JP2004212495A - 回折光学素子の製造方法及び回折光学素子 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】所定の設計格子高に対応する格子高で第1光学材料層12の格子面11を形成し、第1光学材料層12と所定の設計屈折率差に対応する屈折率差を有する第2光学材料層13を格子面11上に積層して仮回折光学素子10を形成し、仮回折光学素子10の回折効率を測定して、設計上の格子高及び設計屈折率差に基づく設計回折効率と測定回折効率との製造誤差を求め、その製造誤差を第1光学材料層12と第2光学材料層13との間の屈折率差に換算し、この換算屈折率差及び設計屈折率差の和となるように第1光学材料層12と第2光学材料層13との間の屈折率差を調整して積層する。
【選択図】 図1
Description
【発明の属する技術分野】
この発明は、格子面を有する第1光学材料層の格子面上に第2光学材料層を積層して形成される回折光学素子及びその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、回折光学素子は、回折光を利用した回折レンズなどの種々の光学機器に用いられている。この回折光学素子は、各種のパターンの格子が光学材料からなる成形体に形成されたもので、成形体に入射した光を格子で回折させて、所望の回折次数の回折光を利用するようになっている。また、屈折率を特定条件に設定した複数の光学材料を積層し、その境界に格子を形成することにより、回折光学素子の波長依存性を低減したものも提案されている(例えば、特許文献1参照。)。
【0003】
このような回折光学素子では、所定の回折次数において所定の回折効率が得られるようにする必要がある。この回折効率は格子面の格子高と格子光学部材の屈折率とに相関を有することが知られており、回折光学素子の回折効率を所定値にするには、格子面の格子高と屈折率とを正確に設定して設計するとともに、精度良く加工する必要がある。
【0004】
【特許文献1】
特開平9−127321号公報。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、格子光学素子を製造する際、格子面の格子高は微細な形状であるために加工誤差が生じやすく、所定の格子高の格子面を形成することは容易でない。また、この格子面の加工誤差は、さらに微細な寸法となるため、修正加工を施すことも容易でない。
【0006】
しかも、この格子面の格子高は、高精度に測定することも容易でなく、例えば、接触式の測定器具では、格子面に接触する接触子の大きさより小さい形状変化部分で測定誤差を生じ易く、また、レーザ顕微鏡のような光学測定や原子間プローブを用いた測定でも、測定面積より小さい形状変化部分で測定誤差が生じやすい。
【0007】
その結果、所定の設計格子高の格子面を形成し難い上、製造された回折光学素子の格子高を修正する場合には、修正加工と回折効率の測定とを繰り返さなければならず、設計回折効率を有する回折光学素子を製造することが困難であるという問題点があった。
【0008】
この発明は、上記のような問題点を解決するため、所定の回折効率の回折光学素子を容易に製造することができる製造方法を提案するとともに、優れた回折効率が得られる回折光学素子を提供することを目的とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成する請求項1に記載の発明は、格子面を有する第1光学材料層の該格子面上に、第2光学材料層を積層して所望の回折効率を有する回折光学素子を製造する方法であって、前記第1光学材料層の前記格子面を設計格子高に対応する格子高で形成し、前記第1光学材料層と所定の設計屈折率差に対応する屈折率差を有する前記第2光学材料層を前記格子面上に積層して誤差測定用の仮回折光学素子を形成し、該仮回折光学素子の回折効率を測定し、前記設計格子高及び前記設計屈折率差に基づく設計回折効率と該測定回折効率との差から回折効率の修正量を決定し、該回折効率の修正量を前記第1光学材料層と前記第2光学材料層との屈折率差に換算し、該換算屈折率差に基づいて前記第1光学材料層と前記第2光学材料層との屈折率差を調整して前記回折光学素子を製造することを特徴とする。
【0010】
また、請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の構成に加え、異なる波長により複数の前記測定回折効率を測定し、複数の波長における前記設計回折効率と前記測定回折効率との差の変化量から前記回折効率の修正量を決定することを特徴とする。
【0011】
さらに、請求項3に記載の発明は、請求項1又は2に記載の構成に加え、前記第2光学材料層は複数の異なる屈折率を有する樹脂成分からなる光学樹脂組成物であって、前記複数の樹脂成分の混合割合を下記式(1)により決定して前記第2光学材料層を所定の屈折率に形成することを特徴とする。
【0012】
【数5】
nb=ΣniVi・・・(1)
(式(1)中、nbは前記調整により得られる前記光学樹脂組成物の屈折率、niは各樹脂成分の屈折率、Viは各樹脂成分の体積分率を示す。)
また、請求項4に記載の発明は、請求項1乃至3の何れか一つに記載の構成に加え、前記光学樹脂組成物は、前記所望の回折効率が得られる所定の屈折率及び所定の平均分散値を有するものであって、前記複数の樹脂成分の混合割合を、前記式(1)と同時に下記式(2)を満足するように決定して前記第2光学材料層を所定の屈折率及び所定の平均分散値に形成することを特徴とする。
【0013】
【数6】
Db=ΣDiVi・・・(2)
(式(2)中、Dbは前記光学樹脂組成物の平均分散値、Diは各樹脂成分の平均分散値を示す。)
さらに、請求項5に記載の発明は、格子面を有する格子成形体層と、該格子成形体層の前記格子面上に積層された光学樹脂組成物層とを有し、所望の回折効率を備えた回折光学素子であって、前記光学樹脂組成物層は、複数の異なる屈折率を有する樹脂成分の混合物からなり、該光学樹脂組成物層の屈折率は下記式(1)を満足し、前記所望の回折効率が得られるように設定されていることを特徴とする。
【0014】
【数7】
nb=ΣniVi・・・(1)
(式(1)中、niは各樹脂成分の屈折率、Viは各樹脂成分の体積分率、nbは前記光学樹脂組成物の屈折率を示す。)
また、請求項6に記載の発明は、前記請求項5に記載の構成に加え、前記光学樹脂組成物層は、前記式(1)と同時に下記式(2)を満足し、前記所望の回折効率が得られる所定の屈折率及び所定の平均分散値に設定されていることを特徴とする。
【0015】
【数8】
Db=ΣDiVi・・・(2)
(式(2)中、Dbは前記光学樹脂組成物の平均分散値、Diは各樹脂成分の平均分散値を示す。)
【発明の実施の形態】
以下、この発明の実施の形態について説明する。
【0016】
図1はこの実施の形態の回折光学素子の断面を示す。図において、符号10は回折光学素子であり、格子面11を有する「第1光学材料層」としての格子成形体層12と、格子成形体層12の格子面11側に積層された「第2光学材料」としての光学樹脂組成物層13とからなっている。前記回折光学素子10の格子面11には、格子高dで多数の格子溝11aが形成されており、m次光の回折効率はρmとなっている。
【0017】
格子成形体層12及び光学樹脂組成物層13の材料としては、樹脂、ガラス、結晶材料など、従来より光学部材に使用される材料を使用することができる。この実施の形態では、格子成形体層12の材料として、低融点ガラスを用い、光学樹脂組成物層13の材料として、複数の異なる屈折率を有する樹脂成分を均一に混合した状態の光学樹脂組成物を用いている。
【0018】
この発明において光学樹脂組成物層を構成する樹脂は、特に限定されるものではなく、成形型を用いて成形可能であれば、感光性樹脂、熱硬化性樹脂、熱可塑性樹脂などを適宜選択することができる。この発明に好適な熱硬化性樹脂としては、例えばエポキシ樹脂、ウレタン樹脂、チオウレタン、不飽和ポリエステル樹脂、ジアリルフタレート樹脂、商品名CR−39として知られるジエチレングリコールビスアリルカーボネートなどが挙げられる。また、熱可塑性樹脂としては、ポリメチルメタクリレート、ポリスチレン、ポリカーボネートなどが挙げられる。さらに、感光性アクリル樹脂や感光性メタクリル樹脂などもこの発明に好適である。
【0019】
熱硬化性樹脂及び感光性樹脂を構成する樹脂成分は、それぞれモノマ、オリゴマー、プレポリマー等の樹脂の前駆体の状態で、硬化開始剤とともに均一に混合し、格子面11に積層してから重合させることにより使用することができる。
【0020】
なお、これらの樹脂成分の前駆体は、他の樹脂成分と混合することなく単独で硬化させた場合には所定の屈折率niが得られ、各樹脂成分の前駆体を均一に混合した状態で硬化させた場合には、混合割合に応じた屈折率が得られ、下記式(1)が成立するものである。
【0021】
【数9】
nb=ΣniVi・・・(1)
(式(1)中、nbは光学樹脂組成物の屈折率、niは各樹脂成分の屈折率、Viは各樹脂成分の体積分率を示す。)
このような回折光学素子を製造するには、まず、所定の格子面を形成する凹凸形状が刻み込まれた金型を用いて、設計屈折率na0に対応する屈折率naの第1光学材料で格子成形体層12を形成して設計格子高d0に対応する格子高dの格子面11を形成する。次に、この格子成形体層12の格子面11に別の金型を用いて設計屈折率nb0に対応する屈折率nbの光学樹脂組成物層13が得られる樹脂成分の前駆体を充填し、硬化させることにより光学樹脂組成物層13を積層し、誤差測定用の仮回折光学素子10を製造する。そして、この仮回折光学素子10の回折効率ρmを測定して設計回折効率ρm0との製造誤差を求め、この製造誤差に基づいて回折効率ρmを修正することにより回折光学素子10を製造する。
【0022】
この製造工程で回折効率ρmを修正するには、前述のように、格子成形体層12及び/又は光学樹脂組成物層13の屈折率のずれと、格子面11の格子高dの加工誤差とを測定する必要がある。しかしながら、格子高dを精度良く加工することや、加工誤差を正確に測定することが難しいため、格子高dの加工誤差を正確に修正することが困難である。そのため、本発明者は、格子高dの加工誤差を第1光学材料層である格子成形体層12と第2光学材料層である光学樹脂組成物層13との屈折率差に換算して修正することにより、所望の回折効率を有する回折光学素子10を製造する方法を見出した。
【0023】
即ち、回折条件は下記式(3)により表される。
【0024】
【数10】
d×(na−nb)=d×Δn=mλ・・・(3)
(式(3)中、dは格子高、naは格子成形体層12の屈折率、nbは光学樹脂組成物層13の屈折率、Δnは両層12,13の屈折率差、mは回折次数、λは基準波長を示す。)
この式(3)によれば、格子高dの加工誤差は、格子成形体層12と光学樹脂組成物層13との間の屈折率差Δnにより修正可能であることが分かる。そこで、格子成形体層12と光学樹脂組成物層13との間の屈折率差Δnを調整することにより、格子高dの加工誤差を修正する。しかも、前記屈折率差Δnの調整は、この格子高dの加工誤差の修正と同時に、格子成形体層12と光学樹脂組成物層13との間の屈折率差Δnと設計屈折率差Δn0とのずれを含んで修正できる。従って、屈折率差Δnを調整することにより、回折光学素子10の回折効率ρmを所望の設計格子効率ρm0にすることができるのである。
【0025】
具体的には、まず、前記のようにして仮回折光学素子10を製造し、この仮回折光学素子10の回折効率ρmを測定する。そして、設計格子高d0及び設計屈折率差Δn0に基づいて求めた仮回折光学素子10の設計回折効率ρm0と前記の測定により得られた測定回折効率ρmとを比較し、回折効率の製造誤差を求める。この回折効率の製造誤差は、格子高dの加工誤差及び両層12,13の屈折率差Δnのずれを含んだものとなる。そして、この回折効率ρmの製造誤差から回折効率ρmの修正量を決定する。ここでは、格子高dの加工誤差及び両層12、13の屈折率差のずれを含む全ての回折効率の製造誤差を回折効率ρmの修正量としている。
【0026】
次に、このように決定した修正量を格子成形体層12と光学樹脂組成物層13との間の屈折率差に換算して、その換算屈折率差Δn’を求める。
【0027】
この実施の形態では、図2のグラフに示すように複数の異なる波長λの光により設計回折効率ρm0と測定回折効率ρmとを比較することにより、換算屈折率差Δn’を求める。このように複数の異なる波長λの光により比較すると、波長λに対する回折効率の変化の傾向が明らかになるため、製造誤差を求めやすくなる。
【0028】
図2では、Aは設計回折効率ρm0を示し、B、Cは測定回折効率ρmの典型例を示している。ここでは、格子高dが設計値より高い場合や格子成形体層12と光学樹脂組成物層13との間の屈折率差Δnが設計値より大きい場合には、Bに示すように回折効率が最大となる波長が設計における基準波長よりも長くなる傾向を示している。一方、格子高dが設計値より低い場合や屈折率差Δnが設計値より小さい場合には、Cに示すように回折効率が最大となる波長が設計における基準波長よりも短くなる傾向を示す。
【0029】
そこで、複数の異なる波長λの光により得られた複数の測定回折効率ρmの変化から回折効率が最大となる波長(以下、最適化波長という。)を推定する。この最適化波長をシフトさせるような格子高の修正量を求める。そして、前記格子高の補正量を屈折率差Δnに換算する。即ち、回折効率ρmを修正できるように換算屈折率差Δn’を求める。
【0030】
そして、格子成形体層12と光学樹脂組成物層13との間の屈折率差Δnを、設計屈折率差Δn0と換算屈折率差Δn’との和となるように調整すれば、所望の設計回折効率ρm0を有する回折光学素子10を製造することができる。
【0031】
次に、格子成形体層12と光学樹脂組成物層13との間の屈折率差Δnを調整する方法について説明する。この実施の形態では、光学樹脂組成物層13の屈折率nbを調整することにより行う。光学樹脂組成物層13を構成する各樹脂成分は前記のように互いに異なる屈折率niを有しており、ここでは、屈折率の最大値と最小値との差が、格子面11の格子高d0の加工誤差を屈折率差に換算した値より大きくなるように各樹脂成分が選択されている。そのため、各樹脂成分の混合割合を調整することにより屈折率nbを調整することが可能である。
【0032】
ここで、各樹脂成分の混合割合を調整するには、下記式(1)が成立するように各樹脂成分の混合割合を決定することにより行うことができる。
【0033】
【数11】
nb=ΣniVi・・・(1)
この式(1)では、niは各樹脂成分の屈折率であり、それぞれの樹脂の前駆体を単独で重合させたときに得られる値である。また、Viは各樹脂成分の体積分率であり、重合後の値である。nbは前記換算屈折率差Δn’が得られる前記光学樹脂組成物の屈折率であり、具体的には、設計屈折率差Δn0及び換算屈折率差Δn’を格子成形体層12の屈折率naに加算又は減算した値である。
【0034】
そして、このようにして決定した混合割合により複数の樹脂成分を混合し、光学樹脂組成物層13を形成することにより、所定の設計回折効率ρm0を有する回折光学素子10が得られる。
【0035】
ところで、回折効率は平均分散値によっても変動を生じるため、白色光等の複数の波長が混在する光が照射されるような場合には、平均分散値を所定値に設定するのが好ましい。そのため、この実施の形態では光学樹脂組成物層13の屈折率と同時に、光学樹脂組成物層13の平均分散値を調整するのが好ましい。この場合、所定の屈折率が得られるように、複数の樹脂成分の混合割合を決定する際、同時に所定の平均分散値が得られるようにすればよい。
【0036】
ここでは、複数の樹脂成分を種々の混合割合で混合して得られる樹脂組成物において、屈折率とアッベ数との相関をグラフ化しても、その相関は曲線的な複雑な関係しか得られないものの、屈折率と平均分散値との相関をグラフ化すると直線的な単純な関係が得られるという理由で、各成分の屈折率niと平均分散値Diとを用いて光学樹脂組成物を構成する樹脂成分及びその混合割合を決定する。ここで平均分散値Diとは、例えば、F線における屈折率nFとC線における屈折率nCとの差(nF−nC)である。
【0037】
そこで、この実施の形態では、上記式(1)と下記式(2)の両方が同時に成立するように複数の樹脂成分及びその混合割合を決定することにより、所定の屈折率及び所定の平均分散値が得られる光学樹脂組成物を得る。
【0038】
【数12】
Db=ΣDiVi・・・(2)
この式(2)では、Diは各樹脂成分の平均分散値であり、それぞれの樹脂の前駆体を単独で重合させたときに得られる値である。また、Dbは前記光学樹脂組成物の平均分散値である。
【0039】
ここで、上記式(1)と式(2)の両方が同時に成立するものを決定するには、次のようにすればよい。
【0040】
まず、前記のように求めた換算屈折率差Δn’に基づいて前記のように光学樹脂組成物の目的の屈折率nbを決定するとともに、所望の平均分散値Dbを決定する。
【0041】
そして、各種の樹脂成分から次式(4)の関係を満足するような第1樹脂及び第2樹脂を選択する。ここでは、各樹脂の屈折率及び平均分散値は予め明らかにしておく必要があり、それぞれ屈折率nb1、nb2及び平均分散値D1、D2を有している。
【0042】
【数13】
(nb1−nb)/(Db1−Db)=(nb−nb2)/(Db−Db2)・・・(4)
この(4)式は、平均分散値Dと屈折率nとの相関を示すグラフにおいて、第1樹脂(Db1,nb1)、第2樹脂(Db2,nb2)及び光学樹脂組成物(Db,nb)とが同一直線上に存在することを示している。そして、このような第1樹脂及び第2樹脂の成分を決定した後、上記式(1)或いは式(2)によりその混合割合を決定する。
【0043】
より具体的には、光学樹脂組成物層13の所望の分散値Db及び屈折率差nbは前記のように設定されており、例えば第1樹脂を任意に選択すると、光学樹脂組成物(Db,nb)と第1樹脂(Db1,nb1)とから式(4)の直線が得られる。そこで、式(4)が成立する直線上に第2樹脂を選択すれば、第1樹脂及び第2樹脂の成分を決定することができる。そして、この第1樹脂及び第2樹脂を構成する樹脂成分の混合割合を上記式(1)或いは式(2)により決定すればよい。
【0044】
なお、このような第1、第2樹脂の選択が容易でない場合には、式(4)が成立しない樹脂を複数組み合わせて所定割合にすることにより、式(4)が成立する直線上の樹脂を形成することができる。例えば、第2樹脂の選択が容易でない場合、複数の樹脂を組合せて所定割合にすることにより、第2樹脂を形成することができる。そして、このように組合わせた複数の樹脂と第1樹脂の樹脂成分の混合割合を上記式(1)或いは式(2)により決定すればよい。
【0045】
そして、このような第1樹脂と第2樹脂を構成する各樹脂成分を用いて、上記式(1)及び式(2)が同時に成立する樹脂成分及びその混合割合を決定し、これらから光学樹脂組成物層13を形成して所定の設計回折効率ρm0を有する回折光学素子10を製造することができる。
【0046】
以上のようにして回折光学素子10を製造する。即ち、設計格子高d0に対応する格子高dで格子面11を格子成形体層12に形成し、この格子成形体層12に設計屈折率差Δn0に対応する屈折率nbの光学樹脂組成物層13を積層して仮回折光学素子10を形成する。この仮回折光学素子10の回折効率ρmを測定して設計回折効率ρm0との差から回折効率の修正量を決定する。この回折効率の修正量を格子成形体層12と光学樹脂組成物層13との間の屈折率差Δn’に換算する。この換算屈折率差Δn’に応じて格子成形体層12と光学樹脂組成物層13とを調整して積層するようにしたので、格子成形体層12の格子面11の格子高dに加工誤差が存在していても、回折光学素子10の回折効率ρmを容易に所望の値に調整することができる。
【0047】
しかも、格子面11の格子高dを調整するのに比べて、屈折率は容易に定量的に調整できるため、高精度に容易に回折効率ρmを調整することが可能である。
【0048】
また、第2光学材料層として複数の樹脂成分からなる光学樹脂組成物13を用い、複数の樹脂成分の混合割合を上記式(1)により決定するようにしたので、所望の換算屈折率差Δn’を得るための各樹脂成分及びその混合割合を容易に決定することができる。
【0049】
さらに、光学樹脂組成物層13が換算屈折率差Δn’とともに所定の平均分散値Dbを有するものであって、式(1)と同時に、所定の式(2)が成立するように複数の樹脂成分の混合割合を決定するので、所望の換算屈折率差と同時に所望の平均分散率Dbが得られる樹脂成分及びその混合割合を求めることができ、より回折効率を調整し易い。
【0050】
なお、上記実施の形態では、回折効率を調整する際、格子成形体層12と光学樹脂組成物層13との間の屈折率差Δnのずれや格子高dの加工誤差を含む全ての回折効率ρmの製造誤差を、格子成形体層12と光学樹脂組成物層13との屈折率差Δnに換算して調整したが、これに限定される必要はなく、回折効率の差の一部を格子面の格子高dなどで調整し、残部を屈折率差Δnに換算して調整するようにしてもよい。
【0051】
また、上記では、格子成形体層12と光学樹脂組成物層13との屈折率差Δnを、光学樹脂組成物層13の屈折率nbだけで調整したが、格子成形体層12の屈折率naだけで調整することも可能であり、更に、光学樹脂組成物層13の屈折率nbと格子成形体層12の屈折率naの両方を調整することにより行うことも可能である。
【0052】
さらに、上記では、回折効率のずれを複数の波長λの光を用いて、波長λに対する変化量から求めて格子高差Δdや屈折率差Δnを換算したが、1つの波長の光による回折効率から格子高差Δdや屈折率差Δnを求めることも可能である。その場合、最適化波長が設計における基準波長より長波長側又は短波長側のうちのずれが小さい側にずれていることが統計的に判明しているので、前記と同様に換算屈折率差Δn’を算出すればよい。
【0053】
【実施例】
実施例
レンズ外形が50mmの図1に示すような仮回折光学素子10を製造した。
【0054】
格子成形体層12として、設計屈折率na0が1.59087のモールド用低融点ガラスPーSK60(住田光学ガラス(株)製、商標)を用い、所定の回折格子が刻まれた金型により成形したものを用いた。回折格子は、設計格子高d0が15μmであり、中心付近のピッチが3mm、中心付近から外側へ行くほど狭いピッチとなって周辺部のピッチが180μmとなるものであった。
【0055】
一方、光学樹脂組成物層13は、エトキシ化ビスフェノールAジメタクリレート2種及びウレタンアクリレート1種の計3種類の樹脂成分の前駆体に、イルガキュア184(チバガイキー社製、商標)からなる光硬化開始剤を1.0重量%となるように添加して均一に混合し、これを格子成型体12の格子面11上に積層するように充填して硬化させたUV硬化型樹脂層を用いた。この光学樹脂組成物層13の設計透過率nb0は1.55412であった。
【0056】
この仮回折光学素子10の1次の設計回折効率ρm0は98%であり、前記のようにして得られた仮回折光学素子10の測定回折効率ρmを測定したところ、95%となり、設計回折効率との差が3%であった。この差は、格子面11の格子高dに換算すると、設計格子高d0より1μm高いことに相当する。
【0057】
そこで、この格子高1μmの差を格子成形体層12と光学樹脂組成物層13との屈折率差Δnに換算した。即ち、格子高dを16μmから15μmにすることは、格子高16μmのままで屈折率差Δnを15/16倍にすることと同等である。従って、換算屈折率差Δn’はΔn×(15/16)より0.03445である。
【0058】
この結果に基づいて、光学樹脂組成物層13の目的の屈折率nbを1.55642とした。そして、光学樹脂組成物層13の成分中のウレタンアクリレートを減量して、エトキシ化ビスフェノールAメタクリレートを増量することにより、目的の屈折率nbの光学樹脂組成物層13が得られるように調整し、光学樹脂組成物層13を前記と同様にして格子成形体層12に積層して回折光学素子10を製造した。
【0059】
このようにして製造された回折光学素子10の回折効率を測定したところ、設計回折効率ρm0と同等といえる0.5%以内の誤差が達成できた。
【0060】
比較例
実施例1において、格子高dを15μmに加工して、混合割合を変更していない光学樹脂組成物層13を積層することにより回折光学素子10を作成した。
【0061】
この比較例では、金型を加工して格子成形体層12を成形し、これに光学樹脂組成物層13を積層し、その状態で回折効率ρmを測定するという一連の作業を4回繰り返すことにより、設計回折効率ρm0を得ることができ、製造に手間を要した。
【0062】
【発明の効果】
以上詳述の通り、請求項1に記載の発明によれば、第1光学材料層に格子面を設計格子高に対応する格子高で形成し、この第1光学材料層と所定の設計屈折率差に対応する屈折率差を有する第2光学材料層を積層して誤差測定用の仮回折光学素子を形成し、仮回折光学素子の回折効率を測定して設計回折効率との差から回折効率の修正量を決定し、この回折効率の修正量を第1光学材料層と第2光学材料層との間の屈折率差に換算し、この換算屈折率差に基づいて第1光学材料層と第2光学材料層との屈折率差を調整して積層するようにしたので、第1光学材料層の格子面の格子高に加工誤差が存在していても、回折光学素子の回折効率を所望の値に調整することが容易である。しかも、光学材料の屈折率が容易に定量的に調整できるため、格子面の格子高を調整するのに比べて、容易且つ高精度に回折効率を調整することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】この発明の実施の形態の回折光学素子の断面図である。
【図2】同実施の形態の回折光学素子の設計回折効率及び測定回折効率を示すグラフである。
【符号の説明】
10 回折光学素子
11 格子面
12 格子成形体層
13 光学樹脂組成物層
Claims (6)
- 格子面を有する第1光学材料層の該格子面上に、第2光学材料層を積層して所望の回折効率を有する回折光学素子を製造する方法であって、
前記第1光学材料層の前記格子面を設計格子高に対応する格子高で形成し、
前記第1光学材料層と所定の設計屈折率差に対応する屈折率差を有する前記第2光学材料層を前記格子面上に積層して誤差測定用の仮回折光学素子を形成し、
該仮回折光学素子の回折効率を測定し、前記設計格子高及び前記設計屈折率差に基づく設計回折効率と該測定回折効率との差から回折効率の修正量を決定し、
該回折効率の修正量を前記第1光学材料層と前記第2光学材料層との屈折率差に換算し、該換算屈折率差に基づいて前記第1光学材料層と前記第2光学材料層との屈折率差を調整して前記回折光学素子を製造することを特徴とする回折光学素子の製造方法。 - 異なる波長により複数の前記測定回折効率を測定し、複数の波長における前記設計回折効率と前記測定回折効率との差の変化量から前記回折効率の修正量を決定することを特徴とする請求項1に記載の回折光学素子の製造方法。
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