JP2004218452A - 内燃機関の排気浄化装置 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】空燃比のリーン運転時に排気中のNOxを吸着し、リッチ運転時に吸着したNOxを脱離、還元するNOx吸着触媒16を排気通路10に備える。NOx吸着触媒16の上流側と下流側排気の空気過剰率を検出する排気センサ17a、17bと、前記リッチ運転時の前記上流側と下流側排気の空気過剰率の差からNOx吸着触媒16の被毒状態を判定するコントローラ8を備える。
【選択図】 図4
Description
【発明の属する技術分野】
この発明は内燃機関の排気浄化装置、とくにNOx吸着触媒の硫黄被毒を的確に判定することのできる装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
内燃機関の排気浄化装置として、リーン運転時に排出されるNOxを吸着し、これをリッチもしくはストイキ運転時に還元処理するNOx吸着触媒が知られている。このNOx吸着触媒が燃料中に含まれる硫黄成分により被毒すると、NOx吸着性能が劣化する。良好なNOx処理効果を維持するには、NOx吸着触媒の被毒解除を行う必要があり、このために一時的に排気温度が高温となるように燃料供給量を制御する。
【0003】
NOx吸着触媒の被毒解除のためには被毒状態を正確に知る必要があり、内燃機関の走行距離、回転数、温度、リーン運転時間などに加えて、シリンダ内の混合気の状態、内部排気還流量などを考慮して、被毒状態を判定するものがある(特許文献1参照)。
【0004】
【特許文献1】
特開平11−107810号公報
【0005】
【発明の解決すべき課題】
しかし、このように内燃機関の運転状況からNOx吸着触媒の被毒状態を判定するものでは、燃料中に含まれる硫黄成分が仕向地も含めてさまざまに異なることから限界があり、また、センサ等により硫黄の被毒量を直接的に検出するのは非常に困難であることから、正確に被毒状態を判定することができなかった。
【0006】
NOx吸着触媒の被毒状態が正確に判定できなければ、NOxの浄化性能が低下したり、また被毒状態を正しく把握しないで被毒処理を行えば、不必要な被毒処理を繰り返すことによる燃費の悪化を招くこともある。
【0007】
本発明は、NOx吸着触媒の被毒状態を正確に判定することを目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明の内燃機関の排気浄化装置は、空燃比のリーン運転時に排気中のNOxを吸着し、リッチ運転時に吸着したNOxを脱離、還元するNOx吸着触媒を備える。前記NOx吸着触媒の上流側と下流側排気の空気過剰率を検出する手段と、前記リッチ運転時の前記上流側と下流側排気の空気過剰率の差から前記NOx吸着触媒の被毒状態を判定する被毒判定手段とを備える。
【0009】
【作用・効果】
NOx吸着触媒が被毒するとNOxの吸着機能が低下し、リッチ運転時に還元されるNOxが減少し、この状態ではリッチ排気ガスは、そのほとんどがNOxの還元に使用されずに触媒を通過するようになり、この場合には触媒上流側と同じように、下流側排気の空気過剰率も小さく(リッチ)となる。したがって、運転時の触媒上流と下流の排気の空気過剰率(排気空燃比)を検出し、その差を判断することにより触媒の被毒状態を正確に判定することが可能となる。
【0010】
【実施の形態】
以下、本発明の実施形態を図面を参照しながら詳細に説明する。
【0011】
まず、第1の実施形態を図1〜図3に示す。
【0012】
図1において、1はエンジン、9は吸気通路、10は排気通路であり、排気通路10には、空燃比のリーン運転時に排気中のNOxをトラップ(吸着)し、リッチ運転時にNOxを脱離、還元する、NOxトラップ触媒(NOx吸着触媒)16が設置される。
【0013】
前記吸気通路9には吸入空気量を測定するエアフローメータ3、また吸入空気量を調整する吸気絞り弁15が介装される。
【0014】
エンジン1に各気筒毎にインジェクタ5が設置され、コモンレール6によって加圧された燃料を各気筒に噴射供給する。
【0015】
前記排気通路10と吸気通路9とを接続し、排気の一部を吸気中に還流するためのEGR通路11が設けられ、EGR通路11には排気還流量を運転状態に応じて制御するEGR弁12が設けられる。
【0016】
8はコントローラであり、前記燃料噴射時期、噴射圧、噴射量、排気還流量などを運転状態に応じて制御する。このため、運転状態を代表する信号として、クランク角度(エンジン回転数)を検出するクランク角センサ4、アクセルペダルの開度を検出するアクセル開度センサ13、エンジン冷却水温度を検出する冷却水温センサ2、燃料温度を検出する燃温センサ14、さらには前記エアフローメータ3からの信号などがコントローラ8に入力する。
【0017】
コントローラ8はエンジン部分負荷時などリーン運転を行い、このときに排出されるNOxについてはNOxトラップ触媒16で吸着し、この吸着量が所定値に達したときには、一時的に空燃比を濃くする、リッチスパイクを行い、吸着したNOxを脱離、還元処理する。
【0018】
また、コントローラ8はNOxトラップ触媒16の燃料中に含まれる硫黄分による被毒状態を判断し、被毒量が所定値を越えたら、一時的にリッチ運転を行い、被毒解除を実行する。
【0019】
このため、本発明ではNOxトラップ触媒16の上流と下流には空燃比センサ(A/Fセンサ)17aと17bが設けられ、前記リッチスパイクを行ったときに、これらが検出した触媒上流と下流の空燃比(空気過剰率λ)に基づいて、NOxトラップ触媒16の被毒状態を判定している。
【0020】
NOxトラップ触媒16が被毒すると、NOxの吸着機能が低下し、リッチスパイク時に還元されるNOxが減少し、このためリッチスパイクにより排出されるリッチ排気ガスは、そのほとんどがNOxの還元に使用されず、そのまま触媒を通過するようになり、この場合には、触媒上流側と同じように、下流側の空燃比もリッチとなる。したがって、リッチスパイク時の触媒上流と下流の排気の空燃比(空気過剰率)の差から、触媒の被毒状態が判定できる。
【0021】
コントローラ8で実行されるNOxトラップ触媒16の被毒状態の判定について、図4〜図10のフローチャートを参照して説明する。
【0022】
図4は被毒判定のためのメインルーチンであるが、これは時系列的に制御動作の内容を表したものであり、これに対して図5〜図10のフローチャートは所定の短時間毎に周期的に実行される。
【0023】
まず、図4において、ステップS101では、リッチスパイクがあったかどうかの判断を行い、リッチスパイク中であれば、ステップS102に進み、そうでないときはフローを終了する。なお、リッチスパイクはNOxトラップ触媒16にトラップされたNOx量が所定値に達すると実行されるが、エンジンの加速時などにリッチ運転が行われたときにも、同じように機能する。
【0024】
ステップS102ではエンジン回転数Ne、燃料噴射量Qf、リッチスパイク中の目標空気過剰率、リッチスパイク時点でのNOxトラップ触媒16でのNOxトラップ量NOxtrap、さらには触媒の被毒判定値である#DEFを読み込む。
【0025】
なお、空気過剰率は制御空燃比の理論空燃比に対する比率をいい、理論空燃比のときに1となり、リーン空燃比では1よりも大きな値、リッチ空燃比では1よりも小さな値となる。NOxのトラップ量は後で図10を参照して詳しく述べるように、リーン運転の積算時間等に基づいて演算される。また、被毒判定値#DEFは図11〜図13を参照して後で説明する。
【0026】
ステップS103では、リッチスパイク時のNOxトラップ触媒16の上流側の平均空気過剰率と、下流側での平均空気過剰率、AveλfとAveλrを演算する。ただし、この演算については図5を参照して後で詳しく述べる。
【0027】
ステップS104では、ステップS103で求めた平均空気過剰率のAveλfとAveλrの差Defλが判定値#DEFを下回った場合にはステップS105に進み、そうでないときはフローを終了する。
【0028】
後で詳しく述べるように、NOxトラップ触媒16が硫黄による被毒状態にあると、NOxのトラップ機能が低下し、NOxの脱離、還元処理のためのリッチスパイクを行っても、排気中のHC、COはNOxの還元に寄与せずにそのまま触媒を通過し、この状態では触媒上流側の排気空燃比と下流側の排気空燃比の差が少なくなる。NOxトラップ触媒16が正常に機能していれば、リッチスパイク時に排気中に含まれるHC、COはNOxの脱離、還元に利用され、触媒下流側の空燃比はリッチでなくて理論空燃比となる。このため、上流側と下流側の空燃比の差が大きくなる。したがって、触媒上流側と下流側の平均空気過剰率の差Defλを、判定値#DEFと比較することにより、NOxトラップ触媒16の硫黄被毒状態を知ることができる。
【0029】
上記判定値#DEFは、例えば図11のテーブルに示すように、リッチ時の目標空気過剰率に応じて、空気過剰率が小さいときほど大きく、空気過剰率が大きくなる(空燃比が理論空燃比に近づく)ほど、小さくなるように設定される。
【0030】
あるいは、図12のテーブルに示すように、リッチスパイク時間が長くなるほど、判定値#DEFが大きくなるような特性に設定される。さらには、図13のテーブルに示すように、NOxトラップ量が小さいときほど判定値#DEFが大きく、トラップ量が多くなるのに伴い減少するような特性に設定される。
【0031】
このようにして触媒上流と下流の排気の平均空気過剰率の差Defλが判定値#DEFよりも小さいときは、NOxトラップ触媒16が被毒状態にあるとして、まずステップS105において、NOxトラップ触媒16のリッチあるいはリーン被毒解除運転を行う。
【0032】
これについては図7を参照して後で詳しく述べるが、NOxトラップ触媒の被毒には、硫黄による被毒と、リッチまたはリーン運転に伴う被毒があり、被毒解除時にはいずれも排気ガスを通常よりも高温しての被毒解除運転が必要となるが、リッチ、リーン運転による被毒の解除は、硫黄被毒の解除時よりも相対的に低温側で行える。そこで、空燃比を理論空燃比として所定の時間だけ解除運転を行う。予めこのようなリッチ、リーン被毒の解除を行っておくことで、この後に実行されるNOxトラップ触媒16の被毒判定では、硫黄による被毒のみが正確に判定できる。
【0033】
次にステップS106で、次のリッチスパイクが行われるのを待つ。再びリッチスパイクが実行されたら、ステップS107に進む。
【0034】
ステップS107では、ステップS103と同じようにして、再びNOxトラップ触媒16の上流と下流の排気の平均空気過剰率AveλfとAveλrを算出する。
【0035】
そして、ステップS108ではステップS104と同じようにして、平均空気過剰率の差Defλが所定値#DEFを下回ったかどうか判断し、下回ったときは、すなわち触媒上流と下流の平均空気過剰率の差が小さいときには、ステップS109に進み、硫黄による被毒状態にあると判定し、そうでない場合はフローを終了する。
【0036】
次に図5を参照して平均空気過剰率の演算ルーチンを説明する。
【0037】
ステップS201でエンジン回転速度Ne、燃料噴射量Qfを読み込む。ステップS202では、図6を参照しながら後で詳しく述べる、NOxトラップ触媒16のNOx還元処理のためのリッチスパイク時期判定(フラグ)Frichを演算する。
【0038】
ステップS203では演算したリッチスパイク判定フラグFrichがTrueかどうかの判定を行い、TrueならばステップS204に進み、Falseの場合にはステップS205に進む。
【0039】
ステップS204ではリッチスパイクへの移行後、所定の遅れ時間#DELAY以上を経過しているかどうか判断し、経過している場合にはステップS206に進み、経過していない場合はステップS208に進む。
【0040】
この遅れ時間#DELAYは、リッチスパイクに入ってから排気ガスがNOxトラップ触媒16に到達するまでの時間に相当し、そのときの排気流量Qexhに応じて、図14に示すようなテーブルから算出する。
【0041】
遅れ時間#DELAYは排気流量Qexhが小さいときほど長く、大きくなるにしたがって短くなる。なお、排気流量Qexhは、エンジン回転数Ne、燃料噴射量Qf(mg/st)、吸入空気量Qac(mg/st)に基づいて、
Qexh=(Qf+Qac)×Ne/60/2×CYLNUMBER
として算出できる。ただし、CYLNUMBERはエンジン気筒数をである。
【0042】
これに対して、ステップS205ではリッチスパイクの終了後、#DELAY以上経過している場合には、ステップS208に進み、経過していないときはステップS206に進む。
【0043】
ステップS206ではリッチスパイク中にカウントされるカウント値を、RICHTIME=RICHTIME(n−1)+1として演算する。
【0044】
ステップS207では、NOxトラップ触媒16の上流と下流の空気過剰率の積算値を、触媒上流と下流の空燃比センサ17aと17bのそれぞれの出力を空気過剰率λに換算した上で、次のように積算により算出する。
【0045】
すなわち、
上流積算値Sλf=λf(n)+Sλf(n−1)
下流積算値Sλr=λr(n)+Sλr(n−1)
として算出する。
【0046】
なお、この上流と下流の空気過剰率の積算は、リッチスパイクに移行し、かつ上記遅れ時間が経過したときから開始され、リッチスパイクが終了し、かつ上記遅れ時間が経過したときに終了する、すなわち、NOxトラップ触媒16において実際にリッチスパイクにより空気過剰率が変化している区間に相当する時間だけ、実行される。
【0047】
一方、ステップS208ではこのようにして算出した、リッチスパイク中の空気過剰率の積算値と、リッチスパイク時間のカウント値とから、触媒上流と下流の平均空気過剰率をそれぞれ次のようにして算出する。
【0048】
すなわち、
上流平均空気過剰率Aveλf=Sλf/RICHTIME
下流平均空気過剰率Aveλr=Sλr/RICHTIME
として算出する。
【0049】
図6のフローチャートを参照してリッチスパイク時期判定の演算を説明する。
【0050】
ステップS301でエンジン回転数Ne、燃料噴射量Qf、前回のリッチスパイクカウンタ値Count(n−1)、前回のリッチ判定Frich(n−1)を読み込む。
【0051】
ステップS302では前回のリッチ判定フラグFrich(n−1)がTrueかどうかの判定を行い、もしTrueならばリッチスパイク中としてステップS303に進み、Falseの場合はステップS307に進む。
【0052】
ステップS303ではリッチカウンタのしきい値SCountを、予め設定した値SCOUNTLとする。
【0053】
ステップS304では、リッチスパイク中であるので、上記リッチカウンタ値の減算を実施する。ここでは、Count(n−1)から予め設定した減算量#DCOUNTを100msec毎に減算していく。
【0054】
そして、ステップS305では演算したリッチカウンタ値Countが、予め設定したしきい値SCountよりも小さくなったかどうか判断し、もし小さくなったときには、リッチスパイクを終了するものとして、ステップS306に進んで、リッチ判定フラグFrichをFrich=Falseとしてフローを終了する。
【0055】
これに対して、リッチスパイク中でないときは、ステップS307において、リッチカウンタ値SCountを予め設定したしきい値#SCOUNTHにセットする。ステップS308では、例えば、図15に示すように、エンジン回転数Neと燃料噴射量Qfとから決定されるカウンタ増分を演算し、これをICountとする。
【0056】
ステップS309ではリッチスパイク中ではないため、リッチカウンタ値にステップS308で演算したリッチカウンタ増分ICounを100msec毎に積算していく。
【0057】
そして、ステップS310でこのリッチカウンタ値Countを、ステップS307で設定したカウンタしきい値#SCOUNTHと比較し、Countがしきい値よりも大きくなったときは、リッチスパイク時期に達したとして、ステップS311に進んで、リッチ判定フラグFrich=Trueにしてフローを終了する。
【0058】
これに対して、ステップS310でリッチカウンタ値がしきい値よりも小さい場合には、ステップS306に進んでリッチ判定フラグをFrich=Falseとしておく。
【0059】
次に図7のフローチャートを参照してリッチ、リーン被毒解除運転について説明する。
【0060】
ステップS401でリッチ、リーン被毒解除時の目標空気過剰率tLambdaを、tLambda=1に設定する。これは理論空燃比に相当する。
【0061】
ステップS402でこの被毒解除時の吸気絞り弁開度の目標値を演算する。これについては後で詳しく説明する(図8参照)。
【0062】
ステップS403で同じくEGR弁開度目標値を演算する(図9参照)。
【0063】
図8により吸気絞り弁開度の目標値の演算を説明する。
【0064】
ステップS501でエンジン回転数Ne、燃料噴射量Qf、目標空気過剰率tLambdaを読み込む。
【0065】
ステップS502で燃料噴射量Qfと目標空気過剰率tLambdaとから、目標吸入空気量tQacを算出する。
【0066】
すなわち、
tQac=tLambda×14.6×Qf
ただし、14.6は理論空燃比
として算出する。
【0067】
ステップS503ではステップS502で算出した目標吸入空気量tQacと、1気筒あたりのエンジン排気量VCE#、空気密度ROU#とから、目標作動ガス割合tQh0を求める。
【0068】
すなわち、
tQh0=tQac/(VCE#×ROU#)
として算出する。
【0069】
ステップS504ではこのように算出した目標作動ガス割合tQh0に基づいて、例えば図16に示すようなテーブルから、目標絞り弁係数tADNVを算出する。係数tADNVは、目標作動ガス割合が大きな領域で急激に増加する特性に設定してある。
【0070】
ステップS505では、吸気絞り弁の目標開口面積tAtvobを、tADNVと、エンジン回転数Ne、エンジン総排気量VOL#とから算出する。
【0071】
すなわち、
tAtvob=tADNV×Ne×VOL#
として算出する。
【0072】
ステップS506では、このステップS505で演算した吸気絞り弁の目標開口面積から、例えば図17に示すようなテーブルにて、吸気絞り弁開度TVOを演算してフローを終了する。なお、吸気絞り弁開度は目標開口面積に概略比例して増大する。
【0073】
EGR弁の開度目標値の演算ルーチンを図9を参照して説明する。
【0074】
ステップS601でエンジン回転数Ne、燃料噴射量Qf、目標吸入空気量tQacを読み込む。
【0075】
ステップS602で例えば、18図に示すようなマップから、エンジン回転数Neと燃料噴射量Qfとにより、目標とするEGR率MEGRを算出する。
【0076】
なお、EGR率MEGRは、エンジン回転数と燃料噴射量が小さい領域で大きく、回転数、噴射量が大きい領域で小さくなるように設定される。
【0077】
ステップS603では目標EGR量MQECを、目標吸入空気量tQacと目標EGR率MEGRとから、
MQEC=tQac×MEGR/100
として算出する。
【0078】
そして、ステップS604において、EGR弁開度を、例えば図19に示すようなテーブルにより、目標EGR量MQECを算出してフローを終了する。
【0079】
次に、図10のフローチャートを参照してNOxトラップ触媒に対するNOxトラップ量の推定演算について説明する。
【0080】
ステップS701ではエンジン回転数Ne、燃料噴射量Qf、吸入空気量Qac、エンジン冷却水温Twを読み込む。
【0081】
ステップS702では例えば、図20に示すようなテーブルから、吸入空気量Qacに基づいてエンジンの単位出力時間あたりのNOx量、すなわちNOxgkw20msを算出する。このNOx量の単位は、g/kW/20ms(20msec.jobの場合)である。なお、NOx量は吸入空気量に概略比例して増加する。
【0082】
ステップS703では、このように演算したNOxgkw20msと、そのときのエンジン出力Peとの積に基づいて、単位時間あたりのNOx量NOxg20msを、
NOxg20ms=NOxgkw20ms×Pe
として算出する。なお、エンジン出力Peは、Pe=Ne×Qfとして算出することができる。
【0083】
ステップS704では、単位時間あたりのNOx排出量による補正係数kNOxeoeを、例えば図21に示すようなテーブルに基づいて算出する。
【0084】
このkNOxeoeは単位時間あたりのNOx排出量が小さいときはほぼ1となり、大きくなるにしたがって0に向けて小さくなる特性に設定してある。
【0085】
ただし、この補正係数は、例えば、図22に示すようなテーブルにより、エンジン排気流量が大きくなるほど小さくなるような特性に設定したり、あるいは、図23に示すように、エンジン回転数Neと燃料噴射Qfとにより設定したマップから、エンジン回転数と燃料噴射量が共に大きくなるほど補正係数が小さくなるように設定することもできる。
【0086】
ステップS705ではNOxトラップ触媒16のNOxトラップ量が触媒の担体温度に依存して変動することを考慮して、触媒担体温度Tbedによる補正係数kNOxtbedを、例えば図24に示すようなテーブルに基づいて算出する。この補正係数は、触媒担体温度が低いときには0で、高くなるほど1に近づくような特性に設定される。
【0087】
ただし、この触媒担体温度Tbedは、図25にも示すように、エンジン冷却水温Twと相関があり、したがって、図26に示すようなテーブルにより、冷却水温Twとの関係に基づいて設定することもできる。この場合、冷却水温Twが高くなるにしたがって、補正係数kNOxeoeは1に近づくような特性に設定されている。
【0088】
ステップS706では、NOxトラップ触媒16にトラップされるNOxトラップ量が、それまでにトラップされているNOx量との関係に基づいて変動することを考慮して、図27に示すようなテーブルによって、トラップ量による補正係数kNOxtrapを算出する。
【0089】
この補正係数kNOxtrapは、NOxトラップ量NOxtrapがゼロのときに1になり、NOxトラップ量が多くなるほど0に向けて小さくなる特性に設定される。
【0090】
次にステップS707では、最終補正係数kNOxを、いままで算出してきた各補正係数の積として次のように演算する。
【0091】
すなわち、
kNOx=kNOxeoe×kNOxtbed×kNOxtrap
として算出する。
【0092】
そして、ステップS708でNOxのトラップ量NOxtrapを、前回までに算出したNOxの総トラップ量NOxtrap(n−1)に、今回の計算値である単位時間あたりのNOx量NOxg20msと補正係数kNOxの積を加算して求める。
【0093】
すなわち、
NOxtrap=NOxtrap(n−1)+NOxg20ms×kNOxとして算出し、このフローを終了する。
【0094】
次に全体的な作用について図2、図3を参照しながら説明する。
【0095】
リーン運転が続くと、NOxトラップ触媒16には排気中のNOxがトラップされていき、その量が次第に増加する。コントローラ8はNOxのトラップ量が所定値に達したことを推定すると、空燃比を一時的に濃くする、リッチスパイクを行うことにより、NOxトラップ触媒16に吸着保持されていたNOxの離脱還元を行う。
【0096】
リッチスパイクは、NOxトラップ触媒16にトラップされているNOxの量に応じて、リッチスパイク時の空燃比、リッチスパイク時間が決まり、これによりトラップされているNOxが、排気中のHC、COにより、触媒から離脱し、還元される。
【0097】
このときのNOxトラップ触媒16の上流と下流の排気空燃比、つまり空気過剰率の様子を示すのが、図2、図3である。
【0098】
いま図2において、NOxトラップ触媒16が硫黄による被毒が無く、正常に機能している間は、リッチスパイク時にトラップしているNOxが離脱し、還元されるため、リッチスパイク中、触媒上流の排気空燃比はリッチであっても、下流側の空燃比はストイキ、つまり空気過剰率λが、λ=1の状態を維持する。つまり、リッチ排気中に含まれるHC、COが触媒でのNOxの還元作用に利用されるため、下流側の空燃比はストイキに維持されるのである。
【0099】
しかし、NOxトラップ触媒16が硫黄により被毒し、機能が低下すると、NOxのトラップ量が減り、リッチスパイクしても還元されるNOxが少ないために、そのほとんどが還元には利用されず、そのまま触媒を通過して下流側に放出される。このために、排気空燃比は触媒下流側においても、上流側と同じようなリッチ状態になる。
【0100】
図3は、図2に比べてリッチスパイクの時間が長い場合である。NOxトラップ触媒16が正常のときでも、リッチスパイク時間が長くなり、触媒にトラップされているNOxの全量を還元しても継続すれば、還元後は触媒下流の空燃比は上流と同じリッチ空燃比となる。
【0101】
NOxトラップ触媒16が硫黄被毒していると、NOxのトラップ量が少なくなるので、この場合には、すぐに下流の空燃比がリッチとなる。
【0102】
そこで、コントローラ8では、リッチスパイク中におけるNOxトラップ触媒16の上流側と下流側の空燃比、すなわち上流と下流の空気過剰率の差が、所定値よりも小さいときには、触媒が正常に機能していないと判断する。
【0103】
ただし、実際には図3にもあるように、そのときのリッチスパイク時間や空燃比によって、下流側の空燃比特性も変動するので、リッチスパイク中の上流側と下流側の空気過剰率の平均値をとり、この平均空気過剰率を被毒判定値と比較することで、NOxトラップ触媒16の被毒状態の判定が正確に行われるようにしている。
【0104】
NOxトラップ触媒16の被毒は、硫黄被毒の他に、触媒がリッチあるいはリーン排気ガス雰囲気に長時間さらされることによる被毒がある。どちらの被毒でもNOxの浄化効率の低下を招くことには変わりはないが、硫黄被毒したときの被毒解除には、触媒の温度が例えば600℃以上とする被毒解除運転が必要となるが、リッチあるいはリーン被毒に対する解除は、例えば400℃程度の温度に維持することにより可能である。
【0105】
そこで、本発明では、NOxトラップ触媒16の被毒判定を行うときには、まず、リッチあるいはリーン被毒を想定し、この被毒解除のために、予め定めた時間だけ空燃比をストイキとして触媒温度が400℃程度となるような、被毒解除運転を行っている。もし、リッチ、リーン被毒があれば、この間に触媒からはリッチ、リーン被毒が解除される。これにより、NOxトラップ触媒16の被毒判定は、リッチ、リーン被毒の無い、硫黄被毒にのみ依拠した被毒状態を正しく判定することができる。
【0106】
なお、リッチあるいはリーン被毒の解除を行わずに直接的に硫黄による被毒判定を行い、この結果により被毒解除運転を行えば、すべてが高温の硫黄被毒解除運転となってしまい、燃費もそれだけ悪化する。
【0107】
ここで本実施形態の効果を列記すると次のようになる。
【0108】
NOxトラップ触媒16の上流側と下流側排気の空気過剰率を検出する排気センサ17a17bを設け、リッチスパイク時の前記上流側と下流側排気の空気過剰率の差からNOxトラップ触媒16の被毒を判定するようにしたので、触媒の被毒状態を正確に判断することができる。
【0109】
また、NOxトラップ触媒16の被毒判定を、触媒上流側と下流側の排気の空気過剰率のそれぞれの平均値に基づいて判断するので、判定精度が向上し、正確な判定が行える。
【0110】
また、被毒判定値を、リッチスパイク時の空燃比、リッチスパイク時間に応じて設定することにより、これらによって変動する空気過剰率の影響を無くし、正確な判定を可能とする。
【0111】
さらに、被毒判定値を、リッチスパイクに移行時のNOxトラップ量に応じて設定することで、同じく精度のよい被毒判定を行える。
【0112】
リッチスパイクに移行してから所定の遅れ時間を経過してから空気過剰率の平均値の演算を開始し、また、リッチ運転の終了から所定の遅れ時間を経過したときに前記平均値の演算を終了することにより、リッチスパイクが行われてから排気がNOxトラップ触媒16に到達するまでの遅れを考慮でき、空気過剰率の平均値の演算精度が高まる。
【0113】
また、NOxトラップ触媒16の被毒判定後に、理論空燃比で所定の時間運転することで、リッチあるいはリーン被毒を解除し、その後に再度被毒判定を実施することで、硫黄被毒によるものを正確に判定でき、無駄な硫黄被毒の解除運転を少なくし、燃費の改善が図れる。
【0114】
本発明は上記した実施形態に限定されるわけではなく、特許請求の範囲に記載した技術的思想の範囲内で、当業者がなしうるさまざまな変更、改良が含まれることは明白である。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1実施形態の構成図である。
【図2】リッチスパイク時の触媒の上流と下流の空気過剰率の変化を示すタイムチャートである。
【図3】リッチスパイク時の触媒の上流と下流の空気過剰率の変化を示すタイムチャートである。
【図4】本発明の制御動作を示すフローチャートである。
【図5】平均空気過剰率の演算動作を示すフローチャートである。
【図6】リッチスパイク時期判定の演算動作を示すフローチャートである。
【図7】リッチ、リーン被毒解除動作を示すフローチャートである。
【図8】吸気絞り弁開度目標値の演算動作を示すフローチャートである。
【図9】EGR弁開度目標値の演算動作を示すフローチャートである。
【図10】NOxトラップ量の推定演算動作を示すフローチャートである。
【図11】硫黄被毒判定値を空気過剰率との関係で示す図である。
【図12】硫黄被毒判定値を空気過剰率のとの関係で示す図である。
【図13】硫黄被毒判定値をリッチスパイク時間との関係で示す図である。
【図14】遅れ時間を排気流量との関係で示す図である。
【図15】リッチカウンタの増分をエンジン回転数と燃料噴射量に基づいて示す図である。
【図16】吸気絞り弁開度の補正係数の特性を示す図である。
【図17】吸気絞り弁の開度特性を示す図である。
【図18】目標EGR率の特性を示す図である。
【図19】EGR弁の開度特性を示す図である。
【図20】吸入空気量とNOx排出量の関係を示す図である。
【図21】NOx排出量に基づく補正係数を示す図である。
【図22】エンジン排気量に基づく補正係数を示す示す図である。
【図23】エンジン回転数と燃料噴射量とに基づく補正係数を示す図である。
【図24】触媒担体温度に基づく補正係数を示す図である。
【図25】触媒担体温度と冷却水温の関係を示す図である。
【図26】冷却水温に基づく補正係数を示す図である。
【図27】NOxトラップ量に基づく補正係数を示す図である。
【符号の説明】
1 エンジン
8 コントローラ
9 吸気通路
10 排気通路
16 NOxトラップ触媒
17a,17b 排気空燃比センサ
Claims (8)
- 空燃比のリーン運転時に排気中のNOxを吸着し、リッチ運転時に吸着したNOxを脱離、還元するNOx吸着触媒を備えた内燃機関において、
前記NOx吸着触媒の上流側と下流側排気の空気過剰率を検出する手段と、
前記リッチ運転時の前記上流側と下流側排気の空気過剰率の差から前記NOx吸着触媒の被毒状態を判定する被毒判定手段と、を備えたことを特徴とする内燃機関の排気浄化装置。 - 前記被毒判定手段は、前記上流側と下流側排気の空気過剰率のそれぞれの平均値を算出し、これら平均値の差から前記NOx吸着触媒の被毒状態を判定する請求項1に記載の内燃機関の排気浄化装置。
- 前記被毒判定手段は、前記上流側と下流側排気の空気過剰率の差を被毒判定値と比較し、被毒判定値よりも小さくなったらNOx吸着触媒が硫黄被毒したと判定する請求項1または2に記載の内燃機関の排気浄化装置。
- 前記被毒判定値はリッチ運転時の空燃比の空気過剰率が小さいほど、またリッチ運転時間が長いほど、それぞれ大きくする請求項3に記載の内燃機関の排気浄化装置。
- 前記被毒判定値はリッチ運転に移行時のNOx吸着量が少ないほど、大きくする請求項3または4に記載の内燃機関の排気浄化装置。
- 前記被毒判定手段は、前記リッチ運転に移行してから所定の遅れ時間を経過してから空気過剰率の平均値の演算を開始し、リッチ運転の終了から所定の遅れ時間を経過したときに前記平均値の演算を終了する請求項2に記載の内燃機関の排気浄化装置。
- 前記所定の遅れ時間は排気流量が少ないほど長く設定する請求項6に記載の内燃機関の排気浄化装置。
- 前記被毒判定手段は、前記NOx吸着触媒の被毒状態が判定されたら、所定の時間、空気過剰率が理論空燃比となるように制御し、その後の最初のリッチ運転時に前記NOx吸着触媒の上流側と下流側排気の空気過剰率の差から触媒の硫黄被毒状態を判定する請求項1に記載の内燃機関の排気浄化装置。
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