JP2004223593A - 2軸加工機の加工計画方法及び装置 - Google Patents
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Abstract
【課題】2軸加工機の非停止制御加工を効率的且つ迅速に行なえる加工計画方法を提供する。
【解決手段】共通の発振器から発振されたビームを分割し、低速位置決め手段と高速位置決め手段を同時に動作させて加工する、各一対の加工矩形の加工時間が最小となるように、加工又はダンパ位置の訪問順序対、並びに、前記低速位置決め手段の動作速度を決定する。一対の同時加工矩形内における加工位置が同一の場合は、一方の加工矩形のみについて、加工時間が最小となるように加工位置訪問順序並びに低速位置決め手段動作速度を決定する。
【選択図】 図11
【解決手段】共通の発振器から発振されたビームを分割し、低速位置決め手段と高速位置決め手段を同時に動作させて加工する、各一対の加工矩形の加工時間が最小となるように、加工又はダンパ位置の訪問順序対、並びに、前記低速位置決め手段の動作速度を決定する。一対の同時加工矩形内における加工位置が同一の場合は、一方の加工矩形のみについて、加工時間が最小となるように加工位置訪問順序並びに低速位置決め手段動作速度を決定する。
【選択図】 図11
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、共通の発振器から発振されたビームを分割して2つの加工ヘッドに供給し、ワーク上の加工実行箇所を広範囲に移動させることが可能な低速位置決め手段と、所定の大きさの加工エリア内に移動させることが可能な高速位置決め手段を同時に動作させながら、ワーク上に散在する複数の加工位置を、各加工ヘッドに対応して設定した加工矩形毎に同時加工する際の2軸加工機の加工計画方法及び装置に係り、特に、レーザビームを照射してプリント配線基板等に複数の穴開け加工を行なうレーザ穴開け機に用いるのに好適な、穴開け等の加工位置を2次元平面における分布状態を数学的に捉えて、XYステージ等の低速位置決め手段の速度、加速度、軌道やガルバノスキャナ等の高速位置決め手段の穴開け位置訪問順序等の機器の動作を効率良く計画することが可能な、2軸加工機の加工計画方法及び装置、該加工計画方法や装置を用いた加工方法及び加工装置、該加工方法を実施するためのコンピュータプログラム、前記加工装置を実現するためのコンピュータプログラム、及び、該コンピュータプログラムが記録された、コンピュータ読取り可能な記録媒体に関する。
【0002】
【従来の技術】
レーザ穴開け機の市場価値の1つに、加工速度がある。加工速度を上げるためには、例えば、ガルバノスキャナ(単にスキャナとも称する)、XYステージ(単にステージとも称する)、レーザを改良する、数学的最適化を適用する、協調制御方式を採る…等といった、いろいろな手段を採ることができるが、それに加えて、ガルバノシステムを2つ取り付けるという効果的な手段を採ることができる。ここでは、ガルバノシステムが2つある加工機を2軸(加工)機と呼ぶ(又、1つのものは1軸機と呼ぶ)。
【0003】
この2軸機には、レーザ発振器の数が1つのものと2つのものがある。発振器が2つのものは装置コストは高くなるが、2つの加工ヘッドに割り当てられた加工位置の加工タイミングを同時にする必要がないため、加工計画は容易である。
【0004】
一方、発振器が1つのものについては、レーザビームをビームスプリッタ、ハーフミラー、偏光ミラー等のスプリッタ光学部品を用いてエネルギ分割するエネルギシェア方式と、音響変調素子(AOM)や電気光学変調素子(EOM)等の高速スイッチング素子を用いて時分割するタイムシェア方式がある。
【0005】
本願が主な対象とするエネルギシェア方式の場合、図1に示す如く共通のレーザ発振器10から発振されたレーザビーム11のエネルギが、ビームスプリッタ等の分岐装置14により半分割される。即ち、加工ヘッドであるZ1軸とZ2軸の2つのガルバノシステム18、20のそれぞれの加工位置への位置決めが共に済む時点を待ってレーザビーム11が出力され、半分のエネルギを持った2本のビーム15、17がそれぞれの軸の加工位置に照射される。図において、6はXYステージ、8は基板、16は反射ミラー、22、24はガルバノ18、20により走査されたビームを基板8の表面に垂直に当てるためのfθレンズである。
【0006】
ここで、基板によっては、左右同一パターンではないために、一方の軸には加工位置があり、他方の軸には加工位置が無いといった状況が生じることがあるが、そのような場合、基板に照射を行なえない軸は、図2に示す如く、加工面上ではスキャンエリア30、32外の位置に対応付けられるビーム遮蔽板(いわゆるビームダンパ、以下では単にダンパと称することもある)と呼ばれるビーム棄て位置26、28に照射できるようにさせるような回避が必要となる。以下では、このように一方の軸の加工位置にのみ照射を行うことを、片撃ちと称す。同様に、両軸とも加工位置への照射を行うことを、両撃ちと称す。図2において、26は左ダンパ、28は右ダンパ、30は左スキャンエリア、32は右スキャンエリアである。
【0007】
このようなエネルギシェアの2軸機において、穴開け位置の配置パターンが同一でない場合は、左右(Z1及びZ2軸)の同時加工を考慮した加工計画があれば、加工高速化が可能となる。発明者は、既に特願2001−331550号で、この点を考慮した加工計画を提案している。例えば段落[0187]、[0188]に記載の、左右のスキャナ走査時間均等化(マッチングと称している)が挙げられる。
【0008】
【特許文献1】
特開2002−1567号公報
【特許文献2】
特開平11−149317号公報
【特許文献3】
WO96/29634号公報
【特許文献4】
WO97/34206号公報
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、この技術は、ステージを停止させてはスキャナによりビームを走査して加工を行なう、いわゆるステップアンドリピート方式のように、加工エリアが加工中に静止しているような場合においてのみ適用できるものであり、ステージを動かしたまま同時にスキャナを動かしてビームを走査する、いわゆる非停止制御方式のように加工エリアが連続的に遷移するような場合には適用できなかった。なお、ダンパを考慮した加工計画に関する先行技術は存在しない。
【0010】
非停止制御に関する先行技術としては、特許文献1に、その図6に示される如く、加工ヘッドをX座標が同一であるように2つ並べ、図7に示される如く、加工中はステージをX方向に動かして加工を行なうことが記載されている。図6の装置構成からレーザ発振器は1台であると判断できるが、ビームの分割方法に関する記載はなく、特にエネルギシェア方式である場合の片撃ち時の対処については何ら記載が無い。
【0011】
又、主にウェハ上のヒューズ切断を用途とする特許文献2には、その図1に示される如く、光源(レーザ発振器)が2つ(31A、31B)有り、エネルギシェア方式のように片撃ちを気にするような装置構成ではなかった。
【0012】
又、非停止制御加工におけるビームの位置決め方法に関しては、特許文献3や特許文献4も提案されているが、これらに関しても、加工ヘッド毎に加工位置配置パターンが異なる場合のエネルギシェア機を用いた加工計画及び加工方法については、何ら記載はない。
【0013】
本発明は、前記従来の問題点を解消するべくなされたもので、2軸加工機の非停止制御に際して、ビームダンプ動作に拘らず、効率的且つ迅速な加工を行なえるようにすることを課題とする。
【0014】
【課題を解決するための手段】
本発明は、共通の発振器から発振されたビームを分割して2つの加工ヘッドに供給し、ワーク上の加工実行箇所を広範囲に移動させることが可能な低速位置決め手段と、所定の大きさの加工エリア内に移動させることが可能な高速位置決め手段を同時に動作させながら、ワーク上に散在する複数の加工位置を、各加工ヘッドに対応して設定した加工矩形毎に同時加工する際の2軸加工機の加工計画方法であって、各一対の同時加工矩形の加工時間が最小となるように、加工又はダンパ位置訪問順序の対、並びに、低速位置決め手段の動作速度を決定するようにして、前記課題を解決したものである。
【0015】
又、前記決定に際して、一対の同時加工矩形内における加工位置の配置が同一の場合は、一方の加工矩形のみについて、加工時間が最小となるように加工位置訪問順序並びに低速位置決め手段動作速度を決定し、他方の加工矩形は結果を参照して加工位置訪問順序を決定するようにしたものである。
【0016】
又、前記決定の工程が、加工又はダンパ位置訪問順序の対を暫定的に決定する、暫定加工シーケンス対発生工程と、該暫定加工シーケンス対に基づいて、加工時間が最小となるように、加工又はダンパ位置訪問順序対、並びに、低速位置決め手段動作速度を決定する、加工シーケンス対の加工時間最小化工程と、を含むようにしたものである。
【0017】
又、前記暫定加工シーケンス対発生工程において、ダンパ移動回数を最小化するようにしたものである。
【0018】
又、前記暫定加工シーケンス対発生工程において、低速位置決め手段動作方向に沿って、穴数又は距離の一定周期毎にダンパ移動を挿入するようにしたものである。
【0019】
又、前記決定に際して、一方の加工矩形のある加工位置と、同時加工される他方の加工矩形のある加工位置とが、同一タイミングで加工可能かどうかの判断を、両加工位置の低速位置決め手段動作方向座標値の差と、加工エリアの該方向における所定の大きさとに基づいて行うようにしたものである。
【0020】
又、前記ダンパ移動回数を最小化する工程が、動的計画法に基づくものであるようにしたものである。
【0021】
又、前記ダンパ移動回数を最小化する工程は、同時加工する双方の加工矩形の加工位置を、低速位置決め手段動作方向座標値でソートして付番する、ソート工程と、加工位置数の少ない一方の加工矩形における各加工位置について、他方の加工矩形における、同一タイミングで加工可能な加工位置の開始番号及び終了番号を記憶する表を作成する、from−to表作成工程と、該from−to表に従って、1の方向への移動が両撃ちシーケンス対であることに、1と異なる2の方向への移動が片撃ちシーケンスであることに対応する2つの方向を有するネットワークを作成する、ネットワーク作成工程と、該ネットワーク上の、移動方向を変える回数を最少とする経路を探索する、曲折数最少経路探索工程と、を含むようにしたものである。
【0022】
又、前記加工シーケンス対の加工時間最小化工程において、片撃ちシーケンスと両撃ちシーケンス対を切り分けて処理するようにしたものである。
【0023】
又、前記加工シーケンス対の加工時間最小化工程は、まず片撃ちシーケンス、又は、両撃ちシーケンス対毎に、加工時間が最小となるように、加工位置訪問順序最適化並びに低速位置決め手段動作速度最大化、又は、加工又はダンパ位置訪問順序対最適化並びに低速位置決め手段動作策度最大化を行い、次いで、加工シーケンス対全体の低速位置決め手段動作速度最大化を行うようにしたものである。
【0024】
又、前記加工シーケンス対の加工時間最小化工程は、まず片撃ちシーケンス、又は、両撃ちシーケンス対毎に、加工時間が最少となるように、加工位置訪問順序最適化並びに低速位置決め手段動作速度最大化、又は、加工又はダンパ位置訪問順序対最適化並びに低速位置決め手段動作速度最大化を行い、次いで加工シーケンス対全体について、加工時間が最小となるように、加工又はダンパ位置訪問順序対、並びに、低速位置決め手段動作速度を改善するようにしたものである。
【0025】
又、前記加工シーケンス対の加工時間最小化工程における近傍操作として、片近傍操作と両近傍操作とを使い分けるようにしたものである。
【0026】
又、前記片近傍操作の結果、ある順位が共にダンパ位置となった場合は、該ダンパ位置を取り除くようにしたものである。
【0027】
本発明は、又、共通の発振器から発振されたビームを分割して2つの加工ヘッドに供給し、ワーク上の加工実行箇所を広範囲に移動させることが可能な低速位置決め手段と、所定寸の加工エリア内に移動させることが可能な高速位置決め手段を同時に動作させながら加工する際の2軸加工機の加工計画方法であって、加工時低速位置決め手段静止方向の辺長が、所定寸の加工エリアの該方向の大きさ以下であり、一対の同時加工矩形の配置間隔が加工ヘッド間の間隔と同一であるような、加工矩形の配置を決定する工程と、各一対の同時加工矩形に対して、加工時間が最小となるように、加工又はダンパ位置訪問順序の対、並びに、低速位置決め手段の動作速度を決定する工程と、低速位置決め手段の動作経路を決定する工程とを含むようにしたものである。
【0028】
本発明は、又、前記の加工計画方法により決定された加工を行なうことを特徴とする加工方法を提供するものである。
【0029】
又、前記の加工計画方法又は加工方法を実施するためのコンピュータプログラムを提供するものである。
【0030】
本発明は、又、共通の発振器から発振されたビームを分割して2つの加工ヘッドに供給し、ワーク上の加工実行箇所を広範囲に移動させることが可能な低速位置決め手段と、所定の大きさの加工エリア内に移動させることが可能な高速位置決め手段を同時に動作させながら、ワーク上に散在する複数の加工位置を、各加工ヘッドに対応して設定した加工矩形毎に同時加工する際の2軸加工機の加工計画装置であって、各一対の同時加工矩形の加工時間が最小となるように、加工又はダンパ位置訪問順序の対、並びに、低速位置決め手段の動作速度を決定する手段を備えることにより、前記課題を解決したものである。
【0031】
本発明は、又、前記の加工計画装置を含むことを特徴とする加工装置を提供するものである。
【0032】
又、前記の加工計画装置又は加工装置を実現するためのコンピュータプログラムを提供するものである。
【0033】
又、前記のコンピュータプログラムが記録された、コンピュータ読取り可能な記録媒体を提供するものである。
【0034】
【発明の実施の形態】
以下図面を参照して、XYステージとガルバノスキャナを備えたレーザ穴開け機により穴を開ける場合に適用した、本発明の実施形態を詳細に説明する。
【0035】
本実施形態は、図3に示す如く、レーザ穴開け機38と、例えばハードディスクやフレキシブルディスク等の外部メモリに記憶された、前記レーザ穴開け機38が加工を行なうための加工データファイル群42、該加工データファイル群42を変換する加工データ変換プログラム(Prg)44、例えば内部メモリに記憶された加工データ46、例えば外部メモリに記録された動作モデルファイル48、該動作モデルファイル48を読み込むための動作モデルファイル読込みプログラム(Prg)50、例えば内部メモリに記憶された動作モデルデータ52、本発明に係る加工計画プログラム(Prg)54、前記レーザ穴開け機38を制御する加工制御プログラム(Prg)56を含む、前記レーザ穴開け機38と通信可能なパソコン(PC)40とを備えている。
【0036】
なお、図3では、加工を制御する加工制御プログラム56と、加工を計画する加工計画プログラム54が、同じPC40内に収まっており、加工計画がオンラインで処理されるが、これらは別個でもよい。即ち、加工計画プログラム54は、オフラインで実行可能である。
【0037】
前記レーザ穴開け機38は、図1に示したように、レーザ発振器10が1つの2軸加工機とされている。なお、後述するが、本発明の適用対象の軸数は2に限定されず、複数であれば適用可能である。
【0038】
以下、レーザ穴開け機のオンライン形態の場合について説明する。なお、オフラインでも作用は同じである。
【0039】
本実施形態において、PC40と通信可能なレーザ穴開け機38は、加工データ46に従って、加工制御プログラム56により制御され、加工を行なう。加工データ46は、通常ハードディスクやフレキシブルディスク等の外部メモリにある加工データファイル群42を、加工データ変換プログラム44で変換することにより得られる。加工データ46は、レーザ穴開け機38を効率良く動かすために、加工計画プログラム54により更新される。この加工計画プログラム54は、内部機器(ガルバノスキャナ及びXYステージ)の動作をモデル化した動作モデル52を用いる。この動作モデル52は、通常、内部メモリに常駐していないので、外部メモリにある動作モデルファイル48を、動作モデルファイル読込みプログラム50を用いて読み込むことにより得る。
【0040】
前記PC40は、前記加工データファイル群42、加工データ変換プログラム44、動作モデルファイル48、動作モデルファイル読込みプログラム50、動作モデルデータ52、加工計画プログラム54、加工制御プログラム56を含み(加工データファイル群42及び動作モデルファイル48は、読込みが可能という意味で含むとする)、プログラム44、50、54、56を実行可能である。
【0041】
以下、詳細に説明する。
【0042】
加工ヘッドが1つである1軸機であって、ステージ非停止加工を効率よく行うための加工計画方法は、発明者が既に特願2002−26189にて提案している(以下特願2002−26189を、単に先願と称する)。本実施形態においては、この先願の発明を進展させる。
【0043】
即ち先願によれば、図4に示すが如く、基板(ワーク)に散布する穴開け位置(加工位置)を、ステージ(低速位置決め手段)が加工中は静止している辺がスキャンエリア(加工エリア)のサイズよりも小さい、矩形(加工矩形)で分割しておく。そして、基板上にて加工矩形上をスキャンエリアが一方向に戻ることなく遷移するようにして加工を行う(実際には、スキャンエリアは固定されていて、基板を載せているステージが図示した矢印の反対方向に動作する)。1つの加工矩形における加工が完了したら、次の加工矩形における加工へと移る。
【0044】
これに対して加工ヘッドを2つ有する本実施形態では、各加工ヘッド毎にスキャンエリアが存在するので、図5に示すが如く、基板の左半分の領域では左側のガルバノヘッドを、右半分の領域では右側のガルバノヘッドを用いて加工を進めることができる。即ち、同時に加工を進める加工矩形の配置間隔がガルバノヘッド間距離であるように、各加工ヘッドに対応して穴開け位置の加工矩形による分割を決定し、同時に加工する加工矩形L1、R1等を対として、加工矩形上を加工エリアが一方向に戻ることなく遷移するようにして加工を進める。一対の同時加工矩形における加工が完了したら、次の一対の同時加工矩形における加工へと移る。なお、ここで図では加工ヘッドをX方向に並ぶように配置しているが、当然Y方向に並べても構わない。又、半分割せずとも、図6に示すが如く、左右加工ヘッドの担当加工領域が交互に並ぶようにしてもよい。つまり、同時加工矩形間の配置間隔が加工ヘッド間隔でありさえすれば、充分である。
【0045】
以下に説明する本発明の主題である、このような加工を効率よく行なうための加工計画の概略的な処理の流れは、図7に示すが如く、既に先願に記載した処理の流れとほぼ同一である。
【0046】
即ち、まずステップ110で、一対の同時加工矩形の配置間隔がガルバノヘッド間の間隔と同一であるような加工矩形の配置を決定する。
【0047】
次いでステップ120で、各一対の同時加工矩形に対して、加工時間(最初に加工する加工位置の加工開始時刻と、最後に加工する加工位置の加工完了時刻との、時間差)の最小化を図る。実際には、同時加工する両矩形内に存在する穴開け位置及びダンパ位置の訪問順序の順序替え、並びに、ステージ動作速度の最大化を図ることにより実現する(ダンパ位置が全く含まれていないこともあることに注意する)。
【0048】
ここでダンパ位置とは、左右穴数の不均衡のために左右同一タイミングで穴開け加工をできない場合に、穴開け位置の無い方の加工ヘッドに供給されるビームをダンパに回避させるときの、ビームダンパに対応する加工面での位置のことを指す。ダンパ位置26、28は、例えば図2に示した如く、スキャンエリア30、32の外部に位置する。従って、穴開け位置変更時の各回のガルバノスキャナによる角度変更と比較すると、変更量が大きく、時間がかかってしまう。なお、ダンパ位置は、図2に示した例に限られるものではなく、図8にスキャンエリア30の場合で示す如く、広い範囲29であったり、あるいは、図9に示す如く、スキャンエリア(図では30)毎に複数あっても良い。
【0049】
最初にステップ130で、XYステージの動作経路を決定する。なお、既に先願にて説明したように、この動作経路は、図5に示す如く、各加工矩形の方向、即ち加工時の加工エリア遷移方向がX又はYに揃っている場合等は、加工エリアが全体的に蛇行状に遷移するようにすれば効果的に定められる。即ち、ほぼ自動に設定できる。又、この場合は、ステップ120の前にステップ130に進んで、動作経路を先に定めてもよい。
【0050】
以下では、図10に示す如く、ステップ120、即ち、一対の同時加工矩形における総加工時間を最小にするための方法について、詳細に説明する。基板上にて加工矩形34、36上をスキャンエリア30、32が例えば図の下方から上方へ向かって遷移する場合を考える。ダンパ位置は図2に示した場合を想定する。このとき、エリアが直線状に遷移するので、ダンパ位置26、28も直線状に遷移する。なお、同時加工矩形は対であるから、各加工矩形における加工又はダンパ位置訪問順序(以下では加工シーケンスと記す)は、対になっている。即ち、加工又はダンパ位置訪問順序対(以下では加工シーケンス対と記す)における、同一順位(x番目に加工する加工位置を、順位xであると称する)の加工位置は、同一のタイミングにて処理される。
【0051】
まず、考慮すべき状況として、左右の穴配置が完全に同一の場合(全点が同一オフセットを持つ場合も含む。ここでのオフセットは、矩形同士のではなく、穴配置同士のである)、左右は全く同一の加工(同一の加工とは、基板上にて穴位置の訪問順序を可視化して線で結んだときの、経路の形状のことを指す)を行なうのが最も良い。従って、例えば左加工矩形34の最適化のみを行い、右加工矩形36に関しては、その結果を参照しながら複製すればよい。しかし、図10の例のように、左右の穴配置が異なる場合、場合によってはダンパ移動(加工点からダンパ位置への回避とダンパ位置から加工点への戻りのことを指す。以下単に回避移動と戻り移動と称する)を行なう必要が生じるため、加工計画は難しくなる。
【0052】
以下、図11を参照して、ステップ120の細かい工程を説明する。最初のステップ201は、左右穴配置が完全に同一か否かを判定する。
【0053】
完全に同一である場合には、ステップ204において、既に先願の段落[0207]〜[0285]に記載した、いずれかの穴開け位置訪問順序最適化及びXYステージ速度最大化工程を用いて、例えば左加工矩形34のみを最適化する。そして、ステップ205で、左加工矩形の結果を参照して、右加工矩形の穴開け位置訪問順序を決定する。
【0054】
一方、左右の穴配置が一致しない場合には、ステップ202で、ダンパ移動を含めた加工シーケンス対を発生させる。ステップ202を実現する方法として、次の(A)、(B)の2つの方法を考える。ここで、(A)は、できるだけダンパ移動が避けられるよう、座標差を利用する方法であり、(B)は、先願を基に発案した、一定周期(加工矩形の加工が進む方向における一定幅又は加工時間)毎に足りない穴数分ダンパ位置を補充するような方法である。これらの詳細は後述する。
【0055】
該加工シーケンス対を更にステップ203で改善する。ステップ202で(A)を選んだか、(B)を選んだかによって、ステップ203の方法が異なる。そこで、(A)を選んだ方法を(C)に、(B)を選んだ方法を(D)に説明する。
【0056】
なお、左右の穴開け位置が同一であるかどうかを識別せずして、ステップ202、ステップ203のみで処理を終了することも、当然可能である。
【0057】
以下、(A)、(B)、(C)、(D)の順に説明する。なお、以下の説明では穴開け位置を単に穴又は点と記す。
【0058】
以下、(A)、(B)は、ステップ202に関する提案である。
【0059】
(A)ダンパ移動回数を最少化する方法による加工シーケンス対の発生
以下では、左加工矩形34の穴数l、右走査矩形36の穴数rに対し、l≦rが成立しているとして議論する(一般性は失われない)。
【0060】
図12に示す如く、左走査矩形34にある穴Aに対して、同一のタイミングで加工できる穴とできない穴が存在する。即ち、スキャンエリア30、32のY方向のサイズをDとすると、穴AのY座標YA及び右加工矩形36における穴PのY座標YPについて、|YP−YA|≦Dが成立するならば、穴Pと穴Aとは、同一のタイミングで加工可能である。
【0061】
同時加工可能な穴と不可能な穴を効率良く識別するために、図13(a)のように、まず、左右両方の加工矩形の穴をY座標値でソートしておき、各穴に穴番号を付随させる。即ち、左加工矩形34における番号がiである穴のY座標値をyl[i]と書くと、yl[i]≦yl[i+1]となる(右加工矩形36についても同様である)。次いで、左加工矩形34の各穴について、同時加工可能な、右加工矩形36における穴の最初(frの矢印)と最後(toの矢印)の番号を、スキャンサイズに基づいて、それぞれ調べておく。そして、本(A)工程にて、左加工矩形の穴に対し、右加工矩形の、番号がfr以上かつto以下の穴とが1対1で対応が見つかった両穴は両撃ち(同時加工)であり、対応が見つからなかった穴は片撃ちである。
【0062】
更に詳細に説明するために、図13(b)に、左右の穴を対応させた例を示す。この例の場合、左加工矩形の2つの連続する部分、1番からlc番までとlc+1番からl番までが右加工矩形に連続して対応しているため、片撃ちから両撃ちへと変わる回数(ダンパ戻り)が2回、両撃ちから片撃ちへと変わる回数(ダンパ回避)が1回である。即ち、本例のように、左右の対応をできるだけ連続になるようにすれば、ダンパ移動(戻り+回避)回数が最少となる。
【0063】
図14(a)に、各穴に対しfrとtoとを記憶した表(from−to表と称する)を、図14(b)に表と連続対応との関係を示す。表に示すように、番号iの穴のfrに当たる番号とtoに当たる番号とを、それぞれfr[i]、to[i]とする。そして図14(b)のように、水平方向に各穴のfr[i]とto[i]を結んだ線分を書き、順番に番号が垂直方向に増えるようにした図を書くと、左右が連続して対応することと、縦に並んだ水平線分と傾き1の直線とが連続して交差することとは同一である(交点が実際に対応する番号)。
【0064】
このような、図14(b)のように表わされた水平な線分群と、傾き1の直線との交差関係を考える問題は、図15に示すように、from−to表の各要素fr[i]、to[i]から行番号iを引いた表に変換することにより、水平な線分群と、垂直な直線との交差関係を考える問題として捉えることができる。更に、番号kの線分(fr[k]−kとto[k]−kを結んだ線分)と番号k+1の線分について、オーバーラップする番号同士を番号の小さい方から大きい方に向かって垂直線で結べば、水平な線分群と合わせて碁盤目状の有向ネットワークができる。ここで有向としたのは、ネットワークのリンクは、上方向若しくは右方向のみであり、逆向きは許されないためである。
【0065】
より詳細に述べると、図16に示す如く、始点(source)をfr[1]−1に当たる点、終点(sink)をto[l]−lに当たる点とした碁盤目状の有向ネットワークにおいて、始点から終点へ向かうパスそれぞれは、加工シーケンス対に対応する。即ち、縦移動で至る点は両撃ちシーケンス対を表わし、横移動で至る点は片撃ちシーケンスを表わす。又、パスの折曲においては、左に曲折する場合はダンパ位置から戻りが発生し、右に曲折する場合はダンパ位置への回避が発生する。従って、このような碁盤目状ネットワークにおける折曲数が最少なパスを見つける問題と、ダンパ移動回数を最少化する問題とは、等価な問題である。
【0066】
碁盤目状ネットワークの折曲数最少化問題は、公知の最短路問題(Shortest Path Problem)の解法の1つである、動的計画法に基づくダイクストラの方法を応用した方法によって最適解を得ることができる。ここで応用と言っているのは、距離の評価方法に対してである。即ち、ある点からある点までの距離を、折曲数で評価しさえすれば、ダイクストラ法と全く同一の方法を用いることができる。
【0067】
以上をダンパ移動回数最少化工程として、図17にフローチャートにしてまとめる。ステップ301にて左右それぞれの加工矩形内の穴をY座標値でソートして付番する。次いでステップ302にて左加工矩形(穴数の少ない方)の各穴に対し、同時加工可能な右加工矩形(穴数の多い方)の穴の開始番号と終了番号を求め、表を作成する。更に、表の各データから、表の行番号を引く。続くステップ303では、この表に基づいて、碁盤目状のネットワークを作成する。更に続くステップ304で、碁盤目状ネットワークにおける曲折数最少なパスを、動的計画法に基づいた方法で求める。最後に、ステップ305において、求まった曲折数最少なパスに基づいて、両撃ち、片撃ちの切り替えタイミングを決定する。
【0068】
【実施例】
以下にダンパ移動回数最少化工程の実施例を2つ挙げる。
【0069】
図18に示した実施例1は、図18(a)に示すような穴配置をしており、Y座標値でソートされた穴座標値は図18(b)のようであるとする。スキャンエリアの大きさを50000としてfrom−to表を作成し、行番号を差し引いた結果は図18(c)のようになる。図18(c)に基づき碁盤目ネットワークを図18(d)の如く作成し、曲折数最少なパスを図18(e)のように得る。このパスに基づき片撃ち、両撃ちの切り分けを行なうと、図18(f)の如くとなる。この場合のダンパ移動回数(ネットワーク状の曲折数)は2回である。
【0070】
更に、極端な穴配置例である、図19に示した実施例2では、同様の図19(a)〜(f)の処理を行なった結果、ダンパ移動回数は4回となる。穴数と比較して多いように感じてしまうが、最適解である。
【0071】
ダンパ移動回数最少化工程の処理により、加工シーケンス全体が、両撃ちシーケンス対と、片撃ちシーケンスとに分けられる。ここで、Y座標値でソートし、付番されたままの加工順序を初期解としても良いが、分けられた各シーケンスそれぞれに関して、例えば、基板上の加工順序通りに穴を線で繋いだ形状が、既に先願で説明した「蛇行経路」となるように、加工順序を並び替えても良い。ここでいう蛇行経路の例を、図20に挙げる。
【0072】
なお、本説明では、同時加工可能であるかどうかをスキャンエリアのサイズD離れているかどうかで判断したが、実際には、fθ補正等による加工計画と実機との誤差を考慮して、加工計画においてはDより若干小さい値とする。
【0073】
(B)一定(の距離又は穴数の)周期毎にダンパ移動を挿入する方法による加工シーケンス対の発生
図21に、本工程の概念図を示す。図示する如く、全体的には、両加工矩形内の経路(基板上の加工順序通りに穴を線で繋いだ形状)は、適切な幅で折り返すような蛇行経路とする。但し、ダンパ位置への移動に都合がいいように、両加工矩形の折り返し幅(以下では、短冊状にステージ移動方向に沿って矩形を分割しているので短冊幅と称する)hは同一とし、蛇行の方向(蛇の右利き、左利き)は、同じタイミングでダンパ位置に接近するように、左右対称にする。
【0074】
本工程のフローチャートを図22に示す。ステップ401で短冊幅hを計算し、ステップ402で蛇行経路を発生させ、ステップ403で一方の加工矩形に穴不足がある場合は、その部分で両撃ち、片撃ちを切り替えるようにする。これにより、片撃ちシーケンスの開始時及び終了時に、ダンパ移動が発生するようになる。ここで、短冊幅の決定は、既に先願で記載済みであるが、穴密度に基づいて行なう。穴数が異なる場合は、穴数の多い方を基準とする。なお、複数の短冊を一組として、各組毎に両撃ち、片撃ちを切り替えるようにしてもよい。又、蛇行経路の発生法も、既に先願に説明済みである。
【0075】
なお、ここでは短冊幅hは加工矩形内の穴密度に基づき定められるので、固定された値となるようにしたが、例えばY座標値の小さい方から数えたとき、所定の穴数に基づいて幅を定めるようにしてもよい。特に、穴密度が一様では無い場合は、局所的な密度を反映することが可能である。
【0076】
以下(C)、(D)は、図11のステップ203に関する提案である。又、これらの提案は、既に先願にて提案した、加工矩形内の加工時間が最小となるように穴開け位置訪問順序及びXYステージ動作速度を最適化する工程(図23のステップ510)の適用あるいは応用である。以下、上記の工程を、単に「最適化工程」と称することとする。
【0077】
(C)ダンパ移動回数最少化による場合の加工シーケンス対の改善
ダンパ移動回数最少化により加工シーケンス対を発生させた場合、加工シーケンス対は、両撃ちシーケンス対と片撃ちシーケンスに無駄なく分かれている。従って、シーケンス毎に切り分けて最適化を行うのが望ましい。即ち、図24のフローチャートに示すように、最初のステップ601にて、シーケンス毎の反復を開始する(この反復はステップ605を終端とする)。続くステップ602で、現在のシーケンスが片撃ちか両撃ちかを判断し、次いで片撃ちシーケンスの場合は、ステップ603の、両撃ちシーケンス対の場合はステップ604の「最適化工程」を行なう。ステップ605では、ステップ603あるいは604で求まった各シーケンスの加工計画を基にして、全体を等速で加工できるように、ステージ等速最大速度を算出し、更に、特に密度にむらがある場合などは、ステージ速度パターンを最適化する。
【0078】
以下、ステップ603、604、605について詳細に述べる。
【0079】
片撃ちシーケンスの最適化工程であるステップ603は、既に先願で説明した「最適化工程」と全く同一である。ゆえに説明を省略する。
【0080】
両撃ちシーケンス対の最適化工程であるステップ604は、左右それぞれのシーケンスに対して(片撃ちシーケンスの)「最適化工程」を実行し、次いで、左右シーケンスがそれぞれ改善された加工シーケンス対全体に対し、左右シーケンスを同時に最適化する。具体的には、例えば、局所探索法に基づく手法で、現在のシーケンス対に近傍操作を加えたシーケンス対が加工時間を短縮できるようであれば置き換える、といった処理を反復する。この近傍操作は、シーケンスが対である場合は、図25のように操作方法が2つある(片近傍操作、双近傍操作と名付ける)。即ち、Or−opt近傍の場合は、元のシーケンスが図25(a)の如くであったとき、「片Or−opt」と称することとした図25(b)のような操作(片近傍操作)と、「双Or−opt」と称することとした図25(c)のような操作(双近傍操作)と、2つある。これらの近傍操作は、どれか1つ用いるも全て用いるも自由である。なお、移動コストは、左シーケンス及び右シーケンスにおける移動コストの大きい方で評価する。
【0081】
ステージ最大速度算出工程であるステップ605は、既に先願で説明した方法とほぼ同一である。但し、ダンパ移動時の移動コストに注意が必要である。既に先願で説明したとおり、ステージ移動を伴う方向の移動コストは、ステージ移動速度(またはエリア遷移速度)V、点間移動量difの2つで評価できる。即ち、移動コストを計算する関数costに対し、(1)式で計算されると言える。
【0082】
t=cost(V,dif) …(1)
【0083】
図26(a)に示す如く、時刻tfにダンパ位置にいたときのダンパ戻りの場合、Y座標がYPの位置へ戻るときの点間移動量は、時刻tfの加工エリア中心位置がV*tf−D/2なので(2)式である(Dは加工エリアのサイズ)。
【0084】
dif=YP−(V*tf−D/2) …(2)
【0085】
(2)式を(1)式に代入すれば移動コストが求まる。
【0086】
一方、図26(b)のような、時刻tfに座標(XP,YP)にいたときのダンパ回避の場合、スキャンエリアの中心からのダンパ位置がX方向にだけXDずれている場合には、ステージ速度に拘らず移動量はX方向にXD−XP、Y方向にV*tf−D/2−YPであるから、点間移動量のみから計算されるステージ停止時の移動コストとみて、これらの移動量を代入して計算すれば移動コストが求まる。
【0087】
なお、図24に示したステップ601、602はスキップ可能である。又逆に、ステップ601、602を行なった後に、ステージ最大速度を算出するステップ605に進み、終了することも可能である。即ち、計算時間を考慮して、流れ図の一部のみを実行して処理を終えることが可能である。
【0088】
(D)一定周期毎にダンパ移動を挿入する場合のシーケンス対の改善
一定周期毎のダンパ移動による経路の場合も、基本的には実は既に(C)で説明したダンパ移動回数最少化の場合の工程とほぼ同一である。但し、(C)の場合は両撃ちと片撃ちが明確に切り分けられていたが、(D)では切り分けが曖昧である。そこで、図27に示す如く、図24のステップ606の代わりに、ステップ606´で、両撃ちシーケンス最適化工程を行なう。今回の場合、片近傍操作の結果、左右のある順位が共にダンパ位置となることがあるが、その場合のダンパ位置は除去できることに注意が必要である。即ち、図28(a)の表に示す如く、左シーケンスが(A,B,X,C,D,E,F,X,G,H,…)、右シーケンスが(a,b,c,d,e,X,X,f,g,h,…)(Xがダンパ位置)のとき、片近傍操作により左シーケンスのBがGの後にリロケートされたとする。すると図28(b)のようなシーケンスとなり、順位7は共にダンパ位置となる。このとき、図28(c)の如く、順位6の加工から順位8の加工に直接進むようにすれば、無駄な動作を省くことが可能となる。
【0089】
なお、前記実施形態においては、高速位置決め手段がスキャナとされ、低速位置決め手段がステージとされていたが、位置決め手段の種類や組合せはこれに限定されず、例えば出願人が特開2000−71089や特開2000−334637で提案したような、リニアモータXYステージと高速加工機とを組み合わせたスクリーンカットシステム、あるいはフラッシュカットシステムであってもよい。
【0090】
又、適用対象も、点状の加工を行なうレーザ穴開け機に限定されず、線状の加工を行なうレーザ切断機、機械式ドリルの穴開け機、ヒューズ溶断機、マーキング装置、露光装置等にも同様に適用できる。
【0091】
【発明の効果】
本発明によれば、2軸加工機の非停止制御加工を効率良く迅速に行なうことができる。又、1軸機のサイクル加工計画と組合わせて、エネルギシェア方式でサイクル加工を行う場合の加工計画も可能である。
【図面の簡単な説明】
【図1】2ヘッドのレーザ穴開け機の構成を示す光路図
【図2】ビームダンパ位置の例を示す平面図
【図3】本発明が適用されるレーザ穴開け機の全体構成を示すブロック図
【図4】出願人が特願2002−26189で提案した1軸機加工計画による加工進捗状況を示す平面図
【図5】本発明に係る2軸機加工計画による加工進捗状況を示す平面図
【図6】同じく同等加工矩形の別の配置例を示す平面図
【図7】同じく概略的な加工計画の流れ図
【図8】ビームダンパ位置の他の例を示す平面図
【図9】ビームダンパ位置の更に他の例を示す平面図
【図10】本発明が適用され、同時加工される一対の加工矩形の例を示す平面図
【図11】本発明の実施形態における加工計画の流れ図
【図12】本発明の原理を説明するための同時照射可能な穴と不可能な穴の説明図
【図13】同じくY軸値ソートされた穴の左右マッチングとダンパ移動回数最少化との関係を示す説明図
【図14】同じく左右の連続した対応探しとfrom−to表の関係を示す図表
【図15】同じくfrom−to表の変換による碁盤目状ネットワークのパス探索問題への帰着を示す説明図
【図16】同じく碁盤目状ネットワークと実加工動作との対応関係を示す線図
【図17】同じくダンパ移動回数最少化工程の手順を示す流れ図
【図18】同じく実施例1を示す説明図
【図19】同じく実施例2を示す平面図
【図20】同じく蛇行経路を示す平面図
【図21】同じく一定周期毎のダンパ位置の補充の概念図
【図22】同じく一定周期毎のダンパ移動を挿入する場合の加工シーケンス発生工程を示す流れ図
【図23】特願2002−26189による加工計画の手順を示す流れ図
【図24】ダンパ移動回数最少化の場合の図11のステップ203の手順を示す流れ図
【図25】同じく片Or−opt操作と双Or−opt操作を示す説明図
【図26】同じくダンパ移動コストを示す平面図
【図27】同じく一定同期毎にダンパ移動を補充する場合の図11のステップ203の手順を示す流れ図
【図28】同じく片近傍操作によるダンパ移動削除の例を示す図表
【符号の説明】
6…XYステージ
8…基板
10…レーザ発振器
11、15、17…レーザビーム
14…分岐装置
18、20…ガルバノシステム(加工ヘッド)
26、28、29…ダンパ位置
30、32…スキャンエリア(加工エリア)
34、36…加工矩形
38…レーザ穴開け機
40…パソコン(PC)
54…加工計画プログラム(Prg)
【発明の属する技術分野】
本発明は、共通の発振器から発振されたビームを分割して2つの加工ヘッドに供給し、ワーク上の加工実行箇所を広範囲に移動させることが可能な低速位置決め手段と、所定の大きさの加工エリア内に移動させることが可能な高速位置決め手段を同時に動作させながら、ワーク上に散在する複数の加工位置を、各加工ヘッドに対応して設定した加工矩形毎に同時加工する際の2軸加工機の加工計画方法及び装置に係り、特に、レーザビームを照射してプリント配線基板等に複数の穴開け加工を行なうレーザ穴開け機に用いるのに好適な、穴開け等の加工位置を2次元平面における分布状態を数学的に捉えて、XYステージ等の低速位置決め手段の速度、加速度、軌道やガルバノスキャナ等の高速位置決め手段の穴開け位置訪問順序等の機器の動作を効率良く計画することが可能な、2軸加工機の加工計画方法及び装置、該加工計画方法や装置を用いた加工方法及び加工装置、該加工方法を実施するためのコンピュータプログラム、前記加工装置を実現するためのコンピュータプログラム、及び、該コンピュータプログラムが記録された、コンピュータ読取り可能な記録媒体に関する。
【0002】
【従来の技術】
レーザ穴開け機の市場価値の1つに、加工速度がある。加工速度を上げるためには、例えば、ガルバノスキャナ(単にスキャナとも称する)、XYステージ(単にステージとも称する)、レーザを改良する、数学的最適化を適用する、協調制御方式を採る…等といった、いろいろな手段を採ることができるが、それに加えて、ガルバノシステムを2つ取り付けるという効果的な手段を採ることができる。ここでは、ガルバノシステムが2つある加工機を2軸(加工)機と呼ぶ(又、1つのものは1軸機と呼ぶ)。
【0003】
この2軸機には、レーザ発振器の数が1つのものと2つのものがある。発振器が2つのものは装置コストは高くなるが、2つの加工ヘッドに割り当てられた加工位置の加工タイミングを同時にする必要がないため、加工計画は容易である。
【0004】
一方、発振器が1つのものについては、レーザビームをビームスプリッタ、ハーフミラー、偏光ミラー等のスプリッタ光学部品を用いてエネルギ分割するエネルギシェア方式と、音響変調素子(AOM)や電気光学変調素子(EOM)等の高速スイッチング素子を用いて時分割するタイムシェア方式がある。
【0005】
本願が主な対象とするエネルギシェア方式の場合、図1に示す如く共通のレーザ発振器10から発振されたレーザビーム11のエネルギが、ビームスプリッタ等の分岐装置14により半分割される。即ち、加工ヘッドであるZ1軸とZ2軸の2つのガルバノシステム18、20のそれぞれの加工位置への位置決めが共に済む時点を待ってレーザビーム11が出力され、半分のエネルギを持った2本のビーム15、17がそれぞれの軸の加工位置に照射される。図において、6はXYステージ、8は基板、16は反射ミラー、22、24はガルバノ18、20により走査されたビームを基板8の表面に垂直に当てるためのfθレンズである。
【0006】
ここで、基板によっては、左右同一パターンではないために、一方の軸には加工位置があり、他方の軸には加工位置が無いといった状況が生じることがあるが、そのような場合、基板に照射を行なえない軸は、図2に示す如く、加工面上ではスキャンエリア30、32外の位置に対応付けられるビーム遮蔽板(いわゆるビームダンパ、以下では単にダンパと称することもある)と呼ばれるビーム棄て位置26、28に照射できるようにさせるような回避が必要となる。以下では、このように一方の軸の加工位置にのみ照射を行うことを、片撃ちと称す。同様に、両軸とも加工位置への照射を行うことを、両撃ちと称す。図2において、26は左ダンパ、28は右ダンパ、30は左スキャンエリア、32は右スキャンエリアである。
【0007】
このようなエネルギシェアの2軸機において、穴開け位置の配置パターンが同一でない場合は、左右(Z1及びZ2軸)の同時加工を考慮した加工計画があれば、加工高速化が可能となる。発明者は、既に特願2001−331550号で、この点を考慮した加工計画を提案している。例えば段落[0187]、[0188]に記載の、左右のスキャナ走査時間均等化(マッチングと称している)が挙げられる。
【0008】
【特許文献1】
特開2002−1567号公報
【特許文献2】
特開平11−149317号公報
【特許文献3】
WO96/29634号公報
【特許文献4】
WO97/34206号公報
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、この技術は、ステージを停止させてはスキャナによりビームを走査して加工を行なう、いわゆるステップアンドリピート方式のように、加工エリアが加工中に静止しているような場合においてのみ適用できるものであり、ステージを動かしたまま同時にスキャナを動かしてビームを走査する、いわゆる非停止制御方式のように加工エリアが連続的に遷移するような場合には適用できなかった。なお、ダンパを考慮した加工計画に関する先行技術は存在しない。
【0010】
非停止制御に関する先行技術としては、特許文献1に、その図6に示される如く、加工ヘッドをX座標が同一であるように2つ並べ、図7に示される如く、加工中はステージをX方向に動かして加工を行なうことが記載されている。図6の装置構成からレーザ発振器は1台であると判断できるが、ビームの分割方法に関する記載はなく、特にエネルギシェア方式である場合の片撃ち時の対処については何ら記載が無い。
【0011】
又、主にウェハ上のヒューズ切断を用途とする特許文献2には、その図1に示される如く、光源(レーザ発振器)が2つ(31A、31B)有り、エネルギシェア方式のように片撃ちを気にするような装置構成ではなかった。
【0012】
又、非停止制御加工におけるビームの位置決め方法に関しては、特許文献3や特許文献4も提案されているが、これらに関しても、加工ヘッド毎に加工位置配置パターンが異なる場合のエネルギシェア機を用いた加工計画及び加工方法については、何ら記載はない。
【0013】
本発明は、前記従来の問題点を解消するべくなされたもので、2軸加工機の非停止制御に際して、ビームダンプ動作に拘らず、効率的且つ迅速な加工を行なえるようにすることを課題とする。
【0014】
【課題を解決するための手段】
本発明は、共通の発振器から発振されたビームを分割して2つの加工ヘッドに供給し、ワーク上の加工実行箇所を広範囲に移動させることが可能な低速位置決め手段と、所定の大きさの加工エリア内に移動させることが可能な高速位置決め手段を同時に動作させながら、ワーク上に散在する複数の加工位置を、各加工ヘッドに対応して設定した加工矩形毎に同時加工する際の2軸加工機の加工計画方法であって、各一対の同時加工矩形の加工時間が最小となるように、加工又はダンパ位置訪問順序の対、並びに、低速位置決め手段の動作速度を決定するようにして、前記課題を解決したものである。
【0015】
又、前記決定に際して、一対の同時加工矩形内における加工位置の配置が同一の場合は、一方の加工矩形のみについて、加工時間が最小となるように加工位置訪問順序並びに低速位置決め手段動作速度を決定し、他方の加工矩形は結果を参照して加工位置訪問順序を決定するようにしたものである。
【0016】
又、前記決定の工程が、加工又はダンパ位置訪問順序の対を暫定的に決定する、暫定加工シーケンス対発生工程と、該暫定加工シーケンス対に基づいて、加工時間が最小となるように、加工又はダンパ位置訪問順序対、並びに、低速位置決め手段動作速度を決定する、加工シーケンス対の加工時間最小化工程と、を含むようにしたものである。
【0017】
又、前記暫定加工シーケンス対発生工程において、ダンパ移動回数を最小化するようにしたものである。
【0018】
又、前記暫定加工シーケンス対発生工程において、低速位置決め手段動作方向に沿って、穴数又は距離の一定周期毎にダンパ移動を挿入するようにしたものである。
【0019】
又、前記決定に際して、一方の加工矩形のある加工位置と、同時加工される他方の加工矩形のある加工位置とが、同一タイミングで加工可能かどうかの判断を、両加工位置の低速位置決め手段動作方向座標値の差と、加工エリアの該方向における所定の大きさとに基づいて行うようにしたものである。
【0020】
又、前記ダンパ移動回数を最小化する工程が、動的計画法に基づくものであるようにしたものである。
【0021】
又、前記ダンパ移動回数を最小化する工程は、同時加工する双方の加工矩形の加工位置を、低速位置決め手段動作方向座標値でソートして付番する、ソート工程と、加工位置数の少ない一方の加工矩形における各加工位置について、他方の加工矩形における、同一タイミングで加工可能な加工位置の開始番号及び終了番号を記憶する表を作成する、from−to表作成工程と、該from−to表に従って、1の方向への移動が両撃ちシーケンス対であることに、1と異なる2の方向への移動が片撃ちシーケンスであることに対応する2つの方向を有するネットワークを作成する、ネットワーク作成工程と、該ネットワーク上の、移動方向を変える回数を最少とする経路を探索する、曲折数最少経路探索工程と、を含むようにしたものである。
【0022】
又、前記加工シーケンス対の加工時間最小化工程において、片撃ちシーケンスと両撃ちシーケンス対を切り分けて処理するようにしたものである。
【0023】
又、前記加工シーケンス対の加工時間最小化工程は、まず片撃ちシーケンス、又は、両撃ちシーケンス対毎に、加工時間が最小となるように、加工位置訪問順序最適化並びに低速位置決め手段動作速度最大化、又は、加工又はダンパ位置訪問順序対最適化並びに低速位置決め手段動作策度最大化を行い、次いで、加工シーケンス対全体の低速位置決め手段動作速度最大化を行うようにしたものである。
【0024】
又、前記加工シーケンス対の加工時間最小化工程は、まず片撃ちシーケンス、又は、両撃ちシーケンス対毎に、加工時間が最少となるように、加工位置訪問順序最適化並びに低速位置決め手段動作速度最大化、又は、加工又はダンパ位置訪問順序対最適化並びに低速位置決め手段動作速度最大化を行い、次いで加工シーケンス対全体について、加工時間が最小となるように、加工又はダンパ位置訪問順序対、並びに、低速位置決め手段動作速度を改善するようにしたものである。
【0025】
又、前記加工シーケンス対の加工時間最小化工程における近傍操作として、片近傍操作と両近傍操作とを使い分けるようにしたものである。
【0026】
又、前記片近傍操作の結果、ある順位が共にダンパ位置となった場合は、該ダンパ位置を取り除くようにしたものである。
【0027】
本発明は、又、共通の発振器から発振されたビームを分割して2つの加工ヘッドに供給し、ワーク上の加工実行箇所を広範囲に移動させることが可能な低速位置決め手段と、所定寸の加工エリア内に移動させることが可能な高速位置決め手段を同時に動作させながら加工する際の2軸加工機の加工計画方法であって、加工時低速位置決め手段静止方向の辺長が、所定寸の加工エリアの該方向の大きさ以下であり、一対の同時加工矩形の配置間隔が加工ヘッド間の間隔と同一であるような、加工矩形の配置を決定する工程と、各一対の同時加工矩形に対して、加工時間が最小となるように、加工又はダンパ位置訪問順序の対、並びに、低速位置決め手段の動作速度を決定する工程と、低速位置決め手段の動作経路を決定する工程とを含むようにしたものである。
【0028】
本発明は、又、前記の加工計画方法により決定された加工を行なうことを特徴とする加工方法を提供するものである。
【0029】
又、前記の加工計画方法又は加工方法を実施するためのコンピュータプログラムを提供するものである。
【0030】
本発明は、又、共通の発振器から発振されたビームを分割して2つの加工ヘッドに供給し、ワーク上の加工実行箇所を広範囲に移動させることが可能な低速位置決め手段と、所定の大きさの加工エリア内に移動させることが可能な高速位置決め手段を同時に動作させながら、ワーク上に散在する複数の加工位置を、各加工ヘッドに対応して設定した加工矩形毎に同時加工する際の2軸加工機の加工計画装置であって、各一対の同時加工矩形の加工時間が最小となるように、加工又はダンパ位置訪問順序の対、並びに、低速位置決め手段の動作速度を決定する手段を備えることにより、前記課題を解決したものである。
【0031】
本発明は、又、前記の加工計画装置を含むことを特徴とする加工装置を提供するものである。
【0032】
又、前記の加工計画装置又は加工装置を実現するためのコンピュータプログラムを提供するものである。
【0033】
又、前記のコンピュータプログラムが記録された、コンピュータ読取り可能な記録媒体を提供するものである。
【0034】
【発明の実施の形態】
以下図面を参照して、XYステージとガルバノスキャナを備えたレーザ穴開け機により穴を開ける場合に適用した、本発明の実施形態を詳細に説明する。
【0035】
本実施形態は、図3に示す如く、レーザ穴開け機38と、例えばハードディスクやフレキシブルディスク等の外部メモリに記憶された、前記レーザ穴開け機38が加工を行なうための加工データファイル群42、該加工データファイル群42を変換する加工データ変換プログラム(Prg)44、例えば内部メモリに記憶された加工データ46、例えば外部メモリに記録された動作モデルファイル48、該動作モデルファイル48を読み込むための動作モデルファイル読込みプログラム(Prg)50、例えば内部メモリに記憶された動作モデルデータ52、本発明に係る加工計画プログラム(Prg)54、前記レーザ穴開け機38を制御する加工制御プログラム(Prg)56を含む、前記レーザ穴開け機38と通信可能なパソコン(PC)40とを備えている。
【0036】
なお、図3では、加工を制御する加工制御プログラム56と、加工を計画する加工計画プログラム54が、同じPC40内に収まっており、加工計画がオンラインで処理されるが、これらは別個でもよい。即ち、加工計画プログラム54は、オフラインで実行可能である。
【0037】
前記レーザ穴開け機38は、図1に示したように、レーザ発振器10が1つの2軸加工機とされている。なお、後述するが、本発明の適用対象の軸数は2に限定されず、複数であれば適用可能である。
【0038】
以下、レーザ穴開け機のオンライン形態の場合について説明する。なお、オフラインでも作用は同じである。
【0039】
本実施形態において、PC40と通信可能なレーザ穴開け機38は、加工データ46に従って、加工制御プログラム56により制御され、加工を行なう。加工データ46は、通常ハードディスクやフレキシブルディスク等の外部メモリにある加工データファイル群42を、加工データ変換プログラム44で変換することにより得られる。加工データ46は、レーザ穴開け機38を効率良く動かすために、加工計画プログラム54により更新される。この加工計画プログラム54は、内部機器(ガルバノスキャナ及びXYステージ)の動作をモデル化した動作モデル52を用いる。この動作モデル52は、通常、内部メモリに常駐していないので、外部メモリにある動作モデルファイル48を、動作モデルファイル読込みプログラム50を用いて読み込むことにより得る。
【0040】
前記PC40は、前記加工データファイル群42、加工データ変換プログラム44、動作モデルファイル48、動作モデルファイル読込みプログラム50、動作モデルデータ52、加工計画プログラム54、加工制御プログラム56を含み(加工データファイル群42及び動作モデルファイル48は、読込みが可能という意味で含むとする)、プログラム44、50、54、56を実行可能である。
【0041】
以下、詳細に説明する。
【0042】
加工ヘッドが1つである1軸機であって、ステージ非停止加工を効率よく行うための加工計画方法は、発明者が既に特願2002−26189にて提案している(以下特願2002−26189を、単に先願と称する)。本実施形態においては、この先願の発明を進展させる。
【0043】
即ち先願によれば、図4に示すが如く、基板(ワーク)に散布する穴開け位置(加工位置)を、ステージ(低速位置決め手段)が加工中は静止している辺がスキャンエリア(加工エリア)のサイズよりも小さい、矩形(加工矩形)で分割しておく。そして、基板上にて加工矩形上をスキャンエリアが一方向に戻ることなく遷移するようにして加工を行う(実際には、スキャンエリアは固定されていて、基板を載せているステージが図示した矢印の反対方向に動作する)。1つの加工矩形における加工が完了したら、次の加工矩形における加工へと移る。
【0044】
これに対して加工ヘッドを2つ有する本実施形態では、各加工ヘッド毎にスキャンエリアが存在するので、図5に示すが如く、基板の左半分の領域では左側のガルバノヘッドを、右半分の領域では右側のガルバノヘッドを用いて加工を進めることができる。即ち、同時に加工を進める加工矩形の配置間隔がガルバノヘッド間距離であるように、各加工ヘッドに対応して穴開け位置の加工矩形による分割を決定し、同時に加工する加工矩形L1、R1等を対として、加工矩形上を加工エリアが一方向に戻ることなく遷移するようにして加工を進める。一対の同時加工矩形における加工が完了したら、次の一対の同時加工矩形における加工へと移る。なお、ここで図では加工ヘッドをX方向に並ぶように配置しているが、当然Y方向に並べても構わない。又、半分割せずとも、図6に示すが如く、左右加工ヘッドの担当加工領域が交互に並ぶようにしてもよい。つまり、同時加工矩形間の配置間隔が加工ヘッド間隔でありさえすれば、充分である。
【0045】
以下に説明する本発明の主題である、このような加工を効率よく行なうための加工計画の概略的な処理の流れは、図7に示すが如く、既に先願に記載した処理の流れとほぼ同一である。
【0046】
即ち、まずステップ110で、一対の同時加工矩形の配置間隔がガルバノヘッド間の間隔と同一であるような加工矩形の配置を決定する。
【0047】
次いでステップ120で、各一対の同時加工矩形に対して、加工時間(最初に加工する加工位置の加工開始時刻と、最後に加工する加工位置の加工完了時刻との、時間差)の最小化を図る。実際には、同時加工する両矩形内に存在する穴開け位置及びダンパ位置の訪問順序の順序替え、並びに、ステージ動作速度の最大化を図ることにより実現する(ダンパ位置が全く含まれていないこともあることに注意する)。
【0048】
ここでダンパ位置とは、左右穴数の不均衡のために左右同一タイミングで穴開け加工をできない場合に、穴開け位置の無い方の加工ヘッドに供給されるビームをダンパに回避させるときの、ビームダンパに対応する加工面での位置のことを指す。ダンパ位置26、28は、例えば図2に示した如く、スキャンエリア30、32の外部に位置する。従って、穴開け位置変更時の各回のガルバノスキャナによる角度変更と比較すると、変更量が大きく、時間がかかってしまう。なお、ダンパ位置は、図2に示した例に限られるものではなく、図8にスキャンエリア30の場合で示す如く、広い範囲29であったり、あるいは、図9に示す如く、スキャンエリア(図では30)毎に複数あっても良い。
【0049】
最初にステップ130で、XYステージの動作経路を決定する。なお、既に先願にて説明したように、この動作経路は、図5に示す如く、各加工矩形の方向、即ち加工時の加工エリア遷移方向がX又はYに揃っている場合等は、加工エリアが全体的に蛇行状に遷移するようにすれば効果的に定められる。即ち、ほぼ自動に設定できる。又、この場合は、ステップ120の前にステップ130に進んで、動作経路を先に定めてもよい。
【0050】
以下では、図10に示す如く、ステップ120、即ち、一対の同時加工矩形における総加工時間を最小にするための方法について、詳細に説明する。基板上にて加工矩形34、36上をスキャンエリア30、32が例えば図の下方から上方へ向かって遷移する場合を考える。ダンパ位置は図2に示した場合を想定する。このとき、エリアが直線状に遷移するので、ダンパ位置26、28も直線状に遷移する。なお、同時加工矩形は対であるから、各加工矩形における加工又はダンパ位置訪問順序(以下では加工シーケンスと記す)は、対になっている。即ち、加工又はダンパ位置訪問順序対(以下では加工シーケンス対と記す)における、同一順位(x番目に加工する加工位置を、順位xであると称する)の加工位置は、同一のタイミングにて処理される。
【0051】
まず、考慮すべき状況として、左右の穴配置が完全に同一の場合(全点が同一オフセットを持つ場合も含む。ここでのオフセットは、矩形同士のではなく、穴配置同士のである)、左右は全く同一の加工(同一の加工とは、基板上にて穴位置の訪問順序を可視化して線で結んだときの、経路の形状のことを指す)を行なうのが最も良い。従って、例えば左加工矩形34の最適化のみを行い、右加工矩形36に関しては、その結果を参照しながら複製すればよい。しかし、図10の例のように、左右の穴配置が異なる場合、場合によってはダンパ移動(加工点からダンパ位置への回避とダンパ位置から加工点への戻りのことを指す。以下単に回避移動と戻り移動と称する)を行なう必要が生じるため、加工計画は難しくなる。
【0052】
以下、図11を参照して、ステップ120の細かい工程を説明する。最初のステップ201は、左右穴配置が完全に同一か否かを判定する。
【0053】
完全に同一である場合には、ステップ204において、既に先願の段落[0207]〜[0285]に記載した、いずれかの穴開け位置訪問順序最適化及びXYステージ速度最大化工程を用いて、例えば左加工矩形34のみを最適化する。そして、ステップ205で、左加工矩形の結果を参照して、右加工矩形の穴開け位置訪問順序を決定する。
【0054】
一方、左右の穴配置が一致しない場合には、ステップ202で、ダンパ移動を含めた加工シーケンス対を発生させる。ステップ202を実現する方法として、次の(A)、(B)の2つの方法を考える。ここで、(A)は、できるだけダンパ移動が避けられるよう、座標差を利用する方法であり、(B)は、先願を基に発案した、一定周期(加工矩形の加工が進む方向における一定幅又は加工時間)毎に足りない穴数分ダンパ位置を補充するような方法である。これらの詳細は後述する。
【0055】
該加工シーケンス対を更にステップ203で改善する。ステップ202で(A)を選んだか、(B)を選んだかによって、ステップ203の方法が異なる。そこで、(A)を選んだ方法を(C)に、(B)を選んだ方法を(D)に説明する。
【0056】
なお、左右の穴開け位置が同一であるかどうかを識別せずして、ステップ202、ステップ203のみで処理を終了することも、当然可能である。
【0057】
以下、(A)、(B)、(C)、(D)の順に説明する。なお、以下の説明では穴開け位置を単に穴又は点と記す。
【0058】
以下、(A)、(B)は、ステップ202に関する提案である。
【0059】
(A)ダンパ移動回数を最少化する方法による加工シーケンス対の発生
以下では、左加工矩形34の穴数l、右走査矩形36の穴数rに対し、l≦rが成立しているとして議論する(一般性は失われない)。
【0060】
図12に示す如く、左走査矩形34にある穴Aに対して、同一のタイミングで加工できる穴とできない穴が存在する。即ち、スキャンエリア30、32のY方向のサイズをDとすると、穴AのY座標YA及び右加工矩形36における穴PのY座標YPについて、|YP−YA|≦Dが成立するならば、穴Pと穴Aとは、同一のタイミングで加工可能である。
【0061】
同時加工可能な穴と不可能な穴を効率良く識別するために、図13(a)のように、まず、左右両方の加工矩形の穴をY座標値でソートしておき、各穴に穴番号を付随させる。即ち、左加工矩形34における番号がiである穴のY座標値をyl[i]と書くと、yl[i]≦yl[i+1]となる(右加工矩形36についても同様である)。次いで、左加工矩形34の各穴について、同時加工可能な、右加工矩形36における穴の最初(frの矢印)と最後(toの矢印)の番号を、スキャンサイズに基づいて、それぞれ調べておく。そして、本(A)工程にて、左加工矩形の穴に対し、右加工矩形の、番号がfr以上かつto以下の穴とが1対1で対応が見つかった両穴は両撃ち(同時加工)であり、対応が見つからなかった穴は片撃ちである。
【0062】
更に詳細に説明するために、図13(b)に、左右の穴を対応させた例を示す。この例の場合、左加工矩形の2つの連続する部分、1番からlc番までとlc+1番からl番までが右加工矩形に連続して対応しているため、片撃ちから両撃ちへと変わる回数(ダンパ戻り)が2回、両撃ちから片撃ちへと変わる回数(ダンパ回避)が1回である。即ち、本例のように、左右の対応をできるだけ連続になるようにすれば、ダンパ移動(戻り+回避)回数が最少となる。
【0063】
図14(a)に、各穴に対しfrとtoとを記憶した表(from−to表と称する)を、図14(b)に表と連続対応との関係を示す。表に示すように、番号iの穴のfrに当たる番号とtoに当たる番号とを、それぞれfr[i]、to[i]とする。そして図14(b)のように、水平方向に各穴のfr[i]とto[i]を結んだ線分を書き、順番に番号が垂直方向に増えるようにした図を書くと、左右が連続して対応することと、縦に並んだ水平線分と傾き1の直線とが連続して交差することとは同一である(交点が実際に対応する番号)。
【0064】
このような、図14(b)のように表わされた水平な線分群と、傾き1の直線との交差関係を考える問題は、図15に示すように、from−to表の各要素fr[i]、to[i]から行番号iを引いた表に変換することにより、水平な線分群と、垂直な直線との交差関係を考える問題として捉えることができる。更に、番号kの線分(fr[k]−kとto[k]−kを結んだ線分)と番号k+1の線分について、オーバーラップする番号同士を番号の小さい方から大きい方に向かって垂直線で結べば、水平な線分群と合わせて碁盤目状の有向ネットワークができる。ここで有向としたのは、ネットワークのリンクは、上方向若しくは右方向のみであり、逆向きは許されないためである。
【0065】
より詳細に述べると、図16に示す如く、始点(source)をfr[1]−1に当たる点、終点(sink)をto[l]−lに当たる点とした碁盤目状の有向ネットワークにおいて、始点から終点へ向かうパスそれぞれは、加工シーケンス対に対応する。即ち、縦移動で至る点は両撃ちシーケンス対を表わし、横移動で至る点は片撃ちシーケンスを表わす。又、パスの折曲においては、左に曲折する場合はダンパ位置から戻りが発生し、右に曲折する場合はダンパ位置への回避が発生する。従って、このような碁盤目状ネットワークにおける折曲数が最少なパスを見つける問題と、ダンパ移動回数を最少化する問題とは、等価な問題である。
【0066】
碁盤目状ネットワークの折曲数最少化問題は、公知の最短路問題(Shortest Path Problem)の解法の1つである、動的計画法に基づくダイクストラの方法を応用した方法によって最適解を得ることができる。ここで応用と言っているのは、距離の評価方法に対してである。即ち、ある点からある点までの距離を、折曲数で評価しさえすれば、ダイクストラ法と全く同一の方法を用いることができる。
【0067】
以上をダンパ移動回数最少化工程として、図17にフローチャートにしてまとめる。ステップ301にて左右それぞれの加工矩形内の穴をY座標値でソートして付番する。次いでステップ302にて左加工矩形(穴数の少ない方)の各穴に対し、同時加工可能な右加工矩形(穴数の多い方)の穴の開始番号と終了番号を求め、表を作成する。更に、表の各データから、表の行番号を引く。続くステップ303では、この表に基づいて、碁盤目状のネットワークを作成する。更に続くステップ304で、碁盤目状ネットワークにおける曲折数最少なパスを、動的計画法に基づいた方法で求める。最後に、ステップ305において、求まった曲折数最少なパスに基づいて、両撃ち、片撃ちの切り替えタイミングを決定する。
【0068】
【実施例】
以下にダンパ移動回数最少化工程の実施例を2つ挙げる。
【0069】
図18に示した実施例1は、図18(a)に示すような穴配置をしており、Y座標値でソートされた穴座標値は図18(b)のようであるとする。スキャンエリアの大きさを50000としてfrom−to表を作成し、行番号を差し引いた結果は図18(c)のようになる。図18(c)に基づき碁盤目ネットワークを図18(d)の如く作成し、曲折数最少なパスを図18(e)のように得る。このパスに基づき片撃ち、両撃ちの切り分けを行なうと、図18(f)の如くとなる。この場合のダンパ移動回数(ネットワーク状の曲折数)は2回である。
【0070】
更に、極端な穴配置例である、図19に示した実施例2では、同様の図19(a)〜(f)の処理を行なった結果、ダンパ移動回数は4回となる。穴数と比較して多いように感じてしまうが、最適解である。
【0071】
ダンパ移動回数最少化工程の処理により、加工シーケンス全体が、両撃ちシーケンス対と、片撃ちシーケンスとに分けられる。ここで、Y座標値でソートし、付番されたままの加工順序を初期解としても良いが、分けられた各シーケンスそれぞれに関して、例えば、基板上の加工順序通りに穴を線で繋いだ形状が、既に先願で説明した「蛇行経路」となるように、加工順序を並び替えても良い。ここでいう蛇行経路の例を、図20に挙げる。
【0072】
なお、本説明では、同時加工可能であるかどうかをスキャンエリアのサイズD離れているかどうかで判断したが、実際には、fθ補正等による加工計画と実機との誤差を考慮して、加工計画においてはDより若干小さい値とする。
【0073】
(B)一定(の距離又は穴数の)周期毎にダンパ移動を挿入する方法による加工シーケンス対の発生
図21に、本工程の概念図を示す。図示する如く、全体的には、両加工矩形内の経路(基板上の加工順序通りに穴を線で繋いだ形状)は、適切な幅で折り返すような蛇行経路とする。但し、ダンパ位置への移動に都合がいいように、両加工矩形の折り返し幅(以下では、短冊状にステージ移動方向に沿って矩形を分割しているので短冊幅と称する)hは同一とし、蛇行の方向(蛇の右利き、左利き)は、同じタイミングでダンパ位置に接近するように、左右対称にする。
【0074】
本工程のフローチャートを図22に示す。ステップ401で短冊幅hを計算し、ステップ402で蛇行経路を発生させ、ステップ403で一方の加工矩形に穴不足がある場合は、その部分で両撃ち、片撃ちを切り替えるようにする。これにより、片撃ちシーケンスの開始時及び終了時に、ダンパ移動が発生するようになる。ここで、短冊幅の決定は、既に先願で記載済みであるが、穴密度に基づいて行なう。穴数が異なる場合は、穴数の多い方を基準とする。なお、複数の短冊を一組として、各組毎に両撃ち、片撃ちを切り替えるようにしてもよい。又、蛇行経路の発生法も、既に先願に説明済みである。
【0075】
なお、ここでは短冊幅hは加工矩形内の穴密度に基づき定められるので、固定された値となるようにしたが、例えばY座標値の小さい方から数えたとき、所定の穴数に基づいて幅を定めるようにしてもよい。特に、穴密度が一様では無い場合は、局所的な密度を反映することが可能である。
【0076】
以下(C)、(D)は、図11のステップ203に関する提案である。又、これらの提案は、既に先願にて提案した、加工矩形内の加工時間が最小となるように穴開け位置訪問順序及びXYステージ動作速度を最適化する工程(図23のステップ510)の適用あるいは応用である。以下、上記の工程を、単に「最適化工程」と称することとする。
【0077】
(C)ダンパ移動回数最少化による場合の加工シーケンス対の改善
ダンパ移動回数最少化により加工シーケンス対を発生させた場合、加工シーケンス対は、両撃ちシーケンス対と片撃ちシーケンスに無駄なく分かれている。従って、シーケンス毎に切り分けて最適化を行うのが望ましい。即ち、図24のフローチャートに示すように、最初のステップ601にて、シーケンス毎の反復を開始する(この反復はステップ605を終端とする)。続くステップ602で、現在のシーケンスが片撃ちか両撃ちかを判断し、次いで片撃ちシーケンスの場合は、ステップ603の、両撃ちシーケンス対の場合はステップ604の「最適化工程」を行なう。ステップ605では、ステップ603あるいは604で求まった各シーケンスの加工計画を基にして、全体を等速で加工できるように、ステージ等速最大速度を算出し、更に、特に密度にむらがある場合などは、ステージ速度パターンを最適化する。
【0078】
以下、ステップ603、604、605について詳細に述べる。
【0079】
片撃ちシーケンスの最適化工程であるステップ603は、既に先願で説明した「最適化工程」と全く同一である。ゆえに説明を省略する。
【0080】
両撃ちシーケンス対の最適化工程であるステップ604は、左右それぞれのシーケンスに対して(片撃ちシーケンスの)「最適化工程」を実行し、次いで、左右シーケンスがそれぞれ改善された加工シーケンス対全体に対し、左右シーケンスを同時に最適化する。具体的には、例えば、局所探索法に基づく手法で、現在のシーケンス対に近傍操作を加えたシーケンス対が加工時間を短縮できるようであれば置き換える、といった処理を反復する。この近傍操作は、シーケンスが対である場合は、図25のように操作方法が2つある(片近傍操作、双近傍操作と名付ける)。即ち、Or−opt近傍の場合は、元のシーケンスが図25(a)の如くであったとき、「片Or−opt」と称することとした図25(b)のような操作(片近傍操作)と、「双Or−opt」と称することとした図25(c)のような操作(双近傍操作)と、2つある。これらの近傍操作は、どれか1つ用いるも全て用いるも自由である。なお、移動コストは、左シーケンス及び右シーケンスにおける移動コストの大きい方で評価する。
【0081】
ステージ最大速度算出工程であるステップ605は、既に先願で説明した方法とほぼ同一である。但し、ダンパ移動時の移動コストに注意が必要である。既に先願で説明したとおり、ステージ移動を伴う方向の移動コストは、ステージ移動速度(またはエリア遷移速度)V、点間移動量difの2つで評価できる。即ち、移動コストを計算する関数costに対し、(1)式で計算されると言える。
【0082】
t=cost(V,dif) …(1)
【0083】
図26(a)に示す如く、時刻tfにダンパ位置にいたときのダンパ戻りの場合、Y座標がYPの位置へ戻るときの点間移動量は、時刻tfの加工エリア中心位置がV*tf−D/2なので(2)式である(Dは加工エリアのサイズ)。
【0084】
dif=YP−(V*tf−D/2) …(2)
【0085】
(2)式を(1)式に代入すれば移動コストが求まる。
【0086】
一方、図26(b)のような、時刻tfに座標(XP,YP)にいたときのダンパ回避の場合、スキャンエリアの中心からのダンパ位置がX方向にだけXDずれている場合には、ステージ速度に拘らず移動量はX方向にXD−XP、Y方向にV*tf−D/2−YPであるから、点間移動量のみから計算されるステージ停止時の移動コストとみて、これらの移動量を代入して計算すれば移動コストが求まる。
【0087】
なお、図24に示したステップ601、602はスキップ可能である。又逆に、ステップ601、602を行なった後に、ステージ最大速度を算出するステップ605に進み、終了することも可能である。即ち、計算時間を考慮して、流れ図の一部のみを実行して処理を終えることが可能である。
【0088】
(D)一定周期毎にダンパ移動を挿入する場合のシーケンス対の改善
一定周期毎のダンパ移動による経路の場合も、基本的には実は既に(C)で説明したダンパ移動回数最少化の場合の工程とほぼ同一である。但し、(C)の場合は両撃ちと片撃ちが明確に切り分けられていたが、(D)では切り分けが曖昧である。そこで、図27に示す如く、図24のステップ606の代わりに、ステップ606´で、両撃ちシーケンス最適化工程を行なう。今回の場合、片近傍操作の結果、左右のある順位が共にダンパ位置となることがあるが、その場合のダンパ位置は除去できることに注意が必要である。即ち、図28(a)の表に示す如く、左シーケンスが(A,B,X,C,D,E,F,X,G,H,…)、右シーケンスが(a,b,c,d,e,X,X,f,g,h,…)(Xがダンパ位置)のとき、片近傍操作により左シーケンスのBがGの後にリロケートされたとする。すると図28(b)のようなシーケンスとなり、順位7は共にダンパ位置となる。このとき、図28(c)の如く、順位6の加工から順位8の加工に直接進むようにすれば、無駄な動作を省くことが可能となる。
【0089】
なお、前記実施形態においては、高速位置決め手段がスキャナとされ、低速位置決め手段がステージとされていたが、位置決め手段の種類や組合せはこれに限定されず、例えば出願人が特開2000−71089や特開2000−334637で提案したような、リニアモータXYステージと高速加工機とを組み合わせたスクリーンカットシステム、あるいはフラッシュカットシステムであってもよい。
【0090】
又、適用対象も、点状の加工を行なうレーザ穴開け機に限定されず、線状の加工を行なうレーザ切断機、機械式ドリルの穴開け機、ヒューズ溶断機、マーキング装置、露光装置等にも同様に適用できる。
【0091】
【発明の効果】
本発明によれば、2軸加工機の非停止制御加工を効率良く迅速に行なうことができる。又、1軸機のサイクル加工計画と組合わせて、エネルギシェア方式でサイクル加工を行う場合の加工計画も可能である。
【図面の簡単な説明】
【図1】2ヘッドのレーザ穴開け機の構成を示す光路図
【図2】ビームダンパ位置の例を示す平面図
【図3】本発明が適用されるレーザ穴開け機の全体構成を示すブロック図
【図4】出願人が特願2002−26189で提案した1軸機加工計画による加工進捗状況を示す平面図
【図5】本発明に係る2軸機加工計画による加工進捗状況を示す平面図
【図6】同じく同等加工矩形の別の配置例を示す平面図
【図7】同じく概略的な加工計画の流れ図
【図8】ビームダンパ位置の他の例を示す平面図
【図9】ビームダンパ位置の更に他の例を示す平面図
【図10】本発明が適用され、同時加工される一対の加工矩形の例を示す平面図
【図11】本発明の実施形態における加工計画の流れ図
【図12】本発明の原理を説明するための同時照射可能な穴と不可能な穴の説明図
【図13】同じくY軸値ソートされた穴の左右マッチングとダンパ移動回数最少化との関係を示す説明図
【図14】同じく左右の連続した対応探しとfrom−to表の関係を示す図表
【図15】同じくfrom−to表の変換による碁盤目状ネットワークのパス探索問題への帰着を示す説明図
【図16】同じく碁盤目状ネットワークと実加工動作との対応関係を示す線図
【図17】同じくダンパ移動回数最少化工程の手順を示す流れ図
【図18】同じく実施例1を示す説明図
【図19】同じく実施例2を示す平面図
【図20】同じく蛇行経路を示す平面図
【図21】同じく一定周期毎のダンパ位置の補充の概念図
【図22】同じく一定周期毎のダンパ移動を挿入する場合の加工シーケンス発生工程を示す流れ図
【図23】特願2002−26189による加工計画の手順を示す流れ図
【図24】ダンパ移動回数最少化の場合の図11のステップ203の手順を示す流れ図
【図25】同じく片Or−opt操作と双Or−opt操作を示す説明図
【図26】同じくダンパ移動コストを示す平面図
【図27】同じく一定同期毎にダンパ移動を補充する場合の図11のステップ203の手順を示す流れ図
【図28】同じく片近傍操作によるダンパ移動削除の例を示す図表
【符号の説明】
6…XYステージ
8…基板
10…レーザ発振器
11、15、17…レーザビーム
14…分岐装置
18、20…ガルバノシステム(加工ヘッド)
26、28、29…ダンパ位置
30、32…スキャンエリア(加工エリア)
34、36…加工矩形
38…レーザ穴開け機
40…パソコン(PC)
54…加工計画プログラム(Prg)
Claims (20)
- 共通の発振器から発振されたビームを分割して2つの加工ヘッドに供給し、ワーク上の加工実行箇所を広範囲に移動させることが可能な低速位置決め手段と、所定の大きさの加工エリア内に移動させることが可能な高速位置決め手段を同時に動作させながら、ワーク上に散在する複数の加工位置を、各加工ヘッドに対応して設定した加工矩形毎に同時加工する際の2軸加工機の加工計画方法であって、
各一対の同時加工矩形の加工時間が最小となるように、加工又はダンパ位置訪問順序の対、並びに、低速位置決め手段の動作速度を決定することを特徴とする2軸加工機の加工計画方法。 - 前記決定に際して、
一対の同時加工矩形内における加工位置の配置が同一の場合は、一方の加工矩形のみについて、加工時間が最小となるように加工位置訪問順序並びに低速位置決め手段動作速度を決定し、他方の加工矩形は結果を参照して加工位置訪問順序を決定することを特徴とする請求項1に記載の2軸加工機の加工計画方法。 - 前記決定の工程が、
加工又はダンパ位置訪問順序の対を暫定的に決定する、暫定加工シーケンス対発生工程と、
該暫定加工シーケンス対に基づいて、加工時間が最小となるように、加工又はダンパ位置訪問順序対、並びに、低速位置決め手段動作速度を決定する、加工シーケンス対の加工時間最小化工程と、
を含むことを特徴とする請求項1に記載の2軸加工機の加工計画方法。 - 前記暫定加工シーケンス対発生工程において、ダンパ移動回数を最小化することを特徴とする請求項3に記載の2軸加工機の加工計画方法。
- 前記暫定加工シーケンス対発生工程において、低速位置決め手段動作方向に沿って、穴数又は距離の一定周期毎にダンパ移動を挿入することを特徴とする請求項3に記載の2軸加工機の加工計画方法。
- 前記決定に際して、一方の加工矩形のある加工位置と、同時加工される他方の加工矩形のある加工位置とが、同一タイミングで加工可能かどうかの判断を、
両加工位置の低速位置決め手段動作方向座標値の差と、加工エリアの該方向における所定の大きさとに基づいて行うことを特徴とする請求項1に記載の2軸加工機の加工計画方法。 - 前記ダンパ移動回数を最小化する工程は、動的計画法に基づくものであることを特徴とする請求項4に記載の2軸加工機の加工計画方法。
- 前記ダンパ移動回数を最小化する工程は、
同時加工する双方の加工矩形の加工位置を、低速位置決め手段動作方向座標値でソートして付番する、ソート工程と、
加工位置数の少ない一方の加工矩形における各加工位置について、他方の加工矩形における、同一タイミングで加工可能な加工位置の開始番号及び終了番号を記憶する表を作成する、from−to表作成工程と、
該from−to表に従って、1の方向への移動が両撃ちシーケンス対であることに、1と異なる2の方向への移動が片撃ちシーケンスであることに対応する2つの方向を有するネットワークを作成する、ネットワーク作成工程と、
該ネットワーク上の、移動方向を変える回数を最少とする経路を探索する、曲折数最少経路探索工程と、
を含むことを特徴とする請求項4に記載の2軸加工機の加工計画方法。 - 前記加工シーケンス対の加工時間最小化工程において、
片撃ちシーケンスと両撃ちシーケンス対を切り分けて処理することを特徴とする請求項3に記載の2軸加工機の加工計画方法。 - 前記加工シーケンス対の加工時間最小化工程は、
まず片撃ちシーケンス、又は、両撃ちシーケンス対毎に、加工時間が最小となるように、加工位置訪問順序最適化並びに低速位置決め手段動作速度最大化、又は、加工又はダンパ位置訪問順序対最適化並びに低速位置決め手段動作策度最大化を行い、
次いで、加工シーケンス対全体の低速位置決め手段動作速度最大化を行う
ことを特徴とする請求項3に記載の2軸加工機の加工計画方法。 - 前記加工シーケンス対の加工時間最小化工程は、
まず片撃ちシーケンス、又は、両撃ちシーケンス対毎に、加工時間が最小となるように、加工位置訪問順序最適化並びに低速位置決め手段動作速度最大化、又は、加工又はダンパ位置訪問順序対最適化並びに低速位置決め手段動作速度最大化を行い、
次いで加工シーケンス対全体について、加工時間が最小となるように、加工又はダンパ位置訪問順序対、並びに、低速位置決め手段動作速度を改善する
ことを特徴とする請求項3に記載の2軸加工機の加工計画方法。 - 前記加工シーケンス対の加工時間最小化工程における近傍操作として、
片近傍操作と両近傍操作とを使い分ける
ことを特徴とする請求項3に記載の2軸加工機の加工計画方法。 - 前記片近傍操作の結果、ある順位が共にダンパ位置となった場合は、該ダンパ位置を取り除くことを特徴とする請求項12に記載の2軸加工機の加工計画方法。
- 共通の発振器から発振されたビームを分割して2つの加工ヘッドに供給し、ワーク上の加工実行箇所を広範囲に移動させることが可能な低速位置決め手段と、所定寸の加工エリア内に移動させることが可能な高速位置決め手段を同時に動作させながら加工する際の2軸加工機の加工計画方法であって、
加工時低速位置決め手段静止方向の辺長が、所定寸の加工エリアの該方向の大きさ以下であり、一対の同時加工矩形の配置間隔が加工ヘッド間の間隔と同一であるような、加工矩形の配置を決定する工程と、
各一対の同時加工矩形に対して、加工時間が最小となるように、加工又はダンパ位置訪問順序の対、並びに、低速位置決め手段の動作速度を決定する工程と、
低速位置決め手段の動作経路を決定する工程と、
を含むことを特徴とする2軸加工機の加工計画方法。 - 請求項1乃至14のいずれかに記載の加工計画方法により決定された加工を行なうことを特徴とする加工方法。
- 請求項1乃至14のいずれかに記載の加工計画方法又は請求項15に記載の加工方法を実施するためのコンピュータプログラム。
- 共通の発振器から発振されたビームを分割して2つの加工ヘッドに供給し、ワーク上の加工実行箇所を広範囲に移動させることが可能な低速位置決め手段と、所定の大きさの加工エリア内に移動させることが可能な高速位置決め手段を同時に動作させながら、ワーク上に散在する複数の加工位置を、各加工ヘッドに対応して設定した加工矩形毎に同時加工する際の2軸加工機の加工計画装置であって、
各一対の同時加工矩形の加工時間が最小となるように、加工又はダンパ位置訪問順序の対、並びに、低速位置決め手段の動作速度を決定する手段を備えたことを特徴とする2軸加工機の加工計画装置。 - 請求項17に記載の加工計画装置を含むことを特徴とする加工装置。
- 請求項17に記載の加工計画装置又は請求項18に記載の加工装置を実現するためのコンピュータプログラム。
- 請求項16又は19に記載のコンピュータプログラムが記録された、コンピュータ読取り可能な記録媒体。
Priority Applications (1)
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---|---|---|---|
JP2003016412A JP2004223593A (ja) | 2003-01-24 | 2003-01-24 | 2軸加工機の加工計画方法及び装置 |
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Cited By (3)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
JP2004230408A (ja) * | 2003-01-29 | 2004-08-19 | Mitsubishi Electric Corp | レーザ加工装置 |
JP2010082631A (ja) * | 2008-09-29 | 2010-04-15 | Hitachi Via Mechanics Ltd | レーザ加工装置 |
JP2012515653A (ja) * | 2009-01-22 | 2012-07-12 | シーエーヴィ アドヴァンスト テクノロジーズ リミテッド | 材料に穴を開けるための方法 |
-
2003
- 2003-01-24 JP JP2003016412A patent/JP2004223593A/ja not_active Withdrawn
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