JP2004217708A - 薬剤耐性を付与した水膨潤性ポリウレタンフォーム及びそれを用いたバイオリアクター用担体 - Google Patents
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Abstract
【課題】水溶性薬品、特に、次亜塩素酸溶液やアルカリ溶液に対して耐性が付与された、水膨潤性ポリウレタンフォームを提供すること。
【解決手段】(a)イソシアネート化合物と、(b)ポリオール化合物と水を反応させることで得られるポリウレタンフォームにおいて、ポリイソシアネート化合物とポリオール化合物をあらかじめ反応させ高分子量化させた1分子中に少なくとも2個の末端イソシアネート基を有する水溶性ポリウレタンプレポリマーに対して、更に後添加するイソシアネート化合物の一部として、ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)以外のポリメリック成分を含んだクルードMDIを用いることを特徴とする薬剤耐性を付与した水膨潤性ポリウレタンフォームとする。
【選択図】 なし
【解決手段】(a)イソシアネート化合物と、(b)ポリオール化合物と水を反応させることで得られるポリウレタンフォームにおいて、ポリイソシアネート化合物とポリオール化合物をあらかじめ反応させ高分子量化させた1分子中に少なくとも2個の末端イソシアネート基を有する水溶性ポリウレタンプレポリマーに対して、更に後添加するイソシアネート化合物の一部として、ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)以外のポリメリック成分を含んだクルードMDIを用いることを特徴とする薬剤耐性を付与した水膨潤性ポリウレタンフォームとする。
【選択図】 なし
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明はポリウレタンフォームに関し、さらに詳しくは、薬剤耐性を付与した水膨潤性ポリウレタンフォーム及びそれを用いたバイオリアクター用担体に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来の水膨潤性ポリウレタンとしては、例えば、スルホン酸基やカルボキシル基あるいはポリオキシエチレン基等の親水基を含み、止水材、コーティング材、シーラント等として使用されている。
しかしながら、水膨潤性ウレタンフォームは、水膨潤性、親水性であるがために、水溶性薬品に対する耐性に乏しかった。ウレタンを構成するウレタン結合を含む高分子量体は、次亜塩素酸水溶液やアルカリ水溶液に容易に分解されてしまう問題点がある。したがって、水との接触面積の大きい水膨潤性ウレタンフォームに水溶性薬剤、例えば、次亜塩素酸水溶液、アルカリ水溶液等に対し耐性を付与することは困難であった。親水性ウレタンフォームに関する検討は多くなされているが(例えば、特許文献1及び2参照)、耐薬品性に関する検討はなされていない。
ウレタンの耐薬品性を向上させる方法として、塗膜や被覆剤によって疎水性を付与することが提案されている(例えば、特許文献3及び4参照)。しかし、耐薬品性が付与された疎水性ウレタン樹脂をフォーム状にしたとしても、その製品は水膨潤性を示すことはなく、目的とするものは得られない。同様にオレフィン系発泡体は耐薬品性は強いものの、水膨潤性ウレタンフォームをバイオリアクター用担体として用いた場合、初期沈降性、耐摩耗性、生物親和性等に問題がある。
すなわち、ポリウレタンフォームにおいて、水膨潤性と水溶性薬品に対する耐性を同時に満足することは困難であつた。
【0003】
【特許文献1】
特開平7−82401号公報(第1頁)
【特許文献2】
特開2000−248036号公報(第1頁)
【特許文献3】
特開平9−227800号公報(第1頁)
【特許文献4】
特開2001−278943号公報(第1頁)
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、このような状況で、水溶性薬品、特に、次亜塩素酸溶液やアルカリ溶液に対して耐性が付与された、水膨潤性ポリウレタンフォームを提供することを目的とするものである。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記課題を解決するために、鋭意検討の結果、イソシアネート化合物と、ポリオール化合物と水を反応させることで得られるポリウレタンフォームにおいて、1分子中に少なくとも2個の末端イソシアネート基を有する水溶性のポリウレタンプレポリマーに対して、特定のイソシアネート化合物を単独又は他のイソシアネート化合物と併用し更に添加することで、前記目的に適合し得ることを見出した。
本発明は、かかる知見に基づいて完成したものである。
【0006】
すなわち、本発明は、以下の薬剤耐性を付与した水膨潤性ポリウレタンフォーム及びそれを用いたバイオリアクター用担体を提供するものである。
[1] (a)イソシアネート化合物と、(b)ポリオール化合物と水を反応させることで得られるポリウレタンフォームにおいて、イソシアネート化合物とポリオール化合物をあらかじめ反応させ高分子量化させた1分子中に少なくとも2個の末端イソシアネート基を有する水溶性ポリウレタンプレポリマーに対して、更に後添加するイソシアネート化合物の一部として、ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)以外のポリメリック成分を含んだクルードMDIを用いることを特徴とする薬剤耐性を付与した水膨潤性ポリウレタンフォーム。
[2] 前記後添加するクルードMDI中のポリメリック成分の量が、後添加するクルードMDI全量に対して30質量%以上である[1]記載の薬剤耐性を付与した水膨潤性ポリウレタンフォーム。
[3] 前記後添加イソシアネート化合物全量に対して、前記クルードMDIの量が、40質量%以上である[1]又は[2]記載の薬剤耐性を付与した水膨潤性ポリウレタンフォーム。
[4] 前記ポリオール化合物が、1分子中に少なくとも2個の末端水酸基を有する酸化プロピレン/酸化エチレン共重合体であって、酸化プロピレン/酸化エチレンの量比が10〜60/40〜90でありかつ、分子量が、2000〜5000である[1]〜[3]いずれかに記載の薬剤耐性を付与した水膨潤性ポリウレタンフォーム。
[5] 前記ウレタンフォームが無機フィラーとして硫酸バリウムを含む[1]〜[4]いずれかに記載の薬剤耐性を付与した水膨潤性ポリウレタンフォーム。
[6] [1]〜[5]いずれかに記載の薬剤耐性を付与した水膨潤性ポリウレタンフォームを用いたバイオリアクター用担体。
【0007】
【発明の実施形態】
先ず、本発明の薬剤耐性を付与した水膨潤性ポリウレタンフォームは、(a)イソシアネート化合物と、(b)ポリオール化合物と水を反応させることで得られるポリウレタンフォームにおいて、ポリオール化合物をあらかじめ反応させ、高分子量化させた1分子中に少なくとも2個の末端イソシアネート基を有する水溶性ポリウレタンプレポリマーに対して、更に後添加するイソシアネート化合物の一部として、ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)以外のポリメリック成分を含んだクルードMDIを用いることを特徴とする。
【0008】
(a)イソシアネート化合物
本発明で用いられるイソシアネート化合物(a)は1分子中に少なくとも2つのイソシアネート基をもつポリイソシアネートであり、水溶性ポリウレタンに薬剤耐性を与えるための必須成分である。(a)成分としては、ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)以外のポリメリック成分を含んだクルードMDIを、好ましくは、後添加されるイソシアネート化合物全量に対して40質量%以上用いることによって薬剤耐性を付与した水膨潤性ポリウレタンフォームを得ることができる。
クルードMDIとは未精製のMDIであり、ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)とポリメリックMDIの混合物である。ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)の構造式を、式(I)で示す。
【0009】
【化1】
【0010】
次に、代表的な、クルードMDIのポリメリック成分を、式(II)、(III)、(IV)及び(V)で示す。
【0011】
【化2】
【0012】
(式中、nは1〜4の整数を示す。)
【0013】
【化3】
【0014】
【化4】
【0015】
【化5】
【0016】
[式(III)、(IV)及び(V)中、Rは、
【0017】
【化6】
【0018】
の構造を有する基である。]
式(III)はMDIの2量体のウレチジンジオン、式(IV)はMDIの3量体のイソシアヌレート、式(V)はウレントンイミンである。
本発明で用いられる、好ましいクルードMDIのそれぞれの成分比は、MDI約40質量%、式(III)で示されるポリメリックMDIのうち、n=1成分約20質量%、n=2成分約10%及び約30質量%がn=5以上の成分、MDIの2量体、3量体、ウレントンイミン等である。
前記クルードMDI中のポリメリック成分の量は後添加するクルードMDI全量に対して30質量%以上好ましくは50質量%以上であることが好ましい。
【0019】
また、本発明に用いられる(a)成分として、必須成分である前記クルードMDIと他のイソシアネート化合物と併用することができる。
併用できるイソシアネートとして、トリレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、ナフチレンジイソシアネート、ビフェニレンジイソシアネート、ジフェニルエーテルジイソシアネート、トリジンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネートが挙げられる。中でもトリレンジイソシアネートが好ましい。これら併用できるイソシアネート化合物は、単独又は2種以上を併用しても差し支えない。
上記イソシアネート化合物と併用した場合、クルードMDIの量は、後添加されるイソシアネート化合物全量に対して40質量%以上であることが好ましい。
たとえば、クルードMDIとトリレンジイソシアネート(TDI)を併用することで、クルードMDI単独の場合に比べ、ウレタンフォームの耐摩耗性を損ねること無しに、容易に発泡倍率をコントロールすることが出来る。
【0020】
イソシアネート化合物として、ピュアMDIを使用する場合は、ピュアMDIの融点の関係から反応系を36℃以上にする必要がある。このような高温での発泡は発泡体の発泡倍率を上昇させ、発泡体の強度低下を招く。一方、本発明に用いられるクルードMDIは、室温での発泡が可能となり、発泡体の発泡倍率のコントロールが容易であり、発泡体の強度低下が抑えられる。
また、後述するバイオリアクター用担体中に、動植物細胞や微生物を分散、包括固定する発泡工程においても、クルードMDIを使用した場合は、発泡温度を室温程度に制御できるので、生物に与える影響が少ない。
さらに、ピュアMDIの使用については溶解することが必須であり、溶解したピュアMDIは毒性のある蒸気を発生させる。一方、クルードMDIは室温で液体であり、殆ど蒸気を発生させることが無く、ピュアMDIに比べて、製造上安全性が高い。
【0021】
(b)ポリオール化合物
本発明で用いられる(b)成分のポリオール化合物としては、1分子中に少なくとも2個の末端水酸基を有し、かつ水溶性を示すことが必要である。
水溶性を示すポリオール化合物としては、ポリエーテルポリオールが好ましい。ポリエーテル構造をもつ代表的なポリオールとして、ポリエチレンポリオール、ポリプロピレンポリオール、ポリテトラメチレンエーテルグリコール等が挙げられ、それぞれ、環状のエーテルの酸化エチレン、酸化プロピレン、テトラヒドロフランを開環重合して得られる。特に酸化エチレン・酸化プロピレン共重合体が好ましく、酸化プロピレン/酸化エチレンの量比が10〜60/40〜90でありかつ、分子量が、2000〜5000の範囲であることが更に好ましい。
【0022】
本発明において、上記ポリウレタンフォームの合成法は、(a)イソシアネート化合物と(b)ポリオール化合物を予め反応させ高分子量化させた1分子中に少なくとも2個の末端イソシアネート基を有するポリウレタンプレポリマーを合成し、更にイソシアネート化合物を後添加した後に水を加えて発泡させるプレポリマー法を用いることが必要である。
すなわち、プレポリマー法を適用することで、プレポリマー合成時に用いられるイソシアネート化合物と発泡工程時に更に後添加されるイソシアネート化合物を同じ化合物にすることや、それそれを別の化合物にすることが可能となり種々のイソシアネートを組み合わせることで薬品耐性等の性能のコントロールが容易である。また、プレポリマー法を用いることで、ワンショット法に比べ均一な構造のポリマーを作ることができるため、性能のバラツキの少ない製品を得ることができる。
【0023】
例えば、本発明におけるウレタンフォームの合成法として、1分子中に少なくとも2個の末端水酸基を有する水溶性の酸化エチレン/酸化プロピレン共重合体をイソシアネート化合物と反応させ、1分子中に少なくとも2個の末端イソシアネート基を有する水溶性の酸化エチレン/酸化プロピレン共重合体ポリウレタンプレポリマーを合成する。
次いでポリウレタンプレポリマーに更に、前記クルードMDIを含むイソシアネート化合物を加えた後、水と反応させることにより、ポリウレタンフォームが製造できる。
前記ポリウレタンプレポリマーに対して、イソシアネート化合物を後添加すること無しに、水と反応させた場合は剛直な発泡体を得る事が困難である。そこで、ウレタンフォームにある程度の剛直性を持たせるためにクルードMDIを含むイソシアネート化合物を後添加することが必要である。これはプレポリマーが高分子量体であること等に起因するものと思われる。
【0024】
さらに詳しくポリウレタンフォームの製造方法を例示すれば、先ず、少なくとも2価の多価アルコールの酸化エチレン/酸化プロピレン共重合ポリエーテル系ポリオールなどから選ばれるポリエーテル系ポリオールで、水酸基当量が少なくとも500で、且つ水溶性のポリエーテルポリオールと、該ポリエーテルポリオールのヒドロキシル基1個あたり約1〜4モル量(2〜8当量)のジイソシアネート化合物とを反応させて得られるウレタンプレポリマーを製造する。
上記水溶性のポリウレタンプレポリマーに更ジイソシアネート化合物を、プレポリマー100質量部に対して5〜30質量部加え、水を反応させてポリウレタンフォームを製造できる。
水の量を上記反応混合物中のイソシアネート基1当量に対して水酸基が過剰で300当量未満の量にすると本発明に好適なウレタンフォームが得られる。
【0025】
本発明の薬剤耐性を付与した水膨潤性ポリウレタンフォーム(今後薬剤耐性ウレタンフォームということがある)は、平均孔径10μm〜5mm好ましくは100μm〜3mmの連通気孔性の多孔構造を有するものである。
【0026】
また、本発明の薬剤耐性ウレタンフォームは、10〜300cm3/cm2・S、更に好ましくは50〜200cm3/cm2・Sの通気度をもつことが好ましい。通気度は、10mm厚のポリウレタンゲル多孔体を用いてJIS L1096一般織物試験方法の通気度試験に準じた方法で測定する。
【0027】
本発明の薬剤耐性ウレタンフォームには、必要に応じて充填材として平均粒径が0.1〜1.35μmの硫酸バリウムを加えることができる。硫酸バリウムの好ましい添加量は、プレポリマー100質量部に対して5〜30質量部の範囲である。硫酸バリウムを加えることで、水溶性ポリウレタンフォームの薬品耐性を改良することができる。
また、後述するバイオリアクター用担体として用いた場合、本発明の薬剤耐性ウレタンフォームの水膨潤後の比重は極めて重要であり、例えば反応槽内で、微生物の付着、結合固定化が定常状態に達した際の比重が水に近いと、反応のために槽内の被処理液を流動させた場合、該担体は上方に移動しやすく、下方に存在させることが困難で、微生物の反応の効率が悪くなるが、硫酸バリウムは比重が4.3と大きく、充填剤として用いることで、定常状態に達した時のウレタンフォームの比重を1以上にすることが可能であり本発明の薬剤耐性ウレタンフォームを後述するバイオリアクターとして用いた場合、反応槽内での流動が均一になり微生物の反応効率を高めることができる。比重の好ましい範囲は、1.02〜1.85である。
【0028】
更にまた、本発明の薬剤耐性ウレタンフォームは、付与された薬剤耐性を活かして、一次的に高濃度の薬品含有排水や特殊な工場廃水、さらに、ゴミ埋め立て処分場等から出る浸出液の効果的な処理をおこなうためのバイオリアクター用担体として使用することができる。
本発明のバイオリアクター用担体に使用される薬剤耐性ウレタンフォームは、前述のように連通気孔性の多孔質フォームであり、極めて親水性が高く、多量の水分を素材中に蓄える性質を有し、動植物細胞や微生物に対する親和性に優れている。
【0029】
また、連通気孔性の多孔構造を有するため、動植物細胞や微生物は担体の気孔内にも入りやすく、培養液や被処理水中に存在する動植物細胞、微生物は担体の外部表面ないし、気孔表面に効率的に付着、結合固定される。
更に、担体表面から内部にかけて連通した気孔が存在することにより担体表面積が大きいことによっても、培養液や被処理水中の動植物細胞、微生物が担体に多量に付着、結合固定され、しかも気孔部に固定された動植物細胞、微生物は流動するときも剥がれにくい。
【0030】
以上の性能を高い水準で得るために、本発明の水膨潤性ポリウレタンフォームの通気度は前述のように10cm3/cm2・S〜300cm3/cm2・Sの範囲に設定されている。通気度が10cm3/cm2・S以下の場合、処理槽内における該水溶性ポリウレタンフォームからなるバイオリアクター担体の反応槽中での流動性が悪くなるために処理能力の低下、担体を流動させるためにかかるエネルギーコストの増大等の問題がおこり好ましくない。300cm3/cm2・S以上であると担体の表面積が小さくなり、動植物細胞や微生物を高密度に固定化できない。
また、耐剪断性が高いので、生体触媒として扱う動植物細胞や微生物が担体の外部表面及び気孔内表面に多量高密度に固定化させた状態においてプロペラなどによる効率的な撹拌が可能となる。
【0031】
本発明のバイオリアクター担体の大きさや形状については、特に限定はないが、外表面績をなるべく大きく採るには、例えばサイコロ状、円柱状、が好ましい。また、粒度の揃ったチップ状で用いることもできる。具体的には、1辺が2〜8mmのサイコロ状や、直径5mm、長さ5mmの円柱状などの担体が好適である。
【0032】
本発明のバイオリアクター担体を用いた排水処理は、例えば、有機汚濁物質を含む排水、活性汚泥及び該担体を加えた曝気槽(生物反応層)に空気あるいは酸素を吹き込み、好気性微生物の働きにより有機汚濁物質を酸化分解し、曝気槽の混合液を静置、汚泥を沈殿させた上澄み液が処理水となり、沈殿物を除去して放流される。
また、曝気槽に投入されるバイオリアクター用担体は、必要に応じて有機汚濁物質を分解、除去する微生物などを包括固定した担体が投入される。該担体が使用された場合は、包括固定された微生物と、後に混合液内で結合固定された微生物の両方が有機汚濁物質を分解、除去するため、特に水処理装置の立ち上がり時の能力を高めることができる。 更に、本発明のバイオリアクター担体は薬剤耐性を付与されているため、例えば、次亜塩素酸やアルカリの存在下においても、バイオリアクターとしての機能を充分に発揮することができる。
【0033】
【実施例】
次に、本発明を実施例によりさらに詳しく説明するが、本発明は、これらの例によってなんら限定されるものではない。
なお、水膨潤性ウレタンフォームの性能は、以下に示す方法に従って評価した。
【0034】
(1).次亜塩素酸耐性試験方法
60℃に保温した1%次亜塩素酸溶液50mlに1cm角の担体4個を投入し125rpmで10分間振動させた後担体の乾燥重量を測定し、試験後の重量変動をみる(数値は4個の平均値)。
残存率(%)=試験後乾燥重量(g)/試験前乾燥重量×100
(2).アルカリ溶液耐性試験方法
1%の水酸化ナトリウム溶液100mlを沸騰させ、その中に1cm角の担体4個を投入する。一定時間毎にサンプルをピンセットで持ちあげ、サンプルを持ち上げられなくなった時間を測定する(数値は4個の平均値)。
(3).耐摩耗性試験方法
内面に耐水サンドペーパー(100番)を貼った容器に水道水200ml入れ、同時に1cm角の担体20個を投入する(充填率10%)。400rpmで24時間機械攪拌を行った後、担体の乾燥重量を測定し、試験後の重量変化を計算する(数値は20個の平均値)。
残存率(%)=試験後乾燥重量(g)/試験前乾燥重量×100
【0035】
実施例1〜7及び比較例1〜2
まず、▲1▼ポリイソシアネートを含む水溶性のポリウレタンプレポリマー、▲2▼後添加のポリイソシアネート化合物及び▲3▼硫酸バリウムを所定量混合したT液を作り、それとは別に、▲4▼水及び▲5▼整泡剤を所定量混合したR液を作る。次に、これらプレミックスされたT液、R液の2液をミキシングヘッド等の混合機により充分混合させて発泡させる。
実施例1〜7及び比較例1〜2のそれぞれの上記原料の配合量を第1表に示す。
【0036】
【表1】
【0037】
*1.TDI変性プレポリマー:三洋化成工業(株)社製、商品名「TW−355C」、NCO 4.5%、酸化プロピレン/酸化エチレン=40/60、分子量
2700
*2.TDI:日本ポリウレタン(株)社製、商品名「コロネートT−80」
*3.CMDI−1:日本ポリウレタン工業(株)社製、商品名「ミリオネートMR−200」
*4.CMDI−2:日本ポリウレタン工業(株)社製、商品名「ミリオネートMR−400」
*5.CMDI−3:三井武田ケミカル(株)社製、商品名「コスモネートM−50」
*6.MDI:ダウ・ポリウレタン日本(株)社製、商品名ISONATE 125M
*7.硫酸バリュウム:平均粒径9.0μm、比重4.3
*8.整泡剤:三洋化成工業(株)社製、商品名「PE―75」
【0038】
それぞれ得られたウレタンフォームは評価試験用のサンプルとして成形され、次亜塩素酸耐性試験、アルカリ溶液耐性試験及び耐摩耗性試験を行った。それぞれの評価結果を第1表に示す。
【0039】
後添加のイソシアネート化合物としてクルードMDIをトリレンジイソシアネート(TDI)と併用することで、TDIを単独で後添加した場合に比べ、特に次亜塩素酸耐性は、大幅に改良されている。また、TDI対してクルードMDIの添加比率を増すことによって、次亜塩素酸耐性は更に改良されている。
また、アルカリ溶液に対する耐性についても次亜塩素酸耐性同様、TDI対してクルードMDIの添加比率を増すことによって改良されている。
一方、MDIを単独で後添加した場合(比較例2)は、次亜塩素酸耐性およびアルカリ溶液に対する耐性共にTDIを単独後添加した場合と同様に低い値を示している。MDIを単独で使用した場合は、MDIが発泡中に硬化し正常発泡は困難である。
それに反して、クルードMDIを単独で後添加した場合(実施例7)は、次亜塩素酸耐性およびアルカリ溶液に対する耐性共にTDIを単独で後添加した場合に比べて大幅に改良されている。
更に、無機フィラーとして硫酸バリウムを加えることで、水膨潤後のウレタンフォームの比重を高くすることはもとより、次亜塩素酸耐性及びアルカリ溶液に対する耐性についても改良されている。
【0040】
参考例1
参考例として、ポリエチレン担体[サンワ化成工業(株)社製]を用いて水膨潤性のウレタンフォーム同様の評価をおこなった。結果を第1表に示す。
次亜塩素酸及びアルカリ溶液に対する薬品耐性については、本発明の薬剤耐性ウレタンフォームより優れるが、耐摩耗性試験における摩耗残存率がかなり落ちる。バイオリアクター用担体として使用しても、ウレタンフォームの摩耗残存率が90%以上と高く、充分実用に耐えられる。
【0041】
【発明の効果】
水溶性ポリウレタンプレポリマーに対して、イソシアネート化合物の一部として、ポリメリック成分を多く含む、クルードMDIを後添加し、水を加えて発泡させることにより、水溶性薬品に対する耐性、特に次亜塩素酸溶液及びアルカリ溶液に耐性のある水膨潤性ポリウレタンフォームを提供することができる。
【発明の属する技術分野】
本発明はポリウレタンフォームに関し、さらに詳しくは、薬剤耐性を付与した水膨潤性ポリウレタンフォーム及びそれを用いたバイオリアクター用担体に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来の水膨潤性ポリウレタンとしては、例えば、スルホン酸基やカルボキシル基あるいはポリオキシエチレン基等の親水基を含み、止水材、コーティング材、シーラント等として使用されている。
しかしながら、水膨潤性ウレタンフォームは、水膨潤性、親水性であるがために、水溶性薬品に対する耐性に乏しかった。ウレタンを構成するウレタン結合を含む高分子量体は、次亜塩素酸水溶液やアルカリ水溶液に容易に分解されてしまう問題点がある。したがって、水との接触面積の大きい水膨潤性ウレタンフォームに水溶性薬剤、例えば、次亜塩素酸水溶液、アルカリ水溶液等に対し耐性を付与することは困難であった。親水性ウレタンフォームに関する検討は多くなされているが(例えば、特許文献1及び2参照)、耐薬品性に関する検討はなされていない。
ウレタンの耐薬品性を向上させる方法として、塗膜や被覆剤によって疎水性を付与することが提案されている(例えば、特許文献3及び4参照)。しかし、耐薬品性が付与された疎水性ウレタン樹脂をフォーム状にしたとしても、その製品は水膨潤性を示すことはなく、目的とするものは得られない。同様にオレフィン系発泡体は耐薬品性は強いものの、水膨潤性ウレタンフォームをバイオリアクター用担体として用いた場合、初期沈降性、耐摩耗性、生物親和性等に問題がある。
すなわち、ポリウレタンフォームにおいて、水膨潤性と水溶性薬品に対する耐性を同時に満足することは困難であつた。
【0003】
【特許文献1】
特開平7−82401号公報(第1頁)
【特許文献2】
特開2000−248036号公報(第1頁)
【特許文献3】
特開平9−227800号公報(第1頁)
【特許文献4】
特開2001−278943号公報(第1頁)
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、このような状況で、水溶性薬品、特に、次亜塩素酸溶液やアルカリ溶液に対して耐性が付与された、水膨潤性ポリウレタンフォームを提供することを目的とするものである。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記課題を解決するために、鋭意検討の結果、イソシアネート化合物と、ポリオール化合物と水を反応させることで得られるポリウレタンフォームにおいて、1分子中に少なくとも2個の末端イソシアネート基を有する水溶性のポリウレタンプレポリマーに対して、特定のイソシアネート化合物を単独又は他のイソシアネート化合物と併用し更に添加することで、前記目的に適合し得ることを見出した。
本発明は、かかる知見に基づいて完成したものである。
【0006】
すなわち、本発明は、以下の薬剤耐性を付与した水膨潤性ポリウレタンフォーム及びそれを用いたバイオリアクター用担体を提供するものである。
[1] (a)イソシアネート化合物と、(b)ポリオール化合物と水を反応させることで得られるポリウレタンフォームにおいて、イソシアネート化合物とポリオール化合物をあらかじめ反応させ高分子量化させた1分子中に少なくとも2個の末端イソシアネート基を有する水溶性ポリウレタンプレポリマーに対して、更に後添加するイソシアネート化合物の一部として、ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)以外のポリメリック成分を含んだクルードMDIを用いることを特徴とする薬剤耐性を付与した水膨潤性ポリウレタンフォーム。
[2] 前記後添加するクルードMDI中のポリメリック成分の量が、後添加するクルードMDI全量に対して30質量%以上である[1]記載の薬剤耐性を付与した水膨潤性ポリウレタンフォーム。
[3] 前記後添加イソシアネート化合物全量に対して、前記クルードMDIの量が、40質量%以上である[1]又は[2]記載の薬剤耐性を付与した水膨潤性ポリウレタンフォーム。
[4] 前記ポリオール化合物が、1分子中に少なくとも2個の末端水酸基を有する酸化プロピレン/酸化エチレン共重合体であって、酸化プロピレン/酸化エチレンの量比が10〜60/40〜90でありかつ、分子量が、2000〜5000である[1]〜[3]いずれかに記載の薬剤耐性を付与した水膨潤性ポリウレタンフォーム。
[5] 前記ウレタンフォームが無機フィラーとして硫酸バリウムを含む[1]〜[4]いずれかに記載の薬剤耐性を付与した水膨潤性ポリウレタンフォーム。
[6] [1]〜[5]いずれかに記載の薬剤耐性を付与した水膨潤性ポリウレタンフォームを用いたバイオリアクター用担体。
【0007】
【発明の実施形態】
先ず、本発明の薬剤耐性を付与した水膨潤性ポリウレタンフォームは、(a)イソシアネート化合物と、(b)ポリオール化合物と水を反応させることで得られるポリウレタンフォームにおいて、ポリオール化合物をあらかじめ反応させ、高分子量化させた1分子中に少なくとも2個の末端イソシアネート基を有する水溶性ポリウレタンプレポリマーに対して、更に後添加するイソシアネート化合物の一部として、ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)以外のポリメリック成分を含んだクルードMDIを用いることを特徴とする。
【0008】
(a)イソシアネート化合物
本発明で用いられるイソシアネート化合物(a)は1分子中に少なくとも2つのイソシアネート基をもつポリイソシアネートであり、水溶性ポリウレタンに薬剤耐性を与えるための必須成分である。(a)成分としては、ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)以外のポリメリック成分を含んだクルードMDIを、好ましくは、後添加されるイソシアネート化合物全量に対して40質量%以上用いることによって薬剤耐性を付与した水膨潤性ポリウレタンフォームを得ることができる。
クルードMDIとは未精製のMDIであり、ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)とポリメリックMDIの混合物である。ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)の構造式を、式(I)で示す。
【0009】
【化1】
【0010】
次に、代表的な、クルードMDIのポリメリック成分を、式(II)、(III)、(IV)及び(V)で示す。
【0011】
【化2】
【0012】
(式中、nは1〜4の整数を示す。)
【0013】
【化3】
【0014】
【化4】
【0015】
【化5】
【0016】
[式(III)、(IV)及び(V)中、Rは、
【0017】
【化6】
【0018】
の構造を有する基である。]
式(III)はMDIの2量体のウレチジンジオン、式(IV)はMDIの3量体のイソシアヌレート、式(V)はウレントンイミンである。
本発明で用いられる、好ましいクルードMDIのそれぞれの成分比は、MDI約40質量%、式(III)で示されるポリメリックMDIのうち、n=1成分約20質量%、n=2成分約10%及び約30質量%がn=5以上の成分、MDIの2量体、3量体、ウレントンイミン等である。
前記クルードMDI中のポリメリック成分の量は後添加するクルードMDI全量に対して30質量%以上好ましくは50質量%以上であることが好ましい。
【0019】
また、本発明に用いられる(a)成分として、必須成分である前記クルードMDIと他のイソシアネート化合物と併用することができる。
併用できるイソシアネートとして、トリレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、ナフチレンジイソシアネート、ビフェニレンジイソシアネート、ジフェニルエーテルジイソシアネート、トリジンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネートが挙げられる。中でもトリレンジイソシアネートが好ましい。これら併用できるイソシアネート化合物は、単独又は2種以上を併用しても差し支えない。
上記イソシアネート化合物と併用した場合、クルードMDIの量は、後添加されるイソシアネート化合物全量に対して40質量%以上であることが好ましい。
たとえば、クルードMDIとトリレンジイソシアネート(TDI)を併用することで、クルードMDI単独の場合に比べ、ウレタンフォームの耐摩耗性を損ねること無しに、容易に発泡倍率をコントロールすることが出来る。
【0020】
イソシアネート化合物として、ピュアMDIを使用する場合は、ピュアMDIの融点の関係から反応系を36℃以上にする必要がある。このような高温での発泡は発泡体の発泡倍率を上昇させ、発泡体の強度低下を招く。一方、本発明に用いられるクルードMDIは、室温での発泡が可能となり、発泡体の発泡倍率のコントロールが容易であり、発泡体の強度低下が抑えられる。
また、後述するバイオリアクター用担体中に、動植物細胞や微生物を分散、包括固定する発泡工程においても、クルードMDIを使用した場合は、発泡温度を室温程度に制御できるので、生物に与える影響が少ない。
さらに、ピュアMDIの使用については溶解することが必須であり、溶解したピュアMDIは毒性のある蒸気を発生させる。一方、クルードMDIは室温で液体であり、殆ど蒸気を発生させることが無く、ピュアMDIに比べて、製造上安全性が高い。
【0021】
(b)ポリオール化合物
本発明で用いられる(b)成分のポリオール化合物としては、1分子中に少なくとも2個の末端水酸基を有し、かつ水溶性を示すことが必要である。
水溶性を示すポリオール化合物としては、ポリエーテルポリオールが好ましい。ポリエーテル構造をもつ代表的なポリオールとして、ポリエチレンポリオール、ポリプロピレンポリオール、ポリテトラメチレンエーテルグリコール等が挙げられ、それぞれ、環状のエーテルの酸化エチレン、酸化プロピレン、テトラヒドロフランを開環重合して得られる。特に酸化エチレン・酸化プロピレン共重合体が好ましく、酸化プロピレン/酸化エチレンの量比が10〜60/40〜90でありかつ、分子量が、2000〜5000の範囲であることが更に好ましい。
【0022】
本発明において、上記ポリウレタンフォームの合成法は、(a)イソシアネート化合物と(b)ポリオール化合物を予め反応させ高分子量化させた1分子中に少なくとも2個の末端イソシアネート基を有するポリウレタンプレポリマーを合成し、更にイソシアネート化合物を後添加した後に水を加えて発泡させるプレポリマー法を用いることが必要である。
すなわち、プレポリマー法を適用することで、プレポリマー合成時に用いられるイソシアネート化合物と発泡工程時に更に後添加されるイソシアネート化合物を同じ化合物にすることや、それそれを別の化合物にすることが可能となり種々のイソシアネートを組み合わせることで薬品耐性等の性能のコントロールが容易である。また、プレポリマー法を用いることで、ワンショット法に比べ均一な構造のポリマーを作ることができるため、性能のバラツキの少ない製品を得ることができる。
【0023】
例えば、本発明におけるウレタンフォームの合成法として、1分子中に少なくとも2個の末端水酸基を有する水溶性の酸化エチレン/酸化プロピレン共重合体をイソシアネート化合物と反応させ、1分子中に少なくとも2個の末端イソシアネート基を有する水溶性の酸化エチレン/酸化プロピレン共重合体ポリウレタンプレポリマーを合成する。
次いでポリウレタンプレポリマーに更に、前記クルードMDIを含むイソシアネート化合物を加えた後、水と反応させることにより、ポリウレタンフォームが製造できる。
前記ポリウレタンプレポリマーに対して、イソシアネート化合物を後添加すること無しに、水と反応させた場合は剛直な発泡体を得る事が困難である。そこで、ウレタンフォームにある程度の剛直性を持たせるためにクルードMDIを含むイソシアネート化合物を後添加することが必要である。これはプレポリマーが高分子量体であること等に起因するものと思われる。
【0024】
さらに詳しくポリウレタンフォームの製造方法を例示すれば、先ず、少なくとも2価の多価アルコールの酸化エチレン/酸化プロピレン共重合ポリエーテル系ポリオールなどから選ばれるポリエーテル系ポリオールで、水酸基当量が少なくとも500で、且つ水溶性のポリエーテルポリオールと、該ポリエーテルポリオールのヒドロキシル基1個あたり約1〜4モル量(2〜8当量)のジイソシアネート化合物とを反応させて得られるウレタンプレポリマーを製造する。
上記水溶性のポリウレタンプレポリマーに更ジイソシアネート化合物を、プレポリマー100質量部に対して5〜30質量部加え、水を反応させてポリウレタンフォームを製造できる。
水の量を上記反応混合物中のイソシアネート基1当量に対して水酸基が過剰で300当量未満の量にすると本発明に好適なウレタンフォームが得られる。
【0025】
本発明の薬剤耐性を付与した水膨潤性ポリウレタンフォーム(今後薬剤耐性ウレタンフォームということがある)は、平均孔径10μm〜5mm好ましくは100μm〜3mmの連通気孔性の多孔構造を有するものである。
【0026】
また、本発明の薬剤耐性ウレタンフォームは、10〜300cm3/cm2・S、更に好ましくは50〜200cm3/cm2・Sの通気度をもつことが好ましい。通気度は、10mm厚のポリウレタンゲル多孔体を用いてJIS L1096一般織物試験方法の通気度試験に準じた方法で測定する。
【0027】
本発明の薬剤耐性ウレタンフォームには、必要に応じて充填材として平均粒径が0.1〜1.35μmの硫酸バリウムを加えることができる。硫酸バリウムの好ましい添加量は、プレポリマー100質量部に対して5〜30質量部の範囲である。硫酸バリウムを加えることで、水溶性ポリウレタンフォームの薬品耐性を改良することができる。
また、後述するバイオリアクター用担体として用いた場合、本発明の薬剤耐性ウレタンフォームの水膨潤後の比重は極めて重要であり、例えば反応槽内で、微生物の付着、結合固定化が定常状態に達した際の比重が水に近いと、反応のために槽内の被処理液を流動させた場合、該担体は上方に移動しやすく、下方に存在させることが困難で、微生物の反応の効率が悪くなるが、硫酸バリウムは比重が4.3と大きく、充填剤として用いることで、定常状態に達した時のウレタンフォームの比重を1以上にすることが可能であり本発明の薬剤耐性ウレタンフォームを後述するバイオリアクターとして用いた場合、反応槽内での流動が均一になり微生物の反応効率を高めることができる。比重の好ましい範囲は、1.02〜1.85である。
【0028】
更にまた、本発明の薬剤耐性ウレタンフォームは、付与された薬剤耐性を活かして、一次的に高濃度の薬品含有排水や特殊な工場廃水、さらに、ゴミ埋め立て処分場等から出る浸出液の効果的な処理をおこなうためのバイオリアクター用担体として使用することができる。
本発明のバイオリアクター用担体に使用される薬剤耐性ウレタンフォームは、前述のように連通気孔性の多孔質フォームであり、極めて親水性が高く、多量の水分を素材中に蓄える性質を有し、動植物細胞や微生物に対する親和性に優れている。
【0029】
また、連通気孔性の多孔構造を有するため、動植物細胞や微生物は担体の気孔内にも入りやすく、培養液や被処理水中に存在する動植物細胞、微生物は担体の外部表面ないし、気孔表面に効率的に付着、結合固定される。
更に、担体表面から内部にかけて連通した気孔が存在することにより担体表面積が大きいことによっても、培養液や被処理水中の動植物細胞、微生物が担体に多量に付着、結合固定され、しかも気孔部に固定された動植物細胞、微生物は流動するときも剥がれにくい。
【0030】
以上の性能を高い水準で得るために、本発明の水膨潤性ポリウレタンフォームの通気度は前述のように10cm3/cm2・S〜300cm3/cm2・Sの範囲に設定されている。通気度が10cm3/cm2・S以下の場合、処理槽内における該水溶性ポリウレタンフォームからなるバイオリアクター担体の反応槽中での流動性が悪くなるために処理能力の低下、担体を流動させるためにかかるエネルギーコストの増大等の問題がおこり好ましくない。300cm3/cm2・S以上であると担体の表面積が小さくなり、動植物細胞や微生物を高密度に固定化できない。
また、耐剪断性が高いので、生体触媒として扱う動植物細胞や微生物が担体の外部表面及び気孔内表面に多量高密度に固定化させた状態においてプロペラなどによる効率的な撹拌が可能となる。
【0031】
本発明のバイオリアクター担体の大きさや形状については、特に限定はないが、外表面績をなるべく大きく採るには、例えばサイコロ状、円柱状、が好ましい。また、粒度の揃ったチップ状で用いることもできる。具体的には、1辺が2〜8mmのサイコロ状や、直径5mm、長さ5mmの円柱状などの担体が好適である。
【0032】
本発明のバイオリアクター担体を用いた排水処理は、例えば、有機汚濁物質を含む排水、活性汚泥及び該担体を加えた曝気槽(生物反応層)に空気あるいは酸素を吹き込み、好気性微生物の働きにより有機汚濁物質を酸化分解し、曝気槽の混合液を静置、汚泥を沈殿させた上澄み液が処理水となり、沈殿物を除去して放流される。
また、曝気槽に投入されるバイオリアクター用担体は、必要に応じて有機汚濁物質を分解、除去する微生物などを包括固定した担体が投入される。該担体が使用された場合は、包括固定された微生物と、後に混合液内で結合固定された微生物の両方が有機汚濁物質を分解、除去するため、特に水処理装置の立ち上がり時の能力を高めることができる。 更に、本発明のバイオリアクター担体は薬剤耐性を付与されているため、例えば、次亜塩素酸やアルカリの存在下においても、バイオリアクターとしての機能を充分に発揮することができる。
【0033】
【実施例】
次に、本発明を実施例によりさらに詳しく説明するが、本発明は、これらの例によってなんら限定されるものではない。
なお、水膨潤性ウレタンフォームの性能は、以下に示す方法に従って評価した。
【0034】
(1).次亜塩素酸耐性試験方法
60℃に保温した1%次亜塩素酸溶液50mlに1cm角の担体4個を投入し125rpmで10分間振動させた後担体の乾燥重量を測定し、試験後の重量変動をみる(数値は4個の平均値)。
残存率(%)=試験後乾燥重量(g)/試験前乾燥重量×100
(2).アルカリ溶液耐性試験方法
1%の水酸化ナトリウム溶液100mlを沸騰させ、その中に1cm角の担体4個を投入する。一定時間毎にサンプルをピンセットで持ちあげ、サンプルを持ち上げられなくなった時間を測定する(数値は4個の平均値)。
(3).耐摩耗性試験方法
内面に耐水サンドペーパー(100番)を貼った容器に水道水200ml入れ、同時に1cm角の担体20個を投入する(充填率10%)。400rpmで24時間機械攪拌を行った後、担体の乾燥重量を測定し、試験後の重量変化を計算する(数値は20個の平均値)。
残存率(%)=試験後乾燥重量(g)/試験前乾燥重量×100
【0035】
実施例1〜7及び比較例1〜2
まず、▲1▼ポリイソシアネートを含む水溶性のポリウレタンプレポリマー、▲2▼後添加のポリイソシアネート化合物及び▲3▼硫酸バリウムを所定量混合したT液を作り、それとは別に、▲4▼水及び▲5▼整泡剤を所定量混合したR液を作る。次に、これらプレミックスされたT液、R液の2液をミキシングヘッド等の混合機により充分混合させて発泡させる。
実施例1〜7及び比較例1〜2のそれぞれの上記原料の配合量を第1表に示す。
【0036】
【表1】
【0037】
*1.TDI変性プレポリマー:三洋化成工業(株)社製、商品名「TW−355C」、NCO 4.5%、酸化プロピレン/酸化エチレン=40/60、分子量
2700
*2.TDI:日本ポリウレタン(株)社製、商品名「コロネートT−80」
*3.CMDI−1:日本ポリウレタン工業(株)社製、商品名「ミリオネートMR−200」
*4.CMDI−2:日本ポリウレタン工業(株)社製、商品名「ミリオネートMR−400」
*5.CMDI−3:三井武田ケミカル(株)社製、商品名「コスモネートM−50」
*6.MDI:ダウ・ポリウレタン日本(株)社製、商品名ISONATE 125M
*7.硫酸バリュウム:平均粒径9.0μm、比重4.3
*8.整泡剤:三洋化成工業(株)社製、商品名「PE―75」
【0038】
それぞれ得られたウレタンフォームは評価試験用のサンプルとして成形され、次亜塩素酸耐性試験、アルカリ溶液耐性試験及び耐摩耗性試験を行った。それぞれの評価結果を第1表に示す。
【0039】
後添加のイソシアネート化合物としてクルードMDIをトリレンジイソシアネート(TDI)と併用することで、TDIを単独で後添加した場合に比べ、特に次亜塩素酸耐性は、大幅に改良されている。また、TDI対してクルードMDIの添加比率を増すことによって、次亜塩素酸耐性は更に改良されている。
また、アルカリ溶液に対する耐性についても次亜塩素酸耐性同様、TDI対してクルードMDIの添加比率を増すことによって改良されている。
一方、MDIを単独で後添加した場合(比較例2)は、次亜塩素酸耐性およびアルカリ溶液に対する耐性共にTDIを単独後添加した場合と同様に低い値を示している。MDIを単独で使用した場合は、MDIが発泡中に硬化し正常発泡は困難である。
それに反して、クルードMDIを単独で後添加した場合(実施例7)は、次亜塩素酸耐性およびアルカリ溶液に対する耐性共にTDIを単独で後添加した場合に比べて大幅に改良されている。
更に、無機フィラーとして硫酸バリウムを加えることで、水膨潤後のウレタンフォームの比重を高くすることはもとより、次亜塩素酸耐性及びアルカリ溶液に対する耐性についても改良されている。
【0040】
参考例1
参考例として、ポリエチレン担体[サンワ化成工業(株)社製]を用いて水膨潤性のウレタンフォーム同様の評価をおこなった。結果を第1表に示す。
次亜塩素酸及びアルカリ溶液に対する薬品耐性については、本発明の薬剤耐性ウレタンフォームより優れるが、耐摩耗性試験における摩耗残存率がかなり落ちる。バイオリアクター用担体として使用しても、ウレタンフォームの摩耗残存率が90%以上と高く、充分実用に耐えられる。
【0041】
【発明の効果】
水溶性ポリウレタンプレポリマーに対して、イソシアネート化合物の一部として、ポリメリック成分を多く含む、クルードMDIを後添加し、水を加えて発泡させることにより、水溶性薬品に対する耐性、特に次亜塩素酸溶液及びアルカリ溶液に耐性のある水膨潤性ポリウレタンフォームを提供することができる。
Claims (6)
- (a)イソシアネート化合物と、(b)ポリオール化合物と水を反応させることで得られるポリウレタンフォームにおいて、イソシアネート化合物とポリオール化合物をあらかじめ反応させ高分子量化させた1分子中に少なくとも2個の末端イソシアネート基を有する水溶性ポリウレタンプレポリマーに対して、更に後添加するイソシアネート化合物の一部として、ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)以外のポリメリック成分を含んだクルードMDIを用いることを特徴とする薬剤耐性を付与した水膨潤性ポリウレタンフォーム。
- 前記後添加するクルードMDI中のポリメリック成分の量が、後添加するクルードMDI全量に対して30質量%以上である請求項1記載の薬剤耐性を付与した水膨潤性ポリウレタンフォーム。
- 前記後添加イソシアネート化合物全量に対して、前記クルードMDIの量が、40質量%以上である請求項1又は2記載の薬剤耐性を付与した水膨潤性ポリウレタンフォーム。
- 前記ポリオール化合物が、1分子中に少なくとも2個の末端水酸基を有する酸化プロピレン/酸化エチレン共重合体であって、酸化プロピレン/酸化エチレンの量比が10〜60/40〜90でありかつ、分子量が、2000〜5000である請求項1〜3いずれかに記載の薬剤耐性を付与した水膨潤性ポリウレタンフォーム。
- 前記ウレタンフォームが無機フィラーとして硫酸バリウムを含む請求項1〜4いずれかに記載の薬剤耐性を付与した水膨潤性ポリウレタンフォーム。
- 請求項1〜5いずれかに記載の薬剤耐性を付与した水膨潤性ポリウレタンフォームを用いたバイオリアクター用担体。
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- 2003-01-10 JP JP2003004166A patent/JP2004217708A/ja active Pending
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