JP2004217985A - 金属を分離する機能を有するカラム、および金属の分離、回収方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】これまで用いられている吸着剤は、吸着能力、粒形化の困難さ、脱着処理の手間と設備、および、吸着剤の再生にかかるコストや回収の生産性は必ずしも良好とは言えなかった。
【解決手段】カラム内で、金属イオン混在溶液と接する流路領域に配置された、少なくとも一種類以上の機能物質群と、カラムの該領域へ、混在溶液を注入する、少なくとも一つ以上の注入口と、カラムの該領域から、混在溶液を排出する、少なくとも一つ以上の排出口を備え、機能物質が、有機物で構成され、さらに、その物質が内腔を有し、かつ、該内腔部に除去すべき金属を内包、もしくは金属と複合体を形成することにより金属を溶液中から分離することを特徴とする金属を分離する機能を有するカラム。
【選択図】 図1
【解決手段】カラム内で、金属イオン混在溶液と接する流路領域に配置された、少なくとも一種類以上の機能物質群と、カラムの該領域へ、混在溶液を注入する、少なくとも一つ以上の注入口と、カラムの該領域から、混在溶液を排出する、少なくとも一つ以上の排出口を備え、機能物質が、有機物で構成され、さらに、その物質が内腔を有し、かつ、該内腔部に除去すべき金属を内包、もしくは金属と複合体を形成することにより金属を溶液中から分離することを特徴とする金属を分離する機能を有するカラム。
【選択図】 図1
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、種々の金属イオンが存在する水溶液から、金属イオンを連続的かつ、選択的または非選択的に分離する分離剤、カラム、および、金属イオンを含む水溶液の処理方法に関する。具体的には、内腔を有し、金属をその内腔に内包できる機能分子を利用した金属分離カラム、及び機能分子を含有する金属分離剤、または、金属分離カラムを用いた、種々の金属イオンが存在する水溶液から金属イオンを分離、除去する方法、および、それらを用いた種々の金属イオンが存在する水溶液から金属イオンを回収する方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
銀、金などの貴金属や、銅、鉛、水銀、カドミウムなどの有害重金属を含む水溶液中からこれらの金属を分離する技術は、資源の回収再利用及び環境汚染防止の観点から極めて重要である。これまで、これらの金属の分離方法としては、金属含有水溶液を陽イオン交換樹脂、活性炭、金属キレート化剤、合成ゼオライト、シリカゲル、活性アルミナ、活性白土、液膜を通したイオン輸送剤、植物プランクトンなど種々の無機系や有機系の吸着剤に接触させて、金属をこれらに吸着させ分離する方法が主流をなしている。
【0003】
具体的にイオン輸送剤として使用される物質を例示すると、水銀のみを捕捉するものとしてトロポノイド付加ジチオクラウンエーテル類がある。また、鉛のみを捕捉するものとして環状ポリエーテルジカルボン酸が知られている。また、水銀のみを捕捉するものとして8−キノリル基をもつメチオニン誘導体が挙げられている。また、特許文献1には、銅のみを選択的に捕捉するものとして、α−アミノ酸ジアジド誘導体が開示されている。というように、挙げれば枚挙にいとまがない。
【0004】
他方、微生物や藻類の中には、特定の金属を蓄積する能力を有するものがあることが知られており、近年、これを利用して、廃液中の有害金属や有価金属を除去したり、回収することが試みられ、例えば植物バイオマス、カビ、さらにはクロレラなどの微細藻類などを用いる方法が提案されている。
【0005】
【特許文献1】
特開平5−163243号公報
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、の無機系や有機系の吸着剤は、吸着能力に限界がある。例えば、金属キレート樹脂は、その分子構造を利用して金属イオンと錯体を形成することで補足するキレート官能基と、それを固定する担体の樹脂からなる。キレート官能基導入量の大きい樹脂を選べば補足収率は向上するが、基本的には一つのキレート官能基に対し補足される金属錯体は一つであるため、収率には限度がある。このため、多量の廃液を処理するには、吸着材料は多量使用しなければならない問題があった。さらに、吸着材料が特異的な金属と非常に高い選択性を持つ反面、一度吸着させた金属を脱離させることが必ずしも容易ではないため、吸着剤の再生が困難で煩雑な操作を要するという一面も持つ。吸着剤の再生にかかるコストや回収の生産性は必ずしも良好とは言えない。また、これまで用いられている微生物や藻類は、重金属の収率や、粒形化の困難さなどの点で、必ずしも十分に満足しうるものではないのが実状である。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、馬、牛などの動物のひぞうや肝臓などに存在するフェリチンが、タンパク質の殻で覆われた内腔に金属イオンを内包することによって、体内での金属イオン濃度を調節している。しかも、フェリチンの内包された金属イオンを金属に還元すると、一つのフェリチン内に、数千個の金属原子が内包されていることに着目し、鋭意研究を重ねた結果、フェリチンなどの、内腔を有し、金属をその内腔に内包できる機能分子を有効に利用することにより、当初の目的を達成するばかりでなく、大幅に収率を向上させることができることを発見した。本発明はかかる発見に基づきさらに研究を進めて完成するに至った。
【0008】
上記課題を解決する本発明に係るカラムは、少なくとも1種類以上の金属イオンが混在している溶液中から金属を選択的、もしくは非選択的に分離する機能を有するカラムが、
カラム内で、金属イオン混在溶液と接する流路領域に配置された
少なくとも一種類以上の機能物質群と、
カラムの該領域へ、混在溶液を注入する、少なくとも一つ以上の注入口と、
カラムの該領域から、混在溶液を排出する、少なくとも一つ以上の排出口を備え、
機能物質が、有機物で構成され、さらに、その物質が内腔を有し、かつ、
該内腔部に除去すべき金属を内包、もしくは金属と複合体を形成することにより金属を溶液中から分離することを特徴とする金属を分離する機能を有する。
【0009】
機能物質群が担持体に担持もしくは、充填されることにより、カラム内の該領域に配置されることが好ましい。
【0010】
機能物質群がカラムに化学結合を介して固定されることにより、カラム内の該領域に配置されることが好ましい。
【0011】
機能物質群がカラムに、少なくとも一種類以上の結合仲介作用を有する化合物を介して化学的に固定されることにより、カラム内の該領域に配置されることが好ましい。
【0012】
カラムの注入口と排出口を結ぶ、領域が複数配置されていることが好ましい。
【0013】
さらに、注入口と複数領域を結ぶ流路内に、注入口と所望の流路とを結ぶことができる、切り替えバルブを持ち、
内包する金属種の異なる機能分子が複数領域の各各に固定化されていることが好ましい。
【0014】
カラムの一つ以上の排出口の先の流路がすくなくとも一つ以上の流路に分岐し、さらに、一方の流路が注入口へとつながることが好ましい。
【0015】
機能物質が、代表長さが3−30nmであることが好ましい。
【0016】
機能物質を構成する、有機物の主要な部分がタンパク質であることが好ましい。
【0017】
タンパク質分子がフエリチンフアミリ−であることが好ましい。
【0018】
フエリチンフアミリ−がフエリチンまたは、アポフエリチン、および、これらのアミノ酸配列を改変した改変物であることが好ましい。
【0019】
タンパク質分子がアデノウィルス、ロタウィルス、ポリオウィルス、HK97、CCMV、および、これらの改変物等の群から選ばれるウイルスであることが好ましい。
【0020】
タンパク質分子がDpsAタンパク質またはMrgAタンパク質、および、これらのアミノ酸配列を改変した改変物であることが好ましい。
【0021】
金属が鉄、鉄酸化物、その他の鉄化合物、ニツケル、ニツケル酸化物、その他のニツケル化合物、コバルト、コバルト酸化物、その他のコバルト化合物、銅、銅酸化物、その他の銅化合物、金、その他の金化合物、白金、その他の白金化合物の少なくとも、いずれか1種であることが好ましい。
【0022】
上記課題を解決する本発明に係る金属を回収する方法は、
請求項1に記載のカラムを用いて、
少なくとも1種類以上の金属イオンが混在している第一の溶液中から金属を選択的、もしくは非選択的に回収する方法であって、
第一の溶液をカラムの該記注入口から注入し、
カラムの機能物質群が配置された該領域に接触させ、該排出口より排出する工程と、
操作により機能物質群から金属を回収する工程からなり、
操作が、機能物質に内包されていた金属を露出させることにより、金属を得ることを特徴とする金属を回収する方法。
【0023】
操作が、窒素雰囲気中、または、大気中で、機能物質の焼失温度以上で、前期機能物質群を加熱焼失させることにより、金属の回収を実現することが好ましい。
【0024】
操作が、機能物質群のみを選択的に分解する作用を持つ化合物を入れることであり、かつ、分解作用化合物が、タンパク質分解酵素、尿素、界面活性剤のいずれか一つ以上であることが好ましい。
【0025】
タンパク質分解酵素が、プロテアーゼ、ディスパーゼ、トリプシン、ナガラーゼ、のいずれか一つ以上であることが好ましい。
【0026】
請求項5に記載のカラムを用いて、
少なくとも1種類以上の金属イオンが混在している第一の溶液中から金属を選択的、もしくは非選択的に回収する方法であって、
第一の溶液をカラムの該記注入口から注入し、
カラムの機能物質群が配置された該領域に接触させ、該排出口より排出する工程と、
第二の溶液をカラムの該記注入口から注入し、
カラムの機能物質群が配置された該領域に接触させ、該排出口より排出する工程と、
請求項15から18に記載の操作により機能物質群から金属を回収する工程からなり、
第二の溶液が、機能物質群をカラムに固定している結合を切断する機能を有することが好ましい。
【0027】
カラムに固定されている結合仲介物質が抗原であり、第二の溶液が機能物質より抗原とのアフィニティーが高い抗体を含有する溶液であることが好ましい。
【0028】
カラムに固定されている結合仲介物質が核酸であり、操作が60℃以上の加熱(デイネイチャー)であることが好ましい。
【0029】
カラムに固定されている結合仲介物質が核酸であり、第二の溶液が核酸を溶かす溶液であることが好ましい。
【0030】
カラムに固定されている結合仲介物質が核酸であり、第二の溶液が制限酵素を含有する溶液であることが好ましい。
【0031】
機能物質が、直径3−30nmの粒子であることが好ましい。
【0032】
機能物質を構成する、有機物の主要な部分がタンパク質であることが好ましい。
【0033】
タンパク質分子がフエリチンフアミリ−であることが好ましい。
【0034】
フエリチンフアミリ−がフエリチンまたは、アポフエリチン、および、これらのアミノ酸配列を改変した改変物であることが好ましい。
【0035】
タンパク質分子がアデノウィルス、ロタウィルス、ポリオウィルス、HK97、CCMV、および、これらの改変物等の群から選ばれるウイルスであることが好ましい。
【0036】
タンパク質分子がDpsAタンパク質またはMrgAタンパク質、および、これらのアミノ酸配列を改変した改変物であることが好ましい。
【0037】
金属が鉄、鉄酸化物、その他の鉄化合物、ニツケル、ニツケル酸化物、その他のニツケル化合物、コバルト、コバルト酸化物、その他のコバルト化合物、銅、銅酸化物、その他の銅化合物、金、その他の金化合物、白金、その他の白金化合物の少なくとも、いずれか1種であることが好ましい。
【0038】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の金属分離能を有する機能分子、それを用いた金属分離カラム、および金属の分離、回収方法の実施の形態を、図を用いて説明する。
(第1の実施の形態)(カラム/除去のみ)
図1は、本発明の多種類の金属イオンが混在している溶液中から金属を分離する機能を有するカラムの1例の概略を示す概念図である。
【0039】
明細書中のカラムの定義は、溶液を注入、排出するための器もしくは反応場であり、分析化学、特に、クロマトグラフィーに用いられるカラムの意味に限定されない。一つ以上の注入口側から排出口側への溶液の流れが生じている管であってもよい。
【0040】
カラム1は、注入口4と排出口5を持ち、金属イオン含有液2を注入口4から注入することができる。注入された金属イオン含有液2は、機能分子6群が固定化された流路10の領域を通って、排出口5から排出される。
【0041】
機能分子6は、有機物で構成され、さらに、その分子構造が内腔を有し、かつ、
該内腔部に除去すべき金属7を内包、もしくは金属7と複合体8を形成することにより金属7を溶液2中から分離することができる。
【0042】
このような機能分子6は、その構造を構成する有機物の主要な部分がタンパク質である。機能分子6は、直径3−30nmの粒子であることが望ましい。具体的に、機能分子6として用いられるタンパク質分子は、アポフェリチン等が好ましく使用できる。アポフェリチンは、図3に模式的に示すように、無機材料原子の芯31を内腔部に保持し、この周囲をタンパク質の殻32で覆った金属タンパク質複合体となることができる。アポフェリチンのファミリーである、内部に鉄イオンを含有できるフェリチンは、馬、牛等の動物のひ臓や肝臓等の臓器から取り出すことができる。
【0043】
フェリチンの場合、芯31の無機材料原子は、通常は、酸化鉄(Fe2O3)で、芯31の直径は6nm程度、酸化鉄の総数は4000個程度であり、殻32は分子量45万程度のタンパク質の24量体で、24量体全体の外径は12nm程度である。
【0044】
また、機能分子6は、上記のこれらのタンパク質のアミノ酸配列を改変した改変物であってもよい。タンパク質を改変させる手段は、遺伝子組み替え技術など当業者に公知の技術を用いて実現される。例えば、アポフェリチンの金属導入部に位置するグルタミン酸およびアスパラギン酸を、電荷を持たず、かつサイズの小さいセリンで置換する。次に、内腔部に位置するグルタミン酸をリジン等の塩基性アミノ酸または中性アミノ酸で置換する。さらに、内腔部にひとつ以上のシステイン結合を導入することで、負電荷を持つ(AuCl4)−と負電荷を持つアミノ酸との間に発生する静電相互作用による斥力を防ぐことができ、(AuCl4)−が内腔に取りこまれ易くなる。内腔に取りこまれた(AuCl4)−は、当業者に公知の技術でAuに還元することができる。よって、この改変したアポフェリチンを機能分子6として使えば、溶液中の金イオンを金粒子として分離するカラムが作製できる。
【0045】
そのほかには、DpsAタンパク質またはMrgAタンパク質が挙げられる。Dpsタンパク質の場合は、図示は省略するが、芯31の直径は4nm程度、殻32は正四面体の12量体で、12量体全体の外径は9nm程度である。また、アデノウィルス、ロタウィルス、ポリオウィルス、HK97、CCMV等の群から選ばれるウイルスも好適に使用され得る。
【0046】
機能分子群6がカラム1の流路10に、少なくとも一種類以上の結合仲介作用を有する化合物9を介して化学的に固定されていてもよい。
【0047】
図1に示した金属イオン分離カラムの作用は、カラム1の注入口4から注入された金属イオン含有水溶液2に含まれる金属イオン7は、溶液に添加した還元剤により還元されるとともに、機能分子6の内腔部に内包され、除去後の水溶液3が排出口5より排出される。カラム内を流れる流速を制御し、還元反応が起こる時間から逆算したタイミングで還元剤を流路内で混合させることで、機能分子6を固定化した流路10内で金属イオンの内包が行われる。
【0048】
カラム1の流路10に固定される機能分子群6は、図4に示したように、1種類に限定されない。図4には、例として3種類の異なる機能分子6A,6B,6Cを流路10に固定化している。金属イオン7Aだけを特異的に内包する機能分子6A、金属イオン7Bだけを特異的に内包する機能分子6B、および、金属イオン7Cだけを特異的に内包する機能分子6Cを用いれば、このカラム1は、多種の金属イオンを含有している溶液2から、同時に複数の金属イオンを除去することが可能となる。
【0049】
カラム1は、注入口4、排出口5に対して、流路10を複数配置されていてもよい。注入口から流路10に至る流管部分に切り替えバルブを持ち、バルブの切り替えにより所望の流路を選択できる構成が望ましい。各流路10に、それぞれ異なる金属を内包できる機能分子を固定化しておけば、注入口から注入された金属イオン含有溶液は、バルブの切り替えにより、除去すべき金属を内包できる機能分子が固定化されている流路を選択することにより、各金属イオン含有溶液2に対し、それぞれ個別の所定の金属だけを除去することが可能となる。
【0050】
(実施の形態2) [カラム 回収 Bufferでリンカー/熱とP]
図2は、本発明の多種類の金属イオンが混在している溶液中から金属を回収する機能を有するカラムの1例の概略を示す概念図である。
【0051】
まず、図1に示したカラム1を用い、実施の形態1に明示した方法で、金属含有溶液2からカラム1の機能分子群6内に金属7を内包させる。その後、解離溶液12を注入口4より注入する。
【0052】
解離溶液12は、カラム1に固定化された機能分子群6を流路10から剥離させる作用を持つ。機能分子6と流路壁との化学結合、または、機能分子6と流路壁10を結合させている結合助長化合物9と、機能分子6の間の結合、もしくは、結合助長化合物9と流路壁10の間の結合を切断することが望ましい。
【0053】
解離溶液12によって、機能分子6はカラム1から剥離し、排出口5より排出される溶液には、複合体8が含有される(排液13)。
【0054】
続いて、機能物質群6から金属7を回収するために、解離した金属ー機能分子複合体18から金属7を露出させる。
【0055】
窒素雰囲気中、または、大気中で、加熱源15を用いて、機能物質6の焼失温度以上、好適には、タンパク質の焼失温度以上で、複合体18を加熱焼失させることにより、金属の回収を実現することが望ましい。
【0056】
また、複合体18を選択的に分解する作用を持つ化合物、もしくは化合物を含有する溶液14を反応層に入れ、複合体18を分解して金属7を回収してもよい(19)。
【0057】
複合体分解溶液14は、例えば、複合体18がタンパク質の場合、タンパク質分解酵素、尿素、界面活性剤などが好適に用いられる。
【0058】
具体的に、タンパク質分解酵素として、プロテアーゼ、ディスパーゼ、トリプシン、ナガラーゼが、当業者に公知の処理方法で用いられる。
【0059】
また、複合体18の芯に内包されている化合物が、金属化合物の場合、当業者に公知の方法で、金属化合物を金属に酸化、還元する処理をも含む。
【0060】
解離溶液12を用いず、カラム1の機能分子6が固定化された流路10内をそのまま、窒素雰囲気中、または、大気中で、加熱源を用いて、機能物質6の焼失温度以上、好適には、タンパク質の焼失温度以上で、複合体8を加熱焼失させることにより、金属7の回収を実現することもできる。または、複合体分解溶液14をカラム1の注入口4から注入することによって、カラム1の流路10内で複合体18を分解して金属7を排出口5から回収してもよい。
【0061】
このように、カラムを使った金属の分離・回収方法は、所定の溶液を注入口4から加えるだけで実現でき、処理の連続化および自動化への応用が容易である。
【0062】
カラム1の流路10に固定される機能分子群6は、図5に示したように、1種類に限定されない。図5には、例として3種類の異なる機能分子6A,6B,6Cを流路10に固定化している。金属イオン7Aだけを特異的に内包する機能分子6A、金属イオン7Bだけを特異的に内包する機能分子6B、および、金属イオン7Cだけを特異的に内包する機能分子6Cを用いれば、このカラム1は、多種の金属イオンを含有している溶液2から、同時に複数の金属イオンを除去することが可能となる。
(実施の形態3) [カラム 個別回収 アフィニ]
図6は、本発明の多種類の金属イオンが混在している溶液中から金属を選択的に回収する機能を有するカラムの1例の概略を示す概念図である。
【0063】
図6では、例示として、3種類の金属(7A、7B、7C)から金属7Aのみを回収する方法を示している。まず、図1に示したカラム1を用い、実施の形態1に明示した方法で、金属含有溶液2からカラム1の機能分子群6内に金属7を内包させる。その後、機能物質6Aよりも結合助長化合物9と結合力が強い高アフィニティー物質を含有する溶液を注入口4より注入する。結合助長物質9は、機能物質6Aとの結合を離し、代わりに高アフィニティー化合物と結合するため、排出口5より金属7Aの複合体8Aのみを含有する溶液を排出する。
【0064】
その溶液を、窒素雰囲気中、または、大気中で、実施の形態2に明示した加熱源15を用いて、機能物質6の焼失温度以上、好適には、タンパク質の焼失温度以上で、複合体8を加熱焼失させることにより、金属7Aの回収を実現することが望ましい。また、実施の形態2に明示した複合体分解溶液14を溶液に添加し、複合体18Aを分解して金属7Aを回収してもよい。
【0065】
このような結合助長物質9には、抗体が用いられることが望ましい。機能物質6は、抗原―抗体結合を介して、結合助長物質9と結合することが望ましい。
(実施の形態4) [カラム 回収 DNA/デネイチャとBufferと制限酵素]
図7は、本発明の多種類の金属イオンが混在している溶液中から金属を選択的または、非選択的に回収する機能を有するカラムの1例の概略を示す概念図である。
【0066】
図7では、例示として、3種類の金属(7A、7B、7C)から金属7Cのみを回収する方法を示している。まず、図1に示したカラム1を用い、実施の形態1に明示した方法で、金属含有溶液2からカラム1の機能分子群6内に金属7を内包させる。その後、機能物質6Cの結合助長化合物9Cだけを選択的に切断する切断物質を含有する溶液を注入口4より注入する。結合助長物質9Cは、切断酵素溶液によって切断され、排出口5より排出される排出液には、金属7Aの複合体8Cのみを含有する溶液が排出される。
【0067】
その溶液を、窒素雰囲気中、または、大気中で、実施の形態2に明示した加熱源15を用いて、機能物質6の焼失温度以上、好適には、タンパク質の焼失温度以上で、複合体8を加熱焼失させることにより、金属7Aの回収を実現することが望ましい。また、実施の形態2に明示した複合体分解溶液14を溶液に添加し、複合体18Cを分解して金属7Aを回収してもよい。
【0068】
このような結合助長物質9には、核酸を一部に含む物質が用いられることが望ましい。機能物質6と核酸9は、例えば、アミノカップリング法など、当業者に公知の技術を用いて結合される。切断物質は、好適には制限酵素が用いられる。図5は、二本鎖核酸を介してカラムに固定化された機能物質6の例をしめしているが、切断する溶液は、上記に記した制限酵素サイトを持つ二本鎖核酸を特異的に切断する制限酵素溶液だけに限らず、金属を非特異的に回収するが、例えば、DNAを溶解する溶液であってもよい。または、TEなどの、DNAのバッファーであってもよい。その際は、外部からカラム内のバッファーを、65℃以上、好適には、95℃程度に加熱源15を用いて、加熱して、二本鎖DNAを一本鎖に乖離させる操作が必要である。
【0069】
【実施例】
(実施例1)
以下に、本発明の方法により、機能物質であるアポフェリチンを石英カラム内壁に固定化し、カラム内で水溶液中から亜鉛イオンを除去し、そのままカラムを加熱し、亜鉛を回収した例を説明する。
(アポフェリチンの精製)
ウマひぞうフェリチン(Sigma)から24量体だけ精製する。具体的には、10mM CdSO4を加え、低速で遠心分離する。その沈殿物からCdを除去するために、150mM NaClに溶かし、高速遠心分離を3回行う。その後、50mM TrisHCl(pH8.0)、150mM NaClで十分平衡化したG4000SWXL PEEKカラム(TOSOH)を用いて、24量体だけを分取し、150mM NaClバッファー中に溶かした。フェリチンは、さらに、1wt%チオグリコール酸、0.1M 酢酸バッファー(pH5.6)を用いて4℃で3時間透析後、さらに、0.1M 酢酸バッファー(pH5.6)を用いて4℃で4時間透析して、アポフェリチン化した後、50mM TrisHCl(pH8.5)で透析する。
(カラムへの固定)
カラムは石英で構成される。カラムの内壁部分(内容量:約15cc)にシランカップリング処理を施しアポフェチリンを固定化した。
【0070】
以下に、その詳細を記す。
【0071】
カラムのフェリチンを固定化すべき領域に1.5%v/v 3−アミノプロピルジメチルエトキキシランを含むトルエン溶液を2時間 曝した。未結合のシランを取り除くために超音波洗浄をトルエン溶液中で行った。この処理が固定化にとって重要である。
【0072】
次に、10% v/v グルタルアルデヒドを含有した、100mM リン酸カリウム溶液(pH7.0)を、室温で1時間曝し、反応させた。
【0073】
脱イオン水でカラム内壁を洗浄後、1mg/mLの濃度のアポフェリチン溶液を、前述の活性化した表面に滴下し、更に室温で1時間反応させ、アポフェリチンをカラム内壁に固定化した。その後、脱イオン水で内壁に洗浄した。
(亜鉛イオンの分離・回収)
100μM 硫酸亜鉛溶液に、希硫酸を加え、pH1.5に調整して、カラムの注入口より流速5mL/minで注入した。15分後、注入溶液は、アポフェリチンが固定化された領域に到達した。排出口より排液を完全に排出した。廃液に対して、フレーム原子吸光分析法を用いて、廃液中の残留亜鉛量を測定した。排出液に塩酸を加え、終濃度0.1Mの塩酸溶液とし、アセチレン・空気フレームに直接噴霧し、亜鉛は波長213.9nmの吸光度で定量した。測定排液には、亜鉛が0.9μg(濃度:0.1ppm)しか含まれていなかった。
【0074】
完全に排出した後、次に、注入口から150mM NaClバッファーを注入し、石英からなるカラム内を洗浄した。カラムを炉に入れて700℃で1時間、加熱した。加熱中、炉内には、窒素ガスを流速毎分200mLで流した。約3時間後、炉内が100℃以下になるのを待ってカラムを取り出したところ、金属塊4.9mgが得られた。
【0075】
各注入容量に対して残留金属イオン量を測定し、換算吸着量を図8に示す。最大の吸着が見られた注入量において、一つのアポフェリチン分子は約3000個の亜鉛原子を内包する能力を持つことが示された。固定化するために使用したアポフェリチンの濃度から換算して、単位質量当たりのフェリチンの回収容量はこれより362mg/gと算出された。同様に測定した、イミノジ酢酸形のキレート樹脂の吸着容量は4.4mg/gであり、本特許のアポフェリチンは非常に大きな吸着容量を示した。
【0076】
(実施例2)
実施例1と同様に脾臓からフェリチンを抽出・精製し、アポフェリチン化した。
(アポフェリチンのカラムへの固定)
カラムは、最表面に金を真空蒸着した。以下の方法で、カラム内壁の金にアミノウンデカンチオール(H2N−C11H22−SH)からなるSAM膜(Self Assembled Monolayer、自己組織化単分子膜)を介してアポフェリチンを固定化した。具体的な固定方法は以下に示す。
【0077】
金表面部分のみにピラニア溶液(硫酸:30 %過酸化水素水 =3:1 )に10 〜15分間反応させ、純水で十分洗浄し、金最表面に付着する有機物を完全に除去した。その後、金に1mM アミノウンデカンチオール(H2N−C11H22−SH)、10mMエタノール水溶液を20分間曝した。
【0078】
エタノール、純水の順に金表面を洗浄し、さらに、金表面を窒素雰囲気下で乾燥させた。2μMの濃度のアポフェリチン、リン酸緩衝液(pH7.0)を電極上で60分間反応させ、アポフェリチンを固定化した。
(鉛イオンの分離・回収)
100μMの濃度で鉛(II)イオンが溶解した溶液に希硫酸を加え、pH1.5に調整して、カラムの注入口より流速5mL/minで注入した。15分後、注入溶液は、アポフェリチンが固定化された領域に到達した。排出口より排液を完全に排出した。
【0079】
完全に排出した後、次に、注入口から100mM 水酸化カリウムを注入した。水酸化カリウムにより金とSAMとの結合はチオール基に還元され、SAM膜の結合が脱離したものと思われる。排出口より排出された脱離フェリチン溶液は石英容器に受けられる。排出液を700℃で1時間 加熱した。加熱中、炉内には、窒素ガスを流速毎分200mLで流した。約3時間後、炉内が100℃以下になるのを待ってカラムを取り出したところ、鉛の金属塊が得られた。
【0080】
【発明の効果】
本発明の機能分子は、多量の金属イオンを内包することができる。しかも、簡便な操作で金属を容易に脱離させ、回収することができる。
【0081】
よって、本特許は、産業廃棄物、鉱山排水、工場排水などの中の有価金属や有害金属を効率よく吸収し、回収あるいは除去することができ、これは、資源の回収再利用及び環境汚染防止の観点から極めて重要である。特に、本特許に示した金属の分離・回収方法は、連続処理できるため、工程水の回収、再利用の自動化に威力を発揮する。
【0082】
また、機能分子の主成分がタンパク質に代表される生体分子であるため、血液処理などの医療分野、食品分野にも応用が可能である。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施の形態における、金属を分離するカラムの動作の概略を示す概念図
【図2】本発明の一実施の形態における、カラムに分離した金属を回収する方法の概略を示す図
【図3】本発明の機能分子であるフェリチンタンパク質の分子構造を示す図
【図4】本発明の一実施の形態における、金属を分離するカラムの動作の概略を示す概念図
【図5】本発明の一実施の形態における、カラムに分離した金属を回収する方法の概略を示す図
【図6】本発明の一実施の形態における、アフィニティー差を利用したカラムの動作および金属回収方法の概略を示す図
【図7】本発明の一実施の形態における、核酸を利用したカラムの動作および金属回収方法の概略を示す図
【図8】各注入容量に対して、残留金属イオン量から換算した換算吸着を示す図
【符号の説明】
1:カラム
2:金属イオン含有液
3:金属イオン除去後液
4:注入口
5:排出口
6:機能分子
6A:機能分子A
6B:機能分子B
6C:機能分子C
7:金属イオン
7A:金属イオンA
7B:金属イオンB
7C:金属イオンC
8:金属−機能分子複合体
8A:金属−機能分子複合体A
8B:金属−機能分子複合体B
8C:金属−機能分子複合体C
9:結合助長化合物
10:流路
12:解離溶液
13:複合体含有水溶液
14:複合体分解溶液
15:加熱源
18:解離した金属−機能分子複合体
19:分解した金属−機能分子複合体
31:Fe2O3の芯
32:タンパク質の殻
42A:高アフィニティー溶液A
43A:脱離複合体8A含有溶液
49A:抗体A
52A:制限酵素A 溶液
53A:脱離複合体8A含有溶液
55:カラム加熱源
59A:二本鎖核酸(制限酵素サイトA)
【発明の属する技術分野】
本発明は、種々の金属イオンが存在する水溶液から、金属イオンを連続的かつ、選択的または非選択的に分離する分離剤、カラム、および、金属イオンを含む水溶液の処理方法に関する。具体的には、内腔を有し、金属をその内腔に内包できる機能分子を利用した金属分離カラム、及び機能分子を含有する金属分離剤、または、金属分離カラムを用いた、種々の金属イオンが存在する水溶液から金属イオンを分離、除去する方法、および、それらを用いた種々の金属イオンが存在する水溶液から金属イオンを回収する方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
銀、金などの貴金属や、銅、鉛、水銀、カドミウムなどの有害重金属を含む水溶液中からこれらの金属を分離する技術は、資源の回収再利用及び環境汚染防止の観点から極めて重要である。これまで、これらの金属の分離方法としては、金属含有水溶液を陽イオン交換樹脂、活性炭、金属キレート化剤、合成ゼオライト、シリカゲル、活性アルミナ、活性白土、液膜を通したイオン輸送剤、植物プランクトンなど種々の無機系や有機系の吸着剤に接触させて、金属をこれらに吸着させ分離する方法が主流をなしている。
【0003】
具体的にイオン輸送剤として使用される物質を例示すると、水銀のみを捕捉するものとしてトロポノイド付加ジチオクラウンエーテル類がある。また、鉛のみを捕捉するものとして環状ポリエーテルジカルボン酸が知られている。また、水銀のみを捕捉するものとして8−キノリル基をもつメチオニン誘導体が挙げられている。また、特許文献1には、銅のみを選択的に捕捉するものとして、α−アミノ酸ジアジド誘導体が開示されている。というように、挙げれば枚挙にいとまがない。
【0004】
他方、微生物や藻類の中には、特定の金属を蓄積する能力を有するものがあることが知られており、近年、これを利用して、廃液中の有害金属や有価金属を除去したり、回収することが試みられ、例えば植物バイオマス、カビ、さらにはクロレラなどの微細藻類などを用いる方法が提案されている。
【0005】
【特許文献1】
特開平5−163243号公報
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、の無機系や有機系の吸着剤は、吸着能力に限界がある。例えば、金属キレート樹脂は、その分子構造を利用して金属イオンと錯体を形成することで補足するキレート官能基と、それを固定する担体の樹脂からなる。キレート官能基導入量の大きい樹脂を選べば補足収率は向上するが、基本的には一つのキレート官能基に対し補足される金属錯体は一つであるため、収率には限度がある。このため、多量の廃液を処理するには、吸着材料は多量使用しなければならない問題があった。さらに、吸着材料が特異的な金属と非常に高い選択性を持つ反面、一度吸着させた金属を脱離させることが必ずしも容易ではないため、吸着剤の再生が困難で煩雑な操作を要するという一面も持つ。吸着剤の再生にかかるコストや回収の生産性は必ずしも良好とは言えない。また、これまで用いられている微生物や藻類は、重金属の収率や、粒形化の困難さなどの点で、必ずしも十分に満足しうるものではないのが実状である。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、馬、牛などの動物のひぞうや肝臓などに存在するフェリチンが、タンパク質の殻で覆われた内腔に金属イオンを内包することによって、体内での金属イオン濃度を調節している。しかも、フェリチンの内包された金属イオンを金属に還元すると、一つのフェリチン内に、数千個の金属原子が内包されていることに着目し、鋭意研究を重ねた結果、フェリチンなどの、内腔を有し、金属をその内腔に内包できる機能分子を有効に利用することにより、当初の目的を達成するばかりでなく、大幅に収率を向上させることができることを発見した。本発明はかかる発見に基づきさらに研究を進めて完成するに至った。
【0008】
上記課題を解決する本発明に係るカラムは、少なくとも1種類以上の金属イオンが混在している溶液中から金属を選択的、もしくは非選択的に分離する機能を有するカラムが、
カラム内で、金属イオン混在溶液と接する流路領域に配置された
少なくとも一種類以上の機能物質群と、
カラムの該領域へ、混在溶液を注入する、少なくとも一つ以上の注入口と、
カラムの該領域から、混在溶液を排出する、少なくとも一つ以上の排出口を備え、
機能物質が、有機物で構成され、さらに、その物質が内腔を有し、かつ、
該内腔部に除去すべき金属を内包、もしくは金属と複合体を形成することにより金属を溶液中から分離することを特徴とする金属を分離する機能を有する。
【0009】
機能物質群が担持体に担持もしくは、充填されることにより、カラム内の該領域に配置されることが好ましい。
【0010】
機能物質群がカラムに化学結合を介して固定されることにより、カラム内の該領域に配置されることが好ましい。
【0011】
機能物質群がカラムに、少なくとも一種類以上の結合仲介作用を有する化合物を介して化学的に固定されることにより、カラム内の該領域に配置されることが好ましい。
【0012】
カラムの注入口と排出口を結ぶ、領域が複数配置されていることが好ましい。
【0013】
さらに、注入口と複数領域を結ぶ流路内に、注入口と所望の流路とを結ぶことができる、切り替えバルブを持ち、
内包する金属種の異なる機能分子が複数領域の各各に固定化されていることが好ましい。
【0014】
カラムの一つ以上の排出口の先の流路がすくなくとも一つ以上の流路に分岐し、さらに、一方の流路が注入口へとつながることが好ましい。
【0015】
機能物質が、代表長さが3−30nmであることが好ましい。
【0016】
機能物質を構成する、有機物の主要な部分がタンパク質であることが好ましい。
【0017】
タンパク質分子がフエリチンフアミリ−であることが好ましい。
【0018】
フエリチンフアミリ−がフエリチンまたは、アポフエリチン、および、これらのアミノ酸配列を改変した改変物であることが好ましい。
【0019】
タンパク質分子がアデノウィルス、ロタウィルス、ポリオウィルス、HK97、CCMV、および、これらの改変物等の群から選ばれるウイルスであることが好ましい。
【0020】
タンパク質分子がDpsAタンパク質またはMrgAタンパク質、および、これらのアミノ酸配列を改変した改変物であることが好ましい。
【0021】
金属が鉄、鉄酸化物、その他の鉄化合物、ニツケル、ニツケル酸化物、その他のニツケル化合物、コバルト、コバルト酸化物、その他のコバルト化合物、銅、銅酸化物、その他の銅化合物、金、その他の金化合物、白金、その他の白金化合物の少なくとも、いずれか1種であることが好ましい。
【0022】
上記課題を解決する本発明に係る金属を回収する方法は、
請求項1に記載のカラムを用いて、
少なくとも1種類以上の金属イオンが混在している第一の溶液中から金属を選択的、もしくは非選択的に回収する方法であって、
第一の溶液をカラムの該記注入口から注入し、
カラムの機能物質群が配置された該領域に接触させ、該排出口より排出する工程と、
操作により機能物質群から金属を回収する工程からなり、
操作が、機能物質に内包されていた金属を露出させることにより、金属を得ることを特徴とする金属を回収する方法。
【0023】
操作が、窒素雰囲気中、または、大気中で、機能物質の焼失温度以上で、前期機能物質群を加熱焼失させることにより、金属の回収を実現することが好ましい。
【0024】
操作が、機能物質群のみを選択的に分解する作用を持つ化合物を入れることであり、かつ、分解作用化合物が、タンパク質分解酵素、尿素、界面活性剤のいずれか一つ以上であることが好ましい。
【0025】
タンパク質分解酵素が、プロテアーゼ、ディスパーゼ、トリプシン、ナガラーゼ、のいずれか一つ以上であることが好ましい。
【0026】
請求項5に記載のカラムを用いて、
少なくとも1種類以上の金属イオンが混在している第一の溶液中から金属を選択的、もしくは非選択的に回収する方法であって、
第一の溶液をカラムの該記注入口から注入し、
カラムの機能物質群が配置された該領域に接触させ、該排出口より排出する工程と、
第二の溶液をカラムの該記注入口から注入し、
カラムの機能物質群が配置された該領域に接触させ、該排出口より排出する工程と、
請求項15から18に記載の操作により機能物質群から金属を回収する工程からなり、
第二の溶液が、機能物質群をカラムに固定している結合を切断する機能を有することが好ましい。
【0027】
カラムに固定されている結合仲介物質が抗原であり、第二の溶液が機能物質より抗原とのアフィニティーが高い抗体を含有する溶液であることが好ましい。
【0028】
カラムに固定されている結合仲介物質が核酸であり、操作が60℃以上の加熱(デイネイチャー)であることが好ましい。
【0029】
カラムに固定されている結合仲介物質が核酸であり、第二の溶液が核酸を溶かす溶液であることが好ましい。
【0030】
カラムに固定されている結合仲介物質が核酸であり、第二の溶液が制限酵素を含有する溶液であることが好ましい。
【0031】
機能物質が、直径3−30nmの粒子であることが好ましい。
【0032】
機能物質を構成する、有機物の主要な部分がタンパク質であることが好ましい。
【0033】
タンパク質分子がフエリチンフアミリ−であることが好ましい。
【0034】
フエリチンフアミリ−がフエリチンまたは、アポフエリチン、および、これらのアミノ酸配列を改変した改変物であることが好ましい。
【0035】
タンパク質分子がアデノウィルス、ロタウィルス、ポリオウィルス、HK97、CCMV、および、これらの改変物等の群から選ばれるウイルスであることが好ましい。
【0036】
タンパク質分子がDpsAタンパク質またはMrgAタンパク質、および、これらのアミノ酸配列を改変した改変物であることが好ましい。
【0037】
金属が鉄、鉄酸化物、その他の鉄化合物、ニツケル、ニツケル酸化物、その他のニツケル化合物、コバルト、コバルト酸化物、その他のコバルト化合物、銅、銅酸化物、その他の銅化合物、金、その他の金化合物、白金、その他の白金化合物の少なくとも、いずれか1種であることが好ましい。
【0038】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の金属分離能を有する機能分子、それを用いた金属分離カラム、および金属の分離、回収方法の実施の形態を、図を用いて説明する。
(第1の実施の形態)(カラム/除去のみ)
図1は、本発明の多種類の金属イオンが混在している溶液中から金属を分離する機能を有するカラムの1例の概略を示す概念図である。
【0039】
明細書中のカラムの定義は、溶液を注入、排出するための器もしくは反応場であり、分析化学、特に、クロマトグラフィーに用いられるカラムの意味に限定されない。一つ以上の注入口側から排出口側への溶液の流れが生じている管であってもよい。
【0040】
カラム1は、注入口4と排出口5を持ち、金属イオン含有液2を注入口4から注入することができる。注入された金属イオン含有液2は、機能分子6群が固定化された流路10の領域を通って、排出口5から排出される。
【0041】
機能分子6は、有機物で構成され、さらに、その分子構造が内腔を有し、かつ、
該内腔部に除去すべき金属7を内包、もしくは金属7と複合体8を形成することにより金属7を溶液2中から分離することができる。
【0042】
このような機能分子6は、その構造を構成する有機物の主要な部分がタンパク質である。機能分子6は、直径3−30nmの粒子であることが望ましい。具体的に、機能分子6として用いられるタンパク質分子は、アポフェリチン等が好ましく使用できる。アポフェリチンは、図3に模式的に示すように、無機材料原子の芯31を内腔部に保持し、この周囲をタンパク質の殻32で覆った金属タンパク質複合体となることができる。アポフェリチンのファミリーである、内部に鉄イオンを含有できるフェリチンは、馬、牛等の動物のひ臓や肝臓等の臓器から取り出すことができる。
【0043】
フェリチンの場合、芯31の無機材料原子は、通常は、酸化鉄(Fe2O3)で、芯31の直径は6nm程度、酸化鉄の総数は4000個程度であり、殻32は分子量45万程度のタンパク質の24量体で、24量体全体の外径は12nm程度である。
【0044】
また、機能分子6は、上記のこれらのタンパク質のアミノ酸配列を改変した改変物であってもよい。タンパク質を改変させる手段は、遺伝子組み替え技術など当業者に公知の技術を用いて実現される。例えば、アポフェリチンの金属導入部に位置するグルタミン酸およびアスパラギン酸を、電荷を持たず、かつサイズの小さいセリンで置換する。次に、内腔部に位置するグルタミン酸をリジン等の塩基性アミノ酸または中性アミノ酸で置換する。さらに、内腔部にひとつ以上のシステイン結合を導入することで、負電荷を持つ(AuCl4)−と負電荷を持つアミノ酸との間に発生する静電相互作用による斥力を防ぐことができ、(AuCl4)−が内腔に取りこまれ易くなる。内腔に取りこまれた(AuCl4)−は、当業者に公知の技術でAuに還元することができる。よって、この改変したアポフェリチンを機能分子6として使えば、溶液中の金イオンを金粒子として分離するカラムが作製できる。
【0045】
そのほかには、DpsAタンパク質またはMrgAタンパク質が挙げられる。Dpsタンパク質の場合は、図示は省略するが、芯31の直径は4nm程度、殻32は正四面体の12量体で、12量体全体の外径は9nm程度である。また、アデノウィルス、ロタウィルス、ポリオウィルス、HK97、CCMV等の群から選ばれるウイルスも好適に使用され得る。
【0046】
機能分子群6がカラム1の流路10に、少なくとも一種類以上の結合仲介作用を有する化合物9を介して化学的に固定されていてもよい。
【0047】
図1に示した金属イオン分離カラムの作用は、カラム1の注入口4から注入された金属イオン含有水溶液2に含まれる金属イオン7は、溶液に添加した還元剤により還元されるとともに、機能分子6の内腔部に内包され、除去後の水溶液3が排出口5より排出される。カラム内を流れる流速を制御し、還元反応が起こる時間から逆算したタイミングで還元剤を流路内で混合させることで、機能分子6を固定化した流路10内で金属イオンの内包が行われる。
【0048】
カラム1の流路10に固定される機能分子群6は、図4に示したように、1種類に限定されない。図4には、例として3種類の異なる機能分子6A,6B,6Cを流路10に固定化している。金属イオン7Aだけを特異的に内包する機能分子6A、金属イオン7Bだけを特異的に内包する機能分子6B、および、金属イオン7Cだけを特異的に内包する機能分子6Cを用いれば、このカラム1は、多種の金属イオンを含有している溶液2から、同時に複数の金属イオンを除去することが可能となる。
【0049】
カラム1は、注入口4、排出口5に対して、流路10を複数配置されていてもよい。注入口から流路10に至る流管部分に切り替えバルブを持ち、バルブの切り替えにより所望の流路を選択できる構成が望ましい。各流路10に、それぞれ異なる金属を内包できる機能分子を固定化しておけば、注入口から注入された金属イオン含有溶液は、バルブの切り替えにより、除去すべき金属を内包できる機能分子が固定化されている流路を選択することにより、各金属イオン含有溶液2に対し、それぞれ個別の所定の金属だけを除去することが可能となる。
【0050】
(実施の形態2) [カラム 回収 Bufferでリンカー/熱とP]
図2は、本発明の多種類の金属イオンが混在している溶液中から金属を回収する機能を有するカラムの1例の概略を示す概念図である。
【0051】
まず、図1に示したカラム1を用い、実施の形態1に明示した方法で、金属含有溶液2からカラム1の機能分子群6内に金属7を内包させる。その後、解離溶液12を注入口4より注入する。
【0052】
解離溶液12は、カラム1に固定化された機能分子群6を流路10から剥離させる作用を持つ。機能分子6と流路壁との化学結合、または、機能分子6と流路壁10を結合させている結合助長化合物9と、機能分子6の間の結合、もしくは、結合助長化合物9と流路壁10の間の結合を切断することが望ましい。
【0053】
解離溶液12によって、機能分子6はカラム1から剥離し、排出口5より排出される溶液には、複合体8が含有される(排液13)。
【0054】
続いて、機能物質群6から金属7を回収するために、解離した金属ー機能分子複合体18から金属7を露出させる。
【0055】
窒素雰囲気中、または、大気中で、加熱源15を用いて、機能物質6の焼失温度以上、好適には、タンパク質の焼失温度以上で、複合体18を加熱焼失させることにより、金属の回収を実現することが望ましい。
【0056】
また、複合体18を選択的に分解する作用を持つ化合物、もしくは化合物を含有する溶液14を反応層に入れ、複合体18を分解して金属7を回収してもよい(19)。
【0057】
複合体分解溶液14は、例えば、複合体18がタンパク質の場合、タンパク質分解酵素、尿素、界面活性剤などが好適に用いられる。
【0058】
具体的に、タンパク質分解酵素として、プロテアーゼ、ディスパーゼ、トリプシン、ナガラーゼが、当業者に公知の処理方法で用いられる。
【0059】
また、複合体18の芯に内包されている化合物が、金属化合物の場合、当業者に公知の方法で、金属化合物を金属に酸化、還元する処理をも含む。
【0060】
解離溶液12を用いず、カラム1の機能分子6が固定化された流路10内をそのまま、窒素雰囲気中、または、大気中で、加熱源を用いて、機能物質6の焼失温度以上、好適には、タンパク質の焼失温度以上で、複合体8を加熱焼失させることにより、金属7の回収を実現することもできる。または、複合体分解溶液14をカラム1の注入口4から注入することによって、カラム1の流路10内で複合体18を分解して金属7を排出口5から回収してもよい。
【0061】
このように、カラムを使った金属の分離・回収方法は、所定の溶液を注入口4から加えるだけで実現でき、処理の連続化および自動化への応用が容易である。
【0062】
カラム1の流路10に固定される機能分子群6は、図5に示したように、1種類に限定されない。図5には、例として3種類の異なる機能分子6A,6B,6Cを流路10に固定化している。金属イオン7Aだけを特異的に内包する機能分子6A、金属イオン7Bだけを特異的に内包する機能分子6B、および、金属イオン7Cだけを特異的に内包する機能分子6Cを用いれば、このカラム1は、多種の金属イオンを含有している溶液2から、同時に複数の金属イオンを除去することが可能となる。
(実施の形態3) [カラム 個別回収 アフィニ]
図6は、本発明の多種類の金属イオンが混在している溶液中から金属を選択的に回収する機能を有するカラムの1例の概略を示す概念図である。
【0063】
図6では、例示として、3種類の金属(7A、7B、7C)から金属7Aのみを回収する方法を示している。まず、図1に示したカラム1を用い、実施の形態1に明示した方法で、金属含有溶液2からカラム1の機能分子群6内に金属7を内包させる。その後、機能物質6Aよりも結合助長化合物9と結合力が強い高アフィニティー物質を含有する溶液を注入口4より注入する。結合助長物質9は、機能物質6Aとの結合を離し、代わりに高アフィニティー化合物と結合するため、排出口5より金属7Aの複合体8Aのみを含有する溶液を排出する。
【0064】
その溶液を、窒素雰囲気中、または、大気中で、実施の形態2に明示した加熱源15を用いて、機能物質6の焼失温度以上、好適には、タンパク質の焼失温度以上で、複合体8を加熱焼失させることにより、金属7Aの回収を実現することが望ましい。また、実施の形態2に明示した複合体分解溶液14を溶液に添加し、複合体18Aを分解して金属7Aを回収してもよい。
【0065】
このような結合助長物質9には、抗体が用いられることが望ましい。機能物質6は、抗原―抗体結合を介して、結合助長物質9と結合することが望ましい。
(実施の形態4) [カラム 回収 DNA/デネイチャとBufferと制限酵素]
図7は、本発明の多種類の金属イオンが混在している溶液中から金属を選択的または、非選択的に回収する機能を有するカラムの1例の概略を示す概念図である。
【0066】
図7では、例示として、3種類の金属(7A、7B、7C)から金属7Cのみを回収する方法を示している。まず、図1に示したカラム1を用い、実施の形態1に明示した方法で、金属含有溶液2からカラム1の機能分子群6内に金属7を内包させる。その後、機能物質6Cの結合助長化合物9Cだけを選択的に切断する切断物質を含有する溶液を注入口4より注入する。結合助長物質9Cは、切断酵素溶液によって切断され、排出口5より排出される排出液には、金属7Aの複合体8Cのみを含有する溶液が排出される。
【0067】
その溶液を、窒素雰囲気中、または、大気中で、実施の形態2に明示した加熱源15を用いて、機能物質6の焼失温度以上、好適には、タンパク質の焼失温度以上で、複合体8を加熱焼失させることにより、金属7Aの回収を実現することが望ましい。また、実施の形態2に明示した複合体分解溶液14を溶液に添加し、複合体18Cを分解して金属7Aを回収してもよい。
【0068】
このような結合助長物質9には、核酸を一部に含む物質が用いられることが望ましい。機能物質6と核酸9は、例えば、アミノカップリング法など、当業者に公知の技術を用いて結合される。切断物質は、好適には制限酵素が用いられる。図5は、二本鎖核酸を介してカラムに固定化された機能物質6の例をしめしているが、切断する溶液は、上記に記した制限酵素サイトを持つ二本鎖核酸を特異的に切断する制限酵素溶液だけに限らず、金属を非特異的に回収するが、例えば、DNAを溶解する溶液であってもよい。または、TEなどの、DNAのバッファーであってもよい。その際は、外部からカラム内のバッファーを、65℃以上、好適には、95℃程度に加熱源15を用いて、加熱して、二本鎖DNAを一本鎖に乖離させる操作が必要である。
【0069】
【実施例】
(実施例1)
以下に、本発明の方法により、機能物質であるアポフェリチンを石英カラム内壁に固定化し、カラム内で水溶液中から亜鉛イオンを除去し、そのままカラムを加熱し、亜鉛を回収した例を説明する。
(アポフェリチンの精製)
ウマひぞうフェリチン(Sigma)から24量体だけ精製する。具体的には、10mM CdSO4を加え、低速で遠心分離する。その沈殿物からCdを除去するために、150mM NaClに溶かし、高速遠心分離を3回行う。その後、50mM TrisHCl(pH8.0)、150mM NaClで十分平衡化したG4000SWXL PEEKカラム(TOSOH)を用いて、24量体だけを分取し、150mM NaClバッファー中に溶かした。フェリチンは、さらに、1wt%チオグリコール酸、0.1M 酢酸バッファー(pH5.6)を用いて4℃で3時間透析後、さらに、0.1M 酢酸バッファー(pH5.6)を用いて4℃で4時間透析して、アポフェリチン化した後、50mM TrisHCl(pH8.5)で透析する。
(カラムへの固定)
カラムは石英で構成される。カラムの内壁部分(内容量:約15cc)にシランカップリング処理を施しアポフェチリンを固定化した。
【0070】
以下に、その詳細を記す。
【0071】
カラムのフェリチンを固定化すべき領域に1.5%v/v 3−アミノプロピルジメチルエトキキシランを含むトルエン溶液を2時間 曝した。未結合のシランを取り除くために超音波洗浄をトルエン溶液中で行った。この処理が固定化にとって重要である。
【0072】
次に、10% v/v グルタルアルデヒドを含有した、100mM リン酸カリウム溶液(pH7.0)を、室温で1時間曝し、反応させた。
【0073】
脱イオン水でカラム内壁を洗浄後、1mg/mLの濃度のアポフェリチン溶液を、前述の活性化した表面に滴下し、更に室温で1時間反応させ、アポフェリチンをカラム内壁に固定化した。その後、脱イオン水で内壁に洗浄した。
(亜鉛イオンの分離・回収)
100μM 硫酸亜鉛溶液に、希硫酸を加え、pH1.5に調整して、カラムの注入口より流速5mL/minで注入した。15分後、注入溶液は、アポフェリチンが固定化された領域に到達した。排出口より排液を完全に排出した。廃液に対して、フレーム原子吸光分析法を用いて、廃液中の残留亜鉛量を測定した。排出液に塩酸を加え、終濃度0.1Mの塩酸溶液とし、アセチレン・空気フレームに直接噴霧し、亜鉛は波長213.9nmの吸光度で定量した。測定排液には、亜鉛が0.9μg(濃度:0.1ppm)しか含まれていなかった。
【0074】
完全に排出した後、次に、注入口から150mM NaClバッファーを注入し、石英からなるカラム内を洗浄した。カラムを炉に入れて700℃で1時間、加熱した。加熱中、炉内には、窒素ガスを流速毎分200mLで流した。約3時間後、炉内が100℃以下になるのを待ってカラムを取り出したところ、金属塊4.9mgが得られた。
【0075】
各注入容量に対して残留金属イオン量を測定し、換算吸着量を図8に示す。最大の吸着が見られた注入量において、一つのアポフェリチン分子は約3000個の亜鉛原子を内包する能力を持つことが示された。固定化するために使用したアポフェリチンの濃度から換算して、単位質量当たりのフェリチンの回収容量はこれより362mg/gと算出された。同様に測定した、イミノジ酢酸形のキレート樹脂の吸着容量は4.4mg/gであり、本特許のアポフェリチンは非常に大きな吸着容量を示した。
【0076】
(実施例2)
実施例1と同様に脾臓からフェリチンを抽出・精製し、アポフェリチン化した。
(アポフェリチンのカラムへの固定)
カラムは、最表面に金を真空蒸着した。以下の方法で、カラム内壁の金にアミノウンデカンチオール(H2N−C11H22−SH)からなるSAM膜(Self Assembled Monolayer、自己組織化単分子膜)を介してアポフェリチンを固定化した。具体的な固定方法は以下に示す。
【0077】
金表面部分のみにピラニア溶液(硫酸:30 %過酸化水素水 =3:1 )に10 〜15分間反応させ、純水で十分洗浄し、金最表面に付着する有機物を完全に除去した。その後、金に1mM アミノウンデカンチオール(H2N−C11H22−SH)、10mMエタノール水溶液を20分間曝した。
【0078】
エタノール、純水の順に金表面を洗浄し、さらに、金表面を窒素雰囲気下で乾燥させた。2μMの濃度のアポフェリチン、リン酸緩衝液(pH7.0)を電極上で60分間反応させ、アポフェリチンを固定化した。
(鉛イオンの分離・回収)
100μMの濃度で鉛(II)イオンが溶解した溶液に希硫酸を加え、pH1.5に調整して、カラムの注入口より流速5mL/minで注入した。15分後、注入溶液は、アポフェリチンが固定化された領域に到達した。排出口より排液を完全に排出した。
【0079】
完全に排出した後、次に、注入口から100mM 水酸化カリウムを注入した。水酸化カリウムにより金とSAMとの結合はチオール基に還元され、SAM膜の結合が脱離したものと思われる。排出口より排出された脱離フェリチン溶液は石英容器に受けられる。排出液を700℃で1時間 加熱した。加熱中、炉内には、窒素ガスを流速毎分200mLで流した。約3時間後、炉内が100℃以下になるのを待ってカラムを取り出したところ、鉛の金属塊が得られた。
【0080】
【発明の効果】
本発明の機能分子は、多量の金属イオンを内包することができる。しかも、簡便な操作で金属を容易に脱離させ、回収することができる。
【0081】
よって、本特許は、産業廃棄物、鉱山排水、工場排水などの中の有価金属や有害金属を効率よく吸収し、回収あるいは除去することができ、これは、資源の回収再利用及び環境汚染防止の観点から極めて重要である。特に、本特許に示した金属の分離・回収方法は、連続処理できるため、工程水の回収、再利用の自動化に威力を発揮する。
【0082】
また、機能分子の主成分がタンパク質に代表される生体分子であるため、血液処理などの医療分野、食品分野にも応用が可能である。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施の形態における、金属を分離するカラムの動作の概略を示す概念図
【図2】本発明の一実施の形態における、カラムに分離した金属を回収する方法の概略を示す図
【図3】本発明の機能分子であるフェリチンタンパク質の分子構造を示す図
【図4】本発明の一実施の形態における、金属を分離するカラムの動作の概略を示す概念図
【図5】本発明の一実施の形態における、カラムに分離した金属を回収する方法の概略を示す図
【図6】本発明の一実施の形態における、アフィニティー差を利用したカラムの動作および金属回収方法の概略を示す図
【図7】本発明の一実施の形態における、核酸を利用したカラムの動作および金属回収方法の概略を示す図
【図8】各注入容量に対して、残留金属イオン量から換算した換算吸着を示す図
【符号の説明】
1:カラム
2:金属イオン含有液
3:金属イオン除去後液
4:注入口
5:排出口
6:機能分子
6A:機能分子A
6B:機能分子B
6C:機能分子C
7:金属イオン
7A:金属イオンA
7B:金属イオンB
7C:金属イオンC
8:金属−機能分子複合体
8A:金属−機能分子複合体A
8B:金属−機能分子複合体B
8C:金属−機能分子複合体C
9:結合助長化合物
10:流路
12:解離溶液
13:複合体含有水溶液
14:複合体分解溶液
15:加熱源
18:解離した金属−機能分子複合体
19:分解した金属−機能分子複合体
31:Fe2O3の芯
32:タンパク質の殻
42A:高アフィニティー溶液A
43A:脱離複合体8A含有溶液
49A:抗体A
52A:制限酵素A 溶液
53A:脱離複合体8A含有溶液
55:カラム加熱源
59A:二本鎖核酸(制限酵素サイトA)
Claims (30)
- 少なくとも1種類以上の金属イオンが混在している溶液中から金属を選択的、もしくは非選択的に分離する機能を有するカラムが、
前記カラム内で、前記金属イオン混在溶液と接する流路領域に配置された
少なくとも一種類以上の機能物質群と、
前記カラムの該領域へ、前記混在溶液を注入する、少なくとも一つ以上の注入口と、
前記カラムの該領域から、前記混在溶液を排出する、少なくとも一つ以上の排出口を備え、
前記機能物質が、有機物で構成され、さらに、その物質が内腔を有し、かつ、
該内腔部に除去すべき金属を内包、もしくは金属と複合体を形成することにより前記金属を溶液中から分離することを特徴とする金属を分離する機能を有するカラム。 - 前記機能物質群が担持体に担持もしくは、充填されることにより、カラム内の該領域に配置される、請求項1に記載のカラム。
- 前記機能物質群がカラムに化学結合を介して固定されることにより、カラム内の該領域に配置される、請求項1に記載のカラム。
- 前記機能物質群がカラムに、少なくとも一種類以上の結合仲介作用を有する化合物を介して化学的に固定されることにより、カラム内の該領域に配置される、請求項3に記載のカラム。
- カラムの注入口と排出口を結ぶ、前記領域が複数配置されている、請求項1から4のいずれかに記載のカラム。
- さらに、注入口と前記複数領域を結ぶ流路内に、注入口と所望の前記流路とを結ぶことができる、切り替えバルブを持ち、
内包する金属種の異なる前記機能分子が前記複数領域の各各に固定化されている、請求項5に記載のカラム。 - カラムの一つ以上の排出口の先の流路がすくなくとも一つ以上の流路に分岐し、さらに、一方の流路が注入口へとつながることを特徴とする、請求項1から6のいずれかに記載のカラム。
- 前記機能物質が、代表長さが3−30nmであることを特徴とする、請求項1から7のいずれかに記載のカラム。
- 前記機能物質を構成する、前記有機物の主要な部分がタンパク質である、請求項1から8のいずれかに記載のカラム。
- 前記タンパク質分子がフエリチンフアミリ−であることを特徴とする、請求項9に記載のカラム。
- 前記フエリチンフアミリ−がフエリチンまたは、アポフエリチン、および、これらのアミノ酸配列を改変した改変物であることを特徴とする、請求項10に記載のカラム。
- 前記タンパク質分子がアデノウィルス、ロタウィルス、ポリオウィルス、HK97、CCMV、および、これらの改変物等の群から選ばれるウイルスであることを特徴とする、請求項9に記載のカラム。
- 前記タンパク質分子がDpsAタンパク質またはMrgAタンパク質、および、これらのアミノ酸配列を改変した改変物であることを特徴とする、請求項9に記載のカラム。
- 前記金属が鉄、鉄酸化物、その他の鉄化合物、ニツケル、ニツケル酸化物、その他のニツケル化合物、コバルト、コバルト酸化物、その他のコバルト化合物、銅、銅酸化物、その他の銅化合物、金、その他の金化合物、白金、その他の白金化合物の少なくとも、いずれか1種であることを特徴とする、請求項8から14のいずれかに記載のカラム。
- 請求項1に記載のカラムを用いて、
少なくとも1種類以上の金属イオンが混在している第一の溶液中から金属を選択的、もしくは非選択的に回収する方法であって、
前記第一の溶液を前記カラムの該記注入口から注入し、
前記カラムの前記機能物質群が配置された該領域に接触させ、該排出口より排出する工程と、
操作により前記機能物質群から金属を回収する工程からなり、
前記操作が、前記機能物質に内包されていた前記金属を露出させることにより、前記金属を得ることを特徴とする金属を回収する方法。 - 前記操作が、窒素雰囲気中、または、大気中で、機能物質の焼失温度以上で、前期機能物質群を加熱焼失させることにより、前記金属の回収を実現することである、請求項15に記載の金属を回収する方法。
- 前記操作が、前記機能物質群のみを選択的に分解する作用を持つ化合物を入れることであり、かつ、前記分解作用化合物が、タンパク質分解酵素、尿素、界面活性剤のいずれか一つ以上である、請求項15に記載の金属を回収する方法。
- 前記タンパク質分解酵素が、プロテアーゼ、ディスパーゼ、トリプシン、ナガラーゼ、のいずれか一つ以上である、請求項17に記載の金属を回収する方法。
- 請求項5に記載のカラムを用いて、
少なくとも1種類以上の金属イオンが混在している第一の溶液中から金属を選択的、もしくは非選択的に回収する方法であって、
前記第一の溶液を前記カラムの該記注入口から注入し、
前記カラムの前記機能物質群が配置された該領域に接触させ、該排出口より排出する工程と、
第二の溶液を前記カラムの該記注入口から注入し、
前記カラムの前記機能物質群が配置された該領域に接触させ、該排出口より排出する工程と、
請求項15から18に記載の操作により前記機能物質群から金属を回収する工程からなり、
前記第二の溶液が、前記機能物質群を前記カラムに固定している結合を切断する機能を有することを特徴とする金属を回収する方法。 - 前記カラムに固定されている前記結合仲介物質が抗原であり、第二の溶液が前記機能物質より前記抗原とのアフィニティーが高い抗体を含有する溶液である、請求項19に記載の金属を回収する方法。
- 前記カラムに固定されている前記結合仲介物質が核酸であり、前記操作が60℃以上の加熱(デイネイチャー)である、請求項19に記載の金属を回収する方法。
- 前記カラムに固定されている前記結合仲介物質が核酸であり、第二の溶液が核酸を溶かす溶液である、請求項19に記載の金属を回収する方法。
- 前記カラムに固定されている前記結合仲介物質が核酸であり、第二の溶液が制限酵素を含有する溶液である、請求項19に記載の金属を回収する方法。
- 前記機能物質が、直径3−30nmの粒子であることを特徴とする、請求項15から23のいずれかに記載の方法。
- 前記機能物質を構成する、前記有機物の主要な部分がタンパク質である、請求項15から24のいずれかに記載の方法。
- 前記タンパク質分子がフエリチンフアミリ−であることを特徴とする、請求項25に記載の方法。
- 前記フエリチンフアミリ−がフエリチンまたは、アポフエリチン、および、これらのアミノ酸配列を改変した改変物であることを特徴とする、請求項26に記載の方法。
- 前記タンパク質分子がアデノウィルス、ロタウィルス、ポリオウィルス、HK97、CCMV、および、これらの改変物等の群から選ばれるウイルスであることを特徴とする、請求項25に記載の方法。
- 前記タンパク質分子がDpsAタンパク質またはMrgAタンパク質、および、これらのアミノ酸配列を改変した改変物であることを特徴とする、請求項25に記載の方法。
- 前記金属が鉄、鉄酸化物、その他の鉄化合物、ニツケル、ニツケル酸化物、その他のニツケル化合物、コバルト、コバルト酸化物、その他のコバルト化合物、銅、銅酸化物、その他の銅化合物、金、その他の金化合物、白金、その他の白金化合物の少なくとも、いずれか1種であることを特徴とする、請求項24から29のいずれかに記載の方法。
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JP2011025115A (ja) * | 2009-07-22 | 2011-02-10 | Okayama Univ | フィルター及び空気清浄機 |
JP2012172232A (ja) * | 2011-02-23 | 2012-09-10 | Aisin Seiki Co Ltd | 希土類金属回収材および希土類金属回収方法 |
CN113234253A (zh) * | 2021-05-06 | 2021-08-10 | 合肥中聚合臣电子材料有限公司 | 一种修复聚酰亚胺酸取向剂废液的方法和工艺 |
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- 2003-01-14 JP JP2003005691A patent/JP2004217985A/ja active Pending
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