JP2004232017A - 金微粒子の粒径制御方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】簡便な液相法を用いて、オングストロームオーダーで金微粒子の粒径制御方法を提供する。
【解決手段】金イオン含有水溶液と相間移動剤の有機溶剤溶液とを混合して攪拌し、保護剤として一般式CnH2n + 1SH(4≦n≦20)で示される水に不溶なアルカンチオールの有機溶剤溶液を添加して攪拌し、さらに還元剤を添加して攪拌する金微粒子の粒径制御方法において、還元反応が完了するまでの間、還元反応速度を一定に保持することを特徴とする金微粒子の粒径制御方法である。
【選択図】 なし
【解決手段】金イオン含有水溶液と相間移動剤の有機溶剤溶液とを混合して攪拌し、保護剤として一般式CnH2n + 1SH(4≦n≦20)で示される水に不溶なアルカンチオールの有機溶剤溶液を添加して攪拌し、さらに還元剤を添加して攪拌する金微粒子の粒径制御方法において、還元反応が完了するまでの間、還元反応速度を一定に保持することを特徴とする金微粒子の粒径制御方法である。
【選択図】 なし
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、金微粒子の製造方法に係り、詳しくは金微粒子の粒径制御方法に関わる。
【0002】
【従来の技術】
数十ナノメートル以下の粒径を有する金の微粒子は、バルク金には見られない微粒子に特有の性質を活かして、化学的に安定な着色剤、カラーフィルター、導電性ペースト、触媒、透明導電膜等、その応用を拡大している。従来のリソグラフィー技術に基づいたLSIの高集積化の限界を打破する目的で研究が進められている単一電子デバイスにおいては、その一構成要素である量子ドットとして金微粒子の利用も検討されている。
【0003】
前記各種応用において、金微粒子の平均粒径及び粒径分布を制御することが重要な課題となっている。具体的には、着色剤の用途においては、金微粒子の平均粒径の違いが、得られる色相、明度、及び彩度に直接影響を与え、各種化学反応に幅広く用いられている担持型金微粒子触媒は、その触媒活性を有効に発現させるためには、金微粒子の粒径をより小さくすることが要求される。また透明導電膜の用途においては、不均一な粒径分布により膜特性が不均一になる問題がある。さらに単一電子デバイスの一要素としての用途においては、室温での動作を達成するためには、粒径2nm以下の金微粒子を他の構成要素とともに基板上に整列させる必要がある。しかもデバイスの高集積化のためには、金微粒子の粒径のばらつきを厳格に抑える必要がある。
【0004】
このような各種用途に用いられる金微粒子を製造する方法として、気相法と液相法がある。気相法には例えばガス中蒸発法、スパッタリング法等があり、ガス中蒸発法では、不活性ガスを導入した真空容器内で金を蒸発させ、有機溶剤で被覆した状態の金微粒子が得られる。高濃度の金微粒子分散液を製造可能である利点を有するが、金微粒子の粒径分布を制御することは困難である。また、特別な装置を必要とするコスト面の問題もある。
【0005】
一方液相法は、金イオン含有溶液に紫外光を照射あるいは還元剤を加えて金イオンを還元することによって金微粒子を得る方法である。特に還元剤を用いる方法は、特別な装置を必要とすることなく、容易に比較的粒径分布の狭い金微粒子を製造することが可能である。非特許文献1には、トルエン/水二相系を用いて、アルカンチオール存在下で塩化金酸イオンを水素化ホウ素ナトリウムで還元することによって、2.0〜2.5nmの最大粒径分布を有する1〜3nmの粒径の金微粒子を作製できることが報告されている。
【0006】
【非特許文献1】
M.Brust J.Chem.Soc.Chem.Commun.,1994,p801−802
【0007】
また、非特許文献2には、非特許文献1に開示された方法を用いて、塩化金酸イオン/アルカンチオールの比を変えることによって金微粒子の粒径を制御できる技術が開示されている。
【0008】
【非特許文献2】
Daniel V.Leff J.phys.Chem.,1995,99,p7036−7041
【0009】
さらに、非特許文献3には、非特許文献1に開示された方法を用いて作製された粒径2nm以下の金微粒子を加熱処理することで平均粒径を制御する方法が開示されている。
【0010】
【非特許文献3】
T.Teranishi Advanced Materials,2001,13,p1699−1701
【0011】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、前記各方法においては、ナノメートルオーダーでの粒径制御は可能でも、オングストロームオーダーでの粒径制御は不可能であるという問題があった。本発明はこのような問題点に注目し、簡便な液相法を用いて、オングストロームオーダーでの金微粒子の粒径制御方法を提供することを目的とするものである。
【0012】
【課題を解決するための手段】
すなわち本願請求項1記載の発明は、金イオン含有水溶液と相間移動剤の有機溶剤溶液とを混合して攪拌し、保護剤として一般式CnH2n + 1SH(4≦n≦20)で示される水に不溶なアルカンチオールの有機溶剤溶液を添加して攪拌し、さらに還元剤を添加して攪拌する金微粒子の粒径制御方法において、還元反応が完了するまでの間、還元反応速度を一定に保持することを特徴とする金微粒子の粒径制御方法である。
【0013】
請求項2記載の発明は、還元剤を滴下して添加する請求項1記載の金微粒子の粒径制御方法である。
【0014】
請求項3記載の発明は、金イオン含有水溶液が塩化金(III)酸水溶液である請求項1または2記載の金微粒子の粒径制御方法である。
【0015】
請求項4記載の発明は、相間移動剤が四級アミンである請求項1乃至3いずれかに記載の金微粒子の粒径制御方法である。
【0016】
請求項5記載の発明は、還元剤が水素化ホウ素金属塩の溶液である請求項1乃至4いずれかに記載の金微粒子の粒径制御方法である。
【0017】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の金微粒子の粒径制御方法について詳細に説明する。
金イオン含有水溶液は、金の塩を水に溶解することによって得られる。金の塩としては、塩化金(III)酸、塩化第一金、塩化第二金等が用いられ、中でも塩化金(III)酸が最も好ましい。濃度は、1mmol/l〜100mmol/lに調整される。
【0018】
得られた金イオン含有水溶液に、相間移動剤の有機溶剤溶液を添加する。相間移動剤としては一般に、炭素数が6以上の一級アミン、二級アミン、三級アミン、四級アミン、及びホスホニウム塩等が用いられ、中でも扱い易さの点で四級アミンが最も好ましい。四級アミンとしては、テトラアルキルアンモニウムブロマイド、テトラアルキルアンモニウムクロライド、テトラアルキルアンモニウムシトレイト等のアンモニウム塩が好ましく、炭素数は8から18が好ましい。具体的にはテトラオクチルアンモニウムブロマイド、テトラオクチルアンモニウムクロライド、テトラオクチルアンモニウムシトレイト等が用いられる。
【0019】
相間移動剤を溶解する有機溶剤としては、トルエン、ノルマルヘキサン、シクロヘキサン、ノルマルペンタン、ノルマルヘプタン、メチルイソブチルケトン、キシレン、ベンゼン、クロロホルム、四塩化炭素、メチルエチルケトン、酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸イソブチル、エチルベンゼン等の無極性溶媒が用いられ、中でもトルエンが最も好ましい。有機溶剤への相間移動剤の添加量は、金の塩のモル数の2〜10倍モル程度であることが好ましい。
【0020】
用意された金の塩の水溶液と相間移動剤の有機溶剤溶液を混合し、室温で攪拌する。攪拌後すぐに淡黄色の水相が無色透明に、有機相はオレンジ色に変色することから、水相から有機相への金イオンの相間移動が確認される。
【0021】
続いて、前記有機相に一般式CnH2n + 1SH(4≦n≦20)で示される水に不溶なアルカンチオールの有機溶剤溶液を添加する。アルカンチオールは、金微粒子の凝集による二次粒子の生成を妨げ、独立した金微粒子を安定化するものであって、具体的には、ブタンチオール、ペンタンチオール、ヘキサンチオール、ヘプタンチオール、オクタンチオール、デカンチオール、ウンデカンチオール、ドデカンチオール、オクタデカンチオール等が用いられる。アルカンチオールを溶解する有機溶剤は、トルエンが好ましく、添加量は金の塩に対して0.1〜10倍モル程度が好ましい。
【0022】
アルカンチオールを添加後、攪拌中の二相系に還元剤を添加する。還元剤は、水素化ホウ素金属塩の水溶液が好ましく、具体的には、水素化ホウ素ナトリウム水溶液あるいは水素化ホウ素カリウム水溶液が用いられる。添加量は金の塩に対して0.1〜10倍モル程度が好ましい。
【0023】
還元剤の添加によって、金イオンが還元され、有機相に金微粒子が生成する。このとき、還元剤の添加は滴下によって行われ、これにより還元反応が完了するまでの間、還元反応速度が一定に保持される。1分間当たりの還元剤の添加量を例えば0.01ミリモル〜10ミリモルの各オーダー間で調整することによって、オングストロームレベルでの粒径制御が可能になる。還元剤の添加速度の絶対値は特に限定されるものではなく、金イオンの濃度及び/あるいは金イオン含有水溶液のスケールとの相対的関係によって、その調整可能範囲は変動する。一般的に、還元剤の添加速度が大きくなるほど、得られる金微粒子の粒径は小さくなる。
【0024】
還元剤添加後、さらに数時間攪拌し、水相を除去した上で、有機相を乾燥させることによって固形物を得る。有機相の乾燥には、ロータリエバポレータを用いてもよく、常温で放置して乾燥させてもよい。
【0025】
続いて、余分な相間移動剤とアルカンチオールを除去するために、前記固形物をトルエン等の有機溶剤に再分散し、そして大量のエタノール等の貧溶媒と混合して攪拌し、生成した沈殿物をろ過する。
【0026】
金微粒子の生成は、紫外可視分光光度計、X線回折装置、透過型電子線顕微鏡によって確認される。紫外可視分光光度計では、金微粒子の平均粒径の違いによる紫外可視吸収スペクトルの変化が観察され、X線回折装置では、金微粒子の平均粒径の違いによるX線回折ピークの尖鋭度の違いが観察される。
【0027】
【実施例】
実施例1〜4
塩化金(III)酸(0.5mmol)水溶液25mlをテトラオクチルアンモニウムブロマイド(1.0mmol)トルエン溶液90mlを室温で攪拌した。攪拌後すぐに淡黄色の水溶液は無色透明に、トルエン溶液はオレンジ色に変わった。
【0028】
10分後、得られたトルエン/水二相系に1−ドデカンチオール(0.5mmol)トルエン溶液10mlを加え、10分間攪拌した。
【0029】
トルエン/水二相系に、表1に示す各添加速度で水素化ホウ素ナトリウム(5.0mmol)水溶液75mlを滴下した。その後3時間以上攪拌した後、水相のみ除去し、トルエン相を室温で乾燥させ、固形物を得た。表1には、各実施例における還元剤滴下後のトルエン相の色を示す。また、図1には、各実施例におけるトルエン分散金微粒子の可視吸収スペクトルを示す。
【0030】
【表1】
【0031】
余分なテトラオクチルアンモニウムブロマイドと1−ドデカンチオールとを除去するために、前記固形物をトルエン10mlに再分散し、続いて貧溶媒であるエタノール200mlを混合し、30分間攪拌した。混合攪拌後、生成した沈殿物をメンブランフィルタでろ過し、除去した。この洗浄作業は2回繰返した。
【0032】
金微粒子の生成は、紫外可視分光光度計(PERKIN ELMER UV/VIS/NIR spectrometer Lambda 900)、X線回折装置(RICH.SEIFERT&CO.XRD3000TT)、透過型電子顕微鏡(JEOL JEM−2010)を用いて確認した。各実施例において測定した平均粒径と粒径の標準偏差を表2に示す。また、図2に実施例1及び3における金微粒子のX線回折パターンを示し、図3に各実施例における金微粒子の透過型電子顕微鏡(TEM)写真を示す。
【0033】
【表2】
【0034】
比較例1
実施例と同じ操作でトルエン/水二相系を作製し、添加速度を制御せず、実施例と同じ還元剤水溶液を一度に添加したところ、金微粒子のサイズ制御が行えず、2nm付近に粒径分布の最大を有する1nm〜3nmの粒径分布の金微粒子が得られた。
【0035】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明の金微粒子の粒径制御方法は、金イオン含有水溶液と相間移動剤の有機溶剤溶液とを混合して攪拌し、保護剤として一般式CnH2n + 1SH(4≦n≦20)で示される水に不溶なアルカンチオールの有機溶剤溶液を添加して攪拌し、さらに還元剤を添加して攪拌する金微粒子の粒径制御方法において、還元反応が完了するまでの間、還元反応速度を一定に保持することを特徴とする金微粒子の粒径制御方法であって、簡便な液相法を用いて、オングストロームオーダーで金微粒子の粒径制御方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】各実施例におけるトルエン分散金微粒子の可視吸収スペクトルである。
【図2】実施例1及び3における金微粒子のX線回折パターンである。
【図3】各実施例における金微粒子のTEM写真である。
【発明の属する技術分野】
本発明は、金微粒子の製造方法に係り、詳しくは金微粒子の粒径制御方法に関わる。
【0002】
【従来の技術】
数十ナノメートル以下の粒径を有する金の微粒子は、バルク金には見られない微粒子に特有の性質を活かして、化学的に安定な着色剤、カラーフィルター、導電性ペースト、触媒、透明導電膜等、その応用を拡大している。従来のリソグラフィー技術に基づいたLSIの高集積化の限界を打破する目的で研究が進められている単一電子デバイスにおいては、その一構成要素である量子ドットとして金微粒子の利用も検討されている。
【0003】
前記各種応用において、金微粒子の平均粒径及び粒径分布を制御することが重要な課題となっている。具体的には、着色剤の用途においては、金微粒子の平均粒径の違いが、得られる色相、明度、及び彩度に直接影響を与え、各種化学反応に幅広く用いられている担持型金微粒子触媒は、その触媒活性を有効に発現させるためには、金微粒子の粒径をより小さくすることが要求される。また透明導電膜の用途においては、不均一な粒径分布により膜特性が不均一になる問題がある。さらに単一電子デバイスの一要素としての用途においては、室温での動作を達成するためには、粒径2nm以下の金微粒子を他の構成要素とともに基板上に整列させる必要がある。しかもデバイスの高集積化のためには、金微粒子の粒径のばらつきを厳格に抑える必要がある。
【0004】
このような各種用途に用いられる金微粒子を製造する方法として、気相法と液相法がある。気相法には例えばガス中蒸発法、スパッタリング法等があり、ガス中蒸発法では、不活性ガスを導入した真空容器内で金を蒸発させ、有機溶剤で被覆した状態の金微粒子が得られる。高濃度の金微粒子分散液を製造可能である利点を有するが、金微粒子の粒径分布を制御することは困難である。また、特別な装置を必要とするコスト面の問題もある。
【0005】
一方液相法は、金イオン含有溶液に紫外光を照射あるいは還元剤を加えて金イオンを還元することによって金微粒子を得る方法である。特に還元剤を用いる方法は、特別な装置を必要とすることなく、容易に比較的粒径分布の狭い金微粒子を製造することが可能である。非特許文献1には、トルエン/水二相系を用いて、アルカンチオール存在下で塩化金酸イオンを水素化ホウ素ナトリウムで還元することによって、2.0〜2.5nmの最大粒径分布を有する1〜3nmの粒径の金微粒子を作製できることが報告されている。
【0006】
【非特許文献1】
M.Brust J.Chem.Soc.Chem.Commun.,1994,p801−802
【0007】
また、非特許文献2には、非特許文献1に開示された方法を用いて、塩化金酸イオン/アルカンチオールの比を変えることによって金微粒子の粒径を制御できる技術が開示されている。
【0008】
【非特許文献2】
Daniel V.Leff J.phys.Chem.,1995,99,p7036−7041
【0009】
さらに、非特許文献3には、非特許文献1に開示された方法を用いて作製された粒径2nm以下の金微粒子を加熱処理することで平均粒径を制御する方法が開示されている。
【0010】
【非特許文献3】
T.Teranishi Advanced Materials,2001,13,p1699−1701
【0011】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、前記各方法においては、ナノメートルオーダーでの粒径制御は可能でも、オングストロームオーダーでの粒径制御は不可能であるという問題があった。本発明はこのような問題点に注目し、簡便な液相法を用いて、オングストロームオーダーでの金微粒子の粒径制御方法を提供することを目的とするものである。
【0012】
【課題を解決するための手段】
すなわち本願請求項1記載の発明は、金イオン含有水溶液と相間移動剤の有機溶剤溶液とを混合して攪拌し、保護剤として一般式CnH2n + 1SH(4≦n≦20)で示される水に不溶なアルカンチオールの有機溶剤溶液を添加して攪拌し、さらに還元剤を添加して攪拌する金微粒子の粒径制御方法において、還元反応が完了するまでの間、還元反応速度を一定に保持することを特徴とする金微粒子の粒径制御方法である。
【0013】
請求項2記載の発明は、還元剤を滴下して添加する請求項1記載の金微粒子の粒径制御方法である。
【0014】
請求項3記載の発明は、金イオン含有水溶液が塩化金(III)酸水溶液である請求項1または2記載の金微粒子の粒径制御方法である。
【0015】
請求項4記載の発明は、相間移動剤が四級アミンである請求項1乃至3いずれかに記載の金微粒子の粒径制御方法である。
【0016】
請求項5記載の発明は、還元剤が水素化ホウ素金属塩の溶液である請求項1乃至4いずれかに記載の金微粒子の粒径制御方法である。
【0017】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の金微粒子の粒径制御方法について詳細に説明する。
金イオン含有水溶液は、金の塩を水に溶解することによって得られる。金の塩としては、塩化金(III)酸、塩化第一金、塩化第二金等が用いられ、中でも塩化金(III)酸が最も好ましい。濃度は、1mmol/l〜100mmol/lに調整される。
【0018】
得られた金イオン含有水溶液に、相間移動剤の有機溶剤溶液を添加する。相間移動剤としては一般に、炭素数が6以上の一級アミン、二級アミン、三級アミン、四級アミン、及びホスホニウム塩等が用いられ、中でも扱い易さの点で四級アミンが最も好ましい。四級アミンとしては、テトラアルキルアンモニウムブロマイド、テトラアルキルアンモニウムクロライド、テトラアルキルアンモニウムシトレイト等のアンモニウム塩が好ましく、炭素数は8から18が好ましい。具体的にはテトラオクチルアンモニウムブロマイド、テトラオクチルアンモニウムクロライド、テトラオクチルアンモニウムシトレイト等が用いられる。
【0019】
相間移動剤を溶解する有機溶剤としては、トルエン、ノルマルヘキサン、シクロヘキサン、ノルマルペンタン、ノルマルヘプタン、メチルイソブチルケトン、キシレン、ベンゼン、クロロホルム、四塩化炭素、メチルエチルケトン、酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸イソブチル、エチルベンゼン等の無極性溶媒が用いられ、中でもトルエンが最も好ましい。有機溶剤への相間移動剤の添加量は、金の塩のモル数の2〜10倍モル程度であることが好ましい。
【0020】
用意された金の塩の水溶液と相間移動剤の有機溶剤溶液を混合し、室温で攪拌する。攪拌後すぐに淡黄色の水相が無色透明に、有機相はオレンジ色に変色することから、水相から有機相への金イオンの相間移動が確認される。
【0021】
続いて、前記有機相に一般式CnH2n + 1SH(4≦n≦20)で示される水に不溶なアルカンチオールの有機溶剤溶液を添加する。アルカンチオールは、金微粒子の凝集による二次粒子の生成を妨げ、独立した金微粒子を安定化するものであって、具体的には、ブタンチオール、ペンタンチオール、ヘキサンチオール、ヘプタンチオール、オクタンチオール、デカンチオール、ウンデカンチオール、ドデカンチオール、オクタデカンチオール等が用いられる。アルカンチオールを溶解する有機溶剤は、トルエンが好ましく、添加量は金の塩に対して0.1〜10倍モル程度が好ましい。
【0022】
アルカンチオールを添加後、攪拌中の二相系に還元剤を添加する。還元剤は、水素化ホウ素金属塩の水溶液が好ましく、具体的には、水素化ホウ素ナトリウム水溶液あるいは水素化ホウ素カリウム水溶液が用いられる。添加量は金の塩に対して0.1〜10倍モル程度が好ましい。
【0023】
還元剤の添加によって、金イオンが還元され、有機相に金微粒子が生成する。このとき、還元剤の添加は滴下によって行われ、これにより還元反応が完了するまでの間、還元反応速度が一定に保持される。1分間当たりの還元剤の添加量を例えば0.01ミリモル〜10ミリモルの各オーダー間で調整することによって、オングストロームレベルでの粒径制御が可能になる。還元剤の添加速度の絶対値は特に限定されるものではなく、金イオンの濃度及び/あるいは金イオン含有水溶液のスケールとの相対的関係によって、その調整可能範囲は変動する。一般的に、還元剤の添加速度が大きくなるほど、得られる金微粒子の粒径は小さくなる。
【0024】
還元剤添加後、さらに数時間攪拌し、水相を除去した上で、有機相を乾燥させることによって固形物を得る。有機相の乾燥には、ロータリエバポレータを用いてもよく、常温で放置して乾燥させてもよい。
【0025】
続いて、余分な相間移動剤とアルカンチオールを除去するために、前記固形物をトルエン等の有機溶剤に再分散し、そして大量のエタノール等の貧溶媒と混合して攪拌し、生成した沈殿物をろ過する。
【0026】
金微粒子の生成は、紫外可視分光光度計、X線回折装置、透過型電子線顕微鏡によって確認される。紫外可視分光光度計では、金微粒子の平均粒径の違いによる紫外可視吸収スペクトルの変化が観察され、X線回折装置では、金微粒子の平均粒径の違いによるX線回折ピークの尖鋭度の違いが観察される。
【0027】
【実施例】
実施例1〜4
塩化金(III)酸(0.5mmol)水溶液25mlをテトラオクチルアンモニウムブロマイド(1.0mmol)トルエン溶液90mlを室温で攪拌した。攪拌後すぐに淡黄色の水溶液は無色透明に、トルエン溶液はオレンジ色に変わった。
【0028】
10分後、得られたトルエン/水二相系に1−ドデカンチオール(0.5mmol)トルエン溶液10mlを加え、10分間攪拌した。
【0029】
トルエン/水二相系に、表1に示す各添加速度で水素化ホウ素ナトリウム(5.0mmol)水溶液75mlを滴下した。その後3時間以上攪拌した後、水相のみ除去し、トルエン相を室温で乾燥させ、固形物を得た。表1には、各実施例における還元剤滴下後のトルエン相の色を示す。また、図1には、各実施例におけるトルエン分散金微粒子の可視吸収スペクトルを示す。
【0030】
【表1】
【0031】
余分なテトラオクチルアンモニウムブロマイドと1−ドデカンチオールとを除去するために、前記固形物をトルエン10mlに再分散し、続いて貧溶媒であるエタノール200mlを混合し、30分間攪拌した。混合攪拌後、生成した沈殿物をメンブランフィルタでろ過し、除去した。この洗浄作業は2回繰返した。
【0032】
金微粒子の生成は、紫外可視分光光度計(PERKIN ELMER UV/VIS/NIR spectrometer Lambda 900)、X線回折装置(RICH.SEIFERT&CO.XRD3000TT)、透過型電子顕微鏡(JEOL JEM−2010)を用いて確認した。各実施例において測定した平均粒径と粒径の標準偏差を表2に示す。また、図2に実施例1及び3における金微粒子のX線回折パターンを示し、図3に各実施例における金微粒子の透過型電子顕微鏡(TEM)写真を示す。
【0033】
【表2】
【0034】
比較例1
実施例と同じ操作でトルエン/水二相系を作製し、添加速度を制御せず、実施例と同じ還元剤水溶液を一度に添加したところ、金微粒子のサイズ制御が行えず、2nm付近に粒径分布の最大を有する1nm〜3nmの粒径分布の金微粒子が得られた。
【0035】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明の金微粒子の粒径制御方法は、金イオン含有水溶液と相間移動剤の有機溶剤溶液とを混合して攪拌し、保護剤として一般式CnH2n + 1SH(4≦n≦20)で示される水に不溶なアルカンチオールの有機溶剤溶液を添加して攪拌し、さらに還元剤を添加して攪拌する金微粒子の粒径制御方法において、還元反応が完了するまでの間、還元反応速度を一定に保持することを特徴とする金微粒子の粒径制御方法であって、簡便な液相法を用いて、オングストロームオーダーで金微粒子の粒径制御方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】各実施例におけるトルエン分散金微粒子の可視吸収スペクトルである。
【図2】実施例1及び3における金微粒子のX線回折パターンである。
【図3】各実施例における金微粒子のTEM写真である。
Claims (5)
- 金イオン含有水溶液と相間移動剤の有機溶剤溶液とを混合して攪拌し、保護剤として一般式CnH2n + 1SH(4≦n≦20)で示される水に不溶なアルカンチオールの有機溶剤溶液を添加して攪拌し、さらに還元剤を添加して攪拌する金微粒子の粒径制御方法において、還元反応が完了するまでの間、還元反応速度を一定に保持することを特徴とする金微粒子の粒径制御方法。
- 還元剤を滴下して添加する請求項1記載の金微粒子の粒径制御方法。
- 金イオン含有水溶液が塩化金(III)酸水溶液である請求項1または2記載の金微粒子の粒径制御方法。
- 相間移動剤が四級アミンである請求項1乃至3いずれかに記載の金微粒子の粒径制御方法。
- 還元剤が水素化ホウ素金属塩の溶液である請求項1乃至4いずれかに記載の金微粒子の粒径制御方法。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
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2003
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