JP2004228431A - Tftアレイ検査装置 - Google Patents
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Abstract
【課題】TFTアレイ検査装置において2次電子フィルタの構成に起因する問題を解消し、2次電子の飛行に伴う検出効率の低下及び2次電子信号の応答速度の低下、幅広い電位測定における感度の低下及び2次電子信号の応答速度の低下を解消する。
【解決手段】2次電子をエネルギー選別して検出することにより試料の電位情報を得る電子線検査装置において、エネルギー選別を行うエネルギーフィルタグリッド6と、2次電子を2次電子引き出しグリッド7に向けて加速する2次電子引き出しグリッド7と、両グリッド6,7を通過した2次電子を検出する2次電子検出器3とを備える。2次電子引き出しグリッドにより、2次電子の飛行を調整して検出効率の向上及び2次電子信号の応答速度の向上を図る。エネルギーフィルタグリッドの電位を可変とすることにより、幅広い電位測定における感度の向上及び2次電子信号の応答速度の向上を図る。
【選択図】 図1
【解決手段】2次電子をエネルギー選別して検出することにより試料の電位情報を得る電子線検査装置において、エネルギー選別を行うエネルギーフィルタグリッド6と、2次電子を2次電子引き出しグリッド7に向けて加速する2次電子引き出しグリッド7と、両グリッド6,7を通過した2次電子を検出する2次電子検出器3とを備える。2次電子引き出しグリッドにより、2次電子の飛行を調整して検出効率の向上及び2次電子信号の応答速度の向上を図る。エネルギーフィルタグリッドの電位を可変とすることにより、幅広い電位測定における感度の向上及び2次電子信号の応答速度の向上を図る。
【選択図】 図1
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、電子線を用い試料の電位を測定する電子線検査装置に関し、液晶ディスプレイや有機ELディスブレイなどに使われるTFTアレイ基板の検査に使用するTFTアレイ検査装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
非接触で試料の電位を測定する技術として電位コントラストを用いた検査方法が知られている。この電位コントラストによれば、試料に電子線を照射することにより試料表面から放出される2次電子のエネルギーを測定することにより試料の電位を測定することができる。
【0003】
また、TFTアレイにおいて、TFTアレイ基板の欠陥セル等の検査をTFTアレイ基板の電位を測定することにより行っている。このTFTアレイ基板の検査において、機械的プローブをTFTアレイに接触させて行う従来の電位測定に代えて、前記した電位コントラストを用いた検査方法と適用することにより非接触測定で検査を行うTFT検査装置が提案されている。
【0004】
このTFTアレイ検査装置では、液晶ディスプレイや有機ELディスブレイなどに使われるTFTアレイ基板のTFTセルに電子線を照射し、TFTセルから発生する2次電子を測定して得られる信号により当該TFTセルに所定の電圧が印加されているかを測定し、その測定結果に基づいて短絡等の欠陥セルの判別を行うことができる。このようなTFTアレイ検査装置として、例えば、特許文献1,2が知られている。
【0005】
上記の電子線によるTFTアレイ検査装置では、試料から放出される2次電子を検出するために、試料と検出器との間に2次電子フィルタグリッドを設けた構成が用いられる。図5は従来のTFTアレイ検査装置に用いられる検出部分の概略を説明するための図である。図5において、TFTアレイ検査装置は、試料9のTFT基板に電子線を照射する電子銃2と、試料9から放出される2次電子を検出する2次電子検出器3と、所定エネルギー以上の2次電子を通過させる2枚のフィルタからなる2次電子フィルタグリッド6と、2次電子検出器3による2次電子の捕集率を高める反跳2次電子抑制用グリッド5と、試料9及び前記グリッド5,6を内部に真空状態で収納する真空チャンバ4を備える。なお、反跳2次電子は、試料からの反射電子が壁面に衝突して発生する2次電子である。
【0006】
TFT基板から発生した2次電子は、2次電子フィルタグリッド6のエネルギーフィルタにより所定エネルギーでフィルタリングされ、2次電子検出器3で検出される。
【0007】
ここで、TFT基板から発生し2次電子フィルタグリッドに達する2次電子のエネルギーは、TFT基板と2次電子フィルタグリッドとの電位差、及び2次電子の初速エネルギーに依存する。この関係は以下の式で表される。
2次電子がフィルタを通過する際のエネルギー
=(フィルタ電位−試料電位)によるエネルギー+2次電子の初速エネルギー
【0008】
上記式の関係から、この2次電子がフィルタを通過する際のエネルギーが正(>0)の時、2次電子はフィルタを通過できる。従って、試料(TFTセル)に印加する負の電位を増加していくと2次電子がエネルギーフィルターを通過できるようになり、TFTセルの電位を2次電子フィルタグリッドの電位よりも低電位となるほど、このフィルタを通過する2次電子の割合は高くなる。一方、試料(TFTセル)の電位が高くなって、TFTセルと2次電子フィルタグリッドとの電位差が小さくなると、フィルタを通過する2次電子は減少することになる。
【0009】
図6は、試料(TFTセル)の電位と2次電子検出強度との関係を示している。なお、図示するS字状の特性は2次電子フィルタグリッドの電位(エネルギーフィルタの電位)を適当に設定したときの一例を示している。図示する試料電位と2次電子検出強度の関係(Sカーブ)において、試料電位が所定電位より低下すると2次電子検出強度が急激に増加する。
【0010】
【特許文献1】
特開平11−265678号公報(第2,20図)
【特許文献2】
特開2000−3142号公報(第1,5、29図)
【0011】
【発明が解決しようとする課題】
従来の電子線方式のTFTアレイ検査装置では、2次電子フィルタをフィルタグリッドのみで構成しているため、2次電子の飛行に伴う検出効率の低下及び2次電子信号の応答速度の低下という問題、幅広い電位測定における感度の低下及び2次電子信号の応答速度の低下という問題がある。
【0012】
はじめに、2次電子の飛行に伴って生じる検出効率の低下及び2次電子信号の応答速度の低下について説明する。
【0013】
TFTセルからの2次電子は、図7に示す2次電子分布のように、cosθの分布で放出される。従って、基板に対して垂直な方向以外の斜め方向にも多くの2次電子が放出される。この放出角θ(基板の垂線からの角度)が大きいと、2次電子はフィルタ通過時に大きく横へそれてしまう。横へ大きくそれた場合、グリッド周辺部の電界はグリッド中心部のようにグリッドに平行ではないため、2次電子は大きく迂回した軌道を取って検出器に到達したり、また検出器に到達せずに別の電極に衝突して消滅したり、あるいはTFT基板に戻って消滅することが起こる。そのため、2次電子が消滅すると、当然2次電子の検出効率は低下することになる。
【0014】
また、2次電子が大きく迂回して2次電子検出器に到達した場合には、グリッド中心部を通過して検出器に到達した2次電子に比べて飛行時間が長くなる。この飛行時間の差は、図8に示すように2次電子信号の応答速度の悪化を招くことになる。すなわち、仮に時間t0に2次電子がパルス状に発生したとする(図8(a))。この2次電子を2次電子検出器で検出したとき、フィルタ部の飛行時間の差が小さい場合には鋭いパルス波形が検出できる(図8(b))が、飛行時間の差が大きくなるとパルス波形は鈍ることになる(図8(c))。
【0015】
TFTアレイ検査では、各TFTセルのピクセル数が多いため(例えば1280×1024画素のTFTパネルの場合、1280×1024×3=3,932,160ピクセルになる)、できるだけ高速で個々の画素を検査する必要がある。これらの画素に電子線を走査して得られる2次電子を検出するとき、順次得られる2次電子の検出信号がすそ野が広がった鈍ったパルス信号である場合には、隣接する画素からの信号が大きく重なり合うため、正確な検査ができなくなる。信号の重なりを防ぐには走査速度を遅くする必要があるが、2次電子信号の応答速度が低下すると高速な検査を行うことができないという問題がある。
【0016】
このため、高速でTFTアレイを検査するためには鋭いパルス波形で2次電子信号の応答速度が高いことが必要となる。例えば、データ収集を10MHzでサンプリングする場合、信号には5MHzの帯域が必要である。5MHzでの立ち上り時間は70nSに相当するので、少なくとも図8に示すパルスの立ち上り時間、立下り時間は70nSより短くすることが望ましい。
【0017】
したがって、2次電子フィルタをフィルタグリッドのみで構成することにより、2次電子の飛行中の消滅による検出効率の低下、及び長い飛行時間による2次電子信号の応答速度の低下という問題が生じる。
【0018】
次に、幅広い電位測定を行う際に生じる感度の低下及び2次電子信号の応答速度の低下について説明する。
【0019】
試料電位の測定において、例えばTFTアレイを検査するには幅広い電位測定が必要となる。これはTFTアレイを実際に使用する際に、正、負のそれぞれの電位が印加されることがある。従って、TFTアレイ基板を検査するには、正・負それぞれの電圧をTFTアレイ基板に印加し、それぞれ意図した電位が発生しているかを検査する必要がある。また、例えば、短絡や断線等に欠陥の種類に対応して、各TFTセルに正から負の電位の間で検査を行う必要がある。
【0020】
図9は幅広い電位測定における感度及び応答速度の低下を説明するための2次電子検出強度の特性図である。図9において、試料電位が−15V〜−5Vの領域においては、試料電位に対して2次電子検出強度が大きく変化する特性があるため、2次電子検出強度の変化から試料電位の情報を感度良く読み取ることができる。一方、試料電位が−5V〜+15Vの領域では2次電子検出強度が殆ど変化しない特性であるため、2次電子検出強度の変化から試料電位の情報を感度良く得ることは難しい。例えば+10Vの電圧が印加された時の欠陥を精度良く測定することは不可能である。
【0021】
また、2次電子検出強度が弱い領域においては、2次電子信号の時間的応答特性(応答速度)が低下する。図9のSカーブ特性を採用した時の、試料電位と応答速度を示すシグナルの立ち上り時間の関係を表1に示す。ここで、立ち上り時間は、図10の信号図に示すように、ステップ状の2次電子に対して(図10(a))、検出される2次電子検出信号の立ち上り時間(例えば、波高値が10%〜90%の値で変化するのに要する時間で定められる)である。
【表1】
【0022】
表1に示すように、試料電位が−10Vの立ち上がり時間は86nSであるのに対して、試料電位が0Vの立ち上がり時間は152nSであり、応答速度が著しく低下することが分かる。これは試料とフィルター間の電位差が小さいとき、フィルターを通過する際の2次電子の速度が大きく乱れる為と考えられる。
【0023】
この応答特性が低下するとシグナル波形に鈍りが生じる。従って、SN比を下げない様にするためには、サンプリングの時間を長くする必要があり、その結果、検査時間が長期化するという問題が生じることになる。
【0024】
したがって、上記したように、従来のTFTアレイ検査装置は、2次電子フィルタをフィルタグリッドのみで構成しているため、2次電子の飛行に伴う検出効率の低下及び2次電子信号の応答速度の低下という問題、幅広い電位測定における感度の低下及び2次電子信号の応答速度の低下という問題がある。
【0025】
そこで、本発明は前記した従来の問題点を解決し、TFTアレイ検査装置において2次電子フィルタの構成に起因する問題を解消することを目的とし、詳細には、2次電子フィルタの構成による2次電子の飛行に伴う検出効率の低下及び2次電子信号の応答速度の低下を解消すること、また、幅広い電位測定における感度の低下及び2次電子信号の応答速度の低下を解消すること目的とする。
【0026】
【課題を解決するための手段】
本発明は、2次電子フィルタの構成において、従来から備えるエネルギーフィルタグリッドに加えて2次電子引き出しグリッドを備えることにより、2次電子の飛行を調整して検出効率の向上及び2次電子信号の応答速度の向上を図り、また、2次電子フィルタの構成において、エネルギーフィルタグリッドの電位を可変とすることにより、複数の2次電子検出強度特性に基づいて2次電子を検出し、複数の2次電子検出を組み合わせることにより広い電位範囲の電位情報を得ることにより、幅広い電位測定における感度の向上及び2次電子信号の応答速度の向上を図る。
【0027】
本発明のTFTアレイ検査装置は、電子線を試料に照射して得られる2次電子をエネルギー選別して検出することにより試料の電位情報を得る電子線検査装置において、エネルギー選別を行うエネルギーフィルタグリッドと、試料からの2次電子を2次電子引き出しグリッドに向けて加速する2次電子引き出しグリッドと、両グリッドを通過した2次電子を検出する2次電子検出器とを備えた構成とする。
【0028】
これら各グリッドの配置は、2次電子引き出しグリッドを試料側に配置し、エネルギーフィルタグリッドを2次電子検出器側において試料面と平行とする。また、各グリッドに電位は、2次電子引き出しグリッドの電位をエネルギーフィルタグリッドの電位及び試料の電位よりも高電位とする。
【0029】
この各グリッドの配置、及び電位とすることにより、試料から放出された2次電子は、2次電子引き出しグリッドにより2次電子引き出しグリッドに向けて加速され、試料の電位が変化した場合においてもエネルギーフィルタグリッドを通過する2次電子量の減少を抑制し、また、2次電子の分布特性による2次電子の横方向への広がりを抑制することにより、2次電子の検出効率を向上させることができる。さらに、2次電子の横方向への広がりを抑制することにより、2次電子の飛行時間の広がりを抑制して2次電子信号の応答速度を向上させることができる。また、エネルギーフィルタグリッドを試料面と平行とすることにより、試料の広い面積を測定するために要する装置の大きさを抑えることができる。
【0030】
また、エネルギーフィルタグリッドはそのグリッド電位を試料の電位に応じて可変とする構成とする。2次電子検出器は、エネルギーフィルタグリッドに設定する複数の電位に応じた複数の2次電子検出強度特性に基づいて2次電子信号を検出する。2次電子検出強度特性において、エネルギーフィルタグリッドに印加する電位により、試料の電位情報を得ることができる試料電位の範囲が異なる。本発明は、エネルギーフィルタグリッドの電位を変化させて複数設定することにより複数の2次電子信号を求め、これらの2次電子信号と2次電子検出強度特性とを組み合わせることにより、試料の電位情報を得ることができる試料電位の範囲を広げる。
【0031】
これにより、それぞれ測定感度が良い領域を組み合わせることにより幅広い電位測定における感度の向上を図り、また、2次電子検出強度特性において応答速度の速い領域を用いることにより、2次電子信号の応答速度の向上を図ることができる。
【0032】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態について、図を参照しながら詳細に説明する。
【0033】
図1は本発明のTFTアレイ検査装置を説明するための概略図である。図1において、TFTアレイ検査装置1は、真空チャンバ4内に配置された試料9に対して1次電子を照射する電子銃2と、1次電子の照射により試料9から放出された2次電子を検出する2次電子検出器3を備え、試料9と2次電子検出器3との間には、試料9側から2次電子検出器3に向かって順に2次電子引き出しグリッド7及びエネルギーフィルタグリッド6が設けられる。エネルギーフィルタグリッド6は、試料面に対して平行となるよう形成される。また、2次電子引き出しグリッド7及びエネルギーフィルタグリッド6には、電子銃2と試料上の照射位置とを結ぶ線上に、電子銃2からの1次電子を試料9に照射するための開口部が形成されている。なお、2次電子検出強度3の前面には、検出器グリッド8が設けられている。
【0034】
エネルギーフィルタグリッド6を試料面に対して平行となるよう形成することにより、試料の広い範囲での測定に適した構成とすることができる。
【0035】
通常、試料上の微小な測定点について測定を行う場合には、エネルギーフィルタグリッド6の形状を測定点を中心とするような半球状(ドーム状)とする。これに対して、TFTアレイ基板の検査では、微小な測定点ではなく広い範囲についての測定が求められる。半球状(ドーム状)のエネルギーフィルタグリッドを用いて広範囲の測定を行うには半球の径を大きくする必要があり、装置が大型化する。これに対して、本発明のTFTアレイ検査装置によれば、エネルギーフィルタグリッド6の形状を試料面に対して平板とすることにより、装置を大型化することなく、広範囲の測定に対応することができる。
【0036】
また、エネルギーフィルタグリッド6は1枚あるいは複数枚のフィルタで構成することができる。これは、エネルギーフィルタグリッド6は1次電子を通過させるためにグリッド中心部に比較的大きな開口部を備え、この開口部中心でもフィルタリングを行うための電位を与えるためである。
【0037】
また、エネルギーフィルタグリッド6、2次電子引き出しグリッド7、及び試料9にはそれぞれ電源16,17,18が接続され、それぞれ所定電位となるように所定の電圧が印加される。なお、試料9に対する所定電圧の印加は、電源18の他、外部信号を用いることもできる。
【0038】
電源16はエネルギーフィルタグリッド6に印加する電圧を調整して、エネルギーフィルタグリッド6の電位を可変とする。エネルギーフィルタグリッド6は、その電位によって試料9から放出されて2次電子を所定のエネルギー値でエネルギー選別し、通過した2次電子のみが2次電子検出器3により検出される。本発明のエネルギーフィルタグリッド6の電位は可変とすることができ、電位を変えることによって、2次電子検出器3で検出される2次電子信号の特性を変えることができる。図1の構成では、制御装置10により電源16を制御することにより、エネルギーフィルタグリッド6の電位を変えることができる。エネルギーフィルタグリッド6の電位は、試料の正常電位と欠陥電位との間の電位となるように設定される。エネルギーフィルタグリッド6の電位は、試料電位よりも高い場合もあれば、低い場合もある。例えば、試料電位+10V、フィルタ電位+5Vに設定すると、試料でGND電位になっている欠陥を検出することもできる。このように、エネルギーフィルタグリッド6の電位を、試料の正常電位と欠陥電位との間の電位に設定することにより、正常電位と欠陥電位の振り分けを行うことができる。
【0039】
エネルギーフィルタグリッド6の電位は、試料9の電位に応じて変えることができる。2次電子検出器3で検出される2次電子検出強度特性は試料9の電位により異なるため、試料9において異なる電位を測定する場合その電位によって2次電子検出強度が異なり、測定が困難となることがある。
【0040】
本発明は、2次電子検出強度特性がエネルギーフィルタグリッド6の電位によって変化することを利用し、エネルギーフィルタグリッドの電位を変えることにより、2次電子検出強度特性が試料の電位測定に良好となるように定める。この電位設定は制御装置10により行うことができる。制御装置10による制御は、例えば、電源18が試料9に印加する電圧をモニタし、このモニタ値に基づいて電源16を制御する他、制御装置10により試料に印加する電圧の検査パターンを検出し、この検査パターンに従って電源16及び電源18を制御するようにすることもできる。
【0041】
電源17は2次電子引き出しグリッド7に所定電圧を印加する。2次電子引き出しグリッド7は、試料9から放出された2次電子を2次電子検出器3側に引き出すためのグリッドであり、試料9の電位及びエネルギーフィルタグリッド6の電位よりも高く設定される。1次電子の照射によって試料9から放出された2次電子は、この2次電子引き出しグリッド7により2次電子引き出しグリッド7に向けて加速される。加速された2次電子は、2次電子引き出しグリッド7を通過した後、エネルギーフィルタグリッド6に到達し、エネルギー選別される。
【0042】
また、電源18は試料に印加する電圧を可変とし、例えば、TFTアレイ基板の検査を行う場合には、検査用の電圧パターンを形成してTFTアレイ基板に印加する。
【0043】
所定電圧が印加されたTFTアレイ基板に対して、電子銃2から1次電子を照射すると、TFTアレイ基板からは照射位置の電位に応じた強度の2次電子が放出される。放出された2次電子は、2次電子引き出しグリッド7により2次電子引き出しグリッド7に向けて加速され、エネルギーフィルタグリッド6に向かう。2次電子は、2次電子引き出しグリッド7により2次電子引き出しグリッド7に向けて加速されるため、横方向への広がりを抑制され、TFTアレイ基板等との衝突による消滅を防いで2次電子の減少を抑制し、検出効率を上げることができる。なお、2次電子引き出しグリッドを試料面と平行に構成した場合には、電子の加速方向はTFTアレイ基板に対して垂直方向となる。
【0044】
2次電子は、エネルギーフィルタグリッド6でエネルギー選別された後、2次電子検出器3により検出される。TFTアレイ基板において、測定部位の電位が変化した場合には、この電位に応じてエネルギーフィルタグリッド6の電位を変化させ、測定に適した2次電子検出強度特性による測定を行う。
【0045】
また、真空チャンバ4内には、内周壁面に沿って内部空間を囲むように反跳2次電子抑制用グリッド5が設けられる。この反跳2次電子抑制用グリッド5は、横方向に進んだ2次電子を反跳させて、2次電子検出器3の捕集率を高めるものである。
【0046】
図2は本発明のTFTアレイ検査装置の2次電子の検出機構及び動作を説明するための図であり、図3は本発明のTFTアレイ検査装置による2次電子の動作を説明するための図である。
【0047】
図2に示す検出機構は真空チャンバ4中に設けられる。エネルギーフィルタグリッド6を構成する2枚のフィルタグリッド6a,6b下側に、2次電子引き出しグリッド7を設置し、この2次電子引き出しグリッド7に試料電位より高い電位、例えば試料電位+10V〜+1000Vを印加する。一方、試料9には、例えば+10V〜−10Vを印加し、フィルタグリッド6a,6bには+10〜−10V程度を印加する。
【0048】
以下、一例として、試料電位を−10V、引き出し電位を0V、フィルタグリッド電位を−5Vとした場合について説明する。試料9から発生した2次電子は、2次電子引き出しグリッド7で10Vに相当するエネルギーだけZ方向に加速される。従って、2次電子は試料9と2次電子引き出しグリッド7の間で放物線軌道を描くことになる(図2及び図3(a)中の矢印)。図3(a)において、試料から放出された2次電子の初速方向が図中の破線で示す矢印方向である場合には、2次電子は2次電子引き出しグリッド7の方向に加速されて放物線軌道を描いて進み、2次電子引き出しグリッド7を通過した後は、2次電子引き出しグリッド7とフィルタグリッド6aとの間の減速電界により逆の放物線軌道を描いて進む。フィルタグリッド6aを通過した後、フィルタグリッド6aとフィルタグリッド6bとの間はほぼ直線で進む。
【0049】
このZ方向(2次電子引き出しグリッド7の方向)への加速により、2次電子の横方向(図2のX、Y方向)への広がりが抑えられる。このため、検出器へ到達するまでの2次電子の軌道の迂回を小さくすることができる。また、2次電子の試料方向への戻りなどによる2次電子のロスも減るため、2次電子の検出効率を高めることができる。
【0050】
一方、2次電子引き出しグリッド7とフィルタグリッド6との間では減速電界がかかり2次電子は逆の放物線を描くことになるが(図3(a)中の矢印)、2次電子引き出しグリッド7がない場合に比べて横方向への広がりは抑えられる。従って、本発明では2次電子引き出しグリッドを備えない従来の構成と比較して、上側にあるフィルタグリッド6の通過時における2次電子の横方向の広がりを抑えることが可能になる。図3(b)は、2次電子引き出しグリッドを備えない従来の構成における2次電子の軌道例を示している。この場合には、試料電位とフィルタグリッド6の電位がほぼ等しいと、2次電子の軌跡はほぼ直線となる。
図3(a)に示す本発明のグリッド構造と図3(b)に示す従来グリッド構造とにおいて2次電子の横方向の広がりを比較すると、本発明のグリッド構造では2次電子引き出しグリッドに向けて加速することにより、2次電子の横方向の広がりを抑えることができる。
【0051】
フィルタグリッド6を通過した後は、2次電子は検出器3の検出器グリッド8にかけられた正の高電位による電界によって検出器2の方向に加速され、検出器3に入射する。この検出器3からの電界は、検出器3からの距離が遠くなると弱くなるため、2次電子が横方向に広がると検出器3への収集が困難になったり、軌道の迂回が大きくなったりする。
【0052】
このような横方向の広がりに対して、本発明では2次電子引き出しグリッドを設ける構成によって横方向への広がりを抑える。これによって、検出器3に到達する2次電子の数が増加し、さらに2次電子が検出器3に到達するまでの軌道の迂回も小さくなるため、2次電子信号の応答特性も改善される。
【0053】
図3では、簡易な例として試料電位とフィルタ電位がほぼ等しいとして説明している、実際にはフィルタ電位が試料電位とは数〜20V程度異なることがある。この場合には軌道の様子は若干異なることになるが、本発明による広がりを抑える効果は同じである。
【0054】
なお、試料9と試料側の一番下の下側グリッド(従来技術では下側フィルタグリッド、本発明では2次電子引き出しグリッド)の間には、図示していないが、TFT基板の回路にコンタクトを取るためのプローバが存在しており、この厚みのために試料と下側グリッドとの間にはある距離を開けておく必要がある。TFT基板の大きさが大きくなれば、一般的にはプローバの厚みも大きくなるため、従来技術では横方向への広がりが大きくなる。これに対して、本発明ではこの部分で2次電子をZ方向へ加速して広がりを抑えているため、プローバの厚みが大きくなっても2次電子のロスや飛行時間の広がりを抑制し、これによる検出効率の低下や応答速度の低下といった悪影響を減少させる効果もある。
【0055】
次に、エネルギーフィルタグリッドの電位を変えることによる複数回の測定について説明する。以下、一例として、試料電位が−10と+10Vの2点において、試料を検査したい場合について説明する。
【0056】
エネルギーフィルタグリッドの電位による試料電位に対する2次電子検出強度は、例えば図4に示すようなSカーブの特性を示す。Sカーブの特性は、エネルギーフィルタグリッドの電位により変化し、図4ではフィルタ電位が−10Vと+5VのSカーブ特性を示している。
【0057】
ここで、−10Vの試料電位を測定する際には、フィルタグリッド6のフィルタ電位が−10VのSカーブ特性を用いる。このSカーブ特性によれば、試料電位に対する2次電子検出強度は、試料電位が−10V付近で大きく変化しているため、この領域を用いることにより試料電位の情報を感度良く高速で得ることができ、また、GND電位との区別も明瞭である。従って、試料電位が−10V付近において1〜3V程度電位が小さく低下するような欠陥セルの検出も感度良く行うことができる。なお、このSカーブ特性を用いたとき、−10Vの試料電位における2次電子検出信号の立ち上り時間は約90nSである。
【0058】
次に+10Vの試料電位を測定する際には、フィルタグリッド6のフィルタ電位が+5VのSカーブ特性を用いる。このSカーブ特性を用いることにより、+10V付近の試料電位の情報が感度良く得られ、試料電位が+10Vより1〜3V程度の小さな電位差の欠陥検出が可能である。また+10VとGND電位との区別も明瞭である。また、このSカーブ特性を採用した時、0Vの試料電位において2次電子検出信号の立ち上り時間は約90nSである。これにより、前記表1に示したような試料電位によって応答速度が大きく異なるという問題は解消される。表2は、本発明による異なる試料電位での応答時間(立ち上がり時間)を示している。
【表2】
【0059】
前記した表1に示した応答時間(立ち上がり時間)を比較すると、表1に示すように、従来の測定では、試料電位が−10Vの場合には86nSであるのに対して試料電位が0Vの場合には152nSとなり応答速度が大きく異なるのに対して、本発明によれば、試料電位が−10Vの場合には86nS、0Vの場合には88nSとなり、試料電位が−10Vと0Vとで異なる場合であっても応答時間をほぼ等しくすることができる。
【0060】
上記の結果より本発明により、試料電位の測定範囲が広い場合、感度良く、応答速度を落とさずに2次電子検出強度の測定が可能となる。
【0061】
上記のようにエネルギーフィルタグリッドの電位を変えることにより、同一試料において幅広い試料電位で、感度と応答速度の両方を向上させることができる。
【0062】
本発明の態様によれば、2次電子の収集効率を高めることができ、2次電子の時間応答特性を改善することができる。また、プローバの厚みが大きくなっても、2次電子の収集効率の低下や時間応答特性の悪化を抑制することができる。
【0063】
また、本発明の態様によれば、測定したい試料電位が広範囲に渡る場合、エネルギーフィルターの電位を柔軟に変えた複数のSカーブ特性を用いることにより2次電子の検出を、効率良く応答速度を落とさずに行うことができる。
【0064】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明によれば、TFTアレイ検査装置において2次電子フィルタの構成に起因する問題を解消することができる。また、2次電子フィルタの構成による2次電子の飛行に伴う検出効率の低下及び2次電子信号の応答速度の低下を解消することができ、また、幅広い電位測定における感度の低下及び2次電子信号の応答速度の低下を解消することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明のTFTアレイ検査装置を説明するための概略図である。
【図2】本発明のTFTアレイ検査装置の2次電子の検出機構及び動作を説明するための図である。
【図3】本発明のTFTアレイ検査装置による2次電子の動作を説明するための図である。
【図4】エネルギーフィルタグリッドの電位による試料電位に対する2次電子検出強度のSカーブ特性を示す図である。
【図5】従来のTFTアレイ検査装置に用いられる検出部分の概略を説明するための図である。
【図6】試料(TFTセル)の電位と2次電子検出強度との関係を示す図である。
【図7】試料からの放出される2次電子の分布を示す図である。
【図8】2次電子の飛行時間の特性を説明するための図である。
【図9】幅広い電位測定における感度及び応答速度の低下を説明するための2次電子検出強度の特性図である。
【図10】2次電子及び2次電子検出信号の信号図である。
【符号の説明】
1…TFTアレイ検査装置、2…電子銃、3…検出器、4…真空チャンバ、5…反跳2次電子抑制用グリッド、6…エネルギーフィルタグリッド、6a,6b…フィルタグリッド、7…2次電子引き出しグリッド、8…検出器グリッド、9…試料、10…制御装置、15,16,17,18…電源、20…開口部。
【発明の属する技術分野】
本発明は、電子線を用い試料の電位を測定する電子線検査装置に関し、液晶ディスプレイや有機ELディスブレイなどに使われるTFTアレイ基板の検査に使用するTFTアレイ検査装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
非接触で試料の電位を測定する技術として電位コントラストを用いた検査方法が知られている。この電位コントラストによれば、試料に電子線を照射することにより試料表面から放出される2次電子のエネルギーを測定することにより試料の電位を測定することができる。
【0003】
また、TFTアレイにおいて、TFTアレイ基板の欠陥セル等の検査をTFTアレイ基板の電位を測定することにより行っている。このTFTアレイ基板の検査において、機械的プローブをTFTアレイに接触させて行う従来の電位測定に代えて、前記した電位コントラストを用いた検査方法と適用することにより非接触測定で検査を行うTFT検査装置が提案されている。
【0004】
このTFTアレイ検査装置では、液晶ディスプレイや有機ELディスブレイなどに使われるTFTアレイ基板のTFTセルに電子線を照射し、TFTセルから発生する2次電子を測定して得られる信号により当該TFTセルに所定の電圧が印加されているかを測定し、その測定結果に基づいて短絡等の欠陥セルの判別を行うことができる。このようなTFTアレイ検査装置として、例えば、特許文献1,2が知られている。
【0005】
上記の電子線によるTFTアレイ検査装置では、試料から放出される2次電子を検出するために、試料と検出器との間に2次電子フィルタグリッドを設けた構成が用いられる。図5は従来のTFTアレイ検査装置に用いられる検出部分の概略を説明するための図である。図5において、TFTアレイ検査装置は、試料9のTFT基板に電子線を照射する電子銃2と、試料9から放出される2次電子を検出する2次電子検出器3と、所定エネルギー以上の2次電子を通過させる2枚のフィルタからなる2次電子フィルタグリッド6と、2次電子検出器3による2次電子の捕集率を高める反跳2次電子抑制用グリッド5と、試料9及び前記グリッド5,6を内部に真空状態で収納する真空チャンバ4を備える。なお、反跳2次電子は、試料からの反射電子が壁面に衝突して発生する2次電子である。
【0006】
TFT基板から発生した2次電子は、2次電子フィルタグリッド6のエネルギーフィルタにより所定エネルギーでフィルタリングされ、2次電子検出器3で検出される。
【0007】
ここで、TFT基板から発生し2次電子フィルタグリッドに達する2次電子のエネルギーは、TFT基板と2次電子フィルタグリッドとの電位差、及び2次電子の初速エネルギーに依存する。この関係は以下の式で表される。
2次電子がフィルタを通過する際のエネルギー
=(フィルタ電位−試料電位)によるエネルギー+2次電子の初速エネルギー
【0008】
上記式の関係から、この2次電子がフィルタを通過する際のエネルギーが正(>0)の時、2次電子はフィルタを通過できる。従って、試料(TFTセル)に印加する負の電位を増加していくと2次電子がエネルギーフィルターを通過できるようになり、TFTセルの電位を2次電子フィルタグリッドの電位よりも低電位となるほど、このフィルタを通過する2次電子の割合は高くなる。一方、試料(TFTセル)の電位が高くなって、TFTセルと2次電子フィルタグリッドとの電位差が小さくなると、フィルタを通過する2次電子は減少することになる。
【0009】
図6は、試料(TFTセル)の電位と2次電子検出強度との関係を示している。なお、図示するS字状の特性は2次電子フィルタグリッドの電位(エネルギーフィルタの電位)を適当に設定したときの一例を示している。図示する試料電位と2次電子検出強度の関係(Sカーブ)において、試料電位が所定電位より低下すると2次電子検出強度が急激に増加する。
【0010】
【特許文献1】
特開平11−265678号公報(第2,20図)
【特許文献2】
特開2000−3142号公報(第1,5、29図)
【0011】
【発明が解決しようとする課題】
従来の電子線方式のTFTアレイ検査装置では、2次電子フィルタをフィルタグリッドのみで構成しているため、2次電子の飛行に伴う検出効率の低下及び2次電子信号の応答速度の低下という問題、幅広い電位測定における感度の低下及び2次電子信号の応答速度の低下という問題がある。
【0012】
はじめに、2次電子の飛行に伴って生じる検出効率の低下及び2次電子信号の応答速度の低下について説明する。
【0013】
TFTセルからの2次電子は、図7に示す2次電子分布のように、cosθの分布で放出される。従って、基板に対して垂直な方向以外の斜め方向にも多くの2次電子が放出される。この放出角θ(基板の垂線からの角度)が大きいと、2次電子はフィルタ通過時に大きく横へそれてしまう。横へ大きくそれた場合、グリッド周辺部の電界はグリッド中心部のようにグリッドに平行ではないため、2次電子は大きく迂回した軌道を取って検出器に到達したり、また検出器に到達せずに別の電極に衝突して消滅したり、あるいはTFT基板に戻って消滅することが起こる。そのため、2次電子が消滅すると、当然2次電子の検出効率は低下することになる。
【0014】
また、2次電子が大きく迂回して2次電子検出器に到達した場合には、グリッド中心部を通過して検出器に到達した2次電子に比べて飛行時間が長くなる。この飛行時間の差は、図8に示すように2次電子信号の応答速度の悪化を招くことになる。すなわち、仮に時間t0に2次電子がパルス状に発生したとする(図8(a))。この2次電子を2次電子検出器で検出したとき、フィルタ部の飛行時間の差が小さい場合には鋭いパルス波形が検出できる(図8(b))が、飛行時間の差が大きくなるとパルス波形は鈍ることになる(図8(c))。
【0015】
TFTアレイ検査では、各TFTセルのピクセル数が多いため(例えば1280×1024画素のTFTパネルの場合、1280×1024×3=3,932,160ピクセルになる)、できるだけ高速で個々の画素を検査する必要がある。これらの画素に電子線を走査して得られる2次電子を検出するとき、順次得られる2次電子の検出信号がすそ野が広がった鈍ったパルス信号である場合には、隣接する画素からの信号が大きく重なり合うため、正確な検査ができなくなる。信号の重なりを防ぐには走査速度を遅くする必要があるが、2次電子信号の応答速度が低下すると高速な検査を行うことができないという問題がある。
【0016】
このため、高速でTFTアレイを検査するためには鋭いパルス波形で2次電子信号の応答速度が高いことが必要となる。例えば、データ収集を10MHzでサンプリングする場合、信号には5MHzの帯域が必要である。5MHzでの立ち上り時間は70nSに相当するので、少なくとも図8に示すパルスの立ち上り時間、立下り時間は70nSより短くすることが望ましい。
【0017】
したがって、2次電子フィルタをフィルタグリッドのみで構成することにより、2次電子の飛行中の消滅による検出効率の低下、及び長い飛行時間による2次電子信号の応答速度の低下という問題が生じる。
【0018】
次に、幅広い電位測定を行う際に生じる感度の低下及び2次電子信号の応答速度の低下について説明する。
【0019】
試料電位の測定において、例えばTFTアレイを検査するには幅広い電位測定が必要となる。これはTFTアレイを実際に使用する際に、正、負のそれぞれの電位が印加されることがある。従って、TFTアレイ基板を検査するには、正・負それぞれの電圧をTFTアレイ基板に印加し、それぞれ意図した電位が発生しているかを検査する必要がある。また、例えば、短絡や断線等に欠陥の種類に対応して、各TFTセルに正から負の電位の間で検査を行う必要がある。
【0020】
図9は幅広い電位測定における感度及び応答速度の低下を説明するための2次電子検出強度の特性図である。図9において、試料電位が−15V〜−5Vの領域においては、試料電位に対して2次電子検出強度が大きく変化する特性があるため、2次電子検出強度の変化から試料電位の情報を感度良く読み取ることができる。一方、試料電位が−5V〜+15Vの領域では2次電子検出強度が殆ど変化しない特性であるため、2次電子検出強度の変化から試料電位の情報を感度良く得ることは難しい。例えば+10Vの電圧が印加された時の欠陥を精度良く測定することは不可能である。
【0021】
また、2次電子検出強度が弱い領域においては、2次電子信号の時間的応答特性(応答速度)が低下する。図9のSカーブ特性を採用した時の、試料電位と応答速度を示すシグナルの立ち上り時間の関係を表1に示す。ここで、立ち上り時間は、図10の信号図に示すように、ステップ状の2次電子に対して(図10(a))、検出される2次電子検出信号の立ち上り時間(例えば、波高値が10%〜90%の値で変化するのに要する時間で定められる)である。
【表1】
【0022】
表1に示すように、試料電位が−10Vの立ち上がり時間は86nSであるのに対して、試料電位が0Vの立ち上がり時間は152nSであり、応答速度が著しく低下することが分かる。これは試料とフィルター間の電位差が小さいとき、フィルターを通過する際の2次電子の速度が大きく乱れる為と考えられる。
【0023】
この応答特性が低下するとシグナル波形に鈍りが生じる。従って、SN比を下げない様にするためには、サンプリングの時間を長くする必要があり、その結果、検査時間が長期化するという問題が生じることになる。
【0024】
したがって、上記したように、従来のTFTアレイ検査装置は、2次電子フィルタをフィルタグリッドのみで構成しているため、2次電子の飛行に伴う検出効率の低下及び2次電子信号の応答速度の低下という問題、幅広い電位測定における感度の低下及び2次電子信号の応答速度の低下という問題がある。
【0025】
そこで、本発明は前記した従来の問題点を解決し、TFTアレイ検査装置において2次電子フィルタの構成に起因する問題を解消することを目的とし、詳細には、2次電子フィルタの構成による2次電子の飛行に伴う検出効率の低下及び2次電子信号の応答速度の低下を解消すること、また、幅広い電位測定における感度の低下及び2次電子信号の応答速度の低下を解消すること目的とする。
【0026】
【課題を解決するための手段】
本発明は、2次電子フィルタの構成において、従来から備えるエネルギーフィルタグリッドに加えて2次電子引き出しグリッドを備えることにより、2次電子の飛行を調整して検出効率の向上及び2次電子信号の応答速度の向上を図り、また、2次電子フィルタの構成において、エネルギーフィルタグリッドの電位を可変とすることにより、複数の2次電子検出強度特性に基づいて2次電子を検出し、複数の2次電子検出を組み合わせることにより広い電位範囲の電位情報を得ることにより、幅広い電位測定における感度の向上及び2次電子信号の応答速度の向上を図る。
【0027】
本発明のTFTアレイ検査装置は、電子線を試料に照射して得られる2次電子をエネルギー選別して検出することにより試料の電位情報を得る電子線検査装置において、エネルギー選別を行うエネルギーフィルタグリッドと、試料からの2次電子を2次電子引き出しグリッドに向けて加速する2次電子引き出しグリッドと、両グリッドを通過した2次電子を検出する2次電子検出器とを備えた構成とする。
【0028】
これら各グリッドの配置は、2次電子引き出しグリッドを試料側に配置し、エネルギーフィルタグリッドを2次電子検出器側において試料面と平行とする。また、各グリッドに電位は、2次電子引き出しグリッドの電位をエネルギーフィルタグリッドの電位及び試料の電位よりも高電位とする。
【0029】
この各グリッドの配置、及び電位とすることにより、試料から放出された2次電子は、2次電子引き出しグリッドにより2次電子引き出しグリッドに向けて加速され、試料の電位が変化した場合においてもエネルギーフィルタグリッドを通過する2次電子量の減少を抑制し、また、2次電子の分布特性による2次電子の横方向への広がりを抑制することにより、2次電子の検出効率を向上させることができる。さらに、2次電子の横方向への広がりを抑制することにより、2次電子の飛行時間の広がりを抑制して2次電子信号の応答速度を向上させることができる。また、エネルギーフィルタグリッドを試料面と平行とすることにより、試料の広い面積を測定するために要する装置の大きさを抑えることができる。
【0030】
また、エネルギーフィルタグリッドはそのグリッド電位を試料の電位に応じて可変とする構成とする。2次電子検出器は、エネルギーフィルタグリッドに設定する複数の電位に応じた複数の2次電子検出強度特性に基づいて2次電子信号を検出する。2次電子検出強度特性において、エネルギーフィルタグリッドに印加する電位により、試料の電位情報を得ることができる試料電位の範囲が異なる。本発明は、エネルギーフィルタグリッドの電位を変化させて複数設定することにより複数の2次電子信号を求め、これらの2次電子信号と2次電子検出強度特性とを組み合わせることにより、試料の電位情報を得ることができる試料電位の範囲を広げる。
【0031】
これにより、それぞれ測定感度が良い領域を組み合わせることにより幅広い電位測定における感度の向上を図り、また、2次電子検出強度特性において応答速度の速い領域を用いることにより、2次電子信号の応答速度の向上を図ることができる。
【0032】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態について、図を参照しながら詳細に説明する。
【0033】
図1は本発明のTFTアレイ検査装置を説明するための概略図である。図1において、TFTアレイ検査装置1は、真空チャンバ4内に配置された試料9に対して1次電子を照射する電子銃2と、1次電子の照射により試料9から放出された2次電子を検出する2次電子検出器3を備え、試料9と2次電子検出器3との間には、試料9側から2次電子検出器3に向かって順に2次電子引き出しグリッド7及びエネルギーフィルタグリッド6が設けられる。エネルギーフィルタグリッド6は、試料面に対して平行となるよう形成される。また、2次電子引き出しグリッド7及びエネルギーフィルタグリッド6には、電子銃2と試料上の照射位置とを結ぶ線上に、電子銃2からの1次電子を試料9に照射するための開口部が形成されている。なお、2次電子検出強度3の前面には、検出器グリッド8が設けられている。
【0034】
エネルギーフィルタグリッド6を試料面に対して平行となるよう形成することにより、試料の広い範囲での測定に適した構成とすることができる。
【0035】
通常、試料上の微小な測定点について測定を行う場合には、エネルギーフィルタグリッド6の形状を測定点を中心とするような半球状(ドーム状)とする。これに対して、TFTアレイ基板の検査では、微小な測定点ではなく広い範囲についての測定が求められる。半球状(ドーム状)のエネルギーフィルタグリッドを用いて広範囲の測定を行うには半球の径を大きくする必要があり、装置が大型化する。これに対して、本発明のTFTアレイ検査装置によれば、エネルギーフィルタグリッド6の形状を試料面に対して平板とすることにより、装置を大型化することなく、広範囲の測定に対応することができる。
【0036】
また、エネルギーフィルタグリッド6は1枚あるいは複数枚のフィルタで構成することができる。これは、エネルギーフィルタグリッド6は1次電子を通過させるためにグリッド中心部に比較的大きな開口部を備え、この開口部中心でもフィルタリングを行うための電位を与えるためである。
【0037】
また、エネルギーフィルタグリッド6、2次電子引き出しグリッド7、及び試料9にはそれぞれ電源16,17,18が接続され、それぞれ所定電位となるように所定の電圧が印加される。なお、試料9に対する所定電圧の印加は、電源18の他、外部信号を用いることもできる。
【0038】
電源16はエネルギーフィルタグリッド6に印加する電圧を調整して、エネルギーフィルタグリッド6の電位を可変とする。エネルギーフィルタグリッド6は、その電位によって試料9から放出されて2次電子を所定のエネルギー値でエネルギー選別し、通過した2次電子のみが2次電子検出器3により検出される。本発明のエネルギーフィルタグリッド6の電位は可変とすることができ、電位を変えることによって、2次電子検出器3で検出される2次電子信号の特性を変えることができる。図1の構成では、制御装置10により電源16を制御することにより、エネルギーフィルタグリッド6の電位を変えることができる。エネルギーフィルタグリッド6の電位は、試料の正常電位と欠陥電位との間の電位となるように設定される。エネルギーフィルタグリッド6の電位は、試料電位よりも高い場合もあれば、低い場合もある。例えば、試料電位+10V、フィルタ電位+5Vに設定すると、試料でGND電位になっている欠陥を検出することもできる。このように、エネルギーフィルタグリッド6の電位を、試料の正常電位と欠陥電位との間の電位に設定することにより、正常電位と欠陥電位の振り分けを行うことができる。
【0039】
エネルギーフィルタグリッド6の電位は、試料9の電位に応じて変えることができる。2次電子検出器3で検出される2次電子検出強度特性は試料9の電位により異なるため、試料9において異なる電位を測定する場合その電位によって2次電子検出強度が異なり、測定が困難となることがある。
【0040】
本発明は、2次電子検出強度特性がエネルギーフィルタグリッド6の電位によって変化することを利用し、エネルギーフィルタグリッドの電位を変えることにより、2次電子検出強度特性が試料の電位測定に良好となるように定める。この電位設定は制御装置10により行うことができる。制御装置10による制御は、例えば、電源18が試料9に印加する電圧をモニタし、このモニタ値に基づいて電源16を制御する他、制御装置10により試料に印加する電圧の検査パターンを検出し、この検査パターンに従って電源16及び電源18を制御するようにすることもできる。
【0041】
電源17は2次電子引き出しグリッド7に所定電圧を印加する。2次電子引き出しグリッド7は、試料9から放出された2次電子を2次電子検出器3側に引き出すためのグリッドであり、試料9の電位及びエネルギーフィルタグリッド6の電位よりも高く設定される。1次電子の照射によって試料9から放出された2次電子は、この2次電子引き出しグリッド7により2次電子引き出しグリッド7に向けて加速される。加速された2次電子は、2次電子引き出しグリッド7を通過した後、エネルギーフィルタグリッド6に到達し、エネルギー選別される。
【0042】
また、電源18は試料に印加する電圧を可変とし、例えば、TFTアレイ基板の検査を行う場合には、検査用の電圧パターンを形成してTFTアレイ基板に印加する。
【0043】
所定電圧が印加されたTFTアレイ基板に対して、電子銃2から1次電子を照射すると、TFTアレイ基板からは照射位置の電位に応じた強度の2次電子が放出される。放出された2次電子は、2次電子引き出しグリッド7により2次電子引き出しグリッド7に向けて加速され、エネルギーフィルタグリッド6に向かう。2次電子は、2次電子引き出しグリッド7により2次電子引き出しグリッド7に向けて加速されるため、横方向への広がりを抑制され、TFTアレイ基板等との衝突による消滅を防いで2次電子の減少を抑制し、検出効率を上げることができる。なお、2次電子引き出しグリッドを試料面と平行に構成した場合には、電子の加速方向はTFTアレイ基板に対して垂直方向となる。
【0044】
2次電子は、エネルギーフィルタグリッド6でエネルギー選別された後、2次電子検出器3により検出される。TFTアレイ基板において、測定部位の電位が変化した場合には、この電位に応じてエネルギーフィルタグリッド6の電位を変化させ、測定に適した2次電子検出強度特性による測定を行う。
【0045】
また、真空チャンバ4内には、内周壁面に沿って内部空間を囲むように反跳2次電子抑制用グリッド5が設けられる。この反跳2次電子抑制用グリッド5は、横方向に進んだ2次電子を反跳させて、2次電子検出器3の捕集率を高めるものである。
【0046】
図2は本発明のTFTアレイ検査装置の2次電子の検出機構及び動作を説明するための図であり、図3は本発明のTFTアレイ検査装置による2次電子の動作を説明するための図である。
【0047】
図2に示す検出機構は真空チャンバ4中に設けられる。エネルギーフィルタグリッド6を構成する2枚のフィルタグリッド6a,6b下側に、2次電子引き出しグリッド7を設置し、この2次電子引き出しグリッド7に試料電位より高い電位、例えば試料電位+10V〜+1000Vを印加する。一方、試料9には、例えば+10V〜−10Vを印加し、フィルタグリッド6a,6bには+10〜−10V程度を印加する。
【0048】
以下、一例として、試料電位を−10V、引き出し電位を0V、フィルタグリッド電位を−5Vとした場合について説明する。試料9から発生した2次電子は、2次電子引き出しグリッド7で10Vに相当するエネルギーだけZ方向に加速される。従って、2次電子は試料9と2次電子引き出しグリッド7の間で放物線軌道を描くことになる(図2及び図3(a)中の矢印)。図3(a)において、試料から放出された2次電子の初速方向が図中の破線で示す矢印方向である場合には、2次電子は2次電子引き出しグリッド7の方向に加速されて放物線軌道を描いて進み、2次電子引き出しグリッド7を通過した後は、2次電子引き出しグリッド7とフィルタグリッド6aとの間の減速電界により逆の放物線軌道を描いて進む。フィルタグリッド6aを通過した後、フィルタグリッド6aとフィルタグリッド6bとの間はほぼ直線で進む。
【0049】
このZ方向(2次電子引き出しグリッド7の方向)への加速により、2次電子の横方向(図2のX、Y方向)への広がりが抑えられる。このため、検出器へ到達するまでの2次電子の軌道の迂回を小さくすることができる。また、2次電子の試料方向への戻りなどによる2次電子のロスも減るため、2次電子の検出効率を高めることができる。
【0050】
一方、2次電子引き出しグリッド7とフィルタグリッド6との間では減速電界がかかり2次電子は逆の放物線を描くことになるが(図3(a)中の矢印)、2次電子引き出しグリッド7がない場合に比べて横方向への広がりは抑えられる。従って、本発明では2次電子引き出しグリッドを備えない従来の構成と比較して、上側にあるフィルタグリッド6の通過時における2次電子の横方向の広がりを抑えることが可能になる。図3(b)は、2次電子引き出しグリッドを備えない従来の構成における2次電子の軌道例を示している。この場合には、試料電位とフィルタグリッド6の電位がほぼ等しいと、2次電子の軌跡はほぼ直線となる。
図3(a)に示す本発明のグリッド構造と図3(b)に示す従来グリッド構造とにおいて2次電子の横方向の広がりを比較すると、本発明のグリッド構造では2次電子引き出しグリッドに向けて加速することにより、2次電子の横方向の広がりを抑えることができる。
【0051】
フィルタグリッド6を通過した後は、2次電子は検出器3の検出器グリッド8にかけられた正の高電位による電界によって検出器2の方向に加速され、検出器3に入射する。この検出器3からの電界は、検出器3からの距離が遠くなると弱くなるため、2次電子が横方向に広がると検出器3への収集が困難になったり、軌道の迂回が大きくなったりする。
【0052】
このような横方向の広がりに対して、本発明では2次電子引き出しグリッドを設ける構成によって横方向への広がりを抑える。これによって、検出器3に到達する2次電子の数が増加し、さらに2次電子が検出器3に到達するまでの軌道の迂回も小さくなるため、2次電子信号の応答特性も改善される。
【0053】
図3では、簡易な例として試料電位とフィルタ電位がほぼ等しいとして説明している、実際にはフィルタ電位が試料電位とは数〜20V程度異なることがある。この場合には軌道の様子は若干異なることになるが、本発明による広がりを抑える効果は同じである。
【0054】
なお、試料9と試料側の一番下の下側グリッド(従来技術では下側フィルタグリッド、本発明では2次電子引き出しグリッド)の間には、図示していないが、TFT基板の回路にコンタクトを取るためのプローバが存在しており、この厚みのために試料と下側グリッドとの間にはある距離を開けておく必要がある。TFT基板の大きさが大きくなれば、一般的にはプローバの厚みも大きくなるため、従来技術では横方向への広がりが大きくなる。これに対して、本発明ではこの部分で2次電子をZ方向へ加速して広がりを抑えているため、プローバの厚みが大きくなっても2次電子のロスや飛行時間の広がりを抑制し、これによる検出効率の低下や応答速度の低下といった悪影響を減少させる効果もある。
【0055】
次に、エネルギーフィルタグリッドの電位を変えることによる複数回の測定について説明する。以下、一例として、試料電位が−10と+10Vの2点において、試料を検査したい場合について説明する。
【0056】
エネルギーフィルタグリッドの電位による試料電位に対する2次電子検出強度は、例えば図4に示すようなSカーブの特性を示す。Sカーブの特性は、エネルギーフィルタグリッドの電位により変化し、図4ではフィルタ電位が−10Vと+5VのSカーブ特性を示している。
【0057】
ここで、−10Vの試料電位を測定する際には、フィルタグリッド6のフィルタ電位が−10VのSカーブ特性を用いる。このSカーブ特性によれば、試料電位に対する2次電子検出強度は、試料電位が−10V付近で大きく変化しているため、この領域を用いることにより試料電位の情報を感度良く高速で得ることができ、また、GND電位との区別も明瞭である。従って、試料電位が−10V付近において1〜3V程度電位が小さく低下するような欠陥セルの検出も感度良く行うことができる。なお、このSカーブ特性を用いたとき、−10Vの試料電位における2次電子検出信号の立ち上り時間は約90nSである。
【0058】
次に+10Vの試料電位を測定する際には、フィルタグリッド6のフィルタ電位が+5VのSカーブ特性を用いる。このSカーブ特性を用いることにより、+10V付近の試料電位の情報が感度良く得られ、試料電位が+10Vより1〜3V程度の小さな電位差の欠陥検出が可能である。また+10VとGND電位との区別も明瞭である。また、このSカーブ特性を採用した時、0Vの試料電位において2次電子検出信号の立ち上り時間は約90nSである。これにより、前記表1に示したような試料電位によって応答速度が大きく異なるという問題は解消される。表2は、本発明による異なる試料電位での応答時間(立ち上がり時間)を示している。
【表2】
【0059】
前記した表1に示した応答時間(立ち上がり時間)を比較すると、表1に示すように、従来の測定では、試料電位が−10Vの場合には86nSであるのに対して試料電位が0Vの場合には152nSとなり応答速度が大きく異なるのに対して、本発明によれば、試料電位が−10Vの場合には86nS、0Vの場合には88nSとなり、試料電位が−10Vと0Vとで異なる場合であっても応答時間をほぼ等しくすることができる。
【0060】
上記の結果より本発明により、試料電位の測定範囲が広い場合、感度良く、応答速度を落とさずに2次電子検出強度の測定が可能となる。
【0061】
上記のようにエネルギーフィルタグリッドの電位を変えることにより、同一試料において幅広い試料電位で、感度と応答速度の両方を向上させることができる。
【0062】
本発明の態様によれば、2次電子の収集効率を高めることができ、2次電子の時間応答特性を改善することができる。また、プローバの厚みが大きくなっても、2次電子の収集効率の低下や時間応答特性の悪化を抑制することができる。
【0063】
また、本発明の態様によれば、測定したい試料電位が広範囲に渡る場合、エネルギーフィルターの電位を柔軟に変えた複数のSカーブ特性を用いることにより2次電子の検出を、効率良く応答速度を落とさずに行うことができる。
【0064】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明によれば、TFTアレイ検査装置において2次電子フィルタの構成に起因する問題を解消することができる。また、2次電子フィルタの構成による2次電子の飛行に伴う検出効率の低下及び2次電子信号の応答速度の低下を解消することができ、また、幅広い電位測定における感度の低下及び2次電子信号の応答速度の低下を解消することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明のTFTアレイ検査装置を説明するための概略図である。
【図2】本発明のTFTアレイ検査装置の2次電子の検出機構及び動作を説明するための図である。
【図3】本発明のTFTアレイ検査装置による2次電子の動作を説明するための図である。
【図4】エネルギーフィルタグリッドの電位による試料電位に対する2次電子検出強度のSカーブ特性を示す図である。
【図5】従来のTFTアレイ検査装置に用いられる検出部分の概略を説明するための図である。
【図6】試料(TFTセル)の電位と2次電子検出強度との関係を示す図である。
【図7】試料からの放出される2次電子の分布を示す図である。
【図8】2次電子の飛行時間の特性を説明するための図である。
【図9】幅広い電位測定における感度及び応答速度の低下を説明するための2次電子検出強度の特性図である。
【図10】2次電子及び2次電子検出信号の信号図である。
【符号の説明】
1…TFTアレイ検査装置、2…電子銃、3…検出器、4…真空チャンバ、5…反跳2次電子抑制用グリッド、6…エネルギーフィルタグリッド、6a,6b…フィルタグリッド、7…2次電子引き出しグリッド、8…検出器グリッド、9…試料、10…制御装置、15,16,17,18…電源、20…開口部。
Claims (5)
- 電子線を試料に照射して得られる2次電子をエネルギー選別して検出することにより試料の電位情報を得る電子線検査装置において、
前記エネルギー選別を行うエネルギーフィルタグリッドと、試料からの2次電子を加速する2次電子引き出しグリッドと、前記両グリッドを通過した2次電子を検出する2次電子検出器とを備え、
前記2次電子引き出しグリッドを試料側に配置し、前記エネルギーフィルタグリッドを2次電子検出器側において試料面と平行に配置し、
前記2次電子引き出しグリッドの電位はエネルギーフィルタグリッドの電位及び試料の電位よりも高電位とし、
前記エネルギーフィルタグリッドはグリッドの電位を試料の電位に応じて可変とし、
前記2次電子検出器は前記エネルギーフィルタグリッドの複数の設定電位による複数の2次電子検出強度特性に基づいて2次電子を検出し、
前記複数の2次電子検出の組み合わせによりTFTアレイ基板の広い電位範囲の電位情報を測定してTFTアレイ基板を検査することを特徴とする、TFTアレイ検査装置。 - 電子線を試料に照射して得られる2次電子をエネルギー選別して検出することにより試料の電位情報を得る電子線検査装置において、
前記エネルギー選別を行うエネルギーフィルタグリッドと、2次電子引き出しグリッドと、前記両グリッドを通過した2次電子を検出する2次電子検出器とを備え、
前記2次電子引き出しグリッドは試料から放出された2次電子を2次電子引き出しグリッドに向けて加速し、
前記2次電子検出器の2次電子検出によりTFTアレイ基板の電位を測定してTFTアレイ基板を検査することを特徴とする、TFTアレイ検査装置。 - 前記2次電子引き出しグリッドを試料側に配置し、前記エネルギーフィルタグリッドを2次電子検出器側において試料面と平行に配置し、
2次電子引き出しグリッドの電位はエネルギーフィルタグリッドの電位及び試料の電位よりも高電位とすることを特徴とする、請求項2に記載のTFTアレイ検査装置。 - 電子線を試料に照射して得られる2次電子をエネルギー選別して検出することにより試料の電位情報を得る電子線検査装置において、
前記エネルギー選別するエネルギーフィルタグリッドはグリッド電位を可変とし、
前記2次電子検出器は前記エネルギーフィルタグリッドの複数の設定電位による複数の2次電子検出強度特性に基づいて2次電子信号を検出し、
前記複数の2次電子検出強度特性と2次電子信号との組み合わせによりTFTアレイ基板の広い電位範囲の電位情報を測定してTFTアレイ基板を検査することを特徴とする、TFTアレイ検査装置。 - 前記エネルギーフィルタグリッドのグリッド電位は試料の電位に応じて変えることを特徴とする、請求項4に記載のTFTアレイ検査装置。
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JP2003016347A JP2004228431A (ja) | 2003-01-24 | 2003-01-24 | Tftアレイ検査装置 |
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JP2008218159A (ja) * | 2007-03-02 | 2008-09-18 | Shimadzu Corp | Tftアレイ検査装置 |
JP2009031208A (ja) * | 2007-07-30 | 2009-02-12 | Shimadzu Corp | Tftアレイ検査装置 |
-
2003
- 2003-01-24 JP JP2003016347A patent/JP2004228431A/ja not_active Withdrawn
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KR100950209B1 (ko) * | 2007-07-30 | 2010-03-29 | 시마쯔 코포레이션 | Tft 어레이 검사장치 |
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