JP2004223907A - 筆記具用芯材 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】分子量が100万以上の超高分子量低圧重合ポリエチレン(PE)で、粒径20〜250μm、嵩密度0.2〜0.5g/cm3のPE粉粒体を燒結してなる先端が閉止された筒形状の燒結芯と先端部が該燒結芯内に挿入し得る形状を有する繊維芯とからなることを特徴とする筆記具用芯材。1は燒結芯、2は中継芯、8はペン軸、81はペン軸に設けた空気孔、9はキャップ、10はインク保持用の中芯を示す。
【選択図】 図5
Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、サインペンなどと呼ばれる筆記具等に使用される芯材に関するものである。更に詳しくは、芯先がつぶれることがなく、インクのかすれがなく、種々のタイプのインクの使用が可能で、且つ線幅の変化の少ない、書き味の優れた芯材に関する。
【0002】
【従来の技術】
サインペン、筆ペン、マーキングペン等の筆記具用芯材としては、ポリエステル、ナイロン、アクリル樹脂等のプラスチック繊維の短繊維スライバーにメラミン樹脂、エポキシ樹脂等の熱硬化性樹脂を含浸し、圧縮・加熱して、熱硬化性樹脂を硬化させて繊維集合体としたもの(特許文献1)とか、熱融着性複合繊維を含む繊維集合物を加熱融着させて繊維集合体としたもの(特許文献2)等が知られている。
【0003】
従来の芯材の多くは上記のとおり複合繊維の集合体であるため、繊維の長さや繊維の引き揃え方向、熱融着性繊維の融点の選択または熱接着性樹脂の選択等によって、得られる繊維集合体の結合度合や硬さなどが異なり、また、インキの流れなどが異なってくる。特に繊維の集合体では、長期間または筆圧を強くして使用すると、芯先の繊維の結合がほぐれたり潰れたりして、そのため線幅が太くなったり文字がかすれるなどの問題が生じていた。また、繊維の結合時に熱接着性樹脂や熱硬化性樹脂モノマーなどを使用した芯材では、使用中に未反応物や繊維に結合しなかった硬化樹脂の微粒子が芯材の先端部に集まり、インクを詰まらせるなどの現象が生じていた。
【0004】
上記繊維集合体からなる繊維芯とは別に、ポリエチレンなどのプラスチック粉粒体を燒結等の手段によって結合したもの、例えば、空孔径20〜200μm、空隙率50%前後の燒結体も芯材として知られているが(特許文献3)、繊維芯に比べて、特に、水性顔料インクでの追従性が劣り、また、筆記中の筆圧により材料粒子が燒結体の空孔部に容易に押し込まれた状態となり、ペン芯の筆記接触部表面は見掛け上、磨かれた金属表面のような光沢を帯び、インクの流出が阻害され、最終的には筆記不能に陥る場合がしばしば見られた。
【0005】
【特許文献1】
特公昭44−30649号公報
【特許文献2】
特公昭54−688号公報
【特許文献3】
特公昭57−41497号公報(第1表)
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上記従来の問題点を解決するためのもので、長期間使用しても線幅の変化やインクのかすれのない筆記具用芯材及び該芯材を用いた筆記具を提供せんとするものである。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明の筆記具用芯材は、芯先端部を構成するカップ状(有底筒体状)の燒結芯と該燒結芯内への挿入部を備えた繊維集合体からなる中継芯とからなることを特徴とするものである。
更に詳しくは、本発明の燒結芯は、分子量100万以上の超高分子量ポリエチレンの粉粒体の燒結体よりなるものである。
本発明は、また、顔料インク用芯材に関するものであり、更にまた、該芯材を備えた顔料インク用筆記具等の塗付具に関するものである。
【0008】
【発明の実施の形態】
本発明の燒結芯に用いるポリエチレンは、分子量100万以上、好ましくは100万台(粘度法による)の超高分子量ポリエチレンで、特に低圧重合法によるポリエチレンが好ましい。低圧重合法による超高分子量ポリエチレンは、高圧及び中圧重合法によるポリエチレンに比べて、無極性度合が強く、硬度が高く、均質なものが得られることから好ましい。燒結用粉粒体としては、形状は特に限定されないが、好ましくは連珠状ないし球状又は楕円状で、表面形状はバルキー(嵩だか)なものがより好ましく、嵩密度0.2〜0.5g/cm3、好ましくは0.2〜0.25g/cm3、粒径20〜250μmの超高分子ポリエチレンを用いる。より詳しくは、粒径65μm以下のものが25%以下、65μm以上が25〜45%、125μm以上のものが30〜50%のものが好ましい。しかし、ポリエチレン粉粒体は、目的に応じて、ポリエチレン重合物の粉砕物を上記の嵩密度及び粒度範囲に篩別・整粒したものであってもよい。
【0009】
燒結芯の成形は、ポリエチレンの粉粒体を所望のペン芯形状のキャビティを有する金型(雌型)に常圧で充填し、雄金型で閉じ、常法にしたがって加熱して燒結する。
ポリエチレン粉粒体は、必要ならば、燒結前にアニール処理してもよく、また、上記範囲内で分子量の異なる粉粒体と混合してもよい。
燒結芯の形状は、通常の事務用筆記具のペンの先端部として使用する場合には、先端が半球状や砲弾型に閉じた中空の円筒体に成形するが、フェルトペン等のホワイトボード用等に使用する場合又はアイライン用等化粧品の塗布具として用いる場合には、外形形状は、これらの分野で従来用いられる芯材と同様な形状、例えば、チーゼル形(斧形)、箱形、円錐形、角錐形、截頭円錐又は角錐形等としてもよい。燒結体の先端部(塗布部)表面は、凹凸面とするとよく、バルキー状の凹凸面とするとよりよい。
【0010】
本発明で使用する中継芯は、特に限定されることなく従来知られている繊維芯を使用することができ、例えば、ナイロン、ポリエステル、アクリル等の適当な長さの繊維の繊維集合体からなるものなどが挙げられる。
中継芯の形状は、先端部が燒結芯の中空部に挿入できる径(太さ)とするが、その他の部分の径は任意の太さのロッド(棒状)に成形してよい。したがって、先端部とその後の部分が同一形でもよく、段付き棒形でもよい。
中継芯は、直接筆圧がかかるものではないので、特に強度にこだわることはないが、燒結芯を補強できる程度の強度のものが好ましく、燒結芯へのインクの供給を目的として空隙率を大きくすることもできる。
【0011】
本発明の芯材は、燒結芯と中継芯とで構成し、燒結芯を超高分子量ポリエチレンで構成したため、インクの芯先への浸透性が良好で、そのため従来の水溶性染料、油溶性染料によるインクのほかに、顔料インクも使用できる。顔料インクとしては、有機顔料、無機顔料のいずれによるものにも使用できるが、この種の筆記具用インクで使用される有機顔料による顔料インクが好ましく、特に水性顔料インクに対して好ましい結果を与える。
【0012】
【実施例】
以下本発明を実施例によって説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0013】
実施例1 燒結芯の製造
1.材料
超高分子量低圧法ポリエチレン(平均分子量:100万台、粘度法)として、Hostalen GUR2122(ドイツヘキスト社製)の粒径20〜250μ、嵩密度0.2〜0.25g/cm3の粉粒体を用いた。
2.製造方法
上記ポリエチレン粉粒体を、120℃で4時間アニール処理した後、篩別して40メッシュ通過のものを得た。篩別して得た粉粒体を図4に示す金型(雌型)のキャビティ内に充填した。本例の場合、金型は金型本体3と下蓋4とで雌型が構成され、これによって構成されるキャビティ6内に粉粒体7を充填し、上蓋5をした後、常法にしたがって電気炉内で160℃で8分加熱して燒結した。
なお、粉粒体充填時には、金型は振動器で振動して、粉粒体が均一にキャビティ6内に充填されるようにする。
燒結後、金型を冷却し、燒結芯を取り出す。このようにして、図2に示す寸法・形状の燒結芯1を作成した。図2中、本例の場合、燒結芯1は、L1=6mm、L2=9mm、D1=9.5mm、D2=8mm、D3=5mm、T=2〜10mm。中継芯2は、L3=13〜5mm、L4=Xmm、D4=8mm、D5=5mm。中継芯2の長さL4(X)は用途に応じて任意の長さに選択される。
【0014】
3.燒結芯の成形条件
上記製造方法において、篩のメッシュ数を変えて、すなわち材料粉体の粉粒度を種々変えて、金型セット時の上蓋5による材料押込み寸法と得られた燒結芯の先端肉厚の関係について表1に示す。
なお、表1中の実施例1〜3は、燒結芯1の先端の厚さTを3、5、10mmに変更したときの「初期インク流れ」の状態を見るために、上蓋5と下蓋4のロッド41の先端との間の距離を大きくして圧粉成形し、燒結した。実施例4と5は、上蓋5と下蓋4のロッド41の先端との距離を実施例1と同じくし、上蓋5の押し込み量を大きくして圧粉成形し、燒結して、燒結体密度(空孔率)と「初期インク流れ」の関係を見た(表2参照)。
【0015】
【表1】
表中のペン芯先端部肉厚は、図1に符号11で示すペン芯(燒結芯1)の先端部位の部分の厚さTを示す。
【0016】
4.各実施例による燒結芯の物性
各実施例による燒結芯の物性の比較結果を表2に示す。表中のインク流れ及び書き味は、実施例1〜5は図1に示すように燒結芯1に中継繊維芯2をセットして用い、市販芯はポリエチレン燒結体のみからなる芯を用いた。
【表2】
初期インク濡れ性は、インクとして水性黒色顔料を含むインクを用いて紙面に文字及び直線を記載したときのインクの着色状態(付き具合)を目視で判定した。書き味は,通常の筆圧で記載したときの書き手の感触を示す。
【0017】
5.まとめ
(1)形状並びに成形条件
本発明の芯材は、上記簡易筆記試験結果から、基材とする粉粒体の材料物性(嵩密度、分子量、粒径、粒子表面状態)が筆記性能に影響を与えることは勿論のことと考えられるが、これ以外に、インク流れに影響する要因として、燒結芯の形状,、すなわち、中空形状としたこと、先端部を厚肉としたこと及び金型充填後の粉体プレス寸法(上蓋押し込み量)等も影響するものと考えられる。
一般的に,空隙率の高い燒結芯は強度不足となり、通常筆圧(100〜500g)には耐えられないが、本発明芯材は中空燒結芯に強度補強並びにインク追従性向上を目的とした中継芯を併用したことにより、筆圧にも耐えられインクの流れも良好である。
燒結芯の先端部の肉厚部は、毛管機構が繊維芯の様な直線的毛管とならず、屈曲的瓢箪型となるため、肉厚の薄い方がインク移動距離が短くなり、有利となると推測され、上記試験結果から燒結芯先端部肉厚は1〜5mm程度が望ましい。
【0018】
(2)書き込みでの耐目詰まり性
本発明の芯材は、燒結芯を中空とし中継芯を使用したため、燒結芯先端部へのインクの供給がスムーズで、且つ燒結芯先端部を適当な厚さに選択することにより、インクの目詰まりを容易に防止することができる。更に、必要に応じて、燒結芯先端部11の表面形状を図3に示すように凹凸形状とすることにより、書き込みでの目詰まりをより改善することができる。詳細なメカニズムは不明であるが、筆記抵抗の軽減により、材料粒子が空孔部に押し込まれ難くなるためと思われる。表面凹凸の形成は、燒結後芯頭部を加工する等の方法によってもよいが、粉粒体として粉砕材料を使用するとか、燒結条件を選択することによって形成することもできる。
【0019】
(3)インクとの適応性
従来の燒結芯(ポリエチレン燒結芯等)は、芯材全てを燒結体としているため、芯強度との関係から50%前後の空隙率としているが、多様化するインク物性には適応できず、染料系インクに限定されている。本発明の芯材は、中空燒結芯を中継芯が強度のバックアップとインク供給を補助するため、燒結芯の空隙率を高く設定することができ、そのため水性染料系インクは勿論のこと、顔料系、油性ペイント系インク等、広範囲な物性を持つインクに適応することができる。
本発明の燒結芯の空隙率は60〜75%の範囲が好ましいが、これらの範囲は芯サイズ、形状により、また、使用インクよって選択される。
【0020】
本発明の燒結芯は、インクの追従性等を改善するために、必要に応じて、燒結材料である粉粒体を界面活性剤や親水性表面加工剤で加工又はこれらの加工剤等を混合して燒結してもよく、また、燒結後これらの加工剤で処理してもよい。
燒結芯の外形・寸法等は特に限定されないが、好ましくは外径4mm以上が好ましい。中継芯の長さは、特に限定されない。したがって、ペン軸の長さの中央に達する長さ等としてもよい。
図5に本発明の芯材を組み込んだ筆記具の一例を示す。図中、1は燒結芯、2は中継芯、8はペン軸、81はペン軸に設けた空気孔、9はキャップ、10はインク保持用の中芯を示す。
【0021】
【発明の効果】
本発明の芯材は、以上説明したように、中空形状の燒結芯と中継芯とから構成されるため、燒結芯の空隙率を幅広い範囲で選択することができ、燒結芯は外周面でも空孔構成は変わらないため広範囲な筆記角度にも対応することができ、そのため燒結芯の形状も従来の砲弾型は勿論、チーゼル形状等,種々の形状とすることができ、繊維芯では味合うことができない感触であるとともに、ボード、金属、ガラス等の非吸収筆記面へ傷を付けることもない。これらのことから、本発明の芯材は、事務用筆記具に限定されることなく、アイライン用などの化粧品塗布具や染毛剤塗布用、傷薬等の医薬品塗布用など、種々の塗布具の芯材として使用できる。
本発明の芯材は、芯ホルダーに保持させてペン軸に装着してもよく、また直接プラスチック製などのペン軸に装着させて用いてもよい。更には、ペン軸から中継芯を突出させて、この突出させた中継芯に着脱自在に燒結芯を装着させて使用するなど種々の方法で使用することもできる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の燒結芯と中継芯の組み合わせ状態の一例を示す断面図である。
【図2】本発明の燒結芯と中継芯の他の例を示す一部破断側面図である。
【図3】本発明の燒結芯の他の例を示す一部破断側面図である。
【図4】燒結芯の製造金型の一例を示す断面図である。
【図5】本発明の芯材を用いた筆記具の一例を示す一部破断側面図である。
【符号の説明】
1 燒結芯
2 中継ぎ芯
3 金型本体
4 下型
5 上蓋
6 キャビティ
7 粉粒体
8 ペン軸
9 キャップ
Claims (5)
- 分子量が100万以上の超高分子量ポリエチレンの粉粒体を燒結してなる先端が閉止された筒形状の燒結芯と先端部が該燒結芯内に挿入し得る形状を有する繊維芯とからなることを特徴とする筆記具用芯材。
- 超高分子量ポリエチレンが分子量100万台の低圧重合法によるポリエチレンであって、粉粒体が粒径20〜250μm、嵩密度0.2〜0.5g/cm3であることを特徴とする請求項1記載の筆記具用芯材。
- 芯材が、顔料インク用であることを特徴とする請求項1又は2記載の筆記具用芯材。
- 請求項1記載の芯材を備えたことを特徴とする顔料インク用筆記具。
- 請求項1記載の芯材を備えたことを特徴とする化粧品用塗布具。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
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JP2003014962A JP2004223907A (ja) | 2003-01-23 | 2003-01-23 | 筆記具用芯材 |
Applications Claiming Priority (1)
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JP2003014962A JP2004223907A (ja) | 2003-01-23 | 2003-01-23 | 筆記具用芯材 |
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JP2004223907A true JP2004223907A (ja) | 2004-08-12 |
Family
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JP2003014962A Pending JP2004223907A (ja) | 2003-01-23 | 2003-01-23 | 筆記具用芯材 |
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Country | Link |
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Cited By (4)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
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KR100805959B1 (ko) | 2006-03-27 | 2008-02-25 | 오남영 | 마커 펜 |
CN103754004A (zh) * | 2014-01-23 | 2014-04-30 | 浙江奥捷实业有限公司 | 一种腈纶纤维笔头的制备方法 |
EP2889153A1 (en) * | 2013-12-27 | 2015-07-01 | Tsukasa Felt Shoji Co., Ltd. | Tip body, applicator, and method for making the same |
JP2017013464A (ja) * | 2015-07-06 | 2017-01-19 | 司フエルト商事株式会社 | 穂先体及びその製造方法 |
-
2003
- 2003-01-23 JP JP2003014962A patent/JP2004223907A/ja active Pending
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