JP2004204280A - 合金化溶融亜鉛めっき鋼板 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】下地鋼板が、Si:0.1質量%以上2.0質量%以下、Mn:0.5質量%以上3.0質量%以下、P:0.01質量%以上0.15質量%以下のうちの1種類以上を含む合金化溶融亜鉛めっき鋼板であって、めっき前の下地鋼板表面に存在するSi、Mn、Pのうちの1種類以上の元素を含む酸化物の少なくとも一部が、めっき皮膜/下地鋼板界面から隔離されてめっき皮膜中に存在する。前記めっき皮膜/下地鋼板界面から隔離されてめっき皮膜中に存在するSi、Mn、Pのうちの1種類以上の元素を含む酸化物は粒子状であって、該粒子状酸化物は、めっき皮膜/下地鋼板界面に平行方向の平均長さが500nm以下である。
【選択図】 図1
Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、合金化溶融亜鉛めっき鋼板に係わる。より詳細には、めっき皮膜の密着性に優れた合金化溶融亜鉛めっき鋼板に係わる。さらに詳細には、めっき皮膜の密着性に優れた高強度合金化溶融亜鉛めっき鋼板に係わる。
【0002】
【従来の技術】
従来より、自動車車体や家電製品などの素材として、塗装後の耐食性に優れる合金化溶融亜鉛めっき鋼板が多用されている。その際、合金化溶融亜鉛めっき鋼板は、プレス成形により加工される場合が多い。
【0003】
合金化溶融亜鉛めっき鋼板をプレス成形により加工する場合には、皮膜の剥離や割れなどが問題となる。加工時の皮膜剥離は、V曲げなどの局所変形でおきるパウダリング、高面圧でしゅう動距離が長い変形で多く発生するフレーキングなどがある。一方、加工後に塗装された合金化溶融亜鉛めっき鋼板においても、例えば自動車走行時に石跳ねなどで塗装とともにめっきが剥離するチッピング等の現象が問題となる。これらの皮膜の剥離は、すべてめっき皮膜/下地鋼板の界面、あるいはめっき皮膜中の異なる鉄−亜鉛合金相間の界面で起こると考えられている。
【0004】
自動車車体において、衝突安全性や環境問題に立脚した高燃費性に対する認識の高まりにつれて、従来よりも高い強度を有する車体パネル用の合金化溶融亜鉛めっき鋼板が要求されている。高強度の薄板を得るためには鋼にSiやMnなどを添加することが有効である。しかし、これらの元素を添加した鋼板では、溶融亜鉛めっきを施す前に実施する焼鈍過程において、鋼板表面に、添加したSiやMnを含む酸化物が析出し、これがめっきはじき等の欠陥、合金化不良、あるいはめっき皮膜剥離につながることが知られている。特にめっき皮膜剥離は、自動車等の鋼板加工製品に使用する際に致命的である。
【0005】
めっき皮膜剥離の要因の一つは、めっき皮膜と下地鋼板の界面に残存する上記酸化物の存在によると考えられている。すなわち、皮膜中で発生した亀裂が界面に達した場合、酸化物が存在する界面では界面に沿って亀裂が容易に進展するし、界面に存在する酸化物自体が亀裂の発生点になる可能性もある。また、めっきはじきや合金化不良なども上記酸化物がめっき皮膜と下地鋼板の界面に存在し、鉄−亜鉛の反応を抑制するためと考えられている。
【0006】
これらの酸化物による悪影響を防ぐ目的で、焼鈍条件を制御して鋼板表面の酸化膜厚や酸化物組成を制御する方法(特許文献1、特許文献2)、FeやNiなどの元素をあらかじめ鋼板にめっきする方法(特許文献3、特許文献4、特許文献5)などが開示されている。しかし、いずれの発明でもコストに見合い、かつ十分な強度特性を有し、界面密着性に優れる合金化溶融亜鉛めっき鋼板は得られていない。そのため、新しい視点に立った解決策が望まれている。
【0007】
以下に、先行技術文献情報について記載する。
【0008】
【特許文献1】
特開昭55-122865号公報
【0009】
【特許文献2】
特開平8-246121号公報
【0010】
【特許文献3】
特開昭60-110859号公報
【0011】
【特許文献4】
特開平5-263206号公報
【0012】
【特許文献5】
特開平7-252622号公報
【0013】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上記の事情に鑑みてなされたものであり、めっき皮膜剥離の原因となっている酸化物の存在位置を制御することに視点をおいて、従来よりめっき皮膜の密着性に優れた合金化溶融亜鉛めっき鋼板を提供することを目的とする。
【0014】
【課題を解決するための手段】
前記課題を解決するため、以下の発明(1)〜(4)を提供する。
(1)下地鋼板が、Si:0.1質量%以上2.0質量%以下、Mn:0.5質量%以上3.0質量%以下、P:0.01質量%以上0.15質量%以下のうちの1種類以上を含む合金化溶融亜鉛めっき鋼板であって、めっき前の下地鋼板表面に存在するSi、Mn、Pのうちの1種類以上の元素を含む酸化物の少なくとも一部が、めっき皮膜/下地鋼板界面から隔離されてめっき皮膜中に存在することを特徴とする合金化溶融亜鉛めっき鋼板。
【0015】
(2)前記めっき皮膜/下地鋼板界面から隔離されてめっき皮膜中に存在するSi、Mn、Pのうちの1種類以上の元素を含む酸化物は粒子状であって、該粒子状酸化物は、めっき皮膜/下地鋼板界面に平行方向の平均長さが500nm以下であることを特徴とする前記(1)に記載の合金化溶融亜鉛めっき鋼板。
【0016】
(3)断面組織でみて、Si、Mn、Pのうちの1種類以上の元素を含む酸化物がめっき皮膜/下地鋼板界面から隔離されてめっき皮膜中に存在するとともに、該酸化物下方で鉄−亜鉛合金相が下地鋼板と接している界面形態の割合が、界面長さの30%以上であることを特徴とする前記(1)または(2)に記載の合金化溶融亜鉛めっき鋼板。
【0017】
【発明の実施の形態】
以下に本発明を詳細に説明する。
通常、合金化溶融亜鉛めっき鋼板は、素材鋼板を連続焼鈍設備で還元雰囲気中で焼鈍した後、亜鉛めっき浴に浸漬して亜鉛めっきを施し、亜鉛めっき浴から引き上げてガスワイピングノズルでめっき付着量を調整し、合金化加熱炉でめっき皮膜の合金化処理を施して製造される。合金化溶融亜鉛めっき鋼板を高強度化するには、鋼にSi、Mn、Pなどを添加することが有効である。しかし、これらの元素を添加した鋼板は、溶融亜鉛めっきを施す前に実施する焼鈍過程において、鋼板表面に、添加したSi、Mn、Pの酸化物が析出し、これがめっき皮膜の密着性を低下する。
【0018】
発明(1)は、合金化溶融亜鉛めっき鋼板において、めっき前の鋼板表面に存在したSi、Mn、Pを含む酸化物が、めっき後に、めっき皮膜/下地鋼板界面に存在するよりも、めっき皮膜/下地鋼板界面から隔離されためっき皮膜中に存在する方が、めっき皮膜の密着性に優れていることを見出したことに基づく。
【0019】
発明(1)において、下地鋼板を、Si:0.1質量%以上2.0質量%以下、Mn:0.5質量%以上3.0質量%以下、P:0.01質量%以上0.15質量%以下のうちの1種類以上を含む鋼板に限定したのは次の理由による。すなわち、鋼板の強度特性を制御するために、Si:0.1質量%以上、Mn:0.5質量%以上、P:0.01質量%以上のうちの1種類以上を添加することが必要であり、さらに本発明が目的とする密着性を向上させる効果が、前記組成の成分を含む鋼板で特に顕著なためである。また、Si、Mn、およびPが、それぞれ2.0質量%、3.0質量%、0.15質量%を超えると、めっき性を著しく低下させ不めっき等を生じやすくなるためである。
【0020】
酸化物に含まれる元素をSi、Mn、Pのうちの1種類以上に限定したのは、これらの元素を含まない酸化物はめっき皮膜の密着性に悪影響を及ぼさないためである。めっき皮膜/下地鋼板界面から隔離されてめっき皮膜中に存在する酸化物には、前記元素の酸化物以外にAl酸化物が含まれていることがある。
【0021】
酸化物の存在する位置は、合金化溶融亜鉛めっき鋼板のめっき皮膜(鉄−亜鉛合金相)と下地鋼板の界面よりめっき皮膜側に入ったところであり、酸化物はめっき皮膜/下地鋼板界面とは接していない(すなわち、前記酸化物は、めっき皮膜/下地鋼板界面から隔離されている)。本発明ではめっき皮膜/下地鋼板界面と酸化物の距離を限定するものではないが、酸化物が界面からより遠くに離れている方が有利である。
【0022】
図1は本発明に係る合金化溶融亜鉛めっき鋼板のめっき皮膜/下地鋼板界面付近の酸化物の存在状態を説明する断面模式図である。(a)に示すように、酸化物はめっき皮膜(鉄−亜鉛合金相)中に点在して存在していてもよいし、(b)に示すように、点在する酸化物同士が部分的につながり連続して層状で存在していてもよい。いずれの図でも、酸化物は、めっき皮膜/下地鋼板界面から隔離されためっき皮膜中に存在する。
【0023】
また、酸化物が存在するめっき皮膜の鉄−亜鉛合金相は、ζ層、δ相あるいはΓ1相、またはこれらの2つ以上の合金相の組合わせのいずれであってもよい。しかしこの鉄−亜鉛合金相はΓ相でないほうが望ましい。その理由は、Γ相は前記合金相に比べて硬度が高いため、めっき皮膜の剥離が、下地鋼板と高い硬度を有するΓ相との界面において発生しやすくなり、酸化物をめっき皮膜/下地鋼板界面から隔離してめっき皮膜中に存在せしめたことによる本発明のめっき皮膜の密着性向上効果が相対的に小さくなるからである。
【0024】
本発明により合金化溶融亜鉛めっき鋼板の密着性が向上する理由として次の2つのメカニズムを推定している。▲1▼密着性を低下させる酸化物がめっき皮膜/下地鋼板界面に存在しないこと、および▲2▼結果として、鉄−亜鉛合金相と下地の鉄が直接接合していることである。後者においては、鉄−亜鉛合金相と下地の鉄の結晶同士が特定の結晶方位関係を有していれば、より強固に結合すると考えられる。
【0025】
発明(2)は、発明(1)において、めっき皮膜/下地鋼板界面から隔離されためっき皮膜中に存在するSi、Mn、Pのうちの1種類以上の元素を含む酸化物は粒子状であって、該粒子状酸化物は、めっき皮膜/下地鋼板界面に平行方向の平均長さが500nm以下であることを規定する。前記酸化物が粒子状であって、該粒子状酸化物のめっき皮膜/下地鋼板界面に平行方向の長さ(平均長さ、以下同じ。)が500nm以下であると、合金化溶融亜鉛めっき鋼板のめっき皮膜の密着性がより向上する。
【0026】
酸化物が粒子状であると、めっき皮膜内で発生したクラックの伝播を防止する作用が特に大きいため、密着性を向上する効果により優れる。酸化物の皮膜/下地鋼板界面に平行方向の長さが500nmを超えると、酸化物が粒子状であることによる密着性向上効果が低下する。これは酸化物の長さが500nmを超えると集合した酸化物が、もはや粒子状とみなされず、連続した層を形成した状態になり、めっき皮膜内で発生したクラックが前記層内を伝播しやすくなり、クラックの伝播を防止する作用が低下することによると推定している。ここで、粒子状酸化物とは、断面組織で観察される酸化物の形態が概ね円型、楕円型、矩形などのものを指しており、その界面は凹凸状であってもよい。
【0027】
発明(3)は、発明(1)または発明(2)において、断面組織でみて、Si、Mn、Pのうちの1種類以上の元素を含む酸化物がめっき皮膜/下地鋼板界面から隔離されてめっき皮膜中に存在するとともに、該酸化物下方で鉄−亜鉛合金相が下地鋼板と接している界面形態が、界面長さの30%以上存在することを規定する。
【0028】
ここで、前記で規定する界面形態の割合とは、ある断面における断面長さに対する、上方に隔離された酸化物を含む鉄−亜鉛合金相が下地鋼板と接している界面長さを合計したもの(いずれも板面に平行方向の寸法)の割合である。
【0029】
前記界面形態は、めっき皮膜/下地鋼板界面方向の全長に渡って存在していなくても、平均値で前記界面長さの30%以上であれば密着性の向上効果が顕著となる。この割合が30%未満であると密着性向上効果は低下する。残りの界面部分には酸化物が存在しないことが好ましい。
【0030】
本発明者等は、めっき前の鋼板表面の酸化物の形態とめっき皮膜およびめっき皮膜/下地鋼板界面およびその近傍の酸化物の形態、およびこれらとめっき皮膜の密着性との関係を精力的に調査した。その結果、めっき前の鋼板表面に存在するSi、Mn、Pのうちの1種類以上の元素を含む酸化物の形態を、粒子状形態あるいは前記粒子状酸化物の基部が薄い酸化膜でつながった層状の混合形態とするとともに、その酸化物の量を制御した後、該鋼板を溶融亜鉛めっき浴に浸漬し、次に合金化処理を施し、めっき皮膜中の亜鉛と鋼板中の鉄との鉄−亜鉛反応によって、前記酸化物をめっき皮膜/下地鋼板界面から隔離されためっき皮膜中に存在せしめることができ、これによって、密着性に優れる合金化溶融亜鉛めっき鋼板を得ることができる。
【0031】
めっき前に鋼板表面に存在する酸化物を、めっき皮膜/下地鋼板界面から隔離されためっき皮膜中に存在せしめることができるのは、めっき浴中に存在するAlの還元作用に基づくと考えられる。すなわち、めっき前の鋼板表面に存在するSi、Mn、Pのうちの1種類以上の元素を含む酸化物の形態を、粒子状形態あるいは粒子状と層状の混合形態とするとともに、その酸化物の量を制御した後、該鋼板を溶融亜鉛めっき浴に浸漬し、次いで合金化処理を施すと、溶融亜鉛めっき浴中に含まれるAlの還元作用によって、前記酸化物は部分的に還元されて不連続な酸化物となる。次いで前記酸化物のない部分で下地鋼板中の鉄とめっき皮膜の亜鉛との鉄−亜鉛反応が前記酸化物を回り込むように起こり、前記酸化物はめっき皮膜/下地鋼板界面から隔離されためっき皮膜中に存在するようになると考えられる。前記酸化物のない部分では、鉄−亜鉛合金相と下地鋼板が直接接合している。▲1▼密着性を低下させる酸化物がめっき皮膜/下地鋼板界面に存在しないこと、および▲2▼鉄−亜鉛合金相と下地の鉄が直接接合していることによって、めっき皮膜/下地鋼板界面におけるめっき皮膜の密着性が良好になり、密着性に優れた合金化溶融亜鉛めっき鋼板が得られる。
【0032】
本発明が対象とする下地鋼板において、本発明で規定する界面形態の割合が30%未満になると、例えばSi、Mn、Pのうちの1種類以上の元素を含む酸化物の還元のためのAl消費量が増加することで、めっき/鋼板界面近傍でAl濃度が低下して合金化処理時の合金化反応が早くなり過ぎるため、密着性に優れる合金化めっき皮膜を安定して得ることができなくなる。さらに、Γ相の成長が起こりやすくなり皮膜密着性の低下につながる。また前記酸化物が全く還元されなかったり、あるいは還元不足により酸化物がめっき皮膜/下地鋼板界面に層状に残っていたりすると合金化反応が著しく低下し、めっき性に劣るようになるだけでなく、生産性も低下する。
【0033】
めっき前の鋼板表面の酸化物を制御する方法としては、めっき前の焼鈍条件(温度分布、雰囲気)を制御したり、予め鋼板表面に種々の前処理を施すこと、などが考えられるが、本発明ではその方法は限定されない。
【0034】
本発明では、めっき皮膜中に存在する酸化物の存在位置や大きさを規定するものである。めっき皮膜全体の合金相の種類や構成に限定されるものではない。また本発明の合金化溶融亜鉛めっき鋼板において、下地鋼板の製造方法については特に限定されず、通常の酸洗板あるいは冷圧板でよい。通常、板厚は5mm以下である。また、合金化溶融亜鉛めっき鋼板の製造装置についても特に限定されず、例えば通常使用されている連続式溶融亜鉛めっき装置であってもよい。また、本発明の合金化溶融亜鉛めっき鋼板に、FeあるいはNiを主成分とした上層めっきを施し、プレス成形性を更に改善してもよい。
【0035】
【実施例】
本発明の実施例を以下に示す。
【0036】
表1は、合金化溶融亜鉛めっき鋼板の酸化物の位置、界面構造、めっき皮膜の密着性の関係を調査した結果である。
【0037】
本発明例と比較例は、ともに発明(1)の範囲内の成分組成で板厚1.0mmで冷間圧延された鋼板を焼鈍後、溶融亜鉛めっきを施し、めっき付着量を片面あたり50〜60g/m2に調整後、合金化処理を行って製造した合金化溶融亜鉛めっき鋼板である。合金化処理は、皮膜中のFe濃度は9.5〜12質量%になるようにした。
【0038】
本発明例では、20g/lの硫酸浴(pH:2.5)に5秒間浸漬し水洗を施した後に輻射加熱炉で焼鈍を行うか(処理X)、または、20g/lの硫酸浴(pH:2.5)に5秒間浸漬し水洗を施した後に焼鈍時に直火型バーナーを使用して直火加熱後輻射加熱炉で焼鈍を行うか(処理Y)のいずれかで、めっき前の鋼板表面の酸化物を制御した。比較例では前記硫酸浴への浸漬処理を行うことなく焼鈍した(処理Z)。本発明例と比較例の鋼板の成分組成および処理条件を表1に記載した。
【0039】
なお、合金化溶融亜鉛めっき鋼板の酸化物の位置と界面構造は、集束イオンビーム装置(FIB)を用いて作製した断面の薄片を分析機能付き走査電子顕微鏡(SEM)で観察・分析することにより決定した。必要に応じて透過電子顕微鏡(TEM)による合金相の同定を行った。
【0040】
また、めっき皮膜の密着性は、ドロービード試験を行い、単位面積当たりの皮膜の剥離量を測定して評価した。ここで、ドロービード試験とは、潤滑油を塗布した鋼板を、ビードとダイスで挟んだ状態で引き抜き、その後テープ剥離試験を行い、試験の前後の質量差から、めっき皮膜の剥離量を評価する試験方法である。ビードは先端角度90°の三角ビードを用い、成形高さは4mm、ビードとダイスの押し付け荷重は4903N(500kgf)とした。
【0041】
【表1】
【0042】
本発明例は、比較例と比較して明らかに密着性が良好である。本発明例1と2を比較すると、めっき皮膜/下地界面から離れためっき皮膜中に存在するSi、Mnを含む酸化物は粒子状であって界面に平行方向の長さが500nm以下(発明(2)の範囲内)である本発明例2は、発明(2)の範囲を外れる本発明例1に比べて、さらに優れた密着性を有することがわかる。さらに、発明(3)の範囲内の本発明例3は、発明(3)の範囲を外れる本発明例4に比べて密着性が良好である。
【0043】
【発明の効果】
以上に示したように、本発明によれば、めっき皮膜の密着性に優れた合金化溶融亜鉛めっき鋼板が得られる。
【0044】
本発明の鋼板は、表面に合金化溶融亜鉛めっき皮膜を有しているために耐食性に優れ、かつめっき皮膜の密着性に優れている。また、下地鋼板が、Si:0.1質量%以上2.0質量%以下、Mn:0.5質量%以上3.0質量%以下、P:0.01質量%以上0.15質量%以下のうちの1種類以上を含むので、鋼板強度を高強度化できる。
【0045】
本発明の合金化溶融亜鉛めっき鋼板は、自動車車体をはじめ多くの用途に使用することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る合金化溶融亜鉛めっき鋼板のめっき皮膜/下地鋼板界面付近の酸化物の存在状態を説明する断面模式図で、(a)は酸化物がめっき皮膜(鉄−亜鉛合金相)中に点在して存在している状態、(b)は点在する酸化物同士が部分的につながり連続して層状で存在している状態を示す。
Claims (3)
- 下地鋼板が、Si:0.1質量%以上2.0質量%以下、Mn:0.5質量%以上3.0質量%以下、P:0.01質量%以上0.15質量%以下のうちの1種類以上を含む合金化溶融亜鉛めっき鋼板であって、めっき前の下地鋼板表面に存在するSi、Mn、Pのうちの1種類以上の元素を含む酸化物の少なくとも一部が、めっき皮膜/下地鋼板界面から隔離されてめっき皮膜中に存在することを特徴とする合金化溶融亜鉛めっき鋼板。
- 前記めっき皮膜/下地鋼板界面から隔離されてめっき皮膜中に存在するSi、Mn、Pのうちの1種類以上の元素を含む酸化物は粒子状であって、該粒子状酸化物は、めっき皮膜/下地鋼板界面に平行方向の平均長さが500nm以下であることを特徴とする請求項1に記載の合金化溶融亜鉛めっき鋼板。
- 断面組織でみて、Si、Mn、Pのうちの1種類以上の元素を含む酸化物がめっき皮膜/下地鋼板界面から隔離されてめっき皮膜中に存在するとともに、該酸化物下方で鉄−亜鉛合金相が下地鋼板と接している界面形態の割合が、界面長さの30%以上であることを特徴とする請求項1または2に記載の合金化溶融亜鉛めっき鋼板。
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