JP2004224617A - 微細粒子から成る凝集体粒子の化合火薬類、及びこの化合火薬類の製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】機械的エネルギーを必要としない化学的処理により、微細粒子化する化合火薬類を提供すると共に、この微細粒子化合火薬類を、10m2/g以上の大きな比表面積を有しながら多孔質な形状を持つ凝集体粒子とする化合火薬類を提供することにある。
【解決手段】微細粒子化合火薬類より成る多孔質凝集体粒子。
また、微細粒子化合火薬類および多孔質凝集体粒子の化合火薬類の製造方法で、出発成分の化合火薬類を界面活性剤を用いて微細粒子化合火薬類とし、この微細粒子化合火薬類を高分子凝集剤を用いて微細粒子を有する多孔質凝集体粒子に処理する。
【選択図】 なし
【解決手段】微細粒子化合火薬類より成る多孔質凝集体粒子。
また、微細粒子化合火薬類および多孔質凝集体粒子の化合火薬類の製造方法で、出発成分の化合火薬類を界面活性剤を用いて微細粒子化合火薬類とし、この微細粒子化合火薬類を高分子凝集剤を用いて微細粒子を有する多孔質凝集体粒子に処理する。
【選択図】 なし
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、デトネータ、電気雷管、各種発火装置に使用可能な点爆薬等の用途の爆発性物質(化合火薬類)に関し、詳しくは、比表面積の極めて大きな微細粒子化合火薬類を多孔質凝集体粒子と成す化合火薬類であり、また、微細粒子化合火薬類の製造方法と、この微細粒子化合火薬類を多孔質凝集体粒子と成す化合火薬類の製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来、化合火薬類(粒子サイズを有する爆発性物質)には、例えば、ペンタエリスリトールテトラナイトレート(PETN、別名ペンスリット)、トリメチレントリニトラミン(RDX)、シクロテトラメチレンテトラニトラミン(HMX)、ヘキサニトロスチルベン(HNS)、ヘキサニトロヘキサアザイソウルチタン(HNIW:CL−20)等があり、電気式デトネータ、無起爆薬雷管などの点爆薬等として用いられている。
【0003】
電気式デトネータとしては1940年代初頭、マンハッタン計画の中で、在来型の電橋線式デトネータに代わって核兵器に供せられるべき信頼性、応答性、安全性を有する電気式デトネータとして、Exploding Bridge Wire Detonator、所謂、電橋線式デトネータ(EBW)が開発された。
このEBWの一般的な構造としては、電橋線、電橋線を保持するヘッド、筐体で構成されており、点爆薬としてはPETN(ペンスリット)、出力薬としてはPETN及び/またはRDX等の爆薬が填薬されることが多い。
そして、EBW方式は50年以上に亘り、軍用ばかりではなく、さまざまな産業用途に使用されてきた。
【0004】
しかし近年、安全性、信頼性、耐環境性の要求が高まり、将来型の高性能電気式デトネータとして、Exploding Foil Initiator、所謂、薄膜式デトネータ(EFI)が開発されてきた。
これは、電気的な高エネルギーで薄膜抵抗体を破壊し、絶縁性飛翔体を生成して爆薬に衝突させ起爆しようとする、所謂、スラッパー起爆方式のデトネータである。そして、このようなデトネータ、或いは無起爆薬雷管(Non Primary Electronic Detonator)等にもPETN、RDX、HMX、HNS、CL−20等の非常に微細化された化合火薬類が適し選定されている。
【0005】
これについては、各種溶媒による微細化の記載とスラッパー試験についての記載がある。(例えば、非特許文献1参照)
また、発火システムの比較と原理等についての記載がある。(例えば、非特許文献2)
【0006】
従来、化合火薬類の粒子サイズを微細にすれば、比表面積が大きくなり優れた起爆特性が得られることは知られている。そこで、微細化するために機械的粉砕、或いは化学的な溶解による微細粒子化技術が用いられてきた。
従来の技術である機械的粉砕としては、例えば,RDXを微細粒子にするためアトライター(商品名)と呼ばれる装置を用いた湿式機械粉砕装置がある。この装置によれば、平均粒子サイズ3〜7μmが限度であった。
また、化合火薬類自体を水等の不活性媒体中にて高速剪断力を与える、或いは、高速で邪魔板に衝突させるなどの機械的エネルギーを与えながら微細粒子に粉砕する機械的方法がある。(例えば、非特許文献3参照)
【0007】
また、化学的処理による爆薬微細化に関する技術としては、微細粒子化爆発性物質の製造方法及び装置がある。(例えば、特許文献1参照)
この微細粒子爆発性物質の製造法及び装置は、出発成分としてその成分を溶解しうる溶媒に溶解し、その後攪拌して得られた溶液を、エジェクターに供給し、エジェクターに供給される溶媒及び水蒸気がディフューザー中で蒸発させるようにし、溶媒中に溶解した爆薬成分を粒子化し、または沈殿させ、その後サイクロン中で粒子成分を溶媒から分離し、溶媒は凝縮後再使用するようにしている。
【0008】
そして、結晶質爆薬として1種類以上の高級爆薬または低級爆薬を加えることや、結晶質爆薬を溶解する溶媒としてメチルエチルケトンまたはアセトンを使用すること及びこれらに水を添加すること等が記載されており、20μm未満の平均粒子サイズの結晶質爆発性物質を有するとしている。さらに、実施例には、ヘキソーゲン(RDX)をメチルエチルケトンに溶解して微細粒子化したもの、ヘキソーゲン(RDX)、セルロースアセテートブチレート、トリブチルシトレート、ニトロセルロース及びセントラリットを水飽和メチルエチルケトンに溶解して微細粒子化する方法が記載されている。
【0009】
【特許文献1】
特許第2,802,388号公報 (第2頁〜第4頁、第1図)
【0010】
【非特許文献1】
Steven M. Harris and Sandra E. Klassen著,「Hexanitrostilbene(HNS) Development for Modern Slapper Detonators」,ICT,2001年,P.24.1−12
【非特許文献2】
Ron Varosh著,「Electric Detonators:EBW and EFI」,PEP21,1996年,P.150−154
【非特許文献3】
Ulrich Teipel and Irma Mikonsaari著,「Size reduction of particulate enegetic material」,PEP27,2002年,P.168−174
【0011】
【発明が解決しようとする課題】
前述のEFIのような特定デトネータに使われる化合火薬類の一例としてHNSがあり、EFIに使用するHNSは比表面積がある一定値(10m2/g)以上でないと起爆性が大きく低下し、デトネータとして機能しなくなる虞がある。
そこで、化合火薬類を微細粒子化するため、前述の機械的粉砕方法があるが、水等の不活性媒体中で粉砕するとはいえ安全性の問題があり、また、所望の粒子径まで微細にするには膨大な粉砕時間を要するほか、1μm以下の微細粒子径にすることは不可能であるという問題がある。
【0012】
また、安全性と微細粒子化を解決する策として、前述の微細粒子爆発性物質の製造法及び装置による、結晶質爆薬を良溶媒に溶解し、これを貧溶媒中で析出させる化学的方法があるが、比表面積10m2/g以上を保証することに関しては何ら触れていない。このことは、比表面積を大きくするには粒子サイズを小さくすればよいことから、比表面積を大きくするがために、この粒子サイズを小さくしすぎると回収するのが困難になるばかりか、回収率が大きく低減することを示唆している。因みに、粒子サイズが均一、一様な2μmの球状粒子である時、一般に比表面積は1.2m2/gとなるので、もし12m2/g以上の比表面積とするには平均粒子サイズは0.2μm以下とする必要がある。
このことは、比表面積10m2/g以上の微細粒子を再現性良くかつ高い収率でコンスタントに生産性を上げることは濾過性との関連で難しいという問題があり、粒子径を大きくして且つ比表面積を大きくすることは通常は不可能である。
【0013】
また、従来、HNS或いはその他の化合火薬類の良溶媒としてはジメチルフォルムアミド(DMF)、ジメチルスルフォオキシド(DMSO)、アセトニトリル、アセトン、メチルアセテート、エチルアセテート、ニトロベンゼン、ニトロエタン、シクロヘキサノン、シクロペンタノン、メチルエチルケトン(MEK)、シクロベンゼン、トルエン、エトキシエチルアセテート、N−メチルピロリジン(NMP)、テトラヒドロフラン(THF)、またはこれら1種類以上の混合溶液などが知られているが、これらの溶媒は常温では溶解性が低かったり、或いは、溶解度を上げるため溶液温度をあげると危険性及び有害性が増すなどの問題があり、更に、十分な溶解性があっても、得られる微細粒子物質が所望の粒子サイズにならない、すなわち所望の比表面積値に適合しないことや、粒子サイズのバラツキが大きくなった時にはMIL規格を満足しないこともあるので、MIL規格(例えば、HNS−4:10m2/g〜15m2/g)の微細粒子を安定的に得ることに困難な問題がある。
【0014】
そこで、発明者らは、安全性がきわめて高く、非常に微細な粒子径にまで微細粒子化できる化学的方法を用いて鋭意研究した結果、化合火薬類、例えば、HNS−2の溶解溶液をゆっくりと攪拌する他は何ら機械的エネルギーを付加せず、その溶解溶液を、低温状態の貧溶媒である水に滴下し、微細なHNS−4粒子を析出させることによって微細粒子化されたHNS−4(比表面積:10m2/g以上)の化合火薬類を得ると共に、この微細粒子化された化合火薬類を凝集体として効率よく濾過・回収(収率85%以上)することを見出した。
【0015】
具体的には、良溶媒中に溶解した化合火薬類(例えば、HNS−2)が貧溶媒中に諸条件で接触混合或いは滴下されたとき微細結晶が析出する。この状態で、ミクロな、又はナノ状態の極めて微細な粒子が得られているが、貧溶媒と良溶媒が混合されるにつれ混合液の温度上昇により得られた結晶粒子が成長或いは結合(合一)する。そこで、得られた微細な結晶粒子が成長する前に、或いは接触合一する前に、化合火薬類と親和性の高い疎水基と、水と親和性の高い親水基の両者の機能を持つ特定の界面活性剤を用い、生成直後の極めて微細な粒子と当該活性剤の疎水基を結合させ個々の微細粒子状に包み込む手段をとる。
この状況は疎水基が中心方向に配向し、親水基が放射状に外部に配向した丁度いが栗に似た球体状のものが得られる。
このようになると、当該球状体は表面が親水基で覆われているので、疎水性物質とは結合せず結晶は成長しない。即ち、貧溶媒である水と親和して懸濁状態をいつまでも維持することとなる。
【0016】
また、上記で得られた微細粒子化合火薬類に特定の凝集剤を添加し、多孔質な凝集体の粒子と成す。これは、一般に水系の貧溶媒では懸濁粒子は負に帯電しており、電気的斥力により懸濁状態を維持しょうとする。そこで、正に帯電する凝集剤を添加することによって、電気的に中和され、電気的斥力が解かれることにより、懸濁粒子の凝集が始まり、この凝集が進むと凝集体となり、凝集体の大きさによる粘性抵抗よりその凝集体の重力の方が大きくなって沈降する。
【0017】
また、微細粒子化合火薬類を特定の凝集剤を用いることで平均粒子サイズ1μm以上の多孔質凝集体粒子の化合火薬類として、収率良く安定的に得ることを見出した。
【0018】
すなわち、本発明の目的は、化合火薬類を微細粒子化し比表面積の大きな微細粒子化合火薬類を安定的に得ることであり、また、この微細粒子化した化合火薬類(微細粒子化合火薬類)を多孔質の凝集体粒子として効率よく捕集し、再現性良く高い回収率で得ることのできる化合火薬類を提供することにある。
【0019】
【課題を解決するための手段】
請求項1に係る発明は、微細粒子化合火薬類より成る多孔質凝集体粒子であることを特徴とする化合火薬類である。
【0020】
請求項2に係る発明は、前記微細粒子化合火薬類が、粒径5μm以下であることを特徴とする請求項1記載の化合火薬類である。
請求項3に係る発明は、前記微細粒子化合火薬類が、比表面積が10m2/g〜30m2/gであることを特徴とする請求項2記載の化合火薬類である。
【0021】
請求項4に係る発明は、前記多孔質凝集体粒子が、平均粒子1μm〜20μmであることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項記載の化合火薬類である。
請求項5に係る発明は、前記多孔質凝集体粒子が、凝集剤を含むことを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項記載の化合火薬類である。
【0022】
請求項6に係る発明は、前記凝集剤が、高分子凝集剤であることを特徴とする請求項5記載の化合火薬類である。
【0023】
本発明によれば、高分子凝集剤を用い所定の大きさの多孔質凝集体粒子にすることで、微細粒子化合火薬類の収率向上と工数低減に大きく寄与する。具体的に例をあげると、凝集剤を使用しないときは収率が高くとも65%であったものが、凝集剤を用いることにより85%以上にまで向上するばかりか濾過時間も大きく短縮される。
請求項7に係る発明は、前記高分子凝集剤は、カチオン系高分子凝集剤であることを特徴とする請求項6記載の化合火薬類である。
【0024】
本発明によれば、凝集剤は有機系の高分子凝集剤の、アニオン、カチオン及びノニオン系のものがあるが、貧溶媒が水である場合はカチオン系凝集剤が有効である。これは、一般に水系の貧溶媒では懸濁粒子は負に帯電しており、電気的斥力により懸濁状態を維持しょうとする。そこで、正に帯電する捕集剤を添加することによって、電気的に中和され、電気的斥力が解かれることにより、懸濁粒子の凝集が始まり、この凝集が進むと凝集体となり、凝集体の大きさによる粘性抵抗よりその凝集体の重力の方が大きくなって沈降する。
【0025】
また、高分子凝集剤を用い所定の大きさの多孔質凝集体粒子にすることで、微細粒子化合火薬類の収率向上と工数低減に大きく寄与する。具体的に例をあげると、凝集剤を使用しないときは収率が高くとも65%であったものが、凝集剤、特に強カチオン系凝集剤を用いることにより85%以上にまで向上するばかりか濾過時間も大きく概ね1/10以下に短縮される。
【0026】
請求項8に係る発明は、前記微細粒子化合火薬類が、界面活性剤を含むことを特徴とする請求項1乃至7のいずれか1項記載の化合火薬類である。
請求項9に係る発明は、前記界面活性剤が、非イオン系界面活性剤であることを特徴とする請求項8記載の化合火薬類である。
請求項10に係る発明は、前記非イオン系界面活性剤が、HLB値が9〜20であることを特徴とする請求項9記載の化合火薬類である。
【0027】
本発明によると、界面活性剤のHLB値が低いとき、即ち疎水性能が高いときは微細粒子のものは得られないが、HLB値が高くなり、親水性能が高まると徐々に微細粒子のものが増えてくる。
【0028】
また、本発明においては、ニトロ化合物のような極性の高い化合物は経験的にHLB値が高い方が有効である。
HLB値が9より低いの界面活性剤をニトロ基を含む極性の高いターゲット物質の良溶媒に添加しても、ターゲット物質の微細粒子化には効果が弱く、比表面積を安定して10m2/g以上にすることは難しい。
【0029】
例えば、HLB値4.3−(1)、9.5−(2)、15.0−(3)の各界面活性剤を使用し、GF75フィルター(目開き0.3μm)で濾過した状況下では、(1)HLB値4.3の場合、従来製法と同様に、GF75フィルターで1回
濾過しただけで、通常の収率65%程度が得られ、(2)HLB値9.7の場合、従来製法と同様に、GF75フィルター1回のみの濾過では数%しか化合火薬類を得ることができず、2〜3回同一工程を繰り返しても僅かな収率増大しか上げる事ができず、従って、それだけ、微細粒子になっているといえる。
また、(3)HLB値15.0の場合、従来製法と同様に、GF75フィルターの濾過では何回濾過しても全く化合火薬類を得ることができず、従って、0.3μm以下の非常に微細な粒子になっている。
【0030】
請求項11に係る発明は、化合火薬類及び良溶媒からなる溶液と貧溶媒とを混和部に比例注入し、連続的に接触及び混合させて均一な大きさの微細粒子化合火薬類を得ることを特徴とする化合火薬類の製造方法である。
【0031】
本発明によると、比例注入とは、例えば、溶液および貧溶媒を重量比で50:50の一定割合で接触・混合させる方法である。
こうする事により、比較的高温の溶液と低温の貧溶媒との接触・混合後の混合溶液温度が常に一定となり、得られる微細粒子の成長も一定で、粒子径のバラツキが少なくなるというメリットがある。
【0032】
請求項12に係る発明は、化合火薬類、良溶媒及び界面活性剤からなる溶液と貧溶媒とを混和部に比例注入し、連続的に接触及び混合させて均一な大きさの微細粒子化合火薬類を得ることを特徴とする化合火薬類の製造方法である。
請求項13に係る発明は、前記混和部が、平均有効径1mm以下の流路からなるマイクロリアクターを用いることを特徴とする請求項11または請求項12記載の化合火薬類の製造方法である。
【0033】
本発明によれば、化合火薬類が一般に1mmφ以上の限界薬径を有しているため、この限界薬径よりも小さな平均有効径を有する流路のマイクロリアクターにすることにより、万一の爆発現象が発生した場合でも、爆轟伝播性を有さないため、その爆発現象を局所化し、安全に製造できる。
【0034】
請求項14に係る発明は、化合火薬類、良溶媒及び界面活性剤からなる溶液と貧溶媒とを混合する過程において、前記溶液を貧溶媒に所定の流量をもって滴下し微細粒子化合火薬類を得ることを特徴とする化合火薬類の製造方法である。
【0035】
本発明によれば、得られる混合溶液の温度が徐々に上がり、微細粒子化合火薬類は結晶成長の傾向を示すが、混合溶液の温度を低温で常に一定に維持する方法によっては微細に維持することができる。
請求項15に係る発明は、前記界面活性剤が、非イオン系界面活性剤であることを特徴とする請求項12または請求項14記載の化合火薬類の製造方法である。
請求項16に係る発明は、前記非イオン系界面活性剤は、HLB値が9〜20で
あることを特徴とする請求項15記載の化合火薬類の製造方法である。
【0036】
請求項17に係る発明は、請求項11乃至16記載のいずれか1項記載の化合火薬類の製造方法の製造過程において、さらに、前記貧溶媒に凝集剤を添加し前記溶液とを撹拌混合して多孔質凝集体粒子と成すことを特徴とする化合火薬類の製造方法である。
請求項18に係る発明は、前記凝集剤が、高分子凝集剤であることを特徴とする請求項17記載の化合火薬類の製造方法である。
請求項19に係る発明は、前記高分子凝集剤が、カチオン系高分子凝集剤であることを特徴とする請求項18記載の化合火薬類の製造方法である。
【0037】
【発明の実施の形態】
本発明は、例えば、PETN、RDX、HMX、HNS、CL−20等の化合火薬類を微細粒子化することと、この微細粒子化合火薬類を多孔質の凝集体粒子とすることに係ることであるが、本実施形態においては、一例としてHNSを上げて詳細に説明する。尚、以下の実施例及び比較例はいずれも、使用した良溶媒はジメチルフォルムアミド(DMF)であり、その蒸気は人体に対して有害であることから、ドラフトチャンバー内で実施した。
【0038】
図1は、良溶媒によるHNS−2の溶解溶液と貧溶媒である水とを所定の流量で連続的に接触・混合して得られる微細粒子化されたHNS−4を含む混合液を得るための第一実施形態に係る装置Aの概要図である。
また、本発明では上記装置Aをマイクロリアクター方式と呼び、符号13はマイクロリアクター方式の混和部と呼称する。(実施例1,2,7,8,9に使用する。)
【0039】
図2は、良溶媒を貧溶媒の中に所定の流量をもって適量滴下し混合液を得るための第二実施形態に係る装置Bの概要図である。(本発明の実施例3,4,5,6,10に使用する。)
【0040】
また、図1および図2における流量弁7a,7bと40は、流量計を兼ね備えた
ものである。
第一実施形態に係る装置Aとこれによる微細粒子化及び凝集体粒子化について述べる。
図1に示すように、ホットスターラ4の上に配置した三口フラスコ1の中にHNS−2と良溶媒(ここではDMF)を入れ、ホットスターラ4の温度を良溶媒の沸点以下の高温にして、希釈溶解させたHNS溶解溶液8と、一方で、冷却した冷媒槽10の中に配置した三口フラスコ2に入れた貧溶媒9(ここでは水)とを、窒素ガスの圧送により、各三口フラスコ1,2内に配設した細管11,12から比例注入により所定流量を通過させながらマイクロリアクター方式の混和部13へ滴下して連続的に接触・混合させ混合液としてフラスコ3に入れる。
この混合液中に比表面積の大きな、例えばHNS−4(比表面積:10m2/g以上)を析出する。
【0041】
また、前記HNS溶解溶液8と前記貧溶媒9とを細管11,12へ送るため、窒素ガスボンベ6の流量弁7a側と接続されるチューブ14がHNS溶解溶液の三口フラスコ1の一側の口に連結し、流量弁7b側と接続されるチューブ15が貧溶媒の三口フラスコ2の一側の口に連結されている。これにより、各三口フラスコ1,2は、細管11,12を通じてマイクロリアクター方式の混和部13に連通することとなる。
そして、窒素ガスボンベ6の流量弁7a、7bを調整して窒素ガスを三口フラスコ1および三口フラスコ2へ圧送する。これにより、HNS溶解溶液8と貧溶媒9が細管11,12を通過しマイクロリアクター方式の混和部13へ送られ連続的に接触・混合してフラスコ3内に入り、攪拌機5により撹拌混合される。
【0042】
また、マイクロリアクター方式の混和部13は、図1の斜線部拡大に示すように、HNS溶解溶液8が滴下する細径流路部と貧溶媒9(水)が滴下する細径流路部とを有し、前記HNS溶解溶液8と分溶媒9の両液体が前記細径流路部の交わり部で、接触・混合されるように設計されている。
また、前記マイクロリアクター方式の混和部13は、それ自体を冷却することで、HNS溶解溶液8と貧溶媒9との混合液の温度変化を最小で一定に保つことができ、更には、マイクロリアクター方式の混和部13を通過する流量で粒子サイズも微細にコントロールできることから非常に優れている。これにより、HNS−4粒子の粒子サイズは極めて微細で、かつ、バラツキの少ないHNS−4粒子が得られる。
【0043】
次に、前記装置Aで析出されたHNS−4をさらに微細粒子化するためには、界面活性剤、好ましくは非イオン系の界面活性剤を、いずれかの溶媒、例えばHNSの溶剤である良溶媒(例えば、DMF等)或いは貧溶媒(例えば、水等)に添加するが、好ましくは良溶媒に添加するとよい。これは、良溶媒に界面活性剤を添加することによって、良溶媒に溶解した極めて微細なHNS−4の結晶核と界面活性剤の疎水基が結合した状態で分散しており、これが貧溶媒である水と接触した瞬間に界面活性剤の親水基と水とが結合し、結晶成長することも、或いはHNS−4の結晶同士が合一することもなく、良溶媒と貧溶媒の混合液中に微細なままでいつまでもHNS−4微細粒子が懸濁維持しているのである。
【0044】
こうして得られたHNS−4微細粒子の比表面積値と用いた界面活性剤の親水性、疎水性のバランス尺度であるHLB値との間には相関がある。
この界面活性剤のHLB値が低いとき、即ち疎水性能が高いときは微細粒子のものは得られないが、HLB値が高くなり、親水性能が高まると徐々に微細粒子のものが増えてくる。
例えば、図3に示すように、HLB値9以上の界面活性剤で比表面積値(微細粒子化)の効果がより高い。
【0045】
また、前記装置Aで析出された微細粒子化されたHNS−4、或いは、さらに界面活性剤を添加し微細粒子化されたHNS−4等を、効率よく安定的に1μm以上からなる所望の粒子サイズのHNS−4として得るため、貧溶媒の中に凝集剤、好ましくは高分子凝集剤を添加し多孔質の凝集体粒子として処理し回収する。
【0046】
次に、第二実施形態に係る装置Bとこれによる微細粒子化及び凝集体粒子化について述べる。
図2に示すように、ホットスターラ33の上に配置した三口フラスコ31の中にHNS−2と良溶媒(ここではDMF)とを入れ、ホットスターラ33の温度を良溶媒の沸点以下の高温に調整して、希釈溶解させたHNS溶解溶液34と、一方で、低温にした冷媒槽37の中に配置したフラスコ32に入れた貧溶媒36(ここでは水)とを用意し、前記高温(ここで高温とは、良溶媒の沸点以下の出来るだけ高い温度のこと)に加熱されたHNS溶解溶液34を、窒素ボンベ39内の窒素ガスを圧送して、三口フラスコ31に配設した細管35を経由し、所定流量にてフラスコ32の中へ、例えば、液滴或いは霧吹きのような微小液滴状態で滴下し、HNS−4を析出させる。
【0047】
また、前記HNS溶解溶液34を三口フラスコ31内から細管35を通りフラスコ32へ送るため、窒素ガスボンベ39の流量弁40と接続されるチューブ41が三口フラスコ31の一側の口に連結し、三口フラスコ31の他側の口に細管35が連結し、この細管の他方がフラスコ32へ連結する構成としている。
そして、窒素ガスボンベ39の流量弁40を調整して窒素ガスを三口フラスコ31へ圧送する。これにより、HNS溶解溶液34が貧溶媒36を収容するフラスコ32内に入り、攪拌機38により撹拌混合される。
次に、前記装置Bで析出されたHNS−4をさらに微細粒子化するためには、界面活性剤、好ましくは非イオン系の界面活性剤を、いずれかの溶媒、たとえばHNSの溶剤である良溶媒(例えば、DMF等)或いは貧溶媒(例えば、水等)に添加するが、好ましくは良溶媒に添加する。
【0048】
また、前記装置Bで析出された微細粒子化されたHNS−4、或いは、さらに界面活性剤を添加し微細粒子化されたHNS−4等を、効率よく安定的に1μm以上の凝集体からなる所望の粒子サイズのHNS−4として得るために、貧溶媒の中に凝集剤を、好ましくは高分子凝集剤を添加して多孔質の凝集体粒子に処理し回収した。
【0049】
ここで、前述した第一実施形態に係る装置A及び第二実施形態に係る装置Bで述べた良溶媒と貧溶媒のことについて補足説明する。
HNS−2を希釈溶解する良溶媒は、沸点以下で、かつ、出来るだけ高い温度に加熱する。これにより、HNS−2を十分に溶解する。
HNS−2の良溶媒としては、例えば、ジメチルフォルムアミド(DMF)、ジメチルスルフォキシド(DMSO)、アセトニトリル、N−メチルピロリジン(NMP)、テトラヒドロフラン(THF)、またはこれら1種類以上の混合溶液等が知られている。尚、本実施形態ではジメチルフォルムアミド(DMF)を用いた。
【0050】
貧溶媒は、低温状態に冷却することにより、HNS溶解溶液と貧溶媒との温度差が大きくなり、HNS溶解溶液と貧溶媒が接触或いは混合したときに瞬間的に析出するHNS−4粒子の成長を止め、微細粒子化の状態を維持したHNS−4を得ることができる。
また、貧溶媒としては、例えば、水、アルコール等が使用できる。 尚、本実施形態では、微細粒子化の作業安全性、廃棄溶媒の処理等の見地から水(蒸留水またはイオン交換水)を用いた。
【0051】
次に、第一実施形態に係る装置Aおよび第二実施形態に係る装置Bで述べた凝集体粒子化について補足説明する。
上述のように界面活性剤を用いて、またはマイクロリアクター方式の反応機器を用いて微細粒子化されたHNS−4は、HNSの溶解溶液と貧溶媒の混合液の中に懸濁した状態で存在するが、この懸濁状態の極めて微細なHNS−4は、通常濾過に用いる分析濾紙よりも微細な目開き0.3μmのガラスフィルター(GF75)でも捕集できないほど微細なため、この微細粒子化されたHNS−4を混合液から濾液と分離して捕集することが困難であった。
そこで、この混合液に高分子凝集剤を添加して、懸濁している極めて微細なHNS−4を凝集させ、平均粒子サイズ1μm以上の不定形多孔質凝集体とすることができた。
【0052】
このように、凝集処理することによって、微細すぎたHNS−4粒子が凝集肥大化するにつれ、ストークスの沈降則による力がアインシュタインの粘性則による力より大きくなり、バランスが崩れて沈降が始まると解釈される。
【0053】
前記凝集剤を用いなかったときには、極めて微細なHNS−4粒子は混合液中に懸濁状態でいつまでも浮遊しており、濾過器にかけても微細すぎて目開き0.3μmのガラスフィルターGF75でも微細粒子HNS−4と濾液とを分離することができなかった。
凝集剤を用いることによって、極めて微細粒子化されたHNS−4が1μm以上の不定形多孔質凝集体粒子になったことにより、容易に回収できるようになったばかりか、濾過速度が数倍から10数倍速く、非常に効率的に分別出来るようになった。
【0054】
また、凝集剤も微細粒子化する化合火薬類の種類及び使用する溶媒の種類によって異なる最適な高分子凝集剤があるが、HNSのような極性の強いニトロ化合物に対する良溶媒と、水など貧溶媒からなる系では、カチオン系高分子凝集剤が極めて凝集効果が高く望ましい。
【0055】
ここで、図3のグラフについて説明する。
図3は、界面活性剤のHLB値と微細粒子の比表面積との関係図(HNSの比表面積データ)である。
グラフ1は、後述する実施例3の方法を用いて行ったもので、HNS−2の良溶媒であるDMFにHLB値の異なる3種類(HLB値がそれぞれ、4.3,9.5,15.0)の界面活性剤を添加し、得られたHNSの比表面積データである。また、GF75のフイルタで回収できない微細粒子化された混合溶液については、フラスコ内に得られた混合液に強カチオン系の高分子凝集剤を添加し回収して粒子の比表面積を計測した。
グラフ2(破線)は、比較例3の方法を用いて行ったもので、貧溶媒である水にHLB値の異なる3種類(HLB値がそれぞれ、4.3,9.5,15.0)の界面活性剤を添加して得られたHNSの比表面積データである。
これらのグラフから、比表面積はHLB値が大きくなるに従い、大きくなっているのが分かる。また、グラフには明示されていないが、良溶媒に添加したほうが微粒子化されやすいことも分かった。
【0056】
図4の写真について説明する。
図4の写真は、実施例5により回収されたHNS−4の多孔質凝集体粒子で、5000倍の顕微鏡による写真である。
これによると、不定形であるが、大部分の多くの粒子が1μm以下の微細粒子であり、それらが互いに凝集(結合)して、3〜10μmと大きな多孔質凝集体粒子となっているのが分かる。
【0057】
図5の写真は、従来法により回収されたHNS−4微細粒子で、主として、柱状結晶が多く、小さいもので1μm以下のものも見えるが、大部分多くは2〜3μmである。
【0058】
次に、本発明の実施例を挙げて具体的に説明する。
【実施例1】
図1に示す装置Aを用いた。
先ず、HNS−21.92gを天秤で正確に秤量して三口フラスコ1に入れる。次に良溶媒であるジメチルフォルムアミド(以下DMF)430mlをメスシリンダーで計量して三口フラスコ1に入れる。その後、ホットスターラ4の上で図示しない攪拌機により三口フラスコ1内をゆっくり攪拌しながら加熱溶解してHNS溶解溶液8とする。
一方、貧溶媒である水9を430mlメスシリンダーで計量して、冷媒槽10(アイスバス)の中に配設した三口フラスコ2の中に入れ、冷却する。
ここで、ホットスターラ4上に載置した三口フラスコ1内のHNS溶解溶液が液温122℃まで達し、また、三口フラスコ2内の貧溶媒である水9が冷媒槽10により5℃程度に冷却されたら、流量弁7aと7bを操作し窒素ガスを500ml/minの流量で、三口フラスコ1と三口フラスコ2へ圧送する。
そして、圧送された窒素ガスにより、HNS溶解溶液と貧溶媒は各細管11,12からマイクロリアクター方式の混和部13へ送られ、フラスコ3の中に定量滴下する。その際、混和部13にはHNS溶解溶液が通過する細径流路部と貧溶媒が通過する細径流路部が設けられており、これら両液体が前記各細径流路の交わり部で連続的に接触・混合して、混合液となってフラスコ3内に回収される。
【0059】
その後、フラスコ3内に得られた混合溶液を攪拌機5で30分間攪拌した後、図示しない洗浄、濾過を行い、微細粒子化されたHNS−4を1.43g得た。
このとき得られるHNS−4の比表面積は10.9m2/g、平均粒子サイズは1.3μmであった。
ここに、本実施例で得られたHNS−4の比表面積データを表2に示す。
【0060】
【実施例2】
図1に示す装置Aを用いて、実施例1と同様の方法であるが、異なるところは、マイクロリアクター方式の混和部13を冷媒で常時2〜3℃になるように調整して冷却したことである。
また、図1に示す混和部13において、実施例1は大気中に設置したのに対して、実施例2では冷浴中に浸して常時低温(2〜3℃)に保持した。
そして、HNS溶解溶液と貧溶媒の両液体を前記マイクロリアクター方式の混和部13で連続的に接触・混合させて、ここから得られた混合液をフラスコ3内に回収した。
【0061】
その後、フラスコ3内に回収した混合液を攪拌機5で30分間攪拌した後に、図示しない洗浄および濾過を行い、微細粒子化されたHNS−4を1.41g得た。
このとき得られたHNS−4の比表面積は11.1m2/g、平均粒子サイズは0.9μmであった。
【0062】
【実施例3】
図2に示す装置Bを用いた。
先ず、良溶媒であるDMF430mlをメスシリンダーで計量し三口フラスコ31に入れる。次に、表1のHLB値9.7の非イオン系界面活性剤10ppmを三口フラスコ31に入れ、図示しない攪拌機で攪拌しながら分散させる。
その後、HNS−21.92gを正確に秤量して三口フラスコ31に入れ、ホットスターラ33の上で図示しない攪拌機で攪拌を行いながらHNS−2を加熱溶解させてHNS溶解溶液34を得る。
一方、貧溶媒である水36を400mlメスシリンダーにて計量し、これを冷媒槽37の中に配設したフラスコ32に入れて、攪拌機38で攪拌しながら冷却する。
そして、前記ホットスターラ33上の三口フラスコ31の中のHNS溶解溶液34の温度が122℃まで達し、また、前記冷媒槽中のフラスコ32の中の貧溶媒36の温度が約3℃に冷却されたら、流量弁40を操作し窒素ガスを500ml/minの流量で三口フラスコ31へ圧送する。
そして、圧送された窒素ガスにより、HNS溶解溶液34が細管35を経由して冷却貧溶媒36へ滴下する。
こうして得られた混合液をフラスコ32の中へ回収した。
【0063】
その後、フラスコ32中の混合液を攪拌機38で30分間攪拌した後に、図示しない洗浄、濾過を行い、微細粒子化されたHNS−4を得ようとするが、これまでと同じ方法で濾過分離(目開き0.3μmのガラスフィルターGF75による)を試みても0.1gしか回収できず、比表面積を測るに必要な0.5gの試料を確保することができなかった。
そこで、電子顕微鏡観察により、微細粒子径を観察したところ粒子サイズは約0.4μm以下と極めて小さい微細粒子化合火薬類を確認した。
【0064】
【実施例4】
図2に示す装置Bを用いて、実施例3と同様の方法であるが、異なるところは界面活性剤を替えたことで、三口フラスコ31の中に、表1のHLB値15.2の非イオン系界面活性剤10ppmを添加した。
【0065】
実施例3と同様に、得られたフラスコ32中の混合液を攪拌機38で30分間攪拌した後、図示しない洗浄および濾過を行ったが、これまでと同じ濾紙による濾過分離(ガラスフィルターGF75による)にも拘わらず、殆ど回収できず、比表面積を計測することはできなかった。
しかし、濾紙全体がやや淡黄色に着色し、濾紙の目に僅か付着していた粒子を電子顕微鏡により観察したところ、粒子サイズは非常に小さな0.3μm程度の微細粒子化合火薬類を確認した。
【0066】
そこで、上記フラスコ32の中で得られた混合液を、表1におけるアニオン系、カチオン系、ノニオン系等の各種高分子凝集剤それぞれ2.7ppmずつ添加して、液相を数時間観察したところ、カチオン系凝集剤、中でも強カチオン系凝集剤で明瞭な凝集効果が認められた。
また、凝集剤は、混合液に添加しても、または、良溶媒中或いは貧溶媒中のいずれかに添加しても良いことが分かった。
【0067】
【実施例5】
図2に示す装置Bを用いて、実施例4と同様の方法であるが、異なるところは、フラスコ32中の貧溶媒36に、表1の強カチオン系凝集剤を2.7ppmをさらに添加したことと、ホットスターラ33上にある三口フラスコ31の中のHNS溶解溶液34の温度を121℃にしたことである。
【0068】
こうして、得られたフラスコ32内の混合液を攪拌機38で30分間攪拌した後に、図示しない洗浄および濾過を行い、微細粒子化されたHNS−4を1.69g得た。
このとき得られたHNS−4の比表面積は12.9m2/g、平均粒子サイズは4.0μmであった。
ここに本実施例で得られたHNS−4の比表面積データを表3に示す。
また、図4に示すように、粒子状態を電子顕微鏡で確認してみると微細粒子がフロック状に結合し固まり状(凝集体粒子)なっていた。
【0069】
【実施例6】
図2に示す装置Bを用いて、実施例5と同様の方法であるが、異なるところは、ホットスターラ33上にある三口フラスコ31中のHNS溶解溶液34の温度を122℃にしたことと、冷媒槽37の中に配設したフラスコ32内の貧溶媒である水9を約4℃に冷却したこと、及び表1の強カチオン系凝集剤2.7ppmを貧溶媒にではなくHNS溶解溶液34と貧溶媒36との混合液に添加したことである。
【0070】
こうして、得られたフラスコ内の混合液を攪拌機38で30分間攪拌した後に、図示しない洗浄および濾過を行い、微細粒子化されたHNS−4を1.71g得た。
このとき得られたHNS−4の比表面積は13.2m2/g、平均粒子サイズは4.2μmであった。
【0071】
【実施例7】
図1に示す装置Aを用いて、実施例1と同様の方法であるが、異なるところは、冷媒槽10に配設されたフラスコ2中の冷却貧溶媒に、表1のHLB値9.7の非イオン系界面活性剤10ppmとカチオン系凝集剤を5ppmとをさらに添加したことである。
【0072】
そして、HNS溶解溶液と冷却貧溶媒とを連続的にマイクロリアクター方式の混和部13内に圧送し接触・混合させた溶液をフラスコ3の中に回収した。
こうして、得られたフラスコ3内の混合液を攪拌機5で30分間撹拌した後に、図示しない洗浄および濾過を行い、微細粒子化されたHNS−4を1.49g得た。
このとき得られたHNS−4の比表面積は12.6m2/g、平均粒子サイズは4.7μmであった。
【0073】
【実施例8】
図1に示す装置Aを用いて、実施例1と同様の方法であるが、異なるところは、冷媒槽10に配設されたフラスコ2中の冷却貧溶媒9に、更にHLB値4.3の非イオン系界面活性剤10ppmを添加したことである。
【0074】
こうして、得られたフラスコ3内の混合液を攪拌機38で30分間攪拌した後に、図示しない洗浄および濾過を行い、微細粒子化されたHNS−4を1.17g得た。
このとき得られるHNS−4の比表面積は10.7m2/g、平均粒子サイズは1.4μmであった。
【0075】
【実施例9】
図1に示す装置Aを用いて、実施例1と同様の方法であるが、異なるところは、冷媒槽10に配設されたフラスコ2中の冷却貧溶媒9に、更に表1のカチオン系凝集剤を3ppm添加したことである。
【0076】
こうして、得られたフラスコ3内の混合液を攪拌機38で30分間で攪拌した後に、図示しない洗浄および濾過を行い、微細粒子化されたHNS−4を1.46g得た。
このとき得られたHNS−4の比表面積は13.6m2/g、平均粒子サイズは3.5μmであった。
【0077】
【実施例10】
図2に示す装置Bを用いた。
先ず、良溶媒であるDMF430mlをメスシリンダーで計量し三口フラスコ31に入れる。次に、表1のHLB値15.2の非イオン系界面活性剤10ppmを三口フラスコ31に入れ、図示しない攪拌機で攪拌しながら分散させる。
その後、HNS−21.92gを正確に秤量して三口フラスコ31に入れ、ホットスターラ33の上で図示しない攪拌機で攪拌を行いながらHNS−2を加熱溶解させてHNS溶解溶液34を得る。
一方、貧溶媒である水36を400mlメスシリンダーにて計量し、これを冷媒槽37の中に配設したフラスコ32の中に入れて、攪拌機38で攪拌しながら冷却する。
そして、前記ホットスターラ33上の三口フラスコ31中のHNS溶解溶液34の温度が122℃まで達し、また、前記冷媒槽中のフラスコ32中の貧溶媒である水36の温度が約3℃に冷却されたら、流量弁40を操作し窒素ガスを500ml/minの流量で三口フラスコ31へ圧送する。
そして、圧送された窒素ガスにより、HNS溶解溶液34が細管35を経由して冷却貧溶媒36へ滴下する。
こうして得られた混合液をフラスコ32の中へ回収した。
【0078】
その後、回収したフラスコ32の中の混合液に、強カチオン系高分子凝集剤を0.27ppm添加した。
こうして、得られたフラスコ32内の混合液を攪拌機38で30分間攪拌した後、図示しない洗浄および濾過を行い、微細粒子化されたHNS−4を得た。
このとき得られたHNS−4は、回収量が濾紙に付着する程度の非常に微量で、殆ど回収できず、使用した濾紙はHNS−4の淡黄色に着色していた。
このことは、凝集剤の添加量が0.20ppmと少ないためと思われる。
したがって、比表面積を計測することはできなかったが、濾紙の目に付着していたHNS−4の電子顕微鏡による観察では粒子サイズは約0.4μm程度の微細粒子化合火薬類を確認した。
【0079】
次に、比較例について説明する。
比較例1〜5では、図2に示す装置Bを用いた。
【比較例1】
先ず、良溶媒であるDMF430mlをメスシリンダーで計量し三口フラスコ31に入れる。次に、HNS−21.92gを天秤で正確に秤量して三口フラスコ31に入れる。
その後、ホットスターラ33の上で図示しない攪拌機で攪拌を行いながらHNS−2を加熱溶解させてHNS溶解溶液34を得る。
一方、貧溶媒である水36を400mlメスシリンダーにて計量し、これを冷媒槽37の中に配設したフラスコ32の中に入れて、攪拌機38で攪拌しながら冷却する。
そして、前記ホットスターラ33上の三口フラスコ31中のHNS溶解溶液34の温度が約120℃まで達し、また、前記冷媒槽中のフラスコ32中の貧溶媒である水36の温度が約3℃に冷却されたら、流量弁40を操作し窒素ガスを500ml/minの流量で三口フラスコ31へ圧送する。
そして、圧送された窒素ガスにより、HNS溶解溶液34が細管35を経由して冷却貧溶媒36へ滴下する。
こうして得られた混合液をフラスコ32の中へ回収した。
【0080】
その後、フラスコ32中の混合液を攪拌機38で30分間攪拌した後、図示しない洗浄および濾過を行い、微細粒子化されたHNS−4を1.15g得た。
このとき得られたHNS−4の比表面積は9.8m2/gであった。
この方法を数回繰り返してみた。その結果、回収されたHNS−4の比表面積は平均10.2m2/g(標準偏差0.42m2/g)であったが、粒子サイズが概ね1〜20μmであった。
このように比表面積は実施例に比して小さく、粒子サイズのバラツキが大きいものであった。
【0081】
【比較例2】
比較例1と同様の方法であるが、異なるところは、三口フラスコ31の中に、さらに、表1のHLB値4.3の非イオン系界面活性剤10ppmを添加混合することである。
【0082】
こうして、得られたフラスコ32中の混合液を攪拌機38で30分間攪拌した後、図示しない洗浄および濾過を行い、微細粒子化されたHNS−4を1.12g得た。このHNS−4の比表面積は9.3m2/g、平均粒子サイズは3.0μmであった。
【0083】
【比較例3】
先ず、良溶媒であるDMF430mlをメスシリンダーで計量し三口フラスコ31に入れる。次に、HNS−21.92gを天秤で正確に秤量して三口フラスコ31に入れる。その後、ホットスターラ33の上で図示しない攪拌機で攪拌を行いながらHNS−2を加熱溶解させてHNS溶解溶液34を得る。
一方、貧溶媒である水36を400mlメスシリンダーにて計量し、これを冷媒槽37の中に配設したフラスコ32の中に入れる。そして、この貧溶媒である水36の中に表1のHLB値4.3の非イオン系界面活性剤10ppmを添加し、攪拌機38で攪拌しながら冷却し冷却貧溶媒とする。
そして、前記ホットスターラ上の三口フラスコ31中のHNS溶解溶液34の温度が約120℃まで達し、また、前記冷媒槽中のフラスコ32中の冷却貧溶媒36の温度が約4℃に冷却されたら、流量弁40を操作し窒素ガスを500ml/minの流量で三口フラスコ31へ圧送する。
そして、圧送された窒素ガスにより、HNS溶解溶液34が細管35を経由して冷却貧溶媒36へ滴下する。
こうして得られた混合液をフラスコ32の中へ回収した。
【0084】
その後、得られた混合液を攪拌機38で30分間攪拌した後に、図示しない洗浄および濾過を行い、微細粒子化されたHNS−4を1.12g得た。
このHNS−4の比表面積は8.7m2/g、平均粒子サイズは3.3μmであった。
【0085】
【比較例4】
先ず、良溶媒であるDMF430mlをメスシリンダーで計量し三口フラスコ31に入れる。
次に、表1のHLB値9.5の非イオン系界面活性剤3ppmとHNS−21.92gとを、それぞれ天秤で正確に秤量して三口フラスコ31に入れる。
その後、ホットスターラ33の上で図示しない攪拌機で攪拌を行いながらHNS−2を加熱溶解させてHNS溶解溶液34を得る。
一方、貧溶媒である水36を400mlメスシリンダーにて計量し、これを冷媒槽37の中に配設したフラスコ32の中に入れて、攪拌機38で攪拌しながら冷却する。
そして、前記ホットスターラ33上の三口フラスコ31中のHNS溶解溶液34の温度が約122℃まで達し、また、前記冷媒槽中のフラスコ32中の貧溶媒である水36の温度が約4℃に冷却されたら、流量弁40を操作し窒素ガスを500ml/minの流量で三口フラスコ31へ圧送する。
そして、圧送された窒素ガスにより、HNS溶解溶液34が細管35を経由して冷却した貧溶媒36へ滴下する。
こうして得られた混合液をフラスコ32の中へ回収した。
【0086】
次に、得られた混合液を攪拌機38で30分間攪拌した後に、図示しない洗浄および濾過を行い、微細粒子化されたHNS−4を1.10g得た。
このHNS−4の比表面積は9.5m2/g、平均粒子サイズは2.6μmであった。
【0087】
【比較例5】
先ず、良溶媒であるDMF430mlをメスシリンダーで計量し三口フラスコ31に入れる。
次いで、HNS−21.92gを天秤で正確に秤量して三口フラスコ31に入れる。
その後、ホットスターラ33の上で図示しない攪拌機で攪拌を行いながらHNS−2を加熱溶解させてHNS溶解溶液34を得る。
一方、貧溶媒である水36を400mlメスシリンダーにて計量し、これを冷媒槽37の中に配設したフラスコ32の中に入れる。そして、この貧溶媒の中に表1のHLB値9.7の非イオン系界面活性剤10ppmを添加し、攪拌機38で攪拌しながら冷却し冷却貧溶媒とする。
そして、前記ホットスターラ33上の三口フラスコ31の中のHNS溶解溶液34の温度が約121℃まで達し、また、前記冷媒槽中のフラスコ32中の貧溶媒36の温度が約5℃に冷却されたら、流量弁40を操作し窒素ガスを500ml/minの流量で三口フラスコ31へ圧送する。
そして、圧送された窒素ガスにより、HNS溶解溶液34が細管35を経由して冷却貧溶媒36へ滴下する。
こうして得られた混合液をフラスコ32の中へ回収した。
【0088】
次に、得られた混合液を攪拌機38で30分間攪拌した後に、図示しない洗浄および濾過を行い、微細粒子化されたHNS−4を1.18g得た。
このHNS−4の比表面積は9.8m2/g、平均粒子サイズは3.0μmであった
。
【0089】
【表1】
(注1:非イオン系界面活性剤:ノニオンは日本油脂株式会社製。他は花王株式会社製。)
(注2:高分子凝集剤:ダイヤニトリックス株式会社製。)
【表2】
【表3】
【0090】
【発明の効果】
本発明は、化合火薬類の微細粒子化に機械的エネルギーを必要とせず、少量の化合火薬類、例えば、HNS−2等を出発物質として、極めて安価な実験的機器の装置のみで、容易かつ安定的に微細粒子化を達成することが可能となる。
【0091】
また、本発明は、化合火薬類、例えば、HNS−4等をきわめて微細な粒子に析出・維持することの出来る界面活性剤を有効に用いることと、この微細な粒子を維持したまま、多孔質凝集体粒子に処理することのできる凝集剤によって、微細粒子化した多孔質凝集体状の化合火薬類、例えば、HNS−4等を得ることが可能となる。
言い換えると、比表面積を大きくしながら粒子サイズも大きいという二律背反的な物性を持った化合火薬類、例えば、HNS−4が得られる。
【0092】
また、本発明は、凝集体に処理することにより、比表面積の十分に大きな微細粒子を効率よく回収でき、濾過分離の大幅工数低減と収率が大きく向上した。
【図面の簡単な説明】
【図1】化合火薬類の溶解溶液と貧溶媒とを連続的に接触・混合し混合液を得るための装置Aの概要図である。
【図2】化合火薬類の溶解溶液を貧溶媒中に滴下し混合液を得るための装置Bの概要図である。
【図3】界面活性剤を用いて得られたHNS−4の比表面積データを示すグラフである。
【図4】微細粒子が多孔質凝集体を形成したHNS−4の粒子サイズの状況を示す顕微鏡写真である。
【図5】従来法により回収されたHNS微細粒子の顕微鏡写真である。
【符号の説明】
1,2,31 三口フラスコ
3,32 フラスコ
4,33 ホットスターラ
5,38 攪拌機
6,39 窒素ガスボンベ
7a,7b,40 流量弁
8,34 HNS溶解溶液
9,36 貧溶媒
10,37 冷媒槽
11,12,35 細管
13 マイクロリアクター方式の混和部
14,15,41 チューブ
A 第一実施形態に係る装置
B 第二実施形態に係る装置
【発明の属する技術分野】
本発明は、デトネータ、電気雷管、各種発火装置に使用可能な点爆薬等の用途の爆発性物質(化合火薬類)に関し、詳しくは、比表面積の極めて大きな微細粒子化合火薬類を多孔質凝集体粒子と成す化合火薬類であり、また、微細粒子化合火薬類の製造方法と、この微細粒子化合火薬類を多孔質凝集体粒子と成す化合火薬類の製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来、化合火薬類(粒子サイズを有する爆発性物質)には、例えば、ペンタエリスリトールテトラナイトレート(PETN、別名ペンスリット)、トリメチレントリニトラミン(RDX)、シクロテトラメチレンテトラニトラミン(HMX)、ヘキサニトロスチルベン(HNS)、ヘキサニトロヘキサアザイソウルチタン(HNIW:CL−20)等があり、電気式デトネータ、無起爆薬雷管などの点爆薬等として用いられている。
【0003】
電気式デトネータとしては1940年代初頭、マンハッタン計画の中で、在来型の電橋線式デトネータに代わって核兵器に供せられるべき信頼性、応答性、安全性を有する電気式デトネータとして、Exploding Bridge Wire Detonator、所謂、電橋線式デトネータ(EBW)が開発された。
このEBWの一般的な構造としては、電橋線、電橋線を保持するヘッド、筐体で構成されており、点爆薬としてはPETN(ペンスリット)、出力薬としてはPETN及び/またはRDX等の爆薬が填薬されることが多い。
そして、EBW方式は50年以上に亘り、軍用ばかりではなく、さまざまな産業用途に使用されてきた。
【0004】
しかし近年、安全性、信頼性、耐環境性の要求が高まり、将来型の高性能電気式デトネータとして、Exploding Foil Initiator、所謂、薄膜式デトネータ(EFI)が開発されてきた。
これは、電気的な高エネルギーで薄膜抵抗体を破壊し、絶縁性飛翔体を生成して爆薬に衝突させ起爆しようとする、所謂、スラッパー起爆方式のデトネータである。そして、このようなデトネータ、或いは無起爆薬雷管(Non Primary Electronic Detonator)等にもPETN、RDX、HMX、HNS、CL−20等の非常に微細化された化合火薬類が適し選定されている。
【0005】
これについては、各種溶媒による微細化の記載とスラッパー試験についての記載がある。(例えば、非特許文献1参照)
また、発火システムの比較と原理等についての記載がある。(例えば、非特許文献2)
【0006】
従来、化合火薬類の粒子サイズを微細にすれば、比表面積が大きくなり優れた起爆特性が得られることは知られている。そこで、微細化するために機械的粉砕、或いは化学的な溶解による微細粒子化技術が用いられてきた。
従来の技術である機械的粉砕としては、例えば,RDXを微細粒子にするためアトライター(商品名)と呼ばれる装置を用いた湿式機械粉砕装置がある。この装置によれば、平均粒子サイズ3〜7μmが限度であった。
また、化合火薬類自体を水等の不活性媒体中にて高速剪断力を与える、或いは、高速で邪魔板に衝突させるなどの機械的エネルギーを与えながら微細粒子に粉砕する機械的方法がある。(例えば、非特許文献3参照)
【0007】
また、化学的処理による爆薬微細化に関する技術としては、微細粒子化爆発性物質の製造方法及び装置がある。(例えば、特許文献1参照)
この微細粒子爆発性物質の製造法及び装置は、出発成分としてその成分を溶解しうる溶媒に溶解し、その後攪拌して得られた溶液を、エジェクターに供給し、エジェクターに供給される溶媒及び水蒸気がディフューザー中で蒸発させるようにし、溶媒中に溶解した爆薬成分を粒子化し、または沈殿させ、その後サイクロン中で粒子成分を溶媒から分離し、溶媒は凝縮後再使用するようにしている。
【0008】
そして、結晶質爆薬として1種類以上の高級爆薬または低級爆薬を加えることや、結晶質爆薬を溶解する溶媒としてメチルエチルケトンまたはアセトンを使用すること及びこれらに水を添加すること等が記載されており、20μm未満の平均粒子サイズの結晶質爆発性物質を有するとしている。さらに、実施例には、ヘキソーゲン(RDX)をメチルエチルケトンに溶解して微細粒子化したもの、ヘキソーゲン(RDX)、セルロースアセテートブチレート、トリブチルシトレート、ニトロセルロース及びセントラリットを水飽和メチルエチルケトンに溶解して微細粒子化する方法が記載されている。
【0009】
【特許文献1】
特許第2,802,388号公報 (第2頁〜第4頁、第1図)
【0010】
【非特許文献1】
Steven M. Harris and Sandra E. Klassen著,「Hexanitrostilbene(HNS) Development for Modern Slapper Detonators」,ICT,2001年,P.24.1−12
【非特許文献2】
Ron Varosh著,「Electric Detonators:EBW and EFI」,PEP21,1996年,P.150−154
【非特許文献3】
Ulrich Teipel and Irma Mikonsaari著,「Size reduction of particulate enegetic material」,PEP27,2002年,P.168−174
【0011】
【発明が解決しようとする課題】
前述のEFIのような特定デトネータに使われる化合火薬類の一例としてHNSがあり、EFIに使用するHNSは比表面積がある一定値(10m2/g)以上でないと起爆性が大きく低下し、デトネータとして機能しなくなる虞がある。
そこで、化合火薬類を微細粒子化するため、前述の機械的粉砕方法があるが、水等の不活性媒体中で粉砕するとはいえ安全性の問題があり、また、所望の粒子径まで微細にするには膨大な粉砕時間を要するほか、1μm以下の微細粒子径にすることは不可能であるという問題がある。
【0012】
また、安全性と微細粒子化を解決する策として、前述の微細粒子爆発性物質の製造法及び装置による、結晶質爆薬を良溶媒に溶解し、これを貧溶媒中で析出させる化学的方法があるが、比表面積10m2/g以上を保証することに関しては何ら触れていない。このことは、比表面積を大きくするには粒子サイズを小さくすればよいことから、比表面積を大きくするがために、この粒子サイズを小さくしすぎると回収するのが困難になるばかりか、回収率が大きく低減することを示唆している。因みに、粒子サイズが均一、一様な2μmの球状粒子である時、一般に比表面積は1.2m2/gとなるので、もし12m2/g以上の比表面積とするには平均粒子サイズは0.2μm以下とする必要がある。
このことは、比表面積10m2/g以上の微細粒子を再現性良くかつ高い収率でコンスタントに生産性を上げることは濾過性との関連で難しいという問題があり、粒子径を大きくして且つ比表面積を大きくすることは通常は不可能である。
【0013】
また、従来、HNS或いはその他の化合火薬類の良溶媒としてはジメチルフォルムアミド(DMF)、ジメチルスルフォオキシド(DMSO)、アセトニトリル、アセトン、メチルアセテート、エチルアセテート、ニトロベンゼン、ニトロエタン、シクロヘキサノン、シクロペンタノン、メチルエチルケトン(MEK)、シクロベンゼン、トルエン、エトキシエチルアセテート、N−メチルピロリジン(NMP)、テトラヒドロフラン(THF)、またはこれら1種類以上の混合溶液などが知られているが、これらの溶媒は常温では溶解性が低かったり、或いは、溶解度を上げるため溶液温度をあげると危険性及び有害性が増すなどの問題があり、更に、十分な溶解性があっても、得られる微細粒子物質が所望の粒子サイズにならない、すなわち所望の比表面積値に適合しないことや、粒子サイズのバラツキが大きくなった時にはMIL規格を満足しないこともあるので、MIL規格(例えば、HNS−4:10m2/g〜15m2/g)の微細粒子を安定的に得ることに困難な問題がある。
【0014】
そこで、発明者らは、安全性がきわめて高く、非常に微細な粒子径にまで微細粒子化できる化学的方法を用いて鋭意研究した結果、化合火薬類、例えば、HNS−2の溶解溶液をゆっくりと攪拌する他は何ら機械的エネルギーを付加せず、その溶解溶液を、低温状態の貧溶媒である水に滴下し、微細なHNS−4粒子を析出させることによって微細粒子化されたHNS−4(比表面積:10m2/g以上)の化合火薬類を得ると共に、この微細粒子化された化合火薬類を凝集体として効率よく濾過・回収(収率85%以上)することを見出した。
【0015】
具体的には、良溶媒中に溶解した化合火薬類(例えば、HNS−2)が貧溶媒中に諸条件で接触混合或いは滴下されたとき微細結晶が析出する。この状態で、ミクロな、又はナノ状態の極めて微細な粒子が得られているが、貧溶媒と良溶媒が混合されるにつれ混合液の温度上昇により得られた結晶粒子が成長或いは結合(合一)する。そこで、得られた微細な結晶粒子が成長する前に、或いは接触合一する前に、化合火薬類と親和性の高い疎水基と、水と親和性の高い親水基の両者の機能を持つ特定の界面活性剤を用い、生成直後の極めて微細な粒子と当該活性剤の疎水基を結合させ個々の微細粒子状に包み込む手段をとる。
この状況は疎水基が中心方向に配向し、親水基が放射状に外部に配向した丁度いが栗に似た球体状のものが得られる。
このようになると、当該球状体は表面が親水基で覆われているので、疎水性物質とは結合せず結晶は成長しない。即ち、貧溶媒である水と親和して懸濁状態をいつまでも維持することとなる。
【0016】
また、上記で得られた微細粒子化合火薬類に特定の凝集剤を添加し、多孔質な凝集体の粒子と成す。これは、一般に水系の貧溶媒では懸濁粒子は負に帯電しており、電気的斥力により懸濁状態を維持しょうとする。そこで、正に帯電する凝集剤を添加することによって、電気的に中和され、電気的斥力が解かれることにより、懸濁粒子の凝集が始まり、この凝集が進むと凝集体となり、凝集体の大きさによる粘性抵抗よりその凝集体の重力の方が大きくなって沈降する。
【0017】
また、微細粒子化合火薬類を特定の凝集剤を用いることで平均粒子サイズ1μm以上の多孔質凝集体粒子の化合火薬類として、収率良く安定的に得ることを見出した。
【0018】
すなわち、本発明の目的は、化合火薬類を微細粒子化し比表面積の大きな微細粒子化合火薬類を安定的に得ることであり、また、この微細粒子化した化合火薬類(微細粒子化合火薬類)を多孔質の凝集体粒子として効率よく捕集し、再現性良く高い回収率で得ることのできる化合火薬類を提供することにある。
【0019】
【課題を解決するための手段】
請求項1に係る発明は、微細粒子化合火薬類より成る多孔質凝集体粒子であることを特徴とする化合火薬類である。
【0020】
請求項2に係る発明は、前記微細粒子化合火薬類が、粒径5μm以下であることを特徴とする請求項1記載の化合火薬類である。
請求項3に係る発明は、前記微細粒子化合火薬類が、比表面積が10m2/g〜30m2/gであることを特徴とする請求項2記載の化合火薬類である。
【0021】
請求項4に係る発明は、前記多孔質凝集体粒子が、平均粒子1μm〜20μmであることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項記載の化合火薬類である。
請求項5に係る発明は、前記多孔質凝集体粒子が、凝集剤を含むことを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項記載の化合火薬類である。
【0022】
請求項6に係る発明は、前記凝集剤が、高分子凝集剤であることを特徴とする請求項5記載の化合火薬類である。
【0023】
本発明によれば、高分子凝集剤を用い所定の大きさの多孔質凝集体粒子にすることで、微細粒子化合火薬類の収率向上と工数低減に大きく寄与する。具体的に例をあげると、凝集剤を使用しないときは収率が高くとも65%であったものが、凝集剤を用いることにより85%以上にまで向上するばかりか濾過時間も大きく短縮される。
請求項7に係る発明は、前記高分子凝集剤は、カチオン系高分子凝集剤であることを特徴とする請求項6記載の化合火薬類である。
【0024】
本発明によれば、凝集剤は有機系の高分子凝集剤の、アニオン、カチオン及びノニオン系のものがあるが、貧溶媒が水である場合はカチオン系凝集剤が有効である。これは、一般に水系の貧溶媒では懸濁粒子は負に帯電しており、電気的斥力により懸濁状態を維持しょうとする。そこで、正に帯電する捕集剤を添加することによって、電気的に中和され、電気的斥力が解かれることにより、懸濁粒子の凝集が始まり、この凝集が進むと凝集体となり、凝集体の大きさによる粘性抵抗よりその凝集体の重力の方が大きくなって沈降する。
【0025】
また、高分子凝集剤を用い所定の大きさの多孔質凝集体粒子にすることで、微細粒子化合火薬類の収率向上と工数低減に大きく寄与する。具体的に例をあげると、凝集剤を使用しないときは収率が高くとも65%であったものが、凝集剤、特に強カチオン系凝集剤を用いることにより85%以上にまで向上するばかりか濾過時間も大きく概ね1/10以下に短縮される。
【0026】
請求項8に係る発明は、前記微細粒子化合火薬類が、界面活性剤を含むことを特徴とする請求項1乃至7のいずれか1項記載の化合火薬類である。
請求項9に係る発明は、前記界面活性剤が、非イオン系界面活性剤であることを特徴とする請求項8記載の化合火薬類である。
請求項10に係る発明は、前記非イオン系界面活性剤が、HLB値が9〜20であることを特徴とする請求項9記載の化合火薬類である。
【0027】
本発明によると、界面活性剤のHLB値が低いとき、即ち疎水性能が高いときは微細粒子のものは得られないが、HLB値が高くなり、親水性能が高まると徐々に微細粒子のものが増えてくる。
【0028】
また、本発明においては、ニトロ化合物のような極性の高い化合物は経験的にHLB値が高い方が有効である。
HLB値が9より低いの界面活性剤をニトロ基を含む極性の高いターゲット物質の良溶媒に添加しても、ターゲット物質の微細粒子化には効果が弱く、比表面積を安定して10m2/g以上にすることは難しい。
【0029】
例えば、HLB値4.3−(1)、9.5−(2)、15.0−(3)の各界面活性剤を使用し、GF75フィルター(目開き0.3μm)で濾過した状況下では、(1)HLB値4.3の場合、従来製法と同様に、GF75フィルターで1回
濾過しただけで、通常の収率65%程度が得られ、(2)HLB値9.7の場合、従来製法と同様に、GF75フィルター1回のみの濾過では数%しか化合火薬類を得ることができず、2〜3回同一工程を繰り返しても僅かな収率増大しか上げる事ができず、従って、それだけ、微細粒子になっているといえる。
また、(3)HLB値15.0の場合、従来製法と同様に、GF75フィルターの濾過では何回濾過しても全く化合火薬類を得ることができず、従って、0.3μm以下の非常に微細な粒子になっている。
【0030】
請求項11に係る発明は、化合火薬類及び良溶媒からなる溶液と貧溶媒とを混和部に比例注入し、連続的に接触及び混合させて均一な大きさの微細粒子化合火薬類を得ることを特徴とする化合火薬類の製造方法である。
【0031】
本発明によると、比例注入とは、例えば、溶液および貧溶媒を重量比で50:50の一定割合で接触・混合させる方法である。
こうする事により、比較的高温の溶液と低温の貧溶媒との接触・混合後の混合溶液温度が常に一定となり、得られる微細粒子の成長も一定で、粒子径のバラツキが少なくなるというメリットがある。
【0032】
請求項12に係る発明は、化合火薬類、良溶媒及び界面活性剤からなる溶液と貧溶媒とを混和部に比例注入し、連続的に接触及び混合させて均一な大きさの微細粒子化合火薬類を得ることを特徴とする化合火薬類の製造方法である。
請求項13に係る発明は、前記混和部が、平均有効径1mm以下の流路からなるマイクロリアクターを用いることを特徴とする請求項11または請求項12記載の化合火薬類の製造方法である。
【0033】
本発明によれば、化合火薬類が一般に1mmφ以上の限界薬径を有しているため、この限界薬径よりも小さな平均有効径を有する流路のマイクロリアクターにすることにより、万一の爆発現象が発生した場合でも、爆轟伝播性を有さないため、その爆発現象を局所化し、安全に製造できる。
【0034】
請求項14に係る発明は、化合火薬類、良溶媒及び界面活性剤からなる溶液と貧溶媒とを混合する過程において、前記溶液を貧溶媒に所定の流量をもって滴下し微細粒子化合火薬類を得ることを特徴とする化合火薬類の製造方法である。
【0035】
本発明によれば、得られる混合溶液の温度が徐々に上がり、微細粒子化合火薬類は結晶成長の傾向を示すが、混合溶液の温度を低温で常に一定に維持する方法によっては微細に維持することができる。
請求項15に係る発明は、前記界面活性剤が、非イオン系界面活性剤であることを特徴とする請求項12または請求項14記載の化合火薬類の製造方法である。
請求項16に係る発明は、前記非イオン系界面活性剤は、HLB値が9〜20で
あることを特徴とする請求項15記載の化合火薬類の製造方法である。
【0036】
請求項17に係る発明は、請求項11乃至16記載のいずれか1項記載の化合火薬類の製造方法の製造過程において、さらに、前記貧溶媒に凝集剤を添加し前記溶液とを撹拌混合して多孔質凝集体粒子と成すことを特徴とする化合火薬類の製造方法である。
請求項18に係る発明は、前記凝集剤が、高分子凝集剤であることを特徴とする請求項17記載の化合火薬類の製造方法である。
請求項19に係る発明は、前記高分子凝集剤が、カチオン系高分子凝集剤であることを特徴とする請求項18記載の化合火薬類の製造方法である。
【0037】
【発明の実施の形態】
本発明は、例えば、PETN、RDX、HMX、HNS、CL−20等の化合火薬類を微細粒子化することと、この微細粒子化合火薬類を多孔質の凝集体粒子とすることに係ることであるが、本実施形態においては、一例としてHNSを上げて詳細に説明する。尚、以下の実施例及び比較例はいずれも、使用した良溶媒はジメチルフォルムアミド(DMF)であり、その蒸気は人体に対して有害であることから、ドラフトチャンバー内で実施した。
【0038】
図1は、良溶媒によるHNS−2の溶解溶液と貧溶媒である水とを所定の流量で連続的に接触・混合して得られる微細粒子化されたHNS−4を含む混合液を得るための第一実施形態に係る装置Aの概要図である。
また、本発明では上記装置Aをマイクロリアクター方式と呼び、符号13はマイクロリアクター方式の混和部と呼称する。(実施例1,2,7,8,9に使用する。)
【0039】
図2は、良溶媒を貧溶媒の中に所定の流量をもって適量滴下し混合液を得るための第二実施形態に係る装置Bの概要図である。(本発明の実施例3,4,5,6,10に使用する。)
【0040】
また、図1および図2における流量弁7a,7bと40は、流量計を兼ね備えた
ものである。
第一実施形態に係る装置Aとこれによる微細粒子化及び凝集体粒子化について述べる。
図1に示すように、ホットスターラ4の上に配置した三口フラスコ1の中にHNS−2と良溶媒(ここではDMF)を入れ、ホットスターラ4の温度を良溶媒の沸点以下の高温にして、希釈溶解させたHNS溶解溶液8と、一方で、冷却した冷媒槽10の中に配置した三口フラスコ2に入れた貧溶媒9(ここでは水)とを、窒素ガスの圧送により、各三口フラスコ1,2内に配設した細管11,12から比例注入により所定流量を通過させながらマイクロリアクター方式の混和部13へ滴下して連続的に接触・混合させ混合液としてフラスコ3に入れる。
この混合液中に比表面積の大きな、例えばHNS−4(比表面積:10m2/g以上)を析出する。
【0041】
また、前記HNS溶解溶液8と前記貧溶媒9とを細管11,12へ送るため、窒素ガスボンベ6の流量弁7a側と接続されるチューブ14がHNS溶解溶液の三口フラスコ1の一側の口に連結し、流量弁7b側と接続されるチューブ15が貧溶媒の三口フラスコ2の一側の口に連結されている。これにより、各三口フラスコ1,2は、細管11,12を通じてマイクロリアクター方式の混和部13に連通することとなる。
そして、窒素ガスボンベ6の流量弁7a、7bを調整して窒素ガスを三口フラスコ1および三口フラスコ2へ圧送する。これにより、HNS溶解溶液8と貧溶媒9が細管11,12を通過しマイクロリアクター方式の混和部13へ送られ連続的に接触・混合してフラスコ3内に入り、攪拌機5により撹拌混合される。
【0042】
また、マイクロリアクター方式の混和部13は、図1の斜線部拡大に示すように、HNS溶解溶液8が滴下する細径流路部と貧溶媒9(水)が滴下する細径流路部とを有し、前記HNS溶解溶液8と分溶媒9の両液体が前記細径流路部の交わり部で、接触・混合されるように設計されている。
また、前記マイクロリアクター方式の混和部13は、それ自体を冷却することで、HNS溶解溶液8と貧溶媒9との混合液の温度変化を最小で一定に保つことができ、更には、マイクロリアクター方式の混和部13を通過する流量で粒子サイズも微細にコントロールできることから非常に優れている。これにより、HNS−4粒子の粒子サイズは極めて微細で、かつ、バラツキの少ないHNS−4粒子が得られる。
【0043】
次に、前記装置Aで析出されたHNS−4をさらに微細粒子化するためには、界面活性剤、好ましくは非イオン系の界面活性剤を、いずれかの溶媒、例えばHNSの溶剤である良溶媒(例えば、DMF等)或いは貧溶媒(例えば、水等)に添加するが、好ましくは良溶媒に添加するとよい。これは、良溶媒に界面活性剤を添加することによって、良溶媒に溶解した極めて微細なHNS−4の結晶核と界面活性剤の疎水基が結合した状態で分散しており、これが貧溶媒である水と接触した瞬間に界面活性剤の親水基と水とが結合し、結晶成長することも、或いはHNS−4の結晶同士が合一することもなく、良溶媒と貧溶媒の混合液中に微細なままでいつまでもHNS−4微細粒子が懸濁維持しているのである。
【0044】
こうして得られたHNS−4微細粒子の比表面積値と用いた界面活性剤の親水性、疎水性のバランス尺度であるHLB値との間には相関がある。
この界面活性剤のHLB値が低いとき、即ち疎水性能が高いときは微細粒子のものは得られないが、HLB値が高くなり、親水性能が高まると徐々に微細粒子のものが増えてくる。
例えば、図3に示すように、HLB値9以上の界面活性剤で比表面積値(微細粒子化)の効果がより高い。
【0045】
また、前記装置Aで析出された微細粒子化されたHNS−4、或いは、さらに界面活性剤を添加し微細粒子化されたHNS−4等を、効率よく安定的に1μm以上からなる所望の粒子サイズのHNS−4として得るため、貧溶媒の中に凝集剤、好ましくは高分子凝集剤を添加し多孔質の凝集体粒子として処理し回収する。
【0046】
次に、第二実施形態に係る装置Bとこれによる微細粒子化及び凝集体粒子化について述べる。
図2に示すように、ホットスターラ33の上に配置した三口フラスコ31の中にHNS−2と良溶媒(ここではDMF)とを入れ、ホットスターラ33の温度を良溶媒の沸点以下の高温に調整して、希釈溶解させたHNS溶解溶液34と、一方で、低温にした冷媒槽37の中に配置したフラスコ32に入れた貧溶媒36(ここでは水)とを用意し、前記高温(ここで高温とは、良溶媒の沸点以下の出来るだけ高い温度のこと)に加熱されたHNS溶解溶液34を、窒素ボンベ39内の窒素ガスを圧送して、三口フラスコ31に配設した細管35を経由し、所定流量にてフラスコ32の中へ、例えば、液滴或いは霧吹きのような微小液滴状態で滴下し、HNS−4を析出させる。
【0047】
また、前記HNS溶解溶液34を三口フラスコ31内から細管35を通りフラスコ32へ送るため、窒素ガスボンベ39の流量弁40と接続されるチューブ41が三口フラスコ31の一側の口に連結し、三口フラスコ31の他側の口に細管35が連結し、この細管の他方がフラスコ32へ連結する構成としている。
そして、窒素ガスボンベ39の流量弁40を調整して窒素ガスを三口フラスコ31へ圧送する。これにより、HNS溶解溶液34が貧溶媒36を収容するフラスコ32内に入り、攪拌機38により撹拌混合される。
次に、前記装置Bで析出されたHNS−4をさらに微細粒子化するためには、界面活性剤、好ましくは非イオン系の界面活性剤を、いずれかの溶媒、たとえばHNSの溶剤である良溶媒(例えば、DMF等)或いは貧溶媒(例えば、水等)に添加するが、好ましくは良溶媒に添加する。
【0048】
また、前記装置Bで析出された微細粒子化されたHNS−4、或いは、さらに界面活性剤を添加し微細粒子化されたHNS−4等を、効率よく安定的に1μm以上の凝集体からなる所望の粒子サイズのHNS−4として得るために、貧溶媒の中に凝集剤を、好ましくは高分子凝集剤を添加して多孔質の凝集体粒子に処理し回収した。
【0049】
ここで、前述した第一実施形態に係る装置A及び第二実施形態に係る装置Bで述べた良溶媒と貧溶媒のことについて補足説明する。
HNS−2を希釈溶解する良溶媒は、沸点以下で、かつ、出来るだけ高い温度に加熱する。これにより、HNS−2を十分に溶解する。
HNS−2の良溶媒としては、例えば、ジメチルフォルムアミド(DMF)、ジメチルスルフォキシド(DMSO)、アセトニトリル、N−メチルピロリジン(NMP)、テトラヒドロフラン(THF)、またはこれら1種類以上の混合溶液等が知られている。尚、本実施形態ではジメチルフォルムアミド(DMF)を用いた。
【0050】
貧溶媒は、低温状態に冷却することにより、HNS溶解溶液と貧溶媒との温度差が大きくなり、HNS溶解溶液と貧溶媒が接触或いは混合したときに瞬間的に析出するHNS−4粒子の成長を止め、微細粒子化の状態を維持したHNS−4を得ることができる。
また、貧溶媒としては、例えば、水、アルコール等が使用できる。 尚、本実施形態では、微細粒子化の作業安全性、廃棄溶媒の処理等の見地から水(蒸留水またはイオン交換水)を用いた。
【0051】
次に、第一実施形態に係る装置Aおよび第二実施形態に係る装置Bで述べた凝集体粒子化について補足説明する。
上述のように界面活性剤を用いて、またはマイクロリアクター方式の反応機器を用いて微細粒子化されたHNS−4は、HNSの溶解溶液と貧溶媒の混合液の中に懸濁した状態で存在するが、この懸濁状態の極めて微細なHNS−4は、通常濾過に用いる分析濾紙よりも微細な目開き0.3μmのガラスフィルター(GF75)でも捕集できないほど微細なため、この微細粒子化されたHNS−4を混合液から濾液と分離して捕集することが困難であった。
そこで、この混合液に高分子凝集剤を添加して、懸濁している極めて微細なHNS−4を凝集させ、平均粒子サイズ1μm以上の不定形多孔質凝集体とすることができた。
【0052】
このように、凝集処理することによって、微細すぎたHNS−4粒子が凝集肥大化するにつれ、ストークスの沈降則による力がアインシュタインの粘性則による力より大きくなり、バランスが崩れて沈降が始まると解釈される。
【0053】
前記凝集剤を用いなかったときには、極めて微細なHNS−4粒子は混合液中に懸濁状態でいつまでも浮遊しており、濾過器にかけても微細すぎて目開き0.3μmのガラスフィルターGF75でも微細粒子HNS−4と濾液とを分離することができなかった。
凝集剤を用いることによって、極めて微細粒子化されたHNS−4が1μm以上の不定形多孔質凝集体粒子になったことにより、容易に回収できるようになったばかりか、濾過速度が数倍から10数倍速く、非常に効率的に分別出来るようになった。
【0054】
また、凝集剤も微細粒子化する化合火薬類の種類及び使用する溶媒の種類によって異なる最適な高分子凝集剤があるが、HNSのような極性の強いニトロ化合物に対する良溶媒と、水など貧溶媒からなる系では、カチオン系高分子凝集剤が極めて凝集効果が高く望ましい。
【0055】
ここで、図3のグラフについて説明する。
図3は、界面活性剤のHLB値と微細粒子の比表面積との関係図(HNSの比表面積データ)である。
グラフ1は、後述する実施例3の方法を用いて行ったもので、HNS−2の良溶媒であるDMFにHLB値の異なる3種類(HLB値がそれぞれ、4.3,9.5,15.0)の界面活性剤を添加し、得られたHNSの比表面積データである。また、GF75のフイルタで回収できない微細粒子化された混合溶液については、フラスコ内に得られた混合液に強カチオン系の高分子凝集剤を添加し回収して粒子の比表面積を計測した。
グラフ2(破線)は、比較例3の方法を用いて行ったもので、貧溶媒である水にHLB値の異なる3種類(HLB値がそれぞれ、4.3,9.5,15.0)の界面活性剤を添加して得られたHNSの比表面積データである。
これらのグラフから、比表面積はHLB値が大きくなるに従い、大きくなっているのが分かる。また、グラフには明示されていないが、良溶媒に添加したほうが微粒子化されやすいことも分かった。
【0056】
図4の写真について説明する。
図4の写真は、実施例5により回収されたHNS−4の多孔質凝集体粒子で、5000倍の顕微鏡による写真である。
これによると、不定形であるが、大部分の多くの粒子が1μm以下の微細粒子であり、それらが互いに凝集(結合)して、3〜10μmと大きな多孔質凝集体粒子となっているのが分かる。
【0057】
図5の写真は、従来法により回収されたHNS−4微細粒子で、主として、柱状結晶が多く、小さいもので1μm以下のものも見えるが、大部分多くは2〜3μmである。
【0058】
次に、本発明の実施例を挙げて具体的に説明する。
【実施例1】
図1に示す装置Aを用いた。
先ず、HNS−21.92gを天秤で正確に秤量して三口フラスコ1に入れる。次に良溶媒であるジメチルフォルムアミド(以下DMF)430mlをメスシリンダーで計量して三口フラスコ1に入れる。その後、ホットスターラ4の上で図示しない攪拌機により三口フラスコ1内をゆっくり攪拌しながら加熱溶解してHNS溶解溶液8とする。
一方、貧溶媒である水9を430mlメスシリンダーで計量して、冷媒槽10(アイスバス)の中に配設した三口フラスコ2の中に入れ、冷却する。
ここで、ホットスターラ4上に載置した三口フラスコ1内のHNS溶解溶液が液温122℃まで達し、また、三口フラスコ2内の貧溶媒である水9が冷媒槽10により5℃程度に冷却されたら、流量弁7aと7bを操作し窒素ガスを500ml/minの流量で、三口フラスコ1と三口フラスコ2へ圧送する。
そして、圧送された窒素ガスにより、HNS溶解溶液と貧溶媒は各細管11,12からマイクロリアクター方式の混和部13へ送られ、フラスコ3の中に定量滴下する。その際、混和部13にはHNS溶解溶液が通過する細径流路部と貧溶媒が通過する細径流路部が設けられており、これら両液体が前記各細径流路の交わり部で連続的に接触・混合して、混合液となってフラスコ3内に回収される。
【0059】
その後、フラスコ3内に得られた混合溶液を攪拌機5で30分間攪拌した後、図示しない洗浄、濾過を行い、微細粒子化されたHNS−4を1.43g得た。
このとき得られるHNS−4の比表面積は10.9m2/g、平均粒子サイズは1.3μmであった。
ここに、本実施例で得られたHNS−4の比表面積データを表2に示す。
【0060】
【実施例2】
図1に示す装置Aを用いて、実施例1と同様の方法であるが、異なるところは、マイクロリアクター方式の混和部13を冷媒で常時2〜3℃になるように調整して冷却したことである。
また、図1に示す混和部13において、実施例1は大気中に設置したのに対して、実施例2では冷浴中に浸して常時低温(2〜3℃)に保持した。
そして、HNS溶解溶液と貧溶媒の両液体を前記マイクロリアクター方式の混和部13で連続的に接触・混合させて、ここから得られた混合液をフラスコ3内に回収した。
【0061】
その後、フラスコ3内に回収した混合液を攪拌機5で30分間攪拌した後に、図示しない洗浄および濾過を行い、微細粒子化されたHNS−4を1.41g得た。
このとき得られたHNS−4の比表面積は11.1m2/g、平均粒子サイズは0.9μmであった。
【0062】
【実施例3】
図2に示す装置Bを用いた。
先ず、良溶媒であるDMF430mlをメスシリンダーで計量し三口フラスコ31に入れる。次に、表1のHLB値9.7の非イオン系界面活性剤10ppmを三口フラスコ31に入れ、図示しない攪拌機で攪拌しながら分散させる。
その後、HNS−21.92gを正確に秤量して三口フラスコ31に入れ、ホットスターラ33の上で図示しない攪拌機で攪拌を行いながらHNS−2を加熱溶解させてHNS溶解溶液34を得る。
一方、貧溶媒である水36を400mlメスシリンダーにて計量し、これを冷媒槽37の中に配設したフラスコ32に入れて、攪拌機38で攪拌しながら冷却する。
そして、前記ホットスターラ33上の三口フラスコ31の中のHNS溶解溶液34の温度が122℃まで達し、また、前記冷媒槽中のフラスコ32の中の貧溶媒36の温度が約3℃に冷却されたら、流量弁40を操作し窒素ガスを500ml/minの流量で三口フラスコ31へ圧送する。
そして、圧送された窒素ガスにより、HNS溶解溶液34が細管35を経由して冷却貧溶媒36へ滴下する。
こうして得られた混合液をフラスコ32の中へ回収した。
【0063】
その後、フラスコ32中の混合液を攪拌機38で30分間攪拌した後に、図示しない洗浄、濾過を行い、微細粒子化されたHNS−4を得ようとするが、これまでと同じ方法で濾過分離(目開き0.3μmのガラスフィルターGF75による)を試みても0.1gしか回収できず、比表面積を測るに必要な0.5gの試料を確保することができなかった。
そこで、電子顕微鏡観察により、微細粒子径を観察したところ粒子サイズは約0.4μm以下と極めて小さい微細粒子化合火薬類を確認した。
【0064】
【実施例4】
図2に示す装置Bを用いて、実施例3と同様の方法であるが、異なるところは界面活性剤を替えたことで、三口フラスコ31の中に、表1のHLB値15.2の非イオン系界面活性剤10ppmを添加した。
【0065】
実施例3と同様に、得られたフラスコ32中の混合液を攪拌機38で30分間攪拌した後、図示しない洗浄および濾過を行ったが、これまでと同じ濾紙による濾過分離(ガラスフィルターGF75による)にも拘わらず、殆ど回収できず、比表面積を計測することはできなかった。
しかし、濾紙全体がやや淡黄色に着色し、濾紙の目に僅か付着していた粒子を電子顕微鏡により観察したところ、粒子サイズは非常に小さな0.3μm程度の微細粒子化合火薬類を確認した。
【0066】
そこで、上記フラスコ32の中で得られた混合液を、表1におけるアニオン系、カチオン系、ノニオン系等の各種高分子凝集剤それぞれ2.7ppmずつ添加して、液相を数時間観察したところ、カチオン系凝集剤、中でも強カチオン系凝集剤で明瞭な凝集効果が認められた。
また、凝集剤は、混合液に添加しても、または、良溶媒中或いは貧溶媒中のいずれかに添加しても良いことが分かった。
【0067】
【実施例5】
図2に示す装置Bを用いて、実施例4と同様の方法であるが、異なるところは、フラスコ32中の貧溶媒36に、表1の強カチオン系凝集剤を2.7ppmをさらに添加したことと、ホットスターラ33上にある三口フラスコ31の中のHNS溶解溶液34の温度を121℃にしたことである。
【0068】
こうして、得られたフラスコ32内の混合液を攪拌機38で30分間攪拌した後に、図示しない洗浄および濾過を行い、微細粒子化されたHNS−4を1.69g得た。
このとき得られたHNS−4の比表面積は12.9m2/g、平均粒子サイズは4.0μmであった。
ここに本実施例で得られたHNS−4の比表面積データを表3に示す。
また、図4に示すように、粒子状態を電子顕微鏡で確認してみると微細粒子がフロック状に結合し固まり状(凝集体粒子)なっていた。
【0069】
【実施例6】
図2に示す装置Bを用いて、実施例5と同様の方法であるが、異なるところは、ホットスターラ33上にある三口フラスコ31中のHNS溶解溶液34の温度を122℃にしたことと、冷媒槽37の中に配設したフラスコ32内の貧溶媒である水9を約4℃に冷却したこと、及び表1の強カチオン系凝集剤2.7ppmを貧溶媒にではなくHNS溶解溶液34と貧溶媒36との混合液に添加したことである。
【0070】
こうして、得られたフラスコ内の混合液を攪拌機38で30分間攪拌した後に、図示しない洗浄および濾過を行い、微細粒子化されたHNS−4を1.71g得た。
このとき得られたHNS−4の比表面積は13.2m2/g、平均粒子サイズは4.2μmであった。
【0071】
【実施例7】
図1に示す装置Aを用いて、実施例1と同様の方法であるが、異なるところは、冷媒槽10に配設されたフラスコ2中の冷却貧溶媒に、表1のHLB値9.7の非イオン系界面活性剤10ppmとカチオン系凝集剤を5ppmとをさらに添加したことである。
【0072】
そして、HNS溶解溶液と冷却貧溶媒とを連続的にマイクロリアクター方式の混和部13内に圧送し接触・混合させた溶液をフラスコ3の中に回収した。
こうして、得られたフラスコ3内の混合液を攪拌機5で30分間撹拌した後に、図示しない洗浄および濾過を行い、微細粒子化されたHNS−4を1.49g得た。
このとき得られたHNS−4の比表面積は12.6m2/g、平均粒子サイズは4.7μmであった。
【0073】
【実施例8】
図1に示す装置Aを用いて、実施例1と同様の方法であるが、異なるところは、冷媒槽10に配設されたフラスコ2中の冷却貧溶媒9に、更にHLB値4.3の非イオン系界面活性剤10ppmを添加したことである。
【0074】
こうして、得られたフラスコ3内の混合液を攪拌機38で30分間攪拌した後に、図示しない洗浄および濾過を行い、微細粒子化されたHNS−4を1.17g得た。
このとき得られるHNS−4の比表面積は10.7m2/g、平均粒子サイズは1.4μmであった。
【0075】
【実施例9】
図1に示す装置Aを用いて、実施例1と同様の方法であるが、異なるところは、冷媒槽10に配設されたフラスコ2中の冷却貧溶媒9に、更に表1のカチオン系凝集剤を3ppm添加したことである。
【0076】
こうして、得られたフラスコ3内の混合液を攪拌機38で30分間で攪拌した後に、図示しない洗浄および濾過を行い、微細粒子化されたHNS−4を1.46g得た。
このとき得られたHNS−4の比表面積は13.6m2/g、平均粒子サイズは3.5μmであった。
【0077】
【実施例10】
図2に示す装置Bを用いた。
先ず、良溶媒であるDMF430mlをメスシリンダーで計量し三口フラスコ31に入れる。次に、表1のHLB値15.2の非イオン系界面活性剤10ppmを三口フラスコ31に入れ、図示しない攪拌機で攪拌しながら分散させる。
その後、HNS−21.92gを正確に秤量して三口フラスコ31に入れ、ホットスターラ33の上で図示しない攪拌機で攪拌を行いながらHNS−2を加熱溶解させてHNS溶解溶液34を得る。
一方、貧溶媒である水36を400mlメスシリンダーにて計量し、これを冷媒槽37の中に配設したフラスコ32の中に入れて、攪拌機38で攪拌しながら冷却する。
そして、前記ホットスターラ33上の三口フラスコ31中のHNS溶解溶液34の温度が122℃まで達し、また、前記冷媒槽中のフラスコ32中の貧溶媒である水36の温度が約3℃に冷却されたら、流量弁40を操作し窒素ガスを500ml/minの流量で三口フラスコ31へ圧送する。
そして、圧送された窒素ガスにより、HNS溶解溶液34が細管35を経由して冷却貧溶媒36へ滴下する。
こうして得られた混合液をフラスコ32の中へ回収した。
【0078】
その後、回収したフラスコ32の中の混合液に、強カチオン系高分子凝集剤を0.27ppm添加した。
こうして、得られたフラスコ32内の混合液を攪拌機38で30分間攪拌した後、図示しない洗浄および濾過を行い、微細粒子化されたHNS−4を得た。
このとき得られたHNS−4は、回収量が濾紙に付着する程度の非常に微量で、殆ど回収できず、使用した濾紙はHNS−4の淡黄色に着色していた。
このことは、凝集剤の添加量が0.20ppmと少ないためと思われる。
したがって、比表面積を計測することはできなかったが、濾紙の目に付着していたHNS−4の電子顕微鏡による観察では粒子サイズは約0.4μm程度の微細粒子化合火薬類を確認した。
【0079】
次に、比較例について説明する。
比較例1〜5では、図2に示す装置Bを用いた。
【比較例1】
先ず、良溶媒であるDMF430mlをメスシリンダーで計量し三口フラスコ31に入れる。次に、HNS−21.92gを天秤で正確に秤量して三口フラスコ31に入れる。
その後、ホットスターラ33の上で図示しない攪拌機で攪拌を行いながらHNS−2を加熱溶解させてHNS溶解溶液34を得る。
一方、貧溶媒である水36を400mlメスシリンダーにて計量し、これを冷媒槽37の中に配設したフラスコ32の中に入れて、攪拌機38で攪拌しながら冷却する。
そして、前記ホットスターラ33上の三口フラスコ31中のHNS溶解溶液34の温度が約120℃まで達し、また、前記冷媒槽中のフラスコ32中の貧溶媒である水36の温度が約3℃に冷却されたら、流量弁40を操作し窒素ガスを500ml/minの流量で三口フラスコ31へ圧送する。
そして、圧送された窒素ガスにより、HNS溶解溶液34が細管35を経由して冷却貧溶媒36へ滴下する。
こうして得られた混合液をフラスコ32の中へ回収した。
【0080】
その後、フラスコ32中の混合液を攪拌機38で30分間攪拌した後、図示しない洗浄および濾過を行い、微細粒子化されたHNS−4を1.15g得た。
このとき得られたHNS−4の比表面積は9.8m2/gであった。
この方法を数回繰り返してみた。その結果、回収されたHNS−4の比表面積は平均10.2m2/g(標準偏差0.42m2/g)であったが、粒子サイズが概ね1〜20μmであった。
このように比表面積は実施例に比して小さく、粒子サイズのバラツキが大きいものであった。
【0081】
【比較例2】
比較例1と同様の方法であるが、異なるところは、三口フラスコ31の中に、さらに、表1のHLB値4.3の非イオン系界面活性剤10ppmを添加混合することである。
【0082】
こうして、得られたフラスコ32中の混合液を攪拌機38で30分間攪拌した後、図示しない洗浄および濾過を行い、微細粒子化されたHNS−4を1.12g得た。このHNS−4の比表面積は9.3m2/g、平均粒子サイズは3.0μmであった。
【0083】
【比較例3】
先ず、良溶媒であるDMF430mlをメスシリンダーで計量し三口フラスコ31に入れる。次に、HNS−21.92gを天秤で正確に秤量して三口フラスコ31に入れる。その後、ホットスターラ33の上で図示しない攪拌機で攪拌を行いながらHNS−2を加熱溶解させてHNS溶解溶液34を得る。
一方、貧溶媒である水36を400mlメスシリンダーにて計量し、これを冷媒槽37の中に配設したフラスコ32の中に入れる。そして、この貧溶媒である水36の中に表1のHLB値4.3の非イオン系界面活性剤10ppmを添加し、攪拌機38で攪拌しながら冷却し冷却貧溶媒とする。
そして、前記ホットスターラ上の三口フラスコ31中のHNS溶解溶液34の温度が約120℃まで達し、また、前記冷媒槽中のフラスコ32中の冷却貧溶媒36の温度が約4℃に冷却されたら、流量弁40を操作し窒素ガスを500ml/minの流量で三口フラスコ31へ圧送する。
そして、圧送された窒素ガスにより、HNS溶解溶液34が細管35を経由して冷却貧溶媒36へ滴下する。
こうして得られた混合液をフラスコ32の中へ回収した。
【0084】
その後、得られた混合液を攪拌機38で30分間攪拌した後に、図示しない洗浄および濾過を行い、微細粒子化されたHNS−4を1.12g得た。
このHNS−4の比表面積は8.7m2/g、平均粒子サイズは3.3μmであった。
【0085】
【比較例4】
先ず、良溶媒であるDMF430mlをメスシリンダーで計量し三口フラスコ31に入れる。
次に、表1のHLB値9.5の非イオン系界面活性剤3ppmとHNS−21.92gとを、それぞれ天秤で正確に秤量して三口フラスコ31に入れる。
その後、ホットスターラ33の上で図示しない攪拌機で攪拌を行いながらHNS−2を加熱溶解させてHNS溶解溶液34を得る。
一方、貧溶媒である水36を400mlメスシリンダーにて計量し、これを冷媒槽37の中に配設したフラスコ32の中に入れて、攪拌機38で攪拌しながら冷却する。
そして、前記ホットスターラ33上の三口フラスコ31中のHNS溶解溶液34の温度が約122℃まで達し、また、前記冷媒槽中のフラスコ32中の貧溶媒である水36の温度が約4℃に冷却されたら、流量弁40を操作し窒素ガスを500ml/minの流量で三口フラスコ31へ圧送する。
そして、圧送された窒素ガスにより、HNS溶解溶液34が細管35を経由して冷却した貧溶媒36へ滴下する。
こうして得られた混合液をフラスコ32の中へ回収した。
【0086】
次に、得られた混合液を攪拌機38で30分間攪拌した後に、図示しない洗浄および濾過を行い、微細粒子化されたHNS−4を1.10g得た。
このHNS−4の比表面積は9.5m2/g、平均粒子サイズは2.6μmであった。
【0087】
【比較例5】
先ず、良溶媒であるDMF430mlをメスシリンダーで計量し三口フラスコ31に入れる。
次いで、HNS−21.92gを天秤で正確に秤量して三口フラスコ31に入れる。
その後、ホットスターラ33の上で図示しない攪拌機で攪拌を行いながらHNS−2を加熱溶解させてHNS溶解溶液34を得る。
一方、貧溶媒である水36を400mlメスシリンダーにて計量し、これを冷媒槽37の中に配設したフラスコ32の中に入れる。そして、この貧溶媒の中に表1のHLB値9.7の非イオン系界面活性剤10ppmを添加し、攪拌機38で攪拌しながら冷却し冷却貧溶媒とする。
そして、前記ホットスターラ33上の三口フラスコ31の中のHNS溶解溶液34の温度が約121℃まで達し、また、前記冷媒槽中のフラスコ32中の貧溶媒36の温度が約5℃に冷却されたら、流量弁40を操作し窒素ガスを500ml/minの流量で三口フラスコ31へ圧送する。
そして、圧送された窒素ガスにより、HNS溶解溶液34が細管35を経由して冷却貧溶媒36へ滴下する。
こうして得られた混合液をフラスコ32の中へ回収した。
【0088】
次に、得られた混合液を攪拌機38で30分間攪拌した後に、図示しない洗浄および濾過を行い、微細粒子化されたHNS−4を1.18g得た。
このHNS−4の比表面積は9.8m2/g、平均粒子サイズは3.0μmであった
。
【0089】
【表1】
(注1:非イオン系界面活性剤:ノニオンは日本油脂株式会社製。他は花王株式会社製。)
(注2:高分子凝集剤:ダイヤニトリックス株式会社製。)
【表2】
【表3】
【0090】
【発明の効果】
本発明は、化合火薬類の微細粒子化に機械的エネルギーを必要とせず、少量の化合火薬類、例えば、HNS−2等を出発物質として、極めて安価な実験的機器の装置のみで、容易かつ安定的に微細粒子化を達成することが可能となる。
【0091】
また、本発明は、化合火薬類、例えば、HNS−4等をきわめて微細な粒子に析出・維持することの出来る界面活性剤を有効に用いることと、この微細な粒子を維持したまま、多孔質凝集体粒子に処理することのできる凝集剤によって、微細粒子化した多孔質凝集体状の化合火薬類、例えば、HNS−4等を得ることが可能となる。
言い換えると、比表面積を大きくしながら粒子サイズも大きいという二律背反的な物性を持った化合火薬類、例えば、HNS−4が得られる。
【0092】
また、本発明は、凝集体に処理することにより、比表面積の十分に大きな微細粒子を効率よく回収でき、濾過分離の大幅工数低減と収率が大きく向上した。
【図面の簡単な説明】
【図1】化合火薬類の溶解溶液と貧溶媒とを連続的に接触・混合し混合液を得るための装置Aの概要図である。
【図2】化合火薬類の溶解溶液を貧溶媒中に滴下し混合液を得るための装置Bの概要図である。
【図3】界面活性剤を用いて得られたHNS−4の比表面積データを示すグラフである。
【図4】微細粒子が多孔質凝集体を形成したHNS−4の粒子サイズの状況を示す顕微鏡写真である。
【図5】従来法により回収されたHNS微細粒子の顕微鏡写真である。
【符号の説明】
1,2,31 三口フラスコ
3,32 フラスコ
4,33 ホットスターラ
5,38 攪拌機
6,39 窒素ガスボンベ
7a,7b,40 流量弁
8,34 HNS溶解溶液
9,36 貧溶媒
10,37 冷媒槽
11,12,35 細管
13 マイクロリアクター方式の混和部
14,15,41 チューブ
A 第一実施形態に係る装置
B 第二実施形態に係る装置
Claims (19)
- 微細粒子化合火薬類より成る多孔質凝集体粒子であることを特徴とする化合火薬類。
- 前記微細粒子化合火薬類は、粒径5μm以下であることを特徴とする請求項1記載の化合火薬類。
- 前記微細粒子化合火薬類は、比表面積が10m2/g〜30m2/gであることを特徴とする請求項2記載の化合火薬類。
- 前記多孔質凝集体粒子は、平均粒子1μm〜20μmであることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項記載の化合火薬類。
- 前記多孔質凝集体粒子は、凝集剤を含むことを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項記載の化合火薬類。
- 前記凝集剤は、高分子凝集剤であることを特徴とする請求項5記載の化合火薬類。
- 前記高分子凝集剤は、カチオン系高分子凝集剤であることを特徴とする請求項6記載の化合火薬類。
- 前記微細粒子化合火薬類は、界面活性剤を含むことを特徴とする請求項1乃至7のいずれか1項記載の化合火薬類。
- 前記界面活性剤は、非イオン系界面活性剤であることを特徴とする請求項8記載の化合火薬類。
- 前記非イオン系界面活性剤は、HLB値が9〜20であることを特徴とする請求項9記載の化合火薬類。
- 化合火薬類及び良溶媒からなる溶液と貧溶媒とを混和部に比例注入し、連続的に接触及び混合させて均一な大きさの微細粒子化合火薬類を得ることを特徴とする化合火薬類の製造方法。
- 化合火薬類、良溶媒及び界面活性剤からなる溶液と貧溶媒とを混和部に比例注入し、連続的に接触及び混合させて均一な大きさの微細粒子化合火薬類を得ることを特徴とする化合火薬類の製造方法。
- 前記混和部は、平均有効径1mm以下の流路からなるマイクロリアクターを用いることを特徴とする請求項11または請求項12記載の化合火薬類の製造方法。
- 化合火薬類、良溶媒及び界面活性剤からなる溶液と貧溶媒とを混合する過程において、前記溶液を貧溶媒に所定の流量をもって滴下し微細粒子化合火薬類を得ることを特徴とする化合火薬類の製造方法。
- 前記界面活性剤は、非イオン系界面活性剤であることを特徴とする請求項12または請求項14記載の化合火薬類の製造方法。
- 前記非イオン系界面活性剤は、HLB値が9〜20であることを特徴とする請求項15記載の化合火薬類の製造方法
- 請求項11乃至16記載のいずれか1項記載の化合火薬類の製造方法の製造過程において、さらに、前記貧溶媒に凝集剤を添加し前記溶液とを撹拌混合して多孔質凝集体粒子と成すことを特徴とする化合火薬類の製造方法。
- 前記凝集剤は、高分子凝集剤であることを特徴とする請求項17記載の化合火薬類の製造方法。
- 前記高分子凝集剤は、カチオン系高分子凝集剤であることを特徴とする請求項18記載の化合火薬類の製造方法。
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Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
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CN115160090A (zh) * | 2022-07-06 | 2022-10-11 | 西安近代化学研究所 | 一种基于微流控技术的hmx超细化制备方法及制备系统 |
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