JP2004232011A - 高張力合金化溶融亜鉛めっき鋼板の製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】自動車用鋼板等として有用な、引張り強さ(TS)980N/mm2級の高強度と伸び(El)15%以上の高延性を具備すると共に健全なめっき品質を備えた合金化溶融亜鉛鋼板の製造方法を提供する。
【解決手段】この合金化溶融亜鉛めっき鋼板は、C:0.1〜0.3%,Si:1.5%以下,Mn:0.5〜3.0%,P:0.04%以下,S:0.03%以下,Mo:0.1〜0.3%,残部Feからなる鋼スラブをA3変態点以上で熱延し、冷間圧延後、Fe系プレめっきを施したうえ、焼鈍処理および溶融めっきを実施し、ついでめっき層を合金化処理する工程を経て製造される。強化元素(Nb,Ti等)の省略により延性低下を回避すると共に、強化元素の省略に伴う強度不足をMoの適量添加により補償し、高張力と高延性とを具備せしめている。また鉄系プレめっきの実施によりめっきぬれ性を高め健全なめっき品質を確保している。
【選択図】なし
【解決手段】この合金化溶融亜鉛めっき鋼板は、C:0.1〜0.3%,Si:1.5%以下,Mn:0.5〜3.0%,P:0.04%以下,S:0.03%以下,Mo:0.1〜0.3%,残部Feからなる鋼スラブをA3変態点以上で熱延し、冷間圧延後、Fe系プレめっきを施したうえ、焼鈍処理および溶融めっきを実施し、ついでめっき層を合金化処理する工程を経て製造される。強化元素(Nb,Ti等)の省略により延性低下を回避すると共に、強化元素の省略に伴う強度不足をMoの適量添加により補償し、高張力と高延性とを具備せしめている。また鉄系プレめっきの実施によりめっきぬれ性を高め健全なめっき品質を確保している。
【選択図】なし
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、自動車用鋼板(自動車ボディー材)等として有用な980N/mm2級の強度を有すると共に所要形状への成形加工に必要な延性を備えた合金化溶融亜鉛めっき鋼板の製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
自動車用鋼板の分野では、車体の軽量化・安全性の向上のための高強度化、耐用寿命向上のための防食性の強化等が要請され、これに応える鋼板として、高強度合金化溶融亜鉛めっき鋼板が有力視されている。
高強度鋼板をめっき母材鋼板とする合金化溶融亜鉛めっき鋼板は、連続溶融亜鉛めっきラインにおいて、母材鋼板の焼鈍処理の後、溶融亜鉛めっき浴中に通板されてめっき層を形成され、ついで合金化処理炉に導入されて所定の合金化処理を施される工程を経て製造される。
【0003】
鋼板の強化法には、C,Si,Mn,P等の固溶強化元素を増量して結晶格子の歪みを導入する固溶強化(例えば特許文献1)、Nb,Ti,W等の炭化物形成元素を添加し、炭化物をマトリックス中に微細析出させる析出強化法(例えば特許文献2)、AC1〜AC1点温度域からの急冷によりマルテンサイト変態を生起させフェライト−マルテンサイト複合組織を形成する変態組織強化法(例えば特許文献3)等が知られている。
【0004】
【特許文献1】
特開平4−26744号公報 p.2右上欄10行−左下欄1行
【特許文献2】
特公昭61−11294号公報 1欄14−15行,5欄12−15行
【特許文献3】
特開昭55−122820号公報 p.1右欄1−6行,p.4右上8行−左下7行
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
固溶強化元素(C,Si,N,P等)による固溶強化法では、要求強度レベルが高くなると共に添加量の増量を要する。これらの元素の増量は、溶融亜鉛めっきにおける鋼板表面のめっき濡れ性の低下、めっき層の合金化反応性の低下等を付随する。析出強化元素(Nb,Ti,W等)の炭化物の微細析出による強化法では、これら元素の添加による鋼板の延性低下が大きく、加工性の確保が困難となる。また変態組織強化法を採用する場合は、マルテンサイト変態を生起させるための急速冷却装置及び煩瑣な温度制御を必要とし、設備・操業面での負担が大きい。
【0006】
本発明は、上記従来の不具合を解消し、自動車用鋼板等として好適に使用される、980MPa以上の高強度を有すると共に、所要形状への加工に必要な高延性を兼備した合金化溶融亜鉛めっき鋼板の製造方法を提供するものである。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明は、引張り強さ(TS)980N/mm2以上、伸び(El)15%以上である合金化溶融亜鉛めっき鋼板の製造方法に係り、質量%で、C:0.1〜0.3%,Si:1.5%以下,Mn:0.5〜3.0%,P:0.04%以下,S:0.03%以下,Mo:0.1〜0.3%,残部実質的にFeからなる鋼スラブを、A3変態点以上で熱間圧延し、脱スケール処理後、冷間圧延に付して所定板厚の冷延鋼板を得、冷延鋼板表面にFe系プレめっきを施したうえ、連続溶融亜鉛めっきラインに導入し、焼鈍処理の後、溶融めっき浴に通板して鋼板表面にめっき層を形成し、ついでめっき層を合金化処理することを特徴としている。
【0008】
本発明は、めっき母材鋼板の高張力化に関して、強化元素であるNb,Ti等の添加を省略して延性の低下を抑制回避すると共に、Nb,Ti等を省略したことに伴う強度の不足をMoの適量添加によって補償し、高張力(TS:980N/mm2以上)と高延性(El:15%以上)とを具備せしめている。母材鋼板の金属組織はフェライト−ベイナイト二相組織である。なお、Si及びMnを比較的多量に含有することに付随する鋼板表面のめっき濡れ性等の不足に対しては、鉄系プレめっきを実施することにより良好な濡れ性をもたせ、めっき品質の健全性を確保している。
【0009】
以下本発明について詳しく説明する。
まず母材鋼板の化学組成の限定理由について説明する。成分含有量を示す%は質量%である。
C:0.1〜0.3 %
Cは鋼中に固溶し、一部は炭化物(Mo2C)を形成することにより鋼の強化(固溶強化,析出強化)に寄与する。含有量が0.1%に満たないと、その効果が不足し、0.3%を超えると、延性の不足、溶接性の低下等をきたす。このため0.1〜0.3%とする。
【0010】
Si:1.5%以下
Siは、鋼の溶製工程における脱酸元素であり、また本発明では鋼の強化に必要な元素である。しかし、多量に添加すると、鋼板表面の酸化皮膜の生成量の増大により溶融亜鉛めっきの濡れ性の低下が大きくなる。本発明では、鉄系プレめっきの実施により、このような不具合を抑制回避することとしているが、1.5%を超えると、めっき濡れ性を十分に確保するのが困難となるので、これを上限とする。好ましくは0.1〜1.0%である。
【0011】
Mn:0.5〜3.0%
Mnは、鋼の高強度化に有効な固溶強化元素であり、この効果を十分なものとするために、0.5%以上の添加を必要とする。また、鋼中の遊離SをMnSとして固定し延性の改善に寄与する。これらの効果は添加量を多くするに伴って増大するが、過度に添加すると、延性の不足をきたすほか、鋼板表面の酸化皮膜の生成量の増大により、溶融亜鉛めっきに対する濡れ性の低下が大きくなる。このため、3.0%を上限とする。
【0012】
P:0.04%以下
Pは固溶強化の働きを有する元素ではあるが、鋼板のスポット溶接性を悪くし、また溶融亜鉛めっき鋼板の合金化処理における合金化反応を抑制し、連続めっきラインの操業性の低下を招く要因となる。このため、0.04%以下に制限される。
【0013】
S:0.03%以下
Sは有害不純分であり、鋼板の加工性の点からも混在量はできるだけ少ないほうがよい。0.03%以下であれば、実質的な弊害はないので、これを上限とする。
【0014】
Mo:0.1〜0.3%
Moは本発明の母材鋼板の成分構成を特徴づける元素である。Moの一部は基地を強化し、残部はMo2Cとして微細析出することにより鋼の高強度化に寄与する。前記のように本発明は、この種の鋼板の代表的な強化元素であるNb及びTiの使用を排し、これに代えてMoを使用することにより、延性の低下を抑制回避しつつ、高強度を得ることを可能にしている。この効果を得るには、0.1%以上の含有を必要とする。増量により効果を増すが、0.3%を超えると、延性の確保が困難となるので、これを超えてはならない。
【0015】
次に本発明の合金化溶融亜鉛めっき鋼板の製造工程について説明する。
本発明の合金化溶融亜鉛めっき鋼板は、鋼スラブの熱間圧延及び冷間圧延につづき、冷延鋼板に鉄系プレめっきが施された後、連続溶融亜鉛めっきラインに導入され、焼鈍、溶融めっき及び合金化処理の各工程を経て製造される。
【0016】
[熱間圧延]
上記化学組成を有する鋼は、連続鋳造等によりスラブとされ熱間圧延に付される。熱間圧延は常法に従って行なわれ、A3変態点以上の温度(オーステナイト単相域)で圧延を終了する。A3変態点以上の温度域(オーステナイト単相域)で熱間圧延を行なうのは、最終製品鋼板の材質の均質性を確保するためである。A3変態点より低い温度域(オーステナイト+フェライト二相域)で熱間圧延すると、混粒組織が生じ製品鋼板の材質(特に成形性)にムラが生じる。熱延鋼板の巻取り温度は特に限定されず、例えば約400〜700℃(板温)で行なえばよい。
【0017】
[冷間圧延]
熱延鋼板に酸洗処理を施して表面スケールを除去したのち、冷間圧延に付し、所定板厚の冷延鋼板を得る。酸洗処理及び冷間圧延は常法に従って行なえばよい。
【0018】
[鉄系プレめっき]
冷延鋼板を連続溶融亜鉛めっきラインに導入するに先立って鋼板表面に鉄系プレめっきを施す。この鋼板は、強化元素としてSi及びMnを比較的多量に含有しているので、そのままでは鋼板表面に生成したSiやMnの酸化皮膜のため、めっき濡れ性に乏しく、不めっき(ピンホール)が生じ易い。鉄系プレめっきの実施により、めっき濡れ性を高め、めっき品質の健全性を確保することが可能になる。鉄系プレめっきの材種は、純鉄、Fe−B合金、Fe−P合金等である。殊に、Bを約2〜30ppm含有するFe−B合金のプレめっきの効果は顕著である。プレめっきは電気めっき等により行なわれる。目付量は、約0.5g/m2(片面当り)以上、好ましくは約2g/m2以上であるが、約5g/m2を超える厚めっきとする必要はない。
【0019】
鉄系プレめっきを施された冷延鋼板は、連続溶融亜鉛めっきラインに導入され、焼鈍、溶融めっき及び合金化処理の各処理が順次施される。
[連続焼鈍処理]
焼鈍処理は、冷延鋼板の歪みの除去、軟質化および非時効化等のために行なわれる。この処理は、再結晶温度〜AC3点直下の温度域に適当時間保持することにより達成される。処理温度を、再結晶温度以上とするのは、鋼板の軟質化、非時効化を十分に達成し、鋼板の延性を回復させるためであり、AC3点直下を上限とするのは、結晶粒の粗大化とそれに伴う強度低下を回避するためである。
【0020】
[溶融亜鉛めっき及び合金化処理]
連続焼鈍炉から導出された冷延鋼板は、ついで溶融めっき浴を通って所定層厚のめっき層を形成され、ついで合金化処理炉を通過することによりめっき層の合金化処理(処理温度:約450〜600℃)が施される。
溶融亜鉛めっきの浴組成は、亜鉛,亜鉛−アルミニウム合金,亜鉛−アルミニウム−マグネシウム合金,亜鉛−アルミニウム−シリコン合金等であり、製品めっき鋼板の用途・要求特性に応じて適宜選択される。母材鋼板は比較的多量のSi及びMnを含有しているが、鉄系プレめっきの効果として不めっき(ピンホール)等の欠陥のない均一なめっき層が形成される。溶融亜鉛めっき及び合金化処理は常法に従って行なえばよく、特別の条件や制限は付加されない。
【0021】
合金化処理炉から導出された合金化溶融亜鉛めっき鋼板は、必要に応じ、めっき層の表面調整、鋼板の形状矯正、降伏点伸びの解消等を目的とするスキンパス(伸び率:約0.5%)を施されて巻き取られる。
【0022】
【実施例】
連続鋳造スラブを素材とし、熱間圧延、熱延鋼板の脱スケール(酸洗処理)の後、冷間圧延に付し、板厚1.0mmの冷延鋼板を得る。冷延鋼板に鉄系プレめっき(電気めっき)を施した後、連続溶融亜鉛めっきラインに導入し、焼鈍処理、めっき浴通板、及び合金化処理を順次行ない供試鋼板を得る。
【0023】
[熱間圧延]
仕上げ温度:880±20℃
巻取り温度:550±20℃
[鉄系プレめっき]
めっき材種 :Fe−0.0002%B合金
めっき目付量:2g/m2(片面当り)
【0024】
[焼鈍処理]
処理温度:850±20℃
[溶融亜鉛めっき]
めっき浴組成:Zn−0.14%Al
めっき目付量:45g/m2(片面当り)
[合金化処理]
処理温度:550℃
【0025】
【表1】
【0026】
【表2】
【0027】
【表3】
【0028】
表1及び表2に各供試鋼板の化学組成及び製造条件を示し、得られた製品めっき鋼板の諸特性を表3に示す。No.11〜13は、母材鋼板として、析出強化元素であるNb,Tiを含有する冷延鋼板を使用した従来材の例(熱間圧延から合金化処理に到る製造条件は発明例と同じ)である。
表3中「めっき品質」A欄は、不めっき(不めっき部分はシミ状の黒い斑点として視覚される)の有無、B欄は合金化反応性の良否(合金化反応にムラがあると、色調のムラとして観察される)の評価結果(目視観察による)である。各欄の〇印は上記欠陥のない良好なめっき品質であることを示している。
【0029】
発明例(No.1)は、引張り強さ(TS)980N/mm2以上の高強度を有すると同時に、伸び(El)15%以上という高延性を具備しており、まためっき品質も良好である。他方、従来材(No.11〜13)は、発明例と同等の強度を有しているが、その伸び(El)は発明例に比し低く、高強度と高延性とを兼備した発明例に及ばない。
【0030】
【発明の効果】
本発明により製造される合金化溶融亜鉛めっき鋼板は、引張り強さ(TS)980N/mm2級の高強度と、伸び(El)15%以上の高延性とを具備し、かつ健全なめっき品質を備えている。従って自動車用鋼板等として好適に使用され、その高強度による鋼板の薄肉化、車体重量の軽量化等に寄与するものである。
【発明の属する技術分野】
本発明は、自動車用鋼板(自動車ボディー材)等として有用な980N/mm2級の強度を有すると共に所要形状への成形加工に必要な延性を備えた合金化溶融亜鉛めっき鋼板の製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
自動車用鋼板の分野では、車体の軽量化・安全性の向上のための高強度化、耐用寿命向上のための防食性の強化等が要請され、これに応える鋼板として、高強度合金化溶融亜鉛めっき鋼板が有力視されている。
高強度鋼板をめっき母材鋼板とする合金化溶融亜鉛めっき鋼板は、連続溶融亜鉛めっきラインにおいて、母材鋼板の焼鈍処理の後、溶融亜鉛めっき浴中に通板されてめっき層を形成され、ついで合金化処理炉に導入されて所定の合金化処理を施される工程を経て製造される。
【0003】
鋼板の強化法には、C,Si,Mn,P等の固溶強化元素を増量して結晶格子の歪みを導入する固溶強化(例えば特許文献1)、Nb,Ti,W等の炭化物形成元素を添加し、炭化物をマトリックス中に微細析出させる析出強化法(例えば特許文献2)、AC1〜AC1点温度域からの急冷によりマルテンサイト変態を生起させフェライト−マルテンサイト複合組織を形成する変態組織強化法(例えば特許文献3)等が知られている。
【0004】
【特許文献1】
特開平4−26744号公報 p.2右上欄10行−左下欄1行
【特許文献2】
特公昭61−11294号公報 1欄14−15行,5欄12−15行
【特許文献3】
特開昭55−122820号公報 p.1右欄1−6行,p.4右上8行−左下7行
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
固溶強化元素(C,Si,N,P等)による固溶強化法では、要求強度レベルが高くなると共に添加量の増量を要する。これらの元素の増量は、溶融亜鉛めっきにおける鋼板表面のめっき濡れ性の低下、めっき層の合金化反応性の低下等を付随する。析出強化元素(Nb,Ti,W等)の炭化物の微細析出による強化法では、これら元素の添加による鋼板の延性低下が大きく、加工性の確保が困難となる。また変態組織強化法を採用する場合は、マルテンサイト変態を生起させるための急速冷却装置及び煩瑣な温度制御を必要とし、設備・操業面での負担が大きい。
【0006】
本発明は、上記従来の不具合を解消し、自動車用鋼板等として好適に使用される、980MPa以上の高強度を有すると共に、所要形状への加工に必要な高延性を兼備した合金化溶融亜鉛めっき鋼板の製造方法を提供するものである。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明は、引張り強さ(TS)980N/mm2以上、伸び(El)15%以上である合金化溶融亜鉛めっき鋼板の製造方法に係り、質量%で、C:0.1〜0.3%,Si:1.5%以下,Mn:0.5〜3.0%,P:0.04%以下,S:0.03%以下,Mo:0.1〜0.3%,残部実質的にFeからなる鋼スラブを、A3変態点以上で熱間圧延し、脱スケール処理後、冷間圧延に付して所定板厚の冷延鋼板を得、冷延鋼板表面にFe系プレめっきを施したうえ、連続溶融亜鉛めっきラインに導入し、焼鈍処理の後、溶融めっき浴に通板して鋼板表面にめっき層を形成し、ついでめっき層を合金化処理することを特徴としている。
【0008】
本発明は、めっき母材鋼板の高張力化に関して、強化元素であるNb,Ti等の添加を省略して延性の低下を抑制回避すると共に、Nb,Ti等を省略したことに伴う強度の不足をMoの適量添加によって補償し、高張力(TS:980N/mm2以上)と高延性(El:15%以上)とを具備せしめている。母材鋼板の金属組織はフェライト−ベイナイト二相組織である。なお、Si及びMnを比較的多量に含有することに付随する鋼板表面のめっき濡れ性等の不足に対しては、鉄系プレめっきを実施することにより良好な濡れ性をもたせ、めっき品質の健全性を確保している。
【0009】
以下本発明について詳しく説明する。
まず母材鋼板の化学組成の限定理由について説明する。成分含有量を示す%は質量%である。
C:0.1〜0.3 %
Cは鋼中に固溶し、一部は炭化物(Mo2C)を形成することにより鋼の強化(固溶強化,析出強化)に寄与する。含有量が0.1%に満たないと、その効果が不足し、0.3%を超えると、延性の不足、溶接性の低下等をきたす。このため0.1〜0.3%とする。
【0010】
Si:1.5%以下
Siは、鋼の溶製工程における脱酸元素であり、また本発明では鋼の強化に必要な元素である。しかし、多量に添加すると、鋼板表面の酸化皮膜の生成量の増大により溶融亜鉛めっきの濡れ性の低下が大きくなる。本発明では、鉄系プレめっきの実施により、このような不具合を抑制回避することとしているが、1.5%を超えると、めっき濡れ性を十分に確保するのが困難となるので、これを上限とする。好ましくは0.1〜1.0%である。
【0011】
Mn:0.5〜3.0%
Mnは、鋼の高強度化に有効な固溶強化元素であり、この効果を十分なものとするために、0.5%以上の添加を必要とする。また、鋼中の遊離SをMnSとして固定し延性の改善に寄与する。これらの効果は添加量を多くするに伴って増大するが、過度に添加すると、延性の不足をきたすほか、鋼板表面の酸化皮膜の生成量の増大により、溶融亜鉛めっきに対する濡れ性の低下が大きくなる。このため、3.0%を上限とする。
【0012】
P:0.04%以下
Pは固溶強化の働きを有する元素ではあるが、鋼板のスポット溶接性を悪くし、また溶融亜鉛めっき鋼板の合金化処理における合金化反応を抑制し、連続めっきラインの操業性の低下を招く要因となる。このため、0.04%以下に制限される。
【0013】
S:0.03%以下
Sは有害不純分であり、鋼板の加工性の点からも混在量はできるだけ少ないほうがよい。0.03%以下であれば、実質的な弊害はないので、これを上限とする。
【0014】
Mo:0.1〜0.3%
Moは本発明の母材鋼板の成分構成を特徴づける元素である。Moの一部は基地を強化し、残部はMo2Cとして微細析出することにより鋼の高強度化に寄与する。前記のように本発明は、この種の鋼板の代表的な強化元素であるNb及びTiの使用を排し、これに代えてMoを使用することにより、延性の低下を抑制回避しつつ、高強度を得ることを可能にしている。この効果を得るには、0.1%以上の含有を必要とする。増量により効果を増すが、0.3%を超えると、延性の確保が困難となるので、これを超えてはならない。
【0015】
次に本発明の合金化溶融亜鉛めっき鋼板の製造工程について説明する。
本発明の合金化溶融亜鉛めっき鋼板は、鋼スラブの熱間圧延及び冷間圧延につづき、冷延鋼板に鉄系プレめっきが施された後、連続溶融亜鉛めっきラインに導入され、焼鈍、溶融めっき及び合金化処理の各工程を経て製造される。
【0016】
[熱間圧延]
上記化学組成を有する鋼は、連続鋳造等によりスラブとされ熱間圧延に付される。熱間圧延は常法に従って行なわれ、A3変態点以上の温度(オーステナイト単相域)で圧延を終了する。A3変態点以上の温度域(オーステナイト単相域)で熱間圧延を行なうのは、最終製品鋼板の材質の均質性を確保するためである。A3変態点より低い温度域(オーステナイト+フェライト二相域)で熱間圧延すると、混粒組織が生じ製品鋼板の材質(特に成形性)にムラが生じる。熱延鋼板の巻取り温度は特に限定されず、例えば約400〜700℃(板温)で行なえばよい。
【0017】
[冷間圧延]
熱延鋼板に酸洗処理を施して表面スケールを除去したのち、冷間圧延に付し、所定板厚の冷延鋼板を得る。酸洗処理及び冷間圧延は常法に従って行なえばよい。
【0018】
[鉄系プレめっき]
冷延鋼板を連続溶融亜鉛めっきラインに導入するに先立って鋼板表面に鉄系プレめっきを施す。この鋼板は、強化元素としてSi及びMnを比較的多量に含有しているので、そのままでは鋼板表面に生成したSiやMnの酸化皮膜のため、めっき濡れ性に乏しく、不めっき(ピンホール)が生じ易い。鉄系プレめっきの実施により、めっき濡れ性を高め、めっき品質の健全性を確保することが可能になる。鉄系プレめっきの材種は、純鉄、Fe−B合金、Fe−P合金等である。殊に、Bを約2〜30ppm含有するFe−B合金のプレめっきの効果は顕著である。プレめっきは電気めっき等により行なわれる。目付量は、約0.5g/m2(片面当り)以上、好ましくは約2g/m2以上であるが、約5g/m2を超える厚めっきとする必要はない。
【0019】
鉄系プレめっきを施された冷延鋼板は、連続溶融亜鉛めっきラインに導入され、焼鈍、溶融めっき及び合金化処理の各処理が順次施される。
[連続焼鈍処理]
焼鈍処理は、冷延鋼板の歪みの除去、軟質化および非時効化等のために行なわれる。この処理は、再結晶温度〜AC3点直下の温度域に適当時間保持することにより達成される。処理温度を、再結晶温度以上とするのは、鋼板の軟質化、非時効化を十分に達成し、鋼板の延性を回復させるためであり、AC3点直下を上限とするのは、結晶粒の粗大化とそれに伴う強度低下を回避するためである。
【0020】
[溶融亜鉛めっき及び合金化処理]
連続焼鈍炉から導出された冷延鋼板は、ついで溶融めっき浴を通って所定層厚のめっき層を形成され、ついで合金化処理炉を通過することによりめっき層の合金化処理(処理温度:約450〜600℃)が施される。
溶融亜鉛めっきの浴組成は、亜鉛,亜鉛−アルミニウム合金,亜鉛−アルミニウム−マグネシウム合金,亜鉛−アルミニウム−シリコン合金等であり、製品めっき鋼板の用途・要求特性に応じて適宜選択される。母材鋼板は比較的多量のSi及びMnを含有しているが、鉄系プレめっきの効果として不めっき(ピンホール)等の欠陥のない均一なめっき層が形成される。溶融亜鉛めっき及び合金化処理は常法に従って行なえばよく、特別の条件や制限は付加されない。
【0021】
合金化処理炉から導出された合金化溶融亜鉛めっき鋼板は、必要に応じ、めっき層の表面調整、鋼板の形状矯正、降伏点伸びの解消等を目的とするスキンパス(伸び率:約0.5%)を施されて巻き取られる。
【0022】
【実施例】
連続鋳造スラブを素材とし、熱間圧延、熱延鋼板の脱スケール(酸洗処理)の後、冷間圧延に付し、板厚1.0mmの冷延鋼板を得る。冷延鋼板に鉄系プレめっき(電気めっき)を施した後、連続溶融亜鉛めっきラインに導入し、焼鈍処理、めっき浴通板、及び合金化処理を順次行ない供試鋼板を得る。
【0023】
[熱間圧延]
仕上げ温度:880±20℃
巻取り温度:550±20℃
[鉄系プレめっき]
めっき材種 :Fe−0.0002%B合金
めっき目付量:2g/m2(片面当り)
【0024】
[焼鈍処理]
処理温度:850±20℃
[溶融亜鉛めっき]
めっき浴組成:Zn−0.14%Al
めっき目付量:45g/m2(片面当り)
[合金化処理]
処理温度:550℃
【0025】
【表1】
【0026】
【表2】
【0027】
【表3】
【0028】
表1及び表2に各供試鋼板の化学組成及び製造条件を示し、得られた製品めっき鋼板の諸特性を表3に示す。No.11〜13は、母材鋼板として、析出強化元素であるNb,Tiを含有する冷延鋼板を使用した従来材の例(熱間圧延から合金化処理に到る製造条件は発明例と同じ)である。
表3中「めっき品質」A欄は、不めっき(不めっき部分はシミ状の黒い斑点として視覚される)の有無、B欄は合金化反応性の良否(合金化反応にムラがあると、色調のムラとして観察される)の評価結果(目視観察による)である。各欄の〇印は上記欠陥のない良好なめっき品質であることを示している。
【0029】
発明例(No.1)は、引張り強さ(TS)980N/mm2以上の高強度を有すると同時に、伸び(El)15%以上という高延性を具備しており、まためっき品質も良好である。他方、従来材(No.11〜13)は、発明例と同等の強度を有しているが、その伸び(El)は発明例に比し低く、高強度と高延性とを兼備した発明例に及ばない。
【0030】
【発明の効果】
本発明により製造される合金化溶融亜鉛めっき鋼板は、引張り強さ(TS)980N/mm2級の高強度と、伸び(El)15%以上の高延性とを具備し、かつ健全なめっき品質を備えている。従って自動車用鋼板等として好適に使用され、その高強度による鋼板の薄肉化、車体重量の軽量化等に寄与するものである。
Claims (1)
- 質量%で、C:0.1〜0.3%,Si:1.5%以下,Mn:0.5〜3.0%,P:0.04%以下,S:0.03%以下,Mo:0.1〜0.3%,残部実質的にFeからなる鋼スラブを、
A3変態点以上で熱間圧延し、脱スケール処理後、冷間圧延に付して所定板厚の冷延鋼板を得、冷延鋼板表面にFe系プレめっきを施したうえ、連続溶融亜鉛めっきラインに導入し、焼鈍処理の後、溶融めっき浴に通板して鋼板表面にめっき層を形成し、ついでめっき層を合金化処理することを特徴とする、引張り強さ980N/mm2以上、伸び15%以上である高張力合金化溶融亜鉛めっき鋼板の製造方法。
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