JP2004241684A - 成膜方法 - Google Patents
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Abstract
Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、例えば液滴吐出法によって基板上に微小な液滴を配し、これを乾燥して成膜する成膜方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、インクジェット法等の液滴吐出法による成膜は、その応用が急激なスピードで種々の分野にまで広がっている。例えば、有機EL装置における発光層や液晶装置のカラーフィルタなど各種ディスプレイの構成要素の製造から、金属の配線の製造などにまでその応用範囲が広げられている。これらの全ては、所望の位置に所望の材料を所望量配置するといったインクジェットプリンタの特徴を利用したものである。
【0003】
一方、液滴の成膜プロセスにおいては、乾燥速度が重要な役割を担っていることが知られている(例えば、非特許文献1参照)。
このことから考えて、インクジェット法(液滴吐出法)により成膜された機能性膜の物性は、その乾燥速度に依存することが予想される。言い換えれば、他の液相プロセスでは実現が難しかった膜物性を、インクジェット法(液滴吐出法)等を用いた成膜方法によって達成できる可能性があるということである。
【0004】
【非特許文献1】
R.D.Deegan, O.Bakajin, T.F.Dupont, G.Huber, S.R.Nagel,and T.A.Witten : Nature,Vol.389,p.827(1997)
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、従来では特に液滴吐出法等によって設けられた微小な液滴における乾燥挙動についての研究が多くなされておらず、したがって液滴吐出法等を用いることによって可能となる特異な成膜プロセスの提供がなされていないのが実状である。
【0006】
本発明は前記事情に鑑みてなされたもので、その目的とするところは、液滴吐出法等を用いることにより、例えば外部環境の影響を受けにくいなどの効果を奏する特異な成膜プロセスを提供することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】
前記目的を達成するため、本発明の成膜方法は、基板上に液状体を配する工程と、前記液状体の液分を蒸発律速で乾燥する乾燥工程と、を備えたことを特徴としている。
また、前記の成膜方法においては、前記の蒸発律速は、以下の式を満足する状態であるのが好ましい。
【0008】
【数2】
【0009】
ただし、tevap;蒸発時間、tdiff;拡散時間、k;Boltzmann 定数、T;温度、σ;衝突断面積、Pevap(t);蒸発過程内の時間tにおける溶媒分圧、Pdiff(t);拡散過程内の時間tにおける溶媒分圧、である。
【0010】
このように液状体の液分を蒸発律速で乾燥するようにしたので、液状体の液分は外部環境に影響されることなく乾燥が起こり、したがって膜内で乾燥速度のバラツキがなくなることなどによって膜質や膜厚が均一になる。また、乾燥そのものを良好に行うことができることから、液状体中の液分を十分除去することが可能になる。また、液状体としてその固形分を2種以上使用した場合に、その相分離状態を例えば数分子レベルにまで小さくすることができる。
【0011】
以下、本発明を詳しく説明する。
(インクジェット法による液滴の特徴)
インクジェット法(液滴吐出法)で吐出される液滴は、数plから数百plである。従来、実際に使用されている数plから30pl程度のものについて考えてみる。
【0012】
このような微小液滴になると、通常のマクロ量の液滴に比べ、バルクに対する表面の割合が大きくなる。水で考えてみると、ピペットで作る1滴(0.02ml)とインクジェット法で作る1滴(10pl)とでは、液滴中における単位体積あたりの表面積が大きく異なり、インクジェット法による液滴の方が表面の寄与が大きくなることが分かる。物理的にこのことを考えるために、表面に存在する水分子の割合に換算すると、インクジェット法による液滴の方が108程度表面の寄与は大きいといえる。この差は、例えばその液滴の挙動を支配する力に影響を与え、通常の液体、さらにはマクロ量の液滴とは異なる性質を示す。
【0013】
実際に、微小液滴がインクジェット法などの何らかの方法で生成され、基板上に着弾したときのエネルギー量を、液滴の大きさという観点から示すと、図1に示すようにエネルギー量は、飛行時に持つ運動エネルギーと着弾時の変化を含めた表面自由エネルギーとに分けられる。液滴径100μm程度から、表面自由エネルギーの方が大きくなっており、挙動を左右する主たる力が運動エネルギーから表面自由エネルギーへ移っていることがわかる。図1中の矢印は、30plの液滴について示している。これより、インクジェット法による液滴は、表面自由エネルギーを主たる力として運動することが分かる。このことは、液滴の挙動が、基板の表面自由エネルギーおよび液状体中の溶媒の表面自由エネルギー(表面張力)に強く影響を受けることを示している。
【0014】
(乾燥挙動)
バルクに対する表面の割合が大きいことは、液滴の運動挙動のみならず、乾燥挙動に対して大きな影響を与える。これは、成膜された膜の物性を考えるうえで重要である。実際、微小液滴ではないが、蒸発速度が成膜に対して重要な役割を果たしていることは、前記の非特許文献1などで示されている。
そこで、微小液滴の乾燥挙動について、本発明者は以下に述べるように詳細に検討した。
【0015】
まず最初に、実際に液滴が蒸発した様子を、表面張力が31mN/mの有機溶媒を例にして観察した。すなわち、インクジェット法によって基板上に20pl吐出した液滴の乾燥の様子を観察した。ただし、液滴の吐出は1ドットでなく、数十ドットを1行吐出したドット群(吐出間隔:70.5μm)における、中央の液滴(ドット)を観察した。この有機溶媒は、20℃で0.23mmHgの飽和蒸気圧(沸点203℃)を持つ低蒸気圧(高沸点)の溶媒である。ピペットで作る液滴のようなマクロ量の液滴の場合には、この溶媒は完全に蒸発するのに8時間程度要したが、インクジェット法による微小液滴では、蒸発に要する時間はおよそ60秒ほどであった。したがって、インクジェット法による微小液滴の場合には乾燥時間が極端に短くなることが分かった。
【0016】
蒸発の様子を観察した有機溶媒と表面自由エネルギーが近い他の有機溶媒の乾燥時間について、それぞれの室温での飽和蒸気圧を横軸として表した結果を、図2に示す。実験条件として、吐出量、吐出数、基板の表面状態、基板の置かれている環境は全て同一とした。
ここで示した飽和蒸気圧2mmHg程度の溶媒は、沸点についてはおよそ150℃である。そのような溶媒では、10秒程度しか存在しえないことがわかる。微小液滴の乾燥は、マクロ量の液滴のそれよりもはるかに速く、溶媒によってほぼ着弾直後に乾燥することが分かった。
微小液滴はなぜこれほどまでに蒸発が速いのか。そして、これほど乾燥が速いにもかかわらず、微小液滴についてもマクロ量の液滴と同様の乾燥過程と考えてよいのだろうか。
【0017】
「微小液滴の特異性」
(d2−LAW)
これまで、液滴の乾燥については、「d2−LAW」という法則に基づき議論されてきた。この理論は燃焼学において発展してきたものであり、以下の式(1)に示すように、液滴直径の2乗の時間微分が一定になるというものである。
【0018】
【数3】
【0019】
ただし、D;液滴直径、t;時間、ρG;気体の密度、ρL;液体の密度、δG:拡散係数、CG P:定積比熱、hfg:比蒸発エンタルピー、ΔT:液滴表面温度と気体雰囲気温度との差、である。
【0020】
最近、式(1)を基に水などの溶媒の蒸発について取り扱うことがなされており、いくつかの修正をすることで、「d2−LAW」は液滴の乾燥をよく表すことが示されている。この法則には、前提がいくつか存在するが、これらは、一般の液滴においては通常成り立つと考えられ、問題なく受け入れられている。その中で、微小液滴を扱ううえでポイントとなるものを以下に示す。
1.乾燥速度が一定である。
2.乾燥過程は蒸発した気体の拡散過程が律速である。(つまり、液滴近傍は常に溶媒分子の飽和蒸気圧の状態になっている。)
3.熱拡散は十分に行われている。
などである。以下に、前記の1,2について検討する。なお、3は成膜を考えるうえで重要であるが、ここでは省略する。
【0021】
(インクジェット法による液滴の蒸発量の時間変化(乾燥速度))
従来、これについては、一定であることが認められてきた。それは、蒸発と拡散の平衡状態で成り立っており、マクロ量の液滴であれば、乾燥初期の非平衡状態の時間がその後の平衡状態の時間に比べて十分に無視できるほど少ないためである。ここで定義する乾燥初期とは、液滴外には溶媒分子がゼロであり、図3に示すように液滴上部の溶媒分子が1平均自由工程の距離だけ気体側に飛び出し、その体積内に飽和蒸気圧分程度の溶媒分子が蓄えられるまでをいう。この時間においては、拡散過程に依存することなく蒸発は起こる。ゆえに非平衡であり、その後拡散過程を含む平衡状態に至る。実際に、平衡状態と非平衡状態の割合をηとし、以下の式(2)に示すように見積もった。なお、λはDに比べて十分に小さいため、後述する式(4)のように近似した。
【0022】
【数4】
【0023】
ただし、η;初期蒸発量/全蒸発量、λ;平均自由工程、Psat;飽和蒸気圧、T;温度、V;全液滴量、k;Boltzmann 定数、σ;衝突断面積、P(t);時間tにおける溶媒分圧、D;液滴直径、である。
【0024】
温度一定の下では、ηは、飽和蒸気圧(Psat)に比例し、溶媒の分圧(P(t))および全液滴量(V)に反比例することがわかる。さらに、λ(P(t))は、液滴径に強く影響を受けることが予想され、P(t)も、液滴量、すなわち液滴径に依存する。なぜなら、1平均自由工程分から膨張するときの膨張率は、液滴径が小さい方が大きくなるためである。例えば、単位時間後の平均自由工程は、図4に示すように半径1mmの液滴に比べてその1/10の100μmの場合では、およそ100倍、すなわち102のオーダーで大きくなると考えられ、したがってその分時間tにおける溶媒分子の密度は102のオーダーで小さくなり、これにより溶媒分圧(P(t))も102のオーダーで小さくなるからである。
まとめると、ηが大きくなるケースは、飽和蒸気圧が大きい場合、そして液滴量(液滴径)が小さい場合である。特に、液滴量(液滴径)に関しては、P(t)とVの両方に影響を与えるため、液滴径のほぼ2乗で影響を与えることが分かる。すなわち、時間tにおける溶媒分圧(P(t))は、液滴径(D)の2乗に関係することが分かる。
また、液体のパラメータ(飽和蒸気圧)にも依存していることも忘れてはならない。したがって、上記の条件においては、「d2−LAW」の前提は十分には満たさないことが分かる。このことは、成膜の観点からみれば、成膜初期、つまりピニングに大きな影響を与える可能性があり、その量と時間は重要な要素である。次に、その時間の要素について検討する。
【0025】
(インクジェットによる液滴の乾燥における律速過程)
時間の要素を検討するに際しては、蒸発過程と関係をもちながら進んでいく拡散過程を考慮する必要がある。よって、蒸発過程(すなわち蒸発項)と拡散過程(すなわち拡散項)との二つに分離して検討する。
「蒸発過程」
前提として、液体から気体になる際に蒸発する溶媒分子が得るエネルギー(蒸発エンタルピー)の一部(ここでは定数とする)が運動エネルギーとして全て置き換わると仮定し、その他は上記の(インクジェット法による液滴の蒸発量の時間変化(乾燥速度))と同じとする。また、蒸発項における時間、すなわち蒸発時間(tevap)は、液相から一分子が気相に転移して(変換されて)、この一分子が1平均自由工程分大気側に飛行する時間、すなわち図3に示した1平均自由工程にまで到達する時間とする。すると、蒸発時間(tevap)は以下の式(3)によって表される。
【0026】
【数5】
【0027】
ただし、tevap;蒸発時間、λ;平均自由工程、vav;平均速度、k;Boltzmann 定数、T;温度、σ;衝突断面積、Pevap(t);蒸発過程内の時間tにおける溶媒分圧、Psat;飽和蒸気圧、Vmg;気体1molの体積、m;質量、A、B;定数、である。
なお、式(3)は以下の関係(式(4))から導かれる。
【0028】
【数6】
【0029】
この式(4)は、例えば「新物理化学」(下):化学同人のp663に示されている。なお、本発明においては、P(t)は正確には蒸発項と拡散項とで異なるので、蒸発項における時間tにおける溶媒分圧(Pevap(t))と、拡散項における時間tにおける溶媒分圧(Pdiff(t))とを区別している。
また、以下の式(5)より、以下の式(6)が導かれ、前記式(4)と以下の式(6)とから、前記の式(3)が導かれる。
【0030】
【数7】
【0031】
【数8】
【0032】
ただし、vav;平均速度、である。
なお、式(6)は、蒸発エンタルピー、すなわち以下の式(7)で示されるΔHの一部(係数B倍)が運動エネルギーにおきかわると仮定することにより、得られる。ここで、式(7)は、Clapeyron−Clausiusの式に基づく(「新物理化学」(下):化学同人のp173参照)。
ΔH=(dPsat/dT)×VmgT×B …(7)
【0033】
前記式(3)より、蒸発時間(tevap)に対しては、溶媒分圧(Pevap(t))および飽和蒸気圧の温度変化(飽和水蒸気圧の温度微分)におよそ反比例することが分かる。つまり、蒸発時間(tevap)においても、液滴量(液滴径)に依存することが明らかになった。また、ここでも液体のパラメータに依存することが明らかになった。
【0034】
「拡散過程」
蒸発時間(tevap)と比較するため、拡散項における時間、すなわち拡散時間(tdiff)についても検討する。拡散時間(tdiff)について検討するにあたり、まず、拡散速度について検討する。拡散速度は、以下の式(8)によって表されるように、濃度の距離変化と拡散係数との積で決定される。
【0035】
【数9】
【0036】
ただし、vdiff;拡散速度、c;溶媒分子濃度、x;液滴中心からの距離、
Ddiff;拡散係数
ここで、乾燥前期を考えるため、濃度の距離変化(dc/dx)は液滴径および液体のパラメータ(飽和蒸気圧、蒸発エンタルピー)に依存しないので、拡散係数のみについて考える。すなわち、前記の式(8)を以下の式(9)として考えると、拡散係数(Ddiff)は以下の式(10)によって表される。
【0037】
【数10】
【0038】
【数11】
【0039】
なお、式(10)中の(8kT/πm)1/2は、温度Tでの平均速度である。
そして、時間は速度の逆数であることから、拡散時間(tdiff)は、以下の式(11)によって表されるようになる。
【0040】
【数12】
【0041】
以上より、単位距離を拡散する時間、すなわち拡散時間(tdiff)は、溶媒分圧Pdiff(t)に比例し、飽和水蒸気圧の温度変化(飽和水蒸気圧の温度微分)におよそ反比例することが分かる。これは、乾燥時間と溶媒分圧との関係の点で、前記蒸発項における蒸発時間(tevap)とは異なっている。もう少し詳しく説明すると、拡散項においては、蒸発項の場合とは逆に、液滴径が小さくなればなるほど、単位距離を拡散する時間は短くなることを示している。
【0042】
すなわち、蒸発過程における乾燥時間(蒸発時間(tevap)および拡散過程における乾燥時間(拡散時間(tdiff))の、時間tにおけるそれぞれの溶媒の分圧(P(t))との関係、飽和蒸気圧の温度微分(蒸発エンタルピー、(dPsat/dT)1/2)との関係をグラフで示すと、図5(a)〜(d)となる。なお、P(t)は液滴径(の2乗)に依存していることから、図5(a)、(b)においては、P(t)を液滴径として見ることができる。
【0043】
ここで、蒸発時間(tevap)および拡散時間(tdiff)は、いずれも(a)と(c)、あるいは(b)と(d)を合成して表される関係となる。したがって、図5(c)に図5(a)の関係を合成すると、液滴径が小さくなることによりグラフは、図5(c)中矢印で示したように原点から遠ざかる方向に移動する。一方、図5(d)に図5(b)の関係を合成すると、液滴径が小さくなることによりグラフは、図5(d)中矢印で示したように逆に原点に近づく方向に移動することになる。
すなわち、これが意味するところは、液滴径を小さくしていくと、乾燥時間としての蒸発時間(tevap)が拡散時間(tdiff)より大きくなり、したがって乾燥が、本発明が定義するところの蒸発律速で起こるようになることを証明しているのである。
【0044】
よって、前記式(3)から得られた蒸発時間(tevap)と、式(11)から得られた拡散時間(tdiff)とを比較すると、液滴の乾燥が拡散速度によって支配される拡散律速の場合には、
vdiff>vevapであるので、tevap<tdiffとなり、
したがって、(tevap/tdiff)<1となる。
逆に、液滴の乾燥が蒸発速度によって支配される蒸発律速の場合には、
(tevap/tdiff)>1となる。
すなわち、前記した式、つまり以下の式(12)となるのである。
【0045】
【数13】
【0046】
ただし、tevap;蒸発時間、tdiff;拡散時間、k;Boltzmann 定数、T;温度、σ;衝突断面積、Pevap(t);蒸発過程内の時間tにおける溶媒分圧、Pdiff(t);拡散過程内の時間tにおける溶媒分圧、である。
なお、この式(12)は、前記式(11)において、以下に示す項(13)が非常に小さく(具体的には10−10のオーダー)、したがってこれを無視できる(=0と考えることができる)からである。
【0047】
【数14】
【0048】
ところで、「d2−LAW」における前記した前提2(拡散項が律速)は、液滴径が小さくなると拡散速度が急激に増加するため、ある条件下では崩れる。つまり、ある条件下では、前記式(12)を満たす蒸発律速となり、液滴近傍ですら溶媒分圧は飽和蒸気圧にならないと考えられる。
【0049】
【実施例】
・プロセスA(実施例)
液状体材料として、以下の化合物1を溶質とし、これを溶媒としてのドデシルベンゼン(イオン性液体でも可)に溶解させたものを用意した。
【0050】
【化1】
【0051】
続いて、この液状体を液滴吐出法(インクジェット法)で吐出し、基板上に液滴径10μmの液滴を1ドット形成した。そして、これを常温常圧にて静置することにより、自然乾燥させて基板上に成膜を行った。このときの乾燥が蒸発律速であるか拡散律速であるかを、以下のようにして調べた。
まず、前記式(12)をオーダーのみで概算すると、kは10−23のオーダー、Tは102のオーダー、σは衝突断面積であることから長さ(nm)の2乗、すなわち(10−9)2のオーダーであり、したがってこれらを代入すると以下の式(14)のようになる。
【0052】
【数15】
【0053】
ここで、tが数平均自由工程(例えば2〜4平均自由工程)程度までの場合、すなわち、t≦数平均自由工程の場合、
Pevap(t)≒Pdiff(t)となり、
t>数平均自由工程の場合、
Pevap(t)≒Psatとなる。
つまり、Pdiff(t)はサイズ(液滴径)に依存してPsatから減少するようになる。そこで、このPdiff(t)のサイズ依存性をZ(x)とする。ここで、このZ(x)は、ある時間x(=t)においてどれだけ分圧が減ずるかを示す係数である。
また、ドデシルベンゼンの20℃における飽和蒸気圧は10−5mmHg(10−3Pa)である。したがって、これらを前記の式(14)に代入すると、以下の式(15)となる。
【0054】
【数16】
【0055】
・プロセスB(比較例)
液状体材料として、前記化合物1を溶質とし、これを溶媒としてのキシレンに溶解させたものを用意した。なお、キシレンの飽和蒸気圧は、20℃で101mmHg(103Pa)である。
続いて、この液状体を液滴吐出法(インクジェット法)で吐出し、基板上に液滴径1mmの液滴を1ドット形成した。そして、これを常温常圧にて静置することにより、自然乾燥させて基板上に成膜を行った。このときの乾燥が蒸発律速であるか拡散律速であるかを、プロセスAの場合と同様に前記式(14)に代入し、調べた。前記式(14)に代入した結果を以下の式(16)に示す。
【0056】
【数17】
【0057】
次に、Z(x)について考える。
平均自由工程λは、μmオーダーに広がっていると予想され、ここでは1μmとする。(ドデシルベンゼン、キシレンともに)
すると、前記プロセスAにおいては、
t=0 → Z(x)=1、
t=10 λ → Z(x)=1/9、
t=102λ → Z(x)=1/440、
t=103λ → Z(x)=1/40421、
t=104λ → Z(x)=1/4003991、
となり、Z(x)は10λ分の影響と想定しても10−1なので、これを前記式(15)に代入することにより、
(tevap/tdiff)>1となり、したがってプロセスAにおける乾燥工程は、蒸発律速となり、本発明における乾燥工程であることが分かる。
【0058】
一方、前記プロセスBにおいては、
t=0 → Z(x)=1、
t=10 λ → Z(x)=1/1.04、
t=102λ → Z(x)=1/1.44、
t=103λ → Z(x)=1/9、
t=104λ → Z(x)=1/440、
となり、Z(x)は仮に104λ分の影響がある仮定しても10−2なので、これを前記式(16)に代入することにより、
(tevap/tdiff)<1となり、したがってプロセスBにおける乾燥工程は、拡散律速となる。
【0059】
また、このようにしてプロセスAによって得られた膜とプロセスBによって得られた膜とを調べたところ、プロセスAによって得られた膜では、平坦な膜厚プロファイルが得られ、かつ平滑なモフォロジーが得られた。一方、プロセスBによって得られた膜では、凹型の膜厚プロファイルになり、モフォロジーもラフなものとなった。
【0060】
次に、前記のプロセスAによって得られた膜とプロセスBによって得られた膜をGCMS(ガスクロマトグラフ質量分析計)によって分析し、残留溶媒量を測定した。その結果、残留溶媒量は、(プロセスAの膜)<(プロセスBの膜)となった。これより、本発明の実施例であるプロセスAによる膜は、残留溶媒量が少ないことから膜質が良好であることが分かった。
【0061】
前記のプロセスA、プロセスBにおいて、溶質を前記化合物1に加えて以下の化合物2も用い、これら2種類の溶質を前記例と同様にして各溶媒で溶解し、以下、前記例と同様にして成膜を行った。
【0062】
【化2】
【0063】
得られた膜の相分離状態をAFM(アトミックフォースマイクロスコープ)で観察したところ、プロセスBによる膜では数μmサイズの大きな相分離が見られたのに対し、プロセスAによる膜では、数分子レベルの小さな相分離しか見られず、したがってプロセスAによる膜ではミクロ相分離が起こることが分かった。
【0064】
以上の結果から、本発明の成膜方法によれば、液状体の液分を蒸発律速で乾燥することにより、液状体の液分を外部環境に影響されることなく乾燥することができ、したがって膜内での乾燥速度のバラツキがなくなることなどによって膜質や膜厚を均一にすることができる。
また、乾燥そのものを良好に行うことができることから、液状体中の液分を十分除去することができ、これにより膜質を極めて良好にすることができる。
また、液状体としてその固形分を2種以上使用した場合に、その相分離状態を例えば数分子レベルにまで小さくすることができ、したがってこれを応用することで従来にはない新たな技術に展開することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】液滴の直径とエネルギーとの関係を示すグラフである。
【図2】飽和蒸気圧と乾燥時間との関係を示すグラフである。
【図3】乾燥初期の非平衡状態を説明するための図である。
【図4】溶媒分圧変化の液滴径依存性を説明するための図である。
【図5】(a)〜(d)は、乾燥時間と飽和蒸気圧、液滴径との関係を示すグラフである。
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