しかしながら、所謂“プライバシー保護”の観点からすれば、患者データを通信ネットワーク上で、無条件に他の病院(受診経歴外の病院)やシステム事業者で利用するのは、好ましいものではない。即ち、上記従来例の医療情報システムにおいて、患者データの利用を、その秘匿性を全く考慮することなくシステム事業者或いは各病院の自由に委ねることは、憲法上認められないようなプライバシー侵害となる事態を招きかねないという問題点がある。
他方で、患者に対する精神的、肉体的或いは経済的な負担を伴って記録された患者データを有効活用すべきという観点や、更に一般市民に係る多数の患者データを統計処理等により医療の発展に役立てるべきという観点からは、患者データの病院毎の個別利用を図ると共に、患者データの病院間での相互利用或いは複数の病院を束ねての集中利用を図ることが望ましいと考えられる。そして、プライバシーを保護しながらでは、このような患者データの個別利用、相互利用或いは集中利用を図ることが実践上極めて困難であるという問題点がある。
本発明は上述した問題点に鑑みなされたものであり、患者データの秘匿性を向上させつつ、例えば、患者データの医療関連施設毎の個別利用、通信ネットワークを介しての医療関連施設間での相互利用、複数の医療関連施設を束ねての集中利用など、患者データの有効利用を可能ならしめる双方向通信ネットワークによる医療情報提供・取得システム及び方法、並びにコンピュータをそのようなシステムの少なくとも一部として機能させるコンピュータプログラムを提供することを課題とする。
本発明の双方向通信ネットワークによる医療情報提供・取得システムは上記課題を解決するために、複数の医療関連施設に夫々設置される複数の施設処理装置と該複数の施設処理装置に双方向通信ネットワークを介して接続される集中処理装置とを備えた双方向通信ネットワークによる医療情報提供・取得システムであって、前記集中処理装置は、前記複数の施設処理装置に所定種類の医療用アプリケーションプログラムを前記双方向通信ネットワークを介して夫々提供する提供手段を備え、前記施設処理装置は、前記医療用アプリケーションプログラムの実行により得られる患者データを前記双方向通信ネットワークを介して前記集中処理装置に転送する第1転送手段と、医療関連施設毎且つ患者毎に異なる施設側患者識別符号を付与する第1付与手段と、該施設側患者識別符号が付与された患者に係る前記実行により得られる患者データを独自にデータ処理する第1処理手段とを備え、前記集中処理装置は、患者毎に前記施設側患者識別符号と関連性・互換性を有しない運営側患者識別符号を付与する第2付与手段と、該運営側患者識別符号が付与された患者に係る前記転送されてきた患者データを独自にデータ処理する第2処理手段とを更に備える。
本発明の双方向通信ネットワークによる医療情報提供・取得システムによれば、集中処理装置は、先ず提供手段によって、複数の施設処理装置に、例えば電子カルテなどの所定種類の医療用アプリケーションプログラムを、双方向通信ネットワークを介して夫々提供する。これを受けて、施設処理装置は、例えばブラウザを利用して、この医療用アプリケーションプログラムを実行することにより得られる(例えば、ブラウザ上や入力画面上で入力される)患者データを、第1転送手段によって、双方向通信ネットワークを介して集中処理装置に転送する。これと同時に或いは相前後して、施設処理装置は、第1付与手段によって、医療関連施設毎且つ患者毎に異なる施設側患者識別符号を付与し、更に、この施設側患者識別符号が付与された患者に係る、上述の医療用アプリケーションプログラムの実行により得られる患者データを、第1処理手段によって独自にデータ処理する。他方、集中処理装置は、第2付与手段によって、患者毎に前述の施設側患者識別符号と関連性・互換性を有しない運営側患者識別符号を付与すると共に、この運営側患者識別符号が付与された患者に係る、上述の施設処理装置側から転送されてきた患者データを、第2処理手段によって独自にデータ処理する。
このように集中処理装置から施設処理装置に提供される医療用アプリケーションプログラムの実行により得られる患者データに対し、施設処理装置の第1処理手段と集中処理装置の第2処理手段とは、相互に関連性・互換性を有しない施設側患者識別符号と運営側患者識別符号とを夫々利用して、独自にデータ処理を夫々行う。従って、患者データの秘匿性を向上させつつ、患者データの医療関連施設毎の個別利用を図ると共に、双方向通信ネットワークを介しての医療関連施設間での相互利用或いは複数の医療関連施設を束ねての集中利用を図ることが可能となる。
尚、集中処理装置は、医療用アプリケーションプログラムの提供と、医療用アプリケーションプログラムの実行により得られる患者データの格納とを、個別的処理で実行してもよい。
本発明の双方向通信ネットワークによる医療情報提供・取得システムの一態様では、前記施設処理装置に代えて又は加えて患者用の通信端末を更に備えており、前記提供手段は、前記通信端末に前記医療用アプリケーションプログラムを前記双方向通信ネットワークを介して提供し、前記通信端末は、前記医療用アプリケーションプログラムの実行により得られる患者データを前記双方向通信ネットワークを介して前記集中処理装置に転送する第2転送手段と、通信端末毎且つ患者毎に異なると共に前記運営側患者識別符号又は前記施設側患者識別符号と関連性・互換性を有しない通信端末側患者識別符号を付与する第3付与手段と、該通信端末側患者識別符号が付与された患者に係る前記実行により得られる患者データを独自にデータ処理する第3処理手段とを備える。
この態様によれば、例えば患者用のパソコン、モバイル、携帯電話等の通信端末は、医療用アプリケーションプログラムを実行することにより得られる(例えば、ブラウザ上や入力画面上で入力される)患者データを、第2転送手段によって、双方向通信ネットワークを介して集中処理装置に転送する。これと同時に或いは相前後して、通信端末は、第3付与手段によって、通信端末毎且つ患者毎に異なると共に運営側患者識別符号又は施設側患者識別符号と関連性・互換性を有しない通信端末側患者識別符号を付与し、更に、この通信端末側患者識別符号が付与された患者に係る、上述の医療用アプリケーションプログラムの実行により得られる患者データを、第3処理手段によって独自にデータ処理する。他方、集中処理装置は、施設側患者識別符号又は通信端末側患者識別符号と関連性・互換性を有しない運営側患者識別符号が付与された患者に係る、上述の通信端末側から転送されてきた患者データを、第2処理手段によって独自にデータ処理する。
このように集中処理装置から施設処理装置や患者用の通信端末に提供される医療用アプリケーションプログラムの実行により得られる患者データに対し、施設処理装置の第1処理手段や患者用の通信端末の第3処理手段と集中処理装置の第2処理手段とは、相互に関連性・互換性を有しない施設側患者識別符号や通信端末側患者識別符号と運営側患者識別符号とを夫々利用して、独自にデータ処理を夫々行う。従って、患者データの秘匿性を向上させつつ、患者データの医療関連施設毎或いは通信端末毎の個別利用を図ると共に、双方向通信ネットワークを介しての患者用の通信端末及び医療関連施設間での相互利用、或いは患者用の通信端末及び複数の医療関連施設を束ねての集中利用を図ることが可能となる。
本発明の双方向通信ネットワークによる医療情報提供・取得システムの他の態様では、前記施設側患者識別符号と前記運営側患者識別符号とは、患者固有の生体情報であってデータ化された情報によって相互に関連付けられており、前記施設処理装置及び前記集中処理装置のうち少なくとも一方は、前記患者に対する所定種類の検査を実行することで前記患者固有の生体情報を検出してデータ化する検査手段を更に備える。
この態様によれば、施設側患者識別符号と運営側患者識別符号とは、患者固有の生体情報であってデータ化された情報によって相互に関連付けられているので、複数回に分かれて若しくは特定又は不特定期間を隔てて収集されたり送信された患者データであっても、集中処理装置或いは施設処理装置において、生体情報を足掛かりに同一の患者に係る患者データであることを特定できる。このため、当該同一患者にかかる患者データとして(即ち、既存の施設側患者識別符号を付与したり、既存の運営側患者識別符号を付与しつつ)、データ蓄積やデータ解析を実行可能となる。尚、このような生体情報の検査は、患者自身の状態(例えば、意識不明、大怪我など)によっては、各施設処理装置において、前回の患者データの収集時と今回のデータ収集時との間における患者同一性を確認するために用いることも可能である。
この態様では、前記施設処理装置及び前記集中処理装置のうち少なくとも一方は、前記検査手段によりデータ化された生体情報によって、前記検査が実行された患者と前記施設側患者識別符号又は前記運営側患者識別符号とを対応付ける対応付手段を更に備えてもよい。
このように構成すれば、例えば指紋や虹彩の同一性を判別する判別器などの対応付け手段により、患者と患者識別符号(施設側患者識別符号又は運営側患者識別符号)との対応付けを行えるので便利である。
尚、上述した通信端末を備えた態様においても同様に、前記運営側患者識別符号又は前記施設側患者識別符号と前記通信端末側患者識別符号とは、患者固有の生体情報であってデータ化された情報によって相互に関連付けられており、前記施設処理装置又は前記集中処理装置並びに前記通信端末のうち少なくとも一方は、前記患者に対する所定種類の検査を実行することで前記患者固有の生体情報を検出してデータ化する検査手段を更に備えてもよい。更にこの場合、前記検査手段によりデータ化された生体情報によって、前記検査が実行された患者と、前記施設側患者識別符号又は前記運営側患者識別符号若しくは前記通信端末側患者識別符号とを対応付ける対応付手段を更に備えるように構成してもよい。
本発明の双方向通信ネットワークによる医療情報提供・取得システムの他の態様では、前記集中処理装置は、前記施設処理装置に患者固有の生体情報を前記双方向通信ネットワークを介して要求する要求手段を更に備え、前記施設処理装置は、前記要求手段による要求に応じて前記患者固有の生体情報を転送する第3転送手段を更に備え、前記集中処理装置は、前記第3転送手段から受け取った患者固有の生体情報を前記運営側患者識別符号に対応付けて格納する生体情報格納手段を更に備える。
この態様によれば、集中処理装置の要求手段による要求に応じて、施設処理装置から第3転送手段によって転送される、例えば画像データや遺伝子情報などの患者固有の生体情報を、運営側患者識別符号に対応付けて生体情報格納手段によって格納している。従って、運営側患者識別符号による患者確認が不可能な場合にも、その患者の確認が出来るようになって、患者データの処理や利用が可能になる。
上述した本発明の患者用の通信端末を備えた態様では、前記集中処理装置は、前記通信端末に患者固有の生体情報を前記双方向通信ネットワークを介して要求する要求手段を更に備え、前記通信端末は、前記要求手段による要求に応じて前記患者固有の生体情報を転送する第3転送手段を更に備え、前記集中処理装置は、前記第3転送手段から受け取った患者固有の生体情報を前記運営側患者識別符号に対応付けて格納する生体情報格納手段を更に備えてもよい。
このように構成すれば、集中処理装置の要求手段による要求に応じて、患者用の通信端末から第3転送手段によって転送される、例えば画像データや遺伝子情報などの患者固有の生体情報を、運営側患者識別符号に対応付けて生体情報格納手段によって格納している。従って、運営側患者識別符号による患者確認が不可能な場合にも、その患者の確認が出来るようになって、患者データの処理や利用が可能になる。
上述した本発明の生体情報に係ると共に施設処理装置が第3転送手段を備えた態様では、前記施設処理装置は、前記患者固有の生体情報を前記施設側患者識別符号に対応付けて格納する生体情報格納手段を更に備えてもよい。
このように構成すれば、秘匿性の低下を防止しつつ、患者固有の生体情報を利用して、施設処理装置における患者データと集中処理装置における患者データとの対応付けを行える。
上述した本発明の生体情報に係ると共に患者用の通信端末が第3転送手段を備えた態様では、前記通信端末は、前記患者固有の生体情報を前記通信端末側患者識別符号に対応付けて格納する生体情報格納手段を更に備えてもよい。
このように構成すれば、秘匿性の低下を防止しつつ、患者固有の生体情報を利用して、患者用の通信端末における患者データと集中処理装置における患者データとの対応付けを行える。
上述した本発明の生体情報に係る各種態様では、前記患者固有の生体情報が、指紋、虹彩、網膜及び歯形のうち少なくとも一つの画像データを含む情報であるように構成してもよい。
このように構成すれば、指紋、虹彩、網膜及び歯形のうち少なくとも一つの画像データによって、運営側患者識別符号による患者確認が不可能な場合にも、その患者の確認を比較的簡単且つ迅速に行える。
本発明の双方向通信ネットワークによる医療情報提供・取得システムの他の態様では、前記集中処理装置では、前記施設側患者識別符号と前記運営側患者識別符号との関連性を示す情報を保持しない。
この態様によれば、集中処理装置では施設側患者識別符号と運営側患者識別符号との関連性を示す情報を保持しないので、より確実に患者の秘匿性を高められる。
本発明の双方向通信ネットワークによる医療情報提供・取得システムの他の態様では、前記施設処理装置は、前記提供される医療用アプリケーションプログラムを予め定められた期間において常駐させ、若しくは前記医療用アプリケーションプログラムの実行終了後に取り込んでいる前記医療用アプリケーションプログラムを前記集中処理装置に返送し又は消去する。
この態様によれば、施設処理装置の装置規模及び処理規模に応じてプログラムの常駐、返送或いは消去が可能になって、医療関連施設側のシステム構成の自由度が向上する。
本発明の双方向通信ネットワークによる医療情報提供・取得システムの他の態様では、前記第1付与手段は、前記施設側患者識別符号を、電話番号を含む医療関連施設毎の固有情報を含めたランダム関数処理によって自動生成する。
この態様によれば、施設側患者識別符号を、医療関連施設間で同一としないように、しかも比較的迅速且つ容易に生成できる。
本発明の双方向通信ネットワークによる医療情報提供・取得システムの他の態様では、前記第2付与手段は、前記運営側患者識別符号を、電話番号を含む患者毎の固有情報を含めたランダム関数処理によって自動生成する。
この態様によれば、運営側患者識別符号を、患者間で同一としないように、しかも比較的迅速且つ容易に生成できる。
本発明の双方向通信ネットワークによる医療情報提供・取得システムの他の態様では、前記集中処理装置は、前記医療用アプリケーションプログラムを回線接続して取り込む取込手段と、該取込手段により取り込まれた医療用アプリケーションプログラムを前記施設処理装置に転送する第4転送手段とを更に備える。
この態様によれば、集中処理装置を介して医療用アプリケーションプログラムを各施設処理装置に転送しつつ、双方向通信ネットワーク上で授受される患者データにおける秘匿性を確実に向上させられる。
本発明の双方向通信ネットワークによる医療情報提供・取得システムの他の態様では、前記集中処理装置が、前記双方向通信ネットワーク上に複数台配置されて、該複数台が夫々同一の処理を実行する現用系及び予備系からなる分散処理システムとして動作する。
この態様によれば、分散処理システムにより、双方向通信ネットワーク上で授受される患者データにおける秘匿性を確実に向上させられる。
本発明の双方向通信ネットワークによる医療情報提供・取得システムの他の態様では、前記施設処理装置は、前記患者データに関する統計処理のためのアクセスを実行するアクセス手段を更に備え、前記集中処理装置は、前記アクセス手段からの前記アクセスに対応して前記統計処理のために必要な患者データの入力用テンプレートを示すテンプレート情報を転送する第5転送手段を更に備え、前記施設処理装置は、前記転送されてきたテンプレート情報に基づく前記入力用テンプレートで前記患者データを入力する入力手段を更に備え、前記第1転送手段は、前記入力用テンプレートで入力された患者データを前記前記双方向通信ネットワークを介して前記集中処理装置に転送する。
この態様によれば、患者データの秘匿性を確保しつつ、各医療関連施設において入力用テンプレートで入力された患者データを、集中処理装置において、研究や治験(GCP)のために利用できる。尚、このような入力用テンプレートでの患者データの入力は、原則として患者単位で行われ、例えば、患者の診療ごとにリアルタイム或いは事後的に行ってもよいし、患者の入院ごとに退院時或いは事後的に行ってもよいし、定期的に或いは不定期に行ってもよい。
尚、この態様では、前記第2処理手段は、前記入力用テンプレートで入力され且つ転送されてきた患者データを前記運営側患者識別符号に基づいて統計処理するように構成してもよい。このように構成すれば、第2処理手段において、患者データの秘匿性を確保しつつ、入力用テンプレートで入力され且つ転送されてきた患者データの統計処理等を行うことができる。また、この態様では、前記集中処理装置は、前記入力用テンプレートで入力され且つ転送されてきた患者データを前記運営側患者識別符号に対応付けて格納する統計処理用格納手段を更に備えてもよい。このように構成すれば、統計処理用格納手段に格納された患者データを適宜取り出すことにより、集中処理装置における第2処理手段若しくは双方通信ネットワークに接続された又はされない他の処理手段によって、患者データの秘匿性を確保しながら統計処理できる。或いは、施設処理装置側でも、係る統計処理用格納手段に格納されている患者データの中から必要な患者データを指定して取り出して参照可能としてもよい。
本発明の双方向通信ネットワークによる医療情報提供・取得方法は上記課題を解決するために、複数の医療関連施設に夫々設置される複数の施設処理装置と該複数の施設処理装置に双方向通信ネットワークを介して接続される集中処理装置とを備えた双方向通信ネットワークによる医療情報提供・取得システムにおける医療情報提供・取得方法であって、前記集中処理装置によって、前記複数の施設処理装置に所定種類の医療用アプリケーションプログラムを前記双方向通信ネットワークを介して夫々提供する提供工程を実行し、前記施設処理装置によって、前記医療用アプリケーションプログラムの実行により得られる患者データを前記双方向通信ネットワークを介して前記集中処理装置に転送する第1転送工程と、医療関連施設毎且つ患者毎に異なる施設側患者識別符号を付与する第1付与工程と、該施設側患者識別符号が付与された患者に係る前記実行により得られる患者データを独自にデータ処理する第1処理工程とを実行し、前記集中処理装置によって、患者毎に前記施設側患者識別符号と関連性・互換性を有しない運営側患者識別符号を付与する第2付与工程と、該運営側患者識別符号が付与された患者に係る前記転送されてきた患者データを独自にデータ処理する第2処理工程とを更に実行する。
本発明の双方向通信ネットワークによる医療情報提供・取得方法によれば、上述した本発明の双方向通信ネットワークによる医療情報提供・取得システムの場合と同様に、患者データの秘匿性を向上させつつ、患者データの医療関連施設毎の個別利用を図ると共に医療関連施設間での相互利用或いは複数の医療関連施設を束ねての集中利用を図ること可能となる。
尚、本発明の双方向通信ネットワークによる医療情報提供・取得方法は、上述した本発明の双方向通信ネットワークによる医療情報提供・取得システムにおける各種態様と同様の各種態様とすることも可能である。
本発明のコンピュータプログラムは上記課題を解決するために、コンピュータを、上述した本発明の双方向通信ネットワークによる医療情報提供・取得システム(但し、その各種態様も含む)に備えられた前記集中処理装置及び前記施設処理装置のうち少なくとも一方として機能させる。
本発明のコンピュータプログラムによれば、上述した本発明の双方向通信ネットワークによる医療情報提供・取得システムに備えられた集中処理装置及び施設処理装置のうち少なくとも一方を、情報記録媒体の格納プログラムや通信ネットワークを通じたダウンロード/インストールによるプログラムで実行可能になる。より具体的には、当該コンピュータプログラムによって、コンピュータを、施設処理装置における第1転送手段、第1付与手段、第1処理手段等として夫々機能させたり、集中処理装置を構成する提供手段、第2付与手段、第2処理手段等として夫々機能させたりできる。例えば、情報記録媒体によるパーケージソフトウェアや、通信ネットワークを通じたダウンロード/インストールによるシェアウエアとして流通させることが可能になり、本発明の汎用性が向上する。換言すれば、実施が容易かつ確実に出来るようになる。
尚、上述の如く本発明では、集中処理装置は、「提供手段」を備えることとしているが、このような提供手段を省略しても本発明は、相応の効果が得られる。即ち、本発明は、複数の医療関連施設に夫々設置される複数の施設処理装置と該複数の施設処理装置に双方向通信ネットワークを介して接続される集中処理装置とを備えた双方向通信ネットワークによる医療情報提供・取得システムであって、前記施設処理装置は、所定種類の医療用アプリケーションプログラムの実行により得られる患者データを前記双方向通信ネットワークを介して前記集中処理装置に転送する第1転送手段と、医療関連施設毎且つ患者毎に異なる施設側患者識別符号を付与する第1付与手段と、該施設側患者識別符号が付与された患者に係る前記実行により得られる患者データを独自にデータ処理する第1処理手段とを備え、前記集中処理装置は、患者毎に前記施設側患者識別符号と関連性・互換性を有しない運営側患者識別符号を付与する第2付与手段と、該運営側患者識別符号が付与された患者に係る前記転送されてきた患者データを独自にデータ処理する第2処理手段とを更に備えて構成されてもよい。そして、このように構成する場合にも、上述した本発明の各種態様と同様の各種態様を採ることが可能である。
以上詳細に説明したように本発明によれば、通信ネットワーク上で患者データを処理する医療情報提供・取得システムにおける、患者データの秘匿性が確実に向上するという効果を奏する。
本発明のこのような作用及び他の利得は次に説明する実施の形態から明らかにされよう。
次に、本発明の双方向通信ネットワークによる医療情報提供・取得システム及び方法、並びにコンピュータをそのようなシステムとして機能させるコンピュータプログラムの実施形態を図面参照の上で詳細に説明する。
(1)実施形態の構成
先ず、図1から図4を参照して本発明の実施形態における双方向通信ネットワークの構成について説明する。
図1において、この例の双方向通信ネットワークは、例えば、マルチメディア通信ネットワークであり、各種の通信プロトコル変換用のゲートウェイ(GW)装置で接続されたデジタル固定通信回線網1及びデジタル移動通信網2(この二つの通信網をまとめて、適宜、「通信回線網」と記載)を有している。
デジタル固定通信回線網1には、「集中処理装置」の一例としての医療情報集中処理センタ通信装置3と、夫々「施設処理装置」の一例としての複数の医療機関通信装置4と、「患者通信端末」の一例としての患者が使用する通信端末5(小型汎用コンピュータ5a)とが接続されている。また、デジタル移動通信網2のセル基地局2aには、無線区間(エアーインタフェース)を通じて、「患者通信端末」の他の一例としての患者が使用する通信端末5(インターネットアクセスが可能な携帯電話機5b)が収容されている。
医療情報集中処理センタ通信装置3は、医療機関処理共用通信システム3aと医療機関データ集中処理通信システム3bとから構成されている。
医療機関通信装置4は、比較的大規模な医療施設に設置される医療機関通信システム4aと、比較的小規模な医療施設に設置される医療機関小型汎用コンピュータ4bとから構成されている。なお、医療機関通信システム4aには、以降で説明する医療機関処理共用通信システム4cを併設することがある。
図2は医療情報集中処理センタ通信装置3における医療機関処理共用通信システム3aの構成例を示すブロック図である。
図2において、この例の医療機関処理共用通信システム3aは、ISDN(デジタル固定通信網1)に接続するための回線接続装置10(例えば、ハブ装置、デジタル終端接続装置(DSU)、侵入防止用のファイアウォールアプリケーションを実装した図示しないルータなど)、インターネット上で基幹的な通信処理を実行するための主コンピュータであるウェブサーバ11、分散名前管理システム(DNS:Domain Name System)用のDNSサーバ12、顧客医療データの暗号化転送を行う暗号化通信プロトコル(SSL:Secure Sockets Layer)用のSSLサーバ13,FTP(File Transfer Protocol)ファイル転送用のFTPサーバ14、通信制御を実行する通信制御装置15、各種のデータを格納し、その検索(トラッキング)を実行するデータベース装置16、及び外部LANを収容するためのインタフェース(I/F)部17を備えて構成されている。
なお、この例の医療機関処理共用通信システム3aには、プログラムをCD−ROMから読み出して通信制御装置15などの必要な各部にインストールするための図示しないドライブ装置、データベース管理などの保守を行うための単体の小型汎用コンピュータなどが設けられる。
外部LANは、図示しないLANサーバによって小型汎用コンピュータを、例えば、RPC(Remote Procedure Call遠隔呼び出し)の各シーケンスで実行するものであり、クライアントサーバシステム(マスタースレーブ方式)として構築されるものである。
図3は医療情報集中処理通信センタ装置3における医療機関データ集中処理通信システム3bの構成例を示すブロック図である。
この例の医療機関データ集中処理通信システム3bは、図2に示す医療機関処理共用通信システム3aと同様の、回線接続装置10から通信制御装置15までを備えて構成されていると共に、多数の医療機関の医療情報を処理し、かつ、トラッキングによる検索処理を実行するデータベース装置18と、保守作業用の保守ターミナル19とを更に備えている。
図4は医療機関通信装置4における医療機関通信システム4aの構成例を示すブロック図である。
図4において、この例の医療機関通信システム4aは、医療機関における各種の医療情報処理(患者データ、医療事務、医療画像等)を実行するものであり、通信回線網との接続(インターネットアクセス)を行うウェブサーバ25に、遠隔呼び出し(RPC)方式を実行するLANサーバ26と、各種の端末(小型汎用コンピュータ、プリンタ、スキャナ)とを収容した構成である。
なお、前記した各小型汎用コンピュータは、その構成が既知である。例えば、接続装置、マイクロコンピュータ、フラッシュメモリ、情報記録媒体用ドライブ装置、モニタ装置、入力操作装置、ハードデスク装置、各種の外部装置、例えば、デジタルカメラからの画像データを取り込むSCSI(Small Computer System Interface)インタフェース、USB(Universal Serial Bus)インタフェースなどを備えた構成である。
また、図1に示す携帯電話機5bは、PDC方式、PHS方式として、その構成は既知である。例えば、周波数切替器・シンセサイザ、受信電界強度(RSSI)検出部を備えた無線送受信部、変調/復調部、時分割多重分離部、コーデック(符号化/復号化)部、マイクロプロセッサ(MPU)、外部インタフェース(I/F)部、メモリ、キーパッド及び着信表示発光ダイオードや液晶デスプレイなどの表示部、及び送話用マイクロホンと受話用スピーカ、撮像部などを備えた構成である。
また、図1の通信ネットワークにおいて、マルチメディアのストリーム伝送を行うための編集サーバ(携帯電話機5bへの転送データ編集用)、VoIP(Voice over Internet Protocol)ゲートウェイ装置などは、その図示を省略した。図1の各装置は、以降で詳細に説明する通信アプリケーションプログラム(例えば、ASPによるプログラム転送(転送及びダウンロード/インストール)のためのユーテリティソフトウェアを搭載したウェブブラウザやメーラーアプリケーションを搭載している。
(2)実施形態における基本通信動作
次に、図1を参照して、本実施形態の構成における基本的な通信動作について説明する。
近時の通信回線網は、TCP/IP環境下(例えば、インターネット)の、いわゆる、マルチメディア通信ネットワークとして構築され、IPパケットデータ通信とともに、ITU−T(international Telecommunication Union - Telecommunication Standardization Sector)/G3規格のファクシミリ通信やインターネットFax通信及び、汎用電話通話やVoIP/ITU−T/H.323プロトコル)による音声電話通信を実行している。
デジタル固定通信網1は、その構成及び伝送方式が既知のISDNなどを用いたIP網であり、パケット交換局などを回線網に設置した網構成である。また、デジタル移動通信網2は、例えば、ARIB−27/28規格(PDC方式/PHS方式)を適用し、かつ、セル基地局2aを図示しない移動通信制御局(MCC)が収容する既知の移動回線網である。この移動回線網は、TIA標準IS95系/IMT−2000のN/W−CDMA方式でも良く特に限定しない。
例えば、伝送速度64,384kbit/s,1.5Mbit/sによるIPパケットを伝送し、ITU−T勧告によるパケット交換手順X.31(I.430/I.431,Q.921/Q.931,X.25プロトコル)を実行する。
なお、他の高速伝送方式(例えば、ADSL/非対象デジタル伝送)を適用しても良く、また、高速通信ネットワーク(例えば、ギガビット高速データ通信ネットワーク)を利用しても良い。特に、ギガビット高速データ通信ネットワークの採用は、転送データ量が多い医療画像の3次元シミュレーションをコンピュータ双方向通信で実行する場合などに有効である。
また、図1の各装置は、インターネット通信として周知のTCP/IPによる通信接続処理、HTML(HyperText Markup Language)による言語処理機能(文章、音声、データ圧縮によるJPEG静止画又はMPEG動画処理)、及びHTTP(Hypertext Transport Protocol)によるハイパーリンク機能による転送双方向通信、FTPによるファイル転送、及びCGI(Common Gateway Interface)による外部アプリケーションをそれぞれに実行する。このための電子メール通信やインターネットサーフィンを行うウェブブラウザ(アプリケーション)を各装置が搭載している。
なお、データベース装置におけるデータベースエンジン(トラッキング)で読み出されるデータは、例えば、XML(Extensible Markup Language)によりCDF(プッシュ型情報配信のフォーマット)やプッシュプル型情報配信のフォーマットによって発信するデータを生成し、また、SQL(Structured Query Language)によってリレーショナルデータベース処理を実行している。
さらに、医療情報の(コンテンツ)の写真やイラストをデータ処理するための、ビットマップ画像ファイルを保存する、例えば、TIFF(Tagged Image File Format)とともに、機種や使用フォントに関わらず作成時のイメージを保った変換が可能な、例えば、PDF(Portable Document Format)ファイルによって高微細画像データを生成かつ処理している。また、動的なホームページをASP(Active Server Pages) を通じて作成している。
このような各装置は、TCP/IPリンクによって、周知のIPパケットによるファイル転送を双方向通信で行っている。この通信ネットワークにおけるインターネット上での転送処理は、HTTPにおけるオブジェクト指示(クリック/マウスなどの座標入力装置によるラジオボタン、アンカー、プッシュボタン等への指示)によって実行する。この場合、ファイルフォーマットにTCPコネクションの開放の伝送終了記述文字(FIN)や伝送肯定応答文字(ACK)などを格納し、その識別によってファイル転送を実行する。
なお、携帯電話機5bでは、セル基地局2aのサービスエリア内に携帯電話機3が移動すると、制御チャネル(CCH)をスキャンしてモニタし、最大受信電界強度の制御チャネルを補足する。この位置登録後は、周知の発呼(発信)又は着呼(着信)に対する通信シーケンス(ここでは、インターネットアクセス)が実行される。
図1に示す各装置は、CPU(ウェブサーバのCPUも含む)が実行する通信プロトコルやプログラムによって、本実施形態における各種処理を実行する。この通信プロトコルやプログラムは、前記した汎用の通信プロトコルやプログラムとともに、医療情報処理を実行するための専用の通信プロトコルや、特に医療情報提供・取得システム構築用のコンピュータプログラムを実行する。
(3)実施形態における集中医療情報処理
次に、図1から図4の各部における集中医療情報処理について説明する。
医療情報集中処理通信センタ装置3は、従来、個々の病院毎に処理されていた各種の医療情報処理をインターネット(通信回線網)上で、その双方向通信によって代行するものである。医療情報集中処理通信センタ装置3の医療機関処理共用通信システム3aは、病院毎の医療機関通信装置4による日常の診療処理を管理するものである。
この診療処理の管理は、例えば、電子カルテ作成処理(定型化フォーマット/テンプレート)、レントゲン画像データ生成、診療報酬(レセプト)自動計算(処理医事会計システム)処理、検査依頼、薬剤処方依頼をデータ転送する検査依頼(オーダ)システムや薬局システムなどの処理(オーダシステム)を行うものである。この各種の処理を行うためのプログラムは、医療機関処理共用通信システム3aに予め格納して転送し、また、通信ネットワーク上のソフトハウスやASP事業者のなどのウェブサイトから取り込み、かつ、回線接続(リンク)によって医療機関通信装置4に転送する。すなわち、最新の電子カルテ作成用定型化フォーマットなどの高度医療処理プログラム提供を実施するASP事業(ビジネスモデル)である。
転送される医療処理プログラムは、医療機関通信装置4で取り込まれるが、図4に示す医療機関通信システム4aでは、LANサーバ26に常駐させることが可能である。また、一定期間のみ常駐させたり、この電子カルテ作成用定型化フォーマットによる書面作成毎に取り込むことになる。なお、この書面作成が終了した場合は、この全部の情報を医療情報集中処理通信センタ装置3に自動又はバッチ処理を通じて転送して、医療機関データ集中処理通信システム3bで順次格納する。
また、比較的小規模の病院に配置される医療機関小型汎用コンピュータ4bでは、処理開始毎に、そのプログラムを医療機関処理共用通信システム3aからダウンロード/インストールして使用し、書面作成が終了した場合は、この全部の情報を医療情報集中処理通信センタ装置3に自動又はバッチ処理を通じて転送するとともに、プログラムを開放する。換言すれば、クライアント・サーバシステムと同様の動作を実行する。
なお、医療機関処理共用通信システム3aは、図1に示すように医療機関処理共用通信システム4cとして病院に配置される場合がある。これは、複数の病院の医療機関通信システム4aを、この医療法人の本部などで管理する場合である。
医療情報集中処理通信センタ装置3の医療機関データ集中処理通信システム3bは、医療機関処理共用通信システム3aで処理された医療情報を抽出して格納し、各種の処理に利用している。例えば、前記した電子カルテ作成処理(定型化フォーマット/テンプレート)、レントゲン画像データ生成、診療報酬(レセプト)自動計算(処理医事会計システム)処理、検査依頼、薬剤処方依頼をデータ転送する検査依頼(オーダ)システムや薬局システムなどの処理データを病院毎に図3中のデータベース装置18に格納し、この後、医療機関通信装置4が随時読み出して参照している。
また、医療情報集中処理通信センタ装置3では、メールボックス処理、予約処理、ミニマムデータ処理及び統計データ処理を病院側(医療機関通信装置4)に提供している。
メールボックス処理は、病院(医療機関通信装置4)間でのデータ転送を行うものである。例えば、患者紹介状、検査結果資料、レポート、処方履歴等である。このデータ転送は、例えば、図2中のデータベース装置16などの処理によるモジュールによってデータ転送を実行する。予約処理は、図2中のデータベース装置16などの処理によるモジュールを通じた診療予約、検査予約などの情報であり、病院が他の病院に開放している予約にかかる情報を保持し、病院側(医療機関通信装置4)からの閲覧が可能なっている。これは、例えば、患者の状態(病気)に専門に対応できる病院からの連絡を受けるためなどに利用される。
ミニマムデータ処理は、緊急、救急、災害時などに病院等に収容される、緊急・救急患者等に対する治療や診療に実践的な意味で最低限必要な患者データ部分たるミニマムデータを、図3中のデータベース装置18などに格納し、多数の病院側(医療機関通信装置4)が必要に応じて(例えば、緊急・救急患者が運び込まれた場合など)閲覧するものである。このミニマムデータは、例えば患者毎の電子カルテ作成時に、そのデータから必要事項を医療機関処理共用通信システム3aから医療機関データ集中処理通信システム3bが取り込んでデータベース装置18が、その更新・追加を行う。
統計データ処理は、患者を特定しない分析データを処理するものである。この統計データ処理は、例えば、医療機関処理共用通信システム3aから提供されるプログラム(定型化フォーマット/テンプレート)によって作成され、医療機関データ集中処理通信システム3bが取り込んでデータベース装置18に格納される。統計データは、作成した病院側(医療機関通信装置4)が取り込んで参照したり、他の病院に公開(例えば、医療情報集中処理通信センタ装置3のホームページ閲覧により公開)される。
次に、医療情報集中処理通信センタ装置3は、患者側(通信端末5)も利用が可能である。この患者側(通信端末5)の利用としては、患者個人の各種のデータ(前記した電子カルテ、レントゲン画像データ、診療報酬(レセプト)、検査依頼、薬剤処方依頼などの情報)がある。この情報閲覧は、患者個人や公共機関(例えば、感染疾病などの調査)などの秘匿性を有するものである。したがって、この情報閲覧は、識別符号(ID)、パスワードを予め付与し、そのアクセスを通じて閲覧(開示)が行われる。
なお、医療情報集中処理通信センタ装置3への医療機関通信装置4からも、一般公開するホームページのコンテンツ(統計データ)以外は、識別符号(ID)及びパスワードによるアクセスが行なわれる。例えば、会員制などにおいても識別符号(ID)及びパスワードを通じてアクセスが実行される。
このように医療情報集中処理通信センタ装置3から医療機関通信装置4に各種の処理用プログラムを転送している。すなわち、ASPによる高度医療処理プログラム提供や、集中処理、データ保管等を通じて実施している。この結果、病院毎の医療機関通信装置4のシステム規模及び処理規模を削減される。特に、費用が嵩む最新の高度な医療情報システムを構築かつ運営する必要が無くなる。換言すれば、最新のバージョンアッププログラム化による医療情報処理が、常に可能になって、多種のアプリケーション搭載の多機能化(肥大化/Fat Client)によるバージョンアップなどの費用削減が図られる。
また、定型化フォーマット/テンプレート化による処理を転送プログラムで実行できるようになり、その医療情報処理が容易に行われる。さらに、処理データを医療情報集中処理通信センタ装置3で保管できるようになって、その長期間にわたる膨大なデータ保管を病院側(医療機関通信装置4)で行わなくて良くなり、その費用削減や、データ保管の信頼性保持のシステム監査などが容易になる。また、医療機関との提携や、医療法人傘下の複数の病院での情報活用、及び病院間での情報交換なども容易に可能になる。
(4)患者ID付与を伴う患者データの処理
次に、以上の構成動作に基づいた「患者ID付与を伴う患者データの処理」について説明する。
この「患者ID付与を伴う患者データの処理」とは、前記した双方向通信ネットワーク上での患者データの処理(例えば、患者データの病院毎の個別利用におけるデータ処理、患者データの病院間での相互利用におけるデータ処理、及び医療情報集中処理通信センタ装置3における患者データの統計的或いは個別的な分析・解析などのデータ処理を含む、広い意味でのデータ処理)であって、特に、複数の病院(医療機関通信装置4)間で互換性・関連性をもたず更にこれらと運営側(医療情報集中処理通信センタ装置3)との間でも互換性・関連性を持たない患者IDの付与を、各病院側及び運営側で夫々行うことによって、該患者データの秘匿性を確実に向上させるものである。しかも、このように患者データの秘匿性を向上させつつ、当該患者データの双方向通信ネットワークを介しての有効利用・有効活用を可能ならしめるものである。
図5は、このような患者ID付与を伴う患者データの処理を説明するための概念図であり、図6は、図5に示す処理における運営側(医療情報集中処理通信センタ装置3)と病院側(医療機関通信装置4)との伝送シーケンス図である。また、図7は、図6における病院側(医療機関通信装置4)の処理手順を示すフローチャートであり、図8は、図6における運営側(医療情報集中処理通信センタ装置3)の処理手順を示すフローチャートである。
図5から図8において、まず、運営側(医療情報集中処理通信センタ装置3)と病院側(医療機関通信装置4)とで、同一患者に異なる識別符号(ID)を付与している。また、病院毎に個々の患者に対する病院側患者IDを付与する。病院側患者IDは、病院間での関連性及び互換性はないものである。例えば、病院の電話番号にランダム関数処理などでの自動付与すると、必然的に異なる病院側患者IDとなる(図7ステップS1,S2)。
同一患者に対して運営側では、病院側からの患者データが識別符号(以下、「病院側患者ID」と記載)を伴って転送されてきた場合(図8ステップS21)、医療機関処理共用通信システム3aは医療機関データ集中処理通信システム3bのデータベース装置18を参照して(図8ステップS22)、この運営側での患者に対する識別符号(以下、「運営側患者ID」と記載)が存在するかを調べる(図8ステップS23)。始めての患者の場合は、運営側患者IDが無いため(図8ステップS23:No)、ここで当該患者に対する病院側患者IDと異なる運営側患者IDを付与する(図8ステップS24)。
この運営側患者IDは、少なくとも最初の1文字を病院側患者IDと異なるように予め定めておいて、例えば、ランダム関数処理などでの自動付与が可能になる。換言すれば、病院側患者IDと運営側患者IDとは、互換性・関連性が無いことになる。また、この運営側患者IDは、患者及び病院側に登録後に通知される(図7ステップS3、図8ステップS25,S26)。また、運営側患者IDは、例えば、符号による構成のみではなく、患者個人の指紋(画像データ)、人の眼球における虹採や網膜、歯形等の生体情報を病院側又は患者本人、親族者に要求し、その画像データ(例えば、病院側による画像データ化)の提供を受ける(図7ステップS4,S5、図8ステップS27,S28)。この生体情報は、図2に示す医療機関処理共用通信システム3a及び図3に示す医療機関データ集中処理通信システム3bのデータベース装置18に画像データとして格納する(図8ステップS29)。
この生体情報は、例えば、運営側患者IDのデータを消失したり、緊急で搬送された患者の運営側患者IDを、病院側(医療機関通信装置4)が医療情報集中処理通信センタ装置3から取り込め無い場合や、患者から聞き出せない場合に、その運営側患者IDに代えて患者を特定するために利用される。
生体情報を格納した後における、病院側患者IDと生体情報を含む運営側患者IDとは、次のように使用される(図7ステップS6、図8ステップS30)。運営側患者IDは、医療情報集中処理通信センタ装置3における医療機関処理共用通信システム3aと医療機関データ集中処理通信システム3bとにおいて使用されるが、病院側患者IDとの関連しないデータ処理を実行する。この場合、運営側患者IDは、例えば、前記した病院間で閲覧が可能な予約処理(診療予約、検査予約)などの情報を病院が他の病院に開放している場合に、その病院側からのアクセスなどに使用される。また、病院側患者IDは、特に患者毎に秘匿性が要求される電子カルテ作成などに対して使用される。
このように本実施形態における患者ID付与を伴う患者データの処理では、同一の患者(通信端末5)に対し、病院側患者IDと運営側患者IDとが関連性・互換性を有していないため、医療情報集中処理通信センタ装置3(集中医療情報システム)における、患者データの処理(例えば、患者データの病院毎の個別利用、患者データの病院間での相互利用或いは複数の病院を束ねての集中利用)における秘匿性が確実に向上することになる。
次に図9を参照して、テンプレートを用いた本実施形態における患者データの入力処理の具体例について更に説明を加える。
図9(a)に示すように、医療機関通信装置4等において患者データを入力する際の表示装置の画面201aには、病院側患者ID、診療科名等を表示又はテキスト入力する欄211の他、テンプレート呼び出し用のボタン210が表示される。また、当該患者についての前述した指紋、虹彩等に係る生体情報が存在する旨を示す小型画像データ215が専用枠内に表示されている。操作者が、ボタン210をマウス等で操作すると、図9(b)に示すように、テンプレート選択用のウインドウ画面220が、表示装置の画面201b内に表示される。ここでは、研究や治験における目的として「既往症履歴」、「アレルギー」、「臓器ドナー希望」等の種類に応じて予め用意された複数のテンプレートの中から所望の一つを選択するためのウインドウ画面220が表示される。そして、ウインドウ画面220中のテンプレート名称の中から、所望の一つに対応するものを操作者がマウス等で選択すると(ここでは、「アレルギー」が選択されたものとすると)、図9(c)に示すように、この選択されたテンプレートが表示装置の画面201c内に表示される。この具体例では、「性別」、「年齢」等の項目別にテキスト入力欄230が設けられている。これら複数の項目は、テンプレートの種類別に予め設定されている。
このように本実施形態によれば、病院側患者IDに対応する患者データの入力処理を容易且つ確実に実行できる。また病院側患者IDを用いれば、同一患者についての病院側患者IDや患者データが既に医療機関通信装置4のメモリ内に存在する場合に、この病院側患者IDを図9(a)の段階で欄211に表示したり、この患者データを既定値として図9(c)の段階で、対応するテキスト入力欄230に表示することも可能となる。そして、医療情報集中処理センタ装置3側では、この病院側患者IDとは異なる運営側患者IDにより、図9(a)〜図9(c)のように入力された後に転送された患者データの管理や処理を行う。特に、小型画像データ215によりその存在が示されている生体情報を用いれば、医療情報集中処理センタ装置3側においても、同一患者に係る患者データについては当該同一患者に係る患者データとして管理や処理を行える。
以上の如きテンプレートを用いた患者データの入力処理は、医療機関通信装置4内において、医療機関小型汎用コンピュータ4bによる制御下で実行されてもよい。或いは、テンプレートのライブラリを医療情報集中処理センタ通信装置3側に設けて、医療機関通信装置4からデジタル固定通信回路網1等を介してこれに適宜アクセスするように構成してもよい。更にデジタル固定通信回路網1等を介しての医療情報集中処理センタ通信装置3の制御下で、医療機関通信装置4内におけるブラウザ上で実行されてもよい。
(5)実施形態の応用例
次に、この実施形態の応用例について説明する。
図1に示す医療情報集中処理センタ通信装置3から患者が医療機関(病院)に出向く際に、その場所や診療科目を示す案内情報(病院案内と地図情報)を通信端末5からの要求で転送すると、顧客側での利便性が向上する。また、医療機関(病院)での電話での問い合わせも減少することになって、その省力化にも対応できるようになる。なお、地図情報は、医療情報集中処理センタ通信装置3が独自に作成したり、通信ネットワーク(通信回線網)上の地図提供ウェブサイトから、その回線接続(リンク)によって取り込んで通信端末5に提供するようにも出来る。
この場合、リンクによる地図情報の提供では、医療情報集中処理センタ通信装置3(図2、図3参照)に、インターネット上の時刻同期用NTP(Network Time Protocol)サーバ及び分散ファイルシステム用のNFS(Network File System )サーバを配置する。
また、図1に示す医療情報集中処理センタ通信装置3による各種の集中処理が有料会員制の場合は、その料金を月極め会費、年会費又は使用重量制(例えば、パケット量)で徴収する際に、通信ネットワーク(通信回線網)に配置されたネット銀行システムとの間で、電子マネー(デジタルキャッシュ)などで決済すると、その相互(運営側と病院側)の省力化が進展する。この電子マネー決済(電子商取引は、例えば、EDI(Electronic Data Interchange)プロトコルによって通信ネットワーク上で決済する。
さらに、患者側(通信端末5)からの問い合わせにおいて、例えば、英語によるデータ変換転送を行うと、患者側での利便性が向上し、特に緊急の場合の患者側での容易かつ確実な対応が可能になる。この言語変換は、通信ネットワーク上の言語変換ウェブサイトとの回線接続(リンク)によって実行すれば良い。この多言語対応と同様に患者側での利便性の向上を図る例として、問い合わせ病院までの交通渋滞情報や天候状態を患者側に提供すると便利である。この交通渋滞情報は、医療情報集中処理センタ通信装置3が道路交通情報通信システム/VICS:Vehicle Information and Communication System)から取り込んで通信端末5に転送する。天気情報は気象資料総合処理システム/COSMETS:Computer System for Meteorological Services)を利用すれば良い。
(6)実施形態の変形例
次に、この実施形態の変形例について説明する。
図1の通信ネットワークは、特に、TCP/IP方式に限定されない。多種のデータ通信方式の適用が可能である。例えば、複数のイーサネット(登録商標)(LAN)を高速通信ネットワークで接続したFDDI(Fiber Distributed Data Interface)・LAN(クライアントサーバシステム)として構築することも可能である。
また、図1におけるデジタル固定通信回線網1に代えて、通信制御装置(NCU)や変復調装置(モデム)などの配置によるアナログ固定通信回線網を使用することも可能である。
さらに、前記した実施形態では、患者の医療情報の秘密保持を図るため、SSLによる転送データの暗号化、識別符号(ID)及びパスワードによるアクセスをもって説明したが、転送プログラムや医療データの破壊防止を行う必要がある。例えば、この破壊として盗聴(通信経路上での悪意あるデータ取得)、否認(通信相手先での通信の否定)、改造(通信経路上での第三者による伝送データの改変)、なりすまし(第三者が他人になりすましてデータ伝送を行う)があり、このため、慣用暗号系(conventional encryption system)や公開鍵暗号化系(public key encryption/RSA,MH)による顧客情報などの破壊防止対策をとるのが好ましい。
さらに、図1に示す通信ネットワークでは、一台の医療情報集中処理センタ通信装置3を配置した例をもって説明したが、システムダウンによる伝送中断(医療情報処理不能)を避ける必要がある。このための構成は、既知の分散処理システムであり、複数の医療情報集中処理センタ通信装置3を通信回線網に設置する。
また、図1に示す通信ネットワークでは、医療情報集中処理センタ通信装置3を、医療機関処理共用通信システム3aと医療機関データ集中処理通信システム3bとをもって説明したが、運用規模(医療機関通信装置4の収容数に対応)が小さい場合は、特に、医療機関処理共用通信システム3aと医療機関データ集中処理通信システム3bとを一体化した一つの通信システムとして構成しても良い。これらは伝送容量(トラフィック量)やデータ処理量を考慮して構成する。
また、医療情報集中処理センタ通信装置3は、必要に応じて、例えば、病院や患者との電話通話やファクシミリ通信を行う。この場合、図2に示す医療機関処理共用通信システム3aと図3に示す医療機関データ集中処理通信システム3bに、FAXサーバ、VoIP電話機を収容するVoIPサーバ(コンピュータ電話統合CTI:Computer Telephony Integration )を設けることになる。
このような応用例や変形例は、当業者にとって容易に創達できる技術的な範囲であり、これらは本発明の範囲に含まれる。
本発明は、上述した各実施形態に限られるものではなく、請求の範囲及び明細書全体から読み取れる発明の要旨或いは思想に反しない範囲で適宜変更可能であり、そのような変更を伴なう医療情報提供・取得システム及び方法、並びにコンピュータプログラムもまた本発明の技術的範囲に含まれるものである。尚、本発明の医療情報提供・取得システムが対象とする医療とは、病院医療のみならず、看護医療や在宅医療をも含むことは言うまでもない。