JP2004236596A - 微生物固定化担体の製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】難分解性物質を分解可能な微生物のような特定の微生物を優先的に担持でき、第2に機械的強度が高く磨耗耐性に優れ、第3に簡易な操作で固定化ができる、微生物固定化単体の製造方法を提供すること。
【解決手段】微生物担持担体を殺菌処理したのち、該担体に微生物を固定化することを特徴とする微生物固定化担体の製造方法。特に加熱殺菌、高圧殺菌、紫外線殺菌がよい。
【選択図】 なし
【解決手段】微生物担持担体を殺菌処理したのち、該担体に微生物を固定化することを特徴とする微生物固定化担体の製造方法。特に加熱殺菌、高圧殺菌、紫外線殺菌がよい。
【選択図】 なし
Description
【0001】
【産業上の利用分野】
本発明は、環境汚染物質の微生物処理方法に関するもので、とくにバイオリアクターを構成する微生物を担持した単体の製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、産業廃棄物や一般廃棄物の微生物処理が広く行なわれてきているが、微生物による分解効率を高めるためにバイオリアクターの研究開発が積極的に行なわれ、実用されている。バイオリアクターの微生物分解効率を高めるには、リアクター内の微生物濃度と活性を高めることが必要であり、そのためには微生物を担体に高濃度に担持させ、固定化する手段が求められ、例えば、親水性架橋ポリマーを担体とする方法(特許文献1)、ポリビニルアルコール系含水ゲルを担体とする方法(特許文献2)、アルギン酸ゲルを担体とする方法(特許文献3)、粘性モノマー溶液からポリマー担体を重合させる過程で微生物を担持させる方法(特許文献4)、多糖類などの天然物を微生物担体とする方法(特許文献5)、大粒径樹脂粒子を担体とする方法(特許文献6)など、天然物や合成物質などの担体材料、担体形状、担持方法などの各面から担持方法が検討され、提案されている。
【0003】
これらの微生物担持・固定化技術の進歩によって、微生物処理の効率は著しい進歩を遂げて各種の一般廃水や産業廃水の処理の効率化に寄与している。しかしながら、微生物処理は、本来大型設備と広い設置スペースを必要としているので、これらの進歩にもかかわらず、依然として生分解率の向上と設備の簡易化、小型化、高能率化が強く求められている。
【0004】
それに加えて、例えば前記した親水性膨潤型の担体(特許文献1及び5)では、担体強度が不十分であること、また、包括法の担体(特許文献4)では簡便性が欠如しており、かつ組み込まれた微生物と処理水との接触効率が悪いことなど、開示技術にはそれぞれの問題を抱えていて、微生物固定化バイオリアクターの一層の改良が必要となっている。
【0005】
とりわけ、環境汚染物質、とくに難分解性物質の分解・無害化手段が求められている近年の環境問題に対して、微生物固定化バイオリアクターの適用は効果が期待されているものの、難分解性物質を生分解可能の特殊な微生物を固定化して活性化できるような微生物担体や担持方法が得られていない。
【0006】
この出願の発明に関連する前記の先行技術には、次ぎの文献がある。
【特許文献1】
特開昭60−43382号公報
【特許文献2】
特開平7−31474号公報
【特許文献3】
特開昭63−160584号公報
【特許文献4】
特開平10−287711号公報
【特許文献5】
特開昭63−251086号公報
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上記した背景からなされたものであり、その目的は、第1には、例えば難分解性物質を分解可能な微生物のような特定の微生物を優先的に担持でき、第2に機械的強度が高く磨耗耐性に優れ、第3に簡易な操作で固定化ができる、微生物固定化単体の製造方法を提供することである。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明者は、上記した本発明の目的の3要件を満たす方法を鋭意検討するなかで、難分解性物質を分解できる特殊な微生物が自然界に通常繁殖している微生物(優勢微生物)に抗して増殖できる条件を見出すに至り、それに基づいて本発明に到達することができた。すなわち、本発明は以下の通りである。
【0009】
(1)微生物担持担体を殺菌処理したのち、該担体に微生物を固定化することを特徴とする微生物固定化担体の製造方法。
(2)微生物担持担体が非膨潤性固体からなり、該担持担体に微生物を固定化する際に、該担体の媒質中に微生物の増殖用の栄養源を存在させることを特徴とする上記(1)に記載の微生物固定化担体の製造方法。
(3)微生物がEDTA分解能を有する微生物、フェノール類分解能を有する微生物及び界面活性剤分解能を有する微生物の少なくとも一つであることを特徴とする上記(1)又は(2)に記載の微生物固定化担体の製造方法。
(4)殺菌処理が高圧殺菌、加熱殺菌及び紫外線殺菌から選択される殺菌処理又はそれらの組み合わせ処理であることを特徴とする上記(1)〜(3)のいずれかに記載の微生物固定化担体の製造方法。
(5)微生物の固定化が物理的吸着法によって行なわれることを特徴とする上記(1)〜(4)のいずれか1項に記載の微生物固定化担体の製造方法。
【0010】
すなわち、本発明の特徴は、微生物固定化担体の製造に際して微生物担持用担体に予め殺菌処理を施してから、本発明に利用する微生物を該担体に固定化することにある。殺菌された担体は、本発明が利用しようとする微生物の担持、生育には影響を与えないが、競合する他の微生物の担持・生育は進行しないで、結果として利用しようとする微生物が活性化した環境を固定化担体内に確立できるという意外な効果を有する。
【0011】
利用する微生物の多くは、難分解性物質や環境有害物質を分解可能とされる微生物であって、これらは特殊な環境で発見されてはいても、微生物処理に実用しようとすると在来微生物に阻まれて生育できないので、実用困難であるが、本発明によれば、このような微生物でも担体に担持固定化できて難分解性物質、環境有害物質を効果的に生分解できる状態が実現される。
本発明は、通常の生分解手段では処理が困難な廃水、とくにEDTA含有廃水、フェノール類含有廃水、界面活性剤含有廃水などの難分解性かつ環境有害廃水を処理するのに顕著な効果を発揮する。
本発明の方法は、殺菌処理を行う以外は付加的な作業はないので、きわめて簡易であり、かつ非膨潤性固体を選択すれば機械的強度もあって安定な微生物処理を持続できる。
殺菌には加熱殺菌、高圧殺菌及び紫外線殺菌のいずれか又は組合せが簡易でしかも効果がある。また、微生物の担持・固定化の際に媒質中に微生物の増殖用の栄養源を存在させると、利用しようとする微生物を優先的に担体に担持するのに効果がある。
以下、本発明をさらに具体的に詳述する。
なお、本明細書では生分解に係る「微生物」を「菌体」と呼ぶこともあるが、実質的に同義に解してよい。
【0012】
【発明の実施の形態】
[担持・固定化方法]
本発明の微生物固定化担体の製造方法において、微生物の 担持・固定化方法としては、担体から生分解菌が流出しないように固定される方法ならばその種類、形式を問わない。具体的な 担持・固定化法としては、例えば、微生物が付着して生物膜を形成するような担体を用いる付着生物膜法、担体と培地を混合して微生物を培養する担持培養法、水不溶性の担体に微生物を結合させる担体結合法、減圧下で担体の孔隙内に微生物を封入する方法、2個以上の官能基を持つ試薬によって菌体内に架橋を形成させて固定化する方法、微生物を高分子のゲル内部や皮膜などに閉じ込める包括固定化法、さらに結合手段により共有結合法、物理的吸着法、イオン結合法及び生化学的特異結合法などと分類される担体結合法が知られているが、本発明には、これらの公知の方法を用いることができる。中でも、物理的吸着法及び包括固定化法が好ましく,とりわけ物理的吸着法は、微生物自体が結合反応に関与しておらず、結合反応による機能の減衰が少ないので、かつ殺菌処理が簡単に行なえてしかも処理後に担持される菌体の活性への抑制的影響が少ないという利点があるので、本発明への適用に特に優利である。
物理的吸着法によれば、適切な担体を選択して、温度及びpHを調整して 担持・固定化しようとする微生物と接触させることにより固定化できる。
【0013】
これらの固定化法のより具体的な方法については、「生物触媒としての微生物」p100、福井三郎著(共立出版、1979),「微生物固定化法による排水処理」須藤隆一編著(産業用水調査会)、稲森悠平の「生物膜法による排水処理の高度・効率化の動向」,水質汚濁研究, 13巻,9号(1990),563−574頁、稲森悠平らの「高度水処理技術開発の動向・課題・展望」,用水と廃水, 34巻,10号(1992),829−835頁 などに記載されている。
【0014】
[微生物担持用担体]
次ぎに、微生物担持用担体法について説明する。
微生物担持用担体としては、微生物の活性を維持しつつ、物理的強度が大きく長時間の使用に耐え得るものならば、いずれの公知材料をも使用できるが、有用微生物の効果的な担持という点から、担体表面に微生物が強く吸着するもの、微生物を微小孔隙中へ侵入させることにより保持力を高めることができるような多孔性のもの、ミクロ粒子が凝集して実質的に吸着あるいは吸蔵表面を増大させたものが望ましい。
また、膨潤性の担体材料は、微生物が利用できる空間が広い点では、好ましい材料ではあるが、微生物を 担持・固定化した後、長期に亘って安定に使用するためには、物理的な強度が必要であり、その点では非膨潤性の担体材料を用いることが好ましい。非膨潤性であっても後述するようなサイズ効果や形状効果を利用して利用空間を維持させることができる。
また、被処理水と担体とが激しく相対運動する微生物処理環境においては、担体の物理的強度が特に重要であり、さらに活性汚泥槽のように担持担体が流動する流動床の場合には、比重の制御ができることが必要で、シリカなどの比重制御剤を用いて比重値を約1.1程度に調整するので、この点からも物理的強度が大きいことが好ましい。
【0015】
これらの理由から、本発明に好ましい担持用担体としては、具体的には、セルロース、デキストラン、アガロースのような多糖類;コラーゲン、ゼラチン、アルブミンなどの不活化蛋白質;イオン交換樹脂、ポリビニルクロライドのような合成高分子化合物;セラミックスや多孔性ガラスなどの無機物;寒天、アルギン酸、カラギーナンなどの天然炭水化物;さらにはセルロースアセテート、ポリアクリルアミド、ポリビニルアルコール、エポキシ樹脂、光硬化性樹脂、ポリエステル、ポリスチレン、ポリウレタンなどがあげられる。また、リグニン、デンプン、キチン、キトサン、濾紙、木片等などの天然物も利用できる。
中でも、上記した好ましい要件に特に適合する材料としてポリプロピレン及びポリエチレンで代表されるポリオレフィン系の合成高分子化合物材料が好ましい。
これらの材料は、市販されており、例えばバイオステージ(ポリプロピレン製、筒中プラスチック工業(株)製)、ゼビオバイオチューブ(ポリエチレン製、ゼビオプラスト(株)製)などを挙げることが出来る。
【0016】
好ましい担体の形状としては、ほぼ球状、ほぼ立方体状、ほぼ直方体状、円筒状あるいはチューブ状であり、なかでも製造し易いほぼ球状、あるいは比面積を大きくできるほぼ直方体状であることが好ましい。また、多孔質担体として吸着面積を増加させるのも好ましい。
あるいは、担体物質(又はその前駆体)の混合溶液を押し出しノズルから不溶解性液体中に注入して液体中で固化させて微生物 担持担体の糸状の固化物を得てこれを適当に裁断して円筒状粒子を作る方法、またこのときの押し出し成形のダイを環状として円環状(チューブ状)の微生物 担持担体粒子を得る方法を挙げることができる。
【0017】
担体粒子の大きさは、外径0.1〜70mm、好ましくは0.5〜40mm、より好ましくは1.0〜10mmであり、粒子サイズが大きければ比面積が少なくなって非効率となり、小さいとすぐに分解・消滅して 担持体の意味をなさなくなる。したがって、適用対象に応じて好ましいサイズが選択される。
【0018】
担体の含水率は、1〜99質量%、好ましくは5〜90質量%、より好ましくは10〜85質量%である。含水率が低すぎると微生物の生存に支障があり、高すぎると担体の物理的強度が低下して取り扱いの際に支障をきたす。
【0019】
[殺菌処理方法]
担持・固定化用担体の殺菌処理方法としては、担体の物理的形状や 担持特性に変化を及ぼさない限り、公知のいずれの殺菌方法を利用してもよい。例えば、一般的に用いられている加熱殺菌、紫外線殺菌、電気衝撃による殺菌、高圧殺菌などの物理的殺菌方法、酸化性ガスや毒性ガスによるガス殺菌、化学薬品の薬液処理による殺菌などの化学的殺菌方法、濾過、沈降、電気集塵などの物理的な除菌方法などいずれの公知の方法も適用できる。それらの中では、 担持・固定化される微生物の生育への影響がない点で、加熱殺菌、紫外線殺菌及び高圧殺菌が好ましく、とくに加熱殺菌、高圧殺菌及び両者を組み合わせた加熱・高圧殺菌がより好ましい。
【0020】
加熱殺菌では、温度が60〜80℃で加熱時間が1〜30分で大半の菌類は死滅するが、比較的熱抵抗性のある芽胞形成性細菌や土壌由来のBacillus属をも確実に殺菌するために80〜120℃で10〜1200分の処理を行うことが好ましく、より好ましくは100〜120℃で10〜100分の処理を行うことが好ましい。
さらに具体的な温度と時間は、適用される担体に応じて適切な条件が設定される。
加熱殺菌用の加熱源としては、水蒸気、電熱、マイクロ波照射、赤外線照射などの手段が選択される。加熱殺菌装置には、市販のもの(例えばマイクロ波加熱殺菌機「Hi−Vister」三菱化工機(株)製)を用いることができる。
【0021】
高圧殺菌は、数千気圧の高圧下では細菌、ウイルス、酵母などの微生物が死滅することを利用した殺菌手段である。加圧によって、菌体を構成するイオン結合や共有結合などが破壊され、あるいは新たな結合が生成したりして菌体の構造の不可逆的変化が起こることを利用した殺菌方法といわれている。
高圧殺菌では、圧力が200〜400MPaで加圧時間10〜60分で大半の菌類は死滅するが、比較的耐性の強い細菌も存在するので、それらをも確実に殺菌するために常温で300〜900MPaで10〜1000分の処理を行うことが好ましく、より好ましくは常温で300〜600MPaで10〜60分の処理を行うことが好ましい。
さらに具体的な温度、圧力と時間は、適用される担体に応じて適切な条件が設定される。
高圧殺菌装置としては、適用される担体や規模などの処理条件に応じて適切なオートクレーブを市販装置から選択して用いることができる。
高圧殺菌を行う際に、オートクレーブの内部温度を上げて温度効果を付加する加熱・高圧殺菌も多くの場合に、単純な加熱殺菌や高圧殺菌よりも殺菌効果が増加することが認められ、しかもこの場合はオートクレーブの内部温度を設定するだけで、特別な作業付加も設備的付加も要らないので本発明の特に好ましい態様である。
【0022】
紫外線殺菌は、原理的には日光消毒と同じであり、菌体を構成する核酸の紫外線吸収波長である240〜270nmの紫外線の照射によってほぼ完全に菌が死滅することを利用した殺菌手段である。この方法を用いる場合、上記活性光で照射線量10〜50mWs/cm2の処理で大半の菌類は死滅するが、比較的耐性の強い真菌類即ちかびなどには不十分であり、それらをも確実に殺菌するために照射線量100〜700mWs/cm2の処理を行うことが好ましく、より好ましくは常温で150〜500mWs/cm2〜60分の処理を行うことが好ましい。
紫外線殺菌装置の光源としては、共鳴波長が253.7nmの低圧水銀灯を装備した市販装置を用いることができる。紫外線による殺菌は、殺菌効果が担体の表面層だけでなく、内部表面の部分にも及ぶようにする必要があるので、担体の形状などを考慮して照射量を調整したり、担体を流動させたり、あるいは担体サイズを選択する必要がある。
【0023】
[担持・固定化用微生物]
本発明に係る担体に保持させる生分解能を有する微生物は、被処理物質に対して生分解能を有する限り、特に限定されないが、芳香族炭化水素系化合物(例えば、フェノール類)有機溶剤(例えば、トルエン、トリクロロエチレンなど)、有機塩素化合物(例えばダイオキシン、PCBなど)等を分解するPseudomonas属に属する細菌の他に、これらを含む各種環境有害物質の分解能を有することが知られているMethylosinus、Methylomonas、Methylobacterium、Hethylocystis、Alcaligenes、Mycobacterium、Nitrosomonas、Xanthomonas、Spirillum、Vibrio、Bacterium、Achromobacter、Acinetobacter、Flavobacterium、Chromobacterium、Desulfovibrio、Desulfotomaculum、Micrococcus、Sarcina、Bacillus、Streptomyces、Nocardia、Corynebacterium、Pseudobacterium、Arthrobacter、Brevibacterium、Saccharomyces、Lactobacillusの各属に属する微生物等を用いることがきる。
【0024】
また、EDTAなどの金属キレート化剤やそれらが重金属と錯結合した重金属キレートなどを分解する能力を有する微生物には、バチルス属に属する細菌として、バチルス エディタビダス(Bacillus editabidus) 、バチルス サブチリス(Bacillus subtilis) 、バチルス メガテリウム(Bacillus megaterium) 、バチルス スファエリカス(Bacillus sphaericus) などがあげられる。これらは、例えば、Bacillus edtabidus−1(微工研菌寄 第13449号)、Bacillus subtilisNRIC 0068 、B. megaterium NRIC 1009 、B. sphaericus NRIC 1013 などとして容易に入手することができる。
【0025】
別のEDTA分解能を有する微生物としては、特開昭58−43782号に記載のシュードモナス属やアルカリゲネス属、アプライド・アンド・エンバイロンメンタル・ミクロバイオロジー(Applid and Environmental Microbiology)、56巻,3346−3353頁(1990)に記載のアグロバクテリウム属の菌種、アプライド・アンド・エンバイロンメンタル・ミクロバイオロジー(Applid and EnvironmentalMicrobiology)、58巻,2号、671−676頁(1992)に記載のGram−negative isolateが挙げられる。これらのうち、例えば、シュードモナス・エディタビダス(Pseudomonas editabidus) は、Pseudomonas editabidus−1(微工研菌寄第13634号)として入手できる。
【0026】
さらに別のEDTA分解能を有する微生物としては、海洋性菌類であるバチルス・エディタビダス(Bacillus editabidus)及びメソフィロバクター・エディタビダス(Mesophilobacter editabidus) が挙げられる。この有機アミノカルボン酸類分解菌バチルス・エディタビダス(Bacilluseditabidus)は、Bacilluseditabidus −M1(微工研菌寄第14868号)及びBacillus editabidus −M2(微工研菌寄第14869号)の属する種である。又、有機アミノカルボン酸類分解菌メソフィロバクター・エディタビダス(Mesophilobacter editabidus)
は、Mesophilobacter editabidus−M3(微工研菌寄第14870号)の属する種である。
【0027】
また、フェノール類やクレゾール類化合物を分解する微生物としては、例えばUSP4352886号及び4556638号の各公報に記載のシュウドモナスプチダcb−173(atcc31800)を挙げることができる。これらの微生物の適用対象となる廃水や汚染土壌は、例えば、フェノール樹脂工場排水、クレゾール樹脂工場廃水、ビスフェノールAなどから得られるポリフェノール類の工場排水や、それらのフェノール系樹脂を扱う製版工程やフォトレジスト形成工程から排出されるフェノール類含有排水及びそれに汚染された土壌である。
界面活性剤分解性菌としては例えばUSP4274954号に記載のシュウドモナスフルオレッセンス3p(atcc31483)を挙げることができる。これらの微生物の適用対象となる廃水及び汚染土壌は、例えば、アニオン系、ノニオン系あるいはカチオン系の界面活性剤含有排水、とりわけいわゆるハードな界面活性剤と呼ばれる生分解性に乏しい界面活性剤含有排水、なかでもスルホン酸基含有界面活性剤含有排水である。
【0028】
なお、利用できる微生物としては、既に単離されているもののほか、土壌や廃水等から目的に応じて新たにスクリーニングしたものも利用でき、複数の株の混合系でもよい。なお、スクリーニングにより分離したものの場合それが未同定のものでも良い。
【0029】
[栄養物]
本発明では、殺菌処理した担体に、微生物を 担持・固定化する際に、該微生物用の栄養物を供給してやることが、 担持・固定化される微生物の増殖を促進して速やかに該微生物が優先的に生育する環境が確立されるので、好ましい。
栄養物としては、炭素、窒素、リンを含むものが好ましく、微生物の生育に適した培養液などが挙げられる。培養液としては、例えば、肉汁、酵母エキス、麦芽エキス、バクトペプトン、グルコース、無機塩類、ミネラルなどが適当な割合で混合したものが良く用いられているが、微生物の種類に応じて適当な配合比のものを選べば良い。また、本発明に用いる栄養物としては、上記の培養液以外にも有機、無機栄養物を適当に含むものであれば、どのようなものでも利用可能である。例えば、自然界より採取した、あるいは培養を加えた任意の微生物を乾燥、粉砕し、粉砕微粉体を栄養物として用いてもよい。
さらに、分解菌を活性化する共存微生物を用いることもできる。この共存微生物は、それ自身が分解菌の栄養源となったり、その微生物が分泌する物質が分解菌を活性化する成分を含んでいる。好ましい微生物としては、いわゆるEM菌として市販されている微生物混合体や光合成細菌が挙げられる。とりわけ、Rhodepseudomonas capsulataやThiobacilluse definitricansをはじめとする光合成細菌が好ましい。
【0030】
[その他の調整条件]
微生物処理の温度は、微生物の活動に適した温度であることが必要で、3〜50℃、好ましくは10〜45℃、より好ましくは18〜40℃である。この温度に維持するためには、状況に応じて温水を撒布又は注入するなどの加温を行なってもよい。また、寒冷地などでは、熱伝導体をバイオリアクターに装備して熱源からの伝熱あるいは直接の通電によって加温することもできる。熱伝導体としては、金属、セラミックスなど熱を伝えることができる物質であれば材質は問わない。
【0031】
被処理廃水のpHは、通常2〜10であり、好ましくは3〜9、より好ましくは4〜8.5であって、微生物の至適pHであれば最も好ましい。
【0032】
【実施例】
以下、実施例により本発明をより具体的に説明するが、これらは本発明の範囲をなんら限定するものではない。
[実施例1]
(担体の殺菌)
ポリプロピレンの多孔性市販担体であるバイオステージRK04Z098(筒中シート防水株式会社)50mlをそれぞれ使用し、(a)紫外線照射(共鳴波長253.7nmの低圧水銀灯使用、12時間照射、紫外線殺菌線量286μWsec/cm2)によって殺菌処理したものと、(b)オートクレーブ(200MPa、120℃ 5分)で殺菌処理したものと、(c)未処理のものとを実験に用いた。
【0033】
(担持担体の調製)
300mlの三角フラスコに下記培養液を100ml入れ、Fe−EDTA分解菌Bacillus editabidus−1(微工研菌寄 第13449号)を接種し、37℃で3日間振盪培養した。
培養液組成
ポリペプトン 0.5%
酵母エキス 0.1%
1/30Mリン酸緩衝液 pH6.0
【0034】
この培養液の遠心分離で得られた湿潤菌体を各2mgずつ以下の液に投入し、1時間撹拌した後、担体を濾取した。
A液:蒸留水200ml、未殺菌担体20ml
B液:上記培養液200ml、未殺菌担体20ml
C液:蒸留水200ml、紫外線殺菌担体20ml
D液:上記培養液200ml、紫外線殺菌担体20ml
E液:蒸留水200ml、オートクレーブ殺菌担体20ml
F液:上記培養液200ml、オートクレーブ殺菌担体20ml
【0035】
(担持担体の性能確認)
上記培養液に濃度が0.01%となるようにFe−EDTAを添加し、300ml三角フラスコ6個に100mlずつ加えた。先にA〜F液中で調製し、濾取した担持担体各20mlを投入した。37℃下で静置培養(時々振盪)7日後のFe−EDTA量をイオンクロマトにより測定した結果を表に示す。
【0036】
【表1】
【0037】
<結果>
表1に示されるように、殺菌処理を行わなかった比較試料A及びBに対して紫外線殺菌又は加熱・高圧殺菌した本発明の試料C〜Fはいずれも顕著なFe−EDTA錯体分解効果を示した。また、本発明の中では、微生物を 担持・固定化する際に栄養源を供給した試料DとFは、供給しなかった試料C及びEに対して更に効果が大きいことを示した。
【0038】
実施例2
実施例1において使用したEDTA分解菌バチルス・エディタビダス(Bacilluseditabidus−1、微工研菌寄 第13449号)を特開平6−335386号公報に記載のEDTA分解菌シュードモナス・エディタビダス(Pseudomonas editabidus −1、微工研菌寄 第13634号)に変更した以外は、実施例1と同じ試験を行なった。EDTA残存濃度値の差はあっても、6試料間の相対的な差は対応する実施例1のA〜F試料間の差異と同じであり、その意味で、実質的には実施例1の各試料間の差異と同じであった。
さらに、栄養源を供給しながら微生物の 担持・固定化を行った後、実施例1のb)条件(オートクレーブ(200MPa、120℃ 5分))で殺菌処理した試料(実施例1の試料Fに対応)に対して、温度を室温のままで高圧試験した試料と加圧することなく温度を120℃で加熱試験した試料は、いずれも実施例1のb)条件で高圧加熱試験した試料よりもFe−EDTA錯体残存率は高く、高圧と加熱の組合せが有効であることが示されたが、それでも殺菌を行わなかった試料に比較するとFe−EDTA錯体残存率の顕著な低下は見られ、本発明の効果が認められた。
【0039】
実施例3
実施例1において使用したEDTA分解菌バチルス・エディタビダス(Bacillus editabidus−1、微工研菌寄 第13449号)を特開平8−289778号公報に記載のEDTA分解菌バチルス・エディタビダス(Bacillus editabidus−M1、微工研菌寄 第14868号)に変更した以外は、実施例1と同じ試験を行なった。EDTA残存濃度値の差はあっても、6試料間の相対的な差は対応する実施例1のA〜F試料間の差異と同じであり、その意味で、実質的には実施例1の各試料間の差異と同じであった。
【0040】
実施例4
(担体の殺菌)
実施例1に使用したポリプロピレン製の多孔性市販担体であるバイオステージRK04Z098(筒中シート(株)製)をゼビオバイオチューブ(ポリエチレン製、ゼビオプラスト(株)製)に変更し、その他は実施例1と同じ試験を行った。結果は、EDTA残存濃度値の差はあっても、6試料間の相対的な差は対応する実施例1のA〜F試料間の差異と同じであり、その意味で、 担持・固定化用担体を変更しても実質的には実施例1と同じ効果が認められた。
【0041】
実施例5
(担体の殺菌)
ポリプロピレンの多孔性市販担体であるバイオステージRK04Z098(筒中シート防水株式会社)50mlをそれぞれ使用し、(a)紫外線照射(共鳴波長253.7nmの低圧水銀灯使用、12時間照射、紫外線殺菌線量286μWsec/cm2)によって殺菌処理したものと、(b)オートクレーブ(200MPa、120℃ 5分)で殺菌処理したものと、(c)未処理のものとを実験に用いた。
【0042】
(担持担体の調製)
Novozyme社から市販されているフェノール分解菌製剤Bi−Chem1002CGをP1培地(組成:酵母エキス0.05%、フェノール0.05%、リン酸二水素ナトリウム0.62%、リン酸二水素カリウム0.3%、塩化ナトリウム0.05%、塩化アンモニウム0.1%、pH7.0)300mlを用い34℃で2日間振盪培養し、フェノール分解菌体を高濃度に含有する培養物を得た。これを遠心分離により、本菌株の湿菌体と培養上清に分離した。精製水による洗浄と遠心分離による湿菌体の回収を3回繰り返し、培養上清を十分に除去した洗浄湿菌体Aを得た。
【0043】
遠心分離で得られた湿潤菌体Aを各2mgずつ以下の液に投入し、1時間撹拌した後、担体を濾取した。
A液:蒸留水200mlと、未殺菌担体20mlの混合液
B液:上記培養液200mlと、未殺菌担体20mlの混合液
C液:蒸留水200mlと、紫外線殺菌担体20mlの混合液
D液:上記培養液200mlと、紫外線殺菌担体20mlの混合液
E液:蒸留水200mlと、オートクレーブ殺菌担体20mlの混合液
F液:上記培養液200mlと、オートクレーブ殺菌担体20mlの混合液
【0044】
(担持担体の性能確認)
P1培地のフェノール濃度を0.01%とした培養液を調製し、300ml三角フラスコ6個に100mlずつ加えた。先にA〜F液中で調製し、濾取した担持担体各20mlを投入し、37℃下で2日間振盪培養した。
生分解進行の観測は、各試料を超音波洗浄器にて良く分散したものを孔径0.45μmのミクロフィルターでろ過した液について液体クロマトグラフィーによりフェノール量を定量することによって行った。
【0045】
<結果>
試験結果は、フェノール残存率(%)を生分解効果の尺度として表2に示す。
【0046】
【表2】
【0047】
表2に示されるように、殺菌処理を行わなかった比較試料A及びBに対して紫外線殺菌又は加熱・高圧殺菌した本発明の試料C〜Fはいずれも顕著なフェノール分解効果を示した。また、本発明の中では、微生物を 担持・固定化する際に栄養源を供給した試料DとFは、供給しなかった試料C及びEに対して更に効果が大きいことを示した。
【0048】
【発明の効果】
微生物担持担体を殺菌処理したのち、該担体に微生物を固定化する本発明の方法によって製造した微生物固定化担体は、殺菌処理を施さないで固定化を行った担体に比較して顕著な汚染物質処理能力を有することが、鉄・EDTA錯体の分解除去及びフェノールの分解除去の例で示された。この作用は、本発明の殺菌処理を伴う担体製造方法による限り、明細書本文中に記載したように、被処理物質が他のEDTA錯体化合物、フェノール類及び界面活性剤の場合についても認められ、各種の廃棄物処理に適用できると考えられる。また、 担持・固定化の過程において栄養物を供給するとこの効果は一層顕著になる。
本発明の微生物担持担体製造方法は、簡易であり、かつ機械的強度が高く磨耗耐性に優れた材料を選択して製造することができる。
【産業上の利用分野】
本発明は、環境汚染物質の微生物処理方法に関するもので、とくにバイオリアクターを構成する微生物を担持した単体の製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、産業廃棄物や一般廃棄物の微生物処理が広く行なわれてきているが、微生物による分解効率を高めるためにバイオリアクターの研究開発が積極的に行なわれ、実用されている。バイオリアクターの微生物分解効率を高めるには、リアクター内の微生物濃度と活性を高めることが必要であり、そのためには微生物を担体に高濃度に担持させ、固定化する手段が求められ、例えば、親水性架橋ポリマーを担体とする方法(特許文献1)、ポリビニルアルコール系含水ゲルを担体とする方法(特許文献2)、アルギン酸ゲルを担体とする方法(特許文献3)、粘性モノマー溶液からポリマー担体を重合させる過程で微生物を担持させる方法(特許文献4)、多糖類などの天然物を微生物担体とする方法(特許文献5)、大粒径樹脂粒子を担体とする方法(特許文献6)など、天然物や合成物質などの担体材料、担体形状、担持方法などの各面から担持方法が検討され、提案されている。
【0003】
これらの微生物担持・固定化技術の進歩によって、微生物処理の効率は著しい進歩を遂げて各種の一般廃水や産業廃水の処理の効率化に寄与している。しかしながら、微生物処理は、本来大型設備と広い設置スペースを必要としているので、これらの進歩にもかかわらず、依然として生分解率の向上と設備の簡易化、小型化、高能率化が強く求められている。
【0004】
それに加えて、例えば前記した親水性膨潤型の担体(特許文献1及び5)では、担体強度が不十分であること、また、包括法の担体(特許文献4)では簡便性が欠如しており、かつ組み込まれた微生物と処理水との接触効率が悪いことなど、開示技術にはそれぞれの問題を抱えていて、微生物固定化バイオリアクターの一層の改良が必要となっている。
【0005】
とりわけ、環境汚染物質、とくに難分解性物質の分解・無害化手段が求められている近年の環境問題に対して、微生物固定化バイオリアクターの適用は効果が期待されているものの、難分解性物質を生分解可能の特殊な微生物を固定化して活性化できるような微生物担体や担持方法が得られていない。
【0006】
この出願の発明に関連する前記の先行技術には、次ぎの文献がある。
【特許文献1】
特開昭60−43382号公報
【特許文献2】
特開平7−31474号公報
【特許文献3】
特開昭63−160584号公報
【特許文献4】
特開平10−287711号公報
【特許文献5】
特開昭63−251086号公報
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上記した背景からなされたものであり、その目的は、第1には、例えば難分解性物質を分解可能な微生物のような特定の微生物を優先的に担持でき、第2に機械的強度が高く磨耗耐性に優れ、第3に簡易な操作で固定化ができる、微生物固定化単体の製造方法を提供することである。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明者は、上記した本発明の目的の3要件を満たす方法を鋭意検討するなかで、難分解性物質を分解できる特殊な微生物が自然界に通常繁殖している微生物(優勢微生物)に抗して増殖できる条件を見出すに至り、それに基づいて本発明に到達することができた。すなわち、本発明は以下の通りである。
【0009】
(1)微生物担持担体を殺菌処理したのち、該担体に微生物を固定化することを特徴とする微生物固定化担体の製造方法。
(2)微生物担持担体が非膨潤性固体からなり、該担持担体に微生物を固定化する際に、該担体の媒質中に微生物の増殖用の栄養源を存在させることを特徴とする上記(1)に記載の微生物固定化担体の製造方法。
(3)微生物がEDTA分解能を有する微生物、フェノール類分解能を有する微生物及び界面活性剤分解能を有する微生物の少なくとも一つであることを特徴とする上記(1)又は(2)に記載の微生物固定化担体の製造方法。
(4)殺菌処理が高圧殺菌、加熱殺菌及び紫外線殺菌から選択される殺菌処理又はそれらの組み合わせ処理であることを特徴とする上記(1)〜(3)のいずれかに記載の微生物固定化担体の製造方法。
(5)微生物の固定化が物理的吸着法によって行なわれることを特徴とする上記(1)〜(4)のいずれか1項に記載の微生物固定化担体の製造方法。
【0010】
すなわち、本発明の特徴は、微生物固定化担体の製造に際して微生物担持用担体に予め殺菌処理を施してから、本発明に利用する微生物を該担体に固定化することにある。殺菌された担体は、本発明が利用しようとする微生物の担持、生育には影響を与えないが、競合する他の微生物の担持・生育は進行しないで、結果として利用しようとする微生物が活性化した環境を固定化担体内に確立できるという意外な効果を有する。
【0011】
利用する微生物の多くは、難分解性物質や環境有害物質を分解可能とされる微生物であって、これらは特殊な環境で発見されてはいても、微生物処理に実用しようとすると在来微生物に阻まれて生育できないので、実用困難であるが、本発明によれば、このような微生物でも担体に担持固定化できて難分解性物質、環境有害物質を効果的に生分解できる状態が実現される。
本発明は、通常の生分解手段では処理が困難な廃水、とくにEDTA含有廃水、フェノール類含有廃水、界面活性剤含有廃水などの難分解性かつ環境有害廃水を処理するのに顕著な効果を発揮する。
本発明の方法は、殺菌処理を行う以外は付加的な作業はないので、きわめて簡易であり、かつ非膨潤性固体を選択すれば機械的強度もあって安定な微生物処理を持続できる。
殺菌には加熱殺菌、高圧殺菌及び紫外線殺菌のいずれか又は組合せが簡易でしかも効果がある。また、微生物の担持・固定化の際に媒質中に微生物の増殖用の栄養源を存在させると、利用しようとする微生物を優先的に担体に担持するのに効果がある。
以下、本発明をさらに具体的に詳述する。
なお、本明細書では生分解に係る「微生物」を「菌体」と呼ぶこともあるが、実質的に同義に解してよい。
【0012】
【発明の実施の形態】
[担持・固定化方法]
本発明の微生物固定化担体の製造方法において、微生物の 担持・固定化方法としては、担体から生分解菌が流出しないように固定される方法ならばその種類、形式を問わない。具体的な 担持・固定化法としては、例えば、微生物が付着して生物膜を形成するような担体を用いる付着生物膜法、担体と培地を混合して微生物を培養する担持培養法、水不溶性の担体に微生物を結合させる担体結合法、減圧下で担体の孔隙内に微生物を封入する方法、2個以上の官能基を持つ試薬によって菌体内に架橋を形成させて固定化する方法、微生物を高分子のゲル内部や皮膜などに閉じ込める包括固定化法、さらに結合手段により共有結合法、物理的吸着法、イオン結合法及び生化学的特異結合法などと分類される担体結合法が知られているが、本発明には、これらの公知の方法を用いることができる。中でも、物理的吸着法及び包括固定化法が好ましく,とりわけ物理的吸着法は、微生物自体が結合反応に関与しておらず、結合反応による機能の減衰が少ないので、かつ殺菌処理が簡単に行なえてしかも処理後に担持される菌体の活性への抑制的影響が少ないという利点があるので、本発明への適用に特に優利である。
物理的吸着法によれば、適切な担体を選択して、温度及びpHを調整して 担持・固定化しようとする微生物と接触させることにより固定化できる。
【0013】
これらの固定化法のより具体的な方法については、「生物触媒としての微生物」p100、福井三郎著(共立出版、1979),「微生物固定化法による排水処理」須藤隆一編著(産業用水調査会)、稲森悠平の「生物膜法による排水処理の高度・効率化の動向」,水質汚濁研究, 13巻,9号(1990),563−574頁、稲森悠平らの「高度水処理技術開発の動向・課題・展望」,用水と廃水, 34巻,10号(1992),829−835頁 などに記載されている。
【0014】
[微生物担持用担体]
次ぎに、微生物担持用担体法について説明する。
微生物担持用担体としては、微生物の活性を維持しつつ、物理的強度が大きく長時間の使用に耐え得るものならば、いずれの公知材料をも使用できるが、有用微生物の効果的な担持という点から、担体表面に微生物が強く吸着するもの、微生物を微小孔隙中へ侵入させることにより保持力を高めることができるような多孔性のもの、ミクロ粒子が凝集して実質的に吸着あるいは吸蔵表面を増大させたものが望ましい。
また、膨潤性の担体材料は、微生物が利用できる空間が広い点では、好ましい材料ではあるが、微生物を 担持・固定化した後、長期に亘って安定に使用するためには、物理的な強度が必要であり、その点では非膨潤性の担体材料を用いることが好ましい。非膨潤性であっても後述するようなサイズ効果や形状効果を利用して利用空間を維持させることができる。
また、被処理水と担体とが激しく相対運動する微生物処理環境においては、担体の物理的強度が特に重要であり、さらに活性汚泥槽のように担持担体が流動する流動床の場合には、比重の制御ができることが必要で、シリカなどの比重制御剤を用いて比重値を約1.1程度に調整するので、この点からも物理的強度が大きいことが好ましい。
【0015】
これらの理由から、本発明に好ましい担持用担体としては、具体的には、セルロース、デキストラン、アガロースのような多糖類;コラーゲン、ゼラチン、アルブミンなどの不活化蛋白質;イオン交換樹脂、ポリビニルクロライドのような合成高分子化合物;セラミックスや多孔性ガラスなどの無機物;寒天、アルギン酸、カラギーナンなどの天然炭水化物;さらにはセルロースアセテート、ポリアクリルアミド、ポリビニルアルコール、エポキシ樹脂、光硬化性樹脂、ポリエステル、ポリスチレン、ポリウレタンなどがあげられる。また、リグニン、デンプン、キチン、キトサン、濾紙、木片等などの天然物も利用できる。
中でも、上記した好ましい要件に特に適合する材料としてポリプロピレン及びポリエチレンで代表されるポリオレフィン系の合成高分子化合物材料が好ましい。
これらの材料は、市販されており、例えばバイオステージ(ポリプロピレン製、筒中プラスチック工業(株)製)、ゼビオバイオチューブ(ポリエチレン製、ゼビオプラスト(株)製)などを挙げることが出来る。
【0016】
好ましい担体の形状としては、ほぼ球状、ほぼ立方体状、ほぼ直方体状、円筒状あるいはチューブ状であり、なかでも製造し易いほぼ球状、あるいは比面積を大きくできるほぼ直方体状であることが好ましい。また、多孔質担体として吸着面積を増加させるのも好ましい。
あるいは、担体物質(又はその前駆体)の混合溶液を押し出しノズルから不溶解性液体中に注入して液体中で固化させて微生物 担持担体の糸状の固化物を得てこれを適当に裁断して円筒状粒子を作る方法、またこのときの押し出し成形のダイを環状として円環状(チューブ状)の微生物 担持担体粒子を得る方法を挙げることができる。
【0017】
担体粒子の大きさは、外径0.1〜70mm、好ましくは0.5〜40mm、より好ましくは1.0〜10mmであり、粒子サイズが大きければ比面積が少なくなって非効率となり、小さいとすぐに分解・消滅して 担持体の意味をなさなくなる。したがって、適用対象に応じて好ましいサイズが選択される。
【0018】
担体の含水率は、1〜99質量%、好ましくは5〜90質量%、より好ましくは10〜85質量%である。含水率が低すぎると微生物の生存に支障があり、高すぎると担体の物理的強度が低下して取り扱いの際に支障をきたす。
【0019】
[殺菌処理方法]
担持・固定化用担体の殺菌処理方法としては、担体の物理的形状や 担持特性に変化を及ぼさない限り、公知のいずれの殺菌方法を利用してもよい。例えば、一般的に用いられている加熱殺菌、紫外線殺菌、電気衝撃による殺菌、高圧殺菌などの物理的殺菌方法、酸化性ガスや毒性ガスによるガス殺菌、化学薬品の薬液処理による殺菌などの化学的殺菌方法、濾過、沈降、電気集塵などの物理的な除菌方法などいずれの公知の方法も適用できる。それらの中では、 担持・固定化される微生物の生育への影響がない点で、加熱殺菌、紫外線殺菌及び高圧殺菌が好ましく、とくに加熱殺菌、高圧殺菌及び両者を組み合わせた加熱・高圧殺菌がより好ましい。
【0020】
加熱殺菌では、温度が60〜80℃で加熱時間が1〜30分で大半の菌類は死滅するが、比較的熱抵抗性のある芽胞形成性細菌や土壌由来のBacillus属をも確実に殺菌するために80〜120℃で10〜1200分の処理を行うことが好ましく、より好ましくは100〜120℃で10〜100分の処理を行うことが好ましい。
さらに具体的な温度と時間は、適用される担体に応じて適切な条件が設定される。
加熱殺菌用の加熱源としては、水蒸気、電熱、マイクロ波照射、赤外線照射などの手段が選択される。加熱殺菌装置には、市販のもの(例えばマイクロ波加熱殺菌機「Hi−Vister」三菱化工機(株)製)を用いることができる。
【0021】
高圧殺菌は、数千気圧の高圧下では細菌、ウイルス、酵母などの微生物が死滅することを利用した殺菌手段である。加圧によって、菌体を構成するイオン結合や共有結合などが破壊され、あるいは新たな結合が生成したりして菌体の構造の不可逆的変化が起こることを利用した殺菌方法といわれている。
高圧殺菌では、圧力が200〜400MPaで加圧時間10〜60分で大半の菌類は死滅するが、比較的耐性の強い細菌も存在するので、それらをも確実に殺菌するために常温で300〜900MPaで10〜1000分の処理を行うことが好ましく、より好ましくは常温で300〜600MPaで10〜60分の処理を行うことが好ましい。
さらに具体的な温度、圧力と時間は、適用される担体に応じて適切な条件が設定される。
高圧殺菌装置としては、適用される担体や規模などの処理条件に応じて適切なオートクレーブを市販装置から選択して用いることができる。
高圧殺菌を行う際に、オートクレーブの内部温度を上げて温度効果を付加する加熱・高圧殺菌も多くの場合に、単純な加熱殺菌や高圧殺菌よりも殺菌効果が増加することが認められ、しかもこの場合はオートクレーブの内部温度を設定するだけで、特別な作業付加も設備的付加も要らないので本発明の特に好ましい態様である。
【0022】
紫外線殺菌は、原理的には日光消毒と同じであり、菌体を構成する核酸の紫外線吸収波長である240〜270nmの紫外線の照射によってほぼ完全に菌が死滅することを利用した殺菌手段である。この方法を用いる場合、上記活性光で照射線量10〜50mWs/cm2の処理で大半の菌類は死滅するが、比較的耐性の強い真菌類即ちかびなどには不十分であり、それらをも確実に殺菌するために照射線量100〜700mWs/cm2の処理を行うことが好ましく、より好ましくは常温で150〜500mWs/cm2〜60分の処理を行うことが好ましい。
紫外線殺菌装置の光源としては、共鳴波長が253.7nmの低圧水銀灯を装備した市販装置を用いることができる。紫外線による殺菌は、殺菌効果が担体の表面層だけでなく、内部表面の部分にも及ぶようにする必要があるので、担体の形状などを考慮して照射量を調整したり、担体を流動させたり、あるいは担体サイズを選択する必要がある。
【0023】
[担持・固定化用微生物]
本発明に係る担体に保持させる生分解能を有する微生物は、被処理物質に対して生分解能を有する限り、特に限定されないが、芳香族炭化水素系化合物(例えば、フェノール類)有機溶剤(例えば、トルエン、トリクロロエチレンなど)、有機塩素化合物(例えばダイオキシン、PCBなど)等を分解するPseudomonas属に属する細菌の他に、これらを含む各種環境有害物質の分解能を有することが知られているMethylosinus、Methylomonas、Methylobacterium、Hethylocystis、Alcaligenes、Mycobacterium、Nitrosomonas、Xanthomonas、Spirillum、Vibrio、Bacterium、Achromobacter、Acinetobacter、Flavobacterium、Chromobacterium、Desulfovibrio、Desulfotomaculum、Micrococcus、Sarcina、Bacillus、Streptomyces、Nocardia、Corynebacterium、Pseudobacterium、Arthrobacter、Brevibacterium、Saccharomyces、Lactobacillusの各属に属する微生物等を用いることがきる。
【0024】
また、EDTAなどの金属キレート化剤やそれらが重金属と錯結合した重金属キレートなどを分解する能力を有する微生物には、バチルス属に属する細菌として、バチルス エディタビダス(Bacillus editabidus) 、バチルス サブチリス(Bacillus subtilis) 、バチルス メガテリウム(Bacillus megaterium) 、バチルス スファエリカス(Bacillus sphaericus) などがあげられる。これらは、例えば、Bacillus edtabidus−1(微工研菌寄 第13449号)、Bacillus subtilisNRIC 0068 、B. megaterium NRIC 1009 、B. sphaericus NRIC 1013 などとして容易に入手することができる。
【0025】
別のEDTA分解能を有する微生物としては、特開昭58−43782号に記載のシュードモナス属やアルカリゲネス属、アプライド・アンド・エンバイロンメンタル・ミクロバイオロジー(Applid and Environmental Microbiology)、56巻,3346−3353頁(1990)に記載のアグロバクテリウム属の菌種、アプライド・アンド・エンバイロンメンタル・ミクロバイオロジー(Applid and EnvironmentalMicrobiology)、58巻,2号、671−676頁(1992)に記載のGram−negative isolateが挙げられる。これらのうち、例えば、シュードモナス・エディタビダス(Pseudomonas editabidus) は、Pseudomonas editabidus−1(微工研菌寄第13634号)として入手できる。
【0026】
さらに別のEDTA分解能を有する微生物としては、海洋性菌類であるバチルス・エディタビダス(Bacillus editabidus)及びメソフィロバクター・エディタビダス(Mesophilobacter editabidus) が挙げられる。この有機アミノカルボン酸類分解菌バチルス・エディタビダス(Bacilluseditabidus)は、Bacilluseditabidus −M1(微工研菌寄第14868号)及びBacillus editabidus −M2(微工研菌寄第14869号)の属する種である。又、有機アミノカルボン酸類分解菌メソフィロバクター・エディタビダス(Mesophilobacter editabidus)
は、Mesophilobacter editabidus−M3(微工研菌寄第14870号)の属する種である。
【0027】
また、フェノール類やクレゾール類化合物を分解する微生物としては、例えばUSP4352886号及び4556638号の各公報に記載のシュウドモナスプチダcb−173(atcc31800)を挙げることができる。これらの微生物の適用対象となる廃水や汚染土壌は、例えば、フェノール樹脂工場排水、クレゾール樹脂工場廃水、ビスフェノールAなどから得られるポリフェノール類の工場排水や、それらのフェノール系樹脂を扱う製版工程やフォトレジスト形成工程から排出されるフェノール類含有排水及びそれに汚染された土壌である。
界面活性剤分解性菌としては例えばUSP4274954号に記載のシュウドモナスフルオレッセンス3p(atcc31483)を挙げることができる。これらの微生物の適用対象となる廃水及び汚染土壌は、例えば、アニオン系、ノニオン系あるいはカチオン系の界面活性剤含有排水、とりわけいわゆるハードな界面活性剤と呼ばれる生分解性に乏しい界面活性剤含有排水、なかでもスルホン酸基含有界面活性剤含有排水である。
【0028】
なお、利用できる微生物としては、既に単離されているもののほか、土壌や廃水等から目的に応じて新たにスクリーニングしたものも利用でき、複数の株の混合系でもよい。なお、スクリーニングにより分離したものの場合それが未同定のものでも良い。
【0029】
[栄養物]
本発明では、殺菌処理した担体に、微生物を 担持・固定化する際に、該微生物用の栄養物を供給してやることが、 担持・固定化される微生物の増殖を促進して速やかに該微生物が優先的に生育する環境が確立されるので、好ましい。
栄養物としては、炭素、窒素、リンを含むものが好ましく、微生物の生育に適した培養液などが挙げられる。培養液としては、例えば、肉汁、酵母エキス、麦芽エキス、バクトペプトン、グルコース、無機塩類、ミネラルなどが適当な割合で混合したものが良く用いられているが、微生物の種類に応じて適当な配合比のものを選べば良い。また、本発明に用いる栄養物としては、上記の培養液以外にも有機、無機栄養物を適当に含むものであれば、どのようなものでも利用可能である。例えば、自然界より採取した、あるいは培養を加えた任意の微生物を乾燥、粉砕し、粉砕微粉体を栄養物として用いてもよい。
さらに、分解菌を活性化する共存微生物を用いることもできる。この共存微生物は、それ自身が分解菌の栄養源となったり、その微生物が分泌する物質が分解菌を活性化する成分を含んでいる。好ましい微生物としては、いわゆるEM菌として市販されている微生物混合体や光合成細菌が挙げられる。とりわけ、Rhodepseudomonas capsulataやThiobacilluse definitricansをはじめとする光合成細菌が好ましい。
【0030】
[その他の調整条件]
微生物処理の温度は、微生物の活動に適した温度であることが必要で、3〜50℃、好ましくは10〜45℃、より好ましくは18〜40℃である。この温度に維持するためには、状況に応じて温水を撒布又は注入するなどの加温を行なってもよい。また、寒冷地などでは、熱伝導体をバイオリアクターに装備して熱源からの伝熱あるいは直接の通電によって加温することもできる。熱伝導体としては、金属、セラミックスなど熱を伝えることができる物質であれば材質は問わない。
【0031】
被処理廃水のpHは、通常2〜10であり、好ましくは3〜9、より好ましくは4〜8.5であって、微生物の至適pHであれば最も好ましい。
【0032】
【実施例】
以下、実施例により本発明をより具体的に説明するが、これらは本発明の範囲をなんら限定するものではない。
[実施例1]
(担体の殺菌)
ポリプロピレンの多孔性市販担体であるバイオステージRK04Z098(筒中シート防水株式会社)50mlをそれぞれ使用し、(a)紫外線照射(共鳴波長253.7nmの低圧水銀灯使用、12時間照射、紫外線殺菌線量286μWsec/cm2)によって殺菌処理したものと、(b)オートクレーブ(200MPa、120℃ 5分)で殺菌処理したものと、(c)未処理のものとを実験に用いた。
【0033】
(担持担体の調製)
300mlの三角フラスコに下記培養液を100ml入れ、Fe−EDTA分解菌Bacillus editabidus−1(微工研菌寄 第13449号)を接種し、37℃で3日間振盪培養した。
培養液組成
ポリペプトン 0.5%
酵母エキス 0.1%
1/30Mリン酸緩衝液 pH6.0
【0034】
この培養液の遠心分離で得られた湿潤菌体を各2mgずつ以下の液に投入し、1時間撹拌した後、担体を濾取した。
A液:蒸留水200ml、未殺菌担体20ml
B液:上記培養液200ml、未殺菌担体20ml
C液:蒸留水200ml、紫外線殺菌担体20ml
D液:上記培養液200ml、紫外線殺菌担体20ml
E液:蒸留水200ml、オートクレーブ殺菌担体20ml
F液:上記培養液200ml、オートクレーブ殺菌担体20ml
【0035】
(担持担体の性能確認)
上記培養液に濃度が0.01%となるようにFe−EDTAを添加し、300ml三角フラスコ6個に100mlずつ加えた。先にA〜F液中で調製し、濾取した担持担体各20mlを投入した。37℃下で静置培養(時々振盪)7日後のFe−EDTA量をイオンクロマトにより測定した結果を表に示す。
【0036】
【表1】
【0037】
<結果>
表1に示されるように、殺菌処理を行わなかった比較試料A及びBに対して紫外線殺菌又は加熱・高圧殺菌した本発明の試料C〜Fはいずれも顕著なFe−EDTA錯体分解効果を示した。また、本発明の中では、微生物を 担持・固定化する際に栄養源を供給した試料DとFは、供給しなかった試料C及びEに対して更に効果が大きいことを示した。
【0038】
実施例2
実施例1において使用したEDTA分解菌バチルス・エディタビダス(Bacilluseditabidus−1、微工研菌寄 第13449号)を特開平6−335386号公報に記載のEDTA分解菌シュードモナス・エディタビダス(Pseudomonas editabidus −1、微工研菌寄 第13634号)に変更した以外は、実施例1と同じ試験を行なった。EDTA残存濃度値の差はあっても、6試料間の相対的な差は対応する実施例1のA〜F試料間の差異と同じであり、その意味で、実質的には実施例1の各試料間の差異と同じであった。
さらに、栄養源を供給しながら微生物の 担持・固定化を行った後、実施例1のb)条件(オートクレーブ(200MPa、120℃ 5分))で殺菌処理した試料(実施例1の試料Fに対応)に対して、温度を室温のままで高圧試験した試料と加圧することなく温度を120℃で加熱試験した試料は、いずれも実施例1のb)条件で高圧加熱試験した試料よりもFe−EDTA錯体残存率は高く、高圧と加熱の組合せが有効であることが示されたが、それでも殺菌を行わなかった試料に比較するとFe−EDTA錯体残存率の顕著な低下は見られ、本発明の効果が認められた。
【0039】
実施例3
実施例1において使用したEDTA分解菌バチルス・エディタビダス(Bacillus editabidus−1、微工研菌寄 第13449号)を特開平8−289778号公報に記載のEDTA分解菌バチルス・エディタビダス(Bacillus editabidus−M1、微工研菌寄 第14868号)に変更した以外は、実施例1と同じ試験を行なった。EDTA残存濃度値の差はあっても、6試料間の相対的な差は対応する実施例1のA〜F試料間の差異と同じであり、その意味で、実質的には実施例1の各試料間の差異と同じであった。
【0040】
実施例4
(担体の殺菌)
実施例1に使用したポリプロピレン製の多孔性市販担体であるバイオステージRK04Z098(筒中シート(株)製)をゼビオバイオチューブ(ポリエチレン製、ゼビオプラスト(株)製)に変更し、その他は実施例1と同じ試験を行った。結果は、EDTA残存濃度値の差はあっても、6試料間の相対的な差は対応する実施例1のA〜F試料間の差異と同じであり、その意味で、 担持・固定化用担体を変更しても実質的には実施例1と同じ効果が認められた。
【0041】
実施例5
(担体の殺菌)
ポリプロピレンの多孔性市販担体であるバイオステージRK04Z098(筒中シート防水株式会社)50mlをそれぞれ使用し、(a)紫外線照射(共鳴波長253.7nmの低圧水銀灯使用、12時間照射、紫外線殺菌線量286μWsec/cm2)によって殺菌処理したものと、(b)オートクレーブ(200MPa、120℃ 5分)で殺菌処理したものと、(c)未処理のものとを実験に用いた。
【0042】
(担持担体の調製)
Novozyme社から市販されているフェノール分解菌製剤Bi−Chem1002CGをP1培地(組成:酵母エキス0.05%、フェノール0.05%、リン酸二水素ナトリウム0.62%、リン酸二水素カリウム0.3%、塩化ナトリウム0.05%、塩化アンモニウム0.1%、pH7.0)300mlを用い34℃で2日間振盪培養し、フェノール分解菌体を高濃度に含有する培養物を得た。これを遠心分離により、本菌株の湿菌体と培養上清に分離した。精製水による洗浄と遠心分離による湿菌体の回収を3回繰り返し、培養上清を十分に除去した洗浄湿菌体Aを得た。
【0043】
遠心分離で得られた湿潤菌体Aを各2mgずつ以下の液に投入し、1時間撹拌した後、担体を濾取した。
A液:蒸留水200mlと、未殺菌担体20mlの混合液
B液:上記培養液200mlと、未殺菌担体20mlの混合液
C液:蒸留水200mlと、紫外線殺菌担体20mlの混合液
D液:上記培養液200mlと、紫外線殺菌担体20mlの混合液
E液:蒸留水200mlと、オートクレーブ殺菌担体20mlの混合液
F液:上記培養液200mlと、オートクレーブ殺菌担体20mlの混合液
【0044】
(担持担体の性能確認)
P1培地のフェノール濃度を0.01%とした培養液を調製し、300ml三角フラスコ6個に100mlずつ加えた。先にA〜F液中で調製し、濾取した担持担体各20mlを投入し、37℃下で2日間振盪培養した。
生分解進行の観測は、各試料を超音波洗浄器にて良く分散したものを孔径0.45μmのミクロフィルターでろ過した液について液体クロマトグラフィーによりフェノール量を定量することによって行った。
【0045】
<結果>
試験結果は、フェノール残存率(%)を生分解効果の尺度として表2に示す。
【0046】
【表2】
【0047】
表2に示されるように、殺菌処理を行わなかった比較試料A及びBに対して紫外線殺菌又は加熱・高圧殺菌した本発明の試料C〜Fはいずれも顕著なフェノール分解効果を示した。また、本発明の中では、微生物を 担持・固定化する際に栄養源を供給した試料DとFは、供給しなかった試料C及びEに対して更に効果が大きいことを示した。
【0048】
【発明の効果】
微生物担持担体を殺菌処理したのち、該担体に微生物を固定化する本発明の方法によって製造した微生物固定化担体は、殺菌処理を施さないで固定化を行った担体に比較して顕著な汚染物質処理能力を有することが、鉄・EDTA錯体の分解除去及びフェノールの分解除去の例で示された。この作用は、本発明の殺菌処理を伴う担体製造方法による限り、明細書本文中に記載したように、被処理物質が他のEDTA錯体化合物、フェノール類及び界面活性剤の場合についても認められ、各種の廃棄物処理に適用できると考えられる。また、 担持・固定化の過程において栄養物を供給するとこの効果は一層顕著になる。
本発明の微生物担持担体製造方法は、簡易であり、かつ機械的強度が高く磨耗耐性に優れた材料を選択して製造することができる。
Claims (5)
- 微生物担持担体を殺菌処理したのち、該担体に微生物を固定化することを特徴とする微生物固定化担体の製造方法。
- 微生物担持担体が非膨潤性固体からなり、該担持担体に微生物を固定化する際に、該担体の媒質中に微生物の増殖用の栄養源を存在させることを特徴とする請求項1に記載の微生物固定化担体の製造方法。
- 微生物がEDTA分解能を有する微生物、フェノール類分解能を有する微生物及び界面活性剤分解能を有する微生物の少なくとも一つであることを特徴とする請求項1又は2に記載の微生物固定化担体の製造方法。
- 殺菌処理が高圧殺菌、加熱殺菌及び紫外線殺菌から選択される殺菌処理又はそれらの組み合わせ処理であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の微生物固定化担体の製造方法。
- 微生物の固定化が物理的吸着法によって行なわれることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の微生物固定化担体の製造方法。
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2003
- 2003-02-06 JP JP2003029878A patent/JP2004236596A/ja active Pending
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