JP2004236562A - スピニングリールのロータ - Google Patents
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Abstract
【解決手段】スピニングリールのロータ3は、ロータ本体30と、釣り糸案内部31とを備えている。ロータ本体30は、リール本体に回転自在に装着される支持部32と、支持部の後端部外周面の対向する位置からそれぞれ前方に延びる第1及び第2ロータアーム33,34とを有している。釣り糸案内部は、第1ロータアームの先端にのみ装着された1又は複数の部材からなり、釣り糸をスプールに案内する。この第1ロータアームの釣り糸案内部の揺動軸芯を通る第1直線L1と第2ロータアームの幅方向の中心を通りかつ第1直線と実質的に平行な第2直線L2とがロータ本体の回転軸芯Xを挟んで逆側に配置されるように、第1及び第2ロータアームが形成されている。
【選択図】 図6
Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、ロータ、特に、釣り竿に装着されるリール本体に前後移動自在に装着されたスプールに釣り糸を巻き付けるスピニングリールのロータに関する。
【0002】
【従来の技術】
スピニングリールのロータとして、一方のロータアームにのみ釣り糸案内部を有する、いわゆるベールレス型のロータが知られている(たとえば、特許文献1及び非特許文献1参照。)。従来のベールレス型のスピニングリールのロータは、リール本体に回転自在に装着されたロータ本体と、ロータ本体に糸巻取姿勢と糸開放姿勢とに揺動自在に装着された釣り糸案内部とを有している。
【0003】
ロータ本体は、リール本体に回転自在に装着された支持部と、支持部の後端部外周から前方に延びる第1及び第2ロータアームとを有している。両ロータアームは、特許文献1の左側面図から明らかなように、ロータの回転軸芯を挟んで実質的に対称な位置に配置されている。
釣り糸案内部は、第1ロータアームの糸開放姿勢(特許文献1の状態)と糸巻取姿勢(非特許文献1の状態)とに揺動自在に装着された支持部材と、固定軸と、ラインローラと、固定軸カバーとを備えている。支持部材は、特許文献1の左側面図から明らかなように、揺動軸芯がロータの回転軸芯を通るように構成されている。支持部材の先端は揺動軸芯より外方に配置されている。したがって、支持部材を含む釣り糸案内部は、第1ロータアームに対して大きく偏倚して配置されている。固定軸は、支持部材の先端に基端が装着されたものである。ラインローラは、固定軸に回転自在に装着され釣り糸を案内可能なものである。固定軸カバーは、先端に分けて先細りに形成されており、固定軸の軸芯と同方向に延びている。
【0004】
このような構成のベールレス型のロータを有するスピニングリールでは、キャスティング時には、釣り糸案内部を糸開放姿勢に揺動させ、キャスティング後に釣り糸案内部を釣り竿を持つ手と逆の手の指でつまんで糸巻取姿勢側に戻した後、釣り糸をつまんでラインローラに引っ掛ける。これにより、ロータを糸巻取方向に回転させると釣り糸をスプールに巻き付けることができる。
【0005】
【特許文献1】
意匠登録第568528号公報
【0006】
【非特許文献1】
ダイワ精工株式会社発行、1982年度ダイワ総合カタログ(P.20−21)
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
前記従来の構成では、第1及び第2ロータアームがロータの回転軸芯を挟んで実質的に対称の位置に配置されているので、これだけであれば回転バランスが保たれる。しかし、釣り糸案内部が第1ロータアームの先端から大きく外方に偏倚しているため、ロータを糸巻取方向に回転させたとき、ロータの回転バランスが悪くなり、ロータがスムーズに回転しにくい。
【0008】
本発明の課題は、一方のロータアームにのみ釣り糸案内部が設けられたスピニングリールのロータにおいて、回転バランスを高く維持できるようにすることにある。
【0009】
【課題を解決するための手段】
発明1に係るスピニングリールのロータは、釣り竿に装着されるリール本体に前後移動自在に装着されたスプールに釣り糸を巻き付けるスピニングリールのロータであって、ロータ本体と、釣り糸案内部とを備えている。ロータ本体は、リール本体に回転自在に装着される支持部と、支持部の後端部外周面の対向する位置から支持部と間隔を隔ててそれぞれ前方に延びる第1及び第2ロータアームとを有している。釣り糸案内部は、第1ロータアームにのみ糸巻き取り姿勢と糸開放姿勢とに揺動自在に装着された1又は複数の部材からなり、釣り糸をスプールに案内する。この第1ロータアームの釣り糸案内部の揺動軸芯を通る第1直線と第2ロータアームの幅方向の中心を通りかつ第1直線と実質的に平行な第2直線とがロータ本体の回転軸芯を挟んで逆側に配置されるように、第1及び第2ロータアームが形成されている。
【0010】
このスピニングリールのロータでは、第1ロータアームの釣り糸案内部の揺動軸芯を通る第1直線と第2ロータアームの幅方向の中心を通りかつ前記第1直線と実質的に平行な第2直線とがロータ本体の回転軸芯を挟んで逆側に配置されている。ここでは、第1ロータアームに装着された釣り糸案内部の揺動軸芯がロータの回転軸芯に対して偏芯して配置されるので、釣り糸案内部を回転軸芯に対して偏芯して配置でき、回転軸芯と同芯に配置されたスプールの糸巻き部分に釣り糸を案内しやすい位置に釣り糸案内部を配置できる。また、第2ロータアームが第1ロータアームと逆側に偏芯して配置されているので、釣り糸案内部や第1ロータアームを偏芯した位置に配置しても回転バランスをとりやすくなる。
【0011】
発明2に係るスピニングリールのロータは、両直線は、回転軸芯から実質的に同じ距離離れて配置されている。この場合には、釣り糸案内部が偏倚することによる回転バランスの崩れをさらに精度良く補正できるとともに、外観が向上する。
発明3に係るスピニングリールのロータは、発明1又は2に記載のロータにおいて、第2ロータアームは、第1ロータアームより前方へ延びる長さが長い。この場合には、釣り糸案内部を含む第1ロータアーム側の重心位置に第2ロータアームの重心位置を近づけることができ、回転バランスをさらに補正できる。
【0012】
発明4に係るスピニングリールのロータは、発明1から3のいずれかに記載のロータにおいて、第2ロータアームに収納され、第1ロータアーム及び釣り糸案内部との回転バランスを補正するための第1重り部材をさらに備える。この場合には、釣り糸案内部を含む第1ロータアーム側の重量より軽くなりやすい第2ロータアームに第1重り部材が設けられているので、回転バランスをさらに補正することができる。
【0013】
発明5に係るスピニングリールのロータは、発明4に記載のロータにおいて、第1重り部材は、第2ロータアームの先端に収納されている。この場合には、第1重り部材が第2ロータアームの先端側に配置されているので、釣り糸案内部が第1ロータアームの先端に装着されているために重心が先端側にある第1ロータアーム側の重心に第2ロータアームの重心位置を近づけることができ、回転バランスをさらに補正することができる。
【0014】
発明6に係るスピニングリールのロータは、発明1から5のいずれかに記載のロータにおいて、支持部材の先端に装着された筒状の糸噛み防止部材と、糸噛み防止部材の回転軸芯を挟んで逆側の内周面に配置された第2重り部材とをさらに備える。この場合には、糸噛み防止部材によりスプール軸への釣り糸を巻き込みを防止できるとともに、糸噛み防止部材の先端内周面に装着された第2重り部材により釣り糸案内部の装着により崩れやすい回転バランスをさらに補正できる。
【0015】
発明7に係るスピニングリールのロータは、発明1から6のいずれかに記載のロータにおいて、釣り糸案内部を構成する部材は、第1ロータアームの先端に揺動自在に装着された支持部材と、支持部材の先端に基端が装着された固定軸と、固定軸に回転自在に装着され前記釣り糸を案内可能なラインローラと、ラインローラに釣り糸を案内する釣り糸案内面を有し、固定軸の先端に設けられた固定軸カバーと、固定軸カバーの先端から前記スプールに向けて延びる釣り糸係止部とを有する。この場合には、釣り糸案内部に設けられたラインローラにより釣り糸をスプールにスムーズに案内できる。
【0016】
発明8に係るスピニングリールのロータは、発明7に記載のロータにおいて、固定軸カバーは、頂点が固定軸の先端より後方に向けて偏芯した略円錐形状である。この場合には、固定軸カバーが円錐形状でかつ頂点が後方に偏芯しているので、固定軸カバーに案内された釣り糸をラインローラにスムーズに移動できる。
【0017】
【発明の実施の形態】
図1から図3において、本発明の一実施形態によるスピニングリールは、ハンドル1を有し、釣り竿に装着されるリール本体2と、リール本体2の前部に回転自在に装着されたロータ3と、ロータ3の前部に配置された前後移動するスプール4とを主に備えている。また、スピニングリールは、ハンドル1の回転に連動してロータ3を回転駆動するロータ駆動機構5と、ロータ3の回転に連動してスプール4を前後移動させるオシレーティング機構6とを備えている。
【0018】
リール本体2は、内部にロータ駆動機構5とオシレーティング機構6とを収納している。リール本体2は、図1から図4に示すように、両側が開口する筐体部10と、筐体部10の両側をそれぞれ塞ぐ第1及び第2蓋部11,12と、筐体部10に一体形成された竿取付部13と、筐体部10及び両蓋部11,12を後方から覆うカバー部材14とを有している。
【0019】
筐体部10は、たとえば表面に陽極酸化被膜が形成されたマグネシウム合金製の軽量かつ比強度を維持可能な部材であり、ロータ駆動機構5やオシレーティング機構6を収納支持するための収納空間10aを形成し得る両面が開口した枠状の部材である。筐体部10は、奥行き(図3紙面直交方向)がほぼ同じ寸法で形成されたものである。筐体部10の前面には、逆転防止機構のワンウェイクラッチ(後述)やピニオンギア(後述)などが装着される円板状の機構支持部10bが形成されている。後部には、逆転防止機構の切換操作部(後述)が支持される操作支持部10cが形成されている。また、機構支持部10bの後方には、ピニオンギア及び切換操作部を支持するための中間支持部10dが上部から下方に向けて延びている。
【0020】
第1蓋部11は、比強度及び耐食性を高く維持可能なアルミニウム合金製の部材であり、筐体部10の一面を覆うように形成されている。第1蓋部11は、図2に示すように、マスターギア7に近接して配置されている。第1蓋部11は、図1及び図4から明らかなように、筐体部10の一面側の開口のうち、ハンドル1の回転により回転するマスターギア7を覆う第1カバー部11aと、第1カバー部11aから後方(図1に破線で示した部分より後方)の開口が露出する第2切欠き部11bとを有している。このような第2切欠き部11bを設けたのは、第1蓋部11とカバー部材14との重複部分を可及的に少なくして軽量化を図るためである。
【0021】
また、第1蓋部11には、図2及び図4に示すように、マスターギア7が設けられたマスターギア軸8の一端をマスターギア7の背面側で支持する第1ボス部11cが壁面の略中央部分に外方に突出して形成されている。また、第1蓋部11の前部には、ロータ3の内部に入り込む円板部を構成する略半円形の第1フランジ部11dが形成されている。第1フランジ部11dの前部には、機構支持部10bの後面に配置され機構支持部10bの外周面と略面一に構成される略半円弧状の第1機構収納カバー11eが形成されている。第1蓋部11にはマスターギア7が近接して配置されているため、マスターギア軸8に大きな負荷が作用したとき、第1ボス部11cには大きな力が作用しやすい。そこで、第1蓋部11は比強度を高く維持するために金属製にしてある。第1蓋部11の前下部には、カバー部材14を装着するとともに、洗浄時の水抜きやグリースの充填などのメンテナンスを行うための第1ねじ孔11fが形成されている。
【0022】
第2蓋部12は、第1蓋部11と略対称な鏡像関係の形状であり、第2カバー部12a、第2切欠き部12b、第2ボス部12c、第1フランジ部11dと略鏡像関係の形状の第2フランジ部12d、及び機構収納カバー12eが形成されている。また第2ねじ孔12f(図2)も第1ねじ孔11fと対向する位置に形成されている。第1及び第2フランジ部11d,12dは、筐体部10の機構支持部10b後面の外周面とで円形を構成するように形成されている。この円形部分がロータ3の後面に僅かな隙間ではまり込むように構成されている。第2蓋部12はマスターギア7から比較的遠くに配置されているため、第2ボス部12cには大きな力は作用しにくい。したがって、軽量化を図るために、たとえばナイロン66などの合成樹脂製としている。第2ボス部12cは、マスターギア軸8の他端を支持するために第2蓋部12の壁面の第1ボス部11cと対向する略中央部分に外方に突出して形成されている。
【0023】
なお、両蓋部11,12はたとえば丸頭ビスのような固定ねじ19により、筐体部10に固定されている。この蓋部11,12の固定方法は、種々の変形例が考えられ、たとえば、筐体部10を貫通させて一方の蓋部から他方の蓋部にねじ込むように固定してもよい。
竿取付部13は、筐体部10から上方に延びるT字形状の部材であり、先端に形成された前後に延びるリール脚13aが釣り竿にリールシート(図示せず)に装着可能である。なお、竿取付部13は軽量化及び肉厚の均一化を図るために上面及び前面に肉盗み部13b,13cがそれぞれ形成されている。
【0024】
カバー部材14は、第1及び第2蓋部11,12を装着した状態の筐体部10を後方から側部及び底部を覆うように湾曲して形成されている。カバー部材14は、第1及び第2蓋部11,12の後端部に形成された第1及び第2切欠き部11b,12bを塞ぐととも、リール本体2の後端角部を含む側面及び後面の傷付きを防止するために設けられている。カバー部材14は、ABS樹脂等の比較的硬質の合成樹脂製であり、表面に金属めっきを施している。カバー部材14は、前端側部の第1及び第2ねじ孔11e,12eに対向する位置に段付きのねじ装着孔14a,14bが形成されている。このねじ装着孔14a,14bに第1及び第2ねじ孔11f,12fにねじ込まれるねじ部材14cが装着されカバー部材14を両蓋部11,12に固定するとともにメンテナンス時にあけることができるようになっている。カバー部材14は後端下面で筐体部10の下面にねじ込まれる。ねじ部材14dによっても固定されている。
【0025】
このような構成のリール本体2では、第1蓋部11が軽量でかつ比強度が高いアルミニウム合金製であるので、マスターギア7が近接して配置され比較的大きな力が作用しやすい第1蓋部11の比強度を高く維持して軽量化を図ることができる。またマスターギア7から遠くあまり大きな力が作用しにくい第2蓋部12は合成樹脂を採用したので軽量化を図ることができる。さらに、筐体部10がマグネシウム合金製であるので、リール本体2全体として、比強度を維持して軽量化を図ることができる。
【0026】
ロータ駆動機構5は、ハンドル1のハンドル軸1aがねじ込み固定されるマスターギア軸8と、マスターギア軸8に一体形成されたマスターギア7と、マスターギア7と噛み合うピニオンギア9とを備えている。
マスターギア軸8は、リール本体2の両蓋部11,12に形成された第1及び第2ボス部11c,12cに装着された軸受15a,15bによりリール本体2に回転自在に装着されている。マスターギア軸8の両端内周部には、雌ねじ部8a,8bがそれぞれ形成されている。雌ねじ部8a,8bは、ハンドル1を糸巻取方向に回転したときねじが締まる方向のねじである。したがって、図2左側の雌ねじ部8aは左ねじであり、右側の雌ねじ部8bは右ねじである。なお、ハンドル1は、図1及び図3に示す左位置と図2に示す右位置とのマスターギア軸8の両端の何れにも装着可能である。しかし、雌ねじ部8a,8bのねじ方向が異なるため、ハンドル軸1aを左右に取り付ける場合、それぞれ専用のものが用意されている。なお、図2には左ハンドル用のハンドル軸1aが図示されている。
【0027】
ピニオンギア9は、中空筒状の部材であり、前部がロータ3を貫通してロータ3を回転不能に装着している。ピニオンギア9の内周部には、スプール軸16が貫通して配置されている。ピニオンギア9の前部にはナット17が装着されており、ナット17によりロータ3がピニオンギア9に固定されている。ピニオンギア9は、その軸方向の中間部と後端部とがそれぞれ軸受18a,18bによりリール本体2の筐体部10に回転自在に支持されている。軸受18aは、機構支持部10bに装着され、軸受18bは、中間支持部10dに装着されている。ピニオンギア9の後端側に形成されたギア部9bには、環状の切欠き部9cが形成されている。この環状の切欠き部9cは、後述する減速機構20をコンパクトに配置するために設けられている。
【0028】
オシレーティング機構6は、図2及び図3に示すようにピニオンギア9に噛み合う減速機構20と、減速機構20に連動して回転する螺軸21と、螺軸21に係合して前後に往復移動するスライダ22と、スライダ22をスプール軸16方向に案内する2本のガイド軸23a,23bを有している。
減速機構20は、図5に示すように、ピニオンギア9に噛み合う大径ギア25a及び小径ギア25bを有する段付きギア部25と、小径ギア25bに噛み合う第1中間ギア26a及び第1中間ギア26aと間隔を隔てて配置された第2中間ギア26bとを有する中間軸26と、螺軸21に回転不能に装着され第2中間ギア26bに噛み合う従動ギア27とを備えている。
【0029】
段付きギア部25は、ピニオンギア9と平行な軸回りに回転する。大径ギア25aは、ピニオンギア9に噛み合うねじギアである。小径ギア25b、第1中間ギア26a、第2中間ギア26b及び従動ギア27は、ともにねじギアであり、中間軸26は、段付きギア部25と食い違う軸回りに回転し、従動ギア27が装着された螺軸21は、中間軸26と食い違いかつピニオンギア9と平行な軸回りに回転する。中間軸26の第2中間ギア26bは、ピニオンギア9の切欠き部9cの下方に配置されている。これにより、切欠き部を形成しない場合に比べて螺軸21をピニオンギア9に近接して配置させることができ、リール全体のコンパクト化を図ることができる。このような構成の減速機構20では、ピニオンギア9の回転が大きく減速されて螺軸21に伝達される。
【0030】
螺軸21は、表面に交差する螺旋状の溝21aが形成された部材であり、スプール軸16と平行に配置されている。螺軸21は、筐体部10の前後端にたとえば合成樹脂製の軸受を介して回転自在に装着されている。螺軸21は、筐体部10の後方から装着され、筐体部10の後面にねじ止め固定された固定板54により抜け止めされている。
【0031】
スライダ22は、内部に螺軸21の溝21aに係合する係合部材22aが装着されている。スライダ22は、スプール軸16の後端部に回転不能かつ移動不能に連結されている。スライダ22は、係合部材22aの先端が溝21aに係合することにより、螺軸21の回転に応じてスプール軸方向に往復移動し、スプール軸16をハンドル1の回転に連動して往復移動させる。
【0032】
ガイド軸23a,23bはスライダ22を貫通しており、スライダ22をスプール軸16に沿って案内する。ガイド軸23aは、筐体部10の後端と中間支持部10dとに両端が固定されている。ガイド軸23aは、筐体部10の後方から装着されており、螺軸21を抜け止めする固定板54により後端が抜け止めされている。ガイド軸23bは、筐体部10の前後端に両端が固定されている。ガイド軸23bは筐体部10の前方から装着されている。ガイド軸23bの前部には、第1蓋部11の前部を固定する固定ねじ19が接触可能であり、この固定ねじ19により抜け止めされている。
【0033】
ロータ3は、釣り糸案内部が一方のロータアームにのみ装着された、いわゆるベールレスタイプのものである。
ロータ3は、図3及び図6から図8に示すように、ピニオンギア9を介してリール本体2に回転自在に装着されたロータ本体30と、ロータ本体30に揺動自在に装着された釣り糸案内部31とを有している。
【0034】
ロータ本体30は、たとえば表面に陽極酸化被膜が形成されたマグネシウム合金製であり、筒状の支持部32と、支持部32の後端部外周面の対向する位置から支持部32と間隔を隔ててそれぞれ前方に延びる第1及び第2ロータアーム33,34とを有している。
支持部32は、後端から前方に向けてテーパ状に縮径した後に円筒状に形成された概ね筒状の部材である。支持部32の前部には、前壁32aが形成されており、前壁32aの中央部にはピニオンギア9の前部が貫通するボス部32bが形成されている。ボス部32bは、ピニオンギア9の前部に回転不能に装着されている。前壁32aの前部でピニオンギア9の前部にはナット17がねじ込まれており、このナット17によりロータ3がピニオンギア9に固定されている。また、支持部32の前部には、スプール軸16への釣り糸の巻き付きを防止するための筒状の糸噛み防止部材35が装着されている。
【0035】
第1ロータアーム33の先端には、釣り糸案内部31が糸巻取姿勢と糸開放姿勢とに揺動自在に装着されている。第1ロータアーム33の内部には、釣り糸案内部31の揺動に連動して動作する連動機構40が装着されている。第1ロータアーム33の径方向外周側は第1カバー部材36により覆われている。
第2ロータアーム34は、第1ロータアーム33と同様に前方に延びており、径方向外周側は、第2カバー部材37により覆われている。第2ロータアーム34は、ロータ3の回転バランスをとるために設けられたものである。このため、第2ロータアーム34は、釣り糸案内部31が装着された第1ロータアーム33の重心位置に近づけるために重心位置を前方側に偏倚させている。重心位置を前方側に偏倚させるために、第2ロータアーム34には基端側に開口部34aが形成されているとともに、先端側に重り部材38を装着するための重り収納部34bが形成されている。重り部材38は、たとえばタングステン合金製である。また、第2ロータアーム34は、重心を前方に偏倚させるために、図7及び図8から明らかなように、前方に延びる長さが第1ロータアーム33より長くなっている。
【0036】
ここで、図6に示すように、第1ロータアーム33の釣り糸案内部31の揺動軸芯を通る第1直線L1と第2ロータアーム34の幅方向の中心を通りかつ第1直線L1と実質的に平行な第2直線L2とがロータ本体30の回転軸芯Xを挟んで逆側に略同じ距離だけ離れて配置されるように、両ロータアーム33,34は形成されている。このように両ロータアーム33,34を配置すると、釣り糸案内部31が回転軸芯Xに対して外側に大きく偏倚(図6では第1直線L1に対して外側に偏倚)して配置されていても、回転バランスをさらに良好に維持することができる。
【0037】
糸噛み防止部材35は、支持部32の円筒部分と面一に形成された円筒状の噛み込み防止部35aと、噛み込み防止部35aの後端部に中心に向けて対向して設けられた1対の舌状の装着部35bとを有している。噛み込み防止部35aの先端は他の部分より大径に形成されており、これにより、スプール4内部に侵入した釣り糸がロータ3内に入らないようにしている。また、噛み込み防止部35aの先端内周面には、回転バランス補正用の重り部材39を収納するための重り収納部35cが形成されている。重り部材39も、たとえばタングステン合金製である。なお、重り収納部35cは、図3では、開示の便宜のため第2ロータアーム34に近接した位置に形成されているが、実際には、図6に示すように後述釣り糸案内部31が揺動する方向で両ロータアーム33,34の中間位置に配置されている。このように重り収納部35cを配置することにより、釣り糸案内部31が第1直線L1より回転軸芯Xからさらに離れる方向に偏倚して配置されていても、釣り糸案内部31に対して回転軸芯Xと逆側に配置された重り部材39により回転バランスを補正することができる。
【0038】
糸噛み防止部材35は、装着部35bの前面から装着された2本のねじ部材29,29により前壁32aに固定されている。なお、前壁32aの前面は糸噛み防止部材35を装着した状態で、装着部35bを含めて環状の平坦面となっている。装着部35bを含めた平坦面を前壁32aの前面に形成するために、前壁32aには、舌状の装着部35bが入り込む凹部32cが形成されている。これにより、スプール4側から異物が入り込んで付着しても、スプール4を外せば異物をふき取りなどして除去しやすい構造となっている。
【0039】
釣り糸案内部31は、釣り竿からスプール4に釣り糸をスムーズに案内してスプール4に釣り糸を巻き付けるために設けられている。このため、図6に示すように、釣り糸案内部31は、スプール4の糸巻き胴部4a(後述)の外周面に釣り糸を案内しやすいようにロータの回転軸芯Xから外方(図6左方)に大きく偏倚して配置されている。釣り糸案内部31は、図6〜図9に示すように、第1ロータアーム33の先端に装着された支持部材41と、支持部材41の先端に基端が固定された固定軸42と、固定軸42に回転自在に装着され釣り糸を案内可能なラインローラ43と、固定軸42の先端に設けられた固定軸カバー44と、固定軸カバー44の先端に設けられ釣り糸を係止する釣り糸係止部45とを有している。
【0040】
支持部材41は、先端に糸巻取姿勢と糸開放姿勢とに揺動自在に装着されている。固定軸42は、支持部材41の先端に基端が回転不能に係止され、取付ボルト42aにより支持部材41に固定される。固定軸42は、図6に示すように、支持部材41の揺動面F(図1)に対して先端がスプール4に向かって傾斜している、スプール4に向けて先端が僅かに傾斜している。固定軸42の外周には、ラインローラ43が1対の軸受46を介して回転自在に装着されている。ラインローラ43は、外周面に釣り糸を案内する環状の案内溝47が形成されており、糸ヨレが生じにくいようになっている。また、ラインローラ43の外周面の両端は、支持部材41及び固定軸カバー44により覆われている。
【0041】
固定軸カバー44は、固定軸42と一体形成された、たとえばステンレス合金製の部材である。固定軸カバー44は固定軸42の先端側に設けられ、頂点44bが固定軸42の先端42aより後方(図9下方)に向けて偏芯し、かつリール本体2側(図9下側)に釣り糸案内面46cが設けられた略円錐形状の部材である。固定軸カバー44の後面側の稜線近傍の図7にハッチングで示す領域がラインローラ43に釣り糸を案内する釣り糸案内面44cとなっている。固定軸カバー44は、ロータ3を前方から見て、図6に示すように、固定軸42と同芯に先端がスプール4に向かって傾斜して延びている。釣り糸案内部31が糸巻取姿勢にあるとき、釣り糸案内面46cは固定軸42の先端側から釣り糸係止部45側に向けて徐々にリール本体2との距離が短くなるように設けられている。固定軸カバー44の前面には、他の部分より凹んだつまみ凹部44aが形成されている。このようなつまみ凹部44aを設けると釣り糸案内部31を糸巻取姿勢から糸開放姿勢に戻す際に便利である。釣り糸係止部45は、頂点44bの手前側で稜線と滑らかにと滑らかに連続して頂点44bから突出し先端が他の部分より太く形成されている。釣り糸係止部45の先端は球状に丸められている。
【0042】
このような構成の釣り糸案内部31は、釣り糸係止部45の先端が他の部分より太いので一度釣り糸が釣り糸係止部45に係止されると外れにくくなる。また、釣り糸係止部45及び固定軸カバー44の頂点44bが後方に傾いているので、釣り糸係止部45に係止された釣り糸が釣り糸案内面46cによりラインローラ43の案内溝47に確実に案内される。
【0043】
ロータ3は、図3に示すように、逆転防止機構50により糸繰り出し方向の回転を禁止・解除可能である。逆転防止機構50は、筐体部10の機構支持部10bに装着されたローラ型のワンウェイクラッチ51を有している。ワンウェイクラッチ51は、逆転禁止状態と逆転可能状態とに切換可能である。逆転防止機構50は、ワンウェイクラッチ51を逆転禁止状態と逆転可能状態とに切り換える切換操作部52をさらに有している。切換操作部52は、筐体部10の操作支持部10c及び中間支持部10dに揺動自在に支持されている。
【0044】
スプール4は、スプール軸16に対して複数の回転位相で装着可能であり、仕掛けの垂らし長さを変更可能になっている。スプール4は、図3に示すように、浅溝形のものであり、外周に釣り糸が巻き付けられる糸巻き胴部4aと、糸巻き胴部4aの後端部に糸巻き胴部4aより大径に形成された筒状のスカート部4bと、糸巻き胴部4aの先端部に糸巻き胴部4aより僅かに大径に形成された前フランジ部4cとを備えている。
【0045】
糸巻き胴部4aは、スプール軸16に対して回転不能であり、ロータ3の支持部32及び糸噛み防止部材35の外周側に配置されている。糸巻き胴部4aは、先端側内周に一体形成された前壁部4dと、前壁部4dの内周側に後方に突出して一体形成されたボス部4eとを有している。前壁部4dには、軽量化を図るために多数の透孔4gが形成されている。
【0046】
スカート部4bには、図1に示すように、軽量化を図るために内径が異なる多数の透孔4fが形成されている。前フランジ部4cには、糸巻き胴部4aの外周面から僅かに前方に拡径するテーパ状の外周面を有している。これによりキャスティング時に釣り糸に作用する放出抵抗が大きく減少する。
次にスピニングリールの動作について説明する。
【0047】
なお、動作の説明では右手でキャスティングする場合を説明する。キャスティングの際には、釣り糸案内部31を糸巻取姿勢にして釣り糸を釣り糸案内部31に引っ掛けた状態にして仕掛けの垂らし長さを調整する。
まずハンドル1を糸巻取方向に回してスプール4をストロークの最先端近くに配置した状態で釣り糸案内部31が所定の回転位相となるようにする。具体的には、釣り糸案内部31の操作のしやすさや釣り糸のつまみやすさを考慮し、たとえば、右手でキャスティングするときには釣り糸案内部31を釣り竿側から見てスプール4の左側に配置すると釣り糸案内部31を左手で操作しやすい。
【0048】
この状態で左手(釣り竿を持つ手の逆の手)の指先で釣り糸案内部31の固定軸カバー44をつまんで釣り糸案内部31を糸開放姿勢に揺動させる。このとき、固定軸カバー44につまみ凹部44aが形成されているので、固定軸カバー44をつまみやすくなり、釣り糸案内部31をつまんで簡単に揺動させることができる。そして、スプール4に巻き付けられた釣り糸を、左手でつまんで釣り竿を右手の人差し指で引っ掛けてキャスティングする。
【0049】
キャスティングが終わると、左手で釣り糸案内部31を糸開放姿勢から糸巻取姿勢に戻し、左手で釣り糸をつまんで釣り糸案内部31の釣り糸係止部45に係止する。釣り糸係止部45に係止された釣り糸は、固定軸カバー44の釣り糸案内面44cを通ってラインローラ43の案内溝47に案内される。この状態でハンドル1を糸巻取方向に僅かに回転させて釣り糸にわずかにテンションをかけて置き竿する。
【0050】
この釣り糸を引っ掛けるときに、釣り糸係止部45の先端を他の部分より太くしたので、釣り糸係止部45に係止された釣り糸が太い先端から外れにくくなり、他の部材により釣り糸の外れ防止を行う必要がなくなる。このため、釣り糸を釣り糸係止部45に引っ掛けやすくなるとともに簡素な構成で釣り糸の脱落を防止できる。また、固定軸カバー44を頂点44bが後方に向けて偏芯した略円錐形状に形成したので、釣り糸案内面44cの先端側を稜線に連続する基端側よりリール本体2側に近づけやすくなり、釣り糸案内面44cに案内された釣り糸はラインローラ43に案内される。このため、釣り糸係止部45に釣り糸を引っ掛けるだけで釣り糸案内面44cを経て釣り糸をラインローラ43に案内しやすくなるとともに案内された釣り糸が案内面44bから脱落しにくくなる。したがって、釣り糸を引っ掛けやすくかつ簡素な構成でラインローラからの釣り糸の脱落を防止できるようになる。
【0051】
仕掛けに獲物がかかってハンドル1を回すとロータ3が糸巻取方向に回転するとともにスプール4が前後移動する。同時に、ハンドル1の回転はマスターギア軸8を介してマスターギア7に伝達され、ピニオンギア9を介してロータ3が回転する。また、ピニオンギア9から減速機構20を介してオシレーティング機構6が動作してスプール4が前後移動する。
【0052】
このとき、第1及び第2ロータアーム33,34が回転軸芯Xを挟んで逆側に配置されているので、釣り糸案内部31が回転軸芯Xに対して外側に偏倚して配置されていても、回転バランスをさらに良好に維持することができる。しかも、第2ロータアーム34や糸噛み防止部材35にもバランス補正用の重り部材38,39が装着されているので、回転バランスがさらに正確に補正されている。
【0053】
〔他の実施形態〕
(a)前記実施形態では、第1ロータアームと第2ロータアームとを回転軸芯に対して実質的に同じ距離離れて配置しているが、それぞれの重心位置や質量に応じて回転軸芯からの距離を変更することができる。
(b)前記実施形態では、釣り糸案内部の固定軸と固定軸カバーとを一体形成したが、別体にしてもよい。
【0054】
(c)前記実施形態では、釣り糸係止部を固定軸カバーと一体形成したが、両者を別体で形成してもよい。
【0055】
【発明の効果】
本発明によれば、第1ロータアームに装着された釣り糸案内部の揺動軸芯がロータの回転軸芯に対して偏芯して配置されるので、釣り糸案内部を回転軸芯に対して偏芯して配置でき、回転軸芯と同芯に配置されたスプールの糸巻き部分に釣り糸を案内しやすい位置に釣り糸案内部を配置できる。また、第2ロータアームが第1ロータアームと逆側に偏芯して配置されているので、釣り糸案内部や第1ロータアームを偏芯した位置に配置しても回転バランスをとりやすくなる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施形態を採用したスピニングリールの側面図。
【図2】そのスピニングリールの背面断面図。
【図3】そのスピニングリールの側面断面図。
【図4】リール本体の分解斜視図。
【図5】減速機構の斜視図。
【図6】ロータの正面図。
【図7】ロータの右側面図。
【図8】ロータの左側面図。
【図9】固定軸カバーの断面図。
【符号の説明】
2 リール本体
3 ロータ
4 スプール
30 ロータ本体
31 釣り糸案内部
32 支持部
33 第1ロータアーム
34 第2ロータアーム
38,39 重り部材
41 支持部材
42 固定軸
43 ラインローラ
44 固定軸カバー
44b 頂点
Claims (8)
- 釣り竿に装着されるリール本体に前後移動自在に装着されたスプールに釣り糸を巻き付けるスピニングリールのロータであって、
前記リール本体に回転自在に装着される支持部と、前記支持部の後端部外周面の対向する位置から前記支持部と間隔を隔ててそれぞれ前方に延びる第1及び第2ロータアームとを有するロータ本体と、
前記第1ロータアームにのみ糸巻き取り姿勢と糸開放姿勢とに揺動自在に装着された1又は複数の部材からなり、釣り糸を前記スプールに案内する釣り糸案内部とを備え、
前記第1ロータアームの前記釣り糸案内部の揺動軸芯を通る第1直線と前記第2ロータアームの幅方向の中心を通りかつ前記第1直線と実質的に平行な第2直線とが前記ロータ本体の回転軸芯を挟んで逆側に配置されるように、前記第1及び第2ロータアームが形成されている、スピニングリールのロータ - 前記両直線は、前記回転軸芯から実質的に同じ距離離れて配置されている、請求項1に記載のスピニングリールのロータ。
- 前記第2ロータアームは、前記第1ロータアームより前記前方へ延びる長さが長い、請求項1又は2に記載のスピニングリールのロータ。
- 前記第2ロータアームに収納され、前記第1ロータアーム及び前記釣り糸案内部との回転バランスを補正するための第1重り部材をさらに備える、請求項1から3のいずれかに記載のスピニングリールのロータ。
- 前記第1重り部材は、前記第2ロータアームの先端に収納されている、請求項4に記載のスピニングリールのロータ。
- 前記支持部材の先端に装着された筒状の糸噛み防止部材と、
前記糸噛み防止部材の前記回転軸芯を挟んで逆側の内周面に配置された第2重り部材とをさらに備える、請求項1から5のいずれかに記載のスピニングリールのロータ。 - 前記釣り糸案内部を構成する部材は、
前記第1ロータアームの先端に揺動自在に装着された支持部材と、
前記支持部材の先端に基端が装着された固定軸と、
前記固定軸に回転自在に装着され前記釣り糸を案内可能なラインローラと、
前記ラインローラに釣り糸を案内する釣り糸案内面を有し、前記固定軸の先端に設けられた固定軸カバーと、
固定軸カバーの先端から前記スプールに向けて延びる釣り糸係止部と、
を有する、請求項1から6のいずれかに記載のスピニングリールのロータ。 - 前記固定軸カバーは、頂点が前記固定軸の先端より後方に向けて偏芯した略円錐形状である、請求項7に記載のスピニングリールのロータ。
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