JP2004210126A - 車両用デジタル照明装置 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】放電灯10の出力を増減することなく、調光用のデジタルデータに基づいて反射型デジタル光偏向装置2を制御して所定の配光パターンの光度を減少またはおよび増加させることができる。この結果、放電灯10の耐久性が向上される。また、車両の周囲の状況や道路状況などに応じて所定の配光パターンの光度を増減させることができる。この結果、車両の周囲の状況や道路状況などに応じた光度が得られることとなり、交通安全上好ましい。
【選択図】 図1
Description
【発明の属する技術分野】
この発明は、反射型デジタル光偏向装置を使用して所定の配光パターンで路面などを照明する車両用デジタル照明装置にかかるものである。特に、この発明は、所定の配光パターンの光度を所定の配光パターンの光度を減少またはおよび増加させることができる車両用デジタル照明装置に関するものである。
【0002】
なお、この明細書において、「路面など」とは、路面およびその路面上の人(歩行者など)や物(先行車や対向車や道路標識や建物など)などを言う。
【0003】
【従来の技術】
反射型デジタル光偏向装置を使用して所定の配光パターンで路面などを照明する車両用の照明装置は、従来からある(たとえば、特許文献1参照)。
【0004】
【特許文献1】
特開平9−104288号公報(段落番号「0007」〜「0018」)
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
この発明は、前記の従来の技術の改良にかかるものであり、その目的とするところは、所定の配光パターンの光度を減少またはおよび増加させることができることにより、光学エンジンの光源の耐久性を向上させることができ、また、交通安全上好ましい車両用デジタル照明装置を提供することにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】
上記の目的を達成するために、請求項1にかかる発明は、光源を有する光学エンジンと、多数個の極小ミラー素子がそれぞれ傾倒可能に配置されており、前記多数個の極小ミラー素子の傾倒角度を第1傾倒角度と第2傾倒角度とにデジタル的に切り替えて、前記光学エンジンからの光の反射方向をONの第1反射方向とOFFの第2反射方向とにデジタル的にスイッチングする反射型デジタル光偏向装置と、前記反射型デジタル光偏向装置からのONの反射光であって所定の配光パターンの光を路面などに照射する光照射装置と、複数の配光パターンのデジタルデータと、前記所定の配光パターンの光度を減少またはおよび増加させる複数の調光用のデジタルデータとが記憶されている記憶装置と、入力信号に基づいて前記記憶装置に記憶されている複数の配光パターンのデジタルデータの中から所定の配光パターンのデジタルデータを選択し、この選択された所定の配光パターンのデジタルデータに基づいて前記多数個の極小ミラー素子の切替スイッチングをデジタル的に個々に制御し、また、入力信号に基づいて前記記憶装置に記憶されている複数の調光用のデジタルデータの中から所定の調光用のデジタルデータを選択し、この選択された所定の調光用のデジタルデータに基づいて前記多数個の極小ミラー素子の切替スイッチングをデジタル的に個々に制御する制御装置と、を備えたことを特徴とする。
【0007】
この結果、請求項1にかかる発明は、光源の出力を増減することなく、調光用のデジタルデータに基づいて反射型デジタル光偏向装置を制御して所定の配光パターンの光度を減少またはおよび増加させることができるので、光源の耐久性が向上される。また、請求項1にかかる発明は、車両の周囲の状況や道路状況などに応じて所定の配光パターンの光度を増減させることができるので、車両の周囲の状況や道路状況などに応じた光度が得られることとなり、交通安全上好ましい。
【0008】
また、請求項2にかかる発明は、所定の配光パターンや所定の調光を選択して選択信号を出力する配光パターン・調光選択装置を備え、制御装置が、前記配光パターン・調光選択装置からの入力信号に基づいて記憶装置に記憶されている複数の配光パターンのデジタルデータの中から所定の配光パターンのデジタルデータを選択し、この選択された所定の配光パターンのデジタルデータに基づいて多数個の極小ミラー素子の切替スイッチングをデジタル的に個々に制御し、また、配光パターン・調光選択装置からの入力信号に基づいて記憶装置に記憶されている複数の調光用のデジタルデータの中から所定の調光用のデジタルデータを選択し、この選択された所定の調光用のデジタルデータに基づいて多数個の極小ミラー素子の切替スイッチングをデジタル的に個々に制御する、ことを特徴とする。
【0009】
この結果、請求項2にかかる発明は、ドライバーが配光パターン・調光選択装置を介して所定の配光パターンのデジタルデータと調光用のデジタルデータを選択するので、その分、装置の構造が簡単となり、製造コストが安価となる。
【0010】
また、請求項3にかかる発明は、車両の周囲環境を検知して検知信号として出力する周囲環境検知装置を備え、制御装置が、周囲環境検知装置からの入力信号に基づいて車両の周囲環境を判断し、この判断に基づいて記憶装置に記憶されている複数の配光パターンのデジタルデータの中から車両の周囲環境に最適な所定の配光パターンのデジタルデータを選択し、この選択された車両の周囲環境に最適な所定の配光パターンのデジタルデータに基づいて多数個の極小ミラー素子の切替スイッチングをデジタル的に個々に制御し、また、周囲環境検知装置からの入力信号に基づいて車両の周囲環境を判断し、この判断に基づいて記憶装置に記憶されている複数の調光用のデジタルデータの中から所定の調光用のデジタルデータを選択し、この選択された所定の調光用のデジタルデータに基づいて多数個の極小ミラー素子の切替スイッチングをデジタル的に個々に制御する、ことを特徴とする。
【0011】
この結果、請求項3にかかる発明は、車両の周囲環境に最適な所定の配光パターンとその配光パターンの光度とを自動的に選択し、この選択された車両の周囲環境に最適な所定の配光パターンとその配光パターンの光度で路面などを常時照明することができるので、交通安全上好ましい。
【0012】
また、請求項4にかかる発明は、調光用のデジタルデータが、複数の光度諧調が得られる2進数の複数ビットのデジタルデータであり、調光用のデジタルデータによる所定の配光パターンの光度を減少またはおよび増加させる調光の制御が、2進法パルス幅変調であって、ONのパルス幅のデュティ比あるいはOFFのパルス幅のデュティ比を減少またはおよび増加させることにより行われる、ことを特徴とする。
【0013】
この結果、請求項4にかかる発明は、2進法パルス幅変調により、ONのパルス幅のデュティ比あるいはOFFのパルス幅のデュティ比を減少またはおよび増加させるので、所定の配光パターンの光度を確実にかつ滑らかに減少またはおよび増加させることができる。
【0014】
また、請求項5にかかる発明は、信号待ちの調光の制御が、信号待ち開始の時点から所定の減光時間の間において、所定の配光パターンの光度を所定値まで減少させ、また、信号待ち終了の時点から所定の増光時間の間において、光度を所定値から所定の配光パターンの光度まで増加させる、ことを特徴とする。
【0015】
この結果、請求項5にかかる発明は、光源の出力を変えずに、信号待ちの間において、所定の配光パターンの光度を所定値にすることができ、また、信号待ちが終了すると、所定の配光パターンの光度を元の状態に戻すことができるので、光源の耐久性を確実に向上させることができる。しかも、信号待ちの間において、対向車や歩行者に対してグレアを与えることがなく、交通安全上好ましい。
【0016】
また、請求項6にかかる発明は、昼間・夜間の調光の制御が、昼間において、夜間の所定の配光パターンの光度を所定値まで減少させ、また、夜間において、昼間の所定の配光パターンの光度を所定値まで増加させる、ことを特徴とする。
【0017】
この結果、請求項6にかかる発明は、光源の出力を変えずに、昼間時において、夜間の所定の配光パターンの光度を減少させて昼間専用の所定の配光パターンを得ることができ、また、夜間時において、昼間の所定の配光パターンの光度を増加させて夜間専用の所定の配光パターンを得ることができるので、光源の耐久性を確実に向上させることができる。しかも、昼間専用の所定の配光パターン、すなわち、DRL(デイタイムランニングランプ)用の配光パターンが得られることにより、昼間において、自車両の存在を他車両のドライバーや歩行者に視認させることができるので、交通安全上好ましい。
【0018】
また、請求項7にかかる発明は、一般道路・高速道路の調光や市街地・郊外の調光の制御が、高速道路や郊外において、一般道路や市街地の所定の配光パターンの光度を所定値まで増加させ、また、一般道路や市街地において、高速道路や郊外の所定の配光パターンの光度を所定値まで減少させる、ことを特徴とする。
【0019】
この結果、請求項7にかかる発明は、光源の出力を変えずに、高速道路や郊外の走行時において、一般道路や市街地の所定の配光パターンの光度を増光させて高速道路や郊外の所定の配光パターンを得ることができ、また、一般道路や市街地の走行時において、高速道路や郊外の所定の配光パターンの光度を減光させて一般道路や市街地の所定の配光パターンを得ることができので、光源の耐久性を確実に向上させることができる。しかも、高速道路や郊外専用の所定の配光パターン、また、一般道路や市街地専用の所定の配光パターンが得られるので、所定の配光パターンをきめ細かく制御することができ、交通安全上好ましい。
【0020】
【発明の実施の形態】
以下、この発明にかかる車両用デジタル照明装置の実施の形態の2例について添付図面を参照して説明する。なお、この実施の形態によりこの発明が限定されるものではない。
【0021】
図において、符号「U」は、ドライバー側から見た上側を示す。符号「D」は、ドライバー側から見た下側を示す。符号「L」は、ドライバー側から前方を見た場合の左側を示す。符号「R」は、ドライバー側から前方を見た場合の右側を示す。符号「HL−HR」は、スクリーン上の左右水平線のことを示す。符号「VU−VD」は、同じく、スクリーン上の上下垂直線を示す。
【0022】
(実施の形態1の構成の説明)
「全体構成の説明」
図1〜図13は、この発明にかかる車両用デジタル照明装置の実施の形態1を示す。この車両用デジタル照明装置は、車両の周囲環境に最適な所定の配光パターンおよび調光された配光パターンPで路面などを照明するものであって、この例では、自動車用のヘッドランプである。
【0023】
前記車両用デジタル照明装置は、図1に示すように、光学エンジン1と、反射型デジタル光偏向装置2と、光照射装置3と、記憶装置4と、周囲環境検知装置5と、制御装置6とを備えるものである。
【0024】
「光学エンジンの説明」
前記光学エンジン1は、図2に示すように、光源としての放電灯10(出力がたとえば35W)と、前記放電灯10からの光L1を反射させるリフレクタ11と、前記リフレクタ11からの反射光L2を平行光L3として出射させるコリメータレンズ(平行化レンズ)12とを備える。
【0025】
前記リフレクタ11の内面には、アルミ蒸着や銀塗装などが施されていて反射面13が設けられている。この反射面13は、NURBSの自由曲面(特開2001−35215号公報を参照)から形成されている反射面であって、反射光L2を前記コリメータレンズ12の入射面14に、図2(B)および(C)に示す配光分布で入射させるものである。図2(B)および(C)に示す配光分布は、中央における光度(照度)が高く、周囲における光度(照度)が低い配光分布をなすものであるから、車両用の照明の配光分布、すなわち、中央における光度(照度)が高く、周囲における光度(照度)が低い配光分布に一致するので、放電灯10からの光L1を有効に利用することができる。
【0026】
「反射型デジタル光偏向装置の説明」
前記反射型デジタル光偏向装置2(特開平8−201708号公報、特開平11−231234号公報を参照)は、極小ミラー素子群デジタル駆動装置、または、反射型光学変調素子、または、空間光変調器、または、光情報処理素子、または、光スイッチなどと称されている。
【0027】
前記反射型デジタル光偏向装置2は、図3〜図8に示すように、CMOS基板(SRAMメモリ半導体)20と、前記CMOS基板20上に配置された導体21と、前記導体21上にトーションヒンジ22を介して傾倒可能に配置されたヨーク23と、前記ヨーク23にポスト24を介して支持された極小ミラー素子25とから構成されている。すなわち、前記反射型デジタル光偏向装置2は、1個の半導体チップ上に機械的機能と、光学的機能と、電気的機能を集積したデバイスである。前記CMOS基板20は、駆動部であって、アドレスようのトランジスターからなる。前記ヨーク23は、可動部であって、ランディングチップ(スプリングチップ、バウンシングチップ)27を有する。
【0028】
前記反射型デジタル光偏向装置2は、多数個の前記極小ミラー素子25がそれぞれ傾倒可能に配置されているものである。前記多数個の極小ミラー素子25の個数は、たとえば、720×480=345600個、または、800×600=480000個、または、1024×768=786432個、または、1280×1024=1310720個、または、任意の個数である。
【0029】
前記反射型デジタル光偏向装置2は、前記多数個の極小ミラー素子25の傾倒角度を第1傾倒角度と第2傾倒角度とにデジタル的に切り替えて、前記光学エンジン1のコリメータレンズ12からの平行光L3の反射方向をONの第1反射方向とOFFの第2反射方向とにデジタル的にスイッチングするものである。前記反射型デジタル光偏向装置2は、いわゆる、光の高速スイッチング動作を行うデバイスである。以下、前記極小ミラー素子25の姿勢状態について図6を参照して詳細に説明する。
【0030】
すなわち、無通電時において、前記極小ミラー素子25は、点線で示すフラットステイトと称される水平状態(ニュートラル状態)にある。通電時において、前記極小ミラー素子25は、CMOS基板20のアドレスメモリへの出力に応じて静電引力により、水平状態から、実線で示す状態(ONの状態)に、または、一点鎖線で示す状態(OFFの状態)に、それぞれ傾倒するものである。
【0031】
前記極小ミラー素子25の実線で示すONの状態は、第1傾倒角度+θ(たとえば、+10°または+12°など)に傾倒した状態であって、このONの状態においては、前記光学エンジン1からの光L3を実線矢印に示すONの第1反射方向に反射させる。この実線矢印で示されている反射光L4は、前記入射光L3に対して角度2θで前記光照射装置3側に反射して、路面などを照明する。
【0032】
また、前記極小ミラー素子25の一点鎖線で示すOFFの状態は、第2傾倒角度−θ(たとえば、−10°または−12°など)に傾倒した状態であって、このOFFの状態においては、前記光学エンジン1からの光L3を一点鎖線矢印に示すOFFの第2反射方向に反射させる。この一点鎖線矢印で示されている反射光L5は、前記入射光L3に対して角度6θで光アブソーバー26側に反射して、無効化される。
【0033】
さらに、水平状態にある極小ミラー素子25は、前記光学エンジン1からの平行光L3を点線矢印に示す第3反射方向に反射させる。この点線矢印で示されている反射光L6は、前記入射光L3に対して角度4θで反射している。
【0034】
前記反射型デジタル光偏向装置2は、前記制御装置6から出力される制御信号により、前記多数個の極小ミラー素子25を1個ずつ、光の全白色、全黒色、中間の多数諧調(たとえば、8ビットの場合、256−2=254階調)の灰色と、精細に制御することができる。以下、多数個の極小ミラー素子25のON、OFFの制御について図7を参照して詳細に説明する。
【0035】
すなわち、図7(A)に示すように、多数個の極小ミラー素子25を1個ずつをピクセルとして、多数個の極小ミラー素子25のうち、x方向のピクセル(極小ミラー素子25)の位置を、0、1、2、3、4……mとし、y方向のピクセル(極小ミラー素子25)の位置を、0、1、2……nとする。(m×n)個、たとえば、720×480=345600個、または、800×600=480000個、または、1024×768=786432個、または、1280×1024=1310720個、または、任意の個数が、極小ミラー素子25の総数個である。また、前記制御装置6から出力される制御信号が「1」のときには、極小ミラー素子25がONの状態となり、前記制御装置6から出力される制御信号が「0」のときには、極小ミラー素子25がOFFの状態となるものとする。
【0036】
前記(m×n)個の極小ミラー素子25を、(0,0)→(1,0)→(2,0)→(3,0)→…→(m,0)→(0,1)→(1,1)→(2,1)→(3,1)→…→(m,1)→(0,2)→(1,2)→(2,2)→(3,2)→…→(m,2)→…→(m,n)の順に走査しながら、前記制御装置6から出力される制御信号「1」または「0」により、1個ずつONまたはOFFに制御するものである。
【0037】
前記制御装置6から出力される制御信号「1」または「0」は、2進数のビットデータである。たとえば、図7(B)に示すように、4ビットの場合においては、24 =2×2×2×2=16となるので、光の全白色、全黒色、中間の16−2=14階調の灰色と、精細に制御することができる。すなわち、4ビット(T1、T2、T3、T4)においては、図8に示すように、(1、1、1、1)の光度100%の全白色と、(0、0、0、0)の光度0%の全黒色と、(1、0、0、0)、(0、1、0、0)、(0、0、1、0)、(0、0、0、1)、(1、1、0、0)、(1、0、1、0)、(1、0、0、1)、(0、1、1、0)、(0、1、0、1)、(0、0、1、1)、(1、1、1、0)、(1、0、1、1)、(1、1、0、1)、(1、1、1、0)の14階調の灰色と、精細に制御することができる。
【0038】
なお、8ビットの場合においては、28 =2×2×2×2×2×2×2×2=256となるので、光の全白色、全黒色、中間の256−2=254階調の灰色と、精細に制御することができる。
【0039】
以上のように、前記反射型デジタル光偏向装置2は、一定時間のうち、階調に応じたパルス幅変調の手法を利用して、極小ミラー素子25からの反射光をある時間ONの白とし、残りの時間OFFの黒とする。すると、人間の視覚は、白の時間が積分されて階調(たとえば、8ビットの場合は、0〜255のグレースケール)として知覚することとなる。このために、前記反射型デジタル光偏向装置2は、単位時間当たりのONの時間を制御することにより、配光パターンの光の濃淡(光度差、照度差)が実現される。
【0040】
「光照射装置の説明」
前記光照射装置3は、前記反射型デジタル光偏向装置2からのONの光L4を発散させる発散レンズ30と、前記発散レンズ30からの出射光L7を照射光L8として路面などに照射する集光レンズ(投影レンズ)31とから構成されている。
【0041】
「記憶装置の説明」
前記記憶装置4は、たとえば、コンピュータに内蔵された内部記憶装置(ハードディスクなどの磁気ディスク、または、RAM、ROMなどの半導体記憶手段)、または、コンピュータに対して外付けの外部記憶装置(CD−ROMなどの光学系記憶媒体、記憶カードなどの半導体系記憶媒体)である。前記記憶装置4には、図1に示すように、複数の配光パターンのデジタルデータと、前記所定の配光パターンの光度を減少またはおよび増加させる複数の調光用のデジタルデータとがそれぞれ記憶されている。前記複数の調光用のデジタルデータとしては、たとえば、信号待ち用のデジタルデータ、昼間用のデジタルデータ、夜間用のデジタルデータ、高速道路用のデジタルデータ、一般道路用のデジタルデータ、郊外用のデジタルデータ、市街地用のデジタルデータなどなどがある。
【0042】
前記記憶装置4に記憶されている前記複数の配光パターンのデジタルデータおよび複数の調光用のデジタルデータは、車両が走行する地域・国別にそれぞれ群単位でユニット化されている。これにより、配光パターンのデジタルデータおよび調光用のデジタルデータを地域・国別ごとに変えるだけで、車両用の照明装置全体を変えることなく、車両が走行する地域・国の道路状況に最適な配光パターンが得られることとなる。このために、各地域・国別ごとに、車両用の照明装置の光学設計や製造が不要となり、その分、製造コストが安価となる。
【0043】
ここで、車両が走行する地域・国の道路状況に最適な配光パターンとは、たとえば、日本の道路状況は左側通行で狭い交差路や曲線路が多く、この日本の道路状況に最適な配光パターンを言い、また、アメリカの道路状況は右側通行で広大な直線路が多く、このアメリカの道路状況に最適な配光パターンを言う。また、配光パターンとしては、たとえば、すれ違い用配光パターン、走行用配光パターン、一般道路用配光パターン、高速道路用配光パターン、市街地用配光パターン、郊外用配光パターン、直線用配光パターン、カーブ用配光パターン、交差点用配光パターン、山道用配光パターン、ワインディングロード用配光パターン、雨用配光パターン、霧用配光パターン、雪用配光パターン、昼間用配光パターン、夜間用配光パターン、信号待ち用配光パターンなどなどがある。
【0044】
前記の配光パターンのデジタルデータは、前記の種々の配光パターンを組み合わせたデジタルデータである。たとえば、「1.一般道路・直線・走行用配光データ」、「2.一般道路・直線・すれ違い用配光データ」、「3.市街地・直線・すれ違い用配光データ」、「4.高速道路・直線・すれ違い用配光データ」、「5.高速道路・カーブ・すれ違い用配光データ」、「6.高速道路・直線・走行用配光データ」、「7.高速道路・カーブ・走行用配光データ」、「8.一般道路・カーブ・走行用配光データ」、「9.一般道路・カーブ・すれ違い用配光データ」、「10.一般道路・交差点用配光データ」、「11.市街地・直線・走行用配光データ」、「12.市街地・カーブ・すれ違い用配光データ」、「13.市街地・カーブ・走行用配光データ」、「14.市街地・交差点用配光データ」、「15.昼間用配光データ」、「16.夜間用配光データ」、「17.信号待ち用配光データ」などなどである。
【0045】
「配光パターンのデジタルデータの説明」
前記の配光データ、すなわち、配光パターンのデジタルデータおよび調光用のデジタルデータについて説明する。前記配光パターンのデジタルデータおよび調光用のデジタルデータは、車両の照明装置の配光設計においてコンピュータシミュレーション手法により作成され、複数の光度諧調が得られる2進数の複数ビットのデジタルデータである。なお、前記の配光データにより得られる配光パターンは、各規格を満足する配光パターンである。たとえば、図12(A)に示す昼間用配光パターン、図12(B)に示す夜間用配光パターン、図13(A)に示す一般道路用配光パターン、図13(B)に示す高速道路用配光パターンにおいて、格子模様の中央部のホットゾーンHZの光度(照度)は、最高高度(最高照度)であって、白色の周辺部の光度(照度)より高い。
【0046】
車両用の照明装置、たとえば、ヘッドランプ、フォグランプ、ベントランプ、カーブランプ、サイドランプなどは、交通安全上、法規や規格などで定められた所定の配光パターンで路面などを照明することが必要かつ重要である。このために、車両用の照明装置においては、各ランプごとにまた各機能ごとに所定の配光パターンが確実に得られるように、コンピュータを使用したシミュレーション手法により、配光設計が行われている。
【0047】
前記の配光設計は、所定の配光パターンを満足する理想の配光パターンに基づいて行われる。この理想の配光パターンは、実際に路面などを照明する配光パターンと一致するように、車両用の照明装置から10m前方のスクリーン上に照射されたパターンをコンピュータでデジタル的に作成されたものである。このコンピュータでデジタル的に作成された理想の配光パターンは、照度変化を色の分布により、人の目で見えるイメージで、たとえば、8ビット256階調のスケールで、デジタル的に表されている。
【0048】
ここで、前記スクリーンの大きさを、図2に示すように、上下垂直線VU−VDに対して左右両側にそれぞれ51.2°とし、かつ、左右水平線HL−HRに対して上下両側にそれぞれ38.4°とする。一方、前記スクリーンの0.1°×0.1°を1画素とした場合、前記スクリーンは、1024×768=786432画素となる。また、前記反射型デジタル光偏向装置2の極小ミラー素子25の個数を、1024×768=786432個とする。これにより、前記反射型デジタル光偏向装置2の極小ミラー素子25の1個と、前記スクリーンの1画素とは、それぞれ対応することとなる。
【0049】
この結果、1024×768=786432個の極小ミラー素子を1個ずつコントロールすることにより、配光パターンの786432個の画素を1個ずつ精細にコントロールすることができる。また、前記反射型デジタル光偏向装置2は、786432個の極小ミラー素子を1個ずつ、光の全白、全黒、中間の多数諧調(たとえば、8ビットの場合、256階調)の灰と、精細にコントロールすることができる。
【0050】
このように、この実施の形態1にかかる車両用デジタル照明装置は、理想の配光パターンのデジタルデータ、すなわち、786432個の画素の256階調のデジタルデータに基づいて、前記反射型デジタル光偏向装置2の786432個の極小ミラー素子を、1個ずつ256階調デジタルコントロールすることにより、理想の配光パターンをデジタル的に形成して照射し、路面などを照明することができる。すなわち、この発明にかかる車両用デジタル照明装置装置は、前記の理想の配光パターンのデジタルデータをそのまま使用して、理想の配光パターンをそのままデジタル的に形成して照射し、路面などを照明するものである。
【0051】
「周囲環境検知装置の説明」
前記周囲環境検知装置5は、車両の周囲環境を検知して検知信号として出力するものである。前記周囲環境検知装置5は、図9に示すように、車速を検知して車速信号を出力する車速センサーと、車両の周囲の情報を撮像して画像に基づく信号(画像信号)を出力する撮像装置と、GPSや地上局(電子基準点など)から出力された位置情報信号を受信するGPSレシーバー(たとえば、カーナビゲーション)と、車両の周囲の明るさを検知して照度信号を出力する照度センサーと、有料道路に入る際に交信信号を出力するETCと、その他の検知信号を出力するその他の検知装置とから構成されている。なお、その他の検知装置としては、たとえば、ハンドルの操舵角度およびまたは操舵速度を検知して操舵信号を出力する操舵センサー、雨を検知して雨信号を出力する雨滴センサー、ターンシグナルスイッチのON信号を検知してターン信号を出力するターンセンサー、ワイパースイッチのON信号を検知してワイパー信号を出力するワイパーセンサー、車両の周囲の対象物からの反射波を検知してレーダー信号を出力するレーダー、車両の周囲の湿度を検知して湿度信号を出力する湿度センサー、車両の周囲の温度を検知して温度信号を出力する温度センサー、ライトスイッチのON信号を検知してライト信号を出力するライトセンサー、車体の姿勢を検知して姿勢信号を出力する姿勢センサー、などなどがある。
【0052】
前記車速センサーは、車両の速さに応じてパルスが変化する車速信号を前記制御装置6に出力するものである。前記撮像装置は、画像処理回路(図示せず)を有し、車両の周囲の情報を撮像して画像信号を前記画像処理回路に出力し、前記画像処理回路が画像信号を処理して対向車・先行車の有無、霧の有無、交差点の有無、信号待ちか否かの判断、昼間・夜間の判断、一般道路・高速道路の判断、市街地・郊外の判断によりHIレベルの信号またはLOレベルの信号をそれぞれ前記制御装置6に出力するものである。前記照度センサーは、車両の周囲の明るさがある値以上のときにHIレベルの信号を、ある値以下のときにLOレベルの信号をそれぞれ前記制御装置6に出力するものである。また、前記操舵センサーは、ハンドル操舵に連動して回転する回転体に複数のスリットを等間隔で設け、前記回転体のスリットを挟んでフォトインタラプトなどのセンサーを設けたものであって、センサーの出力からハンドル角度を電気信号に変換してハンドルの回転方向・位置を検出して検出信号を前記制御装置6に出力するものである。前記雨滴センサーは、雨が降っているときにHIレベルの信号を、雨が降っていないときにLOレベルの信号をそれぞれ前記制御装置6に出力するものである。前記ターンセンサーは、ターンシグナルスイッチがONのときにHIレベルの信号を、ターンシグナルスイッチがOFFのときにLOレベルの信号をそれぞれ前記制御装置6に出力するものである。前記ワイパーセンサーは、ワイパースイッチがONのときにHIレベルの信号を、ワイパースイッチがOFFのときにLOレベルの信号をそれぞれ前記制御装置6に出力するものである。
【0053】
「制御装置の説明」
前記制御装置6は、図1に示すように、前記周囲環境検知装置5の検知信号などの外部信号を入力して処理信号として出力する外部信号入力装置60と、前記外部信号入力装置60の処理信号に基づいて車両の周囲環境を判断して判断信号として出力する周囲環境判断装置61と、前記周囲環境判断装置61の判断信号に基づいて前記記憶装置4に記憶されている複数の配光パターンのデジタルデータの中から車両の周囲環境に最適な配光パターンのデジタルデータを選択するデータ選択装置62と、前記データ選択装置62により選択された車両の周囲環境に最適な配光パターンのデジタルデータに基づいて前記多数個の極小ミラー素子25の切替スイッチングをデジタル的に個々に制御する制御信号を前記反射型デジタル光偏向装置2に出力する制御信号出力装置63と、を有するものである。
【0054】
前記制御装置6は、車両に搭載されているコンピュータを使用する。前記コンピュータとしては、たとえば、カーナビゲーション、カーオーディオ、携帯電話などをコントロール(制御)するコンピュータを使用する。また、前記制御装置6は、車両に搭載されていないコンピュータ、たとえば、携帯型パソコンなどを使用する場合であっても良い。この場合においては、携帯型パソコンにユーザー好みのデジタルデータを記憶させておけば、車両が変わっても、変わった車両に携帯型パソコンを接続することにより、ユーザー好みの配光パターンがいつでも得られることとなる。前記制御装置6は、一般のオペレーティングシステム(OS)で制御されるものである。このように、前記制御装置6は、前記反射型デジタル光偏向装置2と別個の構成となる。
【0055】
図1に示すように、前記制御装置6(コンピュータ)には、中央演算処理装置・CPU66が実装されている。前記中央演算処理装置・CPU66は、前記周囲環境判断装置61と前記データ選択装置62とから構成されている。また、前記中央演算処理装置・CPU66には、図示されていないが、制御プログラムが格納された主記憶装置とバッファ記憶装置とが実装されている。
【0056】
前記制御装置6の外部信号入力装置60としては、たとえば、インターフェイス回路である。また、前記制御装置6の制御信号出力装置63としては、たとえば、ドライバー回路である。
【0057】
「周環境判断装置の説明」
前記周囲環境判断装置61は、図9に示すように、前記周囲環境検知装置5の撮像装置の車両の周囲の情報を撮像して出力された画像信号から対向車・先行車の有無を判断して対向車・先行車有り信号または対向車・先行車無し信号を出力する対向車・先行車判断部と、前記周囲環境検知装置5の撮像装置の車両の周囲の情報(たとえば、路面上に引かれた白線や中央分離帯など)を撮像して出力された画像信号、前記周囲環境検知装置5の車速センサーの車速を検知して出力された車速信号、前記周囲環境検知装置5のGPSや地上局(電子基準点など)から出力されてGPSレシーバー(たとえば、カーナビゲーション)で受信された位置情報信号(この明細書において、GPSなどから出力された位置情報信号と称する)、前記周囲環境検知装置5のETCから出力された交信信号、のうち少なくとも1つの信号から高速道路・一般道路を判断して高速道路信号または一般道路信号を出力する高速道路・一般道路判断部と、前記周囲環境検知装置5の撮像装置の車両の周囲の情報を撮像して出力された画像信号、前記周囲環境検知装置5の照度センサーの車両の周囲の明るさを検知して出力された照度信号、前記周囲環境検知装置5のGPSなどから出力された位置情報信号、のうち少なくとも1つの信号から市街地であるか否かを判断して市街地である信号または市街地でない信号(たとえば、郊外である信号)を出力する市街地判断部と、前記周囲環境検知装置5の撮像装置の車両の周囲の情報(たとえば、路面に引かれた交差点の白線など)を撮像して出力された画像信号、前記周囲環境検知装置5のターンセンサーのターンシグナルスイッチのON信号を検知して出力されたターン信号、前記周囲環境検知装置5のGPSなどから出力された位置情報信号、のうち少なくとも1つの信号から交差点であるか否かを判断して交差点である信号または交差点でない信号を出力する交差点判断部と、前記周囲環境検知装置5の操舵センサーのハンドルの操舵角度およびまたは操舵速度を検知して出力された操舵信号および前記周囲環境検知装置5の車速センサーの車速を検知して出力された車速信号、前記周囲環境検知装置5のGPSなどから出力された位置情報信号、前記周囲環境検知装置5の撮像装置の車両の周囲の情報(たとえば、路面に引かれた曲線状の白線など)を撮像して出力された画像信号、のうち少なくとも1つの信号から道路線形の直線・カーブを判断して直線信号またはカーブ信号を出力する直線・カーブ判断部と、前記周囲環境検知装置5の雨滴センサーの雨を検知して出力された雨信号および前記周囲環境検知装置5のワイパーセンサーのワイパースイッチのON信号を検出して出力されたワイパー信号、前記周囲環境検知装置5の撮像装置の車両の周囲の情報(たとえば、路面の雨の濡れ具合による反射率など)を撮像して出力された画像信号、のうち少なくとも1つの信号から雨であるか否かを判断して雨である信号または雨でない信号を出力する雨判断部と、前記周囲環境検知装置5の撮像装置の車両の周囲の情報を撮像して出力された画像信号、前記周囲環境検知装置5のレーダーの車両の周囲の対象物からの反射波を検知して出力されたレーダー信号、前記周囲環境検知装置5の湿度センサーの車両の周囲の湿度を検知して出力された湿度信号および前記周囲環境検知装置5の温度センサーの車両の周囲の温度を検知して出力された温度信号、のうち少なくとも1つの信号から霧であるか否かを判断して霧である信号または霧でない信号を出力する霧判断部と、前記周囲環境検知装置5の撮像装置の車両の周囲の情報を撮像して出力された画像信号、前記周囲環境検知装置5のワイパーセンサーのワイパースイッチのON信号を検出して出力されたワイパー信号および前記周囲環境検知装置5の温度センサーの車両の周囲の温度を検知して出力された温度信号、のうち少なくとも1つの信号から雪であるか否かを判断して雪である信号または雪でない信号を出力する雪判断部と、前記周囲環境検知装置5の姿勢センサーの車体の姿勢を検知して出力された姿勢信号から車体の姿勢の変化を判断して車体の姿勢の変化量に応じた姿勢変化信号を出力する姿勢判断部と、前記周囲環境検知装置5の車速センサーの車速を検知して出力された車速信号と、前記周囲環境検知装置5のGPSなどから出力された位置情報信号またはおよび前記周囲環境検知装置5の撮像装置の車両の周囲の情報を撮像して出力された画像信号とから信号待ちであるか否かを判断して信号待ちである信号または信号待ちでない信号を出力する信号待ち判断部と、などなどのうち少なくとも1つから構成されている。このように、前記周囲環境判断装置61は、1個の判断部、または、複数個の判断部から組み合わされている。なお、前記周囲環境検知装置5の撮像装置が車両の周囲の情報として撮像する路面に引かれた白線などは、道路交通法に規定されているので、高品質の情報として利用することができる。
【0058】
「データ選択装置の説明」
前記データ選択装置62は、図9に示すように、前記周囲環境判断装置61の信号待ち判断部、昼間・夜間判断部、一般道路・高速道路判断部、市街地・郊外判断部、その他の判断部からの判断信号に基づいて、前記記憶装置4に記憶されている複数の配光パターンのデジタルデータおよび複数の調光用のデジタルデータの中から車両の周囲環境に最適な配光パターンのデジタルデータを選択するものである。また、前記データ選択装置62は、主データ選択部と、前記周囲環境判断装置61の信号待ち判断部からの判断信号に基づいて、信号待ち用のデジタルデータを前記主データ選択部の選択を中止させて割り込んで選択する割り込みデータ選択部と、を有する。
【0059】
(実施の形態1の作用の説明)
この実施の形態1にかかる車両用デジタル照明装置は、以上のごとき構成からなり、以下、その作用について図10〜図13を参照して説明する。
【0060】
まず、周囲環境検知装置5が車両の周囲の環境、たとえば、車両が走行している地区状況や道路状況また天候状況などを検知し、その検知信号を制御装置6に出力する(S1)。検知信号が制御装置6に入力されると、外部信号入力装置60のインターフェイス回路が、前記周囲環境検知装置5の各検知信号などの外部信号を入力し、制御装置6で扱える信号に処理し、その処理信号を周囲環境判断装置61に出力する(S2)。処理信号が周囲環境判断装置61に入力されると、周囲環境判断装置61が、前記外部信号入力装置60の処理信号に基づいて車両の周囲環境を判断し、その判断信号をデータ選択装置62に出力する(S3)。
【0061】
前記周囲環境判断装置61は、下記の第1判断ステップから第11判断ステップまでを実行する。すなわち、信号待ち判断部が、周囲環境検知装置5の車速センサーの車速を検知して出力された車速信号と、周囲環境検知装置5のGPSなどから出力された位置情報信号またはおよび周囲環境検知装置5の撮像装置の車両の周囲の情報を撮像して出力された画像信号とから信号待ちであるか否かを判断して信号待ちである信号または信号待ちでない信号を出力する第1判断ステップ。昼間・夜間判断部が、周囲環境検知装置5の照度センサーの車両の周囲の明るさを検知して出力された照度信号、周囲環境検知装置5の撮像装置の車両の周囲の情報を撮像して出力された画像信号、のうち少なくとも1つの信号から昼間・夜間を判断して昼間信号または夜間信号を出力する第2判断ステップ。一般道路・高速道路判断部、周囲環境検知装置5の撮像装置の車両の周囲の情報を撮像して出力された画像信号、周囲環境検知装置5の車速センサーの車速を検知して出力された車速信号、周囲環境検知装置5のGPSなどから出力された位置情報信号、周囲環境検知装置5のETCから出力された交信信号、のうち少なくとも1つの信号から一般道路・高速道路を判断して一般道路信号または高速道路信号を出力する第3判断ステップ。市街地・郊外判断部が、周囲環境検知装置5の撮像装置の車両の周囲の情報を撮像して出力された画像信号、周囲環境検知装置5の照度センサーの車両の周囲の明るさを検知して出力された照度信号、周囲環境検知装置5のGPSなどから出力された位置情報信号、のうち少なくとも1つの信号から市街地であるか否かを判断して市街地である信号または郊外である信号を出力する第4判断ステップ。その他の判断部としての対向車・先行車判断部が、周囲環境検知装置5の撮像装置の車両の周囲の情報を撮像して出力された画像信号から対向車・先行車の有無を判断して対向車・先行車有り信号または対向車・先行車無し信号を出力する第5判断ステップ。その他の判断部としての交差点判断部、周囲環境検知装置5の撮像装置の車両の周囲の情報を撮像して出力された画像信号、周囲環境検知装置5のターンセンサーのターンシグナルスイッチのON信号を検知して出力されたターン信号、周囲環境検知装置5のGPSなどから出力された位置情報信号、のうち少なくとも1つの信号から交差点であるか否かを判断して交差点である信号または交差点でない信号を出力する第6判断ステップ。その他の判断部としての直線・カーブ判断部が、周囲環境検知装置5の操舵センサーのハンドルの操舵角度およびまたは操舵速度を検知して出力された操舵信号および周囲環境検知装置5の車速センサーの車速を検知して出力された車速信号、周囲環境検知装置5のGPSなどから出力された位置情報信号、のうち少なくとも1つの信号から道路線形の直線・カーブを判断して直線信号またはカーブ信号を出力する第7判断ステップ。その他の判断部としての雨判断部が、周囲環境検知装置5の雨滴センサーの雨を検知して出力された雨信号および周囲環境検知装置5のワイパーセンサーのワイパースイッチのON信号を検出して出力されたワイパー信号から雨であるか否かを判断して雨である信号または雨でない信号を出力する第8判断ステップ。その他の判断部としての霧判断部が、周囲環境検知装置5の撮像装置の車両の周囲の情報を撮像して出力された画像信号、周囲環境検知装置5のレーダーの車両の周囲の対象物からの反射波を検知して出力されたレーダー信号、周囲環境検知装置5の湿度センサーの車両の周囲の湿度を検知して出力された湿度信号および周囲環境検知装置5の温度センサーの車両の周囲の温度を検知して出力された温度信号、のうち少なくとも1つの信号から霧であるか否かを判断して霧である信号または霧でない信号を出力する第9判断ステップ。その他の判断部としての雪判断部が、周囲環境検知装置5の撮像装置の車両の周囲の情報を撮像して出力された画像信号、周囲環境検知装置5のワイパーセンサーのワイパースイッチのON信号を検出して出力されたワイパー信号および周囲環境検知装置5の温度センサーの車両の周囲の温度を検知して出力された温度信号、のうち少なくとも1つの信号から雪であるか否かを判断して雪である信号または雪でない信号を出力する第10判断ステップ。その他の判断部としての姿勢判断部が、周囲環境検知装置5の姿勢センサーの車体の姿勢を検知して出力された姿勢信号から車体の姿勢の変化を判断して車体の姿勢の変化量に応じた姿勢変化信号を出力する第11判断ステップなどなどである。なお、前記周囲環境判断装置61のその他の判断部が実行する判断ステップは、前記第5判断ステップから前記第11判断ステップのうち少なくとも1つから構成されているものであっても良いし、他の判断ステップから構成されているものであっても良い。
【0062】
前記判断信号がデータ選択装置62に入力されると、図10に戻って、データ選択装置62が、周囲環境判断手段5の各判断部の判断信号に基づいて記憶装置4に記憶されている複数の配光パターンのデジタルデータおよび複数の調光用のデジタルデータの中から車両の周囲環境に最適な配光パターンのデジタルデータを選択する(S4)。データ選択装置62の主データ選択部が、周囲環境判断装置61の昼間・夜間判断部、一般道路・高速道路判断部、市街地・郊外判断部、その他の判断部からの判断信号に基づいて、記憶装置4に記憶されている複数の配光パターンのデジタルデータおよび複数の調光用のデジタルデータの中から車両の周囲環境に最適な配光パターンのデジタルデータおよび調光用のデジタルデータを選択する。
【0063】
たとえば、高速道路・一般道路判断部が一般道路と判断し、直線・カーブ判断部が直線と判断し、対向車・先行車判断部が対向車・先行車無しと判断すると、主データ選択部は、「1.一般道路・直線・走行用配光データ」を選択する。高速道路・一般道路判断部が一般道路と判断し、直線・カーブ判断部が直線と判断し、対向車・先行車判断部が対向車・先行車有りと判断すると、主データ選択部は、「2.一般道路・直線・すれ違い用配光データ」を選択する。市街地判断部が市街地であると判断し、直線・カーブ判断部が直線と判断し、対向車・先行車判断部が対向車・先行車有りと判断すると、主データ選択部は、「3.市街地・直線・すれ違い用配光データ」を選択する。高速道路・一般道路判断部が高速道路と判断し、直線・カーブ判断部が直線と判断し、対向車・先行車判断部が対向車・先行車有りと判断すると、主データ選択部は、「4.高速道路・直線・すれ違い用配光データ」を選択する。高速道路・一般道路判断部が高速道路と判断し、直線・カーブ判断部がカーブと判断し、対向車・先行車判断部が対向車・先行車有りと判断すると、主データ選択部は、「5.高速道路・カーブ・すれ違い用配光データ」を選択する。高速道路・一般道路判断部が高速道路と判断し、直線・カーブ判断部が直線と判断し、対向車・先行車判断部が対向車・先行車無しと判断すると、主データ選択部は、「6.高速道路・直線・走行用配光データ」を選択する。高速道路・一般道路判断部が高速道路と判断し、直線・カーブ判断部がカーブと判断し、対向車・先行車判断部が対向車・先行車無しと判断すると、主データ選択部は、「7.高速道路・カーブ・走行用配光データ」を選択する。
高速道路・一般道路判断部が一般道路と判断し、直線・カーブ判断部がカーブと判断し、対向車・先行車判断部が対向車・先行車無しと判断すると、主データ選択部は、「8.一般道路・カーブ・走行用配光データ」を選択する。高速道路・一般道路判断部が一般道路と判断し、直線・カーブ判断部がカーブと判断し、対向車・先行車判断部が対向車・先行車有りと判断すると、主データ選択部は、「9.一般道路・カーブ・すれ違い用配光データ」を選択する。高速道路・一般道路判断部が一般道路と判断し、交差点判断部が交差点であると判断すると、主データ選択部は、「10.一般道路・交差点用配光データ」を選択する。市街地判断部が市街地であると判断し、直線・カーブ判断部が直線と判断し、対向車・先行車判断部が対向車・先行車無しと判断すると、主データ選択部は、「11.市街地・直線・走行用配光データ」を選択する。市街地判断部が市街地であると判断し、直線・カーブ判断部がカーブと判断し、対向車・先行車判断部が対向車・先行車有りと判断すると、主データ選択部は、「12.市街地・カーブ・すれ違い用配光データ」を選択する。市街地判断部が市街地であると判断し、直線・カーブ判断部がカーブと判断し、対向車・先行車判断部が対向車・先行車無しと判断すると、主データ選択部は、「13.市街地・カーブ・走行用配光データ」を選択する。市街地判断部が市街地であると判断し、交差点判断部が交差点であると判断すると、主データ選択部は、「14.市街地・交差点用配光データ」を選択する。昼間・夜間判断部が昼間と判断すると、主データ選択部は、「15.昼間用配光データ」を選択する。昼間・夜間判断部が夜間と判断すると、主データ選択部は、「16.夜間用配光データ」を選択する。なお、前記主データ選択部が選択する配光データは、前記「1.一般道路・直線・走行用配光データ」から前記「14.市街地・交差点用配光データ」まで以外に、前記主データ選択部の選択の組み合わせにより、種々の配光データがある。
【0064】
ここで、データ選択装置62の主データ選択部により選択された配光データおよび調光用データで路面などを照明しているときに、周囲環境判断装置61の信号待ち判断部が信号待ちであると判断する。すると、データ選択装置62の割り込みデータ選択部が信号待ち判断部からの判断信号に基づいて記憶装置4に記憶されている複数の調光用のデジタルデータの中から信号待ちのデジタルデータを、主データ選択部の選択を中止させて割り込んで選択する。すなわち、主データ選択部によるメインルーチンに対して、割り込みデータ選択部による割り込みルーチンが成立することとなる。なお、この割り込みルーチンが完了した後には、メインルーチンに戻る。
【0065】
データ選択装置62が周囲環境判断装置61の判断に基づいて車両の周囲環境に最適な配光パターンのデジタルデータを選択すると、図10に戻って、制御信号出力装置63のドライバー回路が、データ選択装置62により選択された車両の周囲環境に最適な配光パターンのデジタルデータに基づいて多数個の極小ミラー素子25の切替スイッチングをデジタル的に個々に制御する制御信号を反射型デジタル光偏向装置2に出力する(S5)。
【0066】
そして、制御装置6から制御信号が反射型デジタル光偏向装置2に出力されると、反射型デジタル光偏向装置2は、制御信号、すなわち、車両の周囲環境に最適な配光パターンのデジタルデータおよび調光用のデジタルデータに基づいて、多数個の極小ミラー素子25のON、OFFのスイッチングを制御する。これにより、この実施の形態1にかかる車両用デジタル照明装置は、車両の周囲環境に最適な所定の配光パターンおよび調光された配光パターンPを自動的に選択してこの選択された車両の周囲環境に最適な所定の配光パターンおよび調光された配光パターンPで路面などを照明することができる。
【0067】
以下、調光用のデジタルデータにより、所定の配光パターンの光度(照度)を減少またはおよび増加させる調光の制御について説明する。この例における調光の制御は、2進法パルス幅変調により、反射型デジタル光偏向装置2のONのパルス幅のデュティ比あるいはOFFのパルス幅のデュティ比を時間軸に対して減少またはおよび増加させるものである。
【0068】
まず、信号待ちの調光の制御について図11を参照して説明する。所定の配光パターンで路面などを照明している車両が「赤」の信号で停車した時点で、信号待ちの調光の制御が開始する。この信号待ち開始の時点から所定の減光時間、たとえば、0.数秒から数秒までの間において、所定の配光パターンの光度(照度)を0まで減少させる。この減光時間においては、2進法パルス幅変調により、反射型デジタル光偏向装置2のONのパルス幅のデュティ比を時間軸に対して0%まで1〜2秒徐々に減少させ、または、OFFのパルス幅のデュティ比を時間軸に対して100%まで瞬時に増加させるように、調光の制御が行われる。また、「青」の信号で車両が発進した時点、すなわち、信号待ち終了の時点から所定の増光時間、たとえば、瞬時において、所定の配光パターンの光度(照度)を0から元の状態まで増加させる。この増光時間においては、2進法パルス幅変調により、反射型デジタル光偏向装置2のONのパルス幅のデュティ比を時間軸に対して所定値まで増加させ、または、OFFのパルス幅のデュティ比を時間軸に対して所定値まで減少させるように、調光の制御が行われる。この信号待ちの制御は、割り込みルーチンにより、メインルーチンに対して割り込んで行われ、完了すると、メインルーチンに戻る。
【0069】
このように、この信号待ちの調光の制御は、放電灯10の出力を変えずに、信号待ちの間において、所定の配光パターンの光度を所定値(たとえば、0もしくは0に近づけた値、または、走行時の光度に対して減少させて、対向車や先行車のドライバー、歩行者などにグレアを与えない程度の値)にすることができ、また、信号待ちが終了すると、所定の配光パターンの光度を元の状態に戻すことができるので、放電灯10の耐久性を確実に向上させることができる。しかも、信号待ちの間において、対向車や歩行者に対してグレアを与えることがなく、交通安全上好ましい。
【0070】
つぎに、昼間・夜間の調光の制御について図12を参照して説明する。昼間において、図12(B)に示す夜間の所定の配光パターンの光度(照度)を所定値、たとえば、40%まで減少させる。この減光においては、2進法パルス幅変調により、反射型デジタル光偏向装置2のONのパルス幅のデュティ比を図12(D)に示す100%に対して図12(C)に示す40%まで減少させるように、調光の制御が行われる。また、夜間において、図12(A)に示す昼間の所定の配光パターンの光度(照度)を所定値、たとえば、100%まで増加させる。この増光においては、2進法パルス幅変調により、反射型デジタル光偏向装置2のONのパルス幅のデュティ比を図12(C)に示す40%に対して図12(D)に示す100%まで増加させるように、調光の制御が行われる。
【0071】
このように、昼間・夜間の調光の制御は、放電灯10の出力を変えずに、昼間時において、図12(B)に示す夜間の所定の配光パターンの光度(照度)を減少させて図12(A)に示す昼間専用の所定の配光パターンを得ることができ、また、夜間時において、図12(A)に示す昼間の所定の配光パターンの光度(照度)を増加させて図12(B)に示す夜間専用の所定の配光パターンを得ることができるので、放電灯10の耐久性を確実に向上させることができる。しかも、昼間専用の所定の配光パターン、すなわち、DRL(デイタイムランニングランプ)用の配光パターンが得られることにより、昼間において、自車両の存在を他車両のドライバーや歩行者に視認させることができるので、交通安全上好ましい。
【0072】
それから、一般道路・高速道路の調光の制御について図13を参照して説明する。高速道路の走行時において、図13(A)に示す一般道路の所定の配光パターンの光度(照度)を所定値、たとえば、100%まで増加させる。この増光においては、2進法パルス幅変調により、反射型デジタル光偏向装置2のONのパルス幅のデュティ比を図13(C)に示す80%に対して図13(D)に示す100%まで増加させるように、調光の制御が行われる。この増光された高速道路の走行時の配光パターンは、たとえば、すれ違い用の配光パターンであって、ホットゾーンHZの最高光度(最高照度)が一般道路の走行時の配光パターンのホットゾーンHZの最高高度(最高照度)に対して1.5倍で、かつ、75m先のポイントにある。また、一般道路の走行時において、図13(B)に示す高速道路の所定の配光パターンの光度(照度)を所定値、たとえば、80%まで減少させる。この減光においては、2進法パルス幅変調により、反射型デジタル光偏向装置2のONのパルス幅のデュティ比を図13(D)に示す100%に対して図13(C)に示す80%まで減少させるように、調光の制御が行われる。なお、市街地・郊外の調光の制御は、前記の一般道路・高速道路の調光の制御とほぼ同様である。
【0073】
このように、一般道路・高速道路の調光の制御は、放電灯10の出力を変えずに、高速道路の走行時において、一般道路の所定の配光パターンの光度を増光させて高速道路の所定の配光パターンを得ることができ、また、一般道路の走行時において、高速道路の所定の配光パターンの光度を減光させて一般道路の所定の配光パターンを得ることができので、放電灯10の耐久性を確実に向上させることができる。しかも、高速道路専用の所定の配光パターン、また、一般道路専用の所定の配光パターンが得られるので、所定の配光パターンをきめ細かく制御することができ、交通安全上好ましい。
【0074】
(実施の形態1の効果の説明)
この実施の形態1にかかる車両用デジタル照明装置は、以上のごとき構成からなり、以下、その効果について説明する。
【0075】
この実施の形態1にかかる車両用デジタル照明装置は、放電灯10の出力を増減することなく、調光用のデジタルデータに基づいて反射型デジタル光偏向装置2を制御して所定の配光パターンの光度を減少またはおよび増加させることができるので、放電灯10の耐久性が向上される。また、この実施の形態1にかかる車両用デジタル照明装置は、車両の周囲の状況や道路状況などに応じて所定の配光パターンの光度を増減させることができるので、車両の周囲の状況や道路状況などに応じた光度が得られることとなり、交通安全上好ましい。
【0076】
また、この実施の形態1にかかる車両用デジタル照明装置は、車両の周囲環境に最適な所定の配光パターンとその配光パターンの光度とを自動的に選択し、この選択された車両の周囲環境に最適な所定の配光パターンとその配光パターンの光度で路面などを常時照明することができるので、交通安全上好ましい。
【0077】
また、この実施の形態1にかかる車両用デジタル照明装置は、2進法パルス幅変調により、ONのパルス幅のデュティ比あるいはOFFのパルス幅のデュティ比を減少またはおよび増加させるので、所定の配光パターンの光度を確実にかつ滑らかに減少またはおよび増加させることができる。
【0078】
(実施の形態2の説明)
図14は、この発明にかかる車両用デジタル照明装置の実施の形態2を示す。
図中、図1〜図13と同符号は、同一のものを示す。
【0079】
前記の実施の形態1にかかる車両用デジタル照明装置が、車両の周囲環境に最適な所定の配光パターンおよび調光された配光パターンPを自動的に選択してその選択された所定の配光パターンおよび調光された配光パターンPで路面などを照明するものに対して、この実施の形態2にかかる車両用デジタル照明装置は、所定の配光パターンおよび調光された配光パターンPを選択してその選択された所定の配光パターンおよび調光された配光パターンPで路面などを照明するものである。
【0080】
すなわち、前記の実施の形態1にかかる車両用デジタル照明装置が、周囲環境検知装置5および周囲環境判断装置61などにより車両の周囲環境に最適な所定の配光パターンおよび調光された配光パターンPを自動的に選択するものに対して、この実施の形態2にかかる車両用デジタル照明装置は、配光パターン選択装置7によりドライバーが所定の配光パターンおよび調光された配光パターンPを選択するものである。
【0081】
前記配光パターン選択装置7は、制御装置6の外部信号入力信号装置60に接続されており、前記外部信号入力装置60は、中央演算処理装置・CPU66のデータ選択装置62に接続されている。前記配光パターン選択装置7は、ドライバーが路面などを照明する配光パターンおよび調光された配光パターンPを選択し、その選択に基づいた選択信号を制御装置6の外部信号入力信号装置60に出力するものである。
【0082】
この実施の形態2にかかる車両用デジタル照明装置は、以上のごとき構成からなり、以下、その作用効果について説明する。
【0083】
まず、ドライバーが、配光パターン選択装置7で路面などを照明する配光パターンおよび調光された配光パターンPを選択する。すると、配光パターン選択装置7が、ドライバーの選択に基づいた選択信号を外部信号入力装置60に出力する。この外部信号入力装置60のインターフェイス回路が、前記配光パターン選択装置7からの選択信号などの外部信号を入力し、制御装置6で扱える信号に処理し、その処理信号をデータ選択装置62に出力する。
【0084】
つぎに、データ選択装置62が、外部信号入力装置60を介した配光パターン選択装置7からの選択信号に基づいて記憶装置4に記憶されている複数の配光パターンのデジタルデータおよび調光用のデジタルデータの中からドライバーが選択した配光パターンのデジタルデータおよび調光用のデジタルデータを選択する。
【0085】
それから、制御信号出力装置63のドライバー回路が、データ選択装置62により選択された配光パターンのデジタルデータおよび調光用のデジタルデータに基づいて多数個の極小ミラー素子25の切替スイッチングをデジタル的に個々に制御する制御信号を反射型デジタル光偏向装置2に出力する。
【0086】
そして、制御装置6から制御信号が反射型デジタル光偏向装置2に出力されると、反射型デジタル光偏向装置2は、制御信号、すなわち、ドライバーが選択した配光パターンのデジタルデータおよび調光用のデジタルデータに基づいて、多数個の極小ミラー素子25のON、OFFのスイッチングを制御する。これにより、この実施の形態2にかかる車両用デジタル照明装置は、ドライバーが選択した配光パターンおよび調光された配光パターンPで路面などを照明することができる。たとえば、ドライバーが、一般道路・直線・走行用の配光パターンを配光パターン選択装置7で選択する。すると、データ選択装置62が記憶装置4から「1.一般道路・直線・走行用配光データ」を選択し、この「1.一般道路・直線・走行用配光データ」に基づいて、反射型デジタル光偏向装置2が制御されて、ドライバーが選択した一般道路・直線・走行用の配光パターンで路面などを照明することができる。
【0087】
このように、この実施の形態2にかかる車両用デジタル照明装置は、前記の実施の形態1にかかる車両用デジタル照明装置とほぼ同様に、放電灯10の出力を増減することなく、調光用のデジタルデータに基づいて反射型デジタル光偏向装置2を制御して所定の配光パターンの光度を減少またはおよび増加させることができるので、放電灯10の耐久性が向上される。また、この実施の形態2にかかる車両用デジタル照明装置は、車両の周囲の状況や道路状況などに応じて所定の配光パターンの光度を増減させることができるので、車両の周囲の状況や道路状況などに応じた光度が得られることとなり、交通安全上好ましい。
【0088】
特に、この実施の形態2にかかる車両用デジタル照明装置は、前記の実施の形態1にかかる車両用デジタル照明装置の周囲環境検知装置5および周環境判断装置61の作用を、ドライバーが代わって行うものであるから、周囲環境検知装置5および周環境判断装置61が不要であり、その分、製造コストが安価となる。
【0089】
なお、この発明にかかる配光パターンは、AFS(Adaptive Front lighting System、または、Advanced Front lighting System)のロジックをそのまま使用する。
【0090】
(実施の形態以外の例の説明)
なお、前記実施の形態においては、ヘッドランプについて説明したが、この発明は、その他のランプ、たとえば、フォグランプ、ターンシグナルランプ、ブレーキランプ(特に、急ブレーキ対応型で、急ブレーキを後続車に知らせるためのブレーキのフラッシュランプ)など、または、それらの組み合わせのランプであっても良い。
【0091】
また、前記実施の形態においては、車両用デジタル照明装置が車両の左右にそれぞれ搭載されている場合、左右の配光パターンはそれぞれ異なるが、左右の配光パターンをトータルすることにより、所定の配光パターンが得られるように、配光データは構成されている。
【0092】
また、前記実施の形態においては、反射型デジタル光偏向装置2の極小ミラー素子25のアスペクト比が、720×480、または、800×600、または、1024×768、または、1280×1024であるが、この発明は、車両用の配光パターンに適したアスペクト比としても良い。
【0093】
また、前記実施の形態においては、光学エンジン1の光源として放電灯2を使用したものであるが、この発明においては、放電灯2以外の光源、たとえば、白熱灯、ハロゲンランプ、タングステンランプ、LED、赤外LEDなどを使用しても良い。しかも、光源は、1個でなく、複数個使用しても良い。
【0094】
また、前記実施の形態において、光学エンジン1と反射型デジタル光偏向装置2とのレイアウトは、図2以外のレイアウトでも良い。たとえば、トラックなどの場合には、横長のフラットなレイアウトとし、また、軽自動車の場合には、縦長の筒型のレイアウトとする。すなわち、最終的に反射型デジタル光偏向装置2から反射される反射光L4がデジタル的に制御されているので、光学エンジン1から反射型デジタル光偏向装置2までの中間の光のアナログ的なずれは、無視できる。このために、光学エンジン1を車体スペックに合わせて、縦、横、上、下、斜め、などのレイアウトを取ることができ、また、冷却効果のあるエアダクト付近にレイアウトしても良い。
【0095】
また、前記の実施の形態においては、光学エンジン1のリフレクタ11と反射型デジタル光偏向装置2との間にコリメータレンズ12を介在させてものであるが、この発明においては、リフレクタ11からの反射光を反射型デジタル光偏向装置2に直接入射させても良い。この場合、レンズによる色の収差むらや光むらがないなどの効果が得られる。
【0096】
また、前記の実施の形態においては、記憶装置として、コンピュータに内蔵された内部記憶装置(ハードディスクなどの磁気ディスク、または、RAM、ROMなどの半導体記憶手段)、または、コンピュータに対して外付けの外部記憶装置(CD−ROMなどの光学系記憶媒体、記憶カードなどの半導体系記憶媒体)を使用するものである。ここで、記憶カードなどの半導体系記憶媒体(以下、記憶媒体と称する)を使用する場合は、記憶媒体に記憶されているデータ(配光パターンのデジタルデータ、調光用のデジタルデータ)を読み取るための読取装置を外部信号入力装置60に接続する。また、制御装置6の中央演算処理装置・CPU66に実装されているバッファ記憶装置を外部信号入力装置60とデータ選択装置62に接続する。これにより、記憶媒体に記憶されているデータを読取装置および外部信号入力装置60を介してバッファ記憶装置に読み込まれて記憶されることとなる。
【0097】
【発明の効果】
以上から明らかなように、この発明にかかる車両用デジタル照明装置(請求項1)によれば、光源の出力を増減することなく、調光用のデジタルデータに基づいて反射型デジタル光偏向装置を制御して所定の配光パターンの光度を減少またはおよび増加させることができるので、光源の耐久性が向上される。また、この発明にかかる車両用デジタル照明装置(請求項1)によれば、車両の周囲の状況や道路状況などに応じて所定の配光パターンの光度を増減させることができるので、車両の周囲の状況や道路状況などに応じた光度が得られることとなり、交通安全上好ましい。
【0098】
また、この発明にかかる車両用デジタル照明装置(請求項2)によれば、ドライバーが配光パターン・調光選択装置を介して所定の配光パターンのデジタルデータと調光用のデジタルデータを選択するので、その分、装置の構造が簡単となり、製造コストが安価となる。
【0099】
また、この発明にかかる車両用デジタル照明装置(請求項3)によれば、車両の周囲環境に最適な所定の配光パターンとその配光パターンの光度とを自動的に選択し、この選択された車両の周囲環境に最適な所定の配光パターンとその配光パターンの光度で路面などを常時照明することができるので、交通安全上好ましい。
【0100】
また、この発明にかかる車両用デジタル照明装置(請求項4)によれば、2進法パルス幅変調により、ONのパルス幅のデュティ比あるいはOFFのパルス幅のデュティ比を減少またはおよび増加させるので、所定の配光パターンの光度を確実にかつ滑らかに減少またはおよび増加させることができる。
【0101】
また、この発明にかかる車両用デジタル照明装置(請求項5)によれば、光源の出力を変えずに、信号待ちの間において、所定の配光パターンの光度を所定値にすることができ、また、信号待ちが終了すると、所定の配光パターンの光度を元の状態に戻すことができるので、光源の耐久性を確実に向上させることができる。しかも、信号待ちの間において、対向車や歩行者に対してグレアを与えることがなく、交通安全上好ましい。
【0102】
また、この発明にかかる車両用デジタル照明装置(請求項6)によれば、光源の出力を変えずに、昼間時において、夜間の所定の配光パターンの光度を減少させて昼間専用の所定の配光パターンを得ることができ、また、夜間時において、昼間の所定の配光パターンの光度を増加させて夜間専用の所定の配光パターンを得ることができるので、光源の耐久性を確実に向上させることができる。しかも、昼間専用の所定の配光パターン、すなわち、DRL(デイタイムランニングランプ)用の配光パターンが得られることにより、昼間において、自車両の存在を他車両のドライバーや歩行者に視認させることができるので、交通安全上好ましい。
【0103】
また、この発明にかかる車両用デジタル照明装置(請求項7)によれば、光源の出力を変えずに、高速道路や郊外の走行時において、一般道路や市街地の所定の配光パターンの光度を増光させて高速道路や郊外の所定の配光パターンを得ることができ、また、一般道路や市街地の走行時において、高速道路や郊外の所定の配光パターンの光度を減光させて一般道路や市街地の所定の配光パターンを得ることができので、光源の耐久性を確実に向上させることができる。しかも、高速道路や郊外専用の所定の配光パターン、また、一般道路や市街地専用の所定の配光パターンが得られるので、所定の配光パターンをきめ細かく制御することができ、交通安全上好ましい。
【図面の簡単な説明】
【図1】この発明にかかる車両用デジタル照明装置の実施の形態1を示す全体構成の機能ブロック図である。
【図2】(A)は、同じく、光学エンジンおよび光照射装置を示す説明図、(B)は(A)におけるB−B線矢視の光度分布を示す説明図、(C)は、同じく、(B)におけるC−C線矢視の高度分布を示す説明図である。
【図3】同じく、反射型デジタル光偏向装置を示す斜視図である。
【図4】同じく、反射型デジタル光偏向装置の構成を示す一部拡大斜視図である。
【図5】同じく、反射型デジタル光偏向装置の構成を示す一部拡大分解斜視図である。
【図6】同じく、反射型デジタル光偏向装置の作用を示す説明図である。
【図7】(A)は、同じく、反射型デジタル光偏向装置のピクセルの位置を示す説明図、(B)は、同じく、反射型デジタル光偏向装置のピクセルの制御を示す説明図である。
【図8】同じく、4ビットにおける16階調の制御を示す説明図である。
【図9】同じく、記憶装置、周囲環境検知装置、周囲環境判断装置を示すブロック図である。
【図10】同じく、作用を示すフローチャートである。
【図11】(A)は、縦軸が光度(%)で横軸が時間(秒)である信号待ちの調光の制御を示すグラフ、(B)は、2進法パルス幅変調によりONのパルス幅のデュティ比あるいはOFFのパルス幅のデュティ比を減少またはおよび増加させて信号待ちの調光の制御を示す説明図である。
【図12】(A)は、昼間用の配光パターンを示す説明図、(B)は、夜間用の配光パターンを示す説明図、(C)は、2進法パルス幅変調によりONのパルス幅のデュティ比あるいはOFFのパルス幅のデュティ比を減少またはおよび増加させて昼間用の調光の制御を示す説明図、(D)は、2進法パルス幅変調によりONのパルス幅のデュティ比あるいはOFFのパルス幅のデュティ比を減少またはおよび増加させて夜間用の調光の制御を示す説明図である。
【図13】(A)は、一般道路用の配光パターンを示す説明図、(B)は、高速道路用の配光パターンを示す説明図、(C)は、2進法パルス幅変調によりONのパルス幅のデュティ比あるいはOFFのパルス幅のデュティ比を減少またはおよび増加させて一般道路用の調光の制御を示す説明図、(D)は、2進法パルス幅変調によりONのパルス幅のデュティ比あるいはOFFのパルス幅のデュティ比を減少またはおよび増加させて高速道路用の調光の制御を示す説明図である。
【図14】この発明にかかる車両用デジタル照明システムの実施の形態2を示す全体構成の機能ブロック図である。
【符号の説明】
U 上
D 下
L 左
R 右
VU−VD スクリーンの上下の垂直線
HL−HR スクリーンの左右の水平線
L1 放電灯10からの光
L2 リフレクタ11からの反射光
L3 コリメータレンズ12からの平行光
L4 反射型デジタル光偏向装置2からのONの反射光
L5 反射型デジタル光偏向装置2からのOFFの反射光
L6 反射型デジタル光偏向装置2からの無通電時の反射光
L7 発散レンズ30からの出射光
L8 集光レンズ31からの出射光
P 所定の配光パターンおよび調光された配光パターン
1 光学エンジン
10 放電灯(光源)
11 リフレクタ
12 コリメータレンズ
13 反射面
14 入射面
2 反射型デジタル光偏向装置
20 CMOS基板
21 導体
22 トーションヒンジ
23 ヨーク
24 ポスト
25 極小ミラー素子
26 光アブソーバー
27 ランディングチップ
3 光照射装置
30 発散レンズ
31 集光レンズ(投影レンズ)
4 記憶装置
5 周囲環境検知装置
6 制御装置
60 外部信号入力装置
61 周囲環境判断装置
62 データ選択装置
63 制御信号出力装置
66 中央演算処理装置・CPU
7 配光パターン選択装置
Claims (7)
- 反射型デジタル光偏向装置を使用して所定の配光パターンで路面などを照明する車両用デジタル照明装置において、光源を有する光学エンジンと、
多数個の極小ミラー素子がそれぞれ傾倒可能に配置されており、前記多数個の極小ミラー素子の傾倒角度を第1傾倒角度と第2傾倒角度とにデジタル的に切り替えて、前記光学エンジンからの光の反射方向をONの第1反射方向とOFFの第2反射方向とにデジタル的にスイッチングする反射型デジタル光偏向装置と、前記反射型デジタル光偏向装置からのONの反射光であって所定の配光パターンの光を路面などに照射する光照射装置と、
複数の配光パターンのデジタルデータと、前記所定の配光パターンの光度を減少またはおよび増加させる複数の調光用のデジタルデータとが記憶されている記憶装置と、
入力信号に基づいて前記記憶装置に記憶されている複数の配光パターンのデジタルデータの中から所定の配光パターンのデジタルデータを選択し、この選択された所定の配光パターンのデジタルデータに基づいて前記多数個の極小ミラー素子の切替スイッチングをデジタル的に個々に制御し、また、入力信号に基づいて前記記憶装置に記憶されている複数の調光用のデジタルデータの中から所定の調光用のデジタルデータを選択し、この選択された所定の調光用のデジタルデータに基づいて前記多数個の極小ミラー素子の切替スイッチングをデジタル的に個々に制御する制御装置と、を備えたことを特徴とする車両用デジタル照明装置。 - 所定の配光パターンや所定の調光を選択して選択信号を出力する配光パターン・調光選択装置を備え、
前記制御装置は、前記配光パターン・調光選択装置からの入力信号に基づいて前記記憶装置に記憶されている複数の配光パターンのデジタルデータの中から所定の配光パターンのデジタルデータを選択し、この選択された所定の配光パターンのデジタルデータに基づいて前記多数個の極小ミラー素子の切替スイッチングをデジタル的に個々に制御し、また、前記配光パターン・調光選択装置からの入力信号に基づいて前記記憶装置に記憶されている複数の調光用のデジタルデータの中から所定の調光用のデジタルデータを選択し、この選択された所定の調光用のデジタルデータに基づいて前記多数個の極小ミラー素子の切替スイッチングをデジタル的に個々に制御する、ことを特徴とする請求項1に記載の車両用デジタル照明装置。 - 車両の周囲環境を検知して検知信号として出力する周囲環境検知装置を備え、
前記制御装置は、前記周囲環境検知装置からの入力信号に基づいて車両の周囲環境を判断し、この判断に基づいて前記記憶装置に記憶されている複数の配光パターンのデジタルデータの中から車両の周囲環境に最適な所定の配光パターンのデジタルデータを選択し、この選択された車両の周囲環境に最適な所定の配光パターンのデジタルデータに基づいて前記多数個の極小ミラー素子の切替スイッチングをデジタル的に個々に制御し、また、前記周囲環境検知装置からの入力信号に基づいて車両の周囲環境を判断し、この判断に基づいて前記記憶装置に記憶されている複数の調光用のデジタルデータの中から所定の調光用のデジタルデータを選択し、この選択された所定の調光用のデジタルデータに基づいて前記多数個の極小ミラー素子の切替スイッチングをデジタル的に個々に制御する、ことを特徴とする請求項1に記載の車両用デジタル照明装置。 - 前記調光用のデジタルデータは、複数の光度諧調が得られる2進数の複数ビットのデジタルデータであり、前記調光用のデジタルデータによる所定の配光パターンの光度を減少またはおよび増加させる調光の制御は、2進法パルス幅変調であって、ONのパルス幅のデュティ比あるいはOFFのパルス幅のデュティ比を減少またはおよび増加させることにより行われる、ことを特徴とする請求項1〜3のいずれか1つに記載の車両用デジタル照明装置。
- 信号待ちの調光の制御は、信号待ち開始の時点から所定の減光時間の間において、所定の配光パターンの光度を所定値まで減少させ、また、信号待ち終了の時点から所定の増光時間の間において、光度を所定値から所定の配光パターンの光度まで増加させる、ことを特徴とする請求項1〜3のいずれか1つに記載の車両用デジタル照明装置。
- 昼間・夜間の調光の制御は、昼間において、夜間の所定の配光パターンの光度を所定値まで減少させ、また、夜間において、昼間の所定の配光パターンの光度を所定値まで増加させる、ことを特徴とする請求項1〜3のいずれか1つに記載の車両用デジタル照明装置。
- 一般道路・高速道路の調光や市街地・郊外の調光の制御は、高速道路や郊外において、一般道路や市街地の所定の配光パターンの光度を所定値まで増加させ、また、一般道路や市街地において、高速道路や郊外の所定の配光パターンの光度を所定値まで減少させる、ことを特徴とする請求項1〜3のいずれか1つに記載の車両用デジタル照明装置。
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