JP2004223377A - 塗布膜形成方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】基板上に塗布液を塗布し、これを固定して塗布膜を得る塗布方法において、塗布膜周辺に発生するエッジビートを減らし、塗布膜の凹凸形状を制御することができる塗布方法を提供する。
【解決手段】基板に塗布液を伸展及び固定し、塗布膜を形成する塗布膜形成方法において、該塗布液の伸展中もしくは伸展後に、伸展された塗布液の少なくとも一部を、塗布液中の少なくとも一つの化合物もしくは塗布液の組成を選択的に変化させ、塗布膜の表面の凹凸形状を制御することを特徴とする。
【選択図】 図2

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、たとえば、画像表示装置、インクジェット記録装置等の部品、プリント基配線基板、その他のデバイスの部品等において、基板上に必要な平坦性、もしくは凹凸をもった塗布膜の形成方法にかかわる。
【0002】
【従来の技術】
従来から、回路基板、液晶表示素子、画像形成装置、インクジェット記録装置等の製造工程では、基板上に金属、ガラス等の無機物、および樹脂等の有機物、あるいはこれらの混合物など様々な材料によって塗布膜を形成している。また、塗布膜を何層か重ね、多層構造としてデバイス化することにより様々な機能を発現させている。従って、これらの塗布膜の形成、塗布膜の積層、もしくは塗布膜のパターニングなど、多くのプロセスに於いて、塗布液を塗布する工程が必要となっている。
【0003】
【特許文献1】特開平3−278854号公報
たとえば、プリント基板、あるいはIC等の半導体装置の製造においては、基板上にフォトレジスト膜を形成後、フォトレジスト膜を露光・現像して所定のパターンを形成し、パターニングフォトレジスト膜をマスクに用いて機能膜を所定のパターンに加工する方法がとられる。このフォトレジスト膜を形成するには、一般にスピンコーティング等の手法が用いられ、たとえば特開平3−278854号公報等に公報に開示されているような塗布装置及び塗布膜形成方法により塗布し成膜して製造される。
【0004】
【特許文献2】実開平6−33150号公報
また、耐エッチャント及び薬品・溶剤に対する保護のための保護膜、パッシベーション膜等の平坦化膜に関しても、レジスト等の塗布液をスピンコート法により塗布して硬化させる方法が一般的である。スピンコート法は平面のみならず、凹凸面への膜形成についても使用される。実開平6−33150号公報には、このような塗布装置及び塗布膜形成方法が開示されている。
【0005】
【特許文献3】特開平5−330066号公報
また、液体噴射記録ヘッドデバイスの製造においては、たとえば特開平5−330066号公報に示されるように、いくつかの機能膜をスピンコート法などを用いて形成する事が知られている。
【0006】
図12にスピンコートによる塗布膜形成方法を示した。図12(a)は、スピンコート法の概略を示した模式図、図12(b)はスピンコート法により形成した塗布膜の概略図である。図中1は基板、2は塗布液、3は塗布膜である。20はスピンコーターの基板支持体、21は塗布ヘッドである。
【0007】
まず、基板1を基板支持体20の上に密着させ、チャックする。塗布ヘッド21から塗布液2を適宜、基板1上へ供給する。さらに基板支持体20を所定の回転数で図に示すように回転させて塗布液2を基板1上に伸展させたのち、これをホットプレート(図示せず)上で乾燥させ、図12(b)に示すような塗布膜3を得る。
【特許文献4】特開2000−5682号公報
また、塗布膜の形成方法としてはスピンコート法のほかに、特開2000−5682に示されるように、スリット状の塗布ヘッドから基板に塗布液を塗布し、塗布ヘッドと基板をスリットと垂直方向に相対移動させることにより、基板上の特定の領域にのみダイレクトにコーティングすることができるスリットコート法も知られている。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら従来の技術に示した、スピンコート法及びスリットコート法においては、図12(b)に示す様に、塗布膜のエッジ部に膜厚の異常に盛り上がった部分(エッジビード)4が発生し、その内側にやや膜厚の薄い窪み部5が発生するという課題があった。エッジビード4及び窪み部5が発生すると、膜厚の安定した平坦部6の面積が塗布膜3全体の面積よりも大幅に小さくなってしまう。そのため、1枚の基板から複数の液体噴射記録ヘッドデバイスのチップを多数個取りする場合等では、得られるチップの個数が限られ、塗布膜や基板の大きさを有効に活かせなくなってしまう。また、結果的に塗布材料の使用効率が落ちてしまうことになり、コスト高となってしまう。
またスリットコート法の場合、塗布膜のエッジ部にエッジビード4及び窪み部5が発生することをあらかじめ考慮し、均一な膜厚が必要な平坦部6に対して塗布面積を広くとることが考えられている。これにより、少なくとも均一な膜厚が必要な領域においては、均一な膜厚を確保することができる。しかしながらデバイスが必要以上に大きくなってしまったり、後工程で行なう配線等を施す際にデバイス設計上の制約が生じてしまうため、現実的とは言えない。
【0009】
さらに、塗布膜3にフォトリソなどによってパターニングを行ないたい場合は、エッジビード4が邪魔になって、マスクの位置合わせに影響が出ることがある。このため、特開平3−278854号に開示されているように、エア等によりエッジビード4を除去することも考えられている。しかしながら、エッジビード4を除去する方法では平坦部6の面積を広げることは出来ず、デバイスの切り出し個数はこれらのエッジビード4及び窪み部5の影響を受けてしまう。また、エッジビード4が除去される際に、液体の浸透により、塗布膜の縁に新たな盛り上がりが出来たり、塗布膜の構造に影響を与えるなどして、更に問題が発生してしまう場合もある。
【0010】
これらのエッジビード4及び窪み部5の形状は、塗布膜のエッジ部から通常数mm〜10mm程度入ったところに形成される。ただし、塗布液2の粘度、乾燥性などの性質や、塗布膜3の厚さ、乾燥等により塗布された塗布液膜を固定する方法などの影響を受けるため、それら条件によって、塗布膜のエッジ部から10mm以上の領域にまで及ぶこともある。この塗布膜の周囲に発生するエッジビード4及び窪み部5の低減が精密デバイスのローコスト生産等のために必要となっている。
【0011】
【課題を解決するための手段】
前記課題を解決するため、本発明は、基板に塗布液を伸展及び固定し、塗布膜を形成する塗布膜形成方法において、該塗布液の伸展中もしくは伸展後に、伸展された塗布液の少なくとも一部を、塗布液中の少なくとも一つの化合物もしくは塗布液の組成を選択的に変化させ、塗布膜の表面の凹凸形状を制御する塗布膜形成方法を提案している。これは、塗布と同時、塗布液の所定領域に選択的に不均一状態を発生させながら塗布液を塗布する塗布方法である。
【0012】
【発明の実施の形態】
まず、図3乃至図7を用いてエッジビードが形成される原理について説明する。
【0013】
図3はスリットコート法などを用いて塗布液を塗布する場合の理想的な膜形状の断面図の一部である。図中1は基板、3は塗布膜、7は塗布液膜である。図3(a)は塗布直後の塗布液膜7の断面図であり、図3(b)は塗布液膜7を乾燥もしくは化学反応、物理反応により塗布膜化した塗布膜3の断面図である。塗布液膜7は、乾燥等により揮発成分等が蒸発して塗布膜化して塗布膜3となるため、塗布膜3の膜厚は、塗布液膜7に対して大幅に薄くなる。
【0014】
塗布液2を基板1上に塗布した場合、固体である基板1の上面と、液体である塗布液2と、これらを取り巻く気体とがそれぞれの界面張力で釣り合う事となる。重力を考慮すると、図4に矢印(4a、4b、4c)で示してた状態となる。図4の矢印5−aに示す様に、一般的な表面エネルギーをもつ固体(基板1)に対して、液体(塗布液2)は90度以下の接触角を持って安定する。
【0015】
従って、塗布液膜7の端部では、界面のバランスを保つためには、図5(a)に示す矢印(5a、5b、5c)の方向に力が加わる。しかしながら重力を考慮すると、塗布液膜7の側面に加わる力は、内側方向に傾斜を持つように変形して安定する。すなわち図5(b)に示す様に、矢印5aで示す方向からある傾斜を持った矢印5dで示す方向で安定する。またその際、塗布液膜7の基板1との接触面は、容積の変化がないとすると、塗布液が外方向にスライドした状態となる。
【0016】
次に、この実際の液膜をそのまま乾燥させていく過程を図6を用いて説明する。図6(a)は、図5(b)で、塗布液膜7の乾燥状態を模式的に表したものである。図中の矢印で示したように、塗布液膜7は、表面および端部から溶剤が揮発し乾燥していく。この場合、破線の円で示した8の部分の表面および端部から乾燥が進み、他の部分と比べて溶質の含有率が高くなる。その結果、図6(b)に示す様に、この部分における塗布液膜7の表面張力が他の部分に比べて高くなり、その表面張力の不均衡によって、塗布液膜7の中で物質の移動が起こる。その結果、この部分を中心に図6(c)に示すような形状の特異点が形成され、更にこの部位の乾燥が進んでエッジビードが成長する。乾燥が完全に行なわれる、図6(d)に示すように、塗布液膜7は塗布膜3となり、塗布膜3の端部および内部からの液の移動によって、エッジビード4が形成されるとともに、その周囲に平均膜厚より膜厚の薄い膜の窪み部が形成される。
【0017】
次に、図7を用いて本発明による塗布方法における、エッジビードの形成される原理を説明する。まず図7(a)に示す様に、塗布液2を塗布直後に塗布液膜7のエッジ部分に、塗布液2中の少なくとも一つの化合物、もしくは塗布液2の組成を変化させる手段として、ピンポイント加熱ヒータ22によりピンポイントで熱を加える。塗布液膜7のエッジ部が加熱される結果、図7(b)に示す様に、エッジ部分の溶剤の揮発が非常に早まり溶質濃度が上がるため、エッジ部分に向かって直接塗布液膜7が流れ込む事となる。さらに加熱を継続する事により、図7(c)に示す様に、塗布液膜7はエッジ部に向かって流れ込む。その結果、図7(d)に示す様に、この加熱により強制的に発生した表面張力の不均衡部分にさらに溶質が集まり、塗布された液膜のエッジ上にエッジビード4が形成される。しかしながら、この時エッジ部に流れ込む塗布液膜7の容積は、加熱部位が非常に狭いため、前述の図6に示した場合と比べて著しく少なくなる。そのためエッジビード4の大きさは極端に小さくする事が可能となる。
【0018】
尚、塗布液中の少なくとも一つの化合物、もしくは塗布液の組成を変化させる手段としては、ピンポイント加熱ヒータのほか、ライン状加熱部、近赤外等の光を利用した加熱、あるいは塗布液が感光性の場合はUV等の光照射による化学反応促進するもの、あるいは強制排気等により部分的な乾燥を促進するものなどを用いる事ができる。また、塗布液膜への操作は、前述した塗布面3の表面から行なうものに限られるわけではなく、塗布膜3の斜めから、あるいは基板の裏面から行なうものであってもよい。
【0019】
尚、ピンポイント加熱ヒータ等の塗布液中の少なくとも一つの化合物、もしくは塗布液の組成を変化させる手段の加熱位置を変える事により、エッジビードの発生する位置を自由に調整する事もできる。
次に図面を参照して本発明の実施の形態を説明する
(第1の実施の形態)
図1は本発明の第1の実施の形態を説明する塗布機構の斜視図である。図中1は金属薄板、ガラス、シリコン、樹脂等からなる基板、2は塗布液、9は塗布液2が基板1と接触する際に形成される略半円状のビード、7は塗布液2が基板1上に液状のまま塗られた状態を示す塗布液膜である。21は塗布液2を塗布する塗布ヘッドであり、基板1に対して相対的に移動可能である。22は塗布ヘッド21の塗布液吐出部であるヘッド先端部である。23は塗布液膜7を選択的に加熱するピンポイント加熱ヒータであり24はピンポイント加熱ヒータ23を支持するヒータ支持部である。ピンポイント加熱ヒータ23は、ヒータ支持部24により塗布ヘッド21の両サイドの近傍に固定配置され、塗布ヘッド21と一体的に移動する。
【0020】
図2は本発明の1の実施の形態のプロセスを説明する塗布機構の断面図である。まず、図2(a)において、塗布液2を塗布ヘッド21に導入し、基板1をステージ(図示せず)にセットする。次に、図2(b)において、塗布ヘッド21から塗布液3を吐出し、ヘッド先端部22と基板1との間に略半円状のビード9を形成する。次に、図2(c)において、矢印で示す方向へ塗布ヘッド21およびピンポイント加熱ヒータ22を、塗布液3を吐出した状態でスキャンさせ、基板1上に塗布液膜7の形成を開始する。塗布ヘッド21をスキャンさせると同時に、ピンポイント加熱ヒータ23により、塗布液膜7のスキャン方向と平行に形成されるエッジ部を加熱する。次に、図2(d)において、塗布ヘッド21およびピンポイント加熱ヒータ23を更にスキャンさせ、基板1の所定の領域に塗布液膜7を形成する。次に、図2(e)において、塗布ヘッド21からの塗布液2の吐出を終了し、塗布ヘッド21を基板1より離し塗布が終了する。この時、ピンポイント加熱ヒータ23による加熱も終了する。最後に図2(f)において、基板1をホットプレート等の加熱手段32に移動し、所定時間塗布液膜を加熱乾燥し塗布膜3を形成する。この様にして塗布液膜7のスキャン方向と平行に形成されるエッジ部を、ピンポイント加熱ヒータ23により加熱する事により、エッジビードを減少させることができる。
(第2の実施の形態)
図8は本発明の第2の実施の形態を説明する塗布機構の斜視図である。尚第1の実施の形態を示す図1と同じ部材には同じ符号を付しており、その説明は省略する。図中25は塗布液膜7をライン状に加熱するライン状加熱部である。ライン状加熱部25は、塗布ヘッド21のスキャン方向後方の近傍に配置されており、塗布ヘッド21とは独立に動かすことが可能である。
図9は本発明の第2の実施の形態のプロセスを説明する塗布機構の断面図である。まず、図9(a)において、塗布液2を塗布ヘッド21に導入し、基板1をステージ(図示せず)にセットする。次に、図9(b)において、塗布ヘッド21から塗布液3を吐出し、ヘッド先端部22と基板1との間に略半円状のビード9を形成する。ビード9が基板1に接触した時点で、その接触点をライン状加熱機構25で加熱する。次に、図9(c)において、矢印で示す方向へ塗布ヘッド21およびピンポイントライン状加熱機構25を、塗布液3を吐出した状態で移動させ、基板1上に塗布液膜7の形成を開始する。この時ライン状加熱機構25の加熱は停止しておく。次に、図9(d)において、塗布ヘッド21を更にスキャンさせ、基板1の所定の領域に塗布液膜7を形成する。次に、図9(e)において、塗布液膜7の終端部分に差し掛かったビード9と基板1との接点を再びライン状加熱機構25を用いて加熱した。そのまま塗布ヘッド21を引き上げ、かつ液供給ポンプ(図示せず)を逆に作動させて残余塗布液を塗布ヘッド21中に引き込む。最後に図9(f)において、基板1をホットプレート等の加熱手段32に移動し、所定時間塗布液膜を加熱乾燥し塗布膜3を形成する。この様にして塗布液膜7の塗布開始エッジ部及び塗布終了エッジ部を、ライン状加熱機構25により加熱する事により、エッジビードを減少させることができる。
【0021】
[実施例1]
本実施例は、図1に説明した塗布装置を使用し、図2に説明した塗布膜形成方法を用いて、基板1に塗布膜3を形成した。基板1は100mm×100mm、厚さ1000μmの銅基板を用いた。塗布液2は環化ゴムのキシレン溶液(溶剤分88重量部)を用いた。ピンポイント加熱ヒータ23は、塗布液膜7には触れずにスポットで近赤外線を用いて加熱可能なものを使用し、スポット加熱機構を塗布ヘッド21のヘッド先端部22の両サイド近傍に配置した。この近赤外線強度は80℃の温度を直径3mmで出力するように調節されており、塗布液膜7の両サイドから1mmの領域にこのスポットがかかるように位置を調整した。
塗布液膜7は、50mm×50mmの大きさにおよそ20μm程度の厚さになるように施した。塗布直後、80℃のホットプレート上で1mmのプロキシで、該基板を10分加熱した。その後、100℃のホットプレートで同じくプロキシ1mmの条件にて、60分間加熱した。その後、基板1に形成された塗布膜3の両サイドに形成されるエッジビード4の、頂点の位置、高さ、および、周囲から平坦部までの距離を測定した。それぞれ測定結果の10箇所の平均測定結果を表1に示す。
〔実施例2〕
本実施例は、図8に説明した塗布機構を使用し、図9に説明した塗布プロセスを用いて、基板1に塗布膜3を形成した。基板、塗布液は実施例1と同様であり、塗布エリアおよび厚さについても実施例1と同様の条件で塗布を行なった。
【0022】
この基板を、80℃のホットプレートで10分加熱後、100℃のホットプレートで60分加熱した。ホットプレートは何れも、1mmのプロキシにて使用した。形成された塗布膜の、始端から終端の膜厚プロファイルを測定し、塗布膜3の塗布始端および終端に発生したエッジビードの高さ、位置、および平坦部までの距離を測定した。それぞれ測定結果の10箇所の平均測定結果を表1に示す。
【0023】
[比較例1]
実施例1と同様の塗布装置、塗布膜形成方法を使用して、同様の塗布膜を形成した。但し実施例1で使用したピンポイント加熱機構は作動させず、それ以外は同様にして行なった。塗布された塗布液膜を実施例1と同様の条件で乾燥し、この塗布膜について、幅方向および塗布方向の膜厚を測定して、ビードの高さ、位置、および平坦部までの距離を測定した。それぞれ測定結果の10箇所の平均測定結果を表1に示す。
【0024】
【表1】
Figure 2004223377
【0025】
表1に示したとおり、実施例1及び2と従来例1とを比較すると、実施例1及び2は比較例1に比べ塗布膜周辺部分の膜あれの範囲、エッジビードが小さいことがわかる。
【0026】
(第3の実施の形態)
図10は本発明の第3の実施の形態を説明する塗布液膜7のエッジ部の状態を示すプロセス図である。尚第1の実施の形態を示す図6と同じ部材には同じ符号を付しており、その説明は省略する。32はホットプレート等の加熱手段であり、33はホットプレート上にもけられた、選択的に加熱温度を調節する事が可能な、加熱温度調整部である。加熱温度調整部33は塗布液膜7のエッジ部の下部に設けられている。
【0027】
図10(a)において、塗布液膜7のエッジ部は加熱手段32の加熱温度調整部33により選択的に加熱される。次に図10(b)において、破線の円で示した31の部分の表面および端部から加熱された塗布液膜7のエッジ部は、瞬間的に表面張力が下がって、一端、塗布液膜7が矢印で示した内側方向に流れる。次に図10(c)において、エッジ部から、溶剤の揮発が起こりつづけ、またこれが加熱により促進されるため、溶質濃度が上がり、この部位に逆に液が流入してくる。次に図10(d)において、塗布液膜7を乾燥させ、基板1に固定して塗布膜3とすると、エッジビードが塗布膜3の端部に形成される。この様にして塗布液膜7のエッジ部に発生する、エッジビードを減少させることができる。
【0028】
(第4の実施の形態)
前述の第1乃至第3の実施の形態に示した方法は、塗布膜のエッジ部のエッジビードと窪み部を減少させる事を目的としているが、同様な方式を用いる事により、エッジ部以外の塗布膜も表面に、任意に凹凸を形成するともできる。
【0029】
図11は本発明の第4の実施の形態を説明するプロセス図である。本実施の形態では、2つのピンポイント加熱ヒータ23を平行に配置し、塗布液2を塗布直後に塗布液膜7上を加熱し、その状態で基板1を塗布ヘッドと相対移動させ、塗布液膜を形成後乾燥する事により、ライン上の凸部を形成する。
【0030】
まず図11(a)において、塗布液膜7上の必要な部分に複数のピンポイント加熱ヒータ23により加熱する。次に図11(b)において、加熱により表面張力が下がって一時液膜が凹状態となる。次に図11(c)において、加熱により溶媒の揮発が進んで溶質濃度が上昇することから表面張力が急上昇し周囲の液が流れ込んで、凸部を形成する。最後に図11(d)において、全面を加熱して塗布液膜7を固定し塗布膜3とする。この用にする事で、塗布膜3の形成と同時に、塗布膜3の表面の所定の位置に必要な凸部を形成することができる。
【0031】
また、エッジビード等の凸部を低く制御したい場合には、主たる溶媒と溶質の溶解性パラメータをできるだけ近いものにすれば良い。逆にエッジビード等の凸部を高く、または塗布膜の内側に形成しようとする制御したい場合には、主たる溶媒と溶質の溶解性パラメータを、異なる値のものにすると良い。すなわち、本発明による、加熱、光、雰囲気の調整によって、強制的に発生させる塗布膜の部分的な不均衡を、段差を小さくしたい場合には勾配の緩やかなものに、大きくしたい場合は勾配のきついものになるような塗布液を使用すればよい。これは、勾配のきついものにすれば塗布液膜が適度に流れ、凸部を形成したいところに効率良く集まり、勾配の緩やかなものすれば塗布液膜の流れる量が少ないためである。
【0032】
また、加熱、光照射、あるいは溶剤強制排気等の方式の強度、単位長さあたりの照射時間、塗布後開始までの時間、照射部位などについては、必要とする塗布膜の性質・厚さなどによって適宜調整する。また、これらを調節することによって、最後に残るエッジビードの幅・高さ・エッジビードの内側に現れる凹部の深さ・幅などを調整することができ、エッジビードの高さを低くする事や、エッジビードの位置を膜の端部に移動するなどの、完成した膜への要求に応じて調整すれば良い。
【0033】
以下に、本発明の実施態様例を示す。
(実施態様例1) 基板に塗布液を伸展及び固定し、塗布膜を形成する塗布膜形成方法において、該塗布液の伸展中もしくは伸展後に、伸展された塗布液の少なくとも一部を、塗布液中の少なくとも一つの化合物もしくは塗布液の組成を選択的に変化させ、塗布膜の表面の凹凸形状を制御することを特徴とする塗布膜形成方法。
【0034】
(実施態様例2) 前記塗布液中の少なくとも一つの化合物、もしくは塗布液の組成の変化は、加熱によって行なわれることを特徴とする実施態様例1に記載の塗布膜形成方法。
【0035】
(実施態様例3) 前記塗布液中の少なくとも一つの化合物、もしくは塗布液の組成の変化は、光照射によって行なわれることを特徴とする実施態様例1に記載の塗布膜形成方法。
【0036】
(実施態様例4) 前記塗布液中の少なくとも一つの化合物、もしくは塗布液の組成の変化は、部分排気等の雰囲気の制御によって行なわれることを特徴とする実施態様例1に記載の塗布膜形成方法。
【0037】
(実施態様例5) 前記塗布液中の少なくとも一つの化合物、もしくは塗布液の組成の変化は、進展する塗布膜のエッジ部にて行なうことにより、該エッジ部のエッジビードを減少させることを特徴とする実施態様例1ないし4のいずれか1項に記載の塗布膜形成方法。
【0038】
(実施態様例6) 前記塗布液の伸展及び固定する方法に、前記塗布液をスリット状のノズルから吐出させて塗布するスリットコート法を用いることを特徴とする実施態様例1ないし5のいずれか1項に記載の塗布膜形成方法。
【0039】
(実施態様例7) 塗布ヘッドから塗布液を吐出し、基板に該塗布液伸展及び固定する塗布装置において、該塗布液中の少なくとも一つの化合物もしくは塗布液の組成を変化させる手段を有することを特徴とする塗布装置。
【0040】
(実施態様例8) 前記塗布液中の少なくとも一つの化合物、もしくは塗布液の組成を変化させる手段は加熱であることを特徴とする実施態様例7に記載の塗布装置。
【0041】
(実施態様例9) 前記塗布液中の少なくとも一つの化合物、もしくは塗布液の組成を変化させる手段は光照射であることを特徴とする実施態様例7に記載の塗布装置。
【0042】
(実施態様例10) 前記塗布液中の少なくとも一つの化合物、もしくは塗布液の組成を変化させる手段は部分排気等の雰囲気の制御であることを特徴とする実施態様例7に記載の塗布装置。
【0043】
(実施態様例11) 前記塗布液中の少なくとも一つの化合物、もしくは塗布液の組成を変化させる手段は、伸展する塗布膜のエッジ部を変化させることを特徴とする実施態様例7ないし10のいずれか1項に記載の塗布装置。
【0044】
(実施態様例12) 実施態様例1ないし6のいずれか1項に記載された塗布膜形成方法を用いて形成されたことを特徴とする塗布膜形成物。
【0045】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明によれば、塗布液の基板への伸展中もしくは伸展後に、伸展された塗布液の少なくとも一部を、塗布液中の少なくとも一つの化合物もしくは塗布液の組成を選択的に変化させる事により、塗布膜を任意の形状に制御することができるため、塗布膜の形成に非常に有効である。
【0046】
また、塗布膜のエッジ部の少なくとも一つの化合物もしくは塗布液の組成を選択的に変化させる事により、エッジビードを減らしより平坦な塗布膜を形成する事ができる。これにより、ウエハ等から効率よくチップを切り出すことができる。また、エッジビードを除去する必要がなく、作業工程を短縮でき、作業コストを軽減できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1の実施の形態の塗布装置を示す斜視図。
【図2】図1に示した塗布装置を用いた塗布膜形成方法を説明する断面図。
【図3】塗布物の乾燥する状態を説明した断面図。
【図4】理想的な塗布液膜の状態について説明した断面図。
【図5】塗布液膜の状態について説明した断面図。
【図6】塗布液膜の乾燥状態の原理について説明した断面図。
【図7】本発明の塗布液膜の乾燥状態の原理について説明した断面図。
【図8】本発明の第2の実施の形態の塗布装置の示す斜視図。
【図9】図8に示した塗布装置を用いた塗布膜形成方法を説明する断面図。
【図10】本発明の第3の実施の形態の塗布膜形成方法を説明する断面図。
【図11】本発明の第4の実施の形態の塗布膜形成方法を説明する断面図。
【図12】従来技術の塗布膜形成方法を説明した断面図である。
【符号の説明】
1 基板
2 塗布液
3 塗布膜
4 エッジビード
5 窪み部
6 平坦部
7 塗布液膜
9 ビード
20 基板支持体
21 塗布ヘッド
22 ヘッド先端部
23 ピンポイント加熱ヒータ
24 ヒータ支持部
25 ライン状加熱部
32 加熱手段
33 加熱温度調整部

Claims (1)

  1. 基板に塗布液を伸展及び固定し、塗布膜を形成する塗布膜形成方法において、該塗布液の伸展中もしくは伸展後に、伸展された塗布液の少なくとも一部を、塗布液中の少なくとも一つの化合物もしくは塗布液の組成を選択的に変化させ、塗布膜の表面の凹凸形状を制御することを特徴とする塗布膜形成方法。
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