15の基地組織は、主にパーライト組織であった。そして、当該ジャーナル部15における機械加工後摺動に供される位置、即ち表面直下約0.5mmの位置では、図8の光学顕微鏡写真(倍率100倍)に示すように、球状黒鉛及びテンパーカーボンと思われる微細な粒状の黒鉛組織と、基地組織としてパーライト組織に約30%のフェライト組織を有した、主にパーライト組織となっていた。尚、このジャーナル部15にチル組織は認められなかった。
【0031】
注湯完了から5秒経過後に移動式入子型4A及び4Bを約20mmスライドさせ、21秒間入子型4A及び4Bとの非接触状態を保った後、29秒間入子型4A及び4Bとの接触状態を経て形成されたカム部14の表面近傍の組織は主にマルテンサイト組織であった。そして、当該カム部14における機械加工後摺動に供される位置、即ち表面直下約0.5mmの位置では、図7の光学顕微鏡写真(倍率100倍)に示すように、基地のほとんどがマルテンサイト組織であった。
【0032】
【発明の効果】
以上詳述したように本発明の鋳鉄軸の製造方法によれば、基地組織が主にマルテンサイトあるいはソルバイト組織からなる部位と、主にパーライト組織からなる部位及び/又は主にチル組織からなる部位とを備えて耐摩耗性に優れた鋳鉄軸を一体物として効率的に製造することができる。その結果、鋳鉄軸における要求性能の多様化に応えることが可能となった。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の製造方法で使用する金型装置の概要を示す断面図。
【図2】金型装置内に注湯後に入子型をスライドさせたときの断面図。
【図3】金型装置の入子型の一部を元位置に復帰させたときの断面図。
【図4】鋳鉄軸の一例であるカムシャフトの正面図。
【図5】(A)〜(C)は各摺動部における軸直交断面を示す断面図。
【図6】カム部13の表面直下位置での光学顕微鏡写真。
【図7】カム部14の表面直下位置での光学顕微鏡写真。
【図8】ジャーナル部15の表面直下位置での光学顕微鏡写真。
【符号の説明】
1,2…上型及び下型(金型本体)、3A,3B,4A,4B,5A,5B…移動式入子型、7…鋳鉄軸成形用キャビティ、10…カムシャフト(鋳鉄軸)、13…カム部(第1の摺動部)、14…カム部(第2の摺動部)、15…ジャーナル部(第3の摺動部)。

Claims (6)

  1. 鋳造用金型内に区画形成された鋳鉄軸成形用のキャビティ内に溶湯を注湯し、キャビティ内で製品形状が崩れない程度に製品の少なくとも表面を凝固させる付形工程と、
    前記表面が凝固した製品の少なくとも一部分を所定時間だけ空気放冷状態又は断熱状態に保持する保持工程と、
    前記空気放冷状態又は断熱状態に保持された前記少なくとも一部分のうちの少なくとも一部を焼き入れに匹敵する速度で冷却する急冷工程とを備え、
    上記一連の工程を経て、基地組織が主にマルテンサイトあるいはソルバイト組織からなる部位と、主にパーライト組織からなる部位及び/又は主にチル組織からなる部位とを備えた鋳鉄軸を得ることを特徴とする鋳鉄軸の製造方法。
  2. 前記急冷工程における焼き入れに匹敵する速度での冷却は、前記金型を介しての冷却対象部位からの熱除去、又は、冷却対象部位に対して流動性冷媒を接触させることによる熱除去により行われることを特徴とする請求項1に記載の鋳鉄軸の製造方法。
  3. 前記鋳造用金型は、金型本体とともに前記鋳鉄軸成形用のキャビティを区画形成する複数の移動式入子型を具備してなり、
    前記保持工程における空気放冷状態又は断熱状態は、そのような状態に保持すべき製品部位に対応した移動式入子型を製品表面から離間させ、当該部位において製品表面と移動式入子型とを非接触状態とすることにより実現されることを特徴とする請求項1又は2に記載の鋳鉄軸の製造方法。
  4. 前記急冷工程における焼き入れに匹敵する速度での冷却は、前記保持工程における空気放冷状態又は断熱状態を実現すべく製品表面から離間させ非接触状態としていた移動式入子型を、元位置に戻して再び製品表面に接触させることにより実現されることを特徴とする請求項3に記載の鋳鉄軸の製造方法。
  5. 鋳鉄軸において主にチル組織からなる部位は、前記付形工程で製品表面を凝固させた直後から、前記保持工程での空気放冷状態及び断熱状態を経ること無く、当該部位の温度が自己焼鈍によってチルが分解しない温度に達するまで当該部位に対する冷却を持続することにより形成されることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の鋳鉄軸の製造方法。
  6. 金型本体とともに鋳鉄軸成形用のキャビティを区画形成する複数の移動式入子型を具備してなる鋳造用金型を準備すると共に、そのキャビティ内に溶湯を注湯し、金型本体及び複数の移動式入子を介しての熱除去によりキャビティ内で製品形状が崩れない程度に製品の表面を凝固させ、
    前記製品表面の凝固後速やかに、前記複数の移動式入子型のうちの全て又はいくつかをキャビティ内で凝固した製品の表面から離間させて当該部位における製品表面と移動式入子型との非接触状態を所定時間保持し、
    更に前記離間させた移動式入子型のうちの全て又はいくつかをキャビティ内で凝固した製品の表面に再び接触させその再接触状態を所定時間保持し、
    その後に鋳造用金型から製品を取り出すことで、基地組織が主にマルテンサイトあるいはソルバイト組織からなる部位と、主にパーライト組織からなる部位及び/又は主にチル組織からなる部位とを備えた鋳鉄軸を得ることを特徴とする鋳鉄軸の製造方法。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
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JP2007185696A (ja) * 2006-01-13 2007-07-26 Nissin Kogyo Co Ltd 鋳鉄方法及び鋳鉄用金型

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