JP2004224775A - 抗炎症剤 - Google Patents

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Abstract

【解決手段】PACAPペプチドまたはVIPペプチドより誘導したペプチドまたはその薬学的に許容される塩を有効成分として含有する、抗炎症医薬組成物。
【効果】本発明によれば、アレルギー性喘息、気管支炎、結膜炎、自己免疫疾患、アトピー性皮膚炎等の炎症反応を長時間に渡って抑制する PACAP/VIP 誘導体を提供できる。
【選択図】 なし

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、極めて強力な抗炎症作用を有し、生体内において長時間に渡ってその効果を示すことが可能である PACAP/VIP 誘導体及びこれを含有する医薬組成物に関する。
【0002】
【従来の技術】
VIP(血管作動性腸管ペプチド;Vosoactive Intestinal Peptide)は、脳−腸管ペプチドと呼ばれ、血流促進、血圧低下作用をもつ生理活性ペプチドの一種である。このVIPは、ブタ腸管から抽出されており、28個のアミノ酸残基からなる(例えば非特許文献1参照)。一方、PACAP(下垂体アデニレートシクラーゼ活性化ペプチド; Pituitary Adenylate Cyclase Activating Polypeptide) は、羊の視床下部から下垂体培養細胞のアデニル酸シクラーゼを活性化させるバイオアッセイ系を指標にして単離され構造決定された38個のアミノ酸残基よりなるペプチドであり、PACAP38と、PACAP27の2種類がある(例えば非特許文献2参照)。このPACAPのN末端側から27個のアミノ酸配列はVIPと極めて類似した構造を有している。また、VIPとPACAPのアミノ酸配列は、セクレチン、グルカゴン等に類似していることから、グルカゴン−セクレチンスーパーファミリーに属するペプチドとされている。これら PACAP および VIP は PACAP/VIP レセプターを介してその生理作用を示すが、この PACAP/VIP レセプターは生体内において広い分布を示し、それ故 PACAP/VIP は多くの生理活性を有することが報告されている。例えば、抗喘息作用(特許文献1)、血圧低下作用(特許文献2)、増毛作用(特許文献3)、インポテンツ改善作用(特許文献4)、膣潤滑誘発作用(特許文献5)、胃腸管蠕動運動抑制作用(特許文献6)、神経変性疾患・低酸素症・記憶能力低下改善作用(特許文献7)、皮膚潰瘍治療作用(特許文献8)、ニューロンネットワーク形成促進(特許文献9)、コンフォメーション病改善薬(非特許文献3)などである。また、これらの活性以外にも抗炎症作用が指摘されており、外部からの抗原刺激によるマクロファージの活性化を強力に抑制することが報告されている(例えば非特許文献4参照)。それ故、アレルギー性鼻炎や喘息に PACAP/VIP 、特に VIP が有効であるとされてきた(特許文献10参照)。これらの生理作用を考慮すれば医薬応用の可能性は非常に大きいものと考えられるが、PACAP や VIP 等の生理活性ペプチドは概して不安定であり、特に生体内においては速やかな代謝を受けるためにその作用継続時間は非常に短いものである。作用時間の短い抗炎症剤は実用化に難しく、さらにアレルギー喘息患者においては致命的な欠点となる可能性が高い。
【0003】
【特許文献1】
特開平8−333276号公報
【特許文献2】
特開昭63−179894号公報
【特許文献3】
特開平01−83012号公報
【特許文献4】
特開平01−19097号公報
【特許文献5】
特表平01−501937号公報
【特許文献6】
特表平06−507415号公報
【特許文献7】
特開平07−69919号公報
【特許文献8】
特開平08−40926号公報
【特許文献9】
特開2001−226284号公報
【特許文献10】
特開昭56−128721号公報
【非特許文献1】
サイド(S.I.Said)ら、「サイエンス(Science)」 (米国) 1970年 169巻 p.1217
【非特許文献2】
宮田(A.Miyata)ら、「バイオケミカル アンド バイオフィジカル リサーチ コミュニケーションズ(Biochemical and biophysical research communications)」 (米国) 1989年 164巻 p.567
【非特許文献3】
尾上(Onoue, S.)ら、「フェブス レターズ(FEBS Letters)」 (オランダ) 2002年 522巻 p.65−p.70
【非特許文献4】
ダルガド(Delgado, M.)ら、「ジャーナル オブ イミュノロジー(Journalof Immunology)」 1999年 162巻p.2358−p.67
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
従って、本発明は、長時間に渡って抗炎症作用を発揮することが出来、臨床上安全に使用できる安定性の高い PACAP/VIP 誘導体からなる抗炎症医薬組成物を提供することを目的とする。
【0005】
【課題を解決するための手段】
そこで本発明者らは先に、酵素耐性を新規機能として保持させた PACAP/VIP 誘導体を創製し(特開平8−333276号)、実際にこれらがトリプシン等生体内ペプチダーゼによる代謝に対して優れていること(樫本(Kashimoto, K.)ら、「ペプチド ケミストリー(Peptide Chemistry)」 1996年 1997巻 p.249−p.252参照)、さらには気管支拡張作用を指標としてこれらの誘導体が著しい薬効持続作用を有することを明らかにした(吉原(Yoshihara, S.)ら、「ペプチド(Peptides)」 (米国) 1998年 19巻 p.593−p.597;吉原(Yoshihara, S.)ら、「ブリティッシュ ジャーナル オブ ファーマコロジー(British Journal of Pharmacology)」 1997年 121巻 p.1730−p.1734を参照)。さらに本発明者らは、溶液中での安定性を飛躍的に向上させた誘導体を開発し、薬理効果の延長を可能とすることに成功した(特願2002−344523)。従って、この長時間作動型 PACAP/VIP 誘導体は医薬応用において極めて有用なものと考えられ、特に先述の各種生理・薬理作用を目的とした薬剤の有力な候補として考えられた。
【0006】
PACAP の最小活性単位は VIP と同様 N 末端より 23 残基であることが公知の事実となっており(Kitada, C. et al., Peptide Chemistry 1990, 1991, 239−244)、上記 PACAP 誘導体群についても N 末端より 23 残基以上あれば PACAP/VIP の生理・薬理効果が期待できる。
【0007】
さらに本発明者らは上記ペプチドが、天然型VIP及びPACAPと同様、またはそれ以上の高い生理活性を有すると共に、高い安定性を有することを見出すに到った。また、これらの高安定性誘導体群は VIP と比して、作用時間が長く、抗炎症作用が長期に渡って継続することを新規に見出した。
【0008】
すなわち、本発明は以下の(1)〜(16)の発明を提供する。
(1) 下記式(I):
His−Ser−Asp−A−B−Phe−Thr−C−D−Tyr−
E−Arg−F−Arg−G−Gln−H−Ala−Val−I− (I)
J−Tyr−Leu−K−L−M−N (配列番号1)
(式中、A は、Ala または Gly;B はVal または Ile;C は、Asp、 Glu または Ala;D は、Asn または Ser;E は、Thr または Ser;F は、Leu または Tyr;G,I,J は Lys または Arg;H は、Met、Leu または nLeu;K は、Asn、Ala または化学結合;L は Ser、Ala または化学結合;M は、Ile、Valまたは化学結合;N は、化学結合、Leu,Leu−Asn,Leu−Asn−Gly, Leu−Asn−Gly−Lys, Leu−Asn−Gly−Arg, Leu−Asn−Gly−Lys−Lys, Leu−Asn−Gly−Lys−Arg, Leu−Asn−Gly−Arg−Arg, Leu−Gly,Leu−Gly−Lys,Leu−Gly−Arg,Leu−Gly−Lys−Lys,Leu−Gly−Lys−Arg,Leu−Gly−Arg−Arg,Leu−Gly−Lys−Arg−Tyr−Lys−Gln−Arg−Val−Lys−Asn−Lys,Leu−Gly−Arg−Arg−Tyr−Arg−Gln−Arg−Val−Arg−Asn−Arg、またはLeu−Gly−Lys−Arg−Tyr−Lys−Pro−Lys−Arg−Arg−Asn−Ser−Gly−Arg−Arg−Val−Phe−Tyrを表す。但し、G,I,Jが共にLysであり、かつHがMetであることはない。)
で示されるアミノ酸配列のN末端より少なくとも23残基からなるアミノ酸配列で示され、C 末端アミノ酸のα位カルボキシル基がNHで修飾されているかまたはされていないペプチド、または薬学的に許容されるその塩を含有する抗炎症剤。
【0009】
(2) 前記ペプチドが、一般式 (I) においてA が Ala、B が Val、C が Asp、D が Asn、E が Thr、F がLeu、G, I, J が Arg、H が Leu、K が Asn、L が Ser、M が Ile、N が Leu−Asnであるアミノ酸配列のN 末端より少なくとも 23 残基のアミノ酸配列で示され、C末端が −NH で修飾されたペプチドである、上記(1)に記載の抗炎症剤。(ペプチド2等が相当)
【0010】
(3) 前記ペプチドが、一般式 (I) においてA が Ala、B が Val、C が Asp、D が Asn、E が Thr、F がLeu、G, I, J が Arg、H が Leu、K が Asn、L が Ser、M が Ile、N が Leu−Asn−Gly−Lys−Argであるアミノ酸配列のN 末端より少なくとも 23 残基のアミノ酸配列で示され、C末端が −NH で修飾されたペプチドである、上記(1)に記載の抗炎症剤。(ペプチド3等)
【0011】
(4) 前記ペプチドが、一般式 (I) においてA が Ala、B が Val、C が Asp、D が Asn、E が Thr、F がLeu、G, I, J が Arg、H が Leu、K が Asn、L が Ser、M が Ile、N が Leu−Asn−Gly−Arg−Argであるアミノ酸配列のN 末端より少なくとも 23 残基のアミノ酸配列で示され、C末端が −NH で修飾されたペプチドである、上記(1)に記載の抗炎症剤。(ペプチド4等)
【0012】
(5) 前記ペプチドが、一般式 (I) においてA が Ala、B が Val、C が Asp、D が Asn、E が Thr、F がLeu、G, I, J が Arg、H が Leu、K、L、M、N が化学結合であるアミノ酸配列で示され、C末端が −NH で修飾されたペプチドである、上記(1)に記載の抗炎症剤。(ペプチド6等)
【0013】
(6) 前記ペプチドが、一般式 (I) においてA が Ala、B が Val、C が Asp、D が Asn、E が Thr、F がLeu、G, I, J が Arg、H が Leu、K が Ala、L が Ala、M が Ile、N が Leu−Gly−Arg−Argであるアミノ酸配列のN 末端より少なくとも 23 残基のアミノ酸配列で示され、C末端が −NH で修飾されたペプチドである、上記(1)に記載の抗炎症剤。(ペプチド8等)
【0014】
(7) 前記ペプチドが、一般式 (I) においてA が Ala、B が Val、C が Glu、D が Asn、E が Thr、F がLeu、G, I, J が Arg、H が Leu、K が Ala、L が Ala、M が Ile、N が Leu−Gly−Arg−Argであるアミノ酸配列のN 末端より少なくとも 23 残基のアミノ酸配列で示され、C末端が −NH で修飾されたペプチドである、上記(1)に記載の抗炎症剤。(ペプチド17等)
【0015】
(8) 前記ペプチドが、一般式 (I) においてA が Ala、B が Val、C が Ala、D が Asn、E が Thr、F がLeu、G, I, J が Arg、H が Leu、K が Ala、L が Ala、M が Ile、N が Leu−Gly−Arg−Argであるアミノ酸配列のN 末端より少なくとも 23 残基のアミノ酸配列で示され、C末端が −NH で修飾されたペプチドである、上記(1)に記載の抗炎症剤。(ペプチド19等)
【0016】
(9) 前記ペプチドが、一般式 (I) においてA が Ala、B が Val、C が Asp、D が Asn、E が Thr、F がLeu、G, I, J が Arg、H が Leu、K が Ala、L が Ala、M が Val、N が Leu−Gly−Arg−Argであるアミノ酸配列のN 末端より少なくとも 23 残基のアミノ酸配列で示され、C末端が −NH で修飾されたペプチドである、上記(1)に記載の抗炎症剤。(ペプチド21等)
【0017】
(10) 前記ペプチドが、一般式 (I) においてA が Gly、B が Ile、C が Asp、D が Ser、E が Ser、F がTyr、G, I, J が Arg、H が Leu、K が Ala、L がAla、M が Val、N が Leuであるアミノ酸配列のN 末端より少なくとも 23 残基のアミノ酸配列で示され、C末端が −NH で修飾されたペプチドである、上記(1)に記載の抗炎症剤。(ペプチド24等)
【0018】
(11) 前記ペプチドが、一般式 (I) においてA が Gly、B が Ile、C が Asp、D が Ser、E が Ser、F がTyr、G, I, J が Arg、H が Leu、K が Ala、L がAla、M が Val、N が Leu−Gly−Lys−Argであるアミノ酸配列のN 末端より少なくとも 23 残基のアミノ酸配列で示され、C末端が −NH で修飾されたペプチドである、上記(1)に記載の抗炎症剤。(ペプチド25等)
【0019】
(12) 前記ペプチドが、一般式 (I) においてA が Ala、B が Ile、C が Asp、D が Ser、E が Ser、F がTyr、G, I, J が Arg、H が Leu、K が Ala、L がAla、M が Val、N が Leu−Gly−Arg−Argであるアミノ酸配列のN 末端より少なくとも 23 残基のアミノ酸配列で示され、C末端が −NH で修飾されたペプチドである、上記(1)に記載の抗炎症剤。(ペプチド27等)
【0020】
(13) 前記ペプチドが、一般式 (I) においてA が Ala、B が Ile、C が Asp、D が Ser、E が Ser、F がTyr、G, I, J が Arg、H が Leu、K が Ala、L がAla、M が Val、N が Leu−Gly−Arg−Arg−Tyr−Arg−Gln−Arg−Val−Arg−Asn−Argであるアミノ酸配列のN 末端より少なくとも 23 残基のアミノ酸配列で示され、C末端が −NH で修飾されたペプチドである、上記(1)に記載の抗炎症剤。(ペプチド31等)
【0021】
(14) 前記ペプチドが、一般式 (I) においてA が Ala、B が Ile、C が Asp、D が Ser、E が Ser、F がTyr、G, I, J が Arg、H が Leu、K、L、M、N が化学結合であるアミノ酸配列で示され、C末端が −NH で修飾されたペプチドである、上記(1)に記載の抗炎症剤。(ペプチド35等)
(15) 上記(1)〜(14)に記載の抗炎症剤を含有する医薬組成物。
(16) 粉末吸入製剤、粉末点鼻製剤、眼局所投与剤、注射剤、または塗布剤である、上記(15)に記載の医薬組成物。
以下、本発明を具体的に説明する。
【0022】
【発明を実施するための形態】
本発明の高安定性ペプチド誘導体は、具体的には一般式(I)に記載のアミノ酸配列のN末端より少なくとも23残基からなるアミノ酸配列で示され、C 末端アミノ酸のα位カルボキシル基がNHで修飾されているかまたはされていないペプチドであり、N末端のアミノ基はアセチル基、ステアリル基等の各種脂肪酸、ポリエチレングリコール、ヒアルロン酸等の高分子、さらにはデンドリマー等が結合していても良い。C 末端については、−OH,−NH,あるいは N−メチルアミドやN−エチルアミド等で修飾されていても良いが望ましくは −NH である。
【0023】
本発明に用いられるペプチドの代表例を表1に示した。ここに示したペプチド2〜21、並びに 24〜32及び34〜36 は、後記配列表の配列番号3〜22及び25〜33及び35〜37に対応するペプチドである。ただし、ペプチド 5,6,18,20,34,35,36は 23 残基のアミノ酸配列からなるペプチドであり、ペプチド9, 29, 36 は N 末端アミノ基にアセチル基が、そしてペプチド 10 の N 末端アミノ基にはステアリル基が結合している。尚、表中の空欄は化学結合であることを示す。
【0024】
【表1】
Figure 2004224775
Figure 2004224775
【0025】
上記ペプチドは、使用の際にはその N 末端に極性物質または非極性物質(脂肪酸、アシル基等)を結合させて分子の極性を変化させたり、ポリエチレングリコール、グルコサミノグリカン(ヒアルロン酸等)の高分子を結合させて酵素耐性を増強したり、リポソーム基質に結合させてリポソームに封入したり、あるいは脂質膜表面に固定することもできる。アシル基の導入は、その活性の向上のみならず、自己凝集を抑制することが当業者間で知られている。
【0026】
本発明に使用するペプチドは、特に限定するものではないが、公知のペプチド合成の常法に従って合成できる。例えば「ザ.ペプチド(The Peptides)」第1巻(1966年) [Schreder and Luhke 著、Academic Press, New York, U.S.A.] 、あるいは「ペプチド合成」[泉屋ら著、丸善株式会社(1975年)]の記載に従い、具体的には、アジド法、酸クロライド法、酸無水物法、混合酸無水物法、DCC法、活性エステル法(P−ニトロフエニルエステル法、N−ヒドロキシコハク酸イミドエステル法、シアノメチルエステル法など)、ウッドワード試薬Kを用いる方法、カルボイミダゾール法、酸化還元法、DCC−アディティブ(HONB、HOBt、HOSu)法など、各種の方法により合成することができる。これらの方法は、固相合成及び液相合成のいずれにも適用できる。
【0027】
本発明においてペプチド合成は、上記のような一般的なポリペプチドの合成法に従って、例えば末端アミノ酸に順次1個ずつアミノ酸を縮合させるいわゆるステップワイズ法によって、または数個のフラグメントに分けてカップリングさせていく方法により行われる。
【0028】
例えばステップワイズ法による固相合成は、具体的には、メリフィールド(Merrifield.R.B.)の方法 [Solid phase peptide synthesis, J.Amer.Chem.Soc., 85, 2149−2159 (1963)]に従い、以下のようにして行うことができる。まず、C末端アミノ酸(アミノ基を保護したもの)をそのカルボキシル基によって不溶性樹脂に結合させ、その後、該C末端アミノ酸のアミノ基の保護基を除去する。次いで、得られたこの遊離の反応性アミノ基に、目的とするペプチドのアミノ酸配列に従って、アミノ基を保護したアミノ酸の反応性カルボキシル基を縮合反応により順次結合させる。このようにして一段階ずつ全配列を合成した後、ペプチドを不溶性樹脂からはずす。
【0029】
上記の固相合成において用いられる不溶性樹脂は、反応性カルボキシル基との結合性を有するものであればいずれをも使用でき、例えばベンズヒドリルアミン樹脂(BHA樹脂)、クロルメチル樹脂、オキシメチル樹脂、アミノメチル樹脂、メチルベンズヒドリル樹脂(MBHA樹脂)、4−アミノメチルフェノキシメチル樹脂、4−ヒドロキシメチルフェノキシメチル樹脂、4−オキシメチルフェニルアセタミドメチル樹脂などが挙げられる。
【0030】
また、α−アミノ基の保護基として9−フルオレニルメチルオキシカルボニル基(Fmoc)を使用する場合は4−ヒドロキシメチルフェノキシメチル樹脂など、トリフルオロ酢酸(TFA)によって樹脂から脱離できるものがよく、t−ブトキシカルボニル基(Boc)を使用する場合は4−オキシメチルフェニルアセタミドメチル樹脂(PAM樹脂)など、フッ化水素などによって樹脂から脱離できるものがよい。樹脂1g当りペプチド濃度は0.5mmole以下とすることが好ましい。
【0031】
上記の方法においては、アミノ酸のペプチド結合に関与するアミノ基への保護基の結合及び該保護基の脱離、ならびにアミノ酸のペプチド結合に関与するカルボキシル基の活性化が必要である。
【0032】
アミノ基の保護基として、例えば、ベンジルオキシカルボニル(Z)、t−ブトキシカルボニル(Boc)、t−アミノオキシカルボニル(Aoc)、イソボニルオキシカルボニル、p−メトキシベンジルオキシカルボニル、2−クロル−ベンジルオキシカルボニル、アダマンチルオキシカルボニル、トリフルオロアセチル、フタロイル、ホルミル、o−ニトロフェニルスルフェニル、ジフェニルホスフイノチオイルなどの基が挙げられる。
【0033】
また、アミノ酸の中で、側鎖に官能基を有するもの、例えばHis、Tyr、Thr、Lys、Asp、Arg及びSerは、その側鎖の官能基を保護しておくのが好ましい。官能基の保護は、通常用いられている方法で、下記のような通常の保護基を結合させることにより行われ、反応終了後、該保護基は脱離される。
【0034】
Hisのイミノ基の保護基としては、例えばベンジルオキシメチル(Bom)、p−トルエンスルホニル(Tos)、ベンジル(Bzl)、ベンジルオキシカルボニル(Z)、トリチル基などが挙げられる。
【0035】
Ser及びThrの水酸基は、例えばエステル化またはエーテル化によって保護することができるが、この保護は必須ではない。エステル化に適する基としては、アセチルなどの低級アルカノイル基、ベンゾイルなどのアロイル基、ベンゾイルオキシカルボニル、エチルオキシカルボニルなどの炭酸から誘導される基などが挙げられる。またエーテル化に適する基としては、ベンジル(Bzl)、テトラヒドロピラニル、tert−ブチル基などが挙げられる。
【0036】
Tyrの水酸基の保護基としては、例えばベンジル(Bzl)、ブロモベンジルオキシカルボニル(Br−Z) 、ジクロロベンジル(Cl−Bzl) 、ベンジルオキシカルボニル(Z)、アセチル、p−トルエンスルホニル(Tos)基などが挙げられる。
【0037】
Lysのアミノ基の保護基としては、例えばベンジルオキシカルボニル(Z)、クロロベンジルオキシカルボニル(Cl−Z) 、ジクロロベンジル(Cl−Bzl)、t−ブトキシカルボニル基(Boc)、p−トルエンスルホニル(Tos)基などが挙げられる。
【0038】
Argのグアニジノ基の保護基としては、例えばp−トルエンスルホニル(Tos)、ニトロ、ベンジルオキシカルボニル(Z)、t−アミルオキシカルボニル(Aoc)基などが挙げられる。
【0039】
Aspのカルボキシル基の保護は、例えばベンジルアルコール、メタノール、エタノール、tert−ブタノール、シクロヘキシル(cHex)などによるエステル化により行われる。
【0040】
その他のアミノ酸の保護基として、Trpのインドリル基の保護基としては、例えばホルミル、カルボベンゾキシル、4−メトキシ−2,3,6−トリメチルベンゼンスルホニル、2,2,2−トリクロロエチルオキシカルボニルなどが挙げられるが、この保護は必須ではない。
Metのチオメチル基の保護基としては予めメチルスルホキシドにしておき、後に還元する方法があるが、この保護は必須ではない。
【0041】
一方、カルボキシル基の活性化は、従来公知の方法にて行うことができ、用いられる試薬なども公知のものから適宜選択しえる。例えば、カルボキル基の活性化は、該カルボキシル基と種々の試薬とを反応させ、対応する酸クロライド、酸無水物または混合酸無水物、アジド、活性エステル(ペンタクロロフェノール、p−ニトロフェノール、N−ヒドロキシコハク酸イミド、N−ヒドロキシベンズトリアゾール、N−ヒドロキシ−5−ノルボルネン−2、3−ジカルボキシイミド等とのエステル)などを形成させることにより行う。
【0042】
上記の固相における反応性アミノ基と反応性カルボキシル基との縮合反応(ペプチド結合形成反応)に用いる溶媒としては、ペプチド結合形成に使用できるものであればいずれでもよい。例えば無水または含水のジメチルホルムアミド(DMF)、ジメチルスルホキシド(DMSO)、ピリジン、クロロホルム、ジオキサン、ジクロロメタン(DCM)、テトラヒドロフラン(THF)、酢酸エチル、N−メチルピロリドン、ヘキサメチルリン酸トリアミド(HMPA)などを単独で、あるいは2種以上の混合溶媒として使用することができる。
【0043】
また、上記縮合反応は、縮合剤、例えばジシクロヘキシルカルボキシイミド(DCC)、カルボジイミダゾールなどのカルボジイミド試薬やテトラエチルピロホスフェイト、ベンゾトリアゾール−N−ヒドロキシトリスジメチルアミノホスホニウムヘキサフルオロリン化物塩(Bop試薬)などの存在下に行うこともできる。
【0044】
合成されたペプチドは、通常の方法に従い脱塩、精製することができる。例えば、DEAE−セルロースなどのイオン交換クロマトグラフィー、セファデックスLH−20 、セファデックスG−25 などの分配クロマトグラフィー、シリカゲルなどの順相クロマトグラフィー、ODS−シリカゲルなどの逆相クロマトグラフィー、高速液体クロマトグラフィーなどが挙げられる。
上記のようにして精製したペプチドは、各種の酸を用いて、所望により薬学的に許容される塩、例えば、酢酸塩、塩酸塩、リン酸塩等にすることができる。
【0045】
上記ペプチドまたはその塩は、医薬的に許容できる溶剤、賦形剤、担体、補助剤などを使用し、製剤製造の常法に従って液剤、錠剤、散剤、顆粒剤、坐剤、腸溶剤およびカプセル剤などの医薬組成物として調製し、経口製剤、粉末吸入製剤、粉末点鼻製剤、眼局所投与剤、注射剤、または塗布剤として用いることができるが、特に限定するものではない。
【0046】
本発明のペプチドまたはその塩は、抗炎症作用を有するので、当該製剤は各種炎症関連疾病、具体的には、急性結膜炎、アレルギー性結膜炎、慢性結膜炎、眼瞼縁炎、湿疹、じんま疹、皮膚そう痒症、そう痒を伴う尋常性乾癬、ビダール苔癬、口内炎、アフタ性口内炎、咽頭炎、扁桃炎、急性歯肉炎、辺縁性歯周炎、歯槽骨膜炎、急性上気道炎(急性気管支炎を伴う急性上気道炎を含む)、気管支炎、気道過敏症、急性中耳炎、強膜炎、結節性紅斑、肩関節周囲炎、肩甲関節周囲炎、孤立性アフタ、掌蹠膿疱症、症候性神経痛、進行性指掌角皮症、舌炎、前立腺炎、多形浸出性紅斑、虫刺症、痛風発作、皮膚炎、日光皮膚炎、アトピー性皮膚炎、表層角膜炎、変形性関節症、放射線皮膚炎、慢性円板状エリテマトーデス、慢性関節リウマチ、扁平苔癬、痒疹、膀胱炎、褥瘡性潰瘍、頸肩腕症候群、慢性閉塞性肺疾患、外傷後及び手術後の炎症、さらには膠原病やクローン病などの自己免疫疾患などに有効であり、上記疾病からなる群から構成される1種以上の疾患または症状の治療または予防のために、また手術後及び外傷後の消炎・鎮痛・腫脹の緩解のために使用することができるが、用途は特に限定されるものではない。
【0047】
本発明の医薬組成物は、例えばヒト、マウス、ラット、ウサギ、イヌ、ネコ等の哺乳動物に対して非経口的にまたは経口的に、さらにはドラッグデリバリーシステムを必要に応じて用いて、安全に投与することができる。当該医薬組成物の投与量は、剤形、投与ルート、症状等により適宜変更しうるが、例えばヒトを含む哺乳動物に投与する場合、ペプチド量として1人1日当たり約1pg 〜1 mg/kg 程度を適用することが例示される。
【0048】
【実施例】
以下に本発明を参考例、実施例を挙げてより具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0049】
〔実施例1〕 ペプチドの合成
配列番号20に示すアミノ酸配列を有するペプチド 19 をペプチド固相合成の常法に従い製造した。
MBHA 樹脂 HCl 塩 (polystyrene−1% divinylbenzene 共重合体、100〜200 mesh) をマニュアル合成用反応槽(ガラス製、φ6.0 x 29.5 cm)に加え、樹脂容量の 2〜3 倍量のメタノールで攪拌洗浄し、次いでジクロロメタン(樹脂容量の 2〜3 倍量)で攪拌洗浄して樹脂を膨潤させた。10% トリエチルアミン/ジクロロメタンにて中和反応を行い、C 末端アミノ酸に相当する Boc−Arg (Tos)−OH を樹脂の約 2 倍当量用い、ジシクロヘキシルカルボジイミドおよび N−ハイドロキシベンゾトリアゾールを加えて縮合反応を行った。約 2 時間の反応(攪拌下)後、メタノールおよびジクロロメタンにて洗浄し、カイザー試験にてα−アミノ基の消失を確認後、50% トリフルオロ酢酸/ジクロロメタンにて 30 分間処理して脱保護を行った。次いで、10% トリエチルアミン/ジクロロメタンにて中和し、メタノールおよびジクロロメタンにて再洗浄後、再びカイザー試験を実施して脱保護反応の確認を行った。確認後は C 末より 2 番目の Boc−Arg (Tos)−OH のカップリングを行うため、同様の工程を繰り返した。その後、Boc−Gly−OH, Boc−Leu−OH, Boc−Ile−OH, Boc−Ala−OH, Boc−Ala−OH, Boc−Leu−OH, Boc−Tyr (Cl−Bzl)−OH, Boc−Arg (Tos)−OH, Boc−Arg (Tos)−OH, Boc−Val−OH, Boc−Ala−OH, Boc−Leu−OH, Boc−Gln (Xan)−OH, Boc−Arg (Tos)−OH, Boc−Arg (Tos)−OH, Boc−Leu−OH, Boc−Arg (Tos)−OH, Boc−Thr (Bzl)−OH, Boc−Tyr (Cl−Bzl)−OH, Boc−Asn (Xan)−OH, Boc−Ala−OH, Boc−Thr (Bzl)−OH, Boc−Phe−OH, Boc−Val−OH, Boc−Ala−OH, Boc−Asp (OcHex)−OH, Boc−Ser (Bzl)−OH, Boc−His (Bom)−OH の順に順次カップリング/脱保護を行い、ペプチド 19 に相当する保護ペプチド; His (Bom)−Ser (Bzl)−Asp (OcHex)−Ala−Val−Phe−Thr (Bzl)−Ala−Asn−Tyr (Cl−Bzl)−Thr (Bzl)−Arg (Tos)−Leu−Arg (Tos)−Arg (Tos)−Gln−Leu−Ala−Val−Arg (Tos)− Arg (Tos)−Tyr (Cl−Bzl)−Leu−Ala−Ala−Ile−Leu−Gly−Arg−Arg−MBHA を得た。ここで得られた保護ペプチド−MBHA 樹脂にエタンジチオールおよびアニソール存在下無水フッ化水素を加えて反応させた。反応後、無水フッ化水素を減圧下留去後、残渣をエーテルで洗浄し、これに 10%酢酸を加えてペプチドを抽出した。抽出液を逆相カラムクロマトグラフィーにより精製し、凍結乾燥を行いペプチド 19 を得た。
【0050】
上記方法と同様にして、下記のペプチド1〜43 を化学合成した。
Figure 2004224775
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【0051】
〔実施例 2〕 (製剤例1:粉末吸入製剤)
使用機器: A−O−Jet Mill (セイシン企業)
原料供給方法: オートフィーダー
供給エアー圧力: 6.0 kg/cm
粉砕エアー圧力: 6.5 kg/cm
集塵方法: アウトレットバグ(ポリエチレン)
上記条件にて、エリスリトール(日研化学)及び実施例1で合成したペプチド4 の混合物 約 4 g を対象に粉砕を行った。収率は約 85% であった。得られた粉末製剤は潮解性がなく、薬剤分布もほぼ均一であることを確認した。本粉末とエリスリトール 50M(日研化学)を約 1:0.1 の比率で均一になるよう混和し、吸入・点鼻用粉末製剤を得た。
【0052】
〔実施例 3〕 (電子顕微鏡による粒径評価)
実施例 2 にて得られたペプチド 4 の吸入・点鼻用粉末製剤について、その性状を確認した。SC−701 型 Quick coater(サンユー電子)を用いて金蒸着させ(膜厚 10 nm)、走査型電子顕微鏡 JEOL JSM−T220A にて観察した。その結果を図1に示す。キャリアー分子表面を取り囲むようにしてペプチド 4 の微細粒子が付着し、その粒径は数十 μm〜約100 μm 程度であることを確認した。
【0053】
〔実施例 4〕 (レーザー回折法による製剤特性評価)
実施例 2 にて得られたペプチド 4 の吸入・点鼻用粉末製剤についてその粒度とキャリアーからの解離性を確認するために、乾式レーザー回折・散乱式粒径分布測定装置(セイシン企業)にて評価を行った。図 2 に示すように 0.15 MPa の吸引力によって、ピークトップ約 5 μm と約 60 μm の明瞭な 2 つのピークを認め、前者は微細化した薬剤粒子で、後者はキャリアーであることを確認した。そのピーク面積比から、ほぼ定量的にキャリアーからの薬剤粒子脱離が起こっていることを確認し、本製剤が外部からの弱い力によって効率よく薬剤ミストになりうるものであることを確かめた。
【0054】
〔実施例 5〕 (製剤例2:点眼剤)
Figure 2004224775
滅菌精製水 80 mL を約 80℃まで加温し、ヒドロキシメチルセルロースを加えて攪拌し、液温を室温まで戻す。この液にペプチド 17、塩化ナトリウム、ホウ酸、エデト酸ナトリウムおよび塩化ベンザルコニウムを加えて溶解する。ホウ砂を適量加えて pH を 7.0 に調整する。滅菌精製水を加えて 100 mL までメスアップする。
【0055】
〔実施例 6〕 (製剤例3:注射剤)
ペプチド19 10 mg
塩化ナトリウム 900 mg
1 N 水酸化ナトリウム 適量
注射用蒸留水 全量 100 mL
以上の成分を常法により無菌的に混和して注射剤を調製する。
【0056】
〔実施例 7〕 (肺組織 VIP レセプターに対するペプチドの結合活性 1)
ラット肺ホモジネートを用いて、 VIP レセプターに対するペプチド 1−4、37−43 の結合活性を検討した。実験動物として、7〜9週齢(体重:200〜350)のSD系雄性ラット(日本チャールズリバー(株)より購入)を使用し、ラット用固形試料(MF、オリエンタル酵母工業(株)製)及び飲料水を自由に与えて、室温24±2℃で飼育した。ラットをエーテル麻酔下で開腹し、腹部下行大動脈より採血し屠殺した。直ちに生理食塩水で灌流し、肺を摘出した。肺の一部を秤量後、19倍量の250 mM sucrose、5 mM MgCl・6HO、0.1% bacitracinを含む25 mM Tris−HCl buffer (pH 7.4)を加え、ポリトロンホモジナイザーでホモジナイズした。ホモジネートを冷却下30,000 x gで20分間遠心分離した。得られた沈渣を、5 mM MgCl・6HO、0.1% bacitracin、0.2% BSAを含む25 mM Tris−HCl buffer(buffer A)で懸濁して受容体標品(5%)とした。肺におけるVIP受容体の測定は、標識リガンドとして[125I]VIPを用いるラジオレセプターアッセイ法により行った。肺より調製した受容体標品を10−10〜10−5 MのVIPまたはVIP誘導体(ペプチド1−4、37−43)を含むbuffer A(pH 7.4)中で[125I]VIP(30 pM)と4℃、3時間インキュベーション後、filter box(Advantec)を用いて反応液をガラス繊維濾紙(Whatmann GF/C)上に急速吸引濾過し、その濾紙を5 mM MgCl・6HO、0.2% BSAを含む25 mM Tris−HCl buffer(pH 7.4)2 mLで3回洗浄後、濾紙上の放射活性をγカウンター(Aloka)で測定した。本測定において、ペプチド非存在下で得られた放射活性を全結合、3 μMのペプチド1(非標識VIP)の存在下で得られた放射活性を非特異的結合とし、両者の差を特異的結合と定義した。その結果を図3に示す。ペプチド 1−4 はいずれも、肺組織 VIP レセプターに対して強い結合活性を示すが、ペプチド 1 (VIP)と比して、ペプチド 2−4 は有意に結合活性が上昇しており、VIP 誘導体群の有用性を示唆した(図3(A))。ペプチド 37−43に関しては、C 末端構成アミノ酸の欠損に従って徐々に結合活性が低下したが、特に C 末端より 6 残基のアミノ酸を欠落させた場合には著しくその活性が低下した(図 3(B))。この結果より、VIP レセプターに対しては少なくとも N 末端側より 23 残基の構成アミノ酸が必須であることを確認した。
【0057】
〔実施例 8〕 (肺組織 VIP レセプターに対するペプチドの結合活性 2)
実験動物として、8〜10週齢(体重:250〜400)のSD系雄性ラット(日本チャールズリバー(株)より購入)を使用し、ラット用固形試料(MF、 オリエンタル酵母工業(株)製及び飲料水を自由に与えて、室温24±2℃で飼育した。ネンブタール麻酔下(40 mg/kg i.p.)のラットにペプチド4(50 μg/body)のDPI製剤または賦形剤を粉末気管内投与器具(DP−4)を用いてラット気管内に投与し、投与後30分で開腹し、腹部下行大動脈より採血し屠殺した。直ちに生理食塩水で灌流し、肺を摘出した。肺の一部を秤量後、19倍量の250 mM sucrose、5 mM MgCl・6HO、0.1% bacitracinを含む25 mM Tris−HCl buffer (pH 7.4)を加え、ポリトロンホモジナイザーでホモジナイズした。ホモジネートは冷却下30,000 x gで20分間遠心分離した。得られた沈渣を、5 mM MgCl・6HO、0.1% bacitracin、0.2% BSAを含む25 mM Tris−HCl buffer(buffer A)で懸濁して受容体標品(1%)とした。肺におけるVIP受容体の測定は、標識リガンドとして[125I]VIPを用いるラジオレセプターアッセイ法により行った。肺より調製した受容体標品をbufferA(pH 7.4)中で[125I]VIP(500 pM)と4℃、3時間インキュベーション後、filter box(Advantec)を用いて反応液をガラス繊維濾紙(Whatmann GF/C)上に急速吸引濾過し、その濾紙を5 mM MgCl・6HO、0.2% BSAを含む25 mM Tris−HCl buffer(pH 7.4)2 mLで3回洗浄後、濾紙上の放射活性をγカウンター(Aloka)で測定した。本測定において、非標識VIP非存在下で得られた放射活性を全結合、3 μMの非標識VIPの存在下で得られた放射活性を非特異的結合とし、両者の差を特異的結合と定義して、ペプチド4のラット肺の種々の部位における特異的結合の程度を求めた。その結果、図4に示すように、ペプチド 4 は多少の差はあるもののラット肺の全ての組織においてほぼ同量のレセプター結合量を認めた。このことは、ペプチド 4 の粉末製剤が均一な薬剤ミストを形成し、肺のあらゆる箇所に到達して薬効を発揮しうることを強く示唆している。
【0058】
〔実施例 9〕 (VIP 類の抗炎症作用)
100 μg の 卵白アルブミン(OVA) をラットに継続的に腹腔内投与し(0 日、7 日、14 日)、15 日目に同量の OVA 微細粉末を気道内投与して気道炎症を誘起した。この時、15 日目の OVA 気道内投与 1 時間前に 100 μg のペプチド1 あるいはペプチド 4 の吸入用粉末製剤を気道内投与、そしてポジティブコントロールとして 0.5 mg/kg のデキサメタゾンを腹腔内投与した。OVA 気道内投与後 6 時間および 24 時間目に麻酔下肺および気管支を摘出し、10% 中性緩衝ホルマリンに浸して固定する。固定後、切片標本を作製し、肺実質表面の状態および好酸球・好中球の浸潤度合についてモニタリングした。ラット気道および気管支を対象とし、ペルオキシダーゼ染色によって好酸球・好中球の検出を行い、これらの組織への浸潤度合を指標として各検体の抗炎症作用について評価を行った。図5及び6にペルオキシダーゼ染色後の気道(図5;(A) 薬剤非投与群;(B) デキサメタゾン投与群;(C) ペプチド1 投与群;(D) ペプチド 4 投与群)および気管支(図6;(A) 薬剤非投与群;(B) デキサメタゾン投与群;(C) ペプチド1 投与群;(D) ペプチド 4 投与群)の写真を示す。その結果、薬剤非投与群ではいずれも強い顆粒球浸潤を認め、OVA による炎症が誘起されていることを確認した。デキサメタゾン投与によって、この炎症反応は抑制され、薬剤および OVA 投与後の約 24 時間後においてもその効果は継続していることが明らかとなった。ペプチド 1 投与群では完全に炎症を抑制出来ていないものの、ペプチド 4 投与によってデキサメタゾンと同程度まで炎症が抑制されることを確認した。
【0059】
【発明の効果】
本発明によれば、生体内において長時間に渡って炎症を抑制しうる PACAP/VIP誘導体を提供することが出来る。
【0060】
【配列表】
Figure 2004224775
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【0061】
【配列表フリーテキスト】
配列番号1〜44:合成ペプチド
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の医薬組成物の一形態である粉末製剤の走査型電子顕微鏡写真を示す((A)750倍、(B)1,500倍)。
【図2】本発明の医薬組成物の一形態である粉末製剤の粒度分布を示す。
【図3】(A)及び(B)は本発明に用いるペプチド及び対照ペプチドのラット肺組織VIPレセプターに対する結合活性を示す。
【図4】ペプチド4のラット肺の種々の部位における特異的結合を示す。
【図5】炎症を誘起させた気道におけるペプチド4の抗炎症効果を示す。
(A) 薬剤非投与群;(B) デキサメタゾン投与群;(C) ペプチド1 投与群;(D) ペプチド 4 投与群
【図6】炎症を誘起させた気管支におけるペプチド4の抗炎症効果を示す。
(A) 薬剤非投与群;(B) デキサメタゾン投与群;(C) ペプチド1 投与群;(D) ペプチド 4 投与群

Claims (16)

  1. 下記式(I):
    His−Ser−Asp−A−B−Phe−Thr−C−D−Tyr−
    E−Arg−F−Arg−G−Gln−H−Ala−Val−I− (I)
    J−Tyr−Leu−K−L−M−N (配列番号1)
    (式中、A は、Ala または Gly;B はVal または Ile;C は、Asp、 Glu または Ala;D は、Asn または Ser;E は、Thr または Ser;F は、Leu または Tyr;G,I,J は Lys または Arg;H は、Met、Leu または nLeu;K は、Asn、Ala または化学結合;L は Ser、Ala または化学結合;M は、Ile、Valまたは化学結合;N は、化学結合、Leu,Leu−Asn,Leu−Asn−Gly, Leu−Asn−Gly−Lys, Leu−Asn−Gly−Arg, Leu−Asn−Gly−Lys−Lys, Leu−Asn−Gly−Lys−Arg, Leu−Asn−Gly−Arg−Arg, Leu−Gly,Leu−Gly−Lys,Leu−Gly−Arg,Leu−Gly−Lys−Lys,Leu−Gly−Lys−Arg,Leu−Gly−Arg−Arg,Leu−Gly−Lys−Arg−Tyr−Lys−Gln−Arg−Val−Lys−Asn−Lys,Leu−Gly−Arg−Arg−Tyr−Arg−Gln−Arg−Val−Arg−Asn−Arg、またはLeu−Gly−Lys−Arg−Tyr−Lys−Pro−Lys−Arg−Arg−Asn−Ser−Gly−Arg−Arg−Val−Phe−Tyrを表す。但し、G,I,Jが共にLysであり、かつHがMetであることはない。)
    で示されるアミノ酸配列のN末端より少なくとも23残基からなるアミノ酸配列で示され、C 末端アミノ酸のα位カルボキシル基がNHで修飾されているかまたはされていないペプチド、または薬学的に許容されるその塩を含有する抗炎症剤。
  2. 前記ペプチドが、一般式 (I) においてA が Ala、B が Val、C が Asp、D が Asn、E が Thr、F がLeu、G, I, J が Arg、H が Leu、K が Asn、L が Ser、M が Ile、N が Leu−Asnであるアミノ酸配列のN 末端より少なくとも 23 残基のアミノ酸配列で示され、C末端が −NH で修飾されたペプチドである、請求項1に記載の抗炎症剤。
  3. 前記ペプチドが、一般式 (I) においてA が Ala、B が Val、C が Asp、D が Asn、E が Thr、F がLeu、G, I, J が Arg、H が Leu、K が Asn、L が Ser、M が Ile、N が Leu−Asn−Gly−Lys−Argであるアミノ酸配列のN 末端より少なくとも 23 残基のアミノ酸配列で示され、C末端が −NH で修飾されたペプチドである、請求項1に記載の抗炎症剤。
  4. 前記ペプチドが、一般式 (I) においてA が Ala、B が Val、C が Asp、D が Asn、E が Thr、F がLeu、G, I, J が Arg、H が Leu、K が Asn、L が Ser、M が Ile、N が Leu−Asn−Gly−Arg−Argであるアミノ酸配列のN 末端より少なくとも 23 残基のアミノ酸配列で示され、C末端が −NH で修飾されたペプチドである、請求項1に記載の抗炎症剤。
  5. 前記ペプチドが、一般式 (I) においてA が Ala、B が Val、C が Asp、D が Asn、E が Thr、F がLeu、G, I, J が Arg、H が Leu、K、L、M、N が化学結合であるアミノ酸配列で示され、C末端が −NH で修飾されたペプチドである、請求項1に記載の抗炎症剤。
  6. 前記ペプチドが、一般式 (I) においてA が Ala、B が Val、C が Asp、D が Asn、E が Thr、F がLeu、G, I, J が Arg、H が Leu、K が Ala、L が Ala、M が Ile、N が Leu−Gly−Arg−Argであるアミノ酸配列のN 末端より少なくとも 23 残基のアミノ酸配列で示され、C末端が −NH で修飾されたペプチドである、請求項1に記載の抗炎症剤。
  7. 前記ペプチドが、一般式 (I) においてA が Ala、B が Val、C が Glu、D が Asn、E が Thr、F がLeu、G, I, J が Arg、H が Leu、K が Ala、L が Ala、M が Ile、N が Leu−Gly−Arg−Argであるアミノ酸配列のN 末端より少なくとも 23 残基のアミノ酸配列で示され、C末端が −NH で修飾されたペプチドである、請求項1に記載の抗炎症剤。
  8. 前記ペプチドが、一般式 (I) においてA が Ala、B が Val、C が Ala、D が Asn、E が Thr、F がLeu、G, I, J が Arg、H が Leu、K が Ala、L が Ala、M が Ile、N が Leu−Gly−Arg−Argであるアミノ酸配列のN 末端より少なくとも 23 残基のアミノ酸配列で示され、C末端が −NH で修飾されたペプチドである、請求項1に記載の抗炎症剤。
  9. 前記ペプチドが、一般式 (I) においてA が Ala、B が Val、C が Asp、D が Asn、E が Thr、F がLeu、G, I, J が Arg、H が Leu、K が Ala、L が Ala、M が Val、N が Leu−Gly−Arg−Argであるアミノ酸配列のN 末端より少なくとも 23 残基のアミノ酸配列で示され、C末端が −NH で修飾されたペプチドである、請求項1に記載の抗炎症剤。
  10. 前記ペプチドが、一般式 (I) においてA が Gly、B が Ile、C が Asp、D が Ser、E が Ser、F がTyr、G, I, J が Arg、H が Leu、K がAla、L が Ala、M が Val、N が Leuであるアミノ酸配列のN 末端より少なくとも 23 残基のアミノ酸配列で示され、C末端が −NH で修飾されたペプチドである、請求項1に記載の抗炎症剤。
  11. 前記ペプチドが、一般式 (I) においてA が Gly、B が Ile、C が Asp、D が Ser、E が Ser、F がTyr、G, I, J が Arg、H が Leu、K がAla、L が Ala、M が Val、N が Leu−Gly−Lys−Argであるアミノ酸配列のN 末端より少なくとも 23 残基のアミノ酸配列で示され、C末端が −NH で修飾されたペプチドである、請求項1に記載の抗炎症剤。
  12. 前記ペプチドが、一般式 (I) においてA が Ala、B が Ile、C が Asp、D が Ser、E が Ser、F がTyr、G, I, J が Arg、H が Leu、K がAla、L が Ala、M が Val、N が Leu−Gly−Arg−Argであるアミノ酸配列のN 末端より少なくとも 23 残基のアミノ酸配列で示され、C末端が −NH で修飾されたペプチドである、請求項1に記載の抗炎症剤。
  13. 前記ペプチドが、一般式 (I) においてA が Ala、B が Ile、C が Asp、D が Ser、E が Ser、F がTyr、G, I, J が Arg、H が Leu、K がAla、L が Ala、M が Val、N が Leu−Gly−Arg−Arg−Tyr−Arg−Gln−Arg−Val−Arg−Asn−Argであるアミノ酸配列のN 末端より少なくとも 23 残基のアミノ酸配列で示され、C末端が −NH で修飾されたペプチドである、請求項1に記載の抗炎症剤。
  14. 前記ペプチドが、一般式 (I) においてA が Ala、B が Ile、C が Asp、D が Ser、E が Ser、F がTyr、G, I, J が Arg、H が Leu、K、L、M、N が化学結合であるアミノ酸配列で示され、C末端が −NH で修飾されたペプチドである、請求項1に記載の抗炎症剤。
  15. 請求項1〜14に記載の抗炎症剤を含有する医薬組成物。
  16. 粉末吸入製剤、粉末点鼻製剤、眼局所投与剤、注射剤、または塗布剤である、請求項15に記載の医薬組成物。
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