JP2004230545A - カーボンナノチューブを含む接合体 - Google Patents

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Abstract

【課題】 カーボンナノチューブを含む構造体を、他の構造体と安定に接合する。
【解決手段】 高分子119とカーボンナノチューブ105とを分散媒に分散させ、ラングミュアトラフ中の下層液の液面上に展開し、カーボンナノチューブの側面に高分子が巻回し、被覆したカーボンナノチューブ構造体131を得る。カーボンナノチューブ構造体131を基板161に付着させ、高分子119の側鎖にリガンド169を固定化する。また、他のカーボンナノチューブ構造体131にレセプター167を固定化し、レセプター167およびリガンド169の特異的相互作用によって基板161上のカーボンナノチューブ構造体131と連結させる。
【選択図】 図1

Description

本発明は、カーボンナノチューブを含む接合体に関する。
近年、いわゆるナノ加工技術を用いたナノデバイスの開発が活発化している。ナノデバイスは、数個の電子により動作させることができ、従来のシリコンデバイスに比べ、消費電力を大幅に低減できる。また素子サイズを飛躍的に縮小させることが可能である。
こうしたナノデバイスにカーボンナノチューブを利用する試みが検討されている。カーボンナノチューブは、グラファイトのシートを円筒状につなげた構造を有する。カーボンナノチューブは、不純物をドープすることなく、カイラリティ等の制御により、半導体から金属まで様々な物性を有する材料に作り分けることができ、ナノデバイスを含む集積回路の構成材料として多くの可能性を秘めている。特許文献1には、このようなカーボンナノチューブを用いた電子デバイスの例が開示されている。
特開2002−118248号公報
こうしたカーボンナノチューブを用いたナノデバイスを実用に供するためには、基板上にこれらのデバイスを集積するとともにデバイス間を微細な配線で結線することが必要となる。ところが、カーボンナノチューブの側面は安定な六員環構造であり一般に化学的反応性が低く、配線やパッド、他の素子と接合することが困難である。
本発明は上記事情に鑑みなされたものであって、その目的とするところは、カーボンナノチューブを含む構造体を、他の構造体と安定に接合する技術を提供することにある。
本発明によれば、カーボンナノチューブおよびその側面を被覆する高分子を含むカーボンナノチューブ構造体と、該カーボンナノチューブ構造体と接合する他の構造体とを有することを特徴とする接合体が提供される。
本発明において、カーボンナノチューブの側面を「被覆」するとは、カーボンナノチューブの側面の所定の領域が露出しないように覆うことを指す。被覆の態様として、カーボンナノチューブの側面を高分子が巻回し、被覆する態様が挙げられる。また、カーボンナノチューブの側面を高分子が層状に被覆する態様、すなわち高分子の被覆層が形成された態様が挙げられる。
本発明において、高分子がカーボンナノチューブの側面に「巻回」するとは、高分子の分子鎖がカーボンナノチューブ側面を周回して巻き付き、カーボンナノチューブの表面を被覆することをいう。また、本発明において、「被覆層」とは、カーボンナノチューブの側面のある領域で全面にわたって緻密に形成された覆いを指す。
以下、本明細書において、「被覆」という場合には、巻回および被覆層のいずれの場合も含まれるものとする。
本発明によれば、カーボンナノチューブおよびその側面を被覆する高分子からなる層を含むカーボンナノチューブ構造体と、該カーボンナノチューブ構造体と接合する他の構造体とを有することを特徴とする接合体が提供される。
本発明に係る接合体は、カーボンナノチューブ構造体が他の構造体と接合する構成を有する。本発明において、カーボンナノチューブ構造体は、カーボンナノチューブの側面を被覆する高分子の層を有するため、カーボンナノチューブに高分子の特性に応じた新しい表面特性を付与することが可能となる。また、高分子がカーボンナノチューブの側面を層状に被覆するため、個々のカーボンナノチューブの側面が確実に被覆される。このため、被覆させる高分子の構造によって被覆の厚さやその電気抵抗等の特性、または表面形状や表面特性を制御することが可能になる。本発明に係る接合体は、このようなカーボンナノチューブ構造体が他の構造体と接合されているため、カーボンナノチューブの利用分野をさらに拡大することができる。たとえば、ナノデバイス等に好適に用いることができる。
本発明によれば、カーボンナノチューブおよびその側面に巻回された高分子を含むカーボンナノチューブ構造体と、該カーボンナノチューブ構造体と接合する他の構造体とを有することを特徴とする接合体が提供される。
本発明に係る接合体においては、高分子がカーボンナノチューブ側面に巻回された構成のカーボンナノチューブ構造体が用いられる。このようなカーボンナノチューブ構造体では、高分子がカーボンナノチューブ表面を被覆した状態が安定に維持される。また、高分子の巻回により、個々のカーボンナノチューブの側面が確実に被覆されるため、被覆させる高分子の構造によって被覆の厚さやその電気抵抗等の特性、または表面形状や表面特性を制御することが可能になる。本発明に係る接合体はこのようなカーボンナノチューブ構造体が他の構造体と接合されているため、ナノデバイス等に好適に用いることができる。
本発明の接合体において、カーボンナノチューブ構造体と他の構造体との接合形態としては様々な態様が考えられるが、両者が上記高分子を介して接合している構成とすることができる。
ここで、「高分子」とは、カーボンナノチューブに巻回するために充分な骨格鎖長を有する分子のことをいう。有機高分子および無機高分子のいずれを用いることもできるが、有機高分子を用いた場合、側鎖に多様な官能基を導入することができ、他の構造体と良好に接合する際、有利である。
本発明において、前記高分子が前記カーボンナノチューブの側面を直接被覆する構成とすることができる。こうすることにより、カーボンナノチューブの側面をさらに確実に被覆することができる。このため、接合体の製造安定性を向上させることができる。
また、カーボンナノチューブ側面において、被覆を有する領域が、側面の一部であってもよく、また全部であってもよい。
本発明の接合体において、前記高分子と前記他の構造体との間に、これらと接合する接合材を有する構成とすることができる。こうすることにより、カーボンナノチューブ構造体と他の構造体とをより一層確実に接合することができる。また、接合材の位置を選択することにより、高分子と他の構造体との接合位置を調節することが可能となる。
本発明の接合体において、前記接合材は、特異的相互作用を有する一組の分子を含むことができる。特異的相互作用を有する一組の分子を含むことにより、接合部位をより一層確実に制御することができる。また、分子の組み合わせを選択することにより、分岐を有する複雑な構成の接合体の形成も可能となる。
本発明の接合体において、特異的相互作用を有する前記一組の分子は、リガンドとレセプターの組み合わせ、または、抗原と抗体の組み合わせを含むものとすることができる。
本発明の接合体において、前記他の構造体は、本発明に係る構造体であってもよく、また、本発明に係る構造体以外の材料であってもよい。
本発明の接合体において、前記他の構造体は、基材とすることができる。このような接合体は、基板上に形成されたカーボンナノチューブ構造体を含む集積回路等に応用することができる。
本発明の接合体において、前記他の構造体は、金属膜とすることができる。こうした接合体は、金属からなる電極やパッドにカーボンナノチューブ構造体を固定した構造体に適用することができる。この場合、当該金属膜と特異的に結合または吸着する特定官能基あるいは特定分子を上記高分子に導入、結合することが有効である。こうすることにより、カーボンナノチューブ構造体と他の構造体との接合を容易かつ確実に形成できる。
本発明の接合体において、前記他の構造体は、カーボンナノチューブを含むことができる。こうした接合体は、たとえば、カーボンナノチューブ構造体が複数連結してなる配線に好適に適用できる。
この接合体において、前記カーボンナノチューブ構造体と接合した前記他の構造体に含まれる前記カーボンナノチューブは、その側面を被覆する高分子からなる層を有してもよい。
また、この接合体において、前記カーボンナノチューブ構造体と接合した前記他の構造体に含まれる前記カーボンナノチューブは、その側面に高分子が巻回された構造を有することができる。こうすることにより、カーボンナノチューブが側面同士で連結した接合体を形成することができる。
本発明において、前記層は、前記カーボンナノチューブの側面全面を一様に被覆している構成とすることができる。こうすることにより、カーボンナノチューブの分散安定性をさらに向上させることができる。また、カーボンナノチューブの表面のある領域に確実に被覆層を形成することができる。このため、所望の形状もしくは構造の接合体またはこれを用いたナノデバイスをさらに安定的に作製することができる。
本発明において、前記高分子が前記カーボンナノチューブの側面を均一な厚さで被覆する前記層を有する構成とすることができる。こうすることにより、カーボンナノチューブ構造体の表面特性のばらつきを低減することができる。
本発明において、前記カーボンナノチューブ構造体における前記層の厚さを1nm以上100nm以下とすることができる。
本発明において、前記高分子が絶縁体であってもよい。こうすることにより、カーボンナノチューブの側面に絶縁性の被覆を形成することが可能となる。
本発明において、前記高分子が生体高分子であってもよい。こうすることにより、カーボンナノチューブに新たな表面特性を付与することができる。
本発明において、前記高分子が水不溶性であってもよい。こうすることにより、高分子層の剥離およびカーボンナノチューブ表面への水分子の侵入を抑制し、カーボンナノチューブ構造体を水中で安定的に存在、また機能させることができる。このため、所望の形状もしくは構造の接合体またはこれを用いたナノデバイスをさらに安定的に作製、かつ動作させることができる。
本発明において、前記高分子はポリペプチドを含むことができる。ポリペプチドを用いた場合、その骨格鎖をカーボンナノチューブに安定的に巻回させ、安定な被覆層を形成することができる。また、アミノ酸残基側鎖の性質を基材との結合に用いることが可能になるとともに、これを用いて、カーボンナノチューブの側面に溶媒への分散性の向上等、多様な表面特性を付与することができる。
本発明において、上記高分子は変性タンパク質とすることができる。変性タンパク質は未変性タンパク質に比べて通常疎水部が露出した構造であるため、カーボンナノチューブ側面への被覆がより一層容易、確実になる。また、タンパク質の分散液を液体表面に展開することにより、気液界面の界面張力によってタンパク質を効率よく変性させ、疎水部を露出させることができる。なお本発明においてタンパク質の「変性」とは、当該タンパク質分子の立体構造の崩壊と機能の失活、または当該タンパク質分子を構成する一次構造すなわちアミノ酸配列の切断以外のコンフォメーション変化のことをいい、コンフォメーション変化の程度に特に制限はない。
本発明において、前記高分子は膜タンパク質とすることができる。膜タンパク質は多くの場合疎水性の高い領域を有しているため、これを用いることにより、カーボンナノチューブ側面に効率よく吸着し、安定的に被覆させることができる。このため、所望の形状もしくは構造の接合体またはこれを用いたデバイスをさらに安定的に作製することができる。
以上説明したように本発明によれば、カーボンナノチューブを含む構造体を、他の構造体と安定に接合する技術が提供される。
以下、本発明の実施形態について図面を用いて詳細に説明する。なお、すべての図面において、同様な構成要素には同様の符号を付し、適宜説明を省略する。まず、側面に被覆を有するカーボンナノチューブ構造体を用い、これを所定の位置で他のカーボンナノチューブ、カーボンナノチューブ構造体、または基板と連結した接合体について説明する。
(第1の実施形態)
本実施形態に係る接合体は、カーボンナノチューブの側面を高分子が被覆するカーボンナノチューブ構造体の被覆に接合材としてレセプターまたはリガンドが固定化されており、レセプターとリガンドとの特異的相互作用を介してカーボンナノチューブ構造体同士が連結された構成を有する。
本実施形態に係る接合体に用いられるカーボンナノチューブ構造体は、カーボンナノチューブの側面に高分子からなる被覆を有する。被覆は、カーボンナノチューブの表面の一部の領域に形成されていてもよく、またカーボンナノチューブの側面全面に一様に形成されていてもよい。また、被覆は、カーボンナノチューブの側面のある領域で全面にわたって緻密に形成された稠密な層であってもよい。
このカーボンナノチューブ構造体において、カーボンナノチューブの側面に高分子が巻回し、被覆していてもよい。また、巻回という被覆の態様においても、所定の条件において本発明における「層」が好適に形成される。
以下、高分子がカーボンナノチューブの側面に巻回するカーボンナノチューブ構造体を用いる場合を例に、説明する。本実施形態に係るカーボンナノチューブ構造体は、カーボンナノチューブの側面に高分子が巻回された構成を有する。
図1(a)は、第1の実施形態に係る接合体の構成を示す斜視図である。この接合体は、側面にレセプター167が固定化されたカーボンナノチューブ構造体131と、側面にリガンド169が固定化されたカーボンナノチューブ構造体131とが、リガンド169とレセプター167との特異的相互作用により連結された構成を有する。カーボンナノチューブ構造体131は、カーボンナノチューブ105の側面外周に高分子119が巻回した構成となっている。
カーボンナノチューブ構造体131において、カーボンナノチューブ105の側面外周の被覆は、高分子119の巻回によって形成されているため、被覆の表面形状や厚さは高分子119の主骨格構造により主として決定される。このため、一本のカーボンナノチューブ105における被覆の凹凸構造のピッチや厚さを均一にすることができる。さらに、カーボンナノチューブ105間における被覆の厚さ等のばらつきが抑制される。このため、ナノデバイスとして好適に用いることができる。
また、図1(a)の接合体においては、カーボンナノチューブ構造体131同士がレセプター167とリガンド169との特異的相互作用により連結しているため、カーボンナノチューブ構造体131の連結を、設計に応じて所定の位置で確実に形成することができる。
カーボンナノチューブ構造体131を構成するカーボンナノチューブ105は、設計に応じて所定の直径、長さのものを選択して用いる。たとえば、直径0.4nm〜100nm程度、長さ50nm〜10μm程度のものを選択する。単層カーボンナノチューブ(SWCNT)、多層カーボンナノチューブ(MWCNT)のいずれを用いてもよい。
高分子119は、カーボンナノチューブ105側面に巻回し、カーボンナノチューブ105の表面を被覆することができる分子であれば特に制限はなく、各種の合成高分子や生体高分子を用いることができる。また、巻回によりカーボンナノチューブの側面を層状に被覆する分子であることが好ましい。カーボンナノチューブ105の側面に巻回させるために、たとえば疎水性骨格鎖を有する合成高分子を用いることが好ましい。高分子119として、具体的には、たとえばポリオレフィン、ポリアミドや、ポリペプチド等が挙げられる。また、タンパク質、DNA、多糖等の生体高分子を用いることもできる。また、高分子119として水不溶性の高分子を用いてもよい。
このうち、ポリペプチドを用いることにより、巻回構造を安定的に再現性よく得ることができる。また、分子の有するアミノ酸の種類を選択することにより、カーボンナノチューブ105表面に多様な表面特性を付与することができる。また、カーボンナノチューブ構造体131同士の連結に用いる官能基の選択の自由度も高い。
タンパク質として、変性タンパク質を用いてもよい。特に、膜タンパク質由来の変性タンパク質は、通常非水溶性であり、疎水性アミノ酸を多く含む。そして、膜タンパク質由来の変性タンパク質は、未変性タンパク質に比べて通常疎水部が露出した構造であるため、カーボンナノチューブ105の側面への巻回がより一層容易、確実になる。たとえば後述のように、タンパク質の分散液を液体表面に展開することにより、分散液と液体との界面張力によってタンパク質を効率よく変性させて疎水部を露出させつつ、カーボンナノチューブ105の側面に巻回させ、被覆を形成することができる。また、タンパク質を変性させてカーボンナノチューブ105の側面を被覆することにより、層状の被覆を形成し、被覆層を薄膜とすることができる。
なお本実施形態において、タンパク質の「変性」とは、当該タンパク質分子の立体構造の崩壊と機能の失活、または当該タンパク質分子を構成する一次構造、すなわち、アミノ酸配列の切断以外のコンフォメーション変化のことをいい、コンフォメーション変化の程度に特に制限はない。
また、高分子119としてタンパク質を用いる場合、たとえばバクテリオロドプシン等の各種膜タンパク質を用いることができる。膜タンパク質は疎水性アミノ酸を多く含む。このため、気液界面で変性した膜タンパク質をカーボンナノチューブ105側面に効率よく吸着させ、安定的に巻回させることができる。また、カーボンナノチューブ105の表面に緻密な被覆層を形成することができる。なお、高分子119の骨格鎖長は、カーボンナノチューブ105の長さやカーボンナノチューブ構造体131の用途に応じて適宜選択される。
また、高分子119として、たとえば疎水性骨格を有し、側鎖に水酸基、カルボキシル基等の親水基を有する高分子を用いることにより、カーボンナノチューブ105の水中での分散性を顕著に向上させることができる。このとき、高分子119がカーボンナノチューブ105の表面に巻回されているため、カーボンナノチューブ105の側面を均一に被覆することができる。また、高分子119の側鎖を変化させることにより、後述するように他のカーボンナノチューブ105との連結位置を調節することができる。
また、レセプター167およびリガンド169には、各種リガンドおよびレセプターを用いることができる。たとえば抗原と抗体、または酵素と基質、基質誘導体もしくは阻害剤等、特異的相互作用を有する組み合わせとすることができる。具体的には、たとえばステロイドとそのレセプター等を用いることができる。また、図1(a)ではレセプター167とリガンド169との組み合わせとしているが、DNAとDNAまたはRNA等の組み合わせを接合材として用いてもよい。
なお、一般に抗体は抗原との結合部位を2箇所有する。このため、レセプター167とリガンド169との組み合わせを抗原と抗体等の組み合わせとすると、分岐構造を形成することができる。具体的にはたとえば、ジニトロフェノール(DNP)誘導体と抗DNP抗体等を用いることができる。
また、アビジンはビオチンとの結合部位を4箇所有するため、アビジンとビオチンとの相互作用を用いることにより、さらに複雑な分岐構造を有する接合体を形成することが可能となる。なお、アビジンにかわりストレプトアビジンを用いてもよい。分岐した構成の電子デバイスを形成する場合、連結箇所の電気抵抗が不均一であると、分岐したそれぞれのカーボンナノチューブ105に均一に電流が流れなくなるが、本実施形態では連結箇所に用いる接合材として上述の分子を用いているため、連結箇所の電気抵抗を均一にすることができる。このような分岐構造は、たとえばデバイスを作製する際の仮止めとして用いてもよい。仮止めとして用いる場合、分岐構造を形成した後、たとえば第5の実施形態にて後述するようにして交差部分における電気的なコンタクトを確保し、分岐配線構造として用いることができる。
次に、図1(a)の接合体の作製方法について、図2〜図4を参照して説明する。図2は、カーボンナノチューブ構造体131の製造方法の一例を示す図である。また、図3および図4は、カーボンナノチューブ構造体131同士をリガンド169およびレセプター167を介して連結させる方法を説明する図である。
図2において、まず、高分子119を分散媒121に分散させる(図2(a))。そして、カーボンナノチューブ105を添加してさらに分散させ、分散液123を得る(図2(b))。分散方法として、たとえば超音波分散器等を用いた方法が採用される。
得られた分散液123を、シリンジ109等を用いて水槽中の下層液125の液面上に展開する(図2(c))。図2では、水槽として可動式バリア127を備えたラングミュアトラフ113を用いている。
展開後、分散液123を静置する(図2(d))。すると、カーボンナノチューブ105側面にコンフォメーション変化した高分子119が巻回し、被覆したカーボンナノチューブ構造体131が得られる(図2(e))。
こうして得られたカーボンナノチューブ構造体131を基材の表面に付着させる。ここでは、下層液125の液面上に展開されたカーボンナノチューブ構造体131を、基板(不図示)表面に、水平付着法により付着させる。水平付着法とは、基板の表面が水面に水平になるよう、基板を液面に接触させ、引き上げることによって、水面上に展開されたカーボンナノチューブ構造体131を基板の表面に付着させる方法である。以上により、基板の表面に、カーボンナノチューブ構造体131が配置される。
ここで、分散媒121は、高分子119をある程度安定的に分散させることができる有機溶媒またはその混合液、水溶液等から適宜選択される。さらに、下層液125は、分散媒121および高分子119に応じて適宜選択される。たとえば、高分子119としてバクテリオロドプシンを用いる場合、分散媒121として有機溶媒の水溶液を用いることができる。具体的には、たとえば、DMF(ジメチルフォルムアミド)水溶液またはDMSO(ジメチルスルフォキシド)水溶液等を用いることができる。また、下層液125として、たとえばpH2以上6以下、好ましくはpH3以上4以下の酸性水溶液を用いることができる。こうすることにより、下層液125上に、カーボンナノチューブ105とバクテリオロドプシンの一様な混合単分子膜を形成することができる。図2(c)において、カーボンナノチューブ構造体131は、下層液125の気液界面の混合単分子膜上に形成される。
なお、バクテリオロドプシンを用いたカーボンナノチューブ構造体131の製造方法については、後述の実施例においてさらに詳細に説明する。
また、バクテリオロドプシン以外のタンパク質を高分子119として用いることもできる。このとき、システイン残基を有するタンパク質を用いる場合には、必要に応じてDTT(ジチオスレイトール)等の還元試薬を分散媒121または下層液125中に添加してもよい。こうすれば、高分子119をさらに確実にカーボンナノチューブ105側面外周に巻回させ、被覆することができる。
また、カーボンナノチューブ構造体131を作製する際に、図2(e)の工程に引き続き、しきり板、すなわちラングミュアトラフ113の可動式バリア127を用いて展開されたカーボンナノチューブ構造体131を圧縮する工程をさらに設けてもよい。展開されたカーボンナノチューブ構造体131を圧縮することにより、カーボンナノチューブ構造体131を一定方向に配向させることができる。たとえば高分子119として紫膜中のバクテリオロドプシンを用いる場合、たとえば表面圧力が5mN/m〜25mN/m程度になるまで圧縮速度20cm/min程度で圧縮することが好ましい。カーボンナノチューブ105の配向は、AFM(原子間力顕微鏡)などを用いて確認することができる。このとき、高分子119すなわち変性したタンパク質のうち、カーボンナノチューブ105に巻回しなかったものはアモルファス状単分子膜の凝集物となるが、この凝集物は、カーボンナノチューブ構造体131の支持体となり、カーボンナノチューブ105の配向状態を維持する。
なお、カーボンナノチューブ構造体131を圧縮する際、表面圧力が大きいほどカーボンナノチューブ105の側面に被覆される高分子119の厚さが厚くなる。したがって、接合体の用途に応じて圧縮速度を調節することにより、カーボンナノチューブ構造体131を多様な設計の接合体に適用することが可能となる。
次に、図3および図4を参照しながら、得られたカーボンナノチューブ構造体131と他のカーボンナノチューブ131構造体とを連結させる方法について説明する。ここで、図3(a)は、上述の方法により基板161上に付着されたカーボンナノチューブ構造体131を示す。なお、基板161の表面に、炭化物を形成し得る金属が含まれる場合、カーボンナノチューブ構造体131を付着させた後、適宜アニーリングを行ってもよい。こうすることにより、基板161とカーボンナノチューブ105との界面に炭化物が形成されるため、基板161表面にカーボンナノチューブ構造体131を確実に固定化することができる。
こうしてカーボンナノチューブ構造体131の付着した基板161の表面に緩衝液163を満たす(図3(b))。これは、たとえば基板161を緩衝液163中に浸漬することにより行うことができる。緩衝液163としては、レセプター167およびリガンド169の変性等を生じないものであればよく、リン酸緩衝液等公知のものが用いられる。
次に、カルボジイミド等を用いて予めカルボキシル基を活性化したレセプター167をカーボンナノチューブ構造体131側面の高分子119のアミノ基等と結合させる。結合方法としては、たとえばマイクロコンタクトプリンティング(μCP)法を用いることができる。このとき、活性化されたレセプター167を緩衝液等に分散または溶解し、この液体を、インクジェットプリンターのノズル等、ピコリットル程度の液体を噴霧することができるノズル165に充填し、噴霧することにより、カーボンナノチューブ構造体131の所定の位置に確実にレセプター167を固定化することが可能となる(図3(c))。なお、カルボジイミド法にかわり、他の縮合試薬を用いた方法で固定化を行ってもよい。
そして、緩衝液163を交換することにより、カーボンナノチューブ構造体131に固定化されなかったレセプター167を洗い流す(図3(d))。
また、図4(a)囲み部に示されるように、上記と同様の工程により、側面にリガンド169を固定化したカーボンナノチューブ構造体131を作製する。このとき、カーボンナノチューブ構造体131を基板(不図示)上に固定化した後、上述のようにしてリガンド169を固定化してもよいし、図2(e)の工程の後、カーボンナノチューブ構造体131を回収し、リガンド169とともに緩衝液中に懸濁し、カーボンナノチューブ構造体131にリガンド169を固定化してもよい。この場合、遠心分離によって結合しなかったリガンド169を除去してもよい。
こうして得られた、レセプター167の固定化されたカーボンナノチューブ構造体131とリガンド169の固定化されたカーボンナノチューブ構造体131とを連結させる。すなわち、図3(d)の工程に続き、表面にレセプター167の固定化されたカーボンナノチューブ構造体131を有する基板161上に満たされた緩衝液163中に、リガンド169の固定化されたカーボンナノチューブ構造体131を添加する(図4(a))。このとき、リガンド169の固定化されたカーボンナノチューブ構造体131は緩衝液中に分散させておくとよい。カーボンナノチューブ構造体131に固定化されたレセプター167とリガンド169とが特異的相互作用し、カーボンナノチューブ構造体131同士が連結される(図4(b))。以上より、基板161上にカーボンナノチューブ構造体131が所定の位置で連結された接合体が得られる。
なお、図1(a)の接合体の作製において、カーボンナノチューブ構造体131にレセプター167を固定化する際にも、リガンド169の固定化されたカーボンナノチューブ構造体131を作製する場合と同様に、図2(e)の工程の後、カーボンナノチューブ構造体131をレセプター167とともに緩衝液中に懸濁し、カーボンナノチューブ構造体131にレセプター167を固定化してもよい。
本実施形態に係る接合体は、ナノデバイスの配線構造等に好適に用いることができる。こうすれば、高分子119の分子構造によって被覆の厚さやその電気抵抗等の特性、または表面形状や表面特性を制御することが可能になる。
なお、本実施形態の接合体において、レセプター167またはリガンド169は、カーボンナノチューブ構造体131を構成するカーボンナノチューブ105に結合してもよい。たとえば、カーボンナノチューブ105の末端がカルボキシル化されている場合、カルボキシル基に固定化してもよい。
また、カーボンナノチューブ構造体131を基板161の所定の位置に制御性良く固定化することができれば、所望のナノデバイスをより一層安定的に製造することが可能となる。たとえば、第3の実施形態で説明するように、高分子119またはカーボンナノチューブ105の所定の位置にチオール基を導入し、金パッドの形成された基板161を用いれば、金とチオール基との特異的相互作用によって金パッド表面にカーボンナノチューブ構造体131を選択的に固定化することができる。
本実施形態によれば、カーボンナノチューブ105の表面の少なくとも一部に緻密な被覆層を形成することができる。このため、カーボンナノチューブに新たな表面特性を付与することができる。たとえば、水中での分散安定性に優れたカーボンナノチューブ構造体131を得ることができる。また、高分子119を絶縁性の物質とすることにより、カーボンナノチューブ105の表面に緻密な絶縁層を形成することができる。このようなカーボンナノチューブ構造体131を有する接合体は、被覆層をゲート絶縁膜とするトランジスタやキャパシタ等の電子デバイスに好適に用いることができる。さらには、高分子119の化学修飾性を利用することもできる。
本実施形態の方法において、カーボンナノチューブ105として多層カーボンナノチューブを用いた場合には、たとえば、カーボンナノチューブ105の表面に、均一な厚さの高分子119の被覆層を形成することができる。また、単層カーボンナノチューブを用いた場合には、所定のピッチを有する巻回層を形成することができる。
また、カーボンナノチューブ構造体131において、高分子119がカーボンナノチューブ105の側面に巻回した構成とすることにより、高分子119がカーボンナノチューブ105の側面に密着した状態で安定的に保持することができる。このため、カーボンナノチューブ構造体131の分散安定性または保存安定性を向上させることができる。また、高分子119を絶縁性の物質とすると、カーボンナノチューブ105の側面の絶縁性を向上させることができる。
高分子119が巻回したカーボンナノチューブ構造体131において、カーボンナノチューブの側面に一定ピッチの被覆が形成された構成であってもよい。このときの被覆の厚さは、被覆形成時の制御により適宜選択される。たとえば1nm以上100nm以下の範囲で被覆の厚さを制御することにより、カーボンナノチューブ105の電気的な表面特性を確実に変化させることができる。高分子119が巻回して被覆層を形成している場合、高分子119の巻回層は、単層であってもよく、また多層であってもよい。
また、本実施形態に係るカーボンナノチューブ構造体131はカーボンナノチューブ105の側面に、一定の厚さの均一な被覆層が形成された構成とすることもできる。
均一な被覆層が形成されたカーボンナノチューブ構造体131において、被覆層の厚さは、たとえば0.1nm以上、好ましくは1nm以上とすることができる。こうすることにより、カーボンナノチューブ105の表面特性を確実に変化させることができる。また、被覆層の厚さはたとえば10nm以下、好ましくは5nm以下とすることができる。こうすることにより、被覆層を薄膜とすることができる。このため、カーボンナノチューブ105の特性を充分に発揮させつつ、さらに分散安定性を向上させることができる。また、必要最少量の高分子119を用いてカーボンナノチューブ105の表面に薄層を効率よく形成することができる。また、高分子119を絶縁層の物質とすると、カーボンナノチューブ105の側面にトンネル層として利用可能な薄い絶縁膜を安定的に形成することができる。このため、種々の電子デバイスに好適に用いることができる。
なお、本実施形態において、カーボンナノチューブ構造体131は以下の方法で作製することもできる。図15は、カーボンナノチューブ構造体の製造手順を説明する図である。図15に示した方法においても、基本的には図2を用いて前述した方法を用いることができるが、カーボンナノチューブ105の分散液183と高分子119の分散液185とを別々に調製し、カーボンナノチューブ105の分散液183、高分子119の分散液185の順に下層液125上に展開する点が異なる。
まず、カーボンナノチューブ105を分散媒180に分散させ、分散液183を調製する(図15(a))。分散媒180として、たとえば10v/v%以上90v/v%以下のDMF水溶液または10v/v%以上90v/v%以下のDMSO水溶液を用いることができる。こうすることにより、カーボンナノチューブ105を分散液183中で良好に分散させることができる。また、分散の際に超音波処理を行ってもよい。次に、得られた分散液183を、下層液125上に展開する(図15(b))。
また、高分子119を分散媒181に分散させて、分散液185を調製する(図15(c))。分散媒181は、高分子119をある程度安定的に分散させておくことが可能な有機溶媒またはその水溶液とすることができる。こうすることにより、後述するように、分散液185を下層液125の上に展開した際に、気液界面における高分子119によるカーボンナノチューブ105の側面の被覆を安定的に生じさせることができる。
また、分散媒181は、カーボンナノチューブ105をある程度安定的に分散させうることが好ましい。こうすることにより、確実に高分子119により一本一本のカーボンナノチューブ105の側面を被覆することができる。分散媒181は、たとえば図2において前述した方法において分散媒121として利用可能な液体とすることができる。また、分散媒181に分散媒180と同じものを用いてもよい。
次に、得られた分散液185を、分散液183を展開した下層液125上にさらに展開する(図15(d))。分散液185を展開すると、高分子119とカーボンナノチューブ105とが混和し、カーボンナノチューブ105の側面を高分子119が被覆し、カーボンナノチューブ構造体131が形成される(図15(e))。
このように、カーボンナノチューブ105の分散液183と高分子119の分散液185とを異なるタイミングで下層液125上に展開した場合にも、カーボンナノチューブ構造体131を安定的に製造することができる。
図15の方法において、カーボンナノチューブ105として多層カーボンナノチューブを用いた場合には、カーボンナノチューブ105の表面に、均一な厚さの高分子119の被覆層を形成することができる。また、単層カーボンナノチューブを用いた場合には、所定のピッチで高分子119を巻回させた被覆を形成することができる。また、この場合、所定の条件で高分子119が層状に被覆した巻回層を得ることができる。
(第2の実施形態)
本実施形態は、カーボンナノチューブ構造体と高分子が被覆していないカーボンナノチューブとを連結させた接合体に関する。図1(b)は、本実施形態に係る接合体の構成を示す上面図である。図1(b)に示される接合体の作製を、第1の実施形態と異なる部分を中心に図2、図3および図5を用いて説明する。
第1の実施の形態と同様に、図2、図3の工程によって基板161上のカーボンナノチューブ構造体131にレセプター167を固定化する(図3(d))。
次いで、表面にレセプター167の固定化されたカーボンナノチューブ構造体131を有する基板161上に満たされた緩衝液163中に、リガンド169を固定化したカーボンナノチューブ105を添加する(図5(a))。カーボンナノチューブ構造体131に固定化されたレセプター167とカーボンナノチューブ105に固定化されたリガンド169とが特異的相互作用し、カーボンナノチューブ構造体131とカーボンナノチューブ105とが連結される(図5(b))。
ここで、カーボンナノチューブ105端部へのリガンド169の固定化は、以下のようにして行う。カーボンナノチューブ105として、予め切断することにより末端にカルボキシル基が導入されたものを用いる。カーボンナノチューブ105の切断方法として、酸処理と超音波処理とを組み合わせた方法等、公知の方法を採用することができる。そして、カーボンナノチューブ105の末端のカルボキシル基を上述の場合と同様に、カルボジイミド法等により活性化し、リガンド169のアミノ基等を固定化する。
以上より、基板161上にカーボンナノチューブ構造体131とカーボンナノチューブ105とが所定の位置で連結された接合体を形成することができる。このとき、カーボンナノチューブ構造体131とカーボンナノチューブ105とを用いているため、カーボンナノチューブ構造体131の所定の側面にカーボンナノチューブ105の端部を連結することが可能である。
本実施形態においても、レセプター167、リガンド169の組み合わせに限らず、他の組み合わせに係る特異的相互作用を用いてカーボンナノチューブ構造体131とカーボンナノチューブ105とを連結させてもよい。たとえば第1の実施形態に記載の組み合わせを採用してもよい。
たとえば、図1(c)は、レセプター167とリガンド169の組み合わせにかわり、抗体171と抗原173とを介してカーボンナノチューブ105とカーボンナノチューブ構造体131とが連結された構成を示す。また、図1(d)は、アビジン175とビオチン177との特異的な相互作用を介してカーボンナノチューブ構造体131とカーボンナノチューブ105とを連結させた構成を示す。このように、所定の組み合わせを選択することにより、分岐した連結構造を含む複雑な接合体の形成が可能となる。
(第3の実施形態)
本実施形態は、カーボンナノチューブ構造体を基板上に固定化する方法に関する。図7は、本実施形態に係る接合体の構成を示す図である。カーボンナノチューブ構造体131は、高分子119の有するチオール基によって、基材(不図示)上の金179の表面に選択的に吸着している。
本実施形態において、高分子119としては、たとえば第1の実施形態に記載の物質にチオール基を導入して用いる。また、チオール基を有する高分子119をそのまま用いてもよい。また、基材としては、たとえば表面の一部もしくは全体に金179を有する材料を用いることができる。金179を有する材料を用いることにより、高分子119の有するチオール基を表面に選択的に吸着させることが可能となる。
図7の接合体は、以下のようにして作製する。すなわち、第1の実施形態と同様にしてカーボンナノチューブ105の側面に高分子119を被覆したカーボンナノチューブ構造体131を、水平付着法により基材上の金179の表面に付着させる。高分子119を被覆する際には、必要に応じてDTT等の還元試薬を図2中の分散媒121または下層液125中に添加してもよい。そして、基板表面を、超音波振動を与えながらエタノールで洗い流すことにより、金179表面にカーボンナノチューブ構造体131が配置される。
このようにすれば、簡便なステップで、基材表面のうち金179が設けられた部分に選択的にカーボンナノチューブ構造体131を吸着させることができる。なお、チオール基は、高分子119に導入した場合を例示したが、カーボンナノチューブ105の末端に導入してもよい。
また、金179の表面にチオール基およびアミノ基を有する分子を吸着ないし結合し、これとカーボンナノチューブ構造体131の有するカルボキシル基とを反応させることにより、金179およびカーボンナノチューブ構造体131を接合することができる。具体的には以下のようにする。まず金179の表面にHS−(CH2n−NH2(ただし、nは自然数)等のチオール基を有する分子を吸着させることによりアミノ基を導入する。つづいて高分子119またはカーボンナノチューブ105の末端に存在するカルボキシル基をカルボジイミド法等により活性化し、上記と同様にして金179表面に連結させることができる。このとき、金179表面における所定の位置にチオール基を有する分子を吸着させておけば、その位置において選択的にカーボンナノチューブ構造体131を固定させることが可能となる。
本実施形態の方法を用いると、たとえばカーボンナノチューブ接合体を配線に用いたトランジスタを作製する際に、表面に金電極を用いた基板を用いることにより、金電極上にカーボンナノチューブ構造体131を選択的に接合することが可能となる。このため、トランジスタの製法を簡便なものとするとともに製造安定性も向上させることが可能となる。
以上、本発明の接合体について実施の形態に基づいて説明した。このようにして得られる接合体は、様々な用途への展開が可能である。
たとえば、電子デバイスにおいて、基板上や電極上等の所定の位置にカーボンナノチューブ構造体を配置し、固定化することが可能となる。このとき、第1の実施形態において説明したように、カーボンナノチューブ構造体は一定方向に配列させることができるため、方向についても制御可能であり、精密な設計に対応可能である。
また、カーボンナノチューブまたはカーボンナノチューブ構造体同士を結合させれば、種々のナノ立体構造を形成することも可能となるため、ナノ回路構造や3次元ナノ配線等に利用することができる。以下、そうしたデバイスについて例を挙げて説明する。
(第4の実施形態)
図12は、本実施形態に係る単一電子トランジスタ200の概略構造を示す。図12を参照して、シリコン基板202上に、ソース電極204、ドレイン電極206およびゲート電極208が離間して形成されている。ソース電極204とドレイン電極206にまたがるようにカーボンナノチューブ構造体131が形成されている。カーボンナノチューブ構造体131は、カーボンナノチューブ105の表面を高分子119が被覆した構造となっている。カーボンナノチューブ構造体131は、高分子119を介してソース電極204とドレイン電極206に固定されている。なお、高分子119と、ソース電極204、ドレイン電極206との間には、接合材が介在してもよい。本実施形態では、カーボンナノチューブ構造体131はシングルウォール構造のカーボンナノチューブが好ましく用いられる。また、高分子119として、チオール基を導入したポリペプチドが好ましく用いられる。たとえば、高分子119として、チオール基を導入したバクテリオロドプシンを用いてもよい。
この単一電子トランジスタ200において、高分子119はトンネル層として機能し、カーボンナノチューブ105のうちのソース電極204とドレイン電極206の間に位置する部分がクーロンアイランドとして機能する。すなわち、ソース電極204から高分子119を介してカーボンナノチューブ105に電子が流入し、カーボンナノチューブ105から高分子119を介してドレイン電極206に電子が流出する。ゲート電極208に印加される電圧に応じてカーボンナノチューブ105内に存在する電子の数が制御され、ドレイン電流の大きさが制御される。単一電子トランジスタ200によれば、数個の電子によりスイッチング動作を行うことができるので、従来のMOSFETに比べ飛躍的に消費電力を低減することができる。
この単一電子トランジスタ200は、以下のようにして作製することができる。まずシリコン基板202上に、公知のリソグラフィ技術およびエッチング技術を用いることにより、ソース電極204、ドレイン電極206およびゲート電極208を形成する。次に、第3の実施の形態で述べた方法により、カーボンナノチューブ構造体131を作製し、これを金により構成されたソース電極204およびドレイン電極206に選択的に付着させる。以上のようにして、図12に示す単一電子トランジスタ200を形成することができる。
カーボンナノチューブ構造体131の各部のサイズは、たとえば以下の範囲とする。
カーボンナノチューブの長さ:100〜1,000nm
カーボンナノチューブの直径:1〜50nm
高分子の厚み:0.3〜20nm
一般的に、単電子トランジスタの設計においては、クーロンアイランドおよびこれとソース・ドレイン電極との間に介在するトンネル層を、量子効果が発現する程度の微小サイズで再現性よく形成することが重要な技術的課題となる。本実施形態では、カーボンナノチューブ105のうちのソース電極204とドレイン電極206の間に位置する部分がそのままクーロンアイランドとなるので、そのサイズの設計は容易である。
すなわち、ソース電極204とドレイン電極206の間の距離を適宜に設定すればその距離がクーロンアイランドの長さになる。また、カーボンナノチューブの直径がクーロンアイランドの幅になるが、これはカーボンナノチューブの作製条件を適切に調節することにより精度良く制御することが可能である。一方、トンネル層の厚みは、高分子119の種類の選択およびカーボンナノチューブ105の表面に高分子119を被覆する際の条件の調整により、良好に制御できる。このように本実施形態の単一電子トランジスタ200は、設計した寸法により良好な製造安定性で作製することができる。この結果、量子効果に基づく素子性能を安定的に発揮する。
なお、本実施形態において、クーロンアイランドを確実に機能する程度の大きさとするために、エッチングやナノインプリンティングの技術を用いてもよい。
(第5の実施形態)
本実施形態は、微小サイズのキャパシタに関するものである。以下、図13および図14を参照して説明する。図13は、本実施形態に係るナノキャパシタの断面図である。このキャパシタは、カーボンナノチューブ254および高分子255からなるカーボンナノチューブ構造体256が、接合材210を介して電極251と結合した構成を有する。接合材210は、一対のリガンドおよびレセプターからなり、一方が高分子255に結合し、他方が第一電極251に結合している。
カーボンナノチューブ254および電極251はいずれも良伝導性を示す材料により構成されており、それぞれキャパシタの電極として機能する。高分子255は、これらの電極に挟まれた容量膜として機能する。
カーボンナノチューブ構造体256の各部のサイズは、たとえば以下の範囲とする。
カーボンナノチューブの長さ:100〜1,000nm
カーボンナノチューブの直径:1〜100nm
高分子の厚み:0.3〜50nm
図14は、図13のキャパシタと、これに電力を供給する配線を備える構造体250の概略図である。シリコン基板260上に第一電極251と第二電極252とが形成されている。カーボンナノチューブ構造体256は前述したキャパシタの一部を構成する。カーボンナノチューブ構造体264は、カーボンナノチューブ262および高分子263からなり、キャパシタに電力を供給する微細配線としての役割を果たす。カーボンナノチューブ構造体256の高分子255は容量膜として機能するため、その厚みは比較的厚い。一方、カーボンナノチューブ構造体264の高分子263は、配線の絶縁被覆層として機能するため、その厚みは比較的薄い。
この2つのカーボンナノチューブ構造体は、その端部において交差し接触している。接触部においては高分子は除去されカーボンナノチューブ同士が直接接触し、オーミックコンタクトが実現される。交差部は金属パッド253により覆われ、良好なコンタクト抵抗が得られるようになっている。この交差部は、カーボンナノチューブ構造体の接合体を作製した後、接合部分の高分子を除去しつつ接合部分を金属材料でモールドするといった方法が有効である。すなわち、カーボンナノチューブ構造体256の高分子255およびカーボンナノチューブ構造体264の高分子263を、すでに述べた接合材を用いる等の方法により接合した後、この接合部分に金属膜を選択的に成膜する。この成膜工程において加熱処理を加える等の方法により、上記高分子を除去することができる。
以上、本発明を実施の形態に基づいて説明した。これらの実施形態は例示であり、それらの各構成要素や各処理プロセスの組合せにいろいろな変形例が可能なこと、またそうした変形例も本発明の範囲にあることは当業者に理解されるところである。
たとえば、高分子119の所定の位置にチオール基を導入してもよい。こうすることにより、リガンドとレセプター等の連結用分子を用いずに、カーボンナノチューブ構造体131同士を連結させた接合体が得られる。
図6は、この接合体の構成を示す斜視図である。図6に示されるように、基板上161で、2つのカーボンナノチューブ構造体131が、それぞれの高分子119中の側鎖間でジスルフィド結合を形成している。図6の接合体は、高分子119の有するチオール基同士を結合させるため、より簡便な構成であり、作製も容易である。また、結合用の分子を用いていないため、連結されたカーボンナノチューブ構造体131中の、カーボンナノチューブ105間の導電性がより一層良好に確保される。なお、図6では、二つのカーボンナノチューブ構造体131同士が連結されているが、3つ以上のカーボンナノチューブ構造体131が連結した接合体についても同様に作製することができる。
本実施例においては、まず、様々な接合体を構成する基礎単位であるカーボンナノチューブ構造体を作製した。
図8はカーボンナノチューブ構造体の製造方法を示す図である。図8に示されるように、本実施例では、カーボンナノチューブ105に変性バクテリオロドプシン115のポリペプチド鎖を巻回させたカーボンナノチューブ構造体117を作製した。
まず、バクテリオロドプシン101を含む紫膜を分散媒103に分散させた(図8(a))。バクテリオロドプシン101として、たとえば、紫膜または紫膜に含まれるバクテリオロドプシン101を用いることができるが、本実施例では紫膜を用いた。紫膜は、ハロバクテリウム・サリナルム(Halobacterium salinarum)などの好塩菌から分離することができる。紫膜の分離には、Methods in Enzymology,31,A,pp.667−678(1974)に記載の方法を用いた。また、分散媒103として、33v/v%DMF(ジメチルフォルムアミド)水溶液を用いた。なお、分散媒103としては、33v/v%DMF(ジメチルフォルムアミド)水溶液に限らず、有機溶媒の水溶液等を用いることができる。
バクテリオロドプシン101の分散液に過剰量のカーボンナノチューブ105を加え、超音波分散器を用いて1時間以上分散化処理を行った(図8(b))。分散後、残存するカーボンナノチューブ105の凝集物を除去した。カーボンナノチューブとして、CNI社製単層カーボンナノチューブ(Open end type、直径約1nm、精製純度約93%)を用いた。
こうして得られた分散液107(図8(c))を、シリンジ109を用いて、水槽に張った下層液111の液面上に静かに展開した(図8(d))。こうすることにより、カーボンナノチューブ105とバクテリオロドプシン101の混合単分子膜が得られた。なお、本実施例では、水槽としてラングミュアトラフ113を用い、下層液111としてHClでpH3.5に調製した純水を用いた。
次に、カーボンナノチューブ105とバクテリオロドプシン101の混合単分子膜を静置し、バクテリオロドプシン101を下層液111の界面張力によって界面変性させた。紫膜を用いる場合、紫膜中のすべてのバクテリオロドプシンが界面変性するまで、室温で5時間以上静置することが好ましいため、本実施例でも5時間静置した(図8(e))。こうすることにより、変性バクテリオロドプシン115が、カーボンナノチューブ105の側面に巻回するようになる(図8(f))。
こうして得られたカーボンナノチューブ構造体117を、AFMおよびTEM(透過型電子顕微鏡)を用いて確認した。図9、図10、および図16は、カーボンナノチューブ構造体117のAFM像を示す図である。また、図11は、バクテリオロドプシン101を添加せずにカーボンナノチューブ105のみを分散させた分散液について、同様の処理を行った場合のカーボンナノチューブ105のAFM像を示す図である。AFM観察には、生体分子可視化・計測装置BMVM−X1(Digital Instruments社製NanoScopeIIIaを改造)を用いた。シリコン単結晶(NCH)をプローブとして用いた。図9〜図11では、測定モードをタッピングAFMとし、測定範囲は、604nm×604nm(Z8nm)とした。
図9、図10、および図16を図11と比較すると、図9、図10、および図16より、バクテリオロドプシン101を添加した場合には20nm程度のほぼ一定のピッチを有する凹凸がカーボンナノチューブ105の表面に形成されている。また、図10より、表面の凹凸の山頂と谷底間の高さ、すなわち被覆の厚さはほぼ一定であることがわかる。したがって、カーボンナノチューブ105表面に変性バクテリオロドプシン115が巻回することにより、均一な厚みの被覆層が表面に形成されていることがわかる。一方、図11より、カーボンナノチューブ105のみを同様に観察した場合、このような凹凸表面は観察されない。したがって、カーボンナノチューブ105の表面に変性バクテリオロドプシン115が巻回していることがわかる。
また、上記水面上に形成されたカーボンナノチューブ構造体117を、その支持単分子膜ごとTEM観察用グリッドに転写し、乾燥後にTEMでそのまま観察した。図17は、カーボンナノチューブ構造体117のTEM像を示す図である。図17に示したように、カーボンナノチューブ105の表面に、所定のピッチを有する変性バクテリオロドプシン115の緻密な巻回層が形成されていた。
このように、本実施例では、バクテリオロドプシン101とカーボンナノチューブ105とを分散させ、液面上に展開するという簡便な方法により、カーボンナノチューブ構造体117を作製することができた。得られたカーボンナノチューブ構造体117を用いることにより、所定の構成の接合体を形成することが可能となる。
また、カーボンナノチューブ105として、MTR Ltd.社製多層カーボンナノチューブ(Closed end type、直径数10〜200nm、精製純度約95%)を用いて、図8に示した上述の方法によりカーボンナノチューブ構造体117を作製した。そして、得られたカーボンナノチューブ構造体117について、AFM観察およびTEM観察を行った。図18は、多層カーボンナノチューブを用いて作製したカーボンナノチューブ構造体117のAFM像を示す図である。また、図19は、多層カーボンナノチューブを用いて作製したカーボンナノチューブ構造体117のTEM像を示す図である。
図18に示したように、カーボンナノチューブ105に多層カーボンナノチューブを用いた場合にも、カーボンナノチューブ構造体117が略平行に配向した配向膜が得られた。また、上記水面上に形成されたカーボンナノチューブ構造体117を、その支持単分子膜ごとTEM観察用グリッドに転写し、乾燥後にTEMでそのまま観察したところ、図19に示したように、カーボンナノチューブ105の表面に変性バクテリオロドプシン115の層が均一に形成されていた。また、変性バクテリオロドプシン115の層の厚さは、3nm程度であった。
以上のように、膜タンパク質であるバクテリオロドプシン101を用いることにより、製造安定性に優れるカーボンナノチューブ構造体117を得ることができた。また、本実施例では両親媒性構造を有する脂質膜がバクテリオロドプシン101の周りに配位する紫膜を用いて、カーボンナノチューブ構造体117を安定的に製造することができた。
なお、高分子119として、バクテリオロドプシン101にかえて子牛由来ヒストンタンパク質を用いてカーボンナノチューブ構造体117の作製を試みた。ところが、下層液111上にヒストンタンパク質の良好な単分子膜が形成されず、カーボンナノチューブ105の表面にヒストンタンパク質の被覆層を形成することはできなかった。
さらに、図8を用いて説明した方法にかえて、図15に記載の方法を用いてカーボンナノチューブ構造体117の作製を試みた。ここで、図15における分散媒180および分散媒181として、33v/v%DMF(ジメチルフォルムアミド)水溶液を用いた。また、下層液125として、HClでpH3.5に調製した純水を用いた。
その結果、カーボンナノチューブ105として単層カーボンナノチューブおよび多層カーボンナノチューブのいずれを用いた場合も、変性バクテリオロドプシン115がカーボンナノチューブ105の表面を被覆したカーボンナノチューブ構造体117を安定的に得ることができた。また、得られたカーボンナノチューブ構造体117の分散安定性は良好であった。
一方、図15に記載の方法とは逆に、下層液125上に先に分散液185を展開し、次いで分散液183を展開した場合、カーボンナノチューブ構造体117を得ることができなかった。
このように、気液界面近傍に先にカーボンナノチューブ105を存在させた後にバクテリオロドプシン101を添加することにより、界面においてバクテリオロドプシン101を変性させて、その疎水性領域を露出させつつ、カーボンナノチューブ105の表面との間の疎水的相互作用によりカーボンナノチューブ105の表面を被覆させることができる。
また、本実施例では、得られたカーボンナノチューブ構造体117のガラス基板上への固定化および固定化したカーボンナノチューブ構造体117の表面のビオチン化およびアビジン化を行った。
カーボンナノチューブ105として、上述のMWCNTを用い、図8に示した上述の方法によりカーボンナノチューブ構造体117を作製した。ここで、図8を用いて上述したように、下層液111上には、変性バクテリオロドプシン115により側面を被覆されたカーボンナノチューブ105、すなわちカーボンナノチューブ構造体117の単分子膜が形成される。
そこで、このカーボンナノチューブ構造体117の単分子膜をスライドガラスの表面に転写した。図20(a)〜図20(d)および図21(a)〜図21(d)は、本実施例において、ビオチン化に先立ち準備したカーボンナノチューブ構造体転写基板の作製手順を説明する図である。図21(a)から図21(d)は、それぞれ図20(a)〜図20(d)のA−A’断面図である。
まず、基板としてスライドガラス271を準備し(図20(a)、図21(a))、前述した水平付着法を用いてスライドガラス271の一方の面にカーボンナノチューブ構造体117の単分子膜を付着させ、カーボンナノチューブ構造体転写面273とした(図20(b)、図21(b))。カーボンナノチューブ構造体117の単分子膜は、後述する操作により流失することなく、スライドガラス271の表面に強固に付着していた。
次いで、カーボンナノチューブ構造体転写面273の上に、二つのスペーサ275を互いに略平行に配置した(図20(c)、図21(c))。スペーサ275は、スライドガラス271の長辺の周縁部に、スライドガラス271の長手方向に沿って配置した。そして、二つのスペーサ275上にカバーガラス277を配置した(図20(d)、図21(d))。これにより、カーボンナノチューブ構造体転写面273とカバーガラス277との間に、スペーサ275の厚さの空隙278が形成された。スペーサ275間に形成される空隙278の間隔dを約1cmとした。
次いで、この空隙278に以下の試薬を順次流し入れることにより、カーボンナノチューブ構造体転写面273のビオチン化を行い、次いで、ビオチンを介してカーボンナノチューブ構造体117の表面をアビジン化した。
ビオチン化またはアビジン化の際に、以下の試薬を用いた。Biotin−AC5−OSu(同仁化学研究所社製)1.1mgにDMSO1.24mlを加え、1.95mMビオチンDMSO溶液を作製した。このビオチンDMSO溶液50μlに純水950μlを加え、0.0976mMのビオチン溶液とした。得られたビオチン溶液を、A液(約0.1mMビオチン溶液)とした。蛍光色素結合アビジン(Avidun, Alexa Flour 488 conjugate:Molecular Probes社製)0.09mgを0.5Mリン酸ナトリウムバッファー(pH7.1)900μLに溶解させた。これをB液とした。
図22(a)〜図22(f)および図23(a)〜図23(c)は、カーボンナノチューブ構造体転写面273のビオチン化の手順を説明する図である。
まず、変性バクテリオロドプシン115中のリジン残基を活性化するために、カーボンナノチューブ構造体転写面273とカバーガラス277との間の空隙278の一方の端にピリジンを滴下した。すると、毛細管現象により空隙278中に速やかにピリジンが流入した。そして、空隙278の他方の端から、濾紙を用いてピリジンを吸い取った(図22(a))。次に、空隙278の一端から空隙278中に純水を流入させ、他端から濾紙に吸い取らせる操作を数回繰り返した。
図23(a)は、図22(b)の状態のカーボンナノチューブ構造体117の断面の一部を模式的に示す図である。図23(a)は、MWCNT279の表面に変性バクテリオロドプシン115が被覆形成されている様子を示す。なお、変性バクテリオロドプシン115一分子は248個のアミノ酸残基を有し、そのうちの7個がリジン残基281である。
次に、空隙278の一端から空隙278中にA液を流入させた後、他端から濾紙に吸い取らせた(図22(c))。そして、図22(b)と同様にして、空隙278中に純水を流し、カーボンナノチューブ構造体転写面273の表面を洗浄した(図22(d))。図23(b)は、図22(d)の状態のカーボンナノチューブ構造体117の断面の一部を模式的に示す図である。本実施例で用いたビオチン283はスクシンイミドにより活性化されているため、図23(b)に示したように、変性バクテリオロドプシン115のリジン残基281にビオチン283が結合する。
そして、空隙278の一端から空隙278中にB液を100μL流入させた後、他端から濾紙に吸い取らせた(図22(e))。そして、図22(b)と同様にして、空隙278中に100μLのバッファーを流し、カーボンナノチューブ構造体転写面273の表面をバッファーで6回洗浄した後、空隙278をバッファーで満たした(図22(f))。図23(c)は、図22(f)の状態のカーボンナノチューブ構造体117の断面の一部を模式的に示す図である。ビオチン283とアビジン285との特異的相互作用により、カーボンナノチューブ構造体117の表面がビオチン283を介してアビジン化する。
このようにして表面をアビジン化したカーボンナノチューブ構造体転写面273の表面を蛍光顕微鏡観察に供した。観察は、カバーガラス277の側を蛍光顕微鏡の油芯レンズにつけて行った。
図24は、ビオチン283を介してアビジン化したカーボンナノチューブ構造体転写面273の蛍光顕微鏡像を示す図である。図24に示したように、背景に対し、紐状のMWCNT279の表面が顕著に発光していた。MWCNT279の表面は、赤味がかった緑色に発光していた。
一方、カーボンナノチューブ構造体117を付着させていないスライドガラス271の表面に対し、同様にしてビオチン化処理および蛍光色素結合アビジン化処理を行い、蛍光顕微鏡観察を行ったところ、視野の全体が一様に薄い緑色に発光していた。
なお、本実施例に使用した蛍光色素結合アビジンは、吸収波長の極大値が約495nmであり、また、蛍光波長の極大値が約519nmである。
図24より、カーボンナノチューブ構造体117を付着させたカーボンナノチューブ構造体転写面273において、カーボンナノチューブ構造体117を構成するMWCNT279の表面を変性バクテリオロドプシン115が緻密に被覆しているため、緻密な被覆層にアビジン285が濃縮され、MWCNT279の表面がその形状に赤味がかった緑色に発光し、バックグラウンドと比較して顕著に強く発光していることがわかる。
また、MWCNT279の被覆層の表面を安定的にビオチン化し、ビオチン283とアビジン285の特異的相互作用を用いて被覆層の表面を安定的にアビジン化することができた。
以上のように、本実施例では、ガラス基板の表面にカーボンナノチューブ構造体117を固着させたカーボンナノチューブ接合体を作製することができた。また、付着させたカーボンナノチューブ構造体117の表面をビオチン化するとともに、このビオチン283を介してカーボンナノチューブ構造体117の表面をアビジン化することができた。
また、本実施例の方法を用いれば、アビジン285を他の構造体に結合させておくことにより、さらに種々の形状または構造を有するカーボンナノチューブ接合体を作製することができる。
実施の形態に係る接合体を示す図である。 実施の形態に係るカーボンナノチューブ構造体の製造方法を説明するための図である。 実施の形態に係るカーボンナノチューブ構造体とカーボンナノチューブとをリガンドおよびレセプターを介して連結させる方法を説明する断面図である。 実施の形態に係るカーボンナノチューブ構造体とカーボンナノチューブとをリガンドおよびレセプターを介して連結させる方法を説明する断面図である。 実施の形態に係るカーボンナノチューブ構造体とカーボンナノチューブとをリガンドおよびレセプターを介して連結させる方法を説明する断面図である。 実施の形態に係る接合体を示す斜視図である。 実施の形態に係る接合体を示す図である。 実施例に係るカーボンナノチューブ構造体の製造方法を説明するための図である。 実施例のカーボンナノチューブ構造体を示すAFM写真である。 実施例のカーボンナノチューブ構造体を示すAFM写真である。 実施例のカーボンナノチューブを示すAFM写真である。 実施の形態に係る単一電子トランジスタの概略構造を示す図である。 実施の形態に係るナノキャパシタの断面図である。 図13のキャパシタと、これに電力を供給する配線を備える構造体の概略図である。 実施の形態に係るカーボンナノチューブ構造体の製造手順を説明する図である。 実施例に係る単層カーボンナノチューブ構造体のAFM像を示す図である。 実施例に係る単層カーボンナノチューブ構造体のTEM像を示す図である。 実施例に係る多層カーボンナノチューブ構造体のAFM像を示す図である。 実施例に係る多層カーボンナノチューブ構造体のTEM像を示す図である。 実施例に係るカーボンナノチューブ構造体転写面のアビジン化前準備手順を説明する図である。 実施例に係るカーボンナノチューブ構造体転写面のアビジン化前準備手順を説明する図である。 実施例に係るカーボンナノチューブ構造体転写面のアビジン化の手順を説明する図である。 実施例に係るカーボンナノチューブ構造体転写面のアビジン化の手順を説明する図である。 実施例に係るカーボンナノチューブ構造体転写面のアビジン化後の蛍光顕微鏡像を示す図である。
符号の説明
101 バクテリオロドプシン、 103 分散媒、 105 カーボンナノチューブ、 107 分散液、 109 シリンジ、 111 下層液、 113 ラングミュアトラフ、 115 変性バクテリオロドプシン、 117 カーボンナノチューブ構造体、 119 高分子、 121 分散媒、 123 分散液、 125 下層液、 127 可動式バリア、 131 カーボンナノチューブ構造体、 161 基板、 163 緩衝液、 165 ノズル、 167 レセプター、 169 リガンド、 171 抗体、 173 抗原、 175 アビジン、 177 ビオチン、 179 金、 180 分散媒、 181 分散媒、 183 分散液、 185 分散液、 200 単一電子トランジスタ、 202 シリコン基板、 204 ソース電極、 206 ドレイン電極、 208 ゲート電極、 210 接合材、 250 構造体、 251 第一電極、 252 第二電極、 254 カーボンナノチューブ、 255 高分子、 256 カーボンナノチューブ構造体、 260 シリコン基板、 262 カーボンナノチューブ、 263 高分子、 264 カーボンナノチューブ構造体、 271 スライドガラス、 273 カーボンナノチューブ構造体転写面、 275 スペーサ、 277 カバーガラス、 279 MWCNT、 281 リジン残基、 283 ビオチン、 285 アビジン。

Claims (12)

  1. カーボンナノチューブおよびその側面を被覆する高分子からなる層を含むカーボンナノチューブ構造体と、該カーボンナノチューブ構造体と接合する他の構造体とを有することを特徴とする接合体。
  2. カーボンナノチューブおよびその側面に巻回された高分子を含むカーボンナノチューブ構造体と、該カーボンナノチューブ構造体と接合する他の構造体とを有することを特徴とする接合体。
  3. 請求項1または2に記載の接合体において、前記カーボンナノチューブ構造体と前記他の構造体とが、前記高分子を介して接合していることを特徴とする接合体。
  4. 請求項3に記載の接合体において、前記高分子と前記他の構造体との間に、これらと接合する接合材を有することを特徴とする接合体。
  5. 請求項4に記載の接合体において、前記接合材は、特異的相互作用を有する一組の分子を含むことを特徴とする接合体。
  6. 請求項5に記載の接合体において、特異的相互作用を有する前記一組の分子は、リガンドとレセプターの組み合わせ、または、抗原と抗体の組み合わせを含むことを特徴とする接合体。
  7. 請求項1乃至6いずれかに記載の接合体において、前記高分子はポリペプチドを含むことを特徴とする接合体。
  8. 請求項1乃至7いずれかに記載の接合体において、前記他の構造体は、基材であることを特徴とする接合体。
  9. 請求項1乃至8いずれかに記載の接合体において、前記他の構造体は、金属膜であることを特徴とする接合体。
  10. 請求項1乃至7いずれかに記載の接合体において、前記他の構造体は、カーボンナノチューブを含むことを特徴とする接合体。
  11. 請求項10に記載の接合体において、前記カーボンナノチューブ構造体と接合した前記他の構造体に含まれる前記カーボンナノチューブは、その側面を被覆する高分子からなる層を有することを特徴とする接合体。
  12. 請求項10に記載の接合体において、前記カーボンナノチューブ構造体と接合した前記他の構造体に含まれる前記カーボンナノチューブは、その側面に高分子が巻回された構造を有することを特徴とする接合体。
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