JP2004228029A - 電気化学素子とその製法およびその製造装置 - Google Patents

電気化学素子とその製法およびその製造装置 Download PDF

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洋 樋口
Shuji Ito
修二 伊藤
Kazuyoshi Honda
和義 本田
より子 ▲たか▼井
Yoriko Takai
Yoshiyuki Okazaki
禎之 岡崎
Junichi Inaba
純一 稲葉
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Abstract

【課題】電気化学素子の構成部材としての窒化リン酸リチウム層が非晶質体である場合、水分との反応によって層形状が変化するために、電気化学素子が短寿命化する。
【解決手段】固体電解質層に窒化リン酸リチウム結晶体、あるいは十分に酸素を結合させた窒化リン酸リチウム結晶体を使用する電気化学素子は繰り返し使用特性に優れ、長寿命化されたものとなる。
【選択図】 図1

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、高容量化且つ薄型化が可能で、性能を長期に維持することができる電気化学素子とその製造方法およびそれを実施するための製造装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
半導体で培われた薄膜プロセスが導入されたことによって、リチウムポリマー電池より薄型化が可能な全固体電池(厚さ25μm)が紹介されている(例えば特許文献1)。中でも、薄膜プロセスによってそれぞれの構成要素が薄型化された全固体電池は、連続的に積層させることによって、従来の電池の数倍のエネルギー密度が期待できることが提案されている。
【0003】
材料コスト、製造プロセスとも確立されているリン酸リチウム非晶質体の薄膜は、薄膜技術を用いて作製したLiイオン伝導体薄膜として固体電解質層として最も一般的なものの一つである。そのイオン伝導性は十分に明らかではないが、非晶質状態に特有な構成原子の網目構造の隙間をリチウムイオンが移動するという見解が最も一般的である。この網目構造の間隔を広げてリチウムイオンが移動しやすくなる手段として、リン酸リチウム非晶質体の薄膜中の酸素の一部を窒素に置き換えた窒化リン酸リチウム非晶質体の薄膜が報告されている。
【0004】
リン酸リチウム非晶質体の薄膜、窒化リン酸リチウム非晶質体の薄膜のイオン伝導度は、それぞれ10−8Scm−1、10−6Scm−1程度である(例えば非特許文献1〜3)。
【0005】
これに対して、窒化リン酸リチウム結晶体の薄膜に関する報告はない。研究対象として注目されない要因としては、Liイオン伝導度が極めて小さくなったことが考えられる。リン酸リチウム結晶体が10−11Scm−1、窒化リン酸リチウム結晶体が10−9Scm−1という報告がある(例えば非特許文献4)。
【0006】
【特許文献1】
米国特許第5338625号明細書
【非特許文献1】
N.J.Dudneyら著、「THIN−FILM RECHARGEABLE LITHIUM BATTERIES」、Proceedings of the American Ceramic Society 97th Annual Meeting、Symposium on Role of Ceramics in Advanced Electro−Chemical Devices、Cincinati, Ohio,(1995年4月30日〜5月3日)、p.40−54
【非特許文献2】
B.Wangら著、「Charactarization of Thin−Film Rechargeable Lithium Batteries with Lithium Cobalt Oxide Cathodes」、The Electrochemical Society、143巻、10号、1996年、p.3203−3213
【非特許文献3】
B.Wangら著、「Synthesis,Crystal Structure、and Ionic Conductivity of Polycrystalline Lithium Phosphorus Oxynitride with the γ−LiPO Structure」, Solid State Chemistry,115巻,1995年、p.313−323
【非特許文献4】
T.Y.Tien、F.A.Hummel、「Studies in Lithium Oxide Systems:X,Lithium Phosphate Compounds」、Journal of American Ceramic Society、44巻、5号、1961年、p.206−208
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
本発明が解決しようとする課題は、窒化リン酸リチウム非晶質体の薄膜は、イオン伝導度が高いために電気化学素子の材料としては好適であるが、化学的に不安定であり水と吸収して変形して電気化学素子としての寿命が短くなることである。
【0008】
現在の最も一般的なRFマグネトロンスパッタ法や熱蒸着法による窒化リン酸リチウム非晶質体薄膜は大気中に含まれる水分を吸収する性質があり、これに伴ってそのもの自体が変形することが電気化学素子の寿命を短くしている。
【0009】
本発明は前記従来の課題を解決するためのものであり、電気化学素子の長寿命化を目的とする。
【0010】
【課題を解決するための手段】
前記の課題を解決するために、本発明の電気化学素子は少なくとも第一集電体と、第一電極活物質層と、固体電解質層と、第二電極活物質層と、第二集電体とを積層した電気化学素子において、前記固体電解質層は少なくとも窒化リン酸リチウム結晶体を含むものである。
【0011】
さらに、窒化リン酸リチウムのX線回折分析による回折信号ピークの半値全幅Δ2θFWHMは1.8°以下である。
【0012】
さらに、窒化リン酸リチウムは一般式LiPO(但し、a+5≦2b+3c≦8、1≦a≦3、0≦c≦0.65とする)で表される化合物である。
【0013】
また、本発明の電気化学素子の製法は少なくとも第一集電体と、第一電極活物質層と、固体電解質層と、第二電極活物質層と、第二集電体とを積層した電気化学素子の製法において、固定電解質層が少なくとも窒化リン酸リチウム結晶体を含みかつ固体電解質層の形成方法が気相成膜法である場合に、固体電解質層形成工程において被成膜面あるいは被成膜面が面する空間に対してエネルギー照射するものである。
【0014】
さらに、エネルギー照射の方法が、電子照射である。
【0015】
また、本発明の電気化学素子製造装置は、被成膜面を設置する機能と、被成膜面上に固体電解質を気相成膜法によって形成する機能と、前記の気相成膜法を実施中に被成膜面あるいは被成膜面が接する雰囲気に対して電子を照射する機能を有するものである。
【0016】
さらに、被成膜面と反対側の基板面の温度を調整する機能を有する。
【0017】
【発明の実施の形態】
水分吸収の原因として、非晶質であること、酸素あるいは窒素が欠損していることの二つがあげられる。ここでいう非晶質とはX線回折分析(XRD)を行っても極めてブロードな信号しか観察されない状態をいう。
【0018】
前者については、非晶質なリン酸リチウムが500℃付近で発熱反応を起こして結晶化することから、結晶体よりも非晶質体の方がポテンシャルエネルギーが高く、化学的に不安定であることが影響していると考えられ、従って本発明が提案する結晶体を用いることが効果的な対応手段となる。
【0019】
結晶質なリン酸リチウムの性質を示すものとして、XRDの結果がある。その詳細はT.Y.Tien、F.A.Hummel「Studies in Lithium Oxide Systems:X,Lithium Phosphate Compounds」、Journal of American Ceramic Society、44巻、5号、1961年、p.206−208に記載されている。
【0020】
LiPOの結晶体は、室温では斜方晶系空間点群Pmn21に属し、β相(500〜860℃)、γ相(860〜1000℃)、α相(1000〜1220℃)のものが報告されている。これに対し、ピロリン酸リチウム及びメタリン酸リチウムの結晶体は、共に単斜晶系に属している。
【0021】
窒化リン酸リチウム結晶体の詳細は十分に明らかではないが、X線回折分析による信号がほぼLiPOの結晶体と同じであることから、それに近い結晶構造を持った窒素置換体であると考えられる。
【0022】
後者については、酸素あるいは窒素の欠損状態ではLiが脱離しやすいことが関係していると考えられる。(化1)〜(化4)で示す基本骨格のリン酸リチウムに酸素欠損が生じた場合、(化5)〜(化8)に示す構造となり、リンの価数が+5価より小さくなると考えられる。これらの構造においてLi−P結合は、Li−O結合ほど強くないため、ごく微小な部分における水分との接触によってLiが電離・溶解し、固体電解質層の変形・短絡を引き起こす。
【0023】
【化1】
Figure 2004228029
【0024】
【化2】
Figure 2004228029
【0025】
【化3】
Figure 2004228029
【0026】
【化4】
Figure 2004228029
【0027】
【化5】
Figure 2004228029
【0028】
【化6】
Figure 2004228029
【0029】
【化7】
Figure 2004228029
【0030】
【化8】
Figure 2004228029
【0031】
窒素を導入した形態でLi−P結合がない形態としては、(化9)、(化10)のような結合が組み合わせられて、複数のリン酸リチウムが結合した状態も考えられる。
【0032】
【化9】
Figure 2004228029
【0033】
【化10】
Figure 2004228029
【0034】
例えば(化11)、(化12)のようなものがある。
【0035】
【化11】
Figure 2004228029
【0036】
【化12】
Figure 2004228029
【0037】
酸素あるいは窒素の欠損は、蒸気圧の関係からスパッタや蒸着などの真空成膜プロセスによって形成したものの場合には特に生じやすく、厚さが数μmもしくはそれより薄い窒化リン酸リチウムを主な電解質材料に用いた電気化学素子においては短絡の原因となり、電池寿命を制限する。酸素欠損を抑制する一般的な手段は成膜雰囲気に酸素を加えることであるが、効果に限界があって、窒化リン酸リチウムが化学的に安定な状態となるほどの効果は得られない。
【0038】
以上のことから、本発明が提案する第一の手段は、固体電解質層として窒化リン酸リチウム結晶体の薄膜を用いること、第二の手段は、固体電解質層として酸素欠損を抑制した窒化リン酸リチウムを用いることである。第一及び第二を併用することによって、より大きな効果が期待できる。
【0039】
第一の手段において、窒化リン酸リチウム結晶体とは少なくとも一部が結晶化したものである。XRD,透過型電子顕微鏡(TEM)、ラマン散乱などによって判別することができる。
【0040】
XRDにおいて窒化リン酸リチウム(Pmn21)の主な回折信号は2θ=16.93°、22.36°、23.41°、25.04°、33.93°、34.25°、37.07°で観測することができ、これらの内で一つ以上の信号が観測された場合には結晶化して部分が存在すると考えられる。本発明では、実用的な電気化学素子に最低限必要と考えられる充放電寿命を実現するための結晶化度として、XRD(2θ−θモード)における半値全幅Δ2θFWHMが1.8°以下、より好ましくは0.9°以下であることを提案する。
【0041】
さらには、第二の手段において、酸素あるいは窒素の欠損が少ない窒化リン酸リチウムとは一般式LiPO(a+5≦2b+3c≦8、1≦a≦3、0.01<c≦0.65)で表される窒化リン酸リチウムを満たすものである。
【0042】
図1にはその結果を示す。図1は本願発明が示すリン酸リチウム結晶体の組成比率の指示図である。領域の境界は含まれる。実験から、酸素欠損の割合が、必要量の10%を超えると水との反応性が高くなり、固体電解質層の変形が起きることがわかった。本発明が提案する固体電解質層の主成分としての一般式LiPOで表される窒化リン酸リチウムのリンに対するリチウムと酸素の比率a、bはa+5≦2b+3c≦8、1≦a≦3、0.01<c≦0.65を充たすものである。同図のハッチング部が本発明が提案する結晶体の領域となる。
【0043】
a<1ではリン酸化物が、a>3ではLi酸化物などが生成しやすくなり、ともに水分との反応性が発生して、固体電解質層のイオン伝導度低下、層の変形による短絡などにより、デバイスの動作が損なわれる。a+5≦2b+3c≦8の範囲を外れると、イオン伝導度が10−7Scm−1以下となり、イオン伝導度が低下する。
【0044】
Li,PはICP発光分光分析、O(酸素)、Nは燃焼法などの方法がある。他の元素が混入する場合にはその酸化物としての酸素を考慮して定量する必要がある。
【0045】
電気化学素子に使用する代表的なリン酸リチウム材料は、オルトリン酸リチウムあるいは第三リン酸リチウムと呼ばれ、(化1)に示す構造をもつ。この他に、ピロリン酸リチウム(化2)、トリポリリン酸リチウム(化3)のように(−P−O−P−)結合が鎖状構造を成した物、メタリン酸リチウム(化4)などの構造のものがあるが、これらの構造におけるリンの価数は全て+5価である。これらを同時蒸着する際の蒸着雰囲気に窒素を含有させることによって、成膜と同時にこれらのリン酸化合物を構成する酸素の一部を窒素と置換することによって窒化リン酸リチウム膜を形成することができる。本発明では、この成膜時に被成膜面か成膜雰囲気に対してエネルギーを照射することによって、窒化リン酸リチウム膜を結晶化しながら形成することで、窒化リン酸リチウム結晶膜を形成することを提案している。
【0046】
これに対して、酸素が欠損した状態のものは(化5)〜(化8)に示すような構造をしており、それぞれリンの価数は+3価、+1価、−1価、−3価である。(化5)〜(化8)におけるLi−P結合は容易に加水分解することから、化学的に不安定である。本発明の手段によって、窒化リン酸リチウム中の酸素がリンと結合していることで(化2)〜(化4)のような物質が生成しにくくなり、水分吸収性が低下するため、固体電解質層の変形がなくなって電気化学素子の寿命を延ばすことができる。この傾向は、(化9)のように窒素が導入された形態であっても同様である。
【0047】
(実施の形態1)
図2は本発明の電気化学素子の実施の一形態を示す。同図において固体電解質層は53である。
【0048】
同図の電気化学素子は、基板を兼ねる第一集電体51上に、第一電極活物質層52、固体電解質層53、第二活物質層54、第二集電体55がこの順序で積層させた構造である。第一集電体51及び第二集電体55には、リチウムと反応しにくい材料が好ましく、銅、ステンレスなど多くの金属が使用可能である。第一電極活物質層52としては、リチウムのコバルト酸塩、ニッケル酸塩、マンガン酸塩、バナジウム酸塩、クロム酸塩およびこれらの複合酸塩が有効である。第二活物質層の材料としては、金属リチウム、カーボン、グラファイト、窒化チタン酸リチウム等が有効である。
【0049】
次に図2における電気化学素子の製造方法について図3とともに説明する。
【0050】
図3は固体電解質層53の製造装置の一例としての蒸着装置である。被成膜基板1は表面に第一活物質層52を形成したものであり、蒸着ユニット(蒸着ソース2、抵抗加熱装置3、ルツボ温度計用熱電対4、抵抗加熱装置用電力供給線5a、5bをユニット化したもの)及びエネルギー照射装置(対基板用電子源21、対クラスター及び対ガス用電子源22、対基板用電子源用ガス導入管23、対クラスター及び対ガス用電子源用ガス導入管24からなる装置)の上方にあって、基板ホルダー10によって基板温度制御機構13に密着した状態で固定されている。第一電極活物質層52の厚さは第一電極活物質層52の内部に存在するリチウムイオンの移動可能な範囲で設定することが望ましく、2μmから5μm程度が適当である。
【0051】
被成膜基板1の下方にはシャッター12がある。蒸着ユニットは蒸着ソース2、抵抗加熱装置3、ルツボ温度計測用熱電対4からなり、抵抗加熱装置用電力供給線5a、5bからの電力をルツボ温度計測用熱電対4で熱に変換して抵抗加熱装置3内に予め仕込んだ蒸着ソース2を加熱し蒸発させる機能を有している。蒸着ソース2にはリン酸リチウムそのものを用いることが可能である。このとき、抵抗加熱装置3の材質としては、カーボン、チタン、ニオブ、タンタル、タングステン、白金などの高融点材料が有効である。
【0052】
窒化リン酸リチウムとするためには、蒸着時に基板周辺の雰囲気に窒素を混入させることが有効である。雰囲気に混入させた窒素はソース2の表面から飛来するリン酸リチウムの一部と反応して酸素を窒素を置換し、基板面に到達して窒化リン酸リチウムを形成する。エネルギーを23あるいは24から照射している場合には、前述の雰囲気中での置換反応のほかに被成膜面で起きる同様な置換反応が促進される傾向がある。
【0053】
また、リン酸リチウムを蒸発させるためには、800℃〜1350℃の温度が必要となることから、ヒーターにはモリブデン、タングステンなどの金属製ヒーターが有効である。リン酸リチウム以外の材料を同時に蒸着して混合組成の固体電解質層を作製する場合は、同一の抵抗加熱装置内に設置するか、図6に示すように複数の蒸着ユニットを準備して同時に使用する。
【0054】
エネルギー照射ユニットは、被成膜基板1あるいは被成膜基板1が接する成膜雰囲気中に対して電子、光、イオンなど、エネルギーを有する粒子を照射する機能を有することが必要である。このエネルギーは、主には被成膜基板1上に付着したソース材料を結晶化させるための原子再配列エネルギーとして利用するためのもので、被成膜基板面に対する照射において、質量による衝撃が少ない電子、光によることが好ましい。
【0055】
この手法によって形成する固体電解質層53の厚さはイオン伝導度の面では薄いことが望まれるが、電子伝導度を小さく保つ必要性から1〜2μm程度が適当である。
【0056】
固体電解質層53の上に第二活物質層54としての金属リチウム(厚さ0.5ミクロン)を熱蒸着法で形成し、さらに第二集電体55としての銅(厚さ1μm)を電子ビーム蒸着法で形成し、図2の電気化学素子を得る。
【0057】
図2の構造では、基本的に外気と接触する部分は第一集電体51、固体電解質層53、第二集電体55であり、第一集電体51、第二集電体55については水分透過性がほぼゼロであるため、この形態の電気化学素子を高湿試験環境(温度25℃、湿度90%、1気圧)に曝して、特性劣化を測定することにより、固体電解質層53の耐水特性を知ることができる。
【0058】
固体電解質層53が窒化リン酸リチウム結晶体を含む場合、XRDで観測される回折信号は、成膜条件によって異なるが主には、[010]、[110]、[101]に起因するものが波長1.54056Å(Cu−kα1)光に対してそれぞれ2θ=16.85°〜16.95°、22.3°〜22.4°、23.35°〜23.45°において観測される可能性がある。熱蒸着法で基板温度100℃以下の状態で形成した場合には、[010]に起因する回折信号が2θ=16.9°付近に観測されることが多い。
【0059】
同様にして、ピロリン酸リチウムLiの窒素置換体の結晶体を含む場合、[±101]、[041]、[±112]、[002]、[200]、[013]に起因する回折信号がそれぞれ2θ=20.4°〜20.5°、27.9°〜28.05°、29.05°〜29.15°、22.45°〜22.55°、34.45°〜34.55°において観測される可能性がある。
【0060】
また、メタリン酸リチウムLiPOの窒素置換体の結晶体を含む場合、[202]、[212]、[−213]、[010]、[−411]、[−312]、[020]に起因する回折信号がそれぞれ2θ=18.7°〜18.8°、24.9°〜25.0°、27.24°〜27.34°、16.3°〜16.4°、27.32°〜27.42°、25.58°〜25.68°、32.93°〜33.03°において観測される可能性がある。
【0061】
窒化リン酸リチウム結晶体が固体電解質層の原子数比率において30%を超える主成分として存在する場合、その半値全幅Δ2θFWHMが1.8°以下であれば実用的な電気化学素子の構成部材として使用することが可能になる。
【0062】
図2に示す電気化学素子を実用的なものとするためには、固体電解質層53として少なくとも電子伝導性を10−12Scm−1以下に保つ必要があるため、厚さは少なくとも1μm程度は必要であり、2μm程度が好ましい。これによって、固体電解質層の電子伝導による自己放電を抑制でき、電力保存期間や充放電回数の向上が実現する。
【0063】
主成分の窒化リン酸リチウムに対して添加する材料として、リチウム化合物としてはリチウムの珪酸塩、炭酸塩、タングステン酸塩など、またそれ以外に硫化リチウム、硫化リン、酸化リン硫化ゲルマニウムなどがある。いずれもイオン伝導度を向上させる効果が期待できるため、固体電解質の改質材として有効である。
【0064】
さらに、固体電解質層53として少なくとも電子伝導性を10−12Scm−1以下に保つ必要があるため、厚さは少なくとも1μm程度は必要であり、2μm程度が好ましい。
【0065】
この条件を満足する層を形成するには、抵抗加熱蒸着法、電子ビーム蒸着法あるいはスパッタ法などの真空成膜工程において、酸素プラズマ、酸素ラジカル、酸素イオンを発生させ、成膜面に対してこれを照射させることが有効である。このためには、酸素によるスパッタリングが発生しないことが望ましいことから、粒子が持つエネルギーはせいぜい数百V程度に留めておくことが好ましい。この条件であれば、酸素欠損状態の発生を防止できる可能性がある。
【0066】
結晶化させるさいに、照射するエネルギーを高くすることによって結晶状態にするとさらに効果的である。
【0067】
(実施の形態2)
図4は電気化学素子の別の実施の形態を示す断面図である。図2の電気化学素子2組を並列に結線した構造である。同図において固体電解質層は図番63と図番67である。
【0068】
同図の電気化学素子は、基板を兼ねる第一集電体61上に、第一電極活物質層62、固体電解質層63、第二活物質層64、第二集電体65、第二活物質層66、固体電解質層67、第一活物質層68、第一集電体69がこの順序で積層させた構造で、第一集電体と第二集電体を取り出し電極とする構成である。第一集電体61、第二集電体65及び第一集電体69には、リチウムと反応しにくい材料が好ましく、銅、ステンレスなど多くの金属が使用可能である。第一電極活物質層62,第一電極活物質層68としては、リチウムのコバルト酸塩、ニッケル酸塩、マンガン酸塩、バナジウム酸塩、クロム酸塩およびこれらの複合酸塩が有効である。第二活物質層の材料としては、金属リチウム、カーボン、グラファイト、窒化チタン酸リチウム等が有効である。
【0069】
製造方法は実施の形態1と共通する。
【0070】
同図の電気化学素子を形成する場合は基板温度に留意すべきである。第二電極活物質層64、第二電極活物質層66にリチウムを使用した場合、融点は180℃であるから、固体電解質層67と第一電極活物質層68を形成する際に基板温度がこれを超えると、電気化学素子にストレスが残るため固体電解質層63、固体電解質層67を破断する可能性がある。
【0071】
(実施の形態3)
図5さらなる別の実施の形態の電気化学素子の断面構造図である。は図2の電気化学素子2組を直列に結線した構造である。
【0072】
図5の電気化学素子は、基板を兼ねる第一集電体71上に、第一電極活物質層72、固体電解質層73、第二活物質層74、内部集電体75、第一活物質層76、固体電解質層77、第二活物質層78、第二集電体79がこの順序で積層させた構造で、第一集電体71と第二集電体79を取り出し電極とする構成である。第一集電体71、内部集電体75、第二集電体79には、リチウムと反応しにくい材料が好ましく、銅、ステンレスなど多くの金属が使用可能である。第一電極活物質層72、内部集電体75としては、リチウムのコバルト酸塩、ニッケル酸塩、マンガン酸塩、バナジウム酸塩、クロム酸塩およびこれらの複合酸塩が有効である。第二活物質層79の材料としては、金属リチウム、カーボン、グラファイト、窒化チタン酸リチウム等が有効である。
【0073】
製造方法は実施の形態1と共通である。
【0074】
【実施例】
本実施例では、電気化学素子として電池を用い、詳細に説明する。
【0075】
(実施例1)
固体電解質層としての窒化リン酸リチウム層に、本発明が提案する窒化リン酸リチウム結晶体の薄膜を適用した場合の電池性能向上効果を、従来例との比較により明確にする。
【0076】
図3において、周囲にルツボ温度計測用熱電対4を巻いた抵抗加熱装置3に蒸着ソース2としてのリン酸リチウムLiPO30gをタングステンヒーターに載せ、真空排気が可能な容器内で前記ヒーターを稼動させて前記のソースを1300℃以上に加熱して蒸発させ、これを被成膜基板1としての銅箔(100mm×100mm×厚さ5μm)上に厚さ1μmの膜として堆積させる。形成時の前記真空容器内雰囲気は圧力10−3Paの酸素窒素混合ガス(混合モル比は所定のものを使用(表1)に記載)である。膜形成の際には、真空容器内に対して加速電圧60Vの電子銃から所定の電流の電子を照射して、被成膜基板1表面にエネルギーを照射した。
【0077】
従来例の試料は、前述の製法において被成膜基板1に対するエネルギー照射をせずに作製したものとした。
【0078】
得られた被成膜基板1の一部を切り取り、電子線照射による結晶化度を評価した。評価方法は、XRDにおける回折信号の半値全幅値の比較によって行った。線源はCukα1線、回折信号は、2θ=16.9(deg)付近のものを用いた。計測結果を(表1)A欄に示す。
【0079】
【表1】
Figure 2004228029
【0080】
試料番号0−0〜0−2は照射電子電流が少なかったために十分な結晶化が起こっておらず、半値全幅値は1.8°以上の値となっている。一方、本発明によるものは回折信号を確認することができ、結晶化していることが分かった。また試料番号1−1〜1−5において半値全幅値は照射電子電流の増加に伴って減少する傾向がみられ、照射エネルギーによって結晶化が起こされているものと推察できる。
【0081】
また、膜組成をリチウムとリンはICP赤外発光分光分析、酸素は燃焼法によりそれぞれ分析した。結果を(表1)B欄に示す。これらのデータは、リンの原子数を1としてリチウム、酸素、窒素の原子数を規格化している。この結果から、酸素濃度に大きな違いがないことが明らかである。
【0082】
次に、電池の重要な特性指標である充放電回数に見られる効果を示す。
【0083】
電池の作製方法は以下のとおりである。図2において基板をかねる銅箔製の第一集電体51上に第一電極活物質層52としてのコバルト酸リチウム層(10mm×10mm×厚さ1μm)を第一集電体51上に形成したものを用い、前記の方法と同様にして固体電解質層53としてのリン酸リチウム結晶体の薄膜(15mm×15mm×厚さ2μm)、第二電極活物質層54としての金属リチウム層(12mm×12mm×厚さ0.5μm)、第二集電体55としての銅層(14mm×14mm×厚さ0.5μm)を形成した。52、53、54、55はすべて正方形であり、それらの中央が重なるようにして形成した。
【0084】
従って、固体電解質層が外部に露出している部分は、固体電解質層の外周部幅1mmとの層の側面のみである。
【0085】
ここで、試料番号1−0は比較例であり、固体電解質53は窒化リン酸リチウム非晶質体の薄膜である。
【0086】
得られた電池を、環境温度20℃、環境湿度60%のアルゴン雰囲気において、0.2Cレート(第一電極活物質層52の質量に基づく電池の理論容量を5時間で充電できる電流値)で4.2Vに到達するまでの充電過程と、2Cレート(電池の理論容量を1/2時間で放電できる電流値)で3.0Vに到達するまでの放電過程を1サイクルとする充放電過程において、初期電流容量の60%容量を維持したサイクル数を計測し、充放電回数とした。結果を(表1)C欄に示す。従来の方法つまり非晶質なものの場合、充放電回数はせいぜい100回程度であったが、窒化リン酸リチウム結晶体の薄膜を固体電解質とすることによって200回を超えている。
【0087】
図7は、試料0−1、0−2、1−1〜1−5に関して、横軸にXRD信号の半値全幅値を、縦軸に充放電回数をとって作成したグラフである。1−1〜1−5に関しては半値全幅値と充放電回数の間に相関性が見られ、そのX切片は1.8°付近にある。従って、窒化リン酸リチウム固体電解質の結晶化による効果は、半値全幅値が1.8°以下の範囲で発生していると考えられる。試料0−1、0−2がこの直線上に載らない理由は、窒化リン酸リチウム固体電解質が水分と反応する速度が、半値全幅値1〜2°の範囲で大きく変動していると考えられる。
【0088】
この2点の違いは、電子照射あるいは雰囲気など結晶化以外の要因によって発生していると考えられる。この未確定要因の効果と比較して結晶化効果が顕著になる範囲をこの2つの直線より求めると、半値全幅値0.9°以下であることから、本発明を実施するには半値全幅値0.9°以下であることが好ましいと考えられる。
【0089】
以上の結果から、窒化リン酸リチウムを主成分とする固体電解質を結晶質としたことが充放電回数を増大させた要因であると考えられる。
【0090】
(実施例2)
固体電解質層としての窒化リン酸リチウム層に、本発明が提案する酸素或いは窒素の欠損量が少ない窒化リン酸リチウムを適用した場合の電池性能向上効果を、従来例との比較により明確にする。
【0091】
図3において、周囲にルツボ温度計測用熱電対4を巻いた抵抗加熱装置3に蒸着ソース2としてのリン酸リチウムLiPO30gをタングステンヒーターに載せ、真空排気が可能な容器内で前記ヒーターを稼動させて前記のソースを1300℃以上に加熱して蒸発させ、これを被成膜基板1としての銅箔(100mm×100mm×厚さ5μm)上に厚さ1μmの膜として堆積させる。形成時の前記真空容器内雰囲気は圧力10−3Paの酸素アルゴン混合ガス(混合モル比は所定のものを使用(表2)に記載)である。膜形成の際には、真空容器内に対して加速電圧60Vの電子銃から所定の電流の電子を照射して、被成膜基板1表面にエネルギーを照射した。
【0092】
従来例の試料は、前述の製法において被成膜基板1に対するエネルギー照射をせずに作製したものとした。
【0093】
得られた被成膜基板1の一部を切り取り、電子線照射による結晶化度を評価した。評価方法は、XRDにおける回折信号の半値全幅値の比較によって行った。線源はCukα1線、回折信号は、2θ=16.9(deg)付近のものを用いた。計測結果を(表2)A欄に示す。いずれの試料も同様な半値全幅を示すことから、同程度の結晶性であることが分かる。
【0094】
【表2】
Figure 2004228029
【0095】
また、膜組成をリチウムとリンはICP赤外発光分光分析、酸素は燃焼法によりそれぞれ分析した。結果を(表2)B欄に示す。これらのデータは、リンの原子数を1としてリチウム、酸素の原子数を規格化している。この結果から、膜形成時の雰囲気中酸素濃度の影響を強く受けていることが明らかである。電子銃によるエネルギー照射によって酸素が活性化して膜中に取り込まれやすくなった結果であると考えられる。
【0096】
次に、電池の重要な特性指標である充放電回数に見られる効果を示す。
【0097】
電池の作製方法は以下のとおりである。図2において基板をかねる銅箔製の第一集電体51上に第一電極活物質層52としてのコバルト酸リチウム層(10mm×10mm×厚さ1μm)を第一集電体51上に形成したものを用い、前記の方法と同様にして固体電解質層53としてのリン酸リチウム結晶体の薄膜(15mm×15mm×厚さ2μm)、第二電極活物質層54としての金属リチウム層(12mm×12mm×厚さ0.5μm)、第二集電体55としての銅層(14mm×14mm×厚さ0.5μm)を形成した。52、53、54、55はすべて正方形であり、それらの中央が重なるようにして形成した。
【0098】
従って、固体電解質層が外部に露出している部分は、固体電解質層の外周部幅1mmとの層の側面のみである。
【0099】
得られた電池を、環境温度20℃、環境湿度60%のアルゴン雰囲気において、0.2Cレート(第一電極活物質層52の質量に基づく電池の理論容量を5時間で充電できる電流値)で4.2Vに到達するまでの充電過程と、2Cレート(電池の理論容量を1/2時間で放電できる電流値)で3.0Vに到達するまでの放電過程を1サイクルとする充放電過程において、初期電流容量の60%容量を維持したサイクル数を計測し、充放電回数とした。結果を(表2)C欄に示す。従来の方法即ち非晶質なものの場合、充放電回数はせいぜい100回程度であったが、酸素欠損を抑制したことによって200回を超えている。
【0100】
以上の結果から、窒化リン酸リチウムを主成分とする固体電解質における酸素あるいは窒素の欠損を抑制することが充放電回数を増大させたと考えられる。
【0101】
(実施例3)
固体電解質層の主材料としてのリン酸リチウムに対して、イオン伝導性を有するリチウムの珪酸塩、炭酸塩、タングステン酸塩など、またそれ以外に硫化リチウム、硫化リン、酸化リン、硫化ゲルマニウムをそれぞれ添加した場合にも、実施例1に述べた結晶体リン酸リチウムを用いる効果、実施例2で述べた酸素欠損抑制効果が発揮されることを明確にする。
【0102】
図3において、周囲にルツボ温度計測用熱電対4を巻いた抵抗加熱装置3に蒸着ソース2としてのリン酸リチウムLiPO30gと、添加材1gを入れ、真空排気が可能な容器内で前記ヒーターを稼動させて前記のソースを1300℃以上に加熱して蒸発させ、これを被成膜基板1としての銅箔(100mm×100mm×厚さ5μm)上に厚さ1μmの膜として堆積させる。形成時の前記真空容器内雰囲気は圧力10−3Paの酸素アルゴン混合ガス(混合モル比は所定のものを使用(表2)に記載)である。膜形成の際には、真空容器内に対して加速電圧60Vの電子銃から20Aの電子を照射して、被成膜基板1表面にエネルギーを照射した。
【0103】
得られた被成膜基板1の一部を切り取り、電子線照射による結晶化度を評価した。評価方法は、XRDにおける回折信号の半値全幅値の比較によって行った。線源はCukα1線、回折信号は、2θ=16.9(deg)付近のものを用いた。計測結果を(表3)A欄に示す。いずれの試料も同様な半値全幅を示すことから、同程度の結晶性であることが分かる。
【0104】
【表3】
Figure 2004228029
【0105】
また、膜組成をリチウム、リン、タングステン、珪素、ゲルマニウムはICP赤外発光分光分析、酸素、硫黄は燃焼法によりそれぞれ分析した。結果を(表3)B欄に示す。これらのデータは、リンの原子数を1としてその他の元素の原子数を規格化している。この結果から、微量ながらも確実に膜中に取り込まれていることが確認できる。
【0106】
次に、電池の重要な特性指標である充放電回数に見られる効果を示す。
【0107】
電池の作製方法は以下のとおりである。図2において基板をかねる銅箔製の第一集電体51上に第一電極活物質層52としてのコバルト酸リチウム層(10mm×10mm×厚さ1μm)を第一集電体51上に形成したものを用い、前記の方法と同様にして固体電解質層53としてのリン酸リチウム結晶体の薄膜(15mm×15mm×厚さ2μm)、第二電極活物質層54としての金属リチウム層(12mm×12mm×厚さ0.5μm)、第二集電体55としての銅層(14mm×14mm×厚さ0.5μm)を形成した。52、53、54、55はすべて正方形であり、それらの中央が重なるようにして形成した。
【0108】
従って、固体電解質層が外部に露出している部分は、固体電解質層の外周部幅1mmとの層の側面のみである。
【0109】
得られた電池を、環境温度20℃、環境湿度60%のアルゴン雰囲気において、0.2Cレート(第一電極活物質層の質量に基づく電池の理論容量を5時間で充電できる電流値)で4.2Vに到達するまでの充電過程と、2Cレート(電池の理論容量を1/2時間で放電できる電流値)で3.0Vに到達するまでの放電過程を1サイクルとする充放電過程において、初期電流容量の60%容量を維持したサイクル数を計測し、充放電回数とした。結果を(表3)C欄に示す。試料番号3−0と(表1)の従来例との比較から、これらの添加材を使用しても充放電回数が増加していることが確認できる。ここで、硫黄系を添加した場合にはやや充放電回数が少な目になっているが、これらの硫黄系材料は水との反応性が高いことから、本発明によってもまだ効果不足の可能性がある。
【0110】
(実施例4)
本発明を適用することによって作製した一般式LiPO(但し、a+5≦2b+3c≦8、1≦a≦3、0≦c≦0.65とする)で表される窒化リン酸リチウム結晶層を用いた電池の性能向上効果を、固体電解質層としての窒化リン酸リチウム層のLi比率aが1≦a≦3である範囲について明確にする。
【0111】
本発明の実施例である試料番号4−0〜4−5は、固体電解質の形成方法以外の工程条件が実施例2−4と同様である。
【0112】
図6は使用する設備の形態を示している。これは、図3における抵抗加熱装置3が二組設置されている以外には違いがない。
【0113】
一方の抵抗加熱装置に蒸着ソース2としてのLiPO30g、もう一方にLiPO30gをそれぞれ入れて、同時にそれぞれ表4の温度に加熱することによって、被成膜基板101としての銅箔(100mm×100mm×厚さ5μm)上に厚さ1μmの膜として堆積させる。形成時の前記真空容器内雰囲気は圧力10−3Paの酸素アルゴン混合ガス(混合モル比は所定のものを使用(表1)に記載)である。膜形成の際には、真空容器内に対して加速電圧60Vの電子銃から所定の電流の電子を照射して、被成膜基板1表面にエネルギーを照射した。
【0114】
従来例の試料は、前述の製法において被製膜基板1に対するエネルギー照射をせずに作製したものとした。
【0115】
得られた被成膜基板101の一部を切り取り、電子線照射による結晶化度を評価した。評価方法は、XRDにおける回折信号の半値全幅値の比較によって行った。線源はCukα1線、回折信号は、2θ=16.9(deg)付近のもの、20.4(deg)付近のもの、18.8(deg)付近のものを併記した。計測結果を(表4)A欄に示す。
【0116】
【表4】
Figure 2004228029
【0117】
従来例のものは、非晶質であるためにXRD信号を確認できなかったが、本発明によるものは回折信号を確認することができ、結晶化している。
【0118】
また、膜組成をリチウムとリンはICP赤外発光分光分析、酸素は燃焼法によりそれぞれ分析した。結果を(表4)B欄に示す。これらのデータは、リンの原子数を1としてリチウム、酸素、窒素の原子数を規格化している。この結果から、酸素濃度に大きな違いがないことが明らかである。
【0119】
次に、電池の重要な特性指標である充放電回数に見られる効果を示す。
【0120】
電池の作製方法は以下のとおりである。図2において基板をかねる銅箔製の第一集電体51上に第一電極活物質層52としてのコバルト酸リチウム層(10mm×10mm×厚さ1μm)を第一集電体51上に形成したものを用い、前記の方法と同様にして固体電解質層53としてのリン酸リチウム結晶体の薄膜(15mm×15mm×厚さ2μm)、第二電極活物質層54としての金属リチウム層(12mm×12mm×厚さ0.5μm)、第二集電体55としての銅層(14mm×14mm×厚さ0.5μm)を形成した。52、53、54、55はすべて正方形であり、それらの中央が重なるようにして形成した。
【0121】
従って、固体電解質層が外部に露出している部分は、固体電解質層の外周部幅1mmとの層の側面のみである。
【0122】
得られた電池を、環境温度20℃、環境湿度60%のアルゴン雰囲気において、0.2Cレート(第一電極活物質層52の質量に基づく電池の理論容量を5時間で充電できる電流値)で4.2Vに到達するまでの充電過程と、2Cレート(電池の理論容量を1/2時間で放電できる電流値)で3.0Vに到達するまでの放電過程を1サイクルとする充放電過程において、初期電流容量の60%容量を維持したサイクル数を計測し、充放電回数とした。
【0123】
結果を(表4)C欄に示す。窒化リン酸リチウム結晶体を固体電解質とすることによって全ての試料において300回を超えている。これらの実施例から、1≦a≦3のほぼ全域においても、53の窒化リン酸リチウムを結晶質とすることが効果的であることが分かる。
【0124】
実施例では正極活物質としてLiCoOとした場合の例を挙げたが、これ以外にも使用可能な材料はLiNiO、LiMn、Li3−αCoαN、V、Li(Li1/3Ti5/3)O等数多く存在する。同様に、負極活物質としてLiを挙げたがこれ以外にも使用可能な材料は、C、LiN等数多く存在する。
【0125】
また、照射するエネルギー源として電子銃による電子照射を取り挙げたが、これ以外にも、イオン照射、光照射などの方法で近い効果を得ることが可能であると思われる。
【0126】
実施例の中で被成膜基板、集電体に用いた材料は、特にこれに限定されるものではなく、他に種々の材料を利用することができる。
【0127】
【発明の効果】
固体電解質層の構成材料の主成分として、窒化リン酸リチウム結晶体さらにはその酸素或いは窒素の欠損を抑制したものを用いることによって、水との反応性が抑制されることにより固体電解質膜の機能低下が抑制されて、電池の充放電回数が飛躍的に向上する。固体電解質層に対して添加物を付与した場合においても、これらの効果は確実に発揮される。
【0128】
さらには、水との反応性が抑制されたことの副次的効果として、微量ガス成分の生成が抑制され、電気化学素子の安全性確保が容易になり、設計の簡素化が可能になる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明が提案する窒化リン酸リチウムの組成比率の領域指示図
【図2】本発明の実施の形態1における電気化学素子の断面構造図
【図3】本発明の実施の形態および実施例で使用する電気化学素子を製造する設備の構造図
【図4】本発明の実施の形態2における電気化学素子の断面構造図
【図5】本発明の実施の形態3における電気化学素子の断面構造図
【図6】本発明の実施の形態および実施例で使用する電気化学素子を製造する設備の構造図
【図7】本発明の実施例1におけるリン酸リチウムの結晶体のXRD分析による2θ=16.9(deg)付近の信号の半値全幅値と、これを用いて作製した図2の構造の電気化学素子の充放電試験における充放電回数の関係図
【符号の説明】
1,101 被成膜基板
2,102 蒸着ソース
3,103 抵抗加熱ルツボ
4,104 抵抗加熱ヒーター
5a,5b,105a,105b 抵抗加熱装置用電力供給線
7,107 雰囲気ガス供給口
8,108 排気管
9,109 排気系メインバルブ
10,110 基板ホルダー
11,111 真空チャンバー
12,112 シャッター
13,113 基板温度制御機構
21,121 対基板用電子源
22,122 対クラスター及び対ガス用電子源
23,123 対基板用電子源用ガス導入管
24,124 対クラスター及び対ガス用電子源用ガス導入管
31,131 対基板用プラズマ源
32,132 対クラスター及び対ガス用プラズマ源
33,133 対基板用プラズマ源用ガス導入管
34,134 対クラスター及び対ガス用プラズマ源用ガス導入管
35,135 対基板用プラズマ源用材料ガス導入管
36,136 対クラスター及び対ガス用プラズマ源用材料ガス導入管
51,61,69,71,79 第一集電体
52,62,68,72,78 第一電極活物質層
53,63,67,73,77 固体電解質層
54,64,66,74,76 第二電極活物質層
55,65,75 第二集電体

Claims (7)

  1. 少なくとも第一集電体と、第一電極活物質層と、固体電解質層と、第二電極活物質層と、第二集電体とを積層した電気化学素子において、前記固体電解質層が少なくとも窒化リン酸リチウム結晶体を含むことを特徴とする電気化学素子。
  2. 窒化リン酸リチウムのX線回折分析による回折信号ピークの半値全幅Δ2θFWHMは1.8°以下であることを特徴とする請求項1記載の電気化学素子。
  3. 窒化リン酸リチウムは一般式LiPO(但し、a+5≦2b+3c≦8、1≦a≦3、0≦c≦0.65とする)で表される化合物であることを特徴とする請求項1記載の電気化学素子。
  4. 少なくとも第一集電体と、第一電極活物質層と、固体電解質層と、第二電極活物質層と、第二集電体とを積層した電気化学素子の製法において、固定電解質層が少なくとも窒化リン酸リチウム結晶体を含みかつ固体電解質層の形成方法が気相成膜法である場合に、固体電解質層形成工程において被成膜面あるいは被成膜面が面する空間に対してエネルギー照射することを特徴とする電気化学素子の製法。
  5. エネルギー照射の方法が、電子照射であることを特徴とする請求項4記載の電気化学素子の製法。
  6. 被成膜面を設置する機能と、被成膜面上に固体電解質を気相成膜法によって形成する機能と、前記の気相成膜法を実施中に被成膜面あるいは被成膜面が接する雰囲気に対して電子を照射する機能を有する電気化学素子製造装置。
  7. 被成膜面と反対側の基板面の温度を調整する機能を有する請求項6記載の電気化学素子製造装置。
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