JP2004232139A - 成形体の製造方法及びその成形体 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】タイルカーペット、ポリアミド系樹脂を含むカーペットの回収品及び製造時に発生する端材、廃材を粉砕して粉砕物とし、芯鞘型合成繊維(イ)及び/又は低融点合成繊維(ロ)を混合して配合物を得、更に好ましくは、該配合物に水を混合後、高周波誘電加熱又はマイクロ波加熱により加熱、加圧成形して吸音性能に優れた建築、土木用の基材等の成形体を得る。
【選択図】 なし
Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、カーペット類のリサイクルに関するものである。より詳しくは、タイルカーペットの粉砕物、及び/又は、ポリアミド系樹脂又はポリアミド共重合体樹脂を樹脂裏打ち層又は表面パイル層に含むカーペットの粉砕物と、特定の合成繊維との混合物を高周波誘電加熱又はマイクロ波加熱により加熱し、加圧成形した成形体の製造方法及びその成形体に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来よりカーペット製造時には裁断端材が発生し、また、使用済みカーペット類、特にタイルカーペットは殆ど建築廃材としてリサイクルされることなく廃棄処分されていた。ところが、近年、地球環境の保護と資源の有効活用の観点から、廃タイルカーペットの残材及び端材、リニューアルに伴う廃材の処理が課題となっている。現在、タイルカ−ペットの樹脂裏打ち層の9割以上が塩化ビニール系樹脂に依存しており、適正処理及びリサイクル方法の開発が望まれている。
【0003】
カーペットの端材又は廃材を粉砕後、成形体としてリサイクルする方法としては、各種方法が提案されている。例えば、特許文献1は、カーペットの端材又は廃材を粉砕して粉砕物とし、その後に、容器のキャビティに粉砕物をセットし、加熱加圧成形して成形品とするカーペット廃材熱プレス成形品及びその製造方法、また、特許文献2は、カーペット廃材の粉砕物の集合体をシートで包囲した状態で加熱加圧成形する熱プレス成形品の提案である。特許文献3は、熱溶融性低融点樹脂にその融点では溶融しない高融点繊維で構成される繊維樹脂混合物に、更に、カーペット裁断屑を含む繊維樹脂混合物を熱溶融性低融点樹脂の溶融温度以上、高融点繊維の熱分解温度以下の温度で加熱したプラスチック成形品である。また、特許文献4では、使用済みカーペットにバインダー樹脂を混合して成形する防音材の製造方法が公知である。
【0004】
このタイルカーペットの端材又は廃材を粉砕して成形体としてリサイクルするについては、特許文献2に示されるごとく、加熱板に挟んで加熱、加圧成形(以下、プレス成形と称することがある)するためプレス成形装置を使用することが一般的であるが、成形に要する時間を短くして効率よく成形することが望まれていた。実際に、加熱板に挟んで加熱、加圧するプレス成形装置でプレス成形した場合、成形体表面に存在する樹脂成分の溶融が進み、成形体内部は、成形体表面からの伝熱により加熱溶融することとなるため、成形体内部に対して表面の溶融が進み易く、均一になり難い、また、成形体内部まで溶融するためには成形時間がかかり、効率が上がらないという問題が有った。
【0005】
更に、加熱板に挟んでプレス成形する成形方法では、厚みの厚い成形品の成形が困難であった。そこで、厚みの厚い物を成形する場合は、一端、プレス成形品を成形した後に、成形品を複数枚積層し、再度、加熱加圧プレスする方法を取らざるを得なかった。又、比重の軽いふかふかした繊維複合物や繊維含有量の多い配合物のプレス成形を行う場合においては、伝熱効率が低く、プレス成形が困難であるという問題があった。
【0006】
すなわち、加熱板に挟んでプレス成形する方法によるプレス成形方法では、厚みが1cm程度に制限され、それ以上の厚みの物は前述のごとく何枚かの成形板を積層してプレス成形する方法を取らざるを得ないが、この方法では手間がかかると共に、積層した成形板の境界面の接着が不十分であるという問題があった。
【0007】
そのため、成形体表面から内部まで均一に溶融した成形体を効率良く製造するためには、伝熱効率を高めるためにプレス成形装置の熱容量を大きくする、或いは、被処理物を直接加熱する方法等の改善が必要であった。
【0008】
ところで、特許文献1には、加熱加圧容器に熱風を吹き込んで被処理物を直接加熱する方法が開示されているが、熱風吹き込み装置を設置した箇所は、他の部位より加熱されて樹脂成分が溶融しやすいことは、前述の加熱板に挟んでプレス成形する方法と同様であり、例えば、面積の大きいボードを成形する場合、それに伴う加熱加圧装置がより大型化する、或いは、加熱、加圧装置である容器中への粉砕物の充填及び容器からの成形品を取り出しに、手間がかかって効率が劣るという問題があった。
【0009】
一方、特許文献3は、高融点繊維と、低融点樹脂又は低融点繊維からなる混合物を押出し成形する、或いは、カーペット裁断屑を反毛機又は粉砕機で処理した物を含む高融点繊維と、低融点樹脂又は低融点繊維からなる混合物を加圧することなく加熱成形して該混合物中の低融点樹脂を融着し、成形品としてリサイクルする方法である。
【0010】
また、特許文献4は、使用済みカーペットの破砕物にポリウレタン樹脂、EVA樹脂等合成樹脂エマルジョン、SBR等合成ゴムエマルジョン、あるいは、フェノール樹脂等熱硬化性樹脂等のバインダー樹脂を混合し、バインダー樹脂によりカーペット破砕物を融着して成形品とし、防音材を製造するものである。
【0011】
タイルカーペット及び/又はポリアミド系カーペットの端材等の廃材を主成分としたプレス成形体の用途としては、例えば、建材、土木用の基材、吸音材、断熱材等が考えられるが、施工時の取扱上から強度のある成形体とすることが必要であった。また、その中でも吸音材用途については、吸音性能を発現するためには、成形体の表面は、カーペットの樹脂裏打ち層及び低融点繊維を含む繊維成分の溶融樹脂で覆われない状態、いわゆる、成形体表面に表面スキン層が形成されず、音の反射が少ない構造とするためである。そのためには、カーペットの樹脂裏打ち層成分及び表面パイル層成分と低融点繊維からなる繊維成分を、成形体表面と成形体内部でほぼ均一に溶融した成形体とする必要があった。
【0012】
【特許文献1】
特開平9−109164号公報
【0013】
【特許文献2】
特開平8‐142073号公報
【0014】
【特許文献3】
特開平10−286886号公報
【0015】
【特許文献4】
特開平07−124971号公報
【0016】
【発明が解決しようとする課題】
そこで、本発明は、市場経年したカーペット廃材、特に、タイルカーペット及びポリアミド系カーペット類の廃材、又は製造工程で発生する端材などの廃材等を、埋立て処理することなくマテリアルリサイクルするための効率的な成形体の製造方法及び該製造方法によって得られる曲げ強度を有する吸音材、建設、土木用基材、断熱材等として有効なリサイクル成形体を提供することにある。
【0017】
【課題を解決するための手段】
本発明は、次の項を内容とする。
(1)タイルカーペットの粉砕物、及び/又は、ポリアミド系樹脂又はポリアミド共重合体樹脂を含むカーペットの粉砕物60重量%以上95重量%以下と、鞘部が200℃以下の融点を持つ芯鞘構造を有する合成繊維(イ)、及び/又は、200℃以下で溶融する合成繊維(ロ)40重量%以上5重量%以下とを混合した配合物を、誘電加熱により加熱し、加圧成形することを特徴とする成形体の製造方法。
(2)前記誘電加熱が、高周波誘電加熱又はマイクロ波加熱である(1)記載の成形体の製造方法。
(3) 前記芯鞘構造を有する合成繊維(イ)の鞘部が、200℃以下の融点を持つポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂又はポリエチレン系樹脂で構成された(1)又は(2)の成形体の製造方法。
【0018】
(4)前記芯鞘構造を有する合成繊維(イ)が、芯部と鞘部の融点差が20℃以上であり、芯部がポリエステル系樹脂又はポリプロピレン系樹脂で構成された繊維である(1)〜(3)の何れか1記載の成形体の製造方法。
(5)前記200℃以下で溶融する合成繊維(ロ)が低融点ポリエステル系共重合体繊維、低融点ポリアミド共重合体繊維、ポリエチレン系繊維から選択される1種以上の合成繊維である(1)〜(4)の何れか1記載の成形体の製造方法。
【0019】
(6)タイルカーペットの粉砕物、及び/又は、前記ポリアミド系樹脂又はポリアミド共重合体樹脂を含むカーペットの粉砕物と、前記合成繊維(イ)、及び/又は、前記合成繊維(ロ)の混合物100重量部に対して、0.5重量部以上30重量部以下の水等の誘電加熱により発熱する添加物を添加してなる配合物を、誘電加熱により加熱し、加圧成形する(1)〜(5)の何れか1記載の成形体の製造方法。
(7)タイルカーペットの粉砕物、又は、前記ポリアミド系樹脂又はポリアミド共重合体樹脂を含むカーペットの樹脂裏打ち層が塩化ビニル系樹脂である(1)〜(6)の何れか1記載の成形体の製造方法。
【0020】
(8)タイルカーペットの粉砕物、又は、前記ポリアミド系樹脂又はポリアミド共重合体樹脂を含むカーペットの粉砕物の粒径が、3mm以上30mm以下である(1)〜(7)の何れか1記載の成形体の製造方法。
(9)タイルカーペットの粉砕物、及び/又は、前記ポリアミド系樹脂又はポリアミド共重合体樹脂を含むカーペットの粉砕物60重量%以上95重量%以下と、鞘部が200℃以下の融点を持つ芯鞘構造を有する合成繊維(イ)、及び/又は、200℃以下で溶融する合成繊維(ロ)を5重量%以上40重量%以下とを混合した配合物を、高周波誘電加熱又はマイクロ波加熱により、加熱し、加圧成形する(1)〜(8)の何れか1記載の製造方法によって得られた成形体。
【0021】
【発明の実施の形態】
本発明で使用するタイルカーペットは、図1に示すように表面パイル層1と樹脂裏打ち層2とから構成されており、JIS L4406で規定されるものである。
【0022】
この表面パイル層1を構成する繊維素材としては、ナイロンフィラメント、ポリプロピレンフィラメント、ウール、アクリル、ポリエステルフィラメントが使用されているが、その内、ナイロンフィラメント及びポリプロピレンフィラメントが大半を占めている。
【0023】
本発明では、表面パイル層1を構成する繊維素材としては、上記した繊維素材の中でもナイロンフィラメント、ポリプロピレンフィラメント、ポリエステルフィラメントで構成された物が好ましい。表面パイル層1の割合は、例えば、該繊維成分がナイロンフィラメントの場合、タイルカーペット全体の5〜30重量%の範囲で、通常、約15重量%を占める物が多い。
【0024】
樹脂裏打ち層2を構成する素材としては、塩化ビニール系樹脂、ビチューメン、ポリウレタン樹脂、ポリオレフィン系樹脂等が挙げられるが、日本で製造されるタイルカーペットの樹脂裏打ち層2は、塩化ビニール系樹脂を用いたものが9割以上を占めるが、本発明においても、この塩化ビニル系樹脂等の熱可塑性樹脂にて裏打ちされたタイルカーペットが良好に使用できる。
【0025】
タイルカーペットの製品形状は、例えば、50cm×50cm、厚み約6mmで、表面パイル層1と樹脂裏打ち層2の厚みがほぼ同じ程度のものが通常用いられている。
【0026】
更に、本発明のもう1つの被処理対象物であるカーペットとして、ポリアミド系樹脂又はポリアミド共重合体を含むカーペット(ポリアミド系カーペットと呼ぶことがある。)を用いる。これは、表面パイル層1又は樹脂裏打ち層2に、ポリアミド系樹脂又はポリアミド共重合体を含むカーペットをいう。これは、家庭、自動車、オフィス等の床材として使用されるものである。
【0027】
表面パイル層1がポリアミド系樹脂又はポリアミド共重合体の繊維で構成される場合は、樹脂裏打ち層2を構成する素材として、塩化ビニル系樹脂、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン系樹脂、熱可塑性エラストマー、エチレン−酢酸ビニル共重合体等が使用されている。また、カーペットの樹脂裏打ち層2に、ポリアミド系樹脂又はポリアミド共重合体を含むものであっても良い。
【0028】
尚、本発明ではタイルカーペットと、ポリアミド系樹脂又はポリアミド共重合体樹脂を含むカーペット(ポリアミド系カーペット)とを合わせて単にカーペットと称することがある。また、それらカーペットの製造時に生じる裁断端材屑やリニューアル時に廃棄される使用済み回収品である廃材等を粉砕したものを単にカーペットの粉砕物と称することがある。
【0029】
タイルカーペット及びポリアミド系カーペットの廃材又は端材を粉砕物とした後に、後で詳しく述べる鞘部が200℃以下の融点を持ち後述する合成繊維等からなる芯とで形成される芯鞘構造を有し、鞘部が200℃以下の融点を持つ芯鞘構造を有する合成繊維(この合成繊維を単に合成繊維(イ)と称すことがある。)、及び/又は、200℃以下で溶融する合成繊維(この合成繊維を単に合成繊維(ロ)と称すことがある。)を混合した後に、高周波誘電加熱又はマイクロ波加熱により加熱し、加圧成形(プレス成形)して成形体とするものである。
【0030】
高周波誘電加熱又はマイクロ波加熱による誘電加熱で、タイルカーペットの粉砕物と前記合成繊維(イ)、及び/又は合成繊維(ロ)の混合物を加熱する場合、タイルカーペットの表面パイル層1がナイロンフィラメントで構成されている物は、誘電加熱による内部発熱効果が高いため好ましい。また、前記ポリアミド系カーペットの粉砕物についても、ポリアミド系樹脂又はポリアミド共重合体樹脂を含むので、高周波誘電加熱又はマイクロ波加熱により、タイルカーペットの場合と同様に内部加熱が生じやすいため、該粉砕物を鞘部5が200℃以下の融点を持つ芯鞘構造を有する合成繊維(イ)、及び/又は合成繊維(ロ)と混合して高周波誘電加熱又はマイクロ波加熱による誘電加熱で加熱し、加圧成形して成形体とすると速やかに成形できるため好ましい。その際、タイルカーペット又はポリアミド系カーペットの表面パイル層を形成する繊維成分は、分離除去することなく使用することが好ましい。
【0031】
本発明では、高周波誘電加熱又はマイクロ波加熱による誘電加熱を行なうと共にプレス成形を行う。高周波誘電加熱により加熱を行なう場合には、加熱工程と加圧するプレス成形工程を同時に行うか、または、2段階に分けて加熱工程の後に加圧工程を設けて行うこともできる。マイクロ波加熱を行う場合は、通常、金属オーブンが加熱部となるため、加熱工程の後に加圧工程を設けて行う成形方法が取られることとなる。更に、カーペット粉砕物と合成繊維(イ)及び/又は合成繊維(ロ)と混合した配合物に高周波を照射して加熱すると同時に、高周波を照射するための電極板を加熱できる構造とし、該配合物を加熱した電極板で挟んで加熱、加圧プレスする成形方法も成形効率を向上できるため好ましい。加熱、加圧プレスした成形板は、次いで、冷却プレス又は冷却板に接触させる等の冷却装置により冷却後、製品として回収される。
【0032】
本発明で用いる鞘部5が200℃以下の融点を持つ芯鞘構造を有する合成繊維(イ)は、図2に示すように、繊維本体となる芯部4の周囲に被覆材が被覆され、鞘部5を形成する2層構造の繊維である。芯部4の素材としては、有機繊維や無機繊維で形成することも可能であるが、ポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂(ナイロン系樹脂)、アクリロニトリル系樹脂、ポリプロピレン系樹脂等の合成繊維により形成されるものが好ましい。芯部4がポリプロピレン繊維で鞘部5が低融点ポリエチレンである複合繊維(ES繊維)及び芯部4がポリエステル繊維で鞘部5が共重合ポリエステル樹脂で構成されたものは、繊度、繊維長、融点が異なる幾種もの物が市販されている。このため、タイルカーペットの粉砕物、及び/又は前記ポリアミド系カーペットの粉砕物と、合成繊維(イ)を混合して成形体を製造する際に、該合成繊維(イ)の繊度、繊維長、融点の選択幅が広いため、後述するように、成形体の外観性、均一性が良好な成形体を容易に得ることができるため好ましい。更に、より低融点で鞘部5が溶融する合成繊維(イ)、及び/又は合成繊維(ロ)を使用することによって、より温和な成形加工条件を選択しても成形体の表面から内部をほぼ均一に溶融することができ、成形体の強度を向上することができるのでより好ましい。
【0033】
例えば、鞘部5を形成する被覆材として、芯部4の素材より20℃以上低い融点、好ましくは30℃以上150℃以下低い融点を持ち、かつ、200℃以下の融点、好ましくは70℃以上170℃以下の融点を持つ材料で形成されるもの、例えば、ポリエステル系共重合体、ポリアミド共重合体、ポリエチレン系樹脂により構成されるものが挙げられる。これら合成繊維(イ)の芯部4と鞘部5の重量比率が、30:70〜60:40のものは接着性が高いので好ましい。
【0034】
また、200℃以下で溶融する合成繊維(ロ)としては、低融点ポリエステル系共重合体繊維、低融点ポリアミド共重合体繊維、ポリエチレン系繊維が汎用的に用いることでき、成形性が良好となるため好ましい。タイルカーペットの粉砕物及び/又は前記ポリアミド系カーペットの粉砕物に対し、合成繊維(イ)、及び/又は合成繊維(ロ)の配合量は、5重量%以上40重量%以下の範囲であると、タイルカーペットの粉砕物及び/又はポリアミド系カーペットの粉砕物との混合状態が良くなり、成形体の均一性が向上するため好ましい。
【0035】
この範囲の配合量であれば、合成繊維(イ)、及び/又は合成繊維(ロ)同士の過剰な融着が抑制され、コスト的にも有利な成形体を得ることができる。更に、表面パイル層1と合成繊維(イ)、及び/又は合成繊維(ロ)、樹脂裏打ち層2と合成繊維(イ)、及び/又は合成繊維(ロ)の融着性を向上する点から、5〜30重量%を配合することが好ましい。
【0036】
更に、成形体内部において、繊維成分が空隙を形成し易くなるように、5〜25重量%を配合することがより好ましい。前記合成繊維(イ)、及び/又は合成繊維(ロ)のタイルカーペットの粉砕物及び/又はポリアミド系カーペットの粉砕物への配合量が40重量%を超えると、タイルカーペットの粉砕物及び/又はポリアミド系カーペットの粉砕物と前記合成繊維(イ)及び/又は合成繊維(ロ)の混合物全体に占める繊維成分の含有量が50重量%以上と成るため、成形体の強度の低下をもたらすことになる。5重量%未満では、前記合成繊維(イ)及び/又は合成繊維(ロ)を配合しても、成形体内部でのタイルカーペットの樹脂成分の融着が進み易く、空隙が形成され難くなるため、成形体の吸音特性が低下してしまう。
【0037】
本発明で使用するポリエステル系樹脂としてはテレフタル酸、イソフタル酸、ナフタレン−2、6−ジカルボン酸、フタル酸、α,β−(4−カルボキシフェノキシ)エタン、4,4’−ジカルボキシジフェニル、5−ナトリウムスルホイソフタル酸等の芳香族ジカルボン酸;アゼライン酸、アジピン酸、セバシン酸等の脂肪族ジカルボン酸とエチレングリコール、ジエチレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、シクロヘキサン−1,4−ジメタノール、ポリエチレングリコール、ポリテトラメチレングリコール等のジオールからなる繊維形成性のポリエステルを挙げることができ、構成単位の80モル%以上がエチレンテレフタレート単位であることが好ましい。
【0038】
また、ポリアミド系樹脂としてはナイロン6、ナイロン66、ナイロン12を主成分とする脂肪族ポリアミド、半芳香族ポリアミドを挙げることができ、ポリアミド共重合体樹脂とは、該ポリアミド系樹脂に少量の第3成分を含有するものである。
【0039】
次に、成形体の表面構造及び空隙の形成状態について説明する。タイルカーペットの粉砕物及びポリアミド系カーペットの粉砕物は、それぞれ、カーペットの表面パイル層を形成する繊維成分がカーペットの樹脂裏打ち層2に植設された状態のものを多く含んでいる。
【0040】
そこで、粉砕物に、前記合成繊維(イ)及び/又は合成繊維(ロ)を配合し、該混合物を加熱すると、カーペット粉砕物の樹脂裏打ち層2同士が融着する部分とカーペット粉砕物の樹脂裏打ち層2と、合成繊維(イ)及び/又は合成繊維(ロ)が融着する部分と、合成繊維(イ)及び/又は合成繊維(ロ)自体が融着する部分に加え、合成繊維(イ)及び/又は合成繊維(ロ)が樹脂裏打ち層2に植設された繊維成分と絡まり合い、空気を巻き込んだ状態で熱溶融し、繊維成分と融着する部分が形成される。この内、合成繊維(イ)及び/又は合成繊維(ロ)と樹脂裏打ち層2に植設された表面パイル層1が絡まり合い空気を巻き込んで融着する部分と、合成繊維(イ)及び/又は合成繊維(ロ)自体が空気を巻き込んで熱溶融する部分が、空隙と呼ぶ部分を形成することになる。
【0041】
一方、合成繊維(イ)及び/又は合成繊維(ロ)の代わりに粉体やペレットから成るバインダー樹脂を使用した場合には、前記合成繊維(イ)及び/又は合成繊維(ロ)と表面パイル層1とが絡まりあって熱融着する部分が無くなり、空隙を形成する部分に粉体やペレットから成るバインダー樹脂が充填され、堅固な構造となってしまう。そのため、粉体やペレットから成るバインダー樹脂を使用するよりも合成繊維(イ)及び/又は合成繊維(ロ)からなる繊維状の低融点繊維を配合することが好ましい。
【0042】
すなわち、カーペットの表面パイル層1を形成する繊維成分と合成繊維(イ)及び/又は合成繊維(ロ)が空気を抱き込んで融着した部分がカーペットの樹脂裏打ち層2同士の融着層の間に点在する成形体とすることで、成形体表面及び内部に空隙を設けることとなるため、吸音性能が良好となり好ましい。また、成形体表面に、カーペットの樹脂裏打ち層を点在させ、その間を繊維成分が空隙を形成して充填される構造と成る成形体とすることで、成形体表面での音の反射を低減することができる。更に、合成繊維(イ)及び/又は合成繊維(ロ)として、より低融点の繊維を使用した場合、より低温で該混合物の融着が生じるため、密度の軽い成形体も容易に作ることが可能と成り、成形時間を大幅に短縮することができる。
【0043】
ところで、高周波又はマイクロ波を該混合物に照射して加熱した場合、樹脂裏打ち層に可塑剤を含むものや構成繊維がナイロン繊維等のポリアミド系樹脂である場合は、混合物内部においても加熱が速やかに行われるため、例えば、厚み3cm程度の厚みの厚い成形体もより均一な状態で成形できる。その点で、タイルカーペットは、表面パイル層1がナイロン繊維等のポリアミド系樹脂で構成され、更に、樹脂裏打ち層2が可塑剤を含む塩化ビニル系樹脂で構成されるものが多いため、高周波又はマイクロ波を該混合物に照射して加熱する加熱、加圧プレス方法で成形すると成形効率が高く好ましい。
【0044】
合成繊維(イ)及び合成繊維(ロ)の溶融温度が200℃以上である場合は、カーペットの樹脂裏打ち層の溶融温度以上の温度となる場合が多く、その結果、合成繊維(イ)及び/又は合成繊維(ロ)がカーペットの粉砕物を融着する効果が小さくなり、樹脂裏打ち層成分が強固に熱融着した成形体と成ってしまう。
【0045】
また、カーペットの樹脂裏打ち層が塩化ビニル系樹脂で構成されている場合は、200℃以上に加熱して前記合成繊維を溶融させると、塩化ビニル系樹脂の熱分解が開始するため塩化水素ガスが発生する等の問題が生じる。従って、前記合成繊維(イ)の鞘部及び前記合成繊維(ロ)の溶融温度は、塩化ビニル系樹脂の溶融温度以下である物が好ましく、更に、溶融温度が70℃以上170℃以下であると、成形加工性、得られた成形体の吸音性能が良好と成るため好ましい。
【0046】
前記合成繊維(イ)及び合成繊維(ロ)の繊維長は、3mm以上60mm以下が好ましく、単繊維繊度は1.5dtex以上7.8dtex以下であるものが好ましい。この範囲の繊維長と繊度を有する低融点で融着する合成繊維(イ)及び/又は合成繊維(ロ)を使用すると、得られる成形体の吸音性能がさらに良好となる。繊維長が3mm未満では、繊維の融着による成形体内部での空隙形成能が少なくなり、また、60mm以上では繊維とタイルカーペット粉砕物の混合物が斑に成り易く、その結果、不均一な成形体と成り易い。
【0047】
一方、タイルカーペットの粉砕物及びポリアミド系カーペットの粉砕物は、汎用の粉砕機、例えば、一軸剪断式粉砕機、ロータリーカッター、ハンマミル等の粉砕機を使用すると、容易に粉砕物を得ることができる。また、カーペットの粉砕物の粒径は、3mm以上30mm以下が好ましい。この大きさの粉砕物とすれば、前記合成繊維(イ)及び/又は合成繊維(ロ)との混合が容易となり均一化し易い。更に、4mm以上10mm以下に粉砕すると、成形体の表面性が良好と成り、カーペットの粉砕物が点在した表面状態となり易く好ましい。また、タイルカーペットの粉砕物及びポリアミド系カーペットの粉砕物の粒径は、前記粉砕機に、所定の開口径を有するパンチングメタルを設置して粉砕することにより、所望の粒径の粉砕物を得ることができる。
【0048】
カーペットの粉砕物と合成繊維(イ)及び/又は合成繊維(ロ)の混合は、後述する混合機を使用して混合すると、容易に均一な混合物を得ることができる。通常、カーペットの粉砕物は色が付いており、合成繊維(イ)及び/又は合成繊維(ロ)は白色であるため、配合物の色が均一に成るまで混合して取出せば良い。また、カーペットの粉砕物と合成繊維(イ)及び/又は合成繊維(ロ)を混合する場合、合成繊維(イ)及び/又は合成繊維(ロ)の綿を、例えば、開繊機等で解して混合すると、より均一な配合物とし易いため好ましい。
【0049】
ところで、本発明は、高周波誘電加熱又はマイクロ波加熱による誘電加熱での加熱方法により加熱加圧プレスすることを特徴とするものである。誘電加熱を用いることにより、加熱時間が短縮される。その結果、加熱装置への材料の装填、加熱加圧プレス、冷却、成形体取出しからなる成形サイクルが大幅に短縮できる。更に、誘電加熱装置を使用して加熱すると、成形体内部での発熱により加熱されるため、成形体表面と成形体内部の均一性が高く、厚みの厚い成形体を得ることができる。
【0050】
誘電加熱により加熱する場合、高周波又はマイクロ波を照射した時に成形体内部で発熱を生じる添加剤を添加することが好ましい。これら添加剤としては、分子内に極性基を有する化合物が挙げられる。この添加剤を添加、又は、配合することにより、誘電体として作用し、成形体内部まで均一に加熱することができる。
【0051】
このような添加剤として、例えば、水、メチルアルコール、エチルアルコール、イソプロピルアルコール、エチレングリコール、グリセリン等の脂肪族アルコール、フェノール等の芳香族アルコール、酢酸エステル等の脂肪族エステル化合物、ジブチルフタレート、ジヘキシルフタレート、ジ−2−エチルヘキシルフタレート(DOP)、ジ−イソノリルフタレート、トリメリット酸エステル等の可塑剤として使用される芳香族エステル化合物、塩素を含む塩化ビニル系樹脂又は塩素化ポリオレフィン、分子内にアミド結合を有するナイロン6、ナイロン66及びそれらの共重合体、分子内にウレタン結合を有するポリウレタン化合物、分子内にニトリル基を有するポリアクリロニトリル及びポリアクリロニトリル共重合体、活性炭等のカーボンが挙げられる。中でも、加熱により有機性ガスが生成しない水、芳香族エステル化合物からなる可塑剤を含有する軟質塩化ビニル系樹脂、ポリアミド系樹脂を配合すると、内部加熱が速やかに生じるため好ましい。
【0052】
次に、高周波誘電加熱の加熱プロセス図3に示す。加熱電極6の間に誘電体である配合物7をはさみ、高周波発生回路8と負荷整合回路9により高周波電圧をかけると、配合物のいたるところで電気的な平衡状態がひずみ、電荷の分離が生じる。周波数が高くなるに従って、誘電体を構成する各分子は、回転・衝突・振動・摩擦などの激しい運動を起こし、このエネルギーが熱と成り誘電体に内部発熱が生じることとなる。高周波誘電加熱は、周波数1MHz〜300MHz(波長300m〜1m)の高周波エネルギーの電界作用によって、配合物に原子や分子レベルでの電位的な運動を起こさせることで物質内部から熱を発生させる加熱方式である。現実に使用する周波数としては、4MHz〜80MHzが好ましい。また、囲局部加熱が可能であり、電力半減深度が深いので、配合物が厚くても比較的均一な加熱が可能な点に特徴を有する。
【0053】
また、マイクロ波加熱も誘電加熱の一種であり、周波数300MHz〜300GHz(波長1m〜1mm)のマイクロ波を使用して、高周波誘電加熱と同様に物質内部から加熱する方式である。図4の加熱プロセスに示すように、マイクロ波はマグネトロン10からアイソレーター11で電波の逆行を防止するようにして発生させ、箱体の中に設置した誘電体である配合物13に導波管12を通じてマイクロ波を送り、照射するものである。損失係数の大きい誘電体にマイクロ波を照射すると、マイクロ波はエネルギーを失いながら物質内部を伝播していく。
【0054】
図3及び図4に示すように、このエネルギーは、高周波誘電加熱と同様に誘電体分子の双極子を振動・回転させ、これによって生じる摩擦エネルギーが内部発熱を引き起こすものである。通常使用されるマイクロ波の周波数は2450Hz若しくは915MHzであり、電子レンジ等の家庭用品において、今日では汎用的に使用されている加熱方法である。マイクロ波加熱は、電力半減深度が浅いため配合物が厚かったり損失係数が高い場合は均一加熱が難しい場合も有るが、形状が複雑であっても均一加熱が比較的容易な点に特徴を有する。
【0055】
タイルカーペット又はカーペットの樹脂裏打ち層2が可塑剤を含有する塩化ビニル系樹脂で構成されたものや表面パイル層1がナイロン繊維で構成されたものは、高周波又はマイクロ波を照射すると、内部発熱による加熱が行われ易いため、表面と内部で均一性が高い成形体となり好ましい。
【0056】
本発明に使用するカーペット樹脂裏打ち層を構成する塩化ビニル系樹脂とは、ポリ塩化ビニル樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、塩化ビニル−エチレン−酢酸ビニル共重合体等の塩化ビニル系共重合体を含むものである。
【0057】
また、可塑剤として、ジブチルフタレート、ジヘキシルフタレート、ジ−2−エチルヘキシルフタレート(DOP)、ジ−イソノリルフタレート、リン酸エステル系、塩素化パラフィン、トリメリット酸エステル、エポキシ化大豆油などを単独又は混合して含有するものであるが、中でもジ−2−エチルヘキシルフタレート(DOP)を含むものが最も多く使用されている。
【0058】
また、充填剤として、炭酸カルシウム、酸化カルシウム、炭酸バリュウム、硫酸バリュウム、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、クレー、タルク等の無機充填剤を単独又は混合して含有するが、重質炭酸カルシウムが汎用的に使用される。更に、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸Ca−Zn、ステアリン酸Ba−Zn、Pb系金属石鹸、有機錫系安定剤の安定剤、カーボンブラック、二酸化チタン等の顔料を含むものである。
【0059】
また、タイルカーペット粉砕物及び/又はポリアミド系カーペットの粉砕物と合成繊維(イ)及び/又は合成繊維(ロ)の混合物に水を添加する、或いは、水を噴霧して均一に混合した後に、高周波又はマイクロ波を照射すると、内部発熱による加熱がより速やかに生じるため好ましい。
【0060】
また、水を添加することにより、粉砕物と合成繊維(イ)及び/又は合成繊維(ロ)の混合時に、該粉砕物中に含まれる粉塵や埃の飛散を抑制することもできる。カーペット粉砕物と前記合成繊維(イ)及び/又は合成繊維(ロ)の混合物100重量部に対する水の添加量は、0.5重量部以上30重量部以下であれば、プレス成形時における加熱速度が速くなるため好ましい。更に、成形性の面から、1重量部以上15重量部以下が好ましい。水を30重量部以上添加すると、カーペットの粉砕物と前記合成繊維(イ)及び/又は合成繊維(ロ)を混合する時にベタベタに成り取り扱い難くなると共に、プレス成形時の加熱において、水蒸気の発生が必要以上に多量と成ってしまう。
【0061】
また、水を配合して誘電加熱を行うと、速やかに成形体内部での発熱が生じるとともに、水が水蒸気となって空隙を形成する発泡剤としても機能する。更に、誘電体として作用する可塑剤を含む塩化ビニル系樹脂やポリアミド系樹脂の内部発熱による過昇温を水の蒸発潜熱により防止する作用も期待できるため、成形体内部における局部的な過昇温やそれに伴う樹脂裏打ち層からなる成分の熱分解を防止することが可能となる。
【0062】
更に、水を含有する合成繊維(イ)及び/又は合成繊維(ロ)を使用すると、水を添加する工程を省くことができ、同時に、カーペット粉砕物と合成繊維(イ)及び/又は合成繊維(ロ)の混合物への水の分散性が向上するため、該混合物の混合状態も良好とすることができるため好ましい。カーペット粉砕物と合成繊維(イ)及び/又は合成繊維(ロ)の混合物を誘電加熱により加熱、加圧してプレス成形すると、加熱板に挟んで加熱、加圧してプレス成形する場合よりも、成形体内部に存在するカーペットの樹脂裏打ち層の融着が進むため、同じ密度と厚みを有する成形体で比較した場合、より強度の高い成形体を得ることができる。
【0063】
ところで、本発明の成形体を吸音材用途で使用する場合、成形体の密度は、0.5g/cm3以上1.2g/cm3以下が好ましく、厚みは設置場所のスペースの問題から薄い方が好ましい。カーペット粉砕物に前記合成繊維(イ)及び/又は合成繊維(ロ)を配合して成形体を成形することで、成形体の密度を調整することが容易となる。建築、土木用吸音材について、例えば、高速道路側壁用吸音板としては、50mm以下、好ましくは30mm以下の厚みの薄いものが望まれている。一方、吸音性能については、一般に、厚みが厚く、嵩高いものの方が吸音性能は良好であり、従来使用されているガラス繊維板や有機繊維で構成されるフェルトに対して、より厚みを薄くして良好な吸音特性を発現するように、成形体の表面性、均一性、比重を調整することが好ましい。
【0064】
カーペットの粉砕物と合成繊維(イ)及び/又は合成繊維(ロ)とを混合しての配合物の作成は、加圧ニーダー、リボンブレンダー、タンブラー、ヘンシェル型ミキサー等の高速ブレンダー等のミキサーを用いることにより、容易に行うことができる。例えば、加圧ニーダーを使用してカーペットの粉砕物と合成繊維(イ)及び/又は合成繊維(ロ)の混合を行う場合、剪断力をかけずに、カーペットの粉砕物を溶融させない条件で混合することにより、成形体内部の空隙を容易に確保することができ好ましい。この混合による配合物を木製の型枠にセットして高周波又はマイクロ波を照射し、加熱、加圧成形すると、吸音材用途に有効な成形体を効率良く得ることができる。
【0065】
【実施例】
以下に実施例により更に詳細に説明するが、この発明に係わる実施例に限定されるものではない。
(誘電加熱による配合物のプレス成形)
(実施例1)
表面パイル層がナイロン66で構成された使用済みタイルカーペットを8mmφのパンチングメタルを設置した三力製作所製一軸剪断式粉砕機FS−1にて粉砕し、8mm粉砕品を定量的に回収した。次に、該粉砕物80重量部と芯鞘型低融点繊維、テイジンテトロン(TBSバインダー繊維:4.4dtex、51mm)20重量部を加圧ニーダーに投入し、5分間攪拌して混合し、配合物を得た。該配合物を厚みが30mmに成るようにスペーサーを入れて金型に載せ、プレス板を150℃に設定した山本ビニター製200トン高周波誘電加熱プレス装置にて、3分間高周波を照射して加熱、8MPaの圧力で加圧後、1分間保圧し、プレス成形した。成形後、成形体を取出し、冷却金型に挟んで冷却した。
【0066】
(実施例2)
実施例1と同様にして、使用済みタイルカーペット8mm粉砕品80重量部と芯鞘型低融点繊維、テイジンファイバー製テピルス(1.7dtex、5mm、水分15%含有)23.5重量部を加圧ニーダーで5分間攪拌して混合し、配合物を得た。該配合物を厚みが30mmに成るようにスペーサーを入れて金型に載せ、プレス板を150℃に設定した山本ビニター製200トン高周波誘電加熱プレス装置にて、2.5分間高周波を照射して加熱、8MPaの圧力で加圧後、1分間保圧し、プレス成形した。成形後、成形体を取出し、冷却金型に挟んで冷却した。
【0067】
(実施例3)
実施例1と同様にして、使用済みタイルカーペット8mm粉砕品90重量部と芯鞘型低融点繊維、テイジンファイバー製テピルス(1.7dtex、5mm、水分15%含有)11.8重量部を加圧ニーダーで5分間攪拌して混合し、配合物を得た。該配合物を厚みが30mmに成るようにスペーサーを入れて金型に載せ、プレス板を150℃に設定した山本ビニター製200トン高周波誘電加熱プレス装置にて、2.5分間高周波を照射して加熱、8MPaの圧力で加圧後、1分間保圧し、プレス成形した。成形後、成形体を取出し、冷却金型に挟んで冷却した。
【0068】
(実施例4)
実施例1と同様にして、使用済みタイルカーペット8mm粉砕品80重量部と芯鞘型低融点繊維、テイジンファイバー製テピルス(1.7dtex、5mm、水分15%含有)23.5重量部を加圧ニーダーで5分間攪拌して混合し、配合物を得た。該配合物をシャープ製電子レンジ(Hi−Cooker RE−112、高周波出力500W)を使用して2450Hzのマイクロ波を3分間照射した。その後、該配合物を電子レンジから取出して金型に載せ、厚みが30mmに成るようにスペーサーを入れて、プレス板を150℃に設定した50トンプレス装置にて3分間加熱、プレス成形した。成形後、成形体を冷却プレスに挟んで冷却した。
【0069】
(比較例1)
実施例1と同様にして、使用済みタイルカーペット8mm粉砕品を調整し配合物を得た。金型の上に該配合物を載せ、厚さ30mmと成るようにスペーサーを挿み、プレス板を190℃に設定した50トンプレス装置にて4分間加熱、プレス成形したが、配合物はほとんど溶融しておらず、プレス装置から取出すと配合物はバラバラに崩れ、成形体とならなかった。
【0070】
(比較例2)
実施例1と同様にして、使用済みタイルカーペット8mm粉砕品80重量部と芯鞘型低融点繊維、テイジンテトロン(TBSバインダー繊維:4.4dtex、51mm)20重量部を加圧ニーダーで5分間攪拌して混合し、配合物を得た。該配合物を厚み30mmになるようにスペーサーを入れて金型に載せ、プレス板を190℃に設定した50トンプレス装置にて4分間加熱、プレス成形したが、芯鞘型低融点繊維の1部が融着したレベルであり、配合物はかなり脆く、プレス装置から取出すと端部からタイルカーペットの粉砕品がバラバラと崩れ落ち、物性測定用のサンプルを打ち抜けなかった。
【0071】
(比較例3)
実施例1と同様にして、使用済みタイルカーペット8mm粉砕品80重量部と芯鞘型低融点繊維、テイジンテトロン(TBSバインダー繊維:4.4dtex、51mm)20重量部を加圧ニーダーで5分間攪拌して混合し、配合物を得た。該配合物を厚み30mmになるようにスペーサーを入れて金型に載せ、プレス板を190℃に設定した50トンプレス装置にて25分間加熱、プレス成形した。加熱、加圧成形後、冷却プレスに挟んで冷却し、配合物を取出した結果、配合物表面の溶融がかなり進んだ成形体であった。
【0072】
得られた成形体を所定の大きさに打ち抜き、吸音性と曲げ物性を測定した。その結果を成形体の密度と厚みの結果と合わせて表1に示す。
【0073】
(吸音性)
吸音性の測定は、JIS A1405に示される垂直入射吸音率の測定で行い、規定の垂直入射測定器を使用して実施した。測定は、1000Hz、1600Hz、2000Hzの音域を測定した。
【0074】
(曲げ強度)
島津試験機製のオートグラフAG−2000Dを使用し、カゴ冶具3点曲げ試験法により曲げ物性を測定した。20mm×130mmの試験片を株式会社イイノ製油圧クリッカーで打ちぬき、n=3で測定した。ロードセル5000N、試験速度10mm/分、支点間距離100mmで試験を行い、強度5〜15Nの応力から弾性率を算出した。
【0075】
(厚みと密度)
株式会社イイノ製油圧クリッカーで、50mm×50mmの型枠を使用し、成形体をそれぞれ3枚打ち抜いた。各成形体の重量と各辺中央の4個所の厚みを求め、その平均値から厚みと密度を算出して厚みと密度とした。
【0076】
【表1】
【0077】
【発明の効果】
以上述べたように、本発明の成形体の製造方法によれば、タイルカーペット及び/又はポリアミド系樹脂を含むカーペットの廃材及び製造時に発生する端材を粉砕物とし、芯鞘型合成繊維(イ)及び/又は低融点繊維合成繊維(ロ)と混合して配合物を得、高周波又はマイクロ波を照射する誘電加熱による加熱、加圧成形することにより、加熱板に挟んで加熱するプレス成形方法に対して、成形時間を大幅に短縮でき、より低温での成形も可能となる。更に、高周波又はマイクロ波の照射により発熱する添加物、特に、水を添加して高周波誘電加熱又はマイクロ波加熱すると、成形体内部からの発熱が生じ、加熱が速やかになるとともに、成形体表面と内部での均一性が高い成形体とすることができる。また、本発明の誘電加熱でのプレス成形方法を用いて成形すると、特に、1000〜2000Hzの中音域での吸音性能に優れ、曲げ強度を有する成形体を得ることができる。本発明の成形体の製造方法によれば、従来、廃棄されていたカーペット廃材、特に、タイルカーペットの製造工程で発生する端材や廃材を再生して、例えば、建築、土木用の基材、吸音材、断熱材等として有効利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】図1は、本発明で用いるタイルカーペットの構成を示す概略拡大模式図。
【図2】図2は、本発明で用いる芯鞘型合成繊維の拡大した一部切欠斜示模式図である。
【図3】図3は、高周波誘電加熱装置のプロセスを模式的に示す概略説明図。
【図4】図4は、マイクロ波加熱装置のプロセスを模式的に示す概略説明図。
【符号の説明】
1 表面パイル層
2 樹脂裏打ち層
3 芯鞘型合成繊維(イ)
4 芯部
5 鞘部
6 加熱電極
7 配合物(誘電体)
8 高周波発生回路
9 負荷整合回路
10 マグネトロン(マイクロ波発生装置)
11 アイソレーター(電波の逆行を防止する。)
12 導波管(電波を送る管)
13 配合物(誘電体)
Claims (9)
- タイルカーペットの粉砕物、及び/又は、ポリアミド系樹脂又はポリアミド共重合体樹脂を含むカーペットの粉砕物60重量%以上95重量%以下と、鞘部が200℃以下の融点を持つ芯鞘構造を有する合成繊維(イ)、及び/又は、200℃以下で溶融する合成繊維(ロ)40重量%以上5重量%以下とを混合した配合物を、誘電加熱により加熱し、加圧成形することを特徴とする成形体の製造方法。
- 前記誘電加熱が、高周波誘電加熱又はマイクロ波加熱である請求項1記載の成形体の製造方法。
- 前記芯鞘構造を有する合成繊維(イ)の鞘部が、200℃以下の融点を持つポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂又はポリエチレン系樹脂で構成された請求項1又は請求項2記載の成形体の製造方法。
- 前記芯鞘構造を有する合成繊維(イ)が、芯部と鞘部の融点差が20℃以上であり、芯部がポリエステル系樹脂又はポリプロピレン系樹脂で構成された繊維である請求項1〜請求項3の何れか1項記載の成形体の製造方法。
- 前記200℃以下で溶融する合成繊維(ロ)が低融点ポリエステル系共重合体繊維、低融点ポリアミド共重合体繊維、ポリエチレン系繊維から選択される1種以上の合成繊維である請求項1〜請求項4の何れか1項記載の成形体の製造方法。
- タイルカーペットの粉砕物、及び/又は、前記ポリアミド系樹脂又はポリアミド共重合体樹脂を含むカーペットの粉砕物と、前記合成繊維(イ)、及び/又は、前記合成繊維(ロ)の混合物100重量部に対して、0.5重量部以上30重量部以下の水等の誘電加熱により発熱する添加物を添加してなる配合物を、誘電加熱により加熱し、加圧成形する請求項1〜請求項5の何れか1項記載の成形体の製造方法。
- タイルカーペットの粉砕物、又は、前記ポリアミド系樹脂又はポリアミド共重合体樹脂を含むカーペットの樹脂裏打ち層が塩化ビニル系樹脂である請求項1〜請求項6の何れか1項記載の成形体の製造方法。
- タイルカーペットの粉砕物、又は、前記ポリアミド系樹脂又はポリアミド共重合体樹脂を含むカーペットの粉砕物の粒径が、3mm以上30mm以下である請求項1〜請求項7の何れか1項記載の成形体の製造方法。
- タイルカーペットの粉砕物、及び/又は、前記ポリアミド系樹脂又はポリアミド共重合体樹脂を含むカーペットの粉砕物60重量%以上95重量%以下と、鞘部が200℃以下の融点を持つ芯鞘構造を有する合成繊維(イ)、及び/又は、200℃以下で溶融する合成繊維(ロ)を5重量%以上40重量%以下とを混合した配合物を、高周波誘電加熱又はマイクロ波加熱により、加熱し、加圧成形する請求項1〜請求項8の何れか1項記載の製造方法によって得られた成形体。
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