JP2004239305A - アクチュエータとその保持部材の固定方法及びこれらを用いた動力断続装置とデファレンシャル装置 - Google Patents
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Abstract
【課題】ポンプとその駆動源及び圧力ラインの引き回しなどが不要であり、構造簡単、低コストで、配置スペースが狭くてすみ、軽量で車載性に優れる上に、レスポンスが速く、高い信頼性が得られるなどの利点があり、さらに、スプリング保持用のカバー部材にギア部を設け、表面硬化性を向上させ、表面硬化処理コストを低減した電磁アクチュエータを提供する。
【解決手段】プレート15,17,19と、ギア組31を介してプレート17,97を回動操作する電動モータ29と、プレート17,97の回動をプレート19の移動操作力に変換するカム機構21と、プレート17,97側と当接してその回動角度を所定の範囲に保つストッパ93と、ストッパ93と当接して衝撃力を吸収するスプリング23と、スプリング23をプレート97に保持するカバー部材131とを備え、ギア組31を構成するギア部135をカバー部材131に設けた。
【選択図】 図3
【解決手段】プレート15,17,19と、ギア組31を介してプレート17,97を回動操作する電動モータ29と、プレート17,97の回動をプレート19の移動操作力に変換するカム機構21と、プレート17,97側と当接してその回動角度を所定の範囲に保つストッパ93と、ストッパ93と当接して衝撃力を吸収するスプリング23と、スプリング23をプレート97に保持するカバー部材131とを備え、ギア組31を構成するギア部135をカバー部材131に設けた。
【選択図】 図3
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
この発明は、クラッチなどの被操作装置を操作するアクチュエータ及びその保持部材の固定方法と、このクラッチによって駆動力を断続する動力断続装置と、このクラッチによって駆動力を断続する、あるいは、差動を制限するデファレンシャル装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
図10は従来のデファレンシャル装置1001を示している(特許文献1参照)。デファレンシャル装置1001はデフキャリヤ1003に収容されており、アウターデフケース1005、インナーデフケース1007、ベベルギア式の差動機構1009、噛み合いクラッチ1011、空気圧式のアクチュエータ1013から構成されている。
【0003】
噛み合いクラッチ1011は、インナーデフケース1007に移動自在にスプライン連結されたクラッチリング1015と、アウターデフケース1005との間に形成されている。
【0004】
アクチュエータ1013はデフキャリヤ1003に固定されたシリンダ1017、ピストン1019などから構成されており、エンジンに駆動されるエアポンプから空気圧を供給されて作動し、ピストン1019とシフトフォーク1021とを介してクラッチリング1015を移動操作し、噛み合いクラッチ1011を噛み合わせる。また、空気圧の供給を停止すると噛み合いクラッチ1011の噛み合いが解除される。
【0005】
アウターデフケース1005は、ドライブピニオンギア1023とリングギア1025とを介して入力するエンジンの駆動力により回転駆動される。
【0006】
噛み合いクラッチ1011が噛み合うと、アウターデフケース1005の回転はインナーデフケース1007と差動機構1009とを介して車軸1027,1029から左右の車輪に配分され、車両が4輪駆動状態になる。
【0007】
また、噛み合いクラッチ1011の噛み合いが解除されると、インナーデフケース1007から左右の車輪までがエンジン側から切り離されて、車両は2輪駆動状態になる。
【0008】
【特許文献1】
特公平5−54574号公報
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
流体圧式アクチュエータを用いた装置は、ポンプとその駆動源及び圧力ラインの引き回しなどが必要であり、コスト高で、配置スペースが大きく、重量があり車載性に劣る上に、レスポンスが遅いなどの装置本来の問題に加えて、クラッチリング1015の位置を特定、検出するための機能を有しておらずクラッチ移動力が直接クラッチリング1011に噛み合わさり損傷などの懸念があり、耐久性や信頼性を損ねていた。
【0010】
そこで、この発明は、ポンプとその駆動源及び圧力ラインの引き回しなどが不要であり、構造簡単、低コストで、配置スペースが狭くてすみ、軽量で車載性に優れる上に、レスポンスが速く、高い信頼性が得られるなどの利点があり、さらに、電動モータによるギア部の回動を変換機構で被操作装置の操作力に変換するギア部を用いたアクチュエータであって、ギア部と支持部材とが高速で衝突することを抑制し、耐久性及び信頼性が向上するギア部を用いたアクチュエータと、このギア部を用いたアクチュエータを用いて構成した動力断続装置及びデファレンシャル装置の提供を目的としている。
【0011】
【課題を解決するための手段】
請求項1に記載されたアクチュエータは、静止側に固定された支持部材と、前記支持部材の軸方向一側に回動可能に配置された回転部材と、前記支持部材の軸方向他側に軸方向移動可能に配置され、被操作装置を移動操作する可動部材と、前記回転部材と一体的に回動するギア部と、前記ギア部と噛み合うピニオンギアを介して前記回転部材を回動させる電動モータと、前記回転部材と前記可動部材との間に設けられ前記回転部材の回動力を前記可動部材の移動操作力に変換する変換機構と、前記支持部材と当接して回動エネルギーを軽減し、衝撃力を吸収するスプリングと、前記スプリングを前記回転部材に保持する保持部材とを備え、前記ピニオンギアと噛み合うギア部を、少なくとも前記保持部材に設けたことを特徴としている。
【0012】
請求項1のアクチュエータでは、ギア組を構成するギア部が、少なくとも、衝撃吸収用のスプリングを回転部材に保持する保持部材に設けられている。
【0013】
このように、ギア部を、サイズと質量の小さい保持部材に設けたことにより、この保持部材(とギア部)は、小規模の熱処理設備で焼き入れなどの表面硬化処理を行える上に、熱処理に必要な熱量がそれだけ少なくてすむから、表面硬化処理のコストが大幅に低減される。
【0014】
その上、サイズと質量の小さいカバー部材は、焼き入れなどの表面硬化処理が行い易く(例えば、焼きが入り易く)、ギア部は充分な硬度と耐久性が得られるから、アクチュエータは長期にわたって正常に動作する。
【0015】
また、ギア部が回転部材と一体に形成され、質量が大きくなったことにより表面硬化処理がそれだけコスト高になる場合は、上記のような効果がさらに大きくなる。
【0016】
請求項2の発明は、請求項1に記載されたアクチュエータであって、前記ピニオンギアと噛み合うギア部を、前記回転部材にも設けたことを特徴とし、請求項1の構成と同等の作用・効果を得ることができる。
【0017】
また、この構成では、回転部材にもギア部を設けたことによって、保持部材のギア部と合わせて、ギア部全体の歯幅がそれだけ広くなり、充分な強度と耐久性が得られるから、アクチュエータは長期にわたって正常に動作する。
【0018】
また、ギア部の歯幅を広くするために、ギア部を肉厚にする必要がなくなるから、これに伴う重量化と、コストの上昇が避けられる。
【0019】
また、ギア部が回転部材と一体に形成され、質量が大きくなったことにより表面硬化処理がそれだけコスト高になる場合は、上記のような効果がさらに大きくなる。
【0020】
請求項3に記載された保持部材の固定方法は、請求項1または請求項2に記載されたアクチュエータにおいて、前記保持部材を、ボルト締め、リベット止め、溶接、カシメのいずれかの固定手段で、前記回転部材部に固定したことを特徴とし、請求項1または請求項2の構成と同等の作用・効果を得ることができる。
【0021】
また、請求項3に開示された、ボルト締め、リベット止め、溶接、カシメによる保持部材の固定方法は、いずれも施工作業が容易で、低コストであり、充分な固定強度が得られる。
【0022】
請求項4に記載された動力断続装置は、一対のトルク伝達部材と、前記両トルク伝達部材の間に配置されたクラッチと、請求項1〜3のいずれかに記載され、前記クラッチを被操作装置とするアクチュエータまたは保持部材の固定方法を備え、前記アクチュエータによる前記クラッチの操作によって前記トルク伝達部材の間でトルクを断続することを特徴としている。
【0023】
請求項4の動力断続装置は、例えば、4輪駆動車で2輪駆動走行時に切り離される車輪側の動力伝達系に配置され、本発明のアクチュエータによってクラッチを連結すれば車両は4輪駆動状態になり、クラッチの連結を解除すれば車両は2輪駆動状態になる。
【0024】
また、請求項4の動力断続装置は、請求項1〜3のアクチュエータまたは保持部材の固定方法を用いたことにより、ギア部が、小規模の熱処理設備と少ない熱量で表面硬化処理可能になり、表面硬化処理のコストが大幅に低減され、ギア部全体の歯幅が広くなり、これらの結果によって、充分な耐久性が得られ、スプリング保持用の保持部材を強固に固定することができる。
【0025】
請求項5に記載されたデファレンシャル装置は、原動機の駆動力を受けて回転する外側回転部材と、前記外側回転部材の内部に相対回転可能に配置された内側回転部材と、前記内側回転部材に連結された差動機構と、前記外側回転部材と前記内側回転部材との連結を断続するクラッチと、請求項1〜3のいずれかに記載され、前記クラッチを被操作装置とするアクチュエータまたは保持部材の固定方法を備え、前記アクチュエータによる前記クラッチの操作によって前記外側回転部材と前記内側回転部材との間でトルクを断続することを特徴としている。
【0026】
請求項5のデファレンシャル装置は、差動機構の入力側で駆動力を断続するデファレンシャル装置であり、4輪駆動車で2輪駆動走行時に切り離される車輪側の動力伝達系に配置され、本発明のアクチュエータによってクラッチを連結すれば車両は4輪駆動状態になり、クラッチの連結を解除すれば車両は2輪駆動状態になる。
【0027】
また、請求項5のデファレンシャル装置は、請求項1〜3のアクチュエータまたは保持部材の固定方法を用いたことにより、ギア部が、小規模の熱処理設備と少ない熱量で表面硬化処理可能になり、表面硬化処理のコストが大幅に低減され、ギア部全体の歯幅が広くなり、これらの結果によって、充分な耐久性が得られ、スプリング保持用の保持部材を強固に固定することができる。
【0028】
請求項6に記載されたデファレンシャル装置は、原動機の駆動力を受けて回転する回転ケース部材と、前記回転ケース部材の回転を一対の出力部材から車輪側に配分する差動機構と、前記出力部材のいずれか一方とその車輪との間に配置されたクラッチと、請求項1〜3のいずれかに記載され、前記クラッチを被操作装置とするアクチュエータまたは保持部材の固定方法を備え、前記アクチュエータによる前記クラッチの操作によって前記出力部材と車輪との間でトルクを断続することを特徴としている。
【0029】
また、請求項6のデファレンシャル装置は、差動機構の出力側で駆動力を断続するデファレンシャル装置であり、請求項5のデファレンシャル装置と同様に、4輪駆動車で2輪駆動走行時に切り離される車輪側の動力伝達系に配置され、本発明のアクチュエータによってクラッチを連結すれば車両は4輪駆動状態になり、クラッチの連結を解除すれば、差動機構の差動回転によって駆動力が遮断され、車両は2輪駆動状態になる。
【0030】
また、請求項6のデファレンシャル装置は、請求項1〜3のアクチュエータまたは保持部材の固定方法を用いたことにより、ギア部が、小規模の熱処理設備と少ない熱量で表面硬化処理可能になり、表面硬化処理のコストが大幅に低減され、ギア部全体の歯幅が広くなり、これらの結果によって、充分な耐久性が得られ、スプリング保持用の保持部材を強固に固定することができる。
【0031】
請求項7に記載されたデファレンシャル装置は、原動機の駆動力を受けて回転する回転ケース部材と、前記回転ケース部材の回転を一対の出力部材から車輪側に配分する差動機構と、前記回転ケース部材と前記出力部材のいずれか2者の間に配置され、前記差動機構の差動を制限するクラッチと、請求項1〜3のいずれかに記載され、前記クラッチを被操作装置とするアクチュエータまたは保持部材の固定方法を備え、前記アクチュエータによる前記クラッチの操作によって前記差動機構の差動を制限することを特徴としている。
【0032】
また、請求項7のデファレンシャル装置は、本発明のアクチュエータによってクラッチを連結すれば差動機構の差動が制限され、クラッチの連結を解除すれば差動が自由になる。
【0033】
また、請求項7のデファレンシャル装置は、請求項1〜3のアクチュエータまたは保持部材の固定方法を用いたことにより、ギア部が、小規模の熱処理設備と少ない熱量で表面硬化処理可能になり、表面硬化処理のコストが大幅に低減され、ギア部全体の歯幅が広くなり、これらの結果によって、充分な耐久性が得られ、スプリング保持用の保持部材を強固に固定することができる。
【0034】
【発明の実施の形態】
[第1実施形態]
図1〜図7によって本発明の第1実施形態であるアクチュエータ1及びそのカバー部材の固定方法と、これを用いたリヤデフ3(デファレンシャル装置)の説明をする。
【0035】
以下の説明の中で、左右の方向はリヤデフ3が用いられた4輪駆動車での左右の方向である。
【0036】
リヤデフ3(エンジンの駆動力を左右の後輪に配分するデファレンシャル装置)は、差動機構の入力側に駆動力の断続機能を備えたデファレンシャル装置であり、4輪駆動車に用いられて、2輪駆動時は後輪への駆動力を切断する。
【0037】
リヤデフ3が用いられた4輪駆動車の動力伝達系は、エンジン(原動機)、トランスミッション、トランスファ、2−4切替え機構、フロントデフ(エンジンの駆動力を左右の前輪に配分するデファレンシャル装置)、前車軸、左右の前輪、後輪側のプロペラシャフト、リヤデフ3、後車軸、左右の後輪などから構成されている。
【0038】
2−4切替え機構は、トランスファの後輪側出力インターフェイスを構成しており、下記のように、リヤデフ3と同時に連結解除操作及び連結操作され、後輪側への駆動力を断続する。
【0039】
エンジンの駆動力は、トランスミッションからトランスファに伝達され、トランスファから前輪側と後輪側に配分される。
【0040】
前輪側に配分された駆動力は、フロントデフから前車軸を介して左右の前輪に配分される。
【0041】
また、後輪側に配分された駆動力は、2−4切替え機構とリヤデフ3が連結されている間は、2−4切替え機構と後輪側プロペラシャフトからリヤデフ3に伝達され、リヤデフ3から後車軸を介して左右の後輪に配分され、車両は4輪駆動状態になる。
【0042】
また、2−4切替え機構とリヤデフ3の連結をそれぞれ解除すると、後輪側がエンジンから切り離されて、車両は2輪駆動状態になる。
【0043】
リヤデフ3はデフキャリヤ5の内部に配置されており、デフキャリヤ5の内部にはオイル溜りが形成されている。
【0044】
リヤデフ3は、図1のように、アクチュエータ1、アウターデフケース(外側回転部材)7、インナーデフケース(内側回転部材)9、ベベルギア式の差動機構11、ドッグクラッチ13(被操作装置:クラッチ)から構成されている。
【0045】
また、アクチュエータ1は、図1と図2のように、支持プレート(支持部材)15、カムプレート(回転部材)17、可動プレート(可動部材)19、カム21(変換機構)、コイルスプリング23(スプリング)、リターンスプリング25、シフトスプリング27、電動モータ29、ギア組31、カバー部材(保持部材)131、コントローラなどから構成されている。
【0046】
リヤデフ3はアウターデフケース7とインナーデフケース9からなる2重ケーシング構造になっており、インナーデフケース9はアウターデフケース7の内周で摺動回転自在に支承されている。また、アウターデフケース7に形成された左右のボス部33,35はそれぞれスラストベアリング37(図2)を介してデフキャリヤ5に支承されている。
【0047】
アウターデフケース7にはリングギア39(図2)がボルトで固定されている。リングギア39はドライブピニオンギアと噛み合っており、このドライブピニオンギアはドライブピニオンシャフトと一体に形成されている。ドライブピニオンシャフトは継ぎ手と後輪側のプロペラシャフトなどを介してトランスファの2−4切替え機構に連結されており、エンジンの駆動力はトランスファと2−4切替え機構からこの後輪側動力伝達系を介してアウターデフケース7を回転させる。
【0048】
アウターデフケース7の内部にはクラッチリング41が配置されており、アウターデフケース7の内周で軸方向移動自在に支承されている。
【0049】
ドッグクラッチ13は、噛み合い歯43と噛み合い歯45によって構成されており、噛み合い歯43はクラッチリング41の左端部に形成され、噛み合い歯45はインナーデフケース9の右端部に形成されている。
【0050】
また、アウターデフケース7の左右にはそれぞれオイルが流出入する開口47,49が周方向等間隔に設けられている。クラッチリング41の右端には周方向等間隔に3本の脚部51が設けられており、これらの脚部51は右の開口49に係合し、外部に突き出している。
【0051】
クラッチリング41は、下記のように、アクチュエータ1によって左右に移動操作される。クラッチリング41が左方に移動操作されると、図1の下半部のように、ドッグクラッチ13が噛み合ってアウターデフケース7とインナーデフケース9とが連結され、クラッチリング41が右方に戻ると、図1の上半部のように、ドッグクラッチ13の噛み合いが解除され、アウターデフケース7とインナーデフケース9とが切り離される。
【0052】
インナーデフケース9の左端部とアウターデフケース7との間には、アクチュエータ1からの操作力を受けるスラストワッシャ53が配置されており、インナーデフケース9はこのスラストワッシャ53を介して軸方向の左方に位置決めされている。
【0053】
ベベルギア式の差動機構11は、複数本のピニオンシャフト55、ピニオンギア57、左右の出力側サイドギア59,61から構成されている。
【0054】
各ピニオンシャフト55の先端は、インナーデフケース9に周方向等間隔に形成された貫通孔63に係合し、スプリングピン65によって抜け止めが施されている。
【0055】
ピニオンギア57は、各ピニオンシャフト55上に回転自在に支承されており、サイドギア(出力部材)59,61は左右から各ピニオンギア57と噛み合っている。
【0056】
サイドギア59,61の各ボス部67,69はアウターデフケース7に形成された支承部71,73によって支承されており、各ボス部67,69のスプライン部75,77には左右の後車軸がそれぞれ連結されている。
【0057】
また、各サイドギア59,61とアウターデフケース7との間にはスラストワッシャ79がそれぞれ配置され、サイドギア59,61の噛み合い反力を受けている。
【0058】
インナーデフケース9の内周には、各ピニオンギア57の背面に対向して球面ワッシャ部81が形成されており、ピニオンギア57の遠心力と、各サイドギア59,61との噛み合いによってピニオンギア57が受ける噛み合い反力とを負担している。
【0059】
支持プレート15はプレス加工されており、図1〜図6のように、環状板部83、環状板部83と一体に形成された2個の固定板部85、環状板部83の内周に周方向等間隔に設けられた3個の組み付け凹部87、環状板部83に設けられた2個のガイド孔89と4個のガイド孔91と2個のストッパ93などから構成されている。
【0060】
また、カムプレート17はプレス加工されており、環状板部95、ギアプレート(ギア部)97、環状板部95の内周に周方向等間隔に設けられた3個の組み付け凹部99、各組み付け凹部99の周方向に隣接して設けられた3個の支持突起101、環状板部95の内周に沿って周方向等間隔に設けられた3個のカム片103などから構成されている。
【0061】
ギアプレート97は環状板部95と一体に形成されており、その外周にはギア部105が設けられている。また、支持突起101は、環状板部95に形成された軸方向部分107と、軸方向部分107の端部に形成された径方向部分109(図6と図7)から構成されている。
【0062】
各カム片103は、傾斜面111、その周方向に形成されたカム角を持たない保持面113、傾斜面111と保持面113との間に形成された保持突起115から構成されている。
【0063】
可動プレート19はプレス加工されており、図6のように、環状板部117、環状板部117の内周に周方向等間隔に設けられた3個のカムガイド片119、環状板部117の外周に設けられた各4個のガイド片121,123などから構成されている。
【0064】
また、各カムガイド片119は、環状板部117に形成された軸方向部分125と、軸方向部分125の端部に形成された径方向部分127から構成されている。
【0065】
コイルスプリング23は、図2〜図7のように、ギアプレート97(カムプレート17)にリベット129,129で固定されたカバー部材131とギアプレート97との間に形成された円筒状のリテーナ部133に保持されており、下記のように、カムプレート17が両方向に回動すると、その両端部は支持プレート15のストッパ93,93と当接する。
【0066】
また、カバー部材131には、ギアプレート97のギア部105と同位相のギア部135が設けられている。
【0067】
なお、組付けが終了した状態で、支持プレート15とカムプレート17と可動プレート19は互いにセンターリングされており、カムプレート17は支持プレート15と可動プレート19に対して回動自在である。
【0068】
図1と図3のように、支持プレート15の各固定板部85はボルト136によってデフキャリヤ5に固定されている。
【0069】
カム21は、上記のように、カムプレート17の各カム片103と可動プレート19の各カムガイド片119(径方向部分127)とによって構成されている。
【0070】
図1のように、リターンスプリング25は、クラッチリング51のリテーナ137に一体形成されている。このリテーナ137に形成された腕部139はクラッチリング41の各脚部51に折り曲げて固定されており、リテーナ137(リターンスプリング25)とアウターデフケース7の右端部との間にはリング141が配置されている。
【0071】
クラッチリング41とリテーナ137は一体で軸方向に往復移動可能であり、リターンスプリング25はクラッチリング41をドッグクラッチ13の噛み合い解除方向(右方)に付勢している。
【0072】
図1は、シフトスプリング27を可動プレート19と一体に形成した例を示している。また、シフトスプリング27の付勢力はリターンスプリング25の付勢力より強くされており、可動プレート19とクラッチリング41をドッグクラッチ13の噛み合い方向(左方)に移動させる。
【0073】
なお、リターンスプリング25は可動プレート19と一体に形成する他に、別体のスプリング(例えば、コイルスプリング159)を用いてもよい。
【0074】
図2のように、電動モータ29のケーシング143は、デフキャリヤ5に設けられた取り付け穴145にOリング147を介して取り付けられている。電動モータ29は両方向に回転可能であり、そのリード線149はコントローラを介して車載のバッテリに接続されている。
【0075】
電動モータ29の出力軸151にはピニオンギア153がスプライン連結されている。出力軸151とケーシング143との間にはオイルシール155が配置されており、ピニオンギア153はボールベアリング157によってケーシング143に支承されている。
【0076】
ギア組31は、電動モータ29側のピニオンギア153と、ギアプレート97(カムプレート17)のギア部105及びカバー部材131のギア部135とで構成されており、電動モータ29の回転トルクを増幅し、カムプレート17を回動させる。
【0077】
コントローラは、下記のようにしてドッグクラッチ13の断続操作を行うと共に、2輪駆動状態から4輪駆動状態に切り換える際はドッグクラッチ13と2−4切替え機構をそれぞれ同時に連結操作し、4輪駆動状態から2輪駆動状態に切り換える際はそれぞれを同時に連結解除操作する。
【0078】
また、ドッグクラッチ13の断続操作に当たって、コントローラは電動モータ29を両方向(一方向と反対方向)にそれぞれ所定の時間(角度)だけ回転させる時間制御を行う。電動モータ29が所定の時間だけ回転すると、ギア組31を介してカムプレート17が所定の方向に所定の角度だけ回動操作される。
【0079】
図3は、カムプレート17が全回動角度(回動幅)の中心位置にある状態を示している。
【0080】
図4は、図3の位置から、カムプレート17をL方向(4WD位置)まで所定の角度だけ回動させた状態を示している。
【0081】
このとき、ギア組31のピニオンギア153はギア部105の一方の端部で噛み合っていると共に、カムプレート17上のコイルスプリング23の一側端部は支持プレート15の一側の固定板部85(ストッパ)と突き当たり、カムプレート17の過回転を防止し、ピニオンギア153がギア部105から外れることを防止している。
【0082】
また、図4のように、カムプレート17はコイルスプリング23が固定板部85と突き当たる直前にカム21で可動プレート19との接触を終了し、電動モータ29のトルクによって回動速度が加速されるが、コイルスプリング23は固定板部85と突き当たったとき、その撓みによって衝撃を吸収し、緩和する。
【0083】
カムプレート17が4WD位置まで回動すると、各カム21において、可動プレート19のカムガイド片119の径方向部分127はカムプレート17のカム片103の傾斜面111を下りた位置にある。図1の下半部のように、この状態では径方向部分127がシフトスプリング27の付勢力によってカムプレート17の環状板部95に押し付けられており、各カム21は作動を停止している。
【0084】
各カム21が作動を停止すると、可動プレート19とクラッチリング41がシフトスプリング27によって左方に移動し、ドッグクラッチ13が噛み合い、車両は4輪駆動状態になる。
【0085】
また、このときシフトスプリング27は待ち機構になり、噛み合い歯43,45の位相が合ったところでドッグクラッチ13を噛み合わせる。
【0086】
図5は、図3の位置から、ギアプレート97をR方向(2WD位置)まで所定の角度だけ回動させた状態を示している。
【0087】
このとき、ギア組31のピニオンギア153はギア部105の他方の端部で噛み合っており、カムプレート17上のコイルスプリング23の他側端部は支持プレート15の他側の固定板部85(ストッパ)と突き当たり、カムプレート17の過回転を防止し、ピニオンギア153がギア部105から外れることを防止している。
【0088】
また、図5のように、カムプレート17はコイルスプリング23が固定板部85と突き当たる直前にカム21で可動プレート19との接触を終了し、電動モータ29のトルクによって回動速度が加速されるが、コイルスプリング23は固定板部85と突き当たったとき、その撓みによって衝撃を吸収し、緩和する。
【0089】
カムプレート17が2WD位置まで回動すると、各カム21において、カムガイド片119の径方向部分127はカム片103の傾斜面111を登り、保持突起115を乗り越えて保持面113に保持され、各カム21を作動させる。
【0090】
各カム21が作動すると、そのカムスラスト力によって各カムガイド片119(可動プレート19)が軸方向の右側に移動し、シフトスプリング27を押し縮める。シフトスプリング27が縮められると、図1の上半部のように、リターンスプリング25の付勢力によって可動プレート19(クラッチリング41)が右方に移動し、ドッグクラッチ13の噛み合いが解除され、車両は2輪駆動状態になる。
【0091】
なお、コイルスプリング23のばね常数は、4WD位置と2WD位置の両方で、固定板部85(ストッパ)と突き当たり、その撓み量だけカムプレート17がさらに回動したときに、ピニオンギア153がギア部105から外れない範囲で設定されている。
【0092】
また、保持突起115がそのチェック機能によって各カムガイド片119を保持面113に保持するから、電動モータ29を停止させた状態で、走行中に振動や衝撃などの外乱因子を受けても、ドライバーの意に反して車両が2輪駆動状態から4輪駆動状態に変動することが防止される。
【0093】
また、カム片103の傾斜面111の両側に設けられた保持面113と環状板部95はいずれもカム角を持たないから、カムガイド片119(径方向部分127)がこれらの保持面113と環状板部95に乗っている間は、シフトスプリング27の付勢力を受けてもカムプレート17に回転トルクが掛かることはなく、ドライバーの意に反して車両が2輪駆動状態や4輪駆動状態に誤って切り替わることはない。
【0094】
従って、作動前(作動停止時)と作動後の両方でカム21の状態が保持され、車両が4輪駆動状態及び2輪駆動状態に安定して保持されるから、カム21を操作するとき以外は電動モータ29を停止させることができる。
【0095】
4輪駆動状態では、上記のようにドッグクラッチ13と2−4切替え機構がそれぞれ連結されるから、エンジンの駆動力は2−4切替え機構から後輪側動力伝達系を介してアウターデフケース7に伝達され、ドッグクラッチ13を介してインナーデフケース9が回転駆動される。この回転はピニオンシャフト55からピニオンギア57を介してサイドギア59,61に配分され、各車軸を介して左右の後輪に伝達される。
【0096】
車両が4輪駆動状態になると、悪路などでの走破性、脱出性、安定性が向上する。また、悪路走行中などに後輪間に駆動抵抗差が生じると、各ピニオンギア57の自転によってエンジンの駆動力は左右の後輪に差動配分される。
【0097】
また、2輪駆動状態では、ドッグクラッチ13と2−4切替え機構の連結がそれぞれ解除されるから、インナーデフケース9から後輪までがドッグクラッチ13によって切り離されフリー回転状態になると共に、2−4切替え機構からアウターデフケース7までの動力伝達系が、エンジンの駆動力と後輪による連れ回りの両方から切り離されて回転が停止する。
【0098】
このように2−4切替え機構からアウターデフケース7までの後輪側動力伝達系の回転が停止する2輪駆動状態では、振動が軽減して乗り心地が向上すると共に、後輪側動力伝達系の各部で磨耗が軽減されて耐久性が向上し、さらに、回転抵抗の低減分だけエンジンの負担が軽減し、燃費が向上する。
【0099】
アウターデフケース7には、開口47,49の他に、ボス部33の内周には螺旋状のオイル溝159が形成され、ボス部35の内周にも同様な螺旋状のオイル溝が形成されており、さらに、スラストワッシャ79,79と対向する部分には、各螺旋状オイル溝159にそれぞれ連通した径方向のオイル溝161,163が形成されている。
【0100】
開口47,49はアウターデフケース7の径方向外側部分に形成されているから、デフキャリヤ5に形成されたオイル溜りのオイルに常時浸されており、アウターデフケース7の回転に伴って開口47,49からオイルが流出入する。
【0101】
また、オイル溜りのオイルはアウターデフケース7(リングギア39)の回転によって掻き上げられ、掻き上げられたオイルは螺旋状オイル溝159のネジポンプ作用によって移動を促進され、オイル溝161,163と、スラストワッシャ79,79などの隙間を通ってアウターデフケース7の内部に流入する。
【0102】
アウターデフケース7に流入したオイルは、差動機構11を構成する各ギア57,59,61の噛み合い部、ピニオンシャフト55とピニオンギア57の摺動部、アウターデフケース7とインナーデフケース9の摺動部、アウターデフケース7とクラッチリング41の摺動部、ドッグクラッチ13(噛み合い歯43,45)などに供給されてこれらを潤滑・冷却する。
【0103】
また、アクチュエータ1の下部もオイル溜りに浸されており、回動操作されるカムプレート17と支持プレート15及び可動プレート19との摺動部、カム21なども潤滑・冷却される。
【0104】
また、ギア組31も上記の掻き上げオイルによって潤滑・冷却される。
【0105】
上記の各潤滑・冷却部では、供給されたオイルによって、磨耗が軽減され、耐久性が向上すると共に、各摺動部での摩擦抵抗が軽減され、エンジンの燃費が向上する。
【0106】
こうして、アクチュエータ1及びそのカバー部材の固定方法と、これを用いたリヤデフ3が構成されている。
【0107】
アクチュエータ1では、ギアプレート97のギア部105の他に、コイルスプリング23保持用のカバー部材131にもギア部135が設けられており、これらが電動モータ29側のピニオンギア153と噛み合ってギア組31を構成している。
【0108】
ギア部135が設けられたカバー部材131は、サイズと質量が小さく、従って、小規模の熱処理設備で焼き入れなどの表面硬化処理が行える上に、熱処理に必要な熱量がそれだけ少なくてすむから、表面硬化処理のコストが大幅に低減されている。
【0109】
その上、サイズと質量の小さいカバー部材131は、焼き入れなどの表面硬化処理が行い易く、例えば、焼きが入り易いから、そのギア部135は充分な硬度と耐久性が得られる。
【0110】
また、ギアプレート97のギア部105に加えて、カバー部材131にもギア部135を設けたことにより、ギア部全体の歯幅がそれだけ広くなっているから、強度と耐久性がそれだけ向上している。
【0111】
従って、アクチュエータ1は長期にわたって正常に動作する。
【0112】
また、ギア部の歯幅を広くするために、ギアプレート97(カムプレート17)を肉厚にする必要がなくなったから、これに伴うカムプレート17及びアクチュエータ1の重量化と、コスト上昇が避けられる。
【0113】
また、カバー部材131をリベット129,129でギアプレート97(カムプレート17)に固定するカバー部材の固定方法は、作業が容易で、低コストであり、充分な固定強度が得られる。
【0114】
[第2実施形態]
図8と図9によって第2実施形態のアクチュエータ201及びそのカバー部材(保持部材)203の固定方法を説明する。
【0115】
アクチュエータ201は、第1実施形態のリヤデフ3にアクチュエータ1と置き換えて用いられており、以下、アクチュエータ1と同一の部材等には同一の符号を与えて引用しながら、相違点を説明する。
【0116】
アクチュエータ201では、カバー部材203がリベット129,129でギアプレート97に固定されており、コイルスプリング23はギアプレート97とカバー部材203との間に形成された円筒状のリテーナ部133に保持されている。
【0117】
カバー部材203は、例えば、第1実施形態でのカバー部材131より厚板で作られており、また、第1実施形態と異なって、ギアプレート97にギア部は設けられていない。
【0118】
カバー部材203にはギア部205が設けられており、このギア部205は電動モータ29側のピニオンギア153と噛み合ってギア組31を構成している。
【0119】
こうして、アクチュエータ201と、そのカバー部材203の固定方法が構成されている。
【0120】
アクチュエータ201では、上記のように、コイルスプリング23保持用のカバー部材203にギア部205を設けると共に、ギアプレート97(カムプレート17)にはギア部を設けていない。
【0121】
ギア部205が設けられたカバー部材203は、サイズと質量が小さく、従って、小規模の熱処理設備で焼き入れなどの表面硬化処理が行える上に、熱処理に必要な熱量がそれだけ少なくてすむから、表面硬化処理のコストが大幅に低減されている。
【0122】
その上、サイズと質量の小さいカバー部材203は、焼き入れなどの表面硬化処理が行い易く、例えば、焼きが入り易いから、そのギア部205は充分な硬度と耐久性が得られる。
【0123】
また、カバー部材203を厚板で作ったことにより、ギア部205の歯幅が広くなっており、強度と耐久性がそれだけ向上している。
【0124】
従って、アクチュエータ201は長期にわたって正常に動作する。
【0125】
また、ギア部205の歯幅を広くするために、ギアプレート97(カムプレート17)を肉厚にする必要がなくなったから、これに伴うギアプレート97(カムプレート17)及びアクチュエータ201の重量化と、コスト上昇が避けられる。
【0126】
また、カバー部材203をリベット129,129でギアプレート97(カムプレート17)に固定するカバー部材の固定方法は、作業が容易で、低コストであり、充分な固定強度が得られる。
【0127】
なお、本発明において、カムプレートとギアプレートは、各実施形態のように一体に形成するのではなく、別体で製作した後、一体に固定してもよい。
【0128】
また、スプリングは、コイルスプリングに限らず、あらゆる形状のスプリングを使用可能であり、さらには、金属製のスプリング以外の弾性部材(例えば、ゴム、プラスチック)など、ダンパー機能を持った部材は全て使用することができる。
【0129】
また、本発明のアクチュエータにおいて、被操作装置はクラッチに限らない。また、このクラッチも、各実施形態のような噛み合いクラッチ(ドッグクラッチ)だけでなく、多板クラッチやコーンクラッチのような摩擦クラッチでもよい。
【0130】
また、本発明のデファレンシャル装置において、差動機構は、ベベルギア式の差動機構に限らず、プラネタリーギア式の差動機構、デフケースの収容孔に回転自在に収容されたピニオンギアで出力側のサイドギアを連結した差動機構、ウォームギアを用いた差動機構などでもよい。
【0131】
【発明の効果】
請求項1のアクチュエータは、少なくとも、ギア部をサイズと質量の小さい保持部材に設けたことにより、保持部材(ギア部)の表面硬化処理を小規模な熱処理設備で行える上に、熱処理に必要な熱量もそれだけ少なくてすむから、表面硬化処理のコストが大幅に低減される。
【0132】
その上、サイズと質量の小さい保持部材は、焼き入れなどの表面硬化処理が行い易く、ギア部は充分な耐久性(硬度)が得られるから、アクチュエータは長期にわたって正常に動作する。
【0133】
また、ギア部が回転部材と一体に形成され、質量が大きくなったことにより表面硬化処理がそれだけコスト高になる場合は、上記のような効果がさらに大きくなる。
【0134】
請求項2のアクチュエータは、請求項1の構成と同等の効果を得ることができる。
【0135】
また、ギア部と保持部材のギア部と合わせて、ギア部全体の歯幅が広くなり、充分な強度と耐久性が得られるから、アクチュエータは長期にわたって正常に動作する。
【0136】
また、ギア部の歯幅を広くするためにギア部を肉厚にする必要がなくなり、これに伴う重量化と、コストの上昇が避けられる。
【0137】
また、ギア部が回転部材と一体に形成され、質量が大きくなったことにより表面硬化処理がそれだけコスト高になる場合は、上記のような効果がさらに大きくなる。
【0138】
請求項3に記載されたカバー部材の固定方法は、いずれも施工作業が容易で、低コストであり、充分な固定強度が得られる。
【0139】
請求項4に記載された動力断続装置は、請求項1〜3のアクチュエータまたは保持部材の固定方法を用いたことにより、ギア部が、小規模の熱処理設備と少ない熱量で表面硬化処理可能になり、表面硬化処理のコストが大幅に低減され、ギア部全体の歯幅が広くなり、これらの結果によって、充分な耐久性が得られ、スプリング保持用の保持部材を強固に固定することができる。
【0140】
請求項5に記載されたデファレンシャル装置は、請求項1〜3のアクチュエータまたは保持部材の固定方法を用いたことにより、ギア部が、小規模の熱処理設備と少ない熱量で表面硬化処理可能になり、表面硬化処理のコストが大幅に低減され、ギア部全体の歯幅が広くなり、これらの結果によって、充分な耐久性が得られ、スプリング保持用のカバー部材を強固に固定することができる。
【0141】
請求項6に記載されたデファレンシャル装置は、請求項1〜3のアクチュエータまたは保持部材の固定方法を用いたことにより、ギア部が、小規模の熱処理設備と少ない熱量で表面硬化処理可能になり、表面硬化処理のコストが大幅に低減され、ギア部全体の歯幅が広くなり、これらの結果によって、充分な耐久性が得られ、スプリング保持用のカバー部材を強固に固定することができる。
【0142】
請求項7に記載されたデファレンシャル装置は、請求項1〜3のアクチュエータまたは保持部材の固定方法を用いたことにより、ギア部が、小規模の熱処理設備と少ない熱量で表面硬化処理可能になり、表面硬化処理のコストが大幅に低減され、ギア部全体の歯幅が広くなり、これらの結果によって、充分な耐久性が得られ、スプリング保持用の保持部材を強固に固定することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】第1実施形態のアクチュエータとこれを用いたリヤデフを示す断面図である。
【図2】第1実施形態の要部断面図である。
【図3】第1実施形態のアクチュエータのカムプレートが回動範囲の中心にある状態を示す正面図である。
【図4】第1実施形態のアクチュエータのカムプレートが4WD位置に回動した状態を示す正面図である。
【図5】第1実施形態のアクチュエータのカムプレートが2WD位置に回動した状態を示す正面図である。
【図6】第1実施形態のアクチュエータの背面図である。
【図7】第1実施形態のアクチュエータの縦断面図である。
【図8】第2実施形態のアクチュエータの縦断面図である。
【図9】第2実施形態のアクチュエータの背面図である。
【図10】従来例の断面図である。
【符号の説明】
1 アクチュエータ
3 リヤデフ(デファレンシャル装置)
7 アウターデフケース(外側回転部材)
9 インナーデフケース(内側回転部材)
11 ベベルギア式の差動機構
13 ドッグクラッチ(被操作装置:クラッチ)
15 支持プレート(支持部材)
17 カムプレート(回転部材)
19 可動プレート(可動部材)
21 カム(変換機構)
23 コイルスプリング(スプリング)
29 電動モータ
31 ギア組
93 支持プレートに設けられたストッパ
97 ギアプレート(ギア部)
105 ギアプレート97に設けられたギア部
131 スプリング保持用のカバー部材
135 カバー部材131に設けられたギア部
201 アクチュエータ
203 スプリング保持用のカバー部材
205 カバー部材203に設けられたギア部
【発明の属する技術分野】
この発明は、クラッチなどの被操作装置を操作するアクチュエータ及びその保持部材の固定方法と、このクラッチによって駆動力を断続する動力断続装置と、このクラッチによって駆動力を断続する、あるいは、差動を制限するデファレンシャル装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
図10は従来のデファレンシャル装置1001を示している(特許文献1参照)。デファレンシャル装置1001はデフキャリヤ1003に収容されており、アウターデフケース1005、インナーデフケース1007、ベベルギア式の差動機構1009、噛み合いクラッチ1011、空気圧式のアクチュエータ1013から構成されている。
【0003】
噛み合いクラッチ1011は、インナーデフケース1007に移動自在にスプライン連結されたクラッチリング1015と、アウターデフケース1005との間に形成されている。
【0004】
アクチュエータ1013はデフキャリヤ1003に固定されたシリンダ1017、ピストン1019などから構成されており、エンジンに駆動されるエアポンプから空気圧を供給されて作動し、ピストン1019とシフトフォーク1021とを介してクラッチリング1015を移動操作し、噛み合いクラッチ1011を噛み合わせる。また、空気圧の供給を停止すると噛み合いクラッチ1011の噛み合いが解除される。
【0005】
アウターデフケース1005は、ドライブピニオンギア1023とリングギア1025とを介して入力するエンジンの駆動力により回転駆動される。
【0006】
噛み合いクラッチ1011が噛み合うと、アウターデフケース1005の回転はインナーデフケース1007と差動機構1009とを介して車軸1027,1029から左右の車輪に配分され、車両が4輪駆動状態になる。
【0007】
また、噛み合いクラッチ1011の噛み合いが解除されると、インナーデフケース1007から左右の車輪までがエンジン側から切り離されて、車両は2輪駆動状態になる。
【0008】
【特許文献1】
特公平5−54574号公報
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
流体圧式アクチュエータを用いた装置は、ポンプとその駆動源及び圧力ラインの引き回しなどが必要であり、コスト高で、配置スペースが大きく、重量があり車載性に劣る上に、レスポンスが遅いなどの装置本来の問題に加えて、クラッチリング1015の位置を特定、検出するための機能を有しておらずクラッチ移動力が直接クラッチリング1011に噛み合わさり損傷などの懸念があり、耐久性や信頼性を損ねていた。
【0010】
そこで、この発明は、ポンプとその駆動源及び圧力ラインの引き回しなどが不要であり、構造簡単、低コストで、配置スペースが狭くてすみ、軽量で車載性に優れる上に、レスポンスが速く、高い信頼性が得られるなどの利点があり、さらに、電動モータによるギア部の回動を変換機構で被操作装置の操作力に変換するギア部を用いたアクチュエータであって、ギア部と支持部材とが高速で衝突することを抑制し、耐久性及び信頼性が向上するギア部を用いたアクチュエータと、このギア部を用いたアクチュエータを用いて構成した動力断続装置及びデファレンシャル装置の提供を目的としている。
【0011】
【課題を解決するための手段】
請求項1に記載されたアクチュエータは、静止側に固定された支持部材と、前記支持部材の軸方向一側に回動可能に配置された回転部材と、前記支持部材の軸方向他側に軸方向移動可能に配置され、被操作装置を移動操作する可動部材と、前記回転部材と一体的に回動するギア部と、前記ギア部と噛み合うピニオンギアを介して前記回転部材を回動させる電動モータと、前記回転部材と前記可動部材との間に設けられ前記回転部材の回動力を前記可動部材の移動操作力に変換する変換機構と、前記支持部材と当接して回動エネルギーを軽減し、衝撃力を吸収するスプリングと、前記スプリングを前記回転部材に保持する保持部材とを備え、前記ピニオンギアと噛み合うギア部を、少なくとも前記保持部材に設けたことを特徴としている。
【0012】
請求項1のアクチュエータでは、ギア組を構成するギア部が、少なくとも、衝撃吸収用のスプリングを回転部材に保持する保持部材に設けられている。
【0013】
このように、ギア部を、サイズと質量の小さい保持部材に設けたことにより、この保持部材(とギア部)は、小規模の熱処理設備で焼き入れなどの表面硬化処理を行える上に、熱処理に必要な熱量がそれだけ少なくてすむから、表面硬化処理のコストが大幅に低減される。
【0014】
その上、サイズと質量の小さいカバー部材は、焼き入れなどの表面硬化処理が行い易く(例えば、焼きが入り易く)、ギア部は充分な硬度と耐久性が得られるから、アクチュエータは長期にわたって正常に動作する。
【0015】
また、ギア部が回転部材と一体に形成され、質量が大きくなったことにより表面硬化処理がそれだけコスト高になる場合は、上記のような効果がさらに大きくなる。
【0016】
請求項2の発明は、請求項1に記載されたアクチュエータであって、前記ピニオンギアと噛み合うギア部を、前記回転部材にも設けたことを特徴とし、請求項1の構成と同等の作用・効果を得ることができる。
【0017】
また、この構成では、回転部材にもギア部を設けたことによって、保持部材のギア部と合わせて、ギア部全体の歯幅がそれだけ広くなり、充分な強度と耐久性が得られるから、アクチュエータは長期にわたって正常に動作する。
【0018】
また、ギア部の歯幅を広くするために、ギア部を肉厚にする必要がなくなるから、これに伴う重量化と、コストの上昇が避けられる。
【0019】
また、ギア部が回転部材と一体に形成され、質量が大きくなったことにより表面硬化処理がそれだけコスト高になる場合は、上記のような効果がさらに大きくなる。
【0020】
請求項3に記載された保持部材の固定方法は、請求項1または請求項2に記載されたアクチュエータにおいて、前記保持部材を、ボルト締め、リベット止め、溶接、カシメのいずれかの固定手段で、前記回転部材部に固定したことを特徴とし、請求項1または請求項2の構成と同等の作用・効果を得ることができる。
【0021】
また、請求項3に開示された、ボルト締め、リベット止め、溶接、カシメによる保持部材の固定方法は、いずれも施工作業が容易で、低コストであり、充分な固定強度が得られる。
【0022】
請求項4に記載された動力断続装置は、一対のトルク伝達部材と、前記両トルク伝達部材の間に配置されたクラッチと、請求項1〜3のいずれかに記載され、前記クラッチを被操作装置とするアクチュエータまたは保持部材の固定方法を備え、前記アクチュエータによる前記クラッチの操作によって前記トルク伝達部材の間でトルクを断続することを特徴としている。
【0023】
請求項4の動力断続装置は、例えば、4輪駆動車で2輪駆動走行時に切り離される車輪側の動力伝達系に配置され、本発明のアクチュエータによってクラッチを連結すれば車両は4輪駆動状態になり、クラッチの連結を解除すれば車両は2輪駆動状態になる。
【0024】
また、請求項4の動力断続装置は、請求項1〜3のアクチュエータまたは保持部材の固定方法を用いたことにより、ギア部が、小規模の熱処理設備と少ない熱量で表面硬化処理可能になり、表面硬化処理のコストが大幅に低減され、ギア部全体の歯幅が広くなり、これらの結果によって、充分な耐久性が得られ、スプリング保持用の保持部材を強固に固定することができる。
【0025】
請求項5に記載されたデファレンシャル装置は、原動機の駆動力を受けて回転する外側回転部材と、前記外側回転部材の内部に相対回転可能に配置された内側回転部材と、前記内側回転部材に連結された差動機構と、前記外側回転部材と前記内側回転部材との連結を断続するクラッチと、請求項1〜3のいずれかに記載され、前記クラッチを被操作装置とするアクチュエータまたは保持部材の固定方法を備え、前記アクチュエータによる前記クラッチの操作によって前記外側回転部材と前記内側回転部材との間でトルクを断続することを特徴としている。
【0026】
請求項5のデファレンシャル装置は、差動機構の入力側で駆動力を断続するデファレンシャル装置であり、4輪駆動車で2輪駆動走行時に切り離される車輪側の動力伝達系に配置され、本発明のアクチュエータによってクラッチを連結すれば車両は4輪駆動状態になり、クラッチの連結を解除すれば車両は2輪駆動状態になる。
【0027】
また、請求項5のデファレンシャル装置は、請求項1〜3のアクチュエータまたは保持部材の固定方法を用いたことにより、ギア部が、小規模の熱処理設備と少ない熱量で表面硬化処理可能になり、表面硬化処理のコストが大幅に低減され、ギア部全体の歯幅が広くなり、これらの結果によって、充分な耐久性が得られ、スプリング保持用の保持部材を強固に固定することができる。
【0028】
請求項6に記載されたデファレンシャル装置は、原動機の駆動力を受けて回転する回転ケース部材と、前記回転ケース部材の回転を一対の出力部材から車輪側に配分する差動機構と、前記出力部材のいずれか一方とその車輪との間に配置されたクラッチと、請求項1〜3のいずれかに記載され、前記クラッチを被操作装置とするアクチュエータまたは保持部材の固定方法を備え、前記アクチュエータによる前記クラッチの操作によって前記出力部材と車輪との間でトルクを断続することを特徴としている。
【0029】
また、請求項6のデファレンシャル装置は、差動機構の出力側で駆動力を断続するデファレンシャル装置であり、請求項5のデファレンシャル装置と同様に、4輪駆動車で2輪駆動走行時に切り離される車輪側の動力伝達系に配置され、本発明のアクチュエータによってクラッチを連結すれば車両は4輪駆動状態になり、クラッチの連結を解除すれば、差動機構の差動回転によって駆動力が遮断され、車両は2輪駆動状態になる。
【0030】
また、請求項6のデファレンシャル装置は、請求項1〜3のアクチュエータまたは保持部材の固定方法を用いたことにより、ギア部が、小規模の熱処理設備と少ない熱量で表面硬化処理可能になり、表面硬化処理のコストが大幅に低減され、ギア部全体の歯幅が広くなり、これらの結果によって、充分な耐久性が得られ、スプリング保持用の保持部材を強固に固定することができる。
【0031】
請求項7に記載されたデファレンシャル装置は、原動機の駆動力を受けて回転する回転ケース部材と、前記回転ケース部材の回転を一対の出力部材から車輪側に配分する差動機構と、前記回転ケース部材と前記出力部材のいずれか2者の間に配置され、前記差動機構の差動を制限するクラッチと、請求項1〜3のいずれかに記載され、前記クラッチを被操作装置とするアクチュエータまたは保持部材の固定方法を備え、前記アクチュエータによる前記クラッチの操作によって前記差動機構の差動を制限することを特徴としている。
【0032】
また、請求項7のデファレンシャル装置は、本発明のアクチュエータによってクラッチを連結すれば差動機構の差動が制限され、クラッチの連結を解除すれば差動が自由になる。
【0033】
また、請求項7のデファレンシャル装置は、請求項1〜3のアクチュエータまたは保持部材の固定方法を用いたことにより、ギア部が、小規模の熱処理設備と少ない熱量で表面硬化処理可能になり、表面硬化処理のコストが大幅に低減され、ギア部全体の歯幅が広くなり、これらの結果によって、充分な耐久性が得られ、スプリング保持用の保持部材を強固に固定することができる。
【0034】
【発明の実施の形態】
[第1実施形態]
図1〜図7によって本発明の第1実施形態であるアクチュエータ1及びそのカバー部材の固定方法と、これを用いたリヤデフ3(デファレンシャル装置)の説明をする。
【0035】
以下の説明の中で、左右の方向はリヤデフ3が用いられた4輪駆動車での左右の方向である。
【0036】
リヤデフ3(エンジンの駆動力を左右の後輪に配分するデファレンシャル装置)は、差動機構の入力側に駆動力の断続機能を備えたデファレンシャル装置であり、4輪駆動車に用いられて、2輪駆動時は後輪への駆動力を切断する。
【0037】
リヤデフ3が用いられた4輪駆動車の動力伝達系は、エンジン(原動機)、トランスミッション、トランスファ、2−4切替え機構、フロントデフ(エンジンの駆動力を左右の前輪に配分するデファレンシャル装置)、前車軸、左右の前輪、後輪側のプロペラシャフト、リヤデフ3、後車軸、左右の後輪などから構成されている。
【0038】
2−4切替え機構は、トランスファの後輪側出力インターフェイスを構成しており、下記のように、リヤデフ3と同時に連結解除操作及び連結操作され、後輪側への駆動力を断続する。
【0039】
エンジンの駆動力は、トランスミッションからトランスファに伝達され、トランスファから前輪側と後輪側に配分される。
【0040】
前輪側に配分された駆動力は、フロントデフから前車軸を介して左右の前輪に配分される。
【0041】
また、後輪側に配分された駆動力は、2−4切替え機構とリヤデフ3が連結されている間は、2−4切替え機構と後輪側プロペラシャフトからリヤデフ3に伝達され、リヤデフ3から後車軸を介して左右の後輪に配分され、車両は4輪駆動状態になる。
【0042】
また、2−4切替え機構とリヤデフ3の連結をそれぞれ解除すると、後輪側がエンジンから切り離されて、車両は2輪駆動状態になる。
【0043】
リヤデフ3はデフキャリヤ5の内部に配置されており、デフキャリヤ5の内部にはオイル溜りが形成されている。
【0044】
リヤデフ3は、図1のように、アクチュエータ1、アウターデフケース(外側回転部材)7、インナーデフケース(内側回転部材)9、ベベルギア式の差動機構11、ドッグクラッチ13(被操作装置:クラッチ)から構成されている。
【0045】
また、アクチュエータ1は、図1と図2のように、支持プレート(支持部材)15、カムプレート(回転部材)17、可動プレート(可動部材)19、カム21(変換機構)、コイルスプリング23(スプリング)、リターンスプリング25、シフトスプリング27、電動モータ29、ギア組31、カバー部材(保持部材)131、コントローラなどから構成されている。
【0046】
リヤデフ3はアウターデフケース7とインナーデフケース9からなる2重ケーシング構造になっており、インナーデフケース9はアウターデフケース7の内周で摺動回転自在に支承されている。また、アウターデフケース7に形成された左右のボス部33,35はそれぞれスラストベアリング37(図2)を介してデフキャリヤ5に支承されている。
【0047】
アウターデフケース7にはリングギア39(図2)がボルトで固定されている。リングギア39はドライブピニオンギアと噛み合っており、このドライブピニオンギアはドライブピニオンシャフトと一体に形成されている。ドライブピニオンシャフトは継ぎ手と後輪側のプロペラシャフトなどを介してトランスファの2−4切替え機構に連結されており、エンジンの駆動力はトランスファと2−4切替え機構からこの後輪側動力伝達系を介してアウターデフケース7を回転させる。
【0048】
アウターデフケース7の内部にはクラッチリング41が配置されており、アウターデフケース7の内周で軸方向移動自在に支承されている。
【0049】
ドッグクラッチ13は、噛み合い歯43と噛み合い歯45によって構成されており、噛み合い歯43はクラッチリング41の左端部に形成され、噛み合い歯45はインナーデフケース9の右端部に形成されている。
【0050】
また、アウターデフケース7の左右にはそれぞれオイルが流出入する開口47,49が周方向等間隔に設けられている。クラッチリング41の右端には周方向等間隔に3本の脚部51が設けられており、これらの脚部51は右の開口49に係合し、外部に突き出している。
【0051】
クラッチリング41は、下記のように、アクチュエータ1によって左右に移動操作される。クラッチリング41が左方に移動操作されると、図1の下半部のように、ドッグクラッチ13が噛み合ってアウターデフケース7とインナーデフケース9とが連結され、クラッチリング41が右方に戻ると、図1の上半部のように、ドッグクラッチ13の噛み合いが解除され、アウターデフケース7とインナーデフケース9とが切り離される。
【0052】
インナーデフケース9の左端部とアウターデフケース7との間には、アクチュエータ1からの操作力を受けるスラストワッシャ53が配置されており、インナーデフケース9はこのスラストワッシャ53を介して軸方向の左方に位置決めされている。
【0053】
ベベルギア式の差動機構11は、複数本のピニオンシャフト55、ピニオンギア57、左右の出力側サイドギア59,61から構成されている。
【0054】
各ピニオンシャフト55の先端は、インナーデフケース9に周方向等間隔に形成された貫通孔63に係合し、スプリングピン65によって抜け止めが施されている。
【0055】
ピニオンギア57は、各ピニオンシャフト55上に回転自在に支承されており、サイドギア(出力部材)59,61は左右から各ピニオンギア57と噛み合っている。
【0056】
サイドギア59,61の各ボス部67,69はアウターデフケース7に形成された支承部71,73によって支承されており、各ボス部67,69のスプライン部75,77には左右の後車軸がそれぞれ連結されている。
【0057】
また、各サイドギア59,61とアウターデフケース7との間にはスラストワッシャ79がそれぞれ配置され、サイドギア59,61の噛み合い反力を受けている。
【0058】
インナーデフケース9の内周には、各ピニオンギア57の背面に対向して球面ワッシャ部81が形成されており、ピニオンギア57の遠心力と、各サイドギア59,61との噛み合いによってピニオンギア57が受ける噛み合い反力とを負担している。
【0059】
支持プレート15はプレス加工されており、図1〜図6のように、環状板部83、環状板部83と一体に形成された2個の固定板部85、環状板部83の内周に周方向等間隔に設けられた3個の組み付け凹部87、環状板部83に設けられた2個のガイド孔89と4個のガイド孔91と2個のストッパ93などから構成されている。
【0060】
また、カムプレート17はプレス加工されており、環状板部95、ギアプレート(ギア部)97、環状板部95の内周に周方向等間隔に設けられた3個の組み付け凹部99、各組み付け凹部99の周方向に隣接して設けられた3個の支持突起101、環状板部95の内周に沿って周方向等間隔に設けられた3個のカム片103などから構成されている。
【0061】
ギアプレート97は環状板部95と一体に形成されており、その外周にはギア部105が設けられている。また、支持突起101は、環状板部95に形成された軸方向部分107と、軸方向部分107の端部に形成された径方向部分109(図6と図7)から構成されている。
【0062】
各カム片103は、傾斜面111、その周方向に形成されたカム角を持たない保持面113、傾斜面111と保持面113との間に形成された保持突起115から構成されている。
【0063】
可動プレート19はプレス加工されており、図6のように、環状板部117、環状板部117の内周に周方向等間隔に設けられた3個のカムガイド片119、環状板部117の外周に設けられた各4個のガイド片121,123などから構成されている。
【0064】
また、各カムガイド片119は、環状板部117に形成された軸方向部分125と、軸方向部分125の端部に形成された径方向部分127から構成されている。
【0065】
コイルスプリング23は、図2〜図7のように、ギアプレート97(カムプレート17)にリベット129,129で固定されたカバー部材131とギアプレート97との間に形成された円筒状のリテーナ部133に保持されており、下記のように、カムプレート17が両方向に回動すると、その両端部は支持プレート15のストッパ93,93と当接する。
【0066】
また、カバー部材131には、ギアプレート97のギア部105と同位相のギア部135が設けられている。
【0067】
なお、組付けが終了した状態で、支持プレート15とカムプレート17と可動プレート19は互いにセンターリングされており、カムプレート17は支持プレート15と可動プレート19に対して回動自在である。
【0068】
図1と図3のように、支持プレート15の各固定板部85はボルト136によってデフキャリヤ5に固定されている。
【0069】
カム21は、上記のように、カムプレート17の各カム片103と可動プレート19の各カムガイド片119(径方向部分127)とによって構成されている。
【0070】
図1のように、リターンスプリング25は、クラッチリング51のリテーナ137に一体形成されている。このリテーナ137に形成された腕部139はクラッチリング41の各脚部51に折り曲げて固定されており、リテーナ137(リターンスプリング25)とアウターデフケース7の右端部との間にはリング141が配置されている。
【0071】
クラッチリング41とリテーナ137は一体で軸方向に往復移動可能であり、リターンスプリング25はクラッチリング41をドッグクラッチ13の噛み合い解除方向(右方)に付勢している。
【0072】
図1は、シフトスプリング27を可動プレート19と一体に形成した例を示している。また、シフトスプリング27の付勢力はリターンスプリング25の付勢力より強くされており、可動プレート19とクラッチリング41をドッグクラッチ13の噛み合い方向(左方)に移動させる。
【0073】
なお、リターンスプリング25は可動プレート19と一体に形成する他に、別体のスプリング(例えば、コイルスプリング159)を用いてもよい。
【0074】
図2のように、電動モータ29のケーシング143は、デフキャリヤ5に設けられた取り付け穴145にOリング147を介して取り付けられている。電動モータ29は両方向に回転可能であり、そのリード線149はコントローラを介して車載のバッテリに接続されている。
【0075】
電動モータ29の出力軸151にはピニオンギア153がスプライン連結されている。出力軸151とケーシング143との間にはオイルシール155が配置されており、ピニオンギア153はボールベアリング157によってケーシング143に支承されている。
【0076】
ギア組31は、電動モータ29側のピニオンギア153と、ギアプレート97(カムプレート17)のギア部105及びカバー部材131のギア部135とで構成されており、電動モータ29の回転トルクを増幅し、カムプレート17を回動させる。
【0077】
コントローラは、下記のようにしてドッグクラッチ13の断続操作を行うと共に、2輪駆動状態から4輪駆動状態に切り換える際はドッグクラッチ13と2−4切替え機構をそれぞれ同時に連結操作し、4輪駆動状態から2輪駆動状態に切り換える際はそれぞれを同時に連結解除操作する。
【0078】
また、ドッグクラッチ13の断続操作に当たって、コントローラは電動モータ29を両方向(一方向と反対方向)にそれぞれ所定の時間(角度)だけ回転させる時間制御を行う。電動モータ29が所定の時間だけ回転すると、ギア組31を介してカムプレート17が所定の方向に所定の角度だけ回動操作される。
【0079】
図3は、カムプレート17が全回動角度(回動幅)の中心位置にある状態を示している。
【0080】
図4は、図3の位置から、カムプレート17をL方向(4WD位置)まで所定の角度だけ回動させた状態を示している。
【0081】
このとき、ギア組31のピニオンギア153はギア部105の一方の端部で噛み合っていると共に、カムプレート17上のコイルスプリング23の一側端部は支持プレート15の一側の固定板部85(ストッパ)と突き当たり、カムプレート17の過回転を防止し、ピニオンギア153がギア部105から外れることを防止している。
【0082】
また、図4のように、カムプレート17はコイルスプリング23が固定板部85と突き当たる直前にカム21で可動プレート19との接触を終了し、電動モータ29のトルクによって回動速度が加速されるが、コイルスプリング23は固定板部85と突き当たったとき、その撓みによって衝撃を吸収し、緩和する。
【0083】
カムプレート17が4WD位置まで回動すると、各カム21において、可動プレート19のカムガイド片119の径方向部分127はカムプレート17のカム片103の傾斜面111を下りた位置にある。図1の下半部のように、この状態では径方向部分127がシフトスプリング27の付勢力によってカムプレート17の環状板部95に押し付けられており、各カム21は作動を停止している。
【0084】
各カム21が作動を停止すると、可動プレート19とクラッチリング41がシフトスプリング27によって左方に移動し、ドッグクラッチ13が噛み合い、車両は4輪駆動状態になる。
【0085】
また、このときシフトスプリング27は待ち機構になり、噛み合い歯43,45の位相が合ったところでドッグクラッチ13を噛み合わせる。
【0086】
図5は、図3の位置から、ギアプレート97をR方向(2WD位置)まで所定の角度だけ回動させた状態を示している。
【0087】
このとき、ギア組31のピニオンギア153はギア部105の他方の端部で噛み合っており、カムプレート17上のコイルスプリング23の他側端部は支持プレート15の他側の固定板部85(ストッパ)と突き当たり、カムプレート17の過回転を防止し、ピニオンギア153がギア部105から外れることを防止している。
【0088】
また、図5のように、カムプレート17はコイルスプリング23が固定板部85と突き当たる直前にカム21で可動プレート19との接触を終了し、電動モータ29のトルクによって回動速度が加速されるが、コイルスプリング23は固定板部85と突き当たったとき、その撓みによって衝撃を吸収し、緩和する。
【0089】
カムプレート17が2WD位置まで回動すると、各カム21において、カムガイド片119の径方向部分127はカム片103の傾斜面111を登り、保持突起115を乗り越えて保持面113に保持され、各カム21を作動させる。
【0090】
各カム21が作動すると、そのカムスラスト力によって各カムガイド片119(可動プレート19)が軸方向の右側に移動し、シフトスプリング27を押し縮める。シフトスプリング27が縮められると、図1の上半部のように、リターンスプリング25の付勢力によって可動プレート19(クラッチリング41)が右方に移動し、ドッグクラッチ13の噛み合いが解除され、車両は2輪駆動状態になる。
【0091】
なお、コイルスプリング23のばね常数は、4WD位置と2WD位置の両方で、固定板部85(ストッパ)と突き当たり、その撓み量だけカムプレート17がさらに回動したときに、ピニオンギア153がギア部105から外れない範囲で設定されている。
【0092】
また、保持突起115がそのチェック機能によって各カムガイド片119を保持面113に保持するから、電動モータ29を停止させた状態で、走行中に振動や衝撃などの外乱因子を受けても、ドライバーの意に反して車両が2輪駆動状態から4輪駆動状態に変動することが防止される。
【0093】
また、カム片103の傾斜面111の両側に設けられた保持面113と環状板部95はいずれもカム角を持たないから、カムガイド片119(径方向部分127)がこれらの保持面113と環状板部95に乗っている間は、シフトスプリング27の付勢力を受けてもカムプレート17に回転トルクが掛かることはなく、ドライバーの意に反して車両が2輪駆動状態や4輪駆動状態に誤って切り替わることはない。
【0094】
従って、作動前(作動停止時)と作動後の両方でカム21の状態が保持され、車両が4輪駆動状態及び2輪駆動状態に安定して保持されるから、カム21を操作するとき以外は電動モータ29を停止させることができる。
【0095】
4輪駆動状態では、上記のようにドッグクラッチ13と2−4切替え機構がそれぞれ連結されるから、エンジンの駆動力は2−4切替え機構から後輪側動力伝達系を介してアウターデフケース7に伝達され、ドッグクラッチ13を介してインナーデフケース9が回転駆動される。この回転はピニオンシャフト55からピニオンギア57を介してサイドギア59,61に配分され、各車軸を介して左右の後輪に伝達される。
【0096】
車両が4輪駆動状態になると、悪路などでの走破性、脱出性、安定性が向上する。また、悪路走行中などに後輪間に駆動抵抗差が生じると、各ピニオンギア57の自転によってエンジンの駆動力は左右の後輪に差動配分される。
【0097】
また、2輪駆動状態では、ドッグクラッチ13と2−4切替え機構の連結がそれぞれ解除されるから、インナーデフケース9から後輪までがドッグクラッチ13によって切り離されフリー回転状態になると共に、2−4切替え機構からアウターデフケース7までの動力伝達系が、エンジンの駆動力と後輪による連れ回りの両方から切り離されて回転が停止する。
【0098】
このように2−4切替え機構からアウターデフケース7までの後輪側動力伝達系の回転が停止する2輪駆動状態では、振動が軽減して乗り心地が向上すると共に、後輪側動力伝達系の各部で磨耗が軽減されて耐久性が向上し、さらに、回転抵抗の低減分だけエンジンの負担が軽減し、燃費が向上する。
【0099】
アウターデフケース7には、開口47,49の他に、ボス部33の内周には螺旋状のオイル溝159が形成され、ボス部35の内周にも同様な螺旋状のオイル溝が形成されており、さらに、スラストワッシャ79,79と対向する部分には、各螺旋状オイル溝159にそれぞれ連通した径方向のオイル溝161,163が形成されている。
【0100】
開口47,49はアウターデフケース7の径方向外側部分に形成されているから、デフキャリヤ5に形成されたオイル溜りのオイルに常時浸されており、アウターデフケース7の回転に伴って開口47,49からオイルが流出入する。
【0101】
また、オイル溜りのオイルはアウターデフケース7(リングギア39)の回転によって掻き上げられ、掻き上げられたオイルは螺旋状オイル溝159のネジポンプ作用によって移動を促進され、オイル溝161,163と、スラストワッシャ79,79などの隙間を通ってアウターデフケース7の内部に流入する。
【0102】
アウターデフケース7に流入したオイルは、差動機構11を構成する各ギア57,59,61の噛み合い部、ピニオンシャフト55とピニオンギア57の摺動部、アウターデフケース7とインナーデフケース9の摺動部、アウターデフケース7とクラッチリング41の摺動部、ドッグクラッチ13(噛み合い歯43,45)などに供給されてこれらを潤滑・冷却する。
【0103】
また、アクチュエータ1の下部もオイル溜りに浸されており、回動操作されるカムプレート17と支持プレート15及び可動プレート19との摺動部、カム21なども潤滑・冷却される。
【0104】
また、ギア組31も上記の掻き上げオイルによって潤滑・冷却される。
【0105】
上記の各潤滑・冷却部では、供給されたオイルによって、磨耗が軽減され、耐久性が向上すると共に、各摺動部での摩擦抵抗が軽減され、エンジンの燃費が向上する。
【0106】
こうして、アクチュエータ1及びそのカバー部材の固定方法と、これを用いたリヤデフ3が構成されている。
【0107】
アクチュエータ1では、ギアプレート97のギア部105の他に、コイルスプリング23保持用のカバー部材131にもギア部135が設けられており、これらが電動モータ29側のピニオンギア153と噛み合ってギア組31を構成している。
【0108】
ギア部135が設けられたカバー部材131は、サイズと質量が小さく、従って、小規模の熱処理設備で焼き入れなどの表面硬化処理が行える上に、熱処理に必要な熱量がそれだけ少なくてすむから、表面硬化処理のコストが大幅に低減されている。
【0109】
その上、サイズと質量の小さいカバー部材131は、焼き入れなどの表面硬化処理が行い易く、例えば、焼きが入り易いから、そのギア部135は充分な硬度と耐久性が得られる。
【0110】
また、ギアプレート97のギア部105に加えて、カバー部材131にもギア部135を設けたことにより、ギア部全体の歯幅がそれだけ広くなっているから、強度と耐久性がそれだけ向上している。
【0111】
従って、アクチュエータ1は長期にわたって正常に動作する。
【0112】
また、ギア部の歯幅を広くするために、ギアプレート97(カムプレート17)を肉厚にする必要がなくなったから、これに伴うカムプレート17及びアクチュエータ1の重量化と、コスト上昇が避けられる。
【0113】
また、カバー部材131をリベット129,129でギアプレート97(カムプレート17)に固定するカバー部材の固定方法は、作業が容易で、低コストであり、充分な固定強度が得られる。
【0114】
[第2実施形態]
図8と図9によって第2実施形態のアクチュエータ201及びそのカバー部材(保持部材)203の固定方法を説明する。
【0115】
アクチュエータ201は、第1実施形態のリヤデフ3にアクチュエータ1と置き換えて用いられており、以下、アクチュエータ1と同一の部材等には同一の符号を与えて引用しながら、相違点を説明する。
【0116】
アクチュエータ201では、カバー部材203がリベット129,129でギアプレート97に固定されており、コイルスプリング23はギアプレート97とカバー部材203との間に形成された円筒状のリテーナ部133に保持されている。
【0117】
カバー部材203は、例えば、第1実施形態でのカバー部材131より厚板で作られており、また、第1実施形態と異なって、ギアプレート97にギア部は設けられていない。
【0118】
カバー部材203にはギア部205が設けられており、このギア部205は電動モータ29側のピニオンギア153と噛み合ってギア組31を構成している。
【0119】
こうして、アクチュエータ201と、そのカバー部材203の固定方法が構成されている。
【0120】
アクチュエータ201では、上記のように、コイルスプリング23保持用のカバー部材203にギア部205を設けると共に、ギアプレート97(カムプレート17)にはギア部を設けていない。
【0121】
ギア部205が設けられたカバー部材203は、サイズと質量が小さく、従って、小規模の熱処理設備で焼き入れなどの表面硬化処理が行える上に、熱処理に必要な熱量がそれだけ少なくてすむから、表面硬化処理のコストが大幅に低減されている。
【0122】
その上、サイズと質量の小さいカバー部材203は、焼き入れなどの表面硬化処理が行い易く、例えば、焼きが入り易いから、そのギア部205は充分な硬度と耐久性が得られる。
【0123】
また、カバー部材203を厚板で作ったことにより、ギア部205の歯幅が広くなっており、強度と耐久性がそれだけ向上している。
【0124】
従って、アクチュエータ201は長期にわたって正常に動作する。
【0125】
また、ギア部205の歯幅を広くするために、ギアプレート97(カムプレート17)を肉厚にする必要がなくなったから、これに伴うギアプレート97(カムプレート17)及びアクチュエータ201の重量化と、コスト上昇が避けられる。
【0126】
また、カバー部材203をリベット129,129でギアプレート97(カムプレート17)に固定するカバー部材の固定方法は、作業が容易で、低コストであり、充分な固定強度が得られる。
【0127】
なお、本発明において、カムプレートとギアプレートは、各実施形態のように一体に形成するのではなく、別体で製作した後、一体に固定してもよい。
【0128】
また、スプリングは、コイルスプリングに限らず、あらゆる形状のスプリングを使用可能であり、さらには、金属製のスプリング以外の弾性部材(例えば、ゴム、プラスチック)など、ダンパー機能を持った部材は全て使用することができる。
【0129】
また、本発明のアクチュエータにおいて、被操作装置はクラッチに限らない。また、このクラッチも、各実施形態のような噛み合いクラッチ(ドッグクラッチ)だけでなく、多板クラッチやコーンクラッチのような摩擦クラッチでもよい。
【0130】
また、本発明のデファレンシャル装置において、差動機構は、ベベルギア式の差動機構に限らず、プラネタリーギア式の差動機構、デフケースの収容孔に回転自在に収容されたピニオンギアで出力側のサイドギアを連結した差動機構、ウォームギアを用いた差動機構などでもよい。
【0131】
【発明の効果】
請求項1のアクチュエータは、少なくとも、ギア部をサイズと質量の小さい保持部材に設けたことにより、保持部材(ギア部)の表面硬化処理を小規模な熱処理設備で行える上に、熱処理に必要な熱量もそれだけ少なくてすむから、表面硬化処理のコストが大幅に低減される。
【0132】
その上、サイズと質量の小さい保持部材は、焼き入れなどの表面硬化処理が行い易く、ギア部は充分な耐久性(硬度)が得られるから、アクチュエータは長期にわたって正常に動作する。
【0133】
また、ギア部が回転部材と一体に形成され、質量が大きくなったことにより表面硬化処理がそれだけコスト高になる場合は、上記のような効果がさらに大きくなる。
【0134】
請求項2のアクチュエータは、請求項1の構成と同等の効果を得ることができる。
【0135】
また、ギア部と保持部材のギア部と合わせて、ギア部全体の歯幅が広くなり、充分な強度と耐久性が得られるから、アクチュエータは長期にわたって正常に動作する。
【0136】
また、ギア部の歯幅を広くするためにギア部を肉厚にする必要がなくなり、これに伴う重量化と、コストの上昇が避けられる。
【0137】
また、ギア部が回転部材と一体に形成され、質量が大きくなったことにより表面硬化処理がそれだけコスト高になる場合は、上記のような効果がさらに大きくなる。
【0138】
請求項3に記載されたカバー部材の固定方法は、いずれも施工作業が容易で、低コストであり、充分な固定強度が得られる。
【0139】
請求項4に記載された動力断続装置は、請求項1〜3のアクチュエータまたは保持部材の固定方法を用いたことにより、ギア部が、小規模の熱処理設備と少ない熱量で表面硬化処理可能になり、表面硬化処理のコストが大幅に低減され、ギア部全体の歯幅が広くなり、これらの結果によって、充分な耐久性が得られ、スプリング保持用の保持部材を強固に固定することができる。
【0140】
請求項5に記載されたデファレンシャル装置は、請求項1〜3のアクチュエータまたは保持部材の固定方法を用いたことにより、ギア部が、小規模の熱処理設備と少ない熱量で表面硬化処理可能になり、表面硬化処理のコストが大幅に低減され、ギア部全体の歯幅が広くなり、これらの結果によって、充分な耐久性が得られ、スプリング保持用のカバー部材を強固に固定することができる。
【0141】
請求項6に記載されたデファレンシャル装置は、請求項1〜3のアクチュエータまたは保持部材の固定方法を用いたことにより、ギア部が、小規模の熱処理設備と少ない熱量で表面硬化処理可能になり、表面硬化処理のコストが大幅に低減され、ギア部全体の歯幅が広くなり、これらの結果によって、充分な耐久性が得られ、スプリング保持用のカバー部材を強固に固定することができる。
【0142】
請求項7に記載されたデファレンシャル装置は、請求項1〜3のアクチュエータまたは保持部材の固定方法を用いたことにより、ギア部が、小規模の熱処理設備と少ない熱量で表面硬化処理可能になり、表面硬化処理のコストが大幅に低減され、ギア部全体の歯幅が広くなり、これらの結果によって、充分な耐久性が得られ、スプリング保持用の保持部材を強固に固定することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】第1実施形態のアクチュエータとこれを用いたリヤデフを示す断面図である。
【図2】第1実施形態の要部断面図である。
【図3】第1実施形態のアクチュエータのカムプレートが回動範囲の中心にある状態を示す正面図である。
【図4】第1実施形態のアクチュエータのカムプレートが4WD位置に回動した状態を示す正面図である。
【図5】第1実施形態のアクチュエータのカムプレートが2WD位置に回動した状態を示す正面図である。
【図6】第1実施形態のアクチュエータの背面図である。
【図7】第1実施形態のアクチュエータの縦断面図である。
【図8】第2実施形態のアクチュエータの縦断面図である。
【図9】第2実施形態のアクチュエータの背面図である。
【図10】従来例の断面図である。
【符号の説明】
1 アクチュエータ
3 リヤデフ(デファレンシャル装置)
7 アウターデフケース(外側回転部材)
9 インナーデフケース(内側回転部材)
11 ベベルギア式の差動機構
13 ドッグクラッチ(被操作装置:クラッチ)
15 支持プレート(支持部材)
17 カムプレート(回転部材)
19 可動プレート(可動部材)
21 カム(変換機構)
23 コイルスプリング(スプリング)
29 電動モータ
31 ギア組
93 支持プレートに設けられたストッパ
97 ギアプレート(ギア部)
105 ギアプレート97に設けられたギア部
131 スプリング保持用のカバー部材
135 カバー部材131に設けられたギア部
201 アクチュエータ
203 スプリング保持用のカバー部材
205 カバー部材203に設けられたギア部
Claims (7)
- 静止側に固定された支持部材と、
前記支持部材の軸方向一側に回動可能に配置された回転部材と、
前記支持部材の軸方向他側に軸方向移動可能に配置され、被操作装置を移動操作する可動部材と、
前記回転部材と一体的に回動するギア部と、
前記ギア部と噛み合うピニオンギアを介して前記回転部材を回動させる電動モータと、
前記回転部材と前記可動部材との間に設けられ前記回転部材の回動力を前記可動部材の移動操作力に変換する変換機構と、
前記支持部材と当接して回動エネルギーを軽減し、衝撃力を吸収するスプリングと、
前記スプリングを前記回転部材に保持する保持部材とを備え、
前記ピニオンギアと噛み合うギア部を、少なくとも前記保持部材に設けたことを特徴とするアクチュエータ。 - 請求項1に記載されたアクチュエータであって、
前記ピニオンギアと噛み合うギア部を、前記回転部材にも設けたことを特徴とするアクチュエータ。 - 請求項1または請求項2に記載されたアクチュエータにおいて、
前記保持部材を、ボルト締め、リベット止め、溶接、カシメのいずれかの固定手段で、前記回転部材に固定したことを特徴とする保持部材の固定方法。 - 一対のトルク伝達部材と、
前記両トルク伝達部材の間に配置されたクラッチと、
請求項1〜3のいずれかに記載され、前記クラッチを被操作装置とするアクチュエータまたは保持部材の固定方法を備え、
前記アクチュエータによる前記クラッチの操作によって前記トルク伝達部材の間でトルクを断続することを特徴とする動力断続装置。 - 原動機の駆動力を受けて回転する外側回転部材と、
前記外側回転部材の内部に相対回転可能に配置された内側回転部材と、
前記内側回転部材に連結された差動機構と、
前記外側回転部材と前記内側回転部材との連結を断続するクラッチと、
請求項1〜3のいずれかに記載され、前記クラッチを被操作装置とするアクチュエータまたは保持部材の固定方法を備え、
前記アクチュエータによる前記クラッチの操作によって前記外側回転部材と前記内側回転部材との間でトルクを断続することを特徴とするデファレンシャル装置。 - 原動機の駆動力を受けて回転する回転ケース部材と、
前記回転ケース部材の回転を一対の出力部材から車輪側に配分する差動機構と、
前記出力部材のいずれか一方とその車輪との間に配置されたクラッチと、
請求項1〜3のいずれかに記載され、前記クラッチを被操作装置とするアクチュエータまたは保持部材の固定方法を備え、
前記アクチュエータによる前記クラッチの操作によって前記出力部材と車輪との間でトルクを断続することを特徴とするデファレンシャル装置。 - 原動機の駆動力を受けて回転する回転ケース部材と、
前記回転ケース部材の回転を一対の出力部材から車輪側に配分する差動機構と、
前記回転ケース部材と前記出力部材のいずれか2者の間に配置され、前記差動機構の差動を制限するクラッチと、
請求項1〜3のいずれかに記載され、前記クラッチを被操作装置とするアクチュエータまたは保持部材の固定方法を備え、
前記アクチュエータによる前記クラッチの操作によって前記差動機構の差動を制限することを特徴とするデファレンシャル装置。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2003027013A JP2004239305A (ja) | 2003-02-04 | 2003-02-04 | アクチュエータとその保持部材の固定方法及びこれらを用いた動力断続装置とデファレンシャル装置 |
Applications Claiming Priority (1)
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JP2003027013A JP2004239305A (ja) | 2003-02-04 | 2003-02-04 | アクチュエータとその保持部材の固定方法及びこれらを用いた動力断続装置とデファレンシャル装置 |
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JP2004239305A true JP2004239305A (ja) | 2004-08-26 |
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Family Applications (1)
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JP2003027013A Pending JP2004239305A (ja) | 2003-02-04 | 2003-02-04 | アクチュエータとその保持部材の固定方法及びこれらを用いた動力断続装置とデファレンシャル装置 |
Country Status (1)
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JP (1) | JP2004239305A (ja) |
-
2003
- 2003-02-04 JP JP2003027013A patent/JP2004239305A/ja active Pending
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