JP2004209622A - ワイヤ放電加工機における加工片排出装置 - Google Patents
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Abstract
【課題】この加工片排出装置は,ワイヤ放電加工機に着脱可能に取り付け,それが有するの各種の装置を利用して簡易型に,低コストに作製する。
【解決手段】この加工片排出装置は,テーブル40上に設置されたワーク1からワイヤ電極30で切り取られた加工片35を電磁石23で吸着してワーク1から抜き取って排出するものであり,コラム9に取り付けられたV軸スライド8,ヘッド5に固定されたU軸スライド7,上ヘッド本体2に着脱可能に取り付けられた加工片排出用昇降本体25,昇降本体25に対して往復移動可能に設けられたプランジャ10,及びプランジャ10に着脱可能に取り付けられ且つワーク1の放電加工によってワーク1から切り取られた加工片35を吸着解放する電磁石23を有している。
【選択図】 図1
【解決手段】この加工片排出装置は,テーブル40上に設置されたワーク1からワイヤ電極30で切り取られた加工片35を電磁石23で吸着してワーク1から抜き取って排出するものであり,コラム9に取り付けられたV軸スライド8,ヘッド5に固定されたU軸スライド7,上ヘッド本体2に着脱可能に取り付けられた加工片排出用昇降本体25,昇降本体25に対して往復移動可能に設けられたプランジャ10,及びプランジャ10に着脱可能に取り付けられ且つワーク1の放電加工によってワーク1から切り取られた加工片35を吸着解放する電磁石23を有している。
【選択図】 図1
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
この発明は,ワイヤ電極によって超硬合金,焼入鋼,銅,ステンレススチール等のワークに対して放電加工するワイヤ放電加工機に着脱可能に取り付けられ,ワークから放電加工によって切り離された加工片を排出するワイヤ放電加工機における加工片排出装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来,ワイヤ放電加工機において,自動化による無人加工等の加工を達成するため,工作物即ちワークをワイヤ電極によって加工した場合に,ワークから切り離された加工片(中子)を自動的に排出することが必要であり,このような加工片排出装置は種々のものが開発されている。通常,このような加工片排出装置は,単独にX方向,Y方向及びZ方向に移動する駆動軸を持つロボットタイプが使用されているが,そのために3軸のNC装置を必要としている。
【0003】
従来の磁石を用いた加工片排出装置は,例えば,ワイヤ放電加工機のヘッド本体に取り付けた上部取付部材と下部取付部材に上下動可能に回転可能に支持される第1ボールねじロッド,該第1ボールねじロッドに形成したボールねじと該ボールねじに螺合したナット,前記ボールねじと前記ナットを作動して前記第1ボールねじロッドに回転と上下動とを与える第1サーボモータ及び第2サーボモータ,前記第1ボールねじロッドの下端部に取付けたホルダ,該ホルダに軸方向に摺動可能に且つ回転可能に支持される第2ボールねじロッド,該第2ボールねじロッドに形成したボールねじに螺合したナットに回転を与えて前記第2ボールねじロッドを軸方向に摺動させる前記ホルダに取付けた第3サーボモータ,及びワイヤ放電加工機で発生した加工片を吸着する前記ホルダに取付けた磁石を有するものである(例えば,特許文献1参照)。
【0004】
また,中子処理装置を備えたワイヤ放電加工装置が知られている。該中子処理装置は,ワイヤ放電加工でワークからくり抜き加工される中子を確実に取り出し可能にしたものであって,くり抜き加工した中子を被加工ワークのくり抜き孔から取り出すとき,ワークとワークを支持したパレットとを一体のまま中子押え装置で押え,ワーク反転用回動テーブルで,上下反転させ,反転後のワークに加振装置で振り落とし力を作用させ,中子押え装置で押えながら漸次に中子を落下させるものである(例えば,特許文献2参照)。
【0005】
また,ワイヤ放電加工装置の中子除去装置として磁力による吸着手段を用いたものが知られている。該中子除去装置は,磁力によって被加工物中の中子を吸着する吸着手段と,該吸着手段に吸着された中子を加工域外に除去する除去手段と,吸着手段の磁力を少なくとも2段階に切り換える磁力制御手段とを備えたものである(例えば,特許文献3参照)。
【0006】
また,磁石を用いた中子処理装置が知られている。該中子処理装置は,加工領域と中子回収位置との間で移動するアームがワイヤ電極ヘッドを支持する基台に設けられ,アームに中子と被加工物とに吸着する吸着面を有した磁石を備えており,磁石がワイヤ電極と被加工物とが放電加工のため互いに相対移動する平面と平行な平面内において遊動可能にアームに取り付けられているものである(例えば,特許文献4参照)。
【0007】
【特許文献1】
特開平3−287313号公報(第1頁,第4図,第5図)
【特許文献2】
特開平7−80725号公報(第1頁)
【特許文献3】
特開平2−256423号公報(第1頁)
【特許文献4】
特開平4−87723号公報(第1頁)
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら,従来の3軸のNC装置を必要とする加工片排出装置は,装置自体が大掛かりの構造となって製造コストが高いものとなると共に,加工片排出装置を設けるスペースが大きくなり,加工片排出装置がワイヤ放電加工機の本体即ちZ軸スライドと干渉したり,加工片排出範囲に制約が発生する。また,加工片排出装置をワイヤ放電加工機と独立して単独で操作するため,ワークから切り離される加工片へ排出素子を作動するスライド装置を,ワイヤ電極を供給するためのスライド装置,ワイヤ電極供給装置,サーボ機能とは独立して設けなければならず装置そのものが大掛かりになり,高価なものであった。
【0009】
【課題を解決するため手段】
この発明の目的は,上記の課題を解決することであり,ワイヤ放電加工機が備えているU軸,V軸及びZ軸のスライド装置,サーボ機能等の駆動装置を利用して別途のスライド装置やNC装置を設けることなく,装置そのもののを簡易型にシンプルに構成し,部品点数を低減し,確実に高精度に且つ作動して加工片を迅速に排出し,安価に作製できるワイヤ放電加工機における加工片排出装置を提供することである。
【0010】
この発明は,X軸方向とY軸方向とに移動可能なテーブル上に設置されたワークをワイヤ電極によって放電加工するため前記ワークに対して前記ワイヤ電極を送り込むガイドを行う上ワイヤヘッドを設けた上ヘッド本体,前記上ヘッド本体を支持する支持ロッドを前記X軸方向とY軸方向とに垂直なZ軸方向に移動可能に支持するZ軸スライド,及び前記上ワイヤヘッドに前記ワークを介在して対向してコラムに取り付けられ且つ前記ワークを放電加工して消耗されたワイヤ電極を引き取る下ワイヤヘッドを有するワイヤ放電加工機において,前記コラムに取り付けられた前記Z軸方向に垂直なV軸方向に移動可能なV軸スライド,前記V軸スライドに移動可能に且つ前記Z軸スライドに固定された前記Z軸方向と前記V軸方向とに垂直なU軸方向に移動可能なU軸スライド,前記上ヘッド本体に着脱可能に取り付けられた加工片排出用昇降本体,前記昇降本体に対して往復移動可能に設けられたプランジャ,及び前記プランジャに着脱可能に取り付けられ且つ前記ワークの放電加工によって前記ワークから切り取られた加工片を吸着解放する電磁石を有することを特徴とする加工片排出装置に関する。
【0011】
前記昇降本体は,前記Z軸スライドに前記Z軸方向に移動可能に支持された前記上ヘッド本体を通じて前記U軸スライドと前記V軸スライドとによって移動操作される。
【0012】
前記昇降本体は,前記上ヘッド本体に着脱可能な取付台に着脱可能に取り付けられている。
【0013】
前記加工片は前記ワークから切り離された状態では前記下ワイヤヘッドによって支持され,前記電磁石は前記下ワイヤヘッドによって支持されている前記加工片を吸着して加工片回収領域へ移動して前記加工片を解放する。
【0014】
前記プランジャは,前記昇降本体に設けられたエアシリンダ又はボールねじの作動によって昇降する。
【0015】
この加工片排出装置は,前記下ワイヤヘッドに支持されている前記加工片の位置へ前記電磁石を移動させるには,前記U軸スライド,前記V軸スライド及び/又は前記プランジャを作動させるものである。
【0016】
この加工片排出装置は,前記電磁石に吸着されている前記加工片を前記ワークから抜き取るには,前記Z軸スライド及び/又は前記プランジャを上昇するように作動させるものである。
【0017】
前記電磁石が前記加工片を吸着して前記加工片を前記ワークから抜き取った状態の確認は,自動ワーク供給装置を駆動して前記ワイヤ電極を前記ワークの加工孔に通すことによって検出される。
【0018】
この加工片排出装置は,前記電磁石に支持された前記加工片を前記加工片回収領域へ移動させるには,前記上ヘッド本体を前記U軸方向,前記V軸方向,前記Z軸方向,前記X軸方向及び/又は前記Y軸方向に移動するように作動させるものである。
【0019】
このワイヤ放電加工機における加工片排出装置は,上記のように,ワークから切り離された加工片を吸着する電磁石を上ワイヤヘッドに取り付けた本体に設け,電磁石をワークから加工片を切り離したときに,下ワイヤヘッドに支持されている加工片位置と加工片回収領域との間の移動をU軸,V軸及びZ軸のスライドを利用したので,装置そのものが極めてシンプルに且つ高精度に作動することができる。特に,前記電磁石を上ヘッド本体に取り付けているので,前記電磁石を前記加工片の位置まで移動させる移動距離が極めて短く,しかも前記電磁石の移動が前記U軸スライドと前記V軸スライドとの作動であるので,加工終了後に直ちに前記電磁石を前記加工片へ移動させて前記電磁石によって前記加工片を吸着して前記ワークから前記加工片を抜き取ることができ,サイクル効率を向上させることができる。また,ワークからの加工片の抜き取り確認は,自動ワーク供給装置を利用して加工孔にワイヤ電極を通すことによって容易に検出することができる。
【0020】
【発明の実施の形態】
以下,図面を参照して,この発明によるワイヤ放電加工機に着脱可能に取り付けられた加工片排出装置の一実施例を説明する。この発明による加工片排出装置は,特に,ワーク1からワイヤ電極30によって切り取られた加工片35を取り除くための加工片排出装置をワイヤ放電加工機に設けられたものであり,ワイヤ放電加工機に着脱可能に取り付けられている簡易型のものである。
【0021】
この加工片排出装置を備えたワイヤ放電加工機は,概して,X軸方向とY軸方向と(紙面に平行で垂直な水平方向)に移動可能なテーブル40に設けられたワーク取付台14上にワーク1が設定され,ワーク1をワイヤ電極30によって放電加工するためワーク1に対してワイヤ電極30を送り込むガイドを行う上ワイヤヘッド3を設けた上ヘッド本体2,上ヘッド本体2を支持する支持ロッド4をX軸方向とY軸方向とに垂直なZ軸方向(図では,上下方向)に移動可能に支持するZ軸スライド5,及び上ワイヤヘッド3に対向してコラム9に取り付けられ且つワーク1を放電加工して消耗されたワイヤ電極30を引き取る下ワイヤヘッド13を有している。消耗されたワイヤ電極30は,下ワイヤヘッド13を支持する下ヘッド本体11に設けられたガイドローラ32に案内されて下アーム12を通じて外部に排出される。
【0022】
ワイヤ放電加工機において,上ヘッド本体2とZ軸スライド5との間には,支持ロッド4を覆うようにベローズ28が伸長している。Z軸駆動モータ16は,Z軸スライド5に取り付けられており,Z軸駆動モータ16が回転駆動することによって,伝達装置22を通じて雄ねじ付きスピンドル21が回転し,スピンドル21に螺合しているナット24が上下移動し,ナット24に固定されている支持ロッド4が軸受26を介してZ軸スライド5に対して上下移動するように構成されている。また,テーブル40には,加工液の飛散を防止するための加工槽15が設けられ,加工槽15は,テーブル40上のワーク取付台14上に設けられたクランプ33に固定されるワーク1を囲んでいる。加工槽15には,コラム9に設けられた下アーム12が貫通する長孔41が形成されている。長孔41は,下アーム12に対する加工槽15のX軸方向への移動を許容することができるものである。下アーム12には,その先端に下ヘッド本体11が取り付けられ,下ヘッド本体11には,下ワイヤヘッド13が取り付けられている。加工槽15の長孔41には,下アーム12との間で加工液が外部に飛散漏洩するのを防止するためシール装置27によってシールされている。従って,加工槽15を搭載したテーブル40は,下アーム12に対してX軸方向とY軸方向に往復移動される構造に構成されている。ワイヤ放電加工機は,図示していないが,Z軸スライド5に取り付けられた自動ワイヤ供給装置6を備えている。また,ワイヤ放電加工機におけるZ軸スライド5に取り付けられた自動ワイヤ供給装置6には,ワイヤ電極30をワーク1に形成されたスタートホールや加工軌跡(図示せず)に挿通するためガイドする供給パイプ20が上下移動可能に設けられている。
【0023】
また,ワイヤ放電加工機は,コラム9に取り付けられたZ軸方向に垂直なV軸方向(図では水平方向)に移動可能なV軸スライド8,及びV軸スライド8に取り付けられたZ軸方向とV軸方向とに垂直なU軸方向(図では水平方向)に移動可能なU軸スライド7(図1)を有している。また,Z軸スライド5は,U軸スライド7に固定されている。コラム9には,V軸スライド8を作動するV軸駆動モータ18が取り付けられている。V軸駆動モータ18が回転駆動すると,コラム9上に固定された軌道レール39上を,V軸スライド8に固定されたスライダ38が往復移動し,それによってV軸スライド8がコラム9に対してV軸方向に往復移動するように構成されている。また,V軸スライド8には,U軸スライド7を駆動するU軸駆動モータ19が取り付けられている。U軸駆動モータ19が回転駆動すると,ボールねじ等の伝達装置によってU軸スライド7がU軸スライド7に固定されたスライダ36を介してV軸スライド8に固定された軌道レール37上を往復移動し,それによってU軸スライド7がV軸スライド8に対してU軸方向に往復移動するように構成されている。U軸スライド7には,Z軸スライド5が固定されているので,Z軸スライド5はU軸スライド7の移動と一体になって移動することになる。
【0024】
この加工片排出装置は,特に,コラム9に取り付けられたZ軸方向に垂直なV軸方向に移動可能なV軸スライド8,V軸スライド8に移動可能に且つZ軸スライド5に固定されたZ軸方向とV軸方向とに垂直なU軸方向に移動可能なU軸スライド7,上ヘッド本体2に着脱可能に取り付けられた加工片排出用の昇降本体25,昇降本体25に対して往復移動可能に設けられたプランジャ10,及びプランジャ10に着脱可能に取り付けられ且つワーク1の放電加工によってワーク1から切り取られた加工片35を吸着解放する電磁石23を有することを特徴としている。プランジャ10は,特に,昇降本体25が加工片35の上方へ位置した状態で,電磁石23を加工片35に接する位置へと移動させる微移動をさせるのに利用される。電磁石23は,加工片35に接した状態で,電磁石ケーブル31を通じて通電されて付勢され電磁力を発生させ,加工片35を吸着する。
【0025】
昇降本体25は,Z軸スライド5にZ軸方向に移動可能に支持された上ヘッド本体2を通じてU軸スライド7とV軸スライド8とによって移動操作されるものである。また,昇降本体25は,上ヘッド本体2に着脱可能な取付台17に着脱可能に取り付けられている。従って,この加工片排出装置は,ワーク1から加工片35を抜き取る必要が有る場合には,上ヘッド本体2に取付台17を介して取り付けることができる。また,既存のワイヤ放電加工機であっても,若干の設計変更によって上ヘッド本体2に取付台17を取り付けることができ,加工片排出装置を容易に装備させることができる。
【0026】
このワイヤ放電加工機では加工片35は,製品の場合もあれば,廃品の場合もあるが,ワーク1から切り離された状態では,図2に示すように,下ワイヤヘッド13によって支持した状態に維持しておく。即ち,ワーク1から加工片35を切り離した状態では,加工片35はワーク1からずれた状態になっているので,テーブル40を移動させずに,従って下ワイヤヘッド13を設けた下ヘッド本体11を移動させずに加工片35を下ワイヤヘッド13で支持しておけば,加工片35が下ノズル等との干渉がなく,ワイヤ電極30で加工された加工スリット34で形成されるワーク1の加工軌跡或いは加工片35の製品を傷つけることがない。この状態で,電磁石23は,V軸スライド8とU軸スライド7とを作動させ,下ワイヤヘッド13によって支持されている加工片35へと移動され,次いで,プランジャ10を作動して加工片35に接した状態で電磁石23を付勢即ち通電をONして電磁力を発生させ,電磁石23で加工片35を吸着する。
【0027】
そこで,この加工片排出装置は,エアシリンダ29を作動してプランジャ10を上昇させるか,又はZ軸駆動モータ16を作動してZ軸スライド5を上昇させ,図4に示すように,ワーク1から電磁石23に吸着されている加工片35を抜き取り,それによってワーク1から加工片35が抜き取られ,ワーク1には加工軌跡によって加工孔43が形成される。
【0028】
また,図5に示すように,自動ワイヤ供給装置6を利用して電磁石23で加工片35をワーク1から抜き取ったか否かを確認するため,自動ワイヤ供給装置6を作動して加工孔43にワイヤ電極30を供給し,ワイヤ電極30が下ワイヤヘッド13に到達してワイヤ電極30が供給可能であれば,加工片35が電磁石23に吸着されてワーク1から確実に抜き取られたことが検出される。即ち,自動ワイヤ供給装置6を作動する時には,図2に示す位置まで,U軸スライド7とV軸スライド8とを移動させ,場合によっては,Z軸スライド5を加工片35がワーク1に干渉しない程度にまで移動させる。この場合に,上ワイヤヘッド3の移動距離は,予め加工片35の高さが認識されているので,NC装置即ちコントローラによって移動距離を指令できる。次いで,自動ワイヤ供給装置6を作動して図5に示すように,ワイヤ電極30を上ワイヤヘッド3,ワーク1の加工孔43に挿通し,下ワイヤヘッド13,ガイドローラ32を通りワイヤ電極30が自動結線される。ワイヤ電極30が結線されたことが検出できれば,加工片35がワーク1より抜き取られたことの確認になる。加工片35のワーク1からの抜き取りが確認できれば,自動ワイヤ供給装置6を作動してワイヤ電極30を切断し,次の加工片排出工程に移行する。この時,加工片35がワーク1に残ったままの状態で加工片排出工程に移行してX軸方向とY軸方向にテーブル40が移動すると,加工片35が,下ワイヤヘッド13,下ヘッド本体11及び下アーム12等に干渉し,機器を破損したり,製品を損傷することになるので,加工片35のワーク1からの抜き取り確認は必要な工程である。
【0029】
次いで,加工片排出領域のバケット42が離れた所に設置されているのであれば,テーブル40をX軸方向とY軸方向に移動させ,図6に示すように,加工片35を吸着している電磁石23をバケット42の上方へと移動させ,そこで,電磁石23を消磁させて加工片35を解放し,加工片35をバケット42へ排出する。
【0030】
プランジャ10は,図示していないが,例えば,昇降本体25に設けられたエアシリンダ又はボールねじの作動によって昇降するように構成されているが,それ以外に如何なる手段によってでも作動されることは勿論である。
【0031】
この加工片排出装置は,実施例では,電磁石23を下ワイヤヘッド13に支持されている加工片35の位置へ移動させるには,少なくともU軸スライド7とV軸スライド8とを作動させて行う。ワーク1から加工片35を抜き取るには,少なくともZ軸スライド5を上昇させて行う。また,電磁石23に吸着された加工片35をワーク1から抜き取って加工片回収領域のバケット42へ移動させるには,U軸方向,V軸方向に移動可能な上ヘッド本体2,及び/又はX軸方向,Y軸方向に移動可能なテーブル40を移動作動させて行う。
【0032】
従って,この加工片排出装置は,電磁石23は上ワイヤヘッド3を取り付けた上ヘッド本体2に取付台17を介して取り付けられているので,電磁石23を加工片35の位置まで移動させる移動距離が極めて短く,しかも,電磁石23の移動がU軸スライド19とV軸スライド18との作動であり,下ワイヤヘッド13に加工片35を支える機能を持たせ,移動させる必要がないので,ワーク1への加工終了後に直ちに電磁石23を加工片35へ移動させて電磁石23によって加工片35を吸着してワーク1から加工片35を抜き取ることができ,それによって加工時間を短縮でき,サイクル効率を向上させて加工効率をアップさせることができる。
【0033】
【発明の効果】
この発明によるワイヤ放電加工機に着脱可能に設けた加工片排出装置は,上記のように構成されているので,ワイヤ放電加工機が備えているU軸スライドとV軸スライドと利用すると共に,その他,サーボ機能等のNC装置を利用することができ,高精度で他の部品との干渉を発生させることがなく,装置そのものを簡易型にコンパクトに構成でき,部品点数を低減し,製造コストを低減できる。しかも,電磁石を取付台を介して直近の上ヘッド本体に取り付けたので,ワークからの加工片の抜き取り工程を短縮でき,加工片の排出を効率的に行うことができ,更に,ワークからの加工片の抜き取りもワイヤ電極を自動供給することで簡単に確認できる。即ち,従来の加工片排出装置は,ワイヤ放電加工機とは別の装置であるX軸方向,Y軸方向及びZ軸方向に移動させる駆動軸等の装置を装備し,それらを作動するため別のNC装置が必要であったが,この発明による加工片排出装置は,ワイヤ放電加工機が持つU軸方向,V軸方向,X軸方向,Y軸方向及びZ軸方向に移動させる駆動軸等の装置,並びにそれらを作動するためNC装置をそのまま利用でき,装置そのものを簡易型に極めてシンプルに且つ低コストに構成でき,しかも装置スペースを低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】この発明によるワイヤ放電加工機における加工片排出装置の一実施例を示し,上ワイヤヘッドと下ワイヤヘッドとが対向した状態を示す正面図である。
【図2】この加工片排出装置の作動状態を示し,ワイヤ電極がワークから切り取って加工片を下ワイヤヘッドで支持している状態を示す説明図である。
【図3】この加工片排出装置の作動状態を示し,ワイヤ電極がワークから切り取った加工片を電磁石で吸着した状態を示す説明図である。
【図4】この加工片排出装置の作動状態を示し,電磁石で吸着した加工片をワークから抜き取って移動する状態を示す説明図である。
【図5】この加工片排出装置の作動状態を示し,ワイヤ電極を加工孔に通し,電磁石で加工片が吸着されているか否かを検出する状態を示す説明図である。
【図6】この加工片排出装置の作動状態を示し,電磁石で吸着した加工片をバケットの上方位置に移動して解放せんとする状態を示す説明図である。
【符号の説明】
1 ワーク
2 上ヘッド本体
3 上ワイヤヘッド
4 支持ロッド
5 Z軸スライド
6 自動ワイヤ供給装置
7 U軸スライド
8 V軸スライド
9 コラム
10 プランジャ
11 下ヘッド本体
13 下ワイヤヘッド
17 取付台
23 電磁石
25 昇降本体
29 エアシリンダ
30 ワイヤ電極
35 加工片
40 テーブル
42 バケット
43 加工孔
【発明の属する技術分野】
この発明は,ワイヤ電極によって超硬合金,焼入鋼,銅,ステンレススチール等のワークに対して放電加工するワイヤ放電加工機に着脱可能に取り付けられ,ワークから放電加工によって切り離された加工片を排出するワイヤ放電加工機における加工片排出装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来,ワイヤ放電加工機において,自動化による無人加工等の加工を達成するため,工作物即ちワークをワイヤ電極によって加工した場合に,ワークから切り離された加工片(中子)を自動的に排出することが必要であり,このような加工片排出装置は種々のものが開発されている。通常,このような加工片排出装置は,単独にX方向,Y方向及びZ方向に移動する駆動軸を持つロボットタイプが使用されているが,そのために3軸のNC装置を必要としている。
【0003】
従来の磁石を用いた加工片排出装置は,例えば,ワイヤ放電加工機のヘッド本体に取り付けた上部取付部材と下部取付部材に上下動可能に回転可能に支持される第1ボールねじロッド,該第1ボールねじロッドに形成したボールねじと該ボールねじに螺合したナット,前記ボールねじと前記ナットを作動して前記第1ボールねじロッドに回転と上下動とを与える第1サーボモータ及び第2サーボモータ,前記第1ボールねじロッドの下端部に取付けたホルダ,該ホルダに軸方向に摺動可能に且つ回転可能に支持される第2ボールねじロッド,該第2ボールねじロッドに形成したボールねじに螺合したナットに回転を与えて前記第2ボールねじロッドを軸方向に摺動させる前記ホルダに取付けた第3サーボモータ,及びワイヤ放電加工機で発生した加工片を吸着する前記ホルダに取付けた磁石を有するものである(例えば,特許文献1参照)。
【0004】
また,中子処理装置を備えたワイヤ放電加工装置が知られている。該中子処理装置は,ワイヤ放電加工でワークからくり抜き加工される中子を確実に取り出し可能にしたものであって,くり抜き加工した中子を被加工ワークのくり抜き孔から取り出すとき,ワークとワークを支持したパレットとを一体のまま中子押え装置で押え,ワーク反転用回動テーブルで,上下反転させ,反転後のワークに加振装置で振り落とし力を作用させ,中子押え装置で押えながら漸次に中子を落下させるものである(例えば,特許文献2参照)。
【0005】
また,ワイヤ放電加工装置の中子除去装置として磁力による吸着手段を用いたものが知られている。該中子除去装置は,磁力によって被加工物中の中子を吸着する吸着手段と,該吸着手段に吸着された中子を加工域外に除去する除去手段と,吸着手段の磁力を少なくとも2段階に切り換える磁力制御手段とを備えたものである(例えば,特許文献3参照)。
【0006】
また,磁石を用いた中子処理装置が知られている。該中子処理装置は,加工領域と中子回収位置との間で移動するアームがワイヤ電極ヘッドを支持する基台に設けられ,アームに中子と被加工物とに吸着する吸着面を有した磁石を備えており,磁石がワイヤ電極と被加工物とが放電加工のため互いに相対移動する平面と平行な平面内において遊動可能にアームに取り付けられているものである(例えば,特許文献4参照)。
【0007】
【特許文献1】
特開平3−287313号公報(第1頁,第4図,第5図)
【特許文献2】
特開平7−80725号公報(第1頁)
【特許文献3】
特開平2−256423号公報(第1頁)
【特許文献4】
特開平4−87723号公報(第1頁)
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら,従来の3軸のNC装置を必要とする加工片排出装置は,装置自体が大掛かりの構造となって製造コストが高いものとなると共に,加工片排出装置を設けるスペースが大きくなり,加工片排出装置がワイヤ放電加工機の本体即ちZ軸スライドと干渉したり,加工片排出範囲に制約が発生する。また,加工片排出装置をワイヤ放電加工機と独立して単独で操作するため,ワークから切り離される加工片へ排出素子を作動するスライド装置を,ワイヤ電極を供給するためのスライド装置,ワイヤ電極供給装置,サーボ機能とは独立して設けなければならず装置そのものが大掛かりになり,高価なものであった。
【0009】
【課題を解決するため手段】
この発明の目的は,上記の課題を解決することであり,ワイヤ放電加工機が備えているU軸,V軸及びZ軸のスライド装置,サーボ機能等の駆動装置を利用して別途のスライド装置やNC装置を設けることなく,装置そのもののを簡易型にシンプルに構成し,部品点数を低減し,確実に高精度に且つ作動して加工片を迅速に排出し,安価に作製できるワイヤ放電加工機における加工片排出装置を提供することである。
【0010】
この発明は,X軸方向とY軸方向とに移動可能なテーブル上に設置されたワークをワイヤ電極によって放電加工するため前記ワークに対して前記ワイヤ電極を送り込むガイドを行う上ワイヤヘッドを設けた上ヘッド本体,前記上ヘッド本体を支持する支持ロッドを前記X軸方向とY軸方向とに垂直なZ軸方向に移動可能に支持するZ軸スライド,及び前記上ワイヤヘッドに前記ワークを介在して対向してコラムに取り付けられ且つ前記ワークを放電加工して消耗されたワイヤ電極を引き取る下ワイヤヘッドを有するワイヤ放電加工機において,前記コラムに取り付けられた前記Z軸方向に垂直なV軸方向に移動可能なV軸スライド,前記V軸スライドに移動可能に且つ前記Z軸スライドに固定された前記Z軸方向と前記V軸方向とに垂直なU軸方向に移動可能なU軸スライド,前記上ヘッド本体に着脱可能に取り付けられた加工片排出用昇降本体,前記昇降本体に対して往復移動可能に設けられたプランジャ,及び前記プランジャに着脱可能に取り付けられ且つ前記ワークの放電加工によって前記ワークから切り取られた加工片を吸着解放する電磁石を有することを特徴とする加工片排出装置に関する。
【0011】
前記昇降本体は,前記Z軸スライドに前記Z軸方向に移動可能に支持された前記上ヘッド本体を通じて前記U軸スライドと前記V軸スライドとによって移動操作される。
【0012】
前記昇降本体は,前記上ヘッド本体に着脱可能な取付台に着脱可能に取り付けられている。
【0013】
前記加工片は前記ワークから切り離された状態では前記下ワイヤヘッドによって支持され,前記電磁石は前記下ワイヤヘッドによって支持されている前記加工片を吸着して加工片回収領域へ移動して前記加工片を解放する。
【0014】
前記プランジャは,前記昇降本体に設けられたエアシリンダ又はボールねじの作動によって昇降する。
【0015】
この加工片排出装置は,前記下ワイヤヘッドに支持されている前記加工片の位置へ前記電磁石を移動させるには,前記U軸スライド,前記V軸スライド及び/又は前記プランジャを作動させるものである。
【0016】
この加工片排出装置は,前記電磁石に吸着されている前記加工片を前記ワークから抜き取るには,前記Z軸スライド及び/又は前記プランジャを上昇するように作動させるものである。
【0017】
前記電磁石が前記加工片を吸着して前記加工片を前記ワークから抜き取った状態の確認は,自動ワーク供給装置を駆動して前記ワイヤ電極を前記ワークの加工孔に通すことによって検出される。
【0018】
この加工片排出装置は,前記電磁石に支持された前記加工片を前記加工片回収領域へ移動させるには,前記上ヘッド本体を前記U軸方向,前記V軸方向,前記Z軸方向,前記X軸方向及び/又は前記Y軸方向に移動するように作動させるものである。
【0019】
このワイヤ放電加工機における加工片排出装置は,上記のように,ワークから切り離された加工片を吸着する電磁石を上ワイヤヘッドに取り付けた本体に設け,電磁石をワークから加工片を切り離したときに,下ワイヤヘッドに支持されている加工片位置と加工片回収領域との間の移動をU軸,V軸及びZ軸のスライドを利用したので,装置そのものが極めてシンプルに且つ高精度に作動することができる。特に,前記電磁石を上ヘッド本体に取り付けているので,前記電磁石を前記加工片の位置まで移動させる移動距離が極めて短く,しかも前記電磁石の移動が前記U軸スライドと前記V軸スライドとの作動であるので,加工終了後に直ちに前記電磁石を前記加工片へ移動させて前記電磁石によって前記加工片を吸着して前記ワークから前記加工片を抜き取ることができ,サイクル効率を向上させることができる。また,ワークからの加工片の抜き取り確認は,自動ワーク供給装置を利用して加工孔にワイヤ電極を通すことによって容易に検出することができる。
【0020】
【発明の実施の形態】
以下,図面を参照して,この発明によるワイヤ放電加工機に着脱可能に取り付けられた加工片排出装置の一実施例を説明する。この発明による加工片排出装置は,特に,ワーク1からワイヤ電極30によって切り取られた加工片35を取り除くための加工片排出装置をワイヤ放電加工機に設けられたものであり,ワイヤ放電加工機に着脱可能に取り付けられている簡易型のものである。
【0021】
この加工片排出装置を備えたワイヤ放電加工機は,概して,X軸方向とY軸方向と(紙面に平行で垂直な水平方向)に移動可能なテーブル40に設けられたワーク取付台14上にワーク1が設定され,ワーク1をワイヤ電極30によって放電加工するためワーク1に対してワイヤ電極30を送り込むガイドを行う上ワイヤヘッド3を設けた上ヘッド本体2,上ヘッド本体2を支持する支持ロッド4をX軸方向とY軸方向とに垂直なZ軸方向(図では,上下方向)に移動可能に支持するZ軸スライド5,及び上ワイヤヘッド3に対向してコラム9に取り付けられ且つワーク1を放電加工して消耗されたワイヤ電極30を引き取る下ワイヤヘッド13を有している。消耗されたワイヤ電極30は,下ワイヤヘッド13を支持する下ヘッド本体11に設けられたガイドローラ32に案内されて下アーム12を通じて外部に排出される。
【0022】
ワイヤ放電加工機において,上ヘッド本体2とZ軸スライド5との間には,支持ロッド4を覆うようにベローズ28が伸長している。Z軸駆動モータ16は,Z軸スライド5に取り付けられており,Z軸駆動モータ16が回転駆動することによって,伝達装置22を通じて雄ねじ付きスピンドル21が回転し,スピンドル21に螺合しているナット24が上下移動し,ナット24に固定されている支持ロッド4が軸受26を介してZ軸スライド5に対して上下移動するように構成されている。また,テーブル40には,加工液の飛散を防止するための加工槽15が設けられ,加工槽15は,テーブル40上のワーク取付台14上に設けられたクランプ33に固定されるワーク1を囲んでいる。加工槽15には,コラム9に設けられた下アーム12が貫通する長孔41が形成されている。長孔41は,下アーム12に対する加工槽15のX軸方向への移動を許容することができるものである。下アーム12には,その先端に下ヘッド本体11が取り付けられ,下ヘッド本体11には,下ワイヤヘッド13が取り付けられている。加工槽15の長孔41には,下アーム12との間で加工液が外部に飛散漏洩するのを防止するためシール装置27によってシールされている。従って,加工槽15を搭載したテーブル40は,下アーム12に対してX軸方向とY軸方向に往復移動される構造に構成されている。ワイヤ放電加工機は,図示していないが,Z軸スライド5に取り付けられた自動ワイヤ供給装置6を備えている。また,ワイヤ放電加工機におけるZ軸スライド5に取り付けられた自動ワイヤ供給装置6には,ワイヤ電極30をワーク1に形成されたスタートホールや加工軌跡(図示せず)に挿通するためガイドする供給パイプ20が上下移動可能に設けられている。
【0023】
また,ワイヤ放電加工機は,コラム9に取り付けられたZ軸方向に垂直なV軸方向(図では水平方向)に移動可能なV軸スライド8,及びV軸スライド8に取り付けられたZ軸方向とV軸方向とに垂直なU軸方向(図では水平方向)に移動可能なU軸スライド7(図1)を有している。また,Z軸スライド5は,U軸スライド7に固定されている。コラム9には,V軸スライド8を作動するV軸駆動モータ18が取り付けられている。V軸駆動モータ18が回転駆動すると,コラム9上に固定された軌道レール39上を,V軸スライド8に固定されたスライダ38が往復移動し,それによってV軸スライド8がコラム9に対してV軸方向に往復移動するように構成されている。また,V軸スライド8には,U軸スライド7を駆動するU軸駆動モータ19が取り付けられている。U軸駆動モータ19が回転駆動すると,ボールねじ等の伝達装置によってU軸スライド7がU軸スライド7に固定されたスライダ36を介してV軸スライド8に固定された軌道レール37上を往復移動し,それによってU軸スライド7がV軸スライド8に対してU軸方向に往復移動するように構成されている。U軸スライド7には,Z軸スライド5が固定されているので,Z軸スライド5はU軸スライド7の移動と一体になって移動することになる。
【0024】
この加工片排出装置は,特に,コラム9に取り付けられたZ軸方向に垂直なV軸方向に移動可能なV軸スライド8,V軸スライド8に移動可能に且つZ軸スライド5に固定されたZ軸方向とV軸方向とに垂直なU軸方向に移動可能なU軸スライド7,上ヘッド本体2に着脱可能に取り付けられた加工片排出用の昇降本体25,昇降本体25に対して往復移動可能に設けられたプランジャ10,及びプランジャ10に着脱可能に取り付けられ且つワーク1の放電加工によってワーク1から切り取られた加工片35を吸着解放する電磁石23を有することを特徴としている。プランジャ10は,特に,昇降本体25が加工片35の上方へ位置した状態で,電磁石23を加工片35に接する位置へと移動させる微移動をさせるのに利用される。電磁石23は,加工片35に接した状態で,電磁石ケーブル31を通じて通電されて付勢され電磁力を発生させ,加工片35を吸着する。
【0025】
昇降本体25は,Z軸スライド5にZ軸方向に移動可能に支持された上ヘッド本体2を通じてU軸スライド7とV軸スライド8とによって移動操作されるものである。また,昇降本体25は,上ヘッド本体2に着脱可能な取付台17に着脱可能に取り付けられている。従って,この加工片排出装置は,ワーク1から加工片35を抜き取る必要が有る場合には,上ヘッド本体2に取付台17を介して取り付けることができる。また,既存のワイヤ放電加工機であっても,若干の設計変更によって上ヘッド本体2に取付台17を取り付けることができ,加工片排出装置を容易に装備させることができる。
【0026】
このワイヤ放電加工機では加工片35は,製品の場合もあれば,廃品の場合もあるが,ワーク1から切り離された状態では,図2に示すように,下ワイヤヘッド13によって支持した状態に維持しておく。即ち,ワーク1から加工片35を切り離した状態では,加工片35はワーク1からずれた状態になっているので,テーブル40を移動させずに,従って下ワイヤヘッド13を設けた下ヘッド本体11を移動させずに加工片35を下ワイヤヘッド13で支持しておけば,加工片35が下ノズル等との干渉がなく,ワイヤ電極30で加工された加工スリット34で形成されるワーク1の加工軌跡或いは加工片35の製品を傷つけることがない。この状態で,電磁石23は,V軸スライド8とU軸スライド7とを作動させ,下ワイヤヘッド13によって支持されている加工片35へと移動され,次いで,プランジャ10を作動して加工片35に接した状態で電磁石23を付勢即ち通電をONして電磁力を発生させ,電磁石23で加工片35を吸着する。
【0027】
そこで,この加工片排出装置は,エアシリンダ29を作動してプランジャ10を上昇させるか,又はZ軸駆動モータ16を作動してZ軸スライド5を上昇させ,図4に示すように,ワーク1から電磁石23に吸着されている加工片35を抜き取り,それによってワーク1から加工片35が抜き取られ,ワーク1には加工軌跡によって加工孔43が形成される。
【0028】
また,図5に示すように,自動ワイヤ供給装置6を利用して電磁石23で加工片35をワーク1から抜き取ったか否かを確認するため,自動ワイヤ供給装置6を作動して加工孔43にワイヤ電極30を供給し,ワイヤ電極30が下ワイヤヘッド13に到達してワイヤ電極30が供給可能であれば,加工片35が電磁石23に吸着されてワーク1から確実に抜き取られたことが検出される。即ち,自動ワイヤ供給装置6を作動する時には,図2に示す位置まで,U軸スライド7とV軸スライド8とを移動させ,場合によっては,Z軸スライド5を加工片35がワーク1に干渉しない程度にまで移動させる。この場合に,上ワイヤヘッド3の移動距離は,予め加工片35の高さが認識されているので,NC装置即ちコントローラによって移動距離を指令できる。次いで,自動ワイヤ供給装置6を作動して図5に示すように,ワイヤ電極30を上ワイヤヘッド3,ワーク1の加工孔43に挿通し,下ワイヤヘッド13,ガイドローラ32を通りワイヤ電極30が自動結線される。ワイヤ電極30が結線されたことが検出できれば,加工片35がワーク1より抜き取られたことの確認になる。加工片35のワーク1からの抜き取りが確認できれば,自動ワイヤ供給装置6を作動してワイヤ電極30を切断し,次の加工片排出工程に移行する。この時,加工片35がワーク1に残ったままの状態で加工片排出工程に移行してX軸方向とY軸方向にテーブル40が移動すると,加工片35が,下ワイヤヘッド13,下ヘッド本体11及び下アーム12等に干渉し,機器を破損したり,製品を損傷することになるので,加工片35のワーク1からの抜き取り確認は必要な工程である。
【0029】
次いで,加工片排出領域のバケット42が離れた所に設置されているのであれば,テーブル40をX軸方向とY軸方向に移動させ,図6に示すように,加工片35を吸着している電磁石23をバケット42の上方へと移動させ,そこで,電磁石23を消磁させて加工片35を解放し,加工片35をバケット42へ排出する。
【0030】
プランジャ10は,図示していないが,例えば,昇降本体25に設けられたエアシリンダ又はボールねじの作動によって昇降するように構成されているが,それ以外に如何なる手段によってでも作動されることは勿論である。
【0031】
この加工片排出装置は,実施例では,電磁石23を下ワイヤヘッド13に支持されている加工片35の位置へ移動させるには,少なくともU軸スライド7とV軸スライド8とを作動させて行う。ワーク1から加工片35を抜き取るには,少なくともZ軸スライド5を上昇させて行う。また,電磁石23に吸着された加工片35をワーク1から抜き取って加工片回収領域のバケット42へ移動させるには,U軸方向,V軸方向に移動可能な上ヘッド本体2,及び/又はX軸方向,Y軸方向に移動可能なテーブル40を移動作動させて行う。
【0032】
従って,この加工片排出装置は,電磁石23は上ワイヤヘッド3を取り付けた上ヘッド本体2に取付台17を介して取り付けられているので,電磁石23を加工片35の位置まで移動させる移動距離が極めて短く,しかも,電磁石23の移動がU軸スライド19とV軸スライド18との作動であり,下ワイヤヘッド13に加工片35を支える機能を持たせ,移動させる必要がないので,ワーク1への加工終了後に直ちに電磁石23を加工片35へ移動させて電磁石23によって加工片35を吸着してワーク1から加工片35を抜き取ることができ,それによって加工時間を短縮でき,サイクル効率を向上させて加工効率をアップさせることができる。
【0033】
【発明の効果】
この発明によるワイヤ放電加工機に着脱可能に設けた加工片排出装置は,上記のように構成されているので,ワイヤ放電加工機が備えているU軸スライドとV軸スライドと利用すると共に,その他,サーボ機能等のNC装置を利用することができ,高精度で他の部品との干渉を発生させることがなく,装置そのものを簡易型にコンパクトに構成でき,部品点数を低減し,製造コストを低減できる。しかも,電磁石を取付台を介して直近の上ヘッド本体に取り付けたので,ワークからの加工片の抜き取り工程を短縮でき,加工片の排出を効率的に行うことができ,更に,ワークからの加工片の抜き取りもワイヤ電極を自動供給することで簡単に確認できる。即ち,従来の加工片排出装置は,ワイヤ放電加工機とは別の装置であるX軸方向,Y軸方向及びZ軸方向に移動させる駆動軸等の装置を装備し,それらを作動するため別のNC装置が必要であったが,この発明による加工片排出装置は,ワイヤ放電加工機が持つU軸方向,V軸方向,X軸方向,Y軸方向及びZ軸方向に移動させる駆動軸等の装置,並びにそれらを作動するためNC装置をそのまま利用でき,装置そのものを簡易型に極めてシンプルに且つ低コストに構成でき,しかも装置スペースを低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】この発明によるワイヤ放電加工機における加工片排出装置の一実施例を示し,上ワイヤヘッドと下ワイヤヘッドとが対向した状態を示す正面図である。
【図2】この加工片排出装置の作動状態を示し,ワイヤ電極がワークから切り取って加工片を下ワイヤヘッドで支持している状態を示す説明図である。
【図3】この加工片排出装置の作動状態を示し,ワイヤ電極がワークから切り取った加工片を電磁石で吸着した状態を示す説明図である。
【図4】この加工片排出装置の作動状態を示し,電磁石で吸着した加工片をワークから抜き取って移動する状態を示す説明図である。
【図5】この加工片排出装置の作動状態を示し,ワイヤ電極を加工孔に通し,電磁石で加工片が吸着されているか否かを検出する状態を示す説明図である。
【図6】この加工片排出装置の作動状態を示し,電磁石で吸着した加工片をバケットの上方位置に移動して解放せんとする状態を示す説明図である。
【符号の説明】
1 ワーク
2 上ヘッド本体
3 上ワイヤヘッド
4 支持ロッド
5 Z軸スライド
6 自動ワイヤ供給装置
7 U軸スライド
8 V軸スライド
9 コラム
10 プランジャ
11 下ヘッド本体
13 下ワイヤヘッド
17 取付台
23 電磁石
25 昇降本体
29 エアシリンダ
30 ワイヤ電極
35 加工片
40 テーブル
42 バケット
43 加工孔
Claims (9)
- X軸方向とY軸方向とに移動可能なテーブル上に設置されたワークをワイヤ電極によって放電加工するため前記ワークに対して前記ワイヤ電極を送り込むガイドを行う上ワイヤヘッドを設けた上ヘッド本体,前記上ヘッド本体を支持する支持ロッドを前記X軸方向とY軸方向とに垂直なZ軸方向に移動可能に支持するZ軸スライド,及び前記上ワイヤヘッドに前記ワークを介在して対向してコラムに取り付けられ且つ前記ワークを放電加工して消耗されたワイヤ電極を引き取る下ワイヤヘッドを有するワイヤ放電加工機において,
前記コラムに取り付けられた前記Z軸方向に垂直なV軸方向に移動可能なV軸スライド,前記V軸スライドに移動可能に且つ前記Z軸スライドに固定された前記Z軸方向と前記V軸方向とに垂直なU軸方向に移動可能なU軸スライド,前記上ヘッド本体に着脱可能に取り付けられた加工片排出用昇降本体,前記昇降本体に対して往復移動可能に設けられたプランジャ,及び前記プランジャに着脱可能に取り付けられ且つ前記ワークの放電加工によって前記ワークから切り取られた加工片を吸着解放する電磁石を有することを特徴とする加工片排出装置。 - 前記昇降本体は,前記Z軸スライドに前記Z軸方向に移動可能に支持された前記上ヘッド本体を通じて前記U軸スライドと前記V軸スライドとによって移動操作されることを特徴とする請求項1に記載の加工片排出装置。
- 前記昇降本体は,前記上ヘッド本体に着脱可能な取付台に着脱可能に取り付けられていることを特徴とする請求項1又は2に記載の加工片排出装置。
- 前記加工片は前記ワークから切り離された状態では前記下ワイヤヘッドによって支持され,前記電磁石は前記下ワイヤヘッドによって支持されている前記加工片を吸着して加工片回収領域へ移動して前記加工片を解放することを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の加工片排出装置。
- 前記プランジャは,前記昇降本体に設けられたエアシリンダ又はボールねじの作動によって昇降することを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の加工片排出装置。
- 前記下ワイヤヘッドに支持されている前記加工片の位置へ前記電磁石を移動させるには,前記U軸スライド,前記V軸スライド及び/又は前記プランジャを作動させることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の加工片排出装置。
- 前記電磁石に吸着されている前記加工片を前記ワークから抜き取るには,前記Z軸スライド及び/又は前記プランジャを上昇するように作動させることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載の加工片排出装置。
- 前記電磁石が前記加工片を吸着して前記加工片を前記ワークから抜き取った状態の確認は,自動ワーク供給装置を作動して前記ワイヤ電極を前記ワークの加工孔に通すことによって検出されることを特徴とする請求項1〜7のいずれか1項に記載の加工片排出装置。
- 前記電磁石に支持された前記加工片を前記加工片回収領域へ移動させるには,前記上ヘッド本体を前記U軸方向,前記V軸方向,前記Z軸方向,前記X軸方向及び/又は前記Y軸方向に移動するように作動させることを特徴とする請求項1〜8のいずれか1項に記載の加工片排出装置。
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