JP2004204431A - 極細繊維の製造方法 - Google Patents

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正 神野
Tadataka Fujioka
忠孝 藤岡
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Abstract

【課題】多数の単繊維群からなる紡出糸条を均一に冷却固化し、糸切れや繊度斑のない極細マルチフィラメント糸の製造方法を提供する。
【解決手段】紡糸口金(1)から溶融紡糸によって紡出されたマルチフィラメント糸条(y)に対して整流された冷却風を紡出糸条(Y)を横切る方向に該給気整流部材(6)から吹き付けると共に、更に前記冷却風の供給方向と対向して設けられた吸気整流部材に(6’)よって前記冷却紡糸筒(9)の外部から内部へ整流された外気を吸気して紡出糸条(Y)を冷却し、冷却が完了して冷却紡糸筒(9)内を流下する冷却風の一部を前記吸気整流部材(6’)の直下部に設けた排気開口(10)から排出し、単繊維の繊度が少なくとも0.6デニール以下であって、該単繊維の集合体であるマルチフィラメント糸条(Y)とした場合の繊度が20デニール以上の極細繊維を得る極細繊維の製造方法である。
【選択図】 図1

Description

本発明は、ポリエステル、ナイロン等の熱可塑性合成樹脂からなる極細繊維を溶融紡糸によって製造する極細繊維の製造方法に関する。
一般に、ポリエステルやナイロン等の熱可塑性合成樹脂からなる繊維を溶融紡糸するに当たって、溶融した熱可塑性ポリマーを紡糸口金に穿設した吐出孔群から吐出させ、紡出糸条群を横切る方向に流れる冷却風により冷却した後、延伸して引き取ることが行われている。
このような溶融紡糸によって得られる単繊維繊度が0.6デニール以下の極細繊維は、人工皮革や高級衣料等の高付加価値製品の素材として用いられている。また、このような極細繊維は、単繊維繊度として少なくとも1.0デニール以下であって、単繊維(フィラメント)の集合体であるマルチフィラメント糸条とした場合の繊度が、20デニール以上であることが要求される。したがって、このような極細繊維を製造するためには、多ホールの紡糸口金を使用して紡糸する事が必須になる。
しかしながら、このような多ホール紡糸においては、紡出糸条を冷却固化させる過程で各単繊維間に冷却の不均一を生じやすい。この冷却の不均一は、マルチフィラメント糸条を構成する各単繊維間に物性のバラツキを生じる原因となって、糸切れ等の工程トラブル、長さ方向の繊度斑、染斑等となって現れ、十分な品質を持つ極細マルチフィラメント糸条を得る事が難しかった。
このような問題を解決するために、従来から種々の検討がなされている。例えば、特開平4−18107号公報には、紡糸口金に穿設するポリマー吐出孔群の配列を工夫して、冷却風の吹出し側と反吹出し側の紡出糸条の冷却差を解消すると共に、冷却風が紡出糸条の間を容易に通過できるように、冷却風の通過性を向上させることで、冷却の不均一を解消することが提案されている。
しかしながら、この方法では、多ホール化や高速化によって誘起される紡出糸条の糸揺れが原因となる繊度斑の発生については何等の考慮も払われていないため、特に、90ホール以上の多ホール紡糸や2500m/分以上の高速紡糸において、前記の糸揺れが顕著となる。
このため、特公昭59−40923号公報、特開昭63−145407号公報等には、整流板を糸条群の走行方向に沿って配設したり、冷却風の吹出し側と対向して設けた整流板を介して外気を吸気することで、冷却風の乱れを解消しながら、紡出糸条の冷却の均一化を図り、マルチフィラメント糸条の繊度斑を解消する方法が提案されている。
しかし、この方法においても、前記の多ホール化や高速化によって誘起される糸揺れや冷却風の単繊維間への通過容易性に関しては、何等の配慮もされていないため、糸切れや繊度斑の発生を減少させるためには十分でない。
特公昭59−40923号公報 特開昭63−145407号公報
本発明は、上記の問題点に鑑み成されたものであって、本発明が解決しようとする課題は、以下の通りである。すなわち、紡出されたマルチフィラメント糸条を横切るように冷却風を該糸条に吹き付けて、溶融したマルチフィラメント糸条を冷却固化する際に、主として糸条の糸揺れに起因する繊度斑や不均一冷却を防止できる極細繊維の製造方法を提供することにある。
中でも、繊度斑や不均一冷却が発生しやすい単繊維の繊度が少なくとも0.6デニール以下であって、該単繊維の集合体であるマルチフィラメント糸条とした場合の繊度が20デニール以上の極細繊維に好適な製造方法を提供することにある。
ここに、前記の課題を解決するための請求項1に記載の発明として、「紡糸口金から溶融紡糸によってマルチフィラメント糸条を冷却紡糸筒へ紡出し、紡出された該糸条に対して整流された冷却風を供給して該紡出糸条を横切る方向に吹き付けると共に、更に前記冷却紡糸筒の外部から内部へと整流された外気を吸気して前記冷却風の供給方向と対向する方向からも紡出糸条に吹き付けて冷却し、冷却が完了した冷却風の一部を前記外気の吸気箇所の直下部から糸条の走行方向へと前記冷却紡糸筒に開口する排気開口から排出し、単繊維の繊度が少なくとも0.6デニール以下であって、該単繊維の集合体であるマルチフィラメント糸条とした場合の繊度が20デニール以上の極細繊維を得る極細繊維の製造方法」が提供される。
このような本発明においては、請求項2に記載の発明のように、「紡糸口金直下に設けられた徐冷ゾーンへの上昇気流の流入を遮断すると共に、前記冷却紡糸筒の側面に設けた排気孔から前記上昇気流を筒外へ排気することを特徴とする請求項1記載の極細繊維の製造方法」とすることが好ましい。
また、本発明においては、請求項3に記載の発明のように、「前記冷却紡糸筒内で多錘の紡出糸条を冷却することを特徴とする、請求項1又は2記載の極細繊維の製造方法」とすることが好ましい。
以上に述べたように、本発明によれば、紡出したマルチフィラメント糸条の冷却を強化でき、さらに冷却風の単糸間への通過性を向上することができるために、糸条群の冷却の不均一や冷却風の乱れによる糸揺れの発生等を解消することができ、単繊維の繊度が少なくとも0.6デニール以下であって、該単繊維の集合体である極細マルチフィラメント糸を繊度斑、染斑、及び、断糸といった問題もなく良好に製造することができるという極めて大きな効果を奏する。
以下、本発明の実施の形態について、図面に基づいて詳細に説明する。図1は、本発明の極細繊維の製造方法に適用する溶融紡糸装置を模式的に簡略化して例示した側面図であり、Yはマルチフィラメントからなる紡出糸条、1は紡糸パック、2は多ホールの紡糸口金、3は上昇気流遮断部材、4は冷却風供給室、5は冷却風の均圧化部材、6は給気整流部材、6′は吸気整流部材、7は盲板、8は糸条集束ガイド、9は冷却紡糸筒をそれぞれ示す。ここで、前記の吸気整流部材6′は、紡出糸条Yを間に挟んで給気整流部材6に対向して設けられ、かつ冷却紡糸筒9の外部から内部へ整流された外気を吸気する役割を果たしている。また、上昇気流遮断部材3は、紡糸口金2直下の徐冷ゾーンに、冷却風が進入しないように設けられたものである。
ただし、冷却紡糸筒9内を流下する気流の一部を筒9外へ排気するために、該吸気整流部材6′の直下部には、冷却気流を排気するための排気開口10が設けられている。なお、該図において、矢印を持った線分は、視覚的に冷却風の流れを容易に捉えることができるように冷却風の流れ方向(矢印の方向へ流れる)を示している。
この時、冷却風の均圧化部材5は、冷却風が通過する際に圧力損失が生じるような金網フィルター、通気性の焼結金属等の如き部材で製作することが好ましい。何故ならば、これによって冷却風供給室4の冷却風吹出し部においては、冷却風の吹出し圧力、風速、及び風量等の分布を紡速、紡糸糸条の銘柄等の紡糸条件に対応したプロファイルに制御できるからである。このような好ましいプロファイルに制御された冷却風は、冷却紡糸筒9の上部に設けられた、整流された冷却風を供給する給気整流部材6から冷却紡糸筒9内の紡出糸条Yを横切る方向へ供給される。なお、盲板7は、冷却風の吹出し距離を紡糸条件に対応させて調整自在とするために設けられたものである。したがって、この盲板7と給気整流部材6の糸条走行方向への長さは、互いに調整自在とされている。
以上のように構成された溶融紡糸装置において、紡糸パック1に取り付けられた紡糸口金2から紡出されたマルチフィラメント糸条Yは、ハニカム等の整流作用を有する部材で構成された給気整流部材6から紡出糸条Yを横切る方向へ供給された冷却風によって、冷却固化される。そして、ここでは明示しないが、必要に応じて油剤が付与された後、糸条集束ガイド8で集束され、糸条の交絡処理が施された後、引き取りローラー(図示せず)で引き取られる。この時、紡出糸条Yを横切って供給された冷却風は、走行糸条Yに随伴する気流と共に下方へと流れ、これによって冷却風の動圧は上昇するが、冷却紡糸筒9内の静圧は低下する。このため、吸気整流部材6′を介して整流された外気は、冷却紡糸筒9の内部へと流入し、この方向からも紡出糸条Yは冷却される。なお、該吸気整流部材6′の設置長さは、紡糸条件に対応させて、適宜好ましい条件にすれば良い。例えば、ポリエステルの溶融紡糸においては、その有効長を紡出糸条Yの走行方向に沿って300〜700mmとすることが好ましい。
以上に述べたようにして、給気整流部材6と吸気整流部材6′とから冷却紡糸筒9へ流入した冷却風は、冷却紡糸筒9の下方へ行くにしたがって互いに集まり合って、その風速が増加する。例えば、既に紡出糸条Yの冷却が完了する図1及び図2に示す集束ガイド8の位置においては、その風速は10m/分に達することが有る。このような気流は、紡出糸条の糸揺れの大きな原因となっているため、速やかに冷却紡糸筒9外へ排出することが必要であって、このために、本発明のように、冷却紡糸筒9内を流下する気流の一部を筒外へ排気する排気開口を、冷却紡糸筒9の吸気整流部材6′の直下部に設ける必要がある。
この際、前記の排気開口10の設置長さは、その作用を有効に果たすことができれば良いのであって、特に制限することはない。しかしながら、ポリエステルの紡糸においては、有効長さ300〜1000mmとすることが好ましい。このようにすることによって、糸揺れの発生を抑制でき、安定した紡糸を行うことができる。
次に、図2は、前記の図1に例示した装置の正面図であって、この図も、模式的に簡略化して示してある。該図2の実施態様を見れば分かるように、この実施態様例では、紡糸パック1に多数(6錘)の紡糸口金2が横一列に並列して配設されている。特に、このような多錘の紡糸口金2においては、紡出された6錘の糸条Yの両側端には、下方へ走行する紡出糸条Yが存在しないため、図示するように上昇気流が紡出糸条Yの走行方向とは逆方向に発生する。このような上昇気流の発生は、明らかに冷却紡糸筒9内の冷却風を乱す作用を果たすため、速やかに冷却紡糸筒9から排出することが好ましい。
上記の目的を達成するためには、前記の給気整流部材6と吸気整流部材6′の上端に上昇気流を遮断する上昇気流遮断部材3を設ける必要が有る。なお、この際、更に前記の給気整流部材6の設置面と前記の吸気整流部材6′の設置面とを除いた冷却紡糸筒9の側面の上昇気流遮断部材3の下方に上昇気流を筒外へ排気するための排気孔11を設ける必要が有る。この時、上昇気流制御板12を設けることによって排出孔10から容易に上昇気流を逃がすことができるようにしても良い。したがって、この上昇気流遮断部材3によって、紡糸口金2の直下に設けられた紡出糸条の徐冷ゾーンにまで、冷却風が上昇して進入しないようにすることができる。
本発明によれば、従来の方法と比較すると、主として糸条の糸揺れに起因する繊度斑や不均一冷却を抑制することができ、これによって、単繊維の繊度が少なくとも0.6デニール以下であって、該単繊維の集合体であるマルチフィラメント糸条とした場合の繊度が20デニール以上の極細繊維の製造方法として好適である。
本発明の製造方法を好適に適用できる溶融紡糸装置を簡略化して例示した模式側面図である。 本発明の製造方法を好適に適用できる溶融紡糸装置を簡略化して例示した模式正面図である。
符号の説明
1 紡糸パック
2 紡糸口金
3 上昇気流遮断部材
6 給気整流部材
6′ 吸気整流部材
8 糸条集束ガイド
9 冷却紡糸筒
10 排気開口
Y 紡出されたマルチフィラメント糸条

Claims (3)

  1. 紡糸口金から溶融紡糸によってマルチフィラメント糸条を冷却紡糸筒へ紡出し、紡出された該糸条に対して整流された冷却風を供給して該紡出糸条を横切る方向に吹き付けると共に、更に前記冷却紡糸筒の外部から内部へと整流された外気を吸気して前記冷却風の供給方向と対向する方向からも紡出糸条に吹き付けて冷却し、冷却が完了した冷却風の一部を前記外気を吸気する直下部から糸条の走行方向へと前記冷却紡糸筒に開口する排気開口から排出し、単繊維の繊度が少なくとも0.6デニール以下であって、該単繊維の集合体であるマルチフィラメント糸条とした場合の繊度が20デニール以上の極細繊維を得る極細繊維の製造方法。
  2. 紡糸口金直下に設けられた徐冷ゾーンへの上昇気流の流入を遮断すると共に、前記冷却紡糸筒の側面に設けた排気孔から前記上昇気流を筒外へ排気することを特徴とする請求項1記載の極細繊維の製造方法。
  3. 前記冷却紡糸筒内で多錘の紡出糸条を冷却することを特徴とする、請求項1又は2記載の極細繊維の製造方法。
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